JP2022129705A - 乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具及び幅位置調整方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】乗客コンベアの踏段の幅位置調整作業に要する時間を短縮することができ、ひいては、作業コストを低減することができる乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具及び幅位置調整方法を提供する。【解決手段】幅位置調整治具6は、奥行方向に沿った複数の凸条31e,…が幅方向に所定の間隔を有して並列する上面を有する乗客コンベア1の踏段31に用いられる。幅位置調整治具6は、乗客コンベア1の所定の固定構成要素52bに取り付けられるベース60と、踏段31の移動に伴う踏段31の凸条31eの第1側部31e1との摺接により、踏段31を幅方向の第1方向に付勢する第1ガイド面63aと、踏段31の移動に伴う踏段31の凸条31eの第2側部31e2との摺接により、踏段31を幅方向の第2方向に付勢する第2ガイド面63bとを備える。【選択図】図10
Description
本発明は、乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具及び幅位置調整方法に関する。
エスカレータや動く歩道といった乗客コンベアの踏段は、ステップとも呼ばれ、循環駆動される踏段チェーンによって無端状に連結される。踏段チェーンは、長さ方向に定ピッチでシャフトを備える。1つのシャフトに対し、1つの踏段がスライド可能に取り付けられる。シャフトには、クランプが外嵌されている。クランプは、踏段のスライドを規制し、踏段を幅方向において固定するために用いられる。これらの構造は、たとえば特許文献1に記載されている。
ところで、乗客コンベアの新設時、踏段は、1つ1つ踏段チェーンに取り付けられる。このとき、踏段同士が接触せず、また、踏段と乗降口のコムとが接触しないよう、各踏段は、幅位置調整される。現状、幅位置調整作業は、基準となる所定の部品から踏段の所定の箇所までの位置計測を行い、計測値と設計値との差分に基づいて幅位置調整し、かつ、踏段同士の位置ずれがないか、踏段とコムとの位置ずれがないかを目視確認するということをすべての踏段に対して行うという作業内容になっている。
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、乗客コンベアの踏段の幅位置調整作業に要する時間を短縮することができ、ひいては、作業コストを低減することができる乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具及び幅位置調整方法を提供することを課題とする。
本発明に係る乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具は、
奥行方向に沿った複数の凸条が幅方向に所定の間隔を有して並列する上面を有する乗客コンベアの踏段に用いられる幅位置調整治具であって、
乗客コンベアの所定の固定構成要素に取り付けられるベースと、
踏段の移動に伴う踏段の凸条の第1側部との摺接により、踏段を幅方向の第1方向に付勢する第1ガイド面又は第1ガイド線と、
踏段の移動に伴う踏段の凸条の第2側部との摺接により、踏段を幅方向の第2方向に付勢する第2ガイド面又は第2ガイド線とを備える
乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具である。
奥行方向に沿った複数の凸条が幅方向に所定の間隔を有して並列する上面を有する乗客コンベアの踏段に用いられる幅位置調整治具であって、
乗客コンベアの所定の固定構成要素に取り付けられるベースと、
踏段の移動に伴う踏段の凸条の第1側部との摺接により、踏段を幅方向の第1方向に付勢する第1ガイド面又は第1ガイド線と、
踏段の移動に伴う踏段の凸条の第2側部との摺接により、踏段を幅方向の第2方向に付勢する第2ガイド面又は第2ガイド線とを備える
乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具である。
ここで、本発明に係る乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具の一態様として、
踏段の隣り合う凸条間に挿入されるガイド凸条であって、先端側の幅が小さく、後端側に向かうにつれて幅が大きくなり、踏段の凸条の第1側部及び第2側部に接触可能となる断面形状を有するガイド凸条を備え、
ガイド凸条の一方の側面が第1ガイド面であり、他方の側面が第2ガイド面である
との構成を採用することができる。
踏段の隣り合う凸条間に挿入されるガイド凸条であって、先端側の幅が小さく、後端側に向かうにつれて幅が大きくなり、踏段の凸条の第1側部及び第2側部に接触可能となる断面形状を有するガイド凸条を備え、
ガイド凸条の一方の側面が第1ガイド面であり、他方の側面が第2ガイド面である
との構成を採用することができる。
また、この場合、
ガイド凸条は、先端側の高さが小さく、後端側に向かうにつれて高さが大きくなる断面形状を有する
との構成を採用することができる。
ガイド凸条は、先端側の高さが小さく、後端側に向かうにつれて高さが大きくなる断面形状を有する
との構成を採用することができる。
また、本発明に係る乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具の他態様として、
踏段の隣り合う凸条間に挿入されるガイド爪であって、先端側の幅が狭く、後端側に向かうにつれて幅が大きくなるガイド爪を備え、
ガイド爪の一方の側縁が第1ガイド線であり、他方の側縁が第2ガイド線である
との構成を採用することができる。
踏段の隣り合う凸条間に挿入されるガイド爪であって、先端側の幅が狭く、後端側に向かうにつれて幅が大きくなるガイド爪を備え、
ガイド爪の一方の側縁が第1ガイド線であり、他方の側縁が第2ガイド線である
との構成を採用することができる。
また、本発明に係る乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具の別の態様として、
ベースは、フロアプレートの先端部のコムが取り付けられる箇所にコムを取り付けるためのネジ孔を利用して取り付けられる
との構成を採用することができる。
ベースは、フロアプレートの先端部のコムが取り付けられる箇所にコムを取り付けるためのネジ孔を利用して取り付けられる
との構成を採用することができる。
本発明に係る乗客コンベアの踏段の幅位置調整方法は、
奥行方向に沿った複数の凸条が幅方向に所定の間隔を有して並列する上面を有する乗客コンベアの踏段に用いられる幅位置調整方法であって、
踏段を幅方向に変位可能な非固定状態にする第1準備工程と、
上記いずれかの幅位置調整治具を乗客コンベアの所定の固定構成要素に取り付ける第2準備工程と、
踏段を幅位置調整治具に向かって移動させ、幅位置調整治具に摺接させる本工程と、
踏段を固定状態にする後工程とを備える
乗客コンベアの踏段の幅位置調整方法である。
奥行方向に沿った複数の凸条が幅方向に所定の間隔を有して並列する上面を有する乗客コンベアの踏段に用いられる幅位置調整方法であって、
踏段を幅方向に変位可能な非固定状態にする第1準備工程と、
上記いずれかの幅位置調整治具を乗客コンベアの所定の固定構成要素に取り付ける第2準備工程と、
踏段を幅位置調整治具に向かって移動させ、幅位置調整治具に摺接させる本工程と、
踏段を固定状態にする後工程とを備える
乗客コンベアの踏段の幅位置調整方法である。
本発明によれば、乗客コンベアの踏段の移動に伴い、踏段が自動的に幅位置調整される。このため、本発明によれば、踏段の幅位置調整作業に要する時間を短縮することができ、ひいては、作業コストを低減することができる。
まずは、本発明に係る乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具及び幅位置調整方法の説明に先立ち、これらの対象となり、乗客コンベアの一つであるエスカレータの一般的な構成について説明する。
図1に示すように、エスカレータ1は、トラス2と、搬送部3と、ハンドレール部4と、乗降口5とを備える。トラス2は、エスカレータ1の自重及び積載荷重を支える構造体である。搬送部3は、トラス2に支持され、踏面が通路に沿って移動することにより、乗客をその位置に立たせたまま歩かせることなく搬送する。ハンドレール部4も、トラス2に支持され、通路の左右に通路に沿って設けられる。乗降口5は、トラス2の両端部の上部に設けられる。
搬送部3は、無端搬送体30を備える。無端搬送体30は、複数の踏段(ステップ)31,…が無端状に連結されたもので、循環駆動される。搬送部3の駆動機構32は、駆動モータ33と、減速機34と、一対のスプロケット35,35と、踏段チェーン36とを備える。駆動モータ33及び減速機34は、トラス2の上端部側の水平部2aに設けられる。一方のスプロケット35も、上端部側の水平部2aに設けられ、減速機34及びチェーンやベルト等の伝達手段を介して駆動モータ33の駆動が伝達される。他方のスプロケット35は、トラス2の下端部側の水平部2aに設けられる。踏段チェーン36は、複数の踏段31,…を無端状に連結する手段であって、一対のスプロケット35,35に巻き掛けられる。無端搬送体30は、駆動モータ33の駆動に伴って踏段チェーン36が循環駆動されることにより、一方向又は反対方向に循環駆動される。なお、踏段チェーン36の2つの折返し端部のうち、従動側の折返し端部(図1においては、左側)の折返し手段は、スプロケット35ではなく、半円弧状のガイドレールであってもよい。
ハンドレール部4は、ハンドレール40と、欄干パネル41とを備える。ハンドレール40は、移動手摺とも呼ばれ、可撓性を有する無端状で、循環駆動される。欄干パネル41は、下辺部がトラス2に支持され、ハンドレール40を循環移動可能に支持する。ハンドレール部4の駆動機構42は、駆動ローラ43を備える。駆動ローラ43は、トラス2の傾斜部2bの上部又は上端部側の水平部2aに設けられ、チェーンやベルト等の伝達手段を介して駆動モータ33の駆動が伝達される。これにより、ハンドレール40は、無端搬送体30と連動して循環移動する。ハンドレール40及び欄干パネル41は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
図2に示すように、搬送部3の踏段チェーン36は、リンク36aと、連結ピン36bと、ローラ36cとを備える。リンク36aは、内側及び外側に平行に配置されるとともに、各端部に隣のリンク36aの端部が重ね合わせられた状態で連結ピン36bが挿通されることにより、折れ曲がり可能に連結される。ローラ36cは、リンク36a,36a間に配置され、連結ピン36bが挿通されることにより、回転可能に支持される。
踏段チェーン36は、踏段31の幅よりも広い間隔を有して左右に一対設けられる。所定本数おきに、連結ピン36bは、突出部36dを備える。左右の踏段チェーン36の対となる突出部36d,36dは、内側かつ同軸に突出し、円筒状のシャフト37の左右の軸孔に挿入される。これにより、シャフト37は、踏段チェーン36の長さ方向に定ピッチで設けられる。シャフト37は、踏段31を取り付けるためのものである。
踏段31は、踏板部31aと、ライザ部(縦板部)31bと、ヨーク部31cとを備える。踏板部31aは、水平面に沿った板状であり、上面が踏面となる。ライザ部31bは、踏板部31aの後端から垂下する板状であり、円弧面状に湾曲しつつ下方に延びる。ヨーク部31cは、踏板部31aの側縁とライザ部31bの側縁とを連結する補強材である。ヨーク部31cは、左右に一対設けられる。
踏段31は、切欠き孔31dを備える。切欠き孔31dは、ヨーク部31cのうち、踏板部31aの先端側の下部に設けられる。切欠き孔31dは、シャフト37の直径よりも若干大きな直径を有するとともに、一部がシャフト37の直径よりも大きくかつ切欠き孔31dの直径よりも小さく切り欠かれることにより、径方向からシャフト37を挿入可能な孔である。シャフト37には、スリーブ38が外嵌されている。スリーブ38は、切欠き孔31dに挿入され、踏段31がシャフト37から抜けないようにする。
シャフト37には、スリーブ38のほかにクランプ39が外嵌されている。クランプ39は、第1クランプ39Aと、第2クランプ39Bとを備える。第1クランプ39Aは、踏段31の左右のヨーク部31c,31cのいずれか一方の外側に配置される。すなわち、第1クランプ39Aは、右側又は左側のヨーク部31c及び踏段チェーン36間に配置される。第1クランプ39Aは、予め位置調整された状態でシャフト37に固定されている。これにより、踏段31は、ヨーク部31cの外面又はスリーブ38の外端面を第1クランプ39Aに当接させるだけで、幅方向において位置決めされる。第2クランプ39Bは、各ヨーク部31cの内側に配置され、ヨーク部31cの内面又はスリーブ38の内端面に当接する位置で固定される。これにより、踏段31は、幅方向において固定される。
図3に示すように、ハンドレール40の下辺部(復路部分)及び欄干パネル41の下辺部は、遮蔽部44により遮蔽される。遮蔽部44は、デッキカバー45と、スカートガード46と、外装板47と、インレットガード48とで構成される。デッキカバー45は、上面側に配置される。スカートガード46は、通路に接する側に配置される。外装板47は、スカートガード46と反対側に配置される。インレットガード48は、長手方向の両端部(ハンドレール40の下辺部が出入りする部分)を覆うように配置される。遮蔽部44は、通路の左右に通路に沿って一対設けられる。
乗降口5は、フロアプレート50を備える。フロアプレート50は、乗降口5の床を構成し、通路の端部(始端部及び終端部)を構成する。フロアプレート50の先端は、搬送部3と乗降口5との境界を画する。
フロアプレート50は、第1プレート51と、第2プレート52とを備える。第1プレート51は、フロアプレート50の大半を占める大きさを有する。第2プレート52は、コムプレートとも呼ばれ、後端が第1プレート51の先端に突き合わせられるように配置される。
第1プレート51は、トラス2の水平部2aに載置される。第1プレート51が取り外された状態では、第1プレート51の下方にある踏段チェーン36の折返し端部にアクセス可能となる。
第2プレート52は、左右に長い帯板状である。第2プレート52は、トラス2の水平部2aに取り付けられる。第2プレート52の左右の端部は、遮蔽部44の下に入り込んでいる。第2プレート52は、幅方向において位置調整可能に取り付けられる。
第2プレート52の上面は、後端から先端にかけての途中から緩やかな下り傾斜面となる。第2プレート52の先端部には、コム53が取り付けられる。コム53は、第2プレート52の先端部に沿った左右に長い帯状である。コム53は、幅方向において複数に分割され、それぞれが矩形状(長方形状)を有する。複数のコム53,…は、横並びに配置されることにより、第2プレート52の先端部に沿った左右に長い帯状となる。
図4及び図5に示すように、第2プレート52の先端部は、段差凹部52aを備え、コム53は、段差凹部52aに配置される。段差凹部52aは、緩やかに下り傾斜する傾斜面からなる底面を有する。コム53は、皿ネジ54により段差凹部52aに取り付けられ、皿ネジ54による締結を解除することにより、取り外すことができる。なお、皿ネジとは、頭部の上面が平らで、座面部分が円錐状になっている形状のネジである。コム53には、皿ネジ54の座面部分に対応して円錐状のネジ挿通孔53aが形成され、段差凹部52aには、ネジ孔52bが形成される。皿ネジ54であるため、ネジを締めると、ネジ孔52bに対してネジ挿通孔53aが同軸となり、コム53が設計上定められた位置に位置決めされる。なお、1つのコム53に対し、皿ネジ54は、左右に一対設けられ、コム53がネジ挿通孔53aの軸回りに回転しないようにされている。
コム53の先端部は、櫛歯部53bを備える。櫛歯部53bの各突片は、踏段31の踏板部31aの上面に形成される複数の凸条31e,…間に非接触状態で挿入される。これにより、第2プレート52及び踏段31間への物の挟み込みが防止される。
踏段31の凸条31eは、踏板部31aの後端から先端にかけて、踏段31の奥行方向に沿って設けられる。凸条31eは、踏段31の幅方向に所定の等間隔を有して並列し、踏板部31aの上面全面に設けられる。これにより、踏板部31aの上面は、凸条31eが凸部となり、凸条31e,31e間が凹部となる凹凸部31fを備える。なお、凸部の幅は3mm程度であり、凸部の高さは11mm程度であり、凹部の幅は6mm程度であり、凹部の深さは11mm程度である。
凸条31eは、踏板部31aの先端及び後端において、端部が突出したものが1つおきに設けられる。これにより、踏板部31aの先端及び後端は、凸条31eの端部位置が交互に変位して千鳥状となる凹凸端部31g,31hを備える。隣り合う踏段31,31は、乗降口5の近傍では、踏板部31a,31aの上面同士が面一となり、水平に連なるが、この状態において、一方の踏段31の先端側の凹凸端部31gと、他方の踏段31の後端側の凹凸端部31hとは、非接触状態で噛み合う。すなわち、一方の踏段31の先端側の凹凸端部31gの凸部が他方の踏段31の後端側の凹凸端部31hの凹部に非接触状態で挿入されるとともに、他方の踏段31の後端側の凹凸端部31hの凸部が一方の踏段31の先端側の凹凸端部31gの凹部に非接触状態で挿入される。これにより、隣り合う踏段31,31間の隙間が埋められ、この隙間への物の挟み込みが防止される。
次に、本発明に係るエスカレータ1の踏段31の幅位置調整治具及び幅位置調整方法の一実施形態について説明する。
<踏段31の幅位置調整治具>
図6及び図7に示すように、幅位置調整治具6は、ベース60と、第1ガイド面63aと、第2ガイド面63bとを備える。ベース60は、エスカレータ1の所定の固定構成要素に取り付けられる。第1ガイド面63aは、踏段31の移動に伴う踏段31の凸条31eの第1側部31e1との摺接により、踏段31を幅方向の第1方向(図6(a)及び図7においては、右方向)に付勢する作用面である。第2ガイド面63bは、踏段31の移動に伴う踏段31の凸条31eの第2側部31e2との摺接により、踏段31を幅方向の第2方向(第1方向と反対方向であり、図6(a)及び図7においては、左方向)に付勢する作用面である。
図6及び図7に示すように、幅位置調整治具6は、ベース60と、第1ガイド面63aと、第2ガイド面63bとを備える。ベース60は、エスカレータ1の所定の固定構成要素に取り付けられる。第1ガイド面63aは、踏段31の移動に伴う踏段31の凸条31eの第1側部31e1との摺接により、踏段31を幅方向の第1方向(図6(a)及び図7においては、右方向)に付勢する作用面である。第2ガイド面63bは、踏段31の移動に伴う踏段31の凸条31eの第2側部31e2との摺接により、踏段31を幅方向の第2方向(第1方向と反対方向であり、図6(a)及び図7においては、左方向)に付勢する作用面である。
ベース60は、フロアプレート50の先端部からフロアプレート50の先端を超えて踏段31の可動領域に延びるプレート状の部材である。ベース60は、第1部分61と、第2部分62とを備える。第1部分61は、エスカレータ1の固定構成要素に取り付けられる部分である。本実施形態においては、固定構成要素は、フロアプレート50の第2プレート52である。第1部分61は、第2プレート52の段差凹部52aに配置される。第1部分61は、皿ネジ54により段差凹部52aに取り付けられ、皿ネジ54による締結を解除することにより、取り外すことができる。第1部分61には、皿ネジ54の座面部分に対応して円錐状のネジ挿通孔61aが形成される。皿ネジ54であるため、ネジを締めると、段差凹部52aのネジ孔52bに対してネジ挿通孔61aが同軸となり、ベース60が設計上定められた位置に位置決めされる。なお、第1部分61は、後端面及び前側段差面等が段差凹部52aの段差面に面拘束されることにより、ネジ挿通孔61aの軸回りに回転せず、固定される。
第2部分62は、フロアプレート50の先端から踏段31の可動領域の上方に進出する部分である。第2部分62は、ガイド凸条63を備える。ガイド凸条63は、踏段31の上面の凹凸部31fの凹部、すなわち、凸条31e,31e間に挿入される部分である。本実施形態においては、ガイド凸条63は、横並びに3つ設けられる。ガイド凸条63は、先端側が高さ、幅ともに小さく、後端側(第1部分61側)に向かうにつれて、高さ、幅が次第に大きくなり、凸条31eの第1側部31e1及び第2側部31e2に接触可能となる断面形状を有する。凹凸部31fの凹部の断面形状が縦長の逆台形状であるのに対応して、ガイド凸条63の断面形状も、縦長の逆台形状である。ガイド凸条63の一方の側面が第1ガイド面63aであり、他方の側面が第2ガイド面63bである。第1ガイド面63aは、凸条31eの第1側部31e1と面接触し、第2ガイド面63bは、凸条31eの第2側部31e2と面接触する。高さ方向で見れば、第1ガイド面63a及び第2ガイド面63bは、先端側が凹凸部31fよりも上方に位置し、途中から後端にかけて凹凸部31fの凹部内に入り込む傾斜面である。
図8に示すように、幅位置調整治具6における、ネジ挿通孔61aの中心線と、ガイド凸条63の中心線(第1ガイド面63a及び第2ガイド面63bは、この中心線に対して線対称)との関係は、コム53における、ネジ挿通孔53aの中心線と、櫛歯部53bの櫛歯の中心線との関係と一致する。このため、幅位置調整治具6がコム53を取り付ける段差凹部52aのネジ孔52bを利用して取り付けられると、ガイド凸条63は、中心線がコム53の櫛歯部53bの櫛歯の中心線と一致するように配置される。
なお、図9に示すように、ベース60の第1部分61は、横長となり、2つのネジ挿通孔61a,61aを備え、幅位置調整治具6は、1つのコム53を取り付ける段差凹部52aの2つのネジ孔52b,52bを利用して取り付けられるようにしてもよい。
<踏段31の幅位置調整方法>
踏段31の幅位置調整が必要となる場面は、大きく2つある。1つは、エスカレータの新設時である。もう1つは、踏段31の取り外しを伴う点検後の復帰時である。新設時は、フロアプレート50の第1プレート51が取り外され(図3(b)参照)、踏段チェーン36の折返し端部にて踏段31が取り付けられる。そして、踏段チェーン36が間欠駆動されて、踏段31が次々に取り付けられていく。もちろんこの時点では、踏段31,…は、幅位置調整されていない。このため、各踏段31に対し、幅位置調整が必要となる。復帰時は、多数の踏段31,…が取り外れた場合、各踏段31が取り付けられていた元の位置を記憶しておき、そのまま元の位置に戻すことは困難である。第1クランプ39Aは、その踏段31に対して位置調整されているため、踏段31が変われば、位置調整が再度行わなければならない。このため、新設時と同様、各踏段31に対し、幅位置調整が必要となる。
踏段31の幅位置調整が必要となる場面は、大きく2つある。1つは、エスカレータの新設時である。もう1つは、踏段31の取り外しを伴う点検後の復帰時である。新設時は、フロアプレート50の第1プレート51が取り外され(図3(b)参照)、踏段チェーン36の折返し端部にて踏段31が取り付けられる。そして、踏段チェーン36が間欠駆動されて、踏段31が次々に取り付けられていく。もちろんこの時点では、踏段31,…は、幅位置調整されていない。このため、各踏段31に対し、幅位置調整が必要となる。復帰時は、多数の踏段31,…が取り外れた場合、各踏段31が取り付けられていた元の位置を記憶しておき、そのまま元の位置に戻すことは困難である。第1クランプ39Aは、その踏段31に対して位置調整されているため、踏段31が変われば、位置調整が再度行わなければならない。このため、新設時と同様、各踏段31に対し、幅位置調整が必要となる。
幅位置調整作業は、i)踏段31を幅方向に変位可能な非固定状態にする第1準備工程と、ii)幅位置調整治具6をフロアプレート50の先端部に取り付ける第2準備工程と、iii)踏段31を幅位置調整治具6に向かって移動させ、幅位置調整治具6に摺接させる本工程と、iv)踏段31を固定状態にする後工程とを備える。第1準備工程及び第2準備工程は、どちらが先でも、あるいは同時であってもよい。
第1準備工程では、新設時であれば、すでにその状態となっている。復帰時であれば、踏段31が踏段チェーン36の折返し端部に移動された後、隣の踏段31との間に形成された隙間を介して(図3(b)参照)、第1クランプ39A及び2つの第2クランプ39B,39Bの固定が解除される。なお、「踏段31を幅方向に変位可能な非固定状態にする」とは、第1クランプ39A及び2つの第2クランプ39B,39Bがある程度は固定されているが、踏段31が幅位置調整治具6の作用を受けても幅方向に変位不可能なまでには固定されていない仮固定ないし半固定を含む概念である。
第2準備工程では、一部のコム53が第2プレート52の段差凹部52aから取り外され、その代わりに、幅位置調整治具6が段差凹部52aに取り付けられる。上述したとおり、幅位置調整治具6が段差凹部52aのネジ孔52bを利用して取り付けられると、ガイド凸条63は、中心線がコム53の櫛歯部53bの櫛歯の中心線と一致するように配置される。したがって、幅位置調整治具6の取付時、幅位置調整治具6に対する心出しは一切不要である。使用する幅位置調整治具6の数は1つに限られない。使用する幅位置調整治具6の数は、2つないし3つであってもよい。2つの場合、幅位置調整治具6は、たとえば踏段31の左右箇所に対して配置される。3つの場合、幅位置調整治具6は、たとえば踏段31の中央箇所及び左右箇所に対して配置される。1つの場合、幅位置調整治具6は、たとえば踏段31の中央箇所に対して配置される。ただし、これらは例示である。幅位置調整治具6は、状況において、適宜の箇所に配置することができる。
本工程では、踏段31が踏段チェーン36の折返し端部から復路部分を通って反対側の折返し端部で折り返され、往路部分を通り、幅位置調整治具6の前まで移動された後、幅位置調整治具6に向かって低速で移動され、幅位置調整治具6に摺接される。あるいは、後述する図11の幅位置調整治具6が用いられるならば、踏段31が幅位置調整治具6に向かって低速で移動され、幅位置調整治具6に摺接される。後者の場合、踏段31の移動時間が短縮される。
もし踏段31が幅方向の第1方向に寄っているならば、図10に示すように、踏段31の凸条31eの第2側部31e2にガイド凸条63の第2ガイド面63bが摺接し、踏段31は、幅方向の第2方向に付勢され、幅位置調整される。他方、もし踏段31が幅方向の第2方向に寄っているならば、踏段31の凸条31eの第1側部31e1にガイド凸条63の第1ガイド面63aが摺接し、踏段31は、幅方向の第1方向に付勢され、幅位置調整される。これらの場合の幅位置調整とは、幅位置調整対象の踏段31(図10では、上側の踏段31)が、幅位置調整済みの先行踏段31(図10では、下側の踏段31)に対し、凸条31eが奥行方向に一直線に揃う(G=0)ことをいう。
後工程では、踏段31が踏段チェーン36の折返し端部に移動された後、隣の踏段31との間に形成された隙間を介して、第1クランプ39A及び2つの第2クランプ39B,39Bが固定され、踏段31が幅方向において固定される。さらに後工程では、幅位置調整治具6が第2プレート52の段差凹部52aから取り外され、取り外れていたコム53が段差凹部52aに取り付けられる。
以上のとおり、本実施形態によれば、踏段31の移動に伴い、踏段31が自動的に幅位置調整される。このため、本実施形態によれば、従来行っていた煩雑な幅位置調整作業が不要となり、作業時間を短縮することができ、ひいては、作業コストを低減することができる。しかも、本実施形態によれば、調整作業者の技量による位置精度のばらつきをなくすことができる。
また、本実施形態によれば、治具の取り付け、取り外しを簡単に行うことができ、また、心出しを不要とすることができる。これによっても、作業時間を短縮することができ、ひいては、作業コストを低減することができる。
また、本実施形態によれば、治具が小型でコンパクトである。このため、本実施形態によれば、作業者の作業負荷を軽減することができる。
また、本実施形態によれば、治具のガイド凸条63と踏段31の凸条31eとは、面接触する。このため、本実施形態によれば、踏段31の凸部31eに傷が付く等の不具合を防ぐことができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態においては、幅位置調整治具6は、踏段31の移動方向の第1方向(正転方向又は逆転方向のいずれか一方)に対し、1組の第1ガイド面63a及び第2ガイド面63bを備える。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図11に示すように、幅位置調整治具6は、踏段31の移動方向の第2方向(正転方向又は逆転方向のいずれか他方)に対しても、もう1組の第1ガイド面63a及び第2ガイド面63bを備えるようにしてもよい。一例として、ガイド凸条63は、中間よりも先端側に1組の第1ガイド面63a及び第2ガイド面63bを備え、中間よりも後端側にもう1組の第1ガイド面63a及び第2ガイド面63bを備える。
また、上記実施形態においては、幅位置調整治具6は、金属又は非金属の剛体で作製される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、幅位置調整治具は、少なくともガイド凸条の表層部が弾性を有するものであってもよい。一例として、幅位置調整治具は、樹脂や硬質ゴムで作製される。あるいは、幅位置調整治具は、金属又は非金属の剛体の本体部の表面に樹脂や硬質ゴムの層が積層ないしコーティングされたガイド凸条を備えるものであってもよい。そして、これらのいずれかに加え、又は、これらとは別に、図12に示すように、一部に弾性部64を備え、第2部分62及びガイド凸条63が上下方向(踏段31の凸条31eに対する接離方向)に可変となるようにすることもできる。これらの構成によれば、凸条31eの断面形状のばらつき(製造誤差)を吸収することができる。
また、上記実施形態においては、踏段31の幅位置調整に、第1ガイド面63a及び第2ガイド面63bが用いられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図13に示すように、ガイド凸条63の代わりに、ガイド爪65を備える幅位置調整治具6であってもよい。この場合、ガイド爪65の一方の側縁が第1ガイド線65aであり、他方の側縁が第2ガイド線65bである。第1ガイド線65aは、踏段31の移動に伴う踏段31の凸条31eの第1側部31e1との摺接により、踏段31を幅方向の第1方向(図13(a)においては、右方向)に付勢する作用線である。第2ガイド線65bは、踏段31の移動に伴う踏段31の凸条31eの第2側部31e2との摺接により、踏段31を幅方向の第2方向(第1方向と反対方向であり、図13(a)においては、左方向)に付勢する作用線である。
なお、図13に示す例によれば、幅位置調整治具6は、金属又は非金属の板材を用い(、必要に応じてガイド爪65をベース60の第1部分61に対して斜めに屈曲し)て作製することができる。板材の材質や厚みを調整することにより、ガイド爪65が可撓性を有して上下方向(踏段31の凸条31eに対する接離方向)に可変となるようにすることもできる。そして、これに加え、又は、これとは別に、幅位置調整治具は、少なくともガイド爪の表層部が弾性を有するものであってもよい。一例として、幅位置調整治具は、樹脂や硬質ゴムで作製される。あるいは、幅位置調整治具は、金属又は非金属の剛体の本体部の表面に樹脂や硬質ゴムの層が積層ないしコーティングされたガイド爪を備えるものであってもよい。これらの構成によれば、凸条31eの断面形状のばらつき(製造誤差)を吸収することができる。
また、上記実施形態においては、第1ガイド面63a及び第2ガイド面63bは、1つのガイド凸条63に設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。要するに、幅位置調整治具は、少なくとも1つの第1ガイド面又は第1ガイド線と、少なくとも1つの第2ガイド面又はガイド線とを備えていればよく、これらの配置位置、配置形態は、特に限定されるものではない。図14に示す例は、1つのガイド凸条63が第1ガイド面63aを備え(反対の側面は、踏段31の凸条31eに沿った平行な面)、別のガイド凸条63が第2ガイド面63bを備える。
また、上記実施形態においては、ガイド凸条63は3つ設けられる。また、図13に示す例では、ガイド爪65は3つ設けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ガイド凸条、ガイド線の数は、1つでもよいし、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
また、上記実施形態においては、ガイド凸条63は、ベース60と一体に形成される。また、図13に示す例では、ガイド爪65は、ベース60と一体に形成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。ガイド凸条、ガイド爪は、ベースと別体に形成され、ベースと相対変位不能に接続されるものであってもよい。
また、上記実施形態においては、幅位置調整治具6は、エスカレータ1の所定の固定構成要素として、コム53が取り外れるフロアプレート50の先端部に取り付けられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。要は、幅位置調整治具が踏段の凸条からの反作用を受けて動くことがなければ、幅位置調整治具の取付箇所及び取付方法は、特に限定されるものではない。
また、「矩形状」、「長方形状」、「円錐状」、「台形状」、「端部」、「側部」、「平行」、「面一」、「水平」、「等間隔」、「一致」といった形状、部位又は状態を特定する用語は、本発明において、そのもののほか、それに近いないし類するという意味の「略」の概念も含むものである。
また、上記実施形態においては、乗客コンベアは、エスカレータである。しかし、本発明は、動く歩道にも適用できることは言うまでもない。
1…エスカレータ、2…トラス、2a…水平部、2b…傾斜部、3…搬送部、30…無端搬送体、31…踏段(ステップ)、31a…踏板部、31b…ライザ部、31c…ヨーク部、31d…切欠き孔、31e…凸条、31e1…第1側部、31e2…第2側部、31f…凹凸部、31g…凹凸端部、31h…凹凸端部、32…駆動機構、33…駆動モータ、34…減速機、35…スプロケット、36…踏段チェーン、36a…リンク、36b…連結ピン、36c…ローラ、36d…突出部、37…シャフト、38…スリーブ、39…クランプ、39A…第1クランプ、39B…第2クランプ、4…ハンドレール部、40…ハンドレール、41…欄干パネル、42…駆動機構、43…駆動ローラ、44…遮蔽部、45…デッキカバー、46…スカートガード、47…外装板、48…インレットガード、5…乗降口、50…フロアプレート、51…第1プレート、52…第2プレート、52a…段差凹部、52b…ネジ孔、53…コム、53a…ネジ挿通孔、53b…櫛歯部、54…皿ネジ、6…幅位置調整治具、60…ベース、61…第1部分、61a…ネジ挿通孔、62…第2部分、63…ガイド凸条、63a…第1ガイド面、63b…第2ガイド面、64…弾性部、65…ガイド爪、65a…第1ガイド線、65b…第2ガイド線
Claims (6)
- 奥行方向に沿った複数の凸条が幅方向に所定の間隔を有して並列する上面を有する乗客コンベアの踏段に用いられる幅位置調整治具であって、
乗客コンベアの所定の固定構成要素に取り付けられるベースと、
踏段の移動に伴う踏段の凸条の第1側部との摺接により、踏段を幅方向の第1方向に付勢する第1ガイド面又は第1ガイド線と、
踏段の移動に伴う踏段の凸条の第2側部との摺接により、踏段を幅方向の第2方向に付勢する第2ガイド面又は第2ガイド線とを備える
乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具。 - 踏段の隣り合う凸条間に挿入されるガイド凸条であって、先端側の幅が小さく、後端側に向かうにつれて幅が大きくなり、踏段の凸条の第1側部及び第2側部に接触可能となる断面形状を有するガイド凸条を備え、
ガイド凸条の一方の側面が第1ガイド面であり、他方の側面が第2ガイド面である
請求項1に記載の乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具。 - ガイド凸条は、先端側の高さが小さく、後端側に向かうにつれて高さが大きくなる断面形状を有する
請求項2に記載の乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具。 - 踏段の隣り合う凸条間に挿入されるガイド爪であって、先端側の幅が狭く、後端側に向かうにつれて幅が大きくなるガイド爪を備え、
ガイド爪の一方の側縁が第1ガイド線であり、他方の側縁が第2ガイド線である
請求項1に記載の乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具。 - ベースは、フロアプレートの先端部のコムが取り付けられる箇所にコムを取り付けるためのネジ孔を利用して取り付けられる
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の乗客コンベアの踏段の幅位置調整治具。 - 奥行方向に沿った複数の凸条が幅方向に所定の間隔を有して並列する上面を有する乗客コンベアの踏段に用いられる幅位置調整方法であって、
踏段を幅方向に変位可能な非固定状態にする第1準備工程と、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の幅位置調整治具を乗客コンベアの所定の固定構成要素に取り付ける第2準備工程と、
踏段を幅位置調整治具に向かって移動させ、幅位置調整治具に摺接させる本工程と、
踏段を固定状態にする後工程とを備える
乗客コンベアの踏段の幅位置調整方法。
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