JP2022119424A - 水系樹脂組成物及び樹脂膜 - Google Patents

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聡志 竹野
Satoshi Takeno
理計 山内
Michikazu Yamauchi
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Abstract

【課題】貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの低温硬化性及び耐水性に優れる水系樹脂組成物、及び、前記水系樹脂組成物を用いた樹脂膜を提供する。【解決手段】水系樹脂組成物は、ポリイソシアネートと1種以上の活性メチレン系ブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートと、カルボキシ基と架橋しうる架橋剤と、多価ヒドロキシ化合物と、を含む。前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部が、ノニオン性化合物によって変性されていてもよい。前記架橋剤が、アジリジン基含有化合物であってもよい。樹脂膜は、前記樹脂組成物を硬化させてなる。【選択図】なし

Description

本発明は、水系樹脂組成物及び樹脂膜に関する。
従来、ポリウレタン樹脂塗料は非常に優れた耐摩耗性、耐薬品性及び耐汚染性を有している。特に、脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートから得られたポリイソシアネートを用いたポリウレタン樹脂塗料はさらに耐候性が優れ、その需要は増加する傾向にある。しかしながら、一般にポリウレタン樹脂塗料は二液性であるため、その使用には極めて不便である。即ち、通常のポリウレタン樹脂塗料はポリオール及びポリイソシアネートの二成分からなり、ポリオール及びポリイソシアネートを別々に貯蔵し、塗装時に両者を混合する必要がある。また、一旦両者を混合すると塗料は短時間でゲル化し使用できなくなるという課題を有する。ポリウレタン樹脂塗料はこのような課題を有するため、自動車塗装又は弱電気塗装のようなライン塗装を行う分野において、自動塗装に用いることを極めて困難にしている。また、イソシアネートは水と容易に反応するため、電着塗料の様な水系塗料での使用は不可能である。更に、イソシアネートを含む塗料を用いた場合には、作業終了時の塗装機及び塗装槽の洗浄等を充分に行う必要があるため、作業能率は著しく低下する。
上述の課題を改善するために、従来から、活性なイソシアネート基をすべてブロック剤で封鎖したブロックポリイソシアネートを用いることが提案されている。このブロックポリイソシアネートは、常温ではポリオールと反応しない。しかしながら、加熱することによりブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生されてポリオールと反応し架橋反応が起こるので、上述の課題を改善することができる。従って、数多くのブロック剤の検討がなされおり、例えばフェノール、メチルエチルケトオキシム等が代表的なブロック剤として挙げられる。
しかしながら、これらのブロック剤を用いたブロックポリイソシアネートを用いた場合には、一般に140℃以上の高い焼付け温度が必要である。高温での焼付けを必要とすることは、エネルギー的に不利であるばかりでなく、基材の耐熱性を必要とし、その用途が限定される要因となる。
一方、低温焼付け型のブロックポリイソシアネートとして、アセト酢酸エステル、マロン酸ジエステル等の活性メチレン系化合物を用いたブロックポリイソシアネートの研究がなされている。例えば、特許文献1及び2では、90℃で硬化するブロックポリイソシアネート組成物が提案されている。
近年、さらに、揮発性有機化合物(VOC)の削減も求められており、低温かつ、水系樹脂組成物としたときの貯蔵時にゲル化や過度な増粘がないものも提案されている(例えば、特許文献3等参照)。
特開2002-322238号公報 特開2006-335954号公報 特開2013-006935号公報
しかしながら、従来のブロックポリイソシアネート組成物を用いた樹脂膜では、耐水性等の塗膜物性が不十分であり、更なる向上が望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの低温硬化性及び耐水性に優れる水系樹脂組成物、及び前記水系樹脂組成物を用いた樹脂膜を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) ポリイソシアネートと1種以上の活性メチレン系ブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートと、
カルボキシ基と架橋しうる架橋剤と、
多価ヒドロキシ化合物と、
を含む、水系樹脂組成物。
(2) 前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部が、ノニオン性化合物によって変性されている、(1)に記載の水系樹脂組成物。
(3) 前記架橋剤が、アジリジン基含有化合物である、(1)又は(2)に記載の水系樹脂組成物。
(4) 前記ブロックポリイソシアネートが下記一般式(I)で表される化合物である、(1)~(3)のいずれか一つに記載の水系樹脂組成物。
Figure 2022119424000001
(一般式(I)中、R11は、脂肪族イソシアネートモノマー及び脂環族イソシアネートモノマーからなる群より選ばれる1種以上のイソシアネートモノマーから誘導されたポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基である。Aは、下記一般式(II)で表される構造単位である。Bは下記一般式(III)で表される構造単位である。Cは下記一般式(IV)で表される構造単位である。x+y+zは2.0以上20以下であり、且つ、x+y及びzはそれぞれ0ではない。)
Figure 2022119424000002
(一般式(II)中、R21は、炭素数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基若しくはベンジル基である。R22及びR23はそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい、炭素数1以上30以下の炭化水素基である。R22及びR23は互いに結合して環構造を形成してよい。前記環構造は、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、又は、窒素原子若しくは酸素原子を含む3員環、4員環、5員環若しくは6員環である。破線は結合手を示す。)
Figure 2022119424000003
(一般式(III)中、R31は、ブロック剤の1つの活性水素基を除く残基である。破線は結合手を示す。)
Figure 2022119424000004
(一般式(IV)中、R41は、親水性化合物の1つの活性水素基を除く残基である。破線は結合手を示す。)
(5) (1)~(4)のいずれか一つに記載の水系樹脂組成物を硬化させてなる、樹脂膜。
上記態様の水系樹脂組成物によれば、貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの低温硬化性及び耐水性に優れる水系樹脂組成物を提供することができる。上記態様の樹脂膜は、前記樹脂組成物を硬化させてなり、低温硬化性及び耐水性に優れる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変更して実施できる。
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物が複数結合した反応物を意味する。
本明細書において、「構造単位」とは、ポリイソシアネートやブロックポリイソシアネートを構成する構造において、一分子の単量体に起因する構造を意味する。例えば、マロン酸エステルに由来する構造単位とは、ブロックポリイソシアネート中の一分子のマロン酸エステルに起因する構造を示す。構造単位は、単量体の(共)重合反応によって直接形成された単位であってもよく、(共)重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
≪水系樹脂組成物≫
本実施形態の水系樹脂組成物は、ポリイソシアネートと1種以上の活性メチレン系ブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートと、カルボキシ基と架橋しうる架橋剤と、多価ヒドロキシ化合物と、を含む。
本実施形態の水系樹脂組成物は、硬化剤成分であるブロックポリイソシアネート及びカルボキシ基と架橋しうる架橋剤と、主剤成分である多価ヒドロキシ化合物と、を含む、一液型樹脂組成物ということもできる。
本実施形態の水系樹脂組成物は、上記構成を有することで、貯蔵安定性が良好であり、且つ、低温硬化性及び耐水性に優れる樹脂膜が得られる。
本実施形態の水系樹脂組成物の各構成成分について以下に詳細を説明する。
<ブロックポリイソシアネート>
ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと活性メチレン系ブロック剤との反応物である。すなわち、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネート中の少なくとも一部のイソシアネート基が活性メチレン系ブロック剤でブロック化されている。
ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるブロック剤は、活性メチレン系ブロック剤である。活性メチレン系ブロック剤を1種用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。すなわち、ブロックポリイソシアネート1分子中において、イソシアネート基が1種の活性メチレン系ブロック剤でブロック化されていてもよく、2種以上の活性メチレン系ブロック剤でブロック化されていてもよい。或いは、イソシアネート基がそれぞれ異なる活性メチレン系ブロック剤でブロック化されたブロックポリイソシアネートの混合物であってもよい。
[活性メチレン系ブロック剤]
活性メチレン系ブロック剤としては、特に限定されないが、例えば、アセト酢酸エステル、マロン酸ジエステル、イソブタノイル酢酸エステル、アセチルアセトン等が挙げられる。
アセト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル等が挙げられる。
マロン酸ジエステルとしては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸エチルイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸メチルtert-ブチル、マロン酸エチルtert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジn-ヘキシル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ジベンジル等が挙げられる。上記に示したマロン酸ジエステルは、単独で用いることもでき、2種以上を併用して使用することもできる。
中でも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸メチルtert-ブチル、マロン酸エチルtert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジn-ヘキシル、又はマロン酸ジ2-エチルヘキシルが好ましい。また、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジtert-ブチル、又はマロン酸メチルtert-ブチルがより好ましく、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、又はマロン酸ジtert-ブチルがさらに好ましく、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、又はマロン酸ジtert-ブチルが特に好ましい。
イソブタノイル酢酸エステルとしては、例えば、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチル等が挙げられる。
なお、ブロックポリイソシアネートの製造に用いられる全ブロック剤のモル総量に対して、活性メチレン系ブロック剤の含有量が50モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、95モル%以上であることが特に好ましく、100モル%以上であることが最も好ましい。
活性メチレン系ブロックの含有量が上記範囲内であることにより、樹脂膜としたときの低温硬化性及び耐水性をより向上させることができる。
また、イソシアネート基を活性メチレン系ブロック剤でブロック化させた後に、さらに、ブロック化された部位にアミン化合物をエステル-アミド交換反応させて、ブロック化された部位の一部にアミド基を導入させてもよい。
中でも、ブロックポリイソシアネートとしては、下記一般式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」と称する場合がある)であることが好ましい。
Figure 2022119424000005
(一般式(I)中、R11は、脂肪族イソシアネートモノマー及び脂環族イソシアネートモノマーからなる群より選ばれる1種以上のイソシアネートモノマーから誘導されたポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基である。Aは、下記一般式(II)で表される構造単位(以下、「構造単位(II)」と称する場合がある)である。Bは下記一般式(III)で表される構造単位(以下、「構造単位(III)」と称する場合がある)である。Cは下記一般式(IV)で表される構造単位(以下、「構造単位(IV)」と称する場合がある)である。x+y+zは2.0以上20以下であり、且つ、x+y及びzはそれぞれ0ではない。)
Figure 2022119424000006
(一般式(II)中、R21は、炭素数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基若しくはベンジル基である。R22及びR23はそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい、炭素数1以上30以下の炭化水素基である。R22及びR23は互いに結合して環構造を形成してよい。前記環構造は、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、又は、窒素原子若しくは酸素原子を含む3員環、4員環、5員環若しくは6員環である。破線は結合手を示す。)
Figure 2022119424000007
(一般式(III)中、R31は、ブロック剤の1つの活性水素基を除く残基である。破線は結合手を示す。)
Figure 2022119424000008
(一般式(IV)中、R41は、親水性化合物の1つの活性水素基を除く残基である。破線は結合手を示す。)
一般式(I)中において、複数存在するA、B及びCは、それぞれ互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
[A]
一般式(I)中、Aは、活性メチレン系ブロック剤とイソシアネート基との反応後に、ブロック化された部位にアミン化合物をエステル-アミド交換反応させて、ブロック化された部位にアミド基を導入することにより形成される構造単位である。Aとして具体的には、上記一般式(II)で表される構造単位(構造単位(II))である。Aは、ケト体又は各種エノール体の構造を取り得る。なお、上記一般式(II)では、ケト体の構造を示しているが、ケト-エノール互変異性体である各種エノール体群も含む。エノール体群として具体的には、例えば、メチン基のプロトンがアミド基側でエノール体となった構造や、エステル基側でエノール体となった構造が挙げられる。この場合のケト体の組成比は、構造単位(II)の総モル量に対して、50モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。
(R21
一般式(II)中、R21は、炭素数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基若しくはベンジル基である。R21の炭素数が上記上限値以下であることで、有効イソシアネート基含有率の低下を抑制し、且つ、主剤である多価ヒドロキシ化合物との相溶性をより向上させることができる。ここでいう「有効イソシアネート基含有率(有効NCO%)」とは、ブロックポリイソシアネートの樹脂固形分に対する、潜在的に存在するイソシアネート基の質量%である。
21における炭素数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
中でも、R21としては、炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
(R22及びR23
一般式(II)中、R22及びR23はそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい、炭素数1以上30以下の炭化水素基である。R22及びR23は互いに結合して環構造を形成してよい。前記環構造は、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、又は、窒素原子若しくは酸素原子を含む3員環、4員環、5員環若しくは6員環である。
中でも、R22及びR23としては、それぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい、炭素数1以上30以下の炭化水素基であるか、或いは、R22及びR23が互いに結合して、窒素原子を含む3員環、4員環、5員環若しくは6員環を形成していることが好ましい。
ここで、一般式(II)中のR22及びR23について、それぞれ独立して存在する構造(以下、「独立構造」と称する場合がある)と、連結している構造(以下、「連結構造」と称する場合がある)に分けて説明する。
まず、R22及びR23の独立構造について説明する。
独立構造の場合の一般式(II)中のR22及びR23は、それぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい、炭素数1以上30以下の炭化水素基である。R22及びR23の炭素数がそれぞれ上記上限値以下であることで、有効NCO%の低下を抑制し、且つ、主剤である多価ヒドロキシ化合物との相溶性をより向上させることができる。その中でも、R22及びR23は、炭素数1以上8以下の炭化水素基であることが好ましく、炭素数3以上6以下の分岐鎖状アルキル基であることがより好ましく、炭素数3以上4以下の分岐鎖状アルキル基であることがさらに好ましく、イソプロピル基であることが特に好ましい。
22及びR23において、含んでもよい置換基としては、エーテル結合、又はエステル結合が好ましい。
独立構造の場合の一般式(II)中の一般式(IIa):[(R22)(R23)N-]で表される基は、鎖状二級アミンの1つの活性水素基を除く残基である。
鎖状二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジトリデシルアミン、ジステアリルアミン等の直鎖状二級アミン;ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2-ブチルアミン)、ジ(tert-ブチル)アミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2-メチルシクロヘキシル)アミン等の分岐鎖状二級アミン;ジアリルアミン等の不飽和二重結合含有二級アミン;メチルエチルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、メチルtert-ブチルアミン、N-メチルヘキシルアミン、エチルtert-ブチルアミン、N-エチルヘキシルアミン、N-エチル-1,2-ジメチルプロピルアミン、N-エチルイソアミルアミン、N-エチルラウリルアミン、N-エチルステアリルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-tert-ブチルシクロヘキシルアミン等の非対称二級アミン;ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、エチルベンジルアミン、tert-ブチルベンジルアミン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-シクロヘキシルアニリン、3-(ベンジルアミノ)プロピオン酸エチルエステル等の芳香族置換基を有する二級アミン;2-(ヒドロキシメチルアミブタノール、N-エチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン等が挙げられる。
これらの鎖状二級アミン化合物の中でも、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2-ブチルアミン、ジ(tert-ブチル)アミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2-メチルシクロヘキシル)アミン、ジアリルアミン、メチルエチルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、メチルtert-ブチルアミン、N-メチルヘキシルアミン、エチルtert-ブチルアミン、N-エチルヘキシルアミン、N-エチル-1,2-ジメチルプロピルアミン、N-エチルイソアミルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-tert-ブチルシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、エチルベンジルアミン、tert-ブチルベンジルアミン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、2-(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、4-メチルアミノブタノール、N-エチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミンが好ましい。
また、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2-ブチルアミン)、ジ(tert-ブチル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、又はN-tert-ブチルシクロヘキシルアミンがより好ましく、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2-ブチルアミン)、又はジ(tert-ブチル)アミンがさらに好ましく、ジイソプロピルアミンが特に好ましい。
次に、R22及びR23の連結構造について説明する。
連結構造の場合の一般式(II)中の一般式(IIa):[(R22)(R23)N-]で表される基は、窒素原子を含む環状二級アミンの1つの活性水素基を除く残基である。
窒素原子を含む環状二級アミンとしては、飽和環状二級アミン、芳香族二級アミン、不飽和結合含有環状二級アミン等が挙げられる。
飽和環状二級アミンとしては、例えば、2-アザビシクロ[2.1.1]ヘキサン、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンのようなアザビシクロ系化合物、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2-メチルピロリジン、3-ピロリジオール、2-ピロリドン、プロリン、4-ヒドロキシプロリン、ピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、4-ベンジルピペリジン、2,4-ジメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、3-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンエタノール、4-ピペリジンエタノール、4-ピペリジノール、2-ピペリドン、4-ピペリドン、4-ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4-ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドン、4-ピペリジノピペリジン、デカヒドロキノリン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N-アリルピペラジン、N-イソブチルピペラジン、N-シクロヘキシルピペラジン、N-シクロペンチルピペラジン、N-フェニルピペラジン、1-(2-ピリジル)ピペラジン、1-(4-ピリジル)ピペラジン、1-(2-ピリミジル)ピペラジン、N-メチルホモピペラジン、N-アセチルホモピペラジン、N-ブチリルホモピペラジン、オキサゾリジン、モルホリン、イミダゾリジン、2-イミダゾリドン、ヒダントイン、1-メチルヒダントイン、5-メチルヒダントイン、クレアチニン、パラバン酸、ウラゾール、チアゾリジン、チアルジン等が挙げられる。
芳香族二級アミンとしては、例えば、ピロール、2-メチルピロール、2,4-ジメチルピロール、3,4-ジメチルピロール、2-アセチルピロール、2-ピロールカルボン酸、インドール、3H-インドール、3-メチルインドール、2-フェニルインドール、3-ヒドロキシルインドール、3-インドール酢酸、インドリン、2-インドリノン、イサチン、α-イサチンオキシム、イソインドール、イソインドリン、1-イソインドリノン、カルバゾール、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、9-アクリドン、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾロン、1H-1,2,3-トリアゾール、1H-1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラゾール、プリン、キサンチン、フェノキサジン、無水イサト酸、ベンゾチアゾリン、2-ベンゾチアゾロン、フェノチアジン、5,1 0-ジヒドロフェナジン、β-カルボリン、ペリミジン等が挙げられる。
不飽和結合含有環状二級アミンとしては、例えば、2-ピロリン、3-ピロリン、ジヒドロピリジン、2-ピラゾリン、5-ピラゾロン、2-イミダゾリン、4H-1,4-オキサジン、4H-1,4-チアジン、2H,6H-1,5,2-ジチアジン等が挙げられる。
これらの中でも、飽和環状二級アミンが好ましい。
また、飽和環状二級アミンの中でも、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2-メチルピロリジン、3-ピロリジオール、2-ピロリドン、プロリン、4-ヒドロキシプロリン、ピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、4-ベンジルピペリジン、2,4-ジメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、3-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンエタノール、4-ピペリジンエタノール、4-ピペリジノール、2-ピペリドン、4-ピペリドン、4-ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4-ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドン、4-ピペリジノピペリジン、デカヒドロキノリン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N-アリルピペラジン、N-イソブチルピペラジン、N-シクロヘキシルピペラジン、N-シクロペンチルピペラジン、N-フェニルピペラジン、1-(2-ピリジル)ピペラジン、1-(4-ピリジル)ピペラジン、1-(2-ピリミジル)ピペラジン、N-メチルホモピペラジン、N-アセチルホモピペラジン、N-ブチリルホモピペラジン、オキサゾリジン、モルホリン、イミダゾリジン、2-イミダゾリドン、ヒダントイン、1-メチルヒダントイン、5-メチルヒダントイン、クレアチニン、パラバン酸、ウラゾール、チアゾリジン、又は、チアルジンが好ましい。
また、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2-メチルピロリジン、ピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、4-ベンジルピペリジン、2,4-ジメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4-ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドン、4-ピペリジノピペリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N-アリルピペラジン、N-イソブチルピペラジン、N-シクロヘキシルピペラジン、N-シクロペンチルピペラジン、N-フェニルピペラジン、1-(2-ピリジル)ピペラジン、1-(4-ピリジル)ピペラジン、1-(2-ピリミジル)ピペラジン、N-メチルホモピペラジン、N-アセチルホモピペラジン、又は、N-ブチリルホモピペラジンがより好ましい。
また、窒素原子一個のみを含む飽和環状二級アミンがさらに好ましく、窒素原子一個のみ、且つ、5員環又は6員環である飽和環状二級アミンが特に好ましい。
すなわち、ピロリジン、2-メチルピロリジン、ピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、2,4-ジメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、又は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが特に好ましい。
また、下記一般式(V)で表される化合物(以下、「化合物(V)」と称する場合がある)であって、2,6位の置換基が水素原子又はメチル基であり、且つ、その中の少なくとも1つはメチル基であるピペリジン誘導体が最も好ましい。
すなわち、2-メチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、又は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが特に好ましい。
Figure 2022119424000009
(一般式(V)中、R51、R52、R53及びR54はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。R51、R52、R53及びR54のうち、少なくとも1つはメチル基である。n51は、3である。)
以上のことから、独立構造であっても、連結構造であっても、一般式(II)中の窒素原子に結合する置換基であるR22及びR23において、窒素原子と隣接する炭素原子の少なくとも1つが2個以上の炭素原子と結合していることが特に好ましい。
化合物(I)中のAにおいて、構造単位(II)の代替として、下記一般式(VI)で表される構造単位(以下、「構造単位(VI)」と称する場合がある)を含んでもよい。すなわち、本実施形態の水系樹脂組成物は、ブロックポリイソシアネートとして、化合物(I)の代わりに、又は、化合物(I)に加えて、下記一般式(Ia)で表される化合物(以下、「化合物(Ia)」と称する場合がある)を一部に含んでもよい、或いは、構造単位(VI)を有するブロックポリイソシアネートを一部含んでもよいといえる。
Figure 2022119424000010
(一般式(Ia)中、R11aは、上記R11と同じである。A’は、構造単位(II)又は下記一般式(VI)で表される構造単位(構造単位(VI))である。xaが1である場合に、A’は構造単位(VI)であり、xaが2以上である場合に、複数存在するA’のうち少なくとも一つは、構造単位(VI)である。B’は上記Bと同じである。C’は上記Cと同じである。xa+ya+zaは2.0以上20以下であり、且つ、xa+ya及びzaはそれぞれ0ではない。)
Figure 2022119424000011
(一般式(I)中、R61、R62、R63及びR64はそれぞれ上記R22及びR23と同じである。)
ブロックポリイソシアネートの固形分の総質量に対する、構造単位(VI)の含有量は、低温硬化性を維持しつつ、結晶化を抑制する観点から、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
[B]
一般式(I)中、Bは、ブロック剤とイソシアネート基との反応により形成された構造単位であり、下記一般式(III)で表される構造単位(構造単位(III))である。
Figure 2022119424000012
(一般式(III)中、R31は、ブロック剤の1つの活性水素基を除く残基である。破線は結合手を示す。)
(R31
31の由来となるブロック剤としては、イソシアネート基と反応しうる活性水素基を1つ以上有し、一般的にブロック剤として知られているものであれば、特に限定されない。活性水素基としては、例えば、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。
その他ブロック剤としては、1)アルコール系化合物、2)アルキルフェノール系化合物、3)フェノール系化合物、4)活性メチレン系化合物、5)メルカプタン系化合物、6)酸アミド系化合物、7)酸イミド系化合物、8)イミダゾール系化合物、9)尿素系化合物、10)オキシム系化合物、11)アミン系化合物、12)イミド系化合物、13)重亜硫酸塩、14)ピラゾール系化合物、15)トリアゾール系化合物等が挙げられる。ブロック剤としてより具体的には、以下に示すもの等が挙げられる。
1)アルコール系化合物:メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトカシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコール類。
2)アルキルフェノール系化合物:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類。アルキルフェノール系化合物として具体的には、例えば、n-プロピルフェノール、iso-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類;ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
3)フェノール系化合物:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等。
4)活性メチレン系化合物:上記「活性メチレン系ブロック剤」において例示されたものと同じものが挙げられる。
5)メルカプタン系化合物:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
6)酸アミド系化合物:アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等。
7)酸イミド系化合物:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
8)イミダゾール系化合物:イミダゾール、2-メチルイミダゾール等。
9)尿素系化合物:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
10)オキシム系化合物:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
11)アミン系化合物:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等。
12)イミン系化合物:エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
13)重亜硫酸塩化合物:重亜硫酸ソーダ等。
14)ピラゾール系化合物:ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等。
15)トリアゾール系化合物:3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール等。
これらの中でも、活性メチレン系化合物が好ましい。また、活性メチレン系化合物の中でも、下記一般式(VIIa)で表される化合物(以下、「化合物(VIIa)」と称する場合がある)であることがより好ましい。
Figure 2022119424000013
(一般式(VIIa)中、R71aは、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
72a、R73a及びR74aはそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R72a、R73a及びR74aのうち2つ以上が水素原子であることはない。)
1.R71a
一般式(VIIa)中、R71aは、ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。但し、前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。
(1)R71a:アルキル基
71aが置換基を有しないアルキル基である場合、該アルキル基としては、炭素数は1以上30以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。置換基を有しないアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
また、R71aが置換基を有するアルキル基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノブチル基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアルキル基としては、例えば、ヒドロキシアミノメチル基、ヒドロキシアミノエチル基、ヒドロキシアミノプロピル基等が挙げられる。
(2)R71a:アミノ基
71aが置換基を有するアミノ基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアルキル基である。
置換基としてヒドロキシ基を有するアミノ基としては、ヒドロキシアミノ基(-NH-OH)が挙げられる。
置換基としてアルキル基を有するアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ-n-ブチルアミノ基、ジ-tert-ブチルアミノ基、ジ-sec-ブチルアミノ基、ジイソブチルアミノ基、2、6-ジメチルピペリジル基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアルキル基を有するアミノ基としては、例えば、ヒドロキシメチレンアミノ基、ヒドロキシエチレンアミノ基、ヒドロキシプロピレンアミノ基、ヒドロキシブチレンアミノ基等が挙げられる。
2つの置換基が互いに連結して環を形成しているアミノ基としては、例えば、エチレンイミノ基、アザシクロブチル基、ピロリジル基、ピペリジル基、2、6-ジメチルピペリジル基、ヘキサメチレンイミノ基等が挙げられる。
(3)R71a:アリール基
71aが置換基を有しないアリール基である場合、該アリール基としては、炭素数は5以上30以下であることが好ましく、6以上20以下であることがより好ましく、6以上14以下であることがさらに好ましい。前記アリール基として具体的には、例えば、単環式芳香族炭化水素基、2環式芳香族炭化水素基、3環式芳香族炭化水素基、4環式芳香族炭化水素基、5環式芳香族炭化水素基、6環式芳香族炭化水素基、7環式芳香族炭化水素基等が挙げられる。
単環式芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、o-キシリル基等が挙げられる。
2環式芳香族炭化水素基としては、例えば、インダニル基、インデニル基、ペンタレニル基、アズレニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基等が挙げられる。
3環式芳香族炭化水素基としては、例えば、アントラセニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントレニル基等が挙げられる。
4環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ピレニル基、ナフタセニル基、クリセニル基等が挙げられる。
5環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ペリレニル基、ピセニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。
6環式芳香族炭化水素基としては、例えば、ナフトビレニル基等が挙げられる。
7環式芳香族炭化水素基としては、例えば、コロネニル基等が挙げられる。
71aが置換基を有するアリール基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアリール基としては、例えば、フェノール基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアリール基としては、例えば、アニリン基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアリール基としては、例えば、アミノフェノール基(ヒドロキシアニリン基)等が挙げられる。
(4)R71a:アルコキシ基
71aが置換基を有しないアルコキシ基である場合、該アルコキシ基としては、炭素数は1以上30以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましく、1以上4以下であることが特に好ましい。前記アルコキシ基として具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、n-ペントキシ基、イソペントキシ基、ネオペントキシ基、tert-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、n-ヘキトキシ基、2-メチルペントキシ基、3-メチルペントキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、n-ヘプトキシ基、2-メチルヘキトキシ基、3-メチルヘキトキシ基、2,2-ジメチルペントキシ基、2,3-ジメチルペントキシ基、2,4-ジメチルペントキシ基、3,3-ジメチルペントキシ基、3-エチルペントキシ基、2,2,3-トリメチルブトキシ基、n-オクトキシ基、イソオクトキシ基、2-エチルヘキトキシ基、ノニノキシ基、デシロキシ基等が挙げられる。
71aが置換基を有するアルコキシ基である場合、置換基はヒドロキシ基又はアミノ基である。
置換基としてヒドロキシ基を含むアルコキシ基としては、例えば、ヒドロキシメチレンオキシ基、ヒドロキシエチレンオキシ基、ヒドロキシプロピレンオキシ基、ヒドロキシブチレンオキシ基等が挙げられる。
置換基としてアミノ基を含むアルコキシ基としては、例えば、アミノメチレンオキシ基、アミノエチレンオキシ基、アミノプロピレンオキシ基、アミノブチレンオキシ基等が挙げられる。
置換基としてヒドロキシ基及びアミノ基を含むアルコキシ基としては、例えば、ヒドロキシアミノメチリジンオキシ基、ヒドロキシアミノエチリジンオキシ基、ヒドロキシアミノプロピリジンオキシ基等が挙げられる。
2.R72a、R73a及びR74a
一般式(VIIa)中、R72a、R73a及びR74aはそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;ヒドロキシ基及びアルキル基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアミノ基;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルコキシ基である。前記アミノ基は、2つの前記置換基が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R72a、R73a及びR74aのうち2つ以上が水素原子であることはない。
上記アルキル基、上記アミノ基、上記アリール基及び上記アルコキシ基としては、上記「R71a」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
中でも、R72a、R73a及びR74aはそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアルキル基;又は、ヒドロキシ基及びアミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を含んでもよいアリール基であり、且つ、R72a、R73a及びR74aのうち2つ以上が水素原子であることはないことが好ましい。
化合物(VII)において、工業的入手の容易さ、及び、低温での硬化性が優れることから、R71aがアルコキシ基であり、R72aが水素原子又はアルキル基であり、且つ、R73a及びR74aがそれぞれアルキル基であることが好ましい。
また、化合物(VII)がtert-ブチルエステル構造又はtert-ペンチルエステル構造を有することにより、樹脂膜としたときの低温硬化性及び耐水性に優れ、また、sec-ブチルエステル構造又はiso-プロピルエステル構造を有することにより、水系塗料組成物における貯蔵安定性(水分散安定性及び粘度安定性)、並びに、塗膜としたときの低温硬化性及び硬度保持性に優れる傾向にある。
好ましい化合物(VIIa)としては、例えば、一般式(VIIa-1)で表される化合物(以下、「化合物(VIIa-1)」と称する場合がある)等が挙げられる。化合物(VIIa-1)は、好ましい化合物(VIIa)の一例であり、好ましい化合物(VIIa)は、これに限定されない。
Figure 2022119424000014
(一般式(VIIa-1)中、R711aは炭素数1以上8以下のアルキル基である。R712a、R713a、及びR714aはそれぞれ上記R72a、R73a及びR74aと同じである。)
化合物(VIIa-1)において、工業的入手の容易さ、及び、低温での硬化性が優れることから、R711aが炭素数1以上6以下のアルキル基であり、R712aが水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基であり、且つ、R713a及びR714aがそれぞれ炭素数1以上6以下のアルキル基であることが好ましい。
好ましい化合物(VIIa-1)としては、例えば、アセト酢酸イソプロピル、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸エチルtert-ブチル、マロン酸イソプロピルエチル等が挙げられる。
中でも、得られる塗膜の更なる低温硬化性の点から、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジ-tert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジイソプロピル又はマロン酸エチルtert-ブチルが好ましく、水分散安定性の観点から、マロン酸ジ-sec-ブチル又はマロン酸ジイソプロピルがより好ましい。
また、本実施形態の水系樹脂組成物が易接着処理積層体を形成するための接着剤組成物として用いられる場合には、被着体との密着性及び耐湿熱試験後の密着性が良好となることから、マロン酸ジ-tert-ブチル又はマロン酸ジ-tert-ペンチルがより好ましい。
すなわち、Bは、下記一般式(III-1)で表される構造単位(以下、「構造単位(III-1)」と称する場合がある)であることが好ましい。構造単位(III-1)は、特定の構造単位を有する活性メチレン系ブロック剤(上記化合物(VIIa))とイソシアネート基との反応することにより形成される構造単位である。構造単位(III-1)は、ケト体又は各種エノール体の構造を取り得る。なお、下記一般式(III-1)では、ケト体の構造を示しているが、ケト-エノール互変異性体である各種エノール体群も含む。この場合のケト体の組成比は、構造単位(III-1)の総モル量に対して、50モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。
Figure 2022119424000015
(一般式(III-1)中、R311は上記R71aと同じである。R312、R313、及びR314は、それぞれ上記R72a、R73a、及びR74aと同じである。)
構造単位(III-1)において、低温での硬化性が優れることから、R311が炭素数1以上6以下のアルコキシ基であり、R312が水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基であり、且つ、R313及びR314がそれぞれ炭素数1以上6以下のアルキル基であることが好ましい。
また、Bは、下記一般式(III-1-1)で表される構造単位(以下、「構造単位(III-1-1)」と称する場合がある)であることがより好ましい。なお、下記一般式(III-1-1)では、ケト体の構造を示しているが、ケト-エノール互変異性体である各種エノール体群も含む。この場合のケト体の組成比は、構造単位(III-1-1)の総モル量に対して、50モル%以上であることが好ましく、75モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。
Figure 2022119424000016
(一般式(III-1-1)中、R315は上記R711aと同じである。R316、R317、及びR318はそれぞれ上記R72a、R73a及びR74aと同じである。)
構造単位(III-1-1)において、低温での硬化性が優れることから、R315が炭素数1以上6以下のアルキル基であり、R316が水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基であり、且つ、R317及びR318がそれぞれ炭素数1以上6以下のアルキル基であることが好ましい。
また、構造単位(III-1-1)において、低温での硬化性が優れることから、R315がエチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、又はtert-ペンチル基であり、R316が水素原子又はメチル基であり、且つ、R317及びR318がそれぞれメチル基又はエチル基であることがより好ましい。
[C]
一般式(I)中、Cは、親水性化合物とイソシアネート基との反応により形成された構造単位であり、下記一般式(IV)で表される構造単位(構造単位(IV))である。
Figure 2022119424000017
(一般式(IV)中、R41は、親水性化合物の1つの活性水素基を除く残基である。破線は結合手を示す。)
(R41
41の由来となる親水性化合物としては、活性水素基を1つ以上有するものであれば特に限定されず、ノニオン性化合物、アニオン性化合物、カチオン性化合物が例示される。その中でも、pH変化時の粘度変化を受けにくい等の貯蔵安定性が良好になることから、ノニオン性化合物が好ましい。
活性水素基としては、例えば、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。
(1)ノニオン性化合物
ノニオン性化合物として、具体的には、モノアルコール、アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物が挙げられる。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらノニオン性化合物は、イソシアネート基と反応する活性水素基も有する。
中でも、ノニオン性化合物としては、少ない使用量でブロックポリイソシアネートの水分散性を向上できることから、モノアルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加したポリエチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましい。
エチレンオキサイドを付加した化合物のエチレンオキサイドの付加数としては、4以上30以下が好ましく、4以上25以下がより好ましい。エチレンオキサイドの付加数が上記下限値以上であることで、ブロックポリイソシアネートに水分散性をより効果的に付与できる傾向にあり、エチレンオキサイドの付加数が上記上限値以下であることで、低温貯蔵時にブロックポリイソシアネートの析出物がより発生しにくい傾向にある。
ブロックポリイソシアネートに付加されるノニオン性化合物に由来する構成単位の量(以下、「ノニオン性化合物の含有量」と称する場合がある)の下限値は、ブロックポリイソシアネートの水分散安定性の観点から、ブロックポリイソシアネートの固形分の質量に対して、0.1質量%が好ましく、0.15質量%がより好ましく、0.2質量%がさらに好ましく、0.25質量%が特に好ましい。
また、ノニオン性化合物の含有量の上限値は、得られる樹脂膜の耐水性の観点から、ブロックポリイソシアネートの固形分の質量に対して、55質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、48質量%がさらに好ましく、44質量%が特に好ましい。
すなわち、ノニオン性化合物の含有量は、ブロックポリイソシアネートの固形分の質量に対して、0.1質量%以上55質量%以下が好ましく、0.15質量%以上50質量%以下がより好ましく、0.20質量%以上48質量%以下がさらに好ましく、0.25質量%以上44質量%以下が特に好ましい。
ノニオン性化合物の含有量が上記範囲内であることにより、ブロックポリイソシアネートがより水に分散し、均質な膜が得られる傾向にある。
得られる樹脂膜の硬度や強度の低下を抑制する観点で、ブロックポリイソシアネートに付加されるノニオン性化合物の量をモル比で表すと、原料ポリイソシアネートのイソシアネート基100モル%に対して、0.05モル%以上30モル%以下が好ましく、0.10モル%以上27モル%以下がより好ましく、1モル%以上25モル%以下がさらに好ましく、5モル%以上25モル%以下がよりさらに好ましく、10モル%以上23モル%以下が特に好ましく、15モル%以上21モル%以下が最も好ましい。
(2)アニオン性化合物
アニオン性化合物は、アニオン性親水性基と、を有する化合物である。アニオン性親水性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基が挙げられる。
アニオン性化合物として、具体的には、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、モノヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物が挙げられる。
モノヒドロキシカルボン酸としては、例えば、1-ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシプロパン酸、12-ヒドロキシ-9-オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸(ヒドロキシピバリン酸)、乳酸等が挙げられる。
ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物としては、例えば、ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。
また、スルホン酸基と活性水素基とを併せて有する化合物も挙げられ、より具体的には、例えば、イセチオン酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物としては、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
ブロックポリイソシアネートに付加されたアニオン性親水性基は、塩基性物質であるアミン系化合物で中和することが好ましい。
アミン系化合物として、具体的には、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
水溶性アミノ化合物として、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンも挙げられ、これらを用いることもできる。これらのアミン系化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(3)カチオン性化合物
カチオン性化合物として、具体的には、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられる。また、グリシジル基等の活性水素基を有する化合物と、スルフィド、ホスフィン等のカチオン性親水性基を有する化合物を併せて、親水性化合物としてもよい。この場合は、予め、イソシアネート基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させ、グリシジル基等の官能基を付加し、その後、スルフィド、ホスフィン等の化合物を反応させる。製造の容易性の観点からは、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が好ましい。
カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物として、具体的には、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの化合物を用いて付加された三級アミノ基は、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルで四級化することもできる。
カチオン性化合物と脂環族ポリイソシアネートとの反応は、溶剤の存在下で反応させることができる。この場合の溶剤は、活性水素基を含まないものが好ましく、具体的には、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
ブロックポリイソシアネートに付加されたカチオン性親水性基は、アニオン性基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン性基として、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物として、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、エタンスルホン酸等が挙げられる。
燐酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、燐酸、酸性燐酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン基を有する化合物として、具体的には、例えば、塩酸等が挙げられる。
硫酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、硫酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基を有する化合物としては、カルボキシ基を有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸又は酪酸がより好ましい。
[x、y及びz]
一般式(I)中、x+y+zは、R11の由来となる原料ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数に相当する値であり、2.0以上20以下である。なお、ここでいうx、y及びzは、それぞれA、B及びCの、R11に対する統計的平均数を意味する。
x+y+zの下限値は、2.0であり、2.3が好ましく、2.5がより好ましく、3.0がさらに好ましい。一方、x+y+zの上限値は、20であり、15が好ましく、10がより好ましい。
すなわち、x+y+zは、2.0以上20以下であり、2.3以上15以下が好ましく、2.5以上10以下がより好ましく、3.0以上10以下がさらに好ましい。
x+y+zが上記下限値以上であることで、架橋性の低下をより抑制し、目的とする塗膜物性を得ることができる。一方、x+y+zが上記上限値以下であることで、凝集力が高くなりすぎることをより防止し、より平滑な樹脂膜を得ることができる。
また、x+y及びzはそれぞれ0ではない。zが0ではないことによって、水系樹脂組成物の分離や沈降等の発生を避けることができる。
x及びyのいずれかは0であってもよいが、x+yが0であることはない。xが0ではないことによって、水系樹脂組成物の貯蔵安定性及び樹脂膜としたときの低温硬化性が良好に保たれる。一方、yが0ではないことによって、樹脂膜としたときの低温硬化性をより良好に保つことができる。
zに対するx及びyの合計の比である(x+y)/zは、親水性化合物のイソシアネート基への導入モル数に対する、ブロック剤のイソシアネート基への導入モル数の比であり、その下限値は、1.0であることが好ましく、1.5であることがより好ましく、2.0であることがさらに好ましい。一方、(x+y)/zの上限値は、49であることが好ましい。
yに対するxの比であるx/yは、特に限定されることはないが、貯蔵時のpH低下を抑制する観点から、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。x/yの上限値は、特に限定されないが、例えば、50とすることができる。
なお、本実施形態の水系樹脂組成物中のブロックポリイソシアネートは、ブロック剤又は親水性化合物が導入されずに残存しているイソシアネート基(以下、「残存イソシアネート基」と称する場合がある)が一部含まれていてもよい。残存イソシアネート基の含有量は、使用目的により異なるが、ポリオール等を含む1液型水系樹脂組成物として使用する場合には、貯蔵安定性確保のため、原料ポリイソシアネートのイソシアネート基100モル%に対して、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましく、0モル%、すなわち、残存イソシアネート基が存在しないことが特に好ましい。
本実施形態の水系樹脂組成物は、後述のように、各種の添加剤を添加して使用することが可能である。その中で、上述したブロックポリイソシアネートと組み合わせての使用が好ましくない成分としては、例えば、少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル化合物、少なくとも分子中に1個の水酸基を有する分子量400以下のアルコール化合物、少なくとも分子中に1個の1級アミノ基又は2級アミノ基を有する分子量400以下の有機アミン化合物等が挙げられる。本実施形態の水系樹脂組成物において、これらの化合物(とりわけエステル化合物)の含有量をブロックポリイソシアネートの樹脂固形分に対し、それぞれ1.0質量%以下にすることが好ましい。これらの化合物の含有量が上記上限値以下であることで、貯蔵安定性(pH変化抑制、及びゲル分率保持率維持)を良好に保つことができる。
本実施形態の水系樹脂組成物において、少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル化合物の含有量が、ブロックポリイソシアネートの樹脂固形分に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがさらにより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%であることがさらにより好ましく、0.01質量%であることが特に好ましく、0.001質量%であることがより特に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
ブロックポリイソシアネートの樹脂固形分に対して、1.0質量%を超える量で含有することが好ましくないエステル化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、イソ吉草酸、サリチル酸、ステアリン酸、セバシン酸、乳酸、酪酸等の1価カルボン酸のエステル化合物;シュウ酸、酒石酸、炭酸、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸等の2価カルボン酸のカルボキシ基のうち少なくとも1個がエステル化されたエステル化合物;アセト酢酸、イソブタノイル酢酸、n-プロパノイル酢酸、n-ブタノイル酢酸、n-ヘキサノイル酢酸、マロン酸等の活性メチレン系化合物のカルボキシ基のうち少なくとも1個がエステル化されたエステル化合物;クエン酸、アセチルクエン酸等の3価カルボン酸のカルボキシ基のうち少なくとも1個がエステル化されたエステル化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール誘導体由来のエステル化合物等が挙げられる。その中でも、容易に加水分解されるため、活性メチレン系化合物のカルボキシ基のうち少なくとも1個がエステル化されたエステル化合物メチルは、含有することが特に好ましくない。
エステル化合物としてより具体的には、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n-プロピル、ギ酸n-ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸シクロヘキシル、酢酸2-エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸アミル、酢酸アリル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n-ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n-ブチル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、セバチン酸メチル、セバチン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n - ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n-ブチル等の1価カルボン酸由来のエステル化合物;シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル等の2価カルボン酸由来のエステル化合物;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチル、イソブタノイル酢酸n-プロピル、イソブタノイル酢酸イソプロピル、イソブタノイル酢酸n-ブチル、イソブタノイル酢酸2-エチルヘキシル、イソブタノイル酢酸フェニル、イソブタノイル酢酸ベンジル、n-プロパノイル酢酸メチル、
n-プロパノイル酢酸エチル、n-プロパノイル酢酸n-プロピル、n-プロパノイル酢酸イソプロピル、n-プロパノイル酢酸n-ブチル、n-プロパノイル酢酸イソブチル、n-プロパノイル酢酸tert-ブチル、n-ブタノイル酢酸メチル、n-ブタノイル酢酸エチル、n-ブタノイル酢酸n-プロピル、n-ブタノイル酢酸イソプロピル、n-ブタノイル酢酸n-ブチル、n-ブタノイル酢酸イソブチル、n-ブタノイル酢酸tert-ブチル、n-ペンタノイル酢酸メチル、n-ペンタノイル酢酸エチル、n-ペンタノイル酢酸n-プロピル、n-ペンタノイル酢酸イソプロピル、n-ペンタノイル酢酸n-ブチル、n-ペンタノイル酢酸イソブチル、n-ペンタノイル酢酸tert-ブチル、n-ヘキサノイル酢酸メチル、n-ヘキサノイル酢酸エチル、n-ヘキサノイル酢酸n-プロピル、n-ヘキサノイル酢酸イソプロピル、n-ヘキサノイル酢酸n-ブチル、n-ヘキサノイル酢酸イソブチル、n-ヘキサノイル酢酸tert-ブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジn-ヘキシル、マロン酸ジシクロヘキシル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ジベンジル等の活性メチレン系化合物由来のエステル化合物;クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等の3価カルボン酸由来のエステル化合物、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリセリン1,3-ジアセテート等の多価アルコール誘導体由来のエステル化合物等が挙げられる。
また、本実施形態の水系樹脂組成物において、水酸基を有する分子量400以下のアルコール化合物の含有量、及び、少なくとも分子中に1個の1級アミノ基又は2級アミノ基を有する分子量400以下の有機アミン化合物の含有量が、いずれもブロックポリイソシアネートの樹脂固形分に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがさらにより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましく、0.1質量%であることがさらにより好ましく、0.01質量%であることが特に好ましく、0.001質量%であることがより特に好ましく、0質量%であることが最も好ましい。
ブロックポリイソシアネートの樹脂固形分に対して、1.0質量%を超える量で含有することが好ましくないアルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、2-エチル-1-プロパノール、n-アミルアルコール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール等の1価飽和脂肪族アルコール;フェノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、3,6-ジオキサ-1-ヘプタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール;1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、シクロへキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコール等が挙げられる。
ブロックポリイソシアネートの樹脂固形分に対して、1.0質量%を超える量で含有することが好ましくない有機アミン化合物としては、例えば、モノエチルアミン、モノn-ブチルアミン、モノエタノールアミン等の脂肪族1級アミン;アニリン等の芳香族1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジトリデシルアミン、ジステアリルアミン等の直鎖状二級アミン;ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2-ブチルアミン)、ジ(tert-ブチル)アミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2-メチルシクロヘキシル)アミン等の分岐鎖状二級アミン;ジアリルアミン等の不飽和二重結合含有二級アミン;メチルエチルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、メチルtert-ブチルアミン、N-メチルヘキシルアミン、エチルtert-ブチルアミン、N-エチルヘキシルアミン、N-エチル-1,2-ジメチルプロピルアミン、N-エチルイソアミルアミン、N-エチルラウリルアミン、N-エチルステアリルアミン、N-メチルシクロヘキシルアミン、N-エチルシクロヘキシルアミン、N-tert-ブチルシクロヘキシルアミン等の非対称二級アミン;ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、エチルベンジルアミン、tert-ブチルベンジルアミン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、N-シクロヘキシルアニリン、3-(ベンジルアミノ)プロピオン酸エチルエステル等の芳香族置換基を有する二級アミン;2-(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、4-メチルアミノブタノール、N-エチルエタノールアミン、N-プロピルエタノールアミン、N-イソプロピルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン等の鎖状2級アミン;アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2-メチルピロリジン、3-ピロリジオール、2-ピロリドン、プロリン、4-ヒドロキシプロリン、ピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、4-ベンジルピペリジン、2,4-ジメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、3-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンエタノール、4-ピペリジンエタノール、4-ピペリジノール、2-ピペリドン、4-ピペリドン、4-ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4-ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドン、4-ピペリジノピペリジン、デカヒドロキノリン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N-アリルピペラジン、N-イソブチルピペラジン、N-シクロヘキシルピペラジン、N-シクロペンチルピペラジン、N-フェニルピペラジン、1-(2-ピリジル)ピペラジン、1-(4-ピリジル)ピペラジン、1-(2-ピリミジル)ピペラジン、N-メチルホモピペラジン、N-アセチルホモピペラジン、N-ブチリルホモピペラジン、オキサゾリジン、モルホリン、イミダゾリジン、2-イミダゾリドン、ヒダントイン、1-メチルヒダントイン、5-メチルヒダントイン、クレアチニン、パラバン酸、ウラゾール、チアゾリジン、チアルジン等の窒素原子を含む環状2級アミン等が挙げられる。
[ポリイソシアネート]
ブロックポリイソシアネートの製造に用いられるポリイソシアネートは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物(以下、「イソシアネートモノマー」と称する場合がある)を複数反応させて得られる反応物である。
イソシアネートモノマーとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましい。イソシアネートモノマーとして具体的には、例えば、以下のものが例示される。これらイソシアネートモノマーは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(1)ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等の芳香族ジイソシアネート。
(2)1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソイシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(MPDI)、リジンジイソシアネート(以下、「LDI」と称する場合がある)等の脂肪族ジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートモノマー。
(3)イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する場合がある)、1,3-ビス(ジイソシアネートメチル) シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートノルボルナン、ジ(イソシアネートメチル)ノルボルナン等の脂環族ジイソシアネート等の脂環族イソシアネートモノマー。
(4)4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等のトリイソシアネート等のその他脂肪族イソシアネートモノマー。
中でも、耐候性が優れることから、イソシアネートモノマーとしては、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群から選択される1種類以上のジイソシアネートであることが好ましい。また、イソシアネートモノマーとしては、工業的入手の容易さから、HDI又はIPDIであることがより好ましい。また、イソシアネートモノマーとしては、ブロックポリイソシアネートを低粘度にする観点から、HDIであることがさらに好ましい。
また、ポリイソシアネートの製造に用いられるイソシアネートモノマーとしては、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれかを単独で用いてもよく、或いはそれらを組み合わせて用いてもよいが、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを組み合わせて用いることが好ましく、HDI及びIPDIを用いることが特に好ましい。脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを用いることで、塗膜としたときの強靭性及び硬度をより向上させることができる。
ポリイソシアネートにおいて、塗膜硬度、強度向上の観点において、脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比(脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位/脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位)は、50/50以上95/5以下が好ましく、55/45以上93/7以下がより好ましく、60/40以上91/9以下がさらに好ましく、65/35以上90/10以下がさらに好ましい。
脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比が上記下限値以上であることで、塗膜としたときの可とう性が低下することをより効果的に抑制することができる。一方で、上記上限値以下であることで、塗膜としたときの硬度をより向上させることができる。
脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比は、例えば、以下の方法を用いて算出することができる。まず、反応後の未反応ジイソシアネート質量とガスクロマトグラフ測定により得られたこの未反応ジイソシアネート中の脂肪族ジイソシアネート濃度及び脂環族ジイソシアネート濃度とから、未反応脂肪族ジイソシアネートの質量及び未反応脂環族ジイソシアネートの質量を算出する。次いで、仕込んだ脂肪族ジイソシアネートの質量及び脂環族ジイソシアネートの質量から、上記算出した未反応脂肪族ジイソシアネートの質量及び未反応脂環族ジイソシアネートの質量をそれぞれ差し引いた後、得られた差をそれぞれ脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量、脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量とする。次いで、脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量を脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量で除することで、脂環族ジイソシアネートに由来する構成単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構成単位の質量比が得られる。
(ポリオール)
ポリイソシアネートは、上述したジイソシアネートモノマーと平均水酸基官能基数が3.0以上8.0以下であるポリオールとから誘導されたものを用いることができる。これにより、得られるポリイソシアネートの平均イソシアネート基数をより大きくすることができる。当該ポリイソシアネートでは、ポリオールの水酸基と、ジイソシアネートモノマーのイソシアネート基との反応により、ウレタン基が形成されている。
ポリオールの平均水酸基官能基数は3.0以上8.0以下が好ましく、3以上6以下がより好ましく、3以上5以下がさらに好ましく、3又は4が特に好ましい。なお、ここでいうポリオールの平均水酸基官能基数はポリオール1分子内に存在する水酸基の数である。
ポリオールの数平均分子量としては、塗膜硬度、強度向上の観点において、100以上1000以下が好ましく、100以上900以下が好ましく、100以上600以下がより好ましく、100以上570以下がより好ましく、100以上500以下がさらに好ましく、100以上400以下がよりさらに好ましく、100以上350以下が特に好ましく、100以上250以下が最も好ましい。
ポリオールの数平均分子量が上記範囲内であることで、ブロックポリイソシアネートは、塗膜としたときの低温硬化性により優れ、且つ、特に硬度や強度により優れる。ポリオールの数平均分子量Mnは、例えば、GPC測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
このようなポリオールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、3価以上の多価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。
ポリカプロラクトンポリオールの市販品としては、例えば、ダイセル社の「プラクセル303」(数平均分子量300)、「プラクセル305」(数平均分子量550)、「プラクセル308」(数平均分子量850)、「プラクセル309」(数平均分子量900)等が挙げられる。
(ポリイソシアネートの製造方法)
ポリイソシアネートの製造方法について、以下に詳細を説明する。
ポリイソシアネートは、例えば、アロファネート基を形成するアロファネート化反応、ウレトジオン基を形成するウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン基を形成するイミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応、ウレタン基を形成するウレタン化反応、及び、ビウレット基を形成するビウレット化反応を、過剰のイソシアネートモノマー存在下で一度に製造して、反応終了後に、未反応のイソシアネートモノマーを除去して得ることができる。すなわち、上記反応により得られるポリイソシアネートは、上述のイソシアネートモノマーが複数結合したものであり、且つ、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選択される1種類以上を有する反応物である。
また、上記の反応を別々に行ない、それぞれ得たポリイソシアネートを特定比率で混合してもよい。
製造の簡便さからは、上記反応を一度に行いポリイソシアネートを得ることが好ましく、各官能基のモル比を自由に調整する観点からは、別々に製造した後に混合することが好ましい。
(1)アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法
アロファネート基含有ポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーにアルコールを添加し、アロファネート化反応触媒を用いることにより得られる。
アロファネート基の形成に用いられるアルコールは、炭素、水素及び酸素のみで形成されるアルコールが好ましい。
前記アルコールとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、モノアルコール、ジアルコール等が挙げられる。これらアルコールは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール等が挙げられる。
ジアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
中でも、アルコールとしては、モノアルコールが好ましく、分子量200以下のモノアルコールがより好ましい。
アロファネート化反応触媒としては、以下に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
錫のアルキルカルボン酸塩(有機錫化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
鉛のアルキルカルボン酸塩(有機鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸鉛等が挙げられる。
亜鉛のアルキルカルボン酸塩(有機亜鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
ビスマスのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ビスマス等が挙げられる。
ジルコニウムのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム等が挙げられる。
ジルコニルのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニル等が挙げられる。これら触媒は、1種を単独又は2種以上を併用することができる。
また、後述するイソシアヌレート化反応触媒もアロファネート化反応触媒となり得る。後述するイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行なう場合は、イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート(以下、「イソシアヌレート型ポリイソシアネート」と称する場合がある)も当然のことながら生成する。
中でも、アロファネート化反応触媒として、後述するイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応とイソシアヌレート化反応とを行うことが経済的生産上、好ましい。
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の下限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、10質量ppmであることが好ましく、20質量ppmであることがより好ましく、40質量ppmであることがさらに好ましく、80質量ppmであることが特に好ましい。
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、800質量ppmであることがより好ましく、600質量ppmであることがさらに好ましく、500質量ppmであることが特に好ましい。
すなわち、上述したアロファネート化反応触媒の使用量は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、10質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、20質量ppm以上800質量ppm以下であることがより好ましく、40質量ppm以上600質量ppm以下であることがさらに好ましく、80質量ppm以上500質量ppm以下であることが特に好ましい。
また、アロファネート化反応温度の下限値としては、40℃であることが好ましく、60℃であることがより好ましく、80℃であることがさらに好ましく、100℃であることが特に好ましい。
また、アロファネート化反応温度の上限値としては、180℃であることが好ましく、160℃であることがより好ましく、140℃であることがさらに好ましい。
すなわち、アロファネート化反応温度としては、40℃以上180℃以下であることが好ましく、60℃以上160℃以下であることがより好ましく、80℃以上140℃以下であることがさらに好ましく、100℃以上140℃以下であることが特に好ましい。
アロファネート化反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより向上させることが可能である。アロファネート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
(2)ウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレトジオン基を有するポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、イソシアネートモノマーを、ウレトジオン化反応触媒を用いて、又は、熱により、多量化することによって製造することができる。
ウレトジオン化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリアルキルホスフィン、トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン、シクロアルキルホスフィン等の第3ホスフィン、ルイス酸等が挙げられる。
トリアルキルホスフィンとしては、例えば、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン等が挙げられる。
トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィンとしては、例えば、トリス-(ジメチルアミノ)ホスフィン等が挙げられる。
シクロアルキルホスフィンとしては、例えば、シクロヘキシル-ジ-n-ヘキシルホスフィン等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、三フッ化ホウ素、酸塩化亜鉛等が挙げられる。
ウレトジオン化反応触媒の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進しうる。
ウレトジオン化反応触媒を用いる場合には、所望の収率となった時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチル等のウレトジオン化反応触媒の失活剤を添加してウレトジオン化反応を停止することが好ましい。
また、ウレトジオン化反応触媒を用いることなく、上記脂肪族ジイソシアネート及び上記脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートを加熱してウレトジオン基を有するポリイソシアネートを得る場合、その加熱温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上170℃以下がより好ましい。また、加熱時間は1時間以上4時間以下が好ましい。
(3)イミノオキサジアジンジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからイミノオキサジアジンジオン基含有ポリイソシアネートを誘導する場合は、通常、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒を用いる。
イミノオキサジアジンジオン化触媒としては、例えば、以下の1)又は2)に示すもの等が挙げられる。
1)一般式M[F]、又は、一般式M[F(HF)]で表される(ポリ)フッ化水素
(式中、m及びnは、m/n>0の関係を満たす整数である。Mはn荷電カチオン(混合物)又は合計でn価の1個以上のラジカルである。)
2)一般式R-CR’-C(O)O-、又は、一般式R=CR’-C(O)O-で表される化合物と、第4級アンモニウムカチオン、又は、第4級ホスホニウムカチオンとからなる化合物。
(式中、R及びRはそれぞれ独立に、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、飽和又は不飽和の炭素数1以上30以下のパーフルオロアルキル基である。複数あるR’はそれぞれ独立に水素原子、又は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1以上20以下のアルキル基若しくはアリール基である。)
1)の化合物((ポリ)フッ化水素)として具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウムフルオリド水和物、テトラエチルアンモニウムフルオリド等が挙げられる。
2)の化合物として具体的には、例えば、3,3,3-トリフルオロカルボン酸、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブタン酸、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンタン酸、3,3-ジフルオロプロパ-2-エン酸等が挙げられる。
中でも、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒としては、入手容易性の観点からは、1)が好ましく、安全性の観点からは、2)が好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量の下限値は、特に限定されないが、反応性の観点から、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5ppmが好ましく、10ppmがより好ましく、20ppmがさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量の上限値は、生成物の着色及び変色の抑制や反応制御の観点から、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5000ppmが好ましく、2000ppmがより好ましく、500ppmがさらに好ましい。
すなわち、イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量は、原料であるHDI等のイソシアネートモノマーに対して、質量比で、5ppm以上5000ppm以下であることが好ましく、10ppm以上2000ppm以下がより好ましく、20ppm以上500ppm以下がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化の反応温度の下限値は、特に限定されないが、反応速度の観点から、40℃が好ましく、50℃がより好ましく、60℃がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化の反応温度の上限値は、生成物の着色及び変色の抑制の観点から、150℃が好ましく、120℃がより好ましく、110℃がさらに好ましい。
すなわち、イミノオキサジアジンジオン化の反応温度は、40℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上120℃以下がより好ましく、60℃以上110℃以下がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化反応が所望のイミノオキサジアジンジオン基含有量に達した時点で、イミノオキサジアジンジオン化反応を停止させることができる。イミノオキサジアジンジオン化反応は、例えば、酸性化合物を反応液に添加することで、停止することができる。酸性化合物としては、例えば、リン酸、酸性リン酸エステル、硫酸、塩酸、スルホン酸化合物等が挙げられる。これにより、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒を中和させる、又は、熱分解若しくは化学分解等により不活性化させる。反応停止後、必要があれば、ろ過を行う。
(4)イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、一般的に使用されるイソシアヌレート化反応触媒が挙げられる。
イソシアヌレート化反応触媒としては、特に限定されないが、一般に塩基性を有するものであることが好ましい。イソシアヌレート化反応触媒として具体的には、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記テトラアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
2)ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等のアリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記アリールトリアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
3)トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記ヒドロキシアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
4)酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクチル酸、カプリン酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩。
5)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート。
6)ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物。
7)マンニッヒ塩基類。
8)第3級アミン類とエポキシ化合物との混合物。
9)トリブチルホスフィン等の燐系化合物。
中でも、不要な副生成物を生じさせにくい観点からは、イソシアヌレート化反応触媒としては、4級アンモニウムのハイドロオキサイド又は4級アンモニウムの有機弱酸塩であることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、アリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、又は、アリールトリアルキルアンモニウムの有機弱酸塩であることがより好ましい。
上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、500質量ppmであることがより好ましく、100質量ppmであることがさらに好ましい。
一方、上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の下限値は、特別な限定はないが、例えば、10質量ppmであってもよい。
イソシアヌレート化反応温度としては、50℃以上120℃以下であることが好ましく、60℃以上90℃以下であることがより好ましい。イソシアヌレート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
所望の転化率(仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対する、イソシアヌレート化反応で生成したポリイソシアネートの質量の割合)になった時点で、イソシアヌレート化反応を、酸性化合物(例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等)の添加によって停止する。
なお、ポリイソシアネートを得るためには、反応の進行を初期で停止する必要がある。しかしながら、イソシアヌレート化反応は、初期の反応速度が非常に速いため、反応の進行を初期で停止することに困難が伴い、反応条件、特に触媒の添加量及び添加方法は慎重に選択する必要がある。例えば、触媒の一定時間毎の分割添加方法等が好適なものとして推奨される。
したがって、ポリイソシアネートを得るためのイソシアヌレート化反応の転化率は、10%以上60%以下であることが好ましく、15%以上55%以下であることがより好ましく、20%以上50%以下であることがさらに好ましい。
イソシアヌレート化反応の転化率が上記上限値以下であることによって、ブロックポリイソシアネート成分をより低粘度とすることができる。また、イソシアヌレート化反応の転化率が上記下限値以上であることによって、反応停止操作をより容易に行うことができる。
また、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導する際に、上記イソシアネートモノマー以外に1価以上6価以下のアルコールを用いることができる。
使用することのできる1価以上6価以下のアルコールとしては、例えば、非重合性アルコール、重合性アルコールが挙げられる。ここでいう「非重合性アルコール」とは、重合性基を有さないアルコールを意味する。一方、「重合性アルコール」とは、重合性基及び水酸基を有する単量体を重合して得られるアルコールを意味する。
非重合性アルコールとしては、例えば、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等の多価アルコールが挙げられる。
モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ノナノール、2-エチルブタノール、2,2-ジメチルヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、例えば、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
重合性アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、アクリルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、二塩基酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物との縮合反応によって得られる生成物が挙げられる。
二塩基酸としては、特に限定されないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の二塩基酸が挙げられる。
多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、及び、グリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが挙げられる。
また、ポリエステルポリオール類としては、例えば、上記多価アルコールを用いて、ε-カプロラクトンを開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属の水酸化物、又は、強塩基性触媒を使用して、多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、ポリアミン化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、上記ポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオール類が挙げられる。
アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。
多価アルコールとしては、上記ポリエステルポリオール類において例示されたものと同様のものが挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられる。
ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
アクリルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合したものが挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和アミド、ビニル系単量体、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等が挙げられる。
ビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ポリオレフィンポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエン及びその水素添加物等が挙げられる。
(5)ウレタン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレタン基を含有するポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、過剰のイソシアネートモノマーと、上記ポリオールと、必要に応じて上記ポリオール以外のアルコールと、を混合し、必要に応じてウレタン化反応触媒を添加することで製造することができる。
前記ポリオールとしては、上記「ポリオール」において例示されたものと同様ものが挙げられる。
前記ポリオール以外のアルコールとしては、上記「イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの製造方法」において例示されたもののうち、上記「ポリオール」において例示されたものを除くものが挙げられる。
ウレタン化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、スズ系化合物、亜鉛系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。
ウレタン化反応温度としては、50℃以上160℃以下であることが好ましく、60℃以上120℃以下であることがより好ましい。
ウレタン化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
また、ウレタン化反応時間としては、30分以上4時間以下であることが好ましく、1時間以上3時間以下であることがより好ましく、1時間以上2時間以下であることがさらに好ましい。
ポリオール(及び、必要に応じてポリオール以外のアルコール)の水酸基のモル量に対するイソシアネートモノマーのイソシアネート基のモル量の比は、2/1以上50/1以下が好ましい。当該モル比が上記下限値以上であることによって、ポリイソシアネートをより低粘度とすることができる。当該モル比が上記上限値以下であることによって、ウレタン基含有ポリイソシアネートの収率をより高められる。
(6)ビウレット基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからビウレット基を含有するポリイソシアネートを誘導するためのビウレット化剤としては、特に限定されないが、例えば、水、1価の第3級アルコール、蟻酸、有機第1モノアミン、有機第1ジアミン等が挙げられる。
ビウレット化剤1モルに対して、イソシアネート基を6モル以上とすることが好ましく、10モル以上とすることがより好ましく、10モル以上80モル以下とすることがさらに好ましい。ビウレット化剤1モルに対するイソシアネート基のモル量が上記下限値以上であれば、ポリイソシアネートが十分に低粘度になり、上記上限値以下であれば、樹脂膜としたときの低温硬化性がより向上する。
また、ビウレット化反応の際に溶剤を用いてもよい。溶剤は、イソシアネートモノマーと水等のビウレット化剤を溶解し、反応条件下で均一相を形成させるものであればよい。
前記溶剤として具体的には、例えば、エチレングリコール系溶剤、リン酸系溶剤等が挙げられる。
エチレングリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、エチレングリコールエチル-n-プロピルエーテル、エチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールエチル-n-ブチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピル-n-ブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-プロピル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピル-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
リン酸系溶剤としては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル等が挙げられる。
これらの溶剤は単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
中でも、エチレングリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート又はジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
また、リン酸系溶剤としては、リン酸トリメチル又はリン酸トリエチルが好ましい。
ビウレット化反応温度としては、70℃以上200℃以下が好ましく、90℃以上180℃以下がより好ましい。上記上限値以下であることで、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に防止できる傾向にある。
上述したアロファネート化反応、ウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート化反応、ウレタン化反応、及び、ビウレット化反応は、それぞれ逐次行ってもよく、そのいくつかを並行して行ってもよい。
反応終了後の反応液から、未反応イソシアネートモノマーを薄膜蒸留、抽出等により除去し、ポリイソシアネートを得ることができる。
また、得られたポリイソシアネートに対して、例えば、貯蔵時の着色を抑制する目的で、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール等のヒンダードフェノール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら酸化防止剤や紫外線吸収剤は、1種を単独又は2種以上を併用してもよい。これらの添加量は、ポリイソシアネートの質量に対して、10質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましい。
(ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数)
ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数は、樹脂膜としたときの低温硬化性を高める点で、2以上が好ましく、樹脂膜としたときの低温硬化性、及び、多価ヒドロキシ化合物との相溶性の両立の観点から、3以上20以下がより好ましく、3.2以上10以下がさらに好ましく、3.4以上8以下が特に好ましく、3.8以上6以下が最も好ましい。
ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数は、後述する実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
[ブロックポリイソシアネートの製造方法]
次に、ブロックポリイソシアネートの製造方法について説明する。例えば、活性メチレン系ブロック剤としてマロン酸ジエステルを用いる場合であって、化合物(I)におけるxが0ではない場合に、ブロックポリイソシアネートは、大きく分類して、2つの製造方法で合成しうる(以下、「製造方法1」及び「製造方法2」と称する)。
製造方法1は、以下の第1A工程~第3A工程を含む。
第1A工程:一般式(I)中のR11の源となるポリイソシアネート(a)と、下記一般式(VII)で表されるマロン酸ジエステル(b)及び親水性化合物(d)とを反応させる。
第2A工程:下記一般式(VIII)で表される有機アミン化合物(c)を反応させる。
第3A工程:(i)第2A工程で残存した有機アミン化合物、(ii)第1A工程で生成したポリイソシアネートとマロン酸ジエチルとの反応生成物のエステル基及び有機アミン化合物の反応(すなわち第2A工程の反応)により解離したアルコール化合物、(iii)第1A工程実施後に残存したマロン酸ジエステル、並びに(iv)第1A工程実施後に残存したマロン酸ジエステルと第2A工程で添加した有機アミン化合物(c)との反応物であるマロン酸モノエステルモノアミドを、所望の上限以下まで低減させる。
Figure 2022119424000018
(一般式(VII)中、R71及びR72は、それぞれ独立に上記R21と同じである。)
Figure 2022119424000019
(一般式(VIII)中、R81及びR82はそれぞれ独立に、上記R22及びR23と同じである。)
第1A工程においては、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基と親水性化合物(d)の活性水素基との反応、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基とマロン酸ジエステル(b)との反応を同時に行うこともでき、或いは、予めどちらかの反応を行った後に、2つ目の反応を実施することもできる。
その中でも、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基と親水性化合物(d)の活性水素基とを反応させた後に、当該反応生成物とマロン酸ジエステル(b)と反応させることが好ましい。
製造方法2は、以下の第1B工程~第2B工程を含む。
第1B工程:一般式(I)中のRの源となるポリイソシアネートのイソシアネート基と親水性化合物(d)、下記一般式(IX)で表される化合物(マロン酸モノエステルモノアミド(IX))を反応させる。
第2B工程:第1B工程実施後に残存した下記一般式(IX)で表される化合物を所望の上限以下まで低減させる。
Figure 2022119424000020
(一般式(IX)中、R91は、上記R21と同じである。R92及びR93はそれぞれ独立に、上記R22及びR23と同じである。)
第1B工程においては、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基と親水性化合物(d)の活性水素基との反応、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基と上記一般式(IX)で表される化合物との反応を同時に行うこともでき、或いは、予めどちらかの反応を行った後に、2つ目の反応を実施することもできる。
その中でも、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基と親水性化合物(d)の活性水素基とを反応させた後に、当該反応生成物と上記一般式(IX)で表される化合物と反応させることが好ましい。
また、第1B工程において、マロン酸モノエステルモノアミド(IX)の一部又は全部を、下記一般式(X)で表される化合物(マロン酸ジアミド(X))に置き換えて反応を行ってもよい。これにより、上記化合物(Ia)のブロックポリイソシアネートを製造することができる。
Figure 2022119424000021
(一般式(X)中、R101、R102、R103及びR104はそれぞれ独立に、上記R22及びR23と同じである。)
中でも、製造の簡便さから、製造方法1が好ましい。以下に製造方法1についてより詳細に説明する。
(第1A工程)
第1A工程において、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対して、親水性化合物(d)と一般式(VII)で表されるマロン酸ジエステル(b)との合計モル量の割合の下限が77モル%であることが好ましく、90モル%であることがより好ましく、95モル%であることがさらに好ましく、100モル%であることが特に好ましい。一方で、上記合計モル量の割合の上限が、150モル%であることが好ましく、130モル%であることがより好ましく、120モル%であることがさらに好ましく、110モル%であることが特に好ましい。
すなわち、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対して、親水性化合物(d)と一般式(VII)で表されるマロン酸ジエステル(b)との合計モル量の割合は、77モル%以上150モル%以下であることが好ましく、90モル%以上130モル%以下であることがより好ましく、95モル%以上120モル%以下であることがさらに好ましく、100モル%以上110モル%以下であることが特に好ましい。
上記合計モル量の割合が上記下限値以上であることによって、組成物の低温硬化性の悪化をより効果的に防止することができる。一方、上記合計モル量の割合が上記上限値以下であることによって、焼付塗膜の耐水性等の塗膜物性に対する悪影響をより効果的に抑制することができる。
第1A工程において用いられる親水性化合物は、水系樹脂組成物における配合性を高める機能を有する。
第1A工程におけるマロン酸ジエステル(b)の添加量の下限は、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対して、75モル%であることが好ましく、85モル%であることがより好ましく、90モル%であることがさらに好ましい。一方、マロン酸ジエステル(b)の添加量の上限は、148モル%であることが好ましい。
すなわち、マロン酸ジエステル(b)の添加量は、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対して、75モル%以上148モル%以下であることが好ましく、85モル%以上148モル%以下であることがより好ましく、90モル%以上148モル%以下であることがさらに好ましい。
マロン酸ジエステル(b)の添加量が上記下限値以上であることによって、架橋密度の低下をより防止し、塗膜の耐水性等の所望の物性を得ることができる。一方、マロン酸ジエステル(b)の添加量が上記上限値以下であることによって、焼付塗膜の耐水性等の塗膜物性に対する悪影響をより抑制することができる。
第1A工程における親水性化合物(d)の添加量の下限は、活性水素基のモル数を基準として、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対して、2モル%であることが好ましい。一方、親水性化合物(d)の添加量の上限は、活性水素基のモル数を基準として、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対して、50モル%であることが好ましく、40モル%であることがより好ましく、35モル%であることがさらに好ましい。
すなわち、親水性化合物(d)の添加量は、活性水素基のモル数を基準として、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対して、2モル%以上50モル%以下であることが好ましく、2モル%以上40モル%以下であることがより好ましく、2モル%以上35モル%以下であることがさらに好ましい。
親水性化合物(d)の添加量が上記下限値以上であることによって、水系樹脂組成物のより充分な水分散性を得ることができる。一方、親水性化合物(d)の添加量が上記上限値以下であることによって、架橋密度の低下をより抑制し、塗膜の耐水性等の所望の物性を得ることができる。
第1A工程における親水性化合物(d)は、上記「C」の「R41」において例示されたものと同じものが挙げられる。これらの中でも、製造容易性から、ノニオン性化合物、又はアニオン性化合物が好ましく、ノニオン性化合物がより好ましい。これらの親水性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
第1A工程におけるマロン酸ジエステル(b)は、上記一般式(VII)で表される化合物である。
一般式(VII)中、R71及びR72はそれぞれ独立に、上記R21と同じである。中でも、入手の容易さから、R71及びR72は同一であることが好ましい。R71及びR72が炭素数8以下のアルキル基であることによって、有効NCO%の低下をより抑制すると共に、主剤等との相溶性の悪化をより防止することができる。中でも、R71及びR72はそれぞれ独立に、炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
マロン酸ジエステル(b)として具体的には、上記「活性メチレン系ブロック剤」において例示されたものと同じものが挙げられる。中でも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジ-sec-ブチル、マロン酸ジtert-ブチル、マロン酸メチルtert-ブチル、マロン酸エチルtert-ブチル、マロン酸ジ-tert-ペンチル、マロン酸ジn-ヘキシル、又はマロン酸ジ2-エチルヘキシルが好ましい。また、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジtert-ブチル、又はマロン酸メチルtert-ブチルがより好ましく、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、又はマロン酸ジtert-ブチルがさらに好ましく、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、又はマロン酸ジtert-ブチルが特に好ましい。
第1A工程の反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができる。溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性でかつ加水分解しにくい溶剤を用いるのが好ましい。好ましい溶剤としては、例えば、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤である。
第1A工程の反応に際しては、反応触媒を使用することができる。具体的な反応触媒としては、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、金属アルコラート、3級アミン等が挙げられる。その中でも3級アミンが好ましい。
用いた反応触媒が水系樹脂組成物又は樹脂膜物性に悪影響を及ぼす可能性がある場合には、該触媒を酸性化合物等で失活させることが好ましい。この場合の酸性化合物としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等の無機酸;メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸メチルエステル、p-トルエンスルホン酸エチルエステル等のスルホン酸又はその誘導体;燐酸エチル、燐酸ジエチル、燐酸イソプロピル、燐酸ジイソプロピル、燐酸ブチル、燐酸ジブチル、燐酸2-エチルヘキシル、燐酸ジ(2-エチルヘキシル)、燐酸イソデシル、燐酸ジイソデシル、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、ピロリン酸ブチル、亜燐酸ブチル等が挙げられる。これらの酸性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
第1A工程の反応は、一般に-20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましい。反応温度が上記上限値以下であることによって、副反応をより抑制することができる。一方、反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより高く維持することができる。
一般式(I)におけるx、y及びzは、第1A工程におけるポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対する親水性化合物(d)及びマロン酸ジエステル(b)の添加量(モル%)とその反応率に依存する。しかし、別の反応槽で合成したブロックポリイソシアネートを最終的に混合し、ブロックポリイソシアネート混合物として用いる場合には、その混合比にも依存する。
上述したように、x、y及びzは、第1A工程でのポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対する親水性化合物(d)、マロン酸ジエステル(b)の添加量(モル%)だけでなく、その反応率に依存する。そのため、第2A工程実施前に、第1A工程終了時のイソシアネート残存率を確認することが好ましい。未反応のイソシアネート基が残存している場合、第2A工程の有機アミン(c)は、第1A工程で生成したイソシアネート基とマロン酸ジエステル(b)との反応生成物のエステル部との反応よりも、イソシアネート基と優先して反応する。本実施形態の水系樹脂組成物に用いられるブロックポリイソシアネートとしては、(x+y+z)に対するxの比率が高いこと、及び、残存イソシアネート基が少ないことが好ましい。そのため、第1A工程において、イソシアネート基が消滅したことを確認した後に、第2A工程を行うことがより好ましい。
(第2A工程)
次に、第2A工程について説明する。第2A工程における一般式(VIII)で表される有機アミン化合物(c)の添加量の下限値は、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対して、50モル%であることが好ましく、70モル%であることがより好ましく、80モル%であることがさらに好ましく、90モル%であることが特に好ましい。一方、有機アミン化合物(c)の添加量の上限値としては、500モル%であることが好ましく、400モル%であることがより好ましく、300モル%であることがさらに好ましく、200モル%であることが特に好ましい。
すなわち、有機アミン化合物(c)の添加量は、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対して、50モル%以上500モル%以下であることが好ましく、70モル%以上400モル%以下であることがより好ましく、80モル%以上300モル%以下であることがさらに好ましく、90モル%以上200モル%以下であることが特に好ましい。
有機アミン化合物(c)の添加量が上記下限値以上であることによって、貯蔵安定性をより高く保つことができる。一方、上記上限値以下であることによって、フリーなアミンの量をより低減し、焼付塗膜の着色をより防止することができる。
第2A工程で使用する有機アミン(c)は、第1A工程後のポリイソシアネート(a)とマロン酸ジエステル(b)との反応生成物中のエステル基との反応を主目的として、添加している。
しかしながら、第1A工程後にイソシアネート基が残存している場合は、残存イソシアネート基と第2A工程で用いる有機アミン(c)が反応しても構わない。その場合、一般式(I)中のBとなる。
また、第1A工程でポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対するマロン酸ジエステル(b)及び親水性化合物(d)の合計モル量の割合が100モル%を超える量で添加された場合には、第1A工程終了後に、マロン酸ジエステル(b)が残存する場合がある。その場合、第1A工程後に残存するマロン酸ジエステル(b)と第2A工程で添加した有機アミン化合物(c)との反応物であるマロン酸モノエステルモノアミド又はマロン酸ジアミドを、一部含んでいても構わない。
第2A工程で使用する有機アミン(c)は、上記一般式(VIII)で表される化合物である。
一般式(VIII)中、R81及びR82はそれぞれ独立に、上記R22及びR23と同じである。
中でも、R81及びR82としては、それぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい、炭素数1以上30以下の炭化水素基であるか、或いは、R81及びR82が互いに結合して、窒素原子を含む3員環、4員環、5員環若しくは6員環を形成していることが好ましい。
有機アミン(c)として具体的には、大きく分けて、鎖状二級アミンと、窒素原子を含む環状二級アミンに分類される。
有機アミン(c)が鎖状二級アミンの場合の一般式(II)中のR81及びR82は、それぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい、炭素数1以上30以下の炭化水素基である。R81及びR82の炭素数がそれぞれ上記上限値以下であることで、有効NCO%の低下を抑制し、且つ、主剤である多価ヒドロキシ化合物との相溶性をより向上させることができる。その中でも、R22及びR23は、炭素数1以上8以下の炭化水素基であることが好ましく、炭素数3以上6以下の分岐鎖状アルキル基であることがより好ましく、炭素数3以上4以下の分岐鎖状アルキル基であることがさらに好ましく、イソプロピル基であることが特に好ましい。
81及びR82において、含んでもよい置換基としては、エーテル結合、又はエステル結合が好ましい。
鎖状二級アミン及び窒素原子窒素原子を含む環状二級アミンを含む環状二級アミンとしては、それぞれ上記「A」の「R81及びR82」において例示されたものと同じものが挙げられる。
第2A工程においては、上記の鎖状二級アミン、窒素原子を含む環状二級アミンを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。第2A工程の反応も、第1A工程の反応と同様に、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができる。溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性でかつ加水分解しにくい溶剤を用いるのが好ましい。好ましい溶剤は、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。
第2A工程の反応に際しては、第1A工程用として上記の触媒も使用することもできるが、使用した場合、反応液が着色する場合があり、使用しないことが望ましい。また、第1A工程で触媒を使用した場合には、酸性化合物等で失活させた後、第2A工程を実施することが好ましい。
第2A工程の反応も、第1A工程と同様、一般に-20℃以上150℃以下で行うことができ、0℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましい。反応温度が上記上限値以下であることによって、副反応をより抑制することができる。一方、反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより高く維持することができる。
(第3A工程)
次に、製造方法1の第3A工程について説明する。
第3A工程は、第2A工程の反応後に、(i)第2A工程で残存した有機アミン化合物、(ii)第1A工程で生成したポリイソシアネートとマロン酸ジエチルとの反応生成物のエステル基及び有機アミン化合物の反応(すなわち第2A工程の反応)により解離したアルコール化合物、(iii)第1A工程実施後に残存したマロン酸ジエステル、並びに(iv)第1A工程実施後に残存したマロン酸ジエステルと第2A工程で添加した有機アミン化合物(c)との反応物であるマロン酸モノエステルモノアミドを、所望の上限以下まで低減させる工程である。
上記(i)~(iv)の化合物の低減は、水系樹脂組成物としての貯蔵安定性(pH変化抑制、ゲル分率保持率維持)を向上させる効果がある。
そのため、第2A工程の反応後に、例えば減圧度1.33×10-3KPa以上13.33KPa以下、温度20℃以上120℃以下等の条件における除去精製や、n-ヘキサン等の貧溶媒を加えて実施する再沈殿等の方法により、上記各成分の含有量を低減させることが好ましい。
除去精製を実施する場合の減圧度の上限値は、13.33KPaであることが好ましく、1.33KPaであることがより好ましく、1.33×10-1KPaであることがさらに好ましい。減圧度が上記上限値以下であることにより、沸点が高めのマロン酸ジエステル等もより低減することができる。加熱温度の上限値としては、120℃であることが好ましく、100℃であることがより好ましく、80℃であることがさらに好ましい。加熱温度が上記上限値以下であることで、ブロックポリイソシアネートの黄変等がより防止できる。
除去精製、再沈殿等の工程を実施後、目的の溶剤を追加し、固形分を調整することが好ましい。この工程で使用されうる溶剤としては、各種溶剤が使用可能であるが、少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル溶剤、少なくとも分子中に1個の水酸基を有する分子量400以下のアルコール溶剤、及び少なくとも分子中に1個の1級アミノ基又は2級アミノ基を有する分子量400以下の有機アミン溶剤は好ましくない。溶剤の一部に上記分子量400以下のエステル溶剤が含有される場合には、この溶剤の含有量は、ブロックポリイソシアネートの樹脂固形分に対し1.0質量%以下である必要がある。また、溶剤の一部に上記分子量400以下のアルコール溶剤及び上記分子量400以下の有機アミン溶剤からなる群より選ばれる1種以上の溶剤が含有される場合には、当該溶剤の含有量は、ブロックポリイソシアネートの樹脂固形分に対し1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
また、例えば、活性メチレン系ブロック剤としてマロン酸ジエステルを用いる場合であって、化合物(I)におけるxが0である場合には、マロン酸ジエステル(b)として、化合物(VII)の代わりに、化合物(VIIa)を用いて、上記製造方法1における第2A工程を行わずに、第1A工程及び第3A工程をこの順で行なえばよい。
ブロックポリイソシアネートは希釈して、水系樹脂組成物に配合されてもよい。ブロックポリイソシアネートの希釈溶剤としては、水分散性、貯蔵安定性等の観点から、多価アルコール由来のエーテル溶剤が好ましい。
ブロックポリイソシアネートは、上記のいずれかの製造方法で一括製造してもよく、別々に製造したブロックポリイソシアネートを混合してたブロックポリイソシアネート混合物として用いてもよい。
また、上述した製造方法で得られたブロックポリイソシアネートに、既存の活性メチレン系ブロック剤、オキシム系ブロック剤、アミン系ブロック剤、及びピラゾール系ブロック剤からなる群より選ばれる1種以上のブロック剤と、ポリイソシアネートと、から誘導されるブロックポリイソシアネートを混合して使用することもできる。
しかし、既存の活性メチレン系ブロックポリイソシアネートを多く混合した際には、水系樹脂組成物の貯蔵安定性が低下する場合がある。また、オキシム系ブロックポリイソシアネート、アミン系ブロックポリイソシアネート、及びピラゾール系ブロックポリイソシアネートを多く混合した際には、低温硬化性が低下する場合がある。そのため、一般式(I)で表される化合物であるブロックポリイソシアネート以外のブロックポリイソシアネートの混合量は、ブロックポリイソシアネートの総質量に対して20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。既存の活性メチレン系ブロックポリイソシアネートを混合する場合は、混合した後に、残存する既存の活性メチレン系ブロック剤の量を低減させるため、上記第3A工程で示した除去精製を実施することが好ましい。また、アミン系ブロックポリイソシアネートを混合する場合は、混合した後に、残存するブロック剤であるアミン系ブロック剤の量を低減させるため、上記第3A工程で示した除去精製を実施することが好ましい。
既存の活性メチレン系ブロック剤としては、上記「活性メチレン系ブロック剤」において例示されたものと同じものが挙げられる。この中でも、低温硬化性に優れることから、マロン酸ジメチル、又はマロン酸ジエチルが好ましい。
オキシム系ブロック剤としては、上記「B」における「ブロック剤」として例示されたものと同じものが挙げられる。
アミン系ブロック剤としては、上記「B」における「ブロック剤」として例示されたものと同じものが挙げられる。
ピラゾール系ブロック剤としては、上記「B」における「ブロック剤」として例示されたものと同じものが挙げられる。
[ブロックポリイソシアネートの特性]
ブロックポリイソシアネートの数平均分子量の下限値は、500であることが好ましく、700であることがより好ましく、800であることがさらに好ましく、1,000であることが特に好ましい。一方、その上限値は、5,000であることが好ましく、4,000であることがより好ましく、3,000であることがさらに好ましく、2,000であることが特に好ましい。
すなわち、ブロックポリイソシアネートの数平均分子量は、500以上5,000であることが好ましく、700以上4,000以下であることがより好ましく、800以上3,000以下であることがさらに好ましく、1,000以上2,000以下であることが特に好ましい。
数平均分子量が上記下限値以上であることで、1分子あたりのブロックされたイソシアネート基の官能基数2.0以上をより確実に確保することが可能となる。一方、数平均分子量が上記上限値以下であることで、高粘度化をより抑制することができる。
ブロックポリイソシアネートの25℃における粘度は、溶剤等で希釈された、樹脂固形分60質量%の状態で、100mPa・s以上1,000mPa・s/25℃以下であることが好ましい。25℃における粘度が上記下限値以上であることで、1分子あたりのブロックされたイソシアネート基の官能基数2.0以上をより確実に確保することが可能となる。一方、25℃における粘度が上記上限値以下であることで、水系樹脂組成物への配合がより容易になる。
<カルボキシ基と架橋しうる架橋剤>
カルボキシ基と架橋しうる架橋剤としては、例えば、アジリジン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。上記の中でも、カルボキシ基と架橋しうる架橋剤としては、アジリジン基含有化合物、又はカルボジイミド基含有化合物が好ましく、アジリジン基含有化合物がより好ましい。
アジリジン基含有化合物としては、例えば、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサイド)、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサイド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、テトラメチロールメタン-トリβ-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリβ-アジリジニルプロピオネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
アジリジン系含有化合物は、市販品を用いてもよい。アジリジン系含有化合物の市販品としては、例えば、(株)日本触媒製の商品名「ケミタイトPZ-33」、DSM社製の商品名「NeoAdd PAX-523」等が挙げられるが、これらに限定されない。
カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応させることで得られる。
カルボジイミド基含有化合物の市販品としては、例えば、カルボジライトV-02、カルボジライトV-02-L2、カルボジライトV-04、カルボジライトE-01、カルボジライトE-02(いずれも日清紡社製の商品名)等が挙げられる。
オキサゾリン基含有化合物としては、オキサゾリン基を側鎖に少なくとも2個有する重合体状の化合物、1分子中にオキサゾリン基を少なくとも2個有する単量体の化合物等が挙げられる。
オキサゾリン基含有化合物の市販品としては、例えば、エポクロスWS-500(日本触媒製の標品名)等が挙げられる。
エポキシ基含有化合物としては、1分子にエポキシ基を2個以上有する化合物であればよい。エポキシ基含有化合物として具体的には、例えば、ビスフェノールにエポクロルヒドリンを付加させて得られるビスフェノール型エポキシ基含有化合物、フェノールノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを付加させて得られるノボラック型エポキシ基含有化合物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。エポキシ基含有化合物は、必要に応じて水分散化した状態のものであってもよい。
<多価ヒドロキシ化合物>
本明細書において、「多価ヒドロキシ化合物」とは、一分子中に少なくとも2個のヒドロキシ基(水酸基)を有する化合物を意味し、「ポリオール」とも呼ばれる。
前記多価ヒドロキシ化合物として具体的には、例えば、脂肪族炭化水素ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、エポキシ樹脂類、含フッ素ポリオール類、アクリルポリオール類等が挙げられる。
中でも、多価ヒドロキシ化合物としては、ポリエステルポリオール類、含フッ素ポリオール類又はアクリルポリオール類であることが好ましい。
[脂肪族炭化水素ポリオール類]
前記脂肪族炭化水素ポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエンやその水素添加物等が挙げられる。
[ポリエーテルポリオール類]
前記ポリエーテルポリオール類としては、例えば、以下(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得られるものが挙げられる。
(1)多価アルコールの単独又は混合物に、アルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類又はポリテトラメチレングリコール類。
(2)アルキレンオキサイドに多官能化合物を反応させて得られるポリエーテルポリオール類。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
前記多価アルコールとしては、例えば、グリセリンやプロピレングリコール等が挙げられる。
前記アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
前記多官能化合物としては、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン類等が挙げられる。
[ポリエステルポリオール類]
前記ポリエステルポリオール類としては、例えば、以下の(1)又は(2)のいずれかのポリエステルポリオール類等が挙げられる。
(1)二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂類。
(2)ε-カプロラクトンを多価アルコールで開環重合して得られるポリカプロラクトン類。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
[エポキシ樹脂類]
前記エポキシ樹脂類としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、エポキシ型脂肪族不飽和化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、エステル型多価カルボン酸、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、ハロゲン化型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類、及びこれらエポキシ樹脂をアミノ化合物、ポリアミド化合物等で変性した樹脂類等が挙げられる。
[含フッ素ポリオール類]
前記含フッ素ポリオール類としては、例えば、参考文献1(特開昭57-34107号公報)、参考文献2(特開昭61-275311号公報)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
[アクリルポリオール類]
前記アクリルポリオール類は、例えば、一分子中に1個以上の活性水素基を有する重合性モノマーを重合させる、又は、一分子中に1個以上の活性水素基を持つ重合性モノマーと、必要に応じて、当該重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとを、共重合させることによって得られる。
前記一分子中に1個以上の活性水素基を有する重合性モノマーとしては、例えば、以下(i)~(iii)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素基を持つアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシブチル等の活性水素基を持つメタクリル酸エステル類。
(iii)グリセリンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル又はメタクリル酸モノエステル等の多価活性水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル類。
前記重合性モノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、例えば、以下の(i)~(v)に示すものが挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(i)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類。
(ii)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類。
(iii)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
(iv)アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド。
(v)スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等。
また、参考文献3(特開平1-261409号公報)及び参考文献4(特開平3-006273号公報)等で開示されている重合性紫外線安定性単量体を共重合して得られるアクリルポリオール類等が挙げられる。
前記重合性紫外線安定性単量体として具体的には、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2、2、6、6-テトラメチルピペリジン、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることができる。
水系ベースアクリルポリオールを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性又は水分散性を付与することができる。
[多価ヒドロキシ化合物の水酸基価及び酸価]
本実施形態の水系樹脂組成物に含まれる多価ヒドロキシ化合物の水酸基価は、5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましい。
また、本実施形態の水系樹脂組成物に含まれる多価ヒドロキシ化合物の酸価は、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましい。
多価ヒドロキシ化合物の水酸基価が上記下限値以上であることにより、ポリイソシアネートとの反応によるウレタンの架橋密度をより増やし、ウレタン結合の機能をより発揮しやすくなる。一方、多価ヒドロキシ化合物の水酸基価が上記上限値以下であることにより、架橋密度が増えすぎず、樹脂膜の機械的物性がより良好となる。
多価ヒドロキシ化合物の酸価が上記下限値以上であることにより、カルボキシ基と架橋しうる架橋剤との反応により、カルボキシ基を消費し、耐水性を向上させやすくする。一方、多価ヒドロキシ化合物の酸価が上記上限値以下であることにより、塗料調製後の粘度を、良好に維持しやすくなる。
[NCO/OH]
本実施形態の水系樹脂組成物に含まれる多価ヒドロキシ化合物の水酸基に対するブロックポリイソシアネートのイソシアネート基のモル当量比(NCO/OH)は、必要とする樹脂膜の物性により決定されるが、通常、0.1以上2以下であり、0.3以上1.5以下であることが好ましく、0.5以上1.3以下であることがより好ましく、0.7以上1.0以下であることがさらに好ましい。
[NH/COOH]
本実施形態の水系樹脂組成物に含まれる多価ヒドロキシ化合物のカルボキシ基に対するアジリジン基含有化合物のNH基のモル当量比(NH/COOH)は、必要とする樹脂膜の物性により決定されるが、通常、0.1以上2以下であり、00.3以上1.5以下であることが好ましく、0.5以上1.3以下であることがより好ましく、0.7以上1.0以下であることがさらに好ましい。
<その他構成成分>
本実施形態の水系樹脂組成物は、上記ブロックポリイソシアネート、カルボキシ基と架橋しうる架橋剤及び多価ヒドロキシ化合物に加えて、溶剤を更に含むことができる。
溶剤としては、例えば、1-メチルピロリドン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(DPDM)、プロピレングリコールジメチルエーテル、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エタノール、メタノール、iso-プロパノール、1-プロパノール、iso-ブタノール、1-ブタノール、tert-ブタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso-ペンタン、ヘキサン、iso-ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット等が挙げられる。これら溶剤を、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。水への分散性の観点から、溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、具体的には、DMDG又はDPDMが好ましい。
本実施形態の水系樹脂組成物は、その他添加剤を更に含んでもよい。
その他添加剤としては、例えば、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等が挙げられる。
前記硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシ基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
前記硬化触媒としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、金属カルボキシレート、金属アセチルアセチネート、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン系化合物の金属塩、活性メチレン系化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
前記ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
また、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤及び造膜助剤としては、公知のものを適宜選択して用いることができる。
<水系樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の水系樹脂組成物は、例えば、まず、多価ヒドロキシ化合物又はその水分散体若しくは水溶物に、必要に応じて、多価ヒドロキシ化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記ブロックポリイソシアネート及びカルボキシ基と架橋しうる架橋剤又はそれらの水分散体を硬化剤として同時又は順次添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系ベースの樹脂組成物(水系樹脂組成物)を得ることができる。
≪樹脂膜≫
本実施形態の樹脂膜は、上記水系樹脂組成物を硬化させてなる。本実施形態の樹脂膜は、低温硬化性及び耐水性が良好である。
本実施形態の樹脂膜は、上記水系樹脂組成物を、基材にロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて塗装し、加熱することで硬化させることで得られる。
加熱温度は、省エネルギー及び基材の耐熱性の観点から、約70℃以上約120℃以下が好ましく、約70℃以上約110℃以下がより好ましく、約75℃以上約100℃以下がさらに好ましい。
加熱時間は、省エネルギー及び基材の耐熱性の観点から、約1分間以上約60分間以下が好ましく、約2分間以上約40分間以下がより好ましい。
基材としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー等の自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部;各種フィルム等は挙げられ、中でも、自動車車体の外板部又は自動車部品が好ましい。
基材の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類、各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;紙、布等の繊維材料等が挙げられ、中でも、金属材料又はプラスチック材料が好ましい。
基材は、上記金属材料の表面、又は、上記金属材料から成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよく、さらに、その上に塗膜が形成されているものであってもよい。塗膜が形成された基材としては、必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜が形成されたもの、例えば、電着塗料によって下塗り塗膜が形成された車体であってもよい。基材は、上記プラスチック材料の表面、又は、上記金属材料から成形された自動車部品等のプラスチック表面に、所望による表面処理を行ったものであってもよい。また、基材は、プラスチック材料と金属材料とが組み合わさったものであってもよい。
本実施形態の樹脂膜は低温硬化性に優れることから、省エネルギー化が求められる種々の分野の製品や、耐熱性の低い材料の塗膜として好適に用いられる。
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいて更に詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
<試験項目>
実施例及び比較例で得られたブロックポリイソシアネート成分について、以下に示す方法に従い、各物性の測定及び各評価を行った。
[物性1]
(粘度)
各ポリイソシアネートの粘度は、E型粘度計(トキメック社製)を用いて25℃で測定した。測定に際しては、標準ローター(1°34’×R24)を用いた。回転数は、以下に示すとおりに設定した。
(回転数)
100rpm(128mPa・s未満の場合)
50rpm(128mPa・s以上256mPa・s未満の場合)
20rpm(256mPa・s以上640mPa・s未満の場合)
10rpm(640mPa・s以上1280mPa・s未満の場合)
5rpm(1280mPa・s以上2560mPa・s未満の場合)
[物性2]
(イソシアネート基(NCO)含有率)
ポリイソシアネートのNCO含有率を測定するために、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。
まず、フラスコに測定試料2g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、測定試料を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、ポリイソシアネート試料無しで、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率(質量%)を算出した。
「イソシアネート基(NCO)含有率(質量%)」 = (V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
[物性3]
(数平均分子量及び重量平均分子量)
数平均分子量及び重量平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量及び重量平均分子量である。ポリイソシアネートの数平均分子量を測定するために、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートを測定試料として用いた。また、重量平均分子量については、ブロックポリイソシアネート成分をそのまま測定試料として用いた。測定条件を以下に示す。
(測定条件)
装置:東ソー(株)製HLC-8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)製TSKgel SuperH1000(商品名)×1本
TSKgel SuperH2000(商品名)×1本
TSKgel SuperH3000(商品名)×1本
キャリア:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
[物性4]
(イソシアネート基平均数)
ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数(NCO基平均数)は、下記式により求めた。なお、式中、「Mn」は、ブロック剤によるブロック化前のポリイソシアネートの数平均分子量であり、上記「物性3」において測定された値を用いた。「NCO含有率」は、ブロック剤によるブロック化前に測定したポリイソシアネートのイソシアネート基含有率であり、上記「物性2」において算出された値を用いた。
「イソシアネート基平均数」 = (Mn×(NCO含有率)×0.01)/42
[物性5]
(ブロックポリイソシアネート成分の固形分量)
ブロックポリイソシアネート成分の固形分量は、次のように求めた。
まず、底直径38mmのアルミ皿を精秤した。次いで、アルミ皿上に実施例及び比較例で製造されたブロックポリイソシアネート成分約1gを乗せた状態で精秤した(W1)。次いで、ブロックポリイソシアネート成分を均一厚さに調整した。次いで、アルミ皿に乗せた状態のブロックポリイソシアネート成分を105℃のオーブンで1時間保持した。次いで、アルミ皿が室温になった後、アルミ皿に残存したブロックポリイソシアネート成分を精秤した(W2)。次いで、下記式からブロックポリイソシアネート成分の固形分量(質量%)を算出した。
「ブロックポリイソシアネート成分の固形分量(質量%)」 = W2/W1×100
[物性6]
(有効イソシアネート基含有率)
ブロックポリイソシアネート成分の有効イソシアネート基(NCO)含有率は、次のように求めた。
なお、ここでいう「有効イソシアネート基(NCO)含有率」とは、ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート成分中に存在する架橋反応に関与しうるブロックされたイソシアネート基量を定量化したものであって、イソシアネート基の質量%で表したものである。
有効NCO含有率は、下記式により算出した。下記式において、「NCO%」は、それぞれ上述の「物性2」で算出された値を用いた。「ポリイソシアネートの固形分」は、ブロックポリイソシアネート成分の代わりにポリイソシアネートを用いた以外は、上記「物性5」と同様の方法を用いて算出した。なお、試料が溶剤等で希釈されている場合は、希釈された状態での値を算出した。
有効NCO含有率[質量%]
=[(ポリイソシアネートの固形分[質量%])×{(ブロック化反応に使用したポリイソシアネートの質量)×NCO%}]/(ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート成分の質量)
[物性7]
(一般式(I)で表される化合物であるブロックポリイソシアネートのx、y及びz)
(1)zの組成比
親水性化合物の反応前後で、赤外スペクトル測定により、イソシアネート基の残存量(モル%)を測定することにより算出した。
(2)x及びyの組成比
第1A工程反応後のイソシアネート基残存量(モル%)をpとし、第2A工程反応後の有機アミンの反応量(モル%)をqとし、第2A工程における有機アミンのイソシアネート基に対する添加第2A工程をrとした。
p≠0の場合、有機アミンは、残存するイソシアネート基と優先して反応するため、有機アミンの反応分からその量も考慮する必要がある。そのため、以下の式を用いて、x及びyの組成比を算出した。
x={((q×r)/100)-p}
y=(100-(x+z))
マロン酸ジエステル反応後のイソシアネート基残存量(モル%)は反応液の赤外スペクトル測定より定量し、有機アミンの反応率は、第2A工程終了後に減少した有機アミンの量を、以下の測定条件のガスクロマトグラフ測定で定量することによって算出した。
(測定条件)
装置:島津製作所製GC-14A(商品名)
カラム:島津ジーエルシー製DB-1(商品名)
なお、一般式(VI)で表される構造単位を有するブロックポリイソシアネートは、第2A工程の有機アミン2モル等量がマロン酸ジエステル部分1モル当量と反応することで生成しうる。しかし、モデル化合物での実験結果(イソシアネート成分として、n-ヘキシルイソシアネートを使用)から第2A工程で有機アミンとして、2級アミンを使用した場合、おそらく立体障害から、ブロックポリイソシアネート全体の1質量%以下しか生成しないことがわかった。そこで、x/y比の算出には、一般式(VI)で表される構造単位を有するブロックポリイソシアネートの生成は無視した。
また、第1A工程で残存するマロン酸ジエステルと第2A工程で添加する有機アミンが反応しうる。しかし、上記のモデル実験例のガスクロマトグラフ測定により、マロン酸モノエステルモノアミド、及びマロン酸ジアミドの合計量が1質量%以下であったことから、有機アミンとして2級アミンを使用した場合のx/yの算出には、この反応による有機アミンの減少は無視した。
[物性8]
(ブロックポリイソシアネートの構造特定:NMR測定)
以下の測定条件で実施されたH-NMR測定から、ブロックポリイソシアネートの構造特定を実施した。ケミカルシフト基準:テトラメチルシランを0ppmとした。
第1A工程の生成物であるイソシアネート基とマロン酸ジエステルとの反応物のケト体のメチンプロトンは、4.3ppm付近に、そのエノール体のプロトンは16.5ppm付近に観測された。また、第2A工程後の生成物である一般式(II)で表される構造単位のケト体のメチンプロトンは、4.5ppm付近に、そのエノール体のプロトンが19.2ppm付近に観測された。これらのピークの積分値から、第2A工程の反応比、ケト体とエノール体の存在比を確認した。
(測定条件)
装置:日本電子製ECS-400(商品名)
溶剤:重クロロホルム
積算回数:128回
試料濃度:5質量%
ケミカルシフト基準:テトラメチルシランを0ppmとした。
[物性9]
(ブロックポリイソシアネート製造時第3A工程終了後の残存成分の定量)
第3A工程終了後の成分を、以下の測定条件のガスクロマトグラフ測定で定量することによって算出した。
(測定条件)
装置:島津製作所製GC-14A(商品名)
カラム:島津ジーエルシー製DB-1(商品名)
[評価1]
(初期ゲル分率)
得られた水系樹脂組成物をポリプロピレン(PP)板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、90℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を常温(23℃)で1週間保管し、ゲル分率の測定を行なった。ゲル分率は、樹脂膜をアセトン中に23℃で24時間浸漬した際の未溶解部分質量を浸漬前質量で除した値の百分率(質量%)として求めた。得られたゲル分率から以下の評価基準に従い、低温硬化性を評価した。評価結果がD以上であるものを低温硬化性が良好であると評価した。
(評価基準)
A:初期ゲル分率83質量%以上
B:初期ゲル分率80質量%以上83質量%未満
C:初期ゲル分率70質量%以上80質量%未満
D:初期ゲル分率60質量%以上70質量%未満
E:初期ゲル分率60質量%未満
[評価2]
(貯蔵後ゲル分率保持率)
得られた水系樹脂組成物20gについて、40℃×14日間貯蔵した。貯蔵後の水系樹脂組成物を用いて、貯蔵後のゲル分率を測定した。ゲル分率の求め方は、「評価1」に記載の方法を用いた。ゲル分率保持率を、下記式を用いて算出した。また、初期ゲル分率は、貯蔵前のゲル分率であり、上記「評価1」で測定された値を用いた。
ゲル分率保持率(%)= (貯蔵後ゲル分率)/(初期ゲル分率)×100
得られたゲル分率保持率から、以下の評価基準に従い、貯蔵安定性を評価した。評価結果がD以上であるものを貯蔵安定性が良好であると評価した。
(評価基準)
A:ゲル分率保持率90%以上
B:ゲル分率保持率80%以上90%未満
C:ゲル分率保持率75%以上80%未満
D:ゲル分率保持率70%以上75%未満
E:ゲル分率保持率70%未満
[評価3]
(貯蔵後pH値)
得られた水系樹脂組成物20gについて、40℃×14日間貯蔵した。貯蔵後の水系樹脂組成物のpHを測定した。得られたpHから、以下の評価基準に従い、貯蔵安定性を評価し、評価結果がD以上であるものを貯蔵安定性が良好であると評価した。
(評価基準)
A:貯蔵後pH7.5以上8.5未満
B:貯蔵後pH7.3以上7.5未満
C:貯蔵後pH7.1以上7.3未満
D:貯蔵後pH6.8以上7.1未満
E:貯蔵後pH6.8未満
[評価4]
(耐水性試験)
得られた水系樹脂組成物をガラス板上に乾燥膜厚40μmになるよう塗装した後、90℃で30分間加熱乾燥し、樹脂膜を得た。得られた樹脂膜を常温(23℃)で1日間保管した樹脂膜に、直径1cmの脱イオン水をスポットし、23℃で24時間保持した。24時間後、脱イオン水をふき取り、樹脂膜の状態を観察した。樹脂膜の状態から、以下の評価基準に従い、耐水性を評価した。評価結果がD以上であるものを耐水性が良好であると評価した。
(評価基準)
A:劣化が見られない
B:スポット部で、一部、白化が見られた。
C:スポット部の20%以上80%程度の面積で、白化が見られた
D:スポット部のほぼ全体で、白化、ブリスターが見られた
E:スポット部の樹脂膜が全て溶解した箇所が存在した
<ポリイソシアネートの合成>
[合成例1]
(ポリイソシアネートa-1の合成)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四ツ口フラスコの内部を窒素置換し、HDI:1,000質量部を仕込み、60℃で攪拌下、触媒としてトリメチルベンジルアンモニウム・ハイドロオキサイド0.1質量部を加えた。4時間後、反応液のイソシアネート基含有率が39.4質量%になった時点でリン酸0.2質量部を添加して反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIモノマーは薄膜蒸留により除去した。
得られたポリイソシアネートa-1の25℃における粘度は2,700mPa・s、イソシアネート基含有率は22.2質量%、数平均分子量は650、イソシアネート基平均数は3.4であった。その後、NMR測定により、イソシアヌレート結合の存在を確認した。
[合成例2]
(ポリイソシアネートa-2の合成)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1,000質量部、3価アルコールであるトリメチロールプロパン(分子量134)22質量部を仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃1時間保持しウレタン化を行った。その後反応液温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒トリメチルベンジルアンモニウム・ハイドロオキサイド0.1質量部を加え、反応液のイソシアネート基含有率が35.6質量%になった時点でリン酸0.2質量部を添加し反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去した。
得られたポリイソシアネートa-2の25℃における粘度は25,000mPa・s、イソシアネート基含有率は19.9質量% 、数平均分子量は1,080、イソシアネート基平均数は5.1であった。その後、NMR測定により、ウレタン結合、アロファネート結合、及びイソシアヌレート結合の存在を確認した。
<ブロックポリイソシアネートの製造>
[製造例1]
(ブロックポリイソシアネート成分BL-1の製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、ポリイソシアネートa-1:100質量部、数平均分子量400のモノメトキシポリエチレングリコール(日本油脂株式会社製、「ユニオックスM400」(商品名)):42.3質量部(ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基の20モル%に相当)、及び、ジエチレングリコールジメチルエーテル:131.3質量部を仕込み、80℃で6時間保持した。その後反応液温度を60℃に冷却し、マロン酸ジエチル:72.0質量部(ポリイソシアネートのイソシアネート基の85モル%に相当する量)、及び28w/v%のナトリウムメチラート含有するメタノール溶液:0.88質量部を添加し、4時間保持した後、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート:0.86質量部を添加した(第1A工程)。その後、ジイソプロピルアミン:45.5質量部(ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基の85モル%に相当する量)を添加し、反応液温度を70℃に昇温し、5時間保持した(第2A工程)。この反応液をガスクロマトグラフで分析し、ジイソプロピルアミンの反応率が70モル%であることを確認した。次いで、得られた反応液を温度70℃、減圧度1.33×10-1KPaで薄膜蒸留を行うことにより、残存成分の除去精製を行った(第3A工程)。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析することにより、残存する有機アミン化合物、アルコール化合物、並びに、マロン酸ジエステル、及びマロン酸モノエステルモノアミドを定量し、各成分がブロックポリイソシアネート成分の樹脂固形分に対し、1.0質量%以下であることを確認した。その後、ジエチレングリコールジメチルエーテルを添加し、固形分60質量%のブロックポリイソシアネート成分BL-1を得た。
[製造例2~3]
(ブロックポリイソシアネート成分BL-2~BL-3の製造)
表1に示す組成及び配合量とした以外は、製造例1と同様の方法を用いてブロックポリイソシアネート成分BL-2~BL-3を製造した。
[製造例4~6]
(ブロックポリイソシアネート成分BL-4~BL-6の製造)
第2A工程の反応を実施しなかった以外は、製造例1と同様の方法を用いてブロックポリイソシアネート成分BL-4~BL-6を製造した。
[製造例7]
(ブロックポリイソシアネート成分BL-7の製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、ポリイソシアネートa-1:100質量部、数平均分子量400のモノメトキシポリエチレングリコール(日本油脂株式会社製、「ユニオックスM400」(商品名)):42.3質量部(ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基の20モル%に相当する量)、及び、ジエチレングリコールジメチルエーテル:121.3質量部を仕込み、80℃で6時間保持した。その後反応液温度を60℃に冷却し、3,5-ジメチルピラゾール:42.2質量部(ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基の85モル%に相当する量)を数回に分けて添加し、3時間保持し、固形分60質量%のブロックポリイソシアネート成分BL-7を得た。
得られた各ブロックポリイソシアネート成分の組成を表1~2に、また、各ブロックポリイソシアネート成分の反応条件、物性及び構造を表3に示す。
表1~2において、各略称は以下の化合物である。また、各成分の配合量において、括弧内は、ポリイソシアネートのイソシアネート基100モル%に対する各化合物のモル量の割合(モル%)を表したものである。また、アミン反応率(モル%)は、配合した有機アミン量のモル数に対する、消失した有機アミンのモル数の割合((消失したアミンのモル数)/(反応に添加したアミンのモル数))をGC分析から算出した値である。また、残存化合物の残存量は、第3A工程実施後の各ブロックポリイソシアネート成分中の樹脂固形分に対する質量の割合(質量%)を算出した値である。
表3において、「※」は、一般式(I)中のA(一般式(II)で表される構造単位)におけるR22及びR23が独立構造であって、それぞれn-ブチル基であるものと、R22及びR23が連結構造であって、[(R22)(R23)N-]で表される基が2,6-ジメチルピペリジンの活性水素基を除く基であるものと、が混合して存在していることを示す。
(ポリイソシアネート(a))
T1890-100:VESTANAT T1890-100(商品名)、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート、エポニックデグサ社製
(ブロック剤)
(1)マロン酸ジエステル(b)
DEM:マロン酸ジエチル(一般式(VII)中、R71:エチル基、R72:エチル基)
DiPrM:マロン酸ジイソプロピル(一般式(VIIa)中、R71a:イソプロポキシ(OiPr)基、R72a:水素原子、R73a:メチル基、R74a:メチル基)
DtBuM:マロン酸ジtert-ブチル(一般式(VIIa)中、R71a:tert-ブトキシ(OtBu)基、R72a:メチル基、R73a:メチル基、R74a:メチル基)
(2)その他ブロック剤
3,5-DMP:3,5-ジメチルピラゾール
(有機アミン(c))
(1)鎖状二級アミン
DIPA:ジイソプロピルアミン(一般式(VIII)中、R81:イソプロピル(iPr)基、R82:イソプロピル(iPr)基)
DNBA:ジn-ブチルアミン(一般式(VIII)中、R81:n-ブチル(nBu)基、R82:n-ブチル(nBu)基)
(親水性化合物(d))
M400:ユニオックスM400(商品名)、日本油脂株式会社製
M550:ユニオックスM550(商品名)、日本油脂株式会社製
(触媒)
JP508T(商品名):2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業社製)
(溶剤)
DMDG:ジエチレングリコールジメチルエーテル
DMDP:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
Figure 2022119424000022
Figure 2022119424000023
Figure 2022119424000024
<水系樹脂組成物の製造>
[実施例1]
(水系塗料組成物T-a1の製造)
水系アクリルポリオール(「SETAQUA6515(商品名)、Allnex社製、有効成分45質量%)100質量部、脱イオン水50質量部、ブロックポリイソシアネート成分BL-1:81.3質量部(ブロックされたイソシアネート基/ポリオール中水酸基のモル比0.8に相当する量)、及び、アジリジン化合物(DSM社製「NeoAdd PAX-523」(商品名)):5.4質量部(NH基/ポリオール中COOH基のモル比0.8に相当する量)を順次添加し、室温にてディスパー羽根で、1,000rpmで5分間撹拌した。さらに、脱イオン水:43.6質量部添加し、塗料固形分が35質量%となるように調整し、ディスパー羽根、1,0000rpm、5分かけて混合した。その後、pHが8.3となるようにジメチルアミノエタノールを添加し、さらに、1,0000rpm、5分攪拌、脱泡後、水系塗料組成物T-a1を得た。
[実施例2~11及び比較例1~3]
(水系塗料組成物T-a2~T-a11及びT-b1~T-b3の製造)
表3及び表4に示す組成及び配合量とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、各水系樹脂組成物を得た。
得られた水系樹脂組成物を用いて上記評価方法により各種評価を実施した。その結果を表4及び表5に示す。
なお、表4及び表5において、カルボキシ基と架橋しうる架橋剤及び多価ヒドロキシ化合物は、それぞれ以下の化合物である。
(カルボキシ基と架橋しうる架橋剤)
PAX-523:アジリジン基含有化合物、DSM社製、「NeoAdd PAX-523」(商品名)、NH基(on solids):14.0モル%、固形分80質量%
(多価ヒドロキシ化合物)
Setaqua6515:水系アクリルポリオール、Allnex社製、「Setaqua6515」(商品名)、OH基(on solids):3.3モル%、Acid value:9.9mgKOH/g、固形分45質量%
Figure 2022119424000025
Figure 2022119424000026
表4及び表5から、特定の構造を有するブロックポリイソシアネートと、カルボキシ基と架橋しうる架橋剤としてアジリジン化合物と、を含有する水系樹脂組成物T-a1~T-a11(実施例1~11)では、貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの低温硬化性及び耐水性が良好であった。
また、一般式(I)中のxが0でないブロックポリイソシアネート成分BL-1~BL-3を含む水系樹脂組成物T-a1~T-a3(実施例1~3)は、一般式(I)中のxが0であるブロックポリイソシアネート成分BL-4~BL-6を含む水系樹脂組成物T-a4、T-a10及びT-a11(実施例4、10及び11)と比較して、貯蔵安定性(ゲル分率保持率及び塗液pH変化)がより優れる結果であった。
また、ブロック剤であるマロン酸ジエステル(b)の構造が異なるブロックポリイソシアネート成分BL-4~BL-6を含む水系樹脂組成物T-a4、T-a10及びT-a11(実施例4、10及び11)の比較において、ブロックポリイソシアネート成分BL-5及びBL-6を含む水系樹脂組成物T-a10及びT-a11(実施例10及び11)は、ブロックポリイソシアネート成分BL-4を含む水系樹脂組成物T-a4(実施例4)よりも、樹脂膜としたときの低温硬化性がより優れている傾向が見られた。また、ブロックポリイソシアネート成分BL-6を含む水系樹脂組成物T-a11(実施例11)は、樹脂膜としたときの耐水性が特に優れていた。
また、NCO/OH比が異なる水系樹脂組成物T-a1、及びT-a5~7(実施例1、及び5~7)の比較において、NCO/OH比が0.8に近づくほど、低温硬化性及び樹脂膜としたときの耐水性がより良好になる傾向がみられた。
さらに、NH/COOH比が異なる水系樹脂組成物T-a1、及びT-a8~T-a9(実施例1、及び8~9)の比較において、NH/COOH比が大きくなるほど、低温硬化性及び樹脂膜としたときの耐水性がより良好になる傾向がみられた。
一方、ブロックポリイソシアネートとして、活性メチレン系ブロック剤以外のブロック剤を用いたブロックポリイソシアネートであるブロックポリイソシアネート成分BL-7を含む水系樹脂組成物T-b1(比較例1)では、低温硬化性及び樹脂膜としたときの耐水性が不良であった。
また、アジリジン基含有化合物を含まない水系樹脂組成物T-b2(比較例2)では、樹脂膜としたときの耐水性が不良であった。
また、ブロックポリイソシアネートを含まない水系樹脂組成物T-b3(比較例3)では、低温硬化性及び樹脂膜としたときの耐水性が不良であった。
本実施形態の水系樹脂組成物によれば、貯蔵安定性が良好であり、且つ、樹脂膜としたときの低温硬化性及び耐水性に優れる水系樹脂組成物を提供することができる。

Claims (5)

  1. ポリイソシアネートと1種以上の活性メチレン系ブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートと、
    カルボキシ基と架橋しうる架橋剤と、
    多価ヒドロキシ化合物と、
    を含む、水系樹脂組成物。
  2. 前記ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部が、ノニオン性化合物によって変性されている、請求項1に記載の水系樹脂組成物。
  3. 前記架橋剤が、アジリジン基含有化合物である、請求項1又は2に記載の水系樹脂組成物。
  4. 前記ブロックポリイソシアネートが下記一般式(I)で表される化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水系樹脂組成物。
    Figure 2022119424000027
    (一般式(I)中、R11は、脂肪族イソシアネートモノマー及び脂環族イソシアネートモノマーからなる群より選ばれる1種以上のイソシアネートモノマーから誘導されたポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基である。Aは、下記一般式(II)で表される構造単位である。Bは下記一般式(III)で表される構造単位である。Cは下記一般式(IV)で表される構造単位である。x+y+zは2.0以上20以下であり、且つ、x+y及びzはそれぞれ0ではない。)
    Figure 2022119424000028
    (一般式(II)中、R21は、炭素数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基若しくはベンジル基である。R22及びR23はそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい、炭素数1以上30以下の炭化水素基である。R22及びR23は互いに結合して環構造を形成してよい。前記環構造は、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基、又は、窒素原子若しくは酸素原子を含む3員環、4員環、5員環若しくは6員環である。破線は結合手を示す。)
    Figure 2022119424000029
    (一般式(III)中、R31は、ブロック剤の1つの活性水素基を除く残基である。破線は結合手を示す。)
    Figure 2022119424000030
    (一般式(IV)中、R41は、親水性化合物の1つの活性水素基を除く残基である。破線は結合手を示す。)
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の水系樹脂組成物を硬化させてなる、樹脂膜。
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