JP7235658B2 - 疼痛治療のためのang(1-7)誘導体オリゴペプチド - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本願は、2017年1月9日に出願された米国特許出願第15/401,944の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明は、ANG(1-7)及び関連する誘導体オリゴペプチドのようなオリゴペプチド、ならびに様々な病因の疼痛の治療のためにそれを使用する方法に関する。
骨痛は、後期転移性がん患者の75~90%が経験している。転移性がん誘発性骨痛(CIBP)は頻繁に報告されているが、管理は不十分である。世界保健機関は、がんが進行するにつれて軽度から強度までのオピオイドを推奨する、3段階除痛ラダーをがん性疼痛に対して実施した。それにもかかわらず、中等度から重度のがん性疼痛は、現在の鎮痛治療を受けている多くの患者において適切に管理されていない。処方されたオピオイドの流用が中毒の流行をもたらしているが、オピオイド療法はそれらの失敗に寄与する多くの課題となる副作用と関連している。最近の報告は、オピオイドがヒト及び実験動物モデルにおける骨量減少を悪化させる可能性があることを示唆しており、オピオイド療法が抗溶骨併用治療及びCIBP管理にとって逆効果である可能性があることを示している。さらに、長期のオピオイド療法は、特定のがんの増殖/遊走を増加させる可能性がある。
CIBPの前臨床モデリングは、この複雑な疾患状態を促進するメカニズムを明らかにし、そして有望な治療標的の同定をもたらした。骨は交感神経線維と侵害受容神経線維の両方によって神経支配されているが、多くのヒトの骨の腫瘍は腫瘍自体及び隣接する末梢骨に検出可能な神経線維を欠いている。CIBPに関連する侵害受容シグナル伝達に対して貢献するものには、酸性腫瘍環境、ならびに腫瘍及び腫瘍関連細胞からの増殖因子、サイトカイン、及びケモカインの分泌、ならびに局所環境における神経発芽の増強が含まれる。
骨は、交感神経線維と侵害受容神経線維の両方によって神経支配されている。しかしながら、多くのヒト骨腫瘍は腫瘍自体及び隣接する末梢骨に検出可能な神経線維を欠いている。CIBPに関連する侵害受容シグナル伝達に対して貢献するものには、酸性腫瘍環境、ならびに腫瘍及び腫瘍関連細胞からの増殖因子、サイトカイン、及びケモカインの分泌、ならびに局所環境における神経発芽の増強が含まれる。したがって、がん誘発性骨痛を含む疼痛の治療のための非オピオイド鎮痛薬を開発する必要性が存在する。
本発明は、Mas受容体に対して親和性及びアゴニスト効果を有する天然のAng(1-7)、関連誘導体ポリペプチド、及び/または非ペプチドアゴニストが、様々な生物学的、生理学的、及び病理学的パラメーターを改善するという発見に基づく。具体的には、Mas受容体活性化は、うっ血性心不全(CHF)、がん誘発性骨痛を含む様々な病因の疼痛、及び外傷性脳損傷(TBI)の神経学的後遺症によって引き起こされる空間記憶障害及び物体認識障害を軽減することが示される。
本発明のいくつかの態様は、非天然のアンジオテンシン-(1-7)誘導体ポリペプチド、すなわち「Ang-(1-7)誘導体」である、オリゴペプチドを提供する。本発明のオリゴペプチドは、Ang-(1-7)よりも長いインビボ半減期及び/または増加した血液脳関門透過を有し得る。いくつかの実施形態では、本発明のオリゴペプチドは、7または8個のアミノ酸を有し、Mas受容体のアゴニストとしての生物活性を有する。
本発明の一つの特定の態様は、式:A-A-A-A-A-A-A-A(配列番号1)のオリゴペプチド誘導体であって、式中、Aが、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;Aが、アルギニン、ヒスチジン、リジン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;Aが、バリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群より選択され;Aが、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;Aが、イソロイシン、バリン、アラニン、ロイシン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;Aが、ヒスチジン、アルギニン、リジン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;Aが、プロリン、グリシン、セリン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;Aは存在しても不在でもよく、Aが存在するとき、Aが、セリン、トレオニン、ヒドロキシプロリン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され、但し、(i)A~Aのうちの少なくとも1個が、任意選択で、一糖または二糖で置換されているか;または(ii)Aが不在であるとき、:(a)A~Aのうちの少なくとも1個が、一糖または二糖で置換されているか、(b)Aはアミノ基で終端しているか、もしくは(c)それらの組み合わせであるという条件である、オリゴペプチド誘導体を提供する。
いくつかの実施形態では、糖は、グルコース、ガラクトース、キシロース、フコース、ラムノース、ラクトース、セロビオース、メリビオース、またはそれらの組み合わせを含む。他の実施形態では、Aは、セリンもしくはそのグリコシル化形態であるか、またはAは不在であり、かつAがセリンもしくはそのグリコシル化形態である。いくつかの実施形態ではC末端のアミノ酸のみがグリコシル化されている(例えば、A、またはAが不在のときのA)。
さらに他の実施形態では、(i)Aがアミノ基で終端しているか、または(ii)Aが不在のとき、Aがアミノ基で終端している。これらの実施形態内では、いくつかの場合に、(i)Aは、任意選択でグリコシル化(例えば、グルコースまたはラクトースによって)されているセリンであるか;または(ii)Aが不在のとき、Aが任意選択でグリコシル化(例えば、グルコースまたはラクトースによって)されているセリンである。さらに他の場合では、Aが不在のとき、Aがグルコースでグリコシル化されているセリンである。後者の場合、いくつかの場合では、Aはアミノ基で終端している。いくつかの実施形態では、Ang(1-7)誘導体がアミノ基で終端しているかどうかにかかわらず、C末端アミノ酸(A、またはAが不在のときのA)は、グリコシル化アミノ酸のみである。
さらに他の実施形態では、Aはアスパラギン酸であり;Aはアルギニンであり;Aはバリンであり;Aはチロシンであり;Aはイソロイシンであり;Aはヒスチジンであり;(i)Aが不在であり、かつAがアミノ基で終端しているか、もしくはAがグリコシル化セリンであり、または(ii)Aがアミノ基で終端しているセリンである。これらの実施形態内で、いくつかの場合には、Aはグリコシル化セリンである。さらに他の場合では、Aが不在であり、かつAが、アミノ基で終端しているグリコシル化セリンである。
本発明の別の態様は、8個以下のアミノ酸、典型的には7個または8個のアミノ酸(例えば、アミノ酸残基)のグリコシル化Ang-(1-7)誘導体を提供する。いくつかの実施形態では、グリコシル化Ang-(1-7)誘導体は、キシロース、フコース、ラムノース、グルコース、ラクトース、セロビオース、メリビオース、またはそれらの組み合わせによってグリコシル化されている。さらに他の実施形態では、上記グリコシル化Ang-(1-7)誘導体のカルボン酸末端はアミノ基で置換されている。
本発明の他の態様は、治療有効量の本発明のオリゴヌクレオチドを投与することにより、対象における認知機能障害及び/または機能障害を治療する方法を提供する。一般に、本発明のオリゴペプチドは、Ang-(1-7)で治療することができるあらゆる臨床状態を治療するために使用することができる。
いくつかの実施形態では、本発明のオリゴペプチドは、任意の病因の疼痛(すなわち、疼痛状態)を治療(すなわち、軽減または排除)するために使用され得る。治療に適した特定の疼痛症候群及び疼痛状態には、例えば、急性疼痛(例えば、外傷による疼痛)、歯痛(例えば、抜歯または他の歯科処置の後)、原発性腫瘍または転移性腫瘍のいずれかに起因するがん誘発性骨痛、術後疼痛、帯状疱疹後神経痛、線維筋痛症、炎症性疼痛、脳卒中による疼痛、外傷性神経因性疼痛、多発性硬化症による疼痛、関節リウマチ、変形性関節症、及び複合性局所疼痛症候群(CRPS)が含まれる。本発明のオリゴペプチドはまた、HIV誘導性ニューロパチー、糖尿病性ニューロパチー、及び化学療法的ニューロパチーに関連する疼痛ならびに他の症状及び症状を治療するために使用され得る。
他の実施形態では、本発明のオリゴペプチドは、一般に認知機能障害の1つ以上の症状、ならびに、例えば、注意力の低下、記憶喪失、精神運動性遅延、及び実行機能の低下を含む、認知機能障害及び認知症への血管の寄与(「VCID」)によって引き起こされるかまたはそれに関連する症状を軽減または排除するために使用できる。認知障害及び/またはVCIDに関連し、本発明のオリゴペプチドを使用した治療に適した特定の症状には、例えば、うっ血性心不全、心血管疾患、高血圧、脳卒中、術後の認知障害及び/または欠乏症によって引き起こされるかまたはそれらに関連する認知障害、加齢性認知症を含む認知症、血管性認知症、アルツハイマー病、脳震盪及び貫通性脳損傷を含む外傷性脳損傷が含まれる。
いくつかの実施形態では、本発明のオリゴペプチドは、約0.1~50mg/kg、例えば、少なくとも約0.25、0.50、0.75、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、10、15、20、25、30、または40mg/kgを含む投与量で投与される。オリゴペプチドは、所望の臨床成績を得るために必要に応じて、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、またはそれ以上投与され得る。オリゴペプチドは経口的にまたは注射(静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、脳室内、もしくは髄腔内)、または吸入によって投与することができる。
培養中のヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)を活性化する本発明のオリゴペプチドのうちのいくつか及び天然のAng-(1-7)を示すグラフである。 天然のAng-(1-7)、ならびに本発明のオリゴペプチドPN-A3、PN-A4、及びPN-A5についてのNO産生アッセイの結果を示すグラフである。 選択されたMas受容体アンタゴニストA779が、本発明のオリゴペプチドPN-A5によって誘導されるNO産生を阻止することを示すグラフである。 オリゴペプチドPN-A5によって誘導されるNO産生に対する選択されたMas受容体アンタゴニストA779による平均化した効果を示すグラフである。 心不全によって引き起こされる物体認識記憶障害に対する、オリゴペプチドPN-A5の効果を示すグラフである。 心不全によって引き起こされる空間記憶障害に対する、オリゴペプチドPN-A5の効果を示すグラフである。 オリゴペプチドPN-A5がCIBPの自発疼痛を急速に軽減することを示すグラフである。 von Frey式フィラメントを使用した触覚異痛試験の結果を示すグラフである。 単回投与治療レジメン及びMas受容体アンタゴニストA779による阻止の下で、乳癌細胞株の骨内骨髄移植を受けたマウスの疼痛反応(肢上げ(guarding))を示すグラフである。 単回投与治療レジメン及びMas受容体アンタゴニストA779による阻止の下で、乳癌細胞株の骨内骨髄移植を受けたマウスの疼痛反応(肢上げ)を示すグラフである。 単回投与治療レジメン及びMas受容体アンタゴニストA779による阻止の下で、乳癌細胞株の骨内骨髄移植を受けたマウスの疼痛反応(肢振り(flinching))を示すグラフである。 単回投与治療レジメン及びMas受容体アンタゴニストA779による阻止の下で、乳癌細胞株の骨内骨髄移植を受けたマウスの疼痛反応(肢振り)を示すグラフである。 単回投与治療レジメン及びMas受容体アンタゴニストA779による阻止の下で、乳癌細胞株の骨内骨髄移植を受けたマウスの疼痛反応(肢上げ)を示すグラフである。 単回投与治療レジメン及びMas受容体アンタゴニストA779による阻止の下で、乳癌細胞株の骨内骨髄移植を受けたマウスの疼痛反応(肢振り)を示すグラフである。 慢性治療レジメン及びMas受容体アンタゴニストA779による阻止の下で、乳癌細胞株の骨内骨髄移植を受けたマウスの疼痛反応(肢上げ)を示すグラフである。 慢性治療レジメン及びMas受容体アンタゴニストA779による阻止の下で、乳癌細胞株の骨内骨髄移植を受けたマウスの疼痛反応(肢振り)を示すグラフである。 慢性治療レジメン及びMas受容体アンタゴニストA779による阻止の下で、乳癌細胞株の骨内骨髄移植を受けたマウスの疼痛反応(肢上げ)を示すグラフである。 慢性治療レジメン及びMas受容体アンタゴニストA779による阻止の下で、乳癌細胞株の骨内骨髄移植を受けたマウスの疼痛反応(肢振り)を示すグラフである。 Ang-(1-7)またはAT1もしくはAT2受容体のアンタゴニストのいずれかを使用した、慢性治療レジメン下での乳癌細胞株の髄内移植を有するマウスの疼痛反応を示すグラフである。 Ang-(1-7)またはAT1もしくはAT2受容体のアンタゴニストのいずれかを使用した、慢性治療レジメン下での乳癌細胞株の髄内移植を有するマウスの疼痛反応を示すグラフである。 Ang-(1-7)またはAT1もしくはAT2受容体のアンタゴニストのいずれかを使用した、慢性治療レジメン下での乳癌細胞株の髄内移植を有するマウスの疼痛反応を示すグラフである。 Ang-(1-7)またはAT1もしくはAT2受容体のアンタゴニストのいずれかを使用した、慢性治療レジメン下での乳癌細胞株の髄内移植を有するマウスの疼痛反応を示すグラフである。 治療レジメンの下で骨癌を有するかまたは有さない実験用マウスの営巣行動を示すグラフである。 治療レジメンの下で骨癌を有するかまたは有さない実験用マウスの営巣行動を示すグラフである。 実験動物における侵害受容繊維の後根神経節におけるMas受容体の発現を示すウェスタンブロットである。 実験動物における同側及び対側の後根神経節間のMas受容体の相対的発現を示す棒グラフである。 実験動物の大腿滲出液におけるMas受容体の発現を示すウェスタンブロットである。 実験動物における同側及び対側の大腿滲出液間のMas受容体の相対的発現を示す棒グラフである。 様々な治療レジメン後の実験動物の大腿骨の一連の顕微鏡写真である。 実験動物の大腿骨における腫瘍組織の定量化を示す棒グラフである。 実験動物で撮影した一連のレントゲン写真である。 実験動物における骨病変スコアを定量化するグラフである。 実験動物における骨の完全性の尺度としてのカルボキシ末端コラーゲン架橋の量を示す棒グラフである。 カラギーナン誘発疼痛の急性/炎症モデルにおけるPN-A5の抗侵害受容効果を示すグラフである。von Frey式フィラメント試験からの生閾値データを示す折れ線グラフである。 カラギーナン誘発疼痛の急性/炎症モデルにおけるPN-A5の抗侵害受容効果を示すグラフである。図14Aからの標準化データを示す折れ線グラフである。 カラギーナン誘発疼痛の急性/炎症モデルにおけるPN-A5の抗侵害受容効果を示すグラフである。図14Bから計算されたAUCを示す棒グラフである。 天然のAng(1-7)の立体構造のモデルである。 様々なグリコシル化Ang(1-7)誘導体の計算モデルである。 天然のAng(1-7)及び種々の誘導体のインビトロ血清半減期を示す折れ線グラフである。 天然のAng(1-7)及びPN-A5の血清中濃度を示す折れ線グラフである。 天然のAng(1-7)及びPN-A5のCSF濃度を示す折れ線グラフである。
定義
「天然のAng-(1-7)」という用語は、アミノ酸配列Asp-Arg-Val-Tyr-Ile-His-Pro(配列番号2)を有する、天然に存在するAng(1-7)ポリペプチドを指す。
「Ang-(1-7)誘導体」という用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、修飾されているか、または対応する天然のAng-(1-7)のアミノ酸残基とは異なるかのいずれかである、オリゴペプチドを指す。「Ang-(1-7)誘導体」という用語はまた、以下により詳細に論じられるように、8アミノ酸残基のオリゴペプチドをも含む。
「PN-A2」とは、ProがC末端アミド化(NH)を含むことを除いて、天然のAng(1-7)のアミノ酸配列を有する、配列番号3のAng(1-7)誘導体を意味する。
「PN-A3」とは、C末端にセリンの付加(すなわち、Ser)を有し、Serがグリコシル化され、C末端アミド化(NH)を含む、天然のAng(1-7)のアミノ酸配列を有する、配列番号9のAng(1-7)誘導体を意味する。
「PN-A4」とは、C末端にセリンの付加(すなわち、Ser)を有し、Serがラクトシル化され、C末端アミド化(NH)を含む、天然のAng(1-7)のアミノ酸配列を有する、配列番号9のAng(1-7)誘導体を意味する。
「PN-A5」とは、ProがSerで置換され、Serがグリコシル化され、C末端アミド化(NH)を含むことを除いて、天然のAng(1-7)のアミノ酸配列を有する、配列番号13のAng(1-7)誘導体を意味する。
「PN-A6」とは、ProがSerで置換され、Serがラクトシル化され、C末端アミド化(NH)を含むことを除いて、天然のAng(1-7)のアミノ酸配列を有する、配列番号13のAng(1-7)誘導体を意味する。
「糖」という用語は、実験式(CHO)のペントース及びヘキソースを意味し、式中、nはペントースでは5、ヘキソースでは6である。糖は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(例えば、3~20個、典型的には3~10個、多くの場合、3~5個の単量体糖類が一緒に結合している)、または多糖類(例えば20個を超える単量体糖単位)であり得る。さらに多くの場合、糖という用語は、単糖類及び/または二糖類を指す。しかしながら、本発明の範囲は単糖類または二糖類に限定されないことを理解されたい。多くの場合、「糖(carbohydrate)」と「糖類(saccharide)」という用語は、本明細書で交換可能に使用される。
本明細書及び特許請求の範囲の全体にわたって使用されるとき、「オリゴペプチド」という用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を含むが、典型的には、約15個以下、多くの場合、10個以下、さらにより多くの場合、8個以下、もっとも多くの場合、7個以下のアミノ酸鎖を含むと理解されるべきである。
Ang-(1-7)のアミノ酸のうちの1つまたは複数を「等価アミノ酸」と置き換えることができ、例えば、L(ロイシン)を、イソロイシンまたは他のアラニン、バリン、メチオニンなどの疎水性側鎖アミノ酸と置き換えることができ、極性非荷電側鎖を有するアミノ酸を、他の極性非荷電側鎖アミノ酸と置き換えることができることを理解されたい。Ang-(1-7)は7個のアミノ酸を含むが、いくつかの実施形態において、本発明のオリゴペプチドは、8個以下のアミノ酸を有する。
「グリコシル化」とは、単糖、二糖、または多糖のそのアミノ酸への共有結合を意味する。グリコシル化は、必要に応じて、N結合型またはO結合型であり得る。例えば、N結合型グリコシル化は、アスパラギンまたはアルギニン中のR基窒素で起こり得、そしてO結合型グリコシル化はセリン、トレオニン、及びチロシンのR基ヒドロキシルを通じて起こり得る。適切な糖には、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、リボース、アラビノース、リキソース、アロース、アルトロース、マンノース、フコース、及びラムノースなどの単糖類、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、メリビオース、セロビオースなどの二糖類、ソルビトール、マンニトール、マルトデキストリン、及びファリノースなどの高次構造、ならびにガラクトサミン及びグルコサミンなどのアミノ糖が含まれる。いくつかの特定の実施形態では、ポリペプチドは、グルコース、ラクトース、セロビオース、メリビオース、β-D-グルコース、β-D-ラクトース、β-D-セロビオース、またはβ-D-メリビオースでグリコシル化されている。
Ang-(1-7)誘導体の任意の修飾(例えば、糖修飾)を指す「それらの組み合わせ」という用語は、個々のアミノ酸のうち2、3、4、5、6、7、または8個が糖の結合によって修飾されているオリゴペプチドを指す。複数の糖修飾を有するAng-(1-7)誘導体について、修飾糖はすべての修飾アミノ酸で同一であってもよく、またはいくつかの修飾アミノ酸は異なる糖の混合物を含んでもよい。
「治療有効量」とは、哺乳動物に投与するときに、疾患を治療するのに適切な間隔で十分な期間にわたって、その疾患に対してそのような治療をもたらすのに十分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患及びその重症度、年齢、体重、及び体格指数を含むがこれらに限定されない個体に特有の生理学的因子、単位用量、累積用量、頻度、期間、ならびに選択される投与経路に応じて変動するであろう。
「予防する」は、疾患、障害、及び/または状態の発生に関連して使用されるとき、対象が発症する危険性がある疾患、障害、及び/または状態を発症するリスクを低減することを指す。
「治療する」とは、その疾患または障害を有すると診断された対象における特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状または特徴の重症度を、部分的または完全に、緩和、改善、軽減、抑制、予防、軽減するために使用される任意の方法を指す。
数に関して「約(approximately)」または「約(about)」という用語は、一般に、特段他が明記されていない限り、または文脈から他が明らかな場合を除いて(このような数が0%未満または可能な値の100%を超える場合を除く)、数のいずれかの方向(より大きいまたはより小さい)で5%、10%、15%、または20%の範囲内にある数を含むと解釈される。
「対象」または「患者」という用語は、例えば実験の、診断の、及び/または治療の目的のために本発明の組成物を投与することができる任意の生物を指す。典型的な対象としては、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、及びヒトなどの哺乳動物)が含まれる。
「投与レジメン」とは、典型的には期間によって分けられる、対象に個々に投与される一組の単位用量(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上)を意味する。いくつかの実施形態では、投与レジメンは、それぞれが期間によって互いに分けられている1つまたは複数の用量を含む。個々の用量を分けている期間は、固定または可変期間を有してもよく、または治療薬は必要に応じて投与されてもよい。投与レジメンは、1日間、複数日間、数週間、数ヶ月間にわたるか、または対象の生涯にわたって投与され得る(例えば、1、2、3、4、5、6、7、10、14、21、もしくは28日間、または1、2、3、4、5、6、9、もしくは12か月間以上)。いくつかの実施形態では、治療薬は、1日1回(QD)、1日2回(BID)、1日3回(TID)、1日4回(QID)、またはより少ない頻度(すなわち、2日もしくは3日ごと、毎週1回、または毎月1回))で投与される。
別途定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の所属する技術分野における当業者によって一般に理解される意味を有する。
本発明のオリゴペプチド:
血圧調節及び体液恒常性における役割についてよく知られているレニン-アンジオテンシン系(RAS)は、最近、炎症、血管形成、腫瘍細胞増殖、及び遊走を含む転移性骨疾患に関与すると考えられている。アンジオテンシンII(AngII)は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)による切断によるRASの主要な最終生成物である。このノナペプチドは、2つのGタンパク質共役受容体(GPCR)、すなわちアンジオテンシンII受容体1型(AT1)及び2型(AT2)に結合してそれらを活性化する。血管収縮、炎症、線維症、細胞の増殖/遊走、体液貯留などの生理作用がAT1とAT2について報告されている。AngIIはACE2によって切断されて、生物学的に活性であるヘプタペプチドであるアンジオテンシン-(1-7)(Ang-(1-7))を生じる。AngIIとは対照的に、Ang-(1-7)は、AT1及びAT2受容体に対して60~100倍高い選択性でGPCRであるMas受容体に結合する(MasR;Kd=0.83nM)。MasRの活性化は、抗炎症活性及び抗うつ活性を有することを含むAngII/AT1/AT2軸の作用とは反対の作用を発揮する。
本発明のいくつかの態様は、Ang-(1-7)の誘導体であるオリゴペプチドを提供する。上述のように、Ang-(1-7)の「誘導体」という用語は、Ang-(1-7)のいずれか1つ以上のアミノ酸配列が、修飾されている(例えば、メチル化、プロリン上のヒドロキシ基などの官能基の存在)、糖に結合している、対応するD-アミノ酸、または上に定義されるような「等価アミノ酸」と置き換えられているか、及び/または、Ang-(1-7)の末端アミノ基末端またはカルボキシル末端は修飾されており、例えば、カルボン酸末端はアミド、アミン、チオール、またはアルコール官能基に修飾することができるか、または天然のAng-(1-7)と比較して追加のアミノ酸残基が存在する、オリゴペプチドを指す。「Ang-(1-7)誘導体」という用語は、天然のAng-(1-7)、すなわち、修飾を全く有さない内在性Ang-(1-7)のアミノ酸配列を除外することを理解されたい。
いくつかの実施形態では、本発明のオリゴペプチドは、カルボン酸末端のアミノ基(すなわち、カルボン酸の-OH基が、-NRで置き換えられ、式中、R及びRの各々が、独立して水素またはC~Cアルキルである)を有し、及び/または、(i)対応するD-アミノ酸と置き換えられているか、(ii)グリコシル化されているか、(iii)別のアミノ酸と置き換えられているか、または(iv)それらの組み合わせである、1つ以上のアミノ酸残基を有する。
一つの特定の実施形態では、本発明のオリゴペプチドは、式:A-A-A-A-A-A-A-A(配列番号1)のAng-(1-7)誘導体であって、式中、Aが、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、及びそれらの誘導体からなる群から選択され;Aが、アルギニン、ヒスチジン、リジン、及びそれらの誘導体からなる群から選択され;Aが、バリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、及びそれらの誘導体からなる群より選択され;Aが、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びそれらの誘導体からなる群から選択され;Aが、イソロイシン、バリン、アラニン、ロイシン、及びそれらの誘導体からなる群から選択され;Aが、ヒスチジン、アルギニン、リジン、及びそれらの誘導体からなる群から選択され;Aが、プロリン、グリシン、セリン、及びそれらの誘導体からなる群から選択され;Aは存在しても不在でもよく、Aが存在するとき、Aが、セリン、トレオニン、ヒドロキシプロリン、及びそれらの誘導体からなる群から選択され、但し、(i)A~Aのうちの少なくとも1個が、任意選択で、一糖または二糖で置換されているか;または(ii)Aが不在であるとき、:(a)A~Aのうちの少なくとも1個が、一糖または二糖で置換されているか、(b)Aはアミノ基で終端しているか、もしくは(c)それらの組み合わせであるという条件である。
いくつかの実施形態では、Aは、オリゴペプチドのアミノ末端であり、A(または、Aが不在のときにはA)は、カルボキシル末端である。さらに他の実施形態では、Aは、カルボキシル末端であり、A(または、Aが不在のときにはA)は、アミノ末端である。さらに他の実施形態では、カルボキシル末端のカルボン酸官能基は、アミド官能基、アミン官能基、ヒドロキシル官能基、またはチオール官能基として修飾されている。アミド官能基及びアミン官能基は、非アルキレート、モノアルキル化、またはジアルキル化とすることができる。
さらに他の実施形態では、糖は、グルコース、ガラクトース、キシロース、フコース、ラムノース、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの例では、糖は一糖であり、他の例では糖は二糖である。
他の実施形態では、A~Aのうちの少なくとも1つは、一糖で置換されている。さらに他の実施形態では、A~Aのうちの少なくとも1つは、二糖で置換されている。当然のことながら、本発明の範囲は、一糖と二糖との両方を有するオリゴペプチドも含む。
本発明のオリゴペプチドにおいて使用され得る例示的な二糖には、ラクトース、セロビオース、メリビオース、及びそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。しかしながら、本発明の範囲は当業者に公知の任意の二糖で置換されているオリゴペプチドを含むことを理解すべきである。
一つの特定の実施形態では、Aは、セリンまたはその誘導体である。いくつかの例では、セリンのカルボン酸部分はアミドまたはアミンとして修飾されている。一つの例では、セリンはアミノ基で終端している。さらに他の実施形態では、Aのセリン残基は、グルコースまたはラクトースによってグリコシル化されている。
さらに他の実施形態では、A~Aのうちの、少なくとも1個が、典型的には少なくとも2個が、一般には少なくとも3個が、多くの場合には少なくとも4個が、さらにより多くの場合には少なくとも5個が、なおもさらにより多くの場合には少なくとも6個が、もっとも多くの場合には全てがD-アミノ酸である。
本発明の別の態様は、8個以下のアミノ酸、典型的には7個または8個のアミノ酸残基を有する、Ang-(1-7)誘導体のようなオリゴペプチドを提供する。いくつかの実施形態では、1個以上のアミノ酸に糖群が結合している。多くの場合、糖群はグリコシル化を介してオリゴペプチドに結合している。糖は、アミノ酸の側鎖官能基またはアミド基のいずれかを介してオリゴペプチドに結合することができる。したがって、本発明の範囲には、O-グリコシレート、N-グリコシレート、S-グリコシル化オリゴペプチドが含まれるが、これらに限定されない。「X-グリコシル化」という用語は、アミノ酸のヘテロ原子「X」を介してオリゴペプチドに結合した糖を有することを指す。例えば、側鎖官能基がヒドロキシルであるセリンの場合、「O-グリコシル化」は、糖がセリンの側鎖官能基、すなわちヒドロキシル基に結合していることを意味する。同様に、ロイシンの「N-グリコシル化」は、ロイシンのアミノ側鎖官能基に糖が結合していることを指す。典型的には、グリコシル化はアミノ酸の側鎖官能基上にある。
いくつかの実施形態では、Ang-(1-7)誘導体は、キシロース、フコース、ラムノース、グルコース、ラクトース、セロビオース、メリビオース、またはそれらの組み合わせによってグリコシル化されている。
さらに他の実施形態では、上記グリコシル化Ang-(1-7)誘導体のカルボン酸末端はアミノ基で置換されている。カルボン酸末端がアミノ基で置換されていることを指すとき、それはカルボン酸の-OH基が-NH基で置き換えられていることを意味する。したがって、実際の末端官能基はアミドであり、すなわち、オリゴペプチドをカルボン酸末端において官能基-COHで終端するのではなく、カルボン酸末端をアミド基(すなわち-CONR’、式中、各々のR’は独立して水素またはC~C12アルキルである)で終端している。さらに他の実施形態では、カルボン酸末端基はヒドロキシル基またはチオール基で終端する。いくつかの実施形態では、修飾カルボン酸末端基は、例えばグリコシル化を介して糖を結合するために使用される。
本発明の目的の1つは、作用の有効性、インビボでの安定化、及び/または血液脳関門の透過を増強するためにAng-(1-7)誘導体を産生することであった。血液脳関門の透過が改善されることにより、本発明のAng-(1-7)誘導体の脳への進入が促進され、その結果、Mas活性化または固有の有効性が促進される。血液脳関門の透過を改善する(すなわち増加させる)ために、いくつかの実施形態では、Ang-(1-7)誘導体は少なくとも1つの一糖または二糖に結合している。
いかなる理論にも拘束されることなく、グリコシル化されている本発明のオリゴペプチドは、折り畳まれたAng-(1-7)糖ペプチド(すなわち、本発明のグリコシル化オリゴペプチド)の固有の両親媒性及び「biousianアプローチ」を利用して、血液脳関門を越えて本発明のグリコシル化オリゴペプチドを送達すると考えられる。いくつかの例において、本発明のオリゴペプチドによる血液脳関門の通過の増加量は、天然のAng-(1-7)と比較して少なくとも6%、典型的には少なくとも10%、そして多くの場合には少なくとも15%である。場合によっては、脳脊髄液中の本発明のオリゴペプチドについてのCmaxの増加量は、天然のAng-(1-7)と比較して2~10倍、3~8倍、または5~8倍である。いくつかの例において、脳脊髄液中の本発明のオリゴペプチドについてのCmaxの増加量は、天然のAng-(1-7)と比較して2、3、4、5、6、7、8、9、または10倍である。他の例において、本発明のオリゴペプチドは、少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも40分、少なくとも50分、少なくとも60分、または少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、または少なくとも6時間のインビボ半減期を有する。いくつかの例において、本発明のオリゴペプチドについてのインビボ半減期の増加量は、天然のAng-(1-7)と比較して、2~30倍、3~25倍、4~20倍、4~10倍、10~25倍、15~25倍、または20~25倍である。代替的に、天然のAng-(1-7)と比較して、本発明のオリゴペプチドは、インビボ半減期において少なくとも50倍、典型的には少なくとも75倍、そして多くの場合には少なくとも100倍の増加を示す。
他の実施形態では、本発明のオリゴペプチドは増強した血管効果を示す。いかなる理論にも拘束されることなく、血液脳関門輸送は、脳毛細血管の内皮の血液側での吸収性エンドサイトーシスプロセスとそれに続く脳側でのエキソサイトーシスによって起こり、全体的なトランスサイトーシスをもたらすと一般に認識されている。このプロセスが効率的であるためには、オリゴペプチドはある期間、膜に結合する必要があり、そしてまたある期間水性状態で存在する必要がある(biousianの性質)と考えられている。本発明者のうちの一人による以前の研究に基づいて、効果的な薬物送達及び血液脳関門輸送は、少なくとも2つの状態:(1)エンドサイトーシスを許容または促進する1つ以上の膜結合立体構造によって規定される状態;及び(2)水溶性によって規定される状態、または「膜ホッピング(membrane hopping)」やおそらくは血管効果を可能にするランダムコイル状態、を有するbiousian糖ペプチドを必要とすると考えられる。
一般に、グリコシル化の程度は個々の微小状態の構造に大きな影響を及ぼさない。したがって、グリコシル化の程度を変えることにより、オリゴペプチドの全体的な構造に顕著な影響を及ぼすことなく、水性状態対膜結合状態の集団密度を調節することが可能になる。さらに、グリコシル化はペプチダーゼに対する安定性も促進し、それによってインビボでのAng-(1-7)誘導体の半減期を増加させると考えられている。
表1は、いくつかの特に有用なAng(1-7)誘導体ポリペプチドを記載するが、本発明の範囲を限定することを意図しない。
Figure 0007235658000001
いくつかの実施形態ではC末端のアミノ酸のみがグリコシル化されている(すなわち、Xaa、またはXaaが不在のときのXaa)。いくつかの実施形態では、Ang(1-7)誘導体ポリペプチドは、グルコース、ラクトース、セロビオース、メリビオース、β-D-グルコース、β-D-ラクトース、β-D-セロビオース、またはβ-D-メリビオースでグリコシル化されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは(例えば、セリンのR基上に)O結合型グリコシル化を含む。いくつかの実施形態では、C末端セリンはグリコシル化されている。
いくつかの実施形態では、非天然のアミノ酸及び/またはアミノ酸置換物(例えば、ジカルボン酸)は、例えば、表1のAng(1-7)誘導体ポリペプチドのものを含む、Ang(1-7)及びAng(1-7)誘導体ポリペプチドのいずれかにおける天然アミノ酸を置換し得る。例えば、α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、C-α-メチルアミノ酸、β-アミノ酸、及びβ-メチルアミノ酸。本発明において有用なアミノ酸類似体には、β-アラニン、ノルバリン、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、オルニチン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、シクロヘキシルアラニン、2-アミノイソ酪酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、フェニルグリシン、o-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、及び他の非従来型アミノ酸が含まれ得るが、これらには限定されない。例えば、
Xaaは、Acpc(1-アミノシクロペンタンカルボン酸)、Me2Gly(N,N-ジメチルグリシン)、Bet(ベタイン、l-カルボキシ-N,N,N-トリメチルメタンアミニウムヒドロキシド)、Sar(サルコシン)、またはSuc(コハク酸)であり得;
Xaaは、Cit(シトルリン)、Orn(オルニチン)、アセチル化Ser、またはSarであり得;
Xaaは、Nle(ノルロイシン)、ヒドロキシプロリン、Acpc、またはAib(2-アミノイソ酪酸)であり得;
Xaaは、Tyr(PO)、ホモセリン、azaTyr(aza-α-ホモ-L-チロシン)であり得;
Xaaは、Nle、ヒドロキシプロリン、Acpc、またはAibであり得;
Xaaは、6-NH-Phe(6-アミノフェニルアラニン)であり得;及び
Xaaは、Phe(Br)(p-ブロモ-フェニルアラニン;L-フェニルアラニンまたはD-フェニルアラニンであり得る)であり得る。
いくつかの実施形態では、Ang(1-7)誘導体ポリペプチドは、配列番号2に記載される天然のAng(1-7)の天然に存在するアミノ酸配列を含まない。
いくつかの実施形態では、表1に具体的に定義されるものを含む、Ang(1-7)及びAng(1-7)誘導体ポリペプチドのいずれかは、完全にL-アミノ酸、完全にD-アミノ酸、またはL-アミノ酸とD-アミノ酸との混合物(例えば、1、2、3、4、5、6、7、もしくは8個のD-アミノ酸を有する)を含み得る。
Ang(1-7)及びAng(1-7)誘導体ポリペプチドは、非限定的に、独占的固相合成、部分的固相合成、フラグメント縮合、古典的溶液合成、ネイティブケミカルライゲーション、及び組換え技術などのペプチド合成方法を含む任意の適切な方法によって産生され得る。
認知機能障害
認知機能障害または機能障害は、うっ血性心不全(「CHF」)及び心臓手術後の一般的な神経学的合併症であり、退院時の患者の約50~70%及び手術後6ヶ月の患者の20~40%に影響を及ぼす。CHF及び術後の認知機能障害の発生は、入院期間の延長及び長期的な生活の質の低下に関連している。いかなる理論にも拘束されることなく、一般に、炎症性サイトカインの増加及び/または中枢神経系、特に脳内の活性酸素種の増加に関連するあらゆる臨床状態は、認知機能障害を引き起こし得ると考えられている。
本発明の他の態様は、本発明のオリゴペプチドを使用して、患者における認知機能障害及び/または機能障害を治療する方法を提供する。典型的には、本発明の方法は、そのような治療を必要とする患者に治療有効量の本発明のオリゴペプチドを投与することを含む。本発明のオリゴペプチドは、Ang-(1-7)を使用して治療可能であることが知られているかまたは治療可能であると思われる任意の臨床状態を治療するために使用することができることは、認識されよう。しかしながら、明瞭さと簡潔さのために、患者における認知機能障害及び/または機能障害の治療に関して本発明を説明する。
うっ血性心不全(CHF)患者に起こる認知機能障害には、注意力の低下、記憶喪失、精神運動性遅延、及び実行機能の低下が含まれ、それらの全ては、複雑な医療計画を順守し、食事制限を厳守し、セルフケアの決定を下す患者の能力を損なう。CHF患者の認知障害に寄与すると考えられている機序には、脳血流の変化、脳血管自己調節の変化、及び微小塞栓症が含まれる。ある研究では、脳血流は単光子放出コンピューター断層撮影(SPECT)で測定され、重度の心不全患者では30%減少することがわかった。CHFにおける脳灌流の減少の原因は、低心拍出量、低血圧、及び脳血管反応性の変化に起因する。いくつかの場合では、CHFに見られる認知機能障害は、心臓移植またはCHFの最適管理による脳血流の改善のいずれかの後に改善される。しかしながら、CHFを有する多くの患者にとって、管理が最適であることはめったになく、認知機能障害は持続する。興味深いことに、長期追跡調査では、認知機能が正常なCHF患者は、年齢が一致する非CHF対照と比較して顕著に高い認知症またはアルツハイマー病のリスクがあることが明らかとなり、CHF及び心血管疾患が、患者にさらなる認知機能障害及び認知症を起こしやすくさせることを示唆する。
CHFの間、循環神経化学的環境におけるよく特徴付けられた変化及び炎症性因子の増加もまた脳において見られる。炎症性サイトカイン及びROSにおけるCHF誘発性変化に関する研究のほとんどは、交感神経流出制御に関与する脳領域に焦点を当てており、認知には焦点を当てていない。CHFは交感神経緊張を高め、異常な心臓及び交感神経反射機能を引き起こす。ラットでは、虚血誘発性CHFは視床下部の室傍核(PVN)中の炎症誘発性サイトカイン及び1型アンジオテンシンII受容体(AT1)を顕著に増加させる。さらに、CHFウサギでは、交感神経流出の増加は、スーパーオキシドジムスタターゼ(SOD)模倣剤テンポールのICV注射により、おそらくROSの阻害によって、阻止される。このモデルにおけるCHFは、延髄吻側腹外側部(RVLM)におけるNADPHオキシダーゼサブユニットの発現増加及びROS産生ならびにNOの増加と関連する。
学習及び記憶におけるROSの役割は、広く研究されてきた。NOX2及びNOX4を含むすべてのNAD(P)Hオキシダーゼサブユニットは、細胞体及びマウス海馬及び末梢皮質のニューロンの樹状突起内に局在しており、シナプス部位に共局在している。これらは、学習と記憶における脳の重要な領域である。脳において、NAD(P)Hオキシダーゼの作用によるスーパーオキシド産生は、神経毒性、加齢性認知症、脳卒中、及び神経変性疾患に関与することが知られており、海馬、視床、小脳、及び扁桃体を含む脳の至る所で同定されている。より若く健康な動物において、ROSとNAD(P)Hオキシダーゼは、正常な学習と海馬の長期増強(LTP)に必要であることが示されている。Masを欠くマウスにおける最近の研究は、Ang-(1-7)及びMasが正常な物体認識処理に必須であり、海馬におけるMasの遮断は物体認識を損なうことを示した。さらに、Ang-(1-7)はCA1細胞におけるLTPを促進し、この効果はMasの拮抗作用によって阻止される。高齢の動物やCHFの動物では、ROSの増加はLTPと記憶障害に関連している。
過去10年間にわたり、レニンアンジオテンシン系(RAS)は、異なる受容体に作用する2つの関連するペプチドの生理学的平衡をもたらす2つの別々の酵素経路を含むことが認識されるようになった。十分に記載されたACE-AngII-AT1受容体系は、ACE2-Ang-(1-7)-Mas系と生理学的に対立し、それによって均衡が保たれていると考えられる。機能的には、RASのこれら2つの別々の酵素経路は、脳、微小血管系、及び末梢組織におけるROS産生と一酸化窒素(NO)の均衡を保つことに関与していると考えられている。AT1受容体活性化の増加は、NAD(P)Hオキシダーゼ及びROS産生を増加させることが知られており、これらは両方ともCHF及び高血圧において観察される交感神経活動の異常な増加に寄与することが知られている。AT1受容体誘導性のROS形成のこの増加には、ACE2-Ang-(1-7)-MasによるROS形成の阻害が対立すると考えられている。その大部分がAngIIのACE2切断から産生されるAng-(1-7)は、活性化Masを介して、そしておそらくAT2受容体を介して、脳内のROS産生を減少させ、NOSを増加させる。
脳内では、Mas受容体はニューロン、ミクログリア及び血管内皮細胞上で発現することが知られている。さらに、「神経血管単位」を構成するこれら3つの重要な要素(ニューロン、ミクログリア及び内皮細胞)の全てが、神経性高血圧症及びCHF誘発性の脳の炎症及びROS産生の増加における中心的な役割を果たす。CHFと高血圧との両方は、「神経血管単位」内で循環サイトカインを増加させてROS産生を促進する。このフィードフォワードカスケードの最終結果は、神経機能障害と認知機能障害である。認知障害を治療するための理想的な治療候補は、血液脳関門の両側、脳血管内皮細胞、及び神経細胞で作用することによってこのカスケードを妨害するように設計されるであろう。Mas受容体に作用するAng-(1-7)は、内皮細胞とニューロンの両方に作用を及ぼすことが知られている。しかしながら、認識機能障害及び/または機能障害を治療するために天然のAng-(1-7)を使用することは、天然のAng-(1-7)が酵素分解を受けやすいので適切ではない。さらに、天然のAng-(1-7)は、治療薬として適しているものとなるための血液脳関門を容易に通過するということがない。
いかなる理論にも拘束されることなく、本発明のオリゴペプチドを認知機能障害及び/または機能障害の治療に使用することの利点の1つは、本発明のオリゴペプチドが内皮の「相互作用」及び脳透過を増強したことであると考えられている。本発明のオリゴペプチドは、内皮細胞とニューロンとの両方に作用し、それによって、とりわけ神経血管系ROS産生を阻害し、そして脳の炎症性カスケードを軽減すると考えられている。
したがって、本発明のオリゴペプチドは、(1)術前及び/または術後の認知症に関連するか、または(2)うっ血性心不全、心血管疾患、または高血圧症の患者において観察される、認知機能障害及び/または機能不全を治療するために使用することができる。より一般的には、本発明のオリゴペプチドは、認知機能障害及び/または障害が、中枢神経系、特に脳における炎症性サイトカインの増加及び/または活性酸素種(「ROS」)の増加と臨床的に関連する対象における認知機能障害及び/または障害を治療するのに有用である。本明細書中で使用されるとき、「臨床的に関連する」という用語は、改善されると認知機能障害及び/または機能障害の低下、予防、治療、または回復をもたらす、認知機能障害及び/または障害(記憶喪失などであるが、これには限定されない)の根本的原因または根柢の原因を指す。認知機能障害及び/または機能障害を引き起こす可能性がある炎症性サイトカインの増加及び/または活性酸素種の増加に関連する例示的な臨床状態には、循環障害、心血管疾患、高血圧、低血圧、うっ血性心不全、脳卒中、塞栓症、手術(例えば、術後回復状態)、認知症、アルツハイマー病、疾患関連認知障害、外傷関連認知障害、加齢関連認知症、術後関連せん妄、及び/または、上記対象の中枢神経系内における、炎症性サイトカインの増加及び/または活性酸素種の増加、またはそれらの組み合わせが含まれるが、これらには限定されない。
抗侵害受容と鎮痛
本明細書中に記載される発明は、原型である天然のAng(1-7)ポリペプチドを含むMas受容体アゴニストが鎮痛をもたらすという発見に部分的に基づく。本明細書に記載されるように、Ang-(1-7)及びAng(1-7)誘導体の鎮痛特性は、がん誘発性骨痛(CIBP)及び炎症性疼痛を含む侵害受容の動物モデルにおいて評価された。Ang-(1-7)及び/またはAng(1-7)誘導体の急性及び慢性の全身投与は、いくつかの種類/様相の疼痛の行動徴候を顕著に減少させたことが実証されている。重要なことに、これらのMas受容体アゴニストの反復投与は、7日後に効力を失うことなくCIBPを減弱させた。しかしながら、治療の有無にかかわらず、営巣行動に有意な変化は観察されず、営巣がCIBPを有するマウスにおいて起こりうる不安または鬱病を表すものではないことを示唆している。
Ang(1-7)及びAng(1-7)誘導体の効果がMas受容体によって媒介されることを確認するために、Mas受容体アンタゴニスト、A-779を使用した対照実験を実施した。Ang(1-7)による肢上げ及び肢振りの阻害は、A-779の投与によって顕著に防止された。
Ang-(1-7)の反復投与はDRGまたは大腿骨押出物中のMasRの発現を顕著には変化させず、Ang-(1-7)の反復投与は骨-腫瘍の微小環境を神経支配する線維の体細胞を含むDRG中のMasRの発現を顕著に変化させないことを実証する。これらの知見と一致して、鎮痛薬耐性は治療パラダイムにわたって観察されなかった。
AT1受容体アンタゴニスト、ロサルタンカリウムの前投与は、がん誘発性骨痛をさらに軽減するが、それ自体は顕著な効果を有さないこともまた発見された。AT1拮抗作用が、Ang-(1-7)がAT1でのAngIIと同様に作用することを阻害し、それによってAng-(1-7)がMasRに主に結合して鎮痛をもたらすことを可能にするので、ロサルタンはCIBPにおけるAng-(1-7)に対する効果を増強すると仮定される。AT2拮抗薬、PD123319は、Ang-(1-7)の効果を減弱させず、疼痛緩和の増強ももたらさず、AT2受容体がCIBPにおいて役割を果たしていないことを示している。さらに、Ang-(1-7)は、Ang-(1-7)を受けた動物がゆっくりと回転する棒の上を歩き続ける時間の長さを測定することによる運動活性のいかなる変化も示さなかった。
まとめると、これらのデータは、Mas受容体におけるAng-(1-7)が、腫瘍侵害受容器微小環境における疼痛を阻害するためのものであることを実証している。Ang-(1-7)は、腫瘍誘発性の骨の分解を顕著に変化させず、腫瘍増殖を顕著に変化させもせず、鎮痛効果が侵害受容活性化の阻害に直接向けられ、腫瘍量の変化に起因していないことをさらに示唆する。したがって、Ang(1-7)などのMas受容体アゴニストは、骨組織への影響または抗新生物活性を介する二次的なものではなく、薬理学的な機序を介して一次的な鎮痛をもたらす。
投与方法
本発明のオリゴペプチドは、所望の生理学的効果を達成するために患者に投与することができる。好ましくは、患者は動物、より好ましくは哺乳動物、そして最も好ましくはヒトである。オリゴペプチドは、選択された投与経路、すなわち経口的または非経口的に適合させた様々な形態で投与することができる。これに関する非経口投与は、以下の経路による投与を含む:静脈内;筋肉内;皮下;眼内;滑液内;経皮、眼、舌下、及び頬側を含む経上皮;眼、経皮、眼、直腸、ならびに吸入及びエアロゾルによる経鼻吸入を含む局所;腹腔内;ならびに直腸全身。
活性オリゴペプチドは、例えば、不活性希釈剤または同化可能な食用担体と共に経口投与することができ、あるいは硬ゼラチンまたは軟ゼラチンのカプセルに封入することができ、あるいは錠剤に圧縮することができる。経口治療投与の場合、活性オリゴペプチドを賦形剤と混合し、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用することができる。そのような組成物及び製剤は、少なくとも0.1%の活性オリゴペプチドを含み得る。組成物及び製剤のパーセンテージは、当然に変動し得、都合よくは、単位の重量の約1~約10%の間であり得る。そのような治療上有用な組成物中の活性オリゴペプチドの量は、適切な投与量が得られるようなものである。本発明による好ましい組成物または製剤は、経口投与単位剤形が約1~約1000mgの活性オリゴペプチドを含むように調製される。
錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは以下のものも含むことができる:トラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ、またはゼラチンのような結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤、スクロース、ラクトース、またはサッカリンなどの甘味剤、またはペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリー香味料などの香味剤を添加することができる。投薬単位形態がカプセル剤である場合、それは上述の種類の物質に加えて、液体担体を含むことができる。コーティングとして、または投与単位の物理的形態を変更するために、他の様々な物質が存在してもよい。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセル剤は、シェラック、糖またはその両方でコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性オリゴペプチド、甘味剤としてのスクロース、保存料としてのメチル及びプロピルパラベン、染料、及びチェリーまたはオレンジの風味のような香味剤を含み得る。当然に、任意の投薬単位形態を調製するのに使用される任意の物質は、薬学的に純粋であり、そして使用される量において実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性オリゴペプチドは持続放出の製剤及び製剤に組み込むことができる。
活性オリゴペプチドは非経口投与することもできる。活性オリゴペプチドの溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中で、ならびに油中で調製できる。通常の保存及び使用条件下においては、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含む。
注射用途に適した医薬形態には、滅菌水溶液または分散液、及び滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、形態は、滅菌されていなければならず、かつ容易に注射が可能である程度まで流体でなければならない。それは製造及び貯蔵の条件下で安定であり得、そして細菌及び真菌のような微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含む分散媒体の溶媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防御は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの注射用組成物の持続的吸収。
滅菌されている注射用溶液は、活性オリゴペプチドを、上に列挙される様々な他の成分と共に必要量で適切な溶媒に混合し、必要に応じて、その後のろ過滅菌によって調製される。一般的に、分散剤は様々な滅菌した活性成分を、基礎的な分散媒及び上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルへと混合することによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、それは、活性成分プラス予め滅菌濾過したそれらの溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末をもたらす。
本発明の治療用オリゴペプチドは、上述のように、単独で、または薬学的に許容される担体と組み合わせて哺乳動物に投与することができ、その割合は、オリゴペプチドの溶解度及び化学的性質、選択された投与経路及び標準的な薬務によって決定される。
医師は、予防または治療に最も適した本治療薬の投与量を決定し、それは投与形態及び選択された特定のオリゴペプチドに応じて変動し、また治療中の特定の患者によっても変動するであろう。医師は一般に、状況下で最適な効果が得られるまで、少量の投与量でわずかに増量しつつ、治療を開始することを望むであろう。治療用量は、一般に、1日当たり約0.1~約1000mg/日、そして好ましくは約10~約100mg/日、または約0.1~約50mg/kg体重であり得、好ましくは1日当たり約0.1~約20mg/kg体重で、いくつかの異なる投与単位で投与することができる。約2倍~約4倍程度のより高い投与量が経口投与に必要とされ得る。
本発明のさらなる目的、利点、及び新規の特徴は、限定することを意図しない以下のそれらの実施例を検討することにより当業者には明らかになるであろう。実施例において、実施するために構造的に簡潔にされる手順は現在時制で記載されており、そして実験室で行われた手順は過去時制で示されている。
実施例1:Ang-(1-7)誘導体のハイスループットスクリーニング(HTS):
HTSのために、2つの別個の細胞株、初代CA1海馬ニューロン及びヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)における、一酸化窒素(NO)産生の高感度で直接的な測定を利用した。初代CA1細胞の使用は、中枢効果の研究にとって自明である。さらに、CHFの進行及び認知機能障害の誘発に対する内皮機能不全の寄与は臨床的に認められている。Ang-(1-7)シングリング軸が内皮機能不全の治療標的として有望であるという新たな事実は、機序としてのCHF誘発内皮機能不全の回復を除外できないことを強く示唆している。HUVECはヒト臍静脈から単離され、初代培養後に凍結保存される。これらの細胞は内皮細胞機能の研究のためのモデルインビトロ系であり、Mas依存性NO産生を直接測定するために使用され得るので、HUVECは一次スクリーニングのための第二のラインとして含まれる。
細胞培養:初代海馬CA1神経細胞を単離するために、全脳を新生仔ラットの子(1~2日齢)から取り出し、皮質を切除した。海馬を単離し、そしてCA1視野を切除し、そして緩衝液中に置いた。消化緩衝液中で穏やかに破砕した後、細胞を計数し、培地中に置き、そしてポリ-d-リジンでコートした96ウェルフォーマット中に播種した。播種時に、細胞は約50%の密度であり、アッセイの開始前に70~80%の密度になるまで培養した。市販のHUVEC(Life Technologies/Thermo Fisher)を解凍し、ゼラチンでコート下96ウェルフォーマット中に播種した(5000~10,000細胞/ウェル)。アッセイの開始前に、HUVEC細胞を一晩培養した。
細胞活性化:Roche Applied Scienceが開発したxCELLigenceシステムリアルタイムセルアナライザー(RTCA)は、マイクロエレクトロニクスバイオセンサー技術を使用して、細胞のGタンパク質受容体活性化を含む細胞イベントの動的、リアルタイム、無標識、及び非侵襲的分析を実施する。RTCA分析を利用して、培養中のヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)を活性化する本発明のオリゴペプチド及び天然のAng-(1-7)の効力及び相対的能力を測定した。細胞インピーダンス(CI)の直線的増加に基づく均一な細胞接着に続いて、HUVECをAng-(1-7)及び本発明のオリゴペプチドで処理した。図1における経時的なCIの各軌跡は、化合物添加時にCIに対して標準化した4つのウェルの平均を表す。図1は、PN-A3、PN-A4、PN-A5、及び天然のAng-(1-7)の相対効力を測定するためにxCELLigence RTCAを使用して得られたデータからの結果を示す。PN-A3、PN-A4、及びPN-A5の100nMの投与ならびにPN-A3及びPN-A5の10nMの投与は、天然のAng-(1-7)よりも顕著な(約2倍)CIの増加をもたらし、本発明のオリゴペプチドが天然のAng-(1-7)よりも細胞活性化に対してより高い効力を有することを実証する。
NO産生アッセイ。本発明のオリゴペプチドの作用機序のスクリーニングとして、本発明の3つのオリゴペプチド(PN-A3、PN-A4、及びPN-A5)のNO産生を増加させる能力を特徴付けし、天然のAng-(1-7)と比較した。ヒト臍帯血管内皮細胞(HUVEC)培養プレートは、ジアミノフルオレセイン-FMジアセテート(DAF-FM、1μM)を含む蛍光反応緩衝液(0.2Mリン酸緩衝液、pH7、1mMのEDTA、0.1%グルコース)を添加され、リアルタイムNO産生を測定した。485nmでの励起及び535nmでの発光を伴うBioTek Synergy 2マイクロプレートリーダーを使用して、時間分解(10分)蛍光強度を検出した。DAF-FMは、生細胞中のNOを選択的に検出するための高感度の蛍光誘導体である。
図2は、天然のAng-(1-7)及び本発明の3つのオリゴペプチドに5分間暴露した後の相対ピーク蛍光強度を示す。値を対照蛍光に対して標準化した。予想通り、天然のAng-(1-7)は、対照レベルに対して顕著なNOの上昇を誘導した。より重要なことには、図2に示すように、本発明のオリゴペプチド(すなわち、PN-A3、PN-A4、及びPN-A5)はまた、対照レベルを超える顕著なNOの上昇を誘発し、PN-A5は天然のAng-(1-7)で見られるよりも顕著にNO産生を増強した。*=p<0.05。これらの結果は、本発明のオリゴペプチドが、NO産生を、天然のAng-(1-7)のそれと同等またはそれ以上に、増加させることを実証している。
図3Aは、天然のAng-(1-7)によるNO産生を阻止することが知られている選択的Mas受容体アンタゴニストA779(C39601211)の、本発明のオリゴペプチド、すなわちPN-A5によって誘発されるNO産生をも同様に阻止する能力を示す。これらの研究では、HUVEC細胞を1μMのDAF-FMと共にインキュベートして、リアルタイムNO産生を測定した。細胞は、PN-A5単独(1.0mM、n=10)またはPN-A5+A779(n=6)のいずれかによって処理された。測定は、Olympus 550共焦点顕微鏡を用いてなされ、Image Jを使用して分析された。画像は10秒毎に得られた。これらの結果は、オリゴペプチドPN-A5の作用がMas受容体の活性化によるものであることを示している。
図3Bは、天然のAng-(1-7)によるNO産生を阻止することが知られている選択的Mas受容体アンタゴニストA779の、本発明のオリゴペプチドであるPN-A5によって誘発されるNO産生をも同様に阻止する平均効果を示す。これらの研究では、HUVEC細胞を1μMのDAF-FMと共にインキュベートして、リアルタイムNO産生を測定した。細胞は、PN-A5単独(1.0mM、n=10)、PN-A5+A779(n=6)、またはNO供与体S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)のいずれかによって処理された。蛍光測定は、Olympus 550共焦点顕微鏡を用いてなされ、Image Jを使用して分析された。画像は10秒毎に得られた。PN-A5によって生成されたNO応答は、A779によって完全に阻止され、PN-A5のNOを増加させる能力は、Mas受容体に対するPN-A5の作用によるものであることが実証された。
実施例2:心不全(HF)誘発性認知障害に対するAng-(1-7)誘導体の効果:
全部で33匹のオスのC57Bl/6J成体マウス(Harlan、8~10週齢)を使用した。マウスを無作為に偽(n=12)またはうっ血性心不全(CHF)群(n=21)のいずれかに割り当てた。実験群は以下のように記載される:偽+生理食塩水、CHF+生理食塩水、CHF+PN-A5。手術前の全てのマウスの体重を量り、麻酔をかけた。CHFマウスについては、MIを左冠状動脈(LCA)の結紮によって誘導した。麻酔下(空気とOの混合物中2.5%イソフルラン)、開胸術を左第4肋間隙で行い、LCAを永久的に結紮して心筋梗塞(MI)を誘導した。LCAの閉塞は、白化、結紮糸の下流の左心室の前壁の色のわずかな変化を観察することによって確認された。LCAを結紮することを除いて、偽マウスに同一の処置を施した。
MI手術から8週間後、CHFマウスを、Ang-(1-7)誘導体PN-A5(1mg/kg/日)の28日間毎日の皮下注射または生理食塩水のいずれかで処理した。21日後、下記のように標準的なNORテストを使用して動物を物体認識について試験した。約25日間の処理後、下記のように標準的なモーリスの水課題を使用して動物を空間記憶について試験した。
新規物体認識(NOR):装置は、隔離された観察室の内側のテーブル上に置かれた均一に照らされたプレキシグラス箱(12cm×12cm×12cm)からなっていた。装置のすべての壁は黒色のプラスチックで覆われており、床は、物体の習熟と試験段階の間に物体の位置が変わらないことを保証するために使用されたグリッドで灰色であった。マウスの行動と物体の探索はデジタルカメラで記録された。カメラからのデジタル画像は隣接する部屋のコンピューターに送られた。2つのデジタルストップウォッチを使用して、マウスが試験の物体と相互作用するのに費やした時間を追跡した。全てのデータは分析のためにエクセルファイルにダウンロードされた。試験には、まったく異なる3つの組の物体を使用した。
新規物体認識課題は、馴化段階、習熟段階、及び試験段階の3段階を含んでいた。馴化段階については、1日目及び2日目に、マウスを観察室に運び、1日10分間空の箱に馴化させた。3日目に、各マウスは、2つの同一の物体による「習熟」試行とそれに続く所定の遅延期間、次いで1つの物体が習熟段階のものと同一であり、他のものが新規である「試験」試行を受けた。全ての刺激は、互いに三重のコピーで利用可能であり、そのため、物体を二度提示する必要はない。物体は、形、色、及びサイズがさまざまなガラス、プラスチック、または木材で作製されていた。したがって、異なる組の物体は、テクスチャ的にも視覚的に独自のものであった。各マウスを各段階について同一の方法で箱の中に入れ、物体の反対側の壁の中心に向けた。嗅覚的手がかりの存在を排除するために、各試行後及びマウス間で、箱全体及び物体を常に70%エタノールで完全に洗浄した。習熟段階の間、マウスは2つの同一の物体を4分間探索することを許され、次いで彼らのホームケージに戻った。2時間の遅延の後、「試験段階」を開始した。マウスを同一のボックスに戻し、そこで習熟段階で提示された2つの同一の物体のうちの1つを新規の物体に切り替え、マウスにこれらの物体をさらに4分間探索させた。マウスの「探索行動」とは、動物がその鼻を約2cm以下の距離で物体に向けることと定義した。物体にもたれかかること、または物体の上にまっすぐに立つことなどの任意の他の行動は探索とは見なされなかった。探索は、マウスの手術群(CHF対偽)を、盲検化された観察者によって採点された。最後に、試験段階での物体の位置、及び新規または習熟のものとして使用された物体は、2つの群のマウス間で相殺された。
識別率は、試験段階中の、新規の物体を探索するのに費やした時間から習熟した物体を探索するのに費やした時間を差し引いて、合計探索時間で割ったものから計算した。D比率=(t新規-t習熟)/(t新規+t習熟)。データは「試験段階」の最初の2分間から分析された。正のスコアは新規の物体に費やしたより多くの時間を示し、負のスコアは習熟した物体に費やしたより多くの時間を示し、ゼロのスコアはゼロの選好性を示す。対象間の一元配置分散分析(ANOVA)を使用して、全てのNORデータを調べた。個々の群の違いは、事後Tukey HSD検定を使用して検定した。異なる標本サイズの群間の比較では、修正Levene検定を使用して等分散を検定した。すべての統計的検定及びp値は、DanielのXLtoolboxによってMS Excelを使用して計算され、アルファは0.05レベルに設定された。エラーバーはSEMを表す。
モーリスの水課題:空間学習と記憶/視覚試験を試験する:使用した装置は、毒性のない白色のCrayola塗料を添加して不透明にした25℃の水を含む直径約1.5メートルの大きな円形プールであった。避難台は水面のすぐ下に隠れていた。視覚的でコントラストの高い合図を試験室の壁に置いた。隣接する部屋のコンピューターに接続されたデジタルカメラは、課題の進行状況を記録するために水槽の上に吊り下げられる。MI前、MIまたは偽手術の4及び8週間後の空間試験のために、台はプール内の異なる位置に配置された。
モーリスの水課題の空間版では、すべての動物に4日連続で1日6回の訓練試行が実施された。これらの試行の間、逃避台は水面下に隠されていた。マウスを、水槽の周囲にある7つの異なる開始位置から解放し、次のマウスを試験する前に各動物を2回連続した試行を実施した。2つの連続した試行で同一の場所からマウスが解放されないように、解放位置の順序を各マウスについて擬似ランダム化した。水泳課題の成績は、市販のソフトウェアアプリケーション(ANY-maze,Wood Dale,IL)によって分析した。放出位置が異なり、水泳速度が異なると、逃避台に到達するまでの待ち時間に変動が生じるため、異なる放出位置にわたるマウスの性能の比較可能性を保証するために修正積分経路長(CIPL)を計算した。CIPL値は、動物の水泳速度によって補正された避難台からの経時的な累積距離を測定し、これは累積探索誤りに相当する。したがって、放出位置に関係なく、マウスが主に逃避台に向かって泳ぐ場合、CIPL値は低くなる。対照的に、マウスが台から離れる方向に泳ぐのにより長い時間を費やすほど、CIPL値は高くなる。
オリゴペプチドPN-A5による治療の約21日後に、CHFマウスは物体認識記憶の改善を示した。図4は、新規物体認識試験(NOR)によって決定された、物体認識記憶に対するオリゴペプチドPN-A5による3週間の処理の効果を示す。オリゴペプチドPN-A5による処理を有するCHFマウス(n=11)の平均成績は、生理食塩水を有する偽マウス(n=6)と同様であり、(CHF-Ang-(1-7)誘導体PN-A5M=+0.38、SE .11対偽-生理食塩水M=+0.52、SE .06)、生理食塩水で処置したCHFマウス(n=10)と比較して顕著に大きい(M=-.05、SE .09、*=p=0.009)。これらの結果は、オリゴペプチドPN-A5がCHFを有するマウスにおける物体認識記憶障害を軽減し、さらには救済するように作用することを実証する。
オリゴペプチドPN-A5による治療の約25日後に、CHFマウスは空間記憶の改善を示した。図5は、CHF+オリゴペプチドPN-A5マウス(n=11)、CHF-生理食塩水処理マウス(n=10)、及び偽+生理食塩水マウス(n=6)の平均CIPLを示す。CHF+オリゴペプチドPN-A5マウスは、CHF-生理食塩水マウスと比較して、モーリス水泳課題の3日目の空間記憶において顕著な改善を示した。生理食塩水で処理したCHFマウスは、CHF-オリゴペプチドPN-A5で処理したマウスと比較して顕著に高いCIPLスコアを有した(CHF-生理食塩水M=32.5、SE=2.1対CHF-オリゴペプチドPN-A5 M=23.5、SE 2.2、*=p=0.003)。これらの結果は、オリゴペプチドPN-A5が空間記憶を改善することを実証している。
実施例3:がん誘発性骨痛に対するAng(1-7)誘導体の効果:
BALB/cfC3Hマウス(Harlan,IN,USA)は研究開始前に15~20gであった(処理群あたりn=5匹の動物)。罹患率の臨床的徴候を観察し、選択パラメーター(例えば、麻痺、1週間で20%を超える急速な体重減少)を満たさなかったマウスを試験から除外した。
マウスをケタミン:キシラジン(80mg:12mg/kg、10ml/kg注射容量;Sigma-Aldrich)で麻酔した。関節切開術を実施した。右大腿骨遠位部の顆を露出させ、マウスの大腿骨の髄内間隙内へと、5μLのOpti-MEM中の4×10の66.1細胞または対照動物での細胞なしの5μLのOpti-MEMを注射するための間隙作るために穿孔した。プラスチックチューブを介して10μLのHamiltonシリンジ(CI31,Plastics One)に固定された注射カニューレを用いて注射を実施した。注射器の適切な配置は、Faxitron X線イメージングの使用によって確認された。穴を骨セメントで密封した。
7日目に単回用量の薬物を盲検様式で投与した0、15、30、60、90、及び120分後に、自発痛(肢振り及び肢上げ)ならびに触覚異痛を測定した。乳癌による過敏症は、薬物投与後2時間でベースラインレベルに戻った。肢振り及び肢上げは、安静時の状態で2分間観察された。肢振りは、歩行または運動と関連していないときの右後肢の持ち上げ及び急速な屈曲によって特徴付けられた。肢振りは5チャンネルカウンターで記録された。肢上げは、右後肢を胴体の下の完全に引き込まれた位置に持ち上げることによって特徴付けられた。2分間にわたって肢上げに費やした時間を記録した。
触覚異痛の評価は、処理群を盲検化した実験者によって、Chaplanアップ-ダウン法を使用した一連の較正済みvon Frey式フィラメントによるプロービングに応答して腫瘍接種部位と同側の肢の引き込み閾値を測定することからなった。50%の肢の引き込み閾値は、Dixonのノンパラメトリック法によって決定した。
7日目に、マウスに生理食塩水または0.8μg/μL(200μL)のいずれかを、800μg/kgの総用量で腹腔内(i.p.)注射を行った。PN-A5のインビボ効力を、合計2時間測定した。
群内データは、ノンパラメトリック一元配置分散分析によって分析した。P≦0.05の場合、差異は有意であると見なされた。すべてのデータはGraphPad Prism 6でプロットされた。
図6は、がん誘発性骨痛(CIBP)に対するオリゴペプチドPN-A5の効果に関する結果を示す。マウスの大腿骨遠位部に移植されたがんは、7日後に自発的肢振りの数(図6A)及び肢上げに費やす時間(図6B)の有意な増加を誘導した。PN-A5のボーラス投与(800μg/kg、i.p.)は、持続時間のほぼ1時間の間、がん誘発自発痛を有意に逆転させた(肢振り:60分;肢上げ:30分;p<0.001)。同様に、がん誘発触覚過敏は注射後30分で有意に減弱した(p<0.01)。全ての測定について、ピーク効果の時間は15~30分であった。行動は注射後90分で手術後の値に戻った。培地を接種した偽対照動物は、時間的経過の間のいずれの時点においても手術前のベースラインと統計的に差がなかった。
実施例4:がん誘発性骨痛に対するAng(1-7)誘導体の効果:
原型的なMas受容体アゴニストである天然のAng(1-7)のがん誘発性骨痛に対する効果を調べた。Ang-(1-7)は鎮痛をもたらしたが腫瘍誘発性の骨の分解を顕著に変化させることも骨量減少を減少させることもなかったので、Mas受容体におけるAng-(1-7)の作用が腫瘍-侵害受容微小環境を介する疼痛を抑制し、腫瘍-骨環境は抑制しないことが発見された。Ang-(1-7)による慢性的な治療は腫瘍増殖を顕著に変えることがなく、さらに鎮痛効果が侵害受容活性化を直接的に阻害し、それが腫瘍量の変化によるものではないことをさらに示唆している。
細胞培養:マウス乳腺癌細胞株66.1を、10%ウシ胎児血清、100IU-1ペニシリン、及び100μgmL-1ストレプトマイシン(P/S)を含むEagleの最小必須培地中で培養した。66.1細胞をT-75組織培養フラスコに播種し、インキュベーター内で37℃、5%COで指数増殖させた。後述の処理で培養した細胞の生存率は、XTTアッセイ(ATCC,Manassas,VA)を使用して測定した。
動物:15~20gのメスのBALB/cAnNHsdマウス(Harlan,IN,USA)をこの試験に使用した。マウスを12時間の明/暗周期で気候制御室に収容し、食物と水を自由に摂取させた。動物を試験の0、7、10、及び14日目に急速な体重減少の臨床的徴候及び苦痛の徴候について観察した。
薬物処理:動物に、0.9%食塩水に溶解した、アンジオテンシン-(1-7)(Tocris,Ellisville,MO)、MasRアンタゴニストA-779(Abcam,Cambridge,MA)、AT1アンタゴニストロサルタンカリウム(Tocris Bioscience,Minneapolis,MN)、またはAT2アンタゴニストPD123319ジトリフルオロ酢酸(Tocris Bioscience,Minneapolis,MN)を投与した。全ての腹腔内(i.p.)注射は10mL/kgの容量で実施された。全身投与量は以下のようである:Ang-(1-7)=0~100μg/kg、A-779=0.19μg/kg、ロサルタンカリウム=0.4mg/kg、PD123319ジトリフルオロ酢酸塩=0.4mg/kg。アンタゴニスト試験では、A-779、ロサルタンカリウム、またはPD123319ジトリフルオロ酢酸をAng-(1-7)の30分前に投与した。
尾フリック:急性侵害受容に対するAng-(1-7)の効果を決定するために温水(52℃)尾フリック試験を使用した。ナイーブマウスの尾の遠位3分の1を水浴に浸した。尾が水浴から引き出される時間として定義される、引き込み待ち時間を記録した。組織損傷を防ぐために、10秒のカットオフタイムを実施した。ベースライン待ち時間を薬物投与前に記録した。動物にAng-(1-7)(0~100μg/kg)を投与した(i.p.)。尾フリック待ち時間は、治療後15、30、60、90、120、150、及び180分後に再評価した。
ロータロッド:ロータロッド性能試験を使用して、Ang-(1-7)の運動及び/または鎮静作用を決定した(Rotamex 4/8,Columbus Instruments,Columbus,Ohio,USA)。試験の3日前に、ナイーブマウスを5回試行して、回転するロッドに順応させることができた(10回転/分)。試験当日、動物に1回試行させ、次いでベースライン化した。消耗を防ぐために120秒のカットオフ時間を伴う、動物がロッド上に留まった時間の長さを記録した。上述のように動物に投与し(i.p.)、投与後15、30、60、及び120分後に再評価した。
関節切開術-66.1細胞の骨髄内移植:CIBPを誘発するために、関節切開術を実施した。手短に、動物を80mg/kgのケタミン-12mg/kgのキシラジン(10mL/kgの容量中)で麻酔した。手術部位を剃毛し、70%エタノール及びベタジンで洗浄した。右大腿骨の顆を露出させ、穿孔(0.66mm)を穿孔して66.1細胞接種用の間隙を作った。MEM中の5μl容量の66.1細胞(1μl当たり8,000細胞)(または偽動物に細胞を含まない5μlのMEM)をマウス大腿骨の髄内間隙に注射した。注射器の適切な配置は、ラジオグラフ(Faxitron X線イメージング)によって確認された。穴を骨セメントで密封し、膝蓋骨を元に戻した。筋肉及び皮膚を、それぞれ5-0ビクリル縫合糸及び創傷オートクリップを用いて別々の層で閉鎖した。感染を防ぐために、動物に8mg/kg(10mL/kg容量)のゲンタマイシンを与えた。手術後7日目にステープルを外した。
急性行動テスト:手術後14日目に、自発的肢振り/肢上げのベースライン行動を記録した。肢振りは、歩行または他の運動と関連していないときの大腿骨接種と同側の後肢の持ち上げ及び急速な屈曲によって特徴付けられた。肢上げは、接種した後肢を胴体の下の完全に引き込まれた位置に持ち上げることによって特徴付けられた。肢振りの総数及び2分の持続時間のうちの肢上げに費やした時間を記録した。次いで、マウスを処理群に分け、Ang-(1-7)(0~10μg/kg)、A-779(0.19μg/kg)、ロサルタンカリウム(0.4mg/kg)、PD123319(0.4mg/kg)、ビヒクル(0.9%生理食塩水)、またはAng(1-7)と各アンタゴニストの組み合わせを全身投与した。Ang-(1-7)の30分前にアンタゴニストを投与した。投与後、疼痛行動がベースラインに戻るまで、動物を3時間の時間経過にわたって試験した。
慢性行動試験:手術後7日目に、上述のように、自発的疼痛のベースライン行動を記録した。マウスをAng-(1-7)(0.058μg/kg)、A-779(0.19μg/kg)、ビヒクル(0.9%食塩水)、またはそれらの組み合わせで処理した(i.p.)。Ang-(1-7)の30分前にアンタゴニストを投与した。手術後7~14日に、毎日、同じ時間に、動物に投与した。10日目に、急性試験によって決定されたピーク効果の時間に基づいて、疼痛行動を治療の15分後に評価した。手術後14日目に、治療前後の行動を再度記録した。手術後14日目の処理及び試験の後に動物を屠殺し、生化学的分析のために以下の組織を採取した:血清、大腿骨押出物、及び腰椎後根神経節。
営巣:ナイーブマウス、培地マウス、及びがん接種マウスの営巣行動を、Negusらによって記載されたプロトコールを使用して評価した。薬物投与の前の30分間、動物を、既存の巣のない個々のケージに慣れさせた。綿繊維巣材を6つの等しい小片に切断し、そして各小片を、薬物投与後に上述した方法で6つのゾーンでケージに入れた。100分の時間経過を通して、クリアゾーンの数が記録され、完了時に、それぞれの膨らませた巣材の高さ(mm)を測定した。
ウェスタンブロット解析:行動試験に使用したマウスからの後根神経節(DRG)及び大腿骨押出物を、MasRの発現について分析した。超音波処理によって、プロテアーゼインヒビターカクテル及びEDTAを含む改変放射免疫沈降アッセイ(RIPA)緩衝液(Pierce,Rockford,IL,USA)中でDRGをホモジナイズした。各試料10μgを10%SDS-ポリアクリルアミドゲル(TGX Criterion XT;Bio-Rad,Hercules,CA)で展開し、ポリビニリデンジフルオリドメンブレン(PVDF,Bio-Rad,Hercules,CA)に移した。同側及び対側大腿骨を各動物から取り出した。各大腿骨について、近位端及び遠位端をクリップで留め、そして髄内押出し物を、プロテアーゼインヒビターカクテル及びEDTAを含む700μLのリン酸緩衝生理食塩水(Pierce,Rockford,IL,USA)で6回フラッシュした。5匹の動物からの大腿骨髄を試料毎にプールし、15μgの試料を展開し、DRGと同じ方法で移した。ブロットをポンソーS(Sigma,St.Louis,MO)で染色することによりタンパク質の転移を確認し、PVDF膜を0.05%(v/v)Tween-20を含有するTris緩衝生理食塩水(TBST)中の5%脱脂粉乳で、室温で1時間ブロッキングした。次いで、膜を一次抗体:TBST中の1%ミルク中の、ウサギポリクローナル抗アンジオテンシン-(1-7)Mas受容体(Alomone Labs AAR-013;DRGについては1:200希釈、もしくは大腿骨については1:800希釈)またはマウスモノクローナル抗アクチンAC40(Cell Signaling 7076S;1:4,000希釈)と共に、4℃で一晩インキュベートした。膜をTBSTで洗浄し、適切な二次抗体(Cell Signaling 7074HRP結合抗ウサギIgG、1:10,000希釈;Cell Signaling 7076HRP結合抗マウスIgG、1:5000希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。膜を再度洗浄し、増強化学発光(Clarity ECL Substrate,Bio-Rad,Hercules,CA)を使用して現像し、バンドをGeneMate Blue-Ultra Autoradフィルム(BioExpress,Kaysville,UT)を使用して検出した。ImageJデンシトメトリーソフトウェア(Wayne Rasband,Research Services Branch,National Institute of Mental Health,Bethesda,MD)を使用して、バンドを定量し、バックグラウンドを補正した。全てのデータを各レーンのアクチンに対して標準化し、未処理対照に対する倍数変化として報告した。
確立されたCIBPにおけるAng-(1-7)投与は、MasR依存的に自発的疼痛を軽減する。
66.1腫瘍細胞を同系BALB/cAnNHsdマウスの右大腿骨に注射した確立されたCIBPのモデルにおいて、Ang-(1-7)の抗侵害受容効果を調べた。手術前、マウスは疼痛の行動的徴候を示さなかった(データは示さず)。動物は、培地処理対照と比較して有意な量の肢振り(図7Aの「ポストSx」)及び肢上げ(図7Bの「ポストSx」)を示した(p<0.0001、n=8)。Ang-(1-7)(0.036、0.360、1、及び10μg/kg)またはビヒクルの単回全身注射を投与し、疼痛行動を評価した。Ang-(1-7)を急性i.p.投与された動物は、0.36または1μg/kgのいずれかの注射後15分で開始し、ほぼ2時間持続した自発的疼痛行動の有意な(p<0.01、n=8)減少を示した(図7A及び7C)。
用量反応曲線は、肢上げ行動及び肢振り行動について、ピーク効果の15分の時点で収集したデータから作成した(それぞれ図7B及び7D)。15分では、肢上げ行動の低下におけるAng-(1-7)の最大効果は52.75%(p<0.01、n=8)であり、対応するA90用量は0.058μg/kgであった(図1B)。肢振りは、より低い用量(0.036μg/kg)でより少ない用量依存性及びより顕著な阻害を示した。したがって、Ang-(1-7)の単回注射は、確立されたCIBPを有する動物において自発的疼痛行動を50%を超えて減少させるのに有効である。
観察されたAng-(1-7)効果がMas受容体によって媒介されることを確認するために、大腿骨接種の14日後に、A-779(0.19μg/kg)、選択的MasRアンタゴニスト、またはビヒクルをAng-(1-7)(0.058μg/kg)の30分前に投与した。A-779単独でMasRを阻害しても、自発的または誘発疼痛閾値は変化しなかったが、A-779による前処理は、肢上げ(図7E、p<0.01)及び肢振り(図7F、p<0.001)の、Ang-(1-7)による減衰を有意に阻害した。これらのデータは、Ang-(1-7)がMasRでの作用を通じて確立されたCIBPにおいて抗侵害受容を誘発することを実証する。
MasRによるAng-(1-7)の抗侵害受容作用は、反復投与後も維持される。
反復Ang-(1-7)の抗侵害受容活性を調べて、他の鎮痛薬と同様に、慢性投与が耐性をもたらすかどうかを判定した。Ang-(1-7)(0.058μg/kg、i.p.)を、大腿骨への66.1細胞の移植の7日後から開始して毎日投与した。薬物投与の7日前、ならびに手術後10日目及び14日目に、マウスを処理後15分のCIBP自発疼痛行動について評価した。がん接種は、手術後7日の肢上げに費やされた時間及び肢振りの数を有意に増加させた(p<0.0001、n=12)。動物は、手術後10日目及び14日目にAng-(1-7)処理後に肢上げ(図8A)及び肢振り(図8B)の有意な(p<0.0001、n=12)減少を経験した。ビヒクル処理は顕著な効果を有さなかった。
A-779を再び使用して、Ang-(1-7)の抗侵害受容作用がMas受容体によって媒介されることを確認した。A-779(0.19μg/kg)を、がん接種後7~14日に毎日、Ang-(1-7)(0.058μg/kg)の30分前に投与した(図8C及び8D)。A-779単独の投与はマウスに対して侵害受容促進効果も抗侵害受容効果も有さず、単回注射後の以前の観察と同様に、Ang-(1-7)前のA779による慢性前処理は、後者によるCIBPの減弱を防止した。
確立されたCIBPにおけるAng-(1-7)/MasRを介した抗侵害受容に対するAT1/AT2アンタゴニストの効果。
AngIIは、Ang-(1-7)の前駆体分子である。従って、Ang-(1-7)抗侵害受容の媒介におけるAngII受容体の役割を、AT1またはAT2選択的アンタゴニスト、ロサルタンカリウム(Ki=10nM)及びPD123319(EMA200としても知られる)(IC50=34nM)のそれぞれによる前処理を使用して調べた。上述のように、動物に66.1細胞または培地を接種し、大腿骨接種の14日後に疼痛行動を評価した。マウスに、Ang-(1-7)(0.058μg/kg、i.p.)、またはビヒクル(0.9%生理食塩水)の30分前に、AT1またはAT2アンタゴニスト(0.4mg/kg、i.p.)のいずれかを投与した。肢振り及び肢上げの自発的疼痛行動を、投与後15、30、60、90、120、及び150分に記録した。以前の結果を確認すると、Ang-(1-7)投与単独は疼痛行動を減少させた(p<0.01、n=7)が、一方で、ロサルタンカリウムもPD123319も単独投与では疼痛行動を有意に変化させなかった。興味深いことに、Ang-(1-7)の前にAT1受容体拮抗薬、ロサルタンカリウムを投与すると、投与30分後に肢上げの低減において77.527%の最大可能有効性(MPE)(p<0.0001、n=7)(図9A)が、投与後15分で、肢振りの減少における80.56%のMPE(p<0.0001、n=7)(図9B)が得られた。しかしながら、Ang-(1-7)の前にAT2拮抗薬、PD123319を使用しても、Ang-(1-7)単独で処理した動物群と比較して、確立されたCIBPを有する動物の肢上げまたは肢振りをさらに増加または減少させることはなかった(図9C及び9D)。ロサルタンカリウムのAng-(1-7)誘発抗侵害受容作用を増強する相加効果はさらに研究されていないが、AT1受容体へのAng-(1-7)の結合を阻止し、それによってMas受容体に結合するためのAng-(1-7)の遊離濃度を増加させるロサルタンの能力から生じる可能性がある。
確立されたCIBPにおけるAng-(1-7)投与は営巣行動を変えない。
営巣は、マウスの先天的な行動であり、さまざまな疼痛の状態によって妨げられる。関節切開術とAng-(1-7)投与の両方が営巣行動に及ぼす効果を評価した。動物の個々のケージの6つのゾーンに6つの同じ大きさの巣材の小片を入れた。動物が巣材の小片を一掃したゾーンの数を100分の時間経過にわたって記録した(図10A)。手術後6日目の試験の最初の1時間の間に、66.1接種動物はナイーブ動物より有意に少ないゾーンを一掃した(p<0.05)。研究の2時間後、培地動物は、ナイーブ動物と66.1接種動物の両方よりも少ないゾーンを一掃した(p<0.05)。手術後15日目に、Ang-(1-7)(0.058μg/kg、i.p.)またはビヒクル(0.9%食塩水)で処理した66.1接種動物に対し、第2の試験を実施した(図10B)。両方の処理されたがん群の営巣行動はナイーブ群と有意に異ならなかった。しかしながら、75分と90分の両方の時点で、培地動物は他の群よりも少ないゾーンを一掃した(p<0.05)。これらのデータは、確立されたCIBPを有する動物の営巣はマウスの営巣行動を変えるが、Ang-(1-7)投与はこれらの複雑な行動をさらに変えないことを実証する。
ナイーブマウスにおいてAng-(1-7)投与は抗侵害受容を引き起こすが運動障害は引き起こさない
Ang-(1-7)をナイーブマウスに全身投与した(0.360、1、10μg/kg、i.p.)。サーマル尾フリック待ち時間のわずかではあるが有意な増加が観察された(データ示さず)。Ang-(1-7)の効果は、1μg/kgのAng-(1-7)(MPE=27.8%、p<0.001)及び10μg/kgのAng-(1-7)(MPE=20.2%、p<0.01)による投与後15~30分でピークに達し、それは90~120分の間にベースラインに戻った。
Ang-(1-7)投与が尾引き込み待ち時間を増加させるために運動性を低下させる可能性を排除するために、ロータロッド試験を実施した。ナイーブ動物は回転するロッドの上を2分間歩くように訓練された。訓練後、Ang(1-7)を、脊髄(0.3pmol/5μL)または全身経路(0.058及び10μg/kg)のいずれかで動物に注射した。ビヒクルマウスとAng-(1-7)処理マウスとの間でロータロッド待ち時間の有意差は観察されなかった(結果は示されていない;p=0.99 i.t.;p=0.18 i.p.)。まとめると、これらのデータは、全身性Ang-(1-7)が単回投与後に運動性に顕著な影響を与えることなく抗侵害受容性であることを示唆している。
MasRは、後根神経節及び大腿骨押出物において発現する。
同側腰椎後根神経節(DRG)及び大腿骨押出物を、ナイーブ、偽、がん(66.1)、及び66.1 Ang-(1-7)処理マウスから採取した。ナイーブマウスでは、MasRは後根神経節で発現し(図11A)、MasRバンドは、約50kDa及び約40kDaで観察された。偽手術(すなわち、培地のみ)または大腿骨髄内間隙へのマウス乳腺癌株66.1の導入は、反対側の対照DRGと比較して同側DRGにおけるMasR発現レベルを顕著には変化させなかった(図11B)。MasRはまた、同じマウスの大腿骨押出物において発現することが見出された(図11C)。66.1細胞の接種は、約50kDaと約40kDaの両方で大腿骨押出物中のMasRの発現を有意に増加させた(偽群と比較してp<0.001)が、偽手術は大腿骨押出物中のMasRの発現をナイーブ動物群と比較して有意に変えなかった(図11D)。
Ang-(1-7)の反復投与は、確立されたCIBPを有するマウスの腫瘍量を変えることも、インビトロで細胞生存率を変えることもない。
Ang-(1-7)の反復投与による抗侵害受容効果が抗新生物活性に起因するかどうかを判定するために腫瘍量を評価した。慢性投与試験の後、大腿骨を動物から採取し、脱灰し、そして切片化(5ミクロン)及びヘモトキシリン/エオシン染色の前にパラフィンブロックに包埋した(図12A)。がん細胞を含む骨の領域は、全骨髄内含有量として定量化され、骨内の全細胞のパーセンテージとして表された。Ang-(1-7)の反復投与は、生理食塩水処理群と比較して、骨の腫瘍パーセントを有意に増加も減少もさせなかった(p=0.3、n=3~5)(図12B)。したがって、Ang-(1-7)の反復投与は大腿骨内の腫瘍量に有意な影響を及ぼさず、抗侵害受容作用が抗新生物活性の二次的なものである可能性は低い。
インビボでの知見を検証するために、66.1細胞生存率に対するAng-(1-7)の効果をインビトロで評価した。66.1細胞をビヒクルまたは漸増濃度のAng-(1-7)(1、10、100、または1000ng)で24時間処理し、XTT細胞生存率アッセイを実施した。ビヒクル処理細胞と比較して(相対吸光度(RA±SD)=1.02±0.09)、4つのAng-(1-7)処理の各々は細胞生存率を顕著には変化させなかった(1ng:0.93±0.11;10ng:0.93±0.07;100ng:0.78±0.11、1000ng:0.93±0.13)。まとめると、これらのデータは、試験した用量/濃度でのAng-(1-7)がインビボとインビトロの両方で腫瘍細胞増殖を促進せず、腫瘍細胞死も引き起こさないことを示している。
Ang-(1-7)の反復投与は、確立されたCIBPを有するマウスの骨リモデリングに影響を及ぼさない。
手術後0、7、10、及び14日目に慢性処理動物すべてのX線画像を撮影して、確立されたCIBPを有するマウスの骨リモデリングに対してAng-(1-7)の反復投与が影響するかどうかを判定した(図13A)。14日目の画像は、3人の盲検化観察者により、以下のスケールで採点された:0-健康な骨、1-1~3の病巣;2-4~6の病変;3-単皮質骨折;4-両皮質骨折(図13B)。健康な骨は目に見える病変または骨折のないものとして定義され、そして病変は骨端板の下の暗い穴のようなスポットとして定義された。いずれの動物も両皮質骨折を経験しなかったが、食塩水とAng-(1-7)とで処理したがん接種動物の両方は、単皮質骨折を経験した。偽処理(培地)動物(16匹中7匹)は0のスコアを受けた。骨リモデリングの別のマーカーとして、血清中のカルボキシ末端コラーゲン架橋(CTX)のレベルを定量した(図13C)。がん接種は両方の培地対照と比較して骨におけるCTXレベルを有意に増加させた(p<0.05、n=3~4)が、Ang-(1-7)反復投与は66.1食塩水処理群と比較してCTXレベルを有意に変化させなかった。全体として、確立されたCIBPを有するマウスにおける毎日のAng-(1-7)投与は、同側大腿骨の骨リモデリングに有意な影響を及ぼさなかった。
実施例5:Ang(1-7)誘導体は急性及び炎症性疼痛を軽減する
Mas受容体アゴニストの効果を急性炎症性疼痛のモデルで調べた。低用量のPN-A5が、天然のAng(1-7)及び高用量のPN-A5よりも炎症誘発性異痛を軽減するのにより効果的であることが発見された。
15~20gの間のメスのBALB/cAnNHsdマウス(Harlan,IN,USA)を、各動物についてのベースライン応答(「Pre-Car BL」)を確立するために、最初に上述のようなvon Frey式フィラメント触覚異痛試験に供した。各試験対象の右後肢に、50μlのカラギーナンを皮下注射した。カラギーナンの3時間後、各動物について未処理のベースライン応答(「BL」)を確立するために、対象を再びvon Frey式フィラメントを用いて評価した。動物に、1、3、もしくは10mg/kgのPN-A5、10mg/kgの天然のAng(1~7)、または生理食塩水ビヒクルのいずれかを腹腔内注射によって直ちに投与した(n=10)。カラギーナン注射の15、30、45、60、90、120、及び180分後に、von Frey式フィラメント試験を各動物に実施した。
図14Aは、フィラメントに対する応答がカラギーナン注射後に増加することを示すvon Frey応答(閾値)についての生データを提供する。図14Bは、抗異痛%として表されるカラギーナン前ベースライン応答を使用して標準化されたvon Frey閾値データを示し、0%は治療効果がないことを表し、100%はカラギーナン誘発異痛の完全な回復を表す。図14Cは、図14Bに示すデータの曲線下面積(AUC)のグラフ表示を提供する。これらのデータを総合すると、低用量のPN-A5(1mg/kg及び3mg/kg)はカラギーナン誘発性異痛の実質的かつ統計的に有意な回復をもたらすのに対して、高用量のPN-A5及び天然のAng(1-7)(それぞれ10mg/kgで投与)はそうならなかったことを示す。したがって、PN-A5は炎症によって引き起こされる疼痛及び異痛を軽減する。
実施例7:Ang(1-7)とその誘導体のグリコシル化は薬物動態特性を改善する
天然のAng(1~7)を治療的に投与することの1つの既知の制限は、その比較的短い半減期及び比較的低い血液脳関門透過性である。以下の実験は合理的なドラッグデザインアプローチを使用して、血清半減期及びBBB透過性に対するAng(1-7)及びその誘導体への様々なグリコシドの付加の効果を評価した。インビボでの安定性は、ペプチダーゼ及びグリコシダーゼに対する感受性、ならびに溶液中での凝集現象、ならびに膜吸収を含む広範な結合事象を含む、いくつかの要因によって影響を受ける。糖ペプチド薬物と生体膜との相互作用は、幾何学的形状とグリコシル化の程度の両方によって大きく影響される。同様のサイズの糖ペプチドGPCRアゴニストを用いた我々の以前の経験は、グリコシル化の程度(単糖対二糖)がMAS受容体との相互作用またはその活性化に大きな影響を与えないことを示している。
Ang(1-7)ベースの糖ペプチドの膜結合立体配座は、d25-SDSミセルの存在下でのH-NMR NOESY測定によってインシリコでモデル化された。導出されたH-H距離制約を使用して、高度に両親媒性の折り畳み構造が特徴付けられた。図15Aに示すように、AMBER-99力場を有するMOE(登録商標)ソフトウェアパッケージを使用して溶媒接近可能表面積を構築し、得られたU字型折り畳み構造の両親媒性を示した。非荷電の親油性残基Val-Tyr-Ileは「U」の底にあって膜に挿入され、一方で荷電している「末端」が水性区画に突き出している。「両親媒性のモーメント」は矢印で示唆されている。
図15Bは、MoE(登録商標)計算を示し、サッカリド及びペプチド鎖の結合幾何学形状が、Mas受容体との「ドッキング」の前に、得られる両親媒性糖ペプチドと生体膜との相互作用を改変し得ることを示す。D-セリンまたはL-セリン、D-トレオニンまたはL-トレオニン、及びD-アロ-トレオニンまたはL-アロ-トレオニン、ならびにD-システインまたはL-システインは、グリコシドを膜の表面に対して異なる角度で配向させる。
これらの計算に基づいて、天然のAng(1-7)、C-末端アミノ基を有するAng(1-7)(Ang1-7-NH;配列番号3;「PN-A2」)、PN-A5(Ang1-6-Ser(OGlc)-NH;配列番号13)、及びAng1-6-Ser(OLac)-NH(Ang1-6-Ser(OLac)-NH;配列番号13)を産生して血清半減期を試験した。血清半減期は、マウス血清中の100μMの各ペプチドを8時間インキュベートすることによって評価した。アリコートを示された時間間隔で取り出し、そしてペプチド濃度をHPLC-MSを使用して決定し、初期濃度のパーセンテージとして表した。図16及び表2に示すように、グリコシル化は、Ang(1-7)誘導体の血清半減期を有意に改善した。
Figure 0007235658000002
これらの知見に基づいて、インビボでの血清安定性及びBBB透過を、Ang(1-7)及びPN-A5についてインビボで評価した。ペプチド(10mg/kg)またはビヒクル対照を個々にナイーブマウスに皮下注射した。血清濃度は、20~30μlの血液サンプルを使用してHPLC-MSにより10分毎に決定した。Ang(1-7)及びPN-A5は、それぞれ約200nM及び約3,500nMの最大血清濃度に達することが見出された(図17A)。微小透析プローブを介してCSF試料を同じ動物から同時に採取し、ペプチド濃度についてアッセイし、そして基準CSFレベルについて補正した。Ang(1-7)及びPN-A5は、それぞれ約50nM及び約400nMの最大CSF濃度に達することが見出された(図17B)。
上述の本発明の議論は、例示及び説明を目的として提示されている。上述は、本発明を本明細書に開示された形態または複数の形態に限定することを意図したものではない。本発明の説明は、1つ以上の実施形態ならびに特定の変形形態及び修正形態の説明を含んでいるが、他の変形形態及び修正形態は、例えば、本開示の理解後に当業者の技術及び知識の範囲内であり得るように本発明の範囲内である。特許請求の範囲に記載されたものに対する、代替の、交換可能な、及び/または同等の構造、機能、範囲、またはステップを含む、許される範囲までの代替の実施形態を含む権利を得ることが、そのような代替の、交換可能な、及び/または同等の構造、機能、範囲、またはステップが本明細書に開示されるかどうかにかかわらず、特許請求の範囲に記載された主題を公に捧げることを意図せずに、意図されている。本明細書で引用される全ての参照文献は、参照により、その全ての内容が本明細書に組み込まれる。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
対象における疼痛状態を治療するための方法であって、治療有効量の、式:A -A -A -A -A -A -A -A (配列番号1)を有するオリゴペプチドを投与することを含み、
式中、
が、アスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;
が、アルギニン、ヒスチジン、リジン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;
が、バリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群より選択され;
が、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;
が、イソロイシン、バリン、アラニン、ロイシン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;
が、ヒスチジン、アルギニン、リジン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;
が、プロリン、グリシン、セリン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択され;
は存在しても不在でもよく、A 存在するとき、A が、セリン、トレオニン、ヒドロキシプロリン、及びそれらのグリコシル化形態からなる群から選択される、
前記方法。
実施形態2
前記疼痛状態が、急性疼痛、外傷による疼痛、歯痛、原発性腫瘍または転移性腫瘍のいずれかに起因するがん誘発性骨痛、術後疼痛、帯状疱疹後神経痛、線維筋痛症、炎症性疼痛、脳卒中による疼痛、外傷性神経因性疼痛、多発性硬化症による疼痛、関節リウマチ、変形性関節症、及び複合性局所疼痛症候群からなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記疼痛状態が、がん誘発性骨痛である、実施形態1に記載の方法。
実施形態4
~A のうちの少なくとも1個が、単糖類または二糖類によってグリコシル化されている、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
実施形態5
が単糖類または二糖類によってグリコシル化されているか、またはA が不在であり、かつA 単糖類または二糖類によってグリコシル化されている、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
実施形態6
単糖類または二糖類のうちの少なくとも1つが、グルコース、ガラクトース、キシロース、フコース、ラムノース、ラクトース、セロビオース、及びメリビオースからなる群から選択される、実施形態4~5のいずれかに記載の方法。
実施形態7
(a)A がセリンもしくはそのグリコシル化形態であり、かつA が不在であるか、または(b)A8がセリンもしくはそのグリコシル化形態である、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
実施形態8
(a)A がグルコースもしくはラクトースによってグリコシル化され、かつA が不在であるか、または(b)A がグルコースもしくはラクトースによってグリコシル化されている、実施形態7に記載の方法。
実施形態
(a)A がアミノ基で終端し、かつA が不在であるか、または(b)A がアミノ基で終端している、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
実施形態10
前記オリゴペプチドが、PN-A2、PN-A3、PN-A4、PN-A5、及びPN-A6からなる群から選択される、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
実施形態11
前記オリゴペプチドがPN-A5である、実施形態10に記載の方法。
実施形態12
前記オリゴペプチドがPN-A6である、実施形態10に記載の方法。
実施形態13
前記オリゴペプチドが少なくとも1個のD-アミノ酸を含む、実施形態1~12のいずれかに記載の方法。
実施形態14
各々のアミノ酸がD-アミノ酸である、実施形態1~13のいずれかに記載の方法。

Claims (3)

  1. 対象における疼痛状態を治療するための医薬組成物であって、オリゴペプチド誘導体を含有
    前記オリゴペプチド誘導体を構成するオリゴペプチドがPN-A5(Ang1-6-Ser(OGlc)-NH;配列番号13)であり、
    前記疼痛状態が、急性炎症性疼痛であり、
    投与される前記PN-A5が、1~3mg/kgである、医薬組成物。
  2. 前記オリゴペプチドが少なくとも1個のD-アミノ酸を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 各々のアミノ酸がD-アミノ酸である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
JP2019531939A 2017-01-09 2018-01-09 疼痛治療のためのang(1-7)誘導体オリゴペプチド Active JP7235658B2 (ja)

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