JP2022158999A - ポリオレフィン微多孔膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】二次電池用セパレータとして用いた場合、電池の異常発熱に対し高い安全性を付与することが可能なポリオレフィン微多孔膜に関する。【解決手段】ポリエチレン系樹脂と、該ポリエチレン系樹脂に非相溶な非晶性ポリマーを含み、メルトダウン温度が155℃以上、示差走査熱量計で155℃~250℃の範囲にピークを持たないポリオレフィン微多孔膜。【選択図】なし
Description
本発明はポリオレフィン微多孔膜に関し、特に二次電池用セパレータとして用いた際に、優れた電池安全性を有するポリオレフィン微多孔膜に関する。
微多孔膜は、ろ過膜、透析膜などのフィルター、二次電池用セパレータや電解コンデンサー用のセパレータなど種々の分野に用いられる。これらの中でも、ポリオレフィンを樹脂材料とするポリオレフィン微多孔膜は、耐薬品性、絶縁性、機械的強度などに優れ、近年、二次電池用セパレータとして広く用いられる。
二次電池、例えばリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いため、パーソナルコンピュータ、携帯電話などに用いる電池として広く使用されている。また、二次電池は、電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用電源、定置用蓄電池としても期待されている。
近年の高エネルギー密度設計のリチウムイオン二次電池では、使用される電極材料の熱安定性が低い傾向にあり、二次電池用セパレータには耐熱性向上による異常発熱時の短絡防止に対する要求が高まってきている。
特許文献1は、ポリエチレンとポリプロピレンを必須成分とする微多孔膜と、ポリエチレン微多孔膜を積層することで、ポリエチレン微多孔膜の有するシャットダウン特性とポリプロピレン含有層の有する耐熱性を両立した二次電池用セパレータに関する。
特許文献2は、ジシクロペンタジエンを含む多環式ノルボルネン単量体の開環重合体から成る微多孔膜であり、二次電池用セパレータとして用いた場合に異常発熱時の熱収縮を抑制することができる。
特許文献1に対し、ポリプロピレンを含むことでポリエチレン単独の微多孔膜に対して耐熱性は向上するものの、ポリプロピレン結晶の融解時に大きな収縮変形が起こり、高エネルギー密度設計の電池に対して異常発熱時の安全性確保が不十分となる可能性がある。特許文献2は高耐熱性の樹脂から成る微多孔膜であり、耐熱性に優れるものの透過性や膜強度といったセパレータとしての基本性能に課題が残り、また、結晶成分が融解する温度域において急激な収縮変形が起こることが懸念され、異常発熱に対する安全性確保が不十分となる可能性がある。
本発明の課題は、上記を解決することにある。すなわち電池用セパレータとして用いた場合、電池の異常発熱に対し高い安全性を付与することが可能なポリオレフィン微多孔膜を提供することにある。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。なお、以下の説明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
〔1〕ポリエチレン系樹脂と、該ポリエチレン系樹脂に非相溶な非晶性ポリマーを含み、メルトダウン温度が155℃以上、示差走査熱量計(DSC)で得られるDSC曲線において、155℃~250℃の範囲にピークを持たないポリオレフィン微多孔膜。
〔2〕ゲル浸透クロマトグラフィー法で測定されるポリエチレンの分子量分布曲線中に含まれる分子量200万以上の成分の比率が15%以下である、前記〔1〕に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔3〕105℃、8時間後の熱収縮率が10%以下である前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔4〕シャットダウン温度が138℃以下である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔5〕メルトダウン温度が165℃以上である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔6〕ポリエチレン系樹脂に非相溶な非晶性ポリマーが環状オレフィン系ポリマーである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔7〕ポリエチレン系樹脂50~99質量%と、ポリエチレン系樹脂に非相溶なポリマー1~50質量%とを含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔8〕ポリエチレン系樹脂から成る第一相が連続構造を有し、該ポリエチレン系樹脂に非相溶なポリマーから成る第二相が非連続構造となっており、第二相は10~300nmのドメイン径を有する、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔9〕厚み1μm換算の透気度が25秒/100cm3以下である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔10〕厚み1μm当たりの突刺強度が10gf以上である、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔11〕厚みが20μm以下である、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔1〕ポリエチレン系樹脂と、該ポリエチレン系樹脂に非相溶な非晶性ポリマーを含み、メルトダウン温度が155℃以上、示差走査熱量計(DSC)で得られるDSC曲線において、155℃~250℃の範囲にピークを持たないポリオレフィン微多孔膜。
〔2〕ゲル浸透クロマトグラフィー法で測定されるポリエチレンの分子量分布曲線中に含まれる分子量200万以上の成分の比率が15%以下である、前記〔1〕に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔3〕105℃、8時間後の熱収縮率が10%以下である前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔4〕シャットダウン温度が138℃以下である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔5〕メルトダウン温度が165℃以上である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔6〕ポリエチレン系樹脂に非相溶な非晶性ポリマーが環状オレフィン系ポリマーである、前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔7〕ポリエチレン系樹脂50~99質量%と、ポリエチレン系樹脂に非相溶なポリマー1~50質量%とを含む、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔8〕ポリエチレン系樹脂から成る第一相が連続構造を有し、該ポリエチレン系樹脂に非相溶なポリマーから成る第二相が非連続構造となっており、第二相は10~300nmのドメイン径を有する、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔9〕厚み1μm換算の透気度が25秒/100cm3以下である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔10〕厚み1μm当たりの突刺強度が10gf以上である、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
〔11〕厚みが20μm以下である、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
本発明に係るポリオレフィン微多孔膜は、高い耐熱性と高温での形状保持性能を有する。そのため、二次電池用セパレータとして用いた際に、電池の異常発熱に対し高い安全性を付与することが可能なポリオレフィン微多孔膜を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下説明する実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜(以下、単に「微多孔膜」と称することがある。)は、ポリエチレン系樹脂と、該ポリエチレン系樹脂に非相溶な非晶性ポリマーを含み、メルトダウン温度が155℃以上、示差走査熱量計(DSC)で得られるDSC曲線において、155℃~250℃の範囲にピークを持たない。
微多孔膜のメルトダウン温度は後述の方法により測定することができる。本発明の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜のメルトダウン温度は、155℃以上であり、好ましくは165℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上である。メルトダウン温度が上記範囲である場合、微多孔膜は耐熱性に優れる。すなわち、微多孔膜を電池用セパレータとして使用した際に電池の異常発熱時に電極の絶縁が維持され、安全性に優れた電池とすることができる。なお、メルトダウン温度の上限は特に限定されないが、例えば250℃以下、さらに220℃以下であることが挙げられる。メルトダウン温度を上記範囲とすることで、シャットダウン性との両立が容易となる。メルトダウン温度を上記範囲とするには、微多孔膜の原料組成、製膜条件を後述する範囲内とすることが好ましい。メルトダウン温度とはポリオレフィン微多孔膜を昇温加熱し、後述するシャットダウン現象により閉孔した微多孔膜に更に昇温を続けた際に、穿孔や収縮が生じることで電極が絶縁されなくなる温度である。
本発明の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜は、示差走査熱量計(DSC)で得られるDSC曲線において、155℃~250℃の範囲にピークを持たない。155℃~250℃の範囲にピークを持たないことにより、微多孔膜は上記温度範囲内で膜形状が安定し、異常発熱時における安全性確保に対し優れた性能を有する。上述した155℃~250℃の範囲のピーク有無と電池異常発熱時の安全性が関係する要因は定かではないが、結晶融解などの相転移時には膜形態や膜性能の急激な変化が起こることで、電極間のイオンパスが生じてしまうと考えている。示差走査熱量計での155℃~250℃の範囲におけるピークの有無は、後述する方法により測定し確認することができる。
本発明の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られるポリエチレンの分子量分布曲線における、分子量200万以上の成分の比率が15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは7%以下、特に好ましくは5%以下である。分子量200万以上のポリエチレン成分の比率が上記範囲である場合、高温下での微多孔膜の変形が抑制され、微多孔膜を電池用セパレータとして使用した際に、安全性に優れた電池とすることができる。分子量200万以上の成分の比率の下限は特に設けないが、0.001%以上であれば製膜性や膜強度が良好となるため好ましい。ポリエチレンの分子量分布曲線における、分子量200万以上の成分の比率を上記範囲とするには、微多孔膜の原料組成、製膜条件を後述する範囲内とすることが好ましい。また、ポリエチレンの分子量分布曲線における、分子量200万以上の成分の比率は後述する方法により測定、算出することができる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は105℃、8時間加熱した際の熱収縮率が好ましくは10%以下であり、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは4%以下である。105℃、8時間後の熱収縮率について下限は特に設けないが、微多孔膜の平面性が良好となることから、-0.1%以上であることが好ましい。105℃、8時間後の熱収縮率を上記範囲とすることにより、微多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合、電池異常発熱時のセパレータ収縮により発生する、端部短絡を抑制することができる。105℃、8時間後の熱収縮率は、製造過程において、原料の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とできる。また、105℃、8時間後の熱収縮率は、後述の方法により算出することができる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜のシャットダウン温度は好ましくは138℃以下であり、より好ましくは136℃以下、さらに好ましくは135℃以下である。シャットダウン温度を上記範囲に制御することにより、電池用セパレータとして使用した場合に電池安全性に優れる。シャットダウン温度の下限は特に限定されないが、透過性との両立が容易となることから110℃以上であることが好ましい。シャットダウン温度を上記範囲とするには、微多孔膜の原料組成、製膜条件を後述する範囲とすることが好ましい。シャットダウン温度とは後述の方法にて測定される温度であり、ポリオレフィン微多孔膜を昇温加熱した際に、樹脂部が収縮、融解することで多孔構造が閉鎖され、電池セパレータとして使用した場合に実質的に放電、充電ができなくなる温度である。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン系樹脂から成る第一相が連続構造を有し、これに非相溶なポリマーから成る第二相が非連続構造となっていることが好ましい。また、非連続構造を形成する第二相のドメイン径は、10~300nmであることが好ましく、20nm~250nmであることがより好ましく、20nm~150nm以下であることがさらに好ましく、20nm~100nmであることが特に好ましい。
第二相が上述のドメイン径を有することで、均一な孔構造が形成され、ポリオレフィン微多孔膜の強度と透過性が両立でき、微分散した第二相により優れた耐熱性を付与することができる。微多孔膜中の相分離構造は後述の方法により観察し、かつドメイン径の算出をすることができる。非連続構造を形成する第二相のドメイン径は、第二相を形成する樹脂成分や製造工程におけるその配合割合、混錬条件、延伸条件などを調節することにより、上記範囲とできる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、厚み1μm換算の透気度が好ましくは25秒/100cm3以下、より好ましくは15秒/100cm3以下、さらに好ましくは12秒/100cm3以下、特に好ましくは10秒/100cm3以下である。厚み1μm換算の透気度の下限は特に設けないが、膜強度との両立が容易となることから1秒/100cm3以上であることが好ましい。厚み1μm換算の透気度を上述の範囲とすることにより、微多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合に充放電特性に優れた微多孔膜とすることができる。厚み1μm換算の透気度は、製造過程において、原料の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とできる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、厚み1μm換算の突刺強度が好ましくは10gf以上であり、より好ましくは15gf以上であり、それより好ましくは20gf以上、さらに好ましくは25gf以上、特に好ましくは30gf以上である。厚み1μm換算の突刺強度の上限は特に限定されないが、シャットダウン温度を適正な範囲に制御することが容易となることから、例えば100gf以下であることが好ましい。厚み1μm換算の突刺強度が上記範囲である場合、微多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合に外部からの衝撃に強く、安全性に優れる。厚み1μm換算の突刺強度は、製造過程において、原料の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とできる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の厚みは、用途によって適宜調整可能であるが、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下、特に好ましくは8μm以下である。また、好ましくは3μm以上であり、より好ましくは5μm以上である。ポリオレフィン微多孔膜の厚みを上述の範囲とすることにより、二次電池用セパレータとして用いた場合に安全性と高電池容量を両立することができる。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、好ましくは35%以上であり、より好ましくは40%以上、さらに好ましくは45%以上、特に好ましくは50%以上である。空孔率の上限は特に設けないが、膜強度の低下を抑制できることから、80%以下であることが好ましい。空孔率が上記範囲であることにより、微多孔膜を二次電池用セパレータとして使用した場合の出力特性に優れる。空孔率は、製造過程において、原料の配合割合や延伸倍率、熱固定条件などを調節することにより、上記範囲とできる。
本発明の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の180℃での抵抗値は、好ましくは100Ω・cm2以上であり、より好ましくは3000Ω・cm2以上、さらに好ましくは7000Ω・cm2以上、特に好ましくは10000Ω・cm2以上である。180℃での抵抗値が上記範囲である場合、微多孔膜は耐熱性に優れる。すなわち、微多孔膜を電池用セパレータとして使用した際に電池の異常発熱時に電極の絶縁が維持され、安全性に優れた電池とすることができる。なお、180℃での抵抗値の上限は特に限定されないが、例えば100000Ω・cm2℃以下、さらに30000Ω・cm2℃以下であることが挙げられる。180℃での抵抗値を上記範囲とするには、微多孔膜の原料組成、製膜条件を後述する範囲内とすることが好ましい。180℃での抵抗値は後述する方法により測定することができる。
本発明の実施形態に係るポリオレフィン微多孔膜の180℃での抵抗値は、好ましくは100Ω・cm2以上であり、より好ましくは3000Ω・cm2以上、さらに好ましくは7000Ω・cm2以上、特に好ましくは10000Ω・cm2以上である。180℃での抵抗値が上記範囲である場合、微多孔膜は耐熱性に優れる。すなわち、微多孔膜を電池用セパレータとして使用した際に電池の異常発熱時に電極の絶縁が維持され、安全性に優れた電池とすることができる。なお、180℃での抵抗値の上限は特に限定されないが、例えば100000Ω・cm2℃以下、さらに30000Ω・cm2℃以下であることが挙げられる。180℃での抵抗値を上記範囲とするには、微多孔膜の原料組成、製膜条件を後述する範囲内とすることが好ましい。180℃での抵抗値は後述する方法により測定することができる。
以下、本実施形態のポリオレフィン微多孔膜の具体的な構成について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜はポリエチレン系樹脂を含み、ポリエチレン系樹脂が主成分であることがより好ましい。(以下、ポリオレフィン微多孔膜に用いるポリエチレン系樹脂を「樹脂A」と称する。)。尚、ここで示す主成分とはポリオレフィン微多孔膜を構成する成分の内最も質量%表示での含有量が多いものを言う。また、樹脂Aとなるポリエチレン系樹脂を2種以上含む場合には、それらポリエチレン系樹脂の合計の含有量を樹脂Aの含有量とし、かかる合計の含有量が、ポリオレフィン微多孔膜を構成する成分の内最も質量%表示での含有量が多いものであればよい。
樹脂Aとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・α-オレフィン共重合体などのポリエチレン系樹脂を挙げることができる。尚、前記α-オレフィンとしては、エチレンと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ペンテン、1-ヘプテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等を挙げることができる。上述の樹脂の中でも樹脂Aは透過性と耐熱性両立の観点から高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンを含むこと好ましい。樹脂Aは上述の樹脂の中から2種類以上選択して用いてもよい。
樹脂Aは溶融押出特性や延伸加工特性の点から、高密度ポリエチレン(密度:0.940g/m3以上0.970g/m3以下)を含むことが好ましい。樹脂Aに用いられる高密度ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体のみならず、融点や結晶性を低下させるために、他のα-オレフィンを含有する共重合体であっても良い。α-オレフィンとしてはプロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、オクテン、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等が挙げられる。また、α-オレフィンは13C-NMRで測定することで確認できる。
樹脂Aとして上述の高密度ポリエチレンを用いる場合、高密度ポリエチレンの重量平均分子量は、好ましくは1×104以上であり、より好ましくは1×105以上、さらに好ましくは3.0×105以上、特に好ましくは1×106以上である。また、高密度ポリエチレンの重量平均分子量の上限は、好ましくは3.0×106以下、より好ましくは2.0×106以下、さらに好ましくは1.7×106以下である。高密度ポリエチレンの重量平均分子量を上記範囲とすることにより、製造された微多孔膜を電池用セパレータとして使用した場合、異常発熱時の安全性に優れる。
樹脂Aとして上述の高密度ポリエチレンを用いる場合、高密度ポリエチレンの融点は125℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。また、137℃以下であることが好ましく、135℃以下であることがより好ましい。高密度ポリエチレンの融点を上記範囲とすることにより、低いシャットダウン温度と優れた透過性を両立することができる。
ポリオレフィン微多孔膜中の樹脂Aの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、また、好ましくは99質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95%以下である。ポリオレフィン微多孔膜中の樹脂Aの含有量を上記範囲とすることにより微多孔膜の強度、透過性、耐熱性、シャットダウン特性の制御が容易となる。
尚、ポリオレフィン微多孔膜を製造するにあたり、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製する際に、例えば可塑剤として流動パラフィン等の成膜用溶剤が用いられる。かかる成膜用溶剤は微多孔膜の製造工程において除去されるため、ポリオレフィン系樹脂組成物の組成と、ポリオレフィン微多孔膜の組成とは異なる。すなわち、ポリオレフィン微多孔膜中の樹脂Aの含有量とは、ポリオレフィン系樹脂組成物の組成から、成膜用溶剤等の除去される成分を抜いた組成に対する樹脂Aの含有量に相当する。
本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜は、電池用セパレータとして用いた際の安全性を高めるため、樹脂Aとは異なる樹脂(以下、「樹脂B」と称する。)を混合する。樹脂Bは樹脂Aに対し非相溶であり、微多孔膜中で相分離構造を形成する。また樹脂Bは非晶性樹脂である。
樹脂Bに用いる非晶性樹脂として例えばシクロアルカン、シクロアルケンなどの脂環構造を繰り返し単位に含有する環状オレフィン系ポリマーや、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリブタジエン、スチレン系エラストマー、ポリスルホン、ABS樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。上述の樹脂の中でも、樹脂Bは脂環構造を繰り返し単位に含有する環状オレフィン系ポリマーであることがより好ましい。樹脂Bを上述のポリマーから選択することにより、微多孔膜中において均一微細なドメイン構造が形成され、微多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合、イオン透過性などの電池性能を損なうことなく、異常発熱時の安全性に優れた電池とすることができる。また、樹脂Bは上述の樹脂の中から2種類以上選択して用いてもよい。
樹脂Bに用いる非晶性樹脂のガラス転移温度は70℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましく、170℃以上であることが特に好ましい。また、ガラス転移温度は好ましくは250℃以下であり、より好ましくは230℃以下、更に好ましくは210℃以下である。樹脂Bのガラス転移温度を上記範囲とすることにより、溶融混錬樹脂の冷却時に樹脂A相、樹脂B相、可塑剤相から成る相分離構造が均一微細に形成され、得られる微多孔膜は耐熱性により優れたものとなる。樹脂Bにはポリオレフィン微多孔膜中での分散状態を改善することを目的に、ガラス転移温度の異なる2種類以上の非晶性樹脂を用いても良い。
ポリオレフィン微多孔膜中の樹脂Bの含有量は、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。また、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。樹脂Bの含有量を上述の範囲とすることにより、微多孔膜中の樹脂Bの分散状態が良好となり、耐熱性と透過性のバランス制御が容易となる。 本発明の実施形態にかかるポリオレフィン微多孔膜の層構成は、単層膜であっても、少なくとも2種類の異なる特性を有する層から成る積層膜であってもよい。積層膜とする場合には、少なくとも1つの層は前述の樹脂A及び樹脂Bから成る層から成ることが好ましい。
次に、本発明の実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の製造方法について示す。ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、例えば、乾式の製膜方法及び湿式の製膜方法が挙げられる。本実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、膜の構造及び物性の制御の観点から湿式の製膜方法が好ましい。
以下、湿式でのポリオレフィン微多孔膜の製造方法について説明する。なお、以下の説明は、製造方法の一例であって、この方法に限定されるものではない。
本発明の実施形態におけるポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、下記の工程(1)~(5)を順に含むことが好ましく、下記の工程(6)をさらに含んでもよく、工程(6)の後、又は工程(6)に代えて、さらに下記の工程(7)を含むこともできる。
(1)前記ポリオレフィン系樹脂、成膜用溶剤を溶融混練し、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製する工程
(2)前記ポリオレフィン系樹脂組成物を押出し、冷却しゲル状シートを形成する工程
(3)前記ゲル状シートを予熱し、延伸する第1の延伸工程
(4)前記延伸後のゲル状シートから成膜用溶剤を除去する工程
(5)前記成膜用溶剤除去後のシートを乾燥する工程
(6)前記乾燥後のシートを予熱し、延伸する第2の延伸工程
(7)前記乾燥後のシートを熱処理する工程
(1)ポリオレフィン系樹脂組成物の調製工程
樹脂A及び樹脂Bを、可塑剤(成膜用溶剤)に加熱溶解させたポリオレフィン系樹脂組成物を調製する。可塑剤としては、樹脂A及び樹脂Bを均一に分散させることができる溶剤であれば特に限定されないが、比較的高倍率の延伸を可能とするために、溶剤は室温で液体であることが好ましい。溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステル等が挙げられる。液体溶剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。
(2)前記ポリオレフィン系樹脂組成物を押出し、冷却しゲル状シートを形成する工程
(3)前記ゲル状シートを予熱し、延伸する第1の延伸工程
(4)前記延伸後のゲル状シートから成膜用溶剤を除去する工程
(5)前記成膜用溶剤除去後のシートを乾燥する工程
(6)前記乾燥後のシートを予熱し、延伸する第2の延伸工程
(7)前記乾燥後のシートを熱処理する工程
(1)ポリオレフィン系樹脂組成物の調製工程
樹脂A及び樹脂Bを、可塑剤(成膜用溶剤)に加熱溶解させたポリオレフィン系樹脂組成物を調製する。可塑剤としては、樹脂A及び樹脂Bを均一に分散させることができる溶剤であれば特に限定されないが、比較的高倍率の延伸を可能とするために、溶剤は室温で液体であることが好ましい。溶剤としては、ノナン、デカン、デカリン、パラキシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族、環式脂肪族又は芳香族の炭化水素、および沸点がこれらに対応する鉱油留分、並びにジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の室温では液状のフタル酸エステル等が挙げられる。液体溶剤の含有量が安定なゲル状シートを得るために、流動パラフィンのような不揮発性の液体溶剤を用いるのが好ましい。
樹脂A及び樹脂Bと可塑剤の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂組成物全質量に対し、樹脂Aと樹脂Bの合計の含有量は10~50質量%であることが好ましい。樹脂Aと樹脂Bの合計の含有量を上記範囲とすることにより、後述の溶融混錬時に樹脂A/樹脂B/可塑剤の分散状態が良好となり、得られる微多孔膜の強度、透過性、耐熱性に優れる。また、シート状に成形する際に口金の出口でスウェルやネックイン量が適正となり、シートの成形性や製膜性も良好となる。
ポリオレフィン系樹脂組成物中の樹脂Bの含有量は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下である。また、樹脂Bの含有量は好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。ポリオレフィン系樹脂組成物中の樹脂Bの含有量を上記範囲とすることにより、樹脂Bがポリオレフィン系樹脂組成物中で良好な分散状態を形成し、強度、透過性、耐熱性がより優れたポリオレフィン微多孔膜を得ることができる。
樹脂A及び樹脂Bと可塑剤の均一な溶融混練方法は、特に限定されないが二軸押出機中で行うことが好ましい。
混練時の樹脂温度は140℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは160℃以上であり、上限は、250℃以下であることが好ましく、240℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましい。混錬時のポリオレフィン系樹脂組成物の温度を上記範囲とすることにより樹脂の劣化による強度低下を防ぐことができ、樹脂A、樹脂Bと可塑剤を均一に溶融混錬することができる。
混練時の樹脂温度は140℃以上であることが好ましく、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは160℃以上であり、上限は、250℃以下であることが好ましく、240℃以下であることがより好ましく、230℃以下であることがさらに好ましい。混錬時のポリオレフィン系樹脂組成物の温度を上記範囲とすることにより樹脂の劣化による強度低下を防ぐことができ、樹脂A、樹脂Bと可塑剤を均一に溶融混錬することができる。
また二軸押出機での混錬時、押出質量Q(kg/hr)とスクリュー回転速度Ns(rpm)の比から算出されるQ/Nsは、0.01以上であることが好ましく、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上である。これにより混練時の樹脂劣化による強度低下を防ぐことができる。また、上限は5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい、これによりポリオレフィン系樹脂組成物に十分なせん断を加えることができ、均一な分散状態を得ることができる。
(2)ゲル状シートの形成工程
ポリオレフィン系樹脂組成物の溶融物を押出機からダイに供給し、シート状に押し出す。
ポリオレフィン系樹脂組成物の溶融物を押出機からダイに供給し、シート状に押し出す。
押出方法は、フラットダイ法及びインフレーション法のいずれでもよい。また、同一または異なる組成の複数のポリオレフィン系樹脂組成物を、複数の押出機から1つのマルチマニホールド型の複合Tダイへ供給し層状に積層し、積層構成のシート状に押出してもよい。押出温度は140~250℃が好ましく、押出速度は0.2~15m/分が好ましい。
シート状に溶融押出された樹脂組成物は、冷却固化されることによりゲル状シートとなる。冷却工程では10~50℃まで冷却するのが好ましい。これは、最終冷却温度を結晶化終了温度以下とするのが好ましいためで、高次構造を細かくすることで、その後の延伸において均一延伸が行いやすくなる。また、この時の冷却速度は50℃/分以上の速度で行うのが好ましく、より好ましくは100℃/分以上、さらに好ましくは150℃/分以上である。一般に冷却速度が遅いと、比較的大きな結晶が形成されるので、ゲル状シートの高次構造が粗くなり、それを形成するゲル構造も大きなものとなる。対して冷却速度が速いと、比較的小さな結晶が形成されるので、ゲル状シートの高次構造が密となり、均一延伸に加え、膜の強度および伸度の向上につながる。この時の冷却方法としては冷風、冷却水、その他の冷却媒体に直接接触させる方法、冷媒で冷却したロールに接触させる方法、キャスティングドラム等を用いる方法等がある。
(3)第1の延伸工程
次に、得られたゲル状シートを少なくとも一軸方向に延伸するが、延伸前にゲル状シートを予熱することが好ましい。予熱温度は90~130℃とするのが好ましく、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上であり、また、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは117℃以下である。予熱温度を上記条件で行うことにより、延伸工程において均一に延伸され均一微細な孔構造を有するポリオレフィン微多孔膜を得ることができる。
次に、得られたゲル状シートを少なくとも一軸方向に延伸するが、延伸前にゲル状シートを予熱することが好ましい。予熱温度は90~130℃とするのが好ましく、より好ましくは105℃以上、さらに好ましくは110℃以上であり、また、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは117℃以下である。予熱温度を上記条件で行うことにより、延伸工程において均一に延伸され均一微細な孔構造を有するポリオレフィン微多孔膜を得ることができる。
予熱後のゲル状シートは、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸するのが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次二軸延伸及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次二軸延伸の組合せ)のいずれでもよい。
本工程における延伸倍率(面積延伸倍率)は、16倍以上が好ましく、25倍以上がより好ましい。また、延伸倍率は機械長手方向(MD方向)及び機械幅方向(TD方向)のいずれでも4倍以上となることが好ましく、5倍以上であることがより好ましい。MD方向とTD方向での延伸倍率は、互いに同じでも異なってもよい。面積延伸倍率を上記範囲とすることにより機械的強度と透過性を高めることができる。また、本工程での面積延伸倍率は好ましくは100倍以下、より好ましくは49倍以下であり、これにより破膜を防ぐと同時に、フィルム面内での耐熱成分の分散状態が良好となり、二次電池用セパレータとして用いた場合に高い耐熱性が得られる。なお、本工程における延伸倍率とは、本工程直前のポリオレフィン微多孔膜を基準として、次工程に供される直前のポリオレフィン微多孔膜の面積延伸倍率のことをいう。
本工程の延伸温度は、ポリエチレン系樹脂の結晶分散温度(TCD)~(TCD+30)℃の範囲内にするのが好ましく、(TCD+5)℃以上がより好ましく、(TCD+10)℃以上が特に好ましく、また、(TCD+28)℃以下がより好ましく、(TCD+26)℃以下が特に好ましい。延伸温度が前記範囲内であると、延伸による破膜が抑制され、高倍率の延伸ができる。
結晶分散温度(TCD)は、ASTM D4065による動的粘弾性の温度特性測定により求められる。ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン系樹脂を用いる場合、超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレン及びポリエチレン樹脂組成物は約100~110℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度を90~130℃とするのが好ましく、105℃以上がより好ましく、110℃以上がさらに好ましく、また、120℃以下がより好ましく、117℃以下がさらに好ましい。
以上のような延伸によりポリエチレン-ラメラ間に開裂が起こり、ポリエチレン系樹脂相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。
(4)成膜用溶剤の除去工程
洗浄溶媒を用いて、成膜用溶剤の除去(洗浄)を行う。ポリオレフィン系樹脂相は成膜用溶剤相と相分離している。そのため、成膜用溶剤を除去すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔(空隙)を有する多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒およびこれを用いた成膜用溶剤の除去方法は公知であるので説明を省略する。例えば特許第2132327号公報や特開2002-256099号公報に開示の方法を利用することができる。
洗浄溶媒を用いて、成膜用溶剤の除去(洗浄)を行う。ポリオレフィン系樹脂相は成膜用溶剤相と相分離している。そのため、成膜用溶剤を除去すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔(空隙)を有する多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒およびこれを用いた成膜用溶剤の除去方法は公知であるので説明を省略する。例えば特許第2132327号公報や特開2002-256099号公報に開示の方法を利用することができる。
(5)乾燥工程
成膜用溶剤を除去したポリオレフィン微多孔膜を、加熱乾燥法又は風乾法により乾燥する。乾燥温度はポリオレフィン系樹脂の結晶分散温度(TCD)以下であることが好ましく、特にTCDより5℃以上低いことが好ましい。乾燥は、ポリオレフィン微多孔膜の全質量を100質量部(乾燥質量)として、残存洗浄溶媒が5質量部以下になるまで行うのが好ましく、3質量部以下になるまで行うのがより好ましい。
成膜用溶剤を除去したポリオレフィン微多孔膜を、加熱乾燥法又は風乾法により乾燥する。乾燥温度はポリオレフィン系樹脂の結晶分散温度(TCD)以下であることが好ましく、特にTCDより5℃以上低いことが好ましい。乾燥は、ポリオレフィン微多孔膜の全質量を100質量部(乾燥質量)として、残存洗浄溶媒が5質量部以下になるまで行うのが好ましく、3質量部以下になるまで行うのがより好ましい。
(6)第2の延伸工程
乾燥後のポリオレフィン微多孔膜を、少なくとも一軸方向に延伸をしてもよい(第2の延伸工程)。第2の延伸工程前にポリオレフィン微多孔膜を予熱してもよい。予熱温度は90~140℃とするのが好ましく、より好ましくは95℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、また、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。ポリオレフィン微多孔膜の延伸は、加熱しながら上記と同様にテンター法、ロール法、インフレーション法等により行うことができる。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸及び逐次二軸延伸、及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次二軸延伸の組合せ)のいずれでもよい。
乾燥後のポリオレフィン微多孔膜を、少なくとも一軸方向に延伸をしてもよい(第2の延伸工程)。第2の延伸工程前にポリオレフィン微多孔膜を予熱してもよい。予熱温度は90~140℃とするのが好ましく、より好ましくは95℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、また、より好ましくは135℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。ポリオレフィン微多孔膜の延伸は、加熱しながら上記と同様にテンター法、ロール法、インフレーション法等により行うことができる。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸及び逐次二軸延伸、及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次二軸延伸の組合せ)のいずれでもよい。
本工程における面積延伸倍率は16.0倍以下であることが好ましく、4.0倍以下であることがより好ましく、2.0倍以下であることがさらに好ましい。二軸延伸の場合、MD方向とTD方向での延伸倍率が互いに同じでも異なってもよい。なお、本工程における延伸倍率とは、本工程直前のポリオレフィン微多孔膜を基準として、次工程に供される直前のポリオレフィン微多孔膜の延伸倍率のことをいう。
(7)熱処理工程
また、前記工程(6)の後、又は前記工程(6)に代えて、乾燥後のポリオレフィン微多孔膜は、熱処理を行うことができる。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラが均一化される。熱処理方法としては、熱固定処理及び/又は熱緩和処理を用いることができる。熱固定処理とは、膜の寸法が変わらないように保持しながら加熱する熱処理である。熱緩和処理とは、膜を加熱中にMD方向やTD方向に熱収縮させる熱処理である。熱固定処理は、テンター方式又はロール方式により行うのが好ましい。例えば、熱緩和処理方法としては特開2002-256099号公報に開示の方法があげられる。熱処理温度はポリオレフィン系樹脂のTCD~融点の範囲内が好ましい。融点は、JIS K7121(1987)に基づき、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
また、前記工程(6)の後、又は前記工程(6)に代えて、乾燥後のポリオレフィン微多孔膜は、熱処理を行うことができる。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラが均一化される。熱処理方法としては、熱固定処理及び/又は熱緩和処理を用いることができる。熱固定処理とは、膜の寸法が変わらないように保持しながら加熱する熱処理である。熱緩和処理とは、膜を加熱中にMD方向やTD方向に熱収縮させる熱処理である。熱固定処理は、テンター方式又はロール方式により行うのが好ましい。例えば、熱緩和処理方法としては特開2002-256099号公報に開示の方法があげられる。熱処理温度はポリオレフィン系樹脂のTCD~融点の範囲内が好ましい。融点は、JIS K7121(1987)に基づき、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
以上のようにして得られたポリオレフィン微多孔膜は、フィルター、二次電池用セパレータ、燃料電池用セパレータ、コンデンサー用セパレータなど様々な用途で用いることができる。特に電池用セパレータとして用いた際に、透過性に優れ、高い安全性を付与することができ、電気自動車などの高エネルギー密度化、高容量化、および高出力化を必要とする二次電池用セパレータとしてより好ましく用いることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本願における測定は、特別な記載が無い限り温度23℃、湿度65%の環境下で評価している。また、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
〔測定方法〕
[厚み]
ポリオレフィン微多孔膜の50mm×50mmの範囲内における任意の5点の膜厚を接触厚み計、株式会社ミツトヨ製ライトマチックVL-50(10.5mmφ超硬球面測定子、測定荷重0.01N)により測定し、平均値を厚み(μm)とした。
[厚み]
ポリオレフィン微多孔膜の50mm×50mmの範囲内における任意の5点の膜厚を接触厚み計、株式会社ミツトヨ製ライトマチックVL-50(10.5mmφ超硬球面測定子、測定荷重0.01N)により測定し、平均値を厚み(μm)とした。
[空孔率]
ポリオレフィン微多孔膜から50mm×50mm角の正方形にサンプルを切り取り、その体積(cm3)と質量(g)とを測定した。それらの値と膜密度(g/cm3)とから、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率を次式により算出した。なお、膜密度は0.99g/cm3の一定値と仮定して計算した。本測定はポリオレフィン微多孔膜の任意の位置3か所からサンプルを切り出し、それぞれ測定した空孔率の平均値を算出した。
式:空孔率(%)=(体積-質量/膜密度)/体積×100。
ポリオレフィン微多孔膜から50mm×50mm角の正方形にサンプルを切り取り、その体積(cm3)と質量(g)とを測定した。それらの値と膜密度(g/cm3)とから、ポリオレフィン微多孔膜の空孔率を次式により算出した。なお、膜密度は0.99g/cm3の一定値と仮定して計算した。本測定はポリオレフィン微多孔膜の任意の位置3か所からサンプルを切り出し、それぞれ測定した空孔率の平均値を算出した。
式:空孔率(%)=(体積-質量/膜密度)/体積×100。
[シャットダウン温度、メルトダウン温度、180℃での抵抗値]
ポリオレフィン微多孔膜から切り出した、直径19mmの円形状のサンプルと、2032型コインセルの部材(上蓋、下蓋、ガスケット(PFA製)、スペーサー(直径15.5mm、厚み1.0mmの円柱状)、ウェーブワッシャー)を用意した。上記2032型コインセルの部材は、いずれも宝泉株式会社から購入した。以下、評価用セルの作製手順を示すが、該作業はいずれも露点温度を-35℃以下としたドライルーム内にて行った。
2032型コインセルの部材の下蓋の内側底部に、下蓋側から順に、測定用サンプル、ガスケットを載置した。次にエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(EC/PC=50/50[重量比])にLiBF4を濃度1Mとなるよう溶解させた電解液(キシダ化学株式会社製)に、界面活性剤F-444(DIC社製)を0.3質量%添加した溶液を調製し、前述のコインセル内に該溶液を0.1mL注液した。次いで、ガスケット中空部の測定用サンプルの上にスペーサー(直径16mm、厚み1mm)を設置した後、-50kPaの圧力で1分間静置する作業を2回行い、ポリオレフィン微多孔膜に電解液を含浸させた。その後、スペーサーの上に、スペーサー側から順に、ウェーブワッシャー、上蓋を載置し、コインセルカシメ機(宝泉株式会社製)で密閉して評価用セルを作製した。
ポリオレフィン微多孔膜から切り出した、直径19mmの円形状のサンプルと、2032型コインセルの部材(上蓋、下蓋、ガスケット(PFA製)、スペーサー(直径15.5mm、厚み1.0mmの円柱状)、ウェーブワッシャー)を用意した。上記2032型コインセルの部材は、いずれも宝泉株式会社から購入した。以下、評価用セルの作製手順を示すが、該作業はいずれも露点温度を-35℃以下としたドライルーム内にて行った。
2032型コインセルの部材の下蓋の内側底部に、下蓋側から順に、測定用サンプル、ガスケットを載置した。次にエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)の混合溶媒(EC/PC=50/50[重量比])にLiBF4を濃度1Mとなるよう溶解させた電解液(キシダ化学株式会社製)に、界面活性剤F-444(DIC社製)を0.3質量%添加した溶液を調製し、前述のコインセル内に該溶液を0.1mL注液した。次いで、ガスケット中空部の測定用サンプルの上にスペーサー(直径16mm、厚み1mm)を設置した後、-50kPaの圧力で1分間静置する作業を2回行い、ポリオレフィン微多孔膜に電解液を含浸させた。その後、スペーサーの上に、スペーサー側から順に、ウェーブワッシャー、上蓋を載置し、コインセルカシメ機(宝泉株式会社製)で密閉して評価用セルを作製した。
上記評価用セルはオーブン内に設置した同軸コンタクトプローブで挟み、LCRメータ(日置電機製)を用いて、振幅50mV、周波数1kHzにて該セルの抵抗を測定した。コインセル温度は該セルの上蓋に測温抵抗体を密着させてモニタリングし、コインセル温度を室温から50℃に昇温して10分静置した後、5℃/分の速度で180℃まで昇温しながら抵抗を測定した。評価用セルの抵抗が最初に1kΩcm2を超える時の温度をポリオレフィン製微多孔膜のシャットダウン温度とし、前記シャットダウン温度から昇温を継続し、抵抗が再び1kΩcm2となる温度をメルトダウン温度とした。また、180℃に到達した時点での抵抗値を読み取り、サンプルの測定面積(セパレータとスペーサの接する面積)で換算することで、180℃での抵抗値(Ω・cm2)を算出した。本測定はポリオレフィン微多孔膜の任意の2箇所を切り出してそれぞれ上記測定を行い、その平均値を算出した。
[示差走査熱量分析(DSC)]
ポリオレフィン微多孔膜の結晶融解ピークは、示差走査熱量分析(DSC)法により測定した。アルミパンに6.0mgの試料を封入し、Parking Elmer製 PYRIS Diamond DSCを用いて、N2ガス雰囲気下にて30℃で1分間保持した後、30℃から250℃まで10℃/minで昇温した。
ポリオレフィン微多孔膜の結晶融解ピークは、示差走査熱量分析(DSC)法により測定した。アルミパンに6.0mgの試料を封入し、Parking Elmer製 PYRIS Diamond DSCを用いて、N2ガス雰囲気下にて30℃で1分間保持した後、30℃から250℃まで10℃/minで昇温した。
(155℃~250℃の範囲でのピークの検出)
上述のDSC測定から得られた横軸:温度(℃)、縦軸:熱流(mW)のDSC曲線を用いて、155℃~250℃の範囲内におけるピーク有無の判断をした。以下(A)に記載した条件を満たす場合にピーク有りと判定し、満たさない場合にはピーク無しと判定した。
(A)155℃~250℃の間に極値を有し、且つ、その極値を形成しているピークの面積が1J/g以上である。
上述のDSC測定から得られた横軸:温度(℃)、縦軸:熱流(mW)のDSC曲線を用いて、155℃~250℃の範囲内におけるピーク有無の判断をした。以下(A)に記載した条件を満たす場合にピーク有りと判定し、満たさない場合にはピーク無しと判定した。
(A)155℃~250℃の間に極値を有し、且つ、その極値を形成しているピークの面積が1J/g以上である。
尚、上記(A)に示した、極値を形成しているピークの面積は、該極値を示した温度をTm、Tmよりも低温側で傾きが0になる点の内、最もTmに近い点をT1、Tmよりも高温側で傾きが0になる点の内、Tmに最も近い点をT2とし、以下(1)~(4)の条件に基づき決定するTAとTBの間でベースラインを引き、該極値を形成しているピークとベースラインで囲まれた面積を積分することで算出した。
(1)T1≧Tm-15の場合、TA=T1とする。
(2)T1<Tm-15の場合、TA=Tm-15とする。
(3)T2≦Tm+15の場合、TA=T2とする。
(4)T2>Tm+15の場合、TA=Tm+15とする。
(1)T1≧Tm-15の場合、TA=T1とする。
(2)T1<Tm-15の場合、TA=Tm-15とする。
(3)T2≦Tm+15の場合、TA=T2とする。
(4)T2>Tm+15の場合、TA=Tm+15とする。
[ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量、ポリオレフィン微多孔膜中の分子量200万以上のポリエチレン成分の比率]
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)、ポリオレフィン微多孔膜中の分子量200万以上のポリエチレン成分の比率は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。ポリオレフィン微多孔膜の微分分子量分布曲線全体のピーク面積に対する分子量200万以上に相当するピーク面積の割合を算出し、これをポリオレフィン微多孔膜中の分子量200万以上の成分の比率とした。
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)、ポリオレフィン微多孔膜中の分子量200万以上のポリエチレン成分の比率は、以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。ポリオレフィン微多孔膜の微分分子量分布曲線全体のピーク面積に対する分子量200万以上に相当するピーク面積の割合を算出し、これをポリオレフィン微多孔膜中の分子量200万以上の成分の比率とした。
・測定装置:Waters Corporation製GPC-150C
・カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):o-ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0 ml/分
・試料濃度:0.1 質量%(溶解条件:135℃/1h)
・インジェクション量:500μl
・検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、ポリエチレン換算係数(0.46)を用いて作成した。
・カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
・カラム温度:135℃
・溶媒(移動相):o-ジクロルベンゼン
・溶媒流速:1.0 ml/分
・試料濃度:0.1 質量%(溶解条件:135℃/1h)
・インジェクション量:500μl
・検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター(RI検出器)
・検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、ポリエチレン換算係数(0.46)を用いて作成した。
[105℃、8時間後の熱収縮率]
ポリオレフィン微多孔膜から5cm×5cmの正方形のサンプルを切り出し、2組の平行する2辺間の距離を計測し、それぞれをL1、L2とした。2辺間の距離の測定は各辺の中央部同士の距離を計測した。
次に、槽内温度を105℃としたオーブン内へサンプルを投入して加熱し、投入から8時間後にこれを取り出した。前述のL1を測定した箇所の距離を再度測定しこれをL3、前述のL2を測定した箇所の距離を再度測定しこれをL4とした。これら値を用いて、105℃、8時間後の熱収縮率を下記式により算出した。また本測定はポリオレフィン微多孔膜面内の任意の3箇所で行い、その平均値を105℃、8時間後の熱収縮率(%)として算出した。
式:105℃、8時間後の熱収縮率(%)={(L1-L3)/L1+(L2-L4)/+L2)}/2×100。
ポリオレフィン微多孔膜から5cm×5cmの正方形のサンプルを切り出し、2組の平行する2辺間の距離を計測し、それぞれをL1、L2とした。2辺間の距離の測定は各辺の中央部同士の距離を計測した。
次に、槽内温度を105℃としたオーブン内へサンプルを投入して加熱し、投入から8時間後にこれを取り出した。前述のL1を測定した箇所の距離を再度測定しこれをL3、前述のL2を測定した箇所の距離を再度測定しこれをL4とした。これら値を用いて、105℃、8時間後の熱収縮率を下記式により算出した。また本測定はポリオレフィン微多孔膜面内の任意の3箇所で行い、その平均値を105℃、8時間後の熱収縮率(%)として算出した。
式:105℃、8時間後の熱収縮率(%)={(L1-L3)/L1+(L2-L4)/+L2)}/2×100。
[ポリオレフィン微多孔膜中のドメイン径]
ポリオレフィン微多孔膜をRuO4で染色し、ミクロトーム法により厚み方向-MD方向の断面を観察するための薄切片を作製した。透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM1400Plus型)を用い加速電圧100kV、倍率50000で観察し、樹脂A部分、樹脂B部分、空孔部分のそれぞれで染色具合が異なることから、濃淡のコントラストを有する観察像を得た。上述の観察像の中で、樹脂Bに由来するドメイン状のコントラストを有する領域について、ドメインの面積を算出し、ドメインの断面を円形と仮定してその直径を算出した値をドメイン径とした。ドメイン径の値は任意の10個のドメインについて上記計測、算出を行い、その平均値をポリオレフィン微多孔膜中のドメイン径(nm)とした。
ポリオレフィン微多孔膜をRuO4で染色し、ミクロトーム法により厚み方向-MD方向の断面を観察するための薄切片を作製した。透過型電子顕微鏡(日本電子製JEM1400Plus型)を用い加速電圧100kV、倍率50000で観察し、樹脂A部分、樹脂B部分、空孔部分のそれぞれで染色具合が異なることから、濃淡のコントラストを有する観察像を得た。上述の観察像の中で、樹脂Bに由来するドメイン状のコントラストを有する領域について、ドメインの面積を算出し、ドメインの断面を円形と仮定してその直径を算出した値をドメイン径とした。ドメイン径の値は任意の10個のドメインについて上記計測、算出を行い、その平均値をポリオレフィン微多孔膜中のドメイン径(nm)とした。
[厚み1μm換算の透気度]
ポリオレフィン微多孔膜に対して、JIS P-8117:2009年に準拠して、王研式透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)で25℃の雰囲気下、透気度(秒/100cm3)を測定した。また、前述した方法で測定された厚みの値を用い、下記の式により、厚み1μm換算の透気度(秒/100cm3)を算出した。
ポリオレフィン微多孔膜に対して、JIS P-8117:2009年に準拠して、王研式透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)で25℃の雰囲気下、透気度(秒/100cm3)を測定した。また、前述した方法で測定された厚みの値を用い、下記の式により、厚み1μm換算の透気度(秒/100cm3)を算出した。
式:厚み1μm換算の透気度(秒/100cm3)=透気度(秒/100cm3)/ポリオレフィン微多孔膜の厚み(μm)
[厚み1μm換算の突刺強度]
突刺強度は、試験速度を2mm/秒としたことを除いて、JIS Z 1707(2019)に準拠して測定した。フォースゲージ(株式会社イマダ製 DS2-20N)を用いて、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1.0mmの針で、ポリオレフィン微多孔膜を25℃の雰囲気下で突刺したときの最大荷重(gf)を計測し、前述した方法で測定された厚みの値を用い、下記の式から求まる値を厚み1μm換算の突刺強度(gf)とした。
[厚み1μm換算の突刺強度]
突刺強度は、試験速度を2mm/秒としたことを除いて、JIS Z 1707(2019)に準拠して測定した。フォースゲージ(株式会社イマダ製 DS2-20N)を用いて、先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1.0mmの針で、ポリオレフィン微多孔膜を25℃の雰囲気下で突刺したときの最大荷重(gf)を計測し、前述した方法で測定された厚みの値を用い、下記の式から求まる値を厚み1μm換算の突刺強度(gf)とした。
式:厚み1μm換算の突刺強度(gf)=最大荷重(gf)/ポリオレフィン微多孔膜の厚み(μm)
[はんだごて耐熱試験]
ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合の、電池異常発熱に対する安全性評価として、はんだごて耐熱試験を行った。はんだごては、白光株式会社製の高出力小型温調式はんだごてFX-951を用い、こて先には白光株式会社製のT12-BC2(先端が直径2mmの円柱型)を用いた。上記はんだごてを鉛直方向で、こて先が下になるよう、高さ方向に昇降可能なステージに保持した。
次にポリオレフィン微多孔膜を5cm四方の正方形に切り出し、外径5cm、内径1.5cm、厚み2mmのドーナツ状のステンレス板の上に、上記切り出したポリオレフィン微多孔膜を載せ、この上に前述のものと同じステンレス板を載せることで評価用サンプルを作製した。この時、切り出したポリオレフィン微多孔膜にシワが入らないように注意し、ポリオレフィン微多孔膜の中心部とステンレス板の中心部の位置が合うように重ねた。
[はんだごて耐熱試験]
ポリオレフィン微多孔膜を電池用セパレータとして用いた場合の、電池異常発熱に対する安全性評価として、はんだごて耐熱試験を行った。はんだごては、白光株式会社製の高出力小型温調式はんだごてFX-951を用い、こて先には白光株式会社製のT12-BC2(先端が直径2mmの円柱型)を用いた。上記はんだごてを鉛直方向で、こて先が下になるよう、高さ方向に昇降可能なステージに保持した。
次にポリオレフィン微多孔膜を5cm四方の正方形に切り出し、外径5cm、内径1.5cm、厚み2mmのドーナツ状のステンレス板の上に、上記切り出したポリオレフィン微多孔膜を載せ、この上に前述のものと同じステンレス板を載せることで評価用サンプルを作製した。この時、切り出したポリオレフィン微多孔膜にシワが入らないように注意し、ポリオレフィン微多孔膜の中心部とステンレス板の中心部の位置が合うように重ねた。
5cm四方、厚み1mmのステンレス板の上に評価用サンプルを置き、上記評価用サンプルの中央部のポリオレフィン微多孔膜表面から鉛直上向きに1cmの距離にこて先先端が配置されるよう、ステージの位置や高さ、評価用サンプルの位置を調整した。はんだごての温度を400℃にセットしてから3分以上経過後、はんだごてを保持したステージを、評価用サンプルのポリオレフィン微多孔膜を貫通し、ステンレス板にこて先が接するまで鉛直方向に降下させ10秒間保持した後、はんだごてを上昇させて評価用サンプルを取り出した。
[はんだごて耐熱試験サンプルの解析]
上記はんだ耐熱試験後のサンプルを厚さ2mm、外寸7cm四方、内寸5cm×3.5cmの紙枠にシワが入らないように貼り付けた。これを黒画用紙(大王製紙製 C-55)の上に載せ、デジタルマイクロスコープVH-900(株式会社キーエンス製)ではんだごてによる穿孔部を観察した。画面に穿孔部全体が鮮明に映るよう顕微鏡の観察倍率、ピント調整を行い画像を得た。得られた画像を上記デジタルマイクロスコープで輝度抽出により穿孔部分が検出されるよう輝度レンジを調整し、穿孔部領域の面積を算出した。得られた穿孔部の面積から、下記判定基準で電池用セパレータとして使用した際の安全性を判定し、△または○の場合を合格とした。
23mm2未満:○(良好)
23mm2以上、25mm2未満:△(やや良好)
25mm2以上:×(不良)。
上記はんだ耐熱試験後のサンプルを厚さ2mm、外寸7cm四方、内寸5cm×3.5cmの紙枠にシワが入らないように貼り付けた。これを黒画用紙(大王製紙製 C-55)の上に載せ、デジタルマイクロスコープVH-900(株式会社キーエンス製)ではんだごてによる穿孔部を観察した。画面に穿孔部全体が鮮明に映るよう顕微鏡の観察倍率、ピント調整を行い画像を得た。得られた画像を上記デジタルマイクロスコープで輝度抽出により穿孔部分が検出されるよう輝度レンジを調整し、穿孔部領域の面積を算出した。得られた穿孔部の面積から、下記判定基準で電池用セパレータとして使用した際の安全性を判定し、△または○の場合を合格とした。
23mm2未満:○(良好)
23mm2以上、25mm2未満:△(やや良好)
25mm2以上:×(不良)。
なお、前述の測定において、測定するポリオレフィン微多孔膜のフィルムのMD方向、TD方向が分からない場合は、ポリオレフィン微多孔膜をフィルム平面の一方向を基準として、15°ずつずらして0°から90°まで合計7方向について以下の方法で引張破断強度を求め、最も引張破断強度が大きい方向をMD方向、最も引張破断強度が大きい方向と垂直方向をTD方向とみなす。
[引張破断強度]
JIS K7127に準拠し引張試験機(島津オートグラフAGS-J型)を用いて引張試験を行い、サンプル破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除し、引張破断強度(MPa)とした。測定条件は、温度;23±2℃、サンプル形状;幅10mm×長さ50mm、チャック間距離;20mm、引張速度;100mm/minである。なお、幅40×60mmサイズの紙枠中央を20×20mmでくりぬいた紙枠をサンプルホルダーとして使用し、幅10mm×長さ50mmのサンプルをサンプルホルダーで挟み0.4MPaの圧力でチャックした後、サンプルホルダーの両端(サンプルホルダーの四辺の枠のうち、サンプルに平行な二つの辺の中心部)を切断し測定を行った。3回測定を実施し、その3回の平均値を引張破断強度とした。
[引張破断強度]
JIS K7127に準拠し引張試験機(島津オートグラフAGS-J型)を用いて引張試験を行い、サンプル破断時の強度を、試験前のサンプル断面積で除し、引張破断強度(MPa)とした。測定条件は、温度;23±2℃、サンプル形状;幅10mm×長さ50mm、チャック間距離;20mm、引張速度;100mm/minである。なお、幅40×60mmサイズの紙枠中央を20×20mmでくりぬいた紙枠をサンプルホルダーとして使用し、幅10mm×長さ50mmのサンプルをサンプルホルダーで挟み0.4MPaの圧力でチャックした後、サンプルホルダーの両端(サンプルホルダーの四辺の枠のうち、サンプルに平行な二つの辺の中心部)を切断し測定を行った。3回測定を実施し、その3回の平均値を引張破断強度とした。
(実施例1)
樹脂Aとして重量平均分子量(Mw)が1.5×106、融点135℃の高密度ポリエチレン、樹脂Bとして、非晶性樹脂であり、ガラス転移温度が178℃である環状オレフィンコポリマー(COC)(ポリプラスチックス製COC TOPAS(登録商標)6017S-04)を用いた。
樹脂Aとして重量平均分子量(Mw)が1.5×106、融点135℃の高密度ポリエチレン、樹脂Bとして、非晶性樹脂であり、ガラス転移温度が178℃である環状オレフィンコポリマー(COC)(ポリプラスチックス製COC TOPAS(登録商標)6017S-04)を用いた。
樹脂A16質量%、樹脂B4質量%、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量%、及び流動パラフィン79.8質量%を混合したものを混錬評価試験装置(東洋精機株式会社製 ラボプラストミル)へ投入し、温度200℃、シリンダー回転速度50rpmで20分間溶融混練して、ポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。ポリオレフィン系樹脂組成物を”テフロン”(登録商標)シートで挟んで200℃でプレス後、サンプルを取り出して、25℃に調温した金属板で挟み、これを冷却することでゲル状シートを形成した。
得られたゲル状シートを80mm四方の正方形になるように切り出し、115℃にて300秒間予熱を行い、延伸温度115℃、延伸速度1000mm/minにて正方形に切り出したシートの任意の1辺の方向に5倍、前記方向とは直角方向に5倍となるように同時二軸延伸を行った(第1の延伸)。延伸後の膜を塩化メチレンの洗浄槽内にて洗浄して、流動パラフィンを除去し、洗浄した膜を20℃に調整された乾燥炉で乾燥し、電気オーブン内にて125℃で10分間熱固定処理(熱処理)することによりポリオレフィン微多孔膜を得た。
(実施例2)
樹脂Aとして重量平均分子量(Mw)が3.0×105、融点136℃の高密度ポリエチレン60質量%、及び重量平均分子量(Mw)が2.0×106、融点133℃の高密度ポリエチレン40質量%から成る混合物を用いたこと、樹脂A20質量%、樹脂B5質量%、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量%、及び流動パラフィン74.8質量%を混合したものを混錬評価試験装置(東洋精機株式会社製 ラボプラストミル)へ投入したこと、電気オーブン内にて120℃で10分間熱固定処理(熱処理)したことを除いて、実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
樹脂Aとして重量平均分子量(Mw)が3.0×105、融点136℃の高密度ポリエチレン60質量%、及び重量平均分子量(Mw)が2.0×106、融点133℃の高密度ポリエチレン40質量%から成る混合物を用いたこと、樹脂A20質量%、樹脂B5質量%、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量%、及び流動パラフィン74.8質量%を混合したものを混錬評価試験装置(東洋精機株式会社製 ラボプラストミル)へ投入したこと、電気オーブン内にて120℃で10分間熱固定処理(熱処理)したことを除いて、実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(実施例3)
樹脂Aを18質量%、樹脂Bを2質量%としてポリオレフィン系樹脂組成物を調製したことを除いて実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
樹脂Aを18質量%、樹脂Bを2質量%としてポリオレフィン系樹脂組成物を調製したことを除いて実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(実施例4)
ゲル状シートを80mm四方の正方形になるように切り出し、正方形に切り出したシートの任意の1辺の方向に7倍、前記方向とは直角方向に7倍となるように同時二軸延伸を行ったことを除いて実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
ゲル状シートを80mm四方の正方形になるように切り出し、正方形に切り出したシートの任意の1辺の方向に7倍、前記方向とは直角方向に7倍となるように同時二軸延伸を行ったことを除いて実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(実施例5)
ガラス転移温度が163℃である環状オレフィンポリマー(COP)(日本ゼオン株式会社製COP ZEONOR(登録商標)1600R)を用いたことを除いて、実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
ガラス転移温度が163℃である環状オレフィンポリマー(COP)(日本ゼオン株式会社製COP ZEONOR(登録商標)1600R)を用いたことを除いて、実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(実施例6)
樹脂Aとして重量平均分子量(Mw)が1.5×106、融点135℃の高密度ポリエチレン60質量%、及び重量平均分子量(Mw)が9.0×104、融点132℃の高密度ポリエチレン40質量%から成る混合物を用いたことを除いて、実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
樹脂Aとして重量平均分子量(Mw)が1.5×106、融点135℃の高密度ポリエチレン60質量%、及び重量平均分子量(Mw)が9.0×104、融点132℃の高密度ポリエチレン40質量%から成る混合物を用いたことを除いて、実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(実施例7)
樹脂Bとして、ガラス転移温度が178℃であるCOC(ポリプラスチックス製COC TOPAS(登録商標)6017S-04)75質量%、及びガラス転移温度が78℃であるCOC(ポリプラスチックス製COC TOPAS(登録商標)8007S-04)25質量%から成る混合物を用いたことを除いて、実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
樹脂Bとして、ガラス転移温度が178℃であるCOC(ポリプラスチックス製COC TOPAS(登録商標)6017S-04)75質量%、及びガラス転移温度が78℃であるCOC(ポリプラスチックス製COC TOPAS(登録商標)8007S-04)25質量%から成る混合物を用いたことを除いて、実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(比較例1)
樹脂A25質量%、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量%、及び流動パラフィン74.8質量%を混合したものを混錬評価試験装置(東洋精機株式会社製 ラボプラストミル)へ投入し、樹脂Bを用いなかったことを除いて実施例2と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
樹脂A25質量%、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量%、及び流動パラフィン74.8質量%を混合したものを混錬評価試験装置(東洋精機株式会社製 ラボプラストミル)へ投入し、樹脂Bを用いなかったことを除いて実施例2と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(比較例2)
樹脂Aとして重量平均分子量(Mw)が3.0×105、融点136℃の高密度ポリエチレン40質量%、及び重量平均分子量(Mw)が2.0×106、融点133℃の高密度ポリエチレン60質量%から成る混合物を用いたことを除いて、実施例2と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
樹脂Aとして重量平均分子量(Mw)が3.0×105、融点136℃の高密度ポリエチレン40質量%、及び重量平均分子量(Mw)が2.0×106、融点133℃の高密度ポリエチレン60質量%から成る混合物を用いたことを除いて、実施例2と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(比較例3)
樹脂Bとして結晶性樹脂であるポリメチルペンテン(三井化学株式会社製 TPX(登録商標)MX002)を用いたことを除いて、実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
樹脂Bとして結晶性樹脂であるポリメチルペンテン(三井化学株式会社製 TPX(登録商標)MX002)を用いたことを除いて、実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(比較例4)
A層/B層/A層の三層構成から成るポリオレフィン微多孔膜を製膜した。A層は樹脂Aとして重量平均分子量が3.0×105、融点136℃の高密度ポリエチレンを、樹脂Bとして融点160℃、重量平均分子量が4.0×105のポリプロピレンを用い、樹脂A24質量%、樹脂B6%、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量%を強混錬タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cst(40℃)]69.8質量%を供給し、210℃及び250rpmの条件で溶融混練して第1のポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。
A層/B層/A層の三層構成から成るポリオレフィン微多孔膜を製膜した。A層は樹脂Aとして重量平均分子量が3.0×105、融点136℃の高密度ポリエチレンを、樹脂Bとして融点160℃、重量平均分子量が4.0×105のポリプロピレンを用い、樹脂A24質量%、樹脂B6%、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量%を強混錬タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cst(40℃)]69.8質量%を供給し、210℃及び250rpmの条件で溶融混練して第1のポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。
B層は樹脂Aとして重量平均分子量(Mw)が3.0×105、融点136℃の高密度ポリエチレンを用い、樹脂A30質量%、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量%を強混錬タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cst(40℃)]69.8質量%を供給し、210℃及び250rpmの条件で溶融混練して第2のポリオレフィン系樹脂組成物を調製した。
第1及び第2のポリオレフィン溶液を、各二軸押出機からフィルターを通して異物を除去後、A層/B層/A層の三層用Tダイに第1のポリオレフィン樹脂組成物がA層、第2のポリオレフィン樹脂組成物がB層となるように押し出した。また、A層/B層/A層の積層厚みの比が1/3/1となるようにギアポンプで各層の吐出量を調整した。押出し成形体を、30℃に温調した冷却ロールで引き取り速度2m/minで、引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。
得られたゲル状シートを80mm四方の正方形になるように切り出し、115℃にて300秒間予熱を行い、延伸温度115℃、延伸速度1000mm/minにて正方形に切り出したシートの任意の1辺の方向に5倍、前記方向とは直角方向に5倍となるように同時二軸延伸を行った(第1の延伸)。延伸後の膜を塩化メチレンの洗浄槽内にて洗浄して、流動パラフィンを除去し、洗浄した膜を20℃に調整された乾燥炉で乾燥し、電気オーブン内にて125℃で10分間熱固定処理(熱処理)することによりポリオレフィン微多孔膜を得た。
(比較例5)
比較例1で得られたポリオレフィン微多孔膜へ加速電圧200kV、照射線量200kGyとなるよう電子線照射し、架橋処理したポリオレフィン微多孔膜を得た。
比較例1で得られたポリオレフィン微多孔膜へ加速電圧200kV、照射線量200kGyとなるよう電子線照射し、架橋処理したポリオレフィン微多孔膜を得た。
(比較例6)
樹脂A20質量%、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量%、及び流動パラフィン79.8質量%を混合したものを混錬評価試験装置(東洋精機株式会社製 ラボプラストミル)へ投入し、樹脂Bを用いなかったことを除いて実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
樹脂A20質量%、酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン0.2質量%、及び流動パラフィン79.8質量%を混合したものを混錬評価試験装置(東洋精機株式会社製 ラボプラストミル)へ投入し、樹脂Bを用いなかったことを除いて実施例1と同様に実施し、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
(評価)
各ポリオレフィン微多孔膜の製造に用いるポリオレフィン系樹脂組成物及び成膜条件、並びに、得られたポリオレフィン微多孔膜の各評価結果を表1に示す。表1の「ポリオレフィン系樹脂組成物」における「-」は、その成分を含有していないことを示す。また、「ポリオレフィン微多孔膜中のドメイン径」は、「ポリエチレン系樹脂から成る第一相が連続構造を有し、該ポリエチレン系樹脂に非相溶なポリマーから成る第二相が非連続構造となっており、当該第二相のドメイン径」を示す。「-」はドメインの存在が確認できず測定不可であることを示す。
各ポリオレフィン微多孔膜の製造に用いるポリオレフィン系樹脂組成物及び成膜条件、並びに、得られたポリオレフィン微多孔膜の各評価結果を表1に示す。表1の「ポリオレフィン系樹脂組成物」における「-」は、その成分を含有していないことを示す。また、「ポリオレフィン微多孔膜中のドメイン径」は、「ポリエチレン系樹脂から成る第一相が連続構造を有し、該ポリエチレン系樹脂に非相溶なポリマーから成る第二相が非連続構造となっており、当該第二相のドメイン径」を示す。「-」はドメインの存在が確認できず測定不可であることを示す。
実施例1~7のポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン系樹脂とポリエチレンに非相溶な非晶性樹脂を含み、メルトダウン温度が155℃以上、示差走査熱量計(DSC)で得られるDSC曲線において、155℃~250℃の範囲にピークを持たない。そのため、はんだごて耐熱試験で良好な結果を示しており、二次電池用セパレータとして使用した場合に、電池の異常発熱時にも高い安全性を付与することができる。一方で、比較例1~比較例6のポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン系樹脂とポリエチレンに非相溶な非晶性樹脂を含まないか、メルトダウン温度が155℃未満であるか、示差走査熱量計で155℃~250℃の範囲にピークを持つことで、はんだごて耐熱試験で不良な結果を示しており、二次電池用セパレータとして使用した場合に安全性が十分ではない。
本発明のポリオレフィン微多孔膜は電池用セパレータとして用いた場合、電池の異常発熱に対し高い安全性を付与することができる。そのため、特に高容量化が要求される二次電池用のセパレータとして好適に用いることができる。
Claims (11)
- ポリエチレン系樹脂と、該ポリエチレン系樹脂に非相溶な非晶性ポリマーを含み、メルトダウン温度が155℃以上、示差走査熱量計(DSC)で得られるDSC曲線において、155℃~250℃の範囲にピークを持たないポリオレフィン微多孔膜。
- ゲル浸透クロマトグラフィー法で測定されるポリエチレンの分子量分布曲線中に含まれる分子量200万以上の成分の比率が15%以下である、請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- 105℃、8時間後の熱収縮率が10%以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- シャットダウン温度が138℃以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- メルトダウン温度が165℃以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- ポリエチレン系樹脂に非相溶な非晶性ポリマーが環状オレフィン系ポリマーである、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- ポリエチレン系樹脂50~99質量%と、ポリエチレン系樹脂に非相溶な非晶性ポリマー1~50質量%とを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- ポリエチレン系樹脂から成る第一相が連続構造を有し、該ポリエチレン系樹脂に非相溶なポリマーから成る第二相が非連続構造となっており、第二相は10~300nmのドメイン径を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- 厚み1μm換算の透気度が25秒/100cm3以下である、1~8のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- 厚み1μm当たりの突刺強度が10gf以上である請求項1~9のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
- 厚みが20μm以下である請求項1~10のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
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