JP2022143474A - アルカリ乾電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】ハイレート放電特性に優れるアルカリ乾電池を提供する。【解決手段】開示されるアルカリ乾電池10は、正極2を含む。正極2は、二酸化マンガンの粉末と導電材とを含む。導電材は、黒鉛の粉末と、ピッチ系炭素繊維とを含む。ピッチ系炭素繊維の比表面積は、0.8~3.0m2/gの範囲にある。【選択図】図1

Description

本開示は、アルカリ乾電池に関する。
アルカリ乾電池(アルカリマンガン乾電池)は、マンガン乾電池に比べて電池容量が大きく、大きな電流を取り出すことができるため、広く利用されている。アルカリ乾電池は、通常、正極と、負極と、正極と負極との間に配されたセパレータと、アルカリ電解液とを備える。正極は、正極活物質である二酸化マンガンと、導電材とを含む。
アルカリ乾電池の特性(例えば放電特性)を高めるには、導電材の選択が重要になる。従来から、様々な導電材を用いたアルカリ乾電池が提案されてきた。
例えば、特許文献1(特許第4434727号)は、「アノードと、水性アルカリ電解液と、二酸化マンガンと黒鉛材料とを含むカソードとを有する一次アルカリ電気化学電池であって、前記黒鉛材料が10から60m/gのBET比表面積を有する黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維であって、水酸化カリウムと共に800から1000℃の温度において加熱処理された処理後の黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維を含むことを特徴とする電気化学電池。」を開示している。
特許第4434727号公報
アルカリ乾電池の放電特性のさらなる向上が、従来から求められている。このような状況において、本開示は、ハイレート放電特性に優れるアルカリ乾電池を提供することを目的の1つとする。
本開示の一局面は、アルカリ乾電池に関する。当該アルカリ乾電池は、正極を含むアルカリ乾電池であって、前記正極は、二酸化マンガンの粉末と導電材とを含み、前記導電材は、黒鉛の粉末と、ピッチ系炭素繊維とを含み、前記ピッチ系炭素繊維の比表面積が0.8~3.0m/gの範囲にある。
本開示の他の一局面は、他のアルカリ乾電池に関する。当該他のアルカリ乾電池は、正極を含むアルカリ乾電池であって、前記正極は、二酸化マンガンの粉末と導電材とを含み、前記導電材は、黒鉛の粉末と、円柱状のピッチ系炭素繊維とを含み、前記ピッチ系炭素繊維の平均繊維長が40~250μmの範囲にあり、前記ピッチ系炭素繊維の平均繊維径が10~15μmの範囲にある。
本開示によれば、ハイレート放電特性に優れるアルカリ乾電池が得られる。
本開示のアルカリ乾電池の一例を示す一部分解断面図である。
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、本開示の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。
以下では、本開示に係る2つのアルカリ乾電池(第1および第2のアルカリ乾電池)について説明する。第1のアルカリ乾電池に含まれる電池と、第2のアルカリ乾電池に含まれる電池とは、少なくとも一部が重複している。
(第1のアルカリ乾電池)
本開示に係る第1のアルカリ乾電池は、正極を含む。当該正極は、二酸化マンガンの粉末と導電材とを含む。当該導電材は、黒鉛の粉末と、ピッチ系炭素繊維とを含む。第1のアルカリ乾電池に用いられるピッチ系炭素繊維を、以下では「ピッチ系炭素繊維(F1)」または「炭素繊維(F1)」と称する場合がある。ピッチ系炭素繊維(F1)の比表面積は、0.8~3.0m/gの範囲にある。
好ましい一例の炭素繊維(F1)は、平均繊維長が40~250μmの範囲にあり、平均繊維径が10~15μmの範囲(例えば11~15μmの範囲)にある。そのような炭素繊維は、比表面積を0.8~3.0m/gの範囲にすることが容易である。ただし、炭素繊維(F1)の比表面積が0.8~3.0m/gの範囲にある限り、炭素繊維(F1)の平均繊維長および/または平均繊維径は上記範囲外にあってもよい。好ましい一例の炭素繊維(F1)は、長手方向に直線状に延びている円柱状の炭素繊維である。
(第2のアルカリ乾電池)
本開示に係る第2のアルカリ乾電池は、正極を含む。正極は、二酸化マンガンの粉末と導電材とを含む。導電材は、黒鉛の粉末と、円柱状のピッチ系炭素繊維とを含む。第2のアルカリ乾電池に用いられるピッチ系炭素繊維を、以下では「ピッチ系炭素繊維(F2)」または「炭素繊維(F2)」と称する場合がある。ピッチ系炭素繊維(F2)の平均繊維長は40~250μmの範囲にあり、ピッチ系炭素繊維(F2)の平均繊維径は10~15μmの範囲(例えば11~15μmの範囲)にある。ここで、円柱状とは、長手方向に垂直な断面が円であり、且つ、長手方向に直線状に延びていることを意味する。曲線状に延びる炭素繊維は、曲がることによって比表面積が大きくなる。また、曲線状に延びる炭素繊維は、亀裂が生じやすく、それによっても比表面積が大きくなりやすい。また、加工によって比表面積を大きく増大させすぎると、炭素繊維は柔らかく、曲線状になる傾向がある。平均繊維長および平均繊維径がこの範囲にある円柱状のピッチ系炭素繊維(F2)は、比表面積を0.8~3.0m/gの範囲とすることが容易である。ピッチ系炭素繊維(F2)は、円柱状のピッチ系炭素繊維に対して、後述する比表面積を増大させる処理を行ったものであってもよい。
炭素繊維(F1)の例と炭素繊維(F2)の例とは、少なくとも一部が重複している。以下では、炭素繊維(F1)を含む第1のアルカリ乾電池について主に説明する。以下の説明は、炭素繊維(F1)に関する説明を除いて、第2のアルカリ乾電池に適用できる。第1のアルカリ乾電池の正極の炭素繊維(F1)を炭素繊維(F2)に置き換えることによって、第2のアルカリ乾電池が得られる。以下の説明では、炭素繊維(F1)および炭素繊維(F2)をまとめて、「ピッチ系炭素繊維(F)」または「炭素繊維(F)」と称する場合がある。
この明細書において、比表面積は、BET法によって測定される値である。具体的には、比表面積は、窒素吸着法による比表面積測定装置を用いることによって測定できる。この明細書において、炭素繊維の平均繊維径は、測定対象から任意に10本の炭素繊維を選択してそれぞれ直径を測定し、その値を算術平均することによって求められる。この明細書において、炭素繊維の平均繊維長は、測定対象から任意に20本の炭素繊維を選択してそれぞれ繊維長を測定し、その値を算術平均することによって求められる。
特許文献1は、所定の黒鉛材料を含むカソードを有する一次アルカリ電気化学電池を開示している。当該黒鉛材料は、10から60m/gのBET比表面積を有する黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維であって、水酸化カリウムと共に800から1000℃の温度において加熱処理された処理後の黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維を含む。特許文献1には、黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維のBET比表面積を大きくすることによって、MnOと黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維とを含むカソード混合物の導電性が高まることが記載されている(特許文献1の段落0027)。
特許文献1は、黒鉛化メソフェーズピッチ系炭素繊維の比表面積を大きくするとカソード混合物の導電性が高まることを記載している。しかし、異なる観点から検討を続けた結果、予想に反して、本願発明者は、特許文献1とは異なる構成でハイレート放電特性を向上できることを新たに見出した。本開示は、この新たな知見に基づく。
第1および第2のアルカリ乾電池は、ピッチ系炭素繊維(F)を用いている。ピッチ系炭素繊維は、PAN系炭素繊維に比べて導電性が高い。そのため、少ない添加量で高い効果が得られる。また、炭素繊維(F1)は、比表面積が0.8~3.0m/gの範囲にある。比表面積をこの範囲とすることによって、実施例で示すように、ハイレート放電特性が大幅に向上する。この理由については、現在のところ明確ではないが、以下のように考えることが可能である。
一般的に、正極に導電性炭素繊維を添加することによって、正極における導電性が向上し、放電特性が向上する。しかし、比表面積が大きい導電性炭素繊維を用いる場合、導電性炭素繊維の表面積が大きくなるため、導電性炭素繊維の表面に吸着される電解液の量(すなわち正極の保持される電解液の量)が多くなる可能性がある。正極に保持される電解液の量が多くなりすぎると、電解液の適切な配置バランスが維持されず、放電特性(特にハイレート放電特性など)が低下する。また、正極内においても、導電性炭素繊維の表面に吸着される電解液量の増加により、正極活物質と反応する電解液量が減少し、放電特性(特にハイレート放電特性など)が低下する。また、導電性炭素繊維の比表面積が大きすぎると、望まない副反応も生じやすく、その結果、高温保存後の放電特性が低下しやすい。
一方、本開示の電池に用いられる炭素繊維(F1)は、比表面積が0.8~3.0m/gの範囲にある。この範囲とすることによって、正極の導電性向上、電解液の適切な配置バランスの維持、および、副反応の抑制が達成されると考えられる。なお、正極に吸収される電解液量が増加する分だけ電解液の量を増やすことも考えられる。しかし、単に電解液の量を増やすだけでは、電解液が漏液しやすくなるという問題が発生する。また、電解液の量を増やす分だけ他の部材の体積を減らすと、電池の放電容量が低下するという問題が生じる。
第1および第2のアルカリ乾電池の正極において、ピッチ系炭素繊維(F)の質量は、二酸化マンガンの粉末の質量と黒鉛の粉末の質量とピッチ系炭素繊維(F)の質量との合計の0.05~1.0%の範囲(好ましくは0.1~0.6%の範囲)にあってもよい。0.1~0.6%の範囲とすることによって、ハイレート放電特性を特に高めることができる。明確ではないが、これは、炭素繊維(F)による導電性向上と、電解液の配置のバランスとが両立されているためであると考えられる。
導電材は、黒鉛の粉末およびピッチ系炭素繊維(F)のみによって構成されてもよいし、それら以外の他の導電材を含んでもよい。通常、導電材全体に占める他の導電材の割合は小さく、0~10質量%の範囲(例えば0~5質量%の範囲)にある。他の導電材の例には、アルカリ乾電池の正極に用いられる公知の導電材(ただし、黒鉛の粉末およびピッチ系炭素繊維(F)を除く)が含まれ、例えばカーボンブラックなどが含まれる。
黒鉛の粉末には、アルカリ乾電池の正極の導電材として用いることが可能な黒鉛が用いられ、公知の黒鉛を用いてもよい。黒鉛の粉末の例には、天然黒鉛の粉末、および、人造黒鉛の粉末が含まれる。黒鉛は、球状の黒鉛であってもよいし、鱗片状の黒鉛であってもよい。好ましい一例の導電材は、鱗片状の黒鉛の粉末と炭素繊維(F)とを含む。黒鉛の粉末の平均粒径は、2μm~16μmの範囲(好ましくは4μm~12μmの範囲)にあってもよい。これらの平均粒径にある黒鉛の粉末と炭素繊維(F)とを組み合わせて用いることによって、放電特性を特に向上できる。この明細書において、平均粒径とは、50%累積径(体積基準)となるメジアン径(D50)である。メジアン径は、例えばレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて求められる。
第1および第2のアルカリ乾電池の正極において、ピッチ系炭素繊維(F)の質量は、黒鉛の粉末の質量の0.5%以上、0.6%以上、0.9%以上、または1.9%以上であってもよい。ピッチ系炭素繊維(F)の質量は、黒鉛の粉末の質量の20.0%以下、18.9%以下、13.2%以下、11.3%以下、または3.8%以下であってもよい。これらの下限と上限とは、下限が上限を超えない限り、任意に組み合わせることができる。例えば、ピッチ系炭素繊維(F)の質量は、黒鉛の粉末の質量の0.5~20.0%の範囲、0.6~20.0%の範囲、0.6~18.9%の範囲、0.6~13.2%の範囲、0.6~11.3%の範囲、または0.6~3.8%の範囲にあってもよい。これらの範囲のいずれかの下限または上限を、上記の下限または上限に置き換えてもよい。当該範囲を1.9~11.3%の範囲(特に好ましくは1.9~3.8%の範囲)とすることによって、ハイレート放電特性を特に高めることができる。
(ピッチ系炭素繊維(F))
ピッチ系炭素繊維(F)は、メソフェーズ系ピッチを原料とする炭素繊維であってもよいし、等方性ピッチを原料とする炭素繊維であってもよい。好ましい一例の炭素繊維(F)は、メソフェーズ系ピッチを原料とする炭素繊維である。ピッチ系炭素繊維(F)では、黒鉛の層状構造の面が繊維の長手方向と略平行になるように黒鉛結晶が配置されていることが好ましい。そのような構造を有するピッチ系炭素繊維(F)は、導電性が高いため好ましい。
ピッチ系炭素繊維(F)には、上述した条件を満たす市販の炭素繊維を用いてもよい。炭素繊維(F1)は、比表面積が所定の範囲となるように、市販の炭素繊維を処理することによって準備してもよい。
炭素繊維の比表面積を変化させる処理方法の一例について、以下に説明する。まず、ピッチ系炭素繊維(例えば市販のピッチ系炭素繊維)を準備する。次に、KOH(水酸化カリウム)のペレットとピッチ系炭素繊維とを混合する。次に、混合物を、窒素中において、高温(例えば800℃)で10~60分程度加熱する。次に、加熱後の炭素繊維を蒸留水で洗浄した後、乾燥させる。以上の処理によって、炭素繊維の比表面積を増大させることができる。KOHのペレットとピッチ系炭素繊維との混合比や、加熱時間の長さを変化させることによって、比表面積の増大の程度を制御できる。なお、炭素繊維の平均繊維径および平均繊維長は、処理の前後で大きくは変化しない。
第1および第2のアルカリ乾電池の正極は、以下の条件の少なくとも1つを満たしてもよい。
(1)ピッチ系炭素繊維(F)の質量は、二酸化マンガンの粉末の質量と黒鉛の粉末の質量とピッチ系炭素繊維(F)の質量との合計の0.05~1.0%の範囲(好ましくは0.1~0.6%の範囲)にある。
(2)ピッチ系炭素繊維(F)の質量は、黒鉛の粉末の質量の0.6~18.9%の範囲(例えば、1.9~11.3%の範囲や1.9~3.8%の範囲)にある。
以下では、第1および第2のアルカリ乾電池の構成の例について説明する。ただし、本開示に係るアルカリ乾電池に必須の構成を除き、本開示に係るアルカリ乾電池の構成は、以下の例示に限定されない。特に説明がない構成部材については、公知の構成部材を用いてもよい。
(正極)
上述したように、正極は、二酸化マンガン(正極活物質)の粉末と、黒鉛の粉末と、炭素繊維(F)とを含む。正極は、これら以外の添加剤(たとえば公知の添加剤)を含んでもよい。例えば、正極は、結着材を含んでもよい。
正極は、正極合剤を円筒状体(正極ペレット)に加圧成形することによって形成してもよい。正極合剤は、例えば、正極活物質の粉末、黒鉛の粉末、炭素繊維(F)、およびアルカリ電解液を含み、必要に応じて結着材をさらに含む。円筒状体は、電池ケース内に収容された後に、電池ケース内壁に密着するように加圧されてもよい。
正極活物質である二酸化マンガンの好ましい一例は、電解二酸化マンガンであるが、天然二酸化マンガンや化学二酸化マンガンを用いてもよい。二酸化マンガンの結晶構造としては、α型、β型、γ型、δ型、ε型、η型、λ型、ラムスデライト型が挙げられる。
二酸化マンガンの粉末の平均粒径(D50)は、正極の充填性および正極内での電解液の拡散性などを確保し易い点で、例えば、25μm~60μmの範囲にあってもよい。成形性や正極の膨張抑制の観点から、二酸化マンガンのBET比表面積は、例えば、20m2/g~50m2/gの範囲にあってもよい。
電池内部で発生した水素を吸収するために、正極に銀化合物を添加してもよい。銀化合物の例には、酸化銀(AgO、AgO、Agなど)、銀ニッケル複合酸化物(AgNiO)などが含まれる。
(負極)
負極は、亜鉛および亜鉛合金からなる群より選ばれる少なくとも1つを、負極活物質として含む。以下では、亜鉛および亜鉛合金をまとめて「亜鉛含有金属」と称する場合がある。好ましい一例では、負極は、負極活物質として亜鉛含有金属の粒子を含む。亜鉛含有金属は負極活物質として機能する。亜鉛合金は、耐食性の観点から、インジウム、ビスマスおよびアルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。亜鉛合金中のインジウム含有率は、例えば、0.01質量%~0.1質量%の範囲にあってもよい。亜鉛合金中のビスマス含有率は、例えば、0.003質量%~0.02質量%の範囲にあってもよい。亜鉛合金中のアルミニウム含有率は、例えば、0.001質量%~0.03質量%の範囲にあってもよい。亜鉛合金中における亜鉛以外の元素の含有率は、耐食性の観点から、0.025質量%~0.08質量%の範囲にあってもよい。
負極活物質(亜鉛含有金属)は、通常、粒子の形態で使用される。亜鉛含有金属の粒子の平均粒径(D50)は、負極の充填性および負極内での電解液の拡散性の観点から、100μm~200μmの範囲(好ましくは110μm~160μmの範囲)にあってもよい。
負極は、ゲル状負極であってもよい。ゲル状負極は、例えば、負極活物質粒子、ゲル化剤およびアルカリ電解液を混合することによって作製できる。
ゲル化剤としては、アルカリ乾電池の分野で使用される公知のゲル化剤を使用してもよい。例えば、ゲル化剤として、吸水性ポリマーなどを使用してもよい。ゲル化剤の例には、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウムなどが含まれる。ゲル化剤の量は、負極活物質(亜鉛含有金属)100質量部あたり、0.5質量部~2.5質量部の範囲にあってもよい。
負極には、負極活物質表面の反応効率を高めるために、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤には、例えば、ポリオキシアルキレン基含有化合物、リン酸エステルなどを用いることができる。負極中において添加剤をより均一に分散させる観点から、添加剤は、負極の作製に用いられるアルカリ電解液に予め添加しておくことが好ましい。
負極には、耐食性を向上させるために、インジウム、ビスマスなどの水素過電圧の高い金属を含む化合物を適宜添加してもよい。
(負極集電子)
本開示のアルカリ乾電池は、負極に挿入される負極集電子を含んでもよい。負極集電子の材質は、金属(単体金属または合金)であってもよい。負極集電子の材質は、好ましくは銅を含み、銅および亜鉛を含む合金(たとえば真鍮)であってもよい。負極集電子には、必要に応じて、スズメッキなどのメッキ処理がされていてもよい。
(セパレータ)
セパレータとしては、繊維を主体として用いた不織布、樹脂製の微多孔質フィルムなどが用いられる。繊維の材質としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコールなどが例示できる。不織布は、セルロース繊維およびポリビニルアルコール繊維を混抄して形成してもよく、レーヨン繊維およびポリビニルアルコール繊維を混抄して形成してもよい。微多孔質フィルムの材質としては、セロファン、ポリオレフィンなどの樹脂が例示できる。セパレータの厚さは、例えば、200μm~300μmである。セパレータが薄い場合には、複数のセパレータを重ねて上記厚さに調整してもよい。
(電池ハウジング)
電池ハウジングに特に限定はなく、電池の形状に応じたハウジングを用いればよい。本実施形態に係るアルカリ乾電池の形状に特に限定はなく、円筒形であってもよいし、コイン形(ボタン形を含む)であってもよい。電池ハウジングは、通常、電池ケースと、負極端子板と、ガスケットとを含む。電池ケースには、例えば、有底円筒形の金属ケースが用いられる。金属ケースには、例えば、ニッケルめっき鋼板が用いられる。正極と電池ケースとの間の接触抵抗を低減するために、電池ケースの内面を炭素被膜で被覆してもよい。負極端子板は、金属ケースと同様の材料で形成でき、例えばニッケルめっき鋼板で形成できる。
ガスケットの材質の例には、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが含まれる。ガスケットは、例えば、上記材質を所定の形状に射出成型することによって形成できる。アルカリ電解液に対する耐食性の観点から、ガスケットの材質は、ポリアミド-6,6、ポリアミド-6,10、ポリアミド-6,12、およびポリプロピレンが好ましい。なお、ガスケットは、通常、環状の薄肉部を有する。
(アルカリ電解液)
アルカリ電解液としては、例えば、水酸化カリウムを含むアルカリ水溶液が用いられる。アルカリ電解液中の水酸化カリウムの濃度は、好ましくは30~50質量%の範囲(たとえば30~40質量%の範囲)にある。アルカリ電解液は、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化セシウム(CsOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)などを含んでもよい。
アルカリ電解液は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤を用いることによって、負極活物質粒子と電解液の反応効率を高めることができる。界面活性剤には、負極で例示したものなどを用いることができる。アルカリ電解液における界面活性剤の含有率は、通常、0~0.5質量%の範囲(たとえば0~0.2質量%の範囲)にある。
以下では、本開示の実施形態の一例について、図面を参照して具体的に説明する。以下で説明する一例のアルカリ乾電池の構成要素には、上述した構成要素を適用できる。また、以下で説明する一例のアルカリ乾電池の構成要素は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。
(実施形態1)
実施形態1に係るインサイドアウト構造の円筒形のアルカリ乾電池10の一部分解断面図を、図1に示す。アルカリ乾電池10は、電池ケース1と、電池ケース1内に配置された正極2、負極(ゲル状負極)3、セパレータ4、およびアルカリ電解液(図示せず)を含む。
電池ケース1は、有底円筒形のケースであり、正極端子として機能する。正極2は、中空円筒形であり、電池ケース1の内壁に接するように配置されている。負極3は、正極2の中空部内に配置されている。セパレータ4は、正極2と負極3との間に配置されている。
セパレータ4は、円筒形のセパレータ4aと底紙4bとで構成されている。セパレータ4aは、正極2の中空部の内面に沿って配置され、正極2と負極3とを隔離している。底紙4bは、正極2の中空部の底部に配置され、負極3と電池ケース1とを隔離している。
電池ケース1の開口部は、封口ユニット9によって封口されている。封口ユニット9は、ガスケット5、負極集電子6、および、負極端子として機能する負極端子板7を含む。負極集電子6は、頭部と胴部とを有する釘形状を有する。負極集電子6は、例えば銅を含み、真鍮などの銅と亜鉛を含む合金製であってもよい。負極集電子6には、必要に応じて、スズメッキなどのメッキ処理がなされていてもよい。負極集電子6の胴部は、ガスケット5の中央部に設けられた貫通孔に挿入されるとともに、負極3に挿入されている。負極集電子6の頭部は、負極端子板7の中央の平坦部に溶接されている。
電池ケース1の開口端部は、ガスケット5の周縁部を介して負極端子板7の周縁部(鍔部)にかしめつけられている。電池ケース1の外表面は、外装ラベル8によって被覆されている。電池ケース1、ガスケット5、および負極端子板7は、電池ハウジングを構成する。正極2、負極3、セパレータ4、およびアルカリ電解液(図示せず)は、電池ハウジング内に配置されている。
アルカリ乾電池10を組み立てる方法に特に限定はなく、必要に応じて従来の技術を適用できる。例えば、以下の実施例で説明する手順で組み立ててもよい。
本開示のアルカリ乾電池について、実施例によってさらに詳細に説明する。
(実験例1)
実験例1では、比表面積が異なるピッチ系炭素繊維を用いて複数種の正極を作製した。そして、それらの正極を用いて表2に示す複数のアルカリ乾電池を作製した。所定の比表面積を有するピッチ系炭素繊維の準備方法について以下に説明する。
まず、平均繊維径が11μm、平均繊維長が200μm、比表面積が0.8m/gのピッチ系炭素繊維を準備した。当該ピッチ系炭素繊維には、三菱ケミカル株式会社製のピッチ系炭素繊維(品番:K223HM)を用いた。
上記炭素繊維の比表面積を以下の処理によって増大させた。まず、KOHのペレットとピッチ系炭素繊維とを所定の質量比で混合した。次に、混合物を、窒素中において加熱した。具体的には、混合物を室温から800℃まで昇温し、さらに800℃で10~60分間加熱した。室温から800℃までは約3時間かけて昇温した。次に、加熱後の炭素繊維を蒸留水で洗浄した後、空気中において80℃で乾燥させた。以上の処理によって、炭素繊維の比表面積を増大させた。
処理の条件と、得られた炭素繊維の比表面積の測定結果とを、表1に示す。炭素繊維X1は、未処理の炭素繊維である。
Figure 2022143474000002
表1に示すように、KOHの質量比を大きくすると比表面積がより大きくなり、熱処理の時間を長くすると比表面積がより大きくなった。上記の炭素繊維を用いて複数種のアルカリ乾電池を作製した。電池の作製手順を以下に説明する。
(電池A1)
電池A1は、下記の(1)~(4)の手順に従って作製した。
(1)アルカリ電解液の調製
アルカリ電解液として、水酸化カリウムおよび酸化亜鉛が溶解しているアルカリ水溶液を調製した。アルカリ水溶液において、水酸化カリウムの濃度は33質量%とし、酸化亜鉛の濃度は2質量%とした。
(2)正極の作製
二酸化マンガン(正極活物質)と、黒鉛の粉末(導電材)と、上述した炭素繊維X1とを混合して混合物を得た。それらは、二酸化マンガン:黒鉛:炭素繊維=94.5:5.3:0.2の質量比で混合した。二酸化マンガンには、電解二酸化マンガンの粉末(平均粒径(D50):40μm)を用いた。黒鉛の粉末には、平均粒径(D50)が8μmの粉末を用いた。
上記の混合物に電解液を加え、充分に攪拌した後、フレーク状に圧縮成形して、正極合剤を得た。混合物と電解液との質量比は、混合物:電解液=100:1.5とした。電解液には、上記(1)で調製したアルカリ電解液と同じ電解液を用いた。
次に、フレーク状の正極合剤を粉砕して顆粒状とし、これを10~100メッシュの篩によって分級して顆粒を得た。得られた顆粒を中空円筒形(高さ10.8mm)に加圧成形することによって、正極ペレット(質量2.9g)を得た。この正極ペレットを4個作製した。
(3)負極の作製
負極活物質と電解液とゲル化剤とを混合し、ゲル状の負極を得た。電解液には、上記(1)で調製したアルカリ電解液と同じ電解液を用いた。負極活物質には、0.02質量%のインジウムと、0.01質量%のビスマスと、0.005質量%のアルミニウムとを含む粉末状の亜鉛合金(平均粒径(D50):130μm)を用いた。ゲル化剤には、架橋分岐型ポリアクリル酸と高架橋鎖状型ポリアクリル酸ナトリウムとの混合物を用いた。ゲル状負極中の負極活物質と電解液とゲル化剤との質量比は、負極活物質:電解液:ゲル化剤=100:50:1とした。
(4)電池A1の組み立て
上記の構成要素を用いて、以下の方法で電池A1を組み立てた。電池A1の組み立ての手順について、図1を参照して説明する。まず、ニッケルめっき鋼板製の有底円筒形のケースの内面に、日本黒鉛株式会社製のコーティング剤(製品名:バニーハイト)を塗布して厚さ約10μmの炭素被膜を形成し、電池ケース1を得た。次に、電池ケース1内に正極ペレットを縦に4個挿入した後、加圧して、電池ケース1の内壁に密着した状態の正極2を形成した。有底円筒形のセパレータ4を正極2の内側に配置した後、上記(1)で調製したアルカリ電解液を注液し、セパレータ4に含浸させた。アルカリ電解液の注液量は、1.45cmとした。この状態で所定時間放置し、アルカリ電解液をセパレータ4から正極2へ浸透させた。その後、6.4gのゲル状の負極3を、セパレータ4の内側に充填した。
セパレータ4は、円筒形のセパレータ4aおよび底紙4bを用いて形成した。円筒形のセパレータ4aおよび底紙4bには、レーヨン繊維およびポリビニルアルコール繊維(質量比は1:1)を主体として混抄した不織布シートを用いた。
負極集電子6は、一般的な真鍮(Cu含有率:約65質量%、Zn含有率:約35質量%)を、釘型にプレス加工した後、表面にスズめっきを施すことによって形成した。ニッケルめっき鋼板製の負極端子板7に負極集電子6の頭部を電気溶接した。その後、負極集電子6の胴部を、ポリアミド-6,12を主成分とするガスケット5の中心の貫通孔に圧入した。このようにして、ガスケット5、負極集電子6、および負極端子板7からなる封口ユニット9を作製した。なお、図1のガスケット5は、環状の薄肉部5aを有する。
次に、封口ユニット9を電池ケース1の開口部に配置した。このとき、負極集電子6の胴部を負極3内に挿入した。次に、電池ケース1の開口端部を、ガスケット5を挟むように負極端子板7の周縁部にかしめつけることによって、電池ケース1の開口部を封口した。このようにして、電池ハウジング内に、正極2、負極3、セパレータ4、およびアルカリ電解液(図示せず)を配置した。
次に、外装ラベル8で電池ケース1の外表面を被覆した。このようにして、アルカリ乾電池(電池A1)を組み立てた。
正極に用いる炭素繊維の種類、および/または、導電材の混合比を変えることを除いて、電池A1の作製と同様の材料および方法で、複数のアルカリ乾電池を組み立てた。
(ハイレート放電特性の評価)
上記で作製した電池について、20℃においてハイレート放電特性を評価した。ハイレート放電特性は、以下の手順で評価した。まず、電池を満充電状態にし、1日8回放電を行う。具体的には、750mAの放電電流で2分間の放電と、その後の58分間の放置とで構成される放電サイクルを8回繰り返す。その後、電池を16時間放置する(休止サイクル)。その後は、電池電圧が終止電圧1.1Vに到達するまで、放電サイクル(8時間)と休止サイクル(16時間)とを繰り返す。そして、終止電圧1.1Vに到達したときに、それまでの放電時間の総和を求めて総放電時間とする。この総放電時間が長いほど、ハイレート放電特性が優れていることを示す。ハイレート放電特性は、80℃の環境に1ヶ月間放置(高温放置)した後の電池と、高温放置していない電池とについて評価した。
電池の製造条件の一部と評価結果とについて、表2に示す。表2の質量比は、二酸化マンガンと炭素繊維と黒鉛粉末の合計の質量に対する質量比である。表2の「炭素繊維/黒鉛」は、黒鉛の質量に対する炭素繊維の質量の比率を示す。総放電時間の「初期」は、高温放置していない電池についての評価結果である。表2の「維持率」は、初期の総放電時間に対する高温放置後の総放電時間の割合を示す。
Figure 2022143474000003
電池A1~A9は、本開示に係る電池であり、電池B1およびB2は、比較例の電池である。表2に示すように、炭素繊維の比表面積が0.8~3.0m/gの範囲にある電池A1~A9は、電池B1およびB2に比べて、初期および高温放置後のハイレート放電特性、および維持率が高かった。炭素繊維の質量比が0.1~0.6質量%の範囲にある電池は、総放電時間が特に高かった。炭素繊維/黒鉛の質量比が1.9~11.3質量%の範囲にある電池は、総放電時間が特に高かった。
なお、電池の組み立て工程におけるアルカリ電解液の注液量を、1.45cmから1.55cmに変更したことを除いて、電池A1と同様の条件および方法で、電池C1を作製した。電池A1と電池C1とをそれぞれ20個作製し、それらについて、過放電状態とした。具体的には、40Ωの抵抗を接続し、電池電圧が0.1Vになるまで放電させた。その後、40℃で8週間放置した後、漏液が発生したかどうかを検査した。その結果、電解液の量を多くした電池C1は、漏液の発生数が電池A1よりも多かった。
炭素繊維の比表面積を大きくしすぎると、炭素繊維が吸着する電解液が増加するため、活物質と反応する電解液の不足などによってハイレート放電特性が低下すると考えられる。一方、電解液の不足を補うために単純に電解液の量を多くすると、電池内の空間が減少して漏液の発生確率が上昇する。漏液の発生確率を上昇させずに電解液の量を増やすには、活物質などの量を減少させる必要があり、放電容量が減少する。そのため、放電容量の低下を抑制しつつハイレート放電特性を高めるには、比表面積が所定の範囲にある炭素繊維を用いることが重要である。
本開示は、アルカリ乾電池に利用できる。
1 電池ケース
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 ガスケット
6 負極集電子
7 負極端子板
8 外装ラベル
9 封口ユニット
10 アルカリ乾電池

Claims (4)

  1. 正極を含むアルカリ乾電池であって、
    前記正極は、二酸化マンガンの粉末と導電材とを含み、
    前記導電材は、黒鉛の粉末と、ピッチ系炭素繊維とを含み、
    前記ピッチ系炭素繊維の比表面積が0.8~3.0m/gの範囲にある、アルカリ乾電池。
  2. 正極を含むアルカリ乾電池であって、
    前記正極は、二酸化マンガンの粉末と導電材とを含み、
    前記導電材は、黒鉛の粉末と、円柱状のピッチ系炭素繊維とを含み、
    前記ピッチ系炭素繊維の平均繊維長が40~250μmの範囲にあり、
    前記ピッチ系炭素繊維の平均繊維径が10~15μmの範囲にある、アルカリ乾電池。
  3. 前記正極において、前記ピッチ系炭素繊維の質量は、前記二酸化マンガンの粉末の質量と前記黒鉛の粉末の質量と前記ピッチ系炭素繊維の質量との合計の0.1~0.6%の範囲にある、請求項1または2に記載のアルカリ乾電池。
  4. 前記正極において、前記ピッチ系炭素繊維の質量は、前記黒鉛の粉末の質量の0.6~18.9%の範囲にある、請求項1~3のいずれか1項に記載のアルカリ乾電池。
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