JP7291199B2 - ハードコート層形成用組成物、及びハードコートフィルム - Google Patents
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Description
本発明の課題は、耐擦傷性に優れたハードコートフィルムを形成することができるポリオルガノシルセスキオキサン、及びハードコート層形成用組成物を提供することにある。
[1]
フッ素原子を含有する基を有する構成単位(a)と、カチオン重合性基を有する構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリオルガノシルセスキオキサンを含むハードコート層形成用組成物であって、
上記ポリオルガノシルセスキオキサンの含有率が、上記ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.001~3質量%であり、
さらに、上記ポリオルガノシルセスキオキサンとは異なる成分であるカチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含み、
上記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の含有率が、上記ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、50質量%以上である、ハードコート層形成用組成物。
[2]
上記構成単位(a)が、下記一般式(S-1)で表される構成単位であり、
上記構成単位(b)が、下記一般式(S-2)で表される構成単位であり、
上記構成単位(c)が、下記一般式(S-3)で表される構成単位である、[1]に記載のハードコート層形成用組成物。
一般式(S-1)中、L1は単結合又は2価の連結基を表し、Q1はフッ素原子を含有する基を表す。
一般式(S-2)中、L2は単結合又は2価の連結基を表し、Q2はカチオン重合性基を表す。
一般式(S-3)中、L3は単結合又は2価の連結基を表し、Q3はラジカル重合性基を表す。
[3]
上記構成単位(b)のカチオン重合性基がエポキシ基である、[1]又は[2]に記載のハードコート層形成用組成物。
[4]
上記エポキシ基が脂環式エポキシ基である、[3]に記載のハードコート層形成用組成物。
[5]
上記構成単位(c)のラジカル重合性基が(メタ)アクリロイル基である、[1]~[4]のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
[6]
上記構成単位(a)のフッ素原子を含有する基に含まれるフッ素原子の数が9個以上である、[1]~[5]のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
[7]
上記構成単位(a)の含有モル比率が、全構成単位に対して、50モル%以下である、[1]~[6]のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
[8]
上記構成単位(b)の含有モル比率が、全構成単位に対して、15モル%以上である、[1]~[7]のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
[9]
上記構成単位(c)の含有モル比率が、全構成単位に対して、15モル%以上である、[1]~[8]のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
[10]
基材と、[1]~[9]のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物を硬化させてなるハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有するハードコートフィルム。
本発明は、上記[1]~[10]に係るものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
フッ素原子を含有する基を有する構成単位(a)と、カチオン重合性基を有する構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリオルガノシルセスキオキサン。
<2>
上記構成単位(a)が、下記一般式(S-1)で表される構成単位であり、
上記構成単位(b)が、下記一般式(S-2)で表される構成単位であり、
上記構成単位(c)が、下記一般式(S-3)で表される構成単位である、<1>に記載のポリオルガノシルセスキオキサン。
一般式(S-2)中、L2は単結合又は2価の連結基を表し、Q2はカチオン重合性基を表す。
一般式(S-3)中、L3は単結合又は2価の連結基を表し、Q3はラジカル重合性基を表す。
<3>
上記構成単位(b)のカチオン重合性基がエポキシ基である、<1>又は<2>に記載のポリオルガノシルセスキオキサン。
<4>
上記エポキシ基が脂環式エポキシ基である、<3>に記載のポリオルガノシルセスキオキサン。
<5>
上記構成単位(c)のラジカル重合性基が(メタ)アクリロイル基である、<1>~<4>のいずれか1項に記載のポリオルガノシルセスキオキサン。
<6>
上記構成単位(a)のフッ素原子を含有する基に含まれるフッ素原子の数が9個以上である、<1>~<5>のいずれか1項に記載のポリオルガノシルセスキオキサン。
<7>
上記構成単位(a)の含有モル比率が、全構成単位に対して、50モル%以下である、<1>~<6>のいずれか1項に記載のポリオルガノシルセスキオキサン。
<8>
上記構成単位(b)の含有モル比率が、全構成単位に対して、15モル%以上である、<1>~<7>のいずれか1項に記載のポリオルガノシルセスキオキサン。
<9>
上記構成単位(c)の含有モル比率が、全構成単位に対して、15モル%以上である、<1>~<8>のいずれか1項に記載のポリオルガノシルセスキオキサン。
<10>
<1>~<9>のいずれか1項に記載のポリオルガノシルセスキオキサンを含むハードコート層形成用組成物。
本発明のポリオルガノシルセスキオキサンは、フッ素原子を含有する基を有する構成単位(a)と、カチオン重合性基を有する構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有する。
本発明のポリオルガノシルセスキオキサンに含まれる、フッ素原子を含有する基を有する構成単位(a)(「構成単位(a)」とも呼ぶ。)について説明する。
フッ素原子を含有する基(「フッ素含有基」とも呼ぶ。)とは、少なくとも1つのフッ素原子を含んでなる基であり、例えば、フッ素原子、少なくとも1つのフッ素原子を有する有機基などが挙げられる。上記有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる基が挙げられ、アルキル基であることが好ましい。また、上記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基は、フッ素原子以外に更に置換基を有していてもよい。
フッ素含有基は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数2~15のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数4~10のフルオロアルキル基であることが更に好ましく、炭素数4~8のフルオロアルキル基であることが特に好ましい。
1つのフッ素含有基に含まれるフッ素原子の数は、3個以上であることが好ましく、5個以上であることがより好ましく、9個以上であることが更に好ましい。
1つのフッ素含有基に含まれるフッ素原子の数は、17個以下であることが好ましく、13個以下であることがより好ましい。
q1は1~7の整数を表すことが好ましく、1~5の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことが更に好ましい。
q2は2~8の整数を表すことが好ましく、4~8の整数を表すことがより好ましく、4~6の整数を表すことが更に好ましい。
Rq1はフッ素原子を表すことが好ましい。
一般式(S-1)中、Q1はフッ素原子を含有する基を表す。フッ素原子を含有する基については、前述したものと同様である。
一般式(S-1-f)中のq1、q2、Rq1は、それぞれ前述の一般式(f-1)中のq1、q2、Rq1と同様である。
また、本発明のポリオルガノシルセスキオキサンにおける構成単位(a)の含有モル比率は、全構成単位に対して、1モル%以上であることが好ましく、3モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることが更に好ましい。
本発明のポリオルガノシルセスキオキサンに含まれる、カチオン重合性基を有する構成単位(b)(「構成単位(b)」とも呼ぶ。)について説明する。
カチオン重合性基は、特に限定されず、一般に知られているカチオン重合性基を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。カチオン重合性基としては、脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましく、エポキシ基が最も好ましい。エポキシ基としては、脂環式エポキシ基(エポキシ基と脂環基の縮環構造を有する基)であることが特に好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
一般式(e-3)中、R2aは置換又は無置換のアルキル基を表す。q3は0~2の整数を表す。R2aが複数存在する場合は互いに同じでも異なっていてもよい。
式(e-1)、一般式(e-2)、一般式(e-3)において、*は結合位置を表す。
R1aは置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基を表すことが好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
上記アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
R1aは無置換の炭素数1~3の直鎖アルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
R2aは置換又は無置換の炭素数1~6のアルキル基を表すことが好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
上記アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
R2aは無置換の炭素数1~3の直鎖アルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
q3は0~2の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
一般式(S-2)中、Q2はカチオン重合性基を表す。カチオン重合性基については、前述したものと同様である。
一般式(S-2-e2)中、R1aは水素原子又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、L2は単結合又は2価の連結基を表す。
一般式(S-2-e3)中、R2aは置換又は無置換のアルキル基を表す。q3は0~2の整数を表す。R2aが複数存在する場合は互いに同じでも異なっていてもよい。L2は単結合又は2価の連結基を表す。
一般式(S-2-e2)中のR1aは、前述の一般式(e-2)中のR1aと同様である。
一般式(S-2-e3)中のR2a、q3は、それぞれ前述の一般式(e-3)中のR2a、q3と同様である。
また、本発明のポリオルガノシルセスキオキサンにおける構成単位(b)の含有モル比率は、全構成単位に対して、85モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましく、60モル%以下であることが更に好ましい。
本発明のポリオルガノシルセスキオキサンに含まれる、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)(「構成単位(c)」とも呼ぶ。)について説明する。
ラジカル重合性基は、特に限定されず、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができる。ラジカル重合性基としては、重合性不飽和基が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
一般式(S-3)中、Q3はラジカル重合性基を表す。ラジカル重合性基については、前述したものと同様である。
一般式(S-3-r2)中、L3は単結合又は2価の連結基を表す。
また、本発明のポリオルガノシルセスキオキサンにおける構成単位(c)の含有モル比率は、全構成単位に対して、85モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましく、60モル%以下であることが更に好ましい。
一般式(S-2)中、L2は単結合又は2価の連結基を表し、Q2はカチオン重合性基を表す。
一般式(S-3)中、L3は単結合又は2価の連結基を表し、Q3はラジカル重合性基を表す。
L1、Q1、L2、Q2、L3、Q3はそれぞれ前述したとおりである。特に、本発明のポリオルガノシルセスキオキサンは、カチオン重合性基としてエポキシ基(好ましくは脂環式エポキシ基)を有し、かつラジカル重合性基として(メタ)アクリロイル基を有することが好ましい。
本発明のポリオルガノシルセスキオキサンの製造方法は、特に限定されず、公知の製造方法を用いて製造することができるが、例えば、加水分解性シラン化合物を加水分解及び縮合させる方法により製造できる。上記加水分解性シラン化合物としては、フッ素原子を含有する基を有する加水分解性三官能シラン化合物(好ましくは下記一般式(Sd-1)で表される化合物)、カチオン重合性基を有する加水分解性三官能シラン化合物(好ましくは下記一般式(Sd-2)で表される化合物)、及びラジカル重合性基を有する加水分解性三官能シラン化合物(好ましくは下記一般式(Sd-3)で表される化合物)を使用することが好ましい。
下記一般式(Sd-1)で表される化合物は、上記一般式(S-1)で表される構成単位に対応し、下記一般式(Sd-2)で表される化合物は、上記一般式(S-2)で表される構成単位に対応し、下記一般式(Sd-3)で表される化合物は、上記一般式(S-3)で表される構成単位に対応する。
一般式(Sd-2)中、X7~X9は各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、L2は単結合又は2価の連結基を表し、Q2はカチオン重合性基を表す。
一般式(Sd-3)中、X10~X12は各々独立にアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、L3は単結合又は2価の連結基を表し、Q3はラジカル重合性基を表す。
一般式(Sd-2)中のL2及びQ2は、一般式(S-2)中のL2及びQ2とそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(Sd-3)中のL3及びQ3は、一般式(S-3)中のL3及びQ3とそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基等の炭素数1~4のアルコキシ基等が挙げられる。
上記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
X4~X12としては、アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。なお、X4~X12は、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
上記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等のエステル;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール等が挙げられる。
上記溶媒としては、ケトン又はエーテルが好ましい。なお、溶媒は1種を単独で使用することも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
上記酸触媒としては、特に限定されず、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の鉱酸;リン酸エステル;酢酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸等のカルボン酸;メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸;活性白土等の固体酸;塩化鉄等のルイス酸等が挙げられる。
上記アルカリ触媒としては、特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属の炭酸塩;炭酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩;炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩;酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム等のアルカリ金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);酢酸マグネシウム等のアルカリ土類金属の有機酸塩(例えば、酢酸塩);リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド;ナトリウムフェノキシド等のアルカリ金属のフェノキシド;トリエチルアミン、N-メチルピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン等のアミン類(第3級アミン等);ピリジン、2,2'-ビピリジル、1,10-フェナントロリン等の含窒素芳香族複素環化合物等が挙げられる。
なお、触媒は1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、触媒は、水又は溶媒等に溶解又は分散させた状態で使用することもできる。
本発明のポリオルガノシルセスキオキサンを用いることができるハードコートフィルムの態様としては、基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有するハードコートフィルムが好ましい。上記ハードコート層は、前述の本発明のポリオルガノシルセスキオキサンと、後述するカチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含むハードコート層形成用組成物を硬化させてなることが好ましい。上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物を硬化させてなることが好ましい。
ここで、カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むハードコート層上に、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を形成した場合、ハードコート層はカチオン重合系であり、耐擦傷層はラジカル重合系であるため、両層の重合系が異なっており、層間の密着性が弱く、耐擦傷性の向上が低くなっていると考えられる。
本発明では、ハードコート層形成用組成物に、フッ素原子を含有する基を有する構成単位(a)と、カチオン重合性基を有する構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリオルガノシルセスキオキサンを添加することにより、このポリオルガノシルセスキオキサンが、層間密着剤として機能し、層間の密着性が強くなり、耐擦傷性が優れるものとなったと考えられる。
より詳細には、本発明のポリオルガノシルセスキオキサンはフッ素原子を含有する基を有する構成単位(a)を有するため、ハードコート層形成用組成物を塗布したときに、本発明のポリオルガノシルセスキオキサンがハードコート層表面(空気界面側表面)に偏在し、効率よく層間を密着させることができる。
本発明のポリオルガノシルセスキオキサンはカチオン重合性基を有する構成単位(b)を有するため、ハードコート層の素材であるカチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)と重合反応により結合することができる。
また、本発明のポリオルガノシルセスキオキサンはラジカル重合性基を有する構成単位(c)を有するため、耐擦傷層の素材であるラジカル重合性化合物(c1)と重合反応により結合することができる。
したがって、本発明のポリオルガノシルセスキオキサンはハードコート層の素材と耐擦傷層の素材の両方と結合することができるため、層間の密着性を高めることができ、これによって、耐擦傷性を向上することができると考えられる。
本発明のハードコート層形成用組成物は、前述の本発明のポリオルガノシルセスキオキサンを含む。
本発明のハードコート層形成用組成物中の本発明のポリオルガノシルセスキオキサンの含有率は、特に限定されないが、耐擦傷性の観点から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~3質量%であることがより好ましく、0.1~2質量%であることが更に好ましく、0.1~1質量%であることが特に好ましい。
本発明のハードコート層形成用組成物は、カチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)(「ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)」ともいう。)を含むことが好ましい。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)は、前述の本発明のポリオルガノシルセスキオキサンとは異なる成分である。
ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)におけるカチオン重合性基としては、特に限定されず、一般に知られているカチオン重合性基を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。カチオン重合性基としては、脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましく、エポキシ基が最も好ましい。エポキシ基としては、脂環式エポキシ基(エポキシ基と脂環基の縮環構造を有する基)であってもよい。
ポリオルガノシルセスキオキサンとは、加水分解性三官能シラン化合物に由来するシロキサン構成単位(シルセスキオキサン単位)を有するネットワーク型ポリマー又は多面体クラスターであり、シロキサン結合によって、ランダム構造、ラダー構造、ケージ構造などを形成し得る。本発明において、[SiO1.5]が表す構造部分は、上記のいずれの構造であってもよいが、ラダー構造を多く含有していることが好ましい。ラダー構造を形成していることにより、積層体の変形回復性を良好に保つことができる。ラダー構造の形成は、FT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)を測定した際、1020-1050cm-1付近に現れるラダー構造に特徴的なSi-O-Si伸縮に由来する吸収の有無によって定性的に確認することができる。
エポキシ基を含有する基としては、オキシラン環を有する公知の基が挙げられる。
Rbは、下記式(1b)~(4b)で表される基であることが好ましい。
R1b、R2b、R3b及びR4bは、置換又は無置換のアルキレン基を表すことが好ましい。
R1b、R2b、R3b及びR4bが表すアルキレン基としては、炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、i-プロピレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-デシレン基等が挙げられる。
R1b、R2b、R3b及びR4bが表すアルキレン基が置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、シリル基等が挙げられる。
R1b、R2b、R3b及びR4bとしては、無置換の炭素数1~4の直鎖状のアルキレン基、無置換の炭素数3又は4の分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、n-プロピレン基、又はi-プロピレン基がより好ましく、さらに好ましくはエチレン基、又はn-プロピレン基である。
Rcが表す1価の基としては、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアリール基、又は置換若しくは無置換のアラルキル基が挙げられる。
Rcが表すシクロアルキル基としては、炭素数3~15のシクロアルキル基が挙げられ、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
Rcが表すアルケニル基としては、炭素数2~10のアルケニル基が挙げられ、例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基等の直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基が挙げられる。
Rcが表すアリール基としては、炭素数6~15のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
Rcが表すアラルキル基としては、炭素数7~20のアラルキル基が挙げられ、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
q/(q+r)は0.5~1.0であることが好ましい。ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)に含まれるRb又はRcで表される基全量に対して、Rbで表される基を半数以上とすることで、有機架橋基が作るネットワークが十分に形成されるため、硬度、繰り返し折り曲げ耐性の各性能を良好に保つことができる。
q/(q+r)は0.7~1.0であることがより好ましく、0.9~1.0がさらに好ましく、0.95~1.0であることが特に好ましい。
r/(q+r)は0.005~0.10がより好ましく、0.005~0.05がさらに好ましく、0.005~0.025であることが特に好ましい。
測定装置:商品名「LC-20AD」((株)島津製作所製)
カラム:Shodex KF-801×2本、KF-802、及びKF-803(昭和電工(株)製)
測定温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、試料濃度0.1~0.2質量%
流量:1mL/分
検出器:UV-VIS検出器(商品名「SPD-20A」、(株)島津製作所製)
分子量:標準ポリスチレン換算
なお、全固形分とは溶剤以外の全成分のことである。
本発明のハードコート層形成用組成物は、カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
カチオン重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。また、カチオン重合開始剤は光重合開始剤でも良く、熱重合開始剤でも良い。
ハードコート層形成用組成物中のカチオン重合開始剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えばポリオルガノシルセスキオキサン(a1)100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。
本発明のハードコート層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒の一種または二種以上を任意の割合で混合して用いることができる。有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジアセトンアルコール等が挙げられる。
本発明のハードコート層形成用組成物における溶媒の含有率は、ハードコート層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、ハードコート層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
ハードコート層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
ハードコート層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、10~90質量%程度であり、好ましくは20~80質量%、特に好ましくは40~70質量%程度である。
本発明のハードコート層形成用組成物により形成することができるハードコート層の膜厚は特に限定されないが、0.5~30μmであることが好ましく、1~25μmであることがより好ましく、2~20μmであることが更に好ましい。
ハードコート層の膜厚は、積層体の断面を光学顕微鏡で観察して算出する。断面試料は、断面切削装置ウルトラミクロトームを用いたミクロトーム法や、集束イオンビーム(FIB)装置を用いた断面加工法などにより作成できる。
本発明のハードコート層形成用組成物は、基材上に塗布して、塗膜を硬化することで、ハードコート層とすることができる。
基材は、可視光領域の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
基材はポリマーを含むことが好ましい。
ポリマーとしては、光学的な透明性、機械的強度、熱安定性などに優れるポリマーが好ましい。
アミド系ポリマーとしては、芳香族ポリアミド(アラミド系ポリマー)が好ましい。
基材は、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有することが好ましい。
基材はフィルム状であることが好ましい。
基材の厚みは、100μm以下であることがより好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、50μm以下が最も好ましい。また、基材の取り扱いの容易さの観点から基材の厚みは3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上が最も好ましい。
本発明のポリオルガノシルセスキオキサンを好ましく適用することができるハードコートフィルムは、基材、ハードコート層(本発明のポリオルガノシルセスキオキサンを含むハードコート層形成用組成物により形成された層)、耐擦傷層をこの順に有するハードコートフィルムである。
耐擦傷層は、特に限定されないが、好ましくは、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物を硬化してなる層である。
ラジカル重合性化合物(c1)(「化合物(c1)」ともいう。)について説明する。
化合物(c1)は、ラジカル重合性基を有する化合物である。
化合物(c1)におけるラジカル重合性基としては、特に限定されず、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができる。ラジカル重合性基としては、重合性不飽和基が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
化合物(c1)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることがより好ましい。
化合物(c1)の分子量は特に限定されず、モノマーでもよいし、オリゴマーでもよいし、ポリマーでもよい。
耐擦傷層形成用組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
ラジカル重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。また、ラジカル重合開始剤は光重合開始剤でも良く、熱重合開始剤でも良い。
耐擦傷層形成用組成物中のラジカル重合開始剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えば化合物(c1)100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。
耐擦傷層形成用組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、前述のハードコート層形成用組成物が含んでいてもよい溶媒と同様である。
本発明における耐擦傷層形成用組成物における溶媒の含有率は、耐擦傷層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、耐擦傷層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
耐擦傷層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
耐擦傷層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、10~90質量%程度であり、好ましくは20~80質量%、特に好ましくは40~70質量%程度である。
耐擦傷層形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機粒子、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、滑り剤、溶媒等を含有していてもよい。
耐擦傷層の膜厚は、繰り返し折り曲げ耐性の観点から、3.0μm未満であることが好ましく、0.1~2.0μmであることがより好ましく、0.1~1.0μmであることが更に好ましい。
((SX1-1)で表されるポリオルガノシルセスキオキサンの合成)
トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-n-オクチル)シラン30ミリモル(14.05g)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン135ミリモル(33.26g)、アクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル135ミリモル(31.63g)、トリエチルアミン7.39g、及びMIBK(メチルイソブチルケトン)370gを混合し、純水73.9gを、滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。この反応液を50℃に加熱し、重縮合反応を10時間行った。
その後、反応溶液を冷却し、5質量%食塩水300gを添加し、有機層を抽出した。有機層を5質量%食塩水300g、純水300gで2回、順次洗浄した後、30mmHg、50℃の条件で濃縮し、固形分濃度52質量%のMIBK溶液として無色透明の液状の生成物である下記式(SX1-1)で表されるポリオルガノシルセスキオキサンを得た。
1H NMR(400MHz,CDCl3,ppm):δ6.3-6.5(m,(III)アクリル部CH2=CHCO2),δ6.0-6.2(m,(III)アクリル部CH2=CHCO2),δ5.7-5.9(m,(III)アクリル部CH2=CHCO2),δ4.0-4.2(m,(III)アクリル部の隣CH2=CHCO2CH2),δ3.0-3.2(m,(II)エポキシ部CHOCH),δ1.8-2.3(m,(I)フッ素の隣C6F13CH2CH2),δ1.6-1.8(m,(III)シリル基の隣CH2Si),δ1.0-1.5(m,(II)脂環部C6H6),δ0.8-1.0(m,(I)シリル基の隣C6F13CH2CH2Si),δ0.4-0.8(m,(II)&(III)メチレン部CH2CH2CH2Si).
(ポリイミド粉末の製造)
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素気流下、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)832gを加えた後、反応器の温度を25℃にした。ここに、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)64.046g(0.2mol)を加えて溶解した。得られた溶液を25℃に維持しながら、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)31.09g(0.07mol)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.83g(0.03mol)を投入し、一定時間撹拌して反応させた。その後、塩化テレフタロイル(TPC)20.302g(0.1mol)を添加して、固形分濃度13質量%のポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液にピリジン25.6g、無水酢酸33.1gを投入して30分撹拌し、さらに70℃で1時間撹拌した後、常温に冷却した。ここにメタノール20Lを加え、沈澱した固形分を濾過して粉砕した。その後、100℃下、真空で6時間乾燥させて、111gのポリイミド粉末を得た。
100gの上記ポリイミド粉末を670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離して、フレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理して、ポリイミドフィルムからなる、厚み30μmの基材S-1を得た。
(化合物(A)の合成)
温度計、攪拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた1000ミリリットルのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン300ミリモル(73.9g)、トリエチルアミン7.39g、及びMIBK(メチルイソブチルケトン)370gを混合し、純水73.9gを、滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。この反応液を80℃に加熱し、重縮合反応を窒素気流下で10時間行った。
その後、反応溶液を冷却し、5質量%食塩水300gを添加し、有機層を抽出した。有機層を5質量%食塩水300g、純水300gで2回、順次洗浄した後、1mmHg、50℃の条件で濃縮し、固形分濃度59.8質量%のMIBK溶液として無色透明の液状の生成物{脂環式エポキシ基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)である化合物(A)(一般式(1)中のRb:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、q=100、r=0である化合物)}を87.0g得た。
生成物を分析したところ、数平均分子量は2050であり、分子量分散度は1.9であった。
なお、1mmHgは約133.322Paである。
<ハードコート層形成用組成物の調製>
(ハードコート層形成用組成物HC-1)
上記化合物(A)を含有するMIBK溶液に、層間密着剤(SX1-1)、CPI-110P、及びMIBK(メチルイソブチルケトン)を添加し、各含有成分の含有量を以下のように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、ハードコート層形成用組成物HC-1とした。
層間密着剤(SX1-1) 0.38質量部
CPI-110P 3.0質量部
MIBK 67.70質量部
(耐擦傷層形成用組成物SR-1)
下記に記載の組成で各成分をミキシングタンクに投入、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して耐擦傷層形成用組成物SR-1とした。
DPHA 96.2質量部
イルガキュア127 2.8質量部
RS-90 1.0質量部
メチルエチルケトン 300.0質量部
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
イルガキュア127(Irg.127):ラジカル光重合開始剤、BASF社製
RS-90:滑り剤、DIC(株)製
厚さ30μmのポリイミド基材S-1上に上記ハードコート層形成用組成物HC-1をワイヤーバー#18を用いて、硬化後の膜厚が18μmとなるようにバー塗布し、基材上にハードコート層塗膜を設けた。
次いで、ハードコート層塗膜を120℃で1分間乾燥した後、25℃、酸素濃度100ppm(parts per million)の条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度18mW/cm2、照射量19mJ/cm2の紫外線を照射した。このようにしてハードコート層塗膜を半硬化した。
その後、半硬化されたハードコート層塗膜上に、耐擦傷層形成用組成物SR-1をダイコーターを用いて、硬化後の膜厚が0.8μmとなるように塗布した。
次いで、得られた積層体を120℃で1分間乾燥した後、25℃、酸素濃度100ppm、照度60mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射し、さらに80℃、酸素濃度100ppmの条件にて空冷水銀ランプを用いて、で照度60mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射することで、ハードコート層塗膜及び耐擦傷層塗膜を完全硬化させた。
その後、得られた積層体を120℃1時間熱処理することで、基材上に、ハードコート層と耐擦傷層を有するハードコートフィルムを得た。
用いる層間密着剤の種類を下記表1に記載したとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、ハードコートフィルムをそれぞれ製造した。
製造した各ハードコートフィルムの耐擦傷層の表面を、ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦り試験を行うことで、耐擦傷性の指標とした。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.#0000番)
試料と接触するテスターのこすり先端部(2cm×2cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm、
擦り速度:13cm/秒、
荷重:1kg/cm2
先端部接触面積:2cm×2cm
試験後のハードコートフィルムの擦った面(耐擦傷層の表面)とは逆側の面(基材の表面)に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、スチールウールと接触していた部分に傷が生じたときの擦り回数を計測し評価した。
本出願は、2019年2月27日出願の日本特許出願(特願2019-34956)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
Claims (10)
- フッ素原子を含有する基を有する構成単位(a)と、カチオン重合性基を有する構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリオルガノシルセスキオキサンを含むハードコート層形成用組成物であって、
前記ポリオルガノシルセスキオキサンの含有率が、前記ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.001~3質量%であり、
さらに、前記ポリオルガノシルセスキオキサンとは異なる成分であるカチオン重合性基を有するポリオルガノシルセスキオキサン(a1)を含み、
前記ポリオルガノシルセスキオキサン(a1)の含有率が、前記ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、50質量%以上である、ハードコート層形成用組成物。 - 前記構成単位(b)のカチオン重合性基がエポキシ基である、請求項1又は2に記載のハードコート層形成用組成物。
- 前記エポキシ基が脂環式エポキシ基である、請求項3に記載のハードコート層形成用組成物。
- 前記構成単位(c)のラジカル重合性基が(メタ)アクリロイル基である、請求項1~4のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
- 前記構成単位(a)のフッ素原子を含有する基に含まれるフッ素原子の数が9個以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
- 前記構成単位(a)の含有モル比率が、全構成単位に対して、50モル%以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
- 前記構成単位(b)の含有モル比率が、全構成単位に対して、15モル%以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
- 前記構成単位(c)の含有モル比率が、全構成単位に対して、15モル%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物。
- 基材と、請求項1~9のいずれか1項に記載のハードコート層形成用組成物を硬化させてなるハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有するハードコートフィルム。
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