JP2022114516A - 包装用ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】蒸着加工性に優れ、酸素や水蒸気などに対するガスバリア性能を向上させる包装用ポリエステルフィルムを提供すること。【解決手段】二軸配向ポリエステルフィルムであって、下記(1)~(3)を満たす包装用ポリエステルフィルム。(1)長手方向のヤング率が5GPa以上であること。(2)長手方向の150℃で30分加熱後の熱収縮率が1.5%以上であること。(3)幅方向の150℃で30分加熱後の熱収収率が0.0~1.0%であること。【選択図】なし

Description

本発明は、包装用ポリエステルフィルムに関するものである。特に、蒸着加工性に優れ、かつ蒸着した際に酸素や水蒸気などに対するガスバリア性能を向上させる包装用ポリエステルフィルムに関するものである。
従来、ポリエステルフィルムは、機械的特性、熱的特性、光学特性などに優れた特性を持ち、工業材料、磁気記録材料、光学材料、情報通信材料、包装材料など巾広い分野において使用されている。
しかし、ポリエステルフィルム単体では酸素や水蒸気などのガスバリア性に乏しいため、食品や医薬品などの包装用途において、内容物が変質し劣化を生じてしまう問題がある。そのため、包装用途で使用されるポリエステルフィルムには、蒸着やコーティングにより酸素や水蒸気等に対するガスバリア性が付与されている。
従来、ポリエステルフィルムにガスバリア性を付与する手段としては、ポリ塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体などのガスバリア性が良好な樹脂をコーティングする方法や、アルミニウムなどの金属や酸化アルミニウムや酸化珪素などの金属酸化物を蒸着させて薄膜を形成させる方法が利用されている。特に、金属や金属酸化物を蒸着して得られるポリエステルフィルムは、耐熱性やガスバリア性に優れているため、多くの用途で利用されている。
近年、様々な食品や菓子類が市場に登場するに従い、品質の長期保存性がより一層重視されるようになってきた。特にスナック菓子や食品等の包装においては、内容物の酸化や湿りを防止し、より長期間に渡って品質を確保するため、これまで以上のガスバリア性が要求されている。さらに、フードロスの問題も深刻となってきている。その要因のひとつとして、食べられる前に賞味期限切れを迎え、廃棄されてしまう食料が多いということが挙げられる。食料品の品質をより長く保ち、賞味期限をさらに伸ばすことができれば、フードロスの問題を解決に導くこととなり、意義のあることである。
ポリエステルフィルムの蒸着加工工程は、生産性向上のため、高速化や基材となるフィルムロールの広幅化、長尺化が進められている。特に高速化、ロールの広幅化がなされる場合には、加工時の熱や張力の影響が大きくなるため、均一な蒸着膜を安定して得ることが難しく、部分的に蒸着膜の厚みムラや欠陥部分(亀裂や抜けなど)が生じてしまい、ガスバリア性に優れた蒸着ポリエステルフィルムを得ることが困難である。そのため、基材となるポリエステルフィルムには、蒸着加工工程の広幅高速化に適応できる物性が求められている。一方、得られた蒸着ポリエステルフィルムのガスバリア性能に対しては、基材であるフィルムの物性に大きく依存していることが知られている。
特許文献1には、基材であるポリエステルフィルムの複屈折率をマイナスサイド(幅方向の屈折率の方が高い)に規定することが提案されている。また、特許文献2には基材であるポリエステルフィルムの幅方向の熱収縮率の適性範囲を規定することが提案されている。また、特許文献3には、基材であるポリエステルフィルムの面配向係数の適性範囲を規定することが提案されている。
特開平11-10725号公報 特開2017-65264号公報 特開2007-118476号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、長手方向の配向が低くなることから、広幅高速化で蒸着加工した際の高張力下ではガスバリア性に優れた蒸着ポリエステルフィルムを得ることは困難であった。
また、特許文献2に記載の方法では、幅方向の熱収縮率はマイナスサイド(伸びサイド)でも良いとされており、マイナスサイドでは蒸着加工した際の熱により基材フィルムが伸びてしまい、ガスバリア性に優れた蒸着ポリエステルフィルムを得ることは困難であった。
また、特許文献3に記載の方法は、面配向係数は高いため蒸着膜との密着性が弱く、剥離しやすくなることから、ガスバリア性に優れた蒸着ポリエステルフィルムを得ることは困難であった。
さらに特許文献1~3には、長手方向のヤング率に関する記載はないため、フィルムロールを広幅化し蒸着加工速度を高速化した際には、ガスバリア性に優れた蒸着ポリエステルフィルムを得ることは困難であった。
本発明は上述のような従来技術の問題点を解決し、近年、広幅化、高速化が著しい蒸着加工工程において加工適正に優れ、かつ酸素や水蒸気などに対するガスバリア性を格段に向上させる包装用ポリエステルフィルムを提供するものである。
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の物性を有するポリエステルフィルムを基材フィルムとして用いれば上記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明の包装用ポリエステルフィルムは、以下の構成よりなる。
1.二軸配向ポリエステルフィルムであって、下記(1)~(3)を満たす包装用ポリエステルフィルム。
(1)長手方向(MD)のヤング率が5.0GPa以上であること。
(2)長手方向(MD)の150℃で30分加熱後の熱収縮率が1.5%以上であること。
(3)幅方向(TD)の150℃で30分加熱後の熱収収率が0.0~1.0%であること。
2.フィルムの結晶化度が25~40%である1.記載の包装用ポリエステルフィルム。
3.フィルムの平均結晶粒径(χc)が6.0~8.0nmであり、かつ結晶融解サブピーク温度(Tmeta)が220℃以上である1.または2.記載の包装用ポリエステルフィルム。
4.フィルム全幅において、長手方向に対して時計回り方向を正方向として+45°方向と-45°方向の150℃で30分加熱後の熱収縮率の絶対値の差(斜め熱収縮率差)が
1.0%以下である1.~3.のいずれかに記載の包装用ポリエステルフィルム。
5.フィルムの面配向係数(fn)が0.158~0.168である1.~4.のいずれかに記載の包装用ポリエステルフィルム。
6.フィルムの少なくとも片面の表面粗さ(SRa)が20~40nmである1.~5.のいずれか記載の包装用ポリエステルフィルム。
7.フィルム中のジエチレングリコール成分量が1.5重量%以下である1.~6.のいずれかに記載の包装用ポリエステルフィルム。
8.フィルム中のカルボキシル末端基量が25~55当量/tである1.~7.のいずれかに記載の包装用ポリエステルフィルム。
9.フィルムの少なくとも片面の表面粗さ(SRa)が20~40nmであり、前記表面粗さが20~40nmであるフィルム表面にアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素の中から選ばれる少なくとも1種類を蒸着する用途に用いられる1.~8.のいずれか記載の包装用ポリエステルフィルム。
10. 9.記載の包装用ポリエステルフィルムの表面粗さ(SRa)が20~40nmであるフィルム表面に、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素の中から選ばれる少なくとも1種類を蒸着した包装用蒸着フィルム。
本発明によれば、近年、高速化、広巾化が著しい蒸着加工工程において加工適正に優れ、かつ水蒸気や酸素に対するガスバリア性を格段に向上させる包装用ポリエステルフィルムを提供することができる。
本発明の包装用ポリエステルフィルムは、単独でも用いることができるが、更に印刷を施したり、蒸着膜の上から保護層などをコーティングしたり、ヒートシール層を積層したり、他のフィルムと積層したり、あるいはこれらを組み合わせたりするなど加工して用いることもできる。また、非蒸着面にヒートシール層を積層したり、他のフィルムと積層したり、印刷を施したり、あるいはこれらを組み合わせたりすることもできる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムとはポリエステルからなるフィルムであり、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムは無延伸状態のポリエステルシートまたはフィルムを長手方向及び幅方向の二方向に延伸されて作られるものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。二軸方向へ延伸する方法としては、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のどちらも使用できる。
本発明のポリエステルフィルムのポリエステルとはエステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子の総称であるが、耐熱性、製膜性等の点からエチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレート単位を主構成成分とするものが好ましい。
本発明のポリエステルには特性を損ねない範囲で他の共重合成分を含有してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p-オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多官能酸等を用いることができる。一方、グリコ-ル成分としては例えばプロパンジオ-ル、ブタンジオ-ル、ペンタンジオ-ル、ヘキサンジオ-ル、ネオペンチルグリコ-ル、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコ-ル、シクロヘキサンジメタノ-ル等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール等が用いられる。さらにポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルを共重合してもよい。
なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよく、2種以上のポリエステルをブレンドして使用してもよい。さらに2層以上に共押出して積層フィルムとして使用してもよい。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂としては、耐熱性、製膜性の点からエチレンテレフタレート及び/又はエチレンナフタレート単位を主構成成分とするものが好ましく、ポリエステルの融点が250℃以上280℃以下であることが好ましい。融点を250℃以上とすることで加工時の熱負荷に対する耐久性が良好となり、また、表面に低分子物が析出することで、蒸着時にガスバリア性が悪化するのを抑制することができる。
また、このポリエステル樹脂の中に本発明の効果を阻害しない範囲で各種の添加剤、例えば耐熱安定剤、耐酸化安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機の易滑剤、顔料、染料、有機または無機の微粒子、充填剤、核剤などを配合してもよい。
上述したポリエステルフィルムの極限粘度(25℃オルソクロロフェノール中で測定)は0.40~1.20dl/gが好ましく、より好ましくは0.50~0.80dl/g、更に好ましくは0.55~0.75dl/gの範囲にあるものが本発明の内容に適したものである。
本発明のポリエステルフィルムに含有することができる粒子としては、各種核剤により重合時に生成した粒子、凝集体、二酸化珪素粒子、炭酸カルシウム粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、硫酸バリウム粒子、珪酸アルミ粒子、リン酸カルシウム粒子、マイカ、カオリン、クレーなどの無機粒子を、また、架橋ポリスチレン粒子、アクリル粒子、イミド粒子、シリコーン粒子等のような有機粒子を、或いは、それらの混合体をその代表例として挙げることができる。なかでも、二酸化珪素粒子、炭酸カルシウム粒子、アルミナ粒子、珪酸アルミ粒子等の無機粒子または、これら無機粒子と各種核剤により重合時に生成した粒子との混合物が好ましい。
使用される各種粒子の径は特に限定されないが、通常は沈降法あるいは光散乱法により測定した平均粒径が0.05~8.0μm、好ましくは0.1~4.0μmをその代表として挙げることができる。かかる粒子の含有量は、フィルム全体に対して0.01~0.2重量%であることが好ましく、より好ましくは0.02~0.15重量%である。
本発明のポリエステルフィルムは、カルボキシル末端基量が25~55当量/トンであり、好ましくは35~50当量/トンである。カルボキシル末端基量が25当量/トン以上とすることで、蒸着した際のポリエステルフィルムのガスバリア性が十分に発揮される。また、カルボキシル末端基量が55当量/トン以下とすることで、ポリエステルフィルムの外観が着色したり、ポリエステルフィルムの製膜性が悪化する等の問題を抑制することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、厚みが5~100μmでああることが好ましく、より好ましくは5~25μmであるが、その中でも好適な範囲は用途によって任意に選べばよい。
本発明に用いられる基材フィルム構成は、単層でもよいし、また、異なる組成のポリエステル組成物A、B、Cにより構成される積層構成、例えば、A/Bの2層構成、A/B/A あるいはA/B/Cの3層構成、3層よりも多層の積層構成でもよい。その際の積層厚み比も任意に設定してよい。これらの積層構成は共押出しによる積層フィルムとして製造することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム中のジエチレングリコール量が1.5重量%以下であることが好ましい。より好ましくは1.2重量%以下、更に好ましくは1.0重量%以下である。フィルム中のジエチレングリコール量を前述の範囲以下とすることで、蒸着した際に蒸着膜が不均一となって、ガスバリア性能や防湿性が低下するのを抑制することができる。さらに、ポリエステルフィルムが印刷や粘着剤塗工、あるいはラミネート加工が施された際に、受けた熱履歴によりフィルムの耐熱性が落ちてそれぞれの加工工程でフィルムが外力に対して伸びたりシワが発生したり、フィルムの走行性が不安定となり、加工性が悪化するという問題の発生を抑制することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、少なくとも片面の表面粗さ(SRa)が20~40nmであることが好ましい。より好ましくは20~35nm、さらに好ましくは20~30nmである。ここでいう表面粗さSRaは、後述する測定方法により求められる3次元表面粗さのパラメーターで、中心面平均粗さを表すものである。SRaが20nm以上であれば滑り性が良好となり、印刷や粘着剤塗工、あるいはラミネート加工する際にロール状に巻き取りが容易となり、ブロッキングの発生を抑制できる。一方、SRaを40nm以下とすることで、蒸着加工時巻き取る際に突起が蒸着膜を傷つけてガスバリア性が悪化することを抑制できる。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの平均結晶粒子径(χc)が6.0~8.0nmが好ましく、更に好ましくは6.3~7.5nmである。χcを前述の範囲以上とすると、すなわち、フィルムの平均結晶粒子径(χc)を大きくすると、蒸着した際に蒸発した金属が持つ熱によりフィルム表面が影響を受け、蒸着膜が不均一となりガスバリア性が悪化することを抑制することができる。また、ポリエステルフィルムと蒸着膜との密着性を良好にできるため、印刷加工後やラミネート加工後にデラミネーションが発生するのを抑制できる。このため特にボイルやレトルト処理を行う包装用途に好適に用いることができる。さらに、高温における熱寸法安定性を良好にできるため、加工後に印刷ピッチズレ等の問題が発生するのを抑制できる。χcの上限は特に無いが、生産性やフィルム強度の観点から通常8.0nm以下である。χcを制御する方法は特に限られるものでは無いが、熱固定条件などによりポリエステル樹脂の結晶化を制御する方法が挙げられる。例えば、延伸後の熱固定温度を高くしたり、熱固定時間を長くしたりすると、ポリエステル樹脂の結晶化を促進できるため、χcは高くなる傾向がある。一方で、熱固定温度を高くし過ぎたり、熱固定温度を長くし過ぎたりすると、いったん結晶化したものが融解するため、χcは低下する傾向がある。ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂に応じて、熱固定温度や時間を適宜調整することで所望のχcの値を有するフィルムを得ることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの融解サブピーク(Tmeta)が220℃ 以上であることが好ましい。より好ましくは、225℃以上であり、更に好ましくは230℃以上である。Tmetaが220℃以上であると、ポリエステルフィルムの熱結晶化が十分に進行し、上述の平均結晶粒径(χc)を前述の範囲としやすくなる。そのため、蒸着した際に蒸着膜が不均一となりガスバリア性が悪化することを抑制できる。また、ポリエステルフィルムと蒸着膜との密着性が低下し印刷加工後やラミネート加工後にデラミネーションが発生するのを抑制することができる。さらには高温における熱寸法安定性を良好にでき、加工後に印刷ピッチズレ等の問題が生じるのを抑制できる。
フィルムの融解サブピークは以下の測定によって得られるものである。フィルムを示差走査熱量計(TA Instruments社製DSC Q100)により、20℃/分の昇温速度で測定し、融解ピーク温度(融点)を求め、この測定の際に発生する擬結晶の変態により発生する微小吸熱ピーク温度をTmetaとした。なお、Tmetaはポリエステルフィルムに対する熱処理温度の履歴として出現する。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムの結晶化度が25~40%であることが好ましい。結晶化度を25%以上とすることで、耐熱性や寸法安定性が良好となり、蒸着した際に蒸着膜を均一にできガスバリア性を良好にすることができる。また40%以下とすることで、フィルム表面の脆化を抑制し、蒸着後の搬送系において蒸着膜に欠陥が生じるのを抑制できる。
本発明のポリエステルフィルムは、長手方向のヤング率が5.0GPa以上である。好ましくは、5.2GPa以上10.0GPa以下である。長手方向のヤング率が5.0GPa未満であると、蒸着工程における蒸着後の搬送工程や蒸着後の印刷やラミネートなどの後加工工程において、工程張力により基材のポリエステルフィルムが伸びて蒸着膜が割れたり亀裂が入ったりしやすくなり、ガスバリア性が悪化することとなる。長手方向のヤング率を前述の範囲とする方法は特に限られるものでは無いが、縦延伸工程において延伸温度と延伸倍率を調整する方法などが挙げられる。その際、端部加熱用の赤外線ヒーターを用いてフィルム端部を加熱しておくと、縦延伸工程が安定化し、より制御がしやすくなる。この時、横延伸工程での延伸温度、延伸倍率、熱固定処理の温度と時間によりヤング率は影響を受けるため、ヤング率が範囲内になるようにバランスをとる必要がある。
本発明のポリエステルフィルムは、長手方向の150℃で30分加熱後の熱収縮率が1.5%以上である。より好ましくは1.5%以上2.5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.6%以上2.1%以下である。長手方向の熱収縮率が1.5%未満であると、蒸着した際に蒸発した金属が持つ熱と工程張力によりポリエステルフィルムが伸びて、蒸着膜が不均一となりガスバリア性が悪化することとなる。
また、本発明のポリエステルフィルムは、幅方向の150℃で30分加熱後の熱収縮率が0.0~1.0%である。より好ましくは0.2~1.0%であり、さらに好ましくは0.3~1.0%である。幅方向の熱収縮率が0.0%未満(150℃で30分加熱後において伸長するフィルム)であると、蒸着した際に蒸発した金属が持つ熱によりポリエステルフィルムが伸びて、蒸着膜が不均一となりガスバリア性が悪化することとなる。また、1.0%を超えれば、蒸着した際に蒸発した金属が持つ熱によりポリエステルフィルムが縮んで蒸着膜が不均一となりガスバリア性が悪化することとなる。また、蒸着工程ではフィルムの端部は把持されていないため、熱収により寸法変化が発生しやすく、幅方向の熱収縮率が1.0%を超えたり、0%未満であるとフィルム中央部とのガスバリア性の差が生じやすくなり、性能の差が生じることとなる。
長手方向、幅方向の150℃で30分加熱後の熱収縮率を前述の範囲とする方法は特に限られるものでは無いが、縦延伸工程における延伸温度と延伸倍率、横延伸工程における延伸温度と延伸倍率、さらには熱固定工程における温度と時間を制御する方法や、熱固定工程における緊張熱処理あるいは弛緩熱処理、さらには熱固定工程の後に低温下(例えば150℃)において弛緩処理をする方法が挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム全幅において、長手方向(MD)に対して時計回り方向を正方向として+45°方向と-45°方向の150℃で30分加熱後の熱収縮率の絶対値の差(斜め熱収縮率差)が1.0%以下であることが好ましい。斜め熱収縮率差を1.0%以下とすることで、蒸着した際に蒸発した金属が持つ熱によりポリエステルフィルムの幅方向の両端部で歪が生じ、搬送工程で蛇行が発生することを抑制することができる。ここでいう斜め熱収縮率の差とは、製膜機において幅方向の同じ位置から、長手方向の軸を基準として、時計回りの方向に正方向を+45°方向および負方向を-45°方向として、長さ150mm×幅10mmの矩形にフィルムを切り出し、+45°方向および-45°方向の熱収縮率を測定し、その熱収縮率の絶対値の差として算出した値である。一般的に二軸配向ポリエステルフィルムの熱収縮率差は、その製造方法に起因して、幅方向において中心より端部に向かって大きくなる特性を有するため、フィルム幅方向の両端部を測定し、いずれか大きい方の値を前述の範囲とすることで、フィルム幅方向全体を包装用途に好適に用いることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、面配向係数が0.158~0.168であることが好ましい。より好ましくは0.158~0.165である。面配向係数が0.158以上であると、フィルムの配向性が良好であり、強度低下や外力に対して伸びにくく加工適性が良好となる。また面配向係数を0.168以下とすると蒸着膜との密着性が良好となり、印刷加工後やラミネート加工後のデラミネーションの発生を抑制することができる。このため、特にボイルやレトルト処理を行う包装用途に好適に用いることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、その特性を活かして、フィルムの少なくとも片面に金属あるいは金属酸化物を蒸着し、蒸着膜を形成することでガスバリアフィルムとして好適に用いることができる。蒸着膜を生成するために用いる金属または金属酸化物としては、周期表2族であるマグネシウム、カルシウム、バリウム、4族であるチタン、ジルコニウム、13族であるアルミニウム、インジウム、14族のケイ素、ゲルマニウム、スズおよびこれらの酸化物を挙げることができる。食品衛生性、コスト、生産設備からアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などを挙げることができる。また、これらの金属およびその酸化物は複数を組み合わせて蒸着膜を形成しても良い。また、これらの金属およびその酸化物は複数を組み合わせて金属および/または金属酸化物からなる層を形成しても良い。
かかる金属および/または金属酸化物からなる層の積層方法としては、蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等で形成することができる。ただし、生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式および誘導加熱方式が好ましい。また、金属および/または金属酸化物からなる層の厚みとしては、一般的には2~300nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは3~100nmの範囲である。膜厚を300nm以下であると、蒸着薄膜のフレキシビリティ(柔軟)性が良好となり、製膜後(後加工工程等において)の折り曲げ、引っ張りなどの外力で、薄膜に亀裂やピンホール等の発生を抑制し、ガスバリア性を良好に維持できる。一方、2nm以上の膜厚とすることで、均一な膜を得やすく、ガスバリア性の機能を十分に発現することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、表面粗さが20~40nmであるフィルム表面にアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素の中から選ばれる少なくとも1種類を蒸着する用途に好適に用いることができる。また、本発明の好ましい態様として、前述のポリエステルフィルムの表面粗さが20~40nmであるフィルム表面に、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素の中から選ばれる少なくとも1種類を蒸着した包装用蒸着フィルムが挙げられる。前述のポリエステルフィルムを用いることで、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素の中から選ばれる少なくとも1種類を蒸着するに際して、蒸着加工性が良好となり、また、加工後のデラミネーションを抑制することができる。食品衛生性、コスト、生産設備の観点から、アルミニウムあるいは酸化アルミニウムを蒸着することが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムを包装体として用いるのに好適な構成として、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、シーラントと積層する態様も挙げられ、表面粗さが20~40nmであるフィルム表面にシーラントと積層する態様が挙げられる。ここで、シーラントとは無延伸ポリプロピレンフィルムや無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体無延伸フィルムなどのヒートシール性を有している無延伸フィルムのことである。これらシーラントと蒸着ポリエステルフィルムの積層方法としては、エステル系やウレタン系などの接着剤を用いたドライラミネート法やポリエチレンのドライラミネート法などの方法を採用することができる。本発明のポリエステルフィルムは優れた耐熱性を有していることから、特に押出ラミネート法によりシーラントと積層した後もガスバリア性およびシーラントとの密着性に優れた特性を有している。
本発明のポリエステルフィルムは、食品、医薬品および電子部品等の包装材料に好適に用いることができる。特に、本発明のポリエステルフィルムを蒸着加工することによって、食品および医薬品の包装材料として、内容物の変質を防ぎ、酸素透過率や水蒸気透過率が小さく耐水密着性に優れているフィルムとして好適に用いることができる。
以下に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法を具体的に説明する。本発明は以下の製造方法に限られるものではない。
本発明のポリエステルフィルムは、2層以上の共押出し積層フィルムとしての構成を有しても良い。
本発明のポリエステルフィルムで使用するポリエステル樹脂は、耐熱性、製膜性の点から、融点が250℃以上であることが好ましい。また、市販されているポリエステル樹脂をそのまま用いることができるが、以下のように重縮合反応を経て製造し、使用してもよい。
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール70重量部の混合物に0.09重量部の酢酸マグネシウムと0.03重量部の三酸化アンチモンとを添加して、徐々に加熱し、最終的に220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行い、ポリエチレンテレフタレートの前駆体を合成する。ついで、該前駆体に0.02重量部のリン酸85%水溶液を添加し、重縮合反応釜に移行する。重縮合反応釜で加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で重縮合反応を行い、所望の分子量であるポリエステル樹脂を得ることができる。なお、粒子を添加する場合には、エチレングリコールに粒子を分散させたスラリーを所定の粒子濃度となるように重縮合反応釜に添加して、重縮合反応を行うことが好ましい。
ガスバリア性向上のために、ポリエステル樹脂中のジエチレングリコール(DEG)量を減少させるには、重合時間を短縮したり、重合触媒として使用されるアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などの量を限定する方法、液相重合と固相重合を組み合わせる方法、アルカリ成分を含有させる方法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、水酸化カリウムを含有させDEG量を調節する場合、添加する量をテレフタル酸ジメチル100重量部に対して0.01重量部以上0.10重量部以下とすることでDEG量が0.01重量%以上1.5重量%以下のポリエステル樹脂を得ることができる。
次にポリエステル樹脂を用いて本発明のフィルムを製造する好ましい方法について具体的に記述する。まず、使用するポリエステル樹脂を減圧下や窒素雰囲気下で加熱し、たとえば150℃で5時間の乾燥を行い、好ましくは樹脂中の水分率を50ppm以下とする。
その後、押出機に供給し溶融押出を行う。なお、ベント式二軸押出機を用いる場合は、乾燥工程を省略しても良い。また、複数のポリエステル樹脂を混合して使用する場合は、所定の混合比率となるように乾燥工程で混合しても良いし、押出機に供給する際に、混合比率を計量しながら供給しても良い。このようにして、溶融押出を行った樹脂は、溶融状態のまま
フィルターで異物を除去し、ギアポンプにて押出量を計量し、スリット状の吐出口を有するTダイから溶融シートとして押し出し、冷却ロールに密着固化してキャストフィルム(未配向フィルム(未延伸フィルム))を得る。溶融シートと冷却ロールの密着性を向上させるには、通常、静電印加密着法および/または液面塗布密着法を採用することが好ましい。
該キャストフィルムは二軸に延伸される。まず、好ましくは、ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上、例えば全幅加熱用と端部加熱用の2本以上の赤外線ヒーターによる加熱を加えて、90℃以上135℃以下、より好ましくは100℃以上125℃以下に加熱したロール群による加熱を施し、フィルム長手方向(MD)に4.0~5.5倍延伸し、一軸配向フィルム(一軸延伸フィルム)を得る。次いでフィルム幅方向(TD)に好ましくは100℃以上130℃以下で3.5~5.0倍に延伸する。
かくして得られたフィルムを引き続きインラインおよび/またはオフラインで熱固定することが好ましい。さらに、必要に応じ熱固定を行う前または後に再度MDおよび/またはTDに延伸してもよい。熱固定温度は220~245℃とするのが好ましいが、よりガスバリア性を向上させるためには225~245℃とするとより好ましく、230~245℃だと特に好ましい。熱処理時間は通常1秒~1分である。また、この熱固定工程において、長手方向および/または幅方向に弛緩(リラックス)処理を施すことで熱収縮特性を調整することができる。
熱固定処理後に、100~200℃の冷却ゾーンを経て、結晶配向の完了したポリエステルフィルムを得ることができる。例えば、熱固定後、フィルムを急冷あるいは徐冷、あるいは中間冷却ゾーンを設けることで熱収縮応力を調整することができる。
フィルムには必要に応じコーティングを施すこともできる。フィルムに塗布層を設けることにより、特に蒸着層やインク層との接着性を向上できる。塗液は防爆性や環境汚染の点で水溶解、乳化または懸濁したものが用いられる。塗布層は結晶配向完了後の二軸延伸フィルムに塗布する方法あるいは結晶配向完了前のフィルムに塗布した後に延伸する方法があるが、本発明の効果をより顕著に発現させるためには後者の方法が特に好ましい。塗布する方法は特に限定されないが、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、キスコーター、バーコーター等を用いて塗布するのが好ましい。また、塗布する前に必要に応じて塗布面に空気中その他種々の雰囲気中でコロナ放電処理を施しておいてもよい。
塗布層には、必要に応じて消泡剤、塗布性架橋剤、増粘剤、有機系潤滑剤、無機系粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発砲剤、染料、顔料等を含有させてもよい。
[特性値の測定法]
(1)カルボキシル末端基量
末端カルボキシル基量については、Mauliceの方法に準じて、以下の方法にて測定した。(文献M.J. Maulice, F. Huizinga, Anal.Chim.Acta,22 363(1960))
測定試料(積層構成の場合、ポリエステルフィルムのみを分離したもの)2gをo-クレゾール/クロロホルム(重量比7/3)50mLに温度80℃にて溶解し、0.05Nの
KOH/メタノール溶液によって滴定し、末端カルボキシル基濃度を測定し、当量/ポリエステル樹脂1ton(当量/トン)の値で示した。なお、滴定時の指示薬はフェノールレッドを用いて、黄緑色から淡紅色に変化したところを滴定の終点とした。なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、溶液を濾過して不溶物の重量測定を行い、不溶物の重量を測定試料重量から差し引いた値を測定試料重量とする補正を実施した。
(2)ジエチレングリコール量(DEG量)
測定試料(ポリエステル樹脂またはポリエステルフィルム)1.0gを、モノエタノールアミン2.5mLを溶媒として260℃で加水分解した。次いでメタノール10mLを加えて冷却し、テレフタル酸にて中和後、遠心分離した後に上澄みをガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製 GC-14A)にてジエチレングリコール(DEG)含有量を測定した。なお、無機粒子などの添加成分は不溶物として遠心分離時に沈降するため、沈降成分について濾過、重量測定を行い、その重量を測定試料重量から差し引いて測定試料重量の補正を実施した。
(3)結晶融解サブピーク温度(Tmeta)
フィルムを示差走査熱量計(TA Instruments社製DSC Q100)により、20℃/分の昇温速度にて30℃~280℃の範囲で測定を実施した。この測定により得られた示差走査熱量測定チャートにおけるポリエステル結晶融解ピーク前の微小吸熱ピーク温度をTmeta(℃)とした。なお、Tmetaはポリエステルフィルムに対する熱処理温度の履歴として出現する。
(4)平均結晶粒径(χc)
試料を回折式X線装置PHILIPS社Compact X-ray Diffractrometer System PW1840、光源にCuのKα線(波長0.1542nm)を用い、下記条件にて回折強度を測定した。
走査範囲 18~32°
走査速度 0.05°/秒
加速電圧 35kV
管球電流 15mA
平均結晶粒子径(χc)は最大ピークの半価幅(rad)、から
χc=0.9λ/βcosθ
λ:X線の波長(nm)、β:最大ピークの半価幅(rad)、θ:最大ピークの回折角にて算出した。
(5)結晶化度
測定するサンプルを約10mg秤量し、アルミニウム製パン、パンカバーを用いて封入し、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)によって測定した。測定においては窒素雰囲気中で30℃から300℃まで10℃/分の速度で昇温した。融点付近のピークに現れる融解熱量(ΔH)を実測融解熱量とし、下記式(1)より結晶化度X(%)を求めた。融点付近で二つ以上のピークを持つ場合は、200~280℃の範囲にあるピークの融解熱量(ΔH)の合計値を実測融解熱量とした。
Χ=ΔH/ΔH0×100 ・・・(1)
ΔH:実測融解熱量、ΔH0:完全結晶化度を140.10J/gとした。
(6)屈折率、面配向係数(fn)、複屈折率(△n)
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、中間液としてジヨードメタンを用い、アッベ屈折計を用いて長手方向(nMD)、幅方向(nTD)、厚さ方向(nZD)の屈折率を測定した。下記式により面配向係数fnと複屈折率△nを算出した。
fn={(nMD+nTD)/2}-nZD
△n=|nMD-nTD|
(7)熱収縮率
フィルムを長手方向(MD)および幅方向(TD)に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとした。サンプルに100mmの間隔(中央部から両端に50mmの位置)で標線を描き、3gの錘を吊るして所定温度(150℃)に加熱した熱風オーブン内に30分間設置し加熱処理を行った。熱処理後の標線間距離を測定し、加熱前後の標線間距離の変化から下記式により熱収縮率を算出した。任意に採取した5サンプルについて上記測定を実施し、その数平均を熱収縮率とした。
熱収縮率(%)={(加熱処理前の標線間距離)-(加熱処理後の標線間距離)}/(加
熱処理前の標線間距離)×100
(8)斜め熱収縮率差
製膜機の長手方向の軸を基準として、時計回り方向を正方向として+45°方向および-45°方向にフィルムを長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出し、上記(8)の方法と同様に、+45°方向および-45°方向に対する熱収縮率を求め、次式により、斜め熱収縮率差を求めた。測定は得られたポリエステルフィルムロールの全幅に対して、中央おおよび端部から250mmの位置から採取したサンプルで測定を行った。いずれか最も大きい値を斜め熱収縮率差とした。
斜め熱収縮率(%)=|熱収縮率(+45°方向)-熱収縮率(-45°方向)|
(9)ヤング率
JIS Z1702に準じて、オリエンテック社製TENSILON(登録商標)UCT-100を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気下において、ヤング率を測定した。具体的には、フィルムを長手方向(MD)に長さ150mm、幅10mmの短冊状にサンプルを切り出し、初期引張チャック間距離50mm、引張速度200mm/分で、JIS K7127(1999年)に規定された方法にしたがって、フィルム長手方向について5回の測定を行い、平均値をヤング率とした。
(10)表面粗さ
フィルム表面を3次元表面粗さ計ET4000AK(小坂研究所社製)を用い、次の条件で触針法により測定を行った。なお、表面粗さ(SRa)は、粗さ曲面の高さと粗さ曲面の中心面の高さの差をとり、その絶対値の平均値を表したものである。
針径 2μmR
針圧 10mg
測定長 500μm
縦倍率 20000倍
CUT OFF 250μm
測定速度 100μm/s
測定間隔 5μm
記録本数 80本
ヒステリシス幅 ±6.25nm
基準面積 0.1mm
(11)ガスバリア性
A.水蒸気透過率
蒸着後のフィルムの幅方向中央部と両端部(フィルム端から200mm)の計3点から、長さ200mm×幅200mmに切り出し、蒸着1週間後に、モダンコントロール社製水蒸気透過率計 Permatran W3/31を用いてJIS-K-7129-1992に記載されたB法に準じて、40℃ 90RH%の条件で測定した。測定した水蒸気透過率の平均値を次のように評価した。○、◎を良好とした。
◎:0(g/m・day)以上、0.3(g/m・day)未満
○:0.3(g/m・day)以上、0.5(g/m・day)未満
△:0.5(g/m・day)以上、1.0(g/m・day)未満
×:1.0(g/m・day)以上。
さらに、中央部とそれぞれの端部との差の絶対値を算出し、次のように評価した。〇、◎を良好とした。
◎:0(g/m・day)以上、0.05(g/m・day)未満
○:0.05(g/m・day)以上、0.1(g/m・day)未満
△:0.1(g/m・day)以上、0.15(g/m・day)未満
×:0.15(g/m・day)以上。
B.酸素透過率
蒸着後のフィルムの幅方向中央部と両端部(フィルム端から200mm)の計3点から、長さ200mm×幅200mmに切り出し、蒸着1週間後に、モダンコントロール社製酸素透過率測定装置OX-TRAN 2/20を用いてJIS-K-7126-1987に記載されたB法に準じて、20℃ 0%RHの条件にて酸素透過率を測定した。測定した酸素透過率の平均値を次のように評価した。○、◎を良好とした。
◎:0(g/m・day)以上、0.3(g/m・day)未満
○:0.3(g/m・day)以上、0.5(g/m・day)未満
△:0.5(g/m・day)以上、1.0(g/m・day)未満
×:1.0(g/m・day)以上。
さらに、中央部とそれぞれの端部との差の絶対値を算出し、次のように評価した。〇、◎を良好とした。
◎:0(g/m・day)以上、0.05(g/m・day)未満
○:0.05(g/m・day)以上、0.1(g/m・day)未満
△:0.1(g/m・day)以上、0.15(g/m・day)未満
×:0.15(g/m・day)以上。
次に、実施例を挙げて、具体的に本発明のポリエステルフィルムについて説明する。実施例中で「部」とは、特に注釈のない限り「重量部」である。
[ポリエチレンテレフタレートの製造]
ポリエチレンテレフタレート樹脂は以下のように準備した。
(1)ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET-1)
テレフタル酸ジメチル100重量部、およびエチレングリコール61重量部の混合物に、0.04重量部の酢酸マグネシウム、0.02重量部の三酸化アンチモンを添加して、徐々に昇温し、最終的には220℃でメタノールを留出させながらエステル交換反応を行う。ついで、該エステル交換反応生成物に、0.020重量部のリン酸85%水溶液を添加した後、重縮合反応釜に移行する。さらに、加熱昇温しながら反応系を徐々に減圧して1hPaの減圧下、290℃で常法により重縮合反応を行い、ジエチレングリコール量1.45重量%、固有粘度0.65であり、なおかつ酸成分の95モル%以上がテレフタル酸からなり、グリコール成分の95モル%以上がエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET-1」)を作製した。
(2)粒子マスター
上記(1)のポリエチレンテレフタレートを製造する際、エステル交換反応後にレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA-700(株式会社堀場製作所製)によって測定されるメジアン径(平均粒子径)2.1μmの凝集シリカ粒子のエチレングリコールスラリーを添加してから重縮合反応を行い、粒子濃度2.0重量%の粒子マスター(以下、「PET-2」)を得た。
(参考例1)
PET-1を96.2重量部、PET-2を3.8重量部の割合で混合して使用した。ポリエチレンテレフタレート樹脂と粒子マスターの混合物を真空乾燥した後、押出機に供給して、280℃で溶融押出し、14μmカットのステンレスパウダー焼結フィルター(PSS)で濾過した後、T字型口金からシート状に押出し、これを表面温度25℃の冷却ドラムに静電密着法で冷却固化せしめた。このようにして得られた未延伸(未配向)PETフィルムを、110℃に加熱して長手方向に一段目を1.35倍、二段目を1.5倍、三段目を
2.075倍とした三段延伸にて一軸延伸フィルムとした。このフィルムを120℃に加熱しつつ幅方向に3.55倍に延伸した(横延伸)。このフィルムを223℃の熱風中に導き入れ、2秒間MD方向、TD方向に弛緩させずに熱処理(熱固定)した後、150℃で幅方向にTD延伸後のフィルム幅に対して2.5%の弛緩処理(リラックス)を施し冷却した。このようにして最終的に厚み12μmのポリエステルフィルムを得て、これを巻取り機に導いて巻き上げ、ミルロールとした。さらに、このミルロールを蒸着用に1500mm幅にスリットし、60,000mのフィルムロールを巻き上げた。
このようにして得られた厚さ12μmのポリエステルフィルムにアルミニウム蒸着を所定の蒸着速度で行った。アルミニウムを蒸着する方法は、フィルムを連続式真空蒸着機の巻き出し装置にセットし、冷却金属ドラムを介して走行させフィルムを巻き取る。この時、連続式真空蒸着機を10-4Torr以下に減圧し、冷却ドラムの下部よりアルミナ製ルツボに純度99.99%の金属アルミニウムを装填して金属アルミニウムを加熱蒸発させ、フィルム上に付着堆積させ、厚さ100nmのアルミニウム膜を形成した。
(比較例1)
フィルムの蒸着速度、蒸着時のフィルム幅を変更した以外は参考例1と同様の方法にて、アルミニウム蒸着フィルムを得た。
(実施例1~4、比較例2~6)
表に記載のとおり、延伸条件、熱固定条件、冷却条件、フィルムの蒸着速度、蒸着時のフィルム幅を変更した以外は、参考例1と同様の方法にてポリエステルフィルム、アルミニウム蒸着フィルムを得た。
結果は表1に示す。
実施例により得られたポリエステルフィルムを基材として用いた蒸着フィルムは、蒸着加工を広幅化、高速化しても酸素および水蒸気に対するガスバリア性に優れていた。一方、比較例1~6により得られたポリエステルフィルムを基材として用いた蒸着フィルムは、蒸着加工を広幅化、高速化した場合、酸素および水蒸気のガスバリア性が劣るものであった。
Figure 2022114516000001
本発明によれば、蒸着加工することによって、酸素および水蒸気に対するガスバリア性に優れた包装用ポリエステルフィルムを提供することができる。

Claims (10)

  1. 二軸配向ポリエステルフィルムであって、下記(1)~(3)を満たす包装用ポリエステルフィルム。
    (1)長手方向(MD)のヤング率が5.0GPa以上であること。
    (2)長手方向(MD)の150℃で30分加熱後の熱収縮率が1.5%以上であること。
    (3)幅方向(TD)の150℃で30分加熱後の熱収収率が0.0~1.0%であること。
  2. フィルムの結晶化度が25~40%である請求項1記載の包装用ポリエステルフィルム。
  3. フィルムの平均結晶粒径(χc)が6.0~8.0nmであり、かつ結晶融解サブピーク温度(Tmeta)が220℃以上である請求項1または2記載の包装用ポリエステルフィルム。
  4. フィルム全幅において、長手方向に対して時計回り方向を正方向として
    +45°方向と-45°方向の150℃で30分加熱後の熱収縮率の絶対値の差(斜め熱収縮率差)が1.0%以下である請求項1~3のいずれかに記載の包装用ポリエステルフィルム。
  5. フィルムの面配向係数(fn)が0.158~0.168である請求項1~4のいずれかに記載の包装用ポリエステルフィルム。
  6. フィルムの少なくとも片面の表面粗さ(SRa)が20~40nmである請求項1~5のいずれか記載の包装用ポリエステルフィルム。
  7. フィルム中のジエチレングリコール量が1.5重量%以下である請求項1~6のいずれかに記載の包装用ポリエステルフィルム。
  8. フィルム中のカルボキシル末端基量が25~55当量/tである請求項1~7のいずれかに記載の包装用ポリエステルフィルム。
  9. フィルムの少なくとも片面の表面粗さ(SRa)が20~40nmであり、前記表面粗さ(SRa)が20~40nmであるフィルム表面にアルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素の中から選ばれる少なくとも1種類を蒸着する用途に用いられる請求項1~8のいずれか記載の包装用ポリエステルフィルム。
  10. 請求項9記載の包装用ポリエステルフィルムの表面粗さ(SRa)が20~40nmであるフィルム表面に、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素の中から選ばれる少なくとも1種類を蒸着した包装用蒸着フィルム。
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