JP2022119351A - カリウムイオン二次電池正極用スラリー、正極、カリウムイオン二次電池およびカリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物 - Google Patents

カリウムイオン二次電池正極用スラリー、正極、カリウムイオン二次電池およびカリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物 Download PDF

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Yuhei Ishigaki
諒介 菅藤
Ryosuke Sugafuji
淳 渡辺
Jun Watanabe
タイタス マセセ
Masese Titus
博 妹尾
Hiroshi Senoo
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Abstract

【課題】優れた成形性を有し、かつ、高電位での電池特性や耐久性に優れる正極とすることができる、カリウムイオン二次電池正極用スラリー、該スラリーで作製した正極、カリウムイオン二次電池およびカリウムイオン二次電池正極用組成物を提供する。【解決手段】カリウムイオン二次電池正極用スラリーであって、グラフト共重合体を含有する組成物、導電助剤、および正極活物質を含み、前記グラフト共重合体は、幹ポリマーおよび複数の枝ポリマーを有し、前記幹ポリマーは、ポリビニルアルコール構造を含み、前記枝ポリマーは、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および/または(メタ)アクリル酸単量体を含む第1単量体単位を含み、前記正極活物質は、テルルまたは鉄の少なくとも1つを含むカリウム化合物を含む、カリウムイオン二次電池正極用スラリーである。【選択図】なし

Description

本発明は、カリウムイオン二次電池正極用スラリー、正極、カリウムイオン二次電池およびカリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物に関する。
近年、ノート型パソコン、携帯電話といった電子機器の電源として二次電池が利用されており、環境負荷の低減を目的に二次電池を電源として用いるハイブリット自動車や電気自動車の開発が進められている。それらの電源に高エネルギー密度、高出力、高耐久性の二次電池が求められている。また、資源およびコスト面の優位性に加え、幅広い新規材料の適合可能性等の観点から、例えば、リチウム以外のキャリアイオンを使用した二次電池の研究開発が進められている。
特にカリウムイオン(K)は、1価のアルカリイオンの中でも、リチウムイオンおよびナトリウムイオンよりもルイス酸性が弱く、ひいては脱溶媒和過程の活性化エネルギーが低いため、超高速充放電可能な次世代大型蓄電池の実現が期待されている。
例えば、特許文献1には、Te等の金属を含むカリウム化合物および該カリウム化合物を含むカリウムイオン二次電池が記載されている。
特開2019-119667号公報
しかしながら、カリウム化合物を含む正極活物質として用いる際、優れた成形性を有し、かつ、高電位での電池特性や耐久性に優れる正極とすることができる正極用スラリーの開発が求められていた。
本発明はこのような問題を鑑みてなされたものであり、優れた成形性を有し、かつ、高電位での電池特性や耐久性に優れる正極とすることができる、カリウムイオン二次電池正極用スラリー、該スラリーで作製した正極、カリウムイオン二次電池およびカリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物を提供するものである。
本発明によれば、カリウムイオン二次電池正極用スラリーであって、グラフト共重合体を含有する樹脂組成物、導電助剤、および正極活物質を含み、前記グラフト共重合体は、幹ポリマーおよび複数の枝ポリマーを有し、前記幹ポリマーは、ポリビニルアルコール構造を含み、前記枝ポリマーは、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および/または(メタ)アクリル酸単量体を含む第1単量体単位を含み、前記正極活物質は、テルルまたは鉄の少なくとも1つを含むカリウム化合物を含む、カリウムイオン二次電池正極用スラリーが提供される。
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、上記のグラフト共重合体を含有する樹脂組成物と、テルルまたは鉄の少なくとも1つを含むカリウム化合物を含む正極活物質とを組み合わせた正極用スラリーとすることで、優れた成形性を有し、かつ、高電位での電池特性や耐久性に優れる正極とすることができる、カリウムイオン二次電池正極用スラリーを得ることができることを見出し本発明の完成に至った。
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記正極活物質は、下記一般式(1)
(1)
(式(1)中、MはTeまたはFeを示し、MはMg、Sr、Ba、Ca、Zn、Mn、Cu、Co、Ti、V、CrおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属を示し、0.2≦a≦6.5、0.5≦b≦1.5、0.5≦c≦3.0、かつ、3.0≦x≦9.0である)、
または、下記一般式(2)
(2)
(式(2)中、Mは式(1)中のMと同義であり、MおよびMは互いに異なってそれぞれMg、Sr、Ba、Ca、Zn、Mn、Cu、Co、In、Ga、Y、Ti、V、Cr、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、AlおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属を示し、0.2≦d≦6.5、0.5≦e≦1.5、0.5≦f+g≦3.0、かつ、3.0≦y≦9.0である)で表される。
好ましくは、前記正極活物質は、前記式(1)で表され、前記(1)において、MがFeであって、MがMn、Tiからなる群より選ばれる1種の金属であるか、または、前記式(2)で表され、前記式(2)において、MがTeであって、MおよびMは互いに異なり、それぞれMg、Ca、Zn、Mn、Cu、CoおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属である。
好ましくは、前記カリウムイオン二次電池正極用スラリーに含まれる前記樹脂組成物、前記正極活物質、および前記導電助剤の合計を100質量部としたとき、前記カリウムイオン二次電池正極用スラリーに含まれる前記樹脂組成物が、1.0質量部以上、10.0質量部以下である。
好ましくは、前記グラフト共重合体を含有する樹脂組成物は、遊離ポリマーを更に含み、前記遊離ポリマーは、前記グラフト共重合体と共有結合を有さず、前記遊離ポリマーは、前記第1単量体単位を含むポリマーを少なくとも含む。
好ましくは、前記樹脂組成物は、前記グラフト共重合体を100質量部としたとき、前記グラフト共重合体中に、前記ポリビニルアルコール構造を10~80質量部、前記第1単量体単位を20~90質量%含む。
好ましくは、前記グラフト共重合体のグラフト率は、20~150%である。
好ましくは、前記導電助剤が、繊維状炭素、カーボンブラック、繊維状炭素とカーボンブラックとが相互に連結した炭素複合体からなる群から選択される1種以上である。
本発明の別の観点によれば、正極集電体および、前記正極集電体上に形成された前記に記載のカリウムイオン二次電池正極用スラリーの塗膜を備える正極が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、前記に記載の正極を備えるカリウムイオン二次電池が提供される。
本発明の別の観点によれば、グラフト共重合体を含有するカリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物であって、前記グラフト共重合体は、幹ポリマーおよび複数の枝ポリマーを有し、前記幹ポリマーは、ポリビニルアルコール構造を含み、前記枝ポリマーは、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および/または(メタ)アクリル酸単量体を含む第1単量体単位を含み、テルルまたは鉄の少なくとも1つを含むカリウム化合物を正極活物質とする、カリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物が提供される。
優れた成形性を有し、かつ、高電位での電池特性や耐久性に優れる正極とすることができる、カリウムイオン二次電池正極用スラリー、該スラリーで作製した正極、カリウムイオン二次電池およびカリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物を提供する。
実施例5および比較例3に係る正極用スラリーを用いた二次電池のサイクリックボルタンメトリーの結果を示す。 比較例4および比較例5に係る正極用スラリーを用いた二次電池のサイクリックボルタンメトリーの結果を示す。 比較例6および比較例7に係る正極用スラリーを用いた二次電池のサイクリックボルタンメトリーの結果を示す。 実施例6および比較例8に係る正極用スラリーを用いた二次電池の充放電測定の結果を示す。
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各種特徴事項について独立して発明が成立する。
本発明の一実施形態に係るカリウムイオン二次電池正極用スラリーは、グラフト共重合体を含有する樹脂組成物、導電助剤、および正極活物質を含む。
1-1.グラフト共重合体を含有する樹脂組成物
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、グラフト共重合体を含有する樹脂組成物であり、グラフト共重合体は、幹ポリマーおよび複数の枝ポリマーを有する。また、本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体を含有する樹脂組成物は、グラフト共重合体を含有するカリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物であって、グラフト共重合体は、幹ポリマーおよび複数の枝ポリマーを有し、幹ポリマーは、ポリビニルアルコール構造を含み、枝ポリマーは、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および/または(メタ)アクリル酸単量体を含む第1単量体単位を含み、テルルまたは鉄の少なくとも1つを含むカリウム化合物を正極活物質とする、カリウムイオン二次電池正極用組成物とできる。以下、重合体を、共重合体ということもある。
1-2.グラフト共重合体
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、幹ポリマーに対し、少なくとも第1単量体をグラフト共重合させることにより合成できる。重合により生成した枝ポリマーは、幹ポリマーにグラフト、すなわち共有結合している。この際、グラフトされていない幹ポリマーや、幹ポリマーにグラフトしていない、すなわちグラフト共重合体に共有結合していない第1単量体を含む重合体が、遊離ポリマーとして同時に生成することがある。従って、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、グラフト共重合体および遊離ポリマーを含むことができる。
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、第1単量体以外の単量体単位を含むこともできる。本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、遊離ポリマーとして、第1単量体単位以外の単量体単位を含む重合体を含むこともできる。
グラフト共重合体のグラフト率は、好ましくは40~3000%であり、より好ましくは150~900%である。溶解性の観点からグラフト率は上記範囲であることが好ましい。グラフト率が上記下限以上であると、スラリーにする際に溶媒(例えば、N-メチルピロリドン(NMP))に対する溶解性が向上し、上記上限以下であるとスラリーの粘度が低下し、スラリーの流動性が向上する。
1-3.幹ポリマー
幹ポリマーは、ポリビニルアルコール構造を有する。ここで、ポリビニルアルコール構造は、例えば、酢酸ビニルモノマーを重合したポリ酢酸ビニルを鹸化して合成されるポリビニルアルコールに由来する構造である。好ましくは、幹ポリマーは、大部分がポリビニルアルコール構造によって構成されている。より好ましくは、幹ポリマーは、ポリビニルアルコールである。
樹脂組成物中のポリビニルアルコール構造の平均重合度は、好ましくは300~4000であり、より好ましくは500~2000である。当該平均重合度が、このような範囲にあると、スラリーの安定性が特に高い。また、溶解性、結着性、およびバインダーの粘度の観点からも上記範囲であることが好ましい。平均重合度が300以上だとバインダーと活物質および導電助剤との間の結着性が向上し、耐久性が向上する。また、平均重合度が4000以下だと溶解性が向上し、粘度が低下するため、正極用スラリーの製造が容易になる。ここでいう平均重合度は、JIS K 6726に準ずる方法で測定される値である。
樹脂組成物中のポリビニルアルコール構造の鹸化度は、好ましくは60~100mol%であり、より好ましくは80~100mol%である。当該鹸化度が、このような範囲にある場合にスラリーの安定性が特に高い。ここでいう鹸化度は、JIS K 6726に準ずる方法で測定される値である。
1-4.枝ポリマー
枝ポリマーは、少なくとも第1単量体単位を含む。また、枝ポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、第1単量体単位以外の単量体単位を含んでも良い。ここで、第1単量体単位、第1単量体単位以外の単量体単位とは、それぞれグラフト共重合体の合成に用いた第1単量体、第1単量体単位以外の単量体に由来する単量体単位である。
1-5.遊離ポリマー
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、遊離ポリマーを更に含んでいてもよい。遊離ポリマーは、前記グラフト共重合体と共有結合を有しないポリマーであり、ポリビニルアルコール構造を含むポリマー、および/または、前記第1単量体単位を含むポリマーを少なくとも含む。ポリビニルアルコール構造を有するポリマーとは、主にグラフト共重合に関与しなかった幹ポリマーを意味する。また、第1単量体単位を含むポリマーとは、第1単量体の単独重合体、および、第1単量体単位以外の単量体の単独重合体が含まれていてもよい。遊離ポリマーは、好ましくは実質的に第1単量体単位を含むポリマーであり、より好ましくは第1単量体の単独重合体(ホモポリマー)を含む。
また、遊離ポリマーのうち幹ポリマー以外の遊離ポリマー、例えば第1単量体の単独重合体を含む共重合体等の重量平均分子量は、30000~250000が好ましく、40000~200000がより好ましく、50000~150000が更に好ましい。粘度上昇を抑えて、正極用スラリーを容易に製造し得る観点から、幹ポリマー以外の遊離ポリマーの重量平均分子量は300000以下が好ましく、200000以下がより好ましく、150000以下が更に好ましい。幹ポリマー以外の遊離ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により求めることができ、具体的には後述の方法で測定することができる。
1-6.第1単量体単位
第1単量体単位は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および/または(メタ)アクリル酸単量体単位である。第1単量体単位は、より好ましくは(メタ)アクリロニトリル単量体単位であり、更に好ましくはアクリロニトリル単量体単位である。
すなわち、グラフト共重合体を合成する際に用いる第1単量体は、好ましくは、(メタ)アクリロニトリルおよび/または(メタ)アクリル酸であり、より好ましくは(メタ)アクリロニトリルであり、更に好ましくはアクリロニトリルである。よって、第1単量体単位はこれらに由来する構造を有する。
1-7.第1単量体以外の化合物に由来する構造
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、本発明の効果を阻害しない範囲でポリビニルアルコール・第1単量体以外の化合物に由来する構造を含むこともできる。第1単量体以外の化合物に由来する構造としては、特に制限されないが、一例として、エーテル構造を含む構造単位である、第2単量体由来の構造や、二官能または多官能である架橋剤由来の構造が挙げられる。本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、第2単量体由来の構造、または、架橋剤由来の構造のいずれかをさらに含むことができ、第2単量体由来の構造、および、架橋剤由来の構造を含むこともできる。
第2単量体単位は、エーテル構造を有する化合物である。エーテル構造は、好ましくは、単官能であり、直鎖状ポリエーテル構造、分岐状ポリエーテル構造、および環状エーテル構造から選ばれる少なくとも1つを有する。より好ましくは、エーテル構造は、ポリエチレンオキサイド構造を有する。
また、第2単量体単位は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、スチレン誘導体、多置換エチレン、またはビニルエーテル誘導体である単量体由来の構造を有する。
(メタ)アクリル酸エステル誘導体としては、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの中では、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートのうちの1種以上が好ましい。より具体的には、(2-(2-エトキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(poly:n=23)、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートのうちの1種以上が好ましい。第2単量体は、より好ましくは、(2-(2-エトキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレートのうちの1種以上であり、最も好ましくは(2-(2-エトキシ)エトキシ)エチル(メタ)アクリレートである。よって、第2単量体単位はこれらに由来する構造を有する。
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は、第1単量体以外の単量体に由来する単量体単位として、二官能性または多官能性の化合物に由来する構造を含んでいてもよい。二官能性または多官能性の化合物に由来する構造は、グラフト共重合体の、枝ポリマー同士、幹ポリマーと枝ポリマー、または幹ポリマー同士を連結する架橋構造を取る架橋部であることが好ましい。架橋部は、グラフト共重合体の、枝ポリマー同士を架橋する構造を含むことが好ましい。
本発明の一実施形態に係る架橋部を構成する架橋剤は、二官能性または多官能性の化合物であり、極性溶媒に可溶な化合物であることが好ましく、第1単量体に可溶であることが好ましい。
架橋剤は、上記要件を満たせば特に制限はないが、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのようなアルカンポリオール-ポリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンを挙げることができる。この中でも、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
架橋剤は、エーテル構造を含むことが好ましく、エチレングリコール繰り返し単位を有することがより好ましい。エチレングリコール繰り返し単位は、好ましくは2以上20以下であり、より好ましくは、5以上、15以下であり、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
1-8.樹脂組成物中の各成分の含有量
また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、各成分の含有量および特性について以下の要件を満たすことが好ましい。各成分の含有量および特性が以下のような範囲にある場合に、正極活物質および導電助剤との結着性に優れ、優れた成形性を有するスラリーとなる樹脂組成物を提供することができ、該樹脂組成物を含む正極用スラリーは、高電位での電池特性や耐久性に優れる正極とすることができる正極用スラリーとなり得る。
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、グラフト共重合体を100質量部したとき、前記グラフト共重合体中に、ポリビニルアルコール構造を10~80質量部、第1単量体単位を20~90質量%含むことが好ましい。また、前記グラフト共重合体を100質量部としたとき、前記グラフト共重合体中のポリビニルアルコール構造の含有量が、15~70質量部であることがより好ましく、20~60質量部であることがさらにより好ましく、20~55質量部であることが特により好ましく、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、80質量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂組成物を100質量部としたとき、遊離ポリマーを0.1質量部以上含むことが好ましく、0.1~30質量部含むことが好ましく、1~30質量部含むことがより好ましく、5~25質量部含むことがさらに好ましい。また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、第1単量体からなるホモポリマーである遊離ポリマーを1~30質量部含むことが好ましく、5~25質量部含むことが好ましい。
1-9.各種測定/算出方法
(第1単量体単位、第2単量体単位等の含有量)
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、PVAに由来する成分と第1単量体に由来する成分を含み、任意選択で、ポリビニルアルコール・第1単量体以外の化合物、例えば、第2単量体に由来する成分を含む。組成物中の各成分の含有量は、グラフト重合の仕込み量から概算することができる。各成分の含有量は、NMRで各成分の重合率を求めることによって算出することができる。また、各成分の含有量は、得られた組成物のNMRによる積分比から算出することもできる。
(組成物中の遊離ポリマーの含有量およびグラフト率)
グラフト共重合体を生成する際(グラフト共重合時)には、第1単量体、ポリビニルアルコール・第1単量体以外の化合物(例えば、第2単量体)からなる群の少なくともいずれかを含む遊離ポリマーが生成することがある。グラフト率の計算には、グラフト共重合体から遊離ポリマーを分離する工程が必要となる。遊離ポリマーはジメチルホルムアミド(以下、DMFと略すことがある。)には溶解するが、PVAおよびグラフト共重合体はDMFに溶解しない。この溶解性の差を利用し、遊離ポリマーを遠心分離等の操作により分離でき、組成物中の遊離ポリマーの含有量を算出できる。また、グラフト率を算出できる。
ここで、例えば、組成物がPVA、第1単量体、第2単量体に由来する構造を有するとき、
F:DMFに溶解した成分の質量(g)
G:試験に使用した組成物の質量(g)
H:組成物中の第1単量体単位および第2単量体単位の合計含有量(質量%)
とすると、グラフト率は以下の式(3)で求められる。
[(G-F)/(G×(100-H)/100)]×100 ・・・式(3)
(幹ポリマー以外の遊離ポリマーの分子量)
樹脂組成物を1.00g正秤し、これを特級DMF(国産化学株式会社製)50ccに添加し、80℃にて24時間1000rpmで撹拌する。次に、これを株式会社コクサン製の遠心分離機(型式:H2000B、ローター:H)にて回転数10000rpmで30分間遠心分離する。ろ液(DMF可溶分)を注意深く分離後、メタノール1000mlに投入し、析出物を得る。析出物を80℃にて24時間真空乾燥し、GPCにて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する。GPCの測定は例えば以下の条件とできる。
カラム:GPC LF-804、φ8.0×300mm(昭和電工株式会社製)を2本直列に繋いで用いた。
カラム温度:40℃
溶媒:20mM-LiBr/DMF
1-10.樹脂組成物の製造方法
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法については特に制限されないが、一例としては、本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体を含む樹脂組成物の製造方法は、少なくともポリビニルアルコールと第1単量体とを含む原料とをグラフト共重合させるグラフト共重合工程を含むことが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、少なくともポリビニルアルコールと第1単量体とを含む原料をグラフト共重合させるグラフト共重合工程を含む製造方法によって得られるものとできる。また、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物の製造方法は、酢酸ビニルを重合してポリ酢酸ビニルを得る酢酸ビニル重合工程、および、得られたポリ酢酸ビニルを鹸化してポリビニルアルコールを得る鹸化工程を更に含むことが好ましい。
[ポリビニルアルコール(PVA)の製造方法]
ポリ酢酸ビニルを重合する方法については、塊状重合、溶液重合等公知の任意の方法を用いることができる。
ポリ酢酸ビニルの重合に使用される開始剤としては、過酸化ベンゾイル、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物等が挙げられる。
ポリ酢酸ビニルの鹸化反応は、例えば、有機溶媒中、鹸化触媒存在下で鹸化する方法により行うことができる。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらは1種以上を用いてもよい。これらの中では、メタノールが好ましい。
鹸化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムアルコキシド等の塩基性触媒や、硫酸、塩酸等の酸性触媒が挙げられる。これらの中では、鹸化速度の観点から、水酸化ナトリウムが好ましい。
開始剤の種類および量、並びに重合時の温度および時間を調整することよって、ポリビニルアルコールの重合度を制御することができ、鹸化触媒の種類および量、並びに鹸化時の温度および時間を調整することによって、ポリビニルアルコールの鹸化度を制御することができる。ポリビニルアルコールの重合度および鹸化度は上記した範囲内に調製することが好ましい。
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の一実施形態に係る製造方法は、少なくともポリビニルアルコールと第1単量体とを含む原料をグラフト共重合させる工程を含むことが好ましい。また、少なくともポリビニルアルコールと第1単量体とを含む原料は、さらに、ポリビニルアルコール・第1単量体以外の化合物(例えば、第2単量体、架橋剤)を含むことができる。
グラフト共重合時に供するポリビニルアルコールは、上記した重合度および鹸化度を有することが好ましく、グラフト共重合時に供する第1単量体、第2単量体、架橋剤は、上記した種類の第1単量体、第2単量体、架橋剤であることが好ましい。
グラフト共重合時の使用量は、樹脂組成物中の各成分の含有量が、上記した樹脂組成物中の各成分の含有量の要件を満たすように調製されることが好ましい。
ポリビニルアルコールに単量体をグラフト共重合させる方法としては、例えば、溶液重合法が挙げられる。用いる溶媒としては、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン(NMP)等が挙げられる。
グラフト共重合に使用する開始剤としては、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、好ましくはペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等を用いることができる。より好ましくはペルオキソ二硫酸アンモニウムである。
本発明の一実施形態に係るグラフト共重合体は溶媒に溶解させて用いることができる。溶媒としてはジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。組成物、および後述の正極用スラリーには、これらの溶媒が含まれていてもよい。
1-11.その他
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他の成分、例えば、樹脂等を含んでいてもよい。そのような樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、スチレン-ブタジエン系共重合体(スチレンブタジエンゴム等)およびアクリル系共重合体等が挙げられる。中でも、安定性の観点からフッ素系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。本発明の一実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、樹脂組成物を100質量部としたとき、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を0~50質量部含むことができ、好ましくは0~30質量部含むことができ、より好ましくは0~10質量部含むことができる。また、本発明の一実施形態に係る組成物は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含まないこともできる。
2-1.正極活物質
本発明の一実施形態に係る正極用スラリーは、正極活物質を含み、正極活物質は、テルルまたは鉄の少なくとも1つを含むカリウム化合物を含む。
カリウムイオン二次電池用正極活物質は、下記一般式(1)または一般式(2)で表される。
式(1)
式(1)中、MはTeまたはFeを示し、MはMg、Sr、Ba、Ca、Zn、Mn、Cu、Co、Ti、V、CrおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属を示し、0.2≦a≦6.5、0.5≦b≦1.5、0.5≦c≦3.0、かつ、3.0≦x≦9.0で表されることが好ましい。
式(2)
式(2)中、Mは式(1)中のMと同義であり、MおよびMは互いに異なってそれぞれMg、Sr、Ba、Ca、Zn、Mn、Cu、Co、In、Ga、Y、Ti、V、Cr、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、AlおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属を示し、0.2≦d≦6.5、0.5≦e≦1.5、0.5≦f+g≦3.0かつ、3.0≦y≦9.0で表されることが好ましい。
また、式(2)において、0.2≦d≦6.5、0.5≦e≦1.5、0.25≦f≦2.75、0.25≦g≦2.75、0.5≦f+g≦3.0、かつ、3.0≦y≦9.0であることがより好ましい。
なお、以下では、一般式(1)で表されるカリウム化合物を「化合物1」と、一般式(2)で表されるカリウム化合物を「化合物2」と表記する。また、化合物1および化合物2をまとめて「カリウム化合物」と表記する。
化合物1の組成について、式(1)において、MはTeまたはFeであり、Mは、Mg、Ca、Zn、Mn、Cu、Co、Ti、V、CrおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属であることが好ましい。この場合、化合物1を容易、かつ、低コストで製造でき、また、高い作動電位を有する点で有利である。
式(1)において、MがTeである場合、Mは、Mg、Zn、Cu、Co、Ti、V、CrおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属であることがより好ましい。また、MがFeである場合、Mは、MnおよびTiからなる群より選ばれる1種の金属であることがより好ましい。この場合、化合物1を特に容易、かつ、低コストで製造でき、また、特に高い作動電位を有する点で有利である。
高いイオン伝導率を有しやすい観点から、式(1)において、MがTeであるときは、1.5≦a≦3.0、0.5≦b≦1.5、1.5≦c≦3.0、かつ、5.5≦x≦6.5であることが好ましい。この場合において、aの値は、1.8~2.5であることがより好ましく、1.9~2.1であることが特に好ましく、bの値は、0.8~1.3であることがより好ましく、0.9~1.1であることが特に好ましく、cの値は、1.8~2.3であることがより好ましく、1.9~2.1であることが特に好ましく、xの値は、5.8~6.3であることがより好ましく、5.9~6.1であることが特に好ましい。なお、式(1)において、xの値は、例えば6とし、これを基準に式(1)を表すこともできる。
がFeであるときは、0.2≦a≦3.0、0.5≦b≦1.5、0.5≦c≦1.5、かつ、3.5≦x≦4.5であることが好ましい。この場合において、aの値は、0.8~1.3であることがより好ましく、0.9~1.1であることが特に好ましく、bの値は、0.8~1.3であることがより好ましく、0.9~1.1であることが特に好ましく、cの値は、0.8~1.3であることがより好ましく、0.9~1.1であることが特に好ましく、xの値は、3.8~4.3であることがより好ましく、3.9~4.1であることが特に好ましい。なお、式(1)において、xの値は、例えば4とし、これを基準に式(1)を表すこともできる。
化合物2の組成について、式(2)において、Mは式(1)中のMと同義であり、MおよびMは互いに異なってそれぞれMg、Sr、Ba、Ca、Zn、Mn、Cu、Co、In、Ga、Y、Ti、V、Cr、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、AlおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属を示し、Mは、Mg、Sr、Ba、Ca、Zn、Mn、Cu、Co、In、Ga、Y、Ti、V、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、AlおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属を示し、Mは、Sr、Ca、Zn、Mn、Cu、Co、In、Ga、Y、Ti、VおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属を示すことが好ましい。ただし、Mと、Mとは互いに異なる金属元素である。式(2)において、MはTeである場合、MおよびMは互いに異なってそれぞれMg、Ca、Zn、Mn、Cu、CoおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属であることが好ましい。MはFeである場合、MおよびMは互いに異なってそれぞれMnおよびTiからなる群より選ばれる1種の金属であることが好ましい。
はTeである場合、式(2)において、1.5≦d≦3.0、0.5≦e≦1.5、1.5≦f+g≦3.0、かつ、5.5≦y≦6.5であることが好ましい。さらに、0.25≦f≦2.75、0.25≦g≦2.75であることが好ましい。dの値は、カリウムイオンの挿入および脱離のしやすさ、および、高いイオン伝導率を有しやすいという観点から、1.5~2.5であることが好ましく、1.8~2.3であることがより好ましく、1.9~2.1であることが特に好ましい。eの値は、0.5~1.5であることが好ましく、0.8~1.3であることがより好ましく、0.9~1.1であることが特に好ましい。f+gの値は、1.5≦f+g≦2.5であることがより好ましく、1.8≦f+g≦2.3であることがより好ましく、1.9≦f+g≦2.1であることが特に好ましい。fおよびgは、0.25≦f≦0.75および1.25≦g≦1.75の組み合わせとできる。
はFeである場合、式(2)において、0.2≦d≦3.0、0.5≦e≦1.5、0.5≦f+g≦1.5、かつ、3.5≦y≦5.5であることも好ましい。さらに、0.25≦f≦0.75、0.25≦g≦0.75であることが好ましい。dの値は、カリウムイオンの挿入および脱離のしやすさ、および、高いイオン伝導率を有しやすいという観点から、0.5~1.5であることが好ましく、0.8~1.3であることがより好ましく、0.9~1.1であることが特に好ましい。eの値は、0.5~1.5であることが好ましく、0.8~1.3であることがより好ましく、0.9~1.1であることが特に好ましい。f+gの値は、0.5≦f+g≦1.5であることがより好ましく、0.8≦f+g≦1.3であることがより好ましく、0.9≦f+g≦1.1であることが特に好ましい。fおよびgは、0.25≦f≦0.75および0.25≦g≦0.75の組み合わせとできる。
本発明のカリウム化合物は、例えば、該カリウム化合物に含まれる少なくとも2種以上の金属どうし、または、これら金属の酸化物どうしの固溶体として形成され得る。
本発明のカリウム化合物は、主相である結晶構造の存在量は特に限定的ではない。例えば、カリウム化合物全体を基準として、主相である結晶構造の存在量が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上がより好ましい。カリウム化合物は、単相の結晶構造からなる材料として形成されることもある。本発明の効果を損なわない限り、カリウム化合物は、複数の結晶構造を有する材料して形成されていてもよい。なお、カリウム化合物の結晶構造は、X線回折測定により確認することができる。
2-2.正極活物質の製造方法
本発明のカリウム化合物の製造方法は特に限定されず、例えば、従来公知のカリウムを含有する酸化物の製造方法を広く適用することができ、例えば、特開2019-119667号公報および国際公開2017/099137号に記載の方法を採用することができる。
例えば、カリウム化合物が化合物1である場合、K、MおよびMを含む原料を加熱する工程(以下、「加熱工程」と表記する)を含む製造方法により、化合物1を得ることができる。
K、MおよびMを含む原料は、例えば、Kを含む原料と、Mを含む原料と、Mを含む原料との混合物を含むことができる。あるいは、K、MおよびMを含む原料は、K、MおよびMの3種類の元素からなる群から選ばれる2種の元素を含む化合物と、残りの元素を含む化合物との混合物を含むことができる。あるいは、K、MおよびMを含む原料は、3種すべての元素を含む化合物を含むことができる。なお、MおよびMはそれぞれ前記(1)式のMおよびMと同義である。
一方、カリウム化合物が化合物2である場合、K、M、MおよびMを含む原料を加熱する工程を含む製造方法により、化合物2を得ることができる。
K、M、MおよびMを含む原料は、例えば、Kを含む原料と、Mを含む原料と、Mを含む原料と、Mを含む原料との混合物を含むことができる。あるいは、K、M、MおよびMを含む原料は、K、M、MおよびMの4種類の元素からなる群から選ばれる2種または3種の元素を含む化合物と、残りの元素を含む化合物との混合物を含むことができる。あるいは、K、M、MおよびMを含む原料は、4種すべての元素を含む化合物を含むことができる。
Kを含む原料は、例えば、金属単体のカリウム(K)であってもよいし、あるいは、Kを含む化合物であってもよい。Kを含む化合物としては特に限定されず、例えば、KCO、KNO、KOH、CHCOOK、K等が挙げられる。
Kを含む化合物は、水和物であってもよい。前記製造方法では、市販品のKを含む化合物を使用することができるし、あるいは、公知の方法等で製造してKを含む化合物を得ることもできる。
を含む原料は、例えば、金属単体のM(例えば、テルル(Te))であってもよいし、あるいは、Mを含む化合物であってもよい。Mを含む化合物は、Mの酸化物、例えば、TeO等が挙げられる。
、M、Mを含む原料は、金属M単体であってもよいし、あるいは、金属Mを含む化合物であってもよい。金属Mを含む化合物としては、金属Mの酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩等が例示される。M、M、Mを含む化合物は、水和物であってもよい。K、MおよびMを含む原料、または、K、M、MおよびMを含む原料は、K、M、M、MおよびM以外のその他金属元素(特に希少金属元素)を含まないことが好ましい。また、その他金属元素については、非酸化性雰囲気下での加熱処理により離脱および揮発していくものが望ましい。
カリウム化合物の製造に用いる原料は、本発明の効果が阻害されない限り、他の化合物等を含むことができる。カリウム化合物の製造に用いる原料は、化合物1の製造方法の場合では、Kを含む原料、Mを含む原料およびMを含む原料のみからなるものであってもよく、化合物2の製造方法の場合では、Kを含む原料、Mを含む原料、Mを含む原料およびMを含む原料のみからなるものであってもよい。
カリウム化合物の製造に用いる原料は、取り扱い性の観点から、粉末状であることが好ましい。また、反応性の観点から、粉末を構成する粒子は微細である方がよく、平均粒子径が50μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下であることが好ましい。各原料の平均粒子径は、電子顕微鏡観察(SEM)により測定することができる。
カリウム化合物の製造に用いる原料は、各種原料を所定の混合割合で混合することにより調製することができる。混合方法は、特に制限されず、例えば、各原料を均一に混合できる方法を採用することができる。具体的には、乳鉢混合、メカニカルミリング処理、共沈法、各原料を溶媒中に分散させた後に混合する方法、各原料を溶媒中で一度に分散させて混合する方法等を採用することができる。これらのなかでも、乳鉢混合を採用するとより、製造方法が簡便となりやすい。各原料がより均一な混ざり合った混合物を得ることを目的とする場合は、共沈法を採用することができる。
カリウム化合物の製造に用いる各原料の混合割合は、例えば、最終生成物である所望の組成を有するカリウム化合物を得ることができるように、各原料を配合することが好ましい。具体的には、カリウム化合物に含まれる各元素の比率が、目的とするカリウム化合物中の各元素の比率と同一となるように、各原料の混合割合を調整することが好ましい。
加熱工程では、カリウム化合物の製造に用いる原料の加熱処理を行う。上記加熱工程は、例えば、空気雰囲気下、もしくはアルゴン、窒素等の不活性ガス雰囲気等で行うことができる。あるいは、上記加熱工程は、真空等の減圧下で行ってもよい。加熱工程における加熱温度(すなわち、焼成温度)は500~1500℃であることが好ましい。この場合、加熱工程の操作をより容易に行うことができるとともに、得られるカリウム化合物の結晶構造が層状型構造を形成しやすい。その結果、得られるカリウム化合物の結晶性およびイオン伝導率が向上しやすい。加熱工程における加熱時間については、特に限定的ではなく、例えば、10分~80時間が好ましく、30分~60時間がより好ましい。
加熱工程において所定時間の加熱処理を行った後、冷却することで所望の組成を有するカリウム化合物が得られる。冷却速度は特に限定されない。また、一度冷却してから再度、前記加熱温度にて加熱処理を行って焼成を行ってもよい。
本発明のカリウム化合物は、上記製造方法の他に、例えば、共沈法、ゾルゲル法、水熱合成法などの方法によって製造することができる。
3.導電助剤
導電助剤は、(i)繊維状炭素、(ii)カーボンブラックおよび(iii)繊維状炭素とカーボンブラックとが相互に連結した炭素複合体からなる群から選択される少なくとも1種以上が好ましい。繊維状炭素としては、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバー等が挙げられる。繊維状炭素としては、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーからなる群の1種以上が好ましい。カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラックおよびケッチェンブラック(登録商標)等が挙げられる。カーボンブラックとしては、アセチレンブラックが好ましい。これらの導電助剤は単体で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、導電助剤の分散性を向上させる効果が高い観点から、アセチレンブラック、カーボンナノチューブおよびカーボンナノファイバーから選択される1種以上が好ましい。
4.カリウムイオン二次電池正極用スラリー
本発明の一実施形態に係るカリウムイオン二次電池正極用スラリーは、カリウムイオン二次電池正極用スラリーに含まれる樹脂組成物、正極活物質、および導電助剤の合計を100質量部としたとき、カリウムイオン二次電池正極用スラリーに含まれる樹脂組成物が、固形分換算値で1.0質量部以上、10.0質量部以下であることが好ましく、7.0質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以上、5.0質量部以下であることがより好ましく、1.5質量部以上、3.5質量部以下であることがさらにより好ましい。カリウムイオン二次電池正極用組成物の含有量は、例えば、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0質量部のいずれかであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明の一実施形態に係るカリウムイオン二次電池正極用スラリーは、正極用組成物と、正極活物質およびカーボンの結着性に優れ、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を正極用組成物として用いたスラリーに比べ、正極用組成物の含有量を減らしても、高い成形性を維持することができ、かつ、高電位での電池特性や耐久性に優れる正極とできる。
本発明の一実施形態に係るカリウムイオン二次電池正極用スラリーは、カリウムイオン二次電池正極用スラリーに含まれる樹脂組成物、正極活物質、および導電助剤の合計を100質量部としたとき、カリウムイオン二次電池正極用スラリーに含まれる導電助剤が、3質量部以上、20質量部以下であることが好ましく、5質量部以上、18質量部以下であることがより好ましい。
本発明の一実施形態に係るカリウムイオン二次電池正極用スラリーは、カリウムイオン二次電池正極用スラリーに含まれる樹脂組成物、正極活物質、および導電助剤の合計を100質量部としたとき、カリウムイオン二次電池正極用スラリーに含まれる正極活物質が、75質量部以上、95質量部以下であることが好ましく、78質量部以上、90質量部以下であることがより好ましい。
本発明の一実施形態に係るカリウムイオン二次電池正極用スラリーは、本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を含むこともできる。例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の溶媒を含むことができる。
5.正極
本発明の一実施形態に係る正極は、正極集電体および、正極集電体上に形成された前記に記載のカリウムイオン二次電池正極用スラリーの塗膜を備えることができる。正極集電体を構成する材料としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、チタン、白金、モリブデン、ステンレス、銅等が挙げられる。前記正極集電体の形状としては、例えば、多孔質体、箔、板、繊維からなるメッシュ等が挙げられる。これらの中では、箔が好ましい。箔としては、アルミニウム箔が好ましい。
本発明の一実施形態に係る正極は、樹脂組成物と、導電助剤と、正極活物質とを含む前記の正極用スラリーを、例えば、アルミニウム箔等の集電体上に塗布した後、加熱によりスラリーに含まれる溶剤を除去することにより、作製できる。また、更に打ち抜き工程や、集電体と電極合剤層をロールプレス等により加圧して密着させる工程を行うこともできる。
本発明の一実施形態に係る正極は、特に限定されるものではないが、例えば、サイズ10~100000mm、厚み10~500μmとすることができる。本発明の一実施形態に係る正極用スラリーは成形性に優れるため、例えば上記のサイズおよび厚みを有する成形体を欠陥なく成形することが可能である。
6.カリウムイオン二次電池
本発明の一実施形態に係るカリウムイオン二次電池は、前記に記載の正極を備えるものとできる。
本発明の一実施形態に係るカリウムイオン二次電池は、好適には、上記の正極、負極、セパレータ、および、電解質溶液(以下、電解質、電解液と称することもある。)を含んで構成される。
6-1.負極
負極を構成する負極活物質としては、例えば、カリウム金属を挙げることができ、その他、特開2019-119667号公報、および国際公開2017/099137号に記載の物質を用いることができる。
前記負極は、負極活物質から構成することもでき、また、負極活物質、導電助剤、および必要に応じて負極用樹脂組成物を含有する負極材料が負極集電体上に担持する構成を採用することもできる。負極材料が負極集電体上に担持する構成を採用する場合、負極活物質、導電助剤、および必要に応じて負極用樹脂組成物を含有する負極合剤を、負極集電体に塗布することにより製造することができる。
負極が負極活物質から構成する場合、上記の負極活物質を電極に適した形状(板状等)に成形して得ることができる。
また、負極材料が負極集電体上に担持する構成を採用する場合、導電助剤および樹脂組成物の種類、並びに負極活物質、導電助剤および樹脂組成物の含有量は上記した正極のものを適用することができる。
6-2.セパレータ
セパレータとしては、電池内で正極と負極を隔離し、且つ、電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保することができる材料からなるものであれば特に制限はない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、末端アミノ化ポリエチレンオキシド等のポリオレフィン樹脂;ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂;アクリル樹脂;ナイロン;芳香族アラミド;無機ガラス;セラミックス等の材質からなり、多孔質膜、不織布、織布等の形態の材料を用いることができる。これらの中では、ポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂は、例えば、ポリオレフィン樹脂製のシートとすることができる。
非水電解液は、カリウムイオンを含む電解液が好ましい。このような電解液としては、例えば、カリウム塩の溶液、カリウムを含む無機材料で構成されるイオン液体等が挙げられる。
カリウム塩としては、例えば、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム等のハロゲン化カリウム、過塩素酸カリウム、テトラフルオロホウ酸カリウム、ヘキサフルオロリン酸カリウム、ヘキサフルオロヒ酸カリウム等のカリウム無機塩化合物;カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(KFSI)、カリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(KTFSI)、カリウムビス(パーフルオロエタンスルホニル)イミド、安息香酸カリウム、サリチル酸カリウム、フタル酸カリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸カリウム、グリニャール試薬等のカリウム有機塩化合物等が挙げられる。これらの中では、KTFSIが好ましい。
また、溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート化合物;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン化合物;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メトキシメタン、グライム、ジメトキシエタン、ジメトキメタン、ジエトキメタン、ジエトキエタン、プロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物;N-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Pyr13TFSI)、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(Pyr13FSI)、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等が挙げられる。これらの中では、Pyr13TFSIが好ましい。
このような本発明のカリウムイオン二次電池は、本発明のカリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物を含むカリウムイオン二次電池正極用スラリーを用いているため、成形性に優れ、高電位での電池特性や耐久性に優れる。
以下に実施例をあげて本発明を更に詳細に説明する。また、これらは何れも例示的なものであって、本発明の内容を限定するものではない。データを表1に示す。
[正極カリウム化合物の合成]
<KNi1.75Co0.25TeOの合成>
原料粉体としてKCO(高純度化学、2N)、NiO(キシダ化学、3N)、CoO(高純度化学、4N)とTeO(Sigma Aldrich、98%)を用いた。KCOの吸水性を防ぐため、合成作業をドライルームで実施した。KCO、NiO、CoOとTeOを所定比となるように秤りとり、めのう乳鉢で約30分混合した。混合物をペレット成型し、電気炉で空気中800℃にて23時間焼成した。得られた生成物の吸湿性による空気曝露の影響を回避するための試料調製法として、焼成後に得られた生成物をAr雰囲気に保ったグローブボックス内に持ち込み、空気との接触がない環境で保管した。XRD測定により、得られた生成物がKNi1.75Co0.25TeOであることを確認した。
<KNi1.25Co0.75TeOの合成>
原料の配合比を変更した以外はKNi1.75Co0.25TeOの合成と同様に、KNi1.25Co0.75TeOの合成を行った。
<LiNiTeOの合成>
LiNiO(Sigma Aldrich、98%)とTeO(Sigma Aldrich、98%)を用いた。LiNiOとTeOを所定比となるように秤りとり、めのう乳鉢で約30分混合した。混合物をペレット成型し、電気炉で空気中800℃にて23時間焼成した。XRD測定により、得られた生成物がLiNiTeOであることを確認した。
<LiNiCoTeOの合成>
原料粉体として、LiCO(レアメタリック、3N)、NiO(キシダ化学、3N)、CoO(高純度化学、4N)とTeO(Sigma Aldrich、98%)を用いた。LiCO、NiO、CoOとTeOを所定比となるように秤りとり、めのう乳鉢で約30分混合した。混合物をペレット成型し、電気炉で空気中800℃にて23時間焼成した。XRD測定により、得られた生成物がLiNiCoTeOであることを確認した。
<KFeMnOの合成>
原料粉体としてKCO、Fe、MnOを用いた。また、KCOの吸水性を防ぐため、合成作業をドライルームで実施した。原料を所定比となるように秤りとり、めのう乳鉢で約30分混合した。混合物をペレット成型し、電気炉で空気中800℃にて20時間焼成した。得られた生成物の吸湿性による空気曝露の影響を回避するための試料調製法として、焼成後に得られた生成物をAr雰囲気に保ったグローブボックス内に持ち込み、空気との接触がない環境で保管した。XRD測定により、得られた生成物がKFeMnOであることを確認した。
[実施例1]
<ポリビニルアルコール(PVA)の調製>
PVAとして、平均重合度1200、鹸化度>99.95mol%のポリビニルアルコール(PVA)を用いた。なお、PVAの平均重合度および鹸化度は、JIS K 6726に基づき測定した。
<グラフト共重合体を含有する組成物の調製>
上記のPVAを、ジメチルスルホキシドに添加し、60℃にて2時間撹拌して溶解させた。更に、第1単量体としてのアクリロニトリルと、ジメチルスルホキシドに溶解させたペルオキソ二硫酸アンモニウムとを60℃にて得られるグラフト共重合体および樹脂組成物が以下の組成比となるよう所定量添加し、60℃で撹拌しながらグラフト共重合させた。重合開始より4時間後に、室温まで冷却し重合を停止させた。
得られた反応液100質量部をメタノール300質量部中に滴下し、組成物を析出させた。濾過してポリマーを分離して室温で2時間真空乾燥させ、更に80℃で2時間真空乾燥させ、グラフト共重合体を含む組成物C1を得た。
<グラフト共重合体の組成>
得られたグラフト共重合体を含む組成物C1は、グラフト共重合体を100質量部としたとき、ポリビニルアルコール構造を32質量部、第1単量体単位(アクリロニトリルに由来する構造単位)を68質量部含んでいた。
なお、組成物中の各成分の含有量は、重合終了後、メタノール析出し、乾燥した生成物を重DMSOに溶解させ、H NMRを測定することによって算出した。得られたスペクトルの、PVA、第1単量体に対応するシグナルの強度から、PVAを基準として、各成分の組成を算出した。
<グラフト共重合体を含有する組成物の遊離ポリマー、グラフト共重合体含有量>
また、得られた組成物C1は、組成物を100質量部としたとき、グラフト共重合体を85質量部、第1単量体のホモポリマーを15質量部含んでいた。グラフト共重合体のグラフト率は、741%であった。第1単量体のホモポリマーの重量平均分子量は、131000であった。
なお、遊離ポリマーはジメチルホルムアミド(DMF)には溶解するが、PVAおよびグラフト共重合体はDMFに溶解しない。この溶解性の差を利用し、遊離ポリマーを遠心分離等の操作により分離し、グラフト共重合体を含有する組成物に含まれる遊離ポリマーおよびグラフト共重合体の質量比を求めた。
<正極用スラリーの調製>
Ni1.75Co0.25TeOと、カーボン(Acetylene black)と、組成物C1を5質量%含むNMP溶液とを、KNi1.75Co0.25TeO:カーボン:組成物C1の質量比が、82:15:3となるように分取し、めのう乳鉢で混合した。ここで、組成物C1の質量比は、固形分の質量比である。さらに、NMPを追加して、正極用スラリー100質量部に対し、固形分量(KNi1.75Co0.25TeO+カーボン+組成物C1)が35~39質量部となるように調製し正極用スラリーを得た。
<正極の作製および成形性の評価>
得られたスラリーを集電体であるAl箔(厚さ20μm)上にアプリケーターでギャップ200μmにて塗布し、これを真空にて90度で14時間乾燥してから円形(直径8mm×厚み0.04mm)に打ち抜き、正極とした。また、以下の基準で成形性の評価を行った。結果を表1に示す。
A:成形体の剥離、欠け等は観察されなかった。
B:成形体の一部に点状に剥離が見られた。
C:脆く成形が困難であった。
[実施例2~4、比較例1、2]
正極活物質、樹脂組成物の種類および正極用スラリーの組成を表1に記載の通りとした以外は実施例1と同様に、正極用スラリーを作製し、成形性の評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2022119351000001
[実施例5、比較例3]
<二次電池の作製>
正極活物質、樹脂組成物の種類および正極用スラリーの組成を表2に記載の通りとした以外は実施例1と同様に、正極を作製した。次に、得られた正極を用いて、二次電池を作製した。セルはCR2032型コインセルを用いた。負極(対極)としてK金属箔を、電解液として0.5 M KTFSI/Pyr13TFSI、セパレータとしてポリオレフィン系シートを用いた。
<サイクリックボルタンメトリー(CV)試験>
電圧掃引速度1mV/sでサイクリックボルタンメトリー(CV)試験を行った。まず開回路電圧から正方向に4.7Vまで掃引し、折り返して負方向に1.3Vまで掃引した。結果を図1に示す。組成物C1を樹脂組成物として用いた正極を含む二次電池では4.3Vで最大電流0.045mAを示し、PVDFを樹脂組成物として用いた正極を含む二次電池では4.3Vで最大電流0.032mAを示し、PVDFに比べ高い応答電流が観察された。
[比較例4~7]
<二次電池の作製>
正極活物質、樹脂組成物の種類および正極用スラリーの配合比を表2に記載の通りとした以外は実施例1と同様に、正極を作製した。次に、得られた正極を用いて、二次電池を作製した。セルはCR2032型コインセルを用いた。負極(対極)としてLi金属箔を、電解液として、0.5M リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)/Pyr13TFSI、セパレータとしてポリオレフィン系シートを用いた。
<サイクリックボルタンメトリー(CV)試験>
電圧掃引速度1mV/sでサイクリックボルタンメトリー(CV)試験を行った。まず2.8Vから正方向に4.7Vまで掃引し、折り返して負方向に2.8Vまで掃引した。2回目は正方向に5.0Vまで掃引し、折り返して2.8Vまで掃引した。結果を図2、3に示す。組成物C1を樹脂組成物として用いた正極を含む二次電池と、PVDFを樹脂組成物として用いた正極を含む二次電池とでは、5.0Vの時の電流値がいずれも0.02mAで応答電流に大きな違いは観察されなかった。
[実施例6、比較例8]
<二次電池の作製>
正極活物質、樹脂組成物の種類および正極用スラリーの組成を表2に記載の通りとした以外は実施例1と同様に、正極を作製した。次に、得られた正極を用いて、二次電池を作製した。セルはCR2032型コインセルを用いた。負極(対極)としてK金属箔を、電解液として0.5 M KTFSI/Pyr13TFSI、セパレータとしてポリオレフィン系シートを用いた。
<充放電測定>
充放電装置を用い、定電流充放電測定を行った。電流をC/20に相当する電流値、上限電圧4.7V、下限電圧1.3Vに設定し、充電より開始した。25℃恒温槽内にセルを入れた状態で充放電測定を行った。結果を図4に示す。組成物C1を樹脂組成物として用いた正極を含む二次電池では、PVDFを樹脂組成物として用いた正極を含む二次電池に比べ、初期容量が高かった。
Figure 2022119351000002

Claims (11)

  1. カリウムイオン二次電池正極用スラリーであって、
    グラフト共重合体を含有する樹脂組成物、
    導電助剤、および
    正極活物質
    を含み、
    前記グラフト共重合体は、幹ポリマーおよび複数の枝ポリマーを有し、
    前記幹ポリマーは、ポリビニルアルコール構造を含み、
    前記枝ポリマーは、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および/または(メタ)アクリル酸単量体を含む第1単量体単位を含み、
    前記正極活物質は、
    テルルまたは鉄の少なくとも1つを含むカリウム化合物を含む、カリウムイオン二次電池正極用スラリー。
  2. 前記正極活物質は、
    下記一般式(1)
    (1)
    (式(1)中、MはTeまたはFeを示し、MはMg、Sr、Ba、Ca、Zn、Mn、Cu、Co、Ti、V、CrおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属を示し、0.2≦a≦6.5、0.5≦b≦1.5、0.5≦c≦3.0、かつ、3.0≦x≦9.0である)、
    または、下記一般式(2)
    (2)
    (式(2)中、Mは式(1)中のMと同義であり、MおよびMは互いに異なってそれぞれMg、Sr、Ba、Ca、Zn、Mn、Cu、Co、In、Ga、Y、Ti、V、Cr、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、AlおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属を示し、0.2≦d≦6.5、0.5≦e≦1.5、0.5≦f+g≦3.0かつ、3.0≦y≦9.0である)で表される、請求項1に記載のカリウムイオン二次電池正極用スラリー。
  3. 前記正極活物質は、
    前記式(1)で表され、前記(1)において、MがFeであって、MがMn、Tiからなる群より選ばれる1種の金属であるか、または、
    前記式(2)で表され、前記式(2)において、MがTeであって、MおよびMは互いに異なり、それぞれMg、Ca、Zn、Mn、Cu、CoおよびNiからなる群より選ばれる1種の金属である、請求項1または2に記載のカリウムイオン二次電池正極用スラリー。
  4. 前記カリウムイオン二次電池正極用スラリーに含まれる前記樹脂組成物、前記正極活物質、および前記導電助剤の合計を100質量部としたとき、前記カリウムイオン二次電池正極用スラリーに含まれる前記樹脂組成物が、1.0質量部以上、10.0質量部以下である、請求項1~3のいずれかに記載のカリウムイオン二次電池正極用スラリー。
  5. 前記グラフト共重合体を含有する樹脂組成物は、遊離ポリマーを更に含み、
    前記遊離ポリマーは、前記グラフト共重合体と共有結合を有さず、
    前記遊離ポリマーは、前記第1単量体単位を含むポリマーを少なくとも含む、
    請求項1~4のいずれかに記載のカリウムイオン二次電池正極用スラリー。
  6. 前記樹脂組成物は、前記グラフト共重合体を100質量部としたとき、前記グラフト共重合体中に、前記ポリビニルアルコール構造を10~80質量部、前記第1単量体単位を20~90質量%含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のカリウムイオン二次電池正極用スラリー。
  7. 前記樹脂組成物は、前記樹脂組成物を100質量部としたとき、前記樹脂組成物中に、前記遊離ポリマーを0.1質量部以上含む、請求項5に記載のカリウムイオン二次電池正極用スラリー。
  8. 前記導電助剤が、繊維状炭素、カーボンブラック、繊維状炭素とカーボンブラックとが相互に連結した炭素複合体からなる群から選択される1種以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載のカリウムイオン二次電池正極用スラリー。
  9. 正極集電体および、前記正極集電体上に形成された請求項1~8のいずれか一項に記載のカリウムイオン二次電池正極用スラリーの塗膜を備える正極。
  10. 請求項9に記載の正極を備えるカリウムイオン二次電池。
  11. グラフト共重合体を含有するカリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物であって、
    前記グラフト共重合体は、幹ポリマーおよび複数の枝ポリマーを有し、
    前記幹ポリマーは、ポリビニルアルコール構造を含み、
    前記枝ポリマーは、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および/または(メタ)アクリル酸単量体を含む第1単量体単位を含み、
    テルルまたは鉄の少なくとも1つを含むカリウム化合物を正極活物質とする、カリウムイオン二次電池正極用樹脂組成物。
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