JP2022140325A - 銀粉及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】焼成後の体積抵抗率を低減可能な粉体物性を有する銀粉及びその製造方法を提供する。【解決手段】銀粉は、タップ密度が4.8g/mL以上であり、当該タップ密度(g/mL)を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、比表面積が0.75m2/g以上1.3m2/gである。【選択図】なし

Description

本発明は、銀粉及びその製造方法に関する。
銀ペーストは、導電性のペーストとして、電子部品の基盤の配線パターンや電極の形成などに使用されている。導電性ペーストとしての銀ペーストは、銀粉をビヒクルなどと共に混錬して製造される。電子部品の小型化、導体パターンの高密度化、ファインライン化等に対応するため、導電性ペースト用の銀粉は、粒径が適度に小さく、粒度分布がシャープであることが要求される。
特許文献1では、従来技術で製造された銀粉にあっては、塗膜状態やライン性が良好でない場合があり、その結果、良好な焼成膜を得ることができず、パターンの高密度化やファインライン化に対応できない場合があるという問題を指摘している。この問題を解決すべく、特許文献1には、銀粉及びその製造方法が記載されている。特許文献1に記載された銀粉の製造方法では、湿式還元法により製造した銀粉に、粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施した後、分級により大きい銀の凝集体を除去している。この製造方法で製造された銀粉を用いたペーストでは、例えばライン性を良好にすることができるとされている。
特開2007-186798号公報
上記のような従来技術にあっては、湿式還元法により銀粉が製造される際に銀粉の銀粒子の粒子径(体積基準のメジアン径)が小さくなる場合に、これに伴って銀粉の比表面積が増えて、タップ密度が小さくなる傾向にあった。そのため、この銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の空隙が埋まりにくく、体積抵抗率を低減させるなどの導電性の向上の余地があった。
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、焼成後の体積抵抗率を低減可能な粉体物性を有する銀粉及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る銀粉は、
タップ密度が4.8g/mL以上であり、
前記タップ密度(g/mL)を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、
比表面積が0.75m/g以上1.3m/gである。
上記目的を達成するための本発明に係る銀粉の製造方法は、
湿式還元法により製造した銀粉を高圧空気流で加速して粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程後に行われ、前記銀粉を分級する分級工程と、を含み、
前記粉砕工程は前記銀粉の濃度が0.2kg/m以下で行われ、
前記分級工程後の前記銀粉の粉体の物性が、
タップ密度が4.8g/mL以上であり、
前記タップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、
比表面積が0.75m/g以上1.3m/gとなるように分級する。
焼成後の体積抵抗率を低減可能な粉体物性を有する銀粉及びその製造方法を提供する。
銀粉を製造するプラントの一例を示す図である。
本実施形態に係る銀粉とは、銀微粒子の集合体としての粉体である。以下では、本実施形態に係る銀粉及びその製造方法について説明する。
(銀粉について)
本実施形態に係る銀粉は、タップ密度が4.8g/mL以上である。また、銀粉のタップ密度を、銀粉中の銀微粒子の体積基準のメジアン径(μm)で除した値をTAP/D50値と定義した場合、TAP/D50値が7以上15以下である。また、銀粉の比表面積は0.75m/g以上1.3m/gである。銀粉がこのような粉体物性を有することで、銀粉を導電性ペースト化し、更にこれを塗布や印刷などして描いた導体パターンや電極などの導電膜パターンを焼成して得た導電膜における体積抵抗率の低減を実現することができる。
本実施形態に係る銀粉は、湿式還元法により製造した銀粉を高圧空気流で加速して粉砕する粉砕工程と、粉砕工程後に行われ、銀粉を分級する分級工程と、を含む製造方法により実現される。
本実施形態に係る銀粉の製造方法では、粉砕工程は銀粉の濃度が0.2kg/m3以下で行われる。分級工程後の銀粉の粉体の物性が、タップ密度が4.8g/mL以上であり、タップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、比表面積が0.75m/g以上1.3m/gとなるように分級する。
なお、本実施形態に係る銀粉は、比表面積は0.8m/g以上がより好ましく、0.9m/g以上であることが更に好ましい。比表面積が1.3m/gを超えるとペーストの粘度が大きくなりすぎて印刷性が悪化する恐れがある。比較的大きな比表面積を保ちながら大きなタップ密度を有する銀粉を得ることは通常困難であるが、本発明では上記範囲の比表面積と高いタップ密度を両立することができる。
従来は、メジアン径が小さく、且つ、比表面積が大きい場合、タップ密度は小さくなり、TAP/D50値は7未満となっていた。メジアン径が大きく、且つ、比表面積が小さい場合であっても、タップ密度はあまり大きくならならず、TAP/D50値は7未満となっていた。
銀粉のタップ密度を大きくするためには、銀粉の充填性を良くする必要がある。一般に、充填性の良い粉体は、粉体中の微粒子の粒子径(例えばメジアン径)が適度に大きく、粒度分布に適度な広がりがあり、また、粒子形状が球形状である。粉体中の微粒子の粒子径が小さくなったり、粒子形状がいびつになったりすると、粒子の表面積が大きくなり、粒子の質量に対する付着力が相対的に大きくなって、粉体の凝集性が増大して流動性が低下する。これにより、粉体の充填時において粒子間に隙間が生じやすくなって、充填性が低下してタップ密度が低下する。このように、流動性や、タップ密度といった充填性のような粉体物性と、比表面積や、メジアン径といった粒子径のような粒子物性は相関性のある特性である。そこで、タップ密度や比表面積、メジアン径の計測や、これら物性間の関係を評価することで、銀粉の特徴を把握することができると考えられる。例えば、タップ密度が大きく、且つ、メジアン径が小さい場合、すなわち、TAP/D50値が大きい場合は、粒子径が小さくとも凝集性が小さく充填性が良い粉体であると評価することができる。
そこで、銀粉を、上記のような適度な比表面積に制御し、且つ、高いタップ密度とTAP/D50値を満たすように調製することで、凝集性が抑制されて分散性の良い銀粉を提供可能となり、これにより体積抵抗率の低減を実現できたと予想される。
以下では、銀粉を導電性ペースト化、塗布や印刷、及び焼成して得た導電膜のことを、単に導電膜と記載する。また、焼成後の導電膜の体積抵抗率を、単に体積抵抗率と記載する。
銀粉の粉体物性は、TAP/D50値が7以上10以下であることが更に望ましい。TAP/D50値がこの範囲となることで、体積抵抗率がいっそう低減する。
銀粉の粉体物性は、好ましくはメジアン径が0.32μm以上1μm以下であり、更に好ましくは0.4μm以上0.8μm以下である。メジアン径がこの範囲にあることで体積抵抗率がいっそう低減する。特に、メジアン径が0.8μm以下であると、更に体積抵抗率が低減する。
銀粉のタップ密度とは、所定量の銀粉を計量して所定容量の容器に投入し、所定の落差で当該容器を落下させる動作を所定回数行った後(以下ではタップ後と称する)の、容器中の銀粉の見かけ密度であり、容器中の銀粉の重量を、容器中の見かけの銀粉の容量で除することで求める。
本実施形態において銀粉のタップ密度は、銀粉のタップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学株式会社製、カサ比重測定装置SS-DA-2)を使用し、銀粉30gを計量して、容器(20mL試験管)に入れ、落差20mmで1,000回タッピングし、銀粉の重量である30gを、タップ後の銀粉の見かけの体積(mL)で除した値を採用することができる。
銀粉の体積基準のメジアン径は、市販の湿式レーザー回折式の粒度分布測定装置で測定した銀粉の粒度分布に基づいて求めた値を用いることができる。
本実施形態では、銀粉の粒度分布及びメジアン径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製 マイクロトラックMT3300EXII)により測定した値を用いることができる。以下の記載では、単に粒度分布と記載した場合は、体積基準の粒度分布を意味する。また、単にメジアン径と記載した場合は、体積基準の粒度分布に基づいたメジアン径を意味する。
測定時の作業手順及び条件は、以下の手順及び条件を採用することができる。まず、銀粉0.1gを1重量%濃度のポリビニルピロリドン(PVP)溶液(溶媒はイソプロピルアルコール)40mLに添加する。そして、チップ径20mmの超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製のMODEL US-150T)のチップを、銀粉を添加したPVP溶液中に挿入し、2分間超音波分散させて、銀粒子の分散液を調製する。次いで、この分散液中の銀粒子の粒度分布を、上記レーザー回折散乱式粒度分布測定装置に投入して粒度分布を測定し、当該粒度分布に基づいてメジアン径を求める。
なお、メジアン径とは、粒度分布における、粒子径の小さい側からの粒子量の累積が50%となる径である。メジアン径は、50%粒子径であるとか、D50などと称される場合がある。以下では、メジアン径をD50と称する場合がある。加えて、粒度分布における、粒子径の小さい側からの粒子量の累積が10%となる径をD10、同様に90%となる径をD90と称する場合がある。
銀粉の比表面積は、BET法で求めた値である。本実施形態では、BET法を採用した比表面積測定装置(MOUNTECH社製 Macsorb HM-model 1210)により測定した値を用いることができる。測定条件は、銀粉3gを測定セルに入れて、Heガス70体積%と窒素ガス30体積%とを混合したキャリアガスを当該測定セルに通流させて60℃で10分間の脱気を行った後、BET1点法による測定とすることができる。
銀粉は、球状の銀微粒子の集合体(以下、球状銀粉と記載する)であることが好ましい。銀微粒子に関し、球状とは、銀微粒子のアスペクト比が2未満であることをいう。球状の銀粉とは、銀粉に含まれる銀微粒子のアスペクト比の平均が2未満であることをいう。
(銀粉の製造方法)
以下では、本実施形態に係る銀粉の製造に適した製造方法を説明する。なお、以下に説明する銀粉の製造方法は、本実施形態に係る銀粉の製造を実現する一例であって、本実施形態に係る銀粉は、以下に説明する製造方法により製造された銀粉に限られない。
本実施形態に係る銀粉の製造方法は、湿式還元法により製造した銀粉を高圧空気流で加速して粉砕する粉砕工程と、粉砕工程後に行われ、当該銀粉を分級する分級工程と、分級された当該銀粉を空気輸送する空気輸送工程とを含む。
粉砕工程は、銀粉の濃度が0.20kg/m以下で行われる。以下では、粉砕工程における銀粉の濃度を、粉砕時粉体濃度と記載する場合がある。
空気輸送工程は、銀粉の濃度を0.080kg/m以下で輸送する。また、空気輸送工程で回収された銀粉の粉体物性(銀微粒子の粉体の物性の一例)が、タップ密度が4.8g/mL以上であり、このタップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、更に、比表面積が0.75m/g以上1.3m/gとなる。以下では、空気輸送中の銀粉の濃度を、空気輸送時粉体濃度と記載する場合がある。
湿式還元法による銀粉の製造方法について説明する。湿式還元法は、銀塩含有水溶液にアルカリ又は錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリー又は銀錯塩含有水溶液を生成した後、還元剤を加えて銀粉を還元析出させる方法である。
湿式還元方法は、二次凝集を防止して単分散した粒子を得ることにより導電性ペーストを使用した電子部品の特性の向上を図るべく、還元析出した銀スラリーに対して分散剤を添加する処理、又は銀粉を還元析出させる前の銀塩と酸化銀の少なくとも一方を含む水性反応系に対して分散剤を添加する処理を含むことができる。分散剤としては、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属及び保護コロイドのいずれか1種以上を選択して使用することができる。
湿式還元法による銀粉の製造は、一例として反応槽などの容器中で行う。湿式還元法により製造した直後の銀粉は、例えばスラリー状となっている。そのため、銀粉は、ろ過、水洗、脱水した後、乾燥して粉末状としてから粉砕工程に供される。
図1には、以下で説明する銀粉の製造方法を実現するプラント100のフロー図の一例を示している。プラント100では、銀粉が空気輸送される。
プラント100の概要を説明する。本実施形態に係るプラント100では、少なくとも銀粉を合成する反応槽11、粉砕装置15、分級装置16及び捕集装置を含む。プラント100は、反応槽11の下流に、粉砕装置15と分級装置16と捕集装置(一例としてサイクロン17及び集塵機18)とがこの順に直列に接続されている。プラント100は、粉砕装置15に供給された銀粉が捕集装置まで空気輸送される、空気輸送が連続式のプロセスとして構成されている。プラント100での空気輸送は、捕集装置の下流側に接続された排風機19による吸引により行う。反応槽11で製造された銀粉は、粉砕装置15と分級装置16及びサイクロン17とで処理されて回収される銀粉Pのタップ密度、TAP/D50値及び比表面積を制御される。プラント100では、この制御により体積抵抗率の低減を実現する。
以下の説明において粉砕工程中の銀粉の濃度、すなわち、粉砕時粉体濃度は、粉砕装置15に供給される銀粉の供給速度(kg/min)を粉砕装置15に供給する空気の供給風量(m/min)で除した値と定義する。粉砕時粉体濃度を低くすることで、粉砕装置15内での銀粉の滞留や閉塞を起こすことなく、衝突粉砕操作を円滑に進行させて粗大粒子の粉砕効率を向上させる。また、ショートパスを抑制することができる。これにより、未解砕で次工程に進む粗大粒子(凝集粉)を減少させることができる。粉砕時粉体濃度は、上述のごとく0.20kg/m以下である。これにより、タップ密度が4.8g/mL以上であり、このタップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、更に、比表面積が0.75m/g以上1.3m/gとなる銀粉の製造を実現する。これにより、銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の、銀粒子間の空隙が埋まりやすくなり、導電膜の体積抵抗率の低減を実現することができる。
また、粉砕装置15と分級装置16と捕集装置とがこの順に直列に接続されており、粉砕装置15に供給された銀粉が捕集装置まで空気輸送される、空気輸送が連続式のプラント100においては、粉砕装置15に供給する空気のほかに、分級装置16においても空気の供給があるため、分級装置16以降の粉体濃度が上述の低い粉砕時粉体濃度よりもさらに低くなる。そのため、ショートパスを抑制されて(分級されずに次工程に進む粉が減少すると共に、粗粉のみが分離されやすくなり)、分級性能が向上する。なお、分級の性能が向上する、とは、例えば、部分分級効率曲線がシャープになることをいう。
捕集装置では、粒子は遠心力を受けて壁側に押し付けられながら旋回し、重力加速度を受けて下降して捕集されるのであるが、粉体濃度を上述のごとく粉砕時粉体濃度よりもさらに低い濃度とすることの結果としてサイクロンの入口速度が速くすることができる。これによりサイクロン17での遠心力を高めて回収効率を向上させることができる。
以下の説明において空気輸送中の銀粉の濃度、すなわち、空気輸送時粉体濃度は、粉砕装置15に供給される銀粉の供給速度(kg/min)を排風機19の排風量(m/min)で除した値と定義する。この空気輸送時粉体濃度は、分級装置16および捕集装置における粉体濃度と考えることができる。プラント100では、粉砕時粉体濃度を0.20kg/m以下とすると共に、この空気輸送時粉体濃度を0.080kg/m以下にすることにより、タップ密度が4.8g/mL以上であり、このタップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、更に、比表面積が0.75m/g以上1.3m/gとなる銀粉の製造を実現する。これにより、銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の、銀粒子間の空隙が埋まりやすくなり、導電膜の体積抵抗率の低減を実現することができる。以下では、排風機19の排風量を、単に風量と記載する場合がある。また、空気輸送中の銀粉の濃度を単に空気輸送時粉体濃度と記載する場合がある。
すなわち、空気輸送が連続式のプラント100において、粉砕装置15での粉砕時粉体濃度を0.20kg/m以下とし、空気輸送時粉体濃度を0.080kg/m以下にすることで、装置内での銀粉の滞留や閉塞の抑制を実現する。また、粉砕時粉体濃度を0.20kg/m以下とすることで、衝突粉砕操作を円滑に進行させて粗大粒子の粉砕効率を向上させ、且つ、ショートパスを抑制して次工程に進む粗大粒子(凝集粉)の減少を実現する。
また、空気輸送時粉体濃度を0.080kg/m以下にすることで、分級装置16では、ショートパスを抑制し、特に粗大粒子を高い割合で排除されて、分級効率が向上する。この際、粉砕時粉体濃度を0.20kg/m以下とされていることで、分級装置16中での粉体濃度を上記の濃度とすることが容易となる。
また、空気輸送時粉体濃度を0.080kg/m以下にすることで、結果としてサイクロンの入口速度が速くすることができる。これによりサイクロン17では、カットされる超微粉と回収される銀粉Pの間の粒径の境界を明確にして回収効率の向上を実現する。以下、プラント100の各部について詳述する。
図1に例示するプラント100では、反応槽11中で湿式還元法により製造された銀粉が、例えばフィルタプレスなどのろ過装置12によりろ過や水洗、脱水が行われ、脱水後の乾燥が、乾燥機14などで行われる場合を示している。なお、ろ過装置12や乾燥機14は一般的なものを用いてよい。ろ過装置12でろ過後、乾燥機14に供する前に、供給機を搭載したクッションタンク13などにろ過後の乾燥ケーキを一時貯留してもよい。乾燥機14で乾燥された銀粉は、後述する粉砕装置15に供される。銀粉は、粉砕装置15で粉砕された後、分級装置16で分級され、その後、サイクロン17で捕集される。粉砕装置15、分級装置16、サイクロン17は直列に接続されており、銀粉は、粉砕装置15からサイクロン17まで、連続した空気輸送により搬送される。すなわち、プラント100は、空気輸送が連続式のプロセスとして構成されている。この空気輸送は、ファンやブロアなどの排風機19の吸引により行う。なお、サイクロン17と排風機19との間には、集塵機18が配置され、サイクロン17を通過した超微粉Fが除去される。
乾燥機14で乾燥された銀粉は、粉砕装置15に供給する前に、サイクロン(図示せず)などで捕集し、更にクッションタンク(図示せず)などに一時貯留してもよい。そして、クッションタンクから粉体定量供給機15aなどにより、粉砕装置15に所定の供給速度で供給してもよい。
なお、図1では、乾燥機14が、循環空気流中に銀粉を循環させながら滞留(一例として0.7秒)させ、当該循環する銀粉に加熱空気流HA(例えば、110℃)や解砕用の高圧空気流(一例として圧縮空気)を供給しながら銀粉を解砕、乾燥させて、解砕且つ乾燥した銀粉を、内蔵する気流式分級機構で寄り分けて排出する乾燥機である場合を例示している。なお、このような乾燥機14の一例としては、フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)が例示される。乾燥機14は、循環空気流を用いるような装置に限られず、いわゆる棚乾燥、コニカル型の乾燥機、流動層乾燥装置、横型のパドル式のドライヤなどを採用できる。
粉砕工程について説明する。粉砕工程は、圧縮空気で銀粉の銀粒子を加速して粉砕する工程である。また、圧縮空気で銀粉の銀粒子を加速して粉砕することを説明する場合は、単に粉砕操作と称する場合がある。なお、本実施形態において粉砕とは、一次粒子を破壊するような操作ではなく、二次粒子を粉砕(ほぐす又は解砕)することにより、一次粒子に分散することをいう。
粉砕操作は、一例として気流式粉砕機(いわゆる、ジェットミル)のような粉砕装置15を用いて行うことができる。粉砕は、銀粒子同士の衝突、銀粒子と粉砕機の装置内壁面や衝突板との衝突、及び圧縮空気のせん断力を利用して行ってよい。
粉砕操作を実現できる具体的な気流式粉砕機としては、旋回する高圧空気流中で粉砕操作を実現するジェットミルやスーパージェットミル(日清エンジニアリング株式会社製)やスパイラルジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)、流動化した銀微粒子の流動層中に複数の供給孔から供給される高速空気流を互いに衝突するように供給して粉砕操作を実現するカウンタージェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)やクロスジェットミル(株式会社栗本鉄工所製)などを例示可能である。
粉砕装置としては、粗粉排出を抑制する分級機ないし分級機構を内蔵した粉砕機(以下、単に分級機内蔵型粉砕機と称する)を用いることが好ましい。分級機内蔵型粉砕機を粉砕装置として用いることで、凝集状態で粉砕装置に供給された銀微粒子が凝集状態を解消されることなく粉砕装置から排出されてしまう不具合を抑制できる。また、分級機ないし分級機構の分級条件を調整して粉砕装置内での銀粉の滞留時間を任意に調整することで、粉砕状態(例えば粒度分布)をコントロールできる。
上述のスーパージェットミルは、粉砕用の空気流によって生じた旋回流によって遠心力分級を行う分級機構を内蔵した分級機内蔵型粉砕機の一例である。また、カウンタージェットミル及びクロスジェットミルは遠心力分級を行う分級ロータを分級機として内蔵した分級機内蔵型粉砕機の一例である。
粉砕装置15には、高圧空気流の一例として、0.6MPa程度の圧力の圧縮空気CAが供給される。圧縮空気CAのエネルギーにより、銀粉の粉砕が進行する。
粉砕装置15に供給する銀粉の供給速度としては、粉体定量供給機15aの供給速度を用いることができる。以下では、粉砕装置15に供給する銀粉の供給速度(粉体定量供給機15aの供給速度)を、単に、粉砕操作時の供給速度と称する場合がある。粉砕時粉体濃度は、粉砕操作時の供給速度を圧縮空気CAの供給風量(m/min)で除して求めることができる。すなわち、粉砕装置15が気流式粉砕機である場合は、粉砕操作時の供給速度を圧縮空気CAの供給風量で除した値が0.20kg/m以下であればよい。
分級工程は、粉砕工程後の銀粉から大きすぎる粒子(粗粉)や小さすぎる粒子(微粉)を取り除く(カットする)分級操作が行われる工程である。分級工程は、粉砕工程後に行われる。分級操作は、気流中で行われることが好ましい。
分級工程は、分級ロータなどを備えて遠心力分級を実現する機械式の分級機や、高速気流の供給により生じさせた旋回流(自由渦ないし半自由渦)による遠心力分級を実現する分級機、屈曲する高速空気流により加速した粒子の慣性力とコアンダ効果を利用した分級機などを用いることができる。また、微粉カットの場合には、サイクロンを用いてもよい。分級工程は、一台の装置ないし一工程で粗粉カット及び微粉カットが行われてもよいし、二台の装置ないし二工程以上で粗粉カット及び微粉カットが行われてもよい。
図1では、粉砕装置15の下流側に粗粉カット用の分級装置16を接続している場合を示している。粉砕装置15から排出された銀粉は、そのまま分級装置16に供給している。分級装置16には、必要に応じて二次空気Aを吸引させてもよい。
粗粉カットを実現する機械装置として、強制渦式分級機であるターボクラシフィア(日清エンジニアリング株式会社製)や、高速気流の供給により生じさせた自由渦ないし半自由渦による遠心力分級を実現するエアロファインクラシファイア(日清エンジニアリング株式会社製)、屈曲する高速空気流により加速した粒子の慣性力とコアンダ効果を利用したエルボージェット(株式会社マツボー製)などを例示できる。その他、サイクロンを用いて微粉カットすることもできる。
粗粉カット後の銀粉は、例えばサイクロンで捕集することができる。以下では、粗粉カット後の銀粉を捕集してペースト化用の銀粉Pを得る工程を捕集工程と称する場合がある。図1では、分級装置16から排出された粗粉カット後の銀粉(微粉側の銀粉)をそのままサイクロン17に空気輸送している。分級装置16でカットされた粗粉Cは、分級装置16の外部に排出されて別途処理される。本実施形態では、サイクロン17での捕集時に微粉カットが行われ、サイクロン17の排気側から超微粉Fを廃棄と共に取り出して別途処理する。サイクロン17で捕集されたペースト化用の銀粉Pは、サイクロン17の粗粉側から排出されて回収される。このようにして得た銀粉Pの粉体物性は、タップ密度が4.8g/mL以上であり、TAP/D50値が7以上15以下であり、比表面積は0.75m/g以上1.3m/gの良好なものとなる。なお、サイクロン17における捕集は、上述のごとく空気輸送時粉体濃度を0.080kg/m以下とした状態で行うことが望ましい。分級装置16から供給される銀粉の供給速度は、粉体定量供給機15aの供給速度とおよそ等しい。
以下では実施例を説明する。
(実施例1)
銀を1.2kg含有する硝酸銀溶液を83kg準備した。そして、この硝酸銀溶液に濃度25.8質量%のアンモニア水溶液を3.8kg加えて銀イオンを含有する水性反応系を調製した。この水性反応系の液温は25℃とした。
そして、この水性反応系に、還元剤として80質量%ヒドラジン水溶液0.3kgを加えて十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。
次に、このスラリーに対して、分散剤として5質量%のオレイン酸を0.09kg加え、十分に撹拌した。
熟成後の得られたスラリーをろ過、水洗、脱水し、更に解砕、乾燥(例えば、乾燥機14としてフラッシュジェットドライヤーを用いる)させた。
乾燥後の銀粉は、その後、後述するように、直列に接続した粉砕装置、分級装置及びサイクロンで連続した空気輸送を行いながら、粉砕工程としての粉砕、分級工程としての分級及び捕集工程としての捕集をした。すなわち、本実施例においても、粉砕装置、分級装置及びサイクロンを一台の排風機で吸引しており、分級装置及びサイクロンにおける、空気輸送時の空気輸送時粉体濃度は、粉砕装置に供給される銀微粒子の供給速度(粉砕操作時の供給速度)を、排風機の排風量(風量)で除した値である。また、粉砕時粉体濃度は、粉砕操作時の供給速度を、粉砕機に供給する空気の供給風量(以下、粉砕機供給風量ともいう)で除した値である。
銀粉の乾燥後、まず、粉砕装置(粉砕装置15として、日清エンジニアリング製ジェットミルCJ-25)を用いて銀粉を粉砕した(粉砕工程の一例)。粉砕時粉体濃度は0.11kg/mとした。
粉砕工程後の銀粉に、粉砕装置の下流側に直列に接続した分級装置で分級処理(分級工程の一例)を施し、分級装置の下流側に直列に接続したサイクロンで捕集して粒度分布を調整した銀粉を得た。空気輸送時粉体濃度は0.033kg/mとした。
分級工程を経て得られた銀粉を用いて、導電性ペースト(銀ペースト)を以下のように調製した。分級工程を経て得られた銀粉85質量%、有機バインダとしてのビヒクル(テルピネオールとテキサノールとブチルカルピトールアセテートとエチルセルロースの混合物)を7.4質量%、ワックス(ヒマシ油)を1.2質量%、ジメチルポリシロキサン100csを0.5質量%、トリエタノールアミンを0.25質量%、オレイン酸を0.25質量%、Pb-Te-Bi系ガラスフリットを2.0質量%、及び、溶剤(ターピネオールとテキサノールの混合)3.4質量%を、プロペラレス自公転式攪拌脱泡装置(株式会社シンキー製のAR250)を用いて1400rpmで30秒撹拌し混合した後、3本ロール(EXAKT社製の80S)を用いて、ロールギャップを100μm~20μmまで通過させて混錬し、導電性ペーストを得た。
更に、導電性ペーストにより導体パターンを形成した。導体パターンの形成は以下のように行った。まず、太陽電池用シリコン基板(100Ω/□)上に、基板裏面にアルミニウムペースト(Rutech製RX8252D2)を用いて154mm□のベタパターンを形成した。このベタパターンの形成は、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT-320TV)を用いて行った。その後200℃10分間の熱風乾燥を行った。次に、導電性ペーストを500μmメッシュにてろ過した後、基板表面側に、版設計で0.7mm幅の4本のバスバー電極を、スキージ速度350mm/secにて印刷した(描いた)。
200℃で10分間の熱風乾燥を行った後、高速焼成炉IR炉(日本ガイシ株式会社、高速焼成試験4室炉)を用いて、ピーク温度770℃、インアウト時間41秒の焼成を行い、導体パターンとして、バスバー電極状の導電膜を得た。
更に、導電膜の導電性の評価を行った。導電性は、体積抵抗率で評価した。体積抵抗率の評価は以下のように行った。すなわち、導電膜の線抵抗をデジタルマルチメーター(ADVANTEST製の7451A)で測定し、導電膜の厚みを表面粗度計(東京精密株式会社製のサーフコム1500D型)で測定し、導電膜の長さを定規で測定し、線抵抗(Ω)に膜厚(μm)と線幅(mm)を乗じて更に100倍して体積抵抗率(μΩ・cm)を求めた。
表1に、実施例1に係る銀粉の処理条件、すなわち、銀粉の供給速度、粉砕機供給風量及び粉砕機濃度、空気輸送風量、及び空気輸送粉体濃度を示す。また、表1に分級工程後の銀粉の物性と評価結果、すなわち、ペースト化に用いた銀粉の粉体物性と導電膜の導電性としての体積抵抗率とを示している。なお、表1中の銀粉の処理条件の欄における、供給速度との項目は粉砕操作時の供給速度を意味する。
Figure 2022140325000001
(実施例2)
実施例2は、実施例1の製造方法と、粉砕操作時の供給速度をおよそ2倍に増加させ、これにより粉砕時粉体濃度を2倍弱(0.18kg/m)とし、且つ、空気輸送時粉体濃度を2倍弱(0.056kg/m)とした点で異なり、その他は同じとして粉砕及び分級された銀粉、当該銀粉を用いた導電性ペースト、及び当該導電性ペーストによる導電膜を製造等し、導電膜の体積抵抗率を評価した。表1に、実施例2に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(実施例3)
実施例3は、実施例1の製造方法と、粉砕操作時の供給速度をおよそ2倍に増加させ、これにより粉砕時粉体濃度を2倍弱(0.18kg/m)とし、且つ、空気輸送時粉体濃度を2倍弱(0.064kg/m)とし、更に分級工程の分級条件を変更して粒度分布(D50など)を変更した点で異なり、その他は同じとして粉砕分級された銀粉、当該銀粉を用いた導電性ペースト、及び当該導電性ペーストによる導電膜を製造等し、導電膜の体積抵抗率を評価した。表1に、実施例3に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(実施例4)
実施例4では、実施例1における分散剤としての5質量%のオレイン酸に代えて、分散剤として10質量%のセロゾールをヒドラジン添加後のスラリーに0.04kg加え、十分に撹拌した。
その後は実施例1と同様にしてスラリーをろ過、水洗、脱水し、更に解砕した。解砕後は、コニカル型の乾燥機で乾燥した。乾燥後の銀粉は、実施例1と同様にして、直列に接続した粉砕装置、分級装置及びサイクロンで連続した空気輸送を行いながら、粉砕、分級及び捕集した。なお、実施例4は、実施例1の製造方法と、粉砕時粉体濃度が同程度(0.10kg/m)であり、且つ、空気輸送時粉体濃度は同じとした。表1に、実施例4に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(実施例5)
銀を1.2kg含有する硝酸銀溶液を83kg準備した。そして、この硝酸銀溶液に濃度25.8質量%のアンモニア水溶液を2.4kg加えて銀イオンを含有する水性反応系を調製した。そして、この水性反応系に、濃度5質量%の炭酸ナトリウムを0.5kg、濃度5質量%のポリエチレンイミン(平均分子量300)を0.006kg加えた。この水性反応系の液温は30℃とした。
そして、還元剤として70質量%炭酸ヒドラジン水溶液0.4kgを加えて十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。
次に、このスラリーに対して、分散剤として5質量%のオレイン酸を0.1kg加え、十分に撹拌した。
その後は実施例1と同様にしてスラリーをろ過、水洗、脱水し、更に解砕した。解砕後は、コニカル型の乾燥機で乾燥した。乾燥後の銀粉は、実施例1と同様にして、直列に接続した粉砕装置、分級装置及びサイクロンで連続した空気輸送を行いながら、粉砕、分級及び捕集した。なお、実施例5は、実施例1の製造方法と、粉砕時粉体濃度が同程度(0.10kg/m)であり、且つ、空気輸送時粉体濃度はやや低下(0.028kg/m)させた。表1に、実施例5に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(比較例1)
比較例1は、実施例1の製造方法と、風量を大きく減少させて空気輸送時粉体濃度を約6.7倍に上昇させた。しかし、銀粉が粉砕装置内に滞留してしまい、粉砕工程を継続できなかった。表1に、比較例1に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(比較例2)
比較例2は、実施例1の製造方法と、粉砕操作時の供給速度を約4倍に増加させ、空気輸送時粉体濃度を約4倍に上昇させた。しかし、銀粉が粉砕装置の入口部分で閉塞してしまい、粉砕工程を継続できなかった。表1に、比較例2に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(比較例3)
比較例3は、実施例1の製造方法と、粉砕操作時の供給速度をおよそ2倍に増加させ、風量を7割強に減少させ、これにより空気輸送時粉体濃度を約2.6倍とした点で異なり、その他は同じとして粉砕分級を試みた銀粉、当該銀粉を用いた導電性ペースト、及び当該導電性ペーストによる導電膜を製造等し、導電膜の体積抵抗率を評価した。表1に、比較例3に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
表1に示されるように、実施例1から3に係る銀粉を用いた導電膜の体積抵抗率は、2.3から2.4μΩ・cmという小さな値を示しており、導電性が良好である。このような良好な導電性は、実施例1から3に係る銀粉は、タップ密度が4.8mL以上、且つ、TAP/D50値が7以上15以下、特に7g/mL・μm以上10以下であるから、これら銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の、銀粒子間の空隙が埋まりやすくなるためであると考えられる。また、これら銀粉の比表面積は、少なくとも0.75m/g以上で、具体的には0.9m/g以上1.3m/g、特に1m/g以上1.2m/g以下の範囲にあり、表面が適切に粉砕、分級、捕集されているためであると考えられる。また、銀粉のメジアン径が、0.32μm以上1μm以下、特に0.4μm以上0.8μm以下であり、適切な粒子径(粒度)であるためと考えられる。
表1に示すように、実施例1から4の銀粉のD90の値をD10の値で除した値(以下、D90/D10値と称する)は、実施例1から4の順に、5.00、4.68、5.16、及び5.13であり、実施例5の値(4.32)よりも大きい。実施例1から4は実施例5よりも体積抵抗率が小さいことから、銀粉の粒度分布は、適切なD50の範囲、且つ、D90/D10値が4.5以上5.5以下の適度な広がりの粒度分布であることも、これら銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の、銀粒子間の空隙が埋まりやすくなって導電性が向上する点に寄与しているものと考えられる。
これら銀粉を用いた導電性ペーストのペースト粘度の評価は行っていないが、導電膜のパターンを描いた際のラインに膨れや欠けが見られず、ライン性も良好であった。すなわち、実施例1から3に係る銀粉を用いた導電膜は、導電性以外の点でも良好な特性を有していた。
他方、比較例3の導電膜の体積抵抗率は、2.8μΩ・cmであり、さほど導電性が良好であるとは言えない。これは、比較例3に係る銀粉は、タップ密度が4.8mL以上であるが、TAP/D50値が7g/mL・μmを下回り、この銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成しても、銀粒子間の空隙が埋まりにくくなるためであると考えられる。
また、表1に示すように、D90/D10値が4.31となり、粒度分布に適度な広がりがないことが、導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の、銀粒子間の空隙が埋まりにくくなって良好な導電性得られないことに影響していると考えられる。
製造方法の観点から見ても、実施例1から3に係る粉砕からサイクロンの工程条件(銀粉の処理条件)にあっては、粉砕装置内で滞留が生じたり粉砕装置の入口が閉塞したりするようなことなく良好な粉砕操作及び分級、捕集操作を実現している。また、上記のように、良好な導電性を有する銀粉の製造を実現している。したがって、空気輸送時粉体濃度が0.080kg/m以下とすることが、本実施形態に係る銀粉の製造に適していると判断される。
他方、比較例1,2については、適切に粉砕工程を行うことができなかったことから、比較例1,2に係る銀粉の製造条件は、本実施形態に係る銀粉の製造に適した製造方法であるとは言えない。また、比較例3に係る銀粉の製造条件は、粉砕工程は行うことができたものの、これで得た銀粉を用いて形成した導電膜の導電性は、所望の特性を得られておらず、やはり、本実施形態に係る銀粉の製造に適した製造方法であるとは言えない。比較例3については、空気輸送時粉体濃度が0.080kg/mを超えていたため、適切な粒度分布の調整を行えなかったものと考えられる。
以上のようにして、焼成後の体積抵抗率を低減可能な粉体物性を有する銀粉及びその製造方法を提供することができる。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、銀粉及び銀粉の製造方法に適用できる。
11 :反応槽
12 :ろ過装置
13 :クッションタンク
14 :乾燥機
15 :粉砕装置
15a :粉体定量供給機
16 :分級装置
17 :サイクロン
18 :集塵機
19 :排風機
100 :プラント
A :二次空気
C :粗粉
CA :圧縮空気
F :超微粉
HA :加熱空気流
P :銀粉
本発明は、銀粉及びその製造方法に関する。
銀ペーストは、導電性のペーストとして、電子部品の基盤の配線パターンや電極の形成などに使用されている。導電性ペーストとしての銀ペーストは、銀粉をビヒクルなどと共に混錬して製造される。電子部品の小型化、導体パターンの高密度化、ファインライン化等に対応するため、導電性ペースト用の銀粉は、粒径が適度に小さく、粒度分布がシャープであることが要求される。
特許文献1では、従来技術で製造された銀粉にあっては、塗膜状態やライン性が良好でない場合があり、その結果、良好な焼成膜を得ることができず、パターンの高密度化やファインライン化に対応できない場合があるという問題を指摘している。この問題を解決すべく、特許文献1には、銀粉及びその製造方法が記載されている。特許文献1に記載された銀粉の製造方法では、湿式還元法により製造した銀粉に、粒子同士を機械的に衝突させる表面平滑化処理を施した後、分級により大きい銀の凝集体を除去している。この製造方法で製造された銀粉を用いたペーストでは、例えばライン性を良好にすることができるとされている。
特開2007-186798号公報
上記のような従来技術にあっては、湿式還元法により銀粉が製造される際に銀粉の銀粒子の粒子径(体積基準のメジアン径)が小さくなる場合に、これに伴って銀粉の比表面積が増えて、タップ密度が小さくなる傾向にあった。そのため、この銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の空隙が埋まりにくく、体積抵抗率を低減させるなどの導電性の向上の余地があった。
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、焼成後の体積抵抗率を低減可能な粉体物性を有する銀粉及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る銀粉は、
タップ密度が4.8g/mL以上であり、
前記タップ密度(g/mL)を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、
比表面積が0.75m/g以上1.3m/g以下である。
上記目的を達成するための本発明に係る銀粉の製造方法は、
湿式還元法により製造した銀粉を高圧空気流で加速して粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程後に行われ、前記銀粉を分級する分級工程と、を含み、
前記粉砕工程は前記銀粉の濃度が0.2kg/m以下で行われ、
前記分級工程後の前記銀粉の粉体の物性が、
タップ密度が4.8g/mL以上であり、
前記タップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、
比表面積が0.75m/g以上1.3m/g以下となるように分級する。
焼成後の体積抵抗率を低減可能な粉体物性を有する銀粉及びその製造方法を提供する。
銀粉を製造するプラントの一例を示す図である。
本実施形態に係る銀粉とは、銀微粒子の集合体としての粉体である。以下では、本実施形態に係る銀粉及びその製造方法について説明する。
(銀粉について)
本実施形態に係る銀粉は、タップ密度が4.8g/mL以上である。また、銀粉のタップ密度を、銀粉中の銀微粒子の体積基準のメジアン径(μm)で除した値をTAP/D50値と定義した場合、TAP/D50値が7以上15以下である。また、銀粉の比表面積は0.75m/g以上1.3m/g以下である。銀粉がこのような粉体物性を有することで、銀粉を導電性ペースト化し、更にこれを塗布や印刷などして描いた導体パターンや電極などの導電膜パターンを焼成して得た導電膜における体積抵抗率の低減を実現することができる。
本実施形態に係る銀粉は、湿式還元法により製造した銀粉を高圧空気流で加速して粉砕する粉砕工程と、粉砕工程後に行われ、銀粉を分級する分級工程と、を含む製造方法により実現される。
本実施形態に係る銀粉の製造方法では、粉砕工程は銀粉の濃度が0.2kg/m3以下で行われる。分級工程後の銀粉の粉体の物性が、タップ密度が4.8g/mL以上であり、タップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、比表面積が0.75m/g以上1.3m/g以下となるように分級する。
なお、本実施形態に係る銀粉は、比表面積は0.8m/g以上がより好ましく、0.9m/g以上であることが更に好ましい。比表面積が1.3m/gを超えるとペーストの粘度が大きくなりすぎて印刷性が悪化する恐れがある。比較的大きな比表面積を保ちながら大きなタップ密度を有する銀粉を得ることは通常困難であるが、本発明では上記範囲の比表面積と高いタップ密度を両立することができる。
従来は、メジアン径が小さく、且つ、比表面積が大きい場合、タップ密度は小さくなり、TAP/D50値は7未満となっていた。メジアン径が大きく、且つ、比表面積が小さい場合であっても、タップ密度はあまり大きくならならず、TAP/D50値は7未満となっていた。
銀粉のタップ密度を大きくするためには、銀粉の充填性を良くする必要がある。一般に、充填性の良い粉体は、粉体中の微粒子の粒子径(例えばメジアン径)が適度に大きく、粒度分布に適度な広がりがあり、また、粒子形状が球形状である。粉体中の微粒子の粒子径が小さくなったり、粒子形状がいびつになったりすると、粒子の表面積が大きくなり、粒子の質量に対する付着力が相対的に大きくなって、粉体の凝集性が増大して流動性が低下する。これにより、粉体の充填時において粒子間に隙間が生じやすくなって、充填性が低下してタップ密度が低下する。このように、流動性や、タップ密度といった充填性のような粉体物性と、比表面積や、メジアン径といった粒子径のような粒子物性は相関性のある特性である。そこで、タップ密度や比表面積、メジアン径の計測や、これら物性間の関係を評価することで、銀粉の特徴を把握することができると考えられる。例えば、タップ密度が大きく、且つ、メジアン径が小さい場合、すなわち、TAP/D50値が大きい場合は、粒子径が小さくとも凝集性が小さく充填性が良い粉体であると評価することができる。
そこで、銀粉を、上記のような適度な比表面積に制御し、且つ、高いタップ密度とTAP/D50値を満たすように調製することで、凝集性が抑制されて分散性の良い銀粉を提供可能となり、これにより体積抵抗率の低減を実現できたと予想される。
以下では、銀粉を導電性ペースト化、塗布や印刷、及び焼成して得た導電膜のことを、単に導電膜と記載する。また、焼成後の導電膜の体積抵抗率を、単に体積抵抗率と記載する。
銀粉の粉体物性は、TAP/D50値が7以上10以下であることが更に望ましい。TAP/D50値がこの範囲となることで、体積抵抗率がいっそう低減する。
銀粉の粉体物性は、好ましくはメジアン径が0.32μm以上1μm以下であり、更に好ましくは0.4μm以上0.8μm以下である。メジアン径がこの範囲にあることで体積抵抗率がいっそう低減する。特に、メジアン径が0.8μm以下であると、更に体積抵抗率が低減する。
銀粉のタップ密度とは、所定量の銀粉を計量して所定容量の容器に投入し、所定の落差で当該容器を落下させる動作を所定回数行った後(以下ではタップ後と称する)の、容器中の銀粉の見かけ密度であり、容器中の銀粉の重量を、容器中の見かけの銀粉の容量で除することで求める。
本実施形態において銀粉のタップ密度は、銀粉のタップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学株式会社製、カサ比重測定装置SS-DA-2)を使用し、銀粉30gを計量して、容器(20mL試験管)に入れ、落差20mmで1,000回タッピングし、銀粉の重量である30gを、タップ後の銀粉の見かけの体積(mL)で除した値を採用することができる。
銀粉の体積基準のメジアン径は、市販の湿式レーザー回折式の粒度分布測定装置で測定した銀粉の粒度分布に基づいて求めた値を用いることができる。
本実施形態では、銀粉の粒度分布及びメジアン径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製 マイクロトラックMT3300EXII)により測定した値を用いることができる。以下の記載では、単に粒度分布と記載した場合は、体積基準の粒度分布を意味する。また、単にメジアン径と記載した場合は、体積基準の粒度分布に基づいたメジアン径を意味する。
測定時の作業手順及び条件は、以下の手順及び条件を採用することができる。まず、銀粉0.1gを1重量%濃度のポリビニルピロリドン(PVP)溶液(溶媒はイソプロピルアルコール)40mLに添加する。そして、チップ径20mmの超音波ホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製のMODEL US-150T)のチップを、銀粉を添加したPVP溶液中に挿入し、2分間超音波分散させて、銀粒子の分散液を調製する。次いで、この分散液中の銀粒子の粒度分布を、上記レーザー回折散乱式粒度分布測定装置に投入して粒度分布を測定し、当該粒度分布に基づいてメジアン径を求める。
なお、メジアン径とは、粒度分布における、粒子径の小さい側からの粒子量の累積が50%となる径である。メジアン径は、50%粒子径であるとか、D50などと称される場合がある。以下では、メジアン径をD50と称する場合がある。加えて、粒度分布における、粒子径の小さい側からの粒子量の累積が10%となる径をD10、同様に90%となる径をD90と称する場合がある。
銀粉の比表面積は、BET法で求めた値である。本実施形態では、BET法を採用した比表面積測定装置(MOUNTECH社製 Macsorb HM-model 1210)により測定した値を用いることができる。測定条件は、銀粉3gを測定セルに入れて、Heガス70体積%と窒素ガス30体積%とを混合したキャリアガスを当該測定セルに通流させて60℃で10分間の脱気を行った後、BET1点法による測定とすることができる。
銀粉は、球状の銀微粒子の集合体(以下、球状銀粉と記載する)であることが好ましい。銀微粒子に関し、球状とは、銀微粒子のアスペクト比が2未満であることをいう。球状の銀粉とは、銀粉に含まれる銀微粒子のアスペクト比の平均が2未満であることをいう。
(銀粉の製造方法)
以下では、本実施形態に係る銀粉の製造に適した製造方法を説明する。なお、以下に説明する銀粉の製造方法は、本実施形態に係る銀粉の製造を実現する一例であって、本実施形態に係る銀粉は、以下に説明する製造方法により製造された銀粉に限られない。
本実施形態に係る銀粉の製造方法は、湿式還元法により製造した銀粉を高圧空気流で加速して粉砕する粉砕工程と、粉砕工程後に行われ、当該銀粉を分級する分級工程と、分級された当該銀粉を空気輸送する空気輸送工程とを含む。
粉砕工程は、銀粉の濃度が0.20kg/m以下で行われる。以下では、粉砕工程における銀粉の濃度を、粉砕時粉体濃度と記載する場合がある。
空気輸送工程は、銀粉の濃度を0.080kg/m以下で輸送する。また、空気輸送工程で回収された銀粉の粉体物性(銀微粒子の粉体の物性の一例)が、タップ密度が4.8g/mL以上であり、このタップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、更に、比表面積が0.75m/g以上1.3m/g以下となる。以下では、空気輸送中の銀粉の濃度を、空気輸送時粉体濃度と記載する場合がある。
湿式還元法による銀粉の製造方法について説明する。湿式還元法は、銀塩含有水溶液にアルカリ又は錯化剤を加えて、酸化銀含有スラリー又は銀錯塩含有水溶液を生成した後、還元剤を加えて銀粉を還元析出させる方法である。
湿式還元方法は、二次凝集を防止して単分散した粒子を得ることにより導電性ペーストを使用した電子部品の特性の向上を図るべく、還元析出した銀スラリーに対して分散剤を添加する処理、又は銀粉を還元析出させる前の銀塩と酸化銀の少なくとも一方を含む水性反応系に対して分散剤を添加する処理を含むことができる。分散剤としては、脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属及び保護コロイドのいずれか1種以上を選択して使用することができる。
湿式還元法による銀粉の製造は、一例として反応槽などの容器中で行う。湿式還元法により製造した直後の銀粉は、例えばスラリー状となっている。そのため、銀粉は、ろ過、水洗、脱水した後、乾燥して粉末状としてから粉砕工程に供される。
図1には、以下で説明する銀粉の製造方法を実現するプラント100のフロー図の一例を示している。プラント100では、銀粉が空気輸送される。
プラント100の概要を説明する。本実施形態に係るプラント100では、少なくとも銀粉を合成する反応槽11、粉砕装置15、分級装置16及び捕集装置を含む。プラント100は、反応槽11の下流に、粉砕装置15と分級装置16と捕集装置(一例としてサイクロン17及び集塵機18)とがこの順に直列に接続されている。プラント100は、粉砕装置15に供給された銀粉が捕集装置まで空気輸送される、空気輸送が連続式のプロセスとして構成されている。プラント100での空気輸送は、捕集装置の下流側に接続された排風機19による吸引により行う。反応槽11で製造された銀粉は、粉砕装置15と分級装置16及びサイクロン17とで処理されて回収される銀粉Pのタップ密度、TAP/D50値及び比表面積を制御される。プラント100では、この制御により体積抵抗率の低減を実現する。
以下の説明において粉砕工程中の銀粉の濃度、すなわち、粉砕時粉体濃度は、粉砕装置15に供給される銀粉の供給速度(kg/min)を粉砕装置15に供給する空気の供給風量(m/min)で除した値と定義する。粉砕時粉体濃度を低くすることで、粉砕装置15内での銀粉の滞留や閉塞を起こすことなく、衝突粉砕操作を円滑に進行させて粗大粒子の粉砕効率を向上させる。また、ショートパスを抑制することができる。これにより、未解砕で次工程に進む粗大粒子(凝集粉)を減少させることができる。粉砕時粉体濃度は、上述のごとく0.20kg/m以下である。これにより、タップ密度が4.8g/mL以上であり、このタップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、更に、比表面積が0.75m/g以上1.3m/g以下となる銀粉の製造を実現する。これにより、銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の、銀粒子間の空隙が埋まりやすくなり、導電膜の体積抵抗率の低減を実現することができる。
また、粉砕装置15と分級装置16と捕集装置とがこの順に直列に接続されており、粉砕装置15に供給された銀粉が捕集装置まで空気輸送される、空気輸送が連続式のプラント100においては、粉砕装置15に供給する空気のほかに、分級装置16においても空気の供給があるため、分級装置16以降の粉体濃度が上述の低い粉砕時粉体濃度よりもさらに低くなる。そのため、ショートパスを抑制されて(分級されずに次工程に進む粉が減少すると共に、粗粉のみが分離されやすくなり)、分級性能が向上する。なお、分級の性能が向上する、とは、例えば、部分分級効率曲線がシャープになることをいう。
捕集装置では、粒子は遠心力を受けて壁側に押し付けられながら旋回し、重力加速度を受けて下降して捕集されるのであるが、粉体濃度を上述のごとく粉砕時粉体濃度よりもさらに低い濃度とすることの結果としてサイクロンの入口速度が速くすることができる。これによりサイクロン17での遠心力を高めて回収効率を向上させることができる。
以下の説明において空気輸送中の銀粉の濃度、すなわち、空気輸送時粉体濃度は、粉砕装置15に供給される銀粉の供給速度(kg/min)を排風機19の排風量(m/min)で除した値と定義する。この空気輸送時粉体濃度は、分級装置16および捕集装置における粉体濃度と考えることができる。プラント100では、粉砕時粉体濃度を0.20kg/m以下とすると共に、この空気輸送時粉体濃度を0.080kg/m以下にすることにより、タップ密度が4.8g/mL以上であり、このタップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、更に、比表面積が0.75m/g以上1.3m/g以下となる銀粉の製造を実現する。これにより、銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の、銀粒子間の空隙が埋まりやすくなり、導電膜の体積抵抗率の低減を実現することができる。以下では、排風機19の排風量を、単に風量と記載する場合がある。また、空気輸送中の銀粉の濃度を単に空気輸送時粉体濃度と記載する場合がある。
すなわち、空気輸送が連続式のプラント100において、粉砕装置15での粉砕時粉体濃度を0.20kg/m以下とし、空気輸送時粉体濃度を0.080kg/m以下にすることで、装置内での銀粉の滞留や閉塞の抑制を実現する。また、粉砕時粉体濃度を0.20kg/m以下とすることで、衝突粉砕操作を円滑に進行させて粗大粒子の粉砕効率を向上させ、且つ、ショートパスを抑制して次工程に進む粗大粒子(凝集粉)の減少を実現する。
また、空気輸送時粉体濃度を0.080kg/m以下にすることで、分級装置16では、ショートパスを抑制し、特に粗大粒子を高い割合で排除されて、分級効率が向上する。この際、粉砕時粉体濃度を0.20kg/m以下とされていることで、分級装置16中での粉体濃度を上記の濃度とすることが容易となる。
また、空気輸送時粉体濃度を0.080kg/m以下にすることで、結果としてサイクロンの入口速度が速くすることができる。これによりサイクロン17では、カットされる超微粉と回収される銀粉Pの間の粒径の境界を明確にして回収効率の向上を実現する。以下、プラント100の各部について詳述する。
図1に例示するプラント100では、反応槽11中で湿式還元法により製造された銀粉が、例えばフィルタプレスなどのろ過装置12によりろ過や水洗、脱水が行われ、脱水後の乾燥が、乾燥機14などで行われる場合を示している。なお、ろ過装置12や乾燥機14は一般的なものを用いてよい。ろ過装置12でろ過後、乾燥機14に供する前に、供給機を搭載したクッションタンク13などにろ過後の乾燥ケーキを一時貯留してもよい。乾燥機14で乾燥された銀粉は、後述する粉砕装置15に供される。銀粉は、粉砕装置15で粉砕された後、分級装置16で分級され、その後、サイクロン17で捕集される。粉砕装置15、分級装置16、サイクロン17は直列に接続されており、銀粉は、粉砕装置15からサイクロン17まで、連続した空気輸送により搬送される。すなわち、プラント100は、空気輸送が連続式のプロセスとして構成されている。この空気輸送は、ファンやブロアなどの排風機19の吸引により行う。なお、サイクロン17と排風機19との間には、集塵機18が配置され、サイクロン17を通過した超微粉Fが除去される。
乾燥機14で乾燥された銀粉は、粉砕装置15に供給する前に、サイクロン(図示せず)などで捕集し、更にクッションタンク(図示せず)などに一時貯留してもよい。そして、クッションタンクから粉体定量供給機15aなどにより、粉砕装置15に所定の供給速度で供給してもよい。
なお、図1では、乾燥機14が、循環空気流中に銀粉を循環させながら滞留(一例として0.7秒)させ、当該循環する銀粉に加熱空気流HA(例えば、110℃)や解砕用の高圧空気流(一例として圧縮空気)を供給しながら銀粉を解砕、乾燥させて、解砕且つ乾燥した銀粉を、内蔵する気流式分級機構で寄り分けて排出する乾燥機である場合を例示している。なお、このような乾燥機14の一例としては、フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)が例示される。乾燥機14は、循環空気流を用いるような装置に限られず、いわゆる棚乾燥、コニカル型の乾燥機、流動層乾燥装置、横型のパドル式のドライヤなどを採用できる。
粉砕工程について説明する。粉砕工程は、圧縮空気で銀粉の銀粒子を加速して粉砕する工程である。また、圧縮空気で銀粉の銀粒子を加速して粉砕することを説明する場合は、単に粉砕操作と称する場合がある。なお、本実施形態において粉砕とは、一次粒子を破壊するような操作ではなく、二次粒子を粉砕(ほぐす又は解砕)することにより、一次粒子に分散することをいう。
粉砕操作は、一例として気流式粉砕機(いわゆる、ジェットミル)のような粉砕装置15を用いて行うことができる。粉砕は、銀粒子同士の衝突、銀粒子と粉砕機の装置内壁面や衝突板との衝突、及び圧縮空気のせん断力を利用して行ってよい。
粉砕操作を実現できる具体的な気流式粉砕機としては、旋回する高圧空気流中で粉砕操作を実現するジェットミルやスーパージェットミル(日清エンジニアリング株式会社製)やスパイラルジェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)、流動化した銀微粒子の流動層中に複数の供給孔から供給される高速空気流を互いに衝突するように供給して粉砕操作を実現するカウンタージェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)やクロスジェットミル(株式会社栗本鉄工所製)などを例示可能である。
粉砕装置としては、粗粉排出を抑制する分級機ないし分級機構を内蔵した粉砕機(以下、単に分級機内蔵型粉砕機と称する)を用いることが好ましい。分級機内蔵型粉砕機を粉砕装置として用いることで、凝集状態で粉砕装置に供給された銀微粒子が凝集状態を解消されることなく粉砕装置から排出されてしまう不具合を抑制できる。また、分級機ないし分級機構の分級条件を調整して粉砕装置内での銀粉の滞留時間を任意に調整することで、粉砕状態(例えば粒度分布)をコントロールできる。
上述のスーパージェットミルは、粉砕用の空気流によって生じた旋回流によって遠心力分級を行う分級機構を内蔵した分級機内蔵型粉砕機の一例である。また、カウンタージェットミル及びクロスジェットミルは遠心力分級を行う分級ロータを分級機として内蔵した分級機内蔵型粉砕機の一例である。
粉砕装置15には、高圧空気流の一例として、0.6MPa程度の圧力の圧縮空気CAが供給される。圧縮空気CAのエネルギーにより、銀粉の粉砕が進行する。
粉砕装置15に供給する銀粉の供給速度としては、粉体定量供給機15aの供給速度を用いることができる。以下では、粉砕装置15に供給する銀粉の供給速度(粉体定量供給機15aの供給速度)を、単に、粉砕操作時の供給速度と称する場合がある。粉砕時粉体濃度は、粉砕操作時の供給速度を圧縮空気CAの供給風量(m/min)で除して求めることができる。すなわち、粉砕装置15が気流式粉砕機である場合は、粉砕操作時の供給速度を圧縮空気CAの供給風量で除した値が0.20kg/m以下であればよい。
分級工程は、粉砕工程後の銀粉から大きすぎる粒子(粗粉)や小さすぎる粒子(微粉)を取り除く(カットする)分級操作が行われる工程である。分級工程は、粉砕工程後に行われる。分級操作は、気流中で行われることが好ましい。
分級工程は、分級ロータなどを備えて遠心力分級を実現する機械式の分級機や、高速気流の供給により生じさせた旋回流(自由渦ないし半自由渦)による遠心力分級を実現する分級機、屈曲する高速空気流により加速した粒子の慣性力とコアンダ効果を利用した分級機などを用いることができる。また、微粉カットの場合には、サイクロンを用いてもよい。分級工程は、一台の装置ないし一工程で粗粉カット及び微粉カットが行われてもよいし、二台の装置ないし二工程以上で粗粉カット及び微粉カットが行われてもよい。
図1では、粉砕装置15の下流側に粗粉カット用の分級装置16を接続している場合を示している。粉砕装置15から排出された銀粉は、そのまま分級装置16に供給している。分級装置16には、必要に応じて二次空気Aを吸引させてもよい。
粗粉カットを実現する機械装置として、強制渦式分級機であるターボクラシフィア(日清エンジニアリング株式会社製)や、高速気流の供給により生じさせた自由渦ないし半自由渦による遠心力分級を実現するエアロファインクラシファイア(日清エンジニアリング株式会社製)、屈曲する高速空気流により加速した粒子の慣性力とコアンダ効果を利用したエルボージェット(株式会社マツボー製)などを例示できる。その他、サイクロンを用いて微粉カットすることもできる。
粗粉カット後の銀粉は、例えばサイクロンで捕集することができる。以下では、粗粉カット後の銀粉を捕集してペースト化用の銀粉Pを得る工程を捕集工程と称する場合がある。図1では、分級装置16から排出された粗粉カット後の銀粉(微粉側の銀粉)をそのままサイクロン17に空気輸送している。分級装置16でカットされた粗粉Cは、分級装置16の外部に排出されて別途処理される。本実施形態では、サイクロン17での捕集時に微粉カットが行われ、サイクロン17の排気側から超微粉Fを廃棄と共に取り出して別途処理する。サイクロン17で捕集されたペースト化用の銀粉Pは、サイクロン17の粗粉側から排出されて回収される。このようにして得た銀粉Pの粉体物性は、タップ密度が4.8g/mL以上であり、TAP/D50値が7以上15以下であり、比表面積は0.75m/g以上1.3m/g以下の良好なものとなる。なお、サイクロン17における捕集は、上述のごとく空気輸送時粉体濃度を0.080kg/m以下とした状態で行うことが望ましい。分級装置16から供給される銀粉の供給速度は、粉体定量供給機15aの供給速度とおよそ等しい。
以下では実施例を説明する。
(実施例1)
銀を1.2kg含有する硝酸銀溶液を83kg準備した。そして、この硝酸銀溶液に濃度25.8質量%のアンモニア水溶液を3.8kg加えて銀イオンを含有する水性反応系を調製した。この水性反応系の液温は25℃とした。
そして、この水性反応系に、還元剤として80質量%ヒドラジン水溶液0.3kgを加えて十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。
次に、このスラリーに対して、分散剤として5質量%のオレイン酸を0.09kg加え、十分に撹拌した。
熟成後の得られたスラリーをろ過、水洗、脱水し、更に解砕、乾燥(例えば、乾燥機14としてフラッシュジェットドライヤーを用いる)させた。
乾燥後の銀粉は、その後、後述するように、直列に接続した粉砕装置、分級装置及びサイクロンで連続した空気輸送を行いながら、粉砕工程としての粉砕、分級工程としての分級及び捕集工程としての捕集をした。すなわち、本実施例においても、粉砕装置、分級装置及びサイクロンを一台の排風機で吸引しており、分級装置及びサイクロンにおける、空気輸送時の空気輸送時粉体濃度は、粉砕装置に供給される銀微粒子の供給速度(粉砕操作時の供給速度)を、排風機の排風量(風量)で除した値である。また、粉砕時粉体濃度は、粉砕操作時の供給速度を、粉砕機に供給する空気の供給風量(以下、粉砕機供給風量ともいう)で除した値である。
銀粉の乾燥後、まず、粉砕装置(粉砕装置15として、日清エンジニアリング製ジェットミルCJ-25)を用いて銀粉を粉砕した(粉砕工程の一例)。粉砕時粉体濃度は0.11kg/mとした。
粉砕工程後の銀粉に、粉砕装置の下流側に直列に接続した分級装置で分級処理(分級工程の一例)を施し、分級装置の下流側に直列に接続したサイクロンで捕集して粒度分布を調整した銀粉を得た。空気輸送時粉体濃度は0.033kg/mとした。
分級工程を経て得られた銀粉を用いて、導電性ペースト(銀ペースト)を以下のように調製した。分級工程を経て得られた銀粉85質量%、有機バインダとしてのビヒクル(テルピネオールとテキサノールとブチルカルピトールアセテートとエチルセルロースの混合物)を7.4質量%、ワックス(ヒマシ油)を1.2質量%、ジメチルポリシロキサン100csを0.5質量%、トリエタノールアミンを0.25質量%、オレイン酸を0.25質量%、Pb-Te-Bi系ガラスフリットを2.0質量%、及び、溶剤(ターピネオールとテキサノールの混合)3.4質量%を、プロペラレス自公転式攪拌脱泡装置(株式会社シンキー製のAR250)を用いて1400rpmで30秒撹拌し混合した後、3本ロール(EXAKT社製の80S)を用いて、ロールギャップを100μm~20μmまで通過させて混錬し、導電性ペーストを得た。
更に、導電性ペーストにより導体パターンを形成した。導体パターンの形成は以下のように行った。まず、太陽電池用シリコン基板(100Ω/□)上に、基板裏面にアルミニウムペースト(Rutech製RX8252D2)を用いて154mm□のベタパターンを形成した。このベタパターンの形成は、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT-320TV)を用いて行った。その後200℃10分間の熱風乾燥を行った。次に、導電性ペーストを500μmメッシュにてろ過した後、基板表面側に、版設計で0.7mm幅の4本のバスバー電極を、スキージ速度350mm/secにて印刷した(描いた)。
200℃で10分間の熱風乾燥を行った後、高速焼成炉IR炉(日本ガイシ株式会社、高速焼成試験4室炉)を用いて、ピーク温度770℃、インアウト時間41秒の焼成を行い、導体パターンとして、バスバー電極状の導電膜を得た。
更に、導電膜の導電性の評価を行った。導電性は、体積抵抗率で評価した。体積抵抗率の評価は以下のように行った。すなわち、導電膜の線抵抗をデジタルマルチメーター(ADVANTEST製の7451A)で測定し、導電膜の厚みを表面粗度計(東京精密株式会社製のサーフコム1500D型)で測定し、導電膜の長さを定規で測定し、線抵抗(Ω)に膜厚(μm)と線幅(mm)を乗じて更に100倍して体積抵抗率(μΩ・cm)を求めた。
表1に、実施例1に係る銀粉の処理条件、すなわち、銀粉の供給速度、粉砕機供給風量及び粉砕機濃度、空気輸送風量、及び空気輸送粉体濃度を示す。また、表1に分級工程後の銀粉の物性と評価結果、すなわち、ペースト化に用いた銀粉の粉体物性と導電膜の導電性としての体積抵抗率とを示している。なお、表1中の銀粉の処理条件の欄における、供給速度との項目は粉砕操作時の供給速度を意味する。
Figure 2022140325000003
(実施例2)
実施例2は、実施例1の製造方法と、粉砕操作時の供給速度をおよそ2倍に増加させ、これにより粉砕時粉体濃度を2倍弱(0.18kg/m)とし、且つ、空気輸送時粉体濃度を2倍弱(0.056kg/m)とした点で異なり、その他は同じとして粉砕及び分級された銀粉、当該銀粉を用いた導電性ペースト、及び当該導電性ペーストによる導電膜を製造等し、導電膜の体積抵抗率を評価した。表1に、実施例2に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(実施例3)
実施例3は、実施例1の製造方法と、粉砕操作時の供給速度をおよそ2倍に増加させ、これにより粉砕時粉体濃度を2倍弱(0.18kg/m)とし、且つ、空気輸送時粉体濃度を2倍弱(0.064kg/m)とし、更に分級工程の分級条件を変更して粒度分布(D50など)を変更した点で異なり、その他は同じとして粉砕分級された銀粉、当該銀粉を用いた導電性ペースト、及び当該導電性ペーストによる導電膜を製造等し、導電膜の体積抵抗率を評価した。表1に、実施例3に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(実施例4)
実施例4では、実施例1における分散剤としての5質量%のオレイン酸に代えて、分散剤として10質量%のセロゾールをヒドラジン添加後のスラリーに0.04kg加え、十分に撹拌した。
その後は実施例1と同様にしてスラリーをろ過、水洗、脱水し、更に解砕した。解砕後は、コニカル型の乾燥機で乾燥した。乾燥後の銀粉は、実施例1と同様にして、直列に接続した粉砕装置、分級装置及びサイクロンで連続した空気輸送を行いながら、粉砕、分級及び捕集した。なお、実施例4は、実施例1の製造方法と、粉砕時粉体濃度が同程度(0.10kg/m)であり、且つ、空気輸送時粉体濃度は同じとした。表1に、実施例4に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(実施例5)
銀を1.2kg含有する硝酸銀溶液を83kg準備した。そして、この硝酸銀溶液に濃度25.8質量%のアンモニア水溶液を2.4kg加えて銀イオンを含有する水性反応系を調製した。そして、この水性反応系に、濃度5質量%の炭酸ナトリウムを0.5kg、濃度5質量%のポリエチレンイミン(平均分子量300)を0.006kg加えた。この水性反応系の液温は30℃とした。
そして、還元剤として70質量%炭酸ヒドラジン水溶液0.4kgを加えて十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。
次に、このスラリーに対して、分散剤として5質量%のオレイン酸を0.1kg加え、十分に撹拌した。
その後は実施例1と同様にしてスラリーをろ過、水洗、脱水し、更に解砕した。解砕後は、コニカル型の乾燥機で乾燥した。乾燥後の銀粉は、実施例1と同様にして、直列に接続した粉砕装置、分級装置及びサイクロンで連続した空気輸送を行いながら、粉砕、分級及び捕集した。なお、実施例5は、実施例1の製造方法と、粉砕時粉体濃度が同程度(0.10kg/m)であり、且つ、空気輸送時粉体濃度はやや低下(0.028kg/m)させた。表1に、実施例5に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(比較例1)
比較例1は、実施例1の製造方法と、風量を大きく減少させて空気輸送時粉体濃度を約6.7倍に上昇させた。しかし、銀粉が粉砕装置内に滞留してしまい、粉砕工程を継続できなかった。表1に、比較例1に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(比較例2)
比較例2は、実施例1の製造方法と、粉砕操作時の供給速度を約4倍に増加させ、空気輸送時粉体濃度を約4倍に上昇させた。しかし、銀粉が粉砕装置の入口部分で閉塞してしまい、粉砕工程を継続できなかった。表1に、比較例2に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
(比較例3)
比較例3は、実施例1の製造方法と、粉砕操作時の供給速度をおよそ2倍に増加させ、風量を7割強に減少させ、これにより空気輸送時粉体濃度を約2.6倍とした点で異なり、その他は同じとして粉砕分級を試みた銀粉、当該銀粉を用いた導電性ペースト、及び当該導電性ペーストによる導電膜を製造等し、導電膜の体積抵抗率を評価した。表1に、比較例3に係る銀粉の処理条件及び分級工程後の銀粉の物性と評価結果を示している。
表1に示されるように、実施例1から3に係る銀粉を用いた導電膜の体積抵抗率は、2.3から2.4μΩ・cmという小さな値を示しており、導電性が良好である。このような良好な導電性は、実施例1から3に係る銀粉は、タップ密度が4.8mL以上、且つ、TAP/D50値が7以上15以下、特に7g/mL・μm以上10以下であるから、これら銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の、銀粒子間の空隙が埋まりやすくなるためであると考えられる。また、これら銀粉の比表面積は、少なくとも0.75m/g以上で、具体的には0.9m/g以上1.3m/g以下、特に1m/g以上1.2m/g以下の範囲にあり、表面が適切に粉砕、分級、捕集されているためであると考えられる。また、銀粉のメジアン径が、0.32μm以上1μm以下、特に0.4μm以上0.8μm以下であり、適切な粒子径(粒度)であるためと考えられる。
表1に示すように、実施例1から4の銀粉のD90の値をD10の値で除した値(以下、D90/D10値と称する)は、実施例1から4の順に、5.00、4.68、5.16、及び5.13であり、実施例5の値(4.32)よりも大きい。実施例1から4は実施例5よりも体積抵抗率が小さいことから、銀粉の粒度分布は、適切なD50の範囲、且つ、D90/D10値が4.5以上5.5以下の適度な広がりの粒度分布であることも、これら銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の、銀粒子間の空隙が埋まりやすくなって導電性が向上する点に寄与しているものと考えられる。
これら銀粉を用いた導電性ペーストのペースト粘度の評価は行っていないが、導電膜のパターンを描いた際のラインに膨れや欠けが見られず、ライン性も良好であった。すなわち、実施例1から3に係る銀粉を用いた導電膜は、導電性以外の点でも良好な特性を有していた。
他方、比較例3の導電膜の体積抵抗率は、2.8μΩ・cmであり、さほど導電性が良好であるとは言えない。これは、比較例3に係る銀粉は、タップ密度が4.8mL以上であるが、TAP/D50値が7g/mL・μmを下回り、この銀粉を用いた導電性ペーストで導電膜を形成して焼成しても、銀粒子間の空隙が埋まりにくくなるためであると考えられる。
また、表1に示すように、D90/D10値が4.31となり、粒度分布に適度な広がりがないことが、導電性ペーストで導電膜を形成して焼成した後の、銀粒子間の空隙が埋まりにくくなって良好な導電性得られないことに影響していると考えられる。
製造方法の観点から見ても、実施例1から3に係る粉砕からサイクロンの工程条件(銀粉の処理条件)にあっては、粉砕装置内で滞留が生じたり粉砕装置の入口が閉塞したりするようなことなく良好な粉砕操作及び分級、捕集操作を実現している。また、上記のように、良好な導電性を有する銀粉の製造を実現している。したがって、空気輸送時粉体濃度が0.080kg/m以下とすることが、本実施形態に係る銀粉の製造に適していると判断される。
他方、比較例1,2については、適切に粉砕工程を行うことができなかったことから、比較例1,2に係る銀粉の製造条件は、本実施形態に係る銀粉の製造に適した製造方法であるとは言えない。また、比較例3に係る銀粉の製造条件は、粉砕工程は行うことができたものの、これで得た銀粉を用いて形成した導電膜の導電性は、所望の特性を得られておらず、やはり、本実施形態に係る銀粉の製造に適した製造方法であるとは言えない。比較例3については、空気輸送時粉体濃度が0.080kg/mを超えていたため、適切な粒度分布の調整を行えなかったものと考えられる。
以上のようにして、焼成後の体積抵抗率を低減可能な粉体物性を有する銀粉及びその製造方法を提供することができる。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、銀粉及び銀粉の製造方法に適用できる。
11 :反応槽
12 :ろ過装置
13 :クッションタンク
14 :乾燥機
15 :粉砕装置
15a :粉体定量供給機
16 :分級装置
17 :サイクロン
18 :集塵機
19 :排風機
100 :プラント
A :二次空気
C :粗粉
CA :圧縮空気
F :超微粉
HA :加熱空気流
P :銀粉

Claims (6)

  1. タップ密度が4.8g/mL以上であり、
    前記タップ密度(g/mL)を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、
    比表面積が0.75m/g以上1.3m/gである銀粉。
  2. 前記TAP/D50が、7以上10以下である請求項1に記載の銀粉。
  3. 前記メジアン径が0.32μm以上1μm以下である請求項1又は2に記載の銀粉。
  4. 前記メジアン径が0.4μm以上0.8μm以下である請求項3に記載の銀粉。
  5. 湿式還元法により製造した銀粉を高圧空気流で加速して粉砕する粉砕工程と、
    前記粉砕工程後に行われ、前記銀粉を分級する分級工程と、を含み、
    前記粉砕工程は前記銀粉の濃度が0.2kg/m以下で行われ、
    前記分級工程後の前記銀粉の粉体の物性が、
    タップ密度が4.8g/mL以上であり、
    前記タップ密度を体積基準のメジアン径(μm)で除した値であるTAP/D50値が7以上15以下であり、
    比表面積が0.75m/g以上1.3m/gとなるように分級する銀粉の製造方法。
  6. 前記粉砕工程における粉砕装置と、前記分級工程における分級装置と、捕集装置とをこの順に直列に接続し、
    前記捕集装置の下流側に排風機を接続して吸引することにより前記粉砕装置に供給された銀粉を前記捕集装置まで空気輸送し、
    前記粉砕工程での銀粉の供給速度を前記排風機の風量で除した粉体濃度が0.08kg/m以下である請求項5に記載の銀粉の製造方法。
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