JP2022153312A - 水性分散体、および塗膜 - Google Patents

水性分散体、および塗膜 Download PDF

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Abstract

【課題】連続的に屈曲が生じる環境においても密着性を維持し得る塗膜を形成可能である、水性分散体を提供する。【解決手段】不飽和カルボン酸成分を含有するポリオレフィン樹脂(A)と、ポリウレタン樹脂(B)と、水性媒体とを含む水性分散体である。ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)の質量比が90/10~10/90であり、ポリウレタン樹脂(B)のHansen溶解度パラメータにおける水素結合項δHが10MPa1/2以上であり、ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)との相互作用半径が10以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、塗膜とした際に、変形や屈曲などの応力が付与されても密着性を維持し得る、水性分散体に関するものである。
酸変性されたポリオレフィン樹脂を含む水性分散体は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの低極性材料の基材との密着性に優れる塗膜を作製できることから、幅広い分野で用いられている。さらに、シーラント層と基材とが接着層を介して積層された積層体において、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリウレタン樹脂とを含有する水性分散体を接着層に用いることで、シーラント層と基材との接着性が向上することが知られている(特許文献1)。
特開2018-141161号公報
水性分散体の用途の中でも、包装材料用接着剤やインキ用バインダー等の用途においては、塗膜を形成した際に、連続的に変形や屈曲といった応力に晒されることがある。そのため、実際の使用環境に応じ、基材との初期密着性に加えて、連続的に屈曲が付与された場合であっても密着性が維持される(つまり、耐屈曲性に優れる)塗膜を形成し得る水性分散体が求められている。
本発明は、これらの課題を解消するものである。すなわち、各種基材への密着性に加えて、耐屈曲性に優れる塗膜を形成可能な、水性分散体を提供するものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、Hansen溶解度パラメータにおける水素結合項δHが特定範囲であるポリウレタン樹脂(B)と、当該ポリウレタン樹脂との相互作用半径が特定範囲であるポリオレフィン樹脂(A)とを、特定量で含有する水性分散体は、塗膜としたときの密着性や耐屈曲性に優れることを突き止め、本発明に到達した。
すなわち、本発明の水性分散体は、下記(1)~(6)の通りである。
(1)不飽和カルボン酸成分を含有するポリオレフィン樹脂(A)と、ポリウレタン樹脂(B)と、水性媒体とを含む水性分散体であって、
ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)の質量比が90/10~10/90であり、
ポリウレタン樹脂(B)のHansen溶解度パラメータにおける水素結合項δHが10MPa1/2以上であり、ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)とのHansen溶解度パラメータにおける相互作用半径が10以上である、水性分散体。
(2)塗膜としたときの、25℃、10ラジアン/秒で測定した貯蔵弾性率が5×10以上5×10以下、かつ25℃、10ラジアン/秒で測定した損失弾性率が7×10以上2×10以下である、(1)の水性分散体。
(3)ポリオレフィン樹脂(A)が(メタ)アクリル酸エステル成分を1~30質量%含有する、(1)または(2)の水性分散体。
(4)ポリオレフィン樹脂(A)中の不飽和カルボン酸成分の含有量が0.01~15質量%である、(1)~(3)の何れかの水性分散体。
(5)ポリオレフィン樹脂(A)の不飽和カルボン酸成分が無水マレイン酸である、(1)~(4)の何れかの水性分散体。
(6)(1)~(5)の何れかの水性分散体から形成された、塗膜。
本発明の水性分散体によれば、各種基材への密着性と耐屈曲性に優れる塗膜を形成することができる。本発明の水性分散体から得られた塗膜は、バインダー、インキ、塗料、接着剤などの用途に好適である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の水性分散体は、ポリオレフィン樹脂(A)と、ポリウレタン樹脂(B)と、水性媒体とを含有するものである。
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂(A)は、主成分としてオレフィン成分を含有するものである。ポリオレフィン樹脂(A)を構成するオレフィン成分は特に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2-ブテン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等の炭素数2~6のアルケンが好ましく、これらの混合物でもよい。中でも、密着性を良好とするために、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン等の炭素数2~4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。
オレフィン成分の含有量は、オレフィン由来の特性を十分に発現させるために、70質量%以上であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂(A)は、密着性を向上させるとともに、水性分散体とした場合の樹脂の分散性を向上させるために、不飽和カルボン酸成分を含有することが必要である。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸、フマル酸、クロトン酸などのほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステ
ル、ハーフアミドなどが挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、(無水)マレイン酸が好ましい。なお、「(無水)~酸」とは、「~酸または無水~酸」を意味する。すなわち、(無水)マレイン酸とは、マレイン酸または無水マレイン酸を意味する。
不飽和カルボン酸成分は、オレフィン成分と共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
不飽和カルボン酸成分の含有量は、ポリオレフィン樹脂(A)中の0.1~15質量%であることが好ましく、0.5~8質量%であることがより好ましく、1~5質量%であることがさらに好ましく、2~4質量%であることが特に好ましい。不飽和カルボン酸成分の含有量が0.1質量%未満であると、ポリオレフィン樹脂(A)を水性媒体に分散させることが困難となる場合がある。また、不飽和カルボン酸成分の含有量が15質量%を超えると、密着性が低下する場合がある。
本発明においてポリオレフィン樹脂(A)は、各種基材との十分な密着性を得るために、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有していることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1~30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手し易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステル化物が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル成分の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物でもよい。中でも、入手の容易さと密着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがさらに好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~またはメタクリル酸~」を意味する。
(メタ)アクリル酸エステル成分は、ポリオレフィン樹脂(A)中に共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量は、ポリオレフィン樹脂(A)中、1~30質量%であることが好ましく、2~18質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることがさらに好ましい。(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が1質量%未満であると、得られる塗膜の密着性が低下する場合があり、含有量が30質量%を超えると、本発明の水性分散体から得られる塗膜の損失弾性率が増加し、密着性が低下する場合がある。
ポリオレフィン樹脂(A)の具体例としては、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-ブテン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン-ブテン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-ブテン-(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン-ブテン-(無水)マレイン酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-(無水)マレイン酸共重合体、プロピレン-(無水)マレイン酸共重合体などが挙げられ、中でもエチレン-(メタ)アクリル酸エステル-(無水)マレイン酸共重合体が、密着性に優れることから、最も好ましい。共重合体の形態はランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよいが、入手が容易という点でランダム共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
ポリオレフィン樹脂は塩素化されていてもよい。
また、ポリオレフィン樹脂は、N,N-ジメチルアミノエチル基、N,N-ジメチルアミノプロピル基、N,N-ジメチルアミノブチル基、N,N-ジエチルアミノエチル基、N,N-ジエチルアミノプロピル基、N,N-ジエチルアミノブチル基等の、N-置換イミド単位を含有していてもよい。
ポリオレフィン樹脂(A)の融点は、耐屈曲性や水性媒体への分散性を向上させるために、60℃以上であることが好ましく、70~200℃がより好ましく、80~170℃がさらに好ましい。ポリオレフィン樹脂(A)の融点が60℃未満では、耐屈曲性が低下する場合があり、融点が200℃を超えると、水性媒体への分散が困難となる場合がある。
ポリオレフィン樹脂(A)の190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート値(JIS K7210:1999に準ずる)は、300g/10分以下が好ましく、100g/10分以下がより好ましく、0.001~80g/10分がさらに好ましく、0.01~70g/10分が特に好ましい。分子量の目安となるメルトフローレート値が300g/10分を超えると、得られる塗膜は、密着性や耐屈曲性が低下する傾向にあり、ポリオレフィン樹脂(A)は、メルトフローレート値が0.001g/10分未満であると、水性媒体への分散が困難となる傾向にある。
(ポリウレタン樹脂)
本発明の水性分散体は、基材密着性を向上させるために、特定のポリウレタン樹脂(B)を含むことが必要である。
ポリウレタン樹脂とは、主鎖中にウレタン結合を含有する高分子であり、例えばポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応で得られるものである。
ポリウレタン樹脂(B)の分子量は限定されず、目的の物性に応じて適宜選択することができる。
ポリウレタン樹脂(B)は、特定のHansen溶解度パラメータを満足するものである。Hansen溶解度パラメータは、分散力項δD、双極子間力項δP、水素結合項δHのパラメータで構成されている。
ポリウレタン樹脂(B)のHansen溶解度パラメータのなかでも、水素結合項δHが10MPa1/2以上であると、基材との密着性、耐屈曲性に優れる塗膜を形成可能な、水性分散体が得られる。δHが10MPa1/2未満であると、塗膜とした際に柔らかくなり過ぎ、また強度が低下することから、基材との密着性、耐屈曲性に劣るものとなる。また、本発明の水性分散体の安定性が低下する。δHは(10.5)MPa1/2以上であることがより好ましい。
δHの上限値は、13MPa1/2であることが好ましく、12.5MPa1/2がより好ましい。13MPa1/2を超えると、本発明の水性分散体から得られる塗膜の均一性が低下する場合がある。
分散力項δD、双極子間力項δPの範囲は、特に限定されるものではないが、後述のポリウレタン樹脂(B)とポリオレフィン樹脂(A)との相互作用半径が特定範囲となるように、調整するのが好ましい。
Hansen溶解度パラメータの求め方は、実施例において詳述する。
ポリウレタン樹脂(B)とポリオレフィン樹脂(A)との相互作用半径が、10以上である必要があり、10.5以上であることが好ましい。本発明においては、相互作用半径を特定範囲とすることで、ポリオレフィン樹脂とポリウレタン樹脂の親和性が向上し、各々の樹脂の効果を十分に発現させることができ、塗膜とした場合に密着性と耐屈曲性の何れにも優れる水性分散体を得ることができる。相互作用半径が10未満であると、ポリウレタン樹脂とポリオレフィン樹脂との親和性が高くなりすぎるため、本発明の水性分散体の安定性が低下し、その結果、密着性や耐屈曲性が悪化する。
上記の相互作用半径は、13以下であることが好ましく、12.5以下であることがより好ましい。13を超えると、本発明の水性分散体から得られる塗膜の均一性が低下する場合がある。
相互作用半径の求め方は、実施例において詳述する。
ポリウレタン樹脂(B)は、水性媒体に分散するか、または溶解するものが好ましい。水性媒体に分散または溶解させるための方法としては限定されず、強制乳化、自己乳化、転相乳化、コア/シェル複合粒子化、マイクロカプセル化、粉砕など公知の方法を用いることができる。
ポリウレタン樹脂(B)は、密着性や水性媒体への分散性に優れることから、陰イオン性基を有していることが好ましい。陰イオン性基とは水性媒体中で陰イオンとなる官能基のことであり、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などである。
ポリウレタン樹脂(B)の種類は、限定されず、目的の物性に応じて適宜選択することができる。具体例としては、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系などのウレタンが挙げられ、中でも、ポリオレフィン樹脂(A)との相溶性に優れることから、ポリエステル系、ポリエーテル系のウレタンが好ましい。
本発明の水性分散体における、ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)との質量比((A)/(B))は、90/10~10/90であることが必要であり、80/20~20/80であることが好ましく、70/30~30/70であることがより好ましい。(A)/(B)の質量比が90/10を超えると、ポリウレタン樹脂が過少となり、基材への密着性や耐屈曲性に劣るものとなる。一方、(A)/(B)の質量比が10/90を下回ると、ポリオレフィン樹脂が過少となり、オレフィン由来の密着性が発現せず、また得られる塗膜の強度や弾性が低下し、耐屈曲性に劣るものとなる。なお、ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)の含有量は、溶液や分散体中の固形分で算出する。
本発明の水性分散体を塗膜とした際の、25℃、10ラジアン/秒で測定した貯蔵弾性率は、密着性や耐屈曲性に優れることから、5×10Pa以上5×10Pa以下であることが好ましく、7×10Pa以上3×10Pa以下であることがより好ましく、9×10Pa以上2×10Pa以下であることが最も好ましい。貯蔵弾性率が5×10Pa未満であると、外力に対する抵抗が小さくなりすぎ、密着性に劣る場合がある。一方、5×10Paを超えると、外力による内部エネルギーの増加が大きくなりすぎ、耐屈曲性に劣る場合がある。
本発明の水性分散体を塗膜とした際の、25℃、10ラジアン/秒で測定した損失弾性率は、密着性や耐屈曲性に優れることから、7×10Pa以上2×10Pa以下であることが好ましく、9×10Pa以上2×10Pa以下であることがより好ましく、1×10Pa以上1×10Pa以下であることが最も好ましい。損失弾性率が7×10Pa未満であると柔軟性が高くなりすぎ、密着性や耐屈曲性に劣る場合がある。一方、2×10Paを超えると、外力による変形が大きくなりすぎ、屈曲試験後に塗膜が剥離したりするなど耐屈曲性に劣る場合がある。
(添加剤)
本発明の水性分散体は、さらに耐屈曲性を向上させるために、架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、アミン系架橋剤、ポリオールなどの、ポリオレフィン樹脂(A)またはポリウレタン樹脂(B)と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する化合物が挙げられる。他の架橋剤の含有量は、本発明の効果を損ねない範囲で勘案して適宜選択すればよい。これらは単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
本発明の水性分散体は、上述した樹脂架橋剤以外に、樹脂や添加剤(他の樹脂や他の添加剤)を含有してもよい。
他の樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂などが挙げられる。
他の添加剤としては、例えば、金属酸化物微粒子、粘着付与剤、ワックス類、紫外線吸収剤、レベリング剤、ヌレ剤、消泡剤、ワキ防止剤、顔料、染料、分散剤などが挙げられる。
他の樹脂や他の添加剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また混合安定性に優れることから、これらは水溶性または水分散性のものが好ましく、水性分散体または水溶液に加工して用いることがより好ましい。
本発明の水性分散体を構成する水性媒体とは、水または水を主成分とする液体のことを指す。後述する塩基性化合物や有機溶剤を含有してもよい。
本発明の水性分散体における樹脂の固形分濃度は特に限定されないが、塗工時の厚み調整が容易になることから、1~40質量%であることが好ましく、2~35質量%であることがより好ましく、5~30質量%であることがさらに好ましい。
本発明の水性分散体の粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、700mPa・s以下であることがより好ましく、500mPa・s以下であることが特に好ましい。水性分散体の粘度が1000mPa・sを超えると、薄膜の塗膜を形成することが困難となり、低温での乾燥が困難となる場合がある。
本発明の水性分散体の製造方法としては、例えばポリオレフィン樹脂(A)と、ポリウレタン樹脂(B)と、水性媒体とを、公知の手法で混合する方法が挙げられる。または、ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体に、ポリウレタン樹脂(B)の水性分散体や溶液を添加し、混合して製造する方法が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体を製造する方法は特に限定されず、自己乳化法や強制乳化法など公知の方法を用いることができる。具体的には、ポリオレフィン樹脂(A)と、水性媒体とを、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体を製造するための、公知の方法の中でも、不揮発性水性分散化助剤を実質的に使用しない方法を採用することが好ましい。不揮発性水性分散化助剤とは、水性分散化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、または常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
「不揮発性水性分散化助剤を実質的に含有しない」とは、こうした助剤を製造時(ポリオレフィン樹脂の水性分散化時)に用いず、得られる水性分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。不揮発性水性化助剤は、ポリオレフィン樹脂成分に対して5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%未満であり、0質量%であることが最も好ましい。
不揮発性水性分散化助剤としては、乳化剤、保護コロイド作用を有する化合物、変性ワックス類、高酸価の酸変性化合物、水溶性高分子等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体は、水性媒体中でポリオレフィン樹脂(A)の不飽和カルボン酸成分を塩基性化合物によって中和することで得られる、アニオン性の水性分散体であることが好ましい。このような水性分散体は、中和によって生成したカルボキシルアニオン間の電気反発力によって微粒子間の凝集を抑制することができ、安定性が付与される。
塩基性化合物は、カルボキシル基を中和できるものであればよいが、本発明の効果を損なわないために、揮発性であることが好ましい。
塩基性化合物としては、水性分散体の乾燥性に優れることから、アンモニアまたは有機アミン化合物が好ましく、中でも沸点が30~250℃、さらには沸点が50~200℃の有機アミン化合物がより好ましい。沸点が30℃未満であると、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化が完全に進行しない場合がある。沸点が250℃を超えると、乾燥によって塗膜を形成する際に、塩基性化合物を飛散させることが困難となり、密着性が低下する場合がある。
有機アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N-メチル-N,N-ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-ジエチルアミノプロピルアミン、sec-ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、3-メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等を挙げることができる。
塩基性化合物の添加量は、ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基に対して0.5~3.0当量であることが好ましく、0.8~2.5当量であることがより好ましく、1.0~2.0当量であることが特に好ましい。塩基性化合物の添加量が0.5当量未満では、塩基性化合物の添加効果が見られず、添加量が3.0当量を超えると、塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体が着色したりする場合がある。
ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体を製造する際に有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤を添加する場合、有機溶剤の含有量は、水性媒体中の40質量%以下であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、2~35質量%であることがさらに好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。有機溶剤の含有量が40質量%を超えると、水性分散体の安定性が低下する場合がある。
有機溶剤は、沸点が30~250℃であることが好ましく、50~200℃であることがより好ましい。有機溶剤の沸点が30℃未満であると、樹脂の水性化時に揮発する割合が多くなり、水性化の効率が十分に高まらない場合がある。有機溶剤は、沸点が250℃を超えると、塗膜から乾燥によって飛散させることが困難となる場合がある。有機溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。
有機溶剤は、樹脂の水性化促進に効果が高く、水性媒体中から有機溶剤を留去し易いことから、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルが好ましく、低温乾燥性の点からエタノール、n-プロパノール、イソプロパノールが特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体を製造する際に用いた水溶性有機溶媒などの有機溶剤は、水性分散化の後に一部またはすべてを、「ストリッピング」と呼ばれる脱溶媒処理によって系外へ留去させ、その含有量を低減させることも可能である。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法が挙げられる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、水性分散体の固形分濃度は、このようなストリッピングによって有機溶剤を留去することや、水性媒体を添加して希釈することにより調整することができる。
容器内の異物や少量の未分散樹脂を除くために、ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体を装置から払い出す際に、濾過工程を設けてもよい。濾過方法は限定されないが、例えば、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過する方法が挙げられる。このような濾過工程を設けることで、異物や未分散樹脂が残存した場合であってもそれらを除去できるので、得られた水性分散体は実用上問題なく使用することができる。なお、ポリオレフィン樹脂(A)の水性分散体の外観は、通常、乳白色の液体である。
ポリウレタン樹脂(B)の水性分散体を製造する方法は特に限定されず、ポリウレタン樹脂(B)と水性媒体とを、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂(B)の水性分散体として、北広ケミカル社製「PLASTARK P」「PLASTARK E」などの市販品を用いてもよい。
本発明の水性分散体は、接着剤、コーティング剤、プライマー、塗料、インキ等として好適に使用できる。
本発明の水性分散体から塗膜を得ることができる。本発明の塗膜は、金属製品用途、電子機器用途、包装材料用途、自動車部品用途等に特に好適に用いられる。
これら用途の具体例としては、PP押出ラミ用アンカーコート剤、二次電池セパレータ用コーティング剤、UV硬化型コート剤用プライマー、靴用プライマー、自動車バンパー用プライマー、クリアボックス用プライマー、PP基材用塗料、包装材料用接着剤、紙容器用接着剤、蓋材用接着剤、インモールド転写箔用接着剤、PP鋼板用接着剤、太陽電池モジュール用接着剤、植毛用接着剤、二次電池電極用バインダー用接着剤、二次電池外装用接着剤、自動車用ベルトモール用接着剤、自動車部材用接着剤、異種基材用接着剤、繊維収束剤等が挙げられる。
本発明の水性分散体から塗膜を形成する方法としては、例えば、本発明の水性分散体を、各種基材表面に均一に塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼き付けのための加熱処理に供する方法が挙げられる。これにより、均一な塗膜を各種基材表面に形成できる。
基材への水性分散体の塗布には、公知の方法、例えばグラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が採用できる。
基材への水性分散体の塗布量は特に限定されず、その用途によって適宜選択されるものであり、乾燥後の塗布量として0.01~100g/mであることが好ましい。
なお、塗布量を調節するためには、塗布に用いる装置やその使用条件を適宜選択することに加えて、目的とする塗膜の厚さに応じて濃度調整された水性分散体を使用することが好ましい。水性分散体の濃度は、調製時の仕込み組成により調整することが可能であり、また、一旦調製した水性分散体を、適宜希釈したり、あるいは濃縮したりして調整してもよい。
塗布後の加熱処理のための加熱装置として、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用することができる。加熱温度や加熱時間は、基材の特性または水性分散体中に任意に配合しうる各種成分の含有量により適宜選択される。エネルギーコストや基材へのダメージの点からは加熱温度は低いほうが好ましく、生産性の点からは加熱時間は短いほうが好ましい。加熱温度は20~130℃が好ましく、加熱時間は1秒~20分が好ましい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例、比較例において、ポリオレフィン樹脂(A)として、以下のものを使用した。
A1:エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(アルケマ社製、ボンダイン「HX8290」)
A2:エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(アルケマ社製、ボンダイン「LX4110」)
A3、A6:特開昭61-60709号公報の実施例1に記載された方法にもとづいて、表1に示す組成となるように、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体を得た。
A4:アイソタクチック構造のホモポリプロピレン樹脂(MFR=0.1g/10分、170℃・2160g)を窒素ガス通気下、常圧において、360℃×80分の熱減成処理を施し、得られたポリプロピレン樹脂1000gをジャケット付き反応器に入れ、窒素置換した。次いで、180℃まで加熱昇温し溶融させた後、無水マレイン酸125gを加え、均一に混合した。そこに、ジクミルパーオキサイド6.3gを溶解させたキシレン75gを滴下し、180℃で30分撹拌し反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させ、ポリオレフィン樹脂(A4)を得た。
A5:エチレン-アクリル酸共重合体(ダウケミカル社製、「プリマコール5980」)
ポリオレフィン樹脂(A1)~(A6)の特性について、表1に示す。
Figure 2022153312000001
実施例、比較例において、ポリウレタン樹脂(B)の水性分散体として、以下のものを使用した。
アニオン性ポリエステル系ポリウレタン樹脂(B1)の水性分散体(北広ケミカル社製、「PLASTARK P」)(固形分濃度29質量%)
アニオン性ポリエーテル系ポリウレタン樹脂(B2)の水性分散体(北広ケミカル社製、「PLASTARK E」)(固形分濃度28質量%)
アニオン性ポリエーテル系ポリウレタン樹脂(B3)の水性分散体(DSM社製、「NeoRez R600」)(固形分濃度33質量%)
上記のポリウレタン樹脂の水性分散体から、ポリウレタン樹脂を析出させて取り出し、樹脂評価に付した。ポリウレタン樹脂(B1)~(B3)の特性について、表2に示す。
Figure 2022153312000002
(1)ポリオレフィン樹脂の組成
H-NMR分析装置(日本電子社製、ECA500、500MHz)より求めた。テトラクロロエタン(d2)を溶媒とし、120℃で測定した。
(2)ポリオレフィン樹脂の融点
パーキンエルマー社製、DSC7を用いてDSC法にて測定した。試料をアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで昇温し、5分間保持した後、10℃/分で-10℃まで降温し、次いで10℃/分で200℃まで昇温した際の、吸熱および発熱に伴う曲線から求めた。
(3)ポリオレフィン樹脂のメルトフローレート(MFR) JIS K7210:1999記載の方法に準じ、190℃、2160g荷重で測定した。
(4)密着性
実施例、比較例にて得られた積層フィルムを用い、JIS K5600-5-6に準じて、クロスカット法にて試験を行った。塗膜に対して垂直に、2mm間隔で切れ込みを入れ、90°方向を変えて直交する6本の切れ込みを入れた。ニチバン社製、粘着テープ(CT405AP-18、幅18mm)を塗膜の格子にはりつけ、60°で剥がしたときの塗膜の様子を目視で観察した。0を最良、5を最悪とし、0~5の6段階で評価した。それぞれの評価は、以下の通りである。実用上、2以上の評価であることが好ましく、1以上の評価がより好ましい。
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない
1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれがある。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない
2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は、切れ込みの交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大きなはがれを生じているか、1か所の目の部分が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大きなはがれを生じているか、数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を上回ることはない
5:クロスカット試験において影響を受けるのが35%を超える程度の、分類4でも分類できないはがれがある
(5)耐屈曲性
ASTM F392/F392M-11に準じてゲルボフレックス試験を行った。実施例、比較例で得られた積層フィルムを200mm×280mmにカットして、200mmの辺が周方向、280mmの辺が軸方向になるよう、筒状に丸めた。筒状にした試料をゲルボフレックス試験器(東洋精機製作所社製、5000ES)にセットし、試料の両端部を把持した状態で、該試料を軸方向に174mm潰しながら、440°ねじった後、元に戻す動作を20分で900回繰り返した。
その後、積層フィルムに対し、(4)と同様の操作を行い、クロスカット法により密着性を試験した。
(6)弾性率
実施例、比較例で得られた積層フィルムを幅5mm、長さ5cmの短冊状に切り出し、CPPフィルムから塗膜(塗膜厚み5μm)を剥離した。この塗膜を、粘弾性測定装置(TA Instruments社製、RSA-G2)にセットし、温度25℃、周波数10ラジアン/秒、入力歪み0.5%の条件で、貯蔵弾性率と損失弾性率の測定を行った。
(7)Hansen溶解度パラメータ
下記の手順に従って、Hansen溶解度パラメータを測定した。測定は何れも室温(約25℃)で行った。
(7-1)ポリオレフィン樹脂(A1)、ポリウレタン樹脂(B1)、ポリウレタン樹脂(B3)の測定
樹脂0.5gを100ml三角フラスコに秤量し、N-メチルピロリドン10mlを加えて樹脂を溶解させた。ここへ、マグネチックスターラーで攪拌しながら、ヘキサンを滴
下していき、溶液に濁りが生じた点(濁点)のヘキサンの滴下体積(vh)を求めた。
次に、ヘキサンの代わりに脱イオン水を使用したときの、濁点における脱イオン水の滴下体積(vd)を求めた。ヘキサンの溶解度パラメータを(δD、δP、δH)、脱イオン水の溶解度パラメータを(δD、δP、δH)とし、溶解度パラメータ(δD、δP、δH)は以下の式で求めた。
δD=vh×δD/(vh+vd)+vd×δD/(vh+vd)
δP=vh×δP/(vh+vd)+vd×δP/(vh+vd)
δH=vh×δH/(vh+vd)+vd×δH/(vh+vd)
(7-2)ポリオレフィン樹脂(A2)、ポリオレフィン樹脂(A3)、ポリウレタン樹脂(B2)の測定
溶解度パラメータ計算ソフト(HSPiP(Ver.5.3.02))を用いて求めた。
(8)相互作用半径
上記の方法で算出したポリオレフィン樹脂(A)の溶解度パラメータ(分散力項δD、双極子間力項δP、水素結合項δH)、ポリウレタン樹脂(B)の溶解度パラメータ(分散力項δD、双極子間力項δP、水素結合項δH)を用いて、ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)との相互作用半径Raを、以下の式により計算した。
(Ra)=4(δD-δD+(δP-δP+(δH-δH
<ポリオレフィン樹脂(A1)の水性分散体の製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(A1)、90.0gのイソプロパノール、3.0gのトリエチルアミンおよび147.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。そして系内温度を140~145℃に保ってさらに30分間撹拌した。その後、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、乳白色の均一なポリオレフィン樹脂(A1)の水性分散体(固形分濃度20質量%)を得た。
<ポリオレフィン樹脂(A2)、(A3)の水性分散体の製造>
ポリオレフィン樹脂(A1)に代えて、ポリオレフィン樹脂(A2)、(A3)を用いた以外は、同様の方法により、ポリオレフィン樹脂(A2)、(A3)の水性分散体を製造した。
(実施例1)
ポリオレフィン樹脂(A1)の水性分散体と、ポリウレタン樹脂(B1)の水性分散体とを、樹脂の質量比が65/35になるよう混合して、水性分散体を得た。厚み50μmのCPPフィルム(三井化学東セロ社製、SC50)のコロナ処理面に、本発明の水性分散体を塗布し、その後80℃で1分間乾燥することで厚さ5μmの塗膜を有する積層フィルムを作製した。得られた積層フィルムについて、密着性と耐屈曲性の評価を行った。
(実施例2~10、比較例1、2)
ポリオレフィン樹脂(A1)またはポリウレタン樹脂の水性分散体(B1)に代えて、表3に記載したように、ポリオレフィン樹脂(A)またはポリウレタン樹脂(B)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた積層フィルムについて密着性と耐屈曲性の評価を行った。
(実施例11、12、比較例3、4)
ポリオレフィン樹脂とポリウレタン樹脂との質量比を、表3に示したように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行なった。得られた積層フィルムについて密着性と耐屈曲性の評価を行った。
実施例1~12、比較例1~4で得られた水性分散体、積層フィルムの特性、評価を表3に示す。
Figure 2022153312000003
表3に示すように、実施例1~12で得られた本発明の水性分散体は、密着性、耐屈曲性に優れる塗膜を得ることができた。
特に、実施例1や2においては、(メタ)アクリル酸エステル成分の含有量が1質量%未満であるポリオレフィン樹脂(A)を用いた実施例5や6と比較すると、得られた塗膜は密着性や耐屈曲性に優れるものであった。
また、実施例1や2においては、オレフィン成分がプロピレンのみであるポリオレフィン樹脂(A)の実施例7や8と比較すると、得られた塗膜は密着性や耐屈曲性に優れていた。
実施例1や2においては、アクリル酸エステル成分の含有量が30重量%を超えるポリオレフィン樹脂(A)を用いた実施例9や10と比較すると、得られた塗膜は密着性や耐屈曲性に優れていた。
実施例1や2においては、ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)との割合が好ましい範囲であったため、実施例11や12と比較すると、得られた塗膜は密着性や耐屈曲性に優れていた。
比較例1で得られた水性分散体は、ポリウレタン樹脂(B)の水素結合項δHが小さく、ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)との相互作用半径が小さかったため、ポリオレフィン樹脂との親和性が高くなりすぎ、得られた塗膜は密着性や耐屈曲性に劣るものであった。
比較例2で得られた水性分散体は、ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)との相互作用半径が小さかったため、ポリオレフィン樹脂との親和性が高くなりすぎ、得られた塗膜は耐屈曲性に劣るものとなった。また、実施例1と比較すると、密着性も低下していた。
比較例3で得られた水性分散体は、ポリウレタン樹脂(B)の含有量が少なかったため、得られた塗膜は密着性や耐屈曲性に劣るものであった。
比較例4で得られた水性分散体は、ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が少なかったため、得られた塗膜は密着性や耐屈曲性に劣るものであった。

Claims (6)

  1. 不飽和カルボン酸成分を含有するポリオレフィン樹脂(A)と、ポリウレタン樹脂(B)と、水性媒体とを含む水性分散体であって、
    ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)の質量比が90/10~10/90であり、
    ポリウレタン樹脂(B)のHansen溶解度パラメータにおける水素結合項δHが10MPa1/2以上であり、ポリオレフィン樹脂(A)とポリウレタン樹脂(B)とのHansen溶解度パラメータにおける相互作用半径が10以上である、水性分散体。
  2. 塗膜としたときの、25℃、10ラジアン/秒で測定した貯蔵弾性率が5×10以上5×10以下、かつ25℃、10ラジアン/秒で測定した損失弾性率が7×10以上2×10以下である、請求項1に記載の水性分散体。
  3. ポリオレフィン樹脂(A)が(メタ)アクリル酸エステル成分を1~30質量%含有する、請求項1または2に記載の水性分散体。
  4. ポリオレフィン樹脂(A)中の不飽和カルボン酸成分の含有量が0.01~15質量%である、請求項1~3の何れか1項に記載の水性分散体。
  5. ポリオレフィン樹脂(A)の不飽和カルボン酸成分が無水マレイン酸である、請求項1~4の何れかに記載の水性分散体。
  6. 請求項1~5の何れかに記載の水性分散体から形成された、塗膜。
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