JP2022156218A - ポリアミド組成物及び成形体 - Google Patents

ポリアミド組成物及び成形体 Download PDF

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太智 大嶌
Taichi Oshima
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Abstract

【課題】限界PV値及び耐衝撃性が向上した成形体が得られるポリアミド組成物、並びに、前記ポリアミド組成物を用いた成形体及び摺動部材の限界PV値及び耐衝撃性を向上させる方法を提供する。【解決手段】ポリアミド組成物は、ポリアミドと、オレフィン系エラストマーと、エチレン-スチレングラフト共重合体と、を含む。成形体は、ポリアミド組成物を成形してなり、ISO 2039-2:1987に準拠して、Mスケールで測定されたロックウェル硬度が50超80未満である。摺動部材の限界PV値及び耐衝撃性を向上させる方法であって、ポリアミドと、オレフィン系エラストマーと、エチレン-スチレングラフト共重合体と、を含むポリアミド組成物を成形して、摺動部材を得ることを含み、ISO 2039-2に準拠して、Mスケールで測定された前記摺動部材のロックウェル硬度が50超80未満である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド組成物及び成形体に関する。
ポリアミド6(以下、「PA6」と略記する場合がある)及びポリアミド66(以下、「PA66」と略記する場合がある)等に代表されるポリアミドは、成形加工性、機械特性又は耐薬品性に優れていることから、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用等の各種部品材料として広く用いられている。
近年、自動車の燃費向上のため、自動車の軽量化が求められている。そのため、低比重且つ優れた強度、剛性の機械特性を有する材料が求められている。
一方で、ポリアミド樹脂の摺動特性をより向上させる手法として、フッ素系樹脂、黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を配合し、混練した組成物が一般的に知られている。近年、自動車分野、電気及び電子分野等で金属部材の樹脂化が加速してきており、特に最近は、自動車分野で燃費向上のための軽量化、コスト低減、組立工程合理化の観点から、より摺動特性に優れ、靱性及び耐衝撃性等の機械特性に優れる成形材料が要求されている。
特許文献1には、ポリアミド樹脂にシロキサン化合物及びフッ素系樹脂を配合し、溶融混練することで摺動特性を改良した組成物が提案されている。
特開2012-102189号公報
特許文献1等に記載の技術では、ポリアミド樹脂にシロキサン化合物やフッ素系樹脂を配合することで摺動性を向上させている。しかしながら、荷重圧力×速度で計算される、限界PV値の向上は実現できていない。また、自動車分野等で用いられる摺動部材では、摩耗や割れを低減する必要があることから、耐衝撃性の向上も課題である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、限界PV値及び耐衝撃性が向上した成形体が得られるポリアミド組成物、並びに、前記ポリアミド組成物を用いた成形体及び摺動部材の限界PV値及び耐衝撃性を向上させる方法を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) ポリアミドと、
オレフィン系エラストマーと、
エチレン-スチレングラフト共重合体と、
を含む、ポリアミド組成物。
(2) 前記ポリアミドがポリアミド46及びポリアミド66からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミドを含む、(1)に記載のポリアミド組成物。
(3) 前記ポリアミド組成物は、前記ポリアミド100.00質量部に対して、5.00質量部以上の前記オレフィン系エラストマーを含む、(1)又は(2)に記載のポリアミド組成物。
(4) 前記ポリアミド組成物は、前記ポリアミド100.00質量部に対して、5.00質量部以上の前記エチレン-スチレングラフト共重合体を含む、(1)~(3)のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
(5) (1)~(4)のいずれか一つに記載のポリアミド組成物を成形してなり、
ISO 2039-2:1987に準拠して、Mスケールで測定されたロックウェル硬度が50超80未満である、成形体。
(6) Owens and Wendtの理論式により求められる、表面自由エネルギーが40mJ/m以下である、(5)に記載の成形体。
(7) 摺動部材である、(5)又は(6)に記載の成形体。
(8) 摺動部材の限界PV値及び耐衝撃性を向上させる方法であって、
ポリアミドと、オレフィン系エラストマーと、エチレン-スチレングラフト共重合体と、を含むポリアミド組成物を成形して、摺動部材を得ることを含み、
ISO 2039-2に準拠して、Mスケールで測定された前記摺動部材のロックウェル硬度が50超80未満である、方法。
上記態様のポリアミド組成物によれば、限界PV値及び耐衝撃性が向上した成形体が得られるポリアミド組成物を提供することができる。上記態様の成形体は、前記ポリアミド組成物を成形してなり、限界PV値及び耐衝撃性が向上している。上記態様の方法によれば、摺動部材の限界PV値及び耐衝撃性を向上させることができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
なお、本明細書において、「ポリアミド」とは主鎖中にアミド(-NHCO-)結合を有する重合体を意味する。
≪ポリアミド組成物≫
本実施形態のポリアミド組成物は、(A)ポリアミドと、(B)オレフィン系エラストマーと、(C)エチレン-スチレングラフト共重合体と、を含む。以下、これら成分をそれぞれ、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)と略記する場合がある。
本実施形態のポリアミド組成物は、上記構成を有することで、従来のものよりも限界PV値及び耐衝撃性が向上した成形体が得られる。
なお、ここでいう「限界PV値」とは、荷重圧力×速度で算出される値であって、材料の摺動表面が摩擦発熱によって摩耗又は融解する限界値を表すものである。よって、成形体の限界PV値を向上させることで、高荷重又は高速の摺動に対しても、耐摩耗性及び耐摩擦性に優れる成形体が得られる。
また、耐衝撃性は、後述する実施例に示すように、シャルピー衝撃値で評価することができる。「シャルピー衝撃値」とは、シャルピー衝撃試験の結果、試験片の破壊に要した衝撃エネルギーを試験片断面積で除した値である。シャルピー衝撃値は、靭性を表すために用いられる。よって、成形体のシャルピー衝撃値を向上させることで、靭性(脆性破壊に対する抵抗)に優れる成形体、すなわち、破壊されにくい成形体が得られる。
次いで、本実施形態のポリアミド組成物を構成する各成分について、以下に詳細を説明する。
<構成成分>
[(A)ポリアミド]
(A)ポリアミドとしては、以下に制限されないが、例えば、(A-a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(A-b)ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(A-c)ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びに、これらの共重合物等が挙げられる。(A)ポリアミドとしては、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(A-a)ポリアミドの製造に用いられるラクタムとしては、以下に制限されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタム等が挙げられる。
(A-b)ポリアミドの製造に用いられるω-アミノカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω-アミノ脂肪酸等が挙げられる。
また、上記ラクタム又は上記ω-アミノカルボン酸としては、それぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
(A-c)ポリアミドの製造に用いられるジアミン(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、直鎖状の脂肪族ジアミン、分岐鎖状の脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
直鎖状の脂肪族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、2-メチルペンタンジアミン、2-エチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
脂環族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン、シクロオクタンジアミン等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン等が挙げられる。
(A-c)ポリアミドの製造に用いられるジカルボン酸(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、フタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
上記した単量体としてのジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ1種単独又は2種以上組み合わせて縮合させてもよい。
なお、(A)ポリアミドは、必要に応じて、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸に由来する単位をさらに含んでもよい。3価以上の多価カルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)ポリアミドとして具体的には、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及び、これらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
中でも、(A)ポリアミドとしては、ポリアミド46(PA46)、又は、ポリアミド66(PA66)が好ましい。PA66は、耐熱性、成形性及び靭性に優れていることから、自動車部品に好適な材料である。
(末端封止剤)
(A)ポリアミドの末端は、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよい。
このような末端封止剤は、上記ジカルボン酸と上記ジアミンと、必要に応じて、上記ラクタム及び上記アミノカルボン酸のうち少なくともいずれか一方とから、ポリアミドを製造する際に、分子量調節剤としても添加することができる。
末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等が挙げられる。酸無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水フタル酸等が挙げられる。これら末端封止剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、末端封止剤としては、モノカルボン酸又はモノアミンが好ましい。ポリアミドの末端が末端封止剤で封鎖されていることにより、熱安定性により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、ポリアミドの末端に存在し得るアミノ基との反応性を有するものであればよい。モノカルボン酸として具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等が挙げられる。
脂環族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等が挙げられる。
これらモノカルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、ポリアミドの末端に存在し得るカルボキシ基との反応性を有するものであればよい。モノアミンとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族モノアミン、脂環族モノアミン、芳香族モノアミン等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等が挙げられる。
脂環族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等が挙げられる。
これらモノアミンは、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤により末端封止されたポリアミドを含有するポリアミド組成物は、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び剛性により優れる傾向にある。
((A)ポリアミドの含有量)
ポリアミド組成物中の(A)ポリアミドの含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、例えば50.0質量%以上99.0質量%以下とすることができ、例えば60.0質量%以上95.0質量%以下とすることができ、例えば70.0質量%以上90.0質量%以下とすることができる。
((A)ポリアミドの製造方法)
(A)ポリアミドを製造する際に、ジカルボン酸の添加量とジアミンの添加量とは、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中のジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、ジカルボン酸全体のモル量1に対して、ジアミン全体のモル量は、0.9以上1.2以下が好ましく、0.95以上1.1以下が好ましく、0.98以上1.05以下がさらに好ましい。
ポリアミドの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸と、ジアミン単位を構成するジアミンと、必要に応じて、ラクタム単位を構成するラクタム及びアミノカルボン酸単位を構成するアミノカルボン酸のうち少なくともいずれかと、を重合して重合体を得る工程を含む。
また、ポリアミドの製造方法において、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。
また、必要に応じて、得られた重合体の末端を末端封止剤により封止する封止工程を含んでもよい。
ポリアミドの具体的な製造方法としては、例えば、以下の1)~4)に例示するように種々の方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸-ジアミン塩若しくはジカルボン酸とジアミンとの混合物の水溶液、又は、これらの水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と称する場合がある)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と称する場合がある)。
3)ジカルボン酸-ジアミン塩、又は、ジカルボン酸とジアミンとの混合物を固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と称する場合がある)。
4)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分及びジアミン成分を用いて重合させる方法(以下、「溶液法」と称する場合がある)。
中でも、ポリアミドの具体的な製造方法としては、熱溶融重合法を含む製造方法が好ましい。また、熱溶融重合法によりポリアミドを製造する際には、重合が終了するまで、溶融状態を保持することが好ましい。溶融状態を保持する方法としては、例えば、ポリアミドの組成に適した重合条件で製造する方法等が挙げられる。重合条件としては、例えば、以下に示す条件等が挙げられる。まず、熱溶融重合法における重合圧力を14kg/cm以上25kg/cm以下(ゲージ圧)に制御し、加熱を続ける。次いで、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm)になるまで30分以上かけながら降圧することで、所望の組成のポリアミドが得られる。
ポリアミドの製造方法において、重合形態としては、特に限定されず、バッチ式でも連続式でもよい。
ポリアミドの製造に用いる重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置を用いることができ、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等が挙げられる。
以下、ポリアミドの製造方法として、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造する方法を具体的に示すが、ポリアミドの製造方法は、これに限定されない。
まず、ポリアミドの原料成分(ジカルボン酸、ジアミン、並びに、必要に応じて、ラクタム及びアミノカルボン酸のうち少なくともいずれか)を、約40質量%以上60質量%以下含有する水溶液を、110℃以上180℃以下の温度、及び、約0.035MPa以上0.6MPa以下(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65質量%以上90質量%以下に濃縮して濃縮溶液を得る。
次いで、得られた濃縮溶液をオートクレーブに移し、当該オートクレーブにおける圧力が約1.2MPa以上2.2MPa以下(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。
その後、オートクレーブにおいて、水及びガス成分のうち少なくともいずれかを抜きながら圧力を約1.2MPa以上2.2MPa以下(ゲージ圧)に保ち、温度が約220℃以上260℃以下に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。
オートクレーブ内の圧力を大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。
その後、オートクレーブを窒素等の不活性ガスで加圧し、オートクレーブからポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。押し出されたストランドを、冷却、カッティングすることにより、ポリアミドのペレットを得る。
(ポリアミドのポリマー末端)
(A)ポリアミドのポリマー末端としては、特に限定されないが、以下のように分類され、定義することができる。
すなわち、1)アミノ末端、2)カルボキシ末端、3)封止剤による末端、4)その他の末端である。
1)アミノ末端は、アミノ基(-NH基)を有するポリマー末端であり、原料のジアミン単位に由来する。
2)カルボキシ末端は、カルボキシ基(-COOH基)を有するポリマー末端であり、原料のジカルボン酸に由来する。
3)封止剤による末端は、重合時に封止剤を添加した場合に形成される末端である。封止剤としては、上述した末端封止剤が挙げられる。
4)その他の末端は、上述した1)~3)に分類されないポリマー末端である。その他の末端として具体的には、例えば、アミノ末端が脱アンモニア反応して生成した末端、カルボキシ末端から脱炭酸反応して生成した末端等が挙げられる。
[(B)オレフィン系エラストマー]
ポリアミド組成物は、(B)オレフィン系エラストマーを含むことで、表面自由エネルギーを低減することができ、さらに、耐衝撃性を向上することができる。これにより、成形体の耐摩擦性、耐摩耗性、及び限界PV値が優れるものとなる。
(B)オレフィン系エラストマーとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-ブテンコポリマー、エチレン-ヘキセンコポリマー、エチレン-オクテンコポリマー等のエチレン-α-オレフィンコポリマーやエチレン-プロピレン-ジエンターポリマー等が挙げられる。また、これらオレフィン系エラストマーは、酸で変性されていてもよい、酸変性オレフィン系エラストマーとして具体的には、例えば、無水マレイン酸変性オレフィン系エラストマー、マレイン酸変性オレフィン系エラストマー、無水イタコン酸変性オレフィン系エラストマー、イタコン酸変性オレフィン系エラストマー、フマル酸変性オレフィン系エラストマー、メタクリル酸変性オレフィン系エラストマー、アクリル酸変性オレフィン系エラストマー等が挙げられる。これらオレフィン系エラストマーを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
((B)オレフィン系エラストマーの含有量)
ポリアミド組成物中の(B)オレフィン系エラストマーの含有量は、(A)ポリアミド100.00質量部に対して、4.00質量部以上とすることができ、5.00質量部以上であることが好ましく7.00質量部以上であることがより好ましく、9.00質量部以上であることがさらに好ましい。(B)オレフィン系エラストマーの含有量が上記下限値以上であることで、表面自由エネルギーをより低減することができ、さらに耐衝撃性をより向上することができる。これにより、成形体の耐摩擦性、耐摩耗性、及び限界PV値がより優れるものとなる。一方で、ポリアミド組成物中の(B)オレフィン系エラストマーの含有量は、(A)ポリアミド100.00質量部に対して、20.00質量部以下であることが好ましく、15.00質量部以下であることがより好ましい。(B)オレフィン系エラストマーの含有量が上記上限値以下であることで、成形体の機械特性がより優れたものとなる。
[(C)エチレン-スチレングラフト共重合体]
ポリアミド組成物は、(C)エチレン-スチレングラフト共重合体を含むことで、成形体の耐衝撃性(シャルピー衝撃値)を向上させることができ、また、成形体の耐摩耗性が優れるものになる。
(C)エチレン-スチレングラフト共重合体は、ポリエチレンを含む主鎖に、ポリスチレンを含む側鎖がグラフト化したグラフト共重合体であり、主鎖のポリエチレンを含むオレフィン系重合体(好ましくはポリエチレン)に、側鎖としてポリスチレン等のビニル系重合体をグラフト共重合させたグラフト共重合体であることが好ましい。
(C)エチレン-スチレングラフト共重合体の調製法は特に限定されるものではないが、公知のラジカル反応によって容易に調製できる。例えば、ポリエチレンを含むオレフィン系重合体成分を構成するモノマーと、ビニル系重合体を構成するモノマーにラジカル触媒を加えて混錬してグラフト化する方法、或いはオレフィン系重合体成分又はビニル系重合体成分のいずれかに過酸化物等のラジカル触媒を加えてフリーラジカルを生成させ、これを他方の成分のポリマーと溶融混錬してグラフト化する方法等によってグラフト共重合体が調製される。
(C)エチレン-スチレングラフト共重合体を構成する(c1)オレフィン系重合体と(c2)ビニル系重合体の割合は、c1:c2=90:10~10:90(質量比)が好ましく、c1:c2=80:20~20:80がより好ましい。
((C)エチレン-スチレングラフト共重合体の含有量)
ポリアミド組成物中の(C)エチレン-スチレングラフト共重合体の含有量は、(A)ポリアミド100.00質量部に対して、5.00質量部以上であることが好ましく、5.30質量部以上であることがより好ましく、5.50質量部以上であることがさらに好ましく、5.70質量部以上であることが特に好ましい。
ポリアミド組成物中の(C)エチレン-スチレングラフト共重合体の含有量が上記下限値以上であることで、成形体の摩擦係数をより低減させることができ、また、成形体の耐摩耗性がより優れたものになる。一方、ポリアミド組成物中の(C)エチレン-スチレングラフト共重合体の含有量は、15.00質量部以下であることが好ましく、12.00質量部以下であることがより好ましく、10.00質量部以下であることがさらに好ましい。(C)エチレン-スチレングラフト共重合体の含有量が上記上限値以下であることで、成形体の機械特性がより優れたものとなる。
[(D)銅化合物]
ポリアミド組成物は、上記成分(A)~上記成分(C)に加えて、(D)銅化合物を更に含むことができる。
(C)銅化合物としては、ハロゲン化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅、ステアリン酸銅等;エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤に配位した銅錯塩等が挙げられる。これら銅化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。この中でも、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅、又は酢酸銅が好ましく、ヨウ化銅がより好ましい。また、摺動特性の観点から、これらの銅化合物は、後述する(E)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物と、マスターバッチ化して用いることが好ましい。
ポリアミド組成物中の銅化合物の含有量は、(A)ポリアミド100.00質量部に対して、0.0001質量部以上1.00質量部以下が好ましく、0.005質量部以上0.20質量部以下がより好ましく、0.01質量部以上0.10質量部以下がさらに好ましい。
[(E)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物]
ポリアミド組成物は、上記成分(A)~上記成分(C)に加えて、(E)アルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属のハロゲン化物(以下、「金属ハロゲン化物」と略する場合がある)を更に含むことができる。
金属ハロゲン化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、ヨウ化カリウムが好ましい。これら金属ハロゲン化物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
ポリアミド組成物中の金属ハロゲン化物の含有量は、(A)ポリアミド100.00質量部に対して、0.0001質量部以上3.00質量部以下が好ましく、0.005質量部以上1.00質量部以下がより好ましく、0.02質量部以上0.50質量部以下がさらに好ましい。
[(F)着色剤]
ポリアミド組成物は、上記成分(A)~上記成分(C)に加えて、(F)着色剤を更に含むことができる。
着色剤としては、特に限定されないが、例えば、ニグロシン等の染料、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料;アルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、及びチタン等の金属粒子;マイカ製パール顔料、カラーグラファイト等のメタリック顔料等が挙げられる。これら着色剤は、単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
ポリアミド組成物中の着色剤の含有量は、(A)ポリアミド100.00質量部に対して、0.0001質量部以上1.00質量部以下が好ましく、0.001質量部以上0.50質量部以下がより好ましく、0.005質量部以上0.10質量部以下がさらに好ましい。
[(G)その他成分]
ポリアミド組成物は、上記成分(A)~上記成分(C)に加えて、必要に応じて、本実施形態のポリアミド組成物が奏する効果を損なわない範囲で、(G)その他成分を更に含むことができる。
(G)その他成分としては、(G1)潤滑剤、(G2)熱安定剤、(G3)充填材、(G4)その他の樹脂等が挙げられる。
((G1)潤滑剤)
(G1)潤滑剤としては、特に限定されないが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
高級脂肪酸としては、例えば、炭素数8以上40以下の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の分岐鎖状飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の直鎖状不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、オレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の分岐鎖状不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、イソオレイン酸等が挙げられる。
これら高級脂肪酸は、それぞれ1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
中でも、高級脂肪酸としては、ステアリン酸又はモンタン酸が好ましい。
高級脂肪酸金属塩とは、高級脂肪酸の金属塩である。
金属塩の金属元素としては、例えば、元素周期律表の第1族元素、第2族元素及び第3族元素、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。
元素周期律表の第1族元素としては、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
元素周期律表の第2族元素としては、例えば、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
元素周期律表の第3族元素としては、例えば、スカンジウム、イットリウム等が挙げられる。
中でも、金属元素としては、元素周期律表の第1及び2族元素、又は、アルミニウムが好ましく、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、又は、アルミニウムがより好ましい。
高級脂肪酸金属塩として具体的には、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。
これら高級脂肪酸金属塩は、それぞれ1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
中でも、高級脂肪酸金属塩としては、モンタン酸の金属塩又はステアリン酸の金属塩が好ましい。
高級脂肪酸エステルとは、高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素数8以上40以下の脂肪族カルボン酸と炭素数8以上40以下の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。
炭素数8以上40以下の脂肪族アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとして具体的には、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
これら高級脂肪酸エステルは、それぞれ1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
高級脂肪酸アミドとは、高級脂肪酸のアミド化合物である。
高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
これら高級脂肪酸アミドは、それぞれ1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
ポリアミド組成物中の潤滑剤の含有量は、ポリアミド組成物中の(A)ポリアミド100質量部に対して、0.001質量部以上1質量部以下が好ましく、0.03質量部以上0.5質量部以下がより好ましい。
潤滑剤の含有量が上記範囲内にあることにより、離型性及び可塑化時間安定性により優れ、また、靭性により優れるポリアミド組成物とすることができる。また、分子鎖が切断されることによるポリアミドの極端な分子量低下をより効果的に防止することができる。
((G2)熱安定剤)
(G2)熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤等が挙げられる。
フェノール系熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール化合物等が挙げられる。ヒンダードフェノール化合物は、ポリアミド等の樹脂や繊維に優れた耐熱性及び耐光性を付与する性質を有する。
ヒンダードフェノール化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N'-へキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピニロキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等が挙げられる。
これらヒンダードフェノール化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、耐熱エージング性向上の観点から、ヒンダードフェノール化合物としては、N,N'-へキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]が好ましい。
フェノール系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のフェノール系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
フェノール系熱安定剤の含有量が上記の範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させ、さらにガス発生量をより低減させることができる。
リン系熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4'-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル-テトラ-トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12~C15混合アルキル)-4,4'-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4'-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェニル)-ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1~C15混合アルキル)-4,4'-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェニル)-ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10-ジ-ヒドロ-9-オキサ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化-4,4'-イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)-ビス(4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル))-1,6-ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4'-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3-ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2-メチレンビス(3-メチル-4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスファイト等が挙げられる。
これらリン系熱安定剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、リン系熱安定剤としては、ポリアミド組成物の耐熱エージング性の一層の向上及びガス発生量の低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-フェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-メチル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-2-エチルヘキシル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-イソデシル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-ラウリル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-イソトリデシル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル・シクロヘキシル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-ベンジル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル・エチルセロソルブ-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-ブチルカルビトール-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-オクチルフェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-2,6-ジ-tert-ブチルフェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-2,4-ジ-tert-オクチルフェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-2-シクロヘキシルフェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェニル-フェニル・ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-オクチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
これらペンタエリスリトール型ホスファイト化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、ポリアミド組成物のガス発生量を低減させる観点から、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及び、ビス(2、6-ジ-tert-オクチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
リン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のリン系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
リン系熱安定剤の含有量が上記の範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させ、さらにガス発生量をより低減させることができる。
アミン系熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルアセトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(エチルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-カーボネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-オキサレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-マロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-アジペート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-テレフタレート、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-エタン、α,α'-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-p-キシレン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルトリレン-2,4-ジカルバメート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレン-1,6-ジカルバメート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,4-トリカルボキシレート、1-[2-{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]-4-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β',β'-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。
これらアミン系熱安定剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のアミン系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
アミン系熱安定剤の含有量が上記の範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させることができ、さらにガス発生量をより低減させることができる。
((G3)充填材)
ポリアミド組成物は、(G3)充填材を含まなくとも、優れた摺動性に加えて、シャルピー衝撃値及び限界PV値が向上した摺動部材とすることができるが、(G3)充填材を更に含んでいてもよい。
(G3)充填材としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ワラストナイト、カーボンナノチューブ等が挙げられる。これらの中でも、炭素繊維又はガラス繊維が好ましく、ポリアミド組成物の強度を増大させる観点からは、ガラス繊維が好ましく、摺動性向上の観点からは、炭素繊維が好ましいい。
炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維のいずれも用いることができる。機械物性の観点から、PAN系炭素繊維を用いることが好ましい。
上述した充填材は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリアミド組成物中の充填材の含有量は、摺動特性向上の観点から、(A)ポリアミド100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下が好ましく、3質量部以上20質量部以下がより好ましく、5質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
炭素繊維は、生産性の観点から、3mmから10mm程度の短繊維の形の炭素繊維を押出機で溶融混練により加えることが好ましい。その際、炭素繊維の折れを防ぐ観点から、サイドフィーダーから炭素繊維を添加することが好ましい。
炭素繊維は、ポリアミド樹脂との親和性の観点から、ウレタン系収束剤、無水マレイン酸系収束剤、アクリル系収束剤、ポリアミド系収束剤を塗布されているものが好ましい。
炭素繊維は、物性と摺動性の観点から、直径が5μm以上10μm以下であることが好ましい。
((G4)その他の樹脂)
(G4)その他の樹脂としては、特に限定されるものではないが、後述する熱可塑性樹脂やゴム成分等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、AS(アクリロニトリル-スチレン)樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲンビニル化合物系樹脂等が挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンランダム共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-(1-ブテン)共重合体、エチレン-(1-ヘキセン)共重合体、エチレン-(1-オクテン)共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)や、ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン-コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-スチレン-コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート-ブタジエン-アクリロニトリル-スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプ等が挙げられる。
これらのゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
<ポリアミド組成物の製造方法>
ポリアミド組成物の製造方法としては、上記成分(A)~上記成分(C)を含む原料成分を溶融混練する工程を含む製造方法であれば、特に限定されるものではない。
溶融混錬工程において、例えば、上記原料成分を押出機で溶融混練する場合には、押出機の設定温度を、上記(A)ポリアミドの融点(Tm2)+30℃以下とすることが好ましい。
(A)ポリアミドを含む原料成分を溶融混練する方法としては、例えば、以下の(1)又は(2)の方法等が挙げられる。
(1)(A)ポリアミドとその他の原料とをタンブラー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、溶融混練機に供給し混練する方法。
(2)単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミドに、サイドフィーダーからその他の原料を配合する方法。
ポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよく、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250℃以上350℃以下程度であることが好ましい。
溶融混練時間は、0.25分間以上5分間以下程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロール等の溶融混練機を用いることができる。
ポリアミド組成物を製造する際の各成分の配合量は、上述したポリアミド組成物における各成分の含有量と同様である。
≪成形体≫
本実施形態の成形体は、上述したポリアミド組成物を成形してなる。
本実施形態の成形体は、上記構成を有することで、従来のものよりも限界PV値及び耐衝撃性が向上したものである。そのため、本実施形態の成形体は、摺動部材として好ましく用いられる。すなわち、一実施形態において、本発明は、摺動部材の限界PV値及び耐衝撃性を向上させる方法を提供する。
本実施形態の成形体において、Mスケールで測定されたロックウェル硬度が50超80未満であり、51以上79以下であることが好ましく、55以上78以下であることがより好ましく、60以上77以下であることがさらに好ましい。
成形体のロックウェル硬度が上記数値範囲内であることで、摩擦係数を低減することができ、耐摩耗性及び耐摩擦性に優れ、限界PV値がより向上した成形体が得られる。
成形体のロックウェル硬度は、例えば、硬度計((株)明石製作所製、Akashi ATK-F3000)を用いて、ISO 2039-2:1987に準拠して、Mスケールで測定することができる。
本実施形態の成形体の表面自由エネルギーは、40mJ/m以下であることが好ましい。なお、ここでいう「表面自由エネルギー(Surface Free Energy;SFE)」とは、固体において分子間力によってその表面に働く表面張力のことを意味する。表面自由エネルギーの単位は、mN/m又はmJ/mで表され、固体の表面自由エネルギーの値が小さいほど、当該固体は、別の固体又は液体に濡れにくく、一方で、固体の表面自由エネルギーの値が大きいほど、当該固体は、別の固体又は液体に濡れやすい。よって、本実施形態の成形体の表面自由エネルギーが上記上限値以下であることで、別の部材との相互作用がより少なくなり、耐摩耗性及び耐摩擦性により優れるものとなる。
一方、成形体の表面自由エネルギーの下限値は特に限定されないが、例えば、35mJ/mとすることができる。
成形体の表面自由エネルギーは、例えば、接触角計(型式:B100W、株式会社あすみ技研製)を用いて、純水及びジヨードメタンと成形体との接触角を測定し、得られた接触角を用いてOwens and Wendtの理論式により求めることができる。具体的には、以下の式を用いて算出される。
Figure 2022156218000001
上記式Aにおいて、γSVは、成形体の表面自由エネルギーであり、成形体の表面自由エネルギーの成分を分散成分(γSV)と、水素結合と双極子・双極子相互作用に基づく成分(γSV)に分けて表現している。
成形体の表面自由エネルギー(γSV)における未知の2成分(γSV及びγSV)を求めるために、表面自由エネルギーが既知である2種類の液体(純水及びジヨードメタン)を用いて、上述のとおり、接触角計を用いて、純水及びジヨードメタンと成形体との接触角を測定する。得られた純水の接触角θ及びジヨードメタンの接触角θ、既知の純水の分散成分(γLV1)及び水素結合と双極子・双極子相互作用に基づく成分(γLV1)、並びに、既知のジヨードメタンの分散成分(γLV2)及び水素結合と双極子・双極子相互作用に基づく成分(γLV2)を、それぞれ上記式B及び上記式Cに代入して、成形体の表面自由エネルギー(γSV)における未知の2成分(γSV及びγSV)による2元1次方程式を導き、これを解いて、表面自由エネルギー(γSV)を求める。
次いで、本実施形態の成形体の原料であるポリアミド組成物について以下に説明する。
<成形体の製造方法>
成形体の製造方法としては、例えば、上記ポリアミド組成物のペレットを溶融して、流動ゲートを1か所以上有する金型を用いて成形する工程を含む製造方法等が挙げられる。
本実施形態の成形体を製造する際の各成分の配合量は、上述したポリアミド組成物における各成分の含有量と同様である。
また、本実施形態の成形体は、上記ポリアミド組成物を公知の射出成形方法を用いて、成形することにより得られる。
公知の成形方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、射出成形、ガスアシスト射出成形等、一般に知られているプラスチックの射出成形方法が挙げられる。
本実施形態の成形体を成形する際の成形機の設定温度は、使用するポリアミドの融点より5℃高い温度から310℃までの範囲で設定することが好ましく、使用するポリアミドの融点より10℃高い温度から300℃までの範囲がより好ましく、使用するポリアミドの融点より15℃高い温度から295℃までの範囲であることがさらに好ましい。成形機の設定温度を上記上限値以下とすることにより、ポリアミド組成物の溶融時及び射出時における上記成分(B)及び上記成分(C)の溶融、凝集を抑制することができ、成形品中の上記成分(B)及び上記成分(C)の分散を充分なものとすることができる。
<用途>
本実施形態の成形体は、摺動特性に優れ、且つ耐衝撃性及び限界PV値が向上している。そのため、本実施形態の成形体は、電気及び電子機器、事務機器、自動車、産業機器等、広範な分野で高性能を要求される摺動部材として好適に用いることができる。これら分野で用いられる摺動部材として具体的には、例えば、軸受け、歯車、カム、ローラー、アクセルペダルローター、滑り板、プーリー、レバー、チェーンガイド、シュー等が挙げられる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例において、1kg/cmは、0.098MPaを意味する。
<原料>
以下、ポリアミド組成物に含まれる各原料について説明する。
[(A)ポリアミド]
A-1:ポリアミド66(PA66)(旭化成株式会社製、商品名「レオナ1300 301」)
[(B)オレフィン系エラストマー]
B-1:エチレン-オクタン共重合体(Dupont社製、商品名「Fusabond MN495D」)
B-2:エチレン-オクタン(EO)系ポリオレフィンエラストマー(POE)(ダウケミカル社製、商品名「Engage 8180」)
[(C)エチレン-スチレングラフト共重合体]
C-1:低密度ポリエチレン-ポリスチレングラフト共重合体(日油社製、商品名「モディパーA1100」)
[(D)銅化合物]
D-1:ヨウ化銅(CuI)(商品名「ヨウ化銅(I)」、和光純薬工業社製)
[(E)金属ハロゲン化物
E-1:ヨウ化カリウム(KI)(商品名「ヨウ化カリウム」、和光純薬工業社製)
[(F)着色剤]
F-1:カーボンブラック(CB)
[(H)摺動性向上剤]
H-1:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(三井・デュポンフロロケミカル社製、商品名「TLP10F-1」、数平均1次粒子径0.2μm、融点329℃、数平均分子量300000(低分子量PTFE))
H-2:ジメチルシリコーン(ダウケミカル社製、商品名「SH200」)
<成形体の物性の測定方法>
[成形体の製造]
射出成形機(ファナック社製)を用いて、冷却時間15秒、スクリュー回転数100rpm、金型温度80℃、シリンダー温度270℃以上280℃以下に設定し、各ポリアミド組成物のペレットから成形体1(縦180mm、幅20mm、厚さ2mm又は4mm)、及び、成形体2(JIS K 7218 A形)を製造した。
[物性1]
(ロックウェル硬度)
各成形体1について、硬度計((株)明石製作所製、Akashi ATK-F3000)を用いて、ISO 2039-2:1987に準拠して、Mスケールで、ロックウェル硬度を測定した。
[物性2]
(表面自由エネルギー)
各成形体1について、接触角計(型式:B100W、株式会社あすみ技研製)を用いて、純水及びジヨードメタンと成形体との接触角を測定し、得られた接触角を用いてOwens and Wendtの理論式により求めた。具体的には、以下の式を用いて算出された。
Figure 2022156218000002
上記式Aにおいて、γSVは、成形体の表面自由エネルギーであり、成形体の表面自由エネルギーの成分を分散成分(γSV)と、水素結合と双極子・双極子相互作用に基づく成分(γSV)に分けて表現している。
成形体の表面自由エネルギー(γSV)における未知の2成分(γSV及びγSV)を求めるために、表面自由エネルギーが既知である2種類の液体(純水及びジヨードメタン)を用いて、上述のとおり、接触角計(型式:B100W、株式会社あすみ技研製)を用いて、純水及びジヨードメタンと成形体との接触角を測定した。得られた純水の接触角θ及びジヨードメタンの接触角θ、既知の純水の分散成分(γLV1)及び水素結合と双極子・双極子相互作用に基づく成分(γLV1)、並びに、既知のジヨードメタンの分散成分(γLV2)及び水素結合と双極子・双極子相互作用に基づく成分(γLV2)を、それぞれ上記式B及び上記式Cに代入して、成形体の表面自由エネルギー(γSV)における未知の2成分(γSV及びγSV)による2元1次方程式を導き、これを解いて、表面自由エネルギー(γSV)を求めた。
<評価方法>
[評価1]
(シャルピー衝撃値)
各成形体1について、80×10×4mmに加工し、ISO179に準拠して、ノッチ付シャルピー衝撃値(kJ/m)を測定した。
[評価2]
(限界PV値)
各成形体2についてJIS K 7218 A法b形に加工し、JIS K 7218 A法に準拠して測定した。
また、得られた限界PV値を以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
○:限界PV値が800以上
×:限界PV値が800未満
<成形体の製造方法>
[実施例1~実施例2及び比較例1~比較例5]
(ポリアミド組成物PA-a1及びPA-b1~PA-b5の製造)
下記表1に記載の組成となるように、各原料成分用いて、各ポリアミド組成物を以下の方法で製造した。
なお、ポリアミドA-1は窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%に調整してから、ポリアミド組成物の原料として用いた。
ポリアミド組成物の製造装置としては、二軸押出機(ZSK-26MC:コペリオン社製(ドイツ))を用いた。
二軸押出機は、押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口を有し、9番目のバレルに下流側第2供給口を有していた。また、二軸押出機において、押出機長さ(lx)/スクリュー径(dx)は48であり、バレル数は12であった。
二軸押出機において、上流側供給口からダイまでの温度を295℃に設定し、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hに設定した。
上記製造装置を用いた具体的な製造方法としては、(A)ポリアミドを二軸押出機の上流側供給口より供給し、二軸押出機の下流側第1供給口より、その他原料成分を供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして各ポリアミド組成物のペレットを得た。得られたポリアミド組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、ポリアミド組成物中の水分量を500ppm以下にした。
実施例及び比較例で得られたポリアミド組成物を用いた各成形体の物性値及び評価結果を以下の表1に示す。なお、表1において、「-」はシャルピー衝撃試験において成形体が破壊しなかったことを意味する。
Figure 2022156218000003
表1から、ポリアミドと、オレフィン系エラストマーと、エチレン-スチレングラフト共重合体と、を含むポリアミド組成物PA-a1及びPA-a2(実施例1~2)を成形してなり、且つ、ロックウェル硬度が75である成形体では、シャルピー衝撃値が8以上であり、従来の摺動性向上剤を用いた成形体C-b4(比較例4)及びC-b5(比較例5)よりも高い値となっていた。また、限界PV値も800以上であり、限界PV値が800未満である従来の摺動性向上剤を用いた成形体C-b4(比較例4)及びC-b5(比較例5)よりも向上していた。
一方で、ポリアミドと、オレフィン系エラストマーとを含むポリアミド組成物PA-b1~PA-b2を成形してなり、且つ、ロックウェル硬度が50以下又は80以上である成形体C-b1~C-b2(比較例1~2)では、シャルピー衝撃値は向上していたが、限界PV値が800未満であり、劣っていた。
また、ポリアミドと、エチレン-スチレングラフト共重合体と、を含むポリアミド組成物PA-b3を成形してなり、且つ、ロックウェル硬度が80以上である成形体C-b3(比較例3)では、シャルピー衝撃値及び限界PV値のいずれも劣っていた。
また、ポリアミドと、従来の摺動性向上剤と、を含むポリアミド組成物PA-b4~PA-b5を成形してなり、且つ、ロックウェル硬度が80以上である成形体C-b4~C-b5(比較例4~5)では、シャルピー衝撃値及び限界PV値のいずれも劣っていた。
本実施形態のポリアミド組成物によれば、限界PV値及び耐衝撃性が向上した成形体が得られるポリアミド組成物を提供することができる。本実施形態の成形体は、前記ポリアミド組成物を成形してなり、限界PV値及び耐衝撃性が向上している。本実施形態の方法によれば、摺動部材の限界PV値及び耐衝撃性を向上させることができる。

Claims (8)

  1. ポリアミドと、
    オレフィン系エラストマーと、
    エチレン-スチレングラフト共重合体と、
    を含む、ポリアミド組成物。
  2. 前記ポリアミドがポリアミド46及びポリアミド66からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリアミドを含む、請求項1に記載のポリアミド組成物。
  3. 前記ポリアミド組成物は、前記ポリアミド100.00質量部に対して、5.00質量部以上の前記オレフィン系エラストマーを含む、請求項1又は2に記載のポリアミド組成物。
  4. 前記ポリアミド組成物は、前記ポリアミド100.00質量部に対して、5.00質量部以上の前記エチレン-スチレングラフト共重合体を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアミド組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド組成物を成形してなり、
    ISO 2039-2:1987に準拠して、Mスケールで測定されたロックウェル硬度が50超80未満である、成形体。
  6. Owens and Wendtの理論式により求められる、表面自由エネルギーが40mJ/m以下である、請求項5に記載の成形体。
  7. 摺動部材である、請求項5又は6に記載の成形体。
  8. 摺動部材の限界PV値及び耐衝撃性を向上させる方法であって、
    ポリアミドと、オレフィン系エラストマーと、エチレン-スチレングラフト共重合体と、を含むポリアミド組成物を成形して、摺動部材を得ることを含み、
    ISO 2039-2に準拠して、Mスケールで測定された前記摺動部材のロックウェル硬度が50超80未満である、方法。
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