JP2023081802A - ポリアミド組成物の製造方法 - Google Patents

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太智 大嶌
Taichi Oshima
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Yoshikimi Kondo
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Hideto Itatsu
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Abstract

【課題】炭素繊維とポリアミドとの界面接着性が向上され、さらに炭素繊維のポリアミドへの分散性が高められ、リサイクル炭素繊維を含む場合であっても、新品の炭素繊維を含む場合と同等程度の機械物性を付与できるポリアミド組成物の製造方法を提供する。【解決手段】(A)ポリアミドと、(B)炭素繊維と、(C)相溶化剤と、を含有するポリアミド組成物の製造方法は、前記(A)ポリアミド及び前記(C)相溶化剤と、前記(B)炭素繊維が集束された炭素繊維束と、を別に添加して、溶融混練する溶融混練工程を含み、ベーム法によって測定された前記炭素繊維束中の前記(B)炭素繊維表面の全酸性官能基量が0.3mmol/g以下であり、且つ、ベーム法によって測定された前記炭素繊維束中の前記(B)炭素繊維表面のカルボキシ基量が0.02mmol/g以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド組成物の製造方法に関する。
ポリアミド6(以下、「PA6」と略記する場合がある)及びポリアミド66(以下、「PA66」と略記する場合がある)等に代表されるポリアミドは、成形加工性、機械物性又は耐薬品性に優れていることから、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用等の各種部品材料として広く用いられている。近年、自動車の燃費向上のため、自動車の軽量化が求められていることから、低比重且つ優れた強度、剛性の機械特性を有する材料が求められている。
このような要求に応えるため、炭素繊維強化ポリアミド組成物は工業的に重要な材料として注目され、種々の炭素繊維強化ポリアミド組成物が開示されている(例えば、特許文献1~5参照)。ただし、金属材料やガラス繊維強化樹脂組成物の代替品として十分に普及するまでには至っていない。その原因としては、ポリアミドと炭素繊維との界面接着性が悪く、炭素繊維が十分な補強効果を発揮できないこと、又は、炭素繊維そのものが製造時に多量のエネルギーを必要とし、複雑な製造工程を経て製造されるため、未だ高価であることが挙げられる。
炭素繊維強化ポリアミド組成物の物性を向上させるため、例えば炭素繊維表面に特定の化合物をサイジング剤として塗布してポリアミドと炭素繊維との界面接着性を上げる検討がなされている(例えば、特許文献6参照)。また、炭素繊維強化ポリアミド組成物に第三成分を添加し、金属密着性のような物性を向上させる検討もなされている(例えば、特許文献7参照)。これらの検討により物性の向上はなされつつあるものの、炭素繊維そのものが製造時に多量のエネルギーを必要とし、複雑な製造工程を経て製造されるため、未だ高価であるという課題の解決には至っていない。
上記炭素繊維そのものが製造時に多量のエネルギーを必要とし、複雑な製造工程を経て製造されるという課題に対し、「リサイクル炭素繊維」を用いることが提案されている(例えば、特許文献8~10参照)。特許文献8では補強効果に優れ、マトリックス樹脂への分散性にも優れたリサイクル炭素繊維が開示されている。また、特許文献9、10では、樹脂とリサイクル炭素繊維とにさらに第三成分を添加したリサイクル炭素繊維樹脂組成物が開示されている。
特開2014-145036号公報 特開2015-129271号公報 特開2015-199959号公報 国際公開第2013/080820号 国際公開第2013/077238号 特開2013-231178号公報 特開2015-129271号公報 特開2017-002125号公報 特表2016-540067号公報 国際公開第2007/058298号
しかし、リサイクル炭素繊維は新品の炭素繊維と比べても、ポリアミドとの界面接着性、また、ポリアミドへの分散性が十分ではない。このため、特許文献8~10に開示されたような従来技術、すなわち、リサイクル炭素繊維を用いた場合には、新品の炭素繊維を用いた場合と比較して、機械物性に劣る。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、炭素繊維とポリアミドとの界面接着性が向上され、さらに炭素繊維のポリアミドへの分散性が高められ、リサイクル炭素繊維を含む場合であっても、新品の炭素繊維を含む場合と同等程度の機械物性を付与できるポリアミド組成物の製造方法を提供する。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) (A)ポリアミドと、(B)炭素繊維と、(C)相溶化剤と、を含有するポリアミド組成物の製造方法であって、
前記(A)ポリアミド及び前記(C)相溶化剤と、前記(B)炭素繊維が集束された炭素繊維束と、を別に添加して、溶融混練する溶融混練工程を含み、
ベーム法によって測定された前記炭素繊維束中の前記(B)炭素繊維表面の全酸性官能基量が0.3mmol/g以下であり、且つ、ベーム法によって測定された前記炭素繊維束中の前記(B)炭素繊維表面のカルボキシ基量が0.02mmol/g以下である、ポリアミド組成物の製造方法。
(2) 前記炭素繊維束がリサイクル炭素繊維である、(1)に記載のポリアミド組成物の製造方法。
(3) 前記リサイクル炭素繊維の樹脂炭化物質量が、該リサイクル炭素繊維の総質量に対して、0.5質量%以上15質量%以下である、(2)に記載のポリアミド組成物の製造方法。
(4) 前記炭素繊維束のアスペクト比が1以上10以下であり、且つ、前記炭素繊維束の重量平均繊維長が1mm以上10mm以下である、(1)~(3)のいずれか一つに記載のポリアミド組成物の製造方法。
(5) 前記炭素繊維束のかさ密度が0.05g/cm以上0.34g/cm以下である、(1)~(4)のいずれか一つに記載のポリアミド組成物の製造方法。
(6) 前記炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量が5質量%以上20質量%以下であり、且つ、前記炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量が70質量%以上である、(1)~(5)のいずれか一つに記載のポリアミド組成物の製造方法。
(7) 前記ポリアミド組成物の総質量に対する前記(C)相溶化剤の含有量が、0.1質量%以上1.5質量%以下である、(1)~(6)のいずれか一つに記載のポリアミド組成物の製造方法。
(8) 前記(C)相溶化剤が無水マレイン酸共重合体である、(1)~(7)のいずれか一つに記載のポリアミド組成物の製造方法。
(9) 前記(C)相溶化剤の重量平均分子量が50,000以上300,000以下である、(1)~(8)のいずれか一つに記載のポリアミド組成物の製造方法。
上記態様のポリアミド組成物の製造方法によれば、炭素繊維とポリアミドとの界面接着性が向上され、さらに炭素繊維のポリアミドへの分散性が高められ、リサイクル炭素繊維を含む場合であっても、新品の炭素繊維を含む場合と同等程度の機械物性を付与できるポリアミド組成物の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施することができる。
なお、本明細書において、「ポリアミド」とは主鎖中にアミド(-NHCO-)結合を有する重合体を意味する。
≪ポリアミド組成物の製造方法≫
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法は、(A)ポリアミドと、(B)炭素繊維と、(C)相溶化剤と、を含有するポリアミド組成物の製造方法である。
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法は、溶融混練工程を含む方法である。溶融混錬工程では、上記(A)ポリアミド及び上記(C)相溶化剤と、上記(B)炭素繊維が集束された炭素繊維束と、を別に添加して、溶融混練する。
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法に用いられる(B)炭素繊維において、ベーム法によって測定された前記炭素繊維束中の前記(B)炭素繊維表面の全酸性官能基量が0.3mmol/g以下であり、且つ、ベーム法によって測定された前記炭素繊維束中の前記(B)炭素繊維表面のカルボキシ基量が0.02mmol/g以下である。
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法は、上記構成を有することで、炭素繊維とポリアミドとの界面接着性が向上され、さらに炭素繊維のポリアミドへの分散性が高められ、リサイクル炭素繊維を含む場合であっても、新品の炭素繊維を含む場合と同等程度の機械物性を付与できるポリアミド組成物が得られる。
まず、本実施形態のポリアミド組成物の製造方法の工程について、以下に詳細を説明する。
<工程>
[溶融混錬工程]
溶融混錬工程では、上記(A)ポリアミド及び上記(C)相溶化剤と、上記炭素繊維束と、を別に添加して、溶融混練する。
溶融混錬工程において、例えば、上記原料成分を押出機で溶融混練する場合には、押出機の設定温度を、上記(A)ポリアミドの融点(Tm2)+30℃以下とすることが好ましい。
(A)ポリアミドを含む原料成分を溶融混練する方法としては、例えば、以下の(1)又は(2)の方法等が挙げられる。
(1)(A)ポリアミドとその他の原料とをタンブラー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、溶融混練機に供給し混練する方法。
(2)単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミドに、サイドフィーダーからその他の原料を配合する方法。
ポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよく、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。中でも、(B)炭素繊維の折れを抑え、且つ、得られるポリアミド組成物の機械物性を向上させることから、(A)ポリアミドと(C)相溶化剤とを押出機のトップより供給し、炭素繊維束をサイドから供給する方法が、好ましい。
また、(A)ポリアミドを押出機のトップより供給し、炭素繊維束をサイドから供給し、炭素繊維束の供給口より上流側又は下流側のサイド供給口より(C)相溶化剤を添加する製造方法を用いることもできる。(B)炭素繊維の折れを抑え、且つ、得られるポリアミド組成物の機械物性を向上させる観点から、(A)ポリアミドは押出機のトップから供給することが好ましく、炭素繊維束はサイドから供給することが好ましい。また、溶融混錬工程において、(C)相溶化剤は押出機の任意の供給口から供給することができる。(C)相溶化剤を十分に混練して(A)ポリアミド中での分散性を高め、(B)炭素繊維に不均一に付着することを抑制する観点から、上記(A)ポリアミド及び上記(C)相溶化剤と、上記炭素繊維束と、を別に添加することが好ましい。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250℃以上350℃以下程度であることが好ましい。
溶融混練時間は、0.25分間以上5分間以下程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロール等の溶融混練機を用いることができる。
[その他の工程]
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法は、上記溶融混錬工程の他に、その他の工程を含んでもよい。
その他の工程として具体的には、上記溶融混錬工程の前に、例えば、(A)ポリアミドを製造する工程、炭素繊維束として用いる、リサイクル炭素繊維を炭素繊維強化プラスチックから回収する工程等を含んでもよい。
次いで、本実施形態のポリアミド組成物の製造方法に用いられる各種原料成分について、以下に詳細を説明する。
<原料成分>
[(A)ポリアミド]
(A)ポリアミドとしては、以下に制限されないが、例えば、(A-a)ラクタムの開環重合で得られるポリアミド、(A-b)ω-アミノカルボン酸の自己縮合で得られるポリアミド、(A-c)ジアミン及びジカルボン酸を縮合することで得られるポリアミド、並びに、これらの共重合物等が挙げられる。(A)ポリアミドとしては、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
(A-a)ポリアミドの製造に用いられるラクタムとしては、以下に制限されないが、例えば、ピロリドン、カプロラクタム、ウンデカラクタム、ドデカラクタム等が挙げられる。
(A-b)ポリアミドの製造に用いられるω-アミノカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、上記ラクタムの水による開環化合物であるω-アミノ脂肪酸等が挙げられる。
また、上記ラクタム又は上記ω-アミノカルボン酸としては、それぞれ2種以上の単量体を併用して縮合させてもよい。
(A-c)ポリアミドの製造に用いられるジアミン(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、直鎖状の脂肪族ジアミン、分岐鎖状の脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、芳香族ジアミン等が挙げられる。
直鎖状の脂肪族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、2-メチルペンタンジアミン、2-エチルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
脂環族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、シクロヘキサンジアミン、シクロペンタンジアミン、シクロオクタンジアミン等が挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、以下に制限されないが、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン等が挙げられる。
(A-c)ポリアミドの製造に用いられるジカルボン酸(単量体)としては、以下に制限されないが、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、セバシン酸等が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、以下に制限されないが、例えば、フタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
上記した単量体としてのジアミン及びジカルボン酸は、それぞれ単独又は2種以上組み合わせて縮合させてもよい。
なお、(A)ポリアミドは、必要に応じて、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸に由来する単位をさらに含んでもよい。3価以上の多価カルボン酸は、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のポリアミド組成物に含まれる(A)ポリアミドとして具体的には、例えば、ポリアミド4(ポリα-ピロリドン)、ポリアミド6(ポリカプロアミド)、ポリアミド11(ポリウンデカンアミド)、ポリアミド12(ポリドデカンアミド)、ポリアミド46(ポリテトラメチレンアジパミド)、ポリアミド56(ポリペンタメチレンアジパミド)、ポリアミド66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ポリアミド610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ポリアミド612(ポリヘキサメチレンドデカミド)、ポリアミド6T(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド9T(ポリノナンメチレンテレフタルアミド)、及び、これらを構成成分として含む共重合ポリアミド等が挙げられる。
中でも、(A)ポリアミドとしては、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド46(PA46)、又は、ポリアミド610(PA610)が好ましい。PA66は、耐熱性、成形性及び靭性に優れていることから、自動車部品に好適な材料である。また、PA610等の長鎖脂肪族ポリアミドは、耐薬品性に優れ、好ましい。
(末端封止剤)
本実施形態のポリアミド組成物に含まれる(A)ポリアミドの末端は、公知の末端封止剤により末端封止されていてもよい。
このような末端封止剤は、上記ジカルボン酸と上記ジアミンと、必要に応じて、上記ラクタム及び上記アミノカルボン酸のうち少なくともいずれか一方とから、ポリアミドを製造する際に、分子量調節剤としても添加することができる。
末端封止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類等が挙げられる。酸無水物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水フタル酸等が挙げられる。これら末端封止剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、末端封止剤としては、モノカルボン酸又はモノアミンが好ましい。ポリアミドの末端が末端封止剤で封鎖されていることにより、熱安定性により優れるポリアミド組成物となる傾向にある。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、ポリアミドの末端に存在し得るアミノ基との反応性を有するものであればよい。モノカルボン酸として具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソブチル酸等が挙げられる。
脂環族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキサンカルボン酸等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸としては、以下に限定されるものではないが、例えば、安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等が挙げられる。
これらモノカルボン酸は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、ポリアミドの末端に存在し得るカルボキシ基との反応性を有するものであればよい。モノアミンとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族モノアミン、脂環族モノアミン、芳香族モノアミン等が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等が挙げられる。
脂環族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等が挙げられる。
これらモノアミンは、1種のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤により末端封止されたポリアミドを含有するポリアミド組成物は、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び剛性により優れる傾向にある。
((A)ポリアミドの含有量)
ポリアミド組成物中の(A)ポリアミドの含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、例えば50質量%以上99質量%以下とすることができ、例えば60質量%以上95質量%以下とすることができ、例えば70質量%以上85質量%以下とすることができる。
((A)ポリアミドの製造方法)
(A)ポリアミドを製造する際に、ジカルボン酸の添加量とジアミンの添加量とは、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中のジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、ジカルボン酸全体のモル量1に対して、ジアミン全体のモル量は、0.9以上1.2以下が好ましく、0.95以上1.1以下が好ましく、0.98以上1.05以下がさらに好ましい。
ポリアミドの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸と、ジアミン単位を構成するジアミンと、必要に応じて、ラクタム単位を構成するラクタム及びアミノカルボン酸単位を構成するアミノカルボン酸のうち少なくともいずれかと、を重合して重合体を得る工程を含む。
また、ポリアミドの製造方法において、ポリアミドの重合度を上昇させる工程を、さらに含むことが好ましい。
また、必要に応じて、得られた重合体の末端を末端封止剤により封止する封止工程を含んでもよい。
ポリアミドの具体的な製造方法としては、例えば、以下の1)~4)に例示するように種々の方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸-ジアミン塩若しくはジカルボン酸とジアミンとの混合物の水溶液、又は、これらの水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と称する場合がある)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と称する場合がある)。
3)ジカルボン酸-ジアミン塩、又は、ジカルボン酸とジアミンとの混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と称する場合がある)。
4)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分及びジアミン成分を用いて重合させる方法(以下、「溶液法」と称する場合がある)。
中でも、ポリアミドの具体的な製造方法としては、熱溶融重合法を含む製造方法が好ましい。また、熱溶融重合法によりポリアミドを製造する際には、重合が終了するまで、溶融状態を保持することが好ましい。溶融状態を保持する方法としては、例えば、ポリアミドの組成に適した重合条件で製造する方法等が挙げられる。重合条件としては、例えば、以下に示す条件等が挙げられる。まず、熱溶融重合法における重合圧力を14kg/cm以上25kg/cm以下(ゲージ圧)に制御し、加熱を続ける。次いで、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm)になるまで30分以上かけながら降圧することで、所望の組成のポリアミドが得られる。
ポリアミドの製造方法において、重合形態としては、特に限定されず、バッチ式でも連続式でもよい。
ポリアミドの製造に用いる重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置を用いることができ、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等が挙げられる。
以下、ポリアミドの製造方法として、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造する方法を具体的に示すが、ポリアミドの製造方法は、これに限定されない。
まず、ポリアミドの原料成分(ジカルボン酸、ジアミン、並びに、必要に応じて、ラクタム及びアミノカルボン酸のうち少なくともいずれか)を、約40質量%以上60質量%以下含有する水溶液を、110℃以上180℃以下の温度、及び、約0.035MPa以上0.6MPa以下(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65質量%以上90質量%以下に濃縮して濃縮溶液を得る。
次いで、得られた濃縮溶液をオートクレーブに移し、当該オートクレーブにおける圧力が約1.2MPa以上2.2MPa以下(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。
その後、オートクレーブにおいて、水及びガス成分のうち少なくともいずれかを抜きながら圧力を約1.2MPa以上2.2MPa以下(ゲージ圧)に保ち、温度が約220℃以上260℃以下に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。
オートクレーブ内の圧力を大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。
その後、オートクレーブを窒素等の不活性ガスで加圧し、オートクレーブからポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。押し出されたストランドを、冷却、カッティングすることにより、ポリアミドのペレットを得る。
[ポリアミドのポリマー末端]
本実施形態のポリアミド組成物に含まれる(A)ポリアミドのポリマー末端としては、特に限定されないが、以下のように分類され、定義することができる。
すなわち、1)アミノ末端、2)カルボキシ末端、3)封止剤による末端、4)その他の末端である。
1)アミノ末端は、アミノ基(-NH基)を有するポリマー末端であり、原料のジアミン単位に由来する。
2)カルボキシ末端は、カルボキシ基(-COOH基)を有するポリマー末端であり、原料のジカルボン酸に由来する。
3)封止剤による末端は、重合時に封止剤を添加した場合に形成される末端である。封止剤としては、上述した末端封止剤が挙げられる。
4)その他の末端は、上述した1)~3)に分類されないポリマー末端である。その他の末端として具体的には、例えば、アミノ末端が脱アンモニア反応して生成した末端、カルボキシ末端から脱炭酸反応して生成した末端等が挙げられる。
((A)ポリアミドの特性)
(A)ポリアミドの分子量は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。また、融点Tm2、結晶化エンタルピーΔH、tanδピーク温度は下記に示す方法により測定することができる。
(1)(A)ポリアミドの分子量
(A)ポリアミドの分子量の指標としては、重量平均分子量Mwを利用できる。ポリアミドの重量平均分子量Mwは10000以上50000以下が好ましく、15000以上45000以下がより好ましく、20000以上40000以下がさらに好ましく、20000以上35000以下が特に好ましい。
重量平均分子量Mwが上記範囲であることにより、機械的性質、特に吸水剛性、熱時剛性、流動性等により優れるポリアミド組成物が得られる。また、無機充填材に代表される成分を含有させたポリアミド組成物は、表面外観により優れたものとなる。
なお、重量平均分子量Mwの測定は、下記実施例に記載するように、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
(2)(A)ポリアミドの分子量分布
(A)ポリアミドの分子量分布は、重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnを指標とする。
(A)ポリアミドのMw/Mnは1.0以上であり、1.8以上2.2以下が好ましく、1.9以上2.1以下がより好ましい。
Mw/Mnが上記範囲であることにより、流動性等により優れるポリアミド組成物が得られる。また、無機充填材に代表される成分を含有させたポリアミド組成物は、表面外観により優れたものとなる。
(A)ポリアミドのMw/Mnを上記範囲内に制御する方法としては、例えば、ポリアミドの熱溶融重合時の添加物としてリン酸や次亜リン酸ナトリウムのような公知の重縮合触媒を加える方法、及び、加熱条件や減圧条件のような重合条件を制御する方法等が挙げられる。
(A)ポリアミドのMw/Mnは、下記実施例に記載するように、GPCを用いて得られた重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを使用して計算することができる。
(3)(A)ポリアミドの融点
(A)ポリアミドの融点Tm2の下限値は、220℃が好ましく、230℃がより好ましく、240℃がさらに好ましい。
一方、(A)ポリアミドの融点Tm2の上限値は、300℃が好ましく、290℃がより好ましく、280℃がさらに好ましく、270℃が特に好ましい。
すなわち、(A)ポリアミドの融点Tm2は、220℃以上300℃以下が好ましく、230℃以上290℃以下がより好ましく、240℃以上280℃以下がさらに好ましく、240℃以上270℃以下が特に好ましい。
(A)ポリアミドの融点Tm2が上記下限値以上であることにより、ポリアミド組成物から得られる成形品の熱時剛性等がより優れる傾向にある。
また、(A)ポリアミドの融点Tm2が上記上限値以下であることにより、押出、成形等の溶融加工におけるポリアミド組成物の熱分解等をより抑制することができる傾向にある。
(4)(A)ポリアミドの結晶化エンタルピーΔH
(A)ポリアミドの結晶化エンタルピーΔHの下限値は、機械的性質、特に吸水剛性、熱時剛性の観点から、4J/gであり、20J/gが好ましく、30J/gがより好ましく、40J/gがさらに好ましく、50J/gが特に好ましく、60J/gが最も好ましい。一方、(A)ポリアミドの結晶化エンタルピーΔHの上限値は、特に限定されず、高いほど好ましい。
(A)ポリアミドの融点Tm2及び結晶化エンタルピーΔHの測定装置としては、例えば、PERKIN-ELMER社製Diamond-DSC等が挙げられる。
(5)(A)ポリアミドのtanδピーク温度
(A)ポリアミドのtanδピーク温度は、40℃以上が好ましく、50℃以上110℃以下がより好ましく、60℃以上100℃以下がさらに好ましく、70℃以上95℃以下が特に好ましく、80℃以上90℃以下が最も好ましい。
A)ポリアミドのtanδピーク温度が上記下限値以上であることにより、吸水剛性、熱時剛性により優れるポリアミド組成物を得ることができる傾向にある。
(A)ポリアミドのtanδピーク温度は、例えば、粘弾性測定解析装置(レオロジ製:DVE-V4)等を用いて測定することができる。
[(B)炭素繊維]
(B)炭素繊維は、添加時の取り扱いを容易とする観点から、(B)炭素繊維が集束された炭素繊維束の形態で添加される。(B)炭素繊維を集束する方法については特に限定されず、例えば、集束剤を用いる方法、リサイクル炭素繊維に含まれる熱硬化性樹脂炭化物(以下、単に「樹脂炭化物」という)を集束に用いる方法等、公知の集束方法を用いることができる。集束剤としては、例えば、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリカルボジイミド化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他の共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第一級、第二級及び第三級アミンとの塩等、炭素繊維の集束に用いられる公知の集束剤が挙げられる。これらの集束剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素繊維束は、新品の炭素繊維を含んでもよいが、経済面から、リサイクル炭素繊維を含むことが好ましく、炭素繊維束の総質量に対して、リサイクル炭素繊維を50質量%以上含むことがより好ましく、70質量%以上含むことがさらに好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましく、100質量%含むことが最も好ましい。ここでいう、「リサイクル炭素繊維」とは、主に、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber Reinforced Plastics;CFRP)から回収された炭素繊維を意味する。
また、一般に、「炭素繊維強化プラスチック(CFRP)」とは、炭素繊維と樹脂とを混ぜ合わせた複合材料を意味し、航空機や自動車の素材として、鉄よりも軽量且つ高強度の複合材料として用いられている。
(全酸性官能基量及びカルボキシ基量)
(B)炭素繊維は、ベーム法によって測定された炭素繊維束中の(B)炭素繊維表面の全酸性官能基量が0.3mmol/g以下であり、且つ、ベーム法によって測定された炭素繊維束中の(B)炭素繊維表面のカルボキシ基量が0.02mmol/g以下である炭素繊維である。また、ベーム法によって測定された炭素繊維束中の(B)炭素繊維表面の全酸性官能基量が0.1mmol/g以下であり、且つ、ベーム法によって測定された炭素繊維束中の(B)炭素繊維表面のカルボキシ基量が0.01mmol/g以下であることが好ましい。一方、上記全酸性官能基量及び上記カルボキシ基量の下限値は少なければ少ないほど好ましく、具体的にはそれぞれ0.0mmol/g以上及び0.00mmol/g以上とすることができる。
上記数値範囲とするためには、例えば、国際公開第2013/032027号(参考文献1)、国際公開第2013/168302号(参考文献2)、国際公開第2014/154656号(参考文献3)等に開示されているように、樹脂を熱分解することによってCFRPからリサイクル炭素繊維を取り出す方法が挙げられる。
ベーム法による全酸性官能基量及びカルボキシ基量の測定原理としては、以下のとおりである。
強塩基性溶液である水酸化ナトリウム(NaOH)は全ての酸性官能基と中和反応を起こす。(B)炭素繊維との接触前後では、塩基性溶液間で濃度変化差が生じる。よって、中和滴定によりNaOHと(B)炭素繊維との接触前後の濃度変化を算出し、全酸性官能基量を定量することができる。
具体的な測定方法としては、後述の実施例に示すとおり、例えば、サンプル(炭素繊維束の状態の(B)炭素繊維)に水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムを個々に加え、「電位差自動滴定装置」により、不活性雰囲気下で塩酸溶液を用いた逆滴定を行い、以下の(1)及び(2)を測定する方法が挙げられる。
(1)全酸性官能基量(全酸量):水酸化ナトリウム添加した条件下での塩酸溶液消費量
(2)強酸性官能基量(カルボキシ基量):炭酸水素ナトリウム添加条件下での塩酸溶液消費量
(樹脂炭化物質量)
炭素繊維束としてリサイクル炭素繊維を用いる場合、樹脂炭化物質量の下限値は、炭素繊維束の総質量に対して、0.01質量%とすることができ、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。一方、樹脂炭化物質量の上限値は、炭素繊維束の総質量に対して、20質量%とすることができ、15質量%が好ましく、13質量%がより好ましく、11質量%がさらに好ましい。
すなわち、樹脂炭化物質量は、炭素繊維束の総質量に対して、0.01質量%以上20質量%以下とすることができ、0.5質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上13質量%以下がより好ましく、5質量%以上11質量%以下がさらに好ましい。
樹脂炭化物質量が上記数値範囲であることで、溶融混練する際の押出機へのフィードの安定性がより向上し、一方で、過剰な樹脂炭化物による(B)炭素繊維の開繊阻害や樹脂炭化物に由来する溶融混練中の粉塵の発生をより低減できる。
また、樹脂炭化物質量は、CFRPからリサイクル炭素繊維を取り出す過程において、樹脂の熱分解温度、時間を変化させることで調整できる。
樹脂炭化物質量は、以下の方法を用いて、算出できる。
るつぼに3mg程度のリサイクル炭素繊維を入れ、450℃で2時間、大気雰囲気下で電気炉を用いて熱処理を行い、以下に示す式を用いることで、「加熱処理前のリサイクル炭素繊維質量に対する樹脂炭化物質量」、すなわち、「リサイクル炭素繊維に対する樹脂炭化物質量」を算出することができる。
「樹脂炭化物質量(質量%)」
=(熱処理前のリサイクル炭素繊維質量-熱処理後のリサイクル炭素繊維質量)/熱処理前のリサイクル炭素繊維質量×100
(かさ密度)
炭素繊維束のかさ密度は、0.01g/cm以上0.40g/cm以下とすることができ、0.05g/cm以上0.34g/cm以下が好ましく、0.08g/cm以上0.32g/cm以下がより好ましく、0.10g/cm以上0.30g/cm以下がさらに好ましい。
かさ密度が上記数値範囲内であることにより、(B)炭素繊維の開繊性がより良好となる。さらに、(B)炭素繊維中のCFRP由来の樹脂炭化物の含有量が低減されているため、ポリアミド組成物へ混入される樹脂炭化物が異物となり、得られる成形品の強度低下をより低減することができる。
炭素繊維束のかさ密度を上記数値範囲とするためには、例えば、CFRPを加熱して樹脂分を燃焼させ、リサイクル炭素繊維を取り出すという方法を用いることができる。具体的には、CFRPの燃焼を適当な条件で実施することによって、CFRPの熱硬化性樹脂を十分に燃焼し分解することができる。これにより、炭素繊維束のかさ密度を上記範囲まで低下させることができる。さらに、CFRPの熱硬化性樹脂を十分に燃焼してリサイクル炭素繊維を取り出すことで、取り出した炭素繊維の開繊性が良好となり、また樹脂炭化物がポリアミド組成物中で異物となり強度が低下する現象を低減することができる。
また、炭素繊維束のかさ密度を上記範囲とするために、例えばCFRPの熱硬化性樹脂の燃焼を複数回に分けて実施する方法を用いることができる。CFRPの熱硬化性樹脂の燃焼を複数回に分けて実施することで、炭素繊維束のかさ密度が上記範囲になるまで、CFRPの熱硬化性樹脂の燃焼をすることができる。
また、炭素繊維束のかさ密度は、容器に100cmになるよう炭素繊維束を入れ、その質量を測定し、それを5回繰り返した平均値を用いて算出することができる。
(炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量及びクロロホルム不溶分)
また、炭素繊維束は、大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量が5質量%以上20質量%以下であり、且つ、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量が70質量%以上であることが好ましい。
炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量は5質量%以上20質量%以下が好ましく、7質量%以上17質量%以下がより好ましく、10質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。
炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量が上記数値範囲であることで、溶融混練する際の押出機へのフィードの安定性がより向上し、一方で、過剰な樹脂炭化物による(B)炭素繊維の開繊阻害や樹脂炭化物に由来する溶融混練中の粉塵の発生をより低減できる。
また、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量は、CFRPからリサイクル炭素繊維を取り出す過程において、樹脂の熱分解温度、時間を変化させることで調整できる。
また、ポリアミドとの界面形成による物性向上の観点から、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量が上記下限値以上であることにより、適度な量の樹脂炭化物が(B)炭素繊維の表面に付着しているため、ポリアミドとの界面接着性がより向上する。これにより、得られる成形品の機械特性がより向上する。一方、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量の上限値は特に限定されないが、例えば、100質量%以下とすることができ、99質量%以下とすることができる。
ここでいう、「大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量」とは、大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量を意味し、加熱前の質量(W1)に対する大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)の割合(W3/W1×100)(質量%)で表することができる。なお、大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)は、加熱前の質量(W1)から、大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際の質量(W2)を減ずることで算出できる。
また、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量は、下記実施例に記載するように、例えば、TG-DTA(理学電気(株)製:TG8120)等を用いて測定することができる。
また、ここでいう、「クロロホルム不溶分」とは、炭素繊維束を十分な量のクロロホルムに浸漬し、室温で3時間浸透し、ろ過した後、ろ過されず残った固形分についてクロロホルムを蒸発させて、得られる固形分を意味する。また、「クロロホルム溶解分」とは、炭素繊維を十分な量のクロロホルムに浸漬し、室温で3時間浸透し、ろ過した後、ろ液についてクロロホルムを蒸発させて、得られる固形分を意味する。
また、「クロロホルム不溶分の含有量(質量%)」は、以下の測定方法により算出できる。
まず、上記方法を用いて、炭素繊維束(加熱前の質量(W1))を用いて、大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)を算出する。次いで、上記加熱前の質量(W1)と同量の炭素繊維束を十分な量のクロロホルムに浸漬し、室温で3時間浸透し、ろ過した後、ろ液についてクロロホルムを蒸発させて、固形分(クロロホルム溶解分)を得る。次いで、得られた固形分(クロロホルム溶解分)の質量(W4)を測定する。次いで、得られた大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)及びクロロホルム溶解分の質量(W4)を用いて、以下に示す式により、大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量を算出することができる。
「大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量(質量%)」
={(大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)-クロロホルム溶解分(W4))/大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)}×100
炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量及び大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量を上記数値範囲とするためには、例えば、CFRPを加熱して樹脂分を燃焼させ、リサイクル炭素繊維を取り出す方法を用いることができる。CFRPの燃焼を適当な条件で実施することによって、CFRPの熱硬化性樹脂を焼き残すことができる。それによって、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量を変化させることができる。
大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量を上記数値範囲とするために、例えば、CFRPの熱硬化性樹脂の燃焼を複数回に分けて実施する手法を用いることができる。CFRPの熱硬化性樹脂の燃焼を複数回に分けて実施することで、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量が上記数値範囲になるまでCFRPの熱硬化性樹脂の燃焼をすることができる。
また、CFRPを加熱して樹脂分を燃焼させ、リサイクル炭素繊維を取り出す方法では、炭素繊維の表面には樹脂炭化物が付着する。樹脂炭化物はクロロホルムに不溶であるため、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分が上記数値範囲である炭素繊維束を得ることができる。
或いは、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分を上記数値範囲とするために、例えば、CFRPの熱硬化性樹脂の燃焼時の焼成条件を調整する方法を用いることができる。CFRPの熱硬化性樹脂の燃焼時の焼成条件を調整することで、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分が上記数値範囲になるように、CFRPの熱硬化性樹脂を燃焼させることができる。
このようにCFRPを燃焼させて得た炭素繊維は、樹脂炭化物が表面に付着しているためにポリアミドとの界面形成によって、得られる成形品の機械特性がより向上する。
(形状)
炭素繊維束は、その断面が真円状でも扁平状でもよい。かかる扁平状の断面としては、以下に制限されないが、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、長手方向の中央部がくびれた繭型等が挙げられる。ここで、本明細書における「扁平率」は、当該繊維束断面の長径をd2及び該繊維断束面の短径をd1とするとき、d2/d1で表される値をいう。例えば、真円状は、扁平率が約1となる。
また、炭素繊維束は、数平均繊維径(d)に対する重量平均繊維長(l)の比、すなわちアスペクト比(l/d)が1以上10以下であり、且つ、重量平均繊維長が1mm以上10mm以下であることが好ましい。
アスペクト比(l/d)は、1以上20以下とすることができ、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
重量平均繊維長は、1mm以上10mm以下であることが好ましく、1mm以上5mm以下であることがより好ましい。
炭素繊維束のアスペクト比及び重量平均繊維長が上記数値範囲であることにより、溶融混練する際の押出機へのフィードの安定性がより向上する。
なお、ここでいう「数平均繊維径(d)」は、炭素繊維束断面の長径(上記d2)の平均値であり、後述する算出方法を用いて求められる。
また、(B)炭素繊維の数平均繊維径は、靭性及び成形品の表面外観を向上させる観点から、3μm以上30μm以下が好ましく、3μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上12μm以下がさらに好ましく、3μm以上9μm以下が特に好ましく、4μm以上6μm以下が最も好ましい。
(B)炭素繊維の数平均繊維径を上記上限値以下とすることにより、靭性及び成形品の表面外観により優れたポリアミド組成物とすることができる。一方、(B)炭素繊維の数平均繊維径を上記下限値以上とすることにより、コスト面及び粉体のハンドリング面と物性(流動性等)とのバランスにより優れたポリアミド組成物が得られる。
さらに、(B)炭素繊維の数平均繊維径を3μm以上9μm以下とすることにより、振動疲労特性及び摺動性により優れたポリアミド組成物とすることができる。
また、本明細書における(B)炭素繊維の数平均繊維径は、以下の方法により求められることができる。まず、ポリアミド組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理する。当該処理後の残渣分から、100本以上の炭素繊維を任意に選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらの炭素繊維の繊維径(長径)を測定し、測定した繊維径(直径)の合計値を、測定した炭素繊維の数で割って平均値を算出することにより、数平均繊維径を求めることができる。
また、本明細書における(B)炭素繊維の重量平均繊維径は、以下の方法により求められることができる。まず、ポリアミド組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理する。当該処理後の残渣分から、100本以上の炭素繊維を任意に選択し、炭素繊維を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡等で観察し、測定した各繊維長の二乗の合計を、測定した各繊維長の合計で割ることで算出される。
((B)炭素繊維の含有量)
ポリアミド組成物中の(B)炭素繊維の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、例えば5質量%以上50質量%以下とすることができ、例えば10質量%以上40質量%以下とすることができ、例えば15質量%以上35質量%以下とすることができる。
[(C)相溶化剤]
本実施形態における「相溶化剤」の定義を以下に示す。一般的に、「相溶化剤」は、樹脂及び樹脂のアロイにおいて、樹脂同士の界面の相溶性を向上させ、界面強度の向上や海島構造の樹脂アロイにおける島部分の樹脂の分散性の向上に寄与する物質である(例えば、国際公開第2009/110480号(参考文献4)等参照)。本実施形態のポリアミド組成物の製造方法では、その概念を応用し、樹脂及び炭素繊維の複合材料において、樹脂と炭素繊維との界面の相溶性を向上させ、界面強度の向上や樹脂中での炭素繊維の分散性の向上に寄与する物質を、(A)ポリアミド及び(B)炭素繊維の相溶化剤と定義する。
相溶化剤としては、(A)ポリアミド及び(B)炭素繊維のそれぞれに親和性を有する部位を持つ物質がその機能を発揮する。具体的には、(A)ポリアミドと共有結合及び水素結合のうちいずれか一つ又は両方を含む結合を形成しうる物質であり、且つ、(B)炭素繊維と疎水性相互作用及びπ-π相互作用のうちいずれか一つ又は両方を含む相互作用を形成しうる物質である。
(A)ポリアミドと共有結合及び水素結合のうちいずれか一つ又は両方を含む結合を形成しうる物質としては、例えば、無水マレイン酸、アクリル酸、カルボン酸、エポキシ、アミン、イミン、ウレタン及びこれらの重合体等が挙げられる。中でも、(A)ポリアミドとの結合形成の観点から、無水マレイン酸又はその重合体が好ましい。
(B)炭素繊維と疎水性相互作用及びπ-π相互作用のうちいずれか一つ又は両方を含む相互作用を形成しうる物質としては、例えば、芳香環含有化合物、オレフィン、二重結合を含む化合物等が挙げられる。中でも、(B)炭素繊維との相互作用形成の観点から、芳香環含有化合物が好ましい。
中でも、(C)相溶化剤としては、無水マレイン酸変性樹脂が好ましい。
なお、本明細書において、「無水マレイン酸変性樹脂」とは、主鎖中又はグラフト物として無水マレイン酸を有する重合体を意味する。
無水マレイン酸変性樹脂は芳香環を有することが好ましい。芳香環を有することにより、炭素繊維との親和性がより向上し、ポリアミドとの界面形成及び得られる成形品の機械特性の向上に寄与する。芳香環はベンゼン環であることが好ましく、スチレンモノマーに由来するベンゼン環であることがより好ましい。
また、無水マレイン酸変性樹脂は主鎖中に無水マレイン酸を共重合物として含有することが好ましい。すなわち、無水マレイン酸変性樹脂は、無水マレイン酸共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体、ランダム共重合体及び交互共重合体のいずれの形式でも構わない。
中でも、無水マレイン酸変性樹脂としては、スチレン-無水マレイン酸共重合体であることが好ましい。
(重量平均分子量(Mw))
(C)相溶化剤の重量平均分子量(Mw)は、50,000以上300,000以下であることが好ましく、60,000以上250,000以下であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が上記数値範囲であることで、(C)相溶化剤の耐熱性及び分散性により優れ、且つ、ポリアミド組成物の粘度が過度に上昇することをより効果的に抑制し、加工性を保持することができる。
((C)相溶化剤の含有量)
ポリアミド組成物中の(C)相溶化剤の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、0.1質量%以上1.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以上1.2質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上0.8質量%以下がさらに好ましい。
[(D)炭素繊維以外の無機充填剤]
原料成分は、上記(A)~(C)の各成分に加えて、(D)炭素繊維以外の無機充填材をさらに含有してもよい。(D)炭素繊維以外の無機充填材を含有することにより、強度、剛性や表面外観により優れる成形品が得られるポリアミド組成物とすることができる。
炭素繊維以外の無機充填材としては、成形品の強度、剛性や表面外観を向上させる観点から、以下に限定されるものではないが、例えば、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、クレー等が挙げられる。中でも、炭素繊維以外の無機充填材としては、ウォラストナイト、カオリン、マイカ、タルク、炭酸カルシウム又はクレーが好ましく、ウォラストナイト、カオリン、マイカ又はタルクがより好ましく、ウォラストナイト又はマイカが特に好ましく、ウォラストナイトが最も好ましい。これらの炭素繊維以外の無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素繊維以外の無機充填材の平均粒径は、靭性、及び、成形品の表面外観を向上させる観点から、0.01μm以上38μm以下が好ましく、0.03μm以上30μm以下がより好ましく、0.05μm以上25μm以下がさらに好ましく、0.10μm以上20μm以下が特に好ましく、0.15μm以上15μm以下が最も好ましい。
炭素繊維以外の無機充填材の平均粒径を上記上限値以下とすることにより、靭性、及び、成形品の表面外観により優れたポリアミド組成物とすることができる。一方、炭素繊維以外の無機充填材の平均粒径を上記下限値以上とすることにより、コスト面及び粉体のハンドリング面と物性(流動性等)とのバランスにより優れたポリアミド組成物が得られる。
ここで、無機充填材の中でも、ウォラストナイトのような針状の形状を持つものに関しては、数平均繊維径(以下、単に「平均繊維径」と称する場合がある)を平均粒径とすることができる。また、断面が円でない場合はその長さの最大値を(数平均)繊維径とすることができる。
針状の形状を持つ無機充填材の重量平均繊維長(l)と数平均繊維径(d)とのアスペクト比(l/d)に関しては、成形品の表面外観を向上させ、且つ、射出成形機等の金属性パーツの磨耗を防止する観点から、1.5以上10以下が好ましく、2.0以上5以下がより好ましく、2.5以上4以下がさらに好ましい。
上記針状の形状を持つ無機充填材の重量平均繊維長(以下、単に「平均繊維長」と称する場合がある)については、上記数平均繊維径の好ましい範囲、及び、上記重量平均繊維長(l)と数平均繊維径(d)とのアスペクト比(l/d)の好ましい範囲であるものが好ましい。
また、炭素繊維以外の無機充填材は、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤等を用いて表面処理を施してもよい。
シランカップリング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アミノシラン類、メルカプトシラン類、エポキシシラン類、ビニルシラン類等が挙げられる。
アミノシラン類としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
メルカプトシラン類としては、例えば、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらシランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、シランカップリング剤としては、アミノシラン類が好ましい。
このような表面処理剤は、予め無機充填材の表面に処理してもよく、ポリアミドと無機充填材とを混合する際に添加してもよい。また、表面処理剤の添加量は、無機充填材100質量%に対して、0.05質量%以上1.5質量%以下が好ましい。
炭素繊維以外の無機充填材の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、5質量部以上250質量部以下が好ましく、30質量部以上250質量部以下がより好ましく、50質量部以上240質量部以下がさらに好ましく、50質量部以上200質量部以下が特に好ましく、50質量部以上150質量部以下が最も好ましい。
炭素繊維以外の無機充填材の含有量を、(A)ポリアミド100質量部に対して、上記下限値以上とすることにより、得られるポリアミド組成物の強度及び剛性をより向上させる効果が発現される。一方、炭素繊維以外の無機充填材の含有量を、上記上限値以下とすることにより、押出性及び成形性により優れたポリアミド組成物を得ることができる。
[(E)造核剤]
原料成分は、上記(A)~(C)の各成分に加えて、(E)造核剤をさらに含有してもよい。
造核剤とは、添加により以下の(1)~(3)のうち少なくともいずれか1つの効果が得られる物質のことを意味する。
(1)ポリアミド組成物の結晶化ピーク温度を上昇させる効果。
(2)結晶化ピークの補外開始温度と補外終了温度との差を小さくする効果。
(3)得られる成形品の球晶を微細化又はサイズの均一化させる効果。
造核剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、窒化珪素、カーボンブラック、チタン酸カリウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。造核剤は、1種類のみを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、造核剤としては、造核剤効果の観点で、タルク又は窒化ホウ素が好ましい。
また、造核剤の効果が高いため、造核剤の数平均粒径は0.01μm以上10μm以下が好ましい。
造核剤の数平均粒径は、以下の方法を用いて測定することができる。まず、成形品をギ酸等のポリアミドが可溶な溶媒で溶解する。次いで、得られた不溶成分の中から、例えば、100個以上の造核剤を任意に選択する。次いで、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡等で観察して、粒径を測定することにより求めることができる。
本実施形態のポリアミド組成物中の造核剤の含有量は、ポリアミド組成物中の(A)ポリアミド100質量部に対して、0.001質量部以上1重量部以下が好ましく、0.001質量部以上0.5質量部以下がより好ましく、0.001質量部以上0.09質量部以下がさらに好ましい。
造核剤の含有量を、ポリアミド100質量部に対して、上記下限値以上とすることにより、ポリアミド組成物の耐熱性がより向上する傾向にある、また、造核剤の含有量を、ポリアミド100質量部に対して、上記上限値以下とすることにより、靭性により優れるポリアミド組成物が得られる。
[(F)潤滑材]
原料成分は、上記(A)~(C)の各成分に加えて、(F)潤滑材をさらに含有してもよい。
(F)潤滑材としては、特に限定されないが、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。
(高級脂肪酸)
高級脂肪酸としては、例えば、炭素数8以上40以下の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の直鎖状又は分岐鎖状の、飽和又は不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の分岐鎖状飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の直鎖状不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、オレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。
炭素数8以上40以下の分岐鎖状不飽和脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、イソオレイン酸等が挙げられる。
これら高級脂肪酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
中でも、高級脂肪酸としては、ステアリン酸又はモンタン酸が好ましい。
(高級脂肪酸金属塩)
高級脂肪酸金属塩とは、高級脂肪酸の金属塩である。
金属塩の金属元素としては、例えば、元素周期律表の第1族元素、第2族元素及び第3族元素、亜鉛、アルミニウム等が挙げられる。
元素周期律表の第1族元素としては、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
元素周期律表の第2族元素としては、例えば、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
元素周期律表の第3族元素としては、例えば、スカンジウム、イットリウム等が挙げられる。
中でも、金属元素としては、元素周期律表の第1及び2族元素、又は、アルミニウムが好ましく、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、又は、アルミニウムがより好ましい。
高級脂肪酸金属塩として具体的には、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。
これら高級脂肪酸金属塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
中でも、高級脂肪酸金属塩としては、モンタン酸の金属塩又はステアリン酸の金属塩が好ましい。
(高級脂肪酸エステル)
高級脂肪酸エステルとは、高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。
高級脂肪酸エステルとしては、炭素数8以上40以下の脂肪族カルボン酸と炭素数8以上40以下の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。
炭素数8以上40以下の脂肪族アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸エステルとして具体的には、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。
これら高級脂肪酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
(高級脂肪酸アミド)
高級脂肪酸アミドとは、高級脂肪酸のアミド化合物である。
高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。
これら高級脂肪酸アミドは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を組み合せて用いてもよい。
ポリアミド組成物中の潤滑剤の含有量は、ポリアミド組成物中の(A)ポリアミド100質量部に対して、0.001質量部以上1質量部以下が好ましく、0.03質量部以上0.5質量部以下がより好ましい。
潤滑剤の含有量が上記範囲内にあることにより、離型性及び可塑化時間安定性により優れ、また、靭性により優れるポリアミド組成物とすることができる。また、分子鎖が切断されることによるポリアミドの極端な分子量低下をより効果的に防止することができる。
[(G)熱安定剤]
原料成分は、上記(A)~(C)の各成分に加えて、(G)熱安定剤をさらに含有してもよい。
熱安定剤としては、以下に制限されないが、例えば、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤、元素周期律表の第3族、第4族及び第11~14族の元素の金属塩、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
(フェノール系熱安定剤)
フェノール系熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール化合物等が挙げられる。ヒンダードフェノール化合物は、ポリアミド等の樹脂や繊維に優れた耐熱性及び耐光性を付与する性質を有する。
ヒンダードフェノール化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、N,N'-へキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピニロキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等が挙げられる。
これらヒンダードフェノール化合物は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
特に、耐熱エージング性向上の観点から、ヒンダードフェノール化合物としては、N,N'-へキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]が好ましい。
フェノール系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のフェノール系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
フェノール系熱安定剤の含有量が上記の数値範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させ、さらにガス発生量をより低減させることができる。
(リン系熱安定剤)
リン系熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4'-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル-テトラ-トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12~C15混合アルキル)-4,4'-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4'-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェニル)-ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1~C15混合アルキル)-4,4'-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4'-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェニル)-ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10-ジ-ヒドロ-9-オキサ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化-4,4'-イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)-ビス(4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニル))-1,6-ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4'-イソプロピリデンビス(2-tert-ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3-ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2-メチレンビス(3-メチル-4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスファイト等が挙げられる。
これらリン系熱安定剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、リン系熱安定剤としては、ポリアミド組成物の耐熱エージング性の一層の向上及びガス発生量の低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-フェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-メチル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-2-エチルヘキシル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-イソデシル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-ラウリル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-イソトリデシル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル・シクロヘキシル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-ベンジル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル・エチルセロソルブ-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-ブチルカルビトール-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-オクチルフェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-2,6-ジ-tert-ブチルフェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-2,4-ジ-tert-オクチルフェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル-2-シクロヘキシルフェニル-ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェニル-フェニル・ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-オクチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
これらペンタエリスリトール型ホスファイト化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、ポリアミド組成物のガス発生量を低減させる観点から、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-アミル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及び、ビス(2、6-ジ-tert-オクチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
リン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のリン系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
リン系熱安定剤の含有量が上記の数値範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させ、さらにガス発生量をより低減させることができる。
(アミン系熱安定剤)
アミン系熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルアセトキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンジルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(エチルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(フェニルカルバモイルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-カーボネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-オキサレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-マロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-アジペート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-テレフタレート、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-エタン、α,α'-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシ)-p-キシレン、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルトリレン-2,4-ジカルバメート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ヘキサメチレン-1,6-ジカルバメート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,5-トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-ベンゼン-1,3,4-トリカルボキシレート、1-[2-{3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]-4-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールとβ,β,β',β'-テトラメチル-3,9-[2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。
これらアミン系熱安定剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のアミン系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物の総質量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
アミン系熱安定剤の含有量が上記の数値範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させることができ、さらにガス発生量をより低減させることができる。
(元素周期律表の第3族、第4族及び第11~14族の元素の金属塩)
元素周期律表の第3族、第4族及び第11~14族の元素の金属塩としては、これらの族に属する金属の塩であれば何ら制限されることはない。
中でも、ポリアミド組成物の耐熱エージング性を一層向上させる観点から、銅塩が好ましい。かかる銅塩としては、以下に制限されないが、例えば、ハロゲン化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅、ステアリン酸銅、キレート剤に銅の配位した銅錯塩等が挙げられる。
ハロゲン化銅としては、例えば、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅等が挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
これら銅塩は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、銅塩としては、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅及び酢酸銅からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ヨウ化銅及び酢酸銅からなる群より選ばれる1種以上がより好ましい。上記に挙げた好ましい銅塩を用いた場合、耐熱エージング性により優れ、且つ、押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に「金属腐食」と称する場合がある)をより効果的に抑制できるポリアミド組成物が得られる。
熱安定剤として銅塩を用いる場合、ポリアミド組成物中の銅塩の含有量は、(A)ポリアミドの総質量に対して、0.01質量%以上0.60質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.40質量%以下がより好ましい。
銅塩の含有量が上記数値範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させるとともに、銅の析出や金属腐食をより効果的に抑制することができる。
また、上記の銅塩に由来する銅元素の含有濃度は、ポリアミド組成物の耐熱エージング性を向上させる観点から、(A)ポリアミド10質量部(100万質量部)に対して、10質量部以上2000質量部以下が好ましく、30質量部以上1500質量部以下がより好ましく、50質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。
(アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物)
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
これらアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、耐熱エージング性の向上及び金属腐食の抑制という観点から、ヨウ化カリウム及び臭化カリウムからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、ヨウ化カリウムがより好ましい。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いる場合、ポリアミド組成物中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下が好ましく、0.2質量部以上10質量部以下がより好ましい。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量が上記の数値範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性がより一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食をより効果的に抑制することができる。
上記で説明してきた熱安定剤の成分は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、熱安定剤としては、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させる観点から、銅塩と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との混合物が好ましい。
銅塩と、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との含有比は、銅に対するハロゲンのモル比(ハロゲン/銅)として、2/1以上40/1以下が好ましく、5/1以上30/1以下がより好ましい。
銅に対するハロゲンのモル比(ハロゲン/銅)が上記した範囲内の場合、ポリアミド組成物の耐熱エージング性をより一層向上させることができる。
また、銅に対するハロゲンのモル比(ハロゲン/銅)が上記下限値以上である場合、銅の析出及び金属腐食をより効果的に抑制することができる。一方、銅に対するハロゲンのモル比(ハロゲン/銅)が上記上限値以下である場合、機械的物性(靭性等)を殆ど損なうことなく、成形機のスクリュー等の腐食をより効果的に防止できる。
[(H)その他樹脂]
原料成分は、上記(A)~(C)の各成分に加えて、(H)その他樹脂をさらに含有してもよい。
その他樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、液晶ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリアリレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
[ポリエステル]
ポリエステルとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
ポリアミド組成物中のその他樹脂の含有量は、ポリアミド組成物中の(A)ポリアミド及び(C)無水マレイン酸変性樹脂の合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましく、5質量部以下が特に好ましい。
ポリアミド組成物中のその他樹脂の含有量が上記の範囲内であることにより、耐熱性及び離型性により優れるポリアミド組成物とすることができる。
[(I)亜リン酸金属塩及び次亜リン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種]
原料成分は、上記(A)~(C)の各成分に加えて、(I)亜リン酸金属塩及び次亜リン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含有してもよい。
亜リン酸金属塩及び次亜リン酸金属塩としては、例えば、亜リン酸、次亜リン酸、ピロ亜リン酸又は二亜リン酸と、周期律表第1族及び第2族の元素、マンガン、亜鉛、アルミニウム、アンモニア、アルキルアミン、シクロアルキルアミン又はジアミンとの塩等が挙げられる。
中でも、亜リン酸金属塩及び次亜リン酸金属塩としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウム、又は、次亜リン酸マグネシウムが好ましい。
これら亜リン酸金属塩及び次亜リン酸金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことにより、押出加工性及び成形加工安定性により優れるポリアミド組成物を得ることができる。
[(J)亜リン酸エステル化合物]
原料成分は、上記(A)~(C)の各成分に加えて、(J)亜リン酸エステル化合物をさらに含有してもよい。
亜リン酸エステル化合物としては、例えば、亜リン酸トリフェニル、亜リン酸トリブチル等が挙げられる。
亜リン酸エステル化合物を添加することによって、押出加工性及び成形加工安定により優れるポリアミド組成物を得ることができる。
亜リン酸エステル化合物として具体的には、例えば、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチル-ジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシル)ホスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジトリデシルホスファイト-5-tert-ブチル-フェニル)ブタン、4,4’-イソプロピリデンビス(フェニル-ジアルキルホスファイト)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト等が挙げられる。
これら亜リン酸エステル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[(K)その他添加剤]
原料成分は、上記(A)~(C)の各成分に加えて、ポリアミド組成物の効果を損なわない範囲で、ポリアミドに慣用的に用いられる(K)その他添加剤を含有させることもできる。(K)その他添加剤としては、例えば、顔料及び染料等の着色剤(着色マスターバッチを含む)、難燃剤、フィブリル化剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、展着剤、エラストマー等が挙げられる。
ポリアミド組成物中の(K)その他添加剤の含有量は、その種類やポリアミド組成物の用途等によって様々であり、ポリアミド組成物の効果を損なわない範囲であれば特に制限されることはない。
<ポリアミド組成物の物性>
本実施形態の製造方法により得られるポリアミド組成物の分子量は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
[ポリアミド組成物の分子量]
ポリアミド組成物の分子量の指標としては、重量平均分子量(Mw)を利用できる。ポリアミド組成物の重量平均分子量(Mw)は15000以上100000以下であり、17000以上90000以下が好ましく、20000以上80000以下がより好ましく、22000以上75000以下がさらに好ましく、24000以上70000以下が特に好ましくい。
重量平均分子量(Mw)が上記範囲であることにより、機械的性質、特に吸水剛性、熱時剛性、流動性等により優れるポリアミドが得られる。また、無機充填材に代表される成分を含有させたポリアミド組成物は、表面外観により優れたものとなる。
ポリアミド組成物のMwを上記範囲内に制御する方法としては、(A)ポリアミドのMwを上述した範囲のものを使用すること等が挙げられる。
なお、Mwの測定は、下記実施例に記載するように、GPCを用いて測定することができる。
<用途>
本実施形態の製造方法によって得られたポリアミド組成物は、公知の成形方法を用いて、成形品とすることができる。
公知の成形方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、溶融紡糸等、一般に知られているプラスチック成形方法が挙げられる。
本実施形態の製造方法によって得られたポリアミド組成物を成形してなる成形品は、上述のポリアミド組成物から得られるので、機械特性、特に剛性に優れる。そのため、この成形品は、自動車部品、電気及び電子部品、家電部品、OA(Office Automation)機器部品、携帯機器部品、産業機器部品、日用品及び家庭品用等の各種部品として、また、押出用途等に好適に用いることができる。中でも、成形品は、自動車部品、電気及び電子部品、家電部品、OA機器部品又は携帯機器部品として好適に用いられる。
自動車部品としては、特に限定されるものではないが、例えば、吸気系部品、冷却系部品、燃料系部品、内装部品、外装部品、電装部品等が挙げられる。
自動車吸気系部品としては、特に限定されるものではないが、例えば、エアインテークマニホールド、インタークーラーインレット、エキゾーストパイプカバー、インナーブッシュ、ベアリングリテーナー、エンジンマウント、エンジンヘッドカバー、リゾネーター、スロットルボディ等が挙げられる。
自動車冷却系部品としては、特に限定されるものではないが、例えば、チェーンカバー、サーモスタットハウジング、アウトレットパイプ、ラジエータータンク、オルタネーター、デリバリーパイプ等が挙げられる。
自動車燃料系部品では、特に限定されるものではないが、例えば、燃料デリバリーパイプ、ガソリンタンクケース等が挙げられる。
自動車内装部品としては、特に限定されるものではないが、例えば、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、ステアリングホイール、トリム等が挙げられる。
自動車外装部品としては、特に限定されるものではないが、例えば、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サイドバンパー、ドアミラーステイ、ルーフレール等が挙げられる。
自動車電装部品としては、特に限定されるものではないが、例えば、コネクター、ワイヤーハーネスコネクタ、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、コンビネーションスイッチ等が挙げられる。
電気及び電子部品としては、特に限定されないが、例えば、コネクター、発光装置用リフレクタ、スイッチ、リレー、プリント配線板、電子部品のハウジング、コンセント、ノイズフィルター、コイルボビン、モーターエンドキャップ等が挙げられる。
発光装置用リフレクタとしては、発光ダイオード(LED)の他にレーザーダイオード(LD)等の光半導体をはじめ、フォットダイオード、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)等の半導体パッケージに広く使用することができる。
携帯機器部品としては、特に限定されるものではないが、例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコン、携帯ゲーム機器、デジタルカメラ等の筐体及び構造体等が挙げられる。
産業機器部品としては、特に限定されるものではないが、例えば、ギア、カム、絶縁ブロック、バルブ、電動工具部品、農機具部品、エンジンカバー等が挙げられる。
日用品及び家庭品としては、特に限定されるものではないが、例えば、ボタン、食品容器、オフィス家具等が挙げられる。
押出用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、フィルム、シート、フィラメント、チューブ、棒、中空成形品等に用いられる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、1kg/cmは、0.098MPaを意味する。
<原料成分>
以下、実施例及び比較例に用いた(A)ポリアミド、(B)炭素繊維(炭素繊維束)及び(C)相溶化剤について説明する。
[(A)ポリアミド]
A-1:ポリアミド66(合成方法について後述のとおりである)
A-2:ポリアミド6I(合成方法について後述のとおりである)
A-3:ポリアミド610(合成方法について後述のとおりである)
[(B)炭素繊維(炭素繊維束)]
B-1:リサイクル炭素繊維(全酸性官能基量0.1mmol/g、炭素繊維表面のカルボキシ基量0.01mmol/g、アスペクト比3、炭素繊維束の重量平均繊維長3mm、かさ密度0.15g/cm、樹脂炭化物質量11質量%、大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量11質量%、うちクロロホルム不溶分99質量%)
B-2:リサイクル炭素繊維(全酸性官能基量0.1mmol/g、炭素繊維表面のカルボキシ基量0.01mmol/g、アスペクト比15、炭素繊維束の重量平均繊維長3mm、かさ密度0.15g/cm、樹脂炭化物質量11質量%、大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量11質量%、うちクロロホルム不溶分99質量%)
B-3:リサイクル炭素繊維(全酸性官能基量0.1mmol/g、炭素繊維表面のカルボキシ基量0.01mmol/g、アスペクト比3、炭素繊維束の重量平均繊維長3mm、かさ密度0.05g/cm、樹脂炭化物質量19質量%、大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量19質量%、うちクロロホルム不溶分99質量%)
B-4:リサイクル炭素繊維(全酸性官能基量0.1mmol/g、炭素繊維表面のカルボキシ基量0.01mmol/g、アスペクト比3、炭素繊維束の重量平均繊維長3mm、かさ密度0.05g/cm、樹脂炭化物質量0.01質量%、大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量0.01質量%、うちクロロホルム不溶分99質量%)
B-5:リサイクル炭素繊維(全酸性官能基量0.1mmol/g、炭素繊維表面のカルボキシ基量0.01mmol/g、アスペクト比3、炭素繊維束の重量平均繊維長3mm、かさ密度0.02g/cm、樹脂炭化物質量0.1質量%、大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量0.1質量%、うちクロロホルム不溶分99質量%)
B-6:リサイクル炭素繊維(全酸性官能基量 0.1mmol/g、炭素繊維表面のカルボキシ基量0.01mmol/g、アスペクト比3、炭素繊維束の重量平均繊維長3mm、かさ密度0.15g/cm、樹脂炭化物質量11質量%、大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量11質量%、うちクロロホルム不溶分60質量%)
B-7:新品炭素繊維(全酸性官能基量0.5mmol/g、炭素繊維表面のカルボキシ基量0.2mmol/g、アスペクト比 4、炭素繊維束の重量平均繊維長6mm、かさ密度0.4g/cm、樹脂炭化物質量0質量%(リサイクル処理を経ていないため)、大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量3質量%、うちクロロホルム不溶分0質量%)
[(C)相溶化剤]
C-1:スチレン-無水マレイン酸共重合体(積水化成社製、商品名「ダイラークD332」、Mw=170000)
C-2:スチレン-無水マレイン酸共重合体(Polyscope社製、商品名「Xiran SZ08250」、Mw=250000)
C-3:エチレン無水マレイン酸交互共重合体(Mw=60000)
C-4:ポリアクリル酸(和光純薬製、Mw=100000)
<(A)ポリアミドの合成>
実施例及び比較例において用いた(A)ポリアミドは、下記(a)及び下記(b)を適宜用いて製造した。
((a)ジカルボン酸)
a-1:アジピン酸(ADA)(和光純薬工業製)
a-2:セバシン酸 (和光純薬工業製)
a-3:イソフタル酸(IPA)(和光純薬工業製)
((b)ジアミン)
b-1:1,6-ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン)(C6DA)(東京化成工業製)
[合成例1]
(ポリアミドA-1(ポリアミド66)の合成)
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
まず、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500gを蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110℃以上150℃以下の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドA-1を得た。
得られたポリアミドA-1(ポリアミド66)は、重量平均分子量(Mw)=35000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=2であった。
[合成例2]
(ポリアミドA-2(ポリアミド6I)の合成)
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
まず、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500g、及び、全等モル塩成分に対して1.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。
110℃以上150℃以下の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、30分かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドA-2を得た。
得られたポリアミドA-2(ポリアミド6I)は、Mw=20000、Mw/Mn=2であった。
[合成例3]
(ポリアミドA-3(ポリアミド610)の合成)
「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を以下のとおり実施した。
まず、セバシン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500gを蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。
110℃以上150℃以下の温度下で撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。その後、内部温度を220℃に昇温した。このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。そのまま1時間、内部温度が245℃になるまで、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。
次に、1時間かけて圧力を降圧した。その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。
その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドA-3を得た。
得られたポリアミドA-3(ポリアミド610)は、Mw=34000、Mw/Mn=2であった。
<物性及び評価>
ポリアミドA-1~A-3及び炭素繊維B-1~B-7の物性測定は、下記の方法を用いて、実施した。
また、実施例及び比較例で得られた各成形品(多目的試験片A型の成形片)を用いて、下記の方法により、各種評価を実施した。
[ポリアミドの各種物性]
[物性1]ポリアミドの重量平均分子量(Mw)及び重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した。測定条件は以下のとおりとした。
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製、HLC-8020
溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール
測定値:PMMA(ポリメチルメタクリレート)標準サンプル(ポリマーラボラトリー社製)換算
また、得られた値から、分子量分布Mw/Mnを計算した。数平均分子量Mnが500以上2000以下である含有量(質量%)は、GPCを用いて得られる各試料の溶出曲線(縦軸:検出器から得られるシグナル強度、横軸:溶出時間)から、ベースラインと溶出曲線とによって囲まれる数平均分子量500以上2000未満の領域の面積、及び、ベースラインと溶出曲線とによって囲まれる全体領域の面積より算出した。
[炭素繊維束の各種物性]
[物性2]
(炭素繊維のかさ密度)
100cmの容器に炭素繊維を入れ、質量を測定した。5回の測定値の平均値/100[g/cm]をかさ密度とした。
[物性3]
(炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量)
測定には、TG-DTA(理学電気(株)製:TG8120)を用いた。炭素繊維を約3mg採取し、大気雰囲気下で、室温から20℃/minで450℃まで昇温し、昇温後2時間保持した後の炭素繊維の質量(W2)を測定し、10mgから昇温後の炭素繊維の質量(W2)を除くことで、大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)を測定した。次いで、加熱前の炭素繊維の質量(W1)に対する大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)の割合(W3/W1×100)を算出し、炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量(質量%)とした。
[物性4]
(炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量)
炭素繊維約3mgを500mLスクリュー管に採取し、クロロホルム40mLを加えて3時間振とうした。ろ過、洗浄した後に、得られたろ液についてクロロホルムを蒸発させて試料を乾固させて固形分(W4)を得た。その固形分を「クロロホルム溶解分」とした。その後、「[物性4]」で得られた大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)及びクロロホルム溶解分(W4)を用いて、下記式により、クロロホルム不溶分(質量%)を算出した。
「大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量(質量%)」
={(大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)-クロロホルム溶解分(W4))/大気雰囲気下で450℃において2時間保持した際に減少した質量(W3)}×100
[物性5]
(ベーム法による官能基量測定)
サンプルに水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムを個々に加え、「電位差自動滴定装置」により、不活性雰囲気下で塩酸溶液を用いた逆滴定を行い、以下の(1)及び(2)を測定した。
(1)全酸性官能基量(全酸量):水酸化ナトリウム添加した条件下での塩酸溶液消費量
(2)強酸性官能基量(カルボキシ基量):炭酸水素ナトリウム添加条件下での塩酸溶
液消費量
[押出性の評価]
[評価1]
(フィード安定性)
(B)炭素繊維(炭素繊維束)をフィーダーから供給する際の安定性を評価した。評価基準としては、脈動がなく安定してフィードができる場合は「良」、脈動がありフィードが不安定な場合は「悪」とした。
[評価2]
(粉塵発生量)
溶融混練中の粉塵の発生量を下記5段階で評価した。
5:非常に粉塵が多い
4:粉塵が多い
3:粉塵発生量は中程度
2:粉塵が少ない
1:非常に粉塵が少ない
[成形品(多目的試験片A型の成形片)の評価]
[成形品(多目的試験片A型の成形片)の製造]
実施例及び比較例で得られた各ポリアミド組成物のペレットについて、射出成形機(PS-40E、日精樹脂工業株式会社製)を用いて、ISO 3167に準拠し、それぞれ多目的試験片A型の成形片に成形した。具体的な成形条件は、射出+保圧時間25秒、冷却時間15秒、金型温度を80℃、溶融樹脂温度をポリアミドの高温側の融点(Tm2)+20℃に設定した。
[評価3]
(引張強度)
多目的試験片A型の成形片を用いて、ISO 527に準拠し、80℃の温度条件下、引張速度50mm/minで引張試験を行い、引張降伏応力を測定した。この測定値を引張強度(MPa)とした。
[評価4]
(曲げ強度)
多目的試験片(A型)を切削して、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を得た。該試験片を用いて、ISO 178に準拠し、曲げ強度(MPa)を測定した。
[評価5]
(ノッチ付きシャルピー衝撃強度)
多目的試験片(A型)を切削して、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を得た。該試験片を用いて、ISO 179に準拠し、ノッチ付きシャルピー衝撃強度(kJ/m)を測定した。
<ポリアミド組成物の製造>
[実施例1~12、比較例1及び参考例1]
(ポリアミド組成物PA-a1~PA-a12、PA-b1及びPA-c1の製造)
上記(A)ポリアミド、上記(B)炭素繊維(炭素繊維束)及び上記(C)相溶化剤を下記表1~表3に記載の種類及び割合となるように用いて、各ポリアミド組成物を以下の方法で製造した。
なお、上記で合成されたポリアミドA-1~A-3は、窒素気流中で乾燥し水分率を約0.2質量%に調整してから、ポリアミド組成物の原料として用いた。
ポリアミド組成物の製造装置としては、二軸押出機(ZSK-26MC、コペリオン社製(ドイツ))を用いた。
二軸押出機は、押出機上流側から1番目のバレルに上流側供給口を有し、6番目のバレルに下流側第1供給口を有し、9番目のバレルに下流側第2供給口を有していた。また、二軸押出機において、押出機長さ(L1)/スクリュー径(D1)は48であり、バレル数は12であった。
二軸押出機において、上流側供給口からダイまでの温度を各ポリアミドの融点(Tm2)+20℃に設定し、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hに設定した。
上記製造装置を用いた具体的な製造方法としては、(A)ポリアミド及び(C)相溶化剤を二軸押出機の上流側供給口より供給し、二軸押出機の下流側第1供給口より、(B)炭素繊維を供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズして各ポリアミド組成物のペレットを得た。得られたポリアミド組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、ポリアミド組成物中の水分量を500ppm以下にした。
[比較例2]
(ポリアミド組成物PA-b2の製造)
(C-1)相溶化剤をクロロホルムに溶解し、その溶液に(B-1)炭素繊維を含浸させた。室温で24時間静置したのち、クロロホルムを蒸発させ乾固させた。上記二軸押出機にて、(A-1)ポリアミドを上流側供給口より供給し、当該処理を行った(B-1)炭素繊維を二軸押出機の下流側第1供給口より供給し、ダイヘッドより押し出された溶融混練物をストランド状で冷却し、ペレタイズしてポリアミド組成物のペレットを得た。得られたポリアミド組成物のペレットを、窒素気流中で乾燥し、ポリアミド組成物中の水分量を500ppm以下にした。
得られた各ポリアミド組成を用いて上記のとおり作製した各多目的試験片A型の成形片について、上記の方法により、各種評価を行った。結果を表1~表3に示す。
Figure 2023081802000001
Figure 2023081802000002
Figure 2023081802000003
表1~表3から、相溶化剤を配合したポリアミド組成物PA-a1~PA-a12(実施例1~12)では、成形品としたときの機械物性(引張強度、曲げ強度及びノッチ付きシャルピー衝撃強度)が全て良好であった。
一方、炭素繊維束及び(C)相溶化剤を予め混合して配合したポリアミド組成物PA-b2(比較例2)では、製造時に(B)炭素繊維が塊状となりフィード安定性が不安定であった。また、得られた成形品中には、(B)炭素繊維の塊が見られ、そのために機械物性が低下していた。
また、ポリアミドA-1及びA-2を配合したポリアミド組成物PA-a10(実施例10)では、ポリアミドA-1、A-2又はA-3を配合したポリアミド組成物PA-a1、PA-a11及びPA-a12(実施例1、11及び12)よりも、成形品としたときの成形品の引張強度及び曲げ強度が特に良好であった。
また、スチレン-無水マレイン酸共重合体の(C)相溶化剤を配合したポリアミド組成物PA-a1及びPA-a7(実施例1及び7)では、エチレン無水マレイン酸交互共重合体又はポリアクリル酸の(C)相溶化剤を配合したポリアミド組成物PA-a8及びPA-a9(実施例8及び9)よりも、機械物性(引張強度、曲げ強度及びノッチ付きシャルピー衝撃強度)が特に良好であった。
また、樹脂炭化物質量が11質量%以下である炭素繊維束を配合したポリアミド組成物PA-a1、PA-a2及びPA-a4~PA-a12(実施例1、2及び4~12)は、樹脂炭化物質量が19質量%である炭素繊維束を配合したポリアミド組成物PA-a3(実施例3)よりも、溶融混練時の粉塵の発生量が特に低減されていた。
本実施形態のポリアミド組成物の製造方法によれば、炭素繊維とポリアミドとの界面接着性が向上され、さらに炭素繊維のポリアミドへの分散性が高められ、リサイクル炭素繊維を含む場合であっても、新品の炭素繊維を含む場合と同等程度の機械物性を付与できるポリアミド組成物が得られる。本実施形態の製造方法により得られたポリアミド組成物を成形してなる成形品は、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用等、各種部品の成形材料として好適に使用することができる。

Claims (9)

  1. (A)ポリアミドと、(B)炭素繊維と、(C)相溶化剤と、を含有するポリアミド組成物の製造方法であって、
    前記(A)ポリアミド及び前記(C)相溶化剤と、前記(B)炭素繊維が集束された炭素繊維束と、を別に添加して、溶融混練する溶融混練工程を含み、
    ベーム法によって測定された前記炭素繊維束中の前記(B)炭素繊維表面の全酸性官能基量が0.3mmol/g以下であり、且つ、ベーム法によって測定された前記炭素繊維束中の前記(B)炭素繊維表面のカルボキシ基量が0.02mmol/g以下である、ポリアミド組成物の製造方法。
  2. 前記炭素繊維束がリサイクル炭素繊維である、請求項1に記載のポリアミド組成物の製造方法。
  3. 前記リサイクル炭素繊維の樹脂炭化物質量が、該リサイクル炭素繊維の総質量に対して、0.5質量%以上15質量%以下である、請求項2に記載のポリアミド組成物の製造方法。
  4. 前記炭素繊維束のアスペクト比が1以上10以下であり、且つ、前記炭素繊維束の重量平均繊維長が1mm以上10mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の製造方法。
  5. 前記炭素繊維束のかさ密度が0.05g/cm以上0.34g/cm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の製造方法。
  6. 前記炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量が5質量%以上20質量%以下であり、且つ、前記炭素繊維束の大気雰囲気下での450℃2時間の質量減少量中のクロロホルム不溶分の含有量が70質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の製造方法。
  7. 前記ポリアミド組成物の総質量に対する前記(C)相溶化剤の含有量が、0.1質量%以上1.5質量%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の製造方法。
  8. 前記(C)相溶化剤が無水マレイン酸共重合体である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の製造方法。
  9. 前記(C)相溶化剤の重量平均分子量が50,000以上300,000以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド組成物の製造方法。
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