JP2022157234A - 樹脂シート及び樹脂シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】突刺強度及び引張伸度等の機械的特性が向上した樹脂シートを提供する。【解決手段】[1]ポリオレフィン系樹脂(a)により構成された多孔フィルム(A)と、前記多孔フィルム(A)の空孔に充填されたオレフィン系エラストマー(B)とを含むフィリング層を備える、樹脂シート、[2]ポリオレフィン系樹脂(a)により構成された多孔フィルム(A)の表面の少なくとも一部に、オレフィン系エラストマー(B)を配置して加圧することにより、前記多孔フィルム(A)の空孔に前記オレフィン系エラストマー(B)を充填させる工程を含む、樹脂シートの製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂シート及び樹脂シートの製造方法に関する。
ポリオレフィン系多孔フィルムは、例えば、衣類・衛生材料等に使用する透湿防水性フィルム、水処理に使用する各種フィルター、電子機器の断熱材、住宅・建材等に使用する断熱フィルム、電池等に使用する電池用セパレータ等の各種分野で幅広く利用されている。
例えば、特許文献1には、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマー25~75質量部を含有する熱可塑性樹脂組成物にて形成され、前記ポリプロピレン樹脂を主成分として含む海部と、前記ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーを主成分として含む島部とからなる海島構造を有する微多孔フィルムであって、前記ポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーの230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレートが0~0.1g/10分であることを特徴とする二軸延伸微多孔フィルムが記載されている。前記特許文献1には、前記二軸延伸微多孔フィルムが、粉落ちもなく衛生性に優れ、滅菌処理等に必要な高度な水蒸気透過性を有する連通孔を外観のムラ無く均一に有し、かつ注射針やカテーテル等の鋭利な物を包装するのに十分な突刺し強度を有すると記載されている。
特開2016-216726号公報
近年、ポリオレフィン系多孔フィルムの新たな用途展開が期待されている。例えば、ポリオレフィン系多孔フィルムの突刺強度や引張伸度等の機械的特性を向上させることができれば、高強度化や高柔軟化が求められる用途や、薄膜化が求められる用途等に好適に展開することが可能となる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、突刺強度及び引張伸度等の機械的特性が向上した樹脂シートを提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、ポリオレフィン系多孔フィルムの空孔にオレフィン系エラストマーを充填させることにより、ポリオレフィン系多孔フィルムの突刺強度及び引張伸度等の機械的特性を向上できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、以下に示す樹脂シート及び樹脂シートの製造方法が提供される。
<1> ポリオレフィン系樹脂(a)により構成された多孔フィルム(A)と、前記多孔フィルム(A)の空孔に充填されたオレフィン系エラストマー(B)とを含むフィリング層を備える、樹脂シート。
<2> JIS K7244:1999に準拠し、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度3℃/分、周波数10Hz、歪量0.1%、引張モードの条件での動的粘弾性測定により得られる、前記樹脂シートの0℃における損失正接(tanδ)が0.10以上である、上記<1>に記載の樹脂シート。
<3> 厚さが10μm以上300μm以下である、上記<1>又は<2>に記載の樹脂シート。
<4> 前記フィリング層の少なくとも一方の面に、前記オレフィン系エラストマー(B)により構成されたエラストマー層を更に備える、上記<1>~<3>のいずれかに記載の樹脂シート。
<5> 前記フィリング層の厚さ(t)に対する前記エラストマー層の厚さ(t)の比(t/t)が0.5以上15.0以下である、上記<4>に記載の樹脂シート。
<6> JIS Z1707:2019に準拠して測定される、突刺強度が2.5N以上である、上記<1>~<5>のいずれかに記載の樹脂シート。
<7> JIS K7127:1999に準拠して測定される、シート面と平行な少なくとも1方向(X方向)の引張強度が10MPa以上である、上記<1>~<6>のいずれかに記載の樹脂シート。
<8> JIS K7127:1999に準拠して測定される、前記X方向の引張強度(fx)と、前記シート面に平行で前記X方向と直角な方向(Y方向)の引張強度(fy)との比(fx/fy)が5.0以下である、上記<7>に記載の樹脂シート。
<9> JIS K7127:1999に準拠して測定される、シート面と平行な少なくとも1方向(X方向)の引張伸度が15%以上である、上記<1>~<8>のいずれかに記載の樹脂シート。
<10> 前記ポリオレフィン系樹脂(a)は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む、上記<1>~<9>のいずれかに記載の樹脂シート。
<11> 前記オレフィン系エラストマー(B)の含有量が、前記多孔フィルム(A)100質量部に対して、100質量部以上3,000質量部以下である、上記<1>~<10>のいずれかに記載の樹脂シート。
<12> 前記多孔フィルム(A)は、不溶融性粒子、結晶核剤、及び前記ポリオレフィン系樹脂(a)に対して非相溶性の樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、上記<1>~<11>のいずれかに記載の樹脂シート。
<13> ポリオレフィン系樹脂(a)により構成された多孔フィルム(A)の表面の少なくとも一部に、オレフィン系エラストマー(B)を配置して加圧することにより、前記多孔フィルム(A)の空孔に前記オレフィン系エラストマー(B)を充填させる工程を含む、樹脂シートの製造方法。
<14> 前記工程では、前記オレフィン系エラストマー(B)を溶融させながら加圧する、上記<13>に記載の樹脂シートの製造方法。
<15> JIS K7244:1999に準拠し、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度3℃/分、周波数10Hz、歪量0.1%、引張モードの条件での動的粘弾性測定により得られる、前記樹脂シートの0℃における損失正接(tanδ)が0.10以上である、上記<13>又は<14>に記載の樹脂シートの製造方法。
<16> 前記樹脂シートの厚さが10μm以上300μm以下である、上記<13>~<15>のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
<17> 前記ポリオレフィン系樹脂(a)は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む、上記<13>~<16>のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
<18> 前記樹脂シート中の前記オレフィン系エラストマー(B)の含有量が、前記多孔フィルム(A)100質量部に対して、100質量部以上3,000質量部以下である、上記<13>~<17>のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
<19> 前記多孔フィルム(A)は、不溶融性粒子、結晶核剤、及び前記ポリオレフィン系樹脂(a)に対して非相溶性の樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、上記<13>~<18>のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
本発明によれば、突刺強度、及び引張伸度等の機械的特性が向上した樹脂シートを提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
なお、本明細書において、数値の記載に関する「A~B」という用語は、「A以上B以下」を意味する。本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
[樹脂シート]
本発明の樹脂シート(以下、「本樹脂シート」ともいう。)は、ポリオレフィン系樹脂(a)により構成された多孔フィルム(A)と、多孔フィルム(A)の空孔に充填されたオレフィン系エラストマー(B)とを含むフィリング層を備える。
本発明によれば、ポリオレフィン系多孔フィルムに対して、突刺強度及び引張伸度等の機械的特性を向上させることができる。このため、ポリオレフィン系多孔フィルムを高強度化や高柔軟化が求められる用途や、薄膜化が求められる用途等に好適に展開することが可能となる。
本発明の樹脂シートが上記構成であることにより本発明の効果を奏する理由については定かではないが、以下のように推察される。
本発明の樹脂シートは、ポリオレフィン系樹脂(a)により構成された多孔フィルム(A)と、多孔フィルム(A)の空孔に充填されたオレフィン系エラストマー(B)とを含むフィリング層を備える。
多孔フィルム(A)の空孔にオレフィン系エラストマー(B)が充填されて一体化することにより、得られる樹脂シートが高密度化し、突刺強度が向上すると考えられる。
また、多孔フィルム(A)の空孔に、柔軟性が良好なオレフィン系エラストマー(B)が充填されて一体化することにより、得られる樹脂シートが高柔軟化し、引張伸度が向上すると考えられる。
以上から、本発明の樹脂シートは、多孔フィルム(A)の空孔にオレフィン系エラストマー(B)を充填させることで、多孔フィルム(A)とオレフィン系エラストマー(B)とが効果的に一体化し、突刺強度及び引張伸度等の機械的特性を向上できると考えられる。
<多孔フィルム(A)>
多孔フィルム(A)は、ポリオレフィン系樹脂(a)により構成される。ここで、多孔フィルム(A)は、ポリオレフィン系樹脂(a)のみから構成されてもよいし、ポリオレフィン系樹脂(a)を主成分として含む樹脂組成物から構成されてもよい。
また、多孔フィルム(A)は、単層構成であってもよいし、多層構成であってもよい。 また、多孔フィルム(A)は、無延伸フィルムであってもよいし、一軸延伸又は二軸延伸フィルムであってもよいが、本樹脂シートの機械的特性をより向上させる観点から、一軸延伸又は二軸延伸フィルムであることが好ましい。
ここで、本明細書において、「主成分」とは含有量が最も多い成分を意味する。
多孔フィルム(A)がポリオレフィン系樹脂(a)を主成分として含む樹脂組成物から構成される場合、前記樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂(a)の含有量は、本樹脂シートの機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上である。前記樹脂組成物中のポリオレフィン系樹脂(a)の含有量の上限は特に限定されないが、例えば99質量%以下であり、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよく、85質量%以下であってもよい。
多孔フィルム(A)の形態としては、多孔性膜であってもよいし、不織布であってもよいが、得られる樹脂シートの引張伸度をより向上させる観点から、多孔性膜が好ましい。
(ポリオレフィン系樹脂(a))
ポリオレフィン系樹脂(a)としては、例えば、エチレンや、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等のα-オレフィンを重合した単独重合体又は共重合体が挙げられ、これらの中でも、本樹脂シートの機械的特性をより向上させる観点から、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレンとエチレン又はプロピレン以外のα-オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。
前記プロピレン以外のα-オレフィンの具体例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等が挙げられる。プロピレンと共重合させるエチレン又はα-オレフィンは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記各共重合体においては、前記α-オレフィンに由来する構成単位の含有量(α-オレフィン含有量)は、延伸によりポリプロピレン系樹脂を多孔化させやすくする観点から、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。同様の観点から、前記各共重合体におけるプロピレンに由来する構成単位の含有量は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。
ポリプロピレン系樹脂としては、本樹脂シートの機械的特性をより向上させる観点から、ホモポリプロピレンが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂(a)は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン系樹脂(a)の製造方法は特に限定されるものではなく、公知の重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等が挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」、「WINTEC」(日本ポリプロ株式会社製);「ノティオ」、「タフマーXR」(三井化学株式会社製);「ゼラス」、「サーモラン」(三菱ケミカル株式会社製);「住友ノーブレン」、「タフセレン」(住友化学株式会社製);「プライムPP」、「プライムTPO」(株式会社プライムポリマー製);「Adflex」、「Adsyl」、「HMS-PP(PF814)」(サンアロマー株式会社製);「バーシファイ」、「インスパイア」(ダウ・ケミカル社製)等の市販されている商品を使用できる。
ポリオレフィン系樹脂(a)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.5g/10分以上、更に好ましくは1.0g/10分以上、更に好ましくは1.5g/10分以上である。MFRを前記下限値以上とすることで、成形加工時において十分な溶融粘度を有し、高い生産性を確保することができる。
また、前記MFRは、本樹脂シートの機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは50g/10分以下、更に好ましくは20g/10分以下、更に好ましくは15g/10分以下、更に好ましくは10g/10分以下、更に好ましくは5.0g/10分以下である。
ポリオレフィン系樹脂(a)として、2種以上の樹脂を使用する場合には、各樹脂の混合物のMFRをポリオレフィン系樹脂(a)のMFRとする。
前記MFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
(多孔フィルム(A)中の他の成分)
多孔フィルム(A)がポリオレフィン系樹脂(a)を主成分として含む樹脂組成物から構成される場合、前記樹脂組成物中には、その性質を損なわない程度に、ポリオレフィン系樹脂(a)以外の成分を含む。前記樹脂組成物中の他の成分としては、例えば、不溶融性粒子、結晶核剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤等の各種添加剤、ポリオレフィン系樹脂(a)に対して非相溶性の樹脂(以下、「非相溶性樹脂」ともいう。)等が挙げられる。
これらの中でも、前記樹脂組成物は、不溶融性粒子、結晶核剤、及び非相溶性樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
不溶融性粒子としては、例えば、タルク、クレイ、モンモリロナイト、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、カオリナイト、シリカ、アルミナ等の無機系粒子;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、超高分子量ポリエチレン、酢酸ナトリウム等の有機系粒子等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂(a)の剛性を高めることが空孔形成に有効であると考えられることから、前記樹脂組成物中に結晶核剤が含まれていてもよい。
例えば前記結晶核剤としては、ジベンジリデンソルビトール(新日本理化株式会社製、商品名「ゲルオールMD」)、「アデカスタブNA-11」、「アデカスタブNA-27」、「アデカスタブNA-902」、「アデカスタブNA-21」、「アデカスタブNA-71」(左記5種ともに株式会社ADEKA製)、ステアリン酸マグネシウムとシリカの混合物を含むマスターバッチ(大日精化工業株式会社製、商品名「ハイサイクルマスター」)、2-ヒドロキシ-2-オキソ-4,6,10,12-テトラ-tert-ブチル-1,3,2-ジベンゾ[d,g]ペルヒドロジオキサホスファロシンのナトリウム塩を含むマスターバッチ(株式会社ADEKA製、商品名「アデカスタブM-701」)等が利用できる。
その他、α晶核剤としては、無機系核剤としてシリカ、タルク、炭酸カルシウムが挙げられる。有機系核剤(カルボン酸金属塩タイプ)としてはステアリン酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸アルミニウム塩、アルミニウムジベンゾエート、カリウムベンゾエート、リチウムベンゾエート、ソジウムβ・ナフタレートソジウムシクロヘキシサンカルボキシレート、ピメリン酸金属塩、ロジン酸金属塩等が挙げられる。また、ベンジリデンソルビトール及びその誘導体タイプ、リン酸エステル金属塩もある。さらには、ポリマータイプとしては、ポリ-3-メチルブテン-1、ポリビニルシクロアルカン、ポリビニルトリアルキルシラン、EPR、ケブラー繊維、リン酸2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ナトリウム等が挙げられる。
多孔フィルム(A)を構成する樹脂組成物に非相溶性樹脂を添加し、ポリオレフィン系樹脂(a)のマトリックス中に非相溶性樹脂がドメインを形成する海島構造を形成することにより、効率的に微細で均一性の高い多孔構造を有する多孔フィルムを得ることができ、空孔の形状や孔径を制御しやすくなる。
非相溶性樹脂としては、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
スチレン系熱可塑性エラストマーとは、スチレン成分を基材とした熱可塑性エラストマーの1種で、軟質成分(例えばブタジエン成分)と硬質成分(例えばスチレン成分)との連続体からなる共重合体であり、その共重合体の炭素の二重結合を単結合にするため水素添加されたものでもよい。
また、前記共重合体の種類としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。
また、ブロック共重合体としては、線状ブロック構造や放射状枝分れブロック構造等が挙げられ、本発明においてはいずれの構造のものを用いてもよいが、マトリックスとなるポリオレフィン系樹脂の中で明確等メインを形成させるためには、ブロック共重合体又はグラフト共重合体が好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーの中でも、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が1g/10分以下のスチレン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。
樹脂組成物中に分散した前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、樹脂との粘度差によって、その形状が変化するが、前記MFR範囲内のスチレン系熱可塑性エラストマーを使用すると、その形状が球状になりやすい。
球状分散したドメインは、アスペクト比が大きなドメインとは異なり、その後の延伸工程によって得られる多孔構造の均一性が高くなりやすく、物性安定性に優れるので好ましい。
さらに、前記MFR範囲内のスチレン系熱可塑性エラストマーを使用すれば、延伸工程時において、高い弾性率を有するマトリックスと低い弾性率のドメイン界面部分に応力が集中しやすくなるため、開孔起点が生じやすく、多孔化しやすいという利点がある。
また、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量は、好ましくは10~40質量%、より好ましくは10~35質量%である。スチレン系熱可塑性エラストマー中のスチレン含有量が10質量%以上であれば、効果的にポリオレフィン系樹脂(a)中にドメインを形成することができ、スチレン含有量が40質量%以下であれば過度に大きなドメイン形成を抑制することができる。
前記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に制限されるものではないが、例えばスチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、スチレン-エチレン-プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が挙げられる。
これらの中でも、効率的に前記樹脂組成物中にスチレン系熱可塑性エラストマーを分散させる観点から、ポリオレフィン系樹脂(a)、とりわけポリプロピレン系樹脂との相溶性が高い、エチレン成分(水添ブタジエン成分)、エチレン・プロピレン成分(水添イソプレン成分)、ブチレン成分が含有されているものが好ましく、中でもSEP、SEPS、SEBSがより好ましく、更には両末端がスチレン重合体となるSEPS、SEBSが特に好ましい。
多孔フィルム(A)がポリオレフィン系樹脂(a)を主成分として含み、さらに非相溶性樹脂を含む樹脂組成物から構成される場合、前記樹脂組成物中の非相溶性樹脂の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。
前記樹脂組成物中の非相溶性樹脂の含有量が上記下限値以上であると、延伸による多孔化が生じやすくなり、孔径の増大が望めるため好ましい。一方、前記樹脂組成物中の非相溶性樹脂の含有量が上記上限値以下であると、延伸に伴う多孔構造の過度な粗大化を防ぎ、機械特性を向上させることができる。
多孔フィルム(A)には、本発明を損なわない範囲で必要に応じてコロナ処理、プラズマ処理、印刷、コーティング、蒸着等の表面加工、更にはミシン目加工等を施すことができ、用途に応じて多孔フィルム(A)を数枚重ねて使用することも可能である。
多孔フィルム(A)の厚さは特に制限されるものではないが、本樹脂シートの機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、更に好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下である。
多孔フィルム(A)の平均孔径は、本樹脂シートの機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、更に好ましくは0.10μm以上、更に好ましくは0.13μm以上であり、そして、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、更に好ましくは10μm以下、更に好ましくは5.0μm以下、更に好ましくは1.0μm以下、更に好ましくは0.50μm以下である。
多孔フィルム(A)の平均孔径は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
多孔フィルム(A)の空孔率は多孔構造を規定する要素であり、多孔フィルム(A)の空間部分の割合を示す数値である。多孔フィルム(A)の空孔率は、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上であり、そして、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。
空孔率が上記下限値以上であると、オレフィン系エラストマー(B)が多孔フィルム(A)の内部まで浸入し易くなり、オレフィン系エラストマー(B)を空孔に高密度に充填できるため、得られる樹脂シートの突刺強度及び引張伸度等の機械的特性をより一層向上させることができる。
また、空孔率が上記上限値以下であると、多孔フィルム(A)の機械的強度を向上できるとともにオレフィン系エラストマー(B)の保持力を向上させることができるため、得られる樹脂シートをより一層薄膜化することができるとともに、寸法安定性も向上させることができる。
なお、空孔率の測定方法は以下のとおりである。
測定試料の実質量Wを測定し、多孔フィルム(A)を構成するポリオレフィン系樹脂(a)又は樹脂組成物の密度に基づいて空孔率が0%の場合の質量Wを計算し、これらの値から下記式に基づいて空孔率を算出する。
空孔率(%)={(W-W)/W}×100
空孔率は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
多孔フィルム(A)の融点は、本樹脂シートの機械的特性や耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上であり、本樹脂シートのマテリアルリサイクル性及び多孔フィルム(A)の成形性を向上させる観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは175℃以下、更に好ましくは172℃以下である。
融点は、示差走査熱量測定(DSC)で得られる融解ピークのピークトップ温度を意味し、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も温度が高い融解ピークの頂点温度を融点とする。
(多孔フィルム(A)の製造方法)
多孔フィルム(A)は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(a)又はポリオレフィン系樹脂(a)を主成分として含む樹脂組成物を溶融押出成形して延伸前シートを作製し、次いで、得られた延伸前シートを延伸することにより得ることができる。
まず、ポリオレフィン系樹脂(a)の融点以上、分解温度未満の温度条件下で押出機等を用いて溶融・混錬した後、成形することによって、延伸前の無孔シートを得る。前記無孔シートの成形方法としては、例えばTダイ成形が挙げられる。
次に、得られた延伸前シートを一軸延伸又は二軸延伸する。一軸延伸は、縦一軸延伸であってもよいし、横一軸延伸であってもよい。二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。
多孔フィルム(A)を作製するには、各延伸工程で延伸条件を選択すればよく、多孔構造を制御しやすい逐次二軸延伸を採用することがより好ましい。
なお、シートの流れ方向(MD)への延伸を「縦延伸」といい、流れ方向に対して垂直方向(TD)への延伸を「横延伸」という。
逐次二軸延伸を用いる場合、多孔構造の制御が比較的容易であり、機械強度や収縮率等の他の諸物性とのバランスがとりやすい。
また、延伸温度は、使用するポリオレフィン系樹脂(a)や樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時選択すればよい。
縦延伸は低温で行うことが望ましく、具体的な延伸温度は、好ましくは0~50℃、より好ましくは5~40℃である。縦延伸温度が50℃以下であれば、延伸時に高い弾性率を有するマトリックスと低い弾性率のドメイン界面部分に応力が集中しやすくなり、ボイド形成に伴う白化が進行するため好ましい。一方、0℃以上であれば、延伸時の破断が抑制できるため好ましい。
低温での縦延伸倍率は、好ましくは1.1~5.0倍、より好ましくは1.2~4.0倍、更に好ましくは1.3~3.0倍である。低温での延伸倍率を1.1倍以上とすることで白化が進行して、延伸による多孔化が十分起こっていることが示唆される。また、5.0倍以下とすることで、空孔の変形は抑制され、十分に白化した多孔フィルムを得ることができる。
また、縦延伸は、上記低温での延伸に続き、高温で延伸する二段階延伸工程としてもよい。具体的な高温での延伸温度は、好ましくは60~155℃、より好ましくは70~140℃、更に好ましくは80~130℃である。高温での縦延伸温度を60℃以上とすることで延伸時の破膜を抑制することができる。一方、155℃以下とすることで、低温での延伸で形成されたボイドが閉塞してしまうことを抑制できる。
高温での縦延伸倍率は、好ましくは1.5~7.0倍、より好ましくは1.8~6.0倍、更に好ましくは2.0~5.0倍である。高温での延伸倍率を1.5倍以上とすることで低温での縦延伸で形成されたボイドを拡大することができる。また、7.0倍以下とすることで、延伸破膜を抑えることができる。
次に、横延伸の温度は、好ましくは100~155℃、より好ましくは110~150℃である。前記横延伸温度が規定された範囲内であることによって、縦延伸時に生じた空孔が拡大されて多孔フィルム(A)の空孔率を増加することができ、十分な断熱性を有することができる。
横延伸倍率は、任意に選択できるが、好ましくは1.1~10倍、より好ましくは1.5~8.0倍、更に好ましくは1.5~5.0倍である。規定した横延伸倍率で延伸することによって、縦延伸時に生じた空孔を変形することなく、十分な空孔率を有することができる。
<オレフィン系エラストマー(B)>
オレフィン系エラストマー(B)は多孔フィルム(A)の空孔に充填されるものである。
多孔フィルム(A)の空孔には、オレフィン系エラストマー(B)のみが充填されていてもよいし、オレフィン系エラストマー(B)を主成分として含む樹脂組成物が充填されていてもよい。
多孔フィルム(A)の空孔にオレフィン系エラストマー(B)を主成分として含む樹脂組成物が充填される場合、前記樹脂組成物中のオレフィン系エラストマー(B)の含有量は、本樹脂シートの機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上である。前記樹脂組成物中のオレフィン系エラストマー(B)の含有量の上限は特に限定されないが、例えば100質量%以下である。
多孔フィルム(A)の空孔にオレフィン系エラストマー(B)を主成分として含む樹脂組成物が充填される場合、前記樹脂組成物中には、その性質を損なわない程度に、オレフィン系エラストマー(B)以外の成分を含む。前記樹脂組成物中の他の成分としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、滑剤、難燃剤等の各種添加剤、オレフィン系エラストマー(B)以外の樹脂等が挙げられる。
オレフィン系エラストマー(B)は、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等のオレフィンを主成分としたオレフィン系熱可塑性エラストマーである。その特長として、ポリオレフィン系樹脂(a)への相溶性が良好であり、非晶性でガラス転移温度Tgが0℃以下であり、柔軟性が良好であることが挙げられる。
オレフィン系エラストマー(B)としては、例えば、ポリプロピレンとエチレン-プロピレン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリエチレンとエチレン-プロピレン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリプロピレンとエチレン-プロピレン-非共役ポリエン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリエチレンとエチレン-プロピレン-非共役ポリエン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリプロピレンとエチレン-1-オクテン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物、ポリエチレンとエチレン-1-オクテン共重合体ゴムとのブレンド物又はその架橋物等が挙げられる。架橋は公知の方法で行うことができるが、その中でも有機過酸化物による架橋が好ましい。
オレフィン系エラストマー(B)の市販品としては、例えば、「ミラストマー」、「タフマー」(三井化学株式会社製)、「サントプレーン」、「ビスタマックス」(エクソンモービル・ジャパン合同会社製)、「エスプレンEPDM」、「エスポレックスTPE」(住友化学株式会社製)、「エンゲージ」(ダウ・ケミカル社製)、「サーモラン」(三菱ケミカル株式会社製)、「プライムTPO」(株式会社プライムポリマー製)等が挙げられる。
オレフィン系エラストマー(B)の融点は、本樹脂シートの機械的特性や耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、多孔フィルム(A)の空孔へのオレフィン系エラストマー(B)の充填性をより向上させる観点から、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下、更に好ましくは105℃以下である。
融点は、示差走査熱量測定(DSC)で得られる融解ピークのピークトップ温度を意味し、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も温度が高い融解ピークの頂点温度を融点とする。
オレフィン系エラストマー(B)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは10g/10分以上、更に好ましくは100g/10分以上、更に好ましくは1,000g/10分以上、更に好ましくは5,000g/10分以上、更に好ましくは8,000g/10分以上である。MFRを前記下限値以上とすることで、多孔フィルム(A)の空孔へのオレフィン系エラストマー(B)の充填性を向上でき、本樹脂シートの生産性及び機械的特性をより向上させることができる。
また、前記MFRは、本樹脂シートの機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは100,000g/10分以下、より好ましくは50,000g/10分以下、更に好ましくは40,000g/10分以下、更に好ましくは30,000g/10分以下である。
オレフィン系エラストマー(B)として、2種以上のエラストマーを使用する場合には、各エラストマーの混合物のMFRをオレフィン系エラストマー(B)のMFRとする。
前記MFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
本樹脂シートにおけるオレフィン系エラストマー(B)の含有量は、本樹脂シートの突刺強度及び引張伸度等の機械的特性をより向上させる観点から、多孔フィルム(A)100質量部に対して、好ましくは150質量部以上、より好ましくは200質量部以上、更に好ましくは250質量部以上、更に好ましくは300質量部以上、更に好ましくは400質量部以上、更に好ましくは500質量部以上であり、本樹脂シートの引張強度をより向上させる観点から、好ましくは3,000質量部以下、より好ましくは2,500質量部以下、更に好ましくは2,000質量部以下、更に好ましくは1,500質量部以下、更に好ましくは1,000質量部以下、更に好ましくは800質量部以下である。
<エラストマー層>
本樹脂シートは、ポリオレフィン系樹脂(a)により構成された多孔フィルム(A)と、多孔フィルム(A)の空孔に充填されたオレフィン系エラストマー(B)とを含むフィリング層を備え、突刺強度及び引張伸度等の機械的特性等をより向上させる観点から、前記フィリング層の少なくとも一方の面に、オレフィン系エラストマー(B)を含むエラストマー層を更に備えてもよい。
ここで、前記フィリング層は、多孔フィルム(A)とオレフィン系エラストマー(B)とが混在して一体化した層であり、前記エラストマー層は多孔フィルム(A)を含まない層である。
本樹脂シートの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することによって、前記フィリング層及び前記エラストマー層を区別することが可能である。
本樹脂シートにおいて、前記フィリング層の厚さ(t)に対する前記エラストマー層の厚さ(t)の比(t/t)は、本樹脂シートの突刺強度及び引張伸度等の機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、更に好ましくは1.2以上であり、そして、本樹脂シートの引張強度をより向上させる観点から、好ましくは15.0以下、より好ましくは12.0以下、更に好ましくは10.0以下、更に好ましくは8.0以下、更に好ましくは6.0以下、更に好ましくは4.0以下である。
[樹脂シートの特性]
(屈折率)
本樹脂シートにおいて、多孔フィルム(A)の屈折率(na)とオレフィン系エラストマー(B)の屈折率(nb)との差(na-nb)の絶対値は、本樹脂シートの透明性を向上させる観点から、好ましくは0.200以下、より好ましくは0.100以下、更に好ましくは0.050以下、更に好ましくは0.035以下である。
多孔フィルム(A)の屈折率(na)は、アッベ屈折率計により測定される、23℃、波長589nmにおける屈折率であり、例えば1.400以上、好ましくは1.450以上、更に好ましくは1.480以上、更に好ましくは1.490以上であり、そして、例えば1.600以下、好ましくは1.550以下、更に好ましくは1.520以下、更に好ましくは1.515以下である。
オレフィン系エラストマー(B)の屈折率(nb)は、オレフィン系エラストマー(B)を厚さ200μmのシート状に成形し、アッベ屈折率計により測定される、23℃、波長589nmにおける屈折率であり、例えば1.350以上、好ましくは1.400以上、更に好ましくは1.430以上、更に好ましくは1.450以上、更に好ましくは1.470以上であり、そして、例えば1.550以下、好ましくは1.530以下、更に好ましくは1.500以下、更に好ましくは1.490以下である。
ここで、厚さ200μmのオレフィン系エラストマー(B)のシートは、例えば、オレフィン系エラストマー(B)を200℃、10MPaで熱プレス成形することにより得ることができる。
(突刺強度)
本樹脂シートにおいて、JIS Z1707:2019に準拠して測定される、突刺強度は、好ましくは2.5N以上、より好ましくは3.0N以上、更に好ましくは3.5N以上、更に好ましくは4.0N以上である。前記突刺強度の上限値は特に限定されないが、他のフィルム物性とのバランスを考慮して、例えば、20.0N以下、好ましくは15.0N以下、より好ましくは10.0N以下である。
突刺強度は、JIS Z1707:2019に準拠して測定した値であり、試験片をジグで固定し、測定温度23±2℃、相対湿度50±10%の環境下で、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を試験速度150mm/分で突き刺し、針が貫通するまでの最大力(N)である。
(引張強度)
本樹脂シートにおいて、JIS K7127:1999に準拠して測定される、シート面と平行な少なくとも1方向(X方向)の引張強度は、好ましくは10MPa以上、より好ましくは15MPa以上、更に好ましくは20MPa以上、更に好ましくは25MPa以上、更に好ましくは30MPa以上である。前記引張強度の上限値は特に限定されないが、他のフィルム物性とのバランスを考慮して、例えば、300MPa以下、好ましくは200MPa以下、より好ましくは150MPa以下、更に好ましくは100MPa以下、更に好ましくは80MPa以下である。
引張強度は、JIS K7127:1999に準拠して、引張試験機を用いて、測定方向の長さ50mm、幅10mmの試験片を用いて、測定温度23±2℃、チャック間距離20mm、試験速度200mm/分の条件で測定した値である。
また、本樹脂シートにおいて、JIS K7127:1999に準拠して測定される、前記X方向の引張強度(fx)と、前記シート面に平行で前記X方向と直角な方向(Y方向)の引張強度(fy)との比(fx/fy)は、本樹脂シートの引張伸度をより向上させる観点から、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下、更に好ましくは2.0以下である。前記(fx/fy)は低いほど好ましいため、下限は特に限定されないが、例えば1.0以上であり、1.1以上であってもよい。ただし、fx≧fyとする。
(引張伸度)
本樹脂シートにおいて、JIS K7127:1999に準拠して測定される、シート面と平行な少なくとも1方向(X方向)の引張伸度は、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上、更に好ましくは30%以上である。前記引張伸度の上限値は特に限定されないが、他のフィルム物性とのバランスを考慮して、例えば、200%以下、好ましくは150%以下、より好ましくは100%以下、更に好ましくは80%である。
引張伸度は、JIS K7127:1999に準拠して、引張試験機を用いて、測定方向の長さ50mm、幅10mmの試験片を用いて、測定温度23±2℃、チャック間距離20mm、試験速度200mm/分の条件で測定した値である。
本樹脂シートにおいて、透明性をより向上させる観点から、JIS K7361-1:1997に準拠して測定される全光線透過率が、好ましくは50%以上、より好ましくは65%以上、更に好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。前記全光線透過率は高いほど好ましいため、上限は特に限定されないが、例えば、100%以下であり、98%以下であってもよく、95%以下であってもよい。
突刺強度及び引張伸度等の機械的特性をより向上させる観点から、動的粘弾性測定により得られる、本樹脂シートの0℃における損失正接が0.10以上であることが好ましく、0.11以上であることがより好ましい。前記損失正接の上限値は特に限定されないが、例えば0.80以下であり、0.60以下であってもよく、0.50以下であってもよく、0.40以下であってもよく、0.30以下であってもよい。
突刺強度及び引張伸度等の機械的特性をより向上させる観点から、動的粘弾性測定により得られる、オレフィン系エラストマー(B)の0℃における損失正接が0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましく、0.20以上であることが更に好ましい。前記損失正接の上限値は特に限定されないが、例えば0.80以下であり、0.60以下であってもよく、0.50以下であってもよく、0.40以下であってもよく、0.30以下であってもよい。
動的粘弾性測定により得られる、多孔フィルム(A)の0℃における損失正接をtanδ(A)とし、オレフィン系エラストマー(B)の0℃における損失正接をtanδ(B)としたとき、多孔フィルム(A)の空孔へのオレフィン系エラストマー(B)の充填性の観点、及び、突刺強度及び引張伸度等の機械的特性をより向上させる観点から、tanδ(B)>tanδ(A)の関係を満たすことが好ましい。
また、動的粘弾性測定により得られる、多孔フィルム(A)の0℃における貯蔵弾性率E’は、本樹脂シートの突刺強度をより向上させる観点から、好ましくは100MPa以上、より好ましくは200MPa以上、更に好ましくは300MPa以上であり、本樹脂シートの引張伸度をより向上させる観点から、好ましくは2000MPa以下、より好ましくは1500MPa以下、更に好ましくは1000MPa以下である。
また、動的粘弾性測定により得られる、多孔フィルム(A)の0℃における損失弾性率E’’は、本樹脂シートの突刺強度をより向上させる観点から、好ましくは1MPa以上、より好ましくは5MPa以上、更に好ましくは10MPa以上であり、本樹脂シートの引張伸度をより向上させる観点から、好ましくは1000MPa以下、より好ましくは800MPa以下、更に好ましくは600MPa以下である。
また、動的粘弾性測定により得られる、オレフィン系エラストマー(B)の0℃における貯蔵弾性率E’は、本樹脂シートの突刺強度をより向上させる観点から、好ましくは10MPa以上、より好ましくは50MPa以上、更に好ましくは100MPa以上であり、本樹脂シートの引張伸度をより向上させる観点から、好ましくは2000MPa以下、より好ましくは1500MPa以下、更に好ましくは1000MPa以下である。
また、動的粘弾性測定により得られる、オレフィン系エラストマー(B)の0℃における損失弾性率E’’は、本樹脂シートの突刺強度をより向上させる観点から、好ましくは1MPa以上、より好ましくは5MPa以上、更に好ましくは10MPa以上であり、本樹脂シートの引張伸度をより向上させる観点から、好ましくは1000MPa以下、より好ましくは800MPa以下、更に好ましくは500MPa以下である。
また、動的粘弾性測定により得られる、本樹脂シートの0℃における貯蔵弾性率E’は、本樹脂シートの突刺強度をより向上させる観点から、好ましくは50MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは200MPa以上、更に好ましくは300MPa以上、更に好ましくは450MPa以上であり、本樹脂シートの引張伸度をより向上させる観点から、好ましくは3000MPa以下、より好ましくは2000MPa以下、更に好ましくは1500MPa以下、更に好ましくは1000MPa以下である。
また、動的粘弾性測定により得られる、本樹脂シートの0℃における損失弾性率E’’は、本樹脂シートの突刺強度をより向上させる観点から、好ましくは5MPa以上、より好ましくは10MPa以上、更に好ましくは30MPa以上、更に好ましくは50MPa以上、更に好ましくは80MPa以上であり、本樹脂シートの引張伸度をより向上させる観点から、好ましくは1500MPa以下、より好ましくは1000MPa以下、更に好ましくは500MPa以下、更に好ましくは200MPa以下、更に好ましくは150MPa以下である。
本樹脂シート、多孔フィルム(A)及びオレフィン系エラストマー(B)の0℃における貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’及び損失正接(tanδ)は、具体的には、JIS K7244:1999に準拠し、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度3℃/分、周波数10Hz、歪量0.1%、引張モードの条件により測定されるものであり、より具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
本樹脂シートにおいて、多孔フィルム(A)の融点(Tma)とオレフィン系エラストマー(B)の融点(Tmb)との差(Tma-Tmb)は、多孔フィルム(A)の空孔へのオレフィン系エラストマー(B)の充填性の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上、更に60℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは90℃以下、更に好ましくは80℃以下である。
本樹脂シートの融点は、本樹脂シートの機械的特性や耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは150℃以上、更に好ましくは160℃以上であり、マテリアルリサイクル性及びフィルム成形性を向上させる観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは175℃以下、更に好ましくは172℃以下である。
融点は、示差走査熱量測定(DSC)で得られる融解ピークのピークトップ温度を意味し、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。DSC曲線に複数の融解ピークが表れる場合は、最も温度の高い融解ピークの頂点温度を融点とする。
本樹脂シートの厚さは特に限定されないが、突刺強度及び引張伸度等の機械的特性、コスト、取扱い性、外観、透明性、成形性、軽量性等の所望の目的に応じて任意に設定することができ、特に限定されないが、本樹脂シートの機械的特性をより向上させる観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上、更に好ましくは40μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、更に好ましくは220μm以下である。
[樹脂シートの製造方法]
本発明の樹脂シートの製造方法は、ポリオレフィン系樹脂(a)により構成された多孔フィルム(A)の表面の少なくとも一部に、オレフィン系エラストマー(B)を配置して加圧することにより、多孔フィルム(A)の空孔にオレフィン系エラストマー(B)を充填させる工程を含む。
多孔フィルム(A)の表面の少なくとも一部上にオレフィン系エラストマー(B)を配置する方法としては特に限定されないが、多孔フィルム(A)の表面上にオレフィン系エラストマー(B)の粉体やペレット、フィルム状物を直接供給する方法や、オレフィン系エラストマー(B)を溶媒に分散又は溶解させて液状物にし、その液状物を多孔フィルム(A)上に塗布して乾燥する方法等が挙げられる。これらの方法により、多孔フィルム(A)の表面上にオレフィン系エラストマー(B)を配置することができる。
次いで、多孔フィルム(A)の表面に配置されたオレフィン系エラストマー(B)を加圧することにより、多孔フィルム(A)の空孔にオレフィン系エラストマー(B)を充填する。
多孔フィルム(A)の表面の少なくとも一部に、オレフィン系エラストマー(B)を配置して加圧する方法は特に限定されず、例えば、金型と押し型によるプレス、ロールプレス、平板プレス等を用いることができる。
オレフィン系エラストマー(B)を加圧する圧力は、例えば、0.01MPa以上250MPa以下である。
前記工程では、多孔フィルム(A)へのオレフィン系エラストマー(B)の充填性を高め、得られる樹脂シートの生産性及び機械的特性をより向上させる観点から、オレフィン系エラストマー(B)を溶融させながら加圧することが好ましい。
また、オレフィン系エラストマー(B)を加圧する際の温度は、オレフィン系エラストマー(B)が軟化又は溶融して多孔フィルム(A)の空孔に浸透できる温度であれば特に限定されないが、例えば、オレフィン系エラストマー(B)の融点(Tmb)℃以上多孔フィルム(A)の融点(Tma)℃未満であり、好ましくは(オレフィン系エラストマー(B)の融点(Tmb)+10)℃以上(多孔フィルム(A)の融点(Tma)-10)℃以下、より好ましくは(オレフィン系エラストマー(B)の融点(Tmb)+20)℃以上(多孔フィルム(A)の融点(Tma)-20)℃以下であり、具体的には、100℃~160℃であることが好ましく、110℃~150℃以下であることがより好ましい。
[用途]
本発明の樹脂シートは、突刺強度及び引張伸度等の機械的特性が向上するとともに、良好な透明性や引張強度、マテリアルリサイクル性等も有することができるため、突刺強度や引張伸度等の機械的特性、透明性、引張強度、マテリアルリサイクル性等が要求される種々の用途での幅広い利用が期待される。本発明の樹脂シートは、例えば、液晶ディスプレイやガラス等の保護シート、透明な緩衝シート、包装シート、スペーサー、滑り止めシート、制振シート、粘着シート、プリンテッドエレクトロニクス用印刷基材、ガスケット等に好適に用いることができる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の樹脂シート及び樹脂シートの製造方法について更に詳しく説明する。本発明は、これら実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。また、シートの押出機からの流れ方向を(MD)と表記し、MDの直交方向を(TD)と表記する場合がある。
[原料]
実施例及び比較例で用いるポリオレフィン系多孔フィルム及び樹脂シートの製造に用いた原材料は、以下のとおりである。
(多孔フィルム(A))
多孔フィルム(A1):以下の製造例1に従って作製された多孔フィルム
多孔フィルム(A2):以下の製造例2に従って作製された多孔フィルム
・多孔フィルム(A3):ポリプロピレンが芯、ポリエチレンが鞘の繊維を湿式法で作製された不織布(日本バイリーン株式会社製、製品名:OA―8772)
(オレフィン系エラストマー(B))
・オレフィン系エラストマー(B1):プロピレン/エチレンの含有比率が96/4(質量比)、質量平均分子量が42,000g/mol、Mw/Mnが2.1、MFRが20,000g/10分のオレフィン系エラストマーからなるペレット
・オレフィン系エラストマー(B2):プロピレン/エチレンの含有比率が96/4(質量比)、質量平均分子量が42,000g/mol、Mw/Mnが2.1、MFRが20,000g/10分のオレフィン系エラストマーと、プロピレン/エチレンの含有比率が86/14(質量比)、質量平均分子量が353,000g/mol、Mw/Mnが1.9、MFRが3.0g/10分のオレフィン系エラストマーとを50/50(質量比)でブレンドし、そのブレンド物を200℃、10MPaで熱プレス成形することにより厚さ50μmのシート状に成形したもの(ブレンド物のMFRが10,000g/10分)
[多孔フィルム(A)の製造]
製造例1
ポリプロピレン(「ノバテックPP FY6HA」、MFR:2.4g/10分、日本ポリプロ株式会社製)70質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(セプトン8004、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン含有量31質量%、株式会社クラレ製、MFR:<0.1g/10分)30質量%の割合で混合して、二軸押出機にて230℃で溶融混錬し、ストランドダイから押出して水槽にて冷却したのち、ストランドをペレタイザーにてカットすることで樹脂組成物のペレットを得た。
前記樹脂組成物のペレットを単軸押出機に投入し、200℃で溶融させ、Tダイよりシート状の溶融樹脂を押出し、延伸前シートを得た。
次いで、得られた延伸前シートを縦延伸機にて20℃に設定したロールにおいて、ドロー比100%(縦延伸倍率2.0倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール間において、更にドロー比50%(縦延伸倍率1.5倍)を掛けて高温延伸を行った。縦延伸後のフィルムは、フィルムテンター設備(京都機械株式会社製)にて、130℃の温度で横方向に3.0倍延伸した後、140℃で熱処理を行い、多孔フィルム(A1)を得た。
製造例2
ポリプロピレン(「ノバテックPP FY6HA」、MFR:2.4g/10分、日本ポリプロ株式会社製)70質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(セプトン2005、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン含有量20質量%、株式会社クラレ製、MFR:流動せず測定不可)30質量%の割合で混合して、二軸押出機にて230℃で溶融混錬し、ストランドダイから押出して水槽にて冷却したのち、ストランドをペレタイザーにてカットすることで樹脂組成物のペレットを得た。
前記樹脂組成物のペレットを単軸押出機に投入し、200℃で溶融させ、Tダイよりシート状の溶融樹脂を押出し、延伸前シートを得た。
次いで、得られた延伸前シートを縦延伸機にて20℃に設定したロールにおいて、ドロー比100%(縦延伸倍率2.0倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール間において、更にドロー比50%(縦延伸倍率1.5倍)を掛けて高温延伸を行った。縦延伸後のフィルムは、フィルムテンター設備(京都機械株式会社製)にて、130℃の温度で横方向に3.0倍延伸した後、140℃で熱処理を行い、多孔フィルム(A2)を得た。
[樹脂シートの製造]
実施例1
オレフィン系エラストマー(B1)の含有量が表2に示す値になるように、多孔フィルム(A1)の上にオレフィン系エラストマー(B1)を載せたものを、鉄板、ポリイミドフィルム、内部がくり抜かれた金枠の順に重ねた上の金枠中央のポリイミドフィルム上に移した。次いで、もう1枚のポリイミドフィルムにて上部を覆い、もう1枚の鉄板をさらに重ねた後、電熱プレス機にて、熱プレスを行った。電熱プレス機の設定温度は、上面、下面ともに120℃とし、圧力は10MPaとし、油圧の保持圧を一定にした状態にて、3分間保持した。3分後、油圧を開放し、2枚の鉄板で挟んだまま、すぐに水槽に投げ込み急冷した。その後、鉄板やポリイミドフィルム、金枠を外すことで、多孔フィルム(A1)の空孔にオレフィン系エラストマー(B1)が充填された樹脂シートを得た。
実施例2
オレフィン系エラストマー(B1)の含有量が表2に示す値になるように、オレフィン系エラストマー(B1)の使用量を変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
実施例3
オレフィン系エラストマー(B1)をオレフィン系エラストマー(B2)に変更し、オレフィン系エラストマー(B2)の含有量が表2に示す値になるように、オレフィン系エラストマー(B2)を多孔フィルム(A1)の上下に配置した以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
実施例4
多孔フィルム(A1)を多孔フィルム(A2)に変更し、オレフィン系エラストマー(B1)の含有量が表2に示す値になるように、オレフィン系エラストマー(B1)の使用量を変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
実施例5
多孔フィルム(A1)を多孔フィルム(A2)に変更し、オレフィン系エラストマー(B1)の含有量が表2に示す値になるように、オレフィン系エラストマー(B1)の使用量を変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
実施例6
多孔フィルム(A1)を多孔フィルム(A3)に変更し、オレフィン系エラストマー(B1)の含有量が表2に示す値になるように、オレフィン系エラストマー(B1)の使用量を変更した以外は実施例1と同様にして樹脂シートを作製した。
比較例1
多孔フィルム(A1)を準備し評価を行った。
比較例2
多孔フィルム(A2)を準備し評価を行った。
比較例3
多孔フィルム(A3)を準備し評価を行った。
比較例4
オレフィン系エラストマー(B1)を鉄板、ポリイミドフィルム、内部がくり抜かれた金枠の順に重ねた上の金枠中央のポリイミドフィルム上に移した。その後、もう1枚のポリイミドフィルムにて上部を覆い、もう1枚の鉄板をさらに重ねた後、電熱プレス機にて、熱プレスを行った。電熱プレス機の設定温度は、上面、下面ともに120℃とし、油圧の保持圧を一定にした状態にて、3分間保持した。3分後、油圧を開放し、2枚の鉄板で挟んだまま、すぐに水槽に投げ込み急冷した。その後、鉄板やポリイミドフィルム、金枠を外すことで、オレフィン系エラストマー(B1)からなる樹脂シートを得た。
[物性評価及び測定]
各多孔フィルム(A)及び樹脂シートに関し、以下に示す方法により、各種物性評価及び測定を行った。得られた結果を表1及び2に示す。また表2に記載した多孔フィルム(A)及びオレフィン系エラストマー(B)の比率の単位は質量部である。
(1)厚さ
JIS K7130:1999に準拠して、スタンドタイプ定圧厚さ測定器にて無作為に10点測定し、その平均値を厚さとした。
(2)平均孔径
パームポロメーター(Porous Materials社製)を用いて測定した。試液としてポリヘキサフルオロプロペン系液体「GALWICK」(Porous Materials社製、表面張力:15.6dynes/cm)を使用し、ASTM F316-86に準拠して測定した。
(3)空孔率
測定試料の実質量Wを測定し、多孔フィルム(A)を構成する樹脂組成物の密度に基づいて空孔率が0%の場合の質量Wを計算し、これらの値から下記式に基づいて空孔率を算出した。
空孔率(%)={(W-W)/W}×100
(4)屈折率
多孔フィルム(A)の屈折率(na)は、株式会社アタゴ製のアッベ屈折率計DR-M4を用いて、23℃、波長589nmにおける値を測定した。
オレフィン系エラストマー(B)の屈折率(nb)は、オレフィン系エラストマー(B)を200℃、10MPaで熱プレス成形することにより厚さ200μmのシート状に成形し、株式会社アタゴ製のアッベ屈折率計DR-M4を用いて、23℃、波長589nmにおける値を測定した。
(5)融点
示差走査熱量計(DSC)を用いて、多孔フィルム(A)、オレフィン系エラストマー(B)及び各実施例、比較例で作製した樹脂シートの融点を測定した。測定は、測定試料(約10mg)を加熱速度10℃/分で-60℃から200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で-60℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで再昇温したときに測定されたサーモグラムプロファイルにおいて、融点(Tm)を算出した。
(6)MFR
各樹脂のMFRは、JIS K7210-1:2014に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(7)全光線透過率
JIS K7361-1:1997に準拠して、樹脂シートの全光線透過率を測定した。
(8)樹脂シート中のオレフィン系エラストマー(B)の含有量
樹脂シート中のオレフィン系エラストマー(B)の含有量は、多孔フィルム(A)の質量(W)と、オレフィン系エラストマー(B)が充填された樹脂シートの質量(W)を測定し、下記式に基づいて算出した。
樹脂シート中のオレフィン系エラストマー(B)の含有量(質量部)={(W-W)/W}×100
(9)樹脂シート中の多孔フィルム(A)の含有量
樹脂シート中の多孔フィルム(A)の含有量(質量%)は、多孔フィルム(A)の質量(W)と、オレフィン系エラストマー(B)が充填された樹脂シートの質量(W)を測定し、下記式に基づいて算出した。
樹脂シート中の多孔フィルム(A)の含有量(質量%)=100×W/W
(10)突刺強度
JIS Z1707:2019に準拠して、樹脂シートの突刺強度を測定した。より具体的には、樹脂シートの試験片をジグで固定し、測定温度23±2℃、相対湿度50±10%の環境下で、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を試験速度150mm/分で突き刺し、針が貫通するまでの最大力(N)を突刺強度とした。
(11)厚さ比
得られた樹脂シートの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、フィリング層の厚さ(t)とエラストマー層の厚さ(t)を無作為に10点それぞれ測定し、その平均値を得た。それぞれの平均値から、フィリング層の厚さに対するエラストマー層の厚さの比(t/t)を算出した。
(12)引張強度及び引張伸度
JIS K7127:1999に準じた方法により、樹脂シートのMD及びTD方向の引張強度及び引張伸度をそれぞれ測定した。測定条件は、引張速度200mm/分、雰囲気温度23℃とした。測定装置は、引張試験機(製品名:オートグラフAG-X、株式会社島津製作所製)を用いた。試験片は、樹脂シートから測定方向の長さ50mm、幅10mmの長方形に切り出したものを用いた。試験片の長さ方向の両端部をチャック間距離20mmでチャックし、クロスヘッドスピード200mm/分で引っ張り、MD方向及びTD方向の引張強度及び引張伸度をそれぞれ3回測定し、その平均値を求めた。
また、MD方向の引張強度とTD方向の引張強度の比をMD/TD強度比として算出した。
(13)マテリアルリサイクル性
マテリアルリサイクル性は、シートが溶融する温度で評価した。パーキンエルマー社製「DSC8500」を用いて、樹脂約10mgを加熱速度10℃/分で-50℃から200℃まで昇温したときに得られた結晶融解ピーク温度(Tm)を算出した。得られた結晶化曲線に基づき結晶融解ピーク温度が複数ある場合は、最大の結晶融解ピーク温度を結晶融解ピーク温度と判定した。結晶融解ピーク温度が200℃以下であれば、一般的な溶融成形に供することができるためリサイクル性が良好と判断した。
(14)動的粘弾性測定
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、製品名「DVA-200」)を用いて、JIS K7244:1999に準拠し、試料幅5mm、チャック間距離25mm、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度3℃/分、周波数10Hz、歪量0.1%、引張モードの条件で、樹脂シート、多孔フィルム(A)及びオレフィン系エラストマー(B)の動的粘弾性の温度依存性をそれぞれ測定した。得られたグラフから、多孔フィルム(A)及びオレフィン系エラストマー(B)の0℃における貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’及び損失正接(tanδ)をそれぞれ求めた。
ここで、多孔フィルム(A)の試験片は、多孔フィルム(A)を5mm×80mmに切断することにより得た。
オレフィン系エラストマー(B)の試験片は、オレフィン系エラストマー(B)を200℃、10MPaで熱プレス成形することにより厚さ50μmのシート状に成形し、得られたシートを5mm×80mmに切断することにより得た。
また、樹脂シートについては、多孔フィルム(A)のTDの動的粘弾性を測定した。
Figure 2022157234000001
Figure 2022157234000002
多孔フィルム(A)の空孔にオレフィン系エラストマー(B)を充填した実施例1~6の樹脂シートは、多孔フィルム(A)の空孔にオレフィン系エラストマー(B)を充填していない比較例1~3の多孔フィルム(A)や比較例4のオレフィン系エラストマー(B)のシートに比べて、突刺強度及び引張伸度等の機械的特性が向上していた。
また、比較例1~3の多孔フィルム(A)は不透明であったが、実施例1~6の樹脂シートは、透明であり、良好な全光線透過率を有していた。
さらに、実施例1~6の樹脂シートは、融点が168~171℃であり、十分な発熱量を有し、マテリアルリサイクル性に優れていた。

Claims (19)

  1. ポリオレフィン系樹脂(a)により構成された多孔フィルム(A)と、前記多孔フィルム(A)の空孔に充填されたオレフィン系エラストマー(B)とを含むフィリング層を備える、樹脂シート。
  2. JIS K7244:1999に準拠し、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度3℃/分、周波数10Hz、歪量0.1%、引張モードの条件での動的粘弾性測定により得られる、前記樹脂シートの0℃における損失正接(tanδ)が0.10以上である、請求項1に記載の樹脂シート。
  3. 厚さが10μm以上300μm以下である、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
  4. 前記フィリング層の少なくとも一方の面に、前記オレフィン系エラストマー(B)により構成されたエラストマー層を更に備える、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂シート。
  5. 前記フィリング層の厚さ(t)に対する前記エラストマー層の厚さ(t)の比(t/t)が0.5以上15.0以下である、請求項4に記載の樹脂シート。
  6. JIS Z1707:2019に準拠して測定される、突刺強度が2.5N以上である、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂シート。
  7. JIS K7127:1999に準拠して測定される、シート面と平行な少なくとも1方向(X方向)の引張強度が10MPa以上である、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂シート。
  8. JIS K7127:1999に準拠して測定される、前記X方向の引張強度(fx)と、前記シート面に平行で前記X方向と直角な方向(Y方向)の引張強度(fy)との比(fx/fy)が5.0以下である、請求項7に記載の樹脂シート。
  9. JIS K7127:1999に準拠して測定される、シート面と平行な少なくとも1方向(X方向)の引張伸度が15%以上である、請求項1~8のいずれかに記載の樹脂シート。
  10. 前記ポリオレフィン系樹脂(a)は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む、請求項1~9のいずれかに記載の樹脂シート。
  11. 前記オレフィン系エラストマー(B)の含有量が、前記多孔フィルム(A)100質量部に対して、100質量部以上3,000質量部以下である、請求項1~10のいずれかに記載の樹脂シート。
  12. 前記多孔フィルム(A)は、不溶融性粒子、結晶核剤、及び前記ポリオレフィン系樹脂(a)に対して非相溶性の樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1~11のいずれかに記載の樹脂シート。
  13. ポリオレフィン系樹脂(a)により構成された多孔フィルム(A)の表面の少なくとも一部に、オレフィン系エラストマー(B)を配置して加圧することにより、前記多孔フィルム(A)の空孔に前記オレフィン系エラストマー(B)を充填させる工程を含む、樹脂シートの製造方法。
  14. 前記工程では、前記オレフィン系エラストマー(B)を溶融させながら加圧する、請求項13に記載の樹脂シートの製造方法。
  15. JIS K7244:1999に準拠し、測定温度範囲-100~200℃、昇温速度3℃/分、周波数10Hz、歪量0.1%、引張モードの条件での動的粘弾性測定により得られる、前記樹脂シートの0℃における損失正接(tanδ)が0.10以上である、請求項13又は14に記載の樹脂シートの製造方法。
  16. 前記樹脂シートの厚さが10μm以上300μm以下である、請求項13~15のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
  17. 前記ポリオレフィン系樹脂(a)は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む、請求項13~16のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
  18. 前記樹脂シート中の前記オレフィン系エラストマー(B)の含有量が、前記多孔フィルム(A)100質量部に対して、100質量部以上3,000質量部以下である、請求項13~17のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
  19. 前記多孔フィルム(A)は、不溶融性粒子、結晶核剤、及び前記ポリオレフィン系樹脂(a)に対して非相溶性の樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項13~18のいずれかに記載の樹脂シートの製造方法。
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