JP2022146684A - ポリイミド成形体の成形方法 - Google Patents

ポリイミド成形体の成形方法 Download PDF

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Abstract

【課題】その表面にスキン層が形成されたポリイミド成形体の成形方法、及び、表面に緻密なスキン層を有するポリイミド成形体を提供することを課題とする。【解決手段】ポリアミック酸の部位が残留するポリイミド粉末を含む予備成形体の表面の少なくとも一部が通気性を有する熱伝導部材に接触した状態で、減圧下で加熱してポリアミック酸をイミド化させることを特徴とするポリイミド成形体の成形方法。【選択図】図7

Description

本発明はポリイミド成形体の成形方法、及び、表面に緻密なスキン層を有するポリイミド成形体に係るものである。
各種の物質に対して、種々の手法によって気泡を導入して多孔質体とすることにより、その熱伝導率が低下することを利用して断熱材としたり、力学的な柔軟性を生じることを利用して各種の緩衝材等とすることが広く行われている。
例えば、主に室温付近の温度で断熱材や緩衝材として使用される多孔質体としては、いわゆるスポンジや発泡スチロール等と称されるような、主にウレタン系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系等のポリマーを発泡させてなる多孔質体が知られている。一方、これらのポリマーを発泡させてなる多孔質体の耐熱性は100℃程度であり、使用温度範囲が限定されている。
このため、上記ポリマーからなる多孔質体が使用できない温度域においては、主に無機物で構成されるグラスウール等の繊維状物や、特に断熱材としては発泡コンクリートや耐熱レンガのような変形が困難なバルク状物が必要とされてきた。一方、当該無機系の断熱材の使用においては、上記のポリマー系の断熱材を使用する場合とは異なる使い勝手が求められるため、より高温で使用可能なポリマー系の多孔質体が求められている。
ポリイミド樹脂(以下、単に「ポリイミド」と称する場合がある。)は高い熱的、化学的安定性を有しており、特に芳香族ポリイミド樹脂に分類される構造を有するポリイミド樹脂はポリマーの中で最も高い熱的、化学的安定性を有することが知られている。一方、当該熱的安定性に起因して、ポリイミドは一般に有機溶剤等に対して溶解性を示さず、一部の熱可塑性ポリイミドを除いて加熱した状態で成形することが困難である等の理由により、上記樹脂系の多孔質体の製造に一般に使用される手法を用いて多孔質体化することが困難である。
一方、当該ポリイミド樹脂が有する熱的、化学的安定性を活かしながら、これを多孔質体とするための方法が種々提案されている。例えば、特許文献1には、ポリイミドの前駆体の圧縮成形体に対してマイクロ波を照射することで発泡させた後に、熱処理してイミド化することでポリイミド発泡体として、更に当該ポリイミド発泡体を粉砕して得られるチップを成形し、所定の加圧をおこなった状態で加熱して軽量ポリイミド成形体を得る技術が記載されている。
また、特許文献2には、上記と同様にポリイミドの前駆体の圧縮成形体に対してマイクロ波を照射することで発泡させた後、イミド化の完了する以前の発泡体を粉砕して得られるポリイミド粉末を成形した成形体を加圧しない状態で400℃まで加熱してポリイミド多孔体としたことが記載されている。
また、特許文献3には、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を繊維状として、これを圧縮成形した成形体に対して、ホットプレス等を行い、更に常圧下で300℃以上に加熱して閉環反応を終結させることでポリイミド多孔体を得る技術が記載されている。
特開2009-242661号公報 WO2012/165294号パンフレット 特開平7-216122号公報 特開2009-241337号公報 特開平10-221945号公報
上記樹脂系の多孔質体等を使用する際に、当該多孔質体の表面にスキン層と呼ばれるような、気孔が存在せず、又は多孔質体の内部と比較して気孔密度が低い表面層を設けることにより、当該多孔質体に各種の機能を付与する技術が知られている。
例えば、特許文献4には、耐久性や耐摩耗性等の向上を目的として、スポンジゴムの表層部に非発泡のソリッドゴムによる薄肉状のスキン部を形成する技術が記載されている。また、特許文献5には、ポリウレタンスポンジの表面に連続した滑らかな表面を形成するスキン層を形成することで、耐久性を向上させる技術が記載されている。
例えば、上記特許文献4に記載されるスキン層の形成方法は、高圧力下でゴム材料を加熱された金型に当接させることで、当該当接した面を加熱・加硫して硬化させてスキン層の部分を形成した後、圧力を低下させることで発泡を生じさせてスポンジ状の内部構造を形成するものである。
一方、上記ポリイミド樹脂から構成される多孔質体の表面に上記のようなスキン層を導入しようとした際には、ポリイミド樹脂が実質的に流動性を有しないため、例えば、上記のようにスキン層を形成した後に発泡等をすることによってスキン層を有する多孔質体としたり、又は、ポリイミド樹脂からなる多孔質体の表面を加熱して流動させる等してスキン層を形成させることが困難である。この結果として、従来は、ポリイミド樹脂からなる多孔質体であって、その表面にスキン層が形成された多孔質体は提供されていなかった。
本発明は、その表面にスキン層が形成されたポリイミド成形体の成形方法、及び、表面に緻密なスキン層を有するポリイミド成形体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、以下に記載のポリイミド成形体の成形方法、及びポリイミド成形体を提供する。
(1) ポリアミック酸の部位が残留するポリイミド粉末を含む予備成形体の表面の少なくとも一部が通気性を有する熱伝導部材に接触した状態で、減圧下で加熱してポリアミック酸をイミド化させることを特徴とするポリイミド成形体の成形方法。
(2)上記ポリアミック酸の部位が残留するポリイミド粉末のイミド化率が90%以下である上記のポリイミド成形体の成形方法。
(3)上記ポリイミド成形体を構成するポリイミドには芳香族ポリイミドが含まれる上記のポリイミド成形体の成形方法。
(4)上記通気性を有する熱伝導部材は、連通する気孔を有する多孔体である上記のポリイミド成形体の成形方法。
(5)上記ポリイミド成形体が多孔質体である上記のポリイミド成形体の成形方法。
(6)ポリイミドを含むポリイミド成形体であって、当該成形体の表面の少なくとも一部には、当該成形体の内部と比較した際にポリイミドの密度が高いスキン層が形成されていることを特徴とするポリイミド成形体。
(7)上記ポリイミド成形体を構成するポリイミドには芳香族ポリイミドが含まれる上記のポリイミド成形体。
本発明に係るポリイミド成形体の成形方法によれば、当該成形体の表面において、成形体の内部と比較した際に空孔率の低く緻密なスキン層を有するポリイミド成形体を形成することが可能となる。
実施例で使用したポリアミック酸粉末のSEM像である。 実施例で使用した加熱装置の概略を示す模式図である。 実施例で使用した通気性を有する熱伝導部材の表面のSEM像である。 実施例で使用した加熱装置における温度プロファイルである。 実施例で形成したポリイミド成形体の外観である。 実施例で形成したポリイミド成形体の加熱前後のFT-IRの測定結果である。 実施例で形成したポリイミド成形体の破断面のレーザー顕微鏡像である。 実施例に係るポリイミド成形体の表面のレーザー顕微鏡像及び表面粗さである。
ポリイミド樹脂の内、特に芳香族ポリイミド樹脂と呼ばれるものは、一般的に以下に説明するような二段階合成法によって合成される。合成の第一段階では、アミド系溶媒等の極性溶媒中に原料の一部である芳香族ジアミンを溶解した溶液に対して、他方の原料である芳香族テトラカルボン酸二無水物等を投入し室温で混合することにより、両化合物間で開環重付加反応を生じてポリアミック酸を生じる。
その後、合成の第二段階として、当該ポリアミック酸において脱水環化反応(イミド化)を生じさせることで、当該脱水環化反応に伴う縮合水を生じてポリイミドを生成する。当該脱水環化反応は吸熱反応であり、真空下等で300~400℃程度まで段階的に加熱する、又は、無水酢酸-ピリジン系等のカルボン酸無水物と第三アミンの混合物などを脱水環化試薬として使用して室温~100℃で処理する等によってポリアミック酸から縮合水として脱水を生じさせて、ポリイミドが生成される。
上記ポリアミック酸は所定の有機溶媒に溶解可能であり、また一般に当該ポリアミック酸がイミド化することで生成するポリイミドと比較して低いTg(ガラス転移温度)を示す。このため、例えば、フィルム状のポリイミドを形成しようとする際には、当該ポリアミック酸の状態でフィルム状に成形し、その後に加熱等を行うことでイミド化を生じさせてフィルム状のポリイミドとすることが一般的に行われる。当該方法では、成形体の形状がフィルム状であるためにイミド化に伴って発生する縮合水の放出が容易であり、比較的容易に所望のポリイミドフィルム等を得ることができる。
また、各種の用途に適合したポリイミドを容易に生成可能とするために、上記芳香族ジアミンや芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体的な構造等が適宜調整されて重合されたポリアミック酸を適宜の溶剤に溶解した溶液が、ポリイミド前駆体の「ワニス」等として販売されている。
一方、上記特許文献1~3に記載されるような所定の厚みを有するポリイミド成形体を得ようとする際には、主に上記ポリアミック酸のイミド化に伴って発生する縮合水の成形体外への放出が問題となり、その結果として、特にポリイミドの多孔質体を成形しようとする際には、その表面性状の調整が困難となり、特に成形体の表面層に平滑なスキン層を生成することが困難となる。
上記特許文献1では、ポリアミック酸の状態からイミド化してポリイミドとした発泡体を再度粉砕して、当該粉砕物を目的の形状に成形して加圧下で加熱することで所定の多孔質の成形体を得ている。当該方法によれば、ポリイミドが流動性を示さないことから、最終の成形体における表面層に平滑なスキン層を生成することが困難である。
また、特許文献2,3においては、イミド化の完了する以前のポリアミック酸粉末を室温又は加熱下で成形した後、最終的に無加圧の状態で300~400℃の温度に加熱してイミド化を生じさせることで所定の多孔質の成形体を得ている。特許文献2,3に記載の技術は、イミド化が終了したポリイミド粉末と比較して、イミド化が完了せずポリアミック酸の部位が残留する粉末が低いTgを示すために粉末間の融着が生じ易く、比較的容易に成形体が得られることを利用するものと推察される。
一方、上記で説明したように、ポリアミック酸の部位が残留する粉末で構成される成形体を加熱してイミド化する際には、ポリアミック酸のイミド化に伴う縮合水が発生する。このため、当該成形体を一般的なホットプレス装置のダイス等に密着した状態で加熱した際には、成形体とダイス間に気体(縮合水)が蓄積して爆発的に放出される現象を生じるため、所望の成形体が得られないという問題を生じる。
上記特許文献2,3に記載の技術において、最終的なイミド化を生じさせるために300~400℃の温度に加熱する工程が、特に無加圧の状態で行われることは上記のような事情を反映したものと推察される。当該手段によれば、成形体の表面が拘束を受けない状態でイミド化に伴う発泡を生じるため、成形体の寸法精度の確保が困難であると共に、特にポリイミド成形体の表面層に平滑なスキン層等を生成することが困難であると考えられる。
上記のように、耐熱性の高い熱硬化性樹脂であるポリイミド樹脂に特有の事情に起因して、多孔質ポリイミド成形体の表面に平滑なスキン層を生成することは一般に困難である。これに対して、本発明者が、表面に平滑なスキン層を有するポリイミド成形体を形成するための手段を検討したところ、ポリアミック酸の部位が残留するポリイミド粉末を含む予備成形体を加熱してイミド化を生じさせながら当該粉末間の融着を生じさせてポリイミド成形体とする際に、当該予備成形体の表面に通気性を有する熱伝導部材を接触させることによって、当該通気性を有する熱伝導部材が接触した部分に空孔率が低く平滑なポリイミド層が生成して当該ポリイミド成形体のスキン層となることを見出し、本発明に至ったものである。
なお、上記で説明したとおり、ポリアミック酸とポリイミドの語は、ポリアミック酸の分子中に含まれる所定の部位が脱水環化反応を生じることでイミド化する前後の状態を区別するものである。一方、例えば、一分子内においてもイミド化した部分とイミド化していない部分が存在可能である等、所定の状態にある分子を両者のいずれかに区別することは困難である。このため、以下の説明においてポリイミド等と記載する場合には、イミド化の完了したポリイミドの他に、その一部にポリアミック酸の部位が残留するポリイミドを含むものとし、特に全部又は一部にポリアミック酸を含むポリイミドを意図する場合にはポリアミック酸、又はポリイミド前駆体等と称することがある。
上記のように、ポリアミック酸の部位が残留するポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を含む予備成形体を加熱して当該粉末のイミド化と融着を生じさせることで形成されるポリイミド成形体の表面において、特に、通気性を有する熱伝導部材の表面に接触した部位にスキン層が形成される機構は以下のように考えられる。
ポリイミド成形体を形成する過程において生じるポリアミック酸のイミド化(脱水環化反応)は吸熱反応であり、当該反応に供される熱はポリアミック酸粉末の接するダイス等の熱伝導部材の表面から供給されると考えられる。そして、当該ダイスとして通気性を有する熱伝導部材を使用した場合には、ポリマーが加熱されて含有されるポリアミック酸がイミド化する過程において当該ポリマーが所定の流動性を示してダイスの表面を濡らすと共に、その状態でイミド化を生じて流動性を失うために、当該ダイスに接する成形体の表面に平滑なスキン層が形成されるものと考えられる。そして、当該イミド化の際に生じる水蒸気はダイスを構成する熱伝導部材を通じて外部に開放されるために、当該スキン層の生成を妨げないものと考えられる。
一方、ダイス等を通気性を有しないバルクの金属等で構成した場合には、予備成形体に含まれるポリマーが流動して同様に当該ダイスの表面を濡らした場合でも、イミド化の際に生じる水蒸気が成形体とダイスの界面に沿って移動する結果、成形体の表面に凹凸を生じ、これを平滑にすることが困難であるものと推察される。
なお、本明細書において、上記成形体表面に形成されるスキン層は必ずしも完全に緻密である必要はなく、所定の比率で開孔部を有していてもよく、成形体の表面における開孔率が成形体全体における空孔率を上回ることを以て、当該成形体の表面にスキン層が存在するものとする。
本発明に係るポリイミド成形体の成形方法においては、予備成形体を構成するポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)のイミド化を生じる温度に加熱すると共に、当該イミド化によって生成する縮合水を良好に放出させる観点から、減圧下で加熱、成形を行うことが好ましい。このため、本発明に係るポリイミド成形体の成形方法を実施する形態の一例として、いわゆるホットプレスを行うための装置を使用して、所望の形状を有するダイス部分の少なくとも一部を焼結金属等の通気性を有する熱伝導部材として、減圧下において、予備成形体に加圧しながら、或いは非加圧の状態で加熱を行うことでポリイミド成形体を成形することができる。
また、本発明に係る成形方法によってポリイミド成形体を成形する際には、予め適宜の方法で原料とするポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を圧縮成形することで予備成形体として、当該予備成形体を通気性を有する熱伝導部材に接した状態で加熱することで、当該熱伝導部材に接した部分にスキン層を有するポリイミド成形体を形成することができる。又は、上記のようなホットプレス装置のダイスの一部を通気性を有する熱伝導部材で構成し、当該ダイスの内部に原料とするポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を挿入して圧縮することで予備成形体を形成し、これを加熱することで所定の表面の部分にスキン層を有するポリイミド成形体を得ることも可能である。
本発明に係るポリイミド成形体の成形方法において使用されるポリイミド粉末は、ポリアミック酸の部位が残留することにより、加熱してイミド化する過程において所定の流動性を示すものであれば特に制限なく使用することが可能である。例えば、イミド化率が90%以下のポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を使用することで、通気性を有する熱伝導部材に接する表面の開孔率を、成形体内部の空孔率よりも小さくすることが可能であり、当該成形体が使用される用途等に応じて適宜のイミド化率を有するポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を使用することができる。
本発明に係るポリイミド成形体の成形方法において、イミド化率の低いポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を使用することで、当該粉末を成形してイミド化する過程で大きな流動性を生じることが期待され、表面に形成されるスキン層の厚みを大きくし、またその開孔率を小さくすることができる。例えば、イミド化率が30%以下、或いは20~10%以下のポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)、或いは実質的にイミド化を生じていないポリアミック酸粉末を使用することで開孔率の小さいスキン層を形成することができる。
一方、特に厚みの大きい成形体を成形する際や、成形体の表面の全面にスキン層を形成しようとする際には、過度にイミド化率の低いポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を使用することで、一旦生成したスキン層を介して成形体内部で発生した縮合水が放出される結果、成形体に変形が生じたり、スキン層に粗大な孔が形成される等のおそれが生じる。このため、例えば、成形体の表面付近にイミド化率の低いポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を使用し、成形体の内部となる部分にイミド化率の高いポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を使用する等、異なるイミド化率を有するポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を組み合わせて使用することも好ましい。
上記ポリアミック酸の部位が残留するポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)としては、主にテトラカルボン酸成分として芳香族テトラカルボン酸類、ジアミン成分として芳香族ジアミンをそれぞれ使用し、これらをアミド系溶媒等の極性溶媒中で混合することで開環重付加反応を生じさせたものが好ましく使用される。当該芳香族テトラカルボン酸類としては、各種の芳香族テトラカルボン酸や、そのエステル化物、その無水化物等、ポリイミドを形成し得るテトラカルボン酸及びその誘導体が使用される。
上記芳香族テトラカルボン酸成分としては、成形されるポリイミド成形体の用途等に応じて、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸類、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸類などのビフェニルテトラカルボン酸類、ピロメリット酸類、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸類等のベンゾフェノンテトラカルボン酸類、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸類、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸類、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸類、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸類などのナフタレンテトラカルボン酸類、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル類などのビス( ジカルボキシフェニル)エーテル類、2,2-ビス(2,5-ジカルボキシフェニル)プロパン類等のビス(ジカルボキシフェニル)プロパン類、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン類などのビス(ジカルボキシフェニル)エタン類、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン類等のビス(ジカルボキシフェニル)スルホン類等の芳香族テトラカルボン酸類等から一種又は複数種の芳香族テトラカルボン酸成分を選択して使用することができる。
一方、ジアミン成分として、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸等の1つのベンゼン核を有する芳香族ジアミンや、4,4’- ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’- ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン等の2つのベンゼン核を有する芳香族ジアミン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン等の3つのベンゼン核を有する芳香族ジアミン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン等の4つのベンゼン核を有する芳香族ジアミン、ジアミノナフタレン等のナフタレン環を有する芳香族ジアミン、2,6-ジアミノピリジンなどの複素環を有する芳香族ジアミン等から一種又は複数種の芳香族ジアミン成分を選択して使用することができる。
上記本発明に係るポリイミド成形体の成形方法に使用されるポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)のイミド化率は、例えば、当該粉末についてフーリエ変換赤外分光光度計により得られた吸収スペクトルに基づいて、イミド由来の吸収であると考えられる吸光度であって、例えば1773cm- 1 における吸光度の変化に基づいて算出することができる。
本発明においては、各種サンプルについて測定された吸収スペクトルにおいて、上記1773cm- 1 における吸光強度を、芳香環に由来すると考えられる1498cm- 1 における吸光強度で除して標準化した値を「1773cm- 1 における吸光度」(以下、単に「吸光度」と称する場合がある。)とした。また、各サンプルの作成に使用したポリアミック酸(ワニス)について求めた当該吸光度をイミド結合が存在しない状態を示すベース吸光度とし、各サンプルにおける吸光度から当該ベース吸光度を差し引いた値を当該サンプルのイミド化量とした。また、ポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を真空中、380℃で熱処理をすることによりイミド化が完了したと考えられるサンプルにおける当該イミド化量を基準(100%)として、各サンプルにおけるイミド化量を除することで各サンプルのイミド化率(%)とした。
本発明に係る成形方法によって成形されるポリイミド成形体の相対密度は、主に使用するポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)の形態や、加熱の際に付加する圧力等によって決定される。
スキン層を有すると共に、成形体の内部においても空孔度が低く緻密なポリイミド成形体を得る場合には、加圧時の充填密度が高くなるように緻密なポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を使用すると共に、加熱時に高い成形圧力を付加してイミド化することが好ましい。特に、本発明に係る成形方法において、使用するポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)のイミド化率や、加熱の際の温度プロファイルを調製することにより、かさ密度をポリイミドの真密度に近づけた緻密なポリイミド成形体であって、表面に平滑なスキン層を有する成形体を形成することが可能である。
一方、空孔度が高く低密度のポリイミド成形体を得る場合には、上記特許文献2に記載されるような多孔質のポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を使用する他、圧縮成形時のかさ密度が低くなるような形態のポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を使用すると共に、加熱時の成形圧力を低くし、又は非加圧の状態で加熱してイミド化することが好ましい。また、比表面積の大きいポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を使用することにより、イミド化の際の縮合水の脱離を円滑に生じる点でも好ましい。
また、本発明に係る成形方法で形成されるポリイミド成形体には、その用途等に応じて各種の分散相を適宜の比率で含むことができる。ポリイミド成形体に分散相を複合化する際には、原料として使用するポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)に当該分散相を構成するための物質を含む粉末を混合した混合粉を用いて予備成形体を作成し、これを本発明に係る成形方法により成形することができる。また、ポリアミック酸を溶解した溶液中に当該分散相を構成するための物質を含む粉末等を混合した状態で溶媒を除去して粉末とし、当該粉末を予備成形体とした後に、本発明に係る成形方法により成形することができる。
本発明に係るポリイミド成形体の成形方法で使用される各種の形態を有するポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)は、上記のような各種の組成を有するポリアミック酸を使用して各種の手法により製造することができる。例えば、上記特許文献3に記載されるように、ポリアミック酸に対して良溶媒である溶剤にポリアミック酸を溶解した溶液を用いて、当該溶液をポリアミック酸に対する貧溶媒を凝固浴として、当該凝固浴中にポリアミック酸溶液を超音波によって粒状に分散させ、又は機械的な剪断を加えながら混合する過程を利用して、比表面積の大きなポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を製造することができる。
また、揮発性の高い溶剤にポリアミック酸を低濃度で溶解し、これを各種の方法で噴霧する過程において、真球に近い形態の微細なポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を製造することができる。
本発明に係るポリイミド成形体の成形方法においては、上記のようにして製造されるポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)について、必要に応じて予め所定の熱処理を行うこと等によってイミド化率の調整等を行った後、所望の形状の予備成形体とし、特にその表面にスキン層を形成したい部分に通気性を有する熱伝導部材を接触させた状態で、減圧下でイミド化のための加熱を行うことによりポリイミド成形体とすることができ、当該通気性を有する熱伝導部材に接触した表面にスキン層を形成することができる。
上記通気性を有する熱伝導部材は、上記ポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)の予備成形体を加熱する際の熱媒体として機能すると共に、イミド化に伴って発生する縮合水を系外に放出する役割を担うものである。このため、当該イミド化を生じる過程で成形体の形状を維持できる程度の機械的強度を有すると共に、ポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)等に対して不活性である金属体等であって、連通した空孔を有することによって縮合水を良好に通過させる程度の通気性を有するものであれば特に制限無く使用することができる。
上記熱伝導部材として使用される金属体等として、具体的には、比較的高い融点を有する金属(合金)の粉末を使用して、これを焼結等することで得られる多孔質の金属体を用いることができる。例えば、炭素鋼の焼結体や、炭素鋼を基礎としてNi,Mo,Mn,Cr等の遷移金属を所定の割合で含む焼結体、ステンレス鋼の焼結体等を好ましく使用することができる。
また、上記熱伝導部材として使用される材質は金属に限定されず、炭化タングステン、炭化チタン、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等の高い熱伝導性を示す無機化合物を好ましく使用することができ、これらの無機化合物の焼結体や、当該無機化合物の粉末をNi,Cr,Co等の高融点金属をバインダーとして焼結して得られる焼結体を上記熱伝導部材として使用することができる。特に無機化合物を含む熱伝導部材を使用することで、金属製の熱伝導部材を使用する場合と比較して剛性が高く、温度に変化による膨張が小さいなど、高精度でポリイミド成形体を成形することが可能になる点で好ましい。
上記熱伝導部材が示す熱伝導率が高いことによって外部に設けられるヒーター等からの熱が効率的にポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)等に伝達される点で好ましい。熱伝導部材が有する熱伝導率は特に限定されないが、概ね5W/mK以上、好ましくは10W/mK以上の熱伝導率を有する物質によって熱伝導部材を構成することによって、良好にイミド化を生じさせることができる。
上記熱伝導部材は、イミド化に伴う縮合水を系外に放出するための通気性を確保するための連通孔を有する一方で、製造されるポリイミド成形体の表面を平滑とし、また連通孔内へポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)が侵入することによる成形体との間での食い付きを防止する観点から、ポリイミド成形体と接触する表面に粗大な孔を有しないことが好ましい。
例えば、上記熱伝導部材における空孔率を10%~40%程度にすることにより、イミド化に伴う縮合水を良好に系外に放出可能であると共に、熱伝導部材の表面とポリイミド成形体の実効的な接触面積を大きくできる点で好ましい。また、上記熱伝導部材に含まれる平均的な空孔径を100~200μm以下、好ましくは50μm以下とすることにより、イミド化前のポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)が当該空孔内に侵入することが有効に防止されると共に、成形体をイミド化する過程でポリアミック酸等が孔内に流入することが防止することができる。
本発明に係るポリイミド成形体の成形方法において、予備成形体の表面に接して使用される熱伝導部材は、予備成形体中のポリイミド粉末に含まれるポリアミック酸の部分がイミド化して生じる縮合水が、ポリイミド成形体の表面でのスキン層の形成を阻害しない程度の圧力差によって系外に放出される程度の通気性を有すればよく、上記の程度の熱伝導率を示す連通孔を有する多孔質体によって構成することができる。当該熱伝導部材の通気性として、例えば耐火物の通気率(JIS R2115)に基づいた試験によって、0.5×10-12/m程度以上の通気率を有するものであれば好ましく使用することができる。
また、所定の空孔率で有する熱伝導部材を構成する際に、平均的な空孔径を縮小することにより、隣接する空孔間の距離が縮小されるため、当該空孔と空孔の間で発生した縮合水が放出される際の抵抗が減少して良好に放出が生じる点で好ましい。
製造されるポリイミド成形体の表面を平滑とし、また繰り返してポリイミド成形体の成形を行う際の熱伝導部材の表面の汚染を防止する観点から、研削等の手段によって当該熱伝導部材の表面を平滑にすることが好ましい。
本発明に係るポリイミド成形体の成形方法においては、ポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)を含む予備成形体の少なくとも一部が熱伝導部材の表面に当接するように配置することにより、当該当接した部分に空孔度の低いスキン層を形成することができる。一方、特にポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)の予備成形体に対して加圧した状態で加熱してイミド化を生じさせる過程では、当該予備成形体の表面の全部がダイス等に接することとなる。この場合には、通気性を有しないダイスに接した面においてシルバーストリーク等と呼ばれる圧縮された気体の放出に伴う成形体表面の瑕疵を生じる場合がある。
このため、本発明に係る成形方法によってポリイミド成形体を成形する際に、ポリイミド粉末(ポリアミック酸粉末)の予備成形体の表面の全面に通気性を有する熱伝導部材を設けることも好ましい。また、通気性の異なる熱伝導部材を使用し、緻密なスキン層を形成しようとする表面に通気性の低い熱伝導部材を当接させる等により、成形体内部で発生する縮合水が当該表面を通過しないようにすることも可能である。
本発明に係るポリイミド成形体の成形方法によれば、ポリイミド成形体の表面にスキン層を形成することが可能となり、当該成形体が使用等される際の耐久性を向上することが可能となる。また、その使用に際して、ポリイミド成形体の内部の空孔に異物が侵入して汚染等を生じることを防止することができる。
また、本発明に係るポリイミド成形体の成形方法により形成されたスキン層の表面に対して、ポリアミック酸を溶剤に溶解してなる溶液(ワニス)を塗布して熱処理を行うことにより、更に緻密なスキン層を形成することが可能である。
以下、本発明に係るポリイミド成形体の成形方法を実施する具体的な手段等について、実施例により具体的に説明するが、本発明は当該実施例に限定されるものではない。
(1)ポリアミック酸の粉末等の調製
芳香族テトラカルボン酸成分としての3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物(BPDA)と、芳香族ジアミン成分としての4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(DPE)を含むポリアミック酸を、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)に18wt%の濃度で溶解した市販のワニス(T&K TOKA製:「PAA-1」)を用いて、以下の方法によりポリアミック酸の粉末を製造した。
上記ワニスに対してポリアミック酸の濃度が5.7wt%になるようにNMPを加えて希釈したポリアミック酸のNMP溶液を、過剰量のイソプロピルアルコール(IPA)中に滴下しながら攪拌を行ってポリアミック酸粉末を析出させた。
図1には、上記方法で得られたポリアミック酸粉末の一例についてのSEM像を示す。ポリアミック酸のNMP溶液を、ポリアミック酸に対して貧溶媒であり、NMPと相溶性のあるIPA中に滴下して攪拌する過程において機械的な剪断作用を生じさせることにより、図1に示すような微細なフィルム状の形態を有するポリアミック酸粉末を得た。得られたポリアミック酸粉末のイミド化率は、FT-IRを用いた測定結果から3.6%と算出された。
上記ポリアミック酸粉末(0.5g)を内径がφ20mmのペレタイザー内に投入し、室温において20MPaの圧力で3分間加圧することでペレットとし、これを予備成形体として以下のように加熱処理(イミド化)を行った。
(2)ポリイミド成形体の作成(ポリアミック酸のイミド化)
図2には、上記ポリアミック酸の予備成形体(ペレット)をイミド化する際に使用したホットプレス装置の模式図を示す。ホットプレス装置は、φ20mmの空間を中心に有する円筒状のダイス(側壁部)3の中空部内において、真空排気のための経路を有するダイス(加圧体)4がダイス(側壁部)3の軸方向11に移動可能な状態で対向して配置されており、当該ダイス(加圧体)4の端部に通気性を有する熱伝導部材2が設けられていることで、当該熱伝導部材2の間に設置される予備成形体(ペレット)1に対して加圧可能とされている。
また、上記ダイス(側壁部)3とダイス(加圧体)4の周囲には、当該ダイスを所定の温度に加熱して保持するためのヒーター5が設けられている。更に、上記ダイス3,4やヒーター5は図示しない真空容器内に収められ、図示しない排気装置によって当該真空容器内を排気することによって、上記ダイス3,4やヒーター5を略真空内に保持することが可能とされている。
特に、ダイス(加圧体)4の軸方向に設けられた真空排気のための経路により、熱伝導部材2の背面を真空にすることにより、予備成形体(ペレット)1から発生する気体等を円滑に系外に除去可能とされている。
図3には、図2で熱伝導部材2として使用した炭化タングステンの多孔質焼結体表面のSEM像を示す。熱伝導部材2として使用した炭化タングステンの多孔質焼結体(厚さ:4mm)は、粒子径が100μm程度の炭化タングステン粒子をNiをバインダーとして焼結したもの(冨士ダイス製:PC20)であり、30%程度の気孔率を有し、3~6×10-12/m(JIS R2115)程度の通気率、40W/mK程度の熱伝導率を示すものである。また、上記イミド化においては、当該炭化タングステンの多孔質焼結体の表面を研削により平坦化して使用した。
予備成形体1に含まれるポリアミック酸をイミド化してポリイミド成形体とする操作は、以下のように行った。図2に示すようにダイス(側壁部)3の内部の円筒部内に下部治具(熱伝導部材2)を設置し、その上面に予備成形体(ペレット)1を配置した状態で、ダイス(加圧体)4を移動させることで上部治具(熱伝導部材2)を下降して予備成形体(ペレット)1の下面を下部治具(熱伝導部材2)に接触させた。
その後、上部治具(熱伝導部材2)に懸かる圧力を抜いた状態でダイス(加圧体)4の位置を固定し、予備成形体(ペレット)1の上面と上部治具(熱伝導部材2)が接触しない状態で、無加圧の状態で約20Paまで排気した。その後、ダイス3,4の周囲の圧力を維持した状態でヒーター5を使用して図4に示す温度プロファイルで予備成形体(ペレット)1の加熱を行い、予備成形体(ペレット)1中のポリアミック酸をイミド化してポリイミド成形体とした。
(3)ポリイミド成形体の評価
図5には、上記で作成したポリイミド成形体を、その上面から観察した際の外観を示す。イミド化を行ったペレットの見掛け密度は0.48g/cm程度であり、ポリイミドの真密度と比較して66%程度の空孔を有するものと考えられた。図6には、上記ペレットの熱処理の前後におけるFT/IRの測定結果を示す。上記熱処理により1773cm- 1 付近におけるイミド結合に起因すると考えられる吸光度が増加し、当該熱処理によりイミド化を生じたと推察された。当該吸光度に基づいて、イミド化率が100%の試料を基準としてイミド化率を算出したところ、そのイミド化率は93%と算出された。
図7には、上記ペレットを破断した際の破断面であって、上記下部治具(熱伝導部材2)に接触していた下側表面の付近の破断面(レーザー顕微鏡像)を示す。図7に示すように、上記ペレットの下部治具(熱伝導部材2)に接触していた側の表面には、40~50μm程度の厚さで、ペレット内部と比べて緻密な層が観察された。
図8には、上記で熱処理を行ったペレットの表面をレーザー顕微鏡で観察して得た三次元像、及び、表面の粗さプロファイルを示す。図8に示すように、上記下部治具(熱伝導部材2)に接触していたペレットの下側表面(図8(c))では、表面に観察される凹凸が数μmの範囲にあることが観察された。一方、外部に接触しない状態でイミド化させたペレットの上側表面(図8(a))では、比較的平坦な面の間に谷間状の凹部が観察され、イミド化の際の体積変化の過程でヒビ割れを生じた結果と推察された。
また、緻密で平滑なダイス鋼の表面に接した状態でイミド化させたペレットの側面表面(図8(b))では、筋状の凹部が高密度で観察された。当該表面の形態は、イミド化の際に発生する縮合水が通過した痕跡であると推察された。
上記観察の結果から、熱伝導部材である炭化タングステンの多孔質焼結体に接触した状態でイミド化させたペレットの下側表面には、ペレットの内部と比較して緻密であり、外部に接触しない状態でイミド化させたペレットの上面や、ダイス鋼の表面に接した状態でイミド化させたペレットの側面と比較して凹凸が少ないスキン層が形成されることが示される。
本発明によれば、無加圧等の状態においても表面に平滑なスキン層を有するポリイミド成形体が成形可能であり、ポリイミド成形体の新たな用途を提供するものである。
1 予備成形体
2 熱伝導部材
3 ダイス(側壁)
4 ダイス(加圧体)
5 ヒーター
10 排気
11 ダイスの動き

Claims (7)

  1. ポリアミック酸の部位が残留するポリイミド粉末を含む予備成形体の表面の少なくとも一部が通気性を有する熱伝導部材に接触した状態で、減圧下で加熱してポリアミック酸をイミド化させることを特徴とするポリイミド成形体の成形方法。
  2. 上記ポリアミック酸の部位が残留するポリイミド粉末のイミド化率が90%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリイミド成形体の成形方法。
  3. 上記ポリイミド成形体を構成するポリイミドには芳香族ポリイミドが含まれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポリイミド成形体の成形方法。
  4. 上記通気性を有する熱伝導部材は、連通する気孔を有する多孔体であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のポリイミド成形体の成形方法。
  5. 上記ポリイミド成形体が多孔質体であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のポリイミド成形体の成形方法。
  6. ポリイミドを含むポリイミド成形体であって、当該成形体の表面の少なくとも一部には、当該成形体の内部と比較した際にポリイミドの密度が高いスキン層が形成されていることを特徴とするポリイミド成形体。
  7. 上記ポリイミド成形体を構成するポリイミドには芳香族ポリイミドが含まれることを特徴とする請求項6に記載のポリイミド成形体。
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