JP2018066048A - 導電性ペーストおよびその製造方法、ならびに太陽電池セル - Google Patents
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Abstract
Description
このような導電性ペースト用の銀粉として、凝集の発生が少なく、分散性に優れたものを得るため、ステアリン酸やオレイン酸等のカルボン酸を表面に有する銀粉が提案されている(例えば、特許文献1および2等参照)。
また、銀を含む水溶液に還元剤を添加して銀粉を還元析出させた後、コハク酸、アジピン酸等の多価カルボン酸を添加して表面処理を行う方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
したがって、導電性ペーストの低粘度化および低抵抗化を実現できる方策の速やかな提供が望まれている。
<1> ガスクロマト質量分析法により炭素数が13以上のアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉と、
グリコール構造を有する化合物を含む溶剤と、を含有することを特徴とする導電性ペーストである。
<2> ガスクロマト質量分析法により炭素数が13以上のアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉と、
溶剤として、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカルビトールアセテート(ECA)、エチルカルビトール(EC)およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGE)から選択される少なくとも1種と、を含有することを特徴とする導電性ペーストである。
<3> 前記銀粉を含むフィラーの含有量が70質量%以上95質量%以下であり、前記溶剤の含有量が、20質量%以下であることを特徴とする前記<1>または<2>に記載の導電性ペーストである。
<4> バインダーをさらに含有し、前記バインダーが、セルロース誘導体、エポキシ樹脂、およびポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする前記<1>から<3>のいずれかに記載の導電性ペーストである。
<5> ガスクロマト質量分析法によりアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉と、グリコール構造を有する化合物を含む溶剤と、を混合する工程を含むことを特徴とする導電性ペーストの製造方法である。
<6> ガスクロマト質量分析法によりアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉と、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカルビトールアセテート(ECA)、エチルカルビトール(EC)およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGE)から選択される少なくとも1種の溶剤と、を混合する工程を含むことを特徴とする導電性ペーストの製造方法である。
<7> ガスクロマト質量分析法により炭素数が13以上のアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉の製造工程が、銀を含む水溶液に還元剤を添加して銀粒子を還元析出させたスラリーに、炭素数が13以上のアルケニル無水コハク酸を添加した後、銀粉を回収および洗浄する工程を含むことを特徴とする前記<5>または<6>に記載の導電性ペーストの製造方法である。
<8> アルケニル無水コハク酸の添加量が、銀の質量に対して、0.05質量%以上2.0質量%以下であることを特徴とする前記<7>に記載の導電性ペーストの製造方法である。
<9> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて形成した電極を有することを特徴とする太陽電池セルである。
本発明の導電性ペーストは、銀粉を含むフィラー、および溶剤を含有し、バインダーを含有することが好ましく、さらに必要に応じてその他の成分を含有する。
前記銀粉は、ガスクロマト質量分析法によりアルケニル無水コハク酸(以下、「アルケニルコハク酸無水物」と称することもある)が検出される銀粉である。
ここで、前記ガスクロマト質量分析法(GC/MS)によりアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉とは、銀粉を、熱分解装置(例えば、フロンティア・ラボ株式会社製のマルチショット・パイロライザーEGA/Py3030D)を用いて300℃で加熱してガスクロマト質量分析装置を用いて分析することにより、銀粉の表面より脱離した成分にアルケニル無水コハク酸が含まれることを意味する。
ガスクロマト質量分析法(GC/MS)で測定する理由としては、アルケニルコハク酸無水物および/またはアルケニルコハク酸を吸着させた銀粉をトルエンに混合して、トルエンに溶出した有機成分の有無を調べたが、アルケニルコハク酸無水物および/またはアルケニルコハク酸は検出されないためである。トルエン処理後の銀粉についてパイロライザーを用いたGC−MSによりアルケニルコハク酸無水物が検出されることから、本実施形態の銀粉における銀との吸着はトルエンでは分離せず、加熱しなれば分離しないくらいに強固なものであることがわかる。このことから、吸着状態ではおそらく酸無水物部分が開裂(加水分解)し、アルケニルコハク酸として銀と化学吸着していると予想されるものの、FT−IR等により吸着状態の有機物の同定を試みたが、アルケニルコハク酸であるかどうかを決定づける証拠は得られなかった。よって、銀との吸着形態がどのような形態であったとしても、ガスクロマト質量分析法によりアルケニル無水コハク酸が検出されることは確かであるため、本発明の銀粉はガスクロマト質量分析法によりアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉としている。
前記アルケニル無水コハク酸は、水素原子の一つがアルケニル基により置換されたコハク酸無水物であり、コハク酸無水物(無水コハク酸)とは構造が異なる。前記コハク酸無水物は、コハク酸の分子内脱水縮合物であり、水と接触すると加水分解してコハク酸に戻り、アンモニアと反応してコハク酸イミドとなる。一方、前記アルケニル無水コハク酸は、アルケニル基(−CnH2n−1)を有するコハク酸無水物であり、アルキル基(−CnH2n+1)置換コハク酸とも相違する。
前記コハク酸無水物と前記アルケニル無水コハク酸とでは、構造の違いから銀粉表面への付着量も異なるため、銀粉の保存安定性(経時による凝集や塊の発生)に差が生じる。さらに、前記コハク酸無水物が銀粉表面に付着した場合には親水性となるが、前記アルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸が銀粉表面に付着した場合には疎水性となる。
R1は、炭素数5〜13の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数7〜11の直鎖アルキル基がより好ましい。
R2は、水素原子、または炭素数1〜3の直鎖アルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
なお、アルケニル基の二重結合の位置は、前記一般式(1)に限られるものではなく、異なる位置であっても構わない。
前記アルケニル無水コハク酸の合成方法としては、例えば、オレフィンとマレイン酸無水物を加熱攪拌することにより合成することができる。
前記オレフィンとしては、例えば、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、またはこれらの内部異性化オレフィン、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。前記内部異性化オレフィンとは、α−オレフィン(二重結合の位置がオレフィンの1位と2位の炭素を結ぶ位置にあるオレフィン)ではなく、何らかの方法により二重結合がα−位より炭素鎖の内部に存在するオレフィンを意味する。
なお、前記アルケニル無水コハク酸としては、それらの構造異性体でもよく、または、脂肪鎖の分岐鎖異性体の混合物でもよい。
前記アルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸の分子中炭素数が12以下であると、銀粉表面への吸着と立体障害の観点から、保存安定性が悪化し凝集が進行してしまうため、溶剤に関係なくペーストの粘度が高くなり、導電性ペーストとして使用することが困難になることがあるためである。
前記アルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸の銀粉表面への付着量は、銀の質量に対して、2.0質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。
前記アルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸の付着量が、2.0質量%を超えると、アルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸を表面に有する銀粉を含む導電性ペーストからなる導電膜の体積抵抗率が悪化してしまうことがある。
そこで、前記アルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸を吸着させた銀粉中の全炭素含有量と、銀粉を生成する反応において銀粉内部へと取り込まれ、または表面に付着する、還元剤やpH調整剤由来の炭素原子の銀粉中含有量との差分を算出し、その差分を、添加したアルケニル無水コハク酸分子中の炭素含有比率で除することによって、前記アルケニル無水コハク酸の銀粉表面への吸着量を決めることができる。前記銀粉を生成する反応において銀粉内部へと取り込まれ、または表面に付着する、還元剤やpH調整剤由来の炭素原子の銀粉中含有量は、表面処理剤を添加しないことによって得られる銀粉中の炭素含有量を測定することによって得ることができる。
前記銀粉の表面に付着する成分としては、アルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸に限定されず、その他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸以外の脂肪酸や脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属化合物、キレート剤、高分子分散剤などが挙げられる。
前記銀粉の製造方法は、アルケニル無水コハク酸を用いて表面処理を行う工程を少なくとも含み、好ましくは、銀を含む水溶液に還元剤を添加して銀粒子を還元析出させた後に、アルケニル無水コハク酸を添加して表面処理を行うものであり、銀イオン分散液の調液工程と、銀の還元工程と、アルケニル無水コハク酸の表面処理工程と、銀粉の回収及び洗浄工程と、銀粉の乾燥工程とを含むことが好ましく、さらに必要に応じてその他の工程を含んでなる。また、前記アルケニル無水コハク酸に替えてアルケニルコハク酸を用いて表面処理を行う工程とすることもできる。
銀粒子を還元析出させたスラリーに、アルケニル無水コハク酸を添加して表面処理を行った場合の銀粉を用いた導電性ペーストと、脂肪酸を表面処理剤とした銀粉を得た後にアルケニル無水コハク酸を乾式混合して得られた銀粉を用いた導電性ペーストと、脂肪酸を表面処理剤とした銀粉を用いて導電性ペーストを製造する際に導電性ペースト中に別途アルケニル無水コハク酸を添加した場合とを比較すると、アルケニル無水コハク酸を使用しない場合を基準として、銀粒子を還元析出させたスラリーにアルケニル無水コハク酸を添加した場合が最も導電性ペーストの粘度が低く抵抗が下がり、アルケニル無水コハク酸を乾式混合した場合は粘度が中程度に下がり抵抗は下がり、導電性ペースト製造時に添加した場合は粘度が下がるが抵抗は逆に上がってしまう。すなわち、銀粉の製造において予め銀の表面にアルケニルコハク酸無水物および/またはアルケニルコハク酸を吸着させた銀粉とすることで初めて、導電性ペーストの低粘度化と低抵抗化の両方を得ることができる。
本実施形態のアルケニル無水コハク酸を添加した後に回収及び洗浄工程を行った銀粉においては、銀と吸着していない余分なアルケニル無水コハク酸またはアルケニルコハク酸があると、そのほとんどは洗浄水と共に除去される。回収及び洗浄工程を経ずに、乾式工程などによりアルケニル無水コハク酸を銀粉表面に付着させたままの場合や導電性ペースト中にアルケニル無水コハク酸を添加した場合には、銀に吸着できなかった過多なアルケニル無水コハク酸が導電性ペースト中に存在することになり、その場合には、粘度低減の効果が低くなると考えられる。
前記銀イオン分散液の調液工程は、銀イオン分散液を調液する工程である。
銀イオンを含有する水性反応系としては、硝酸銀、銀錯体または銀中間体を含有する水溶液またはスラリーを使用することができる。
前記銀錯体を含有する水溶液は、硝酸銀水溶液または酸化銀懸濁液にアンモニア水またはアンモニウム塩を添加することにより生成することができる。これらの中でも、銀粉が適当な粒径と球状の形状を有するようにするためには、硝酸銀水溶液にアンモニア水を添加して得られる銀アンミン錯体水溶液を使用するのが好ましい。
前記銀アンミン錯体中におけるアンモニアの配位数は2であるため、銀1モル当たりアンモニア2モル以上を添加する。また、アンモニアの添加量が多過ぎると錯体が安定化し過ぎて還元が進み難くなるので、アンモニアの添加量は銀1モル当たりアンモニア8モル以下が好ましい。なお、還元剤の添加量を多くするなどの調整を行えば、アンモニアの添加量が8モルを超えても適当な粒径の球状銀粉を得ることは可能である。また、銀イオンを含有する水性反応系にpH調整剤を添加してもよい。前記pH調整剤としては、特に制限はなく、一般的な酸や塩基が使用することができ、例えば、硝酸、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
前記銀の還元工程は、還元剤により銀を還元析出する工程である。
前記還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、亜硫酸塩、アルカノールアミン、過酸化水素水、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム、グリオキサール、酒石酸、次亜燐酸ナトリウム、水素化硼素ナトリウム、ヒドロキノン、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、ピロガロール、ぶどう糖、没食子酸、ホルマリン、無水亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アスコルビン酸、アルカノールアミン、水素化硼素ナトリウム、ヒドロキノン、ヒドラジンおよびホルマリンから選択される少なくとも1種が好ましく、ヒドラジン、ホルマリンが特に好ましい。
前記還元剤の添加方法については、銀粉の凝集を防ぐために、1当量/分間以上の速さで添加することが好ましい。この理由は明確ではないが、前記還元剤を短時間で投入することで、銀粉の還元析出が一挙に生じて、短時間で還元反応が終了し、発生した核同士の凝集が生じ難いため、分散性が向上すると考えられる。したがって、還元剤の添加時間が短いほど好ましく、例えば、還元剤を100当量/分間以上の速さで添加してもよく、また、還元の際には、より短時間で反応が終了するように反応液を攪拌することが好ましい。また、還元反応時の液温は5℃以上80℃以下が好ましく、15℃以上40℃以下がより好ましい。
前記アルケニル無水コハク酸の表面処理工程は、銀粉をアルケニル無水コハク酸で表面処理する工程である。アルケニル無水コハク酸を添加する工程とは、前記還元工程で得られたスラリーにアルケニル無水コハク酸を添加するだけでなく、前記アルケニル無水コハク酸の代わりに、アルケニル無水コハク酸を加水分解するなどして得られたアルケニルコハク酸や、アルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸を含む水溶液を用いる工程とすることもできる。アルケニル無水コハク酸とアルケニルコハク酸の両方を添加してもよいし、エマルジョンとして添加してもよいし、アルケニルコハク酸の金属塩として添加してもよい。銀を含む水溶液に還元剤を添加して銀粉を還元析出させた後、前記アルケニル無水コハク酸を添加することで銀粉表面にアルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸を付着することができる。表面処理する工程は上記に限らず、還元析出中に水溶液にアルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸が存在するように添加してもよいが、銀粉を還元析出させた後に添加することがより好ましい。いずれの方法によっても、得られた銀粉はガスクロマト質量分析法によりアルケニル無水コハク酸が検出される。
前記アルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸の添加量は、銀の質量に対して、0.05質量%以上2.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。なお、銀粉表面にアルケニル無水コハク酸を付着させる過程において、結果的にアルケニル無水コハク酸の誘導体としてアルケニルコハク酸イミドが部分的に生成する可能性もある。
前記銀粉の回収および洗浄工程は、得られた銀粉を回収し、洗浄する工程である。
得られた銀粉には、不純物が含有しているため洗浄することが好ましい。
前記洗浄に用いられる洗浄溶媒としては、純水が好適である。前記回収および洗浄の方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デカンテーションやフィルタープレスなどが挙げられる。前記洗浄の終点は、洗浄後の水の電気伝導度を用いて判断することができ、前記電気伝導度が0.5mS/m以下になるまで洗浄を実施するのが好適である。銀と吸着していない余分なアルケニル無水コハク酸またはアルケニルコハク酸がある場合、この工程において洗浄水と共に除去される。
前記銀粉の乾燥工程は、前記洗浄後の銀粉を乾燥する工程である。
洗浄後の銀粉は多くの水分を含有しているため、使用前に水分を除去することが好ましい。前記水分除去の方法としては、真空乾燥することが好適である。乾燥温度は100℃以下であることが好適である。あまり熱をかけてしまうと乾燥の時点で銀粉同士が焼結してしまうため好ましくない。
得られた銀粉は、必要に応じて、乾式解砕工程や分級工程等のその他の工程を行うことができる。前記乾式解砕工程の代わりに、銀粉を機械的に流動化させることができる装置に銀粉を投入して、銀粉同士を機械的に衝突させることによって、銀粉の表面の凹凸や角張った部分を滑らかにする表面平滑化処理を行ってもよい。また、解砕や平滑化処理の後に分級処理を行ってもよい。なお、乾燥、粉砕、および分級を行うことができる一体型の装置(例えば、株式会社ホソカワミクロン製のドライマイスタやミクロンドライヤなど)を用いて乾燥、粉砕、および分級を行ってもよい。
前記銀粉のBET比表面積は、Macsorb HM−model 1210(MOUNTECH社製)を用いて窒素吸着によるBET1点法で測定することができる。なお、前記BET比表面積の測定において、測定前の脱気条件は60℃、10分間である。
前記銀粉のBET比表面積は、0.1m2/g以上5.0m2/g以下が好ましく、0.3m2/g以上2.0m2/g以下がより好ましい。前記BET比表面積が、0.1m2/g未満であると、銀粉のサイズが大きくなり、微細配線の描画が困難になることがあり、5.0m2/gを超えると、導電性ペーストにした際に粘度が高くなりすぎるために導電性ペーストを希釈して使用する必要があり、導電性ペースト中の銀濃度が低くなってしまうため配線が断線してしまうことがある。
前記銀粉のレーザー回折式粒度分布測定法による体積基準の粒子径分布における累積50%粒子径(D50)は、0.05μm以上6.0μm以下が好ましく、0.1μm以上4.0μm以下がより好ましい。
累積90%粒子径(D90)および累積10%粒子径(D10)に対する前記D50の比[(D90−D10)/D50]は、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましい。
前記BET比表面積と同様に、銀粉の粒度分布が大きすぎると、微細配線の描画が困難になることがあり、小さすぎると、導電性ペースト中の銀濃度を上げることが困難となる。また、粒度分布のピーク幅が狭く、粒径のばらつきが少なく、揃った銀粉であることが好ましい。
前記銀粉の強熱減量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.02%以上1.00%以下が好ましい。
前記銀粉の強熱減量は、銀粉試料2gを秤量(w1)して磁性るつぼに入れ、800℃で恒量になるまで30分間強熱した後、冷却し、秤量(w2)することにより、次式から求めることができる。
強熱減量(%)=[(w1−w2)/w1]×100
前記導電性ペーストにおける前記銀粉の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。なお、前記導電性ペーストに含まれる導電性粉体(フィラーという)としては、前記銀粉のほかに、前記銀粉以外の銀粉や、銀被覆銅粉などの金属粉が別途含まれていてもよい。前記導電性ペーストにおけるフィラーの含有率は70質量%以上95質量%以下であることが好ましく、また、前記フィラーにおける前記銀粉(アルケニル無水コハク酸が検出される銀粉)の占める割合は半分以上であることが好ましい。
前記溶剤としては、グリコール構造を有する化合物を含む溶剤が用いられる。
前記グリコール構造を有する化合物とは、グリコール類と、グリコール類のエステルまたはエーテルの総称を指すものとする。例えば、グリコール類としてエチレングリコールが挙げられ、グリコール類のエステルやエーテルからなる溶剤(グリコールエステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤ともいう)として、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカルビトールアセテート(ECA)、エチルカルビトール(EC)、ジブチルカルビトールが代表的であり、その他にジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGE)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記溶剤として、特に、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカルビトールアセテート(ECA)、エチルカルビトール(EC)、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGE)から選択される少なくとも1種を用いることにより、導電性ペーストの低粘度化を実現することができる。
上記のグリコール構造を有する化合物は、導電性ペースト中の前記フィラーを除く成分のうち10質量%以上含まれることが好ましい。なお、導電性ペーストの低粘度化を損なわない範囲であれば、前記BCA、BC、ECA、ECおよびDPGE等のグリコール構造を有する化合物と、グリコール構造を有する化合物ではないその他の溶剤とを併用した混合溶剤としても構わない。混合溶剤とする場合には、上記グリコール構造を有する化合物が混合溶剤中に占める割合は30質量%以上とすることが好ましい。
前記その他の溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラデカン、テトラリン、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピネオールアセテート、エチルカルビトール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−エチルエーテルなどが挙げられる。
前記バインダーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族石油樹脂、アクリル酸エステル樹脂、キシレン樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリエーテル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリイソブチル樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、導電性ペーストの低粘度化の点から、セルロース誘導体、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤、ガラスフリット、分散剤、粘度調整剤などが挙げられる。
フィラーの含有量が多いほど、導電膜とした際の体積抵抗率が下がるが、粘度が上がり塗りにくくなるため、溶剤とのバランスが必要となる。本発明では導電性ペーストの粘度が低くなるために銀粉の量を上げて溶剤の量を下げることができ、粘度を下げるために銀濃度を下げる必要性が小さく、導電膜の体積抵抗率を下げることができる。
なお、前記バインダーおよび前記その他の成分の含有量は、前記溶剤との組み合わせに応じて適宜設定することができる。
本発明の導電性ペーストの製造方法は、ガスクロマト質量分析法によりアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉と、グリコール構造を有する化合物を含む溶剤、特に、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカルビトールアセテート(ECA)、エチルカルビトール(EC)およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGE)から選択される少なくとも1種の溶剤と、を混合する工程を含み、さらに必要に応じてその他の工程を含む。
前記アルケニル無水コハク酸の添加量は、銀の質量に対して、0.05質量%以上2.0質量%以下であることが好ましい。
前記導電性ペーストの粘度は、例えば、粘度計(ブルックフィールド社製、5HBDV−III ULTRA)を用い、コーンスピンドルCP−52、ペースト温度25℃で測定することができる。
前記導電膜の体積抵抗率は、例えば、デジタルマルチメーター(ADVANTEST社製、R6551)を用いて、導電膜の長手方向の2点間の抵抗値を測定し、体積抵抗率=抵抗値×(導電膜の厚み×導電膜の幅÷導電膜の長さ)を算出することにより、測定することができる。
本発明の導電性ペーストを用いて得られた導電膜は、例えば、太陽電池セルの集電電極、チップ型電子部品の外部電極、RFID、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、エレクトロルミネセンス等の電極または電気配線用途に好適に用いられる。
本発明の太陽電池セルは、本発明の導電性ペーストを用いて形成した電極を有する。
銀粉のBET比表面積は、Macsorb HM−model 1210(MOUNTECH社製)で、He:70%、N2:30%のキャリアガスを用い、銀粉3gをセルに入れて脱気を60℃で10分間行った後、BET1点法により測定を行った。
銀粉のタップ密度は、タップ密度測定装置(柴山科学株式会社製、カサ比重測定装置SS−DA−2)を使用し、銀粉15gを計量して、容器(20mL試験管)に入れ、落差20mmで1,000回タッピングし、タップ密度=試料重量(15g)/(タッピング後の試料体積)から算出した。
銀粉の粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、MICROTORAC MT3300EXII)を用いて、銀粉0.1gをイソプロピルアルコール40mLに加え、チップ径20mmの超音波ホモジナイザーにより2分間分散させて試料を準備し、全反射モードで粒径の測定を行った。測定により得た体積基準の累積分布により、累積10%粒径(D10)、累積50%粒径(D50)、および累積90%粒径(D90)の値を求めた。
銀粉の強熱減量は、銀粉試料2gを秤量(w1)して磁性るつぼに入れ、800℃で恒量になるまで30分間強熱した後、冷却し、秤量(w2)することにより、次式から求めた。
強熱減量(%)=[(w1−w2)/w1]×100
銀粉を、熱分解装置(フロンティア・ラボ株式会社製のマルチショット・パイロライザーEGA/Py3030D)を用いて300℃で加熱することで銀粉表面よりアルケニル無水コハク酸および/またはアルケニルコハク酸を脱離させ、GC−MS(ガスクロマト質量分析計、アジレントテクノロジー株式会社製の7890A/5975C)を用いて、銀粉表面におけるアルケニル無水コハク酸の定性分析を行った。上記手法の場合、添加したアルケニル無水コハク酸が、銀粉表面においてアルケニル無水コハク酸の状態で存在してもアルケニルコハク酸の状態で存在しても、アルケニルコハク酸は加熱されることにより、分子内脱水縮合が起こるため、どちらもアルケニル無水コハク酸として検出される。
−銀粉の作製−
銀を52g含有する硝酸銀水溶液3,600gを準備し、前記硝酸銀水溶液に濃度28質量%のアンモニア水溶液(純正化学株式会社製、試薬特級)を160g加え、20質量%の水酸化ナトリウム水溶液を4g加えた銀イオンを含有する水性反応系を調製し、液温を28℃とした。前記銀イオンを含有する水性反応系へ、還元剤として37質量%ホルマリン水溶液(日本化成株式会社製)240gを加え、十分に撹拌し、銀粒子を含むスラリーを得た。
次に、得られた銀粒子を含むスラリーに対して、表面処理剤としてテトラプロペニルコハク酸無水物(TPSA、東京化成工業株式会社製)0.1g(銀に対して0.19質量%)を加え、十分に撹拌した後、熟成させた。前記熟成されたスラリーを濾過、水洗し、乾燥し解砕して、製造例1の銀粉を得た。
得られた製造例1の銀粉の走査型電子顕微鏡(SEM、日本電子工業株式会社製、JSM−IT300LV)によるSEM写真(10,000倍)を図1に示した。得られた銀粉のBET比表面積、銀粉のタップ密度、銀粉の強熱減量、ならびに銀粉の粒度分布(D10、D50、およびD90)の測定結果を表1に示した。
銀粉のGC−MSによる分析の結果、前記テトラプロペニルコハク酸無水物が検出され、テトラプロペニルコハク酸無水物および/またはテトラプロペニルコハク酸が銀粉表面に付着していることがわかった。銀粉の熱分解装置(フロンティア・ラボ株式会社製のマルチショット・パイロライザーEGA/Py3030D)使用のGC−MS分析プロファイルを図3に示す。この図3は、質量荷電比(m/z)が266のもので抽出したプロファイルである。この測定結果をライブラリ参照して、テトラプロペニルコハク酸無水物であると同定した。
−銀粉の作製−
製造例1において、表面処理剤としてのテトラプロペニルコハク酸無水物0.1gを、ステアリン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)0.1gに変えた以外は、製造例1と同様にして、比較製造例1の銀粉を作製し、同様にして評価を行った。結果を表1に示した。得られた比較製造例1の銀粉のSEM写真(10,000倍)を図2に示した。
銀粉のGC−MSによる分析の結果、ステアリン酸が検出され、ステアリン酸が銀粉表面に付着していることがわかった。
<導電性ペーストの溶剤の選定>
−導電性ペーストNo.1の作製−
得られた製造例1の銀粉90質量部に対して、エチルセルロース100cps(和光純薬工業株式会社製)0.8質量部、およびブチルカルビトールアセテート(BCA、和光純薬工業株式会社製)9.2質量部を加え、プロペラレス自公転式攪拌脱泡装置(シンキー株式会社製、AR−250)を用い、混合した後、3本ロールミル(EXAKT社製、EXAKT80S)を用いて、ロールギャップを徐々に狭めながら通過させて、導電性ペーストNo.1を得た。
前記導電性ペーストNo.1において、表2に示すとおりに銀粉の種類および溶剤の種類を変更した以外は、導電性ペーストNo.1と同様にして、導電性ペーストNo.2〜14を作製した。
得られた各導電性ペーストの粘度は、粘度計(ブルックフィールド社製、5HBDV−III ULTRA)を用い、コーンスピンドルCP−52、ペースト温度25℃で測定した。1rpm(ずり速度2sec−1)で5分間の値を測定した。
*BC:ブチルカルビトール(和光純薬工業株式会社製、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール)
*ECA:エチルカルビトールアセテート(和光純薬工業株式会社製、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル)
*EC:エチルカルビトール(和光純薬工業株式会社製、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール
*DPGE:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(和光純薬工業株式会社製)
*TPO:テルピネオール(和光純薬工業株式会社製、ターピネオール)
*TEX:テキサノール(JNC株式会社製、CS12)
<導電性ペーストのバインダーの選定>
−導電性ペーストNo.15〜18の作製−
前記導電性ペーストNo.1およびNo.2において、バインダーの種類を表3に記載のエポキシ樹脂やポリエステル樹脂に変更し、その他ペースト組成を調整した以外は、導電性ペーストNo.1およびNo.2と同様にして、導電性ペーストNo.15〜18を作製した。
得られた各導電性ペーストについて、実験例1と同様にして、粘度を測定した。結果を表3および図5に示した。なお、1rpm(ずり速度2sec−1)で5分間と、5rpm(ずり速度10sec−1)で1分間との値を測定した。
*エポキシ樹脂:株式会社ADEKA製、EP4901E
*ポリエステル樹脂:東洋紡株式会社製、バイロン200
また、No.1とNo.2の導電性ペーストに対してバインダーをエチルセルロースからヒドロキシエチルセルロース(CELLOSIZE QP 09L THE DOW CHEMICAL COMPANY社製)に替え、溶剤をBCAからエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製)に替えた場合でも、効果は低いものの製造例1は比較製造例1に比べて粘度が低下する傾向が見られた。
−導電性ペーストの作製−
導電性粉体として前記製造例1の銀粉85.8質量%、溶剤として溶剤A(和光純薬工業株式会社製、BCA:ブチルカルビトールアセテート)1.95質量%と、溶剤B(JNC株式会社製、TEX:テキサノール、CS12)1.95質量%、ビヒクルとしてエチルセルロース10cps(和光純薬工業株式会社製)30質量%を、溶剤A(BCA)35質量%と、溶剤B(TEX)35質量%の混合溶剤に溶かしたものを3.9質量%、その他の成分として酸化ビスマス0.18質量%(DOWAハイテック株式会社製)、ガラス1.59質量%(ASF−1898B、旭硝子株式会社製)、二酸化テルル3.9質量%(和光純薬工業株式会社製)、ステアリン酸マグネシウム(和光純薬工業株式会社製)0.24質量%およびオレイン酸(和光純薬工業株式会社製)0.49質量%となるように秤量し、自公転式撹拌装置(株式会社シンキー製、ARE−250)により混合(予備混練)した後、3本ロール(EXAKT社製、M−80S)により混練することにより、実施例1の導電性ペーストを得た。
得られた導電性ペーストの粘度を、粘度計(ブルックフィールド社製、5HBDV−III ULTRA)にCP−52のコーンプレートを用いて測定し、1rpmの5分値の粘度が450±30Pa・sとなることを確認した。
−導電性ペーストの作製−
前記比較製造例1の銀粉を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の導電性ペーストを作製した。
得られた導電性ペーストの粘度を測定したところ、前記比較製造例1の銀粉を用いた比較例1の導電性ペーストは、実施例1よりも粘度が高かった。その粘度に合わせてBCAとTEXの質量比1:1の混合溶剤をペースト量に対して0.83質量%を追加で添加して、粘度計(ブルックフィールド社製、5HBDV−III ULTRA)にCP−52のコーンプレートを用いて1rpmの5分値の粘度が450±30Pa・sとなるように粘度調整をした。
上記の混合溶剤の追加により、比較例1の導電性ペースト中の銀濃度は、85.8質量%から85.1質量%に減少している。
次に、得られた導電性ペーストを用い、Si基板上にスクリーン印刷で、印刷パターン膜を形成した。スクリーン印刷条件は、下記のとおりであった。
・印刷装置:マイクロテック社製 MT−320T
・版:線幅500μm、引き回し37.5mm、250メッシュ、線径23μm
・印刷条件:スキージ圧180Pa、印刷速度80mm/s、クリアランス1.3mm
以下のようにして、導電膜の体積抵抗率を求めた。結果を表4に示した。
デジタルマルチメーター(ADVANTEST社製、R6551)を用いて、各導電膜の長さ(間隔)の位置の抵抗値を測定した。各導電膜のサイズ(平均厚み、幅、長さ)より、導電膜の体積を求め、この体積と測定した抵抗値から、体積抵抗率を求めた。
太陽電池用シリコン基板(80Ω/□)上に、スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320T)を用いて基板裏面に、アルミニウムペースト(東洋アルミニウム株式会社製、アルソーラー14−7021)を用いて154mm□のベタパターンを形成した。
熱風乾燥機を用いて200℃で10分間乾燥させた。
基板表面に、各導電性ペーストを用いて、40μm幅のフィンガー電極と、3本のバスバー電極を形成した。
熱風乾燥機を用いて200℃で10分間乾燥させた。
高速焼成IR炉(日本碍子株式会社製)を用いて、ピーク時の温度(焼成温度)を820℃としてin−out 21secにて高速加熱した。以上により、太陽電池を作製した。
作製した各太陽電池について、WACOM社製ソーラーシミュレーターを用いて太陽電池特性を評価した。結果を表4に示した。
−導電性ペーストNo.19〜22の作製−
次に、アルケニル無水コハク酸の添加タイミングによる違いを調べた結果について記載する。
アルケニル無水コハク酸は、バインダーとしてのエポキシ樹脂の硬化剤として使用される場合があるため、バインダーとしてエポキシ樹脂(株式会社ADEKA製、EP4901E)を用いた導電性ペーストにおいて、一般的なアミン系の硬化剤(BF3NH2Et)を使用した場合と、アルケニル無水コハク酸としてテトラプロペニル無水コハク酸(TPSA)を硬化剤として導電性ペーストに使用した場合とを比較し、本発明の効果について調査した。溶剤としてはブチルカルビトールアセテート(BCA、和光純薬工業株式会社製)を用いた。結果を表5に示した。
−製造例2の銀粉の作製−
比較製造例1で得られたステアリン酸を表面に有する銀粉120gと、テトラプロペニル無水コハク酸(TPSA、東京化成工業株式会社製)0.216gを、解砕機を用いて乾式混合し、ステアリン酸を表面に有する銀粉の表面に、さらにテトラプロペニル無水コハク酸を付着させて、製造例2の銀粉を得た。
導電性ペーストNo.21のように脂肪酸(ステアリン酸)が付着した銀粉にアルケニルコハク酸無水物をさらに付着させた場合は、粘度の低下と体積抵抗率の減少の効果は見られるものの製造例1に比べると少ないことがわかった。そして、導電性ペーストNo.22のように導電性ペーストに硬化剤としてアルケニルコハク酸無水物を添加した場合では、粘度を低下させる効果はあるものの製造例1の銀粉に比べると効果が弱く、体積抵抗率が大きく悪化することがわかった。上記より、製造例1の銀粉や製造例2の銀粉のように予めアルケニルコハク酸無水物が付着された銀粉でなければ、低粘度かつ低抵抗化の効果は得られず、さらに、製造例2の銀粉よりも製造例1の銀粉の方が低粘度かつ低抵抗化の効果が大きいことがわかった。
−導電性ペーストNo.23〜30の作製−
次に、炭素数が12以上の種々のアルケニル無水コハク酸についてバインダーをエチルセルロース100cps(和光純薬工業株式会社製)とし、溶剤をブチルカルビトールアセテート(BCA、和光純薬工業株式会社製)とした場合について、初期の粘度および導電性ペーストを24時間静置した後の粘度について調査した。結果を表6および図6に示した。
−製造例3〜6および比較製造例2の銀粉の作製−
製造例1において、表6に示すように、表面処理剤のアルケニル無水コハク酸の種類が異なる以外は、製造例1と同様にして、製造例3〜6および比較製造例2の銀粉を製造した。なお、比較製造例2は、炭素数が12であるオクテニル無水コハク酸を表面に有する銀粉である。
炭素数が12を超えるアルケニル無水コハク酸を表面処理剤に用いた銀粉を含む導電性ペーストNo.23〜27においては、比較製造例1の銀粉を用いた導電性ペーストNo.28に比べて初期の粘度だけでなく、24時間後の粘度の方がより下がる傾向を示すことがわかった。通常、導電性ペーストNo.28のように時間が経つと粘度は上がる傾向を示すことが多く、導電性ペーストNo.23〜27のように時間が経つと粘度が下がる特徴を示すものは、導電性ペーストの使用可能期間を長くできる面でも好ましい。
また、比較製造例1の銀粉を用いた導電性ペーストNo.28に対し、製造例1の銀粉を用いた導電性ペーストNo.23と製造例2の銀粉を用いた導電性ペーストNo.29とを比べると、テトラプロぺニル無水コハク酸を添加していない場合に対し、製造例2の銀粉でも粘度は下がるものの、製造例1の銀粉に比べると粘度の低下割合は小さく、また、24時間後の粘度が減少する傾向も異なることがわかった。
Claims (9)
- ガスクロマト質量分析法により炭素数が13以上のアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉と、
グリコール構造を有する化合物を含む溶剤と、を含有することを特徴とする導電性ペースト。 - ガスクロマト質量分析法により炭素数が13以上のアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉と、
溶剤として、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカルビトールアセテート(ECA)、エチルカルビトール(EC)およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGE)から選択される少なくとも1種と、を含有することを特徴とする導電性ペースト。 - 前記銀粉を含むフィラーの含有量が70質量%以上95質量%以下であり、前記溶剤の含有量が、20質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ペースト。
- バインダーをさらに含有し、前記バインダーが、セルロース誘導体、エポキシ樹脂、およびポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の導電性ペースト。
- ガスクロマト質量分析法により炭素数が13以上のアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉と、グリコール構造を有する化合物を含む溶剤と、を混合する工程を含むことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
- ガスクロマト質量分析法により炭素数が13以上のアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉と、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)、エチルカルビトールアセテート(ECA)、エチルカルビトール(EC)およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPGE)から選択される少なくとも1種の溶剤と、を混合する工程を含むことを特徴とする導電性ペーストの製造方法。
- ガスクロマト質量分析法により炭素数が13以上のアルケニル無水コハク酸が検出される銀粉の製造工程が、銀を含む水溶液に還元剤を添加して銀粒子を還元析出させたスラリーに、炭素数が13以上のアルケニル無水コハク酸を添加した後、銀粉を回収および洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項5または6に記載の導電性ペーストの製造方法。
- 前記アルケニル無水コハク酸の添加量が、銀の質量に対して、0.05質量%以上2.0質量%以下であることを特徴とする請求項7に記載の導電性ペーストの製造方法。
- 請求項1から4のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて形成した電極を有することを特徴とする太陽電池セル。
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