JP2022173406A - 体に脂肪がつきにくい焼き菓子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 種々の油脂を用いた脂肪燃焼効果のある商品を市場に提供し、消費者の選択肢を広げるという要望は強い。なかでも焼き菓子の多くは、元来カロリーが高いゆえに肥満につながりやすいが、嗜好品として日常生活において多数消費されている。そのため、脂肪燃焼を促進し、摂取しても体に脂肪がつきにくい焼き菓子の提供を目的とする。【解決手段】 体に脂肪がつきにくい焼き菓子であって、原料にヨウ素価90以上の油脂を用いる脂肪燃焼促進用焼き菓子を提供する。【選択図】 図1

Description

本発明は、体に脂肪がつきにくい焼き菓子に関する。より詳細には、脂肪燃焼促進用焼き菓子に関する。
生活習慣病の多くは、主としてメタボリックシンドロームに代表される肥満に起因する。元来食事で摂取された脂質は、エネルギーとなった後呼気として体の外へ出されていくが、排出されなかった脂質はいわゆる体脂肪に変換され、増え続ければ肥満へとつながる。近年肥満は、脂質の過剰摂取や運動不足により、中高年だけでなく足腰が弱い高齢者にも増えている。
近時運動によらず、料理に用いる油脂等を変更することで、こうした肥満に起因する生活習慣病を防ぐ商品が多くある。例えば食用油中の中鎖飽和脂肪酸の割合を増やし、食後の脂肪燃焼量を増加させることで、脂肪がつきにくい効果を有する油脂が販売されている。またカプサイシン、Lカルニチン、カテキンなどの脂肪を燃焼させる成分をサプリメントとし、継続的な摂取や、運動と組み合わせることによって脂肪燃焼効果を狙った商品もある。
またサポニンおよび不飽和脂肪酸を有効成分とした、脂肪燃焼促進剤(特許文献1)や、中鎖脂肪酸、共役リノール酸などを食用油にすることで、体内への蓄積を抑制する調理食品の改善材(特許文献2)も知られていた。
さらにミューズリ、エクストラバージンオリーブオイル、スキムミルクを組み合わせた高不飽和脂肪酸食を調製することで、食後の脂肪燃焼量が上昇することや(非特許文献1および2)、クルミやバージンオリーブオイルを脂質源とした高一価不飽和脂肪酸食が、食後の脂質燃焼量を上昇させた報告もある(非特許文献3)。
特開2012-31153号公報 特開2006-42652号公報
Piers LS, Walker KZ, Stoney RM ら、The influence of the type of dietary fat on postprandial fat oxidation rates: monounsaturated (olive oil) vs saturated fat (cream). Int J Obesity, 2002 Jun 26, (6), p.814-821 Soares MJ, Cummings SJ, Mamo JC ら、The acute effects of olive oil v. cream on postprandial thermogenesis and substrate oxidation in postmenopausal women. Brit J Nutr, 2004 Feb 91 (2), 245-252. Casas-Agustench P, Lopez-Uriarte P, Bullo M ら、Acute effects of three high-fat meals with different fat saturations on energy expenditure, substrate oxidation and satiety. Clin Nutr, 2009 Feb 28 (1), 39-45.
種々の油脂を用いた脂肪燃焼効果のある商品を市場に提供し、消費者の選択肢を広げるという要望は強い。なかでも焼き菓子の多くは、元来カロリーが高いゆえに肥満につながりやすいが、嗜好品として日常生活において多数消費されている。そのため、脂肪燃焼を促進し、摂取しても体に脂肪がつきにくい焼き菓子の提供を目的とする。
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、食の欧米化によって飽和脂肪酸が多量に含まれる食品(肉類、菓子類、揚げ物類など)を摂取する機会が増えているのに対し、摂取量の減少傾向にある不飽和脂肪酸へ独自に着目した。しかして不飽和脂肪酸にも油脂としてのカロリーがあるため、敢えて摂取することは適当ではないという問題があった。そこで食材原料の油脂に含まれる飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えることを着想し、飽和脂肪酸を低減させ不飽和脂肪酸を多く含む油脂を用いた焼き菓子を創作するに至ったところ、当該焼き菓子は、摂食直後から脂肪燃焼効果があることを突き止めた。また意外にも日中においてさえ心拍数を低下させることも見出し、さらに研究を進めた結果、本願発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に関する。
(1)体に脂肪がつきにくい焼き菓子であって、原料にヨウ素価90以上の油脂を用いる脂肪燃焼促進用焼き菓子である。
(2)前記原料にバター、マーガリン、ファットスプレット、ショートニングマーガリン、牛乳または脱脂粉乳を用いない、(1)に記載の焼き菓子である。
(3)前記油脂の構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の割合が、70%質量以上である、(1)に記載の焼き菓子である。
(4)前記不飽和脂肪酸が、少なくともオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸を含む、(3)に記載の焼き菓子である。
(5)前記油脂が、椿油(カメリア油)、荏胡麻油、亜麻仁油、ひまわり油、なたね油およびオリーブ油よりなる群から選択される少なくとも1種または2種以上である、(1)、(3)または(4)に記載の焼き菓子である。
(6)前記油脂が、なたね油である、(5)に記載の焼き菓子である。
(7)自律神経調節作用または睡眠改善作用を有する、(1)~(6)のいずれか1つに記載の焼き菓子である。
(8)体に脂肪がつきにくい焼き菓子の製造方法であり、
ヨウ素価90以上の油脂を用い、水、卵、砂糖、薄力粉およびベーキングパウダーを混合する生地混合工程と、
発酵工程と、
焼成工程とを、含む前記製造方法である。
(9)ヨウ素価90以上の油脂を用いてなる、自律神経調節用焼き菓子である。
(10)ヨウ素価90以上の油脂を用いてなる、睡眠改善用焼き菓子である。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とでは、不飽和脂肪酸の方が酸化速度、すなわち燃焼速度が速いことに加え、生体内の脂質燃焼能力が高まることから、即効性のある脂肪燃焼促進効能だけでなく、睡眠時においても同様の効能を有する脂肪燃焼促進用菓子を提供することができる。
加えて摂取後にすぐに心拍数低下の効能をももたらした。さらに驚くべきことに本来脂肪を燃焼させるときは交感神経が高まるところ、本発明の焼き菓子は、これとは逆の効果である、副交感神経を高める自律神経調節効能、すなわちリラックス効能を同時に有し、特に睡眠時における第一周期の深睡眠時間が長くなり、質の良い睡眠をもたらす効能を有する、睡眠改善用焼き菓子をも提供することができる。
実施例1の外観写真である。 比較例1の外観写真である。 被験者の脂質酸化量(kcal)の経時変化の折れ線グラフである。 被験者の副交感神経活動(ms)の経時変化の折れ線グラフである。 被験者の心拍数(拍/分)の経時変化の折れ線グラフである。
以下、本発明の好ましい態様について詳細に説明する。
本明細書において「焼き菓子」とは、穀物粉、油脂、糖類を主原料として焼成されるものであり、これらの原料はいずれも市販品でもよい。
本明細書において、「脂肪」とは、いわゆる中性脂肪を指し、肉や魚、食用油など食品中または動植物中の脂質または体脂肪であって、グリセロールと3分子の脂肪酸がエステル結合で結合した物質のことをいう。
本明細書において、「油脂」とは、トリグリセリドの1、2および3位に種々の脂肪酸がエステル結合したトリグリセリドの混合物をいう。
本明細書において、「ヨウ素価」とは、油脂100gに付加することのできるヨウ素(I)のグラム数であり、この値が大きいほど試料中の脂肪酸の不飽和度が高い(二重結合の数が多い)ことを示す。
本明細書において、「原料」とは、生地を構成する材料または生地に含まれる材料をいう。
本明細書において、「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本発明の焼き菓子は、飲食品、食品または焼成品に分類され、病者用食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養機能性食品、栄養補助食品または健康食品であってもよい。
本発明の実施形態に係る、体に脂肪がつきにくい焼き菓子は、摂取した油脂が酸化されやすく体脂肪になりにくいだけでなく、対象に比べもともと体内に蓄積されていた体脂肪の燃焼も促進し、結果として油脂を摂取するが、総じて摂取された脂肪が、体脂肪になりにくい焼き菓子をいう。
また本発明の焼き菓子は、原料にヨウ素価90以上の油脂を用いることができる。好ましくはヨウ素価90以上、150以下の油脂であり、より好ましくはヨウ素価90以上、130以下の油脂である。また油脂は、動物油脂(動物性油脂)、植物油脂(植物性油脂)のいずれを用いてよく、好ましくは植物油脂である。また別の態様によれば、本発明で用いる油脂は、乾性油、半乾性油、不乾性油のいずれの油脂を用いてよく、好ましくは半乾性油または乾性油の油脂であり、より好ましくは半乾性油の油脂である。また本発明の別の態様によれば、本発明の焼き菓子は、原料(生地原料)に用いていなくともよく、本発明の焼き菓子にヨウ素価90以上の油脂を用いていればよい。
本発明の対象であって、焼き菓子に用いられる油脂の構成脂肪酸であり、飽和脂肪酸は、炭素数12以上のいわゆる長鎖飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸の種類としては、限定されないが、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸などであってよい。構成脂肪酸としてこれらの飽和脂肪酸を有する油脂ではなく、下記の不飽和脂肪酸を含む油脂を用いることで、本発明の焼き菓子の効果が期待できる。
本発明の焼き菓子に用いる油脂の構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸は、炭素数12以上のいわゆる長鎖不飽和脂肪酸であり、好ましくは炭素数16~26、より好ましくは炭素数17~25、さらに好ましくは炭素数18~24の不飽和脂肪酸である。また不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸のいずれでもあってよい。
本発明の焼き菓子に用いる油脂の構成脂肪酸中の一価不飽和脂肪酸は、n-9(ω9)系多価不飽和脂肪酸であってよい。n-9(ω9)系多価不飽和脂肪酸は、限定されないが、例えば、オレイン酸18:1(n-9)、エイコセン酸20:1(n-9)、ミード酸20:3(n-9)、エルカ酸22:1(n-9)、ネルボン酸24:1(n-9)などであってよい。
本発明の焼き菓子に用いる油脂における構成脂肪酸中の多価不飽和脂肪酸は、n-3(ω3)系多価不飽和脂肪酸、n-6(ω6)系多価不飽和脂肪酸であってよい。n-3系多価不飽和脂肪酸は、限定されないが、例えば、α-リノレン酸(18:3(n-3);ALA)、ステアリドン酸18:4(n-3);STD、エイコサトリエン酸(20:3(n-3);ETE)、エイコサテトラエン酸(20:4(n-3);ETA)、エイコサペンタエン酸(20:5(n-3);EPA)、ドコサペンタエン酸(22:5(n-3);DPA)、ドコサヘキサエン酸(22:6(n-3);DHA)、テトラコサペンタエン酸(24:5(n-3))、テトラコサヘキサエン酸(ニシン酸)(24:6(n-3))などであってよい。
n-6(ω6)系多価不飽和脂肪酸は、限定されないが、例えば、リノール酸(18:2(n-6))、γ-リノレン酸(18:3(n-6))、エイコサジエン酸(20:2(n-6))、ジホモ-γ-リノレン酸(20:3(n-6))、アラキドン酸(20:4(n-6))、ドコサジエン酸(22:2(n-6))、ドコサテトラエン酸(22:4(n-6))、ドコサペンタエン酸(22:5(n-6))、カレンジン酸(18:3(n-6))などであってよい。
また本発明の焼き菓子に用いる油脂は、上記した油脂の構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の割合が、70%質量以上の油脂である。好ましくは80%質量以上であり、より好ましくは85%質量以上であり、さらに好ましくは90%質量以上の油脂である。
また他の態様によれば、本発明の焼き菓子に用いる油脂を構成する脂肪酸の割合は、飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸は、好ましくは4:5:1、より好ましくは3:5:2、さらに好ましくは1:6:3である。
また不飽和脂肪酸は、少なくともオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸を含んでよい。また不飽和脂肪酸に含まれるオレイン酸は、45%質量以上であり、好ましくは50%質量以上であり、より好ましくは55%質量以上であり、さらに好ましくは58%質量以上である。不飽和脂肪酸に含まれるリノール酸は、15または16%質量以上であり、好ましくは17%質量以上であり、より好ましくは18%質量以上であり、さらに好ましくは19%質量以上である。不飽和脂肪酸に含まれるリノレン酸は、5または6%質量以上であり、好ましくは7%質量以上であり、より好ましくは8%質量以上であり、さらに好ましくは9%質量以上である。
また本発明の焼き菓子に用いる油脂は、大豆油、米油、綿実油、とうもろこし油、サフラワー油(ハイリノール)、ひまわり油(ハイリノール)、椿油(カメリア油)、荏胡麻油、亜麻仁油、ひまわり油、なたね油およびオリーブ油よりなる群から選択される少なくとも1種または2種以上の油脂であってよい。好ましくは綿実油、荏胡麻油、亜麻仁油、ひまわり油(ハイリノール)およびなたね油よりなる群から選択される少なくとも1種または2種以上の油脂であり、より好ましくは荏胡麻油、亜麻仁油およびなたね油よりなる群から選択される少なくとも1種または2種以上の油脂であり、入手が容易であることや一価不飽和脂肪酸を多量に含まれることや、多価不飽和脂肪酸を多量に含む油脂に比べて酸化しにくく加工に優れている点から、さらに好ましくはなたね油である。
また本発明の焼き菓子に含まれる油脂は、焼き菓子45~55gに対し、不飽和脂肪酸が好ましくは、12~5g、より好ましくは11~6g、さらに好ましくは、10~7gである。また1回の摂取量は、1~4個であってよく、一日に3回程度食してよい。
また本発明の焼き菓子は、原料に生乳、牛乳、脱脂乳、加工乳、濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、ホエイ、ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(WPCおよび/またはWPI)を用いない、焼き菓子であってよい。好ましくは脱脂乳、牛乳を含まないまたは実質的に含まないことである。飽和脂肪酸をより低減させるという点から、これらの代わりに水を用いることもできる。また本発明の別の態様によれば、原料に生乳、牛乳、脱脂乳、加工乳、濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、ホエイ、ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC及び/又はWPI)を1種類または2種類以上を混合して用いてよく、また水も適宜加えてもよい。
本願明細書において、「実質的に含まない」とは、本発明の効果に悪影響を及ぼさない程度であること、好ましくは、生地の原料に上記の材料を積極的に添加しないことを意味する。
また本発明の焼き菓子は、原料にラード、パーム油、ヤシ油、バター、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングマーガリン、粉末油脂または液状油等を用いない、焼き菓子であってよく、好ましくはラード、パーム油、ヤシ油、マーガリン、ファットスプレッドまたはショートニングマーガリンを用いないことであり、さらに好ましくはパーム油、ヤシ油またはマーガリンを用いないことまたは実質的に含まないことである。また本発明の別の態様によれば、バター、マーガリン、ファットスプレッドまたはショートニングマーガリンを用いてよい。なお、「実質的に含まない」については上記のとおりである。一態様において、本発明の焼き菓子は、原料にバター、マーガリン、ファットスプレット、ショートニングマーガリン、牛乳または脱脂粉乳を用いない。
本明細書において、「穀物粉」とは、限定されないが、例えば、薄力粉、中力粉、強力粉等の小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、米粉等であり、1種類または2種類以上を混合した穀物粉を使用してよい。
本明細書において「糖類」とは、限定されないが、例えば、砂糖(上白糖、グラニュー糖、粉糖等)、液糖、はちみつ、ブドウ糖、果糖、黒糖、麦芽糖、乳糖、シクロデキストリン、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、還元澱粉糖化物、還元糖、ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、異性化液糖、ショ糖結合水飴、キャラメル、かえで糖、オリゴ糖、キシロース、トレハロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アラビノース、パラチノースオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、乳果オリゴ糖、モラセス、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ラフィノース、ラクチュロース、テアンデオリゴ糖等であり、1種類または2種類以上を混合した糖類を使用してよい。
本明細書において、「ベーキングパウダー」とは、膨張剤の一種であり、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムを主成分とするものである。この他に、炭酸水素アンモニウムや炭酸アンモニウムを主成分とする膨張剤も使用してよい。
その他、必要により、各種風味原料を添加してもよい。風味原料としては、限定されないが、例えば、レーズン、ベリー類、アプリコット、バナナ、パイナップル、パパイヤ、メロン、イチゴ、イチジク等の乾燥果実、レモンやオレンジ等のかんきつ類の皮等、アーモンド、クルミ、ピーナッツ、ピーカンナッツ、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツ等のナッツ類、ラム酒、ブランデー、キルシュ等の酒類、リンゴ果汁、ブドウ果汁、オレンジ果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁等の果汁、ニンジン汁、カボチャ汁、アスパラ汁、キャベツ汁、ホウレンソウ汁、モロヘイヤ汁、コマツナ汁等野菜汁およびバニラ、シナモン、キャラウエイ、クローブ、オールスパイス等の香料・香辛料であってよい。また、これらの1種類または2種類以上を混合して使用してもよい。
またその他副材料として、限定されないが、例えば、抹茶、紅茶、コーヒー、豆腐、黄な粉、豆類、ジャム、フルーツソース、果物、ハーブ、肉類、魚介類、人工甘味料、膨張剤、調味料、着香料、着色料、乳化剤、金属イオン封鎖剤、ゼラチン、セルロースやセルロース誘導体、澱粉類、穀類、無機塩、有機酸塩、キモシン等の蛋白質分解酵素、トランスグルタミナーゼ、ラクターゼ(β-ガラクトシダーゼ)、グルコアミラーゼ等の糖質分解酵素、ジグリセライド、植物ステロール、植物ステロールエステル、食塩、岩塩、海塩、果汁パウダー、ハーブ、直鎖デキストリン・分枝デキストン・環状デキストン等のデキストリン類、卵製品、カカオ及びカカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材全般、着香料、苦味料、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、酸化防止剤、pH調整剤、強化剤等の食品として許容される副材料を、1種類または2種類以上を混合して配合してもよい。
本発明の焼き菓子の形態は、穀物粉、油脂、糖類を主原料として焼成されるものであれば特に限定されないが、例えば、クッキー(ロータリーモールドクッキー、ワイヤーカットクッキー、絞りクッキー等)、クラッカー、サブレ、ウエハース、ビスケット、シュトーレン、パネトーネ、クグロフ、ブリオッシュ、ドーナツ、バターケーキ、パウンドケーキ、スポンジ、ブッセ、ホットケーキ、ワッフル、カステラ、ケーキのスポンジ、マフィンおよび食パン、ロールパン、フランスパン、菓子パン、デニッシュ、クロワッサンなどのパン、さらにはパイなどのペストリーなどであってよい。とりわけ、その他副材料を組み合わせるという点から、クッキー(ロータリーモールドクッキー、ワイヤーカットクッキー、絞りクッキー等)、ビスケット、スポンジ、ワッフル、カステラ、ケーキのスポンジまたはマフィンなどが好ましい。
また本発明の焼き菓子は、上記油脂を用い、焼成してなる、体脂肪燃焼用、脂肪燃焼用、体脂肪燃焼促進用、脂肪燃焼促進用、脂肪蓄積抑制用、肥満抑制用、メタボリックシンドローム防止用、または脂質代謝改善用焼き菓子である。また本発明の別の態様によれば、自律神経調節用、副交感神経調節用、副交感神経活性化用、副交感神経促進用、リラックス促進用、心拍数低下用、睡眠の質改善用、睡眠改善用、睡眠促進用、安静用、鎮静用、疲労回復用焼き菓子であってもよい。なおここで「~用」とは、「作用を有する」と読み替えてもよく、例えば「体脂肪燃焼用」焼き菓子は、「体脂肪燃焼作用を有する」焼き菓子のように読み替えることができる。
また本発明の別の態様によれば、体に脂肪がつきにくい焼き菓子の製造方法であり、例えば以下のような工程で製造することができる。原料にヨウ素価90以上の油脂を用い、水、卵、砂糖、薄力粉およびベーキングパウダーを混合する生地混合工程と、発酵工程と、焼成工程とを、含む製造方法である。また本発明の別の態様によれば、生地混合(混錬)工程において、牛乳、バター、各種風味原料、その他副材料などを適宜加えてもよく、それらの種類等は上記したとおりである。
焼成工程における焼成温度は、オーブンなどの加熱機械を用い、好ましくは150~230℃であり、より好ましくは160~210℃であり、さらに好ましくは170~190℃である。焼成時間は、好ましくは10分から45分であり、より好ましくは15~35分であり、さらに好ましくは20~30分である。
高齢者や勤務形態が不規則になりがちの社会人にとって、自律神経の乱れに由来するうつ病などの精神疾患になる人は増加傾向にあり、国や企業などにとってはその人的損失、経済的損失は無視できない。一方、自律神経に起因する精神疾患の完治には時間がかかることから、未然に防ぐことが肝要である。自律神経調節のためには、しっかりした睡眠を確保することが非常に効果的であり、夕方に副交感神経の活動を高めるという点においても、昼間の適度な運動が良いことは広く知られるところである。
これに対して、高齢者や運動時間が確保できない者にとっては、食事によるところが大きく、例えばクルミやオートミールなどの食事さらにはアロマテラピーなどを組み合わせた自律神経調節方法が知られている。またn-3系不飽和脂肪酸の摂取が抗ストレス作用を示すという報告(Kiecolt-Glaser JKら、Omega-3 supplementation lowers inflammation and anxiety in medical students: a randomized controlled trial. Brain Behav Immun. 2011 Nov 25 (8) 1725-1734.)もある。さらに魚介由来のトリグリセリド、リン脂質または多価不飽和脂肪酸を利用した鎮静および睡眠促進剤も知られていた(特許文献3)。そのため過度な運動を要せず能率的にリラックスすることや質の良い睡眠を必要とする人が増えていることから、自律神経調節用、または睡眠改善用焼き菓子の提供を目的とすることもできる。
さらに本発明の別の態様によれば、副交感神経促進作用を有する焼き菓子であって、ヨウ素価90以上の油脂を用いてなる焼き菓子である。副交感神経促進とは、副交感神経作用薬などによりもたらされる状態であってよく、一例として心拍数が対象に比べて低くなることなどでもよい。また本発明の別の態様によれば、副交感神経促進作用は、自律神経調節作用、副交感神経調節作用、副交感神経活性化作用、副交感神経促進作用、リラックス促進作用、心拍数低下作用であってよい。本発明の焼き菓子に用いる、「穀物粉」、「油脂」、「糖類」、「ベーキングパウダー」、「各種風味原料」、「その他副材料」、「焼き菓子の形態」、「油脂の構成脂肪酸」などについては上記したとおりである。さらに本発明の別の態様によれば、副交感神経促進作用を有する焼き菓子の製造方法であって、生地混合工程と、発酵工程と、焼成工程とを、含む前記製造方法である。各工程などについては上記したとおりである。
また本発明の別の態様によれば、睡眠の質改善作用を有する焼き菓子であって、ヨウ素価90以上の油脂を用いてなる焼き菓子である。睡眠の質とは、深い眠りがどの程度出現しているかに依存するところが大きい。そもそも睡眠には深睡眠と浅睡眠が存在し、睡眠期間にはそれぞれ一定の割合で出現するが、様々な要因によってバランスが崩れ、深睡眠が少なくなると、十分な睡眠時間を確保していても睡眠が不足している状態となり、睡眠の質が低下しているといえる。すなわち本明細書において、睡眠の質改善とは、睡眠時に現れる第一周期の深睡眠時間が、対象に比べて長くなることをいう。また本発明の別の態様によれば、睡眠の質改善作用は、睡眠改善作用、睡眠促進作用、安静作用、鎮静作用であってよい。本発明の焼き菓子に用いる、「穀物粉」、「油脂」、「糖類」、「ベーキングパウダー」、「各種風味原料」、「その他副材料」、「焼き菓子の形態」、「油脂の構成脂肪酸」などについては上記したとおりである。さらに本発明の別の態様によれば、睡眠の質改善作用を有する焼き菓子の製造方法であって、生地混合工程と、発酵工程と、焼成工程とを、含む前記製造方法である。各工程などについては上記したとおりである。
本発明を以下の例でさらに詳細に説明するが、これらは例示に過ぎず、本発明を決して限定するものではない。
〈実施例1〉
鶏卵(JA全農たまご)(11g)と砂糖(パールエース 上白糖)(3g)を混ぜ合わせ、油脂であるなたね油(ボーソー 一番しぼり菜種油)(8g)および水(8g)を混ぜ合わせ、これをAとする。次に薄力粉(日清 フラワー薄力小麦粉)(20g)とベーキングパウダー(日清フーズ ベーキングパウダー)(0.7g)を合わせておき、ふるいにかけながら、Aに加える。混ざり合ったら型へ全量を流し込み、180℃のオーブン(日立)で25分焼きあげた。さらに後述する試験に供するために、焼き上がり次第粗熱をとり、真空パック(杉友パッケージ株式会社)で酸素を遮断し、光の当たらない冷凍庫で保管し、これを実施例1とした。
〈比較例1〉
焼き菓子の原料として、パーム油(8g)(あぶら屋ヤマケイ)の油脂を使用した以外は、上記実施例1と同様に製作し、これを比較例1とした。
図1は、実施例1の外観の写真であり、図2は、比較例1の外観の写真である。それぞれ見かけ上はほとんど区別がつかないことが確認された。さらに食感や味もほぼ同じであり、重量は実施例1および比較例1ともに50.6gであった。実施例1には、総計で9.5gの脂質が含まれており、そのうち不飽和脂肪酸が8.5g含まれていた。また比較例1には、総計で9.5gの脂質が含まれており、そのうち飽和脂肪酸が4.4g含まれていた。なおエネルギーはいずれも176kcal/個であり、また実施例1および比較例1のPFC%(タンパク質、脂質、炭水化物のバランス)は同等である。すなわち、実施例1および比較例1の脂肪酸組成のみが異なるものであり、以下の表に示す栄養組成を有する焼き菓子が得られた。ガスクロマトグラフ法により、実施例1および比較例1の脂肪酸組成分析試験を行った(一般財団法人 食品分析センター)。
Figure 2022173406000002
被験者は、試験1週間前より規定された生活時間(就寝時間および起床時間)を守り、過剰なアルコールを摂取しないよう生活統制を行なった。エネルギー代謝測定試験前日には、被験者はアルコールおよびカフェインの摂取を禁止し、さらに運動を禁止した。試験期間中の身体活動は、アクチグラフ(ActiGraph、Ambulatory Monitoring Inc.、Ardsley、NY、USA)を用いて測定した。食事を摂取した時刻は、活動日記によって記録した。被験者は試験前日の21時30分より、心電図(LX-3230, Fukuda Denshi Co., Ltd., Tokyo, Japan)を装着し、22時に間接熱量測定室(ヒューマンカロリメータ)(Fuji Medical Science, Chiba, Japan)に入室した。その後23時から翌朝7時まで8時間の睡眠をさせ、朝7時に起床させた。
被験者は、実施例1および副菜のみまたは比較例1および副菜のみを摂食する実験に、日を改めて、合計2回参加するように調整した。なお被験者には実施例1または比較例1であるかは伝えていない。朝食は8時、昼食は12時30分、夕食は19時とし、被験者の体格と身体活動量から算出した推定エネルギー必要量に合わせて本発明の焼き菓子と副菜を摂取させた。実施例1または比較例1の摂取は、被験者の体格に合わせて9個/日または10個/日とした。また副菜は、朝食は、かじきと野菜の照り煮セット(カロリーナビ240 ニチレイフーズダイレクト)、昼食は、デミグラス風ハンバーグセット(カロリーナビ240 ニチレイフーズダイレクト)、夕食は、ビーフカレーセット(カロリーナビ240 ニチレイフーズダイレクト)であり、全被験者同様であった。なお食事やトイレ、就寝準備以外は座位安静とし、テレビ鑑賞、パソコン操作などのデスクワークのみ許可した。そして、夜23時から翌朝7時まで睡眠をさせた。エネルギー代謝(エネルギー消費量、脂質燃焼量、炭水化物燃焼量)および自律神経活動(心拍数、交感神経および副交感神経)は、朝7時から翌朝7時までの24時間測定した。睡眠に関しては、睡眠ポリグラフィ(日本光電PSG-110)による脳波測定を行い、睡眠深度を評価した。
また本実験は10人の被験者で行った。なお以下説明する図3~5の折れ線グラフは、X軸に朝7時から翌朝7時までの時刻を、Y軸に被験者の10人の平均した経時変化の結果を示した。また23時から翌朝7時までの部分を点線で示した。
実施例1を摂食させた場合と比較例1を摂取させた場合の脂質酸化量(kcal/30分)、すなわちY軸に脂肪燃焼量の経時変化を折れ線グラフで図3に示す。結果は、実施例1を摂食させた場合と比較例1を摂取させた場合とでは、24時間での脂肪燃焼量において違いがみられた。実施例1を摂食させた場合の脂質酸化量は、平均して779±64kcal/日であるのに対し、比較例1を摂取させた場合の脂質酸化量では、平均して703±50kcal/日であった。実施例1を摂取させた被験者の24時間での脂質酸化量を、およそ10%の増加させたことが確認された。また、睡眠中の脂質酸化量についてみると、実施例1の方がおよそ9%増加させたことが確認された。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸とでは、不飽和脂肪酸の方が酸化速度、すなわち燃焼速度が速いことに加え、生体内の脂質燃焼能力が高まることから、摂取直後(食後)から脂肪燃焼量に差があり、実施例1により、即効的な脂肪燃焼効果がもたらされた。またそれに加えて睡眠中においても脂肪燃焼効果をもたらすから、体を自由に動かすことができない者や高齢者などの心身に対し運動が負担になる者にとって、カロリーの高い焼き菓子を我慢することなく摂取することができ、体の脂肪を燃焼させることができる。
実施例1を摂食させた場合と比較例1を摂取させた場合の副交感神経活動(ms/分)の経時変化をY軸に、折れ線グラフで図4に示す。結果は、実施例1を摂食させた場合と比較例1を摂取させた場合とでは、24時間での副交感神経活動において違いがみられた。すなわち、実施例1を摂食させた場合の副交感神経活動は、平均して1040±167ms/日であるのに対し、比較例1を摂取させた場合の副交感神経活動では、平均して935±150ms/日であった。実施例1を摂取させた場合の24時間の副交感神経活動を、およそ10%増加させたことが確認された。また、特に23時から翌朝7時までの睡眠中の副交感神経活動についてみると、実施例1を摂取させた場合では、1344±225ms/日であるのに対し、比較例1を摂取させた場合の副交感神経活動では、平均して1252±230ms/日であった。また以下の表に示すとおり、実施例1を摂食させた場合と比較例1を摂取させた場合において、実施例1を摂食させた場合の方が、睡眠の第一周期の深睡眠出現時間が有意に長かった。
Figure 2022173406000003
日中の活動期間の朝方から昼間過ぎまでは、副交感神経の変化はあまり見られなかった。しかし、本発明では夕方から副交感神経の活動が促進され、リラックス効果が高くなることが確認された。特にかかる活動は睡眠時に顕著であった。睡眠において、入眠直後の第一周期の深睡眠時間が最も大切であり、実質的にこれが睡眠の質を決めている。殊に副交感神経の高い状態は睡眠に適した条件であり、この点実施例1を摂食させたとき、第一周期の深睡眠時間が有意に長くなっており、質の良い睡眠や安眠効果がもたらされることが示された。ストレスの多い現代社会において、本発明を摂取することで、能率的に質の良い睡眠をとることができる。また日常生活において睡眠時間が制限されるようなときであっても、深睡眠を長く出現させることができるため、短時間の睡眠で効率よく質の良い睡眠をとるためには、実施例1の摂取が有効であることが示唆された。また不眠症、睡眠不足に対しても効果がある可能性が示唆された。
実施例1を摂食させた場合と比較例1を摂取させた場合の心拍数(回/分)の経時変化を、折れ線グラフで図5に示す。結果は、実施例1を摂食させた場合と比較例1を摂取させた場合とでは、24時間の心拍数において違いがみられた。すなわち、実施例1を摂食させた場合の心拍数は、比較例1を摂取させた場合の心拍数よりも、全体的に低下する傾向がみられた。特に23時から翌朝7時までの睡眠中の心拍数変化についてみると、実施例1を摂食させた場合は、平均して52.0±2.7回/分であったのに対し、比較例1を摂取させた場合の心拍数は、平均して53.0±2.1回/分であった。
実施例1を摂取したとき、日中の活動期間では、交感神経が有利に働くため副交感神経の変化はあまり見られなかったが、心拍においては、日中においても低下させる効果があることが明確に確認された。特に上記したように睡眠時においても、心拍数が低下していることから、副交感神経の活動を高め、リラックス効果や安眠効果をもたらすことに寄与していることが示唆された。
体脂肪率低下やメタボリックシンドローム防止または肥満防止などの保健機能性を有した日常的な健康食品や健康補助食品として期待される。かかる食品は、睡眠不足や不眠に悩む者へも有効である。また高齢者や運動が十分にできない者への病院食などにも期待される。

Claims (7)

  1. 体に脂肪がつきにくい焼き菓子であって、原料にヨウ素価90以上の油脂を用いる脂肪燃焼促進用焼き菓子。
  2. 前記原料にバター、マーガリン、ファットスプレット、ショートニングマーガリン、牛乳または脱脂粉乳を用いない、請求項1に記載の焼き菓子。
  3. 前記油脂の構成脂肪酸中の不飽和脂肪酸の割合が、70%質量以上である、請求項1に記載の焼き菓子。
  4. 前記不飽和脂肪酸が、少なくともオレイン酸、リノール酸およびリノレン酸を含む、請求項3に記載の焼き菓子。
  5. 前記油脂が、椿油(カメリア油)、荏胡麻油、亜麻仁油、ひまわり油、なたね油およびオリーブ油よりなる群から選択される少なくとも1種または2種以上である、請求項1、3または4に記載の焼き菓子。
  6. 前記油脂が、なたね油である、請求項5に記載の焼き菓子。
  7. 自律神経調節作用または睡眠改善作用を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の焼き菓子。

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