JP2022187462A - 硬化層形成用組成物、積層体、積層体の製造方法、積層体を備えた物品、画像表示装置及びフレキシブルディスプレイ - Google Patents

硬化層形成用組成物、積層体、積層体の製造方法、積層体を備えた物品、画像表示装置及びフレキシブルディスプレイ Download PDF

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Keisuke Yoshimasa
哲 北村
Satoru Kitamura
大介 平木
Daisuke Hiraki
彩子 松本
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Abstract

【課題】硬度及び繰り返し折り曲げ耐性を両立可能な硬化層を形成することができる硬化層形成用組成物、上記硬化層形成用組成物を硬化してなる硬化層を含む積層体、上記積層体の製造方法、上記積層体を備えた物品、画像表示装置及びフレキシブルディスプレイを提供する。【解決手段】エポキシ基を含む基を有する構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと、重合開始剤とを含む硬化層形成用組成物であって、重合開始剤のフッ化物イオン親和性が350kJ/mol以上であり、ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が3500以上である、硬化層形成用組成物、上記硬化層形成用組成物を硬化してなる硬化層を含む積層体、上記積層体の製造方法、上記積層体を備えた物品、画像表示装置及びフレキシブルディスプレイ。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化層形成用組成物、積層体、積層体の製造方法、積層体を備えた物品、画像表示装置及びフレキシブルディスプレイに関する。
硬化層形成用組成物を硬化させてなる硬化層は様々な用途で用いられている。たとえば、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)やマイクロLED(Light Emitting Diode)、マイクロOLED(Organic Light Emitting Diode)のような様々な画像表示装置において、傷付きを防止するために、ディスプレイの表面に、硬化層(ハードコート層)を有する光学フィルムであるハードコートフィルムが使用されている。
特許文献1及び2には、シルセスキオキサンを含む硬化層形成用組成物が記載されている。
特開2019-069586号公報 国際公開第2015/053397号
近年、たとえばスマートフォンなどにおいて、極薄型のフレキシブルなディスプレイ(フレキシブルディスプレイ)に対するニーズが高まってきており、これに伴って、硬度と繰り返し折り曲げ耐性(繰り返し折り曲げてもクラックが発生しない性質)を両立することができる光学フィルムが強く求められている。
本発明の課題は、硬度及び繰り返し折り曲げ耐性を両立可能な硬化層を形成することができる硬化層形成用組成物、上記硬化層形成用組成物を硬化してなる硬化層を含む積層体、上記積層体の製造方法、上記積層体を備えた物品、画像表示装置及びフレキシブルディスプレイを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討し、下記手段により上記課題が解消できることを見出した。
<1>
下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと、重合開始剤とを含む硬化層形成用組成物であって、
上記重合開始剤のフッ化物イオン親和性が350kJ/mol以上であり、
上記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が3500以上である、
硬化層形成用組成物。
Figure 2022187462000001
一般式(1)中、Qはエポキシ基を含む基を表す。
<2>
上記重合開始剤が酸発生剤である、<1>に記載の硬化層形成用組成物。
<3>
上記重合開始剤が光酸発生剤である、<1>又は<2>に記載の硬化層形成用組成物。
<4>
上記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が5000以上200000以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化層形成用組成物。
<5>
上記ポリオルガノシルセスキオキサン中のシロキサン構成単位の全量に対する、上記一般式(1)で表される構成単位の割合が50モル%以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化層形成用組成物。
<6>
<1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化層形成用組成物の硬化物と基材を含む、積層体。
<7>
硬化層と基材を含む積層体であって、
上記硬化層が硬化層形成用組成物の硬化物であり、
上記硬化層の厚みが5μm以上45μm以下であり、
上記硬化層形成用組成物が、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと、重合開始剤とを含み、
上記基材側硬化層表面近傍のポリオルガシルセスキオキサンのエポキシ基の開環率が70%以上である、積層体。
Figure 2022187462000002
一般式(1)中、Qはエポキシ基を含む基を表す。
<8>
上記重合開始剤が酸発生剤である、<7>に記載の積層体。
<9>
上記重合開始剤が光酸発生剤である、<7>又は<8>に記載の積層体。
<10>
上記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が3500以上である、<7>~<9>のいずれか1つに記載の積層体。
<11>
上記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が5000以上200000以下である、<7>~<10>のいずれか1つに記載の積層体。
<12>
上記ポリオルガノシルセスキオキサン中のシロキサン構成単位の全量に対する、上記一般式(1)で表される構成単位の割合が50モル%以上である、<7>~<11>のいずれか1つに記載の積層体。
<13>
上記基材の厚みが100μm以下である、<7>~<12>のいずれか1つに記載の積層体。
<14>
上記基材が芳香族ポリイミド又は芳香族ポリアミドを含有する、<6>~<13>のいずれか1つに記載の積層体。
<15>
基材と硬化層とを含む積層体の製造方法であって、
(I)基材上に、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと、重合開始剤とを含む硬化層形成用組成物を塗布して、硬化層塗膜を形成する工程、及び、
(II)上記硬化層塗膜を硬化することにより上記硬化層を形成する工程、
を含む積層体の製造方法であって、
上記重合開始剤のフッ化物イオン親和性が350kJ/mol以上であり、
上記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が3500以上である、
積層体の製造方法。
Figure 2022187462000003
一般式(1)中、Qはエポキシ基を含む基を表す。
<16>
<6>~<14>のいずれか1つに記載の積層体を備えた物品。
<17>
<6>~<14>のいずれか1つに記載の積層体を備えた画像表示装置。
<18>
<6>~<14>のいずれか1つに記載の積層体を備えたフレキシブルディスプレイ。
本発明によれば、硬度及び繰り返し折り曲げ耐性を両立可能な硬化層を形成することができる硬化層形成用組成物、上記硬化層形成用組成物を硬化してなる硬化層を含む積層体、上記積層体の製造方法、上記積層体を備えた物品、画像表示装置及びフレキシブルディスプレイを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)~(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において表記される2価の基の結合方向は特に限定されない。
<硬化層形成用組成物>
本発明の硬化層形成用組成物は、
下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと、重合開始剤とを含む硬化層形成用組成物であって、
上記重合開始剤のフッ化物イオン親和性が350kJ/mol以上であり、
上記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が3500以上である、
硬化層形成用組成物である。
Figure 2022187462000004
一般式(1)中、Qはエポキシ基を含む基を表す。
一般式(1)中の[SiO3/2]は、ポリオルガノシルセスキオキサン中のシロキサン結合(Si-O-Si)により構成される構造部分を表す。
ポリオルガノシルセスキオキサンとは、加水分解性三官能シラン化合物に由来するシロキサン構成単位を有するネットワーク型ポリマー又は多面体クラスターであり、シロキサン結合によって、ランダム構造、ラダー構造、ケージ構造などを形成し得る。本発明において、[SiO3/2]が表す構造部分は、上記のいずれの構造であってもよいが、ラダー構造を多く含有していることが好ましい。ラダー構造を形成していることにより、硬化層の変形回復性を良好に保つことができる。ラダー構造の形成は、FT-IR(FourierTransform Infrared Spectroscopy)を測定した際、1020-1050cm-1付近に現れるラダー構造に特徴的なSi-O-Si伸縮に由来する吸収の有無によって定性的に確認することができる。
なお、一般式(1)で表される構成単位をより詳細に記載すると、下記一般式(1-A)で表される。一般式(1-A)で表される構造中に示されるケイ素原子に結合した3つの酸素原子は各々一般式(1-A)に示されていない他のケイ素原子と結合している。一般式(1)で表される構成単位は、いわゆるT単位である。
Figure 2022187462000005
一般式(1-A)中、Qは一般式(1)におけるものと同じ意味を表す。*はケイ素原子との結合部位を表す。
以下、「一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサン」を「ポリオルガノシルセスキオキサン(a)」とも呼ぶ。
<ポリオルガノシルセスキオキサン(a)>
ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、下記一般式(2)で表されるポリオルガノシルセスキオキサンであることが好ましい。
Figure 2022187462000006
一般式(2)中、Rbは、エポキシ基を含む基を表し、Rcは1価の基を表す。q及びrは、一般式(2)中のRbおよびRcの比率を表し、q+r=100であり、qは0超、rは0以上である。一般式(2)中に複数のRb及びRcがある場合、複数のRb及びRcはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。一般式(2)中に複数のRcがある場合、複数のRcは、互いに結合を形成してもよい。
一般式(2)中、Rbは、エポキシ基を含む基を表す。エポキシ基を含む基としては、オキシラン環を有する公知の基が挙げられる。Rbは、エポキシ基に加えて、エポキシ基以外の基を含んでいてもよい。エポキシ基以外の基としては、たとえば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等の置換基が挙げられる。また、エポキシ基以外の基としては、-O-、-CO-、-COO-、アルキレン基、アリーレン基、-SO-、-SO-及び-NR-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する連結基も挙げられる。上記Rは水素原子又はアルキル基を表す。
Rbは、下記一般式(1b)~(4b)のいずれかで表される基であることが好ましい。
Figure 2022187462000007
上記一般式(1b)~(4b)中、**は一般式(2)中のSiとの連結部分を表し、R1b、R2b、R3b及びR4bは、置換又は無置換のアルキレン基を表す。R1b、R2b、R3b及びR4bが表すアルキレン基としては、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、i-プロピレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-デシレン基等が挙げられる。R1b、R2b、R3b及びR4bが表すアルキレン基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
1b、R2b、R3b及びR4bとしては、無置換の炭素数1~4の直鎖状のアルキレン基、無置換の炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、n-プロピレン基、又はi-プロピレン基がより好ましく、さらに好ましくはエチレン基、又はn-プロピレン基である。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は、脂環式エポキシ基(エポキシ基と脂環基の縮環構造を有する基)を有することが好ましい。一般式(2)中のRbは、脂環式エポキシ基であることが好ましく、エポキシシクロヘキシル基を有する基であることがより好ましく、上記一般式(1b)で表される基であることがさらに好ましい。
なお、一般式(2)中のRbは、ポリオルガノシルセスキオキサンの原料として使用する加水分解性三官能シラン化合物におけるケイ素原子に結合した基に由来する。
以下にRbの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記具体例において、**は一般式(2)中のSiとの連結部分を表す。
Figure 2022187462000008
一般式(1)中、Rcは1価の基を表す。
Rcが表す1価の基としては、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられる。
Rcが表すアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。
Rcが表すシクロアルキル基としては、炭素数3~15のシクロアルキル基が挙げられ、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
Rcが表すアルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基が挙げられ、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基が挙げられる。
Rcが表すアリール基としては、炭素数6~15のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
Rcが表すアラルキル基としては、炭素数7~20のアラルキル基が挙げられ、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
上述の置換アルキル基、置換シクロアルキル基、置換アルケニル基、置換アリール基、置換アラルキル基としては、上述のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基のそれぞれにおける水素原子又は主鎖骨格の一部若しくは全部が、エーテル基、エステル基、カルボニル基、ハロゲン原子(フッ素原子等)、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、及びヒドロキシ基(水酸基)からなる群より選択された少なくとも1種で置換された基等が挙げられる。
Rcは、置換又は無置換のアルキル基が好ましく、無置換の炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましい。
一般式(2)中に複数のRcがある場合、複数のRcは互いに結合を形成していてもよい。2つ又は3つのRcが互いに結合を形成していることが好ましく、2つのRcが互いに結合を形成していることがより好ましい。
2つのRcが互いに結合して形成される基(Rc2)としては、上述のRcが表す置換又は無置換のアルキル基が結合して形成されるアルキレン基であることが好ましい。
Rc2が表すアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、s-ペンチレン基、t-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、イソヘキシレン基、s-ヘキシレン基、t-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、イソヘプチレン基、s-ヘプチレン基、t-ヘプチレン基、n-オクチレン基、イソオクチレン基、s-オクチレン基、t-オクチレン基等の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が挙げられる。
Rc2が表すアルキレン基としては、無置換の炭素数2~20のアルキレン基が好ましく、より好ましくは無置換の炭素数2~20のアルキレン基、さらに好ましくは無置換の炭素数2~8のアルキレン基であり、特に好ましくはn-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基である。
3つのRcが互いに結合して形成される基(Rc3)としては、上述のRc2が表すアルキレン基において、アルキレン基中の任意の水素原子をひとつ減らした3価の基であることが好ましい。
なお、一般式(2)中のRcは、ポリオルガノシルセスキオキサンの原料として使用する加水分解性シラン化合物におけるケイ素原子に結合した基に由来する。
一般式(2)中、qは0超であり、rは0以上である。
q/(q+r)は0.5~1.0であることが好ましい。ポリオルガノシルセスキオキサン(a)に含まれるRb又はRcで表される基全量に対して、Rbで表される基を半数以上とすることで、有機架橋基が作るネットワークが十分に形成されるため、耐擦性、硬度、繰り返し折り曲げ耐性の各性能を良好に保つことができる。
q/(q+r)は0.7~1.0であることがより好ましく、0.8~1.0がさらに好ましく、0.9~1.0であることが特に好ましい。
一般式(2)中、複数のRcがあり、複数のRcが互いに結合を形成していることも好ましい。この場合、r/(q+r)が0.005~0.20であることが好ましい。
r/(q+r)は0.005~0.10がより好ましく、0.005~0.05がさらに好ましく、0.005~0.025であることが特に好ましい。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a)中のシロキサン構成単位の全量に対する、一般式(1)で表される構成単位の割合は50モル%以上であることが好ましく、50モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、70モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましく、80モル%以上100モル%以下であることが特に好ましく、90モル%以上100モル%以下であることが最も好ましい。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、3500以上であることが好ましい。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a)のMwは、より好ましくは4000以上であり、更に好ましくは5000以上200000以下であり、特に好ましくは5000以上50000以下であり、最も好ましくは10000以上30000以下である。ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の重量平均分子量(Mw)を上記の範囲とすることで、硬化層の硬度及び繰り返し折り曲げ耐性が良化する。特に、ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の重量平均分子量(Mw)が10000以上であると、後述するエポキシ基の開環率を大きくすることができ、硬化層の硬度をより高くすることができる。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a)のGPCによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.0~4.0であり、好ましくは1.1~3.7であり、より好ましくは1.2~3.5であり、さらに好ましくは1.3~3.3である。なおMnは数平均分子量を表す。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の重量平均分子量、分子量分散度は、下記の装置及び条件により測定した。
測定装置:商品名「LC-20AD」((株)島津製作所製)
カラム:Shodex KF-801×2本、KF-802、及びKF-803(昭和電工(株)製)
測定温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、試料濃度0.1~0.2質量%
流量:1mL/分
検出器:UV-VIS検出器(商品名「SPD-20A」、(株)島津製作所製)
分子量:標準ポリスチレン換算
ポリオルガノシルセスキオキサン(a)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
硬化層形成用組成物におけるポリオルガノシルセスキオキサン(a)の含有率は、硬化層形成用組成物の全固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。硬化層形成用組成物におけるポリオルガノシルセスキオキサン(a)の含有率の上限は、硬化層形成用組成物の全固形分に対して、99.9質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることが更に好ましい。
<重合開始剤>
本発明の硬化層形成用組成物に含まれる重合開始剤について説明する。
重合開始剤のフッ化物イオン親和性は350kJ/mol以上である。
本発明では、重合開始剤のフッ化物イオン親和性を350kJ/mol以上とすることで、硬化層の硬度を向上させることができる。この理由については、以下のように推定している。すなわち、重合開始剤のフッ化物イオン親和性を350kJ/mol以上とすることで、重合開始剤(典型的には酸発生剤)から発生する酸の酸性度を高くし、ポリオルガノシルセスキオキサン(a)のエポキシ基の開環率を大きくすることができ、その結果、硬化層の硬度を向上させることができると考えられる。また、硬化層の硬度が向上することで、所望の硬度が得られる硬化層の膜厚を薄くすることができるため、硬化層を薄膜化することで硬度と繰り返し折り曲げ耐性を両立することができる。
フッ化物イオン親和性は、「Angew.Chem.Int.Ed.2018,57,13982-14024」に記載されているとおりである。具体的には、上記文献の14010ページのTable7に記載されているフッ化物イオン親和性(FIA)の値を用いることができるが、Table7に記載されていない物質についての計算方法についても上記文献を参考にする。
重合開始剤のフッ化物イオン親和性は400kJ/mol以上が好ましい。また、重合開始剤のフッ化物イオン親和性は480kJ/mol以下が好ましく、460kJ/mol以下がさらに好ましい。
重合開始剤の重量平均分子量は500以上2000以下が好ましく、700以上1500以下がより好ましい。重合開始剤の重量平均分子量を上記の範囲とすることで、硬化層の硬度及び繰り返し折り曲げ耐性が良化する。
重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
重合開始剤は、酸発生剤であることが好ましい。
酸発生剤としては、光照射により活性種としてカチオンを発生することができる光酸発生剤と、加熱によりカチオンを発生する熱酸発生剤が好適に使用できる。特に、塗布製造の生産性を考慮すると、光酸発生剤が好ましい。すなわち、重合開始剤は、光酸発生剤であることが好ましい。
光酸発生剤の具体例としては、特に限定されないが、例えば、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩(例えばジアリールヨードニウム塩)、トリアリールスルホニウム塩、ジアゾニウム塩、イミニウム塩などが挙げられる。より具体的には、例えば、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム及びピリジニウムから選ばれる少なくとも1種のカチオンと、PF 、P(OC 、AsF 、B(C 、及びB(OC から選ばれる少なくとも1種のアニオンとから構成されるオニウム塩、アルミニウム錯体等のカチオン重合開始剤が挙げられる。
光酸発生剤は、公知の方法で合成可能であり、また、市販品としても入手可能である。
市販品としては、例えば、サンアプロ社製CPI-100P、CPI-110P、CPI-100B、CPI-110B、CPI-200K、CPI-210S、CPI-310B、CPI-410S、IK-1、IK-1PC等、BASFジャパン社製Irgacure290を挙げることができる。
光酸発生剤としては、フッ化物イオン親和性と重量平均分子量を考慮すると、CPI-100B、CPI-110B、CPI-200K、CPI-210S、CPI-310B、CPI-410S、IK-1、IK-1PC、Irgacure290が特に好ましい。
<任意成分>
硬化層形成用組成物は、ポリオルガノシルセスキオキサン(a)および重合開始剤以外に、一種以上の任意成分を更に含むこともできる。任意成分の具体例としては、溶媒および各種添加剤を挙げることができる。
<溶媒>
任意成分として含まれ得る溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒の一種または二種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジアセトンアルコール等が挙げられる。
硬化層形成用組成物中の溶媒の含有量は、硬化層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。硬化層形成用組成物中の溶媒の含有量は、例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン(a)および重合開始剤の合計量100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
<添加剤>
硬化層形成用組成物は、更に必要に応じて、公知の添加剤の一種以上を任意に含むことができ、具体的には、分散剤、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を挙げることができる。
これらの詳細については、例えば特開2012-229412号公報の段落0032~0034を参照できる。ただしこれらに限らず、重合性組成物に一般に使用され得る各種添加剤を用いることができる。
また、帯電防止剤の種類は特に限定されず、イオン伝導性または電子伝導性の帯電防止剤を好ましく用いることができる。
電子伝導性の帯電防止剤の具体例としては、ポリチオフェン導電性高分子を用いたセプルジーダ(信越ポリマー(株)製)等を好ましく用いることができる。
硬化層形成用組成物中の添加剤の添加量は適宜調整すればよく、特に限定されるものではない。
<積層体>
本発明の積層体は、硬化層形成用組成物の硬化物(好ましくは硬化層形成用組成物を硬化してなる硬化層)と基材を含む積層体であることが好ましい。
本発明の積層体は、
下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと、重合開始剤とを含む硬化層形成用組成物を基材に塗布してなる積層体であって、
上記重合開始剤のフッ化物イオン親和性が350kJ/mol以上であり、
上記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が3500以上であることが好ましい(以下、この積層体の形態を「第一の形態」とも呼ぶ)。
Figure 2022187462000009
一般式(1)中、Qはエポキシ基を含む基を表す。
上記積層体に使用する硬化層形成用組成物としては前述したものを用いることができる。一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンおよび重合開始剤の具体例及び好ましい範囲も同様である。
本発明の積層体の第一の形態が、硬度及び繰り返し折り曲げ耐性に優れる理由について、詳細は明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a)のようなエポキシ基を有する硬化性化合物は、硬化層に硬度と繰り返し折り曲げ耐性を付与し得る素材である。しかしながら、任意の重合開始剤を使用すると、所望の硬度と繰り返し折り曲げ耐性を両立するような架橋構造を形成できない場合があることを本発明者らが見出した。
本発明の積層体における重合開始剤は、フッ化物イオン親和性を上記の範囲とすることで、エポキシ基の架橋反応が十分に進行し、その結果強固な架橋構造を形成することで、硬度と繰り返し折り曲げ耐性が向上したと考えられる。また、重合開始剤の重量平均分子量を500以上2000以下にすることで、硬度及び繰り返し折り曲げ耐性が更に優れたものになると考えられる。
また、本発明の積層体の別の形態は、
硬化層と基材から構成される積層体であって、
上記硬化層が硬化層形成用組成物を硬化してなり、
上記硬化層形成用組成物が、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと、重合開始剤とを含み
上記基材側硬化層表面近傍のポリオルガシルセスキオキサンのエポキシ基の開環率が70%以上である、積層体である(以下、この積層体の形態を「第二の形態」とも呼ぶ)。
Figure 2022187462000010
一般式(1)中、Qはエポキシ基を含む基を表す。
上記エポキシ基の開環率は、上記硬化層形成用組成物を硬化する前後の試料についてFT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)一回反射ATR(Attenuated Total Reflection)測定を行い、エポキシ基に由来するピーク高さの変化から、算出することが可能である。具体的には後述する実施例で示す方法で算出することができる。
上記基材側硬化層表面近傍のポリオルガシルセスキオキサンのエポキシ基の開環率とは、具体的には積層体の断面において、硬化層の基材側表面付近を上記FT-IR一回反射ATRで測定した際の開環率を言う。さらに具体的には、基材側表面付近とは基材側表面より積層体の厚み方向に1μm以内の範囲を指す。
上記エポキシ基の開環率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。開環率が高いほど、より強固な架橋構造を形成し、硬度が良化する。
本発明の積層体の第二の形態に使用することができる硬化層形成用組成物としては前述した本発明の硬化層形成用組成物が好ましい。一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンとしては前述のものが好ましく、重合開始剤も前述のものが好ましい。
本発明の積層体の第二の形態が硬度及び繰り返し折り曲げ耐性に優れる理由について、詳細は明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a)のようなエポキシ基を有する硬化性化合物は、硬化層に硬度と繰り返し折り曲げ耐性を付与し得る素材である。しかしながら、エポキシ基の開環が不十分だと、その後の架橋構造の形成も不十分となり、所望の硬度と繰り返し折り曲げ耐性を両立するような架橋構造を形成できない場合があることを本発明者らが見出した。特に、基材に硬化層が積層された積層体においては、硬化層の基材面側表面近傍のエポキシ基の開環率が重要であることを、本発明者らが見出した。
積層体における硬化層中のポリオルガノシルセスキオキサン(a)の基材側表面近傍のエポキシ基の開環率を上記の範囲とすることで、強固な架橋構造を形成し、硬度と繰り返し折り曲げ耐性が向上したと考えられる。
<硬化層の厚み>
本発明の積層体(第一の形態及び第二の形態いずれも)の硬化層の厚みは、硬度と繰り返し折曲げ耐性を両立する観点から、5μm以上45μm以下が好ましく、6μm以上40μm以下がより好ましく、8μm以上30μm以下が更に好ましく、10μm以上20μm以下が特に好ましく、10μm以上15μm以下が最も好ましい。
<基材>
本発明の積層体は基材を有する。
基材は、可視光領域の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
(ポリマー)
基材はポリマーを含むことが好ましい。
ポリマーとしては、光学的な透明性、機械的強度、熱安定性などに優れるポリマーが好ましい。
ポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、トリアセチルセルロースに代表されるセルロース系ポリマー、又は上記ポリマー同士の共重合体、上記ポリマー同士を混合したポリマーも挙げられる。
特に、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー及びイミド系ポリマーは、JIS(日本工業規格) P8115(2001)に従いMIT試験機によって測定した破断折り曲げ回数が大きく、硬度も比較的高いことから、基材として好ましく用いることができる。例えば、特許第5699454号公報の実施例1にあるような芳香族ポリアミド、特表2015-508345号公報、特表2016-521216号公報、及びWO2017/014287号公報に記載のポリイミドを基材として好ましく用いることができる。
アミド系ポリマーとしては、芳香族ポリアミド(アラミド系ポリマー)が好ましい。
基材は、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有することが好ましい。
基材は、芳香族ポリイミド又は芳香族ポリアミドを含有することが特に好ましい。
また、基材は、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
(柔軟化素材)
基材は、上記ポリマーを更に柔軟化する素材(柔軟化素材)を含有しても良い。柔軟化素材とは、破断折り曲げ回数を向上させる化合物を指し、柔軟化素材としては、ゴム質弾性体、脆性改良剤、可塑剤、スライドリングポリマー等を用いることが出来る。
柔軟化素材として具体的には、特開2016-167043号公報における段落番号[0051]~[0114]に記載の柔軟化素材を好適に用いることができる。
柔軟化素材は、ポリマーに単独で混合しても良いし、複数を適宜併用して混合しても良いし、また、ポリマーと混合せずに、柔軟化素材のみを単独又は複数併用で用いて基材としても良い。
これらの柔軟化素材を混合する量は、特に制限はなく、単独で十分な破断折り曲げ回数を持つポリマーを単独でフィルムの基材としても良いし、柔軟化素材を混合しても良いし、すべてを柔軟化素材(100%)として十分な破断折り曲げ回数を持たせても良い。
(その他の添加剤)
基材には、用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線吸収剤、マット剤、酸化防止剤、剥離促進剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、など)を添加できる。それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点又は沸点において特に限定されるものではない。また添加剤を添加する時期は基材を作製する工程において何れの時点で添加しても良く、素材調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
その他の添加剤としては、特開2016-167043号公報における段落番号[0117]~[0122]に記載の添加剤を好適に用いることができる。
以上の添加剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
(基材の厚み)
基材はフィルム状であることが好ましい。
基材の厚みは、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、50μm以下であることが最も好ましい。基材の厚みが薄くなれば、折り曲げ時の表面と裏面の曲率差が小さくなり、クラック等が発生し難くなり、複数回の折り曲げでも、基材の破断が生じなくなる。一方、基材の取り扱いの容易さの観点から基材の厚みは3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上が最も好ましい。
(基材の作製方法)
基材は、熱可塑性のポリマーを熱溶融して製膜しても良いし、ポリマーを均一に溶解した溶液から溶液製膜(ソルベントキャスト法)によって製膜しても良い。熱溶融製膜の場合は、上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を、熱溶融時に加えることができる。一方、基材を溶液製膜法で作製する場合は、ポリマー溶液(以下、ドープともいう)には、各調製工程において上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を加えることができる。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
塗膜の乾燥、及び/又はベーキングのために、塗膜を加熱してもよい。塗膜の加熱温度は、通常50~350℃である。塗膜の加熱は、不活性雰囲気下又は減圧下で行ってもよい。塗膜を加熱することにより溶媒を蒸発させ、除去することができる。基材は、塗膜を50~150℃で乾燥する工程と、乾燥後の塗膜を180~350℃でベーキングする工程とを含む方法により、形成されてもよい。
基材の少なくとも一方の面には、表面処理を施してもよい。
<繰り返し折り曲げ耐性>
本発明の積層体は、優れた繰り返し折り曲げ耐性を有する。
本発明の積層体は、硬化層を内側にして、曲率半径1mmで180°折り曲げ試験を10万回繰り返し行った場合にクラックが発生しないことが好ましく、20万回繰り返し行った場合にクラックが発生しないことがより好ましく、30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しないことが更に好ましい。
繰り返し折り曲げ耐性は具体的には以下のように測定する。
積層体から幅15mm、長さ150mmの試料フィルムを切り出し、温度25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させる。その後、180°耐折度試験機((株)井元製作所製、IMC-0755型)を用いて、硬化層を内側(基材を外側)にして繰り返し折り曲げ耐性の試験を行う。上記試験機は、試料フィルムを直径2mmの棒(円柱)の曲面に沿わせて曲げ角度180°で長手方向の中央部分で折り曲げた後、元に戻す(試料フィルムを広げる)という動作を1回の試験とし、この試験を繰り返し行うものである。上記180°折り曲げ試験を所定の回数繰り返し行った場合にクラックが発生するか否かを目視で評価する。
<鉛筆硬度>
本発明の積層体は、優れた鉛筆硬度を有する。
本発明の積層体はJIS(JISは、Japanese Industrial Standards(日本工業規格)である) K5400に従った方法で評価した場合に5H以上となることが好ましい。
鉛筆硬度は具体的には以下のように測定する。
積層体の耐擦傷層の表面を、温度25℃、相対湿度60%で2時間調湿した後、異なる5箇所について、JIS S 6006に規定するH~9Hの試験用鉛筆を用いて1kgの荷重にて引っ掻いた。その後、目視で傷が認められる箇所が0~2箇所であった鉛筆の硬度のうち、最も硬度の高い鉛筆硬度を評価結果とした。鉛筆硬度は、「H」の前に記載される数値が高いほど、硬度が高く好ましい。
本発明の積層体の鉛筆硬度は3H以上であることが好ましく、4H以上であることがより好ましく、5H以上であることが更に好ましい。
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法について説明する。
本発明の積層体の製造方法は、基材と硬化層とを含む積層体の製造方法であって、下記工程(I)及び(II)を含む製造方法であることが好ましい。
(I)基材上に、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと重合開始剤とを含む硬化層形成用組成物を塗布して、硬化層塗膜を形成する工程、及び、
(II)上記硬化層塗膜を硬化することにより上記硬化層を形成する工程。
Figure 2022187462000011
一般式(1)中、Qはエポキシ基を含む基を表す。
-工程(I)-
工程(I)は、基材上に、一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと重合開始剤とを含む硬化層形成用組成物を塗布して硬化層塗膜を形成する工程である。
本発明の積層体の製造方法に使用することができる硬化層形成用組成物としては前述した本発明の硬化層形成用組成物が好ましい。一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンとしては前述のものが好ましく、重合開始剤も前述のものが好ましい。
また、基材も前述したものが好ましい。
硬化層形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
-工程(II)-
工程(II)は、カチオン重合により硬化層塗膜を硬化する工程である。なお、硬化層塗膜を硬化するとは、硬化層塗膜に含まれるポリオルガノシルセスキオキサン(a)のエポキシ基の少なくとも一部を重合反応させることをいう。
硬化層塗膜の硬化は、カチオン重合によるものであり、光(典型的には電離放射線)の照射又は加熱により行われることが好ましい。
光(典型的には電離放射線)の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が好ましく用いられる。例えば硬化層塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm~2000mJ/cmの照射量の紫外線を照射して硬化性化合物を硬化するのが好ましい。50mJ/cm~1800mJ/cmであることがより好ましく、100mJ/cm~1500mJ/cmであることが更に好ましい。紫外線ランプ種としては、メタルハライドランプや高圧水銀ランプ等が好適に用いられる。
熱により硬化する場合、温度に特に制限はないが、80℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上180℃以下であることがより好ましく、120℃以上160℃以下であることがさらに好ましい。
本発明の積層体は、硬度及び繰り返し折り曲げ耐性に優れたものであり、例えば、光学デバイスの保護フィルム(好ましくは硬化フィルム)として用いることができる。また、本発明の積層体は、画像表示装置の表面保護フィルムとして用いることができ、例えば、フォルダブルデバイス(フォルダブルディスプレイ)の表面保護フィルムとして用いることができる。フォルダブルデバイスとは、表示画面が変形可能であるフレキシブルディスプレイを採用したデバイスのことであり、表示画面の変形性を利用してデバイス本体(ディスプレイ)を折りたたむことが可能である。フォルダブルデバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンスデバイスなどが挙げられる。
本発明は、本発明の積層体を備えた物品、本発明の積層体を表面保護フィルムとして備えた画像表示装置及びフレキシブルディスプレイにも関する。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。
<基材の作製>
(ポリイミド粉末の製造)
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素気流下、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)832gを加えた後、反応器の温度を25℃にした。ここに、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)64.046g(0.2mol)を加えて溶解した。得られた溶液を25℃に維持しながら、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)31.09g(0.07mol)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.83g(0.03mol)を投入し、一定時間撹拌して反応させた。その後、塩化テレフタロイル(TPC)20.302g(0.1mol)を添加して、固形分濃度13質量%のポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液にピリジン25.6g、無水酢酸33.1gを投入して30分撹拌し、さらに70℃で1時間撹拌した後、常温に冷却した。ここにメタノール20Lを加え、沈澱した固形分を濾過して粉砕した。その後、100℃下、真空で6時間乾燥させて、111gの芳香族ポリイミド粉末を得た。
(基材S-1の作製)
100gの上記ポリイミド粉末を670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離して、フレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理して、芳香族ポリイミドフィルムからなる、厚み50μmの基材S-1を得た。
<ポリオルガノシルセスキオキサン(a)の合成>
(化合物(A1)の合成)
温度計、攪拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた1000ミリリットルのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(98.6g、400mmol)、アセトン(100g)、炭酸カリウム(553mg、4.0mmol)、純水(76.0g、4000mmol)を混合し、50℃で5時間撹拌した。反応液を室温(23℃)に戻した後、メチルイソブチルケトン(200g)、5質量%食塩水(200g)を添加し、有機層を抽出した。有機層を5質量%食塩水(200g)で2回、純水(200g)で2回洗浄した後、減圧濃縮することにより61.1質量%のメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液として化合物(A1)を131.1g得た(収率93%)。化合物(A1)の数平均分子量(Mn)は5610であり、重量平均分子量(Mw)は17400であり、分子量分散度(Mw/Mn)は3.1であった。
Figure 2022187462000012
上記式中の(SiO1.5)は、前述の[SiO3/2]と同様に、ポリオルガノシルセスキオキサン中のシロキサン結合(Si-O-Si)により構成される構造部分を表す。
(化合物(A2)の合成)
温度計、攪拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた1000ミリリットルのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン300ミリモル(73.9g)、トリエチルアミン7.39g、及びMIBK(メチルイソブチルケトン)370gを混合し、純水73.9gを、滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。この反応液を80℃に加熱し、重縮合反応を窒素気流下で10時間行った。
その後、反応溶液を冷却し、5質量%食塩水300gを添加し、有機層を抽出した。有機層を5質量%食塩水300g、純水300gで2回、順次洗浄した後、1mmHg、50℃の条件で濃縮し、固形分濃度59.8質量%のMIBK溶液として無色透明の液状の生成物である下記構造式で表される化合物(A2)を87.0g得た。
化合物(A2)の数平均分子量(Mn)は2050であり、重量平均分子量(Mw)は3850であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.9であった。
Figure 2022187462000013
(化合物(A3)の合成)
温度計、攪拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた1000ミリリットルのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン300ミリモル(55.4g)、トリエチルアミン5.54g、及びMIBK(メチルイソブチルケトン)288gを混合し、純水55.4gを、滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。この反応液を80℃に加熱し、重縮合反応を窒素気流下で5時間行った。
その後、反応溶液を冷却し、5質量%食塩水300gを添加し、有機層を抽出した。有機層を5質量%食塩水300g、純水300gで2回、順次洗浄した後、1mmHg、50℃の条件で濃縮し、固形分濃度60.5質量%のMIBK溶液として無色透明の液状の生成物である下記構造式で表される化合物(A3)を65.8g得た。
化合物(A3)の数平均分子量(Mn)は1450であり、重量平均分子量(Mw)は2500であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.7であった。
Figure 2022187462000014
<硬化層形成用組成物の調製>
(硬化層形成用組成物HC-1)
上記化合物(A1)を含有するMIBK溶液に、CPI-100B及びMIBK(メチルイソブチルケトン)を添加し、各含有成分の含有量を以下のように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、硬化層形成用組成物HC-1とした。
化合物(A1)のMIBK溶液(固形分濃度61.1質量%)
84.3質量部
層間密着剤(Z)のMIBK溶液(固形分濃度19.1質量%)
5.65質量部
CPI-100B(固形分濃度40質量%) 3.57質量部
MIBK 6.50質量部
上記層間密着剤(Z)は、下記構造式で表される化合物である。下記構造式中の繰り返し単位の含有比率はモル比率である。
Figure 2022187462000015
CPI-100Bは、サンアプロ株式会社製の光カチオン重合開始剤である。
(硬化層形成用組成物HC-2)
上記HC-1のCPI-100BをIrgacure290に変更し、各含有成分の含有量を以下のように調整した以外は、HC-1と同様に調製し、硬化層形成用組成物HC-2とした。
化合物(A1)のMIBK溶液(固形分濃度61.1質量%)
83.5質量部
層間密着剤(Z)のMIBK溶液(固形分濃度19.1質量%)
5.65質量部
Irgacure290 1.89質量部
MIBK 8.94質量部
Irgacure290は、BASFジャパン社製の光カチオン重合開始剤である。なお、下記表1では、Irgacure290を「Irg.290」と記載する。
(硬化層形成用組成物HC-3)
上記HC-1のCPI-100BをCPI-100P(サンアプロ株式会社製の光カチオン重合開始剤)に変更し、各含有成分の含有量を以下のように調整した以外は、HC-1と同様に調製し、硬化層形成用組成物HC-3とした。
化合物(A1)のMIBK溶液(固形分濃度61.1質量%)
85.5質量部
層間密着剤(Z)のMIBK溶液(固形分濃度19.1質量%)
5.65質量部
CPI-100P(固形分濃度50質量%) 1.40質量部
MIBK 7.48質量部
(硬化層形成用組成物HC-4)
上記化合物(A2)を含有するMIBK溶液に、CPI-100B及びMIBK(メチルイソブチルケトン)を添加し、各含有成分の含有量を以下のように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、硬化層形成用組成物HC-4とした。
化合物(A2)のMIBK溶液(固形分濃度59.8質量%)
87.5質量部
層間密着剤(Z)のMIBK溶液(固形分濃度19.1質量%)
5.65質量部
CPI-100B(固形分濃度40質量%) 3.51質量部
MIBK 3.37質量部
(硬化層形成用組成物HC-X)
上記HC-1のCPI-100Bをトリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート(東京化成工業株式会社製)に変更し、各含有成分の含有量を以下のように調整した以外は、HC-1と同様に調製し、硬化層形成用組成物HC-Xとした。
化合物(A1)のMIBK溶液(固形分濃度61.1質量%)
89.0質量部
層間密着剤(Z)のMIBK溶液(固形分濃度19.1質量%)
5.65質量部
トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート 1.19質量部
MIBK 4.12質量部
(硬化層形成用組成物HC-Y)
上記化合物(A3)を含有するMIBK溶液に、CPI-100B及びMIBK(メチルイソブチルケトン)を添加し、各含有成分の含有量を以下のように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、硬化層形成用組成物HC-Y)とした。
化合物(A3)のMIBK溶液(固形分濃度60.5質量%)
85.1質量部
層間密着剤(Z)のMIBK溶液(固形分濃度19.1質量%)
5.65質量部
CPI-100B(固形分濃度40質量%) 3.57質量部
MIBK 5.66質量部
[実施例1]
(積層体の製造)
厚さ50μmのポリイミド基材S-1上に上記硬化層形成用組成物HC-1をワイヤーバー#14を用いて、硬化後の膜厚が10μmとなるようにバー塗布し、基材上に硬化層塗膜を設けた。
次いで、硬化層塗膜を120℃で1分間乾燥した後、25℃、大気雰囲気下の条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度21mW/cm、照射量240mJ/cmの紫外線を照射した。さらに100℃、酸素濃度100ppm(parts per million)の条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度60mW/cm、照射量600mJ/cmの紫外線を照射することで、実施例1の積層体を得た。
[実施例2]
硬化層に用いる硬化層形成用組成物をHC-2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の積層体を製造した。
[実施例3]
硬化後の膜厚を15μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の積層体を製造した。
[実施例4]
硬化後の膜厚を20μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の積層体を製造した。
[実施例5]
硬化層に用いる硬化層形成用組成物をHC-3に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の積層体を製造した。
[実施例6]
硬化層に用いる硬化層形成用組成物をHC-4に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の積層体を製造した。
[比較例1]
硬化後の膜厚を3μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の積層体を製造した。
[比較例2]
硬化後の膜厚を50μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の積層体を製造した。
[比較例3]
硬化層に用いる硬化層形成用組成物をHC-Xに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の積層体を製造した。
[比較例4]
硬化層に用いる硬化層形成用組成物をHC-Yに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4の積層体を製造した。
[積層体の評価]
製造した各実施例及び比較例の積層体を、以下の方法によって評価した。
(繰り返し折り曲げ耐性の評価)
製造した各実施例及び比較例の積層体から幅15mm、長さ150mmの試料フィルムを切り出し、温度25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させた。その後、180°耐折度試験機((株)井元製作所製、IMC-0755型)を用いて、硬化層を内側(基材を外側)にして繰り返し折り曲げ耐性の試験を行った。使用した試験機は、試料フィルムを直径2mmの棒(円柱)の曲面に沿わせて曲げ角度180°で長手方向の中央部分で折り曲げた後、元に戻す(試料フィルムを広げる)という動作を1回の試験とし、この試験を繰り返し行うものである。
上記180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しないものをA、20万回繰り返し行った場合にクラックが発生せず、30万回繰り返し行う前にクラックが発生したものをB、10万回繰り返し行った場合にクラックが発生せず、20万回繰り返し行う前にクラックが発生したものをC、10万回繰り返し行う前にクラックが発生したものをDとして評価した。なお、クラックの発生の有無は目視で評価した。
(鉛筆硬度の評価)
各実施例及び比較例の積層体の硬化層の表面を、温度25℃、相対湿度60%で2時間調湿した後、JIS(JISは、Japanese Industrial Standards(日本工業規格)である) K5400に従った方法で異なる5箇所について、JIS S 6006に規定するH~9Hの試験用鉛筆を用いて1kgの荷重にて引っ掻いた。その後、目視で傷が認められる箇所が0~2箇所であった鉛筆の硬度のうち、最も硬度の高い鉛筆硬度を評価結果とした。鉛筆硬度は、「H」の前に記載される数値が高いほど、硬度が高く好ましい。
A:5H以上
B:4H以上5H未満
C:3H以上4H未満
D:H以上3H未満
(硬化層の基材側表面のエポキシ基の開環率の測定)
硬化後の積層体を斜めに切削して積層体断面を露出させ、硬化後の硬化層の基材側表面のエポキシ基のピークをFT-IR一回反射ATRにより、硬化後のIRスペクトルを測定した。一方、未硬化の硬化層形成用組成物をガラス基板上に5cc程度滴下し、40℃2時間乾燥させて溶剤を揮発させ、硬化前測定用のサンプルを作製し、FT-IR一回反射ATRにより、硬化前(未硬化)のIRスペクトル(赤外吸収スペクトル)を測定した。硬化後と硬化前のIRスペクトルから、下記式によって、開環率を算出した。下記の装置及び条件により測定した。
Figure 2022187462000016
FT-IR分光光度計:NICOLET 6700(サーモエレクトロン(株)製)
ATR装置:ゴールデンゲート Ge ATR ZnSeレンズ使用(Specac社製)
測定入射角:45°
サンプルサイズ:40mm角
エポキシ由来ピーク:883cm-1
開環率算出の基準ピーク(C-H結合由来):2920cm-1
なお、ATRの測定スポット径および斜め切削の角度を調整し、硬化層の厚さ方向測定範囲は基材側表面から1μm以内とした。
開環率の評価結果は下記のとおりとした。
A:90%以上
B:80%以上90%未満
C:70%以上80%未満
D:70%未満
Figure 2022187462000017
実施例1~6の積層体は硬度と繰り返し折り曲げ耐性とが両立できていた。特に、実施例1及び2の積層体は、硬度と繰り返し折り曲げ耐性がいずれもAであり、非常に優れていることがわかった。

Claims (18)

  1. 下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと、重合開始剤とを含む硬化層形成用組成物であって、
    前記重合開始剤のフッ化物イオン親和性が350kJ/mol以上であり、
    前記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が3500以上である、
    硬化層形成用組成物。
    Figure 2022187462000018

    一般式(1)中、Qはエポキシ基を含む基を表す。
  2. 前記重合開始剤が酸発生剤である、請求項1に記載の硬化層形成用組成物。
  3. 前記重合開始剤が光酸発生剤である、請求項1又は2に記載の硬化層形成用組成物。
  4. 前記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が5000以上200000以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化層形成用組成物。
  5. 前記ポリオルガノシルセスキオキサン中のシロキサン構成単位の全量に対する、前記一般式(1)で表される構成単位の割合が50モル%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の硬化層形成用組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化層形成用組成物の硬化物と基材を含む、積層体。
  7. 硬化層と基材を含む積層体であって、
    前記硬化層が硬化層形成用組成物の硬化物であり、
    前記硬化層の厚みが5μm以上45μm以下であり、
    前記硬化層形成用組成物が、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと、重合開始剤とを含み、
    前記基材側硬化層表面近傍のポリオルガシルセスキオキサンのエポキシ基の開環率が70%以上である、積層体。
    Figure 2022187462000019

    一般式(1)中、Qはエポキシ基を含む基を表す。
  8. 前記重合開始剤が酸発生剤である、請求項7に記載の積層体。
  9. 前記重合開始剤が光酸発生剤である、請求項7又は8に記載の積層体。
  10. 前記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が3500以上である、請求項7~9のいずれか1項に記載の積層体。
  11. 前記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が5000以上200000以下である、請求項7~10のいずれか1項に記載の積層体。
  12. 前記ポリオルガノシルセスキオキサン中のシロキサン構成単位の全量に対する、上記一般式(1)で表される構成単位の割合が50モル%以上である、請求項7~11のいずれか1項に記載の積層体。
  13. 前記基材の厚みが100μm以下である、請求項7~12のいずれか1項に記載の積層体。
  14. 前記基材が芳香族ポリイミド又は芳香族ポリアミドを含有する、請求項6~13のいずれか1項に記載の積層体。
  15. 基材と硬化層とを含む積層体の製造方法であって、
    (I)基材上に、下記一般式(1)で表される構成単位を有するポリオルガノシルセスキオキサンと、重合開始剤とを含む硬化層形成用組成物を塗布して、硬化層塗膜を形成する工程、及び、
    (II)前記硬化層塗膜を硬化することにより前記硬化層を形成する工程、
    を含む積層体の製造方法であって、
    前記重合開始剤のフッ化物イオン親和性が350kJ/mol以上であり、
    前記ポリオルガノシルセスキオキサンの重量平均分子量が3500以上である、
    積層体の製造方法。
    Figure 2022187462000020

    一般式(1)中、Qはエポキシ基を含む基を表す。
  16. 請求項6~14のいずれか1項に記載の積層体を備えた物品。
  17. 請求項6~14のいずれか1項に記載の積層体を備えた画像表示装置。
  18. 請求項6~14のいずれか1項に記載の積層体を備えたフレキシブルディスプレイ。

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