JP2022122802A - 合撚糸及びこれを用いてなる編物、織物の製造方法 - Google Patents

合撚糸及びこれを用いてなる編物、織物の製造方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2022122802000001
【課題】嵩高性や吸水性、柔軟性に優れるだけでなく、洗濯の度に嵩高感が増す織編物を得るのに好適な合撚糸を提供する。
【解決手段】撚りを有するセルロース系紡績糸と、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸とを撚り合わせてなる合撚糸であって、セルロース系紡績糸は、太さ10~30番手(英式綿番手)であり、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸は、単糸繊度1.0~3.0dtex、総繊度20~60dtex、伸度が25~55%であり、合撚糸は、セルロース系紡績糸の撚り方向と反対方向の撚りであって、撚係数が220~350の撚りを有している合撚糸。
【選択図】図1

Description

本発明は、吸水性や柔軟性に優れるだけでなく、洗濯の度に嵩高性が増す織編物を得るのに適した合撚糸と、その織編物の製造方法に関するものである。
タオル地に好適とされる織編物には、通常、高い吸水性と優れた柔軟性が求められ、これらの特性を向上させるべく様々な技術が提案されている。例えば、アルカリ難溶性糸条とアルカリ易溶性糸条とからなる複合糸をパイル糸に配して製織した後、これをアルカリ溶出処理して織物を得る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この技術では、アルカリ難溶性糸条として綿スライバーが使用され、それを支える押え糸としてアルカリ易溶性糸条が使用されている。このため、得られた織物では、アルカリ溶出処理によりパイル糸が綿スライバーのみから構成されることになる。そうすると、綿スライバーは無撚の繊維束であって、構成繊維(ステープルファイバー)は言うまでもなく開繊しているから、織物において優れた嵩高性や柔軟性が得られることになる。
さらに、近年では消費者の高級志向に応えるべく、洗濯の度に嵩高性が増すタオル地も提案されている(例えば、特許文献2参照)。タオル地の機能は、パイル糸により決定づけられるところが大きいため、特許文献2記載の技術も特許文献1記載の技術と同様、パイル糸の構造や配置などに特徴がある。具体的には、パイル糸としてS撚糸とZ撚糸とを交互に配列させ、これらのパイル糸の撚数を地経糸の撚数と近しい範囲に設定する技術が開示されている。特許文献2によれば、家庭洗濯10回後における嵩高性が未洗濯のときと比べ120%以上向上するタオル地が得られたと記載されている。
特開2002-54039号公報 特許第6765137号公報
特許文献1によると、タオル地に好適な織物が得られたとある。この点、同文献には、織物の吸水性について特段記載がないが、得られる織物のパイル糸が綿スライバーから構成されている点に鑑み、相応の吸水性を具備するものと考えられる。綿スライバーは一般に無撚であり、ステープルファイバー間に適度な空隙があるから、この空隙に水分が入り込むことで吸水性の向上が期待できるからである。
しかし、特許文献1記載の織物は、適度な空隙による嵩高性や吸水性の向上効果が十分ではないという問題がある。これは、押え糸に単糸繊度の太い糸が用いられているからである。具体的には、単糸繊度56dtexのモノフィラメント糸が用いられている(実施例参照)。単糸繊度が太くなると、押え糸をアルカリ溶出するには長時間を要することになる。そうすると、織物が長時間アルカリ水溶液に晒されることでステープルファイバー表面の油脂が過度に脱落し、ステープルファイバーがしなやかさを失うことになる。結果、パイル糸もしなやかさを失い、織物において所望の嵩高性や柔軟性を得ることが困難となる。
さらに、特許文献1記載の織物では、綿スライバーにアルカリ易溶性糸条を巻き付けることにより複合糸を製造しているが、この点にも問題がある。綿スライバーは、通常、撚りを有していないから、僅かな張力変動にも対応できない。ゆえに、押え糸(モノフィラメント糸)の巻き付け過程で綿スライバーが容易に素抜けするという問題がある。
一方、特許文献2記載のタオル地は、パイル糸(綿糸)が一定範囲の撚りを有しており、洗濯の度に撚りがトルクを発現して解撚すると考えられる。このため、洗濯の度にタオル地の嵩高性が増すと考えられる。
しかし、同タオル地では、パイル糸が強撚域ではないものの一定数以上の撚りを有している。このため、未洗濯のタオル地ではパイル糸を構成するステープルファイバーの間に適度な空隙が形成されておらず、洗濯回数が少ない場合、タオル地は嵩高性に乏しく、所望の吸水性が得られないという問題がある。
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するものであり、嵩高性や吸水性、柔軟性に優れるだけでなく、洗濯の度にさらに嵩高感が増す織編物を得るのに好適な合撚糸と、その合撚糸を用いて織編物を製造する方法とを提供することを課題とする。
本発明者らは、従来法では、未洗濯の状態で嵩高性や吸水性、柔軟性に優れていることはもちろんのこと、洗濯の度にさらに嵩高感が増すという機能とを両立できる織編物は未だ得られていない点を知見し、これらの機能が両立できる手段について鋭意検討した。
その結果、撚りを有する紡績糸を用いて、紡績糸の撚り方向と反対方向にアルカリ易溶性糸条と共に上撚りすれば、アルカリ易溶性糸条が押え糸となって紡績糸の素抜けを抑えながらステープルファイバーを開繊方向へ導くことができることを見出した。また、アルカリ易溶性糸条の単糸繊度を特定の範囲に設定すれば、溶出時間が短縮できるとともに、溶出後のセルロース系紡績糸からなる撚糸は嵩高性が向上することも見出した。
さらに、合撚糸において押え糸として機能させるアルカリ易溶性糸条の伸度と合撚糸の撚数を工夫することで、洗濯の度に織編物の嵩高性をさらに増やすことができることを突き止めた。
まず、洗濯によってセルロース系紡績糸のステープルファイバー間の空隙に水分が入り込むと、水圧により空隙が押し広げられる。空隙が押し広げられると、パイル糸の嵩が増す。そこで本発明者らは、嵩が増したままの状態で乾燥を通じてパイル糸から水分を抜くことができれば、所望の嵩高性が得られるであろうと考えた。そして、検討を重ねた結果、増した嵩を維持するには、ステープルファイバーが本来的に備えるクリンプ形状を利用すればよいことを突き止めた。
すなわち、ステープルファイバー間の空隙が押し広げられたとき、その増えた空隙を支えるものが必要となるが、本発明者らは、それをステープルファイバーのクリンプにより支えることを考えた。
ステープルファイバーがクリンプを発現するには、ステープルファイバーが紡績糸中で伸び切った状態で存在するのではなく、ある程度弛緩した状態で存在することが重要である。そこで、そのような状態を創出するための手段を鋭意検討したところ、筬打ち又は編立直後の機台仕掛段階において、製織編時の張力により伸び切ったステープルファイバーを適度に弛緩させると、後にクリンプを有効に発現させうることに気づいた。
そこで、本発明者らは、製織編時はセルロース系紡績糸を支える押え糸も伸びるから、伸びた押え糸を弛緩させる方向へ導けば、それにつられてステープルファイバーも弛緩するであろうと考えた。そして、伸びた押え糸を緩めるには、押え糸の伸度と合撚糸の撚数が重要であることを見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
すなわち、本発明は以下の(1)~(4)を要旨とするものである。
(1)撚りを有するセルロース系紡績糸と、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸とを撚り合わせてなる合撚糸であって、セルロース系紡績糸は、太さ10~30番手(英式綿番手)であり、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸は、単糸繊度1.0~3.0dtex、総繊度20~60dtex、伸度が25~55%であり、合撚糸は、セルロース系紡績糸の撚り方向と反対方向の撚りであって、撚係数が220~350の撚りを有していることを特徴とする合撚糸。
(2)(1)記載の合撚糸を含む編物を製編した後、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸をアルカリ溶出することにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸を含む編物を得ることを特徴する編物の製造方法。
(3)(1)記載の合撚糸を含む織物を製織した後、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸をアルカリ溶出することにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸を含む織物を得ることを特徴する織物の製造方法。
(4)(1)記載の合撚糸をパイル糸に用いた織物を製織した後、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸をアルカリ溶出することにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸をパイル糸に含む織物を得ることを特徴する織物の製造方法。
本発明の合撚糸は、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸が溶出することにより、セルロース系紡績糸内部に微細な多数の空隙を生じさせることが可能であることから、嵩高性や吸水性、柔軟性に優れる織編物であって、洗濯の度にさらに嵩高感が増す織編物を得ることができる。
さらに、本発明の製造方法によれば、当該合撚糸を使用して、嵩高性や吸水性、柔軟性に優れる織編物であって、洗濯の度にさらに嵩高感が増す織編物を得ることができる。
本発明の合撚糸を構成する撚りを有するセルロース系紡績糸の一例を示す模式図である。 本発明の合撚糸の一例を示す模式図である。 本発明の合撚糸を使用して得られたバスタオル(実施例1で得られたもの)の未洗濯と50洗後の嵩高性を示す写真である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の合撚糸は、撚りを有するセルロース系紡績糸と、アルカリ易溶性糸条としてポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸(以下、「ポリ乳酸フィラメント糸」と記すことがある)とから構成される。両糸条とも公知のものが使用できる。例えば、セルロース系紡績糸としては、綿、麻などの天然繊維や、ビスコースレーヨン、リヨセル、テンセル、キュプラなどの再生繊維からなる紡績糸が挙げられる。
ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸としては、ユニチカ社製「テラマック(商品名)」、クラレ社製「プラスターチ(商品名)」、東レ社製「エコディア(商品名)」などの市販品が使用できる。
本発明では、両糸条をセルロース系紡績糸の撚り方向と反対方向に撚り合わせる。つまり、下撚り方向と反対方向に上撚りする。この場合、下撚り方向がS方向であれば、上撚り方向はZ方向となるし、下撚り方向がZ方向であれば、上撚り方向はS方向となる。上撚りの方法としては、両糸条を合撚機へ直接投入する方法や、両糸条を引きそろえた状態で一旦巻き取った後、ダブルツイスターへ投入する方法などがある。
本発明では、下撚りの方向と反対方向に上撚りすることで、セルロース系紡績糸を構成するステープルファイバーを開繊させることができる。
セルロース系紡績糸は、太さを10~30番手(英式綿番手)とし、中でも15~25番手とすることが好ましい。この太さの紡績糸を用いてステープルファイバーを開繊させることで、アルカリ溶出処理後の織編物において、所望の嵩高性や吸水性、柔軟性を得ることができる。紡績糸の太さがこれより細くなると、開繊するステープルファイバーの絶対量が減り、所望の性能が得られなくなる。一方、太くなり過ぎると、柔軟性に乏しくなる。なお、セルロース系紡績糸の太さは、JIS L1095 9.4.2に従って測定する。
セルロース系紡績糸は撚りを有しているものであるが、セルロース系紡績糸の撚りは、S方向、Z方向のいずれであってもよく、撚数(下撚数)としては、後述する撚係数が110~180であることが好ましい。
撚係数がこの範囲内であることにより、結果として、後述するような紡績糸の素抜けを防止し、かつステープルファイバー間に十分な空隙が生じ、洗濯を繰り返すことによる適度な解繊が生じるものとなる。
本発明の合撚糸において、下撚りの付されていたセルロース系紡績糸を反対方向に上撚りすることは、紡績糸を素抜けし易くなる方向へ導くことになる。そこで、本発明では、素抜けを抑えるために、セルロース系紡績糸が上記のような撚りを有するものとすると同時に、ポリ乳酸フィラメント糸を押え糸として機能させる。この場合、ポリ乳酸フィラメント糸を押え糸として十分機能させるには、ポリ乳酸フィラメント糸が可能な限り合撚糸の外層部分へ配されるようにするのが好ましい。そこで、ポリ乳酸フィラメント糸の総繊度をセルロース系紡績糸よりも細くすることが好ましい。これは、繊度差のある2糸を合撚する場合、繊度差が大きいほど、細い方の糸は合撚糸のより外側へ配される傾向があるからである。
このため、本発明では、ポリ乳酸フィラメント糸の総繊度を20~60dtexとし、中でも25~50dtexとすることが好ましい。総繊度が60dtexを超えると、ポリ乳酸フィラメント糸が合撚糸の外層部分に配され難くなり、押え糸として十分に機能させることができない。なお、ポリ乳酸フィラメント糸の総繊度は、JIS L1013 8.3.1B法に従って測定する。
一方、20dtex未満になると、ポリ乳酸フィラメント糸は合撚糸の外層部分に配されはするものの、総繊度が細くなり過ぎると、セルロース系紡績糸を構成するステープルファイバーの束を結束する力が弱まり、セルロース系紡績糸の素抜けを防止する効果に乏しくなる。
加えて、ポリ乳酸フィラメント糸の単糸繊度を1.0~3.0dtexとする。ステープルファイバーの束を素抜けしない程度に結束するには、押え糸に用いるポリ乳酸フィラメント糸に一定以上の剛直さを付与する必要があるが、単糸繊度が1.0dtex未満であると、剛直さが不十分となりステープルファイバーの素抜けを防止する効果に乏しくなる。一方、単糸繊度が3.0dtexを超えると、溶出後のセルロース系紡績糸からなる撚糸の嵩高性が乏しくなる。ポリ乳酸フィラメント糸の単糸繊度は、総繊度をフィラメント数で除することにより算出する。
このように、本発明の合撚糸は、撚りを有するセルロース系紡績糸とポリ乳酸フィラメント糸を用い、セルロース系紡績糸の撚り方向(下撚り方向)と反対方向に上撚りした合撚糸である。図面を用いて説明すると、図1に示すような矢印方向の撚りを有するセルロース系紡績糸に対して、図2に示すようにセルロース系紡績糸の撚り方向と反対方向(矢印方向)にポリ乳酸フィラメント糸を上撚りした合撚糸である。
そして、本発明の合撚糸を含む織編物をアルカリ溶出処理することにより、セルロース系紡績糸を構成するステープルファイバーが適度に開繊する。このため、織編物は適度な嵩高性や柔軟性を備えており、さらにステープルファイバー間に適度な空隙があるため、ここに水分が入り込むことで、所望の吸水性も得られる。
この他、本発明における織編物は、洗濯の度に嵩高性が増すという効果も奏する。所望の嵩高性を得ることは、ポリ乳酸フィラメント糸の伸度と合撚糸の撚数を調整することにより可能である。なお、ここでいう合撚糸の撚数とは上撚数を指す。
前述の通り、本発明では当該効果を得るにあたり、ステープルファイバーのクリンプ発現を利用する。ステープルファイバーがクリンプを発現するには、ステープルファイバーが形状を自在に変えられるように、紡績糸中で弛緩した状態で存在することが必要である。
この点、生機に仕上げた以降は組織点により糸が拘束されてしまうため、生機に仕上げた段階でステープルファイバーが紡績糸中で伸び切った状態で存在していると、それ以降の工程をいくら工夫しても基本的にクリンプ発現は物理的に不可能となる。そこで、生機が未だ機台に仕掛かっている段階、すなわち筬打ち又は編立直後の段階において、製織編時の張力により伸び切ったステープルファイバーを弛緩させることが重要である。
製織編時はセルロース系紡績糸を支える押え糸も伸びる。ゆえに、伸びた押え糸を弛緩させる方向へ導けば、それに追随してステープルファイバーも弛緩することになる。フィラメント糸は通常、所定の伸度範囲を備えており、この伸度範囲であれば比較的伸縮自在に動くことができる。また、撚糸された糸は撚りによる歪みを有しているから、張力が取り除かれた瞬間、撚縮みを発現して縮もうとする。本発明では、ポリ乳酸フィラメント糸におけるこれらの作用を利用して、ステープルファイバーの緊張を緩和させる。
つまり、上記のような作用を生じさせるには、ポリ乳酸フィラメント糸の伸度と合撚糸の撚数が適切な範囲にあることが必要である。
そこで、ポリ乳酸フィラメント糸の伸度は、25~55%とすることが必要であり、中でも40~53%であることが好ましい。
合撚糸の撚数は、合撚糸の撚係数を220~350とする必要があり、中でも230~330とすることが好ましい。
なお、ここで、撚係数は以下の式により算出される。
K=T/(N1/2
K:撚係数 T:撚数(T/M) N:合撚糸の太さ(英式綿番手)
ただし、
N=1/(1/N1+1/N2)
N1:セルロース系紡績糸の太さ(英式綿番手)
N2:ポリ乳酸フィラメント糸の太さ(英式綿番手)
N2=5905.4/P
P:ポリ乳酸フィラメント糸の総繊度(dtex)
撚数(T/M)は、JIS L1095 9.15A法に従って測定する。
ポリ乳酸フィラメント糸の伸度が上記範囲外であると、ステープルファイバーの緊張を緩和させることが困難となり、前記した作用を生じさせることができない。
伸度を上記範囲内とすることは、ポリ乳酸フィラメント糸を製造する際の延伸倍率を適宜調整することにより可能である。ポリ乳酸フィラメント糸の伸度は、JIS L1013 8.5.1に基づいて、定速伸長型の引張り試験機を用い、つかみ間隔200mm、引張速度200mm/分の条件にて測定する。
合撚糸の撚係数については、上記範囲を下回ると、撚りが少なすぎて撚縮みを十分発現できず、セルロース系紡績糸中のステープルファイバーを追随して弛緩することができなくなる。よって、所望の嵩高性を発現させることができない。加えて、合撚糸の撚係数が減る、すなわち上撚数が減るとステープルファイバーを開繊方向へ十分導けないから、織編物の嵩高性、吸水性、柔軟性も劣ることになる。一方、上記範囲を上回ると、撚縮みが必要以上に強く発現し、セルロース系紡績糸を結束し過ぎてしまう。結果、ステープルファイバーの緊張を緩和させることができなくなるばかりか、ステープルファイバーの開繊量も減るため、織編物の嵩高性、吸水性、柔軟性も劣ることになる。
上撚数と下撚数との撚数差については、織編物の嵩高性向上の観点から、上撚数を多くしたオーバー解撚の状態とすることが好ましい。具体的には、上撚数が下撚数より撚係数換算で1.3~2.3倍の範囲で上回っていることが好ましい。オーバー解撚状態とすることで、後に織編物を洗濯した際、セルロース系紡績糸が撚りを解く方向にトルクを発現しやすくなり、織編物は洗濯を繰り返すことによる嵩高性向上効果に優れたものとなる。
次に、本発明における織編物の製造方法について説明する。
なお、織編物においては、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロース系紡績糸及びポリ乳酸フィラメント糸以外の糸条(「その他の糸条」と称することがある)を併用してもよい。その他の糸条としては、特に限定するものではなく、天然繊維、合成繊維、再生繊維等のいずれであってもよい。
織編物中におけるセルロース系紡績糸及びポリ乳酸フィラメント糸の割合は、80質量%以上であることが好ましく、中でも100%であることが好ましい。
まず編物については、上記合撚糸を含む編物を製編する。製編については、公知の編機を使用することができる。そして、編物にアルカリ溶出処理を施すことにより、ポリ乳酸フィラメント糸をアルカリ溶出させる。これにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸を含む編物を得ることができる。
同じく織物についても、上記合撚糸を含む織物を製織する。製織については、公知の織機を使用することができる。そして、織物にアルカリ溶出処理を施すことにより、ポリ乳酸フィラメント糸をアルカリ溶出させる。これにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸を含む織物を得ることができる。
そして、アルカリ溶出処理の装置や処理条件としても、基本的に公知の装置、条件が採用できる。ただし、ポリ乳酸フィラメント糸の溶出時間に関しては、当該溶出時間を長く設定し過ぎると、セルロース系紡績糸を構成するステープルファイバー表面の油脂が脱落し易くなり、結果、ステープルファイバーがしなやかさを失う傾向にあるため注意を要する。ステープルファイバーがしなやかさを失うと、所望の嵩高性が得られない傾向にある。
本発明の合撚糸より得られる織編物の用途としては、パイル糸を備える織物、例えばタオル地などに好適に使用できる。この場合、例えば、上記合撚糸をパイル糸に用いた織物を製織した後、ポリ乳酸フィラメント糸をアルカリ溶出することにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸をパイル糸に含む織物を得ることができる。タオル用途としては、フェイスタオル、バスタオル、スポーツタオル、タオルケットなど目的に応じて様々な製品に仕上げることができる。製織には、二重ビームを備えるタオル織機を使用することが好ましい。
特に、本発明の合撚糸を構成するセルロース系紡績糸からなる撚糸をパイル糸に含む織物(タオル地)の場合、洗濯を行うと、セルロース系紡績糸(パイル糸)が撚りを解く方向にトルクを発現しやすくなる。よって、織物は洗濯を繰り返す毎に嵩高性に優れたものとなる。
この他、本発明の合撚糸より得られる織編物は、ガーゼケット、ブランケットといった寝具用途にも好適に使用できる。この場合、例えば、ガーゼケットに供するのであれば、多層織物とするのが好ましい。多層織物とする場合、層の数は特に限定されないが、層数が増えるほど各層の密度が粗くなり、ガーゼ様の織物を重ねたような外観を呈するようになる。さらに、織物全体の厚みも増し、吸水性や通気性も増すことになる。この点から、ふんわりとした柔らかな肌触りと共に吸水性、通気性にも優れるガーゼケットに仕上げるのであれば、織物の層数を3層以上とするのが好ましく、5層以上がより好ましく、6層以上がさらに好ましい。多層織物の場合、層数が増えて各層の密度が粗くなると、通常、各層が滑脱し易くなり、満足な耐久性が得られないことがある。しかし、本発明では、使用する合撚糸に所定の上撚りが付されており、各層の組織点において上撚りの綾が噛み合うため、各層で滑脱が生じ難い。
多層織物の製織には、通常、レピア織機を用いるのが好ましく、織組織として多重平織を採用するのであればドビー機構を備えた織機、柄を出すのであればジャガード機構を備えた織機をそれぞれ用いるのが好ましい。そして、本発明の合撚糸を上記のような織機により製織した後、ポリ乳酸フィラメント糸をアルカリ溶出することにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸で構成された多層織物を得ることができる。多層織物の密度としては、特に限定されないが、織物の外観、風合いなどを考慮し、各層の経緯糸密度を5~40本/2.54cmとすることが好ましい。また、各層の接結は、織物の厚みを保ち、織物内に空気を多く含ませることでふんわりとした風合いを具現する観点から、上層、下層をそれぞれ中層と接結させることが好ましい。
上記した本発明の製造方法により、嵩高性や吸水性、柔軟性に優れ、かつ洗濯の度にさらに嵩高性が増す織編物を生産性よく得ることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。織物の特性は以下の方法により測定した。
1.吸水量
JIS L1907 7.3(表面吸水法)に基づいて、各時間における吸水量を測定した。
2.最大吸水速度、最大吸水速度時点の吸水量及び吸水指数
上記吸水性の測定結果から吸水曲線(縦軸;吸水量(mL)、横軸:測定時間(秒))を作成し、この曲線から最大吸水速度及び最大吸水速度時点の吸水量を算出した。そして、アパレル製品等品質性能対策協議会が定めた吸水指数を以下の式に基づき算出した。なお、吸水指数による高吸水性タオルの指標は、髪を拭くタオルとして800が目安とされている。
吸水指数=2545V+1411W+79
V:最大吸水速度(mL/秒)
W:最大吸水速度時点の吸水量(mL)
3.柔軟性
得られた織物の柔軟性を官能評価により以下の3段階で評価した。
○:柔軟性に優れる
△:柔軟性の程度は普通である。
×:柔軟性に劣る
実施例1
太さが20番手(英式綿番手)で撚数がS方向650T/Mの綿紡績糸と、太さが33dtex18fで伸度が47.5%のポリ乳酸フィラメント糸とをZ方向に撚数1224T/Mで上撚りすることにより、合撚糸を得た。
得られた合撚糸の太さは17.99番手であり、上撚りの撚係数は288.61であった。また、下撚数すなわち綿紡績糸の撚数は撚係数換算で145.35であった。
続いて、太さ40番手(英式綿番手)の綿紡績糸を地経糸に、太さ20番手と40番手(各々英式綿番手)の綿紡績糸を地緯糸に、上記合撚糸をパイル糸に各々配して織物を得た。
その後、公知の装置を用いて、織物中のポリ乳酸フィラメント糸をアルカリ溶出した。これにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸をパイル糸に含む織物を得た。
次に、得られた織物を用いて同規格のバスタオルを2つ縫製した。この内の1つをJIS L0217 103法(家庭用電気洗濯機法)に基づいて50回洗濯した。図3に、未洗濯のバスタオルをタテ方向とヨコ方向に四つ折りにしたもの(左側)と洗濯50回後のバスタオルを同様に四つ折りにしたもの(右側)とを並べた写真を示す。
実施例2~3、比較例1
上撚りの撚数を1224T/Mに代えて1020T/M(実施例2)、1360T/M(実施例3)、880T/M(比較例1)としたこと以外は、実施例1と同様に行い、各々織物を得た。
なお、得られた合撚糸の上撚りは撚係数換算で240.51(実施例2)、320.68(実施例3)、207.50(比較例1)であった。
比較例2
ポリ乳酸フィラメント糸を用いることなく、実施例1で使用した綿紡績糸のみでパイル糸を構成したこと、及びアルカリ溶出処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に行い、織物を得た。
Figure 2022122802000002
実施例1で得られた織物は、吸水性については、何れも高吸水性タオルの指標とされる吸水指数800を超えており、十分な吸水性を備えていることが確認できた。また、嵩高性と柔軟性にも優れるものであった。
さらに、洗濯した後の織物の嵩高性については、図3に示すように、実施例1に係る織物を使用したバスタオルを四つ折りにして嵩高性を比較したところ、洗濯50回後の方が未洗濯のものより嵩高性が増していることが確認できた。
一方、比較例1では、合撚糸の撚係数が所定範囲を満たしていなかったため、得られた織物は、吸水性に劣るものであり、柔軟性にも乏しいものであった。
また、比較例2については、パイル糸に綿紡績糸のみを用いたものであったため、得られた織物は、紡績糸を構成するステープルファイバーの開繊が十分でなく、吸水性、柔軟性ともに劣るものであった。

Claims (4)

  1. 撚りを有するセルロース系紡績糸と、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸とを撚り合わせてなる合撚糸であって、セルロース系紡績糸は、太さ10~30番手(英式綿番手)であり、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸は、単糸繊度1.0~3.0dtex、総繊度20~60dtex、伸度が25~55%であり、合撚糸は、セルロース系紡績糸の撚り方向と反対方向の撚りであって、撚係数が220~350の撚りを有していることを特徴とする合撚糸。
  2. 請求項1記載の合撚糸を含む編物を製編した後、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸をアルカリ溶出することにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸を含む編物を得ることを特徴する編物の製造方法。
  3. 請求項1記載の合撚糸を含む織物を製織した後、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸をアルカリ溶出することにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸を含む織物を得ることを特徴する織物の製造方法。
  4. 請求項1記載の合撚糸をパイル糸に用いた織物を製織した後、ポリ乳酸系重合体からなるマルチフィラメント糸をアルカリ溶出することにより、セルロース系紡績糸からなる撚糸をパイル糸に含む織物を得ることを特徴する織物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN115537997A (zh) * 2022-10-25 2022-12-30 江苏蓝丝羽家用纺织品有限公司 一种抗菌聚乳酸弹性纤维及其制备方法

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