JP2022128142A - シート - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、ゴム製品への転写皮膜の貼り付け易さに優れ、しかも、転写皮膜の経時的な変色を効果的に抑制することができ、そのうえ、転写皮膜のクラックの発生を抑制または低減することができるシートを提供することを目的とする。【解決手段】シート8は、ポリ塩化ビニル系インキ層82と、緩衝層83と、感圧型粘着剤層84とを備え、これらがシート8の厚み方向にこの順に並んでいる。ポリ塩化ビニル系インキ層82を備えるため、転写皮膜の経時的な変色を効果的に抑制することができる。緩衝層83を備えるため、ゴム製品の変形に伴うクラックの発生を抑制または低減することができる。緩衝層83およびポリ塩化ビニル系インキ層82の両者を備えるため、転写皮膜が、過度に柔らかくなることを防止することが可能であり、その結果、ゴム製品への貼り付け易さを向上することができる。【選択図】 図1

Description

本発明はシートに関する。
インキ層と粘着剤層とを備えるシートに関して、特許文献1には、ゴム製品貼り付け後におけるインキ層の経時的な変色を低減するために、インキ層としてシリコーン系インキ層を採用するとともに、粘着剤層としてシリコーン系粘着剤層を採用することが記載されている。
特開2020-125391
特許文献1のシートは、インキ層が、アクリル系インキ層やウレタン系インキ層である場合に比べて変色を低減できるものの、変色を効果的に抑えることは難しい。つまり、変色の低減に改善の余地がある。
また、特許文献1で実施例として記載されたシートの転写皮膜(具体的には、シリコーン系粘着剤層およびシリコーン系インキ層を備える積層体)は過度に柔らかく、貼り付けの際の引っ張りによって伸びてしまうため、転写皮膜をゴム製品にきれいに貼り付けることは容易ではない。このため、転写皮膜をゴム製品にきれいに貼り付けるためには、たとえば、水スライド紙(すなわち、転写皮膜を水で剥がすことが可能な転写紙)を用いる、といった工夫が必要である。
いっぽう、特許文献1には、インキ層として塩ビ系インキ層、すなわちポリ塩化ビニル系インキ層を採用したシートが比較例として記載されているところ、このシートは変色を効果的に抑えることができる。
また、このシート(すなわち、特許文献1に比較例として記載されたポリ塩化ビニル系インキ層を採用したシート)の転写皮膜は、特許文献1で実施例として記載されたシートの転写皮膜に比べて伸びにくく、意図しない伸びが生じにくいため、ゴム製品への貼り付け易さに優れている。
しかしながら、このシート(すなわち、ポリ塩化ビニル系インキ層を採用したシート)では、タイヤ貼り付け後の走行でインキ層にクラックが生じる。つまり、ゴム製品の変形に起因するクラックが発生しやすい。
本発明は、ゴム製品への転写皮膜の貼り付け易さに優れ、しかも、転写皮膜の経時的な変色を効果的に抑制することができ、そのうえ、転写皮膜のクラックの発生を抑制または低減することができるシートを提供することを目的とする。
この課題を解決するために、本発明は、下記項1の構成を備える。
項1
ポリ塩化ビニル系インキ層と、
緩衝層と、
感圧型粘着剤層と、を備えるシートであって、
前記ポリ塩化ビニル系インキ層、前記緩衝層、前記感圧型粘着剤層が、前記シートの厚み方向にこの順に並んでいる、
シート。
項1によれば、シートがポリ塩化ビニル系インキ層を備えるため、転写皮膜(具体的には、ポリ塩化ビニル系インキ層、緩衝層、および感圧型粘着剤層を備える積層体)の経時的な変色を効果的に抑制することができる。これは、ポリ塩化ビニル系インキ層に老化防止剤が入り込みにくく、しかも、入り込んだ老化防止剤の移行が遅いためであると考えられる。これについて説明する。ポリ塩化ビニル系インキ層に含まれるポリ塩化ビニルは、-Clという極性の大きい結合を有するので分子(具体的には、ポリ塩化ビニルの分子)同士が強く引き合っている。しかもCl原子がそれほど大きくない。これらのため、分子間の隙間が小さくなっている。よって、ポリ塩化ビニル系インキ層に老化防止剤(具体的には、ゴム製品から染み出る老化防止剤)が入り込みにくく、しかも、入り込んだ老化防止剤の移行が遅いと考えられる。その結果として、転写皮膜の経時的な変色を効果的に抑制することができると考えられる。
しかも、シートが緩衝層を備えるため、ゴム製品の変形(たとえばゴム製品がタイヤである場合には、タイヤの回転に伴うタイヤの変形)に伴うポリ塩化ビニル系インキ層の変形の程度を和らげることができ、その結果、ゴム製品の変形に伴うクラックの発生を抑制または低減することができる。
そのうえ、緩衝層およびポリ塩化ビニル系インキ層の両者を備えるシートであるため、転写皮膜が、過度に柔らかくなることを防止することが可能であり、その結果、ゴム製品への貼り付け易さを向上することができる。
さらに、シートが感圧型粘着剤層を備えることによって、転写皮膜をゴム製品に、加熱なしで貼り付けることができる。つまり、転写皮膜を手軽に貼り付けることができる。
本発明は、下記項2以降の構成をさらに備えることが好ましい。
項2
転写基材をさらに備え、
前記転写基材、前記ポリ塩化ビニル系インキ層、前記緩衝層、前記感圧型粘着剤層が、前記シートの前記厚み方向にこの順に並んでおり、
前記転写基材が前記ポリ塩化ビニル系インキ層に接している、
項1に記載のシート。
仮に、転写基材とポリ塩化ビニル系インキ層との間に、何らかの層があったとすると、ポリ塩化ビニル系インキ層の外側表面から老化防止剤が迅速に離れる(たとえば昇華や揮発する)ことは難しい。なぜなら、ポリ塩化ビニル系インキ層の外側表面が、その「何らかの層」によって覆われているためである。
これに対して、項2によれば、転写基材、ポリ塩化ビニル系インキ層、緩衝層、感圧型粘着剤層が、この順に並んでおり、しかも、転写基材がポリ塩化ビニル系インキ層に接しているため、ポリ塩化ビニル系インキ層の外側表面が、転写皮膜の外側表面を構成することになり、その結果、転写皮膜の外側表面から老化防止剤が迅速に離れることができる(たとえば昇華や揮発することができる)。したがって、転写皮膜の経時的な変色をいっそう効果的に抑制することができる。
項3
前記緩衝層がインキ層を備える、項1または2に記載のシート。
項3によれば、緩衝層がインキ層を備えるため、このインキ層に、たとえば白押さえという役割を付与することができる。その場合(具体的には、このインキ層に白押さえの役割を付与する場合)、ゴム製品の色が、転写皮膜の色合いへ与える影響を抑えることができる。つまり、転写皮膜の発色を向上することができる。しかも、その場合には、ポリ塩化ビニル系インキ層が白押さえ層を有する場合に比べて、緩衝層の厚みを厚くすることが可能となるので、転写皮膜におけるクラックの発生をいっそう抑制することができる。
項4
前記緩衝層がクリア層をさらに備える、項3に記載のシート。
クリア層は着色剤(たとえば顔料)を含有しないため、項3で特定されたインキ層(すなわち、緩衝層を構成するインキ層)に比べていくつかの物性で利点があるところ、項4によれば、緩衝層がクリア層をさらに備えるため、そのような物性を向上することが可能となる。その結果、転写皮膜におけるクラックの発生をいっそう抑制することができる。
項5
前記緩衝層がポリウレタン系緩衝層であり、前記感圧型粘着剤層が天然ゴム系粘着剤で形成されている、項1~4のいずれかに記載のシート。
項5によれば、緩衝層がポリウレタン系緩衝層であるため、ゴム製品の変形に伴うポリ塩化ビニル系インキ層の変形の程度をいっそう和らげることができ、その結果、ゴム製品の変形に伴うクラックの発生をいっそう抑制することができる。
しかも、感圧型粘着剤層が天然ゴム系粘着剤で形成されているため、ゴム製品への粘着力に優れ、その結果、転写皮膜のはく離や膨れを、抑制することができる。
本実施形態におけるシートの概略断面図である。 本実施形態の変形例に係るシートの概略断面図である。 実施例2のクラック試験後の試験片を撮影した写真である。 比較例1のクラック試験後の試験片を撮影した写真である。 実施例3および4と、比較例2~4との転写皮膜をタイヤ貼り付けから45日後に撮影した写真である。ここでは、左から順に、実施例4、比較例4、比較例3、実施例3、比較例2の転写皮膜が並んでいる。 実施例3および4と、比較例2~4との転写皮膜をタイヤ貼り付けから70日後に撮影した写真である。ここでも、左から順に、実施例4、比較例4、比較例3、実施例3、比較例2の転写皮膜が並んでいる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態の説明では、「シート8の厚み方向にこの順に並んでいる」という表現が使用されるところ、もし、これが、「第一の層、第二の層、および第三の層が、シートの厚み方向にこの順に並んでいる」という表現であるならば、それは、第一の層および第二の層の間や、第二の層および第三の層の間に、他の層が存在することを許容する表現である。また、本実施形態の説明では、たとえば、「ポリ塩化ビニル系インキ層82は可塑剤を含むことが好ましい。」や、「ポリウレタン系緩衝層83は着色剤を含むことができる。」といった表現が使用されるところ、このような表現の意味を、例を挙げて説明する。これに関して、たとえば、仮に、「第一の層が特定化合物を含む」という表現があったならば、その表現は、第一の層が複層構成である場合、第一の層を構成する少なくとも一つの層が特定化合物を含むことを意味する。
本実施形態のシートは緩衝層を備えるところ、緩衝層として、たとえば、ポリウレタン系緩衝層、ゴム系緩衝層、アクリル系緩衝層、シリコーン系緩衝層などを挙げることができる。なかでもポリウレタン系緩衝層がより好ましい。
以下の説明では、緩衝層がポリウレタン系緩衝層であるとして説明を進める。なお、他の素材の緩衝層(たとえばゴム系緩衝層、アクリル系緩衝層、シリコーン系緩衝層)の説明は、ポリウレタン系緩衝層の説明と重複するため省略する。よって、ポリウレタン系緩衝層の説明を、他の素材の緩衝層の説明として扱うことができる。たとえば、「ポリウレタン系緩衝層83の厚みは、好ましくは1μm以上、・・・(略)・・・である。」や、「ポリウレタン系緩衝層83はゴム状弾性を有することが好ましい。」、「ポリウレタン系緩衝層83は着色剤を含むことができる。」、「ポリウレタン系緩衝層83は添加剤をさらに含むことができる。」、「ポリウレタン系緩衝層83は、ポリウレタン系インキ層831と、ポリウレタン系クリア層832とを備えることができる。」といった説明を、他の素材の緩衝層の説明として扱うことができる。もちろん、ポリウレタン系緩衝層を構成し得るポリウレタン系インキ層やポリウレタン系クリア層などの説明も、他の素材の緩衝層を構成し得る層(たとえばインキ層やクリア層(項3および項4参照))の説明として扱うことができる。たとえば、ポリウレタン系緩衝層を構成し得るポリウレタン系インキ層やポリウレタン系クリア層などの説明を、アクリル系緩衝層を構成し得るアクリル系インキ層やアクリルクリア層の説明として扱うことができる。
<1.シート>
図1に示すように、本実施形態のシート8は、転写基材81と、ポリ塩化ビニル系インキ層82と、ポリウレタン系緩衝層83と、感圧型粘着剤層84と、セパレータ85とを備える。シート8では、これらが、シート8の厚み方向にこの順に並んでいる。なお、「シート8の厚み方向」は、「シート8の垂線方向」と言い換えることができる。ちなみに、シート8は、転写基材81と、転写皮膜(すなわち、ポリ塩化ビニル系インキ層82、ポリウレタン系緩衝層83、および感圧型粘着剤層84を備える積層体)と、セパレータ85とを備える、と言うこともできる。
シート8は、ポリ塩化ビニル系インキ層82およびポリウレタン系緩衝層83の両者を備えるため、転写皮膜が、過度に柔らかくなることを防止することが可能であり、その結果、ゴム製品への貼り付け易さを向上することができる。
<1.1.転写基材>
転写基材81は、たとえば、ポリ塩化ビニル系インキ層82を保護する役割を担うことができる。すなわち、転写基材81は、剥離されるまでの間、ポリ塩化ビニル系インキ層82を保護することができる。
転写基材81の厚みは特に限定されないものの、たとえば10μm~300μmが好ましい。
転写基材81としては、はく離フィルム(はく離プラスチックフィルム)、はく離紙、転写紙などを挙げることができる。はく離フィルムや、はく離紙は、はく離剤で処理されていることができる。はく離剤としては、たとえば、シリコーン系はく離剤、フッ素系はく離剤、長鎖脂肪族系はく離剤などを挙げることができる。いっぽう、転写紙は、紙と、紙上に設けられた水溶性層とを備えることができる。水溶性層は、たとえば、水溶性の糊からなることができる。
<1.2.ポリ塩化ビニル系インキ層>
ポリ塩化ビニル系インキ層82は、たとえば、ゴム製品を装飾する役割、またはゴム製品のメーカー名、品名、ロット番号のような情報を表示する役割を担うことができる。
シート8がポリ塩化ビニル系インキ層82を備えるため、転写皮膜(具体的には、ポリ塩化ビニル系インキ層82、ポリウレタン系緩衝層83、および感圧型粘着剤層84を備える積層体)の経時的な変色を効果的に抑制することができる。これは、ポリ塩化ビニル系インキ層82に老化防止剤が入り込みにくく、しかも、入り込んだ老化防止剤の移行が遅いためであると考えられる。これについて説明する。ポリ塩化ビニル系インキ層82に含まれるポリ塩化ビニルは、-Clという極性の大きい結合を有するので分子(具体的には、ポリ塩化ビニルの分子)同士が強く引き合っている。しかもCl原子がそれほど大きくない。これらのため、分子間の隙間が小さくなっている。よって、ポリ塩化ビニル系インキ層82に老化防止剤(具体的には、ゴム製品から染み出る老化防止剤)が入り込みにくく、しかも、入り込んだ老化防止剤の移行が遅いと考えられる。その結果として、転写皮膜の経時的な変色を効果的に抑制することができると考えられる。
ポリ塩化ビニル系インキ層82は有色であることが好ましい。ポリ塩化ビニル系インキ層82が有色であると、たとえば絵柄を表現することができる。絵柄は、たとえば、模様や柄、絵、写真、図形のような図案状であってもよく、文字や符号、標章のような記号状であってもよく、これらのうちの二種以上の任意の組み合わせであってもよい。なお、ポリ塩化ビニル系インキ層82が、透明性を有していてもよく、透明性を有していなくてもよい。
ポリ塩化ビニル系インキ層82の厚みは特に限定されないものの、たとえば1μm~50μmが好ましい。なお、ポリ塩化ビニル系インキ層82は、単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。ポリ塩化ビニル系インキ層82は、上述の絵柄を表現するために、複雑な構造を有していてもよい。ちなみに、「ポリ塩化ビニル系インキ層82の厚み」とは、ポリ塩化ビニル系インキ層82の厚みが一定でない場合、もっとも薄い部分の厚みを意味する。
ポリ塩化ビニル系インキ層82はポリ塩化ビニルを含む。ポリ塩化ビニルは、塩化ビニルのホモポリマーであってもよく、塩化ビニル以外のモノマーが共重合されたコポリマーであってもよい。そのようなモノマーとして、たとえば、酢酸ビニル、塩化ビニリデンなどを挙げることができる。
ポリ塩化ビニル系インキ層82は可塑剤を含むことが好ましい。これによって、ポリ塩化ビニル系インキ層82を柔らかくすることができる。その結果、ゴム製品の変形に対するポリ塩化ビニル系インキ層82の追随性を高めることができる。したがって、転写皮膜におけるクラックの発生をいっそう抑制することができる。可塑剤として、たとえば、フタル酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、アジピン酸エステル可塑剤などを挙げることができる。
可塑剤の含有量は、ポリ塩化ビニル系インキ層82を形成するためのポリ塩化ビニル系インキを100質量部としたとき、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上である。
ポリ塩化ビニル系インキ層82は着色剤を含む。着色剤として、たとえば、顔料、染料を挙げることができる。
ポリ塩化ビニル系インキ層82は添加剤をさらに含むことができる。添加剤として、たとえば、消泡剤、レベリング剤などを挙げることができる。
ポリ塩化ビニル系インキ層82はポリ塩化ビニル系インキで形成することができる。ポリ塩化ビニル系インキは、ポリ塩化ビニル系インキ層82の含有可能成分(具体的には、上述した、ポリ塩化ビニルや着色剤など)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤として、たとえば、炭化水素系溶剤や水などを挙げることができる。
<1.3.ポリウレタン系緩衝層>
ポリウレタン系緩衝層83は、たとえば、ゴム製品の変形に伴うポリ塩化ビニル系インキ層82の変形の程度を和らげる役割を担うことができる。
シート8がポリウレタン系緩衝層83を備えるため、ゴム製品の変形(たとえばゴム製品がタイヤである場合には、タイヤの回転に伴うタイヤの変形)に伴うポリ塩化ビニル系インキ層82の変形の程度を和らげることができ、その結果、ゴム製品の変形に伴うクラックの発生を抑制または低減することができる。
ポリウレタン系緩衝層83の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。ポリウレタン系緩衝層83の厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。なお、ポリウレタン系緩衝層83は単層構成であることができる。後述するように、ポリウレタン系緩衝層83が複層構成であってもよい。
ポリウレタン系緩衝層83はゴム状弾性を有することが好ましい。すなわち、伸縮性を有することが好ましい。ポリウレタン系緩衝層83がゴム状弾性を有すると、ゴム製品の変形に伴うポリ塩化ビニル系インキ層82の変形の程度をいっそう和らげることができ、その結果、ゴム製品の変形に伴うクラックの発生をいっそう抑制することができる。
ポリウレタン系緩衝層83はポリウレタンを含む。ポリウレタンは、主鎖にウレタン結合を有するポリマーである。ポリウレタンとしてはゴム状弾性を示すものが好ましい。
ポリウレタン系緩衝層83は着色剤を含むことができる。着色剤として、たとえば、顔料、染料を挙げることができる。顔料として、たとえば酸化チタン粒子を挙げることができる。顔料として、隠ぺい性に優れるため酸化チタン粒子が好ましい。
ポリウレタン系緩衝層83は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤などを挙げることができる。
ポリウレタン系緩衝層83はポリウレタン系インキで形成することができる。ポリウレタン系インキは、ポリウレタン系緩衝層83の含有可能成分(具体的には、上述した、ポリウレタンなど)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤として、たとえば、炭化水素系溶剤や水などを挙げることができる。
図2に示すように、ポリウレタン系緩衝層83は、ポリウレタン系インキ層831と、ポリウレタン系クリア層832とを備えることができる。この場合、シート8では、転写基材81と、ポリ塩化ビニル系インキ層82と、ポリウレタン系インキ層831と、ポリウレタン系クリア層832と、感圧型粘着剤層84と、セパレータ85とが、シート8の厚み方向にこの順に並んでいることができる。
<1.3.1.ポリウレタン系インキ層>
ポリウレタン系インキ層831は、たとえば、ゴム製品の生地を隠ぺいする役割を担うことができ、たとえば白押さえという役割を担うことができる。この場合、ポリウレタン系インキ層831を、隠ぺい層または白押さえ層と呼ぶことができる。ポリウレタン系インキ層831は、ポリ塩化ビニル系インキ層82とポリウレタン系クリア層832との間に位置することができる。
ポリウレタン系緩衝層83がポリウレタン系インキ層831を備えるため、ポリウレタン系インキ層831に、たとえば白押さえという役割を付与することができる。その場合(具体的には、ポリウレタン系インキ層831に白押さえの役割を付与する場合)、ゴム製品の色が、転写皮膜の色合いへ与える影響を抑えることができる。つまり、転写皮膜の発色を向上することができる。しかも、その場合には、ポリ塩化ビニル系インキ層82が白押さえ層を有する場合に比べて、ポリウレタン系緩衝層83の厚みを厚くすることが可能となるので、転写皮膜におけるクラックの発生をいっそう抑制することができる。
ポリウレタン系インキ層831の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。ポリウレタン系インキ層831の厚みは、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。なお、ポリウレタン系インキ層831は単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。
ポリウレタン系インキ層831は隠ぺい性を有することが好ましい。ポリウレタン系インキ層831が隠ぺい性を有すると、ゴム製品の生地を隠ぺいすることができる。
ポリウレタン系インキ層831はゴム状弾性を有することが好ましい。すなわち、伸縮性を有することが好ましい。ポリウレタン系インキ層831がゴム状弾性を有すると、ゴム製品の変形に伴うポリ塩化ビニル系インキ層82の変形の程度をいっそう和らげることができ、その結果、ゴム製品の変形に伴うクラックの発生をいっそう抑制することができる。
ポリウレタン系インキ層831はポリウレタンを含む。ポリウレタンは、主鎖にウレタン結合を有するポリマーであることができる。ポリウレタンとしてはゴム状弾性を示すものが好ましい。
ポリウレタン系インキ層831は着色剤を含む。着色剤として、たとえば、顔料、染料を挙げることができる。顔料として、たとえば酸化チタン粒子を挙げることができる。顔料として、隠ぺい性に優れるため酸化チタン粒子が好ましい。
ポリウレタン系インキ層831は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤などを挙げることができる。
ポリウレタン系インキ層831はポリウレタン系インキで形成することができる。ポリウレタン系インキは、ポリウレタン系インキ層831の含有可能成分(具体的には、上述した、ポリウレタンや着色剤など)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤として、たとえば、炭化水素系溶剤や水などを挙げることができる。
<1.3.2.ポリウレタン系クリア層>
ポリウレタン系クリア層832は透明性を有する。ポリウレタン系クリア層832は、ポリウレタン系インキ層831と感圧型粘着剤層84との間に位置することができる。
ポリウレタン系クリア層832は着色剤(たとえば顔料)を含有しないため、ポリウレタン系インキ層831に比べていくつかの物性で利点があるところ、ポリウレタン系緩衝層83が、ポリウレタン系インキ層831だけでなくポリウレタン系クリア層832をさらに備えるため、そのような物性を向上することが可能となる。その結果、転写皮膜におけるクラックの発生をいっそう抑制することができる。
ポリウレタン系クリア層832の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。ポリウレタン系クリア層832の厚みは、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。なお、ポリウレタン系インキ層831は単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。
ポリウレタン系クリア層832はゴム状弾性を有することが好ましい。すなわち、伸縮性を有することが好ましい。ポリウレタン系クリア層832がゴム状弾性を有すると、ゴム製品の変形に伴うポリ塩化ビニル系インキ層82の変形の程度をいっそう和らげることができ、その結果、ゴム製品の変形に伴うクラックの発生をいっそう抑制することができる。
ポリウレタン系クリア層832はポリウレタンを含む。ポリウレタンは、主鎖にウレタン結合を有するポリマーであることができる。ポリウレタンとしてはゴム状弾性を示すものが好ましい。
ポリウレタン系クリア層832は添加剤をさらに含むことができる。添加剤としては、たとえば、消泡剤、レベリング剤などを挙げることができる。
ポリウレタン系クリア層832はポリウレタン系インキで形成することができる。ポリウレタン系インキは、ポリウレタン系クリア層832の含有可能成分(具体的には、上述した、ポリウレタンなど)に加えて、たとえば溶剤などを含むことができる。溶剤として、たとえば、炭化水素系溶剤や水などを挙げることができる。
<1.4.感圧型粘着剤層>
感圧型粘着剤層84は、少なくともポリ塩化ビニル系インキ層82およびポリウレタン系緩衝層83を、ゴム製品に接着する役割を担うことができる。
シート8が感圧型粘着剤層84を備えることによって、転写皮膜をゴム製品に、加熱なしで貼り付けることができる。つまり、転写皮膜を手軽に貼り付けることができる。
感圧型粘着剤層84の厚みは特に限定されないものの、たとえば1μm~50μmが好ましい。感圧型粘着剤層84は単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。
感圧型粘着剤層84は粘着剤で形成することができる。粘着剤は特に限定されないものの、たとえば、天然ゴム系粘着剤を挙げることができる。天然ゴム系粘着剤は、たとえば、天然ゴムラテックスに、必要に応じて添加剤などを添加することによって作製することができる。天然ゴムラテックスとしては、たとえば、濃縮天然ゴムラテックス、フィールドラテックス、解重合天然ゴムラテックスなどを挙げることができる。なかでも、粘着剤を容易に作製できるという理由で解重合天然ゴムラテックスが好ましい。天然ゴムラテックスの全固形分は特に限定されないものの、10質量%~60質量%が好ましい。添加剤としては、たとえば、消泡剤などを挙げることができる。
粘着剤として天然ゴム系粘着剤が好ましい。感圧型粘着剤層84が天然ゴム系粘着剤で形成されていると、ゴム製品への粘着力に優れ、その結果、転写皮膜のはく離や膨れを、抑制することができる。
<1.5.セパレータ>
セパレータ85は、感圧型粘着剤層84を保護する役割を担うことができる。すなわち、感圧型粘着剤層84に設けられたセパレータ85によって、セパレータ85を剥離するまで感圧型粘着剤層84を保護することができる。
セパレータ85の厚みは特に限定されないものの、たとえば10μm~300μmが好ましい。
セパレータ85としては、はく離フィルム(はく離プラスチックフィルム)、はく離紙などを挙げることができる。はく離フィルムや、はく離紙は、はく離剤で処理されていることができる。はく離剤としては、たとえば、シリコーン系はく離剤、フッ素系はく離剤、長鎖脂肪族系はく離剤などを挙げることができる。
<1.6.各層の配置や厚み比較など>
シート8では、転写基材81、ポリ塩化ビニル系インキ層82、ポリウレタン系緩衝層83、感圧型粘着剤層84、セパレータ85が、シート8の厚み方向にこの順に並んでいる。シート8の少なくとも一部で、これらがこの順に並んでいればよいものの、シート8を垂線方向で見たとき、少なくともポリ塩化ビニル系インキ層82が占める領域の面積の90%以上において、この順に並んでいることが好ましい。その面積の95%以上において、この順に並んでいることがより好ましく、その面積の98%以上において、この順に並んでいることがさらに好ましく、その面積の100%において、この順に並んでいることがさらに好ましい。
転写基材81はポリ塩化ビニル系インキ層82に接していることが好ましい。すなわち、転写基材81がポリ塩化ビニル系インキ層82に接している、という構成が好ましい。なぜなら、転写基材81がポリ塩化ビニル系インキ層82に接していると、転写皮膜の経時的な変色をいっそう効果的に抑制できるためである。これについて説明する。仮に、転写基材81とポリ塩化ビニル系インキ層82との間に、何らかの層があったとすると、ポリ塩化ビニル系インキ層82の外側表面から老化防止剤が迅速に離れる(たとえば昇華や揮発する)ことは難しい。なぜなら、ポリ塩化ビニル系インキ層82の外側表面が、その「何らかの層」によって覆われているためである。これに対して、上述の構成(具体的には、転写基材81がポリ塩化ビニル系インキ層82に接している、という構成)によれば、ポリ塩化ビニル系インキ層82の外側表面が、転写皮膜の外側表面を構成することになり、その結果、転写皮膜の外側表面から老化防止剤が迅速に離れることができる(たとえば昇華や揮発することができる)。したがって、転写皮膜の経時的な変色をいっそう効果的に抑制することができる。
ポリウレタン系緩衝層83の厚みは、ポリ塩化ビニル系インキ層82の厚みよりも大きいことが好ましい。これによって、ゴム製品の変形に伴うポリ塩化ビニル系インキ層82の変形の程度をいっそう和らげることができ、その結果、ゴム製品の変形に伴うクラックの発生をいっそう抑制することができる。なお、ポリウレタン系緩衝層83の厚みは、ポリ塩化ビニル系インキ層82の厚みと同じであってもよく、それより小さくてもよい。
ポリウレタン系緩衝層83の厚みは、感圧型粘着剤層84の厚みと同じであってもよく、それより大きくてもよく、小さくてもよい。なかでも、ポリウレタン系緩衝層83の厚みは、感圧型粘着剤層84の厚みよりも大きいことが好ましい。
ポリウレタン系クリア層832の厚みは、ポリウレタン系インキ層831の厚みよりも大きいことが好ましい。すなわち、ポリウレタン系クリア層832の厚みが、ポリウレタン系インキ層831の厚みよりも大きい、という構成が好ましい。ポリウレタン系クリア層832が着色剤(たとえば顔料)を含有しないため、ポリウレタン系インキ層831に比べていくつかの物性で利点があるところ、この構成(すなわち、ポリウレタン系クリア層832の厚みが、ポリウレタン系インキ層831の厚みよりも大きい、という構成)によれば、そのような物性をいっそう向上することが可能となる。その結果、転写皮膜におけるクラックの発生をいっそう抑制することができる。なお、ポリウレタン系クリア層832の厚みは、ポリウレタン系インキ層831の厚みと同じであってもよく、それより小さくてもよい。
<1.7.物性(特に転写皮膜の物性)>
転写皮膜、すなわち、感圧型粘着剤層84、ポリウレタン系緩衝層83およびポリ塩化ビニル系インキ層82を備える積層体の物性について説明する。
転写皮膜の破断伸度は、100%以上が好ましく、110%以上がより好ましい。100%以上であると、ゴム製品の変形がある程度大きい場合でも、転写皮膜の破断を抑制または低減することができる。その結果、転写皮膜におけるクラックの発生をいっそう抑制することができる。破断伸度の上限として、たとえば200%や180%、160%、150%などを挙げることができる。破断伸度は、転写皮膜を200mm/分で引っ張ることによって測定される値である。破断伸度は、次の式で算出される。
破断伸度=(破断時点のつかみ具間距離/初期のつかみ具間距離)×100
転写皮膜の破断強度は、たとえば300g重~600g重が好ましい。破断強度は、応力単位で、たとえば0.0074MPa~0.015MPaが好ましい。破断強度とは、転写皮膜を200mm/分で引っ張った際に、転写皮膜が破断する時点での引張力(すなわち引張方向の荷重)を意味する。なお、上述の応力値、つまり引張破壊応力は、転写皮膜(厳密には、転写皮膜から切り出された試験片)の断面積から感圧型粘着剤層84の断面積を除いたもので引張力を割る(すなわち除する)ことによって求められる値である。
転写皮膜の降伏点強度は、500g重以下が好ましく、400g重以下がより好ましい。500g重以下であると、ゴム製品の変形に伴って転写皮膜がより容易に変形できるため、ゴム製品の変形に伴うクラックの発生をいっそう抑制することができる。転写皮膜の降伏点強度の下限として、たとえば100g重や200g重、250g重などを挙げることができる。降伏点強度とは、転写皮膜を200mm/分で引っ張った際に、転写皮膜が降伏する時点での引張力(すなわち引張方向の荷重)である。
降伏点強度は、応力単位で、たとえば0.012MPa以下が好ましく、0.0098MPa以下がより好ましい。降伏点強度の下限として、たとえば0.0025MPaや0.0049MPa、0.0061MPaなどを挙げることができる。なお、この応力値、つまり引張降伏応力は、転写皮膜(厳密には、転写皮膜から切り出された試験片)の断面積から感圧型粘着剤層84の断面積を除いたもので引張力を割る(すなわち除する)ことによって求められる値である。
<2.シートの作製方法>
シート8は、たとえば、転写基材81の上に、ポリ塩化ビニル系インキを印刷し、乾燥することによってポリ塩化ビニル系インキ層82を形成し、ポリ塩化ビニル系インキ層82の上に、ポリウレタン系インキを印刷し、乾燥することによってポリウレタン系緩衝層83を形成し、ポリウレタン系緩衝層83の上に、粘着剤を印刷し、乾燥することによって感圧型粘着剤層84を形成し、感圧型粘着剤層84の上にセパレータ85を貼り合わせる、という手順で作成することができる。各層の印刷方法は特に限定されず、たとえば、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷などを挙げることができる。なかでも、スクリーン印刷が好ましい。
<3.シートの用途>
シート8は、たとえば、ゴム製品を装飾するために使用することができる。シート8は、たとえば、ゴム製品のメーカー名、品名、ロット番号のような情報を表示するために使用してもよい。
ゴム製品として、たとえば、タイヤ、ゴム管(たとえばゴムホース、ゴムチューブなど)、ゴム靴、ゴムボート、ゴムベルトおよびアシストスーツのゴム部などを挙げることができる。タイヤは、たとえば、自動車用タイヤであってもよく、モーターバイク用タイヤであってもよく、自転車用タイヤであってもよく、荷車用タイヤであってもよい。
<4.転写方法>
シート8で転写皮膜をゴム製品(たとえば、タイヤのサイドウォール部)に貼り付ける手順、つまり転写の手順としては、たとえば、セパレータ85を剥がし、転写基材81、ポリ塩化ビニル系インキ層82、ポリウレタン系緩衝層83、および感圧型粘着剤層84からなる積層体をゴム製品に貼り付け、転写基材81を剥がす、という手順を挙げることができる。この手順を採用することによって、貼り付け時に、転写基材81でポリ塩化ビニル系インキ層82を保護することが可能であるため、ポリ塩化ビニル系インキ層82が傷つくことを防止できる。
<4.本実施形態には種々の変更を加えることができる>
上述の本実施形態には、種々の変更を加えることができる。たとえば、以下の変形例から、一つまたは複数を選択して、上述の本実施形態に変更を加えることができる。
上述の本実施形態では、シート8がポリウレタン系緩衝層83を有する、という構成を説明した。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。具体的には、シート8はポリウレタン系緩衝層に代えて、他の素材の緩衝層(たとえばゴム系緩衝層、アクリル系緩衝層、シリコーン系緩衝層)を有していてもよい。
上述の本実施形態では、シート8では、転写基材81、ポリ塩化ビニル系インキ層82、ポリウレタン系緩衝層83、感圧型粘着剤層84、セパレータ85が、シート8の厚み方向にこの順に並んでいる、という構成を説明した(図1および2参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、シート8は、転写基材81を有していなくてもよく、セパレータ85を有していなくてもよく、両者を有していなくてもよい。
上述の本実施形態では、転写基材81がポリ塩化ビニル系インキ層82に接している、という構成を説明した(図1および2参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。
上述の本実施形態では、シート8では、転写基材81、ポリ塩化ビニル系インキ層82、ポリウレタン系インキ層831、ポリウレタン系クリア層832、感圧型粘着剤層84、セパレータ85が、シート8の厚み方向にこの順に並んでいる、という構成を説明した(図2参照)。しかしながら、本実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、ポリウレタン系インキ層831の位置が、ポリウレタン系クリア層832の位置と入れ替えられてもよい。また、シート8が、ポリウレタン系緩衝層83としてポリウレタン系インキ層831だけを有していてもよく、ポリウレタン系クリア層832だけを有していてもよい。
上述の実施形態では、シート8をゴム製品に使用する、という構成を説明した。しかしながら、実施形態1は、この構成に限定されない。つまり、シート8の被着体はゴム製品に限定されない。すなわち、シート8は、ゴム製品以外の物に使用してもよい。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を意味する。
<実施例1>
(1)ポリ塩化ビニル系インキの作製
ポリ塩化ビニル系の白インキ(セイコーアドバンス株式会社製のSG700)100質量部に可塑剤(セイコーアドバンス株式会社製のCareP添加剤)100質量部を加え、攪拌し、ポリ塩化ビニル系インキを得た。
(2)ポリウレタン系インキの作製
ウレタン塗料(株式会社フェクト製のWPDクリアーソフト)100質量部に酸化チタン10質量部を加え、攪拌し、ポリウレタン系インキを得た。
(3)粘着剤
天然ゴム系粘着剤(株式会社レヂテックス社製のDPL-51改 解重合天然ゴムラテックス 全固形分52質量%前後、水47質量%前後、アンモニア0.3質量%弱)100質量部に対して、消泡剤(株式会社ミノグループ製の9014消泡剤)1質量部を配合して、粘着剤を得た。
(4)転写シートの作製手順
転写フィルム(ニッパ株式会社製のPET75X)の上に、上述のポリ塩化ビニル系インキをスクリーン印刷し、70℃で15分間、乾燥することによって、厚み5μmのポリ塩化ビニル系インキ層を形成した。ポリ塩化ビニル系インキ層の上に、上述のポリウレタン系インキをスクリーン印刷し、70℃で30分間、乾燥することによって厚み10μmのポリウレタン系インキ層を形成した。ポリウレタン系インキ層の上に、ウレタン塗料(株式会社フェクト製のWPDクリアーソフト)をスクリーン印刷し、70℃で30分間、乾燥することによって厚み10μmのポリウレタン系クリア層を形成した。ポリウレタン系クリア層の上に、上述の粘着剤をスクリーン印刷し、75℃で60分間、乾燥することによって厚み10μmの感圧型粘着剤層を形成した。感圧型粘着剤層の上にセパレータ(リンテック株式会社製の11HL)を貼り合わせた。このような手順で、図2に示す構造の転写シートを作製した。
<評価 タイヤ適用試験>
転写シートからセパレータを剥がし、転写皮膜を自動車のタイヤのサイドウォール部に貼り付け、転写皮膜から転写フィルムを剥がした。これによって、転写皮膜をタイヤに定着させた。次いで、その自動車で60日間、屋外で駐車および走行し、転写皮膜の状態(特に変色およびクラックの有無)を目視で観察した。
その結果、実施例1の転写皮膜では、変色がほとんど生じず、クラックも生じなかった。
<実施例2>
転写シートの作製手順
転写フィルム(ニッパ株式会社製のPET75X)の上に、ポリ塩化ビニル系インキ(実施例1で作製したもの)をスクリーン印刷し、70℃で15分間、乾燥することによって、厚み5μmのポリ塩化ビニル系インキ層を形成した。ポリ塩化ビニル系インキ層の上に、ポリウレタン系インキ(実施例1で作製したもの)をスクリーン印刷し、70℃で30分間、乾燥することによって厚み10μmのポリウレタン系インキ層を形成した。ポリウレタン系インキ層の上に、粘着剤(実施例1で作製したもの)をスクリーン印刷し、75℃で60分間、乾燥することによって厚み10μmの感圧型粘着剤層を形成した。感圧型粘着剤層の上にセパレータ(リンテック株式会社製の11HL)を貼り合わせた。このような手順で、図1に示す構造の転写シートを作製した。
<比較例1>
転写シートの作製手順
ポリウレタン系インキ層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の手順で転写シートを作製した。具体的には、転写フィルム(ニッパ株式会社製のPET75X)の上に、ポリ塩化ビニル系インキ(実施例1で作製されたもの)をスクリーン印刷し、70℃で15分間、乾燥することによって、厚み5μmのポリ塩化ビニル系インキ層を形成した。ポリ塩化ビニル系インキ層の上に、粘着剤(実施例1で作製されたもの)をスクリーン印刷し、75℃で60分間、乾燥することによって厚み10μmの感圧型粘着剤層を形成した。感圧型粘着剤層の上にセパレータ(リンテック株式会社製の11HL)を貼り合わせた。
<評価 クラック試験および引張試験>
(1)クラック試験
転写シートからセパレータを剥がし、転写皮膜を厚み3mmの天然ゴムシートに貼り付け、転写皮膜から転写フィルムを剥がし、これによって、クラック試験用の試験片を得た。すなわち、天然ゴムシートに転写皮膜が貼り付けられた試験片を得た。この試験片を24時間、室温で放置した後、この試験片を、手で90°撓ませることを100回繰り返した。その結果、クラックが発生したかどうかを目視で観察した。
その結果、実施例2の試験片では、転写皮膜にクラックが生じなかった(図3参照)。いっぽう、比較例1の試験片では、転写皮膜にクラックが生じた(図4参照)。
(2)引張試験
転写シートから、セパレータと転写フィルムとを剥がした転写皮膜(具体的には、実施例1では、ポリ塩化ビニル系インキ層、ポリウレタン系インキ、および感圧型粘着剤層からなる積層体。比較例1では、ポリ塩化ビニル系インキ層、および感圧型粘着剤層からなる積層体。)を10mm×40mmの長方形板状にカットして、引張試験用の試験片を得た。この試験片を、室温(具体的には22℃)下、引張試験機(東洋精機株式会社製のストログラフM50)を用いて、つかみ具間距離30mm、長辺方向にヘッドスピード200mm/分で引っ張り、破断伸度、破断強度、および降伏点強度を求めた。
その結果は、次のとおりであった。
実施例2の試験片
破断伸度 123%
破断強度 500g重 (0.012MPa)
降伏点強度 298g重 (0.0073MPa)
なお、破断伸度は、次の式で算出した。
破断伸度=(破断時点のつかみ具間距離/初期のつかみ具間距離)×100
ちなみに、比較例1の試験片は、引張試験機にセットする際に切れたため、これらの物性を測定することができなかった。
<実施例3>
実施例2では、ポリ塩化ビニル系インキとして、上述のもの(具体的には、セイコーアドバンス株式会社製のSG700に可塑剤を加えたインキ)を使用したところ、実施例3では、これに代えて、セイコーアドバンス株式会社製のSG700そのものを使用したこと以外は、実施例2と同様の手順で図1に示す構造の転写シートを作製した。
<実施例4>
実施例2では、ポリ塩化ビニル系インキとして、上述のもの(具体的には、セイコーアドバンス株式会社製のSG700に可塑剤を加えたインキ)を使用したところ、実施例4では、これに代えて、帝国インキ製造株式会社製のVKインキを使用したこと以外は、実施例2と同様の手順で図1に示す構造の転写シートを作製した。
<比較例2>
ポリ塩化ビニル系インキに代えてポリウレタン系インキ(セイコーアドバンス株式会社製のSG410)を使用したこと以外は、実施例2と同様の手順で図1に示す構造の転写シートを作製した。
<比較例3>
ポリ塩化ビニル系インキに代えてポリエステル系インキ(帝国インキ製造株式会社製のEGインキ)を使用したこと以外は、実施例2と同様の手順で図1に示す構造の転写シートを作製した。
<比較例4>
ポリ塩化ビニル系インキに代えてアクリル系インキ(セイコーアドバンス株式会社製のSG740)を使用したこと以外は、実施例2と同様の手順で図1に示す構造の転写シートを作製した。
<評価 屋外暴露試験>
転写シートからセパレータを剥がし、転写皮膜を自動車用のタイヤのサイドウォール部に貼り付け、転写皮膜から転写フィルムを剥がし、これによって、転写皮膜をタイヤに定着させた。次いで、そのタイヤを70日間、屋外で南向きに放置した。貼り付けから45および70日後に転写皮膜の状態(具体的には変色の有無)を目視で観察した。
その結果、実施例3および4の転写皮膜では、45日後および70日後のいずれにおいても変色がほとんど生じなかった。いっぽう、比較例2~4の転写皮膜では、45日後に転写皮膜の変色が生じた。70日後には変色がいっそう進んだ。なお、各例の観察写真を図5および6に示す。図5および6では、左から順に、実施例4、比較例4、比較例3、実施例3、比較例2の転写皮膜が並んでいる。
8…シート、81…転写基材、82…ポリ塩化ビニル系インキ層、83…緩衝層(具体的にはポリウレタン系緩衝層)、84…感圧型粘着剤層、85…セパレータ、831…ポリウレタン系インキ層、832…ポリウレタン系クリア層

Claims (5)

  1. ポリ塩化ビニル系インキ層と、
    緩衝層と、
    感圧型粘着剤層と、を備えるシートであって、
    前記ポリ塩化ビニル系インキ層、前記緩衝層、前記感圧型粘着剤層が、前記シートの厚み方向にこの順に並んでいる、
    シート。
  2. 転写基材をさらに備え、
    前記転写基材、前記ポリ塩化ビニル系インキ層、前記緩衝層、前記感圧型粘着剤層が、前記シートの前記厚み方向にこの順に並んでおり、
    前記転写基材が前記ポリ塩化ビニル系インキ層に接している、
    請求項1に記載のシート。
  3. 前記緩衝層がインキ層を備える、請求項1または2に記載のシート。
  4. 前記緩衝層がクリア層をさらに備える、請求項3に記載のシート。
  5. 前記緩衝層がポリウレタン系緩衝層であり、前記感圧型粘着剤層が天然ゴム系粘着剤で形成されている、請求項1~4のいずれかに記載のシート。
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