JP2023001967A - レーザー装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡潔な構成で光源に戻る光の強度の低下を抑制できるレーザー装置を提供する。【解決手段】レーザー装置1は、レーザー光Lを発する光源2と、偏向器50と、ミラー52とを備える。偏向器50は、入射したレーザー光Lを、印加された信号に応じて偏向させ、且つ、当該信号に応じた波長を有する回折光L1として射出する。ミラー52は、偏向器50から射出されて回折格子を経ずに入射した回折光L1を、回折光L1が入射する際とは逆の光路を辿って反射させる。レーザー装置1は、ミラー52で反射した後に偏向器50を経て光源2に戻る回折光L1と、レーザー光Lとが共振した共振光を出力する。例えば、偏向器50は、AOD(Acousto-Optic Deflector)である。【選択図】図1
Description
本発明は、レーザー装置に関する。
例えば、特許文献1には、Littrow型のレーザー装置が記載されている。また、非特許文献1には、Littman型のレーザー装置が記載されている。特許文献1、非特許文献1に記載の装置はいずれも、光源から発せられたレーザー光を偏向器で偏向させた後に回折格子(Grating)に入射させ、回折格子で回折した後に偏向器を介して光源に戻る光を利用して、所望の波長の共振光を得る。
Takamasa Suzuki, Ryu-ichi Nagai, Osami Sasaki, Samuel Choi. Rapid wavelength scanning based on acousto-optically tuned external-cavity laser diode. Optics Communications 284. pp. 4615-4618. 2011.
特許文献1、非特許文献1に記載の装置では、偏向器から射出された光は、格子周期が固定の回折格子で回折した後に偏向器に戻るため、結果として光源に戻る光の強度が低下する。格子周期が固定の回折格子は、波長に依存した回折効率が最大70%程度であるため、光の往復を考慮すると到達した光のうち少なくとも50%程度の光をロスしてしまう。また、これらの装置は、アライメント調整が必要な回折格子を用いている分、構成が複雑である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡潔な構成で光源に戻る光の強度の低下を抑制できるレーザー装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るレーザー装置は、
レーザー光を発する光源と、
入射した前記レーザー光を、印加された信号に応じて偏向させ、且つ、前記信号に応じた波長を有する回折光として射出する偏向器と、
前記偏向器から射出されて回折格子を経ずに入射した前記回折光を、前記回折光が入射する際とは逆の光路を辿って反射させるミラーと、を備え、
前記ミラーで反射した後に前記偏向器を経て前記光源に戻る前記回折光と、前記レーザー光とが共振した共振光を出力する。
レーザー光を発する光源と、
入射した前記レーザー光を、印加された信号に応じて偏向させ、且つ、前記信号に応じた波長を有する回折光として射出する偏向器と、
前記偏向器から射出されて回折格子を経ずに入射した前記回折光を、前記回折光が入射する際とは逆の光路を辿って反射させるミラーと、を備え、
前記ミラーで反射した後に前記偏向器を経て前記光源に戻る前記回折光と、前記レーザー光とが共振した共振光を出力する。
前記偏向器は、AOD(Acousto-Optic Deflector)であってもよい。
前記レーザー装置は、前記回折光の光軸方向における前記ミラーの位置を調整可能な調整部をさらに備えていてもよい。
本発明によれば、簡潔な構成で光源に戻る光の強度の低下を抑制できる。
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すレーザー装置1は、外部共振型レーザー(ECL:External Cavity Laser)として構成され、光源2と、レンズ3と、BS(Beam Splitter)4と、波長選択部5と、を備える。
光源2は、図示せぬ電源から供給される駆動電流に応じて、様々な波長を含むレーザー光Lを発する。光源2は、例えば、AR(Anti Reflection)コーティング付きのLD(Laser Diode)から構成される。レンズ3は、光源2からのレーザー光Lを平行光にするコリメータレンズである。BS4は、レンズ3を経て入射したレーザー光Lを分割し、分割した光の一方を波長選択部5に射出し、分割した光の他方を外部に射出する。
波長選択部5は、偏向器50と、ドライバ51と、ミラー52と、を備える。
偏向器50には、BS4を経たレーザー光Lが入射する。この実施形態の偏向器50は、音響光学(AO:Acousto-Optic)効果を利用したAOD(Acousto-Optic Deflector)である。ドライバ51は、偏向器50に周波数fの超音波信号を印加する超音波ドライバである。偏向器50は、入射したレーザー光Lを透過させるとともに、ドライバ51から印加された信号に応じて偏向させ、且つ、当該信号に応じた波長を有する回折光L1として射出する。この実施形態の回折光L1は、1次回折光である。AODを適切に設計すれば、1次回折光に最大効率を持たせることができる。
AODは、印加される音響波の周波数に応じて、結晶構造及びその屈折率が変化する。AODの材料は、目的に応じて任意に選択可能であり、限定されるものではない。例えば、AODの材料として、ガリウムリン、二酸化テルル、インジウムリン、カルコゲナイトガラス、溶融石英などを用いることができる。
ドライバ51から周波数fの超音波が印加された偏向器50(AOD)に入射したレーザー光Lは、図1に示すように、0次光L0と、回折光L1(1次回折光)として射出される。このとき、θ=λ・f/Vが成り立つ。ここで、θは、偏向器50の射出面(光が射出される面)の法線に対する回折光L1の光軸の角度であり、Vは超音波の速度であり、λは空気中での光の波長である。AODではビームの偏向と強度変調が同時に可能であり、レーザービームの周波数は、印加された超音波の周波数fと同じだけシフトする。つまり、偏向器50(AOD)を用いれば、ドライバ51から印加する超音波の周波数fを調整することで、回折光L1の偏向度合いだけでなく、回折光L1の波長も選択することができる。
ミラー52は、例えば、反射率が99.8%以上の高反射ミラーであり、誘電体多層膜ミラー、又は、Al、Au、Ag等を用いた金属ミラーから構成される。ここで、レーザー装置1における偏向器50とミラー52の間には、従来技術のように回折格子(Grating)が設けられていない。したがって、偏向器50からの回折光L1は、回折格子を経ずにミラー52に入射する。
ミラー52は、その反射面52aに回折光L1が垂直入射するように設置されている。したがって、反射面52aの法線は、回折光L1の光軸と平行である。これにより、ミラー52は、入射した回折光L1を、回折光L1が入射する際とは逆の光路を辿って反射させる。つまり、偏向器50から射出され、印加された周波数fに応じた波長(以下、特定波長と言う。)を有する回折光L1のみが、ミラー52で反射して偏向器50に向かい、偏向器50を経て光源2に戻る(フィードバックされる)。このように光源2に戻った特定波長の回折光L1が、様々な波長を含むレーザー光Lのうち特定波長の光と共振する。これにより、光源2は、回折光L1と、レーザー光Lとが共振した共振光を出力する。なお、レーザー装置1は、レーザー装置1の全体動作を制御するコンピュータから構成される、図示せぬ制御部を備える。制御部は、光源2及びドライバ51の各々の動作を制御する。レーザー装置1は、制御部の制御によって所望の波長の共振光を出力できる。
なお、この実施形態ではBS4を用いて共振光をレーザー装置1の外部に出力する構成を例に示したが、共振光を出力するための構成はこの例に限られず任意に設計可能である。例えば、光源2としてSOA(Semiconductor Optical Amplifier)を用い、光源2のレンズ3とは反対側の端面に形成したハーフミラーを介して共振光を外部に出力する構成を採用することもできる。
ここで、従来の外部共振型レーザーを構成するレーザー装置では、レーザー光を戻す経路中に波長選択素子が必要であるという固定観念のもと、格子周期が固定の回折格子が必ず用いられていた。しかしながら、本願発明者は、偏向器50は見方を変えればそれ自体が波長選択性を持つ回折格子として機能し、しかも外部信号で周期をコントロールできる可変型回折格子と捉えることができると想い到った。これにより、固定の回折格子を省いた構成のレーザー装置1を発明した。
以上に説明したレーザー装置1は、レーザー光Lを発する光源2と、偏向器50と、ミラー52とを備える。偏向器50は、入射したレーザー光Lを、印加された信号に応じて偏向させ、且つ、当該信号に応じた波長を有する回折光L1として射出する。ミラー52は、偏向器50から射出されて回折格子を経ずに入射した回折光L1を、回折光L1が入射する際とは逆の光路を辿って反射させる。レーザー装置1は、ミラー52で反射した後に偏向器50を経て光源2に戻る回折光L1と、レーザー光Lとが共振した共振光を出力する。
この構成によれば、偏向器50とミラー52の間に回折格子を設ける必要がないため、構成が簡潔である。また、当該回折格子に比べてミラー52の反射率は格段に優れるため、光源2に戻る光の強度の低下を抑制できる。つまり、従来の構成に比べて、光源2から発せられ、偏向器50及びミラー52を介して再び光源2に戻る外部共振のルートにおける光の強度の低下を抑制できる。より詳細に、レーザー装置1によれば、下記(1)~(5)の効果を奏する。
この構成によれば、偏向器50とミラー52の間に回折格子を設ける必要がないため、構成が簡潔である。また、当該回折格子に比べてミラー52の反射率は格段に優れるため、光源2に戻る光の強度の低下を抑制できる。つまり、従来の構成に比べて、光源2から発せられ、偏向器50及びミラー52を介して再び光源2に戻る外部共振のルートにおける光の強度の低下を抑制できる。より詳細に、レーザー装置1によれば、下記(1)~(5)の効果を奏する。
(1)光源2に光を戻す光学素子として、回折格子に比べて安価なミラー52を用いることができる。
(2)上記のように外部共振器における光の強度の低下を抑えることができるため、光共振が安定し、より帯域の広い波長走査が実現できる。
(3)アライメント調整に手間がかかる回折格子を省いた構成であるため、構成が簡単で機械的に安定である。
(4)光源2にフィードバックされるのは、常にミラー52で垂直反射される光のみであるため、光共振器長が波長走査に伴って変化することがない。このため、良好な光共振条件を維持できる。
(5)レーザー装置1は、固定の回折格子を省いたLittrow型と捉えることができるため、レーザー光が回折格子で2度回折することにより出力が制限されるLittman型に比べて、出力に優れることは言うまでも無い。加えて、レーザー装置1は、従来のLittrow型よりも、光源2に戻る光のロスが少なく、さらに高出力を実現可能である。
(2)上記のように外部共振器における光の強度の低下を抑えることができるため、光共振が安定し、より帯域の広い波長走査が実現できる。
(3)アライメント調整に手間がかかる回折格子を省いた構成であるため、構成が簡単で機械的に安定である。
(4)光源2にフィードバックされるのは、常にミラー52で垂直反射される光のみであるため、光共振器長が波長走査に伴って変化することがない。このため、良好な光共振条件を維持できる。
(5)レーザー装置1は、固定の回折格子を省いたLittrow型と捉えることができるため、レーザー光が回折格子で2度回折することにより出力が制限されるLittman型に比べて、出力に優れることは言うまでも無い。加えて、レーザー装置1は、従来のLittrow型よりも、光源2に戻る光のロスが少なく、さらに高出力を実現可能である。
図2に、上記(2)の効果が現れた理論計算結果を示す。同図中、「実施例」はレーザー装置1に相当する構成であり、「従来例」は本願と同一の発明者による前記特許文献1に記載のレーザー装置(固定の回折格子を用いたLittrow型)に相当する構成である。この計算結果は、双方の例において、ミラー52及び回折格子以外の条件を共通に設定した上で得られたものである。図2を見ると、実施例は、従来例に比べてより広い帯域の波長走査を行うことができることが分かる。
ここからは、レーザー装置1の利用例について図3を参照して説明する。計測装置100は、レーザー装置1と、BS(Beam Splitter)6と、参照ミラー7と、光検出器8と、を備える。計測装置100は、OCT(Optical Coherence Tomography)として構成され、試料9の内部の微細構造の画像化を可能とする。この計測装置100は、SS-OCT(Swept Source-OCT)方式で構成される。なお、試料9は、生体組織、産業用試料などであればよく、OCTで測定可能な対象であればその種別は任意である。
レーザー装置1から出力された光(前述のように波長が走査された共振レーザー光)は、BS6により分波され、試料9と参照ミラー7へ照射される。試料9へ照射された光から、構造に応じた反射した光が信号光としてBS6に戻る。BS6によって、信号光と参照ミラー7からの参照光が再び合波され干渉し、光検出器8で検出される。光検出器8は、例えば、PD(Photo Diode)を用いたバランス光検出器から構成され、図示しないコンピュータに接続される。このコンピュータは、光検出器8で検出された干渉信号をフーリエ変換することで、試料9の深さ方向の像を取得し、画像化する。このOCTの計測技術の性能(測定精度、測定時間)を向上させるには、実現可能な波長走査幅が広く、走査速度の速い波長走査が求められるため、以上に説明したレーザー装置1が有用である。
本発明は以上の実施形態、変形例及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態に適宜の変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
(変形例)
以上に説明したレーザー装置1は、図4に示すように、回折光L1の光軸方向におけるミラー52の位置を調整可能な調整部53をさらに備えていてもよい。調整部53は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた圧電セラミックスである。波長走査幅が大きくなると、良好な光共振条件を実現できない可能性があるが、その場合には、波長の変化に対応して、回折光L1の光軸方向におけるミラー52の位置を調整部53で微調整できる。これにより、光共振器長の制御と位相制御を容易に行うことができる。光源2が出力するレーザー光の波長には温度依存性があるため、例えば、環境温度に起因して波長が所望の波長からずれた場合などに調整部53は有用である。なお、調整部52の構成は、任意に選択可能であり、例示したものとは異なる種別の圧電素子を用いてもよいし、圧電素子以外のミラー52を駆動する機構を用いてもよい。
以上に説明したレーザー装置1は、図4に示すように、回折光L1の光軸方向におけるミラー52の位置を調整可能な調整部53をさらに備えていてもよい。調整部53は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた圧電セラミックスである。波長走査幅が大きくなると、良好な光共振条件を実現できない可能性があるが、その場合には、波長の変化に対応して、回折光L1の光軸方向におけるミラー52の位置を調整部53で微調整できる。これにより、光共振器長の制御と位相制御を容易に行うことができる。光源2が出力するレーザー光の波長には温度依存性があるため、例えば、環境温度に起因して波長が所望の波長からずれた場合などに調整部53は有用である。なお、調整部52の構成は、任意に選択可能であり、例示したものとは異なる種別の圧電素子を用いてもよいし、圧電素子以外のミラー52を駆動する機構を用いてもよい。
また、偏向器50は、AODに限られない。偏向器50の構成は、入射したレーザー光Lを、印加された信号に応じて偏向させ、且つ、当該信号に応じた波長を有する回折光L1として射出することができれば、任意に変更可能である。また、当該信号は、周波数が変化する信号に限られず、電圧が変化する信号であってもよい。
また、レーザー装置1は、信号の印加に応じて偏向器50から様々な偏向角で射出される回折光L1が、ミラー52に対して垂直入射及び垂直反射するようにミラー52の位置を調整可能な位置調整機構をさらに備えていてもよい。また、以上では、回折光L1が1次回折光である例を示したが、回折光L1は2次以降の回折光であってもよい。また、レーザー装置1の用途は、OCTに限られず任意である。
以上の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
1…レーザー装置、2…光源、3…レンズ、4…BS
5…波長選択部、50…偏向器、51…ドライバ
52…ミラー、52a…反射面、53…調整部
L…レーザー光、L0…0次光、L1…回折光
100…計測装置、6…BS、7…参照ミラー、8…光検出器、9…試料
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Claims (3)
- レーザー光を発する光源と、
入射した前記レーザー光を、印加された信号に応じて偏向させ、且つ、前記信号に応じた波長を有する回折光として射出する偏向器と、
前記偏向器から射出されて回折格子を経ずに入射した前記回折光を、前記回折光が入射する際とは逆の光路を辿って反射させるミラーと、を備え、
前記ミラーで反射した後に前記偏向器を経て前記光源に戻る前記回折光と、前記レーザー光とが共振した共振光を出力する、
レーザー装置。 - 前記偏向器は、AOD(Acousto-Optic Deflector)である、
請求項1に記載のレーザー装置。 - 前記回折光の光軸方向における前記ミラーの位置を調整可能な調整部をさらに備える、
請求項1又は2に記載のレーザー装置。
Priority Applications (1)
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