JP2022171450A - 電磁波透過性金属光沢部材および加飾部材 - Google Patents

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Ryotaro Yokoi
孝洋 中井
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Abstract

【課題】耐熱性が高く、高温雰囲気下での経時での信頼性に優れる電磁波透過性金属光沢物品を提供する。【解決手段】基体と、前記基体上に、第一無機酸化物含有層、金属光沢層、第二無機酸化物含有層をこの順に備え、前記第一無機酸化物含有層は、密着層と、酸化ケイ素を主成分とするバリア層とを含み、前記密着層の水接触角が50°以下であり、前記金属光沢層は、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含む電磁波透過性金属光沢部材。【選択図】図1

Description

本発明は、電磁波透過性金属光沢部材および加飾部材に関する。
従来、電磁波透過性および金属光沢を有する部材が、その金属光沢に由来する外観の高級感と、電磁波透過性とを兼ね備えることから、電磁波を送受信する装置に好適に用いられている。
金属光沢調の部材に金属を使用した場合には、電磁波の送受信が実質的に不可能、あるいは、妨害されてしまう。したがって、電磁波の送受信を妨げることなく、意匠性を損なわせないために、金属光沢と電磁波透過性の双方を兼ね備えた電磁波透過性金属光沢部材が必要とされている。
このような電磁波透過性金属光沢部材は、電磁波を送受信する装置として、通信を必要とする様々な機器、例えば、スマートキーを設けた自動車のドアハンドル、車載通信機器、携帯電話、パソコン等の電子機器等への応用が期待されている。更に、近年では、IoT技術の発達に伴い、従来は通信等が行われることがなかった、冷蔵庫等の家電製品、生活機器等、幅広い分野での応用も期待されている。
電磁波透過性金属光沢部材に関して、特許文献1には、基体と、前記基体上に形成された金属層と、前記金属層の前記基体側とは反対側の面上に形成されたバリア層とを備え、前記金属層は、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含む電磁波透過性金属光沢物品が開示されている。
特開2019-188805号公報
しかしながら、前記特許文献1に開示された電磁波透過性金属光沢物品では、耐熱性が充分でなく、高温雰囲気下での経時における信頼性に劣るという問題点があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、耐熱性が高く、高温雰囲気下での経時における信頼性に優れる電磁波透過性金属光沢部材および加飾部材を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、基体と、前記基体上に、第一無機酸化物含有層、金属光沢層、第二無機酸化物含有層をこの順に備え、第一無機酸化物含有層は、密着層と、酸化ケイ素(SiO)を主成分とするバリア層とを含み、密着層の水接触角を50°以下とし、金属光沢層が、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含むことにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
基体と、前記基体上に、第一無機酸化物含有層、金属光沢層、第二無機酸化物含有層をこの順に備え、
前記第一無機酸化物含有層は、密着層と、酸化ケイ素を主成分とするバリア層とを含み、
前記密着層の水接触角が50°以下であり、前記金属光沢層は、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含む
電磁波透過性金属光沢部材。
〔2〕
前記密着層がケイ素を主成分とするSi層である、〔1〕に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔3〕
前記密着層の厚さは、3nm以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔4〕
前記第二無機酸化物含有層は、金属および半金属の少なくとも1種の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物および酸化窒化炭化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔5〕
前記第二無機酸化物含有層は、AZO、ITO、AlO、SiOからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔6〕
前記第二無機酸化物含有層の厚さは、10nm~100nmである、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔7〕
前記金属光沢層はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含有する、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔8〕
前記複数の部分は島状に形成されている、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔9〕
前記金属光沢層の厚さは、10nm以下である、〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔10〕
前記第一無機酸化物含有層と前記金属光沢層との間に酸化インジウム含有層をさらに備える、〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔11〕
前記酸化インジウム含有層は、酸化インジウム(In)、インジウム錫酸化物(ITO)、またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)のいずれかを含む、〔10〕に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔12〕
前記基体は、基材フィルム、樹脂成型物基材、ガラス基材、または金属光沢を付与すべき物品のいずれかである、〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔13〕
透明粘着剤からなる粘着剤層をさらに備える、〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
〔14〕
被着部材と、〔13〕に記載の電磁波透過性金属光沢部材とを備え、前記電磁波透過性金属光沢部材が前記粘着剤層を介して前記被着部材に貼付されている、加飾部材。
本発明によれば、耐熱性が高く、高温雰囲気下での経時における信頼性に優れる電磁波透過性金属光沢部材および加飾部材を提供することができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材の概略断面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材の金属光沢層表面の電子顕微鏡写真(SEM画像)を示す図である。 図3は、本発明の一実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材の概略断面図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る加飾部材の概略断面図である。 図5は、本発明の一実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材の金属光沢層の厚さの測定方法を説明するための図である。 図6は、本発明の一実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材の断面の電子顕微鏡写真(TEM画像)を示す図である。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について説明する。以下においては、説明の便宜のために本発明の好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。
<基本構成>
本発明の実施形態にかかる電磁波透過性金属光沢部材は、基体と、前記基体上に、第一無機酸化物含有層、金属光沢層、第二無機酸化物含有層をこの順に備え、
前記第一無機酸化物含有層は、密着層と、SiOを主成分とするバリア層とを含み、
前記密着層の水接触角が50°以下であり、
前記金属光沢層は、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含む。
図1に、本発明の一実施形態による電磁波透過性金属光沢部材1の概略断面図を示す。また、図2に、本発明の一実施形態による電磁波透過性金属光沢部材1の金属光沢層表面の電子顕微鏡写真(SEM画像)の一例を示す。
図1に示すように、電磁波透過性金属光沢部材1は、基体10と、基体10の上に形成された、第一無機酸化物含有層13と、金属光沢層12と、第二無機酸化物含有層14とをこの順で備え、第一無機酸化物含有層13は、密着層と、SiOを主成分とするバリア層とを含む。電磁波透過性金属光沢部材1は、第一無機酸化物含有層13と金属光沢層12との間に酸化インジウム含有層11をさらに備えていてもよい。金属光沢層12は酸化インジウム含有層11の上に形成されることが好ましい。なお、本発明は第一無機酸化物含有層13と金属光沢層12との間に必要に応じて設けられる層は酸化インジウム含有層11に限定されず、その他の無機酸化物層であることもできる。
酸化インジウム含有層11は、その下の面上に連続状態で、言い換えれば、隙間なく、設けるのが好ましい。連続状態で設けることにより、酸化インジウム含有層11、ひいては、電磁波透過性金属光沢部材1の平滑性や耐食性を向上させることができ、また、酸化インジウム含有層11を面内にばらつきなく成膜することも容易となる。
図1に示す形態では、金属光沢層12は酸化インジウム含有層11上に積層されている。金属光沢層12は複数の部分12aを含む。酸化インジウム含有層11上に積層されることにより、これらの部分12aは、少なくとも一部において互いに不連続の状態、言い換えれば、少なくとも一部において隙間12bによって隔てられる。隙間12bによって隔てられるため、これらの部分12aのシート抵抗は大きくなり、電波との相互作用が低下するため、電波を透過させることができる。これらの各部分12aは金属を蒸着、スパッタ等することによって形成されたスパッタ粒子の集合体である。スパッタ粒子が基体10等の基体上で薄膜を形成する際には、基体上での粒子の表面拡散性が薄膜の形状に影響を及ぼす。
なお、本明細書でいう「不連続の状態」とは、隙間12bによって互いに隔てられており、この結果、互いに電気的に絶縁されている状態を意味する。電気的に絶縁されることにより、シート抵抗が大きくなり、所望とする電磁波透過性が得られることになる。不連続の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、島状、クラック等が含まれる。
ここで「島状」とは、図2の電磁波透過性金属光沢部材の金属光沢層の表面の電子顕微鏡写真(SEM画像)に示されているように、スパッタ粒子の集合体である粒子同士が各々独立しており、それらの粒子が、互いに僅かに離隔し、または、一部接触した状態で敷き詰められてなる構造を意味する。
また、クラック構造とは、金属薄膜がクラックにより分断された構造である。
クラック構造の金属光沢層12は、例えば基体上に形成した酸化インジウム含有層11上に、金属薄膜層を設け、屈曲延伸して金属薄膜層にクラックを生じさせることにより形成することができる。この際、酸化インジウム含有層11と金属薄膜層の間に伸縮性に乏しい、即ち延伸によりクラックを生成しやすい素材からなる脆性層を設けることにより、容易にクラック構造の金属光沢層12を形成することができる。
上述のとおり金属光沢層12が不連続となる態様は特に限定されないが、生産性の観点からは「島状」とすることが好ましい。
本発明の実施形態にかかる電磁波透過性金属光沢部材は、透湿度が1.00g/(m・day)以下であることが好ましい。また、0.8g/(m・day)以下であってもよく、0.6g/(m・day)以下であってもよく、0.4g/(m・day)以下であってもよい。本発明の実施形態にかかる電磁波透過性金属光沢部材1の透湿度は、JIS K7129:2008付属書Bに準じて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中で測定される。
前記電磁波透過性金属光沢部材1の透湿度は、下記で説明する第一無機酸化物含有層および第二無機酸化物含有層に用いる材料及び厚み等により調整することができる。
また、本発明の実施形態にかかる電磁波透過性金属光沢部材1において、CIE-XYZ表色系のSCI方式における透過Y値は、透過によるデザインの視認性の観点から30%以上であることが好ましく、33%以上であることがより好ましく、35%以上であることがさらに好ましい。また、金属光沢外観の観点から65%以下であることが好ましく、60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。
電磁波透過性金属光沢部材1の透過Y値は、金属光沢層12の膜厚により調整できる。
本発明の実施形態にかかる電磁波透過性金属光沢部材1の透過Y値は、積分球式分光透過率測定器を用いて、JIS Z 8722に準じて測定できる。
また、本発明の実施形態にかかる透過Y値(視感透過率)は、電磁波透過性金属光沢部材1における金属光沢層12側の面に入射して測定した測定波長の範囲の視感度および光源の光強度で荷重した平均透過率(%)である。
本発明の実施形態にかかる電磁波透過性金属光沢部材1の反射Y値は、金属光沢を示す外観を得る観点から10%以上であることが好ましい。また、透過によるデザイン性の観点から30%以下であることが好ましい。
反射Y値(視感反射率)は、電磁波透過性金属光沢部材1における金属光沢層12側の面に入射して測定した測定波長の範囲の視感度および光源の光強度で荷重した平均反射率である。
本発明の実施形態にかかる電磁波透過性金属光沢部材1の反射Y値は、分光測色計を用いて測定できる。
また、電磁波透過性金属光沢部材1の電磁波透過性は、シート抵抗と相関を有する。
マイクロ波帯域(28GHz)における電波透過減衰量は、10[-dB]未満であることが好ましく、5[-dB]未満であることがより好ましく、2[-dB]未満であることが更に好ましい。マイクロ波帯域(28GHz)における電波透過減衰量が10[-dB]以上であると、90%以上の電波が遮断されるという問題がある。
<基体>
本実施形態にかかる電磁波透過性金属光沢部材において、基体10としては、電磁波透過性の観点から、樹脂、ガラス、セラミックス等が挙げられる。
基体10は、基材フィルム、樹脂成型物基材、ガラス基材、または金属光沢を付与すべき物品のいずれかであってもよい。
より具体的には、基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、ポリウレタン、アクリル系樹脂(PMMA(ポリメチル(メタ)アクリレート))、ABSなどの単独重合体や共重合体からなる透明フィルムを用いることができる。
これらの部材によれば、光輝性や電磁波透過性に影響を与えることもない。但し、酸化インジウム含有層11や金属光沢層12を後に形成する観点から、蒸着やスパッタ等の高温に耐え得るものであることが好ましく、従って、上記材料の中でも、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ABS、ポリプロピレン、ポリウレタンが好ましい。なかでも、耐熱性とコストとのバランスがよいことからポリエチレンテレフタレートやシクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリル系樹脂が好ましい。
基材フィルムは、単層フィルムでもよいし積層フィルムでもよい。加工のし易さ等から、厚さは、例えば、6μm~250μm程度が好ましい。酸化インジウム含有層11や金属光沢層12との付着力を強くするために、プラズマ処理や易接着処理などが施されてもよい。
基体10が基材フィルムの場合、金属光沢層12は基材フィルム上の少なくとも一部に設ければよく、基材フィルムの片面のみに設けてもよく、両面に設けてもよい。
基材フィルムは、必要に応じて平滑性、あるいは防眩性ハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層が設けられることにより、金属薄膜の擦傷性を向上させる事ができる。平滑性ハードコート層が設けられることにより、金属光沢感が増し、逆に防眩性ハードコート層によりギラツキを防止する事ができる。ハードコート層は、硬化性樹脂を含有する溶液を塗布する事により形成できる。
硬化性樹脂としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂の種類としてはポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、アミド系、シリコーン系、シリケート系、エポキシ系、メラミン系、オキセタン系、アクリルウレタン系等の各種の樹脂があげられる。これら硬化性樹脂は、一種または二種以上を、適宜に選択して使用できる。これらの中でも、硬度が高く、紫外線硬化が可能で生産性に優れることから、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、およびエポキシ系樹脂が好ましい。
ここで、基材フィルムは、その表面上に金属光沢層12を形成することができる対象(基体10)の一例にすぎない点に注意すべきである。基体10には、上記のとおり基材フィルムの他、樹脂成型物基材、ガラス基材、金属光沢を付与すべき物品それ自体も含まれる。樹脂成型物基材、および金属光沢を付与すべき物品としては、例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
金属光沢層12は、これら全ての基体上に形成することができ、基体の表面の一部に形成してもよく、基体の表面の全てに形成してもよい。この場合、金属光沢層12を付与すべき基体10は、上記の基材フィルムと同様の材質、条件を満たしていることが好ましい。
<酸化インジウム含有層>
また、一実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材1は、図1に示されるように、第一無機酸化物含有層13と金属光沢層12の間に、酸化インジウム含有層11をさらに備えてもよい。酸化インジウム含有層11は、第一無機酸化物含有層13上に直接設けられていてもよいし、第一無機酸化物含有層13上に設けられた保護膜等を介して間接的に設けられてもよい。酸化インジウム含有層11は、連続状態で、言い換えれば、隙間なく、設けられるのが好ましい。連続状態で設けられることにより、酸化インジウム含有層11、ひいては、金属光沢層12や電磁波透過性金属光沢部材1の平滑性や耐食性を向上させることができ、また、酸化インジウム含有層11を面内ばらつきなく成膜することも容易となる。
このように、第一無機酸化物含有層13と金属光沢層12の間に、酸化インジウム含有層11をさらに備えること、すなわち、第一無機酸化物含有層13の上に酸化インジウム含有層11を形成し、その上に金属光沢層12を形成することによれば、金属光沢層12を不連続の状態で形成しやすくなるため好ましい。そのメカニズムの詳細は必ずしも明らかではないが、金属の蒸着やスパッタによるスパッタ粒子が基体上で薄膜を形成する際には、基体上での粒子の表面拡散性が薄膜の形状に影響を及ぼし、基体の温度が高く、基体に対する金属光沢層の濡れ性が小さく、金属光沢層の材料の融点が低い方が不連続構造を形成しやすいと考えられる。そして、基体上に酸化インジウム含有層11を設けることにより、その表面上の金属粒子の表面拡散性が促進されて、金属光沢層12を不連続の状態で成長させやすくなると考えられる。
酸化インジウム含有層11としては、酸化インジウム(In)そのものを使用することもできるし、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)や、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属含有物を使用することもできる。酸化インジウム含有層は、酸化インジウム(In)、インジウム錫酸化物(ITO)、またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)のいずれかを含むことが好ましい。但し、第二の金属を含有したITOやIZOの方が、スパッタリング工程での放電安定性が高い点で、より好ましい。これらの酸化インジウム含有層11を用いることにより、基体の面に沿って連続状態の膜を形成することもでき、また、この場合には、酸化インジウム含有層11の上に積層される金属光沢層12を、例えば、島状の不連続構造としやすくなるため、好ましい。更に、後述するように、この場合には、金属光沢層12に、クロム(Cr)またはインジウム(In)だけでなく、通常は不連続構造になり難く、本用途には適用が難しかった、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含めやすくなる。
ITOに含まれる酸化錫(SnО)の質量比率である含有率(含有率=(SnO/(In+SnO))×100)は特に限定されるものではないが、例えば、2.5質量%~30質量%、より好ましくは、3質量%~10質量%である。また、IZOに含まれる酸化亜鉛(ZnO)の質量比率である含有率(含有率=(ZnO/(In+ZnO))×100)は、例えば、2質量%~20質量%である。
酸化インジウム含有層11の厚さは、シート抵抗や電磁波透過性、生産性の観点から、通常1000nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましく、20nm以下が更に好ましい。一方、積層される金属光沢層12を不連続状態としやすくするためには、1nm以上であることが好ましく、確実に不連続状態にしやすくするためには、3nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることが更に好ましい。
<金属光沢層>
金属光沢層12は基体上に形成され、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含む。金属光沢層12に含まれる金属は、アルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。
金属光沢層12が基体上で連続状態である場合、十分な光輝性は得られるものの、電波透過減衰量が非常に大きくなり、従って、電磁波透過性を確保することはできない。
金属光沢層12が基体上で不連続状態となるメカニズムの詳細は必ずしも明らかではないが、おおよそ、次のようなものであると推測される。即ち、金属光沢層12の薄膜形成プロセスにおいて、不連続構造の形成しやすさは、金属光沢層12が付与される基体上での表面拡散と関連性があり、基体の温度が高く、基体に対する金属光沢層の濡れ性が小さく、金属光沢層の材料の融点が低い方が不連続構造を形成しやすい、というものである。
ここで、複数の部分12aの平均粒径とは、複数の部分12aの円相当径の平均値を意味する。部分12aの円相当径とは、部分12aの面積に相当する真円の直径のことである。
金属光沢層12の部分12aの円相当径は特に限定されないが、通常10~1000nm程度である。また、各部分12a同士の距離は特に限定されないが、通常は10~1000nm程度である。
金属光沢層が含む互いに不連続の状態にある複数の部分12aの平均粒径を上記の範囲とすることにより、高い電磁波透過性を維持したまま、光輝性がより向上できる。
金属光沢層12は、十分な光輝性および良好な透明性を発揮し得ることは勿論、融点が比較的低いものであることが好ましい。金属光沢層12は、スパッタリングを用いた薄膜成長によって形成するのが好ましいためである。
このような理由から、金属光沢層12としては、融点が約1000℃以下の金属が適しており、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含有するのが好ましい。
金属光沢層12としては、特に、光輝性や透明性、価格等の理由からAlおよびそれらの合金であることが好ましい。また、アルミニウム合金を用いる場合には、アルミニウム含有量を50質量%以上とすることが好ましい。
金属光沢層12の厚さは、着色を抑え十分な光輝性および良好な透明性を発揮するには3nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、7nm以上であることがさらに好ましい。また、透過Y値を所定の範囲としやすくする観点から15nm以下であることが好ましく、12nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
この厚さは、均一な膜を生産性良く形成するのにも適しており、また、最終製品である加飾部材や樹脂成形品の見栄えも良い。
金属光沢層のシート抵抗は、100Ω/□以上であるのが好ましい。この場合、電磁波透過性は、5GHzの波長において、10[-dB]程度以下となる。更に好ましくは、1000Ω/□以上である。
電磁波透過性金属光沢部材1のシート抵抗も、100Ω/□以上であるのが好ましい。
シート抵抗は、電磁波透過性の観点から、200Ω/□以上であるのがより好ましく、600Ω/□以上であることが更に好ましく、より更に好ましくは、1000Ω/□以上である。このシート抵抗の値は、金属光沢層12の材質や厚さは勿論のこと、酸化インジウム含有層11の材質や厚さからも大きな影響を受ける。
<第一無機酸化物含有層>
電磁波透過性金属光沢部材1は、基体10と、基体10上に形成された、第一無機酸化物含有層13と、金属光沢層12と、第二無機酸化物含有層14とをこの順に備え、第一無機酸化物含有層は、密着層と、酸化ケイ素を主成分とするバリア層とを含む。
第一無機酸化物含有層13は、基体10上に、密着層と、酸化ケイ素を主成分とするバリア層とをこの順に形成されたものであることが好ましい。
本発明の実施形態にかかる電磁波透過性金属光沢部材は、第一無機酸化物含有層が、密着層と、酸化ケイ素を主成分とするバリア層を含むことにより、水蒸気の透過を抑制することができ、耐熱性が高く、高温雰囲気下での経時における信頼性に優れた電磁波透過性金属光沢部材とすることができる。
本発明の実施形態にかかる電磁波透過性金属光沢部材は、基体10と、基体10の上に形成された、第一無機酸化物含有層13との積層体における透湿度が、2.00g/(m・day)以下であることが好ましい。また、1.8g/(m・day)以下であってもよく、1.0g/(m・day)以下であってもよく、0.8g/(m・day)以下であってもよい。上記積層体の透湿度は、JIS K7129:2008付属書Bに準じて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中で測定することができる。
上記積層体の透湿度は、下記で説明する密着層および酸化ケイ素を主成分とするバリア層に用いる材料及び厚み等により調整することができる。
密着層は隣接する層間の密着性を高めることができ、基体10と酸化ケイ素を主成分とするバリア層との密着性を向上し、高温時における層間の剥がれを抑制することができる。密着層としては、ケイ素を主成分とするSi層が好ましい。
密着層としては、Si層の他に、Sc,Y,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Tc,Re,Fe,Ru,Os,Co,Rh,Ir,Ni,Pd,Pt,Cu,Ag,Au,Zn,Cd,Al,Ga,In,Tl,Sn,Pb等を含む金属酸化物層が挙げられる。なお、金属酸化物層は、複合酸化物でもよく、ドーパント元素として、B,C,Ge,P,As,Sb,Be,Se,Te,Po,At等の半金属を含んでいてもよい。ドーパントとして半金属であるSbを含む金属酸化物の具体例として、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)が挙げられる。
本発明の実施形態にかかる密着層の水接触角は、下地バリア層との密着性の観点から、50°以下である必要があり、45°以下であることが好ましく、40°以下であることがより好ましく、35°以下であることがさらに好ましい。
本発明の実施形態にかかる密着層の水接触角は、例えば、接触角測定装置(協和界面化学社製「DMo-701」)を用いて、基体上に形成した密着層表面に約5.0μLの水を滴下し、滴下から2秒後に、密着層の表面と液滴端部の接線との角度を測定することにより測定することができる。
密着層の厚みは特に限定はされないが、隣接する層間の密着性を向上させるためには1nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましく、5nm以上が更に好ましく、7.5nm以上がより更に好ましい。また、光透過性の観点から50nm以下が好ましく、25nm以下がより好ましく、15nm以下が更に好ましい。
密着層の厚みは断面TEMにより測定することができる。
また、第一無機酸化物含有層13は、酸化ケイ素を主成分とするバリア層を含む。第一無機酸化物含有層13が酸化ケイ素を主成分とするバリア層を含むことにより、基体10側およびその反対側(金属光沢層側)からのHOやOの侵入を防ぎ、金属光沢層12の酸化を抑える。それにより、電磁波透過性金属光沢部材1は、耐熱性が向上し、高温雰囲気下での経時における信頼性を高めることができる。
酸化ケイ素を主成分とするバリア層は、酸化ケイ素の他に、金属および半金属の少なくとも1種の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物および酸化窒化炭化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。金属としては、例えば、アルミニウム、チタン、インジウム、マグネシウムなどを用いることができ、半金属としては、例えば、ケイ素、ビスマス、ゲルマニウムなどを用いることができる。
具体的には、例えばZnO+Al(AZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化炭化窒化ケイ素(SiOCN)、酸化窒化ケイ素(SiON)、窒化ケイ素(SiN)、SiO、AlO、AlON、TiO等を用いることができる。
第一無機酸化物含有層13が金属光沢層12の酸化(腐食)を抑制し、基体と金属光沢層との密着性を向上させるためには、バリア層内におけるネットワーク構造(網目状の構造)を緻密にするような炭素、窒素を含むことが好ましい。さらに透明性を向上させるためには、酸素を含有していることが好ましい。すなわち、バリア層は、酸化ケイ素を主成分とする必要がある。
本発明の実施形態に係るバリア層は、酸化ケイ素を主成分とする必要があり、酸化ケイ素を80質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましく、酸化ケイ素からなることが更に好ましい。
酸化ケイ素を主成分とするバリア層の厚みは特に限定はされないが、バリア性を向上させるためには1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、10nm以上が更に好ましい。
<第二無機酸化物含有層>
電磁波透過性金属光沢部材1は、上述のように、基体10上に、第一無機酸化物含有層13、金属光沢層12、第二無機酸化物含有層14をこの順で備える。
第二無機酸化物含有層14は、第一無機酸化物含有層13と同じ材質であっても、異なる材質であってもよい。またその他の条件についても第一無機酸化物含有層13および第二無機酸化物含有層14は同じであってもよく、それぞれ独立して設定することもできる。
第二無機酸化物含有層14は、基体10の反対側(金属光沢層側)からのHOやOの侵入を防ぎ、金属光沢層12の酸化を抑え、経時における信頼性、とくに高温雰囲気下での信頼性を高めることができる。
第二無機酸化物含有層14は、金属および半金属の少なくとも1種の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物および酸化窒化炭化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。金属としては、例えば、アルミニウム、チタン、インジウム、マグネシウムなどを用いることができ、半金属としては、例えば、ケイ素、ビスマス、ゲルマニウムなどを用いることができる。
第二無機酸化物含有層14が金属光沢層12の酸化(腐食)を抑制する性能(以下「バリア性」ともいう)の向上のためには、第二無機酸化物含有層内におけるネットワーク構造(網目状の構造)を緻密にするような炭素、窒素を含むことが好ましい。さらに透明性を向上させるためには、酸素を含有していることが好ましい。すなわち、第二無機酸化物含有層14は、金属および半金属の少なくとも1種の酸化窒化炭化物を含むことが好ましい。
第二無機酸化物含有層は、具体的には、例えばZnO+Al(AZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウム錫(ITO)、酸化炭化窒化ケイ素膜(SiOCN)、酸化窒化ケイ素膜(SiON)、窒化ケイ素膜(SiN)、SiO、AlO、AlON、TiO等を用いることができる。中でも、AZO、ITO、AlO及びSiOからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、AlOを用いることがより好ましく、Alを用いることが更に好ましい。
また、バリア性の向上のためには、第二無機酸化物含有層14は水蒸気を透過しにくいことが好ましい。第二無機酸化物含有層14の透湿度は、1.0g/(m・day)以下であることが好ましく、0.8g/(m・day)以下であることがより好ましく、0.5g/(m・day)以下であることが更に好ましい。
第二無機酸化物含有層14の厚みは特に限定はされないが、バリア性を向上させるためには1nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、10nm以上が更に好ましい。また、第二無機酸化物含有層14の厚みは特に限定はされないが、100nm以下であることが好ましい。
なお、第二無機酸化物含有層14は金属光沢層12上に積層されていればよく、必ずしも隙間12bを完全に埋めていなくてもよい。
本発明の実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材1には、本発明の効果を奏する限りにおいて上述の金属光沢層12、第一無機酸化物含有層13および第二無機酸化物含有層14の他に、用途に応じてその他の層を設けてもよい。その他の層としては、粘着剤層等の樹脂層、色味等の外観を調整するための高屈折材料等の光学調整層(色味調整層)、耐湿性や耐擦傷性等の耐久性を向上させるための保護層(耐擦傷性層)等が挙げられる。
<樹脂層>
本発明の実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材1は、更に樹脂層を備えていてもよい。電磁波透過性金属光沢部材1は、樹脂層を、基体10側の面に備えていてもよく第二無機酸化物含有層14側の面に備えていてもよい。
樹脂層は、粘着剤層、色味等の外観を調整するための高屈折材料等の光学調整層(色味調整層)、耐湿性や耐擦傷性等の耐久性を向上させるための保護層(耐擦傷性層)、易接着層、上述したハードコート層、反射防止層、光取出し層、アンチグレア層等であってもよい。
樹脂層は複数設けることができる。
図3は、本発明の一実施形態による電磁波透過性金属光沢部材の概略断面図である。電磁波透過性金属光沢部材1は、図3に示すとおり、基体10と、第一無機酸化物含有層13と、酸化インジウム含有層11と、金属光沢層12と、第二無機酸化物含有層14と、樹脂層として粘着剤層142、144とを備えていてもよい。なお粘着剤層142、144は、両方またはいずれかを設けることができる。
本発明の実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材1は、透明粘着剤からなる粘着剤層をさらに備えていてもよい。本発明の実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材1は、粘着剤層142、144の両方またはいずれかを介して被着部材に貼付されて用いられてもよい。例えば、電磁波透過性金属光沢部材1を、粘着剤層142、144を介して透明な被着部材に貼付することで被着部材を内側から装飾することができる。
電磁波透過性金属光沢部材1が透明な被着部材の視認される側(以下、外側ともいう)の面とは反対側(以下、内側ともいう)の面に対して粘着剤層144を介して貼付された場合、被着部材を通して粘着剤層144と、金属光沢層12が視認される。透明な被着部材としては、例えば、ガラスやプラスチックからなる部材を使用することができるが、これに限定されるものではない。
粘着剤層142、144は、透明粘着剤からなる層であることが好ましい。本発明の実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材1は、粘着剤層142、144を介して被着部材に貼付されて用いられてもよい。
粘着剤層を形成する粘着剤は透明粘着剤であれば特に限定されず、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤のいずれかを単独で、あるいは、2種類以上を組み合わせて使用することができる。透明性、加工性および耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
粘着剤層の厚みは特に限定されないが、薄くすることで最終製品構成の薄型化への寄与や可視光透過性や膜厚精度、平坦性を向上させることができるため、100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。
粘着剤層全体の透過Y値は特に限定はされないが、JIS K7361に従って測定した任意の可視光波長における値で10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。粘着剤層の透過Y値は、高いほど好ましい。
また、粘着剤層を構成する透明粘着剤は着色されていてもよい。
この場合、良好な透明性を有する金属光沢層を介して着色された粘着剤層が視認されることとなるので、電磁波透過性金属光沢部材1は粘着剤層の色調を変えることなく着色された金属光沢を発現することができる。
透明粘着剤を着色する方法は特に限定されないが、例えば色素を微量添加することにより着色することができる。
粘着剤層の上には、被着部材に貼付する際まで粘着剤層を保護するために、剥離ライナーを設けてもよい。
<電磁波透過性金属光沢部材の製造>
電磁波透過性金属光沢部材の製造方法の一例について、説明する。特に説明しないが、基材フィルム以外の基体を用いた場合についても同様の方法で製造することができる。
第一無機酸化物含有層13および第二無機酸化物含有層14を形成するにあたっては、例えば、真空蒸着、スパッタリング等の方法を用いることができる。
金属光沢層12を形成するにあたっては、例えば、真空蒸着、スパッタリング等の方法を用いることができる。
また、酸化インジウム含有層11を形成する場合には、金属光沢層12の形成に先立ち、酸化インジウム含有層11を、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等によって形成する。但し、大面積でも厚さを厳密に制御できる点から、スパッタリングが好ましい。
粘着剤層142、144を設ける場合には、粘着剤層を設ける面に粘着剤組成物を塗布等することや離型フィルムに形成した粘着剤層を転写することにより形成できる。
粘着剤組成物の塗布は、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを用いて行うことができる。乾燥温度は、適宜採用可能であるが、好ましくは40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは70℃~120℃である。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
なお、本発明では、基体上に、第一無機酸化物含有層、金属光沢層、第二無機酸化物含有層をこの順に備えればよく、これらの層間にその他の層を設けてもよい。また、酸化インジウム含有層11を設ける場合、酸化インジウム含有層11と金属光沢層12の間には、他の層を介在させずに直接接触させるのが好ましい。
<加飾部材>
本実施形態に係る加飾部材は、被着部材と、上述の電磁波透過性金属光沢部材とを備え、前記電磁波透過性金属光沢部材(電磁波透過性金属光沢部材1)が前記粘着剤層を介して前記被着部材に貼付されている。
図4に、本発明の一実施形態による加飾部材2の概略断面図を示す。本発明の一実施形態による加飾部材2は、電磁波透過性金属光沢部材1が被着部材20に貼付された状態の概略断面図である。本発明の実施形態に係る加飾部材2は、図3に示す形態における電磁波透過性金属光沢部材1が、粘着剤層142を介して、被着部材20に貼付されている。
本発明の実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材1は、電磁波透過性金属光沢部材1が金属光沢を有し、視認性に優れるため、被着部材20の表面に設けた意匠、色および質感をそのまま活かしつつ被着部材20を装飾した加飾部材2を得ることができる。
電磁波透過性金属光沢部材1は、透明な被着部材20の内側の面に貼付して用いてもよい。透明な被着部材20としては、例えば、ガラスやプラスチックからなる部材を使用することもできるが、これに限定されるものではない。
電磁波透過性金属光沢部材1を被着部材20に貼付する方法は特に限定されないが、例えば、真空成形により貼付することができる。真空成形とは、電磁波透過性金属光沢部材1を加熱軟化しつつ展張し、電磁波透過性金属光沢部材1の被着部材側の空間を減圧し、必要に応じ反対側の空間を加圧することにより、電磁波透過性金属光沢部材1を被着部材の表面の三次元立体形状に沿って成形しつつ貼付積層する方法である。
電磁波透過性金属光沢部材1としては、上述の説明をそのまま援用し得る。
<電磁波透過性金属光沢部材および加飾部材の用途>
本発明の実施形態に係る電磁波透過性金属光沢部材および加飾部材は、電磁波透過性を有することから電磁波を送受信する装置や物品およびその部品等に使用することが好ましい。例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
より具体的には、車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ステアリングホイール、ECUボックス、電装部品、エンジン周辺部品、駆動系・ギア周辺部品、吸気・排気系部品、冷却系部品等が挙げられる。
電子機器および家電機器としてより具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカー等の家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池等電子情報機器等が挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。電磁波透過性金属光沢部材を作製し評価を行った。なお、基体10としては、基材フィルムを用いた。
評価方法の詳細は以下のとおりである。
<透湿度>
MOCON社製PERMATRAN-W3/33を使用し、JIS K7129:2008 附属書Bに準じて、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中で、基体と第一無機酸化物含有層との積層体、及び電磁波透過性金属光沢部材の透湿度(g/(m・day))を測定した。
<透過特性>
透過率測定サンプルを、積分球式分光透過率測定器 DOT-3C((株)村上色彩技術研究所製)で、標準光源D65により波長380nm~700nmの範囲の可視光線を金属光沢層側の面に入射して透過率測定を行い、初期透過率Y(%)を得た。得られた初期透過率Y(%)を表1に記載した。
<加熱信頼性>
電磁波透過性金属光沢部材を140℃の熱風オーブン内に投入し、60分後に取り出した。その後透過率測定を実施し、投入後の透過率Y(%)と投入前の初期透過率Y(%)との差をΔY(%)とした。
<金属光沢層の厚み>
金属光沢層におけるバラツキ、更に詳細には、図2に示す部分12aの厚さにおけるバラツキを考慮して、部分12aの厚さの平均値を金属光沢層の厚みとした。
なお、個々の部分12aの厚さは、基体10から垂直方向に最も厚いところの厚さとした。以下、この平均値を、便宜上、「最大の厚さ」と呼ぶ。図6に、電磁波透過性金属光沢部材の一部断面の電子顕微鏡写真(TEM画像)の例を示す。
最大の厚さを求めるに際し、まず、図6に示すような電磁波透過性金属光沢部材の表面に現れた金属層において、図5に示すような一辺5cmの正方形領域3を適当に抽出し、該正方形領域3の縦辺および横辺それぞれの中心線A、Bをそれぞれ4等分することによって得られる計5箇所の点「a」~「e」を測定箇所として選択した。
次いで、選択した測定箇所それぞれにおける、図6に示すような断面画像において、おおよそ5個の部分12aが含まれる視野角領域を抽出した。これら計5箇所の測定箇所それぞれにおける、おおよそ5個の部分12a、即ち、25個(5個×5箇所)の部分12aの個々の厚さ(nm)を求め、それらの平均値を「最大の厚さ」とした。
<水接触角>
接触角測定装置(協和界面化学社製「DMo-701」)を用いて、基体上の密着層表面に約5.0μLの水を滴下した。滴下から2秒後に、密着層の表面と液滴端部の接線との角度を測定し、水接触角(°)とした。
[実施例1]
基体としての基材フィルム(東レ株式会社製PETフィルム50-U483(厚さ50μm))に厚み1.5μmの紫外線硬化樹脂層(ハードコート層)を形成し、紫外線硬化樹脂層付き基体フィルムを得た。
先ず、マグネトロンスパッタリング装置にSiターゲットを取り付け、Arガスを導入しながらスパッタリングすることで第一無機酸化物含有層における密着層としてSi層を3.5nm形成した。密着層の厚みは蛍光X線分析(XRF)により測定した。
次いで、マグネトロンスパッタリング装置にSiターゲットを取り付け、Arガスと酸素ガスの混合ガスを導入しながらスパッタリングをすることで、第一無機酸化物含有層におけるバリア層としてのSiO層を厚さ20nmで形成した。
次いで、マグネトロンスパッタリング装置にITOターゲットを取り付け、Arガスを導入しながらスパッタリングをすることで基体フィルムの面に沿って、酸化インジウム含有層としてのITO層を厚さ5nmで紫外線硬化樹脂層の上に直接形成した。ITOに含まれる酸化錫(SnО)の含有率(含有率=(SnO/(In+SnO))×100)は10質量%である。
次に、マグネトロンスパッタリング装置にアルミニウム(Al)ターゲットを取り付け、Arガスを導入しながらスパッタリングすることでITO層の上に金属光沢層としてのAl層を厚さ6nmで形成した。得られたAl層は図2で示すような不連続層であった。
続いて、Arガスと酸素ガスの混合ガスを導入しながらスパッタリングすることでAl層の上に第二無機酸化物含有層としてのAlOx層を厚さ20nmで形成し、電磁波透過性金属光沢部材を得た。
以上により基材フィルム、紫外線硬化樹脂層、第一無機酸化物含有層、酸化インジウム含有層、金属光沢層、第二無機酸化物含有層の積層体である実施例1の電磁波透過性金属光沢部材を得た。
得られた電磁波透過性金属光沢部材の特性を上記の方法により測定し、表1に記載した。
<加飾部材の製造>
被着部材として、表面に意匠を施した厚み0.7mmのガラスを用いた。
上記で得られた電磁波透過性金属光沢部材を、粘着剤CS9861UAS(日東電工(株)製)を用いて被着部材に貼付し、加飾部材を得た。
[実施例2~4及び比較例3]
実施例1における密着層の厚みを変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~4及び比較例3の電磁波透過性金属光沢部材及び加飾部材を得た。
[比較例1]
実施例1において、密着層、及び第一無機酸化物含有層(密着層及び酸化ケイ素を主成分とするバリア層)を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の電磁波透過性金属光沢部材及び加飾部材を得た。
[比較例2]
実施例1において、密着層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の電磁波透過性金属光沢部材及び加飾部材を得た。
実施例及び比較例で得られた電磁波透過性金属光沢部材についての評価結果を表1に示す。比較例1及び2は密着層を含まないため、基体表面の水接触角を記載した(*)。
また、実施例及び比較例で得られた電磁波透過性金属光沢部材のシート抵抗は高く、優れた電磁波透過性を有していた。
Figure 2022171450000002
表1から明らかなように、実施例1~4の電磁波透過性金属光沢部材は、基体と、前記基体上に、第一無機酸化物含有層、金属光沢層、第二無機酸化物含有層をこの順に備え、第一無機酸化物含有層は、密着層と、酸化ケイ素を主成分とするバリア層とを含み、密着層の水接触角が50°以下であり、金属光沢層は、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含むので、シート抵抗が高く優れた電磁波透過性を有し、金属光沢を示した。また、密着層の水接触角が50(°)以下である実施例1~4の電磁波透過性金属光沢部材は、高温に爆した後の透過率Yの変化(ΔY)が比較例1~3に比べ少なく、耐熱性が高く高温雰囲気下での経時における信頼性に優れるものであった。
これに対し、密着層及び第一無機酸化物含有層を設けなかった比較例1、及び密着層を設けなかった比較例2は、高温に爆した後の透過率Yの変化(ΔY)が実施例に比べて大きく、耐熱性及び高温雰囲気下での経時における信頼性が十分ではなかった。
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
本発明に係る電磁波透過性金属光沢部材は、電磁波を送受信する装置や物品およびその部品等に使用することができる。例えば、車両用構造部品、車両搭載用品、電子機器の筐体、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等、意匠性と電磁波透過性の双方が要求される様々な用途にも利用できる。
1 電磁波透過性金属光沢部材
2 加飾部材
10 基体
11 酸化インジウム含有層
12 金属光沢層
12a 部分
12b 隙間
14 第二無機酸化物含有層
13 第一無機酸化物含有層
142、144 粘着剤層
15 ハードコート層
20 被着部材

Claims (14)

  1. 基体と、前記基体上に、第一無機酸化物含有層、金属光沢層、第二無機酸化物含有層をこの順に備え、
    前記第一無機酸化物含有層は、密着層と、酸化ケイ素を主成分とするバリア層とを含み、
    前記密着層の水接触角が50°以下であり、前記金属光沢層は、少なくとも一部において互いに不連続の状態にある複数の部分を含む
    電磁波透過性金属光沢部材。
  2. 前記密着層がケイ素を主成分とするSi層である、請求項1に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  3. 前記密着層の厚さは、3nm以上である、請求項1又は2に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  4. 前記第二無機酸化物含有層は、金属および半金属の少なくとも1種の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物および酸化窒化炭化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  5. 前記第二無機酸化物含有層は、AZO、ITO、AlO、SiOからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  6. 前記第二無機酸化物含有層の厚さは、10nm~100nmである、請求項1~5のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  7. 前記金属光沢層はアルミニウムまたはアルミニウム合金を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  8. 前記複数の部分は島状に形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  9. 前記金属光沢層の厚さは、10nm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  10. 前記第一無機酸化物含有層と前記金属光沢層との間に酸化インジウム含有層をさらに備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  11. 前記酸化インジウム含有層は、酸化インジウム(In)、インジウム錫酸化物(ITO)、またはインジウム亜鉛酸化物(IZO)のいずれかを含む、請求項10に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  12. 前記基体は、基材フィルム、樹脂成型物基材、ガラス基材、または金属光沢を付与すべき物品のいずれかである、請求項1~11のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  13. 透明粘着剤からなる粘着剤層をさらに備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の電磁波透過性金属光沢部材。
  14. 被着部材と、請求項13に記載の電磁波透過性金属光沢部材とを備え、前記電磁波透過性金属光沢部材が前記粘着剤層を介して前記被着部材に貼付されている、加飾部材。
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