JP2022158660A - 変性ポリオレフィン系樹脂 - Google Patents

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能宜 岡田
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Abstract

【課題】高温環境下においても、基材に対する密着性に優れた変性ポリオレフィン系樹脂を提供する。【解決手段】ポリオレフィン系樹脂(A)がα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂であって、該変性ポリオレフィン系樹脂が、さらに芳香環を2個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を2個以上有する化合物(C)を含有する、変性ポリオレフィン系樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は、変性ポリオレフィン系樹脂、該変性ポリオレフィン系樹脂を含む積層体、及び、該変性ポリオレフィン系樹脂を含む接着剤又はバインダーに関する。
従来、プロピレン単独重合体やプロピレンとα-オレフィンとの共重合体といったポリオレフィン樹脂は、機械的物性、耐熱性、耐薬品性、耐水性などに優れると共に安価であることから、自動車部品や家電製品等の幅広い分野に用いられている。
一般に、ポリオレフィン樹脂からなる基材は、ポリオレフィン樹脂以外の物質との接着性が低く、例えばポリウレタン樹脂等の極性が高い物質の接着や塗装が困難である。そこで、このような物質との接着や塗装を可能とすべく、基材に対して接着性を有する前処理剤(例えば接着剤、バインダー、プライマー等)を予め基材表面に塗工する方法などが適用されている。このような前処理剤としては、塩素化ポリオレフィンや酸変性塩素化ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。例えば特許文献1には、接着剤等の前処理剤として、α-β-不飽和カルボン酸及びその酸無水物から選ばれる1種以上、並びにベンゼン環を有する化合物を含む変性ポリオレフィン系樹脂が記載されている。
国際公開第2018/037849号
一方、接着剤等の前処理剤を自動車部品等の用途に使用する場合、高温環境下に曝露されることがあるが、かかる場合、前処理剤には、高温環境下における基材との高い密着性が要求される。しかし、本発明者の検討によれば、特許文献1に記載されるような変性ポリオレフィン系樹脂は、高温環境下に曝露されると、基材との密着性が低下することがわかった。
従って、本発明の目的は、高温環境下においても、基材に対する密着性に優れた変性ポリオレフィン系樹脂、該変性ポリオレフィン系樹脂を含む積層体、及び、該変性ポリオレフィン系樹脂を含む接着剤又はバインダーを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂において、変性ポリオレフィン系樹脂が、さらに芳香環を2個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を2個以上有する化合物(C)を含有すると、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の好適な態様が含まれる。
[1]ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂であって、
該変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに芳香環を2個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を2個以上有する化合物(C)を含有する、変性ポリオレフィン系樹脂。
[2]前記変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに(メタ)アクリル酸エステル(D)で変性されている、[1]に記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[3]ポリオレフィン系樹脂(A)は、エチレン-プロピレン系共重合体及び/又はプロピレン-ブテン系共重合体である、[1]又は[2]に記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[4]芳香環を2個以上有する化合物(C)は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[5]芳香環を2個以上有する化合物(C)は、置換基を含んでいてよいナフタレン環を有する化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[6]α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~20質量部である、[1]~[5]のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[7]芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~70質量部である、[1]~[6]のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[8](メタ)アクリル酸エステル(D)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~30質量部である、[2]~[7]のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
[9]基材と、[1]~[8]のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂を含有する層とを含む、積層体。
[10][1]~[8]のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂を含む、接着剤。
[11][1]~[8]のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂を含む、バインダー。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、高温環境下においても、基材に対する密着性に優れている。そのため、接着剤、バインダー、プライマー等の前処理剤として好適に使用できる。
[ポリオレフィン系樹脂]
本発明のポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂(A)がα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性され、さらに芳香環を2個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を2個以上有する化合物(C)を含有するものである。
本発明者は、ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂において、変性ポリオレフィン系樹脂が、さらに芳香環を2個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を2個以上有する化合物(C)を含有すると、意外なことに、高温環境下(例えば60℃以上)であっても、基材に対する密着性が向上することを見出した。理由は定かではないが、成分(C)が芳香環を2個以上有することにより、耐熱性の向上とともに、基材に対する親和性が高まるためだと推定される。
<ポリオレフィン系樹脂(A)>
ポリオレフィン系樹脂(A)(成分(A)ということがある)は、単独重合体又は共重合体であってよい。単独重合体としては、例えばα-オレフィンの単独重合体が挙げられる。
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性及び耐水性を高めやすい観点から、エチレン、プロピレン及び1-ブテンが好ましい。また、本明細書において、「高温環境下におけるポリオレフィン系樹脂(又はポリオレフィン系樹脂層)と基材との密着性を、単に「基材との密着性又は基材に対する密着性」ということがある。
共重合体としては、α-オレフィンの共重合体、α-オレフィンと他の単量体との共重合体が挙げられる。他の単量体としては、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物等が挙げられる。α-オレフィンと他の単量体との共重合体において、α-オレフィンと他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせ用いてもよい。共重合体の形態は、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれであってもよい。これらは過酸化物等で低分子量化、高分子量化したものであってもよい。
環状オレフィンとしては、例えばノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-プロピルノルボルネン、5,6-ジメチルノルボルネン、1-メチルノルボルネン、7-メチルノルボルネン、5,5,6-トリメチルノルボルネン、5-フェニルノルボルネン、5-ベンジルノルボルネン、5-エチリデンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-メチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2,3-ジメチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-ヘキシル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-エチリデン-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,5-ジメチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-シクロへキシル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、2-イソブチル-1,4,5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、1,2-ジヒドロジシクロペンタジエン、5-メトキシノルボルネン、5,6-ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5-ジメチルアミノノルボルネン、5-シアノノルボルネン、シクロペンテン、3-メチルシクロペンテン、4-メチルシクロペンテン、3,4-ジメチルシクロペンテン、3,5-ジメチルシクロペンテン、シクロへキセン、3-メチルシクロへキセン、4-メチルシクロヘキセン、3,4-ジメチルシクロヘキセン、シクロへプテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
ビニル芳香族化合物としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-tert-ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
ポリエン化合物としては、例えば直鎖状又は分枝状の脂肪族共役ポリエン化合物、脂環式共役ポリエン化合物、脂肪族非共役ポリエン化合物、脂環式非共役ポリエン化合物、芳香族非共役ポリエン化合物等が挙げられる。これらは、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基等の置換基を有していてもよい。
脂肪族共役ポリエン化合物としては、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-プロピル-1,3-ブタジエン、2-イソプロピル-1,3-ブタジエン、2-ヘキシル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、2-メチル-1,3-デカジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-オクタジエン、2,3-ジメチル-1,3-デカジエン等が挙げられる。
脂環式共役ポリエン化合物としては、例えば2-メチル-1,3-シクロペンタジエン、2-メチル-1,3-シクロヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-シクロペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-シクロヘキサジエン等が挙げられる。
脂肪族非共役ポリエン化合物としては、例えば1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,13-テトラデカジエン、1,5,9-デカトリエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-エチル-1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,5-ヘキサジエン、3,3-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、3,4-ジメチル-1,5-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘプタジエン、5-エチル-1,4-ヘプタジエン、5-メチル-1,5-ヘプタジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、5-エチル-1,5-ヘプタジエン、3-メチル-1,6-ヘプタジエン、4-メチル-1,6-ヘプタジエン、4,4-ジメチル-1,6-ヘプタジエン、4-エチル-1,6-ヘプタジエン、4-メチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,4-オクタジエン、4-エチル-1,4-オクタジエン、5-エチル-1,4-オクタジエン、5-メチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,5-オクタジエン、5-エチル-1,5-オクタジエン、6-エチル-1,5-オクタジエン、6-メチル-1,6-オクタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、6-エチル-1,6-オクタジエン、6-プロピル-1,6-オクタジエン、6-ブチル-1,6-オクタジエン、4-メチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,4-ノナジエン、4-エチル-1,4-ノナジエン、5-エチル-1,4-ノナジエン、5-メチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,5-ノナジエン、5-エチル-1,5-ノナジエン、6-エチル-1,5-ノナジエン、6-メチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,6-ノナジエン、6-エチル-1,6-ノナジエン、7-エチル-1,6-ノナジエン、7-メチル-1,7-ノナジエン、8-メチル-1,7-ノナジエン、7-エチル-1,7-ノナジエン、5-メチル-1,4-デカジエン、5-エチル-1,4-デカジエン、5-メチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,5-デカジエン、5-エチル-1,5-デカジエン、6-エチル-1,5-デカジエン、6-メチル-1,6-デカジエン、6-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,6-デカジエン、7-エチル-1,6-デカジエン、7-メチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,7-デカジエン、7-エチル-1,7-デカジエン、8-エチル-1,7-デカジエン、8-メチル-1,8-デカジエン、9-メチル-1,8-デカジエン、8-エチル-1,8-デカジエン、6-メチル-1,6-ウンデカジエン、9-メチル-1,8-ウンデカジエン、6,10-ジメチル-1,5,9-ウンデカトリエン、5,9-ジメチル-1,4,8-デカトリエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、13-エチル-9-メチル-1,9,12-ペンタデカトリエン、5,9,13-トリメチル-1,4,8,12-テトラデカジエン、8,14,16-トリメチル-1,7,14-ヘキサデカトリエン、4-エチリデン-12-メチル-1,11-ペンタデカジエン等が挙げられる。
脂環式非共役ポリエン化合物としては、例えばビニルシクロヘキセン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、2,5-ノルボルナジエン、2-メチル-2,5-ノルボルナジエン、2-エチル-2,5-ノルボルナジエン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、1,4-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロヘキサン、1,3-ジビニルシクロペンタン、1,5-ジビニルシクロオクタン、1-アリル-4-ビニルシクロヘキサン、1,4-ジアリルシクロヘキサン、1-アリル-5-ビニルシクロオクタン、1,5-ジアリルシクロオクタン、1-アリル-4-イソプロペニルシクロヘキサン、1-イソプロペニル-4-ビニルシクロヘキサン、1-イソプロペニル-3-ビニルシクロペンタン、メチルテトラヒドロインデン等が挙げられる。
芳香族非共役ポリエン化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ビニルイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。
これらの中でも、基材との密着性及び耐水性を高めやすい観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)は、好ましくはα-オレフィンの共重合体であり、より好ましくはプロピレン以外のα-オレフィンの共重合体とプロピレンとの共重合体であり、さらに好ましくはエチレン-プロピレン系共重合体及び/又はプロピレン-ブテン系共重合体(例えばプロピレン・1-ブテン共重合体)であり、さらにより好ましくはエチレン-プロピレン系共重合体である。なお、本明細書において、共重合体中のエチレンに由来する構成単位を「エチレン単位」と略称することがある。他の構成単位も同様に略称することがある。
本発明の一実施態様において、エチレン-プロピレン系共重合体又はプロピレン-ブテン系共重合体中のプロピレン単位の含有量は、基材との密着性及び耐水性を高めやすい観点から、該共重合体を構成する構造単位の合計量に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上、さらにより好ましくは75モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは95モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下である。なお、プロピレン単位の含有量は、例えば13C-NMRを用いて測定することができ、又は、原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の一実施態様において、ポリオレフィン系樹脂(A)がα-オレフィンと他の単量体との共重合体である場合、他の単量体単位の含有量は、基材との密着性及び耐水性を高めやすい観点から、ポリオレフィン系樹脂(A)のモル量に対して、好ましくは50モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であり、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは1モル%以上である。なお、他の単量体単位の含有量は、例えば13C-NMRを用いて測定することができ、又は、原料の仕込み比から算出することもできる。
ポリオレフィン系樹脂(A)は、従来から既知の重合方法、例えばラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、配位重合等により製造することが可能であり、それぞれリビング重合的であってよい。また、上記重合方法は、溶液重合、スラリー重合、バルク重合、固相重合、気相重合等いずれの重合形態であってもよい。溶液重合やスラリー重合の場合、溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、塩化メチレン、四塩化炭素、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、2-メトキシプロパノール、2-エトキシプロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の極性溶媒などが挙げられる。これらの中でも、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、及び脂環式炭化水素系溶媒が好ましく、より好ましくはトルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン及びシクロヘキサンである。これらの溶媒は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
<α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)>
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)(成分(B)ということがある)で変性されている。なお、ポリオレフィン系樹脂を変性するために使用される化合物を変性成分と称することがある。例えば、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)は変性成分である。また、変性に使用されることなく、ポリオレフィン系樹脂に含有されている成分を未変性成分と称することがある。
本明細書において、「変性」には、変性成分が、ポリオレフィン系樹脂(A)と、グラフト反応によりグラフト変性した直接変性、並びに、変性成分が、ポリオレフィン系樹脂(A)を変性している変性基に付加している付加変性が含まれる。
α,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸等が挙げられ、これらの中でも、基材との密着性を高めやすい観点から、(メタ)アクリル酸、マレイン酸が好ましい。本明細書において、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸という。他の記載も同様の意味である。
α,β-不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられ、これらの中でも、基材との密着性を高めやすい観点から、無水マレイン酸が好ましい。
α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上、さらにより好ましくは2.0質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)の変性量が上記の下限以上であると、基材に対する密着性を高めやすく、また上記の上限以下であると、耐水性を高めやすい。なお、成分(B)の変性量は、例えばアルカリ滴定法もしくはフーリエ変換赤外分光法を用いて測定することができ、又は、原料の仕込み比から算出することもできる。
なお、変性ポリオレフィン系樹脂中のα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)単位は、酸無水物基が保持されたものであっても、開環したものであってもよく、保持されたものと開環したものとの双方であってもよい。また、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。また、成分(B)は、変性成分として、少なくともポリオレフィン系樹脂の変性に使用されていれば、未変性成分として、変性ポリオレフィン系樹脂に含有されていてもよい。
<芳香環を2個以上有する化合物(C)>
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに芳香環を2個以上有する化合物(C)(成分(C)ということがある)で変性されているか、及び/又は、芳香環を2個以上有する化合物(C)を含有する。すなわち、芳香環を2個以上有する化合物(C)は、ポリオレフィン系樹脂を変性するために使用される変性成分であってもよく、変性に使用されることなく、変性ポリオレフィン系樹脂に含有されている未変性成分であってもよく、またその両方であってもよい。
芳香環を2個以上有する化合物(C)は、芳香環を2個以上含んでいれば、特に限定されず、芳香環とは単環式芳香環を示す。単環式芳香環としては、単環式芳香族炭化水素環、好ましくは炭素数6~15の単環式芳香族炭化水素環、例えばベンゼン環等;硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む単環式芳香族複素環、好ましくは炭素及びヘテロ原子数5~15の単環式芳香族複素環、例えばピリジン環、ジアザベンゼン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環、アゾール環、ジアゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環等が挙げられる。これらの中でも、高温環境下における基材との密着性及び耐水性を高めやすい観点から、ベンゼン環が好ましい。
芳香環を2個以上有する化合物(C)としては、例えば、2個以上の単環式芳香環が縮合した縮合多環式芳香環、又は、2個以上の単環式芳香環、2個以上の縮合多環式芳香環、若しくは1個以上の単環式芳香環及び1個以上の縮合多環式芳香環が、互いに単結合、脂肪族基又は脂環式基等を介して結合した環集合芳香環を有する化合物が挙げられる。
縮合多環式芳香環としては、縮合多環式芳香族炭化水素環、好ましくは炭素数10~20の縮合多環式芳香族炭化水素環、例えばナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環等;硫黄原子、窒素原子及び酸素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む縮合多環式芳香族複素環、好ましくは炭素及びヘテロ原子数8~20の縮合多環式芳香族複素環、例えばアザナフタレン環、ジアザナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾシロール環、フェノキサジン環、フェノチアジン環、アクリジン環等が挙げられる。これらの中でも、高温環境下における基材との密着性及び耐水性を高めやすい観点から、ナフタレン環が好ましい。
環集合芳香環は、単環式芳香環及び/又は縮合多環式芳香環が単結合、脂肪族基又は脂環式基等を介して結合(又は連結)された環集合芳香環、好ましくは炭素及びヘテロ原子数10~40の環集合芳香環である。環集合芳香環は、複数の単環式芳香環で構成されていてもよく、複数の縮合多環式芳香環で構成されていてもよく、これらの環を組合せて構成されていてもよい。具体的に環集合芳香環としては、例えばビフェニル環、ビピリジン環、フェニルナフチル環、テルフェニル環、テルピリジン環等が挙げられる。これらの中でも、高温環境下における基材との密着性を高めやすく、またポリオレフィン等の疎水性基材との親和性を高めやすい観点から、ビフェニル環が好ましい。
芳香環を2個以上有する化合物(C)、好ましくは縮合多環式芳香環又は環集合芳香環は、置換基を含んでいてよい。置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチルプロピル基、n-ヘキシル、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基;ヒドロキシル基;メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基及びデシルオキシ基等のアルコキシ基;シクロへキシルオキシ基等のシクロアルコキシ基;チオール基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のアルキルチオ基;シクロへキシルチオ基等のシクロアルキルチオ基;アセチル等のアシル基;カルボキシル基;ニトロ基;シアノ基;アミノ基;アルキルアミノ基、例えば窒素原子上に炭素数1~10のアルキル基(例えば上記アルキル基)を1つ有するモノアルキルアミノ基、窒素原子上に炭素数1~10のアルキル基(例えば上記アルキル基)を2つ有するジアルキルアミノ基若しくは2つのアルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成している環状アミノ基、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルヘキシルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基等;スクシンイミド基、フタルイミド基等のイミド基;(メタ)アクリロイル基:ビニル基などが挙げられる。これらの置換基は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの置換基は、成分(C)が変性成分として用いられる場合、少なくとも1つの置換基が、ポリオレフィン系樹脂に直接変性し得る置換基、又は、変性ポリオレフィン系樹脂に含まれる変性基、好ましくはカルボン酸及び/又はその誘導体(例えばエステル、酸無水物、酸ハロゲン化物、アミド等)と反応して付加変性し得る置換基であることが好ましい。直接変性し得る置換基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基が挙げられ、付加変性し得る置換基としては、例えばヒドロキシル基、アルコキシ基、チオール基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、反応性を高めやすく、基材との密着性を向上しやすい観点から、芳香環を2個以上有する化合物(C)は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物であることが好ましく、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物であることがより好ましく、アミノ基、メチルアミノ基及びエチルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物であることがさらに好ましい。
芳香環を2個以上有する化合物(C)としては、例えば、前記置換基を含んでいてよい縮合多環式芳香環及び前記置換基を含んでいてよい環集合芳香環を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。本発明の一実施態様では、基材との密着性及び耐水性を高めやすい観点から、芳香環を2個以上有する化合物(C)は、前記置換基を含んでいてよい縮合多環式芳香環を有する化合物であることが好ましく、前記置換基を含んでいてよいナフタレン環を有する化合物であること、又は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを含む縮合多環式芳香環を有する化合物であることがより好ましく、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを含むナフタレン環を有する化合物であることがさらに好ましい。
本発明の好適な実施態様では、芳香環を2個以上有する化合物(C)は、例えば1-ナフチルメチルアミン、2-ナフチルメチルアミン、1-ナフチルエチルアミン、2-ナフチルエチルアミン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1-エトキシナフタレン、2-エトキシナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトール、1-ナフチルメチルチオール、2-ナフチルメチルチオール、1-ナフチルエチルチオール、2-ナフチルエチルチオール、1-ナフチルチオール、2-ナフチルチオール等が挙げられる。これらの中でも、基材との密着性及び耐水性を高めやすい観点から、芳香環を2個以上有する化合物(C)は、1-ナフチルメチルアミン、2-ナフチルメチルアミン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、1-メトキシナフタレン、2-メトキシナフタレン、1-ナフトール及び2-ナフトールからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。成分(C)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらにより好ましくは2質量部以上、特に好ましくは3質量部以上であり、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下、さらにより好ましくは20質量部以下、特に好ましくは15質量部以下である。芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量が上記の下限以上であると、高温環境下における基材との密着性を高めやすく、かつ優れた耐水性を発現しやすい。芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量が上記の上限以下であると、得られる変性ポリオレフィン系樹脂層(又は塗膜)の外観性を向上しやすい。
本発明の一実施態様では、芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)1質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上、さらにより好ましくは1.5質量部以上であり、好ましくは15質量部以下、より好ましくは13質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量が上記の下限以上であると、高温環境下における基材との密着性を高めやすく、かつ優れた耐水性を発現しやすい。また芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量が上記の上限以下であると、得られる変性ポリオレフィン系樹脂層(又は塗膜)の外観性を向上しやすい。
本発明の一実施態様では、芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)と(メタ)アクリル酸エステル(D)との合計量を1質量部としたときに、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.2質量部以上、さらにより好ましくは0.3質量部以上、特に好ましくは0.4質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量が上記の下限以上であると、高温環境下における基材との密着性を高めやすく、かつ優れた耐水性を発現しやすい。また芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量が上記の上限以下であると、得られる変性ポリオレフィン系樹脂層(又は塗膜)の外観性を向上しやすい。
なお、成分(C)の変性量及び/又は含有量は、例えばフーリエ変換赤外分光法もしくは1N―NMRを用いて測定することができ、又は、原料の仕込み比から算出することもできる。成分(C)が部分的に未変性成分を含む場合は、変性量と含有量との割合は、変性ポリオレフィン系樹脂をキシレン等に溶解させ、次いで溶解液をメタノール等に攪拌しながら滴下して変性ポリオレフィン系樹脂を再沈殿させて回収した後、回収したサンプルを真空乾燥する洗浄工程を行った後に、フーリエ変換赤外分光法あるいは1N―NMRにより成分(C)の変性量を測定し、これを洗浄工程前の測定値(成分(C)の変性量と含有量の両方を含む)と比較して求めることができる。
<(メタ)アクリル酸エステル(D)>
変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに(メタ)アクリル酸エステル(D)(成分(D)ということがある)で変性されていてよい。(メタ)アクリル酸エステル(D)で変性されていると、基材との密着性を向上しやすい。
(メタ)アクリル酸エステル(D)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(2-イソシアナト)エチル(メタ)アクリレート、(ジメチルアミノ)(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル(D)の中でも、基材との密着性を高めやすい観点から、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレート及び/又はシクロアルキル基の炭素数が3~18であるシクロアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート及びトリデシル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つがより好ましく、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート及びドデシルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つがさらに好ましく、ブチルアクリレート及び/又は2-エチルヘキシルアクリレートが特に好ましい。成分(D)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、シクロアルキル基の炭素数が3~18であるシクロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本明細書では、(メタ)アクリル酸エステルが芳香環を2個以上有する化合物でもある場合は、成分(C)に分類される。また、成分(D)は、変性成分として、少なくともポリオレフィン系樹脂の変性に使用されていれば、未変性成分として、変性ポリオレフィン系樹脂に含有されていてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル(D)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上、さらにより好ましく5質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。(メタ)アクリル酸エステル(D)の変性量が上記の下限以上であると、基材との密着性を高めやすく、また(メタ)アクリル酸エステル(D)の変性量が上記の上限以下であると、耐水性を高めやすい。
<他の変性成分及び/又は含有成分(K)>
変性ポリオレフィン系樹脂は、成分(B)、成分(C)及び成分(D)以外の他の変性成分(K)で変性されていてもよく、成分(C)以外の他の含有成分(K)を含んでいてもよく、その両方を含んでいてもよい。他の変性成分及び/又は含有成分(K)を成分(K)と称することがある。
他の変性成分及び/又は含有成分(K)としては、例えば成分(B)及び成分(D)以外のα,β-不飽和カルボン酸の誘導体が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば(メタ)アクリル酸アミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド等のα,β-不飽和カルボン酸アミド及びイミド等が挙げられる。
他の変性成分及び/又は含有成分(K)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは1質量部以下であり、通常0質量以上である。
<変性ポリオレフィン系樹脂>
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂(A)がα,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性され、さらに芳香環を2個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を2個以上有する化合物(C)を含有する。すなわち、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)を変性成分として含み、芳香環を2個以上有する化合物(C)を変性成分及び/又は未変性成分として含むため、高温環境下(例えば60℃以上)であっても、基材に対する優れた密着性(又は接着性)を発現できる。さらに、本発明の好適な実施態様における変性ポリオレフィン系樹脂は、耐水性にも優れるため、基材に対する密着性と耐水性とを両立できる。したがって、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、接着剤、プライマー、バインダー等の前処理剤として好適に使用でき、特に、高温環境下に対する密着性が求められる用途、例えば自動車部品などの用途にも使用できる。
本発明の一実施態様において、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂の重量平均分子量(Mwと表記することがある)は、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは400,000以下、さらにより好ましくは300,000以下、特に好ましくは200,000以下である。変性ポリオレフィン系樹脂のMwが上記の下限以上であると、基材への密着性及び耐水性を高めやすく、また変性ポリオレフィン系樹脂のMwが上記の上限以下であると、変性ポリオレフィン系樹脂を溶媒に溶解した樹脂溶液の粘度を低減しやすいため、塗工性を高めやすい。Mwは、ポリスチレンを標準とするゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、算出することができ、例えば、実施例に記載の方法により算出できる。
本発明の一実施態様において、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、示差走査熱量測定(DSCと表記することがある)による融解ピーク(単に「融解ピーク」ということがある)が観測される樹脂であることが好ましい。示差走査熱量測定(DSC)による融解ピークが観測されるとは、-100~200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されることをいう。このような融解ピークが観測される変性ポリオレフィン系樹脂は、優れた耐水性を発現しやすい観点から好ましい。なお、融解ピークは、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の一実施態様において、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂のDSCにより測定される融点は、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下、さらにより好ましくは100℃以下、特に好ましくは90℃以下であり、通常30℃以上である。変性ポリオレフィン系樹脂のDSCにより測定される融点が上記の上限以下であると、基材に接着させる際の熱処理温度を低温化しやすく、プロセスの省エネルギー化が図りやすい。なお、変性ポリオレフィン系樹脂のDSCにより測定される融点は、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の一実施態様において、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂(又は変性ポリオレフィン系樹脂層)は、温度60℃での基材に対する剥離強度が、好ましくは0.8N/10mm以上、より好ましくは0.9N/10mm以上、さらに好ましくは1.0N/10mm以上、さらに好ましくは1.1N/10mm以上であり、通常100N/10mm以下である。温度60℃での基材に対する剥離強度が上記の下限以上であると、高温環境下での基材に対する優れた密着性を発現しやすい。なお、基材に対する剥離強度は、基材及びポリオレフィン系樹脂層を含む積層体を作製し、引張試験機を用い、測定温度60℃、引張速度50mm/分、引張角度180度で測定することができ、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
変性ポリオレフィン系樹脂は、必要に応じて、成分(C)及び成分(K)以外の他の含有成分(L)(成分(L)ということがある)を含んでいてよい。本明細書において、用語「変性ポリオレフィン系樹脂」は、該樹脂が、未変性成分として成分(C)及び/又は成分(K)を含有する場合や、成分(L)などを含有する場合も包含する意味である。
他の含有成分(L)としては、用途に応じて適宜選択でき、例えば老化防止剤、耐候安定剤、沈降防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤などの安定剤;揺変剤、増粘剤、耐候剤、帯電防止剤、滑剤、核剤、難燃剤、油剤、染料、硬化剤、架橋剤などの添加剤;ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウオラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、タルク、ガラスフレーク、硫酸バリウム、クレー、カオリン、微粉末シリカ、マイカ、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、セライトなどの無機、有機の充填剤等が挙げられる。他の含有成分(L)は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
[変性ポリオレフィン系樹脂の製造方法]
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば、成分(A)を溶融又は溶媒に溶解させた後、成分(B)、成分(C)、ラジカル開始剤(M)、並びに任意に成分(D)及び成分(K)を添加する工程を含む方法が挙げられる。
ラジカル開始剤(M)(成分(M)と称することがある)は、例えば有機過酸化物であり、好ましくは半減期が1時間となる分解温度が50~160℃である有機過酸化物である。分解温度が50℃以上であると変性量が向上する傾向にあり、分解温度が160℃以下であるとポリオレフィン系樹脂の分解が低減される傾向にある。これらの有機過酸化物は、分解してラジカルを発生した後、ポリオレフィン系樹脂からプロトンを引き抜く作用を有することが好ましい。
半減期が1時間となる分解温度が50~160℃である有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物、パーオキシケタール化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物等が挙げられる。かかる有機過酸化物の具体例としては、ジセチル パーオキシジカーボネート、ジ-3-メトキシブチル パーオキシジカーボネート,ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチル シクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピル パーオキシジカーボネート、t-ブチル パーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチル パーオキシカーボネート、ジイソプロピルペロキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルネオデカノエート,α―クミル パーオキシ ネオデカノエート,t-ブチル パーオキシ ネオデカノエート、t-ブチルペロキシネオヘプタノエート、1,1ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン,t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート,t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート,t-ブチルパーオキシラウレート,2,5ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン,t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブテン,t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)ペロキシード、n-ブチル-4,4-ビス(t-ベルオキシ)バレラート、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α-α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等が挙げられる。これらの中でも、有機過酸化物は、ジアルキルパーオキサイド化合物、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカーボネート化合物又はアルキルパーエステル化合物であることが好ましい。
ラジカル開始剤(M)の添加量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~5質量部である。ラジカル開始剤(M)の添加量が上記の下限以上であると、ポリオレフィン系樹脂(A)の変性量を高めやすく、またラジカル開始剤(M)の添加量が上記の上限以下であると、未反応のラジカル開始剤の含有量が低減されやすい。
成分(A)を溶融させる方法(方法(1)と称することがある)としては、特に限定されず、例えば、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸又は二軸の押出機等の混練機を用いる方法が挙げられ、連続生産が可能であり、生産性を向上させやすい観点からは、押出機を用いる方法が好ましい。本発明の一実施態様では、押出機を用いて、加熱下で成分(A)を予め溶融混練し、成分(B)、成分(C)、ラジカル開始剤(M)、並びに、任意に成分(D)及び成分(K)を、押出機の供給口より供給して混練を行う方法が好ましく用いられる。
成分(A)を溶媒に溶解させる方法(方法(2)と称することがある)としては、特に限定されず、例えば、成分(A)を加熱下で溶媒に溶解し、成分(B)、成分(C)、成分(M)、並びに、任意に成分(D)及び成分(K)を添加して混合する方法が挙げられる。
溶媒としては、<ポリオレフィン系樹脂(A)>の項に記載の溶媒が挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、脂環式炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、芳香族炭化水素系溶媒及び/又はエステル系溶媒がより好ましい。溶媒は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、方法(1)及び(2)では、成分(A)を予め溶融又は溶解した後、成分(A)以外の成分を添加しているが、成分(A)と成分(A)以外の成分とを同時に溶融又は溶解する方法であってもよい。
方法(1)及び(2)において、各成分を添加する順序は、特に限定されず、全て同時に添加してもよく、一部の成分を添加した後、残りの成分を添加してもよく、複数回にわけて順次添加してもよい。本発明の一実施態様では、成分(A)を溶融又は溶解後、成分(B)及び成分(M)を添加し、さらに成分(C)を添加する方法が好ましい。また、成分(D)を含有する場合、成分(B)、成分(D)及び成分(M)を添加後、成分(C)を添加する方法が好ましく用いられる。
また、一部の成分によりポリオレフィン系樹脂(A)を変性し、変性樹脂を得た後、該変性樹脂に残りの成分を加えることにより、変性樹脂をさらに変性するか、及び/又は変性樹脂に残りの成分を含有させてもよい。例えば、ポリオレフィン系樹脂(A)を溶融又は溶解後、そこに成分(B)及び成分(M)を加えて、成分(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂(x)を得た後、該変性ポリオレフィン系樹脂(x)を溶融又は溶解し、さらに成分(C)を加えてもよい。かかる場合、成分(C)は、成分(B)由来の変性基に付加反応するか、及び/又は、変性ポリオレフィン系樹脂に含有し得る。また、かかる実施態様において、成分(B)及び成分(M)と同時に、成分(D)を加えて、成分(B)及び成分(D)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂(x)としてもよい。前記変性ポリオレフィン系樹脂(x)のMw及び融点は、それぞれ、<変性ポリオレフィン系樹脂>の項に記載の変性ポリオレフィン系樹脂のMw及び融点と同様の範囲から選択できる。
変性ポリオレフィン系樹脂の製造方法において、成分(B)及び成分(D)の添加量はそれぞれ、成分(A)に対する成分(B)及び成分(D)の上記変性量と同様の範囲から選択できる。また、成分(C)の添加量は、成分(A)に対する成分(C)の上記変性量及び/又は含有量と同様の範囲から選択できる。
[積層体及びその製造方法]
本発明は、基材と、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を含有する層(変性ポリオレフィン系樹脂層ということがある)とを含む積層体を包含する。本発明の積層体は、前記変性ポリオレフィン系樹脂を含有する層を含むため、高温環境下であっても、変性ポリオレフィン系樹脂層と基材との優れた密着性を有し、これにより優れた耐久性を発現できる。積層体に含まれる基材及び変性ポリオレフィン系樹脂層の数は、それぞれ1又は複数であってよい。基材を複数有する場合、各基材の種類は同一又は異なっていてもよい。また、変性ポリオレフィン系樹脂層が複数ある場合、各変性ポリオレフィン系樹脂層の組成は同一又は異なっていてもよい。また、変性ポリオレフィン系樹脂層を構成する変性ポリオレフィン系樹脂は1種又は複数種であってよい。
基材を構成する(又は形成する)材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ABS樹脂、EVA樹脂、ゴム、ガラス、紙、木材、織布、編布、不織布、金属(例、鉄、アルミ、銅、ニッケル、銀、金、白金、各種合金)、強化繊維(例、炭素繊維、ガラス繊維、セルロース繊維)、石材等が挙げられる。これらの材料は、単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明の一実施態様において、基材を構成するポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン(エチレンに由来する構造単位を主成分とするポリオレフィン)、ポリプロピレン(プロピレンに由来する構造単位を主成分とするポリオレフィン)、ポリスチレン(スチレンに由来する構造単位を主成分とするポリオレフィン)等が挙げられる。
基材は、樹脂等に加え、さらに無機フィラー成分や顔料等とを含有する組成物からなるものであってもよい。無機フィラー成分及び顔料の例としては、タルク、マイカ、モンモリロナイト等の板状フィラー;短繊維ガラス繊維、長繊維ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ゾノライト等の繊維状フィラー;チタン酸カリウム、マグネシウムオキシサルフェート、窒化珪素、ホウ酸アルミニウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、ワラストナイト、炭酸カルシウム、炭化珪素等の針状(ウイスカー)フィラー;沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の粒状フィラー;ガラスバルーンのようなバルン状フィラー等;亜鉛華、チタン白、硫酸マグネシウム等の無機充填剤や顔料が挙げられる。
基材の形状は、特に制限されず、フィルム、シート、板状体等であってよく、また、射出成形、圧縮成形、中空成形、押出成形、回転成形等の公知の成形法により得られる成形体であってもよい。
本発明の一実施態様では、基材の厚みは、基材の種類や数に応じて適宜選択でき、塗工適正の観点から、例えば1~10,000μm、好ましくは5~5,000μmである。また、変性ポリオレフィン系樹脂層の厚みは、組成や用途等に応じて適宜選択でき、例えば0.1~500μm、好ましくは1~300μm、より好ましくは3~200μmである。基材又は変性ポリオレフィン系樹脂層が複数ある場合、上記厚みは1つの基材又は1つの変性ポリオレフィン系樹脂層の厚みを示す。
本発明の積層体は、基材及びポリオレフィン系樹脂層以外の他の層を含んでいてよい。他の層としては、例えば塗料で形成された層(塗料層ということがある)等が挙げられる。本発明の積層体は他の層を1又は複数含んでいてよく、他の層を複数含む場合は、他の層の種類は同一又は異なっていてもよい。他の層(好ましくは塗料層)の厚みは、特に限定されないが、例えば1~500μm、好ましくは10~400μmである。
本発明の積層体を構成する層構成としては、例えば、基材/ポリオレフィン系樹脂層をこの順に有する層構成;第1基材/ポリオレフィン系樹脂層/第2基材をこの順に有する層構成;第1基材/ポリオレフィン系樹脂層/塗料層をこの順に有する層構成などが挙げられる。
本発明の一実施態様にかかる変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン樹脂からなる基材のような非極性表面を有する基材との密着性、及び極性表面を有する基材との密着性の両方に優れるため、例えばポリオレフィン樹脂からなる第1基材(非極性表面を有する第1基材)と極性表面を有する第2基材とを互いに接着させるための接着剤として好適である。つまり、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、互いに同種の材質からなる基材同士を接着する場合でも、異種の材質からなる基材同士を接着する場合でも、優れた接着性を発揮する。したがって、本発明の積層体が第1基材/ポリオレフィン系樹脂層/第2基材をこの順に有する層構成を含む場合、第1基材がポリオレフィン樹脂基材(非極性表面を有する基材)であり、第2基材が極性表面を有する基材である構成を好適に用いることができる。
本発明の一実施態様では、本発明の積層体は、第1基材がポリウレタン樹脂基材であり、第2基材がポリオレフィン樹脂基材である層構成;第1基材がポリウレタン樹脂基材であり、第2基材がポリエステル樹脂基材である層構成;第1基材がポリ(メタ)アクリル樹脂基材であり、第2基材がポリオレフィン樹脂基材である層構成;第1基材がウレタンアクリル樹脂基材であり、第2基材がポリオレフィン樹脂基材である層構成、第1基材がポリウレタン樹脂基材であり、第2基材が金属である層構成などを好適に用いることができる。
本発明の一実施態様では、本発明の積層体は、基材がポリオレフィン樹脂基材であり、第2基材がアクリルウレタン塗料層である層構成などを好適に用いることができる。
本発明の積層体の製造方法は、特に限定されないが、変性ポリオレフィン系樹脂を含む溶液(変性ポリオレフィン系樹脂溶液ということがある)を基材に塗布して、乾燥(又は乾燥及び硬化)することにより塗膜を形成して変性ポリオレフィン系樹脂層を得る工程(a)を含む方法が挙げられる。また、本発明の積層体が2つの基材又は他の層を含む場合、工程(a)に加え、変性ポリオレフィン系樹脂層上に、第2基材又は他の層を積層する工程(b)を含む方法が挙げられる。
工程(a)において、変性ポリオレフィン系樹脂溶液は、変性ポリオレフィン系樹脂を溶媒に溶解することにより調製してもよいし;方法(2)により変性ポリオレフィン系樹脂を製造した場合、変性ポリオレフィン系樹脂を溶液から単離することなく、そのまま、その溶液を用いてもよい。例えば、後者の場合、成分(B)及び任意に成分(D)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂溶液(X)に、成分(C)を加えて、さらに成分(C)で変性させるか、及び/又は成分(C)を含有させた変性ポリオレフィン系樹脂溶液(Y)を、該樹脂を単離することなく、そのまま用いることができる。また、変性ポリオレフィン系樹脂溶液に、他の成分、例えば他の含有成分(L)を添加することもできる。
変性ポリオレフィン系樹脂溶液の固形分濃度は、基材への塗布性を高めやすい観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。固形分とは、溶液に含まれる溶媒を除く全ての成分を意味し、固形分濃度とは、溶液の質量に対する固形分の質量を示す。
工程(a)において、基材に変性ポリオレフィン系樹脂溶液を塗布する方法は、慣用の方法を用いることができる。塗布方法としては、例えば、刷毛塗り、エアスプレー法、エアレススプレー法、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング等が挙げられる。
工程(a)において、乾燥温度や乾燥時間は、塗膜が形成可能であるものであれば、特に限定されないが、例えば30℃~160℃、好ましくは35℃~100℃、より好ましくは40℃~80℃であってよく、また乾燥時間は、例えば1分間~1時間、好ましくは3~30分間であってよい。乾燥方法は、例えば慣用の方法を用いることができ、例えばニクロム線、赤外線、高周波等により行うことができる。
工程(b)において、変性ポリオレフィン系樹脂層上に、第2基材を積層する方法としては、第2基材を、ポリオレフィン系樹脂層を介して第1基材に貼り合わせ、熱処理する方法が挙げられる。かかる方法では、貼合させる第2基材にも予め、ポリオレフィン系樹脂層を形成しておいてもよい。
工程(b)において、変性ポリオレフィン系樹脂層上に、塗料層等の他の層を積層する方法としては、変性ポリオレフィン系樹脂層上に、塗料を塗布し、乾燥する方法が挙げられる。塗布方法は、上記に記載の塗布方法が挙げられ、乾燥温度や乾燥時間は、塗料の種類に応じて適宜選択できる。
[接着剤及びバインダー]
本発明は、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を含む接着剤又はバインダーを包含する。本発明の接着剤又はバインダーは、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂を含むため、高温環境下においても基材に対する優れた密着性を発現できる。本発明の変性ポリオレフィン系樹脂は、プライマーとして用いることもできる。接着剤、バインダー又はプライマーは、変性ポリオレフィン系樹脂を1種又は複数種を含んでいてよく、また変性ポリオレフィン系樹脂以外の成分、例えば溶媒、更なる樹脂(変性ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂)、乳化剤、増粘剤、分散剤、硬化剤、顔料、粘度調整剤、消泡剤を含んでいてよい。これらの成分は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。更なる樹脂としては、変性ポリオレフィン系樹脂とは異なる種類のポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、AS樹脂等の重合体及び共重合体並びにそれらの変性物等の種々のものが挙げられる。更なる樹脂としては、粘着樹脂又は粘着付与剤としての機能を発揮する樹脂を使用してもよい。このような樹脂としては、例えば、ロジン類、テルペン系樹脂、炭素数5の石油留分を重合した石油系樹脂及びこの水素添加樹脂、炭素数9の石油留分を重合した石油系樹脂及びこの水素添加樹脂、その他の石油系樹脂、クマロン樹脂並びにインデン樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。
本発明の変性ポリオレフィン系樹脂、積層体、接着剤及びバインダー(又はプライマー)は、優れた密着性を有するため、自動車、家電、建材など各種工業部品に用いることができ、特に、薄肉化、高機能化、大型化された部品・材料として実用に十分な性能を有している。変性ポリオレフィン系樹脂、積層体、接着剤及びバインダー(又はプライマー)は、例えばバンパー、インストルメントパネル、トリム、ガーニッシュなどの自動車部品、テレビケース、洗濯機槽、冷蔵庫部品、エアコン部品、掃除機部品などの家電機器部品、便座、便座蓋、水タンクなどのトイレタリー部品、浴槽、浴室の壁、天井、排水パンなどの浴室周りの部品などの各種工業部品用成形材料として用いることができる。特に、本発明の変性ポリオレフィン系樹脂、積層体、接着剤及びバインダー(又はプライマー)は、高温環境下における密着性が求められる用途、例えば自動車部品等に好適に使用できる。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<重量平均分子量>
変性ポリオレフィン系樹脂(x)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法によって、下記の条件で測定できる。
装置:東ソー社製 HLC-8121GPC/HT
カラム:東ソー社製 TSKgel GMHHR-H(S)HT 2本
温度:145℃
溶媒:o-ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/分
試料濃度:1mg/ml
測定注入量:300μl
分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
重量平均分子量(Mw)の算出に際しては、標準試料として市販の単分散のポリスチレン標準試料を測定し、標準試料の保持時間と分子量から検量線を作成し算出を行える。
<融点及び結晶融解熱量>
変性ポリオレフィン系樹脂の融点、及び結晶融解熱量が1J/g以上である融解ピークは、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ(SII)社製、EXSTAR6000)を用い以下の条件で測定できる。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持する。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で-100℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持する。
(iii)次いで、-100℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する。このときに結晶の融解ピークが観察される温度を融点とする。また、ピーク面積、すなわち結晶融解熱量が1J/g以上である融解ピークの有無を確認する。
<剥離強度(密着性)の評価>
実施例及び比較例で得られた積層体を10mm幅で切り出し、引張試験機(株式会社島津製作所製オートグラフ)を用い、測定温度60℃、引張速度50mm/分、引張角度180度で、基材に対する変性ポリオレフィン系樹脂層の剥離強度(N/10mm)を測定した。
(実施例1)
<変性ポリオレフィン系樹脂の製造>
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた1000mlセパラブルフラスコに、ポリオレフィン系樹脂(a)[エチレン・プロピレン共重合体(エチレン:プロピレン=15モル%:85モル%)]400g、及びプロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート68gを入れ、窒素雰囲気下、170℃に保たれた油浴中で溶融を行い、攪拌を行いながら系内が170℃になるように油浴の温度を調整した。系内が溶融した後、攪拌を行い均一な状態としながら、2-エチルヘキシルアクリレート48gと無水マレイン酸24g、パーブチルD(ジ-t-ブチルパーオキサイド)4gを添加した。系内を170℃に保ったまま、2時間反応を行った後、アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテートなどの低分子の揮発物質を除去した。減圧終了後、反応物を取り出し、冷却することで、変性ポリオレフィン系樹脂(x)を得た。
その後、変性ポリオレフィン系樹脂(x)15gとトルエン135gをフラスコに入れ、100℃に保たれた油浴中で溶解させ、固形分10%の変性ポリオレフィントルエン溶液(X)を得た。
室温下、得られた変性ポリオレフィントルエン溶液(X)20gをフラスコに入れた後、ナフチルメチルアミン0.18gを加えて撹拌し、変性ポリオレフィン系樹脂(y-1)を含む溶液(Y-1)(以下、変性ポリオレフィン系樹脂溶液と略すことがある)を得た。次いで、得られた変性ポリオレフィン系樹脂溶液(Y-1)をテフロンシャーレに注ぎ、一晩風乾した後、減圧することにより、変性ポリオレフィン系樹脂溶液(Y-1)から溶媒を除去し、変性ポリオレフィン系樹脂(y-1)を得た。
変性ポリオレフィン系樹脂(y-1)において、ナフチルメチルアミンの変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(a)100質量部に対して10質量部であった。
<積層体の製造>
ポリプロピレン基材(脱脂処理済)に、変性ポリオレフィン系樹脂溶液(Y-1)を乾燥膜厚で約10μmになるようにワイヤーバーで塗工し、50℃にて5分間加熱して乾燥し、その後、その上にアクリルウレタン塗料「ポリナールNo.800」(大橋化学工業株式会社製)を乾燥膜厚で約100μmとなるようにワイヤーバーで塗工し、80℃で30分間加熱乾燥させて、ポリプロピレン基材、変性ポリオレフィン系樹脂層、及び塗料層(ポリウレタンアクリレートからなる層)をこの順に有する積層体を得た。
(比較例1)
ナフチルアミンに代えて、ベンジルメチルアミンを用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、変性ポリオレフィン系樹脂(y-2)及び積層体を得た。
(比較例2)
ナフチルメチルアミンを添加することなく、樹脂溶液として、そのまま変性ポリオレフィントルエン溶液(X)を用いて、積層体を形成したこと以外は、実施例1と同様の方法により、変性ポリオレフィン系樹脂(x)及び積層体を得た。
実施例及び比較例で得られた積層体において、上記測定方法に従って、基材に対するポリオレフィン系樹脂層の剥離強度を測定した結果を表1に示す。
Figure 2022158660000001
実施例1で得られた積層体は、比較例1及び2で得られた積層体と比べ、60℃における剥離強度が顕著に高いことがわかった。従って、本発明の積層体は、高温環境下であっても、基材との優れた密着性を有する。

Claims (11)

  1. ポリオレフィン系樹脂(A)が、α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)で変性された変性ポリオレフィン系樹脂であって、
    該変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに芳香環を2個以上有する化合物(C)で変性されているか、及び/又は、芳香環を2個以上有する化合物(C)を含有する、変性ポリオレフィン系樹脂。
  2. 前記変性ポリオレフィン系樹脂は、さらに(メタ)アクリル酸エステル(D)で変性されている、請求項1に記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
  3. ポリオレフィン系樹脂(A)は、エチレン-プロピレン系共重合体及び/又はプロピレン-ブテン系共重合体である、請求項1又は2に記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
  4. 芳香環を2個以上有する化合物(C)は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基及びアルキルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1つを有する化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
  5. 芳香環を2個以上有する化合物(C)は、置換基を含んでいてよいナフタレン環を有する化合物である、請求項1~4のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
  6. α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその酸無水物(B)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~20質量部である、請求項1~5のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
  7. 芳香環を2個以上有する化合物(C)の変性量及び/又は含有量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~70質量部である、請求項1~6のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
  8. (メタ)アクリル酸エステル(D)の変性量は、ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して、0.1~30質量部である、請求項2~7のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂。
  9. 基材と、請求項1~8のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂を含有する層とを含む、積層体。
  10. 請求項1~8のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂を含む、接着剤。
  11. 請求項1~8のいずれかに記載の変性ポリオレフィン系樹脂を含む、バインダー。
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