JP2022175692A - ブロック共重合体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】マスターバッチを分割して複数ロットのブロック共重合体を製造する場合に、ロット間において物性のバラツキが少ないブロック共重合体を得ることができるブロック共重合体の製造方法を提供すること。【解決手段】ブロック共重合体の製造方法は、リビングラジカル重合制御剤、第1の重合開始剤及び第1のビニル系単量体を第1の反応器に仕込んで重合して重合体(PA)を含む第1の重合液を得る第1重合工程と、第2の重合開始剤、第2のビニル系単量体及び第2の重合液を第2の反応器に仕込んで重合してブロック共重合体を得る第2重合工程とを含む。第2の重合液は、第1の反応器から第1の重合液の一部又は全部を抜き出し、該抜き出した第1の重合液を精製せずに用いられる重合液であり、かつ第2の重合液に含まれる重合体(PA)の数平均分子量の変化率が10%以下である。第1の重合開始剤の10時間半減期温度が65℃以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、ブロック共重合体の製造方法に関する。
リビング重合と呼ばれる精密重合は、分子量分布が狭いポリマーを製造でき、また末端官能基化ポリマーやブロック共重合体を容易に製造できることから注目を集めている。中でも、リビングラジカル重合は、ラジカル重合の高い汎用性から利用価値が大きく、工業的に多く利用されている。リビングラジカル重合法としては、可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ニトロキシラジカル法(NMP法)、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)及びヨウ素移動重合法等の各種重合法が知られている。
工業用途、例えば、塗料や粘着剤、接着剤、シーリング材等の分野においては、リビングラジカル重合により得られたビニル系ブロック共重合体を含む樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、有機テルル化合物を重合開始剤として用い、リビングラジカル重合により単量体を共重合することによって粘着テープ用のブロック共重合体を製造することが開示されている。
特開2016-023237号公報
リビングラジカル重合によるブロック共重合体を工業的に製造する場合、生成目的物のブロック共重合体が有するいずれか1の重合体ブロックを構成する重合体をまとめて製造し、当該重合体(以下、「マスターバッチ」ともいう)を分割して用いることがある。
例えば、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を製造する場合、まず、重合体ブロック(A)の構成単位となる単量体、リビングラジカル重合制御剤及び重合開始剤を反応器に仕込んで重合することにより、重合体ブロック(A)を構成する重合体を含むマスターバッチを得た後に、重合体ブロック(B)の構成単位となる単量体と共に、分割したマスターバッチ及び重合開始剤を反応器に仕込んで重合することにより、複数ロットのブロック共重合体を製造することがある。こうした製造方法によれば、ブロック共重合体を工業的に効率良く製造でき、生産性の向上を図ることが可能である。特に、最初の重合により得られた重合液を精製せずにそのまま用いて、次の重合を行うようにした場合、重合体の精製工程を簡略化でき、生産性をより向上できるといえる。
しかしながら、マスターバッチを分割して複数ロットのブロック共重合体を製造する場合、マスターバッチの保管中に、マスターバッチに含まれる重合体の数平均分子量が経時的に変化することがある。この場合、ロット間の数平均分子量が異なることに起因して、得られるブロック共重合体の物性にバラツキが生じ、様々な用途において実用上問題が生じることが懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、マスターバッチを分割して複数ロットのブロック共重合体を製造する場合に、ロット間において物性のバラツキが少ないブロック共重合体を得ることができるブロック共重合体の製造方法を提供することである。
本発明者らは、マスターバッチに含まれる重合体の数平均分子量がマスターバッチの保管中に変化する要因の1つとして、マスターバッチ中に残存する重合開始剤が大きく影響していると考えた。そして、この知見に基づき鋭意検討し、特定の条件により重合を行うことにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。具体的には、本発明によれば以下の手段が提供される。
〔1〕 リビングラジカル重合法により、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を製造する方法であって、リビングラジカル重合制御剤、第1の重合開始剤及び第1のビニル系単量体を第1の反応器に仕込んで重合することにより、前記重合体ブロック(A)を構成する重合体(PA)を含む第1の重合液を得る第1重合工程と、前記第1重合工程の後、第2の重合開始剤、第2のビニル系単量体及び第2の重合液を第2の反応器に仕込んで重合することにより、前記ブロック共重合体を得る第2重合工程と、を含み、前記第2の重合液は、前記第1の反応器から前記第1の重合液の一部又は全部を抜き出し、該抜き出した第1の重合液を精製せずに用いられる重合液であり、かつ前記第2の重合液に含まれる前記重合体(PA)における、前記抜き出し後の数平均分子量の変化率が10%以下であり、前記第1の重合開始剤の10時間半減期温度が65℃以下である、ブロック共重合体の製造方法。
〔2〕 前記第1の重合開始剤の10時間半減期温度が、前記第2の重合開始剤の10時間半減期温度よりも低い、上記〔1〕のブロック共重合体の製造方法。
〔3〕 前記第1の重合液における前記第1の重合開始剤の含有量が、1.0×10-2mmol/g以下である、上記〔1〕又は〔2〕のブロック共重合体の製造方法。
〔4〕 前記重合体ブロック(A)が架橋性シリル基を有する、上記〔1〕~〔3〕のいずれか1のブロック共重合体の製造方法。
〔5〕 前記第1の重合液における前記重合体(PA)の濃度が95質量%以下である、上記〔1〕~〔4〕のいずれか1のブロック共重合体の製造方法。
〔6〕 前記ブロック共重合体における前記重合体ブロック(A)の割合が、前記重合体ブロック(A)及び前記重合体ブロック(B)の合計量100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である、上記〔1〕~〔5〕のいずれか1のブロック共重合体の製造方法。
〔7〕 前記リビングラジカル重合制御剤が、交換連鎖移動機構型制御剤である、上記〔1〕~〔6〕のいずれか1のブロック共重合体の製造方法。
本発明の製造方法によれば、マスターバッチを分割して複数ロットのブロック共重合体を製造する場合に、ロット間において物性のバラツキが少ないブロック共重合体を得ることができる。特に、第1重合工程により得られた第1の重合液を精製せずに用いて第2重合工程を行うため、重合体の精製工程を簡略化できる。すなわち、本発明の製造方法によれば、製造プロセスの簡略化を図りながら、ロット間において物性のバラツキが少ないブロック共重合体を得ることができる。
以下、本発明について詳しく説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
《ブロック共重合体の製造方法》
本開示のブロック共重合体の製造方法(以下、「本製造方法」ともいう)は、リビングラジカル重合法により、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を製造する方法である。具体的には、以下に示す第1重合工程と第2重合工程とを含む。
第1重合工程:リビングラジカル重合制御剤、第1の重合開始剤及び第1のビニル系単量体を第1の反応器に仕込んで重合することにより、重合体ブロック(A)を構成する重合体(PA)を含む第1の重合液を得る工程
第2重合工程:第1重合工程の後、第2の重合開始剤、第2のビニル系単量体及び第2の重合液を第2の反応器に仕込んで重合することにより、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を得る工程
本製造方法では、第2重合工程において、第1重合工程により得られた第1の重合液の一部又は全部を精製せずにそのまま用いることにより、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を得る。以下、本開示に関連する事項について詳しく説明する。
<リビングラジカル重合法>
本製造方法において、リビングラジカル重合法としては公知の重合法を採用することができる。リビングラジカル重合法の具体例としては、交換連鎖移動機構のリビングラジカル重合法、結合-解離機構のリビングラジカル重合法、原子移動機構のリビングラジカル重合法等が挙げられる。
これらの具体例としては、交換連鎖移動機構のリビングラジカル重合法として、可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT法)、ヨウ素移動重合法、有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)等が挙げられる。結合-解離機構のリビングラジカル重合法としては、ニトロキシラジカル法(NMP法)等が挙げられる。原子移動機構のリビングラジカル重合法としては、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)等が挙げられる。これらの中でも、最も広範囲なビニル系単量体に適用でき、かつ重合の制御性に優れている点で、交換連鎖移動機構のリビングラジカル重合法が好ましく、実施の簡便さの観点から、RAFT法によることが特に好ましい。
<第1重合工程>
第1重合工程は、重合体ブロック(A)の構成単位となる1種又は2種以上のビニル系単量体(第1のビニル系単量体)を重合することにより、重合体ブロック(A)を構成する重合体(PA)を含む重合液として第1の重合液を製造する工程である。第1のビニル系単量体は特に限定されず、種々のビニル系単量体を使用することができる。
(第1のビニル系単量体)
第1重合工程において使用されるビニル系単量体(すなわち、第1のビニル系単量体)の具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物、(メタ)アクリル酸の芳香族エステル化合物、下記式(1):
CH=CR-C(=O)O-(RO)-R …(1)
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数2~6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、Rは水素原子、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~20のアリール基を表す。nは1~100の整数を表す)
で表される化合物、スチレン系化合物、マレイミド化合物、アミド基含有ビニル化合物、及び架橋性官能基を有するビニル系単量体等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル及び(メタ)アクリル酸イコシル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル及び(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸の芳香族エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシメチル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル及び(メタ)アクリル酸3-フェノキシプロピル等が挙げられる。
上記式(1)中のnが1である化合物としては、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物は、オキシアルキレン構造(例えば、オキシエチレン鎖、オキシプロピレン鎖及びオキシブチレン鎖等)を有する。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシプロピル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、(メタ)アクリル酸n-プロポキシブチル及び(メタ)アクリル酸n-ブトキシブチル等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
上記式(1)中のnが2以上である場合、上記式(1)で表される化合物は、ポリオキシアルキレン構造(例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖及びポリオキシブチレン鎖等)を有する。なお、nが2以上である場合、上記式(1)中の2個以上のRは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。したがって、上記式(1)中のnが2以上である化合物は、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンからなるブロック構造のように、1分子中に異なる種類のポリオキシアルキレン構造を有していてもよい。
上記式(1)中のnが2以上である化合物の具体例としては、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、及びフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
スチレン系化合物の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルキシレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-イソブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、o-イソプロペニルフェノール、o-ビニル安息香酸、m-ビニル安息香酸、p-ビニル安息香酸、ジビニルベンゼン及びビニルナフタレン等が挙げられる。
マレイミド化合物の具体例としては、マレイミド及びN-置換マレイミド化合物が挙げられる。N-置換マレイミド化合物としては、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-n-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-n-ブチルマレイミド、N-イソブチルマレイミド、N-tert-ブチルマレイミド、N-ペンチルマレイミド、N-ヘキシルマレイミド、N-ヘプチルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、及びN-ステアリルマレイミド等のN-アルキル置換マレイミド化合物;N-シクロペンチルマレイミド、及びN-シクロヘキシルマレイミド等のN-シクロアルキル置換マレイミド化合物;N-フェニルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(4-アセチルフェニル)マレイミド、N-(4-メトキシフェニル)マレイミド、N-(4-エトキシフェニル)マレイミド、N-(4-クロロフェニル)マレイミド、N-(4-ブロモフェニル)マレイミド、及びN-ベンジルマレイミド等のN-アリール置換マレイミド化合物等が挙げられる。
アミド基含有ビニル化合物の具体例としては、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、及びN-ビニルアミド系単量体等が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリルアミド誘導体の具体例としては、tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。N-ビニルアミド系単量体の具体例としては、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド及びN-ビニルイソブチルアミド等が挙げられる。
架橋性官能基を有するビニル系単量体について、架橋性官能基としては、例えば、架橋性シリル基、シラノール基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキサゾリン基、イソシアネート基、及び重合性不飽和基等が挙げられる。架橋性シリル基としては、例えば、アルコキシシリル基、ハロゲノシリル基等が挙げられる。これらのうち、反応性を制御しやすい点で、アルコキシシリル基が好ましく、例えば、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、ジメチルエトキシシリル基等が挙げられる。
架橋性官能基を有するビニル系単量体の具体例としては、例えば、架橋性シリル基含有ビニル化合物、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシ基含有ビニル化合物、エポキシ基含有ビニル化合物、1級又は2級アミノ基含有ビニル化合物、オキサゾリン基含有ビニル化合物、及びイソシアネート基含有ビニル化合物等が挙げられる。
架橋性シリル基含有ビニル化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランン等のビニルシラン類;(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸メチルジメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸ジメチルメトキシシリルプロピル等のアルコキシシリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のアルコキシシリル基含有ビニルエーテル類;トリメトキシシリルウンデカン酸ビニル等のアルコキシシリル基含有ビニルエステル類等を挙げることができる。架橋性シリル基含有ビニル化合物は、架橋性シリル基同士の脱水縮合により架橋構造を形成するため、重合体を製造する際の重合反応、及びその後の架橋反応を効率的に行うことができる点において好適である。
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸、さらには、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のモノアルキルエステル)等が挙げられる。不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
ヒドロキシ基含有ビニル化合物としては、上述した(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル化合物、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)の(メタ)アクリル酸エステル;o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン及びp-ヒドロキシスチレン等のスチレン系化合物;N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド等のマレイミド化合物等が挙げられる。
エポキシ基含有ビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、重合体(PA)を構成するビニル系単量体は、上記のうちの1種でもよく2種以上でもよい。
重合体(PA)を構成するビニル系単量体は、中でも、リビングラジカル重合法によりビニル系重合体を比較的簡便に製造できる点、及び単量体の選択の自由度が高い点で、(メタ)アクリル系単量体を含むことが好ましい。重合体(PA)の製造に際し、(メタ)アクリル系単量体の使用量は、重合体(PA)の製造に使用する全単量体の合計量に対して、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上がより更に好ましい。
本製造方法を適用した場合にロット間の物性のバラツキを低減できる効果が高い点で、重合体(PA)は、架橋性官能基を有するビニル系単量体に由来する構造単位を有することが好ましく、架橋性シリル基含有ビニル化合物に由来する構造単位を有することがより好ましい。重合体(PA)が架橋性シリル基を有する場合、第1重合工程の終了後、第2重合工程を行うまでの期間に経時によりシラン架橋が進行しやすく、目的物であるブロック共重合体の分子量分布が広くなる傾向がある。この点、本製造方法を適用することにより、第1重合工程の終了後、第2重合工程を行うまでの期間に、シラン架橋(例えば、第1の重合液に含まれる未反応のビニル系単量体の重合熱をトリガーとするシラン架橋)が進行することを抑制できる。これにより、架橋性シリル基を有する重合体ブロック(A)を扱う場合にも、ロット間の物性のバラツキが少ないブロック共重合体を得ることができる。
具体的には、重合体(PA)の製造に際し、架橋性官能基を有するビニル系単量体の使用量は、架橋性官能基の導入効果(例えば、機械的強度の改善等)を十分に得る観点から、本工程の重合反応に使用される単量体の全量に対して、例えば0.01質量%以上とすることができ、好ましくは0.5質量%以上である。架橋性官能基を有するビニル系単量体の使用量の上限については、本製造方法によりロット間の物性のバラツキが少ないブロック共重合体を得る観点から、本工程の重合反応に使用される単量体の全量に対して、例えば40質量%以下であり、好ましくは30質量%以下である。
(リビングラジカル重合制御剤)
本工程において使用されるリビングラジカル重合制御剤は、広範囲なビニル系単量体に適用できる点、及び重合の制御性に優れている点において、交換連鎖移動機構型制御剤であることが好ましい。交換連鎖移動機構型制御剤としては、RAFT法における制御剤(以下、「RAFT剤」ともいう)、ヨウ素移動重合法における制御剤、TERP法における制御剤、SBRP法における制御剤、BIRP法における制御剤等が挙げられる。これらのうち、実施の簡便さの観点から、RAFT剤を特に好ましく使用できる。
RAFT剤としては、ジチオエステル化合物、ザンテート化合物、トリチオカーボネート化合物、及びジチオカーバメート化合物等、公知の各種RAFT剤を使用することができる。これらのうち、(メタ)アクリル系単量体(特に、(メタ)アクリル酸エステル化合物)の重合制御性に優れる点において、トリチオカーボネート化合物を好ましく使用できる。トリチオカーボネート化合物の具体例としては、S,S-ジベンジルトリチオカーボネート、ビス[4-(2,3―ジヒドロキシプロポキシカルボニル)ベンジル]トリチオカーボネート、ビス[4-(2―ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンジル]トリチオカーボネート、1,4-ビス(n-ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼン、及び2-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸等が挙げられる。
なお、重合に際し、リビングラジカル重合制御剤の使用量は、用いる単量体及びリビングラジカル重合制御剤の種類等に応じて適宜調整され得る。
(第1の重合開始剤)
第1の重合開始剤としては、10時間半減期温度が65℃以下であるラジカル重合開始剤が用いられる。本工程では、10時間半減期温度が65℃以下であるラジカル重合開始剤を用いることにより、副反応を十分に抑制できる反応温度にて重合を行いながら、比較的短い反応時間(例えば、5~8時間)としつつ、第1重合工程により得られる重合液である第1の重合液中のラジカル重合開始剤の濃度を十分に低減することができる。これにより、第1の重合液(すなわち、マスターバッチ)を次の第2重合工程を実施するまでの間保管しておく場合に、その保管期間が長くなる場合にも、第1の重合液に含まれる重合体(PA)の数平均分子量が変化することを抑制することができる。これにより、本製造方法により得られるブロック共重合体につき、ロット間の物性のバラツキを抑制することができる。
重合時の反応温度をできるだけ低くして副反応を抑制しつつ、第1重合工程により得られる重合液(すなわち、第1の重合液)中のラジカル重合開始剤の濃度を十分に低減させる観点から、第1の重合開始剤の10時間半減期温度は、60℃以下であることが好ましく、55℃以下であることがより好ましい。
第1の重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。これらの中でも、安全上取り扱いやすく、ラジカル重合時の副反応が起こりにくい点で、アゾ化合物が好ましい。
第1の重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度:51℃)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(同65℃)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(同30℃)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)(同61℃)等が挙げられる。第1の重合開始剤としては、1種類のみ使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
第1の重合開始剤の使用量は、分子量分布がより狭い重合体を得る観点、及び第1の重合液中における第1の重合開始剤の残存量をできるだけ低減する観点から、リビングラジカル重合制御剤1molに対して、0.5mol以下とすることが好ましく、0.4mol以下とすることがより好ましい。また、重合反応を安定に行う観点から、第1の重合開始剤の使用量は、リビングラジカル重合制御剤1molに対して、0.01mol以上とすることが好ましく、0.03mol以上とすることがより好ましい。リビングラジカル重合制御剤1molに対する第1の重合開始剤の使用量は、0.01~0.5molが好ましく、0.03~0.4molがより好ましい。
なお、重合反応は、必要に応じて、連鎖移動剤(例えば、炭素数2~20のアルキルチオール化合物等)の存在下で実施してもよい。また、必要に応じて、脱水剤(例えば、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル等)を反応系に混入させてもよい。
第1重合工程における重合は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、乾式連続重合プロセス、及び連続攪拌槽型プロセス(CSTR)等のいずれのプロセスを採用してもよい。また、重合形式としては、溶液重合、乳化重合、及び懸濁重合等の各種重合形式を採用することができる。
重合反応は、リビングラジカル重合において公知の重合溶媒を用い、リビングラジカル重合制御剤及びラジカル重合開始剤の存在下、溶媒中で行うことが好ましい。リビングラジカル重合を溶媒中で行うことにより、重合体(PA)を含む重合液(すなわち、第1の重合液)を簡便に得ることができる。
使用する重合溶媒としては、例えば単量体を溶解可能な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びアニソール等の芳香族化合物;酢酸メチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン化合物、等が挙げられる。なお、重合溶媒は、1種が単独で使用されてもよく、2種以上が組み合わされて使用されてもよい。また、親水性モノマーを使用する場合には、重合溶媒としてアルコール、水等を使用することができる。
重合溶媒の使用量は、反応に使用する単量体の合計量100質量部に対して、5~200質量部となる量が好ましく、10~100質量部となる量がより好ましい。重合溶媒の使用量を200質量部以下とすると、短時間で高い重合率とすることができる点で好ましい。
重合時の反応温度は、特に制限されないが、重合時の副反応を抑制して分子量分布の狭いブロック共重合体を得る観点、ロット間の物性のバラツキが少ないブロック共重合体を得る観点、及び使用できる重合開始剤や溶媒に関する制限を緩和する観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。また、重合反応を円滑に進行させる観点から、反応温度は、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。重合反応における反応時間は、使用する単量体等に応じて適宜設定され得るが、1時間以上48時間以下であることが好ましく、2時間以上24時間以下であることがより好ましく、2時間以上12時間以下であることが更に好ましい。
第1重合工程により得られる重合体(PA)につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、例えば、1,000~300,000の範囲である。塗工性や取り扱い性等に優れたブロック共重合体を得る観点から、重合体(PA)のMnは、好ましくは1,000~100,000であり、より好ましくは1,200~100,000である。
重合体(PA)において、重量平均分子量(Mw)とMnとの比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ロット間の物性のバラツキが少ないブロック共重合体を得る観点から、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.5以下であり、更に好ましくは2.0以下である。重合体(PA)のMw/Mnの下限は特に限定されないが、製造容易性の観点から、例えば1.01以上である。
第1重合工程における上記重合により、重合体(PA)を含む第1の重合液が得られる。第1の重合液における重合体(PA)の濃度(すなわち、重合体ブロック(A)の濃度)は、単量体の使用量と重合溶媒の使用量との比を変更することにより調整することができる。ブロック共重合体の生産効率を高くする観点から、第1の重合液における重合体(PA)の濃度は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは2質量%以上である。また、重合体(PA)が架橋性官能基を有する場合、重合体(PA)の濃度が高いほど、第1の重合液の保管中に経時により架橋反応が進行しやすい。このため、第1の重合液における重合体(PA)の濃度は、95質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることが更に好ましい。
第1重合工程では、第1の重合開始剤として10時間半減期温度が65℃以下であるラジカル重合開始剤を用いることにより、重合反応により得られる第1の重合液中に残存する第1の重合開始剤の量を十分に低減することができる。具体的には、第1の重合液における第1の重合開始剤の含有量は、1.0×10-2mmol/g以下であることが好ましく、5.0×10-3mmol/g以下であることがより好ましく、3.0×10-3mmol/g以下であることが更に好ましい。第1の重合液における第1の重合開始剤の含有量が上記範囲であると、重合体(PA)を含む重合液(すなわち、マスターバッチ)の保管中に重合体(PA)の数平均分子量が経時変化することを抑制でき、ブロック共重合体のロット間の分子量やブロック比のバラツキを十分に抑制することができる。
なお、第1の重合液における第1の重合開始剤の含有量は、換言すれば第1の重合開始剤の濃度[I]である。第1の重合開始剤の濃度[I]は、第1の重合開始剤の初期濃度[I]、第1の重合開始剤の分解速度定数k、及び時間tを用いて、下記数式(i)に従い算出される値である。
[I]=[I]exp(-kt) …(i)
<第2重合工程>
第2重合工程は、重合体ブロック(B)の構成単位となる1種又は2種以上のビニル系単量体(すなわち、第2のビニル系単量体)を重合することにより、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を製造する工程である。第2重合工程では、第1重合工程の後に、第2の重合開始剤、第2のビニル系単量体及び第2の重合液を第2の反応器に仕込んで重合することにより、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を得ることができる。
(第2の重合液)
第2の重合液は、第1の反応器から第1の重合液の一部又は全部を抜き出した重合液である。第1の反応器から抜き出された第1の重合液は、精製することなく第2重合工程において第2の重合液として用いられる。第2の重合液には、第1重合工程により得られた重合体(PA)、すなわちブロック共重合体が有する重合体ブロック(A)を構成することとなる重合体が含まれている。本製造方法は、マスターバッチとしての第1の重合液を製造し、マスターバッチを分割して複数ロットのブロック共重合体を製造する場合に特に有用である。また、本製造方法では、第1の重合液を精製せずに第2の重合液としてそのまま用いて次の重合を行うため、ブロック共重合体の製造プロセスの簡略化を図ることができ、生産性を高めることができる点で好適である。
第2の重合液に含まれる重合体(PA)は、第1の重合液を第1の反応器から抜き出してからの数平均分子量の変化率(以下、「Mn変化率」ともいう)が10%以下である。Mn変化率が10%以下であると、第1の重合液を製造してから第2重合工程を開始するまでの期間が長い場合にも、ブロック共重合体のロット間の分子量やブロック比のバラツキを十分に抑制でき、特性が均一化されたブロック共重合体を得ることができる。こうした観点から、Mn変化率は、8%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、3%以下が更に好ましく、2%以下がより更に好ましい。
なお、Mn変化率は、重合体(PA)につき、第1の反応器から第1の重合液を抜き出した直後にGPCにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量Mn1と、第2の反応器に仕込む直前にGPCにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量Mn2とを用いて、下記数式(ii)により算出される値である。
Mn変化率(%)=[(Mn2-Mn1)/Mn1]×100 …(ii)
第1の反応器から第1の重合液の一部又は全部を抜き出してから、第2重合工程において第2の反応器に第2の重合液を仕込むまでの期間(以下、「保管期間」ともいう)は特に限定されない。当該保管期間は、例えば重合体ブロック(A)の管理状況やブロック共重合体の必要量等といった種々の事情に応じた期間が適宜適用され、例えば数時間から数か月とすることができる。また、重合液の保管温度は、環境温度や保管場所等の種々の条件に応じて適宜選択することができる。重合液の保管温度は、例えば-10℃以上50℃以下である。
(第2のビニル系単量体)
第2のビニル系単量体は特に限定されず、種々のビニル系単量体を使用することができる。第2のビニル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物、(メタ)アクリル酸の脂肪族環式エステル化合物、(メタ)アクリル酸の芳香族エステル化合物、上記式(1)で表される化合物、スチレン系化合物、マレイミド化合物、アミド基含有ビニル化合物、及び架橋性官能基を有するビニル系単量体等を挙げることができる。これらの具体例としては、第1のビニル系単量体として例示した化合物と同様の化合物が挙げられる。第2のビニル系単量体としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
重合体ブロック(B)を構成するビニル系単量体は、リビングラジカル重合法によりビニル系重合体を比較的簡便に製造できる点、及び単量体の選択の自由度が高い点で、(メタ)アクリル系単量体を含むことが好ましい。重合体ブロック(B)の製造に際し、(メタ)アクリル系単量体の使用量は、重合体ブロック(B)の製造に使用する全単量体の合計量に対して、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上がより更に好ましい。
(第2の重合開始剤)
第2の重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物及び過硫酸塩等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。これらの中でも、安全上取り扱いやすく、ラジカル重合時の副反応が起こりにくい点で、アゾ化合物が好ましい。アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)等が挙げられる。なお、第2の重合開始剤は第1の重合開始剤と同じでも異なってもよい。第2の重合開始剤としては1種類のみ使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本製造方法では、第1重合工程で使用される第1の重合開始剤の10時間半減期温度が、第2重合工程で使用される第2の重合開始剤の10時間半減期温度よりも低くなるように第1の重合開始剤及び第2の重合開始剤を選択することが好ましい。すなわち、第2の重合開始剤は、10時間半減期温度が65℃よりも高いラジカル重合開始剤であることが好ましい。第2の重合開始剤として10時間半減期温度を65℃よりも高いラジカル重合開始剤を用いることにより、重合反応を安定させることができる点で好適である。ただし、重合反応中の副反応を抑制する観点から、第2の重合開始剤の10時間半減期温度は、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
第2の重合開始剤の好ましい具体例としては、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(10時間半減期温度:66℃)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(同67℃)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)(同88℃)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボキシレート)(同73℃)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(同65℃)等が挙げられる。
第2の重合開始剤の使用量は、分子量分布がより狭い重合体ブロック(B)を得る観点から、第1重合工程において使用したリビングラジカル重合制御剤1molに対して、0.5mol以下とすることが好ましく、0.4mol以下とすることがより好ましい。重合反応を安定に行う観点から、第2の重合開始剤の使用量は、第1重合工程において使用したリビングラジカル重合制御剤1molに対して、0.01mol以上とすることが好ましく、0.05mol以上とすることがより好ましい。
第2重合工程における重合反応についても、基本的には第1重合工程と同じく、バッチプロセス、セミバッチプロセス、乾式連続重合プロセス、連続攪拌槽型プロセス等のいずれのプロセスを採用してもよい。また、重合形式としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の各種重合形式を適用できる。重合反応は溶媒中で行うことが好ましい。重合溶媒としては、第1重合工程において使用することができる重合溶媒として例示したものと同様の溶媒を挙げることができる。重合溶媒の使用量は、反応に使用する単量体及び第2の重合液の合計量100質量部に対して、5~200質量部となる量が好ましく、10~100質量部となる量がより好ましい。
第2重合工程の反応温度は、第1重合工程の反応温度と同じ温度であってもよく、異なる温度であってもよい。第2重合工程の反応温度は特に制限されないが、重合反応を円滑に進行させる観点から、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。また、重合時の副反応を抑制して分子量分布の狭いブロック共重合体を得ることができる点、及び使用できる開始剤や溶媒に関する制限を緩和することができる点において、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、80℃以下が更に好ましい。重合反応における反応時間は、1時間以上48時間以下であることが好ましく、2時間以上24時間以下であることがより好ましく、2時間以上12時間以下であることが更に好ましい。
第2重合工程による重合反応により、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を得ることができる。得られるブロック共重合体につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、特に制限されないが、例えば、10,000~500,000の範囲である。塗工性や取り扱い性等に優れたブロック共重合体を得ることができる点において、ブロック共重合体のMnは、好ましくは10,000~300,000であり、より好ましくは12,000~150,000である。
ブロック共重合体において、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.5以下であり、更に好ましくは2.0以下である。ブロック共重合体のMw/Mnの下限は特に限定されないが、製造容易性の観点から、例えば1.01以上である。
得られるブロック共重合体において、重合体ブロック(A)の含有割合は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の合計量100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。ここで、ブロック共重合体に占める重合体ブロック(A)の割合が少ない場合、重合溶媒中の単量体濃度が低いことに起因する反応性低下の抑制やコスト低減を図るために、予め製造したマスターバッチを分割して複数ロットのブロック共重合体を製造することのメリットが大きい。こうした観点から、本製造方法は、ブロック共重合体に占める重合体ブロック(A)の割合が、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)の合計量100質量部に対して、2質量部以上25質量部以下であるブロック共重合体を得る場合により好ましく適用でき、3質量部以上20質量部以下であるブロック共重合体を得る場合に更に好ましく適用できる。
本製造方法により得られるブロック共重合体におけるブロック数やブロック配置等は特に限定されない。例えば、第1重合工程においてリビングラジカル重合制御剤として単官能のRAFT剤を用いることにより、重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)からなる(A)-(B)ジブロック体を得ることができる。また、第1重合工程においてリビングラジカル制御剤として2官能のRAFT剤(例えば、S,S-ジベンジルトリチオカーボネート、1,4-ビス(n-ドデシルスルファニルチオカルボニルスルファニルメチル)ベンゼン等)を用いることにより、重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)からなる(A)-(B)-(A)トリブロック体を得ることができる。
また、本製造方法は、第1重合工程及び第2重合工程に加えて、更に、第2重合工程により得られた重合液の存在下でビニル系単量体を重合する工程を含んでいてもよい。この場合、更に高次のブロック共重合体(例えば、テトラブロック共重合体やペンタブロック共重合体等)を得ることができる。例えば、2官能のRAFT剤を用いたリビングラジカル重合により、重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)からなる(A)-(B)-(A)-(B)-(A)ペンタブロック体を製造する場合、以下に示す3段階の重合工程を含む方法によりブロック共重合体を製造することにより効率的に目的物を得ることができる。
すなわち、まず第1重合工程として、重合体ブロック(A)を構成する単量体を用いて重合体ブロック(A)を得る。続いて、第2重合工程として、重合体ブロック(A)の存在下で重合体ブロック(B)を構成する単量体を重合し、重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)からなる(A)-(B)-(A)トリブロック体を得る。さらに、第3重合工程として、(A)-(B)-(A)トリブロック体の存在下で重合体ブロック(A)を構成する単量体を重合し、重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)/重合体ブロック(B)/重合体ブロック(A)からなる(A)-(B)-(A)-(B)-(A)ペンタブロック体を得ることができる。また同様の方法により、ブロック共重合体として、ペンタブロック体よりも更に高次のブロック共重合体を得ることもできる。
なお、上記重合によりブロック共重合体を含む重合体溶液を得た場合、この重合体溶液に対して公知の脱溶媒処理を行うことによりブロック共重合体を単離することができる。
また、上述した重合工程により得られたブロック共重合体が、RAFT剤に由来するチオカルボニルチオ基を有する場合、当該ブロック共重合体と求核剤とを反応させてもよい。この反応により、ブロック共重合体が有するチオカルボニルチオ基からチオール基が生成され、生成したチオール基と残存モノマーとが反応(マイケル付加反応)することにより、チオカルボニルチオ基が除去された、下記式(2):
Figure 2022175692000001

(式(2)中、Rは、重合体の分子鎖を構成する単量体に含まれるアクリル酸エステル化合物からアクリロイルオキシ基を取り除いた残基を表す)
で表される末端構造を有するブロック共重合体を得ることができる。
求核剤としては、アンモニア類、1級及び/又は2級アミン化合物、アルカリ金属アルコキシド、水酸化物、及びチオール類等が挙げられる。これらのうち、反応性の点から、求核剤としては、1級及び/又は2級アミン化合物を好ましく使用することができる。
求核剤のチオカルボニルチオ基に対するモル当量としては、2~90モル当量であることが好ましい。反応効率の点から、求核剤の使用量は、チオカルボニルチオ基に対して、2.5モル当量以上が好ましく、3モル当量以上がより好ましく、3.5モル当量以上が更に好ましい。また、未反応の求核剤による臭気の影響を小さくできる点で、求核剤の使用量は、チオカルボニルチオ基に対して、75モル当量以下が好ましく、60モル当量以下がより好ましく、50モル当量以下が更に好ましい。求核剤の分子量は、未反応の求核剤を除去しやすい点で、150以下が好ましく、110以下がより好ましく、60以下が更に好ましい。
チオカルボニルチオ基と求核剤との反応に際して使用する反応器としては、バッチ式反応器、管型反応器等の公知の反応器を使用することができる。これらのうち、管型反応器において問題となる閉塞のおそれが少ない点で、バッチ式反応器が好ましい。反応温度は、反応効率の点から、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、25℃以上が更に好ましい。また、副反応(例えば、ポリマー主鎖への求核反応等)を生じにくくするために、反応温度は、80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましく、50℃以下が更に好ましい。なお、反応圧力は通常、常圧でよいが、必要に応じて加圧又は減圧してもよい。反応時間は、反応効率の点から、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましく、3時間以上が更に好ましい。また、ポリマー主鎖への求核反応等の副反応を抑制できる点で、48時間以下が好ましく、36時間以下がより好ましく、24時間以下が更に好ましい。上記反応により重合体溶液を得た場合、この重合体溶液に対して公知の脱溶媒処理を行うことにより重合体を単離することができる。
本製造方法により得られるブロック共重合体は、幅広い用途において使用することができる。具体的には、例えば、分散剤、工業用ゴム、バインダー、粘接着剤、塗料、コーティング剤、界面活性剤等の種々の用途に適用することができる。また、適用分野は特に限定されず、例えば自動車部品、家電・OA機器部品、医療用機器部品、包装用資材、土木建築用資材、電線、雑貨等が挙げられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り「質量部」及び「質量%」をそれぞれ意味する。
製造例、実施例及び比較例で得られた重合体の分析方法について以下に記載する。
<重合体の分子量測定>
得られた重合体について、以下に記載の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算による数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を得た。また、得られた値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
○測定条件
カラム:東ソー製TSKgel SuperMultiporeHZ-M×4本
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
検出器:RI
流速:600μL/min
<モノマーの反応率測定>
得られた重合液について、以下に記載の条件にてガスクロマトグラフィー(GC)測定を行い、得られたモノマーの濃度(質量%)からモノマーの反応率(%)を計算した。
○測定条件
カラム:キャピラリーカラムAgilent社製CP-Wax52CB(60m×0.32mmID、df=0.5μm)及びAgilent社製DB-1(30m×0.32mmID、df=1.0μm)
溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:50℃(5分)、7℃/分、230℃(5分)
<重合液における第1の重合開始剤の含有量の計算>
重合液における第1の重合開始剤の含有量は下記数式(i)から求めた。
[I]=[I]exp(-kt) …(i)
[I]:第1の重合開始剤の濃度
[I]:第1の重合開始剤の初期濃度
:第1の重合開始剤の分解速度定数
t:時間
1.製造例
<第1の重合液の製造>
(製造例1:重合液s-1の製造)
撹拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、リビングラジカル重合制御剤として2-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸(以下、「BM1429」ともいう。)(28g)、第1の重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(以下、「V-65」ともいう。10時間半減期温度:51℃)(0.7g)、アクリル酸n-ブチル(以下、「nBA」ともいう。)(139g)、アクリル酸エチル(以下、「EA」ともいう。)(9g)、アクリル酸テトラデシル(以下、「TDA」ともいう。)(37g)、メチルジメトキシシリルプロピルメタクリレート(38g)、酢酸エチル(199g)及びオルト酢酸トリメチル(以下、「MOA」ともいう。)(50g)を仕込み、窒素バブリングで十分に脱気し、58℃に昇温して重合を開始した(第1の重合)。2時間後、1時間かけて70℃まで昇温し、更に4時間70℃で反応させた。その後、室温まで冷却して反応を停止し、重合体a-1を含む重合液s-1を得た。重合液s-1における重合体a-1の濃度は50質量%であった。
(製造例2、3:重合液s-2、s-3の製造)
仕込み原料を表1に記載の通り用いるとともに、反応温度を55℃2時間、その後1時間かけて60℃まで昇温し、更に4時間60℃で反応させた以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体a-2を含む重合液s-2、重合体a-3を含む重合液s-3をそれぞれ得た。
(製造例4、5:重合液s-4、s-5の製造)
仕込み原料を表1に記載の通り用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体a-4を含む重合液s-4、重合体a-5を含む重合液s-5をそれぞれ得た。
(製造例6、7:重合液s-6、s-7の製造)
仕込み原料を表1に記載の通り用いるとともに、反応温度を60℃として7時間反応させた以外は製造例1と同様の操作を行い、重合体a-6を含む重合液s-6、重合体a-7を含む重合液s-7をそれぞれ得た。
なお、表1中、製造例1に記載したもの以外の略号は下記の化合物を意味する。
・DBTTC:S,S-ジベンジルトリチオカーボネート
・HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
・ABN-E:2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(10時間半減期温度:67℃)
Figure 2022175692000002
<第2の重合液の製造>
(製造例8:重合液s-1の長期保管による重合液sf-1の製造)
製造例1で得られた重合液s-1を精製せずにそのまま密閉容器に入れ、40℃で2か月保管し、重合体af-1を含む重合液sf-1を得た。保管前の重合体a-1を構成する各モノマーの反応率は、BA91%、EA93%、TDA92%、メチルジメトキシシリルプロピルメタクリレート100%であった。また、保管前の重合体a-1の分子量は、GPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn2,300、Mw3,400、Mw/Mn1.47であった。さらに、重合液s-1中に残存する第1の重合開始剤の量(以下、「残開始剤量」ともいう。)は、計算により、1.4×10-4mmol/gであった。一方、保管後の重合体af-1の分子量は、GPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn2,300、Mw3,400、Mw/Mn1.48であった。保管前後での数平均分子量の変化率(Mn変化率)は0.0%であった。
(製造例9~14:重合液s-2~s-7の長期保管による重合液sf-2~sf-7の製造)
重合液を表2に記載の通り用いた以外は製造例8と同様の操作を行い、重合体af-2~af-7をそれぞれ含む重合液sf-2~sf-7を得た。保管前の各重合体を構成するモノマーの反応率及び重合体の分子量を測定し、表2に記載した。また、保管前の各重合液(すなわち、第1の重合液)中の残開始剤量を計算し、表2に記載した。さらに、保管後の各重合液(すなわち、第2の重合液)に含まれる重合体の分子量をそれぞれ測定し、表2に記載した。保管前後における重合体の数平均分子量の変化率を計算し、表2に記載した。
Figure 2022175692000003
<ブロック共重合体の製造>
実施例1~6及び比較例1、2では、以下の製造処方1~6によりブロック共重合体を製造した。各製造処方の詳細を以下に示す。
(製造処方1)
撹拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、重合液(第1の重合液又は第2の重合液)(49g)、nBA(281g)、EA(19g)、TDA(75g)、第2の重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(以下、「ABN-E」ともいう。10時間半減期温度:67℃)(0.3g)、酢酸エチル(60g)及びMOA(15g)を仕込み、窒素バブリングで十分に脱気し、60℃に昇温することで重合を開始した(第2の重合)。7時間後、室温まで冷却して反応を停止し、ブロック共重合体を含む溶液を得た。得られた溶液を真空乾燥し、ブロック共重合体を得た。
(製造処方2、3)
仕込み原料を表3に記載の通り用いた以外は製造処方1と同様の操作を行い、ブロック共重合体を得た。
(製造処方4)
撹拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、重合液(46g)、nBA(280g)、EA(19g)、TDA(75g)、第2の重合開始剤としてABN-E(0.3g)、酢酸エチル(60g)及びMOA(15g)を仕込み、窒素バブリングで十分に脱気し、60℃に昇温することで重合を開始した(第2の重合)。7時間後、室温まで冷却して反応を停止した。さらに、メチルジメトキシシリルプロピルメタクリレート(3.7g)、ABN-E(0.3g)及びMOA(0.6g)を添加し、窒素バブリングで十分に脱気し、60℃に昇温することで重合を開始した(第3の重合)。7時間後、室温まで冷却して反応を停止し、ブロック共重合体を含む溶液を得た。
(製造処方5~6)
仕込み原料を表3に記載の通り用いた以外は製造処方4と同様の操作を行い、ブロック共重合体を含む溶液を得た。
Figure 2022175692000004
2.実施例及び比較例
(実施例1)
製造処方1において重合液s-1及びsf-1をそれぞれ用い、ジブロック共重合体b-1及びbf-1を製造した。得られたジブロック共重合体b-1及びbf-1はそれぞれ、nBA、EA、TDA及びメチルジメトキシシリルプロピルメタクリレートからなる重合体ブロック(A)と、nBA、EA及びTDAからなる重合体ブロック(B)とを有し、(A)-(B)のブロック構造を有するジブロック共重合体である。ジブロック共重合体b-1の分子量は、GPC測定(ポリスチレン換算)より、Mn36,700、Mw49,200、Mw/Mn1.34であった。また、重合率から、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との組成比(質量比)は(A)/(B)=5/95であった。同様に、ジブロック共重合体bf-1の分子量はMn36,800、Mw49,700、Mw/Mn1.35であった。また、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)の組成比は(A)/(B)=5/95であった。ジブロック共重合体b-1からジブロック共重合体bf-1への数平均分子量の変化率(Mn変化率)は0.3%であった。
(実施例2、3及び比較例1)
ブロック共重合体の製造処方及び重合液を表4に記載の通り用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、ジブロック共重合体b-2、b-3、b-7、bf-2、bf-3及びbf-7を得た。各ジブロック共重合体の分子量を測定し、表4に記載した。また、重合率から、各ジブロック共重合体の重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との組成比(質量比)を計算し、表4に記載した。さらに、Mn変化率を計算し、表4に記載した。
(実施例4)
ブロック共重合体の製造処方及び重合液を表4に記載の通り用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、トリブロック共重合体b-4及びbf-4を得た。得られたトリブロック共重合体b-4及びbf-4は、nBA、EA、TDA及びメチルジメトキシシリルプロピルメタクリレートからなる重合体ブロック(A)と、nBA、EA及びTDAからなる重合体ブロック(B)とを有し、(A)-(B)-(A)のブロック構造を有するトリブロック共重合体である。各トリブロック共重合体の分子量を測定し、表4に記載した。また、重合率から、各トリブロック共重合体の重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との組成比(質量比)を計算し、表4に記載した。さらに、Mn変化率を計算し、表4に記載した。
(実施例5)
製造処方4において重合液s-4及びsf-4をそれぞれ用いて第2の重合を行った後、第3の重合を行うことにより、ペンタブロック共重合体b-5及びbf-5を製造した。得られたペンタブロック共重合体b-5及びbf-5は、nBA、EA、TDA及びメチルジメトキシシリルプロピルメタクリレートからなる重合体ブロック(A)と、nBA、EA及びTDAからなる重合体ブロック(B)とを有し、(A)-(B)-(A)-(B)-(A)のブロック構造を有するペンタブロック共重合体である。各ペンタブロック共重合体の分子量を測定し、表4に記載した。また、重合率から、各ペンタブロック共重合体の重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との組成比(質量比)を計算し、表4に記載した。さらに、Mn変化率を計算し、表4に記載した。
(実施例6及び比較例2)
ブロック共重合体の製造処方及び重合液を表4に記載の通り用いた以外は実施例5と同様の操作を行い、ペンタブロック共重合体b-6、b-8、bf-6及びbf-8を得た。各ペンタブロック共重合体の分子量を測定し、表4に記載した。また、重合率から、各ペンタブロック共重合体の重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との組成比(質量比)を計算し、表4に記載した。さらに、Mn変化率を計算し、表4に記載した。
Figure 2022175692000005
<アミン分解によるブロック共重合体の製造>
実施例7、8及び比較例3では、ペンタブロック共重合体を用いて以下のアミン分解処方によりトリブロック共重合体を製造した。アミン分解処方の詳細を以下に示す。
(アミン分解処方)
撹拌機、温度計を装着した1Lフラスコに、ペンタブロック共重合体を含む溶液500g(溶媒:酢酸エチル)に対して、窒素バブリングで十分脱気した後、n-プロピルアミン(1.6g、ペンタブロック共重合体のトリチオカーボネート基に対して5モル当量)を仕込み、40℃の恒温槽でトリチオカーボネート基の分解反応を開始した。5時間後、室温まで冷却して反応を停止し、トリブロック共重合体を含む溶液を得た。得られた溶液を真空乾燥し、トリブロック共重合体を得た。
(実施例7)
アミン分解処方でペンタブロック共重合体b-5及びbf-5をそれぞれ用い、トリブロック共重合体c-5及びcf-5を製造した。得られたトリブロック共重合体c-5及びcf-5は、nBA、EA、TDA及びメチルジメトキシシリルプロピルメタクリレートからなる重合体ブロック(A)と、nBA、EA及びTDAからなる重合体ブロック(B)とを有し、(A)-(B)-(A)のブロック構造を有するトリブロック共重合体である。H-NMR測定から、ペンタブロック共重合体b-5及びbf-5において観測されたトリチオカーボネート基に隣接する炭素に結合する水素のピーク(4.8ppm)が、トリブロック共重合体c-5及びcf-5では消失し、残存アクリレート化合物とのマイケル付加による分子構造(上記式(2)で表される末端分子構造)に由来するピーク(3.3ppm、2.9ppm)が現れたことを確認した。この結果から、得られたトリブロック共重合体は、ペンタブロック共重合体b-5及びbf-5のトリチオカーボネート基がn-プロピルアミンによって分解されてできたチオール基と、ペンタブロック共重合体b-5及びbf-5に含まれる残存アクリレート化合物とのマイケル付加体であるといえる。トリブロック共重合体c-5の分子量は、Mn44,600、Mw59,600、Mw/Mn1.34であった。また、トリブロック共重合体cf-5の分子量は、Mn44,400、Mw59,900、Mw/Mn1.35であった。ブロック共重合体c-5からジブロック共重合体cf-5への数平均分子量の変化率(Mn変化率)は-0.4%であった。
(実施例8及び比較例3)
ペンタブロック共重合体を表5に記載の通り用いた以外は実施例7と同様の操作を行い、トリブロック共重合体c-6、c-8、cf-6及びcf-8を得た。各トリブロック共重合体の分子量を測定し、表5に記載した。また、Mn変化率を計算し、表5に記載した。
Figure 2022175692000006
3.評価結果
実施例1~8の結果から明らかなように、本製造方法によれば、重合体ブロック(A)を構成する重合体(PA)を含む重合液を保管せずに使用してブロック共重合体を製造した場合と、重合液を精製せずに一定期間(本実施例では40℃、2か月)保管した後にそのまま使用してブロック共重合体を製造した場合とにおいて数平均分子量の変化が小さく、ロット間の物性のバラツキが小さいブロック共重合体を得ることができた。
これに対し、比較例1~3では、保管前の重合液を使用してブロック共重合体を製造した場合と、精製せずに一定期間保管した重合液を使用してブロック共重合体を製造した場合との間で数平均分子量の変化が大きく、ロット間の物性のバラツキが大きくなり、実用性に劣っていた。

Claims (7)

  1. リビングラジカル重合法により、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを有するブロック共重合体を製造する方法であって、
    リビングラジカル重合制御剤、第1の重合開始剤及び第1のビニル系単量体を第1の反応器に仕込んで重合することにより、前記重合体ブロック(A)を構成する重合体(PA)を含む第1の重合液を得る第1重合工程と、
    前記第1重合工程の後、第2の重合開始剤、第2のビニル系単量体及び第2の重合液を第2の反応器に仕込んで重合することにより、前記ブロック共重合体を得る第2重合工程と、
    を含み、
    前記第2の重合液は、前記第1の反応器から前記第1の重合液の一部又は全部を抜き出し、該抜き出した第1の重合液を精製せずに用いられる重合液であり、かつ前記第2の重合液に含まれる前記重合体(PA)における、前記抜き出し後の数平均分子量の変化率が10%以下であり、
    前記第1の重合開始剤の10時間半減期温度が65℃以下である、ブロック共重合体の製造方法。
  2. 前記第1の重合開始剤の10時間半減期温度が、前記第2の重合開始剤の10時間半減期温度よりも低い、請求項1に記載のブロック共重合体の製造方法。
  3. 前記第1の重合液における前記第1の重合開始剤の含有量が、1.0×10-2mmol/g以下である、請求項1又は2に記載のブロック共重合体の製造方法。
  4. 前記重合体ブロック(A)が架橋性シリル基を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のブロック共重合体の製造方法。
  5. 前記第1の重合液における前記重合体(PA)の濃度が95質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のブロック共重合体の製造方法。
  6. 前記ブロック共重合体における前記重合体ブロック(A)の割合が、前記重合体ブロック(A)及び前記重合体ブロック(B)の合計量100質量部に対して1質量部以上30質量部以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のブロック共重合体の製造方法。
  7. 前記リビングラジカル重合制御剤が、交換連鎖移動機構型制御剤である、請求項1~6のいずれか一項に記載のブロック共重合体の製造方法。
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