JP2023001410A - 先送りコンクリート用の特殊混和材及び先送りコンクリートの製造方法 - Google Patents

先送りコンクリート用の特殊混和材及び先送りコンクリートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コンクリート及び水と混合させやすいうえに、コンクリートと混合されても不純物にならない性状を有する先送りコンクリート用の特殊混和材を提供する。【解決手段】セメントと、高炉スラグ微粉末と、スラグ骨材とを含有し、コンクリート及び水と混合されることを特徴とする先送りコンクリート1用の特殊混和材である。ここで、スラグ骨材は、球形のスラグ細骨材であることが好ましい。例えば、球形のスラグ細骨材には、風砕製法によって製造された電気炉酸化スラグ細骨材3を使用することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、コンクリートポンプ車などからコンクリートを圧送する際に、コンクリートの閉塞を生じさせず、かつ、フレッシュ性状や力学性状などを低下させることがないように、ポンプ工法における圧送初期に使用される先送りコンクリート用の特殊混和材及び先送りコンクリートの製造方法に関するものである。
レディーミクストコンクリート工場で製造されて建設現場まで搬送されてきたコンクリートは、ポンプ車(コンクリートポンプ車)によって躯体などを構築する箇所に打ち込まれることになるが、ポンプ車から打ち込み箇所までは、配管を通す圧送によって搬送される。
このポンプ工法における圧送初期には、特許文献1,2に開示されているように、配管の途中でコンクリートの閉塞が起きたりフレッシュ性状などの低下が生じたりしないように、潤滑作用を有する先送り材をコンクリートを送る前の配管に通す。
例えば特許文献1には、炭酸カルシウムを主成分とし、セルロースナノファイバーを添加してなることを特徴とする圧送用先行材が開示されている。また、特許文献2にも、炭酸ナトリウムを主成分とするコンクリートポンプ誘導剤が開示されている。
一方、特許文献3には、ホッパ内でコンクリートにモルタルを混合することで、モルタル分の多い先送りコンクリートを製造する技術が開示されている。要するに、先送りする材料をモルタルではなくコンクリートにすることで、コンクリートと同等の性能を与え、回収や廃棄を不要としている。
特開2019-123793号公報 特開2008-74086号公報 特開平10-339035号公報
しかしながら、特許文献3の先送りコンクリートを製造するには、水とセメント等の材料をハンドミキサー等で撹拌してモルタルを製造した後に、ホッパ内にその製造したモルタルを投入してコンクリートと混合(撹拌)しなければならないため、撹拌作業が2回になり、手間がかかる。
また、水とセメント等で構成されたモルタルは、流動性を有するため、飛散の可能性もあるうえに容易に移し替えることができず、スコップやバケツなどの器具を用いて複数回に分けて移し替える必要がある。一方、モルタル用の材料とコンクリートと水とを、一度の撹拌で充分に混合することは難しい。
そこで本発明は、コンクリート及び水と混合させやすいうえに、コンクリートと混合されても不純物にならない性状を有する先送りコンクリート用の特殊混和材及び先送りコンクリートの製造方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の先送りコンクリート用の特殊混和材は、セメントと、高炉スラグ微粉末と、スラグ骨材とを含有し、コンクリート及び水と混合されることを特徴とする。ここで、前記スラグ骨材は、球形のスラグ細骨材であることが好ましい。例えば、前記球形のスラグ細骨材には、風砕製法によって製造された電気炉酸化スラグ細骨材を使用することができる。
また、前記セメントは1重量%以上10重量%以下、前記高炉スラグ微粉末は10重量%以上80重量%以下、前記スラグ骨材は10重量%以上80重量%以下の構成とすることができる。さらに、混和材を含有する構成であってもよい。
また、先送りコンクリートの製造方法の発明は、上記いずれかに記載の先送りコンクリート用の特殊混和材を使用した先送りコンクリートの製造方法であって、ホッパに、コンクリートと前記特殊混和材と水とを投入する工程と、前記ホッパ内で撹拌する工程とを備えたことを特徴とする。
このように構成された本発明の先送りコンクリート用の特殊混和材は、セメントと、高炉スラグ微粉末と、スラグ骨材とを含有している。このような特殊混和材は、ホッパ内のコンクリートに投入して水とともに撹拌することで、容易にコンクリートと特殊混和材と水とが混合された先送りコンクリート1にすることができる。
また、高炉スラグ微粉末やスラグ骨材は、他産業から排出されて廃棄物として処理されるものなので、資源の有効利用となり、環境配慮性に優れている。さらに、セメント及び高炉スラグ微粉末とスラグ骨材とを含有させることで、フレッシュ性状や力学性状を確保することができ、コンクリートと混合されても不純物にならず、強度低下など品質の低下を防ぐことができる。
また、スラグ骨材が球形のスラグ細骨材であれば、ボールベアリング効果が発揮されて、圧送負荷が低減し、配管の閉塞をより効果的に抑えることができる。このような粒形のスラグ骨材としては、通常であれば廃棄物となってしまう電気炉酸化スラグ細骨材を有効に活用することができる。
そして、先送りコンクリートの製造方法の発明では、ホッパに、コンクリートと特殊混和材と水とを投入し、ホッパ内で撹拌を行うことで、充分に混合された先送りコンクリートを容易に製造することができる。
本実施の形態の先送りコンクリート用の特殊混和材が混合された先送りコンクリートを模式的に示した説明図である。 先送りコンクリートとコンクリートとが圧送される状態を説明する模式図である。 本実施の形態の先送りコンクリートの製造方法及び使用方法の各工程を説明するフローチャートである。 先送りコンクリートの性能を説明するための図であって、(a)は材齢による圧縮強度の変化を示した図、(b)は静弾性係数を示した図である。 先送りコンクリートの性能を説明するための図であって、(a)は乾燥期間と長さ変化との関係を示した図、(b)は促進期間と促進中性化深さとの関係を示した図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態の先送りコンクリート用の特殊混和材が混合された先送りコンクリート1を模式的に示した説明図である。
レディーミクストコンクリート工場で製造されてアジテータ車(ミキサー車)で建設現場まで搬送されてきたフレッシュな状態のコンクリート(生コンクリート)は、ポンプ車によって躯体などを構築する箇所まで圧送されて、打ち込まれる。
すなわち、ポンプ車から打ち込み箇所までは、配管Pが敷設され、その配管Pの中を通ってコンクリート4が圧送される(図2参照)。配管Pの圧送距離は、長いものになると100mから150mに及ぶ場合もある。
コンクリート4を配管Pで圧送する際に、いきなり生コンクリートを通してしまうと、生コンクリート中の水分が配管Pに奪われて、モルタル分が配管Pの内面に付着しやすくなる。また、こうした水分の減少によりフレッシュ性状が低下すると、コンクリート4中の粗骨材41が先行しがちになり、粗骨材41同士の噛み合わせや摩擦抵抗の増加により、配管Pに閉塞が生じることもある。
このような圧送されるコンクリート4による配管Pの閉塞や、圧送によるコンクリート4のフレッシュ性状や力学性状の低下が起きないように、一般的にはモルタルなどの潤滑作用のある先送り材を先行して配管Pに通すことが行われている。
本実施の形態の先送りコンクリート用の特殊混和材が混合された先送りコンクリート1は、上述した従来の先送り材の代わりに先行して配管Pに投入され、それに続いてコンクリート4が配管Pに投入され、図2に示すような状態で圧送される。
配管P内で先行して圧送される先送りコンクリート1は、セメントと、高炉スラグ微粉末と、スラグ骨材とを含有した特殊混和材を、コンクリート4に水とともに混合することによって製造される。なお、必要に応じて、特殊混和材には、混和材が添加される。
ここで、模式的に示した図1では、セメントと高炉スラグ微粉末と水とを混合した状態のものをセメントペースト2として図示している。このセメントペースト2には、コンクリート4のセメント分や水も含まれる。また、セメントとしては、例えば普通ポルトランドセメントが使用できる。
高炉スラグ微粉末は、製鉄所の高炉より副生される高炉水砕スラグを微粉砕して製造される。すなわち高炉スラグ微粉末は、利用されなければ廃棄物として処理されてしまうものなので、先送りコンクリート1に混合させて有効活用することは、環境配慮性に優れていると言える。
さらに、高炉スラグ微粉末は、セメントと混合使用することで、先送りコンクリート1の流動性、及び長期強度を増進させることができる。また、先送りコンクリート1の化学抵抗性、水密性、発熱抑制、アルカリ骨材反応抑制にも、効果を発揮する。
高炉スラグ微粉末の種類としては、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に記載されたものが使用できる。高炉スラグ微粉末は、粒径によって、高炉スラグ微粉末3000、高炉スラグ微粉末4000、高炉スラグ微粉末6000、高炉スラグ微粉末8000の4種類が規定されており、いずれの粒径のものでも使用できる。なお、後述する実験では、高炉スラグ微粉末4000を使用した。
一方、スラグ骨材としては、例えば、JIS A 5011-1「コンクリート用スラグ骨材-第1部:高炉スラグ骨材」、JIS A 5011-2「コンクリート用スラグ骨材-第2部:フェロニッケルスラグ骨材」、JIS A 5011-3「コンクリート用スラグ骨材-第3部:銅スラグ骨材」、JIS A 5011-4「コンクリート用スラグ骨材-第4部:電気炉酸化スラグ骨材」、JIS A 5011-5「コンクリート用スラグ骨材-第5部:石炭ガス化スラグ骨材」などが使用できる。各スラグ骨材のうち、5mm以下の範囲となる細骨材を使用する。
先送りコンクリート1に混合されるスラグ骨材としては、球形のスラグ細骨材が好ましい。すなわち、風砕製法などによって、球形の粒形に形成されたものが好ましい。破砕製造したものを使用することは、環境配慮性は有しているが、撹拌性能や圧送性は、一般的な骨材と同等かそれ以下の可能性がある。
本実施の形態では、先送りコンクリート用の特殊混和材のスラグ骨材として、電気炉酸化スラグ細骨材3を使用する。後述する実験においても、電気炉酸化スラグ細骨材3を使用した。電気炉酸化スラグ細骨材3は、溶解状態のスラグを高圧ブロアで吹き飛ばして散水ミストにより急冷し、分級するという風砕製法によって製造される。
電気炉酸化スラグ細骨材3の骨材粒子は、球形に近い形状であるため、例えばコンクリート4の砕砂などの細骨材42の代わりに混合すると、スランプが増加し、コンクリート4の流動性を大幅に改善させることができる。すなわち、先送りコンクリート1に電気炉酸化スラグ細骨材3を混合することで、流動性と材料分離抵抗性を高めることができる。このため、2.5m以上の粒形の細骨材が含まれていても、電気炉酸化スラグ細骨材3とセメントペースト2との均一性は確保できる。
混和材を混合する場合は、JIS A 5308で示される混和材料を使用する。ここで言う混和材は、フライアッシュ、膨張材及び高炉スラグ微粉末を除いたものであり、主として結合材の分散性を向上させるもの(分散剤や減水剤などと称されるもの)と、材料分離を低減するもの(増粘剤や分離低減剤などと称されるもの)とで構成されたものを使用する。
本実施の形態で説明する先送りコンクリート1は、すべての構成材料が、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」で使用が認められている材料であり、コンクリート4と混合されても、コンクリート4のフレッシュ性状や構造性能(圧縮強度)を低下させることがない。
図2は、圧送初期の状態を示しており、先行する先送りコンクリート1に続いて、連続して配管Pの中をコンクリート4が通過することになる。先送りコンクリート1とコンクリート4との境目では、両材料が混合されることも想定される。
このように最も閉塞のおそれがある圧送初期に、先送りコンクリート1を先行させることで、圧送先端のコンクリート4内での粗骨材41同士の噛み合わせを抑制することができ、配管Pにおけるコンクリート4による閉塞を防ぐことができる。
次に、本実施の形態の先送りコンクリート用の特殊混和材の配合例について説明する。
下記の特殊混和材に使用される高炉スラグ微粉末の種類は、高炉スラグ微粉末4000である。また、特殊混和材のスラグ骨材には、電気炉酸化スラグ細骨材3を使用した。さらに、混和材を添加する場合は、分散剤及び増粘剤で構成されたものを使用した。
本実施の形態の先送りコンクリート用の特殊混和材の特徴としては、高炉スラグ微粉末及びスラグ骨材が含有されていることである。表1及び表2に、特殊混和材の配合例の各ケースの材料構成を示す。
Figure 2023001410000002
Figure 2023001410000003
ここで、材料構成については、上段に重量(kg/m3)を示すとともに、下段には全体に占める割合(重量%:wt%)を示した。また、S/BのBは、セメントと高炉スラグ微粉末から構成される結合材を示し、コンクリートのセメント(C)に対する骨材(S)の質量比(S/C)と同義の指標である。
そして、表3及び表4に圧縮強度の実験結果や二酸化炭素排出量などを示す。ここで、圧縮強度は、材齢28日の標準水中養生後に行った実験結果を示した。また、CO2排出量の原単位を、セメントは772kg-CO2/t、高炉スラグ微粉末は35.6kg-CO2/t、スラグ骨材は3.90kg-CO2/t、混和材は150kg-CO2/tとして算出を行い、モルタルと比較した。
Figure 2023001410000004
Figure 2023001410000005
まず、色について目視で確認したところ、配合例1-配合例18のすべての配合において、モルタルと比べて白色系をしていた。
圧縮強度の実験は、特殊混和材を含む先送りコンクリート1がコンクリート4に混合したときに、コンクリート4の強度を低下させる要因にならないかを確認するために行う。ここで、性能低下を招かない範囲で特殊混和材を適用できるコンクリート4は、コンクリートの呼び強度45以下であるものとする。
圧縮強度の実験は、配合例1-配合例9について行った。これらの実験結果をみると、いずれも比較例であるモルタルと同程の強度を発現している。モルタルは、コンクリート4の性能低下を招かない先送り材として従来から使用されているので、それと同程度の強度が確保できていれば、混合しても不純物とはならないと言える。
これらに対して配合例18は、圧縮強度が15.1(N/mm2)しか確認できなかった。配合例18は、セメントの含有量が1重量%よりも少なく、W/B(水/(セメント+高炉スラグ微粉末):水結合材比)を調整しても、圧縮強度は著しく小さい値にしかならなかった。
本実施の形態で説明する特殊混和材の圧縮強度は、W/B(水結合材比)によって調整が可能ではあるが、配合例18の結果から総合的に判断すると、コンクリート4に混入しても性能低下を招かない範囲の特殊混和材にするには、セメントを1重量%以上10重量%以下で含有させる必要があると言える。
以上の結果を総合的に判断すると、セメントは1重量%以上10重量%以下、高炉スラグ微粉末は10重量%以上80重量%以下、スラグ骨材(電気炉酸化スラグ細骨材3)は10重量%以上80重量%以下となる特殊混和材の配合が、好ましいと言える。
また、配合例1-配合例18の配合であれば、比較例のモルタルを先送り材として使用する場合と比べて、CO2削減率が70%以上、副産物の使用割合が90%以上となるので、環境配慮性に優れていると言える。
次に、本実施の形態の先送りコンクリート用の特殊混和材が混合された先送りコンクリート1の製造方法及び使用方法について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
上述した配合例1-配合例17に示されるような、コンクリート4に混入しても性能低下を招かない範囲の特殊混和材は、例えばプレミックス材として1袋25kgの袋詰めにされて、建設現場に搬入される。
ここで、特殊混和材と混合するコンクリート4の配合について、以下の表5に例示する。
Figure 2023001410000006
このコンクリート4のスランプ値は17.0cmであった。一方、特殊混和材の配合について、以下の表6に例示する。
Figure 2023001410000007
ここで、材料構成については、上段に重量(kg/m3)を示すとともに、下段には全体に占める割合(重量%:wt%)を示した。この特殊混和材を含有する先送りコンクリート1のスランプフローは、50.5cmであった。この配合は、上記の表1に示した配合例3、配合例4などに近い配合である。また、「製造時添加」の水とは、表5に示したコンクリート4と特殊混和材とを混合するときに添加する、先送りコンクリート1の製造時の水である。
ステップS1では、ホッパ内に、先送りコンクリート1の製造用の材料を投入する。具体的には、表5に示した配合のコンクリート4を50Lと、特殊混和材を100kg(4袋)と、表6に示した割合に相当する製造時添加の水とを、ホッパ内に投入する。この例では、コンクリート4と、特殊混和材及び製造時添加の水との比率は、1:1となる。そしてこの結果、100Lの先送りコンクリート1が製造されることになる。
ステップS2では、ホッパ内に投入されたコンクリート4と特殊混和材と水とを撹拌する。この撹拌は、特殊な機具を使用しなくても行うことができる。例えば、コンクリートポンプ車のホッパ内に備え付けられている撹拌羽根を使用して行うことができる。
また、ピストン式のコンクリートポンプ車であれば、ホッパの下部に配置されているS字管(Sバルブ、Sパイプ)を動作させることで、ホッパ内の材料を撹拌することもできる。
そして、ホッパ内で撹拌されることで製造された先送りコンクリート1は、ステップS3で、低速度で配管P内に向けて圧送され、躯体などを構築する箇所に打ち込まれることになる。配管Pの先端から排出された先送りコンクリート1は、スランプフローなどの性能が確認される。
この圧送開始によって、ホッパ内の先送りコンクリート1が減少するのに応じて、ホッパ内にコンクリート4を追加する(ステップS4)。この結果、図2に示すように、圧送するコンクリート4の先端が、モルタル分の多い先送りコンクリート1となり、従来の先送り材がなくても、コンクリート4を閉塞させることなく圧送することが可能になる。
本実施の形態の先送りコンクリート1は、一般的なレディーミクストコンクリート工場で製造されるモルタルと比べて、球形の電気炉酸化スラグ細骨材3のベアリング効果によって、配管Pの管内圧力を低減させることができるうえに、圧送距離を増加させることもできる。
また、配管Pによる圧送距離(配管長)に応じて、上述したコンクリート4及び特殊混和材の投入量や配合を調整することで、様々な圧送距離に対して閉塞させることなくコンクリート4を圧送することができるようになる。
続いて、図4及び図5を参照しながら、上述のようにして製造された先送りコンクリート1の性能について説明する。図4は、先送りコンクリート1の強度に関する性能(構造性能)を、コンクリート4と比較して説明するための図である。
図4(a)は、材齢(日)を横軸にして圧縮強度(N/mm2)の変化を示している。圧縮強度は、材齢が短い間は先送りコンクリート1がコンクリート4よりも小さい値となったが、材齢28日から56日ではほぼ同等となり、材齢91日では先送りコンクリート1の方が大きな圧縮強度になった。
一方、図4(b)は、静弾性係数(kN/mm2)を示した図である。静弾性係数については、コンクリート4と先送りコンクリート1の値は、ほぼ同じ結果となった。
また、図5は、先送りコンクリート1の形状変化や耐久性に関する性能を、コンクリート4と比較して説明するための図である。図5(a)は、乾燥期間(日)と長さ変化との関係を示している。長さ変化(乾燥収縮率)は、先送りコンクリート1がコンクリート4よりもやや小さい傾向であるが、大きな差はなかった。
そして、図5(b)は、促進期間(√週)と促進中性化深さ(mm)との関係を示している。促進中性化深さは、先送りコンクリート1がコンクリート4よりもやや大きくなったが、大きな差ではなかった。
以上の実験結果から、コンクリート4と先送りコンクリート1とは、性能的に同等であり、コンクリート4の代わりに先送りコンクリート1が打ち込まれたり、先送りコンクリート1がコンクリート4に混入したりしても、躯体などのコンクリート構造物の品質を低下させることはない。
次に、本実施の形態の先送りコンクリート用の特殊混和材及び先送りコンクリート1の製造方法の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の先送りコンクリート用の特殊混和材は、セメントと、高炉スラグ微粉末と、スラグ骨材(電気炉酸化スラグ細骨材3)とを含有している。
このような特殊混和材は、ホッパ内のコンクリート4に水とともに投入して撹拌することで、容易にコンクリートと特殊混和材と水とが混合された先送りコンクリート1にすることができる。
要するに、先送りコンクリート1は、例えばプレミックスされて袋詰めされた取り扱いのしやすい状態の特殊混和材を、建設現場でコンクリート4と水と混合させることで、必要な量だけ製造することができる。従来から先送り材として使用されているモルタルは、レディーミクストコンクリート工場で製造する場合、最低でも0.5m3から1.0m3程度は製造することになるので、使用量が0.1m3程度だと、大半を廃棄することになる。
これに対して、必要量だけ製造できる先送りコンクリート1であれば、廃棄物をゼロにすることが可能で、環境配慮の観点から好ましい。さらに、高炉スラグ微粉末及びスラグ骨材は、他産業から排出される副産物で、利用されなければ廃棄物として処理されるものなので、それらを資源としてセメントや天然骨材の代替に有効利用できれば、廃棄物低減に加えて低炭素(カーボンゼロ)な事業活動となり、さらに環境配慮性に優れている。
例えば、高炉スラグ微粉末と電気炉酸化スラグ細骨材3の合計重量を90重量%以上として、二酸化炭素の排出量を、モルタルを先送り材として使用する場合と比べて70%以上、削減することもできるようになる。
また、セメント及び高炉スラグ微粉末とスラグ骨材とを含有させることで、フレッシュ性状及び力学性状を確保することができるようになり、コンクリート4と混合されても不純物にならず、強度低下など品質の低下を防ぐことができる。
また、スラグ骨材が球形のスラグ細骨材であれば、ボールベアリング効果が発揮されて、圧送負荷が低減し、配管Pの閉塞をより効果的に抑えることができる。このような粒形のスラグ骨材としては、通常であれば廃棄物となってしまう電気炉酸化スラグ細骨材3を有効に活用することができる。
そして、本実施の形態の先送りコンクリート1の製造方法では、ホッパに、コンクリート4と特殊混和材と水とを投入し、ホッパ内で撹拌を行うことで、充分に混合された先送りコンクリート1を容易に製造することができる。
特に、スラグ骨材が球形のスラグ細骨材であれば、ボールベアリング効果が発揮されて、小さい撹拌力でも容易に3つの成分(コンクリート4、特殊混和材、水)を充分に練り混ぜることができる。
例えば、ポンプ車に搭載されているホッパの撹拌機能を使用するだけ、ダマを作ることなく、短時間で撹拌することができる。また、こうした作業であれば、撹拌作業が1回で済み、効率的である。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施の形態では、スラグ骨材として球形の電気炉酸化スラグ細骨材3を使用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、フェロニッケルスラグ、銅スラグ、石炭ガス化スラグなどもスラグ骨材として使用することができる。また、破砕製法による電気炉酸化スラグであっても、スラグ骨材として使用することができる。
1 :先送りコンクリート
2 :セメントペースト(セメント、高炉スラグ微粉末)
3 :電気炉酸化スラグ細骨材(スラグ骨材)
4 :コンクリート
Figure 2023001410000013
Figure 2023001410000014

Claims (6)

  1. セメントと、高炉スラグ微粉末と、スラグ骨材とを含有し、コンクリート及び水と混合されることを特徴とする先送りコンクリート用の特殊混和材。
  2. 前記スラグ骨材は、球形のスラグ細骨材であることを特徴とする請求項1に記載の先送りコンクリート用の特殊混和材。
  3. 前記球形のスラグ細骨材は、風砕製法によって製造された電気炉酸化スラグ細骨材であることを特徴とする請求項2に記載の先送りコンクリート用の特殊混和材。
  4. 前記セメントは1重量%以上10重量%以下、前記高炉スラグ微粉末は10重量%以上80重量%以下、前記スラグ骨材は10重量%以上80重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の先送りコンクリート用の特殊混和材。
  5. 混和材を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の先送りコンクリート用の特殊混和材。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の先送りコンクリート用の特殊混和材を使用した先送りコンクリートの製造方法であって、
    ホッパに、コンクリートと前記特殊混和材と水とを投入する工程と、
    前記ホッパ内で撹拌する工程とを備えたことを特徴とする先送りコンクリートの製造方法。
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