JP2022515615A - 慢性炎症性腸疾患の治療のためのpar-1アンタゴニストの使用 - Google Patents

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Abstract

本発明は、哺乳動物における腸および大腸の慢性炎症性疾患、特にクローン病の予防および/または治療のための、特にボラパキサル、アトパキサールおよび3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノンから選択されるPAR-1アンタゴニストの使用に関する。

Description

本発明は慢性腸疾患の治療の分野に関する。
より詳細には、本発明は、PAR-1アンタゴニスト、およびそのようなアンタゴニストを含有する医薬組成物であって、腸および大腸の慢性炎症性疾患の予防および/または治療のため、特に、そのような疾患に罹患している対象における腸の疼痛を低減するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのものである、PAR-1アンタゴニストおよび医薬組成物に関する。
腸および大腸の慢性炎症性疾患は、一般にIBDと略称される炎症性腸疾患とも呼ばれ、クローン病および出血性直腸結腸炎(haemorrhagic rectocolitis)を含む。
クローン病は、連続した部位でも離れた部位でも消化管の全体を侵す可能性があるが、まずはじめに主に小腸および大腸を侵す。炎症は、腸壁の内側粘膜や腸壁の厚さ全体さえ侵す可能性があり、組織における浮腫、血管の拡張および体液喪失を呈する。クローン病は、一般に20~30歳で発症する若年層の病的状態である。第2の頻発ピークは50~80歳にあり、事例の15%は子供に関係する。男女ともに等しく罹患している。疾患は遍在するが、その発生率は南ヨーロッパにおけるよりも北ヨーロッパにおいて高い。フランスでは、クローン病の発生率は、住民100,000人対して5~6件であり、同じ数の出血性直腸結腸炎が発生する。さらに、罹患率は、マグレブ、アジアおよび南アフリカの国々などのような工業化途上国では指数関数的に増大する。
クローン病の原因は依然として不明である。原因は、おそらく多因子性であり、遺伝性素因-慢性炎症性腸疾患の素因となる遺伝子は、ヒトでは染色体12および16において最近発見されている-および未だ解明されていない環境要因、例えば、引き金となる感染または汚染、が関係している。さらに、タバコの有害な役割は明らかに認められており、それにより再発のリスクが増大する。
出血性直腸結腸炎、または潰瘍性大腸炎は、消化管の遠位端部を侵す、つまり大腸および直腸が常に侵される、慢性炎症性腸疾患である。遺伝的要素は仮説であるが、その病因は不明である。上記疾患は自己免疫疾患として分類される。この疾患は治癒することがなく、生涯の投薬を必要とする。治療の目的は寛解をできるだけ長く持続させることである。その診断は、本質的に、大腸内視鏡検査中の試料採取を伴う細胞診に基づく。
腸および大腸のこれらの慢性炎症性疾患は、患者によって非常に異なる期間および頻度を有する炎症の突発によって発症する。これらの突発は寛解期と交互に起こる。
炎症の突発中、IBDは、ほとんどの場合、腹痛、時に血が混じった頻繁な下痢、または肛門部の疾患(裂溝、膿瘍)を特徴とする。これらの症状は、疾患にいくつかの禁忌を与える。多くの場合、それらは、疲労、食欲不振および発熱、または腸以外(関節、皮膚、眼、肝臓)の症状発現を伴う。患者の約20%では、発作は重篤であり、その強さにより、数日間にわたる入院、絶食および輸液治療が課される。さらに、疾患の進展は、侵された腸部分の狭窄、次いで閉塞または膿瘍を生じる場合がある。これは瘻孔の形成、つまり、腸から始まって別の器官に向かう異常な連絡経路の開口をもたらす可能性がある。これらの合併症は手術を必要とする。IBDは、特に病変が大腸に存在する場合には、大腸癌のリスクの増大に関連している。
IBDの診断は、いくつかの臨床的、生物学的、および医用画像の基準に基づく。臨床症状がIBDを示唆する場合に、生物学的検査が行われる。生物学的検査は、炎症性症候群、IBDに特異的なマーカ、特に抗サッカロマイセス・セレビシエ抗体(anti-Saccharomyces Cerevisiae antibody:ASCA)および抗多核性好中球細胞質抗体(anti-polynuclear neutrophil cytoplasmic antibody:ANCA)の存在の検出を可能にする。消化器内視鏡は、消化管の病変の存在および位置の探索、および試料の採取を可能にする。
IBDに罹患している患者のケアは、疾患の形態および患者自身に関連する多くのパラメータに関わる。IBDの基本的な治療では、現在、5つのカテゴリの医薬が使用されている。これらはサリチラート類、コルチコイド類、免疫抑制剤、生物学的療法および抗生物質である。
サリチラート類の中で、実績のある最も古いものは、スルファサラジンによって代表される。この医薬に関連する望ましくない効果のリスクにより、より許容される誘導体が探された。これらは主にメサラジンおよびオルサラジンである。
病気の進展のある時点においてほぼ必須の通過点であるコルチコステロイド療法は悪評を有する。これは多くの不快な効果の発生に関する懸念のためである。治療は、通常、高用量で開始し、次いで、用法用量は次第に低減される。いずれにせよ、コルチコイド類は医学的モニタリングを必要とする。
免疫系の反応を低減する医薬、すなわち免疫抑制剤は、IBDの治療に使用されることが多くなっている。免疫抑制剤は、クローン病の維持療法の基礎であり、より稀には直腸結腸炎の維持療法の基礎である。免疫抑制剤は、作用の発現に数か月かかる。免疫抑制剤の使用により、いくつかの血液パラメータの定時的なモニタリングが課される。
生物学的療法は、生体内に存在する物質から誘導された生成物の治療的使用からなる。IBDの治療に使用されるこの種の第1の医薬は、インフリキシマブであり、これは保健機関によって現在認可されている唯一の製品である。インフリキシマブは、TNF-アルファに対するキメラ抗体からなる。インフリキシマブは、短期輸液によって投与される。副作用は、感染および過敏症反応が大半を占める。
最後に、抗生物質はIBDの補助療法である。抗生物質のうちの2種が、クローン病の肛門直腸における発症をケアする上で重要な位置を占めており、これらはメトロニダゾールおよびシプロフロキサシンである。しかしながら、双方の化合物とも副作用がないわけではない。
概略的に、消化管をできるだけ迅速に休ませることを目標とする突発の治療と、この寛解をできるだけ長く維持することを目標とする維持療法とは区別される。
現在、IBDのための根治的治療は存在しない。現在の抗炎症薬は、多くの場合、たとえ完璧ではないとしても、疾患の永続的な制御を可能にする。これらの抗炎症薬は、消化管の病変の瘢痕形成を促進することによって、突発の出現を防止し、寛解期を延長する。
有効な治療法が存在しない中で、クローン病に罹患している患者は継続的な医療を必要とする。
さらに、腸上皮の吸収面は、異物および有毒分子を血液中およびリンパ中に通過させる大きな可能性を残す。この機械的バリアの破壊およびこれらの物質の体循環への通過、すなわち上皮の透過性亢進は、多くの病状、ならびに特にクローン病および出血性直腸結腸炎などの慢性炎症性疾患に共通の出発点である。現在、上皮バリアのこのトランスロケーションから保護し、かつ/または損傷した上皮の瘢痕形成のプロセスを促進する治療は存在せず、腸の慢性炎症性疾患の現在の治療は、基質を修復せずに、炎症の突発を低減することを目標としている。
国際公開第2007/147824号 国際公開第03/089428号 国際公開第2009/114773号 米国特許出願公開第2015/0196518号 国際公開第2005/193788号
Vergnolleら, 2004, Journal of Clinical Investigation, 114(10): 1444-1456 Capodannoら, 2012, J. Thromb. Haemost. 10(10): 2006-15 Vergnolle, 2004, in J. Pharmacol, 141, 1264-1274 Vergnolleら, 2004, Journal of Clinical Investigation, 114(10): 1444-1456 Chackalamannilら, 2008, J. Med. Chem. 51: 3061-3064 Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995, Mack Publishing Company Whittleら, 2003, in Methods Mol. Biol., 225, 209-222 Comeraら, 1999, Dig. Dis. Sci. 44: 1448-1457 Augeら, 2013, Eur. J. Pharmacol. 707: 32-40 Choiら, 2010, in J. Biomed. Biotechnol., 2010:943516; doi: 10.1155/2010/943516
本発明は、有効な方法でIBDに対処することができる新たな化合物を提供することを目標とする。
Vergnolleら、2004年、Journal of Clinical Investigation、第114巻(10):第1444~1456頁(非特許文献1)の刊行物は、腸の炎症性疾患におけるPAR-1受容体の役割を記載している。この文書は、特定のPAR-1アンタゴニスト、すなわちL-アリニンアミド-4-メトキシ-N-[[[1-[92,6-ジクロロフェニル-メチル]-3-(1-ピロリジニルメチル)-1H-インドール-6-イル]アミノ]カルボニル]-1-フェニルアラニル-N-(フェニルメチル)-(5)が、炎症現象を低減することによって、マウスの誘発大腸炎モデルにおいて動物の生存率の向上を可能にすることを示している。
まったく驚くべきことに、特定のPAR-1受容体アンタゴニストは、腸および大腸の慢性炎症性疾患ならびに特にクローン病に関わる炎症性現象を低減できるだけでなく、これらの疾患に関連する疼痛の低減、および腸の上皮組織の修復も可能にすることが本発明者らによって発見された。
PAR-1(プロテアーゼ活性化受容体(protease-activated receptor)-1を表す)受容体は、425個のアミノ酸によって構成された、三量体Gタンパク質共役ヘプタ-ヘリカル受容体(trimeric G protein-coupled hepta-helical receptor)である。トロンビンは、アルギニン41とセリン42との間でその細胞外N-末端を切断することによって、PAR-1受容体を活性化する。切断されたペプチドは特定の活性を有さず、受容体の新たなN末端は、細胞表面に向かって折り重なることにより、および細胞外領域と相互作用することにより、アゴニストとして作用する。
PAR-1は、その役割が血管生物学およびアテローム血栓症の分野において確立されているように、低トロンビン濃度において血小板活性化に重要な役割を果たす。PAR-1アンタゴニストは、新たに有望な経口活性抗血栓薬として現れた。この点において、有望な臨床データ(Capodannoら、2012年、J. Thromb. Haemost.、第10巻(10):第2006~15頁(非特許文献2))を提供したボラパキサル(vorapaxar)およびアトパキサール(atopaxar)に言及することができる。その上、ボラパキサルは、2014年に「心筋梗塞または末梢性動脈疾患の病歴を持つ患者における血栓症の事象の低減(reduction of thrombotic events in patients having a myocardial infarction or peripheral arterial diseases history)」に関する効用についてFDAの登録を認められた。別のPAR-1アンタゴニストである3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノンの使用はまた、心臓血管分野において、特に血小板凝集抑制薬として、動脈または静脈血栓症の、安定狭心症の、心律動異常の、心筋梗塞の、高血圧症の、心不全の、脳血管障害の、急性冠動脈症候群の、根治的治療および予防的治療の双方において、従来技術に記載されており、特に国際公開第2007/147824号(特許文献1)の文書によって示されている。
消化管におけるPAR受容体、および特にPAR-1受容体の発現は、文献、特にVergnolle、2004年、J. Pharmacol、第141巻、第1264~1274頁(非特許文献3)の刊行物に記載されている。
しかしながら、この刊行物、または一般に従来技術、特にVergnolleら、2004年、Journal of Clinical Investigation、第114巻(10):第1444~1456頁(非特許文献4)の前述の刊行物に記載されている研究では、本発明者らがどのように今回発見したかのように、これらの疾患の状況に関わる疼痛および腸上皮における損傷に関して、この受容体に特異的であるアンタゴニストの役割は全く示唆されていなかった。
よって、第1の態様によれば、本発明は、ボラパキサル、PAR-1受容体に対してアンタゴニスト活性を有するボラパキサル異性体、アトパキサール、3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノン、およびそれらの薬学的に許容される塩によって構成される群において選択されるPAR-1アンタゴニストであって、対象における腸および大腸の慢性炎症性疾患の予防および/または治療に使用するためのものであり、特に、腸および大腸の慢性炎症性疾患に罹患している前記対象における腸の疼痛を緩和するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのものであるPAR-1アンタゴニストに関する。
特に、この対象は、哺乳動物、例えば、人類以外の哺乳動物である。好ましくは、対象は人間である。
治療とは、本説明では、疾患の根治的治療(curative treatment)を意味し、より詳細には、疾患の症状のうちの少なくとも1つの進行の低減および/もしくは阻害、寛解期の増大、ならびに/または発作の回数もしくはそれらの頻度の低減を意味する。特に、本発明によるPAR-1アンタゴニストは、とりわけ、有効な方法で疾患に関連する疼痛症状を緩和することを可能にする。
予防とは、疾患の出現を低減し、完全に回避さえするということと理解されることを意味する。
「上皮組織を修復する」とは、当業者にとっては従来のように、少なくとも部分的に、腸上皮の透過性亢進を低減するということ、および腸の機構を少なくとも部分的に再建するということを意味する。
PAR-1受容体のアンタゴニスト(PAR-1アンタゴニストとも称される)とは、本説明では、それ自体は従来の方法で、検討される対象の種のPAR-1受容体と相互作用し、その天然リガンドの作用、トロンビンの作用、またはプロテアーゼによる作用に対抗する化合物を意味する。一般に、PAR-1アンタゴニストは、PAR-1受容体との直接的な相互作用によって作用して、PAR-1受容体の活性化を阻止する。
特に、本発明は、治療を必要とする、つまり腸および大腸の慢性炎症性疾患の1つ以上に罹患している対象におけるこれらの疾患の治療のため、より詳細には、この対象において腸の疼痛を低減するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのPAR-1アンタゴニストに関し、前記PAR-1アンタゴニストは、治療上有効な量で前記対象に投与される。
本発明によって標的とされる腸および大腸の慢性炎症性疾患は、クローン病または出血性直腸結腸炎であってもよい。
上記に示したように、ボラパキサル、アトパキサール、および3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノンは、既知のPAR-1アンタゴニストである。これらの治療的使用は、特に有効な方法で、IBDを予防および治療することを可能にし、これは従来技術には記載も示唆もされていない。
ボラパキサルは、エチルN-[(1R,3aR,4aR,6R,8aR,9S,9aS)-9-[(E)-2-[5-(3-フルオロフェニル)ピリジン-2-イル]エテニル]-1-メチル-3-オキソ-3a,4,4a,5,6,7,8,8a,9,9a-デカヒドロ-1H-ベンゾ[f][2]ベンゾフラン-6-イル]カルバマート(SCH-530348、CAS番号618385-01-6)とも呼ばれ、式(I)を有する。
Figure 2022515615000001
この化合物は国際公開第03/089428号(特許文献2)の文書に特に記載されている。一般に、この化合物は、硫酸塩の形態にある。
ボラパキサル異性体とは、ボラパキサルと同一の化学式を有し、かつボラパキサルのそれとは異なる、その不斉炭素における異性体型の任意の可能な組み合わせを有する任意の分子であると理解されるべきである。異性体の混合物から出発して、当業者にとってそれ自体は従来の精製法によって、各々の特定の異性体を得ることができる。例えば、PAR-1受容体に対してアンタゴニスト活性を有するボラパキサルの異性体は、Chackalamannilら、2008年、J. Med. Chem.、第51巻:第3061~3064頁(非特許文献5)の刊行物に記載された化合物SCH 530348である。
ボラパキサルのあらゆる可能な異性体中で、どれがPAR-1受容体に対してアンタゴニスト活性を有しているかを判断することは、当業者の技量内にある。この目的のために、当業者は、Chackalamannilら、2008年(非特許文献5)の前述の刊行物に記載されているように、特に、PAR-1アゴニストであるトロンビンに対するタンパク結合試験を行うことができる。
アトパキサール、または1-(3-tert-ブチル-4-メトキシ-5-モルホリン-4-イルフェニル)-2-(5,6-ジエトキシ-4-フルオロ-3-イミノ-1H-イソインドール-2-イル)エタノン(E5555、SCH-602539、CAS番号751475-53-3)は式(II)を有する。
Figure 2022515615000002
3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノンは、式(III)を有する。
Figure 2022515615000003
薬学的に許容される塩とは、本説明では、それが対象、特に哺乳動物に投与された場合に、副作用、アレルギーを引き起こす作用、または他の望ましくない反応を生じない種を対イオンとして有する前記化合物の任意の塩を意味する。
本発明によるPAR-1アンタゴニストの任意の非毒性の従来の塩は、有機酸から形成されたか無機酸から形成されたかにかかわらず、本発明に従って使用され得る。例として、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸などの無機酸から誘導された塩、および酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ステアリン酸、乳酸などのような有機酸から誘導された塩に言及することができる。
これらの塩は、それ自体は従来の任意の化学的手法に従って、本発明によるPAR-1アンタゴニストおよび対応する酸から合成されてもよい。
PAR-1アンタゴニストは、それ自体で使用されてもよいし、または、例えば水中もしくはエタノール中における、溶媒和物の形態で使用されてもよい。
本発明の別の態様は、活性成分としてPAR-1アンタゴニストと、少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤とを含有する医薬組成物であって、PAR-1アンタゴニストは、ボラパキサル、PAR-1受容体に対してアンタゴニスト活性を有するボラパキサル異性体、アトパキサール、3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノン、およびそれらの薬学的に許容される塩によって構成される群において選択され、この医薬組成物は、対象における腸および大腸の慢性炎症性疾患、および特にクローン病の予防および/または治療のために、より詳細には、腸および大腸の慢性炎症性疾患に罹患している前記対象における腸の疼痛を緩和するため、および/または腸の上皮組織を修復するために、医薬として使用するためのものである、医薬組成物に関する。
特に、この対象は、哺乳動物、例えば人類以外の哺乳動物であってもよいし、または好ましくは人間であってもよい。
PAR-1アンタゴニストに加えて、本発明による医薬組成物は任意の薬学的に許容される添加剤を含有してもよい。
本明細書において薬学的に許容されるとは、添加剤が、哺乳動物、特にヒトに投与される場合に、副作用、アレルギーを引き起こす作用、または他の望ましくない反応を有さないことを意味する。
そのような添加剤は、希釈剤、補助剤、もしくは医薬を構成するためのそれ自体は従来の任意の他の物質、例えば、保存剤、フィラー、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、抗菌剤もしくは抗真菌剤、もしくは腸および消化器官の吸収および再吸収などを遅延させることができる薬剤など、またはこれらの混合物のうちのいずれか1つであってもよい。
本発明による医薬組成物は、本発明によるPAR-1アンタゴニストとの相乗効果で作用するか、またはしない、1種または数種の他の活性物質、例えば鎮痛物質、をさらに含有してもよい。
本発明による医薬組成物は、任意の剤形によって、特に、哺乳動物および特に人間における投与に適した形態によって、調剤されてもよい。
本発明による医薬組成物は、対象に対して、経口経路、舌下経路、皮下経路、筋肉内経路、静脈内経路、経皮的経路、局所経路、または直腸経路で投与され得る。この場合、活性物質は、従来の医薬担体と混合された単一体の形態で投与されてもよい。適当な単一体の形態は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、および経口液剤または懸濁剤などの経口投与のための形態、舌下および頬側投与のための形態、皮下もしくは経皮的投与、局所的投与、筋肉内投与、静脈内投与、鼻腔内投与、または眼内投与のための形態、および膀胱内投与、壁内投与、または直腸投与のための形態を含む。
好ましくは、本発明による医薬組成物は、対象に経口投与される。その場合、本発明による医薬組成物は、そのような経口投与に適した剤形を有する。この剤形は、それ自体は従来のものであってもよい。
本発明による医薬組成物は、固体であってもよく、例えば、錠剤、カプセルまたは細粒の形態であってもよい。
特に、錠剤は、活性物質を、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴム、シリカなどのような薬学的に適合性の賦形剤と混合することによって得られてもよい。錠剤は、ショ糖もしくは他の適当な材料で被覆されているか、または錠剤が持続性もしくは遅効性の活性を有するように、ならびに錠剤が好ましくは腸および大腸において所定量の活性物質を継続的に放出するように、処理されていてもよい。
他の場合には、本発明による医薬組成物は、活性物質を希釈剤と混合し、得られた混合物を軟質カプセルまたは硬質カプセルに組み込むことにより得られたカプセル剤の形態であってもよい。
特に水分散性の、粉末および顆粒は、活性物質を分散剤、湿潤剤および/または沈殿防止剤、ならびに矯味剤または甘味料と混合することによって形成され得る。
これに代わって、本発明による医薬組成物は、流体形態、特に、甘味料、防腐剤、ならびに香味料剤および適切な着色剤と共に活性成分を含有するシロップまたはエリキシルの形態であってもよい。
他の場合には、本発明による医薬組成物は、対象に直腸経路によって投与されてもよい。その場合、本発明による医薬組成物は、直腸温度で融解するバインダー、例えば、カカオバターまたはポリエチレングリコール類で調製された、例えば、ゲル、クリーム、粉末、懸濁液、溶液、フォームまたは坐薬の適した剤形を有する。
他の場合には、本発明による医薬組成物は、非経口(静脈内、筋肉内、皮内、皮下)経路、鼻腔内経路、眼内経路、膀胱内経路、または壁内経路によって対象に投与されてもよい。その場合、本発明による医薬組成物は、薬学的に適合性の分散剤および/または湿潤剤を含有する、例えば、水性懸濁液、等張食塩水液または滅菌した注射剤の適した剤形を有する。
他の場合には、活性物質は、場合により1種または数種の付加的な担体とともに、マイクロカプセルの形態に調剤されてもよい。
各々の選択された特定の投与形態に適切な製剤は、当業者には知られており、例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、第19版、1995年、Mack Publishing Company(非特許文献6)の著作物に記載されている。
好ましくは、本発明による医薬組成物中のPAR-1アンタゴニストの濃度は、各投与において、望ましい治療反応、特に、望ましいレベルの腸の疼痛の低減および/または望ましいレベルの腸の上皮組織の再建を得るために有効な量のこのアンタゴニストを対象に投薬するように選択される。特定の対象に対して特異的なPAR-1アンタゴニストの治療上有効な用量レベルは、実際の病状およびその重篤度、選択された投与経路、対象の体重、年齢、性別および全体的な健康状態、治療期間、併用される可能性のある医薬、治療される個人の感受性などのような多くの要因によって変化する。
したがって、最適な用法用量は、専門家が関連すると考えるパラメータにより、専門家によって決定されるべきである。
有効用量は大幅に変化する可能性があるが、本発明による活性物質の1日用量は、1回または複数回投与で、好ましくは1単回投与で、24時間毎に0.1mg~1000mg、好ましくは24時間毎に1~100mg、好ましくは24時間毎に1~10mgに及び得る。
好ましくは、本発明による医薬組成物の投与は、疾患の診断の時点で至急、好ましくは急性事象後の最初の12か月以内に、開始する。
本発明はまた、対象における腸および大腸の慢性炎症性疾患、特にクローン病を予防および/または治療する方法に関して示され、特に、腸および大腸の慢性炎症性疾患に罹患している対象における腸の疼痛を緩和するため、および/または腸の上皮組織を修復するための方法に関して示され得る。特に、対象は、哺乳動物であってもよく、好ましくは人間であってもよい。この方法は、治療上有効な量の、上記で定義したようなPAR-1アンタゴニスト、特にボラパキサル、もしくはその薬学的に許容される塩のうちの1種、または治療上有効な量の、上記で定義したようなPAR-1アンタゴニストと少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤とを含有する医薬組成物を前記対象に投与することを含む。
この方法は、PAR-1アンタゴニストおよび/またはそれを含有する医薬組成物の使用に関して上述した特徴のうちの1つまたはいくつかを有し得る。
本発明の実施形態において、活性物質として上記で定義したようなPAR-1アンタゴニストと、少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤とを含有する本発明による医薬組成物は、経口投与に適した固形剤形を有し、PAR-1アンタゴニストは腸溶性コーティングで覆われたコアに含まれていてもよい。
腸溶性とは、本説明では、それ自体は従来の方法で、このコーティングが、腸および大腸に到達する前における活性物質の任意の放出を防止し、それにより、特に、活性物質と胃粘膜との間の任意の直接的な接触を防止することを意味する。よって、腸溶性コーティングは、高酸度を有する腸管の上部では分解されず、腸溶性コーティングは、腸のpHが5~7に及ぶ値まで次第に増大する遠位回腸および大腸において活性物質の放出を本質的に可能にする。
例えば、本発明による医薬組成物は、親水性マトリックス中に活性物質の均質分散物を含有するカプセルの形態であってもよく、親水性マトリックスは、例えばセルロース誘導体を含み、その全体が、例えば、エチルセルロースに基づくか、またはアクリル酸およびメタクリル酸エステルから誘導されたポリマー、例えばEudragit(登録商標)という商品名で商品化されたポリマーなどに基づくコーティングで覆われるコアを形成する。
例えば、そのようなカプセルは、1~10mg、例えば約2.5mgのPAR-1アンタゴニストを含有してもよい。例えば、カプセルは、1日当たり1カプセルの割合で、経口投与されてもよい。
経口投与用であり、活性物質の腸溶放出を目的とした本発明による剤形の例は、特に国際公開第2009/114773号(特許文献3)、米国特許出願公開第2015/0196518号(特許文献4)、または国際公開第2005/193788号(特許文献5)の文書に記載されており、これらの文書の教示は、本発明によるPAR-1アンタゴニストに置き換え可能である。
本発明は、腸および大腸の慢性炎症性疾患の治療および/または予防のための、特に、腸および大腸の慢性炎症性疾患、特にクローン病に罹患している対象における腸の疼痛を緩和するため、および/または腸の上皮組織を修復するための医薬を製造するための、ボラパキサル、PAR-1受容体に対してアンタゴニスト活性を有するボラパキサル異性体、アトパキサール、3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノン、およびそれらの薬学的に許容される塩によって構成される群において選択されるPAR-1アンタゴニストの使用に関しても示されている。
この使用は、本発明によるPAR-1アンタゴニストおよび医薬組成物に関して前述した特徴のうちの1つ以上を満たし得る。
本発明の特徴および利点は、図1~図12に基づいて、単に例示を目的として提供され、本発明を限定しない以下の実施の例を考慮すると、明らかになるであろう。
TNBSによって大腸炎を誘発したラットの体重の経時的進展(Δweight)を、大腸炎誘発後、未治療のラット(「TNBS」)、プレドニゾロンで毎日治療したラット(「TNBS+Pred」)、およびボラパキサルで毎日治療したラット(「TNBS+VX」)について示すグラフであり、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表す。 大腸炎をTNBSによって誘発したラットの体重の経時的進展(Δweight)を、大腸炎誘発後、未治療のラット(「TNBS」)、プレドニゾロンで毎日治療したラット(「TNBS+Pred」)、および本発明による化合物CSIで毎日治療したラット(「TNBS+CSI」)について示すグラフであり、CSIは10mg/kg/日または40mg/kg/日の用量で投与し、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表わす。 TNBSによって大腸炎を誘発したラットのDAIスコアの経時的進展を、大腸炎誘発後、未治療のラット(「TNBS」)、プレドニゾロンで毎日治療したラット(「TNBS+Pred」)、およびボラパキサルで毎日治療したラット(「TNBS+VX」)について示すグラフであり、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表す。 大腸炎をTNBSによって誘発したラットのDAIスコアの経時的進展を、大腸炎誘発後、未治療のラット(「TNBS」)、および本発明による化合物CSIで毎日治療したラット(「TNBS+CSI」)について示すグラフであり、CSIは10mg/kg/日または40mg/kg/日の用量で投与し、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表す。 大腸炎誘発後7日目の、TNBSによって大腸炎を誘発したラットの大腸壁の厚さを未治療のラット(「TNBS」)、プレドニゾロンで毎日治療したラット(「TNBS+Pred」)、ボラパキサルで毎日治療したラット(「TNBS+VX」)について示すグラフであり、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表す。 大腸炎誘発後7日目の、TNBSによって大腸炎を誘発したラットにおける肉眼的損傷スコアを未治療のラット(「TNBS」)、プレドニゾロンで毎日治療したラット(「TNBS+Pred」)、ボラパキサルで毎日治療したラット(「TNBS+VX」)について示すグラフであり、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表す。 大腸炎誘発後7日目の、TNBSによって大腸炎を誘発したラットにおける肉眼的損傷スコアを未治療のラット(「TNBS」)、プレドニゾロンで毎日治療したラット(「TNBS+Pred」)、本発明による化合物CSIで毎日治療したラット(「TNBS+CSI」)について示すグラフであり、CSIは10mg/kg/日または40mg/kg/日の用量で投与し、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表す。 大腸炎誘発後7日目の、TNBSによって大腸炎を誘発したラットにおけるミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を未治療のラット(「TNBS」)、プレドニゾロンで毎日治療したラット(「TNBS+Pred」)、ボラパキサルで毎日治療したラット(「TNBS+VX」)について示すグラフであり、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表す。 大腸炎誘発後7日目の、TNBSによって大腸炎を誘発したラットにおけるミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を未治療のラット(「TNBS」)、プレドニゾロンで毎日治療したラット(「TNBS+Pred」)、本発明による化合物CSIで毎日治療したラット(「TNBS+CSI」)について示すグラフであり、CSIは10mg/kg/日または40mg/kg/日の用量で投与し、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表す。 大腸炎誘発後7日目の、ラットにおけるTNBS誘発侵害刺激反応の進展をフォン・フレイ・フィラメントの質量の関数として、未治療のラット(「TNBS」)およびプレドニゾロンで毎日治療したラット(TNBS+「Pred」)について示したグラフであり、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表す。 大腸炎誘発後7日目の、ラットにおけるTNBS誘発侵害刺激反応の進展をフォン・フレイ・フィラメントの質量の関数として、未治療のラット(「TNBS」)およびボラパキサルで毎日治療したラット(「TNBS+VX」)について示したグラフであり、対照は大腸炎を誘発させていない未治療のラットを表す。 傷が形成され、その傷を異なる濃度のボラパキサルまたは賦形剤単体(「対照」)と接触させたヒト大腸の上皮細胞について、a/傷害後4時間、b/傷害後22時間、およびc/傷害後28時間における傷害面の割合を表すグラフである。
実施例1:ラットの炎症性腸疾患モデルにおけるPAR-1アンタゴニストの潜在的な治療効果の評価
この研究の目的は、ウィスター系の雄の実験用ラットでの2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘発炎症性腸疾患モデルにおいて、2種類のPAR-1アンタゴニスト、すなわち、ボラパキサルおよび3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノン(以下、CSIと称する)の有効性を評価することである。このモデルはWhittleら、2003年、Methods Mol. Biol.、第225巻、第209~222頁(非特許文献7)の刊行物に記載されている。
この誘発性大腸炎モデルにおいて、炎症反応は、毎日測定され、TNBSの結腸内(intra-colonical)投与7日後には十分に確立される。
以下の異なるパラメータを測定する:ラットの体重、疾患活動指数(disease activity index)(DAIスコア)によって評価される糞便中における血液の存在および下痢、疼痛の強度(フォン・フレイ・フィラメント(Von Frey filament)法により3日目および7日目に測定して評価)。
ラットを治療開始後7日目に屠殺し、肉眼的損傷、浮腫、および炎症のマーカであるミエロペルオキシダーゼ(MPO)を定量化する。
実験計画
PAR-1アンタゴニストを用いた実験は、ボラパキサルおよびCSIに関する2つの研究でそれぞれ行う。
大腸炎は、肛門から8cm近位へ挿入したカテーテル(ポリエチレン(PE)-60)を通じた2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)(50%エタノール/NaCl溶液0.25mL中に30mgのTNBS)の結腸内投与によって誘発する。
10匹のラットの4つの群に、TNBSの結腸内投与、ならびに、2.5mg/kg/日の用量でのボラパキサルの経口治療、または10mg/kg/日および40mg/kg/日の用量でのCSIの経口治療、または3mg/kg/日の用量でのプレドニゾロン(従来技術によりIBDの治療に提案される化合物)の経口治療を受けさせる。経口治療はTNBSの結腸内投与の1時間前に開始する。
負の比較例として、10匹のラットの1群に、TNBSの結腸内投与を受けさせ、ボラパキサル賦形剤(リン酸緩衝食塩水-PBS)、またはCSI賦形剤(1%のカルボキシメチルセルロース-CMC)を毎日経口投与する。
さらに、6匹の対照ラットの1群には、TNBSの代わりにNaClの結腸内投与を受けさせる。
第1の研究について、ボラパキサルを使用して、以下の表1に示すように4群のラットを治療する。
Figure 2022515615000004
第2の研究について、CSI化合物を使用して、以下の表2に示すように5群のラットを治療する。
Figure 2022515615000005
DAIスコアは下記の通りに決定する。疾患の進行は毎日評価する。排泄物の硬さ、ならびにHemoccult(登録商標)紙テストで評価した糞便中における血液の存在を、以下の表3の重篤度スケールによってそれぞれ定量化した。得られた値を合計して、DAIスコアを得る。
Figure 2022515615000006
肉眼的損傷スコアは、Comeraら、1999年、Dig. Dis. Sci.、第44巻:第1448~1457頁(非特許文献8)の刊行物に記載されたプロトコルに従って下記のように評価する。大腸炎の誘発後7日目、ラットを二酸化炭素CO2吸入によって屠殺し、大腸(肛門から盲腸まで)を取り出し、肉眼的損傷を以下の表4に示す観測されたパラメータに従って評価して、肉眼的損傷スコアを決定する。
Figure 2022515615000007
結果
TNBS誘発大腸炎のこのモデルでは、研究の開始時点で、下痢および糞便内における血液の存在(DAI)などの重要かつ代表的な臨床症状が現れる。その後、いくらかの日常的な慢性性が確立され、これを異なるパラメータによって以下で評価する。
ラットの体重の経時的進展を、ボラパキサルについては図1に示し、CSIについては図2に示す。これらの結果は、毎日の体重が増加している大腸炎の注入を受けていない未処理のラット(「対照」)と比較して、TNBS(「TNBS」)注入後1日目の時点で、有意な体重の減少が見られることを示している。ボラパキサルは2日目時点で、この体重の減少を有意に低減する。CSIおよびプレドニゾロンは、この体重減少を緩和する。
DAIスコアの経時的進展をボラパキサルについては図3に示し、CSIについては図4に示す。
大腸炎の誘発は、未処理のラット(「対照」)の群と比較して、TNBS(「TNBS」)で処理した動物における下痢および糞便中の血液の存在(DAIスコア)などの、ラットにおける様々な重篤な臨床的症状を引き起こす。これは、TNBSの投与が大腸炎のパラメータのすべてを再現することを明らかに示している。
3mg/kg用量のプレドニゾロンの連日経口投与は、すべての観察時点において、疾患活動指数(DAI)の増大を防止してはいない。この結果は、TNBSで処理したラットが高度に侵され、これらのラットの症状を改善することが困難であることを証明している。
反対に、2.5mg/kgのボラパキサル、または10mg/kgのCSI化合物の連日投与は、7日目において疾患活動指数を有意に低減する。疾患活動指数は、賦形剤群(「TNBS」)と比較して、2.5mg/kgのボラパキサルによる治療の1日目時点で有意に低減される。これらの結果は、本発明によるPAR-1アンタゴニストがこのモデルにおいて大腸炎のパラメータを低減することを明らかに示している。
さらに、大腸炎誘発は浮腫の出現を生じ、これは、大腸壁の組織の肉眼的厚さの測定により定量化される。
組織の厚さに対するボラパキサルの効果を図5に示す。
観察できるように、3mg/kg用量のプレドニゾロンの連日経口投与は、浮腫の出現を防止していない。ここで再び、この結果は、TNBSが投与されたラットが高度に侵されており、これらのラットの症状を改善することが困難であることを示している。
反対に、2.5mg/kgのボラパキサルの連日投与は、7日目において、この浮腫の出現を有意に低減する。よって、腸の組織における浮腫の出現を表す大腸壁の厚さは、賦形剤群(「TNBS」)と比較して、2.5mg/kgのボラパキサルによる治療で有意に低減されている。
炎症性パラメータに対するPAR-1アンタゴニストの効果は、肉眼的損傷スコアの決定、およびミエロペルオキシダーゼ(MPO)マーカの活性の定量化により評価する。
肉眼的損傷スコアに対する効果を、ボラパキサルについては図6に示し、CSIについては図7に示す。
MPO活性に対する効果は、ボラパキサルについて図8に示し、CSIについて図9に示す。
TNBS(「TNBS」)の投与開始後7日目、肉眼的損傷スコアは、未処理のラット(「対照」)で得られたものと比較して有意に高い。TNBSで処理したラットの大腸の肉眼的検査は、その大腸が重篤な紅斑、ならびに浮腫および潰瘍の存在を有することを示す。
顆粒球に主に発現するミエロペルオキシダーゼ(MPO)は炎症のマーカである。白血球浸潤に関連した粘膜の病変の存在により、MPO活性の上昇が生じる。
賦形剤群(「TNBS」)と比較して、3mg/kgでのプレドニゾロンによる治療は、肉眼的損傷スコアを有意に低減し、同様に、これらのラットの大腸の肉眼的検査により、紅斑、浮腫および潰瘍が、賦形剤群(「TNBS」)において観察されたものほど重篤ではないと結論付けることができる。
賦形剤群(「TNBS」)と比較して、試験した用量でのボラパキサルおよびCSIによる治療は、肉眼的損傷スコアを有意に低減する。大腸の肉眼的検査もまた、紅斑、浮腫および潰瘍の有意な減少を示す。
同様に、試験した用量でのプレドニゾロンおよび本発明によるPAR-1アンタゴニストによる治療は、賦形剤群(「TNBS」)と比較して、MPO活性を有意に低減する。40mg/kg/日の用量のCSI化合物において、この活性の有意な低減が観察される。
これらの結果は、TNBS誘発大腸炎が炎症性パラメータ(肉眼的損傷およびMPO活性)の有意な増大を引き起こし、この増大は試験したPAR-1アンタゴニストによって有意に低減されることを明らかに示している。
疼痛の強度は、Augerら、2013年、Eur. J. Pharmacol.、第707巻:第32~40頁(非特許文献9)の刊行物に記載された実験計画に従って、1日目、3日目および7日目に、フォン・フレイ・フィラメント法によって測定する。
フォン・フレイ・フィラメントの質量に従ってフォン・フレイ・フィラメント法によって測定された侵害刺激反応に対する効果を、プレドニゾロンについては図10に示し、ボラパキサルについては図11に示す。
2.5mg/kg/日の用量のボラパキサルがアロディニア型の反応を有意に阻害することが観察される。それに比べて、プレドニゾロンは部分的な阻害のみを誘発している。
これらの結果は、TNBS誘発大腸炎が侵害刺激反応(アロディニア)の有意な増大を引き起こし、この増大はボラパキサルによって有意に低減されることを証明している。
実施例2:マウスの炎症性腸疾患モデルにおけるPAR-1アンタゴニストの潜在的な治療効果の評価
この研究の目的は、マウスでのデキストラン硫酸ナトリウム(Dextran Sulphate sodium:DSS)による炎症性腸疾患モデルにおいて、本発明によるPAR-1アンタゴニストである3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノン(CSI)の有効性を評価することである。このDSSモデルは、Choiら、2010年、J. Biomed. Biotechnol.,2010:943516;doi:10.1155/2010/943516(非特許文献10)の刊行物に記載されている。
このモデルは、その急性期、寛解の期間および再発におけるTh1サイトカインプロファイルを特徴付け、したがって、それは潰瘍性大腸炎に非常に類似している。飲料水中に分散したDSSは、げっ歯動物において、消化管の炎症を引き起こし、結腸直腸腫瘍を生じ得る。DSSは、消化管のヒト炎症性疾患の動物モデルとして広く使用されている。
本研究は、7週齢マウス(C57B16)で行う。5-アミノサリチル酸は正の比較例としての役目を果たす。
研究の1日目は、水中にDSSを5%p/p含有する飲料を屠殺日までマウスに連日投与することで開始する。疾患の進行は、マウスの正確な計量、排泄物の硬さの評価、およびヘモカルト(登録商標)紙試験による糞便中における血液の存在によって、毎日評価する。DAIスコアは、実施例1に示したように計算する。
毎日、マウスの群に、異なる濃度のCSI、または5-アミノサリチル酸(5-ASA)、または賦形剤単体、つまり1%のカルボキシメチルセルロース(CMC)を経口投与する。
マウスを治療開始後7日目に屠殺する。大腸を摘出して、肉眼的損傷を評価する。次に、大腸を4片に切断し、遠位部分は、エッペンドルフ・チューブに入れて、ミエロペルオキシダーゼの活性の測定およびタンパク質の定量まで-80℃で保管する。近位部分は、将来の組織学的分析のために10%のホルマリン中で保存する。2つの他の中央部分は、エッペンドルフ・チューブに入れ、将来の分析のために-80℃で保管する。
実験計画:
マウスは、以下の表5に示すような5つの群に分配する。
Figure 2022515615000008
結果
0日目と比較したマウスの体重の変動を各群について以下の表6に示す。この表において、「Moy」は、群の異なる個体について得られた平均を指し、また、「esm」は平均に対する標準偏差を表す。
Figure 2022515615000009
マウスの疾患活動指数の経時的な進展を各群について以下の表7に示す。この表において、「Moy」は、群の異なる個体について得られた平均を指し、また、「esm」は平均に対する標準偏差を表す。
Figure 2022515615000010
DSSで処理したマウス(第4群)は大腸炎を発症し、これは、体重の減少、および有意に増大した疾患活動指数によって示される。
DSSで処理したマウスの体重の減少は、処理していないマウス(第1群)と比較して、4日目の時点で見られ、5日目、6日目および7日目については有意である。
疾患活動指数は、表7に示すように、対照マウス(第1群)と比較して、DSSで処理したマウス(第4群)では非常に急速に異なってくる。
これらの結果はすべて、DSSの投与が大腸炎のパラメータのすべてを再現することを明らかに示している。
50mg/kg用量での5-ASAの連日経口投与(第5群)は、すべての観察時点において体重の減少も疾患活動指数の増大も防止していない。この結果は、DSSで処理したマウスが高度に侵され、これらのマウスの症状を改善することが困難であることを証明している。
反対に、10mg/kgでのCSIの連日投与(第2群)は、7日目において疾患活動指数を有意に低減している。40mg/kg用量(第3群)では、疾患活動指数は、賦形剤群(第4群)と比較して、治療の4日目および7日目に有意に低減されている。加えて、この用量では、本発明による化合物CSIは6日目に体重の減少を有意に低減している。これらの結果は、このマウスの大腸炎モデルにおけるこの化合物の保護効果を示している。
7日目に、動物を屠殺した後、大腸を取り出す。実施例1で評価したように肉眼的損傷スコアおよびミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を決定する。得られた結果を以下の表8に要約する。
Figure 2022515615000011
DSSによる処理の開始後7日目(第4群)、肉眼的損傷スコアは、対照のマウス(第1群)で得られた肉眼的損傷スコアと比較して、有意に高い。DSSで処理したマウスの大腸の肉眼的検査は、重篤な紅斑、ならびに浮腫および潰瘍の存在を示している。炎症細胞の浸潤は、MPO活性、つまり顆粒球浸潤指数、を測定することにより評価される。DSSの投与は、対照マウスと比較して、MPO活性の非常に大幅で、統計的に有意な増大を生じる。
賦形剤群(第4群)と比較して、50mg/kgでの5-ASAによる治療(第5群)は、肉眼的損傷スコアを有意に低減し、同様に、これらのマウスの大腸の肉眼的検査により、紅斑、浮腫および潰瘍が、賦形剤群において観察されたものほど重篤ではないと結論付けることができる。
賦形剤群(第4群)と比較して、本発明によるCSI化合物による双方の試験用量での治療(第2群および第3群)は、肉眼的損傷スコアを有意に低減する。大腸の肉眼的検査もまた、紅斑、浮腫および潰瘍の有意な減少を示す。
さらに、本発明による化合物CSIの40mg/kg用量(第3群)では、MPO活性は大幅に低減されている。
これらの結果は、3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノンが、大腸炎の毎日の症状を有意に、かつ用量依存的な方法で低減し、5-ASAよりも有効であると思われることを示している。
実施例1および実施例2で上記に示した結果は、PAR-1アンタゴニストがボラパキサルからなるか、または3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノンからなるかにかかわらず、PAR-1アンタゴニストによる治療が、ラットおよびマウスのそれぞれにおける誘発性クローン病の2つのモデルにおいて、炎症および疼痛を有意に低減することを証明している。
実施例3:ガレヌス製剤
本質的に遠位回腸および大腸における活性物質の放出のための、経口投与に適した剤形における本発明による医薬組成物の実施例について以下で説明する。
処方1
本発明による医薬組成物は、以下の添加剤、すなわち、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウムと混合された、ボラパキサル、アトパキサール、または3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノンを含有する微粒剤の形態にある。
これらの微粒剤は、微粒剤中に存在する活性分子の拡散を可能にするエチルセルロースの半透性層で覆われている。
これらは、1~10mgに含まれる量の活性物質と、0.02~1.2mgに含まれる量のエチルセルロースとをそれぞれ含有する錠剤の形態にある。
処方2
本発明による医薬組成物は、以下の添加剤、すなわち、炭酸ナトリウム、グリシン、ポビドン、微結晶性セルロース、シリカ、ステアリン酸カルシウム、二酸化チタン、酸化鉄と混合された、ボラパキサル、アトパキサール、または3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノンを含有するコアを含む錠剤の形態にある。
コアは、このコアの腸溶性の保護を可能にするメタクリル酸のコポリマーEudragit(登録商標)L100で覆われており、十二指腸から放出を開始する。
各錠剤は、1~10mgに含まれる量の活性物質と、0.01~1.0mgに含まれる量のEudragit(登録商標)L100とを含有する。
薬量学
上記の処方の各々について、医薬組成物は、1回の単回投与で1日当たり1錠の割合で投与され得る。
好ましくは、治療は、疾患の診断の時点で至急、好ましくは急性事象後の最初の12か月以内に、開始する。
実施例4:上皮細胞修復効果
滅菌した鉗子を使用して、単層で集密したヒト大腸上皮細胞Caco2上に傷をつける。
その後、細胞を滅菌ウシ胎児血清で2回濯ぎ、次いで適切な培地に配置する。この培地において、異なる濃度(10nM、100nM、1μM、10μM)のボラパキサルまたは賦形剤(対照)を独立したペトリ皿に加える。
共焦点顕微鏡を使用して28時間にわたって、傷の瘢痕形成を監視し、分析する。傷の傷害面の割合を、各試験条件について、傷害後、4時間、22時間、および28時間に決定する。得られた結果を、図12おいてa/、b/およびc/にそれぞれ示す。
図のa/では、傷害後4時間で、100nM、1μMおよび10μMの濃度のボラパキサルにより、瘢痕形成が高度に増進されている。図のb/の22時間後には、ボラパキサルにより、濃度に依存して、瘢痕形成面が拡大されていることが観察され得る。最後に、図のc/では、28時間後に、100nm~10μMの濃度のボラパキサルにより、上皮の傷の完全な瘢痕形成がもたらされたことが観察され得る。
おそらく、この瘢痕形成特性は、図5に示したラットでのTNBSモデルにおける炎症を起こした大腸の厚さの低減に関与する。
この結果は、瘢痕形成プロセスの拡大によって、ボラパキサルは、疼痛の再発を伴うクローン病または潰瘍性大腸炎に罹患している患者における炎症の増悪に先行する透過性亢進の場合に腸の傷害が生じる可能性があるときに、傷害された腸の上皮壁を修復することができることを示している。

Claims (8)

  1. ボラパキサル、PAR-1受容体に対してアンタゴニスト活性を有するボラパキサル異性体、アトパキサール、3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノン、およびそれらの薬学的に許容される塩によって構成される群から選択されるPAR-1アンタゴニストであって、腸および大腸の慢性炎症性疾患に罹患している対象における腸の疼痛を低減するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのものである、PAR-1アンタゴニスト。
  2. 腸および大腸の慢性炎症性疾患に罹患している対象における腸の疼痛を低減するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのものであり、前記対象は哺乳動物であり、好ましくは人間である、請求項1に記載のPAR-1アンタゴニスト。
  3. クローン病に罹患している対象における腸の疼痛を低減するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのものである、請求項1または2に記載のPAR-1アンタゴニスト。
  4. 活性物質としてPAR-1アンタゴニストと、少なくとも1種の薬学的に許容される添加剤とを含有する医薬組成物であって、前記PAR-1アンタゴニストは、ボラパキサル、PAR-1受容体に対してアンタゴニスト活性を有するボラパキサル異性体、アトパキサール、3-2-(クロロ-フェニル)-1-[4-(4-フルオロ-ベンジル)-ピペラジン-1-イル]プロペノン、およびそれらの薬学的に許容される塩によって構成される群から選択され、前記医薬組成物は、腸および大腸の慢性炎症性疾患に罹患している対象における腸の疼痛を低減するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのものである、医薬組成物。
  5. 腸および大腸の慢性炎症性疾患に罹患している対象における腸の疼痛を低減するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのものであり、前記対象は哺乳動物であり、好ましくは人間である、請求項4に記載の医薬組成物。
  6. クローン病に罹患している対象における腸の疼痛を低減するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのものである、請求項4または5に記載の医薬組成物。
  7. 腸および大腸の慢性炎症性疾患に罹患している対象における腸の疼痛を低減するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのものであり、前記組成物は、経口投与に適した剤形を有する、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
  8. 腸および大腸の慢性炎症性疾患に罹患している対象における腸の疼痛を低減するため、および/または腸の上皮組織を修復するために使用するためのものであり、前記PAR-1アンタゴニストは腸溶性コーティングで覆われたコアに含まれている、請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
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