しかしながら、従来技術のように擁壁用ブロックを前傾させると、擁壁用ブロックに前のめりの加重がかかり、かえって設置が安定しない可能性もある。近年、施工時の効率化や、省力化ひいては安全対策が、より重視される傾向にあるにもかかわらず、従来技術では、上述のような提案にとどまっており、改善の余地があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、より効率的且つ安全な施工方法を採用できる擁壁構造体、擁壁ブロック、小口止めブロック及び天端ブロックを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、プレキャストコンクリートよりなるブロックを積み上げて構築される擁壁構造体であって、擁壁の勾配に応じて前面から背面にかけて低くなるように傾斜した、又は、水平な載置面を有する基礎ブロックと、基礎ブロックの上方に積み上げられる1以上の擁壁ブロックと、最上部に積み上げられた擁壁ブロックの上に載置される天端ブロックとを備え、天端ブロックは、最上部に積み上げられた擁壁ブロックの上に載置される底面部と、擁壁の前面に沿うように設けられ、底面部の前方端において上方に延びる前面部とを有するものである。
このように構成すると、多様な勾配に対応し、且つ、天端のコンクリート打設時に前面部が現場型枠の役割を兼ねるものとなる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、天端ブロックの前面部は、前面視において、天端勾配に対応するように上部を切除されているものである。
このように構成すると、天端ブロックの前面部を適宜切除することで、天端勾配に合わせることができる。
請求項3記載の発明は、プレキャストコンクリートよりなる擁壁ブロックであって、擁壁の前面を構成する前壁部と、前壁部の背面において、側端部から離間した箇所から後方に延びる控え壁部と、控え壁部の後方端部に接続され、前壁部の傾斜に対応する傾斜を有する後壁部とを備え、控え壁部は、前壁部及び後壁部の天面及び底面とそれぞれ面一に形成された天面部及び底面部と、天面部に形成される突起部と、底面部から上方に向けて延びるように形成されるスリットとを有するものである。
このように構成すると、擁壁構造体を構築するのに適したブロック積工仕様の擁壁ブロックとなる。すなわち、スリットを介して胴込めコンクリートが側方に流通すると共に、スリットに、下位に設置した擁壁ブロックの突起部を係止できる。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成において、前壁部の側部の上下方向中央部には、第1の薄肉部が設けられ、後壁部の側部において、第1の薄肉部よりも上方の位置に第2の薄肉部が設けられるものである。
このように構成すると、薄肉部の強度を下げることができる。
請求項5記載の発明は、請求項3又は請求項4記載の発明の構成において、前壁部の表面には、凹凸加工が施されると共に、目地が設けられており、目地は、幅及び深さの比が、3:4であるものである。
このように構成すると、平均明度を抑えることができる。
請求項6記載の発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、後壁部の側部下端において切り欠き部が設けられるものである。
このように構成すると、打設したコンクリートが前後方向に流通する。
請求項7記載の発明は、請求項3から請求項6のいずれかに記載の発明の構成において、控え壁部は、前壁部及び後壁部の間において、離間して複数枚設けられており、隣り合う控え壁部の間において、後壁部の下端には切り欠き部が設けられるものである。
このように構成すると、コンクリート打設の際、切り欠き部を通じて打設したコンクリートが前後方向に流通する。
請求項8記載の発明は、請求項3から請求項7のいずれかに記載の発明の構成において、後壁部は、設計上の裏込めコンクリートの厚みと実質的に同一の寸法の厚みを有するものである。
このように構成すると、裏込めコンクリートの打設を省略したり、その打設量を減らしたりすることができる。
請求項9記載の発明は、請求項3から請求項8のいずれかに記載の発明の構成において、更に、後壁部は、一方の側方から他方の側方にかけて設置されるセパレーターを固定するための固定手段を備えるものである。
このように構成すると、擁壁ブロックとその側方の型枠との間においてセパレーターを配置できるようになる。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明の構成において、固定手段は、後壁部の背面から後方に向けて伸びるデンデンボルトを含むものである。
このように構成すると、デンデンボルトの先端の環状部にセパレーターを挿通し、板ナット等で擁壁ブロックと型枠とを固定することができる。
請求項11記載の発明は、請求項9記載の発明の構成において、固定手段は、後壁部の背面又は側面に設けられた取付部を含むものである。
このように構成すると、後壁部の背面又は側面においてセパレーターを固定することができる。
請求項12記載の発明は、プレキャストコンクリートよりなる小口止めブロックであって、擁壁の傾斜に沿うように設けられる前壁部と、前壁部の一方の側部において後方に延びる側壁部と、側壁部の後方部において、水平方向に設けられるセパレーター挿入穴とを備えるものである。
このように構成すると、コンクリートの打設時に、擁壁ブロックとの間においてセパレーターを配置できるようになる。
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明の構成において、側壁部では、後方部が幅広に形成されているものである。
このように構成すると、セパレーター挿入穴の周辺の強度を向上させることができる。
請求項14記載の発明は、請求項12又は請求項13記載の発明の構成において、更に、前壁部の一方の側部の天面及び側壁部の前方部の天面にかけて形成されるリブと、リブにおいて上下方向に設けられる連結ボルト穴とを備えるものである。
このように構成すると、連結ボルト穴に連結ボルトを挿入し、上下の小口止めブロック同士を連結ボルトで連結することができる。
請求項15記載の発明は、プレキャストコンクリートよりなるブロックを積み上げて構築される擁壁構造体の最上部に設置される天端ブロックであって、最上部に設置される際の土台となる底面部と、擁壁の前面に沿うように設けられ、底面部の前面から上方に延びる前面部と、前面部の背面において、切除の基準となる位置を示すガイドが形成されているものである。
このように構成すると、ガイドに従って切除することで天端ブロックを所定の天端勾配に揃えることができる。
請求項16記載の発明は、プレキャストコンクリートよりなるブロックを積み上げて構築される第1の勾配を有する第1の擁壁及び第2の勾配を有する第2の擁壁から構築される擁壁構造体であって、第1の擁壁は、第1の勾配に応じて前面から背面にかけて低くなるように傾斜した、又は、水平な載置面を有する第1の基礎ブロックと、第1の基礎ブロックの上方に積み上げられる1以上の擁壁ブロックと、を備え、第2の擁壁は、第2の勾配に応じて前面から背面にかけて低くなるように傾斜した、又は、水平な載置面を有する第2の基礎ブロックと、第2の基礎ブロックの上方に積み上げられる1以上の擁壁ブロックとを備えるものである。
このように構成すると、擁壁の勾配が途中で変化する場合でも、それぞれ勾配に対応した基礎ブロックを用いることで擁壁構造体を構築することができる。
請求項17記載の発明は、プレキャストコンクリートよりなる擁壁ブロックであって、擁壁の前面を構成する前壁部と、前壁部の背面において、両側端部からそれぞれ離間した箇所から後方に延びる一対の控え壁部と、一対の控え壁部それぞれの後方端部に接続される一対の支持部とを備え、一対の控え壁部は、それぞれ、前壁部の天面及び底面とそれぞれ面一に形成された天面部及び底面部と、天面部に形成される突起部と、底面部から上方に向けて延びるように形成されるスリットとを有するものである。
このように構成すると、擁壁構造体を構築するのに適したブロック張工仕様の擁壁ブロックとなる。すなわち、スリットを介して胴込めコンクリートが側方に流通すると共に、スリットに、下位に設置した擁壁ブロックの突起部を係止できる。
以上説明したように、請求項1記載の発明は、多様な勾配に対応し、且つ、天端のコンクリート打設時に前面部が現場型枠の役割を兼ねるものとなるため、効率的で、且つ、天端のコンクリート打設時に現場型枠及び高所作業をせずともよい、より安全な施工方法が採用できる擁壁構造体となる。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、天端ブロックの前面部を適宜切除することで、天端勾配に合わせることができるため、効率的な施工を実現できる。
請求項3記載の発明は、スリットを介して胴込めコンクリートが側方に流通すると共に、スリットに、下位に設置した擁壁ブロックの突起部を係止できるため、胴込めコンクリートの打設が効率的となると共に積み上げが安定する。
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加えて、薄肉部の強度を下げることができるため、水抜きパイプを設置する際、ハンマー等の工具で薄肉部を砕いて、効率よく水抜きパイプを設置できる。
請求項5記載の発明は、請求項3又は請求項4記載の発明の効果に加えて、平均明度を抑えることができるため、環境により調和した擁壁ブロックとなる。
請求項6記載の発明は、請求項3から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、打設したコンクリートが前後方向に流通するため、コンクリートの打設が効率化する。
請求項7記載の発明は、請求項3から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、コンクリート打設の際、切り欠き部を通じて打設したコンクリートが前後方向に流通するため、コンクリートの打設が効率化する。
請求項8記載の発明は、請求項3から請求項7のいずれかに記載の発明の効果に加えて、裏込めコンクリートの打設を省略したり、その打設量を減らしたりすることができるため、施工の効率化が図れると共にコスト的にも有利となる。
請求項9記載の発明は、請求項3から請求項8のいずれかに記載の発明の効果に加えて、擁壁ブロックとその側方の型枠との間においてセパレーターを配置できるようになるため、コンクリートの打設工程を効率化できる。
請求項10記載の発明は、請求項9記載の発明の効果に加えて、デンデンボルトの先端の環状部にセパレーターを挿通し、板ナット等で擁壁ブロックと型枠とを固定することができるため、デンデンボルトの長さを調節することで、セパレーターの設置箇所に位置を合わせることができる。
請求項11記載の発明は、請求項9記載の発明の効果に加えて、後壁部の背面又は側面においてセパレーターを固定することができるため、コンクリートの打設工程を効率化できる。
請求項12記載の発明は、コンクリートの打設時に、擁壁ブロックとの間においてセパレーターを配置できるようになるため、コンクリートの打設工程を効率化できる。
請求項13記載の発明は、請求項12記載の発明の効果に加えて、セパレーター挿入穴の周辺の強度を向上させることができるため、コンクリート打設工程の際の信頼性が高まる。
請求項14記載の発明は、請求項12又は請求項13記載の発明の効果に加えて、連結ボルト穴に連結ボルトを挿入し、上下の小口止めブロック同士を連結ボルトで連結することができるため、コンクリート打設工程の際の信頼性や擁壁施工後の耐久性が高まる。
請求項15記載の発明は、ガイドに従って切除することで天端ブロックを所定の天端勾配に揃えることができるため、効率的な施工を実現できる。
請求項16記載の発明は、擁壁の勾配が途中で変化する場合でも、それぞれ勾配に対応した基礎ブロックを用いることで擁壁構造体を構築することができるため、施工の効率性を向上させることができる。
請求項17記載の発明は、スリットを介して胴込めコンクリートが側方に流通すると共に、スリットに、下位に設置した擁壁ブロックの突起部を係止できるため、胴込めコンクリートの打設が効率的となると共に積み上げが安定する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、この発明の第1の実施の形態による擁壁構造体の構成を示す概略断面図である。
同図を参照して、擁壁構造体1の基本的な構成について説明すると、擁壁構造体1は、プレキャストコンクリートよりなるブロックを積み上げて構築され、海岸護岸又は河川護岸や道路擁壁に用いられる。擁壁構造体1は、擁壁の勾配に応じて前面から背面にかけて低くなるように傾斜した、又は、水平な載置面を有する基礎ブロック10と、基礎ブロック10の上方に積み上げられる1以上の擁壁ブロック20a~20dと、最上部に積み上げられた擁壁ブロック20dの上に載置される天端ブロック30とを備える。尚、同図に示す擁壁の勾配は5分である。
擁壁構造体1を施工する工程は概ね以下の通りである。まず、擁壁構造体1を構築する斜面51前方の地表55から掘削を行い、擁壁構造体1を構築する基礎となる部分に基礎砕石52を敷設する。次に、基礎砕石52の上に均しコンクリート53を施工し、均しモルタル54を介して、基礎ブロック10を設置する。
次に、基礎ブロック10の上に、擁壁ブロック20を積み上げ、裏込め材56の充填、胴込めコンクリート57及び裏込めコンクリート58の打設を行う。以降、積み上げる段数分、この工程を繰り返す。最上部まで擁壁ブロック20を積み上げると、最上部の擁壁ブロック20の上に天端ブロック30を載置し、調整コンクリート59を打設する。以上で工程は終了する。
以下では、基礎ブロック10、擁壁ブロック20、天端ブロック30の詳細及びバリエーションについて説明する。
(基礎ブロック)
図2は、図1で示した擁壁構造体に用いる基礎ブロックの詳細及びバリエーションの幾つかの例を示す図であり、図3は、図1で示した擁壁構造体に用いる基礎ブロックの他の例を示す図である。
まず、図2を参照して、(K31)及び(K32)は、3分勾配に対応する基礎ブロック10aを示しており、(K41)及び(K42)は、4分勾配に対応する基礎ブロック10bを示しており、(K51)及び(K52)は、5分勾配に対応する基礎ブロック10cを示している。基礎ブロック10a~10cは、特に区別しなくてよい場合は、以後、総称的に、基礎ブロック10と称する。又、図2中、左側が基礎ブロック10の前面に対応し、右側が後方に対応する。(K31)、(K41)及び(K51)は、それぞれ、基礎ブロック10の平面図であり、(K32)、(K42)及び(K52)は、それぞれ、基礎ブロック10の側面図である。
基礎ブロック10a~10cは、擁壁ブロック20を積み上げる基礎を形成するものであって、長尺状の前面部11と、前面部11の長手方向中央の背面から連続して後方に延び、上面に凸部13が形成されている連結部12と、連結部12の後端に連続して形成され前面部11に並列する長尺状の背面部14とを備え、平面視略H型を有する。
基礎ブロック10a~10cでは、その上面が擁壁の勾配に応じた形状となっている。すなわち、3分勾配に対応する基礎ブロック10aは、前面部11、連結部12、背面部14それぞれの上面が水平且つ面一に形成されている。又、4分勾配に対応する基礎ブロック10b及び5分勾配に対応する基礎ブロック10cは、それぞれ、前面部11の上面の前方部分及び背面部14の上面の後方部分は水平に形成され、前面部11及び背面部14の上面の残りの部分と連結部12の上面とは、擁壁の勾配に応じて前面から背面にかけて低くなるように傾斜して形成されている。尚、このように構成する効果については後述する。
次に、図3を参照して、(K53)は、他の例による基礎ブロック10dの平面図であり、(K54)は、その側面図である。
尚、基礎ブロック10dの構成は、上述した基礎ブロック10a~10cと基本的に同様であるため、以下、相違点を中心に説明する。
基礎ブロック10a~10cが、1つの連結部12を備える構成であったのに対して、基礎ブロック10dは、側方端部から離間した位置に一対の連結部15a及び15bを備える構成である。又、連結部15a及び15bには、それぞれ、凸部16a及び16bが形成されている。
又、前面部11及び背面部14の長手方向中央の位置(すなわち、一対の連結部15a及び15bの間に対応する位置)には、それぞれ、中央位置を示す標識17a、17bが形成されている。尚、この標識は、所定の間隔で更に形成されていてもよい。これにより、擁壁ブロックを載置する際に位置合わせがしやすくなっている。
(擁壁ブロック)
図4は、図1で示した擁壁構造体に用いる擁壁ブロックの詳細及びバリエーションの一例を示す図であり、図5は、図1で示した擁壁構造体に用いる擁壁ブロックの詳細及びバリエーションの他の例を示す図であり、図6は、図1で示した擁壁構造体に用いる擁壁ブロックの詳細及びバリエーションの更に他の例を示す図である。
まず、図4を参照して、(A1)~(A6)は、基本的な種類であるA形の擁壁ブロック21を示している。すなわち、(A1)は、擁壁ブロック21の平面図であり、(A2)は、その正面図であり、(A3)は、その底面図であり、(A4)は、その背面図であり、(A5)は、その側面図であり、(A6)は、(A2)に示したA6ラインの断面図である。
擁壁ブロック21は、プレキャストコンクリートよりなり、複数個積み上げられて擁壁構造体を構築するものである。擁壁ブロック21は、水平に載置された状態で3分勾配を有し、擁壁の前面を構成する前壁部41と、前壁部の背面において、両側端部から離間した箇所からそれぞれ後方に延びる一対の控え壁部42、43と、控え壁部42、43の後方端部に接続され、前壁部41の傾斜に対応する傾斜を有する後壁部44とを備える。
又、控え壁部42、43は、それぞれ、前壁部41及び後壁部44の天面及び底面とそれぞれ面一に形成された天面部42a、43a及び底面部42b、43bと、天面部42a、43aに形成される突起部45、46と、底面部42b、43bから上方に向けて延びるように形成されるスリット47、48とを有する。
前壁部41の側部の上下方向中央部には、第1の薄肉部49aが設けられ、後壁部44の側部の上端部に第2の薄肉部49bが設けられる。このように構成すると、前壁部41の第1の薄肉部49a及び後壁部44の第2の薄肉部49bの強度を下げることができる。このため、図1に示したように水抜きパイプ36を設置する際には、ハンマー等の工具で第1の薄肉部49a及び第2の薄肉部49bを砕いて、それぞれ、切り欠き37及び切り欠き38を形成すると、切り欠き37及び切り欠き38にかけて水抜きパイプ36を設置することができる。よって、効率よく水抜きパイプ36を設置できる。
前壁部41の表面には、凹凸加工が施されると共に、矩形ブロック状の目地が設けられている。前壁部の表面の凹凸加工及び目地について詳しくは後述する。
尚、以上のように構成について特に説明しなかった効果については後述する。
次に、図5を参照して、(B1)~(B4)は、その正面視における幅がA形ブロックの半分の幅に設定されているB形の擁壁ブロック22を示し、(C1)~(C4)は、その正面視における高さがA形ブロックの半分の高さに設定されているC形の擁壁ブロック23を示している。
(B1)及び(C1)は、それぞれ、擁壁ブロック22、23の平面図であり、(B2)及び(C2)は、それぞれ、その側面図であり、(B3)及び(C3)は、それぞれ、その正面図であり、(B4)及び(C4)は、それぞれ、(B3)に示したB4ライン及び(C3)に示したC3ラインの断面図である。
尚、擁壁ブロック22、23の構成は、上述した擁壁ブロック21と基本的に同様であるため、以下、それぞれの相違点を中心に説明する。
(B1)~(B4)を参照して、擁壁ブロック22は、上述の通り、その正面視における幅がA形ブロックの半分に設定されており、前壁部41と後壁部44とが1つの控え壁部61により接続される構成である。
控え壁部61では、天面部61aにおいて突起部60が形成され、底面部61bにおいてスリット68が形成されている。尚、擁壁ブロック22では、擁壁ブロック21にあった薄肉部(49a、49b)は省略されている。
(C1)~(C4)を参照して、擁壁ブロック23は、上述の通り、その正面視における高さがA形ブロックの半分に設定されている。尚、擁壁ブロック23では、擁壁ブロック21にあった薄肉部(49a、49b)は省略されている。
次に、図6を参照して、(E1)及び(E2)は、その正面視における幅がA形ブロックの2倍の幅に設定されているE形の擁壁ブロック25を示し、(F1)及び(F2)は、その正面視における幅がA形ブロックの2倍の幅で且つ半分の高さに設定されているF形の擁壁ブロック26を示している。
(E1)及び(F1)は、それぞれ、擁壁ブロック25、26の平面図であり、(E2)及び(F2)は、それぞれ、その正面図である。
尚、擁壁ブロック25、26の構成は、上述した擁壁ブロック21と基本的に同様であるため、以下、それぞれの相違点を中心に説明する。
(E1)及び(E2)を参照して、擁壁ブロック25は、上述の通り、その正面視における幅がA形ブロックの2倍に設定されており、前壁部41と後壁部44とが4つの控え壁部62~65により接続される構成である。
控え壁部62~65は、それぞれ、天面部62a~65aにおいて突起部66a~66dが形成され、底面部においてスリットが形成されている(図示省略)。
(F1)~(F4)を参照して、擁壁ブロック26は、上述の通り、その正面視における幅がA形ブロックの2倍の幅で且つ半分の高さに設定されている。言い換えれば、F形ブロックは、E形ブロックの高さを半分にしたものに相当する。尚、擁壁ブロック26では、擁壁ブロック21にあった薄肉部(49a、49b)は省略されている。
以上のような各擁壁ブロックによれば、擁壁ブロックを側方に一列に整列して設置し、コンクリートを打設する際、スリットを介して胴込めコンクリートが側方に流通すると共に、スリットに、下位に設置した擁壁ブロックの突起部を係止できるため、胴込めコンクリートの打設が効率的となると共に積み上げが安定する。
(天端ブロック)
図7は、図1で示した擁壁構造体に用いる天端ブロックの詳細を示す図である。(L1)は、天端ブロック30の平面図であり、(L2)は、その正面図であり、(L3)は、その底面図であり、(L4)は、その側面図である。
同図を参照して、天端ブロック30は、最上部に積み上げられた擁壁ブロック20の上に載置される底面部31と、擁壁の前面に沿うように設けられ、底面部31の前方端において上方に延びる前面部32とを有し、側面視略L字形状に形成されている。
底面部31は、前後方向中央部分に凹部33が形成されると共に、中央に矩形の開口部34が形成される構成である。
(隔壁)
図8は、図1に示した擁壁構造体の正面視の構成について説明する図であり、(M1)は、擁壁構造体の正面図、(M2)は、小口止めブロックの上限の連結について説明する拡大図、(M3)は、天端ブロックの切除部分について説明する模式的斜視図であり、(M4)は、(M1)に示すM3部分の断面図である。
擁壁を施工する際、不測の事態により擁壁ブロックが崩落するような場合に一部の崩落が波及するのを防ぐ等の目的で、幅方向に所定の間隔で、隔壁が設けられることがある。
以下、擁壁構造体1において、幅方向に所定の間隔で隔壁5a、5bを設ける構成について説明する。
同図の(M1)を参照して、基礎ブロック10上に擁壁ブロック20を載置したその両側端に隔壁5a、5bが設けられている。
隔壁5a、5bは、擁壁と同じ高さまで複数の小口止めブロックが積み上げられて構成される。以下において、小口止めブロックの詳細について説明する。
(小口止めブロック)
小口止めブロックには、勾配を調整するために積み上げの最下段の基礎として設置する基礎小口止めブロックと、勾配を調整するために設置された基礎小口止めブロックよりも上方に積み上げる基本形の小口止めブロックとがある。
図9は、図8で示した擁壁構造体の隔壁に用いられる小口止めブロックの詳細を示す図である。図9の(N1)は、小口止めブロックの平面図であり、(N2)は、その左側面図であり、(N3)は、その正面図であり、(N4)は、その右側面図であり、(N5)は、その背面図であり、(N6)は、その底面図である。
同図を参照し、小口止めブロック70は、プレキャストコンクリートよりなり、上述の通り、複数個積み上げられて擁壁構造体の隔壁を構成するものであり、上述した基本形のものである。小口止めブロック70は、擁壁の傾斜に沿うように設けられる前壁部71と、前壁部71の一方の側部において後方に延びる側壁部72と、側壁部72の後方部において、水平方向に設けられるセパレーター挿入穴73a、73bとを備えるものである。又、小口止めブロック70は、前壁部71の一方の側部の天面部及び側壁部72の前方部の天面部にかけて形成されるリブ74aと、前壁部71の一方の側部の底面部及び側壁部72の前方部の底面部にかけて形成されるリブ74bと、リブ74a、74bにおいてそれぞれ上下方向に設けられる連結ボルト穴75a、75bとを備えている。更に、小口止めブロック70は、前壁部71と側壁部72との接続部分の天面及び底面にそれぞれ設けられる凹部76a及び凸部77aと、側壁部72の後方部の天面及び底面にそれぞれ設けられる凹部76b及び凸部77bと、側壁部72の後方端に設けられるバール目地78とを備える。
前壁部71の表面には割石模様が施されており、環境調和が図られている。
バール目地78は、隔壁の構築において擁壁の側部に小口止めブロック70を積み上げた際、バール目地78を工具又は治具に係止させて位置の調節をするために設けられている。
同図に示すように、凹部76a、76bを上下方向の上方にし、凸部77a、77bを上下方向の下方にした状態において、小口止めブロック70は、擁壁の右側の隔壁を構成することができる。一方、正面視において上下を180°回転させ、凹部76a、76bを上下方向の下方にし、凸部77a、77bを上下方向の上方にした状態において、小口止めブロック70は、擁壁の左側の隔壁を構成することもできる。
次に、勾配調整のための基礎小口止めブロックについて説明する。
図10は、図8で示した擁壁構造体の隔壁に用いられる基礎小口止めブロックの詳細を示す図である。図10の(O1)は、右用基礎小口止めブロックの左側面図であり、(O2)は、その正面図であり、(O3)は、その右側面図である。又、図10の(P1)は、左用基礎小口止めブロックの左側面図であり、(P2)は、その正面図であり、(P3)は、その右側面図である。
尚、右用基礎小口止めブロック及び左用小口止めブロックの構成は、上述した小口止めブロック70と基本的に同様であるため、以下、それぞれの相違点を中心に説明する。
まず、図10の(O1)~(O3)を参照して、右用基礎小口止めブロック79aは、図9で示した小口止めブロック70の下方に勾配に応じた傾斜部72aを形成したものに相当する。
一方、図10の(P1)~(P3)を参照して、左用基礎小口止めブロック79bは、図9で示した小口止めブロック70の上下を反転させたものにおいて、その下方に勾配に応じた傾斜部72bを形成したものに相当する。
尚、同図の右用基礎小口止めブロック79a及び左用基礎小口止めブロック79bは、3分勾配のものだが、4分勾配及び5分勾配についても、傾斜部72a、72bの傾斜を適宜変更することで製作することができる。
(隔壁の構築時のコンクリート打設)
小口止めブロック70の設置は、擁壁ブロックを1段設置するごとに行う。その際のコンクリートの打設工程について以下説明する。
図11は、隔壁部分のコンクリートの打設工程について説明した模式的水平断面図である。
同図を参照して、隔壁部分のコンクリートの打設の際には、まず、幅方向に一列に設置した擁壁ブロック40の右側に小口止めブロック70を配置すると共に、型枠板83を擁壁ブロック40及び小口止めブロック70の後方に設置する。
擁壁ブロック40の前壁部41と、小口止めブロック70の前壁部71とが面一になるように揃えて配置した場合、小口止めブロック70の側壁部72の後方端は、擁壁ブロック40の後壁部44よりも後方に位置するような寸法関係に設定されている。
このため、型枠板83は、小口止めブロック70の側壁部72の後方端に当接する一方で、擁壁ブロック40の後壁部44の後方と、型枠板83との間には空間88が形成される。尚、以上では特に説明しなかったが、擁壁ブロック40には、後壁部44において、控え壁部42、43の後方に対応する位置に、それぞれ、インバートハンガーやインサート金具が埋設されることでボルト穴86a、86bが形成されているものとする。
次に、セパレーター80を外方から空間88に向けてセパレーター挿入穴73に挿入し、セパレーター80の空間88側の一方端には、横穴付き高ナット82を取り付ける。一方、セパレーター80の他方端に六角ナット81は取り付け、横穴付き高ナット82の横穴82aが、寸切りボルト84aの挿通位置(擁壁ブロック40の後壁部44のボルト穴86aの形成位置)に来るように位置決めを行う。
次に、後方から、寸切りボルト84aを、型枠板83に設けられる開口を通して、更に横穴付き高ナット82の横穴82aを介して、ボルト穴86aに到達するまで挿通する。この状態で、六角ナット85aで寸切りボルト84aを型枠板83に固定する。
同様に、寸切りボルト84bを、型枠板83に設けられる開口を通して、ボルト穴86aに到達するまで挿通し、六角ナット85aで型枠板83に固定する。
最後に、擁壁ブロック40の前壁部41、控え壁部42、43及び後壁部44に囲まれる空間87等に胴込めコンクリートを打設すると共に、擁壁ブロック40の後壁部44の背面と、型枠板83との間に形成される空間88に裏込めコンクリートを打設して、工程は完了する。
以上のように後壁部44は、後壁部44の後方において一方の側方から他方の側方の向きに設置されるセパレーターを固定するための固定手段として、インバートハンガー等が埋設されて形成されるボルト穴86aを備える構成である。
上記の構成によれば、擁壁ブロック40とその側方の型枠としての小口止めブロック70との間においてセパレーター80を配置できるようになるため、コンクリートの打設工程を効率化できる。
又、小口止めブロック70の側壁部72では、後方部が幅広に形成されているものである。これにより、セパレーター挿入穴73の周辺の強度を向上させることができるため、コンクリート打設工程の際の信頼性が高まる。
(上下の小口止めブロックの連結)
上述の通り、複数の小口止めブロックが積み上げられて隔壁5a、5bが構成されるが、小口止めブロックの積み上げの際、上下に隣接する小口止めブロックを連結する方法について以下説明する。
図8の(M2)も併せて参照し、第1の小口止めブロック70aの上に、第2の小口止めブロック70bを積み上げる際、まず、第1の小口止めブロック70aの天面の凹部76aに、第2の小口止めブロック70bの底面の凸部77bをはめ込み、位置合わせする。次に、第2の小口止めブロック70bの底面部のリブ74bの連結ボルト穴75bから第1の小口止めブロック70aの天面部のリブ74aの連結ボルト穴75aにかけて連結ボルト89を挿通させると共に連結ボルト89にナットを取り付ける。このように、連結ボルト穴75a、75bに連結ボルト89を挿入し、上下の小口止めブロック同士を連結ボルト89で連結することができる。このため、コンクリート打設工程の際の信頼性や擁壁施工後の耐久性が高まる。
(天端ブロックの切除)
再び、図7及び図8の(M1)及び(M3)を参照し、天端ブロック30の切除について説明する。まず、図7の特に(L4)に示すように、天端ブロック30は前述のとおり側面視略L字形状に形成されているため、天端ブロック30の前面部32は比較的薄く形成されている。このため、天端ブロック30の前面部32は容易に切除可能である。
上記の構成によれば、図8の(M1)及び(M3)に示すように、天端勾配6に応じて、天端ブロック30の前面部32の上部32aを容易に切除することができる。
このように、天端ブロック30の前面部32を適宜切除することで、天端勾配6に合わせることができるため、擁壁の高さ調整が容易となる。
(擁壁ブロックの表面加工及び目地)
ここで、図4に加えて図8の(M4)を参照し、擁壁ブロック20の前壁部41の表面の表面加工及び表面に設けられる目地について説明する。
擁壁ブロック20の前壁部41の表面には前述のとおり凹凸加工が施される。擁壁ブロック20では、表面に擬石加工が施されている。尚、この凹凸加工は、このような景観配慮のため輝度の標準偏差が11以上となることが望ましいが、特に限定されない。例えば、凹凸加工としては、擬石(大擬石、小擬石)のほかにも、ポーラス、半割、砂面、はつり、洗い出し、等のテクスチャー加工があげられる。尚、滑面を採用することも可能である。
又、コンクリート系の護岸では、明度が大きいと周辺環境から浮き上がることが指摘されており、景観配慮するため明度は6以下を目安にすることが推奨されている。明度の計測は、デジタルカメラで対象を撮影し、画像データのカラーチャートのマンセル値をRGB値に変更したものと、計測範囲のRGB値の平均値とをマッチングしたアウトプットのマンセル値(明度)で判断される。
明度を抑えるため、擁壁ブロック20の前壁部41には、矩形ブロック状の目地が設けられる。この目地のパターンでは、正面視において、上下方向中央部に水平方向に前壁部41を横断する1本のラインが設けられ、このラインを起点として上下方向にそれぞれ2本ずつラインが設けられる。
図8の(M4)を参照して、目地は、最も表面側の幅X1が15mmに設定され、目地の深さX2が20mmに設定され、最も奥側(目地の溝の底)の幅X3が5mmに設定されている。すなわち、目地は、その幅及び深さの比が、3:4に設定されている。これにより目地には影ができやすくなっている。
又、A形の擁壁ブロック21は、縦500mm×横998mmの寸法を有しているが、以上のような表面加工及び目地を有する表面全体をデジタルカメラで撮影し、計測を行うと、平均明度を6.0以下に抑えることも可能である。
以上の構成によれば、平均明度を抑えることができるので、環境により調和した擁壁ブロックとなる。
〔第2の実施の形態〕
図12は、この発明の第2の実施の形態による天端ブロックを示す図であって、図7に対応するものである。
尚、第2の実施の形態による天端ブロック30の構成は、上述した第1の実施の形態による天端ブロックと基本的に同様であるため、以下、相違点を中心に説明する。
同図を参照して、天端ブロック30は、前面部32の背面には、所定の天端勾配に合わせて、切除の基準となる位置を示すガイド溝35a~35cが形成されている
この天端勾配に合わせてガイド溝35a~35cに従って前面部32を切除することで所定の天端勾配に揃えることができるので、効率的な施工を実現できる。
〔第3の実施の形態〕
図13は、この発明の第3の実施の形態によるセパレーターの固定手段の幾つかの例を示す図であって、図11に対応するものである。
尚、第3の実施の形態によるセパレーターの固定手段は、上述した第1の実施の形態によるものと基本的に同様であるため、以下、相違点を中心に説明する。
同図の(1)を参照して、第1の例による擁壁ブロック40は、固定手段は、後壁部44の背面に、インバートハンガー等が埋設されて形成されたボルト穴86と、ボルト穴86に固定され、後方に向けて伸びるデンデンボルト(蝶番ボルト、ロックボルトともいう)91を含む構成である。
小口止めブロック70の側壁部72のセパレーター挿入穴73にはセパレーター80が挿入され、その両端には板ナット(不図示)が取り付けられる。すなわち、セパレーター80の一方端、すなわち、小口止めブロック70のセパレーター挿入穴73側の端部には板ナットが取り付けられ抜け止め状態とされる一方で、他方端は、デンデンボルト91の環状部に挿通され、その外方において板ナットが取り付けられ、固定状態となる。
上記の構成によれば、デンデンボルト91の先端の環状部にセパレーター80を挿通し、板ナット等で擁壁ブロック40と小口止めブロック70とを固定することができる。このためデンデンボルトの長さを調節することで、セパレーターの設置箇所に位置を合わせることができる。
同図の(2)を参照して、第2の例による擁壁ブロック40は、固定手段は、増厚された後壁部92の背面に設けられた取付部としてのボルト穴86を含む構成である。
後壁部92は、背面が、小口止めブロック70のセパレーター挿入穴73の位置と揃う程度に増厚している。
セパレーター93は、擁壁ブロック40側の端部にリング加工が施されている。
上記の構成によれば、固定は以下の通り行う。すなわち、セパレーター93の小口止めブロック70側には板ナットを取り付ける一方で、セパレーター93の擁壁ブロック40側の端部のリングを、後壁部44のボルト穴86の位置に位置合わせする。次に、全ねじの六角ボルト94を、セパレーターの擁壁ブロック40側の端部のリングを通してボルト穴86に取り付けることで、固定が行える。
このように、後壁部92の背面においてセパレーター93を固定することができるため、コンクリートの打設工程を効率化できる。
尚、以上において後壁部92を増厚することについて説明したが、後壁部92の厚みを、設計上の裏込めコンクリートの厚みと実質的に同一の寸法に設定することにより、裏込めコンクリートの打設を省略したり、その打設量を減らしたりすることができる。これにより、施工の効率化が図れると共にコスト的にも有利となる。
同図の(3)を参照して、第3の例による擁壁ブロック40は、固定手段は、更に増厚された後壁部95の背面に設けられた取付部として、インバートハンガー等が埋設されて形成されたボルト穴96を含む構成である。
後壁部95は、背面が、小口止めブロック70の側壁部72の後端部の位置と揃う程度に増厚している。又、後壁部95では、小口止めブロック70側の側面にボルト穴96が設けられている。
上記の構成によれば、固定は以下の通り行う。すなわち、セパレーター80の擁壁ブロック40側の端部を、ボルト穴96に取り付ける一方で、セパレーター80の小口止めブロック70側の端部には板ナットを取り付けることで、固定が行える。
このように、後壁部95の側面においてセパレーター80を固定することができるため、コンクリートの打設工程を効率化できる。
尚、後壁部95を増厚することにより、上記第2の例と同様、裏込めコンクリートの打設を省略したり、その打設量を減らしたりすることができるという相乗効果も得られる。
〔第4の実施の形態〕
図14は、この発明の第4の実施の形態による擁壁ブロックの幾つかの例を示す図であって、図4の及び図5に対応するものである。
尚、第4の実施の形態による擁壁ブロックは、上述した第1の実施の形態によるものと基本的に同様であるため、以下、相違点を中心に説明する。
同図の(1)を参照して、第1の例によるA形の擁壁ブロック21は、更に、後壁部44の両側部下端においてそれぞれ切り欠き部97a、97bが設けられると共に、前壁部41及び後壁部44の間において、離間して設けられた一対の控え壁部42、43の間において、後壁部44の下端には切り欠き部98が設けられる。
切り欠き部97a、97bが設けられることで、擁壁ブロック21を一列に設置した際、隣り合う擁壁ブロック21の隣接部分の下端において開口が形成できる。コンクリート打設の際、この開口から、打設したコンクリートが前後方向に流通するため、コンクリートの打設が効率化する。
切り欠き部98が設けられることで、コンクリート打設の際、切り欠き部98を通じて打設したコンクリートが前後方向に流通するため、コンクリートの打設が効率化する。
同図の(2)を参照して、第2の例によるB形の擁壁ブロック22は、更に、後壁部44の両側部下端においてそれぞれ切り欠き部97a、97bが設けられる。
このように構成すると、上述したように、隣り合う擁壁ブロック22の隣接部分の下端において開口が形成できる。このため、コンクリート打設の際、この開口から、打設したコンクリートが前後方向に流通するため、コンクリートの打設が効率化する。
〔第5の実施の形態〕
図15は、この発明の第5の実施の形態による擁壁構造体の構成を示す施工平面図であり、図16は、図15に示す擁壁構造体のブロック割り付けを示す構造図であり、図17は、図16に示す擁壁構造体の各区画における断面図である。
尚、第5の実施の形態による擁壁ブロックは、上述した第1の実施の形態によるものと基本的に同様であるため、以下、相違点を中心に説明する。
これらの図を参照して、斜面100において構築された擁壁構造体110の構造について説明する。尚、図15では、図中、上に向かう向きを北の方角とする。
斜面100は、平面視において、区画111において下から上(北の方角)に延び、途中で大きく左(西の方角)に屈曲して接続部分(区画112、113)を介して区画114に接続し、更に左に延びる構造となっている。擁壁構造体110は、区画111~114に対応して構築されている。
図17の(S111)を参照して、擁壁構造体110は、区画111において、3分勾配に設定され、基礎には3分勾配の基礎ブロック10aが用いられる。基礎ブロック10aの上に、2段のA形ブロック(21a、21b)が設置され、その上に、1段のC形ブロック(23a)が設置され、更にその上に、調整コンクリートが形成される。
擁壁構造体110の区画111と区画114との接続部分には、区画111側及び区画114側のそれぞれに隔壁121、122が設けられる。
図17の(S112)を参照して、区画112では、3分勾配の基礎ブロック10aの上に、隔壁121が構築される。
図17の(S113)を参照して、区画113では、4分勾配の基礎ブロック10bの上に、隔壁122が構築される。
尚、隔壁121、122は、上述の小口止めブロックを用いた手法により実現してもよいし、現場打のコンクリートにより実現してもよい。
図17の(S114)を参照して、擁壁構造体110は、区画114において、4分勾配に設定され、基礎には4分勾配の基礎ブロック10bが用いられる。基礎ブロック10bの上に、3段のA形ブロック(21a、21b、21c)が設置され、その上に、調整コンクリートが形成される。
尚、特に図示していないが、調整コンクリートは、上述した天端ブロックを用いて形成してもよい。
以上のように、擁壁構造体110はプレキャストコンクリートよりなるブロックを積み上げて構築される3分勾配(第1の勾配)の区画111、112(第1の擁壁)及び4分勾配(第2の勾配)の区画113、114(第2の擁壁)から構築される。
区画111では、第1の勾配に応じて水平な載置面を有する基礎ブロック(第1の基礎ブロック)10aと、基礎ブロック10aの上方に積み上げられる1以上の擁壁ブロック21a、21b、23aとを備える構成である。又、区画112では、3分勾配の擁壁が設けられる。
又、区画113では、4分勾配の擁壁が設けられる。
又、区画114では、第2の勾配に応じて前面から背面にかけて低くなるように傾斜した載置面を有する基礎ブロック10b(第2の基礎ブロック)と、基礎ブロック10bの上方に積み上げられる1以上の擁壁ブロック21a、21b、21cとを備える。
以上の構成によれば、擁壁の勾配が途中で変化する場合でも、それぞれ勾配に対応した基礎ブロックを用いることで擁壁構造体を構築することができるため、施工の効率性を向上させることができる。
〔第6の実施の形態〕
図18は、この発明の第6の実施の形態による擁壁ブロックを示す図であって、図4に対応するものである。図18の(1)は、擁壁ブロック27の平面図であり、(2)は、その正面図であり、(3)は、その底面図であり、(4)は、その側面図である。
尚、第6の実施の形態による擁壁ブロックは、上述した第1の実施の形態によるものと基本的に同様であるため、以下、相違点を中心に説明する。
図18を参照して第1の実施の形態による擁壁ブロックが積み上げ工仕様のものであったのに対して、擁壁ブロック27は、張工仕様のものである。
プレキャストコンクリートよりなる擁壁ブロック27は、擁壁の前面を構成する前壁部41と、前壁部41の背面において、両側端部からそれぞれ離間した箇所から後方に延びる一対の控え壁部101、102と、一対の控え壁部101、102それぞれの後方端部に接続される一対の支持部103、104とを備える。一対の控え壁部101、102は、それぞれ、前壁部41の天面及び底面とそれぞれ面一に形成された天面部101a、102a及び底面部101b、102bと、天面部101a、102aに形成される突起部105、106と、底面部101b、102bから上方に向けて延びるように形成されるスリット107、108とを有する。
このような張工ブロックによっても、スリットを介して胴込めコンクリートが側方に流通すると共に、スリットに、下位に設置した擁壁ブロックの突起部を係止できるため、胴込めコンクリートの打設が効率的となると共に設置が安定する。
張工仕様の擁壁ブロック27を用いた擁壁構造体の施工に際しては、勾配に応じた基礎ブロックを設定したのち、第1の実施の形態で図1を用いて説明したような工法により、擁壁ブロック27を積み上げる。擁壁ブロック27の積み上げが完了したら、最上位の擁壁ブロック27の上方に天端コンクリートを打設する。以上により施工が完了する。
〔変形例〕
尚、上記の各実施の形態では、特定の勾配・構造の擁壁や、寸法及び形状の各種ブロックについて説明したが、これに限られない。
又、上記の各実施の形態では、A形及びE形の擁壁ブロックにおいて、第1の薄肉部及び第2の薄肉部を設ける構成であると説明したが、これに限られず、省略してもかまわない。又、逆に、B形、C形、D形、F形の擁壁ブロックにおいて、第1の薄肉部及び第2の薄肉部を設けることもできる。
更に、上記の各実施の形態では、小口止めブロックが特定の構成を有することについて説明したがこれに限られない。例えば、小口止めブロックからは、リブや、凹部及び凸部を省略してもかまわない。
更に、上記の第1の実施の形態では、裏込めコンクリートを打設する工法について説明したが、これに限られない。裏込めコンクリートを打設しない工法も採用可能である。
更に、上記の第2の実施の形態では、天端ブロックにガイド溝を設ける構成について説明したが、切除の基準となる位置を示すガイドであれば溝状のものでなくてもかまわない。
更に、上記の第4の実施の形態では、A形及びB形の擁壁ブロックに、切り欠き部を設けることについて説明したがこれに限られない。C形、D形、E形、F形の擁壁ブロックに切り欠き部を設けることも可能である。又、A形の擁壁ブロックにおいて、切り欠き部は、後壁部の両側部下端と、離間して設けられた一対の控え壁部の間における後壁部の下端との両方に設けていたがいずれか1か所に設ける構成であってもかまわない。
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、プレキャストコンクリートよりなるブロックを積み上げて構築される擁壁構造体であって、擁壁の勾配に応じて前面から背面にかけて低くなるように傾斜した、又は、水平な載置面を有する基礎ブロックと、擁壁の勾配に応じた前面を有し、基礎ブロックの上方に積み上げられる1以上の擁壁ブロックと、最上部に積み上げられた擁壁ブロックの上に載置される天端ブロックとを備え、天端ブロックは、最上部に積み上げられた擁壁ブロックの上に載置される底面部と、擁壁の前面に沿うように設けられ、底面部の前方端において上方に延びる前面部とを有し、天端ブロックの前面部は、前面視において、前面部の背面において、切除の基準となる位置を示すように形成されたガイドに沿って、天端勾配に対応するように上部を切除されているものである。
請求項16記載の発明は、プレキャストコンクリートよりなるブロックを積み上げて構築される第1の勾配を有する第1の擁壁及び第2の勾配を有する第2の擁壁から構築される擁壁構造体であって、第1の擁壁は、第1の勾配に応じて前面から背面にかけて低くなるように傾斜した、又は、水平な載置面を有する第1の基礎ブロックと、第1の基礎ブロックの上方に積み上げられる1以上の擁壁ブロックと、最上部に積み上げられた擁壁ブロックの上に載置される第1の天端ブロックとを備え、第2の擁壁は、第2の勾配に応じて前面から背面にかけて低くなるように傾斜した、又は、水平な載置面を有する第2の基礎ブロックと、第2の基礎ブロックの上方に積み上げられる1以上の擁壁ブロックと、最上部に積み上げられた擁壁ブロックの上に載置される第2の天端ブロックとを備え、第1及び第2の天端ブロックの少なくとも一方の前面部は、前面視において、天端勾配に応じて上部を切除されているものである。
以上説明したように、請求項1記載の発明は、多様な勾配に対応し、且つ、天端のコンクリート打設時に前面部が現場型枠の役割を兼ねるものとなるため、効率的で、且つ、天端のコンクリート打設時に現場型枠及び高所作業をせずともよい、より安全な施工方法が採用できる擁壁構造体となる。又、天端ブロックの前面部を適宜切除することで、天端勾配に合わせることができるため、効率的な施工を実現できる。更に、ガイドに従って切除することで天端ブロックを所定の天端勾配に揃えることができるため、効率的な施工を実現できる。
請求項16記載の発明は、擁壁の勾配が途中で変化する場合でも、それぞれ勾配に対応した基礎ブロックを用いることで擁壁構造体を構築することができるため、施工の効率性を向上させることができる。又、天端ブロックの前面部を適宜切除することで、天端勾配に合わせることができるため、効率的な施工を実現できる。