JP2022542317A - ウイルス不活性化のための方法 - Google Patents

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Abstract

本開示の実施形態は、ポリペプチドを含む混合物中のpHを調節するためのシステムおよび方法に関する。pHは、適切な目的、例えば、混合物中のウイルスを不活性化するために調節することができる。方法は、クロマトグラフィーカラムから、例えば3.9より高く例えば8.5未満のpHを有する混合物(例えば、溶出液)を溶出させることを含み得る。方法はさらに、混合物のタンパク質濃度を測定すること、および混合物のpHを測定することのうちの1つ以上を含むことができる。次いで、混合物のpHを目標pHに低下させるために必要な酸の量を、混合物のタンパク質濃度、混合物のpH、またはその両方に基づいて計算することができる。酸添加量を計算した後、酸の一部を混合物に添加してもよく、この場合、酸の一部は目標pHを達成するために十分である。

Description

関連出願の相互参照
本出願は、2019年8月1日に出願された米国仮特許出願第62/881,692号の優先権を主張し、その開示全体を参照により本明細書に組み込む。
技術分野
本開示は一般に、ポリペプチドを含有する混合物中で標的pHを達成するための方法に関する。より具体的には、本開示は、エンベロープを有するウイルス(enveloped viruses)またはウイルス様粒子が不活性化されることを確実にするのを助けるために、ポリペプチドを含有する混合物において標的pHを達成するための方法に関する。
ポリペプチドの製造において、標的分子(例えば、医薬製品(drug product)の標的ポリペプチド成分)を培地から分離する場合がある。例えば、アフィニティークロマトグラフィーなどの分離プロセスが、標的分子調製プロセスの一部として実施され得る。このような分離プロセスの後、ポリペプチドを含有する得られた混合物は、潜在的に望ましくないウイルスまたは医薬製品中に含有するのに望ましくない他の汚染物質を含み得る。したがって、このような汚染物質を除去または不活性化する方法が望ましい。
いくつかの商業規模の標的分子合成プロセスにおいて、プロセス分析技術(Process Analytical Technology)(PAT)が実施され得る。PATは、標的分子の製造プロセスの設計、分析、および制御に関与するシステムおよび方法を含む。PATは、製品の品質に影響を与えるプロセスパラメータを特定し、定期的にパラメータを監視して製品の品質が維持されるようにすることを含む。PATは、標的分子及び医薬製品に関連するリスクを全般的に低減するために、規制機関によって奨励されている。PATは、標的分子および/または製品の品質を改善または維持することができる1つ以上のプロセス条件が満たされていることの統計的検証または確認を提供することができる。
本明細書に開示された方法およびシステムは、ウイルス不活性化を含むポリペプチド調製方法の効率および/または生産性を改善し得る。本明細書に開示された方法およびシステムはまた、医薬製品調製方法の効率および/または生産性を改善することができ、上記で同定された1つ以上の問題に対処することができる。
概要
本開示の実施形態は、混合物、例えば溶出液(eluate)中のウイルスを不活性化する方法に関するものであり得る。この方法は、クロマトグラフィーカラムから、3.9より高く8.5未満のpHで混合物を溶出することを含み得る。この方法は、混合物のタンパク質濃度を測定すること、および、混合物のpHを測定することをさらに含み得る。次いで、混合物のタンパク質濃度に基づいて、混合物のpHを不活性化pH(inactivation pH)に低下させるために必要な酸の量を計算することができる。酸添加量を計算した後、酸の第1の部分であって、酸添加量の68%~99%である酸の第1の部分を、混合物に添加してよい。この方法はさらに、混合物のpHが不活性化pH以下になるように、混合物に酸の追加部分を加えることを含み得る。本開示の方法において、混合物は、不活性化pHで、不活性化時間(inactivation interval)の間保持され得、混合物中のウイルスが不活性化するように構成され得る。
本開示のいくつかの実施形態において、混合物中のウイルスを不活性化するための方法は、標的分子を含む混合物をクロマトグラフィーカラムに装填することを含み得、装填は、約5.0以上約8.5以下のpHで行われ得る。この方法はさらに、クロマトグラフィーカラムから、約3.9より高く約5.0以下のpHで標的分子を含む溶出混合物(eluted mixture)を溶出することを含み得る。この方法はまた、混合物に酸を加えて、混合物と酸との組み合わせを形成することを含み得、この組み合わせは、効果的なウイルス不活性化を示すように構成され、この組み合わせは、約3.8以下約3.0以上のpHを有する。pH確認モデルを用いて、組み合わせの予測pH(expected pH)を予め決定することができる。さらに、組み合わせのpHを測定および/または記録してもよい。予測pHと記録されたpHとの差を計算し、予測pHと記録されたpHとの計算された差に基づいて補正措置をとってもよい。
本開示のさらなる実施形態は、酸性不活性化プロトコル(acidic inactivation protocol)を開発するための方法を含み得る。この方法は、溶出液のプールを作製することを含み得、ここで、溶出液のプールの各溶出液は、タンパク質アフィニティーキャプチャ(protein affinity capture)プロセスにおいて精製された標的分子を含む。この方法は、溶出液のプールの各溶出液のpHおよび/またはタンパク質濃度を測定することを含み得る。さらに、溶出液のプールの各溶出液を滴定して、溶出液を不活性化pHにするために必要な酸の量を決定することができる。次いで、酸の添加量、溶出液タンパク質濃度、溶出液pH、および不活性化pHの間の関係を回帰することができる。
本開示のいくつかの実施形態において、混合物中のウイルスを不活性化するための方法は、混合物のタンパク質濃度を測定することを含み得る。次いで、混合物のタンパク質濃度に基づいて、混合物のpHを不活性化pHに低下させるために必要な酸の量を計算することができる。酸の添加量を算出した後、混合物のpHを低下させるのに必要な酸の量を混合物に添加してもよい。
図面の簡単な説明
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、様々な例示的実施形態を図示し、説明と共に、開示された実施形態の原理を説明する役割を果たす。本明細書に記載される実施形態または実施例の任意の特徴(例えば組成物、処方(formulation)、方法など)は、任意の他の実施形態または実施例と組み合わせることができ、そのようなすべての組み合わせが、本開示によって包含される。さらに、記載されたシステムおよび方法は、任意の単一の態様またはその実施形態にも、そのような態様および実施形態の任意の組み合わせまたは順列にも限定されない。簡潔にするために、特定の置換および組み合わせについては、本明細書で個別に説明および/または図示しない。
図1は、本開示による、溶出液中のウイルスを不活性化するための例示的なプロセスをフローチャート形式で示す。
図2は、本開示による、溶出液中のウイルスを不活性化するための例示的なプロセスをフローチャート形式で示す。および
図3は、本開示による、酸性不活性化プロトコルを開発するための例示的なプロセスをフローチャート形式で示す。
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、またはそれらの他の変形は、非排他的包含をカバーすることを意図しており、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、または装置は、それらの要素のみを含むのではなく、そのようなプロセス、方法、物品、または装置に明示的にリストされていない、または固有でない他の要素を含んでもよい。「例示的(exemplary)」という用語は、「理想的(ideal)」という意味ではなく、「例(example)」という意味で使用される。用語「例えば(for exapmle)」および「(例えば)~など(such as)」ならびにそれらの文法的等価物に関しては、特に明示的に記述されない限り、語句「および限定なしに」が続くものと理解される。
本明細書で使用される用語「約(about)」は、実験誤差による変動を説明することを意味する。数値に適用される場合、用語「約(about)」および「約(approximately)」は、異なる変動が指定されない限り、開示された数値から+/-5%の変動を示し得る。pH値に適用される場合、用語「約(about)」および「約(approximately)」は、+/-0.05の変動を示し得る。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数の基準を含む。
本明細書に開示された全ての数値(開示されたすべての値、限度、範囲を含む)は、異なる変動が指定されない限り、開示された数値から+/-5%の変動を有し得ることに留意されたい。本明細書に開示されたpH値は、+/-0.05の変動を有し得る。さらに、全ての範囲は、終点を含むものと理解され、例えば1センチメートル(cm)~5cmは、1cm、5cmの長さ、及び1cm~5cmの間の全ての距離を含む。
詳細な説明
本開示は、本明細書に開示された特定の組成物、処方、材料製造業者、医薬製品(drug product)、デバイス、システム、実験条件、または特定の方法に限定されず、当業者の範囲内で多くの変形が可能である。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定することを意図するものではない。
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本開示の実施または試験において、任意の適切な方法および材料(例えば、本明細書に記載されているものと類似または同等のもの)を使用することができるが、ここでは特定の方法について説明する。記載されているすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用する「ポリペプチド」という用語は、アミド結合を介して共有結合した約20個を超えるアミノ酸を有する任意のアミノ酸ポリマーを指す。タンパク質は1つ以上のアミノ酸ポリマー鎖(例えばポリペプチド)を含む。したがって、ポリペプチドはタンパク質であり得、タンパク質は、単一の機能性生体分子を形成するために複数のポリペプチドを含有し得る。
翻訳後修飾(post-translational modifications)はポリペプチドの構造を修飾又は変化させ得る。例えば、ジスルフィド架橋(例えばシステイン残基間のS-S結合)は、いくつかのタンパク質において翻訳後に形成され得る。いくつかのジスルフィド架橋は、ポリペプチド、免疫グロブリン、タンパク質、補因子(cofactors)、基質などの適切な構造、機能、および相互作用に必須である。ジスルフィド結合形成に加えて、タンパク質は、脂質化(lipidation)(例えばミリストイル化(myristoylation)、パルミトイル化(palmitoylation)、ファルネソイル化(farnesoylation)、ゲラニルゲラニル化(geranylgeranylation)、およびグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー形成)、アルキル化(例えばメチル化)、アシル化、アミド化、グリコシル化(例えばアルギニン、アスパラギン、システイン、ヒドロキシリジン、セリン、トレオニン、チロシンおよび/またはトリプトファンにおけるグリコシル基の付加)、およびリン酸化(すなわちセリン、トレオニン、チロシン、および/またはヒスチジンへのリン酸基の付加)などの他の翻訳後修飾を受け得る。翻訳後修飾は、疎水性、静電表面特性、またはポリペプチドが関与する表面間相互作用を決定する他の特性に影響し得る。
本明細書中で使用される場合、用語「タンパク質」は、生物療法(biotherapeutic)タンパク質、研究または治療において使用される組換えタンパク質、トラップタンパク質および他のFc融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、抗体様分子、ナノボディ、組換え抗体キメラ、サイトカイン、ケモカイン、ペプチドホルモンなどを含む。対象となるタンパク質(protein-of-interest)(POI)は、単離、精製、または他の方法で調製することが望ましい任意のポリペプチドまたはタンパク質を含むことができる。POIは、抗体を含む、細胞によって産生される標的ポリペプチドまたは他のポリペプチドを含み得る。
本明細書で使用される用語「抗体」は、4つのポリペプチド鎖:ジスルフィド結合によって相互連結された2つの重鎖(H)および2つの軽鎖(L)からなる免疫グロブリンを含む。典型的には、抗体は、100kDaを超える分子量、例えば、130kDa~200kDaなど、例えば、約140kDa、145kDa、150kDa、155kDaまたは160kDaなど、の分子量を有する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略記する)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域はCH1、CH2及びCH3の3つのドメインから成る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここではLCVRまたはVLと略記する)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメインCLを含む。VHおよびVL領域はさらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域とともに散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分けることができる。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、それらは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端まで配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4(重鎖CDRは、HCDR1、HCDR2およびHCDR3と略記することができる;軽鎖CDRは、LCDR1、LCDR2およびLCDR3と略記することができる。
例えば、免疫グロブリンG(IgG)と呼ばれる種類の免疫グロブリンはヒトの血清中によくみられ、2本の軽鎖と2本の重鎖の4本のポリペプチド鎖を含む。各軽鎖はシスチンジスルフィド結合を介して1本の重鎖に結合し、2本の重鎖は2本のシスチンジスルフィド結合を介して互いに結合している。ヒト免疫グロブリンの他のクラスには、IgA、IgM、IgDおよびIgEが含まれる。IgGの場合は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4の4つのサブクラスが存在する。各サブクラスは、その定常領域が異なるため、異なるエフェクタ機能を有し得る。本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、POIは、IgGを含む標的ポリペプチドを含み得る。少なくとも1つの実施形態において、標的ポリペプチドはIgG4を含む。
本明細書において使用される用語「抗体」はまた、完全な抗体分子の抗原結合フラグメントを含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などの用語は、本明細書において使用される場合、抗原に特異的に結合して複合体を形成する任意の天然に存在する、酵素的に入手可能な、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、抗体可変ドメインおよび任意に定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含むタンパク質分解消化または組換え遺伝子工学技術などの任意の適切な標準技術を用いて、完全な抗体分子から例えば誘導され得る。そのようなDNAは、例えば市販の供給源、DNAライブラリー(例えばファージ-抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、および/または合成可能である。DNAは、化学的に、または分子生物学的技術を用いて、例えば、1以上の可変ドメインおよび/または定常ドメインを適切な構成に配置するために、またはコドンを導入するために、システイン残基を生成するために、アミノ酸を修飾するために、付加するために、もしくは削除するために、配列決定および操作され得る。
標的分子(例えば標的ポリペプチド)は、昆虫バキュロウイルス系、酵母系(例えばPichia sp.)、または哺乳動物系(例えばCHO細胞およびCHO-K1細胞のようなCHO誘導体(derivatives))などの組換え細胞ベースの生産系を用いて生産され得る。用語「細胞」は、組換え核酸配列を発現するのに適した細胞を含む。細胞には、原核生物および真核生物(単細胞または多細胞)、細菌(bacterial)細胞(例えば、E.coli、Bacillus spp.、Streptomyces spp.などの株。)、抗酸菌(mycobacteria)細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、P.methanolicaなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、Trichoplusianiなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または、例えばハイブリドーマまたはクアドローマなどの細胞融合体が含まれる。いくつかの実施形態において、細胞は、ヒト、サル(monkey)、類人猿(ape)、ハムスター、ラットまたはマウス細胞であり得る。いくつかの実施形態において、細胞は真核生物であり得、以下の細胞から選択され得る:CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、293 EBNA、MSR 293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC 5、Colo205、HB 8065、HL-60、(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A 431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT 060562、Sertoli細胞、BRL 3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、および上記した細胞に由来する細胞系。いくつかの実施形態において、細胞は、1以上のウイルス遺伝子、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えばPER.C6(TM)細胞)を含み得る。
用語「標的分子」は、本明細書中では、標的ポリペプチド(例えば、抗体、抗体断片、または他のタンパク質もしくはタンパク質断片)、または、製造され、単離され、精製され、および/または医薬製品中に含まれることを意図した他の分子を指すために使用され得る(例えば、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated viruses)(AAV)または治療用の他の分子)。本開示による方法は、標的ポリペプチドに言及することができるが、他の標的分子にも同様に適用することができる。例えば、AAVは、適切な方法(例えば、深層濾過(depth filtration)、アフィニティークロマトグラフィーなど)に従って調製することができ、AAVを含む混合物(例えば、AAVを含む溶出液)は、本開示に従う方法に供され得る。本開示の1つ以上の方法に従う前または後に、AAVを含む混合物は、追加の手順(例えば、標的配列を含まない「空のカセット」またはAAVの除去)に供され得る。
「ウイルス含量(viral content)」という用語は、混合物の定性的記載を指す。例えば、混合物がウイルスまたはウイルス様粒子を含む場合、その混合物はウイルス含量を有する。ある実施形態において、ウイルス含量は、混合物の体積当たりのウイルス粒子の数または感染単位(infectious unit)の数(すなわち濃度)によって定量することができる。用語「ウイルス濃度」は、ウイルス粒子(例えば、活性および不活性ウイルス粒子)の濃度または感染単位の濃度を意味し得る。
ウイルス不活性化のための例示的な方法は、いくつかのウイルスおよびウイルス様粒子を不活性化することが知られているpHを達成するために混合物に酸を添加すること、及び、所定の時間、達成されたpHで混合物を保持することを含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書中の方法は、レトロウイルスおよびレトロウイルス様粒子を不活性化し得る。いくつかの実施形態において、標的分子を含む混合物から標的分子を調製するための方法は、混合物をクロマトグラフィー装置に接触させることを含み得る。このようなクロマトグラフィー装置は、予め製造された装置(例えば、Cadence(TM) BioSMB(Pall Biosciences)、BioSC(登録商標)(novasep)、Varicol(登録商標)(novasep)、Octave(Semba(登録商標)Biosciences))、カスタム製造された装置、手動で組み立てられた装置、または単にタンデムで使用される2つ以上の標準的なバッチクロマトグラフィー装置を含むことができる。
いくつかの実施形態において、標的分子は、ストリッピングバッファ(stripping buffer)をクロマトグラフィー装置(例えばクロマトグラフィーカラム)に接触させることによって、および/または平衡化バッファ(equilibration buffer)をクロマトグラフィー装置に接触させることによって、クロマトグラフィー装置から溶出され得る。いくつかの実施形態において、ストリッピングバッファは、水、アルカリ溶液、またはアルコールを含む溶液を含むことができる。例えば、脱イオン水などの水は、5体積%(vol.%)未満の溶解イオン、1体積%未満の溶解イオン、0.1体積%未満の溶解イオン、または0.01体積%未満の溶解イオンを有し得る。いくつかの実施形態によれば、アルカリ溶液は、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)、NHOHまたは他のアルカリ化合物などの1つ以上のアルカリイオン化合物を含み得る。ストリッピングバッファ中のアルカリ化合物の濃度は、例えば、約0.1N~約1.5N、約0.1N~約1N、約0.1N~約1.5N、約0.5N~約1.5N、約0.1N~約0.8N、約0.1N~約0.6N、約0.1N~約0.5N、約0.1N~約0.4N、または約0.1N~約0.3Nの範囲であり得る。例えば、ストリッピングバッファ中のアルカリ化合物の濃度は、約0.1N、約0.2N、約0.3N、約0.4N、約0.5N、約0.6N、約0.7N、約0.8N、約0.9N、約1N、約1.1N、約1.2N、約1.3N、約1.4N、または約1.5Nとすることができる。アルコールを含むストリッピングバッファは、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール、または他のアルコールを含むことができる。ストリッピングバッファ中のアルコール濃度は、ストリッピングバッファの合計重量に対して、約0.1体積(vol.)%~約30体積%、例えば、0.5体積%~約30体積%、約0.5体積%~約25体積%、約0.5体積%~約25体積%。約0.5体積%~約25体積%、約1体積%~約20体積%、約1体積%~約15体積%、約1体積%~約10体積%、約10体積%~約50体積%、約10体積%~約40体積%、約10体積%~約30体積%、約10体積%~約25体積%、約15体積%~約25体積%、または約20体積%~約25体積%であり得る。例えば、ストリッピングバッファ中のアルコール濃度は、約0.1体積%、約0.5体積%、約1体積%、約2体積%、約3体積%、約5体積%、約10体積%、約15体積%、約20体積%、または約25体積%であり得る。
いくつかの実施形態において、平衡化バッファは、組成がストリッピングバッファと類似であってもよく、または同一であってもよい。他の実施形態では、平衡化バッファは、ストリッピングバッファと比較して組成が変化してもよい。いくつかの実施形態において、平衡化バッファは、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、クエン酸塩、酢酸塩、リン酸塩、硫酸塩、Tris、または他の塩などの1つ以上の塩を含んでもよい。
1つ以上の実施形態において、ウイルス不活性化のための方法は、標的分子を含む混合物がクロマトグラフィー装置(例えば、充填層床(packed bed)アフィニティークロマトグラフィーカラム、疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム、イオン交換クロマトグラフィーカラム、および/またはサイズ排除クロマトグラフィーカラム)から溶出された後に使用され得る。クロマトグラフィー装置への標的分子の装填(loading)は、上流工程に依存して変化し得るが、標的分子を含有する混合物は、一定の体積(volume)でクロマトグラフィー装置から溶出され得る。いくつかの実施形態において、標的分子を含む混合物を、約5.0以上約8.5以下のpH、例えば、約5.5以上約8.5以下、約6.0以上約8.5以下、または約5.0~約6.5などのpHでクロマトグラフィーカラムに装填する。装填の変動の結果として、溶出液(例えば、クロマトグラフィー装置から溶出される溶出液)のタンパク質濃度および/またはpHは変動し得る。この変動により、ウイルス不活性化に必要な酸の量も変動する。
従来の製造プロセスでは、低pHウイルス不活性化は試行錯誤法によって達成され、そこでは、所定量の酸が溶出液に添加され、溶出液および酸混合物のpHが測定され、添加および測定ステップは不活性化pHに達するまで反復的に継続される。過剰な酸の添加から生じる可能性のあるコストと損失のために、そのようなプロセスは保守的であり、少量の酸の添加量と、しばしば時間のスケールでの長い不活性化プロセス時間を伴う。
本開示の態様は、標的ポリペプチドまたは他の標的分子を調製するプロセスに様々な利点を提供し得る。例えば、本明細書に記載される1つ以上の方法および/または数学的モデルを実施して、酸添加量、例えば、混合物(標的分子と、潜在的に望ましくないウイルスまたはウイルス様粒子を含む)を不活性化pHにするのに必要な酸の量を決定することができる。酸添加量にほぼ等しい量の酸を混合物に添加してもよい。以下により詳細に説明するように、酸添加量に相当する酸の量を、1回のボーラス(bolus)として、または酸の2回以上の投与で添加することができる。このような方法でのウイルス不活性化のための酸の投与は、従来の試行錯誤法よりも効率的であり、誤りの影響を受けにくい。
本開示のいくつかの態様において、プロセスの一部として、混合物中のウイルス含量または感染単位の含有量は、最小であるかまたは存在しないことが知られる得るか、または予想され得る。本開示のいくつかのそのような態様において、本明細書に開示されたシステムおよび方法は、有利には、PATの一部として製造プロセスに組み込まれて、例えば、プロセス内の潜在的な変動を減少させ、プロセス標準への準拠のリアルタイムの確認を提供し、および/またはプロセスの完全性の信頼性を高めることができる。
本開示の態様のさらなる利点および利点は、当業者には明らかであろう。
上記で示唆したように、標的分子を1つ以上のクロマトグラフィーおよび/または分離プロセスを用いて調製した後、混合物(例えば、溶出液)を得ることができる。いくつかの実施形態において、例えば、タンパク質濃度、標的分子濃度、pH、またはそれらの組み合わせを含む、混合物の1つ以上の測定を行ってもよい。タンパク質濃度は、例えば、紫外/可視光分光法を含む任意の適切な方法によって測定することができる。いくつかの実施形態において、タンパク質濃度は、ポリペプチドであってもよい標的分子によって特徴的に吸収される波長を用いて測定される。そのような実施形態において、全体のタンパク質濃度は、標的分子(例えば標的ポリペプチド)の濃度とほぼ同等であり得る。いくつかの実施形態において、標的分子を含む混合物は、溶出液の1リットル当たりのグラム数(g/L)で約7.0g/L~約35.0g/L、約7.0g/L以上約20.0g/L以下、約8.5g/L~約18.5g/L、または約10.0g/L~約17.0g/Lのタンパク質濃度を有し得る。
混合物のpHは、任意の適切な方法によって測定することができる。pHの正確で一貫した測定は、低pHによるウイルス蛋白質の不活性化を成功させるために重要である。pHの測定は、温度、使用するpHプローブのタイプ、同じタイプのpHプローブ間の個体差、および/または測定された媒体(medium)とpHプローブとの間の物理的相互作用によって影響され得る。標準化されたpH測定プロセスでも、±0.05pHの変動が一般的である。ポリペプチドの製造又はウイルス不活性化の分野では、±0.05pHのスケールの変動は、作業pH範囲の約20%に相当し、ウイルス不活性化及び/又は工程バリデーションに有害な影響を及ぼす可能性がある。このような変動は、時間の経過とともに複合的になり、機器のドリフトおよびpH測定値のより極端な変動をもたらすことさえある。したがって、いくつかの実施形態では、pHを測定する際にpH測定の変動を考慮することができる。いくつかの実施形態において、示唆されるように、溶出液のpHは、pH測定における変動性を低減または排除することを目的として、標準化された方法によって測定することができる。pH測定方法の標準化は、pHプローブの単一製造業者の使用、pHプローブの単一ロットの使用、所定温度でのpHの測定、測定サンプルマトリクスの標準化などを含むことができる。いくつかの実施形態において、溶出液のpHは、例えば電位差計pH計などのpH計によって測定することができる。いくつかの実施形態において、標的分子を含む溶出液は、約3.9以上約8.5以下のpH、例えば、約3.9~約6.5、約3.9~約5.5、約4.5~約6.5、約4.0~約4.4、約3.9~約4.4、または約4.0~約4.3などのpHを有し得る。本明細書中では、pH値またはpH値の範囲は、±0.05pH単位の変動を有し得る。
混合物(例えば溶出液)、処方、及び/又は医薬製品中のある種のウイルス及びウイルス様粒子(例えば、エンベロープウイルス、レトロウイルス、レトロウイルス様粒子、仮性狂犬病(pseudorabies)、ヘルペスウイルスなど)の存在は、そのような混合物、処方、及び/又は医薬製品の成分、特性、又は使用性に影響を及ぼす可能性がある。例えば、医薬製品中に望まれていないウイルス又はウイルス様粒子が存在すると、製品の安定性に影響を及ぼし、製品の有効期間を短縮し、又は製品が社内規格、公定書又は規制(例:米国食品医薬品局)に適合しなくなる可能性がある。ウイルスやウイルス様粒子の中には、ウイルスを含む製剤の投与により免疫原性反応などの臨床的影響を引き起こすものがある。本開示の実施形態は、ウイルスまたはウイルス様粒子を不活性化して、そのような望ましくない作用のいずれかまたはすべてを減少または排除するのに有用であり得る。例えば、本開示の実施形態は、1以上のポリペプチド精製プロセス(例えば、プロテインAアフィニティーカラムを含む分離プロセス)の後で、ウイルス含量を有する混合物(例えば溶出液)に適用可能であり得る。
いくつかの実施形態において、ウイルス不活性化の前に、混合物の導電率を測定することができる。いくつかの実施形態において、ウイルス不活性化の前に、1つ以上の塩を混合物に添加して、その導電率を調整する(例えば、導電率を増加させる)ことができる。そのような1つ以上の塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ハロゲン化物、および/または1つ以上の他のイオン活性化合物を含み得る。理論によって制限されることなく、導電率を調節するための1つ以上の塩の添加は、標的分子、ウイルスまたはレトロウイルス様粒子の凝集を低減し得る。標的分子、ウイルスまたはレトロウイルス様粒子の凝集は、これらの種の表面が酸とどのように相互作用するかに影響し得る。混合物への塩の添加は、混合物のイオン活性を増加させ、混合物の導電率を増加させ、標的分子またはウイルス凝集を減少させ得る。したがって、いくつかの実施形態において、混合物の導電率は、標的分子またはウイルスの凝集の程度に関連し得る。
いくつかの場合において、本開示の実施形態は、極めて低いウイルス含量(例えば、1mL当たり約0.0001ウイルス粒子または感染単位以下)、または存在しないウイルス含量を有する混合物に適用可能であり得る。クロマトグラフィーおよび他の分離プロセスは、単独または組み合わせて、標的分子を十分に精製および/または分離し、混合物から望まれていないウイルスまたはウイルス様粒子を除去することができる。そのような場合には、本開示による方法は、ウイルスまたはウイルス様粒子が不活性化されていることを追加的に保証し、製品の安定性、製品の安全性、製品の有効性、および内部仕様または規制仕様への適合を保証するために有益であり得る。したがって、本開示の実施形態は、例えば、規制ガイドラインが満たされていることを確実にし、および/または冗長な品質管理を提供するために、既知のウイルス含量のない混合物にも適用することができる。
本明細書に記載のウイルス不活性化プロトコルおよび方法は、AAV(例えば、標的配列を含むAAV)などの特定のタイプのウイルスに悪影響を及ぼすことなく実施することができる。例えば、有利には、本明細書に記載のプロトコルおよび方法は、AAVを劣化させることなく実施することができる。したがって、本明細書に記載の方法は、標的分子としてAAVを含有する混合物中での使用に適していてもよい。
上記で示唆したように、混合物中のウイルスは、混合物を不活性化pHで不活性化時間の間保持することによって不活性化され得る。不活性化pHは、3.8以下3.0以上のpH、例えば、3.35~3.8、3.75以下3.0以上、3.7以下3.0以上、3.65以下3.0以上、3.6以下3.0以上、3.55以下3.0以上、3.5以下3.0以上、3.45以下3.0以上、3.40以下3.0以上、3.35~3.75、3.5~3.8、3.5~3.75、3.5~3.7、3.5~3.6、または3.5~3.65のpHなどであり得る。本明細書中で用いるように、pH値またはpH値の範囲は、±0.05pH単位の変動を有し得る。不活性化pHを高くしすぎると、不活性化工程内でばらつきが生じ、ウイルス不活性化が不十分となるおそれがある。不活性化pHを低くしすぎると、標的分子または他のタンパク質を変性させたり、あるいは望ましくない方法で混合物を変化させたりするリスクがある。
不活性化時間は、混合物が不活性化pHで保持される時間(interval of time)を示す。不活性化時間は、約20分~約90分、例えば、約30分、約45分、約60分、約30分~約45分、約30分~約60分、約30分~約75分、約30分~約90分、約45分~約60分、約45分~約75分、約45分~約90分、約60分~約75分、又は約60分~約95分などであり得る。混合物を不活性化pHで不活性化時間の間保持することにより、混合物中のウイルス活性を低下させ、除去し、または確実に不活性化することができる。低pH環境は、例えば、ウイルスエンベロープタンパク質などのウイルスタンパク質を変性させ得る。変性したウイルスタンパク質はレトロウイルスおよびレトロウイルス様粒子を不活性化させ得、混合物の望ましくないウイルス活性を低下させ得る。
混合物中のウイルス活性の減少は、減少係数(reduction factor)によって定量することができる。減少係数は、以下に示す式1に従って計算することができる。
Figure 2022542317000001

式中、Vはウイルス不活性化前の混合物の体積であり、Cはウイルス不活性化前の混合物の体積当たりのウイルス濃度または感染単位であり、Vはウイルス不活性化後の混合物の体積であり、Cはウイルス不活性化後の混合物のウイルス濃度である。ウイルス不活性化のための方法を含む本開示の種々の実施形態において、2.5以上の減少係数、例えば、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、または5以上などの減少係数が達成される。本明細書において、「有効なウイルス不活性化」は、2.5以上、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、または5以上の減少係数と関連するウイルス不活性化を意味し得る。
1つ以上の実施形態によれば、酸添加量は、混合物のタンパク質濃度および不活性化pHに基づいて算出することができる。例えば、下記の式2に従って酸添加量を算出することができる。
w=Ax+By+C 式(2)
式中、xは1リットル当たりのグラム数(g/L)で表した混合物のタンパク質濃度であり、yは不活性化pHであり、wは混合物の1キログラム当たりの酸のモル数(mol/kg)で表した酸添加量であり、A、B、およびCは定数である。式2の定数Aは、混合物の1グラム-キログラム当たりの酸のリットル-モルの単位(L・mol/g・kg)を有する。定数Aは、0.0003L・mol/g・kg以上0.0006L・mol/g・kg以下、例えば、約0.0003L・mol/g・kg~約0.0005L・mol/g・kg、約0.0004L・mol/g・kg~約0.0006L・mol/g・kg、約0.00035L・mol/g・kg~約0.0005L・mol/g・kg、約0.00035L・mol/g・kg~約0.0006L・mol/g・kg、または約0.0004L・mol/g・kg~約0.00055L・mol/g・kgなどであり得る。式2の定数BおよびCは、混合物の1キログラム当たりの酸のモル数の単位(mol/kg)を有する。定数Bは、-0.1mol/kg以上0mol/kg以下、例えば、約-0.1mol/kg~約0mol/kg、約-0.1mol/kg~約-0.05mol/kg、約-0.05mol/kg~約0mol/kg、または約-0.08mol/kg~約-0.01mol/kgなどであり得る。定数Cは、0.02mol/kg以上0.1mol/kg以下、例えば、約0.02mol/kg~約0.1mol/kg、約0.02mol/kg~約0.05mol/kg、約0.05mol/kg~約0.1mol/kg、または約0.04mol/kg~約0.08mol/kgなどであり得る。
いくつかの実施形態において、酸添加量は、混合物のタンパク質濃度、不活性化pH、および混合物のpHに基づいて計算することができる。例えば、以下に示す式3に従って酸添加量を算出することができる。
w=Ex+Fy+Gz+H 式(3)
式中、xは1リットル当たりのグラム数(g/L)で表される混合物のタンパク質濃度であり、yは不活性化pHであり、zは混合物pHであり、wは混合物の1キログラム当たりの酸のモル数(mol/kg)で表される酸添加量であり、E、F、GおよびHは定数である。式3の定数Eは、混合物の1グラム-キログラム当たりの酸のリットル-モルの単位(L・mol/g・kg)を有し、定数F、G及びHは、混合物の1キログラム当たりの酸のモル数の単位(mol/kg)を有する。定数Eは、0.00005L・mol/g・kg以上、0.0005L・mol/g・kg以下、例えば、約0.00005L・mol/g・kg~約0.0005L・mol/g・kg、約0.0001L・mol/g・kg~0.0005L・mol/g・kg、約0.00005L・mol/g・kg~0.00045L・mol/g・kg、約0.0001L・mol/g・kg~約0.00035L・mol/g・kg、または約0.00035L・mol/g・kg~約0.0005L・mol/g・kgなどであり得る。定数Fは、-0.2mol/kg以上0mol/kg以下、例えば、約-0.1mol/kg~約0mol/kg、約-0.1mol/kg~約-0.05mol/kg、約-0.05mol/kg~約0mol/kg、または約-0.08mol/kg~約-0.01mol/kgなどであり得る。定数Gは、0mol/kg以上0.03mol/kg以下、例えば、約0mol/kg~約0.03mol/kg、約0.001mol/kg~約0.03mol/kg、約0.005mol/kg~約0.3mol/kg、または約0.005mol/kg~約0.025mol/kgなどであり得る。定数Hは、-0.1mol/kg以上、0.1mol/kg以下、例えば、約-0.1mol/kg~約0.1mol/kg、約-0.08mol/kg~約0.08mol-10/kg、約-0.05mol/kg~約0.1mol/kg、または約-0.1mol/kg~約0.05mol/kgなどであり得る。
混合物タンパク質濃度を酸添加量および不活性化pHに関連付ける具体的な式(必要に応じて、混合物pHに依存し得る)は、使用する標的分子および/または酸系によって異なり得る。所定の標的分子および酸系に適用される上記で定義された定数の値は、上記で定義された一般式に従って回帰によって決定することができる。下記の実施例のセクションで説明するように、酸添加量は、上記の定義式に従って混合物タンパク質濃度と強い相関を有することが、予想外に見出される。この予想外に強い相関は、本明細書に記載される一般式およびそれらの導関数をPATに組み込むことを可能にする。
一つ以上の実施形態において、酸添加量は、混合物の1kg当たり0.002モル(mol/kg)~約0.025mol/kgであり、例えば、約0.002mol/kg~約0.025mol/kg、約0.01mol/kg~約0.025mol/kg、約0.002mol/kg~約0.020mol/kg、または約0.005mol/kg~約0.020mol/kgなどである。
いくつかの実施形態において、酸添加量が計算された後、酸を混合物に添加して、混合物を不活性化pHにすることができる。例えば、少なくとも1つの実施形態において、酸添加量に相当する酸のボーラスを混合物に添加して、混合物のpHを不活性化pH以下にすることができる。他の実施形態では、酸の第1の部分が混合物に添加され、次いで、混合物のpHが不活性化pH以下になるように、酸の1つ以上の追加の部分が混合物に添加されてもよい。そのような実施形態において、酸の第1の部分は、酸添加量の68%~99%であり、例えば、約75%~約99%、約80%~約99%、約85%~約99%、約90%~約99%、約85%~約95%、または約90%~約99%などである。
酸の第1の部分は、可能な限り低いpHを有する混合物中の標的分子が第1の部分の添加によって変性されないように配分され得る。酸の追加の部分は、酸の第1の部分の添加後に行われる酸の1回以上の添加(one or more additions)を含み得、例えば、酸の第1の部分の添加後に行われる酸の3回の添加(3 additions)、酸の4回の添加(4 additions)、または酸の5回の添加(5 additions)などを含み得る。酸の1回以上の添加の各々は、酸添加量の0.1%~32%の量、例えば、約0.1%~約30%、約0.1%~約25%、約0.1%~約20%、約1%~約25%、約0.1%~約15%、約0.1%~約10%、約1%~約15%、約1%~約10%、または約0.1%~約5%などの量であり得る。酸の1回以上の添加の各添加は、酸の他の1回以上の添加と同じ量であってもよい。他の実施形態では、酸の各添加は、酸の他の各添加と同じ量である。
いくつかの実施形態において、pHを、酸の第1の部分が混合物に添加された後であるが、酸の追加の部分の添加の前に測定することができる。いくつかのそのような実施形態において、酸の最初の部分が添加された後に測定された混合物のpHは、3.5以上3.75以下であり、例えば、約3.5~約3.75、約3.6~約3.7、約3.5~約3.65、約3.6~約3.75、または約3.5~約3.65などである。本明細書中では、pH値またはpH値の範囲は、±0.02pH単位の変動を有し得る。
酸は、1つ以上の酸溶液の形態で添加することができる。酸溶液は、任意の適切な酸、例えば、HCl、HBr、HPO、HOH、C、HSO、HPO、HNO、CCOH、CHCOH、HClO、HCN、HBO、またはそれらの組み合わせを含み得る。加えて、または代替的に、酸溶液は、例えば、グリシン、アルギニン、酢酸ナトリウム、および/または塩化ナトリウムなどの1つ以上の塩を含み得る。
目的分子を含む混合物に酸添加量を加えた後、生成した混合物は不活性化pH以下のpHを有する。いくつかの実施形態において、形成された混合物のpHは、例えば、それが所望の範囲内にあることを確認するために測定され得る。前述したように、混合物を不活性化pHで不活性化時間の間保持してもよい。混合物を不活性化pHで不活性化時間の間保持した後、ウイルス活性の減少が、例えば、2.5以上、3以上、3.5以上、または4以上の減少因子と等価で生じ得る。混合物を不活性化pHで不活性化時間の間保持した後、混合物のpHが4.5以上8.5以下、例えば、4.5以上8.5以下、5.0以上8.5以下、5.8以上8.5以下、5.9以上8.5以下、6.0以上8.5以下、6.1以上8.5以下、6.2以上8.5以下、6.3以上8.5以下、6.4以上8.5以下などになるように、アルカリ溶液を添加することによって、混合物を滴定することができる。本明細書中では、pH値またはpH値の範囲は、±0.02pH単位の変動を有し得る。アルカリ溶液は、例えば、NaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)、NHOH、NaCHCOおよび/または(HOCHCNHなどの1つ以上の塩基を含んでもよい。
いくつかの実施形態において、混合物は、酸の最初の部分が添加されてから1時間未満、例えば、約50分未満、約45分未満、約40分未満、約35分未満、または約30分未満などの時間で滴定される。
本開示の態様は、組み合わせ(すなわち、混合物と酸との組み合わせ)のpHを予測する関数(function)を決定するための方法も含むことができる。例えば、測定されたタンパク質濃度および/または混合物のpHと、混合物に添加された酸の量とに基づいて、組み合わせのpH(例えば不活性化pH)を予測する関数を決定することができる。このような関数を使用して、処理エラー(例えば、不十分な混合、不十分なサンプリングなど)や機器の不具合(機器誤差、機器ドリフト、pHプローブ異常など)を検出することができる。
いくつかの実施形態において、酸性化された混合物の予測pH(expected pH)は、確認モデルに従って予め決定され得る。確認モデルは、以下に示す式4の形式であり得る。
y=Kx+Lw+Mz+N 式(4)
式中、yは不活性化pHであり、xは1リットル当たりのグラム数(g/L)で表した混合物のタンパク質濃度であり、zは混合物pHであり、wは混合物の1キログラム当たりの酸のモル数(mol/kg)で表した酸添加量であり、K、L、M、Nは定数である。式4の定数Kは1グラム当たりリットルの単位を有し、定数Lは酸の1モル当たりの混合物のキログラム数の単位を有し、定数M及びNは単位なしである。定数Kは、0L/g以上0.03L/g以下、例えば、約0L/g~約0.03L/g、約0.001L/g~約0.03L/g、約0L/g~約0.025g/L、または約0.001g/L~約0.025L/gなどであり得る。定数Lは、-80kg/mol以上-60kg/mol以下、例えば、約-75kg/mol~約-60kg/mol、約-80kg/mol~-約65kg/mol、または約-75kg/mol~約-65kgmolなどであり得る。定数Mは、0以上2.0以下、例えば、約0~約2.0、約0.3~約2.0、約0~約1.7、または約0.3~約1.7など下であり得る。定数Nは、-1.0以上0以下の数、例えば、約-1.0~約0、約-1.0~約-0.1、または約-0.9~約-0.1などであり得る。
いくつかの実施形態において、酸の添加前の混合物のpHおよびタンパク質濃度を測定および/または記録することができる。混合物pH、混合物タンパク質濃度、および酸添加量に基づいて、確認モデルを用いて、酸性化された混合物の予測pHを予め決定することができる。酸性化された混合物の実際のpHを測定し、記録し、および/または予測pHと比較することができる。記録されたpHを予測pHと比較することは、記録されたpHと予測pHとの間の差(例えば、パーセント差)を計算することを含んでもよい。
いくつかの実施形態では、記録されたpHと予測pHとの差が閾値より大きい場合、補正措置が取られてもよい。閾値は、例えば、予測pHから±0.03pH、予測pHから±0.05pH、予測pHから±0.07pH、予測pHから±0.09pH、予測pHから±0.1pH、予測pHから±0.15pH、または予測pHから±0.2pHであり得る。補正措置には、pH計の調整、混合物の組成の調整、プロセスの1つ以上の環境条件の調整、またはこれらの組み合わせが含まれ得るが、これらに限定されない。pHメータの調整は、pHメータを標準化すること、pHメータを再較正すること、pHプローブを洗浄、リセットおよび/または交換すること、参照電極溶液を調整すること、pHメータの一部を交換すること、pHプローブの位置を調整すること、および/またはpHメータの信号対雑音比を変更する他の行為を含み得る。混合物の組成を調整することは、混合物または上流組成物の任意の成分溶液を再配合すること、1つ以上のクロマトグラフィーまたは分離プロセスのプロセス条件または装置部品を変更すること、および/または混合物の材料組成を変更する他の行為を含み得る。プロセスの1つ以上の環境条件を調整することは、混合および/または均質化プロセスおよびシステムを調整すること、プロセスの温度を調整すること、プロセスの湿度を調整すること、プロセスの圧力を調整すること、またはこれらの組み合わせを含み得る。予測されるパラメータからの偏差(deviation)に基づくこのような調整は、PATの一部として組み込むことができる。
上記の式および数学的モデルは、酸性不活性化プロトコルを開発するための方法の一部として作成され得る。酸性不活性化プロトコルを開発するための方法は、混合物(例えば溶出液)のプールを作製することを含み得、ここで、プールの各混合物は、タンパク質アフィニティーキャプチャプロセスにおいて精製された標的分子を含む。例えば、サンプルのプールを、タンパク質アフィニティークロマトグラフィーカラムの溶出液から収集することができる。この方法は、各サンプルのpHおよびタンパク質濃度(例えば、標的分子の濃度)を測定することをさらに含み得る。各サンプルのpHおよびタンパク質濃度を決定した後、各サンプルを滴定して、サンプルを不活性化pHにするのに必要な酸の量を決定することができる。いくつかの実施形態において、不活性化pHは、プールの各サンプルから複数のデータポイントの収集を可能にする、2回以上の滴定の繰り返しが行われ得る十分に広い範囲として定義され得る。他の実施形態では、各サンプルから単一のデータポイントのみを収集することができる。
いくつかの実施形態において、関係(relationship)(例えば数学モデル)は、添加された酸の量、溶出液タンパク質濃度、混合物pH、および/または不活性化pHの間で回帰され得る。この関係は、上述したように、式2または式3に従って回帰することができる。いくつかの実施形態において、酸性不活性化プロトコルを開発する方法は、確認モデルを回帰することをさらに含む。確認モデルは、上述した式4に従って回帰することができる。
図1は、本開示による、混合物中のウイルスを不活性化するための例示的なプロセス100をフローチャート形式で示す。工程101に従って、第1のpH(例えば、3.9より高い)の混合物をクロマトグラフィーカラムから溶出することができる。ステップ102に従って、混合物のタンパク質濃度(例えば標的分子濃度)を、例えば、紫外/可視光分光法または他の方法によって測定することができる。任意に、混合物の導電率および/またはpHを、例えば、電位差計または他の方法を用いて測定することができる。工程103に従って、混合物の導電率を調節するのに十分な量の一つ以上の塩を混合物に添加することができる。工程104に従って、混合物のpHを第2のpH(例えば不活性化pH)に低下させるのに必要な酸の量を計算することができる。この計算は、混合物のタンパク質濃度、混合物のpH、またはこれらの組み合わせに基づいて行うことができる。工程105に従って、酸の第1の部分を混合物に添加することができる。いくつかの実施形態において、酸の第1の部分は、計算された酸添加量に相当する酸のボーラスである。他の実施形態において、酸の第1の部分は、計算された酸添加量としての酸の体積または量の68%~99%であり得る。工程105に従って、任意に、第2の(secondary)酸を、混合物と酸の組み合わせが第2のpH(例えば不活性化pH)以下になるように混合物に添加してもよい。工程106に従って、混合物と酸の組み合わせを、第2のpH(例えば不活性化pH)で、不活性化間隔の間、保持し、溶出液中のウイルスを不活性化し得る。いくつかの実施形態において、
図2は、本開示による、混合物中のウイルスを不活性化するための例示的なプロセス200をフローチャート形式で示す。工程201に従って、標的分子を含む混合物を、第1のpH(例えば、約5.0以上約8.5以下)でクロマトグラフィーカラムに装填し得る。工程202に従って、第2のpH(例えば、約3.9より高く約5.0以下)の溶出混合物(eluted mixture)をクロマトグラフィーカラムから溶出してもよい。工程203に従って、溶出混合物のタンパク質濃度(例えば標的分子濃度)を、例えば、紫外/可視光分光法によって測定し、および/または記録することができる。工程204に従って、任意に、溶出混合物のpHおよび/または導電率を測定してよい。pHは、例えば電位差計を用いて測定し、および/または記録することができる。工程205に従って、混合物の導電率を調節するのに十分な量の一つ以上の塩を混合物に添加することができる。工程206に従って、酸を溶出混合物に添加して、溶出混合物と酸との組み合わせを形成し、その組み合わせが有効なウイルス不活性化を示すように構成することができる。さらに、その組み合わせは、第2のpH以下のpH(例えば、約3.8以下および約3.0以上)を有してもよい。工程207に従って、pH確認モデルを用いて、組み合わせの予測pHが予め決定されてもよい。工程208に従って、組み合わせのpHを測定および/または記録することができる。工程209に従って、組み合わせの予測pHと測定/記録されたpHとの差を計算することができる。工程210に従って、組み合わせの予測pHと測定および/または記録されたpHとの間の計算された差に基づいて、補正措置がとられてもよい。
図3は、本開示による、酸性不活性化プロトコルを開発するための例示的なプロセス300をフローチャート形式で示す。工程301に従って、溶出液サンプルのプールを作製することができ、ここで、溶出液サンプルのプールの各溶出液サンプルは、アフィニティーキャプチャープロセスで精製された標的分子を含む。工程302に従って、溶出液サンプルのプールの各溶出液サンプルのタンパク質濃度(例えば標的分子濃度)を、例えば、紫外/可視光分光法を用いて測定することができる。任意に、溶出液サンプルのプールの各溶出液サンプルのpHを、例えば電位差計を用いて測定してもよい。工程303に従って、各溶出液サンプルのpHを不活性化pHに低下させるのに必要な酸の量を、溶出液サンプルのプールの各溶出液サンプルを滴定することによって決定することができる。工程304に従って、酸の添加量、溶出液タンパク質濃度、溶出液pH、及び/又は不活性化pHの関係を回帰することができる。工程305に従って、必要に応じて、確認モデルを回帰してもよい。
図1~3はそれぞれ、特定の順序の工程を示しているが、実行される工程およびそれらが実行される順序は改変されてもよいことを理解されたい。さらに、工程(例えば、測定および/または記録工程の1つ以上)を、本明細書に開示された任意の方法から追加または除去することができる。さらに、図1~3の各々は、溶出液に関して工程を示しているが、工程は、標的分子を含有する任意の混合物に適用可能であることが理解されるべきである。
以下の実施例は、本質的に限定されることなく本開示を説明することを意図している。本開示は、前述の説明および以下の実施例と一致するさらなる態様および実施形態を含むことが理解される。
以下の実施例において、標的ポリペプチドは、標的ポリペプチド、宿主細胞タンパク質、ウイルス、および他の汚染物質、不純物、および成分を含む混合物から調製された。標的ポリペプチドを、懸濁培養で成長させたチャイニーズハムスター卵巣細胞で調製した。
例(EXAMPLE)1
標的ポリペプチドをプロテインAアフィニティーカラムから溶出し、混合物の複数のサンプルを得た。各混合物サンプルのタンパク質濃度は、紫外/可視分光法によって得られ、混合物の1リットル当たりのタンパク質のグラム数の単位で以下の表1に示される。さらに、各混合物サンプルのpHを測定し、表1に示す。
溶出液のプールは40の溶出液サンプル(すなわち、40の混合物サンプル)を含み、各サンプルをリン酸(HPO)の0.25M溶液を用いて不活性化pH3.35~3.86まで滴定し、酸添加量(例えば、混合物を不活性化pHにするために添加する必要がある酸の量)を決定した。40サンプルのうちの6サンプル(表1に示すサンプル1~6)について、滴定を複数回繰り返して複数のデータポイントを得た。例えば、サンプルNo.1を不活性化pH3.70にする混合物の1キログラム当たり30.89gの酸は1つのデータポイントであり、混合物の1キログラム当たり5.35gの酸をさらに加えると、サンプルNo.1を不活性化pH3.59にする混合物のキログラム当たり36.24gの酸は別のデータポイントである。これらの滴定のためのデータを、酸添加量を混合物のキログラム当たりの酸のグラム数の単位および混合物のキログラム当たりの酸のモル数の単位で、以下の表1に示す。
表1-混合物滴定データ
Figure 2022542317000002

Figure 2022542317000003
例(EXAMPLE)2
表1に示す滴定データを用いて、式2に従って、混合物タンパク質濃度、不活性化pH、および酸添加量の間の関係を回帰した。下記の回帰式(式5)は、決定係数(R)が0.84であると決定された。
w=0.0004532x-0.01135y+0.04213 式(5)
例(EXAMPLE)3
さらに表1に示す滴定データを参照して、式3に従って、混合物タンパク質濃度、混合物pH、不活性化pH、および酸添加量の間の関係を回帰した。下記の回帰式(式6)は、決定係数(R)が0.97であると決定された。予想外に、酸添加量は一般式2および3に示される蛋白質濃度、混合物pHおよび不活性化pHの間の関係と高度に相関した。
w=0.0001986x-0.01162y+0.01510z-0.01692
式(6)
例(EXAMPLE)4
表1に示した滴定データを用いて、一般式4に従って確認モデルを回帰した。下記の回帰式(式7)は、決定係数(R)が0.93であると決定された。また、予想外に、不活性化pHはタンパク質濃度、混合物pHおよび不活性化pHの間の関係と高度に相関した。
y=0.01488x-71.65w+1.094z-0.6727 式(7)
当業者は、本開示の基礎となる概念が、本開示のいくつかの目的を実施するための他の方法およびシステムを設計するための基礎として容易に使用できることを理解するであろう。さらに、本開示の態様は、特定のプロセスにおける特定の工程(例えば、混合物中のウイルス不活性化)に関して記載されているが、当業者は、本明細書に開示されたシステムおよび方法は、他のコンテキスト(例えば、処方された薬物を製造する工程において、クロマトグラフィー工程の前又は溶出液と他の成分との組み合わせの後など、ポリペプチドを含む他の混合物中でのウイルス不活性化)においても適用可能であることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲は、前述の説明によって限定されるものとはみなされない。

Claims (26)

  1. 混合物中のウイルスを不活性化するための方法であって、
    クロマトグラフィーカラムから、3.9より高く8.5未満のpHで前記混合物を溶出させること;
    前記混合物のタンパク質濃度を測定すること;
    混合物のタンパク質濃度に基づいて、前記混合物のpHを不活性化pHに低下させるために必要な酸の量を計算すること;
    酸の第1の部分であって、前記混合物のpHを不活性化pHに低下させるために必要な酸の量の68%~99%である、酸の第1の部分を、前記混合物に添加すること;および
    前記混合物と酸の組み合わせのpHが前記不活性化pH以下になるように、前記混合物に酸の追加部分を加えることを含む、方法。
  2. 前記組み合わせを、前記不活性化pHで不活性化時間の間保持すること;および
    前記不活性化時間の後で、前記混合物に前記酸の第1の部分を加えた後1時間未満で、前記組み合わせをpHが4.5以上8.5以下になるまで滴定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記混合物に前記酸の第1の部分を加える前に、前記混合物のpHを測定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記混合物のpHを前記不活性化pHに低下させるために必要な酸の量が、下記式に従って計算される、請求項3に記載の方法。
    w=Ax+By+C
    (式中、wは混合物の1キログラム当たりの酸のモル数で表した酸の量であり、xは1リットル当たりのグラム数で表した前記混合物の前記タンパク質濃度であり、yは前記不活性化pHであり、A、BおよびCは定数である。)
  5. Aが、約0.0003L・mol/g・kg以上約0.0006L・mol/g・kg以下であり;
    Bが、約-0.1mol/kg以上約0.0mol/kg以下であり;および
    Cが、約0.02以上約0.1以下である、
    請求項4記載の方法。
  6. 前記混合物のタンパク質濃度および前記混合物のpHに基づいて、前記混合物のpHを前記不活性化pHに低下させるために必要な酸の量が計算される、請求項3に記載の方法。
  7. 前記混合物のpHを前記不活性化pHに低下させるために必要な酸の量が、前記混合物の1キログラム当たり約0.002モル~約0.025モルである、請求項1に記載の方法。
  8. 前記不活性化pHが約3.8以下約3.0以上である、請求項1に記載の方法。
  9. 前記混合物の導電率を測定すること;および
    前記混合物の導電率を調節するために十分な量の1つ以上の塩を前記混合物に加えることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  10. 前記クロマトグラフィーカラムが、タンパク質アフィニティーキャプチャプロセスを実行するように構成される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記酸の第1の部分が添加された後、かつ前記酸の追加の部分が添加される前に、前記混合物のpHが約3.5~約3.75である、請求項1に記載の方法。
  12. 混合物中のウイルスを不活性化するための方法であって、
    標的分子を含む混合物であって、pHが約5.0以上約8.5以下である混合物を、クロマトグラフィーカラムに装填すること;
    前記クロマトグラフィーカラムから、前記標的分子を含む溶出混合物であって、約3.9より高く約5.0以下のpHを有する溶出混合物を溶出させること;
    前記溶出混合物にある量の酸を加え、前記溶出混合物と酸との組み合わせであって、効果的なウイルス不活性化を示すように構成され、約3.8以下かつ約3.0以上のpHを有する組み合せを形成すること;
    pH確認モデルを用いて前記組み合わせの予測pHを予め決定すること;
    前記組み合わせのpHを記録すること;
    前記予測pHと前記記録されたpHとの差を計算すること;および
    前記予測pHと前記記録されたpHとの計算された差に基づいて、補正措置をとることを含む、方法。
  13. 前記予測pHと前記記録されたpHとの差が約0.15以上である場合に、前記補正措置がとられる、請求項12に記載の方法。
  14. 前記補正措置が、pH計を調整すること、前記混合物の組成を調整すること、一つ以上の環境条件を調整すること、またはこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
  15. 前記組み合わせが、約3.8以下約3.0以上のpHで約30分間保持される、請求項12に記載の方法。
  16. 前記混合物に前記量の酸を加えた後1時間未満で、前記組み合わせを約4.5以上約8.5以下のpHまで滴定することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
  17. 前記混合物の導電率を測定すること;および
    前記混合物の導電率を調節するために十分な量の1つ以上の塩を前記混合物に加えることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
  18. 前記混合物に前記量の酸を加える前に前記混合物のpHを測定すること;および
    前記混合物のタンパク質濃度を測定することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
  19. 前記pH確認モデルは、下記式を含む、請求項18に記載の方法。
    y=Kx+Lw+Mz+N
    (式中、yは、前記組み合わせのpHであり、xは、1リットル当たりのグラム数で表した前記混合物のタンパク質濃度であり、zは、前記混合物に前記量の酸を加える前の前記混合物のpHであり、wは、溶出液の1キログラム当たりの酸のモル数で表した前記混合物に加えられた酸の量であり、K、L、MおよびNは定数である。)
  20. 混合物の酸性不活性化プロトコルを開発するための方法であって、
    前記混合物の溶出液サンプルのプールであって、前記溶出液サンプルのプールの各溶出液サンプルは、タンパク質アフィニティーキャプチャプロセスで精製された標的分子を含有する、溶出液サンプルのプールを作製すること;
    各溶出液サンプルのpHおよびタンパク質濃度を測定すること;
    前記溶出液サンプルのプールの各溶出液サンプルを滴定して各溶出液サンプルを不活性化pHにするために必要な酸の量を決定すること;
    前記溶出液サンプルのプールの各溶出液サンプルを使用してデータポイントを決定すること;および
    前記データポイントを用いて、前記混合物を不活性化pHにするために必要な酸の量、前記混合物のタンパク質濃度、前記混合物のpH、および前記不活性化pHの間の関係を回帰することを含む、方法。
  21. 確認モデルを回帰することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
  22. 前記溶出液のプールの少なくとも一つの溶出液を用いて、複数のデータポイントを決定することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
  23. 混合物中のウイルスを不活性化するための方法であって、
    前記混合物のタンパク質濃度を測定すること;
    前記混合物のタンパク質濃度に基づいて、前記混合物のpHを不活性化pHに低下させるために必要な酸の量を計算すること;および
    前記混合物のpHを不活性化pHにするために必要な酸の量を混合物に加えることを含む、方法。
  24. pH確認モデルを用いて、前記酸が前記混合物に添加された後に、前記混合物の予測pHを予め決定することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
  25. 酸と前記混合物の組み合わせのpHを記録すること;
    前記予測pHと前記記録されたpHとの差を計算すること;および
    前記予測pHと前記記録されたpHとの間の計算された差に基づいて、補正措置をとることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
  26. 前記量の酸を加える前に:
    前記混合物の導電率を測定すること;および
    前記混合物の導電率を調節するために十分な量の1つ以上の塩を前記混合物に加えることをさらに含む、請求項23に記載の方法。
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