JP2022115097A - ポリアミド樹脂組成物、及びその製造方法 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物、及びその製造方法 Download PDF

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知世 奥村
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仁美 岡部
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Abstract

【課題】摺動部材として一般的とされるフッ素系樹脂を配合せず、摺動特性、機械特性により優れ、比較的安価なポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とするものである。【解決手段】ポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(B)ポリエチレンを含む主鎖にポリスチレン或いはアクリロニトリルを含む側鎖がグラフトしたグラフト共重合体1~15質量部、(C)銅化合物を0.01~5質量部、及び、(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物を0.05~5質量部を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物及びその製造方法に関する。
ポリアミド樹脂は、摺動特性、成形加工性、機械物性、耐薬品性に優れていることから、従来から、産業資材用、自動車用、電気及び電子用または工業用等の様々な部品材料として広く用いられている。
ポリアミド樹脂の摺動特性をより向上させる他の手法として、フッ素系樹脂、黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を配合し、混練した組成物が一般的に知られている。例えば、特許文献2~4には、フッ素系樹脂が配合されたポリアミド樹脂組成物が開示されている。
近年、自動車分野、電気及び電子分野等で金属部材の樹脂化が加速してきており、特に最近は、自動車分野で燃費向上のための軽量化、コスト低減、組立工程合理化の観点から、より摺動特性に優れ、靱性及び耐衝撃性等の機械特性に優れる成形材料が要求されている。
一方で、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩およびPFOA関連物質の製造・輸入・使用等の制限が進められ、将来的に安定的な供給が難しいとされている。
よって、摺動特性をより向上させる手法として一般的とされる、フッ素系樹脂等の固体潤滑剤を配合することなくポリアミド樹脂にグラフト共重合体を分散させることによる動力伝達ガイド用摺動部材が提案されている(特許文献1参照)。
特開2016-117848号公報 国際公開第2013/047625号 特開2011-84679号公報 特開2012-102189号公報
摺動特性の向上としてポリアミド樹脂にフッ素樹脂を配合することが提案されている。例えば代表例としてポリテトラフルオロエチレンを用いて、これを微分散化させたポリアミド樹脂組成物が一般的に知られている。しかし、国際的にはもちろん国内でも化審法に基づきペルフルオロオクタン酸とその塩およびPFOA関連物質の製造・輸入・使用等の制限が進められ、将来的に安定的な供給が難しいとされている。
さらに、これまでフッ素系樹脂として例えばポリテトラフルオロエチレンを用いた場合、これを微分散化させるためには、ポリテトラフルオロエチレンの融点以上の温度で高剪断条件下にて溶融混練する必要があり、ポリアミド樹脂の劣化により機械強度が低下してしまうという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、摺動特性、機械特性により優れ、且つ溶融混錬時の温度への束縛を有しないポリアミド樹脂組成物、およびその製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明は、以下の態様を包含する。
(1) (A)ポリアミド樹脂、
(B)ポリエチレンを含む主鎖にポリスチレン或いはアクリロニトリルを含む側鎖がグラフトしたグラフト共重合体、
(C)銅化合物、及び、
(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物を含有し、
前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、
前記(B)グラフト共重合体の含有量が1~15質量部であり、
前記(C)銅化合物の含有量が0.01~5質量部であり、
前記(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物の含有量が0.05~5質量部である、ポリアミド樹脂組成物。
(2) さらに、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対してヒンダードフェノール系熱安定剤を0.01~5質量部含有する、前記(1)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(3) さらに、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して繊維充填剤を1~30質量部を含有する、前記(1)又は(2)に記載のポリアミド樹脂組成物。
(4) ペルフルオロオクタン酸とその塩を10質量ppb以上含有しない、前記(1)~(3)のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
(5) (C)銅化合物及び(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物を含むマスターバッチを調製する工程、および、
前記マスターバッチ、(A)ポリアミド樹脂、および(B)グラフト共重合体を溶融混練する工程、
を含む、前記(1)~(4)のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
(6) 溶融混練温度が280℃以上である、前記(5)に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、摺動特性に優れるとともに靱性及び耐衝撃性等の機械特性のバランスに優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
下記実施例および比較例における摩耗痕外観評価の際に使用した参考例の写真である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂、(B)ポリエチレンを含む主鎖にポリスチレン或いはアクリロニトリルを含む側鎖がグラフトしたグラフト共重合体、(C)銅化合物、及び、(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物を含有する。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、前記(B)グラフト共重合体の含有量が1~15質量部であり、前記(C)銅化合物の含有量が0.01~5質量部であり、前記(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物の含有量が0.05~5質量部である。
以下、本実施形態の各構成要件について説明する。
(A)ポリアミド樹脂
(A)ポリアミド樹脂としては、例えば、ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びにこれらの共重合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、(A)ポリアミド樹脂としては、上記ポリアミドの1種のみを単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。
(A)ポリアミド樹脂の具体例としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6I(ポリヘキサメチレンイソフタルアミド)、ポリアミド2Me5T(ポリ-2-メチルペンタメチレンテレフタラミド(Meはメチル基、以下同様とする。))、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)、及びポリアミドPXD12(ポリパラキシリレンドデカミド)並びにこれらの少なくとも1種を構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
本実施形態の(A)ポリアミド樹脂としては、摺動特性の観点からポリアミド66、ポリアミド6、ポリアミド610またはポリアミド612を主成分とするポリアミド樹脂が好ましい。ここで、「主成分」とは、(A)ポリアミド樹脂の総質量に対する含有量が、50質量%以上であることを意味する。さらに、耐熱性の観点から、(A)ポリアミド樹脂は、ポリアミド66またはポリアミドPXD12を主成分とするポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミド66を主成分とするポリアミド樹脂がより好ましい。
(A)ポリアミド樹脂の硫酸相対粘度は、2.0以上であることが好ましく、2.1以上であることがより好ましく、2.3以上であることがさらに好ましく、3.2以上であることが最も好ましい。また、(A)ポリアミド樹脂の硫酸相対粘度は、4.5以下であることが好ましく、4.4以下であることがより好ましく、4.3以下であることが最も好ましい。
上記硫酸相対粘度が2.0以上であることで、より機械物性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。また、上記硫酸相対粘度が4.5以下であることで、より流動性・加工性に優れたポリアミド樹脂組成物が得られる傾向にある。
上記硫酸相対粘度は、実施例に示すJIS-K6920に従う方法により測定することができる。
(B)グラフト共重合体
本実施形態における(B)グラフト共重合体は、ポリエチレンを含む主鎖に、ポリスチレン或いはアクリロニトリルを含む側鎖がグラフト化したグラフト共重合体であり、好ましくは主鎖のポリエチレンを含むオレフィン系重合体(好ましくはポリエチレン)に、側鎖としてアクリロニトリル-スチレン共重合体またはポリスチレンなどのビニル系重合体をグラフト共重合させたグラフト共重合体である。
(B)グラフト共重合体の存在は、得られるポリアミド樹脂組成物における摺動性の向上に貢献する。
(B)グラフト共重合体の調製法は特に限定されるものではないが、公知のラジカル反応によって容易に調製できる。例えば、ポリエチレンを含むオレフィン系重合体成分を構成するモノマーと、ビニル系重合体を構成するモノマーにラジカル触媒を加えて混錬してグラフト化する方法、或いはオレフィン系重合体成分またはビニル系重合体成分の何等かに過酸化物等のラジカル触媒を加えてフリーラジカルを生成させ、これを他方の成分のポリマーと溶融混錬してグラフト化する方法等によってグラフト共重合体が調製される。
主鎖としてのポリエチレンを含むオレフィン系共重合体に、側鎖としてのポリスチレンもしくはアクリロニトリルを含むビニル系重合体をグラフト共重合させることにより、射出成形時における出口付近での剥離を防ぐことができる。
(B)グラフト共重合体を構成する(b1)オレフィン系重合体と(b2)ビニル系重合体の割合は、b1:b2=80:20~20:80(質量比)が好ましく、特に好ましくはb1:b2=60:40~40:60である。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物における(B)グラフト共重合体の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、1~15質量部であり、好ましくは2~12質量部であり、さらに好ましくは3~10質量部である。前記下限値以上であることにより摺動特性が効果的に発揮され、前記上限値以下であることにより摩耗性、機械特性が向上する。
(C)銅化合物
本実施形態で用いられる(C)銅化合物としては、ハロゲン化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅、ステアリン酸銅などや、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に配位した銅錯塩等が挙げられる。これら銅化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。この中でも、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅、酢酸銅が好ましく、ヨウ化銅がより好ましい。また、摺動特性の観点からこれらの銅化合物は、(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物と、マスターバッチ化して用いることが好ましい。
(C)銅化合物の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部であり、好ましくは0.01~4質量部、さらに好ましくは0.03~3質量部である。この範囲にすることにより、十分な耐熱エージング性が向上し、銅析出や腐食を抑制できるとともに、摩擦係数や摩耗深さの低減にも効果を発揮する。
(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物
本実施形態で用いられる(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物(以下、「金属ハロゲン化物」と略する場合がある)として、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、ヨウ化カリウムであることが好ましい。これら金属ハロゲン化物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
(D)金属ハロゲン化物の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、0.05~5質量部であり、好ましくは0.1~4質量部、さらに好ましくは0.2~3質量部である。(D)金属ハロゲン化物の配合量をこの範囲にすることにより、十分な耐熱エージング性が向上し、銅析出、腐食を抑制できるとともに、摩擦係数や摩耗深さの低減にも効果を発揮する。
また、配合する(C)銅化合物および(D)金属ハロゲン化物の最大粒子径は、共に、50μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下である。
本発明において、粒子径とは、二軸平均径、すなわち、短径と長径の平均値をいう。ここで、短径、長径とは、それぞれ、粒子に外接する面積が最小となる外接長方形の短辺、長辺である。(C)銅化合物および(D)金属ハロゲン化物の最大粒子径の測定は、少なくとも50個の粒子に関して走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより求めることができる。
最大粒子径を前記範囲にすることにより、(A)ポリアミド樹脂中の水分率が低くても、(C)銅化合物および(D)金属ハロゲン化物を微細に(A)ポリアミド樹脂中に分散させることができ、金属析出、腐食の問題点がより改善され、得られるポリアミド樹脂組成物の靭性、耐熱性エージング性、摩擦係数や摩耗深さの低減、外観、色調がより改良される。
(C)銅化合物および(D)金属ハロゲン化物をマスターバッチ化している場合、マスターバッチ中のハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)が、3~30であることが好ましく、より好ましくは4~25、さらに好ましくは5~23である。
ハロゲンと銅のモル比が前記下限値以上の場合には銅析出、金属腐食の抑制することができるため好ましい。またハロゲンと銅のモル比が前記上限値以下であれば靭性などの機械物性を損なうことなく、成形機のスクリューなどを腐食するという問題を抑制することができる。
本実施形態においては、マスターバッチ中に少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物(ただし、ポリアミドを除く)を存在させることができる。少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物の存在により、溶融混錬時に、(C)銅化合物や(D)金属ハロゲン化物が(A)ポリアミド樹脂中の水分に溶解し、錯形成することを防ぐことができ、(A)ポリアミド樹脂に悪影響を与えることなく、(C)銅化合物や(D)金属ハロゲン化物の(A)ポリアミド樹脂中での分散を安定化させ、析出や変質を防ぐことができる。
本実施形態で用いられる少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物は、分子鎖に少なくとも一つのアミド基を有する化合物である。具体的には、モノアマイド類、置換アマイド類、メチロールアマイド類、ビスアマイド類が挙げられる。
モノアマイド類は、一般式R-CONH2で表される(但し、Rは炭素数8~30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの-Hの一部が-OHに置換されたものである)。具体的には、例えばラウリル酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等、リノシール酸アマイド等が挙げられる。
置換アマイド類は、一般式R1-CONH-R2で表される(但し、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数8~30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの-Hの一部が-OHに置換されたものである)。具体的には、例えばN-ラウリルラウリル酸アマイド、N-パルチミルパルチミン酸アマイド、N-ステアリルステアリン酸アマイド、N-オレイルオレイン酸アマイド、N-ステアリルオレイン酸アマイド、N-オレイルステアリン酸アマイド、N-ステアリルエルカ酸アマイド、N-オレイルパルチミン酸アマイド、N-ステアリル12ヒドロキシステアリン酸アマイド、N-オレイル12ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
メチロールアマイド類は、一般式R-CONHCH2OHで表される(但し、Rは炭素数8~30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの-Hの一部が-OHに置換されたものである)。具体的には、例えばメチロールステアリン酸アマイド、メチロールベヘン酸アマイド等が挙げられる。
ビスアマイド類は、一般式(R-CONH)2(CH2)n表される(但し、Rは炭素数8~30の飽和脂肪族、不飽和脂肪族、芳香族あるいはそれらの-Hの一部が-OHに置換されたものである。nは1~8である)。具体的には、メチレンビスラウリン酸アマイド、メチレンビスラウリン酸アマイド、メチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリル酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、ブチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレンビスエルカ酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アマイド、m-キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’ -ジステアリルイソフタル酸アマイド等が挙げられる。
これらの少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
これらの中でも好ましいものとしてはビスアマイド類を挙げることができる。
少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5.0質量部であり、さらに好ましくは1.0~4.0質量部である。この範囲にすることにより、(C)銅化合物および(D)金属ハロゲン化物の(A)ポリアミド樹脂中での分散性がより向上し、耐熱エージング性がより向上し、摩擦係数や摩耗深さの低減、銅析出、腐食をより抑制できる傾向がある。
前記マスターバッチの水分率は、マスターバッチの総質量に対して、例えば、0.06~1.0質量%、0.10~0.25質量%、または0.05~0.2質量%であることができる。マスターバッチ中の水分は、ポリアミド分子に結合した状態の水分として存在してもよいし、マスターバッチ表面例えばマスターバッチペレットやマスターバッチパウダー表面に付着した水分であってもよい。水分率をこの範囲にすることにより、(C)銅化合物や(D)金属ハロゲン化物の凝集を抑制することができる。このことにより、靭性等の機械特性、耐熱エージング性の改良効果が高く、摩擦係数や摩耗深さの低減、銅析出、金属腐食性の抑制がより可能となる。マスターバッチの水分率は、押出機の減圧度、冷却時のストランドバス中の浸漬時間、浸漬長さの制御、あるいは水噴霧量の制御により調整できる。
本実施形態におけるポリアミド樹脂組成物の水分率は、ポリアミド樹脂組成物の総質量に対して、好ましくは0.01~1質量%、より好ましくは0.025~0.5質量%、さらに好ましくは0.04~0.25質量%である。ポリアミド樹脂組成物中の水分は、ポリアミド分子に結合した状態の水分として存在してもよいし、ポリアミド樹脂組成物表面、例えばペレットやパウダー表面に付着した水分であってもよいが、本発明の効果をより顕著に発現するという観点から、ポリアミド分子に結合した水分として存在させたほうがより好ましい。
水分率を該範囲にすることにより、(C)銅化合物や(D)金属ハロゲン化物の凝集を抑制することができる。このことにより、靭性等の機械特性、耐熱エージング性の改良効果が高く、摩擦係数や摩耗深さの低減、銅析出、金属腐食性の抑制がより可能となる。
ポリアミド樹脂組成物の水分率は、押出機の減圧度、冷却時のストランドバス中の浸漬時間、浸漬長さの制御、あるいは水噴霧量の制御により調整できる。
(ヒンダードフェノール系熱安定剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤))
ポリアミド樹脂組成物には熱安定剤が更に添加されることが好ましい。
熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール化合物等のフェノール系安定剤、ホスファイト系安定剤、ヒンダードアミン系安定剤、トリアジン系安定剤、及びイオウ系安定剤等が挙げられるが、好ましくは、フェノール系安定剤であるヒンダードフェノール化合物が好ましく用いられる。これらの熱安定剤は、摩擦係数や摩耗深さの低減にも効果を発揮する。
ヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量は、(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部であり、より好ましくは0.015~3質量部である。
(繊維充填剤)
繊維状充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ワラストナイト、カーボンナノチューブ、が挙げられる。これらの中でも、摺動特性向上の観点から、さらに摺動特性における耐摩耗性・摩耗深さ低減という観点で炭素繊維が特に好ましく、相手材を傷つけにくい特徴を有する。
例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維のいずれも用いることができる。機械物性の観点からPAN系炭素繊維を用いることが好ましい。
上述した繊維状充填剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
繊維充填剤は、摺動特性、機械物性という観点から用いる事が好ましい。そのうえで(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、1質量部以上、30質量部以下が好ましく、3質量部以上、20質量部以下がより好ましく、5質量部以上、10質量部以下がさらに好ましい。
炭素繊維は、生産性の観点から、3mmから10mm程度の短繊維の形の炭素繊維を押出機で溶融混練により加えることが好ましい。その際、サイドフィーダーから炭素繊維を添加することが、炭素繊維の折れを防ぐ観点から好ましい。
炭素繊維は、ポリアミド樹脂との親和性の観点から、ウレタン系収束剤、無水マレイン酸系収束剤、アクリル系収束剤、ポリアミド系収束剤を塗布されているものが好ましい。
炭素繊維は、物性と摺動性の観点から、直径が5μm以上10μm以下であることが好ましい。
(成形性改良剤)
ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、成形性改良剤を添加してもよい。
成形性改良剤としては、特に限定されないが、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸等の炭素数8~40の飽和または不飽和の、直鎖または分岐状の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
これらの中でも、ステアリン酸及びモンタン酸が好ましい。
高級脂肪酸金属塩とは、上記高級脂肪酸の金属塩である。
金属塩の金属元素としては、元素周期律表の第1、2、3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等が好ましく、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウム等の、第1、2族元素、並びにアルミニウム等がより好ましい。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸の金属塩、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム等のモンタン酸の金属塩、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸の金属塩が挙げられる。
これらの中でも、モンタン酸の金属塩及びステアリン酸の金属塩が好ましい。
高級脂肪酸エステルとは、上記高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。
炭素数8~40の脂肪族カルボン酸と炭素数8~40の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。
脂肪族アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びラウリルアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
高級脂肪酸アミドとは、上記高級脂肪酸のアミド化合物である。
高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N-ステアリルステアリルアミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
これらの高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドは、それぞれ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。
(着色剤)
ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、着色剤を添加してもよい。
着色剤としては、特に限定されないが、例えば、ニグロシン等の染料、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料;アルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、及びチタン等の金属粒子;マイカ製パール顔料、カラーグラファイト等のメタリック顔料等が挙げられる。
(その他の樹脂)
ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂を添加してもよい。
このような樹脂としては、特に限定されるものではないが、後述する熱可塑性樹脂やゴム成分等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、AS(アクリロニトリル-スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲンビニル化合物系樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンランダム共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-(1-ブテン)共重合体、エチレン-(1-ヘキセン)共重合体、エチレン-(1-オクテン)共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)や、ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン-コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-スチレン-コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート-ブタジエン-アクリロニトリル-スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプ等が挙げられる。
これらのゴム成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。
(ペルフルオロオクタン酸とその塩)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、ペルフルオロオクタン酸とその塩の含有量が、ポリアミド樹脂組成物の総質量に対して、10質量ppb未満であることが好ましい。
当該含有量の範囲であることにより、溶融混練時の温度を抑えることができ、ポリアミド樹脂の機械的強度を高めることができる傾向にある。
(ポリアミド樹脂組成物の製造方法)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物はとして、(A)ポリアミド樹脂、(B)グラフト共重合体、(C)銅化合物、及び(D)金属ハロゲン化物と、必要に応じて配合されるその他の成分とを、混合、混練することによって得ることができる。
前記(C)銅化合物及び(D)金属ハロゲン化物は、あらかじめマスターバッチ化した後、(A)ポリアミド樹脂及び(B)グラフト共重合体と共に溶融混練されることが好ましい。あるいは、前記(C)銅化合物、(D)金属ハロゲン化物および(A)ポリアミド樹脂の一部をあらかじめマスターバッチ化した後、(A)ポリアミド樹脂の残部と(B)グラフト共重合体と共に溶融混練されることも好ましい。
(マスターバッチ調製工程)
マスターバッチは、前記(C)銅化合物及び(D)金属ハロゲン化物を溶融混練することにより調製される。
前記(C)銅化合物及び(D)金属ハロゲン化物に加えて、前記少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物(ただし、ポリアミドを除く)を配合することが好ましい。
前記少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物に加えて、(A)ポリアミド樹脂を配合することが好ましい。
前記少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物と前記(A)ポリアミド樹脂を配合する場合、前記(C)銅化合物、(D)金属ハロゲン化物、および少なくとも1つのアミド基を有する有機化合物を、それぞれ単独で、(A)ポリアミド樹脂に配合してもよいし、3種類のうち少なくとも2種類の化合物を予め混合してから(A)ポリアミド樹脂に配合してもよいし、3種類のうち少なくとも2種類の化合物を予め混合し粉砕してから(A)ポリアミド樹脂に配合してもよいし、また3種類のうち少なくとも2種類の化合物を予め混合し粉砕しタブレット状にして(A)ポリアミド樹脂に配合してもよい。
化合物を混合する方法として、公知の方法、例えばタンブラー、ヘンシェル、プロシェアミキサー、ナウターミキサー、フロージェットミキサー等のいずれかを用いて混合する方法を挙げることができる。
化合物を粉砕する方法として、公知の方法、例えばハンマーミル、ナイフミル、ボールミル、ジョークラッシャー、コーンクラッシャー、ローラミル、ジェットミル、碾臼などの何れかを用いて粉砕する方法を挙げることができる。
化合物をタブレット状にする方法として、公知の方法、例えば圧縮造粒法、打錠成形法、乾式押出造粒法、溶融押出造粒法などを挙げることができる。
溶融混練を行う装置としては、特に制限されるものではなく、公知の装置を用いることができる。例えば、単軸あるいは2軸押出機、バンバリーミキサーおよびミキシングロールなどの溶融混練機が好ましく用いられる。中でも2軸押出機が好ましく用いられる。また溶融混練機には、脱気機構(ベント)装置ならびにサイドフィーダー設備を装備してもよい。
本実施形態の溶融混練の温度は、(A)ポリアミド樹脂のJISK7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求められる融点あるいは軟化点より1~100℃程度高い温度が好ましい。混練機での剪断速度は100(SEC-1)以上程度であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は1~15分程度が好ましい。
(マスターバッチ、(A)ポリアミド樹脂及び(B)グラフト共重合体の溶融混練工程)
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、前記マスターバッチ、(A)ポリアミド樹脂及び(B)グラフト共重合体を溶融混練して調製される。前記マスターバッチに(A)ポリアミド樹脂の一部が配合されている場合、本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、前記マスターバッチに(A)ポリアミド樹脂の残部と(B)グラフト共重合体を溶融混練して調製される。
(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、好ましくは、前記(C)銅化合物と(D)金属ハロゲン化物の合計質量が、0.1~100質量部、より好ましくは0.1~20質量部となるように配合される。この範囲で配合することにより、押出機や成形機内での金属銅析出、金属腐食が抑制され、これにより加工時の安定性が向上することに加え、製品の機械物性を低下させることなく、耐熱エージング性をより向上させ、摩擦係数や摩耗深さをより低減し、吸水による外観色変化をより抑制することができる。
(A)ポリアミド樹脂100質量部に対する(B)グラフト共重合体の配合量は、前述の通りである。
マスターバッチ、(A)ポリアミド樹脂及び(B)グラフト共重合体は、必要に応じて配合されるその他の成分と共に、溶融混練される。
前記溶融混練工程は、単軸もしくは二軸押出機等の通常用いられる種々の押出機を用いて実施されることが好ましく、生産性、汎用性等の点から二軸押出機を用いて実施されることが特に好ましい。その際、溶融混練温度は、(A)ポリアミド樹脂の種類にもよるが、押出機吐出口から吐出された溶融樹脂の温度が(A)ポリアミド樹脂、(B)グラフト共重合体の融点以上となるように調整することが好ましい。溶融混練温度を上記範囲とすることにより、押出混練不良が生じ難く、(B)グラフト共重合体の微分散が可能となる。
二軸押出機の場合、押出機スクリューには少なくとも二カ所以上のニーディングディスクを組み合わせた混練ゾーンを有することが好ましい。混練ゾーンは、混練が効果的に行われるように、溶融樹脂の押出方向への進行を抑制しつつ高剪断を付与する領域のことである。
溶融混練工程は、二軸押出機の最上流供給口より、(A)ポリアミド樹脂、(B)グラフト共重合体およびマスターバッチ((C)銅化合物及び(D)金属ハロゲン化物と必要に応じて(A)ポリアミド樹脂とを含む)と必要に応じてその他の成分(ヒンダードフェノール系熱安定剤など)を供給し、第一の混練ゾーンで溶融混練して第一の溶融混練物を得て、必要に応じて、第一の混練ゾーンの下流側に設けた側方供給口から繊維状充填剤を供給し、側方供給口の下流側に設けた第二の混練ゾーンにおいて第一の溶融混練物中に非溶融の繊維状充填剤を分散させる方法が好ましい。
溶融混練工程後に押出機出口より吐出されるポリアミド樹脂組成物の樹脂温度が、(A)ポリアミド樹脂の結晶化温度より高く、280℃以上となるように、押出機の各条件(バレル温度、スクリュー回転数、吐出量等)を設定することが望ましい。吐出口でのポリアミド樹脂組成物の温度を280℃以上とすることにより、(A)ポリアミド樹脂や(B)グラフト共重合体等をより微分散することができ、高い摺動特性、機械特性に優れる。
上記ポリアミド樹脂組成物の温度は、例えば、押出機出口より吐出される溶融状態のポリアミド樹脂組成物に、一般に市販されている熱電対式温度計の検知部を直接接触させて測定することが好ましい。
上記ポリアミド樹脂組成物の温度を達成するための押出機の温度設定は、280℃以上であることが好ましい。
ポリアミド樹脂組成物を成形することにより、本実施形態のポリアミド樹脂組成物の成形体が得られる。
成形体を得る方法としては、特に限定されず、公知の成形方法を用いることができる。
例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、及び金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を成形する際の成形機の設定温度は、使用する(A)ポリアミド樹脂の融点より5℃高い温度から310℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは10℃高い温度から300℃の範囲、さらに好ましくは15℃高い温度から295℃の範囲で設定することが望ましい。成形機の設定温度を前記温度範囲とすることにより、成形時におけるポリアミド樹脂組成物のより効果的な混錬ができ、ポリアミド樹脂組成物中の(B)グラフト共重合体等の分散をより充分なものとすることができる。
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、摺動特性に優れるとともに靱性及び耐衝撃性等の機械特性のバランスに優れることから、様々な摺動用途に用いることができる。
例えば、摺動部材として、軸受、歯車、スラストワッシャー、シールリング等が挙げられ、これらに好適に用いることができる。
以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例と比較例で用いた原料、及び物性試験等の測定方法は次の通りである。
〔原料〕
(A)ポリアミド樹脂
(製造例1) ポリアミド66の調製
アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩15000g、並びに全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水15000gに溶解させ、原料モノマーの50質量%水溶液を得た。得られた水溶液を内容積40Lのオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を窒素で置換した。この水溶液を、110~150℃の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま内部温度が270℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
その後、約1時間かけて圧力を大気圧まで減圧し、大気圧になった後、下部ノズルからストランド状に排出して、水冷、カッティングを行い、ペレットを得た。得られたペレットを窒素気流中、90℃で4時間乾燥した。このペレットの98%硫酸相対粘度は2.71、融点265℃、結晶化温度220℃であった。
(B)グラフト共重合体((b1)主鎖:オレフィン系共重合体、(b2)側鎖:ビニル系共重合体)
(B)-1(グラフト共重合体-1):MODIPERA A1401、日油社製、融点111℃、(b1):(b2)=50:50
(B)-2(グラフト共重合体-1):MODIPERA A1100、日油社製、融点110℃、(b1):(b2)=70:30
上記グラフト共重合体は、下記測定法により測定したところ、ペルフルオロオクタン酸とその塩およびPFOA関連物質を含有していなかった。
(C)銅化合物
ヨウ化銅:ヨウ化銅(I)、和光純薬工業社製
(D)金属ハロゲン化物
ヨウ化カリウム:ヨウ化カリウム、和光純薬工業社製
(製造例2) マスターバッチの調製
(製造例1)で得られた(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(C)銅化合物1.5質量部、及び(D)金属ハロゲン化物40質量%水溶液32.5質量部を加え、二軸押出機(プラスチック工学研究所製、2軸同方向スクリュー回転型、L/D=60(D=30φ))を用いて、スクリュー回転数100rpm、シリンダー温度280℃で溶融混練し、(A)ポリアミド樹脂、(C)銅化合物及び(D)金属ハロゲン化物を含むマスターバッチを得た。
当該マスタ―バッチは、実施例1、3~6、8~12、及び14において使用した。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFT)粉体(比較例5に使用)
ペルフルオロオクタン酸とその塩およびPFOA関連物質を含有していた。
フッ素系樹脂-ポリテトラフルオロエチレン:TLP10F-1、三井・デュポンフロロケミカル社製、数平均1次粒子径0.2μm、融点329℃
・繊維状充填材:炭素繊維:帝人株式会社、HTC413
・ヒンダードフェノール系熱安定剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤):BASF社製、IRGANOX1098
・展着剤:三洋化成工業株式会社、PEG400
[成形方法]
実施例及び比較例で得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを、射出成形機PS-40E(日精樹脂株式会社製)を用いて、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度を80℃、シリンダー温度=(ポリアミド樹脂の融点+30)℃に設定し、ISO 3167に従い、多目的試験片A形の試験片を成形した。
また、実施例及び比較例で得られた組成物のペレットを、前記射出成形機を用いて、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度を80℃、シリンダー温度=(ポリアミド樹脂の融点+30)℃に設定し、外径φ25.7mm×内径φ20mm×高さ17mmの中空円筒状試験片を作製し、摺動特性評価用試験片を得た。
[測定方法]
<ポリアミド樹脂組成物の水分率>
水分気化装置(三菱化学(株)製VA-06型)を用いて、ポリアミド樹脂組成物0.7gで電量滴定法(カール・フィッシャー法)により測定した。
<硫酸相対粘度>
ポリアミド樹脂の25℃における硫酸相対粘度ηrを、JIS-K6920に準じて測定した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液((ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合)を作製し、得られた溶解液を用いて25℃の温度条件下で硫酸相対粘度ηrを測定した。
<摺動特性の評価>
<摩擦係数、摩耗深さ>
往復動摩擦摩耗試験機(東洋精密(株)製AFT-15MS型)、及び相手材料としてSUS304試験片(直径5mmの球)を用いて、線速度50mm/sec、往復距離20mm、温度23℃、湿度50%で、摺動試験を実施した。さらに、荷重4kg、往復回数10,000回で摩擦係数試験を実施した。また、摺動試験後のサンプルの摩耗痕中央部の摩耗深さを、表面粗さ計(東洋精密(株)製575A-30)にて測定した。
<摩耗痕評価>
デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-5000型)を用いて、倍率20倍で往復摺動試験後の摩耗痕外観を、図1に示す参考例を参照し、下記表に基づき、1~5段階評価で行った。
Figure 2022115097000001
<引張試験>
実施例及び比較例で得られた組成物を[成形方法]に示した条件で成形したA形試験片を用い、ISO 527に準拠し、試験速度50mm/minで引張試験を行い、引張強度を測定した。
また、試験前のチャック間距離に対する、破断時のチャック間距離の変位量の割合を引張伸度(%)とした。
引張伸度(%)=100×破断点変位量(mm)/初期チャック間距離(mm)
また、前記引張強度を前記引張伸度で除した値を引張弾性率とした。
引張弾性率=引張強度/引張伸度
<曲げ試験>
実施例及び比較例で得られた組成物を[成形方法]に示した条件で成形して得たA形試験片を80×10×4mmに加工し、ISO178に準拠し、試験速度2mm/minで曲げ強度を測定した。
次に、割線法に従い、規定ひずみ区間(0.05%~0.25%)の応力勾配より曲げ弾性率を算出した。
<シャルピー衝撃強度>
実施例及び比較例で得られた組成物を[成形方法]に示した条件で成形したA形試験片を80×10×4mmに加工し、ISO179に準拠して、ノッチ付シャルピー衝撃強度(kJ/m)を測定した。
<ペルフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩の濃度の測定法>
実施例及び比較例で調製した組成物中におけるペルフルオロオクタン酸とその塩の濃度を、CEN/TS 15968に準拠して測定した。
(実施例1)
(A)ポリアミド樹脂(98質量部)、グラフト共重合体(B)-1(5質量部)、前記製造例2で得たマスターバッチ((A)ポリアミド樹脂(2質量部)、(C)銅化合物(0.03質量部)及び(D)金属ハロゲン化物(0.26質量部))、ヒンダードフェノール系熱安定剤(0.03質量部)及び展着剤(0.02質量部)を混合し、スクリュー径26mmの二軸押出機(コペリオン株式会社製、商品名「ZSK26MC」)の最上流供給口から供給した。次いで、押出機のバレル温度を290℃に設定し、スクリュー回転数300rpmで溶融混練しながら押し出し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを用い、[成形方法]に記載の方法で試験片を作製し、[測定方法]に記載の方法で各々評価を実施した。
(実施例2)
(A)ポリアミド樹脂、(C)銅化合物及び(D)金属ハロゲン化物をマスターバッチ化せず、粉体添加とした以外は実施例1と同様の方法で下記表2に記載した配合量で各成分を含有するポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例3)
ヒンダードフェノール系熱安定剤を未配合とした以外は実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例4、5)
グラフト共重合体(B)-1の配合量を下記表2に記載の通りに増量した以外は実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例6)
グラフト共重合体(B)-1の代わりに、グラフト共重合体(B)-2を配合した以外は実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例7)
(A)ポリアミド樹脂、(C)銅化合物および(D)金属ハロゲン化物をマスターバッチ化せず、粉体添加とした以外は実施例6と同様の方法で下記表3に記載の配合量で各成分を含有するポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例8)
ヒンダードフェノール系熱安定剤を未配合とした以外は実施例6と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例9、10)
グラフト共重合体(B)-2の配合量を下記表3に記載の通りに増量した以外は実施例6と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例11)
(A)ポリアミド樹脂(98質量部)、グラフト共重合体(B)-1(5質量部)、前記製造例2で得たマスターバッチ((A)ポリアミド樹脂(2質量部)、(C)銅化合物(0.03質量部)、(D)金属ハロゲン化物(0.26質量部))、ヒンダードフェノール系熱安定剤(0.03質量部)および展着剤(0.02質量部)を混合した。得られた混合物を、二軸押出機(コペリオン社製「ZSK26」)の最上流供給口から供給した。押出機のバレル温度を290℃に設定し、スクリュー回転数300rpmで溶融混練しながら、最上流供給口の下流側に設けられた供給口から繊維状充填材として炭素繊維(10質量部)を供給した。次いで、複数設けられた3mmφの押出機吐出口金から混合物を排出し、水冷後、ペレタイズすることで、長さ約3mm、直径約3mmのポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。このときの押出機吐出口における温度は290℃とし、吐出量は25kg/hrとした。得られたペレットを80℃で12時間乾燥した後、前記[成形方法]に記載の方法で試験片を作製し、評価を実施した。
(実施例12)
グラフト共重合体(B)-1の代わりに、グラフト共重合体(B)-2を配合した以外は実施例11と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例13)
(A)ポリアミド樹脂、(C)銅化合物、及び(D)金属ハロゲン化物をマスターバッチ化せず粉体添加とした以外は実施例11と同様の方法で下記表4に記載の配合量で各成分を含有するポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例14)
ヒンダードフェノール系熱安定剤を未配合とした以外は実施例11と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例15)
繊維状充填材として供給している炭素繊維の配合量を下記表4に記載の通りに増量した以外は実施例14と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(実施例16)
下記に記載の製法で得たマスターバッチを使用した。
((C)銅化合物及び(D)金属ハロゲン化物を含むナイロン66マスターバッチ)
(製造例1)で得られた(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(C)銅化合物1.5質量部、(D)金属ハロゲン化物40質量%水溶液32.5質量部の割合で予備混合した後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)で、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で8時間真空乾燥し、マスターバッチペレットを作製した。
(A)ポリアミド樹脂(98質量部)、上述のマスターバッチ((A)ポリアミド樹脂(2質量部)、(C)銅化合物(0.03質量部)及び(D)金属ハロゲン化物(0.26質量部))、グラフト共重合体(B)-2(5質量部)、ヒンダードフェノール系熱安定剤(0.03質量部)及び展着剤(0.02質量部)を混合し、スクリュー径26mmの二軸押出機(コペリオン株式会社製、商品名「ZSK26MC」)の最上流供給口から供給した。次いで、押出機のバレル温度を290℃に設定し、スクリュー回転数300rpmで溶融混練しながら押し出し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを用い、[成形方法]に記載の方法で試験片を作製し、[測定方法]に記載の方法で各々評価を実施した。
(比較例1)
ヒンダードフェノール系熱安定剤、(C)銅化合物、および(D)金属ハロゲン化物を未配合とした以外は実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(比較例2)
ヒンダードフェノール系熱安定剤、(C)銅化合物、および(D)金属ハロゲン化物を未配合とした以外は実施例6と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(比較例3)
ヒンダードフェノール系熱安定剤、(C)銅化合物、および(D)金属ハロゲン化物を未配合とした以外は実施例11と同様の方法でポリアミド樹脂組成物のペレットを得て、評価を実施した。
(比較例4)
(製造例1)で得られた(A)ポリアミド樹脂を用い、[成形方法]に記載の方法で試験片を作製し、評価を実施した。
(比較例5)
スクリュー径26mmの二軸押出機(コペリオン株式会社製、商品名「ZSK26MC」)を用いて、表5に記載の配合組成に従い、(A)ポリアミド樹脂に(C)銅化合物と(D)金属ハロゲン化物を添着した混合物を最上流供給口から供給し、ポリテトラフルオロエチレン粉体を最上流供給口の下流側に設けられた側方供給口から供給した。押出条件は溶融ゾーンまでを280℃とし、溶融ゾーン以降を270℃、スクリュー回転数300rpmで溶融混錬を実施し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。その際、ポリテトラフルオロエチレン粉体を投入する側方供給口の位置は全12バレル中、上流から数えて7バレル目に設定した。
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを用い、[成形方法]に記載の方法で試験片を作製し、各々評価を実施した。
(比較例6)
下記に記載の製法で得たマスターバッチを使用した。
(C)銅化合物及び(D)金属ハロゲン化物を含むナイロン66マスターバッチ)
(製造例1)で得られた(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、(C)銅化合物1.5重量部、(D)金属ハロゲン化物40質量%水溶液32.5質量部の割合で予備混合した後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機(L/D:45.5)で、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数150rpmにて溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。その後、80℃で8時間真空乾燥し、マスターバッチペレットを作製した。
(A)ポリアミド樹脂(98質量部)、マスターバッチ((A)ポリアミド樹脂(2質量部)、(C)銅化合物(0.03質量部)及び(D)金属ハロゲン化物(0.26質量部))、及び展着剤(0.02質量部)を混合し、スクリュー径26mmの二軸押出機(コペリオン株式会社製、商品名「ZSK26MC」)の最上流供給口から供給した。次いで、押出機のバレル温度を290℃に設定し、スクリュー回転数300rpmで溶融混練しながら押し出し、ポリアミド樹脂組成物のペレットを得た。
得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを用い、[成形方法]に記載の方法で試験片を作製し、[測定方法]に記載の方法で各々評価を実施した。
Figure 2022115097000002
Figure 2022115097000003
Figure 2022115097000004
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Figure 2022115097000008
Figure 2022115097000009
表6~8の実施例の結果から明らかなように、本発明のポリアミド樹脂組成物は、摺動特性(摩擦係数、摩耗深さ、摩耗痕、摩擦係数と摩耗深さの標準偏差)と靱性及び耐衝撃性のバランスに優れていた。
一方、表9の比較例1~3の結果から明らかなように、本発明とは異なるポリアミド樹脂組成物は実施例と同様に比較例4と比較すると摺動性に優れているが、本発明と比較すると特に摺動性において劣る結果となった。
また、PTFEを用いた比較例5のみでPFOA及びその塩は10質量ppb以上であった。その他の実施例及び比較例はPFOA及びその塩は10質量ppb(検出限界)未満であった。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、摺動特性と機械的性質に優れることから、自動車分野、電気及び電子分野、機械及び工業分野、事務機器分野、航空及び宇宙分野等において、利用可能性がある。

Claims (6)

  1. (A)ポリアミド樹脂、
    (B)ポリエチレンを含む主鎖にポリスチレン或いはアクリロニトリルを含む側鎖がグラフトしたグラフト共重合体、
    (C)銅化合物、及び、
    (D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物を含有し、
    前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して、
    前記(B)グラフト共重合体の含有量が1~15質量部であり、
    前記(C)銅化合物の含有量が0.01~5質量部であり、
    前記(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物の含有量が0.05~5質量部である、ポリアミド樹脂組成物。
  2. さらに、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対してヒンダードフェノール系熱安定剤を0.01~5質量部含有する、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. さらに、前記(A)ポリアミド樹脂100質量部に対して繊維充填剤を1~30質量部を含有する、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. ペルフルオロオクタン酸とその塩を10質量ppb以上含有しない、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. (C)銅化合物及び(D)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物を含むマスターバッチを調製する工程、および、
    前記マスターバッチ、(A)ポリアミド樹脂および(B)グラフト共重合体を溶融混練する工程、
    を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
  6. 溶融混練温度が280℃以上である、請求項5に記載のポリアミド樹脂組成物の製造方法。
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