JP2022113565A - リチウムイオン二次電池の放電制御方法およびリチウムイオン二次電池システム - Google Patents

リチウムイオン二次電池の放電制御方法およびリチウムイオン二次電池システム Download PDF

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Toshiaki Yamaguchi
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Abstract

【課題】放電末期における抵抗上昇を緩和でき、取り出し容量を増加できるリチウムイオン二次電池の放電制御方法およびリチウムイオン二次電池システムを提供する。【解決手段】厚み250μm以上の正極活物質層を備える正極と、厚み250μm以上の負極活物質層を備える負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを備えるリチウムイオン二次電池の放電を制御する方法であり、放電中の前記リチウムイオン二次電池への通電を休止する休止ステップと、通電を休止した前記リチウムイオン二次電池への通電を再開する再開ステップと、を含むリチウムイオン二次電池の放電制御方法とする。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池の放電制御方法およびリチウムイオン二次電池システムに関する。
リチウムイオン二次電池は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力用電源、ラップトップ型パソコン、携帯電話などの小型電子機器用電源など、様々な分野の電源として用いられている。
従来、リチウムイオン二次電池の製造方法として、リチウムイオン二次電池を充電する第1充電工程と、リチウムイオン二次電池の充電を所定時間休止する休止工程と、リチウムイオン二次電池の充電を再開して、リチウムイオン二次電池の充電を継続する第2充電工程とを含む方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、リチウムイオン二次電池として、エネルギー密度を高くするために、電極の厚みを厚くして、充放電できるリチウムイオン量を多くしたものがある。
特開2019-87392号公報
しかしながら、リチウムイオン二次電池の電極の厚さを厚くすると、放電末期に抵抗が著しく上昇し、取り出し容量が低下することが問題となっていた。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、放電末期における抵抗上昇を緩和でき、取り出し容量を増加できるリチウムイオン二次電池の放電制御方法およびリチウムイオン二次電池システムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
[1] 厚み250μm以上の正極活物質層を備える正極と、厚み250μm以上の負極活物質層を備える負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを備えるリチウムイオン二次電池の放電を制御する方法であり、
放電中の前記リチウムイオン二次電池への通電を休止する休止ステップと、
通電を休止した前記リチウムイオン二次電池への通電を再開する再開ステップと、を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池の放電制御方法。
[2] 前記リチウムイオン二次電池は、電流密度2.1mA/cm以上で放電され、前記正極と前記負極とが対向している部分における単位面積当たりの容量が7.3Ah/cm以上である[1]に記載のリチウムイオン二次電池の放電制御方法。
[3] 前記休止ステップと前記再開ステップとを、この順に複数回繰り返し行う[1]または[2]に記載のリチウムイオン二次電池の放電制御方法。
[4] 前記休止ステップにおいて、前記放電中の前記リチウムイオン二次電池への通電を、0.5~15分間休止する[1]~[3]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の放電制御方法。
[5] 前記リチウムイオン二次電池が厚さ方向に複数積層されている[1]~[4]のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の放電制御方法。
[6] リチウムイオン二次電池と、
放電中の前記リチウムイオン二次電池への通電を間欠的に休止する制御部と、
を含み、
前記リチウムイオン二次電池は、厚み250μm以上の正極活物質層を備える正極と、厚み250μm以上の負極活物質層を備える負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを備えるリチウムイオン二次電池システム。
本発明のリチウムイオン二次電池の放電制御方法は、放電中のリチウムイオン二次電池への通電を休止する休止ステップと、通電を休止したリチウムイオン二次電池への通電を再開する再開ステップとを含む。休止ステップでは、放電中のリチウムイオン二次電池において生じた電解液中のリチウムイオンの濃度勾配が緩和される。このため、再開ステップでは、電解液中のリチウムイオンの濃度勾配に起因する抵抗上昇が軽減される。その結果、厚み250μm以上の正極活物質層を備える正極と、厚み250μm以上の負極活物質層を備える負極とを備える、充放電できるリチウムイオン量が多いリチウムイオン二次電池であっても、放電末期の抵抗上昇が抑制され、取り出し容量が増加する。
本発明のリチウムイオン二次電池システムは、厚み250μm以上の正極活物質層を備える正極と、厚み250μm以上の負極活物質層を備える負極とを備える、充放電できるリチウムイオン量が多いリチウムイオン二次電池と、放電中の前記リチウムイオン二次電池への通電を間欠的に休止する制御部とを含む。このため、本発明のリチウムイオン二次電池システムに含まれるリチウムイオン二次電池では、放電中に生じた電解液中のリチウムイオンの濃度勾配が、通電が休止されることにより緩和される。よって、通電が休止された後の放電におけるリチウムイオンの濃度勾配に起因する抵抗上昇が軽減される。その結果、リチウムイオン二次電池の放電末期の抵抗上昇が抑制され、取り出し容量が増加する。
図1は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池システムの概略構成図である。 図2は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池システムに含まれるリチウムイオン電池モジュールを示した概略構成図である。 図3、図2に示すリチウムイオン電池モジュールに含まれる電池セルを示した概略構成図である。 図4は、放電が開始された直後の電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度を示した模式図である。 図5は、放電中の電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度変化を説明するための模式図である。 図6は、放電末期の電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度分布を説明するための模式図である。 図7は、電池セル1への通電を休止した場合の電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度変化を説明するための模式図である。 図8は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の放電制御方法を用いて放電した場合と、休止ステップを行わない場合とにおける放電時間と電圧との関係の一例を示したグラフである。
以下、本実施形態について、図面を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施できる。
[リチウムイオン二次電池システム]
図1は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池システムの概略構成図である。本実施形態のリチウムイオン二次電池システム10は、リチウムイオン電池モジュール100と、電圧センサ11と、電流センサ12と、制御部14とを備える。
図1において、符号13は電気製品を示している。電気製品13は、リチウムイオン電池モジュール100から供給された電力を使用するものである。電気製品13としては、例えば、電気自動車のモーターなどが挙げられる。電気製品13は、リチウムイオン電池モジュール100に対して並列に接続されている。
電圧センサ11は、図1に示すように、リチウムイオン電池モジュール100に対して並列に接続されている。電圧センサ11は、リチウムイオン電池モジュール100の電圧を、連続的または間欠的に検出する。電圧センサ11により検出されたリチウムイオン電池モジュール100の電圧値は、制御部14に送られる。
電流センサ12は、図1に示すように、リチウムイオン電池モジュール100と電気製品13との間に設置されている。電流センサ12は、リチウムイオン電池モジュール100から電気製品13に流れる電流を、連続的または間欠的に検出する。電流センサ12により検出された、リチウムイオン電池モジュール100から電気製品13に流れる電流値は、制御部14に送られる。
制御部14は、リチウムイオン電池モジュール100への通電を制御して、放電中のリチウムイオン電池モジュール100への通電を、所定のタイミングで間欠的に休止する。本実施形態における制御部14は、CPUおよび各種メモリ(記憶装置)を備えている。制御部14は、記憶装置に記憶されたプログラムにしたがって、放電中のリチウムイオン電池モジュール100と電気製品13との間の電気的接続を制御する。
[リチウムイオン二次電池]
図2は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池システムに含まれるリチウムイオン電池モジュールを示した概略構成図である。
図2に示すように、リチウムイオン電池モジュール100は、平板状の電池セル1(リチウムイオン二次電池)が厚さ方向に複数積層されたものである。電池セル1の積層数は、リチウムイオン電池モジュール100の用途に応じて適宜決定されるものであり、1つのみであってもよく、特に限定されない。
図2に示すように、電池セル1は、厚さ方向からみて長方形状に形成されている。以下では、電池セル1の厚さ方向を単に厚さ方向と称して説明する場合がある。
リチウムイオン電池モジュール100は、電池セル1と、積層された電池セル1の周囲を被覆する外装体101と、外装体101の内部に封入された電解液とを有する。
図2に示すように、リチウムイオン電池モジュール100における電池セル1の積層方向両端(図2においては上面および下面)には、電流取り出し部102が設けられている。電流取り出し部102は、電気製品13と電気的に接続される。
リチウムイオン電池モジュール100は、電池セル1の正極と負極とが対向している部分における単位面積当たりの容量が7.3Ah/cm以上であることが好ましい。
(電池セル)
図3は、図2に示すリチウムイオン電池モジュール100に含まれる電池セル1(リチウムイオン二次電池)を示した概略構成図である。電池セル1は、図3に示すように、正極集電体4と正極活物質層6とを有する正極と、負極集電体5と負極活物質層7とを有する負極と、正極活物質層6と負極活物質層7との間に配置されたセパレータ8とが積層された積層体を備えている。また、電池セル1は、正極と負極とセパレータ8とからなる積層体の厚さ方向両面を除く外周を囲むように環状に配置された枠状部材3を備えている。枠状部材3の開口3aは、正極6の正極集電体4および負極7の負極集電体5によって厚さ方向両側から閉塞されている。
電池セル1は、正極集電体4および負極集電体5の向きを揃えて積層されている。すなわち、図2に示すように、1個の電池セル1における正極集電体4と、電池セル1に対して積層方向に隣り合う他の電池セル1における負極集電体5とが相互に接触するように、複数の電池セル1が積層されている。このことにより、各電池セル1は、直列に接続されている。
電池セル1は、隣り合う電池セルにおける正極集電体と負極集電体とが一体化されたバイポーラ(双極)型電極であることが好ましい。
「正極集電体、負極集電体」
正極集電体4および負極集電体5の形状は特に限定されないが、枠状部材3の厚さ方向平面視外形形状と同じか、枠状部材3の外形形状と略相似で枠状部材3よりも少しだけ小さい形状であることが好ましい。
正極集電体4および負極集電体5は、導電剤と樹脂とを含む樹脂集電体であることが好ましい。
樹脂集電体に含まれる導電剤としては、後述する正極活物質層6および/または負極活物質層7に含有できる導電助剤と同様のものを好適に用いることができる。
樹脂集電体に含まれる樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリシクロオレフィン(PCO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アラミド樹脂又はこれらの混合物等が挙げられる。
これらの樹脂のうち、電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、より好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
正極集電体4および負極集電体5は、樹脂集電体に限定されるものではない。正極集電体4および負極集電体5は、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子及び導電性ガラス等からなるものであってもよい。
「正極活物質層」
正極活物質層6は、正極活物質粒子を含む。正極活物質層6は、正極活物質粒子の他に、必要に応じて、固体有機電解質、導電助剤、粘着性樹脂、溶液乾燥型の公知の電極用バインダ(結着剤ともいう)から選ばれる1種または2種以上を含有していてもよい。
正極活物質層6の厚みは、250μm以上であり、400μm以上であることが好ましい。正極活物質層6の厚みが250μm以上であるので、正極活物質層6中の正極活物質粒子数を多くでき、充放電できるリチウムイオン量が多くなる。このため、エネルギー密度の高い電池セル1となる。
(正極活物質粒子)
正極活物質粒子としては、リチウムイオン電池の正極活物質粒子として用いることができるものであれば特に制限されない。例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物{遷移金属が1種である複合酸化物(LiCoO、LiNiO、LiAlMnO、LiMnO及びLiMn等)、遷移金属元素が2種である複合酸化物(例えば、LiFeMnO、LiNi1-xCo、LiMn1-yCo、LiNi1/3Co1/3Al1/3及びLiNi0.8Co0.15Al0.05)及び金属元素が3種類以上である複合酸化物(例えば、LiMaM’bM’’cO(M、M’及びM’’はそれぞれ異なる遷移金属元素であり、a+b+c=1を満たす。)、LiNi1/3Mn1/3Co1/3等)等}、リチウム含有遷移金属リン酸塩(例えば、LiFePO、LiCoPO、LiMnPO及びLiNiPO)、遷移金属酸化物(例えば、MnO及びV)、遷移金属硫化物(例えば、MoS及びTiS)及び導電性高分子(例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン及びポリ-p-フェニレン及びポリビニルカルバゾール)等の粒子が挙げられる。上記リチウム含有遷移金属リン酸塩は、遷移金属サイトの一部を他の遷移金属で置換したものであってもよい。また、これらの化合物のうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
「負極活物質層」
負極活物質層7は、負極活物質粒子を含む。負極活物質層7は、負極活物質粒子の他に、必要に応じて、固体有機電解質、導電助剤、粘着性樹脂、溶液乾燥型の公知の電極用バインダ(結着剤ともいう)から選ばれる1種または2種以上を含有していてもよい。
負極活物質層7の厚みは、250μm以上であり、400μm以上であることが好ましい。負極活物質層7の厚みが250μm以上であるので、負極活物質層7中の負極活物質粒子数を多くでき、充放電できるリチウムイオン量が多くなる。このため、エネルギー密度の高い電池セル1となる。
(負極活物質粒子)
負極活物質粒子としては、リチウムイオン電池の負極活物質粒子として用いることができるものであれば特に制限されない。例えば、炭素系材料[黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、樹脂焼成体(例えば、フェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えば、ピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)及び炭素繊維等]、珪素系材料[珪素、酸化珪素(SiO)、珪素-炭素複合体(炭素粒子の表面を珪素及び/又は炭化珪素で被覆したもの、珪素粒子又は酸化珪素粒子の表面を炭素及び/又は炭化珪素で被覆したもの並びに炭化珪素等)及び珪素合金(珪素-アルミニウム合金、珪素-リチウム合金、珪素-ニッケル合金、珪素-鉄合金、珪素-チタン合金、珪素-マンガン合金、珪素-銅合金及び珪素-スズ合金等)等]、導電性高分子(例えば、ポリアセチレン及びポリピロール等)、金属(スズ、アルミニウム、ジルコニウム及びチタン等)、金属酸化物(チタン酸化物及びリチウム・チタン酸化物等)及び金属合金(例えば、リチウム-スズ合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)等、及びこれらと炭素系材料との混合物等の粒子が挙げられる。
上記負極活物質粒子のうち、内部にリチウム又はリチウムイオンを含まないものについては、予め負極活物質粒子の一部又は全部にリチウム又はリチウムイオンを含ませるプレドープ処理を施してもよい。
上記負極活物質粒子のうち、電池容量等の観点から、炭素系材料、珪素系材料及びこれらの混合物が好ましい。炭素系材料としては、黒鉛、難黒鉛化性炭素及びアモルファス炭素が更に好ましい。珪素系材料としては、酸化珪素及び珪素-炭素複合体が更に好ましい。
(被覆活物質粒子)
正極活物質粒子および/または負極活物質粒子としては、表面の少なくとも一部、好ましくは電極活物質粒子の表面の全部に、電極活物質被覆用樹脂が結着してなる被覆層が形成された被覆活物質粒子を用いてもよい。被覆活物質粒子は、正極活物質粒子および/または負極活物質粒子の表面の少なくとも一部、好ましくは電極活物質粒子の表面の全部が、被覆層で被覆されているので、電池セル1を充放電することによる体積変化が生じにくい。
被覆層を構成する電極活物質被覆用樹脂としては、例えば、炭素数4~12の1価の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物(a11)、(メタ)アクリル酸(a12)並びに上記(メタ)アクリル酸(a12)のカルボキシル基と反応しうる基を2つ以上有する化合物(b1)、ラジカル重合性を有する基を2つ以上有する化合物(b2)及び上記(メタ)アクリル酸(a12)のカルボキシル基と反応しうる基とラジカル重合性を有する基をそれぞれ1つ以上有する化合物(b3)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる架橋剤(b)を含んでなる単量体組成物を重合してなるものが挙げられる。
エステル化合物(a11)を構成する炭素数4~12の1価の脂肪族アルコールとしては、ブチルアルコール(n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール)、ペンチルアルコール(n-ペンチルアルコール、2-ペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール等)、ヘキシルアルコール(1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール等)、ヘプチルアルコール(n-ヘプチルアルコール、1-メチルヘキシルアルコール、2-メチルヘキシルアルコール等)、オクチルアルコール(n-オクチルアルコール、1-メチルヘプタノール、1-エチルヘキサノール、2-メチルヘプタノール、2-エチルヘキサノール等)、ノニルアルコール(n-ノニルアルコール、1-メチルオクタノール、1-エチルヘプタノール、1-プロピルヘキサノール、2-エチルヘプチルアルコール等)、デシルアルコール(n-デシルアルコール、1-メチルノニルアルコール、2-メチルノニルアルコール、2-エチルオクチルアルコール等)、ウンデシルアルコール(n-ウンデシルアルコール、1-メチルデシルアルコール、2-メチルデシルアルコール、2-エチルノニルアルコール等)、ラウリルアルコール(n-ラウリルアルコール、1-メチルウンデシルアルコール、2-メチルウンデシルアルコール、2-エチルデシルアルコール、2-ブチルヘキシルアルコール等)等が挙げられる。
本実施形態において、(メタ)アクリル酸(a12)は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を示しており、アクリル酸とメタクリル酸の混合物であってもよい。
架橋剤(b)は、(メタ)アクリル酸(a12)のカルボキシル基と反応しうる基を2つ以上有する化合物(b1)、ラジカル重合性を有する基を2つ以上有する化合物(b2)及び(メタ)アクリル酸(a12)のカルボキシル基と反応しうる基とラジカル重合性を有する基とをそれぞれ1つ以上有する化合物(b3)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる。
(メタ)アクリル酸(a12)のカルボキシル基と反応しうる基を2つ以上有する化合物(b1)は、ラジカル重合性を有する基を有する化合物を含まない。ラジカル重合性を有する基を2つ以上有する化合物(b2)は、(メタ)アクリル酸(a12)のカルボキシル基と反応し得る基を有する化合物を含まない。すなわち、(メタ)アクリル酸(a12)のカルボキシル基と反応しうる基を2つ以上有し且つラジカル重合性基を1つ以上有する化合物、及び、ラジカル重合性を有する基を2つ以上有し且つ(メタ)アクリル酸(a12)のカルボキシル基と反応し得る基を1つ以上有する化合物は、(メタ)アクリル酸(a12)のカルボキシル基と反応しうる基とラジカル重合性を有する基をそれぞれ1つ以上有する化合物(b3)とする。
(メタ)アクリル酸(a12)のカルボキシル基と反応しうる基を2つ以上有する化合物(b1)としては、例えば、エポキシ基を2つ以上有するポリエポキシ化合物(b11)、ヒドロキシル基を2つ以上有するポリオール化合物(b12)及びアミノ基を2つ以上有するポリアミン化合物(b13)が挙げられる。
ポリエポキシ化合物(b11)としては、例えば、グリシジルエーテル[ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ピロガロールトリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル)、ポリエチレングリコール(Mw200~2,000)ジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコール(Mw200~2,000)ジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキシド1~20モル付加物のジグリシジルエーテル等];グリシジルエステル(フタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル等);グリシジルアミン(N,N-ジグリシジルアニリン、N,N-ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルキシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン等);脂肪族エポキシド(エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等);脂環式エポキシド(リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等)が挙げられる。
ポリオール化合物(b12)としては、例えば、低分子多価アルコール{炭素数2~20の脂肪族及び脂環式のジオール[エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9-ノナンジオール、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4’-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等];炭素数8~15の芳香環含有ジオール[m-及びp-キシリレングリコール、1,4-ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等];炭素数3~8のトリオール(グリセリン、トリメチロールプロパン等);4価以上の多価アルコール[ペンタエリスリトール、α-メチルグルコシド、ソルビトール、キシリット、マンニット、グルコース、フルクトース、ショ糖、ジペンタエリスリトール、ポリグリセリン(重合度2~20)等]等}及びこれらのアルキレン(炭素数2~4)オキサイド付加物(重合度=2~30)等が挙げられる。
ポリアミン化合物(b13)としては、炭素数2~36の脂肪族ポリアミン[エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン及びヘキサエチレンヘプタミン等のポリ(n=2~6)アルキレン(炭素数2~6)ポリ(n=3~7)アミン等]、炭素数6~20の脂環式ポリアミン(1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-又は2,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等)、炭素数6~20の芳香族ポリアミン(1,3-又は1,4-フェニレンジアミン、2,4-又は2,6-トリレンジアミン、4,4’-又は2,4’-メチレンビスアニリン等)、炭素数3~20の複素環式ポリアミン(2,4-ジアミノ-1,3,5-トリアジン、ピペラジン及びN-アミノエチルピペラジン等)、ヒドラジン又はその誘導体(二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド)及び炭素数2~20のアミノアルコール類(例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-2-メチルプロパノール及びトリエタノールアミン)等が挙げられる。
ラジカル重合性を有する基を2つ以上有する化合物(b2)としては、例えばビニル基、ビニリデン基及びビニレン基からなる群から選ばれる少なくとも2個の基を有するポリビニル化合物(b21)が挙げられる。
ポリビニル化合物(b21)としては、例えば、末端にビニル基及び/又はビニリデン基を合計2個以上有する炭化水素(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等)、ビニルエーテル[ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、ピロガロールトリビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ポリエチレングリコール(Mw200~2,000)ジビニルエーテル、ポリプロピレングリコール(Mw200~2,000)ジビニルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキシド1~20モル付加物のジビニルエーテル等];ビニルエステル(フタル酸ジビニル、トリメリット酸トリビニル、ダイマー酸ジビニル、アジピン酸ジビニル等;アリルエステル(フタル酸ジアリル、トリメリット酸トリアリル、ダイマー酸ジアリル、アジピン酸ジアリル等);ビニルアミン(N,N-ジビニルアニリン、N,N-ジビニルトルイジン、N,N,N’,N’-テトラビニルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラビニルキシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジビニルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラビニルヘキサメチレンジアミン等);ジ(メタ)アクリレート(1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート)等が挙げられる。
カルボキシル基と反応しうる基と、ラジカル重合性を有する基とをそれぞれ1つ以上有する化合物(b3)としては、例えば、1つのエポキシ基と、ビニル基、ビニリデン基又はビニレン基のいずれか1つを有するエポキシビニル化合物(b31)が挙げられる。
エポキシビニル化合物(b31)としては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(3-ビニルベンジル)グリシジルエーテル、(4-ビニルベンジル)グリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテルが挙げられる。
単量体組成物を重合する方法としては、公知の重合方法(塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等)を用いることができる。
単量体組成物を重合する際には、公知の重合開始剤〔アゾ系開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル等)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等]、パーオキシド系開始剤(ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド等)]等〕を使用して行うことができる。
溶液重合に使用される溶媒としては、例えば、エステル(炭素数2~8、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチル)、アルコール(炭素数1~8、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール及びオクタノール)、炭素数5~8の直鎖、分岐又は環状構造を持つ炭化水素(例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、トルエン及びキシレン)、アミド[例えばN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記)及びジメチルアセトアミド]、エーテル(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル)及びケトン(炭素数3~9、例えばメチルエチルケトン)が挙げられる。
乳化重合及び懸濁重合における分散媒としては、水、アルコール(例えばエタノール)、エステル(例えばプロピオン酸エチル)、軽ナフサ等が挙げられる。
乳化剤としては、高級脂肪酸(炭素数10~24)金属塩(例えばオレイン酸ナトリウム及びステアリン酸ナトリウム)、高級アルコール(炭素数10~24)硫酸エステル金属塩(例えばラウリル硫酸ナトリウム)、エトキシ化テトラメチルデシンジオール、メタクリル酸スルホエチルナトリウム、メタクリル酸ジメチルアミノメチル等が挙げられる。
さらに安定剤として、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等を加えてもよい。
単量体組成物を重合する際には、公知の連鎖移動剤、例えば、メルカプト化合物(ドデシルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン等)及びハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、四臭化炭素、塩化ベンジル等)を使用できる。
被覆層を構成する電極活物質被覆用樹脂は、必要に応じて、後述する導電助剤を含んでいてもよい。
(固体有機電解質)
正極活物質層6および負極活物質層7に含有していてもよい固体有機電解質としては、常温よりも高い融点を有する低分子量成分を主成分とするものが好ましく、常温よりも高く且つ40℃以下の融点を有する低分子量成分を主成分とすることがより好ましい。固体有機電解質が常温よりも高い融点を有する低分子量成分を主成分とするものであると、正極活物質粒子同士(または負極活物質粒子同士)の界面の結着が良好となる。
常温よりも高い融点を有する低分子量成分としては、例えば、エチレンカーボネート(EC、融点36.4℃)などの環状カーボネート類が挙げられる。このような環状カーボネート類を主成分として用いることにより、高い作動電圧下においても正極活物質層6および負極活物質層7の電気分解が抑制され、広い電位窓を実現できる。
固体有機電解質は、イオン伝導度向上の観点から、後述する非水溶媒から選択される一種又は複数種を含有してもよい。
(導電助剤)
正極活物質層6および負極活物質層7に含有していてもよい導電助剤としては、特に制限されないが、例えば、金属[ニッケル、アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト及びカーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等]が挙げられる。また、これらの導電助剤のうちから選択される1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの合金又は金属酸化物を用いてもよい。
導電助剤としては、電気的安定性の観点から、アルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、銅、チタン及びこれらの混合物が好ましく、より好ましくは銀、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。
導電助剤としては、粒子系セラミック材料、樹脂材料の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をめっき等でコーティングしたものでもよい。
(粘着性樹脂)
正極活物質層6および負極活物質層7は、公知の溶液乾燥型の電極用バインダではなく、粘着性樹脂を含むことが好ましい。溶液乾燥型の電極用バインダとは、溶媒成分を揮発させることで乾燥、固体化して正極活物質粒子同士(または負極活物質粒子同士)を強固に固定するものを意味する。一方、粘着性樹脂は、粘着性(水、溶媒、熱等を使用せずに僅かな圧力を加えることで接着する性質)を有する樹脂を意味する。
正極活物質層6(および/または負極活物質層7)が、公知の電極用バインダを含む場合、正極活物質層6(および/または負極活物質層7)を形成する際にバインダを乾燥させて正極活物質粒子同士(または負極活物質粒子同士)を一体化する必要がある。これに対し、粘着性樹脂を含む場合、乾燥工程を行うことなく正極活物質層6(および/または負極活物質層7)を形成できる。乾燥工程を行わない場合、加熱による正極活物質層6(および/または負極活物質層7)の収縮および亀裂の発生がないため好ましい。また、乾燥工程を行わない場合、乾燥工程を行う場合と比較して、製造工程を簡略化できるため、好ましい。
粘着性樹脂としては、被覆層を構成する電極活物質被覆用樹脂に、少量の有機溶剤を混合してそのガラス転移温度を室温以下に調整したもの、及び、特開平10-255805公報等に粘着剤として記載されたものを好適に用いることができる。
(電極用バインダ)
溶液乾燥型の公知の電極用バインダとしては、デンプン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
「セパレータ」
セパレータ8は、電解液を保持して正極と負極との間のリチウムイオン伝導性を確保する機能、および正極と負極との間の隔壁としての機能を有する。セパレータ8としては、例えば、電解液を吸収保持するポリマー、繊維などからなる多孔性セパレータ、不織布セパレータ等公知のものを用いることができる。
「枠状部材」
枠状部材3は、融点が75℃以上90℃以下のポリオレフィンからなるものであることが好ましい。融点が75以上90℃以下のポリオレフィンは、分子内に極性基を有するものであってもよく、極性基を有しないものであってもよい。
極性基としては、ヒドロキシ基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、ホルミル基(-CHO)、カルボニル基(=CO)、アミノ基(-NH)、チオール基(-SH)、1,3-ジオキソ-3-オキシプロピレン基等が挙げられる。
枠状部材3の一部は、耐熱性環状支持部材で構成されていてもよい。枠状部材3の一部が耐熱性環状支持部材で構成されていると、枠状部材3の機械的強度及び耐熱性が高くなる。
耐熱性環状支持部材は、正極集電体4、負極集電体5、セパレータ8との接着性が低いため、枠状部材3の厚さ方向の中央部に配置されることが好ましい。すなわち、平面視形状が互いに同一の、融点が75℃以上90℃以下のポリオレフィンを含む層、耐熱性環状支持部材、融点が75℃以上90℃以下のポリオレフィンを含む層が、厚み方向にこの順で配置されることが好ましい。上記配置によれば、枠状部材3に機械的強度及び耐熱性を付与しつつ、正極集電体4、負極集電体5、セパレータ8との接着性を高めることができる。
耐熱性環状支持部材に使用される材料としては、例えば、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂及びポリイミド等)、エンジニアリング樹脂[ポリアミド(ナイロン6 溶融温度:約230℃、ナイロン66 溶融温度:約270℃等)、ポリカーボネート(PCともいう 溶融温度:約150℃)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEKともいう 溶融温度:約330℃)等]及び高融点熱可塑性樹脂{ポリエチレンテレフタレート(PETともいう 溶融温度:約250℃)、ポリエチレンナフタレート(PENともいう 溶融温度:約260℃)及び高融点ポリプロピレン(溶融温度:約160~170℃)等}等が挙げられる。高融点熱可塑性樹脂とは、JIS K7121-1987に準拠して示差走査熱量測定によって測定される溶融温度が150℃以上の熱可塑性樹脂を指す。
耐熱性環状支持部材には、フィラーが含まれていてもよい。耐熱性環状支持部材がフィラーを含むことにより、溶融温度が向上する。上記フィラーとしては、ガラス繊維等の無機フィラー及び炭素繊維等が挙げられる。
(外装体)
外装体101としては、例えば、可撓性を有する絶縁フィルムからなるものを用いることができる。外装体101は、絶縁フィルムからなるものに限定されるものではなく、例えば、ラミネートフィルムからなるものであってもよい。外装体101の材料として使用されるラミネートフィルムとしては、例えば、外側にナイロンフィルム、中心にアルミニウム箔、内側に変性ポリプロピレンなどの接着層を有した3層ラミネートフィルムを好ましく用いることができる。
(電流取り出し部)
図2に示すように、電流取り出し部102は、電池セル1の積層方向両端に設けられている。電流取り出し部102は、外装体101を貫通して、正極集電体4または負極集電体5に接して配置され、正極集電体4または負極集電体5と電気的に接続されている。電流取り出し部102は、例えば、銅、アルミニウムなどの導電材料で形成できる。
(電解液)
正極活物質層6および負極活物質層7に含まれる電解液は、非水溶媒に電解質が溶解したものである。
非水溶媒としては、公知の非水電解液に用いられている非水溶媒等を使用できる。例えば、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類、ラクトン化合物、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物が挙げられる。
電解質としては、公知の非水電解液に用いられている電解質等を使用できる。例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの電解質のうち、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から、LiPFであるのが好ましい。
本実施形態においては、電解液として、ゲルポリマー電解質を用いてもよい。ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、電解液が注入されたものである。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HEP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。
[リチウムイオン電池モジュールの製造方法]
次に、図2に示すリチウムイオン電池モジュール100の製造方法について説明する。
まず、図3に示す電池セル1を製造する。電池セル1の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、以下に示す方法により製造できる。
正極活物質層6となる成分からなる正極組成物を製造する。正極組成物は、例えば、正極活物質粒子と、必要に応じて含有される固体有機電解質、導電助剤、粘着性樹脂、溶液乾燥型の公知の電極用バインダ(結着剤ともいう)から選ばれる一つまたは複数の材料とを混合する方法により製造できる。
次に、正極集電体4上に、枠状部材3を配置し、枠状部材3の内側に正極組成物を配置する。その後、ローラーなどを用いて正極組成物を加圧し、必要に応じて加熱する。このことにより正極活物質層6が得られる。
また、負極活物質層7となる成分からなる負極組成物を製造する。負極組成物は、例えば、負極活物質粒子と、必要に応じて含有される固体有機電解質、導電助剤、粘着性樹脂、溶液乾燥型の公知の電極用バインダ(結着剤ともいう)から選ばれる一つまたは複数の材料とを混合する方法により製造できる。
次に、負極集電体5上に、枠状部材3を配置し、枠状部材3の内側に負極組成物を配置する。その後、ローラーなどを用いて負極組成物を加圧し、必要に応じて加熱する。このことにより負極活物質層7が得られる。
その後、図3に示すように、正極活物質層6と負極活物質層7とを、セパレータ8を介して対向配置する。このことにより、図3に示す電池セル1が得られる。
その後、同様にして所定数の電池セル1を製造し、厚さ方向に積層する。続いて、積層された電池セル1を、電解液とともに外装体101に入れて封入し、電流取り出し部102を設ける。
以上の工程により、図2に示すリチウムイオン電池モジュール100が得られる。
[リチウムイオン二次電池の放電制御方法]
次に、図1に示すリチウムイオン二次電池システム10に含まれるリチウムイオン電池モジュール100に備えられている電池セル1の放電制御方法について説明する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池の放電制御方法では、厚み250μm以上の正極活物質層6を備える正極と、厚み250μm以上の負極活物質層7を備える負極と、正極と負極との間に配置されたセパレータ8とを備える電池セル1(リチウムイオン二次電池)が、厚さ方向に複数積層されているリチウムイオン電池モジュール100を用いる。
本実施形態の放電制御方法で用いる電池セル1は、正極活物質層6および負極活物質層7の厚みが厚いため、充放電できるリチウムイオン量が多く、エネルギー密度が高い。例えば、電池セル1は、正極と負極とが対向している部分における単位面積当たりの容量が7.3Ah/cm以上のものである。電池セル1は、例えば、電流密度2.1mA/cm以上で放電される。
本実施形態においては、制御部14が、リチウムイオン電池モジュール100と電気製品13との間の電気的接続を制御して、電池セル1に通電すると、電池セル1の放電が開始され、リチウムイオン電池モジュール100から電気製品13に電力が供給される(図1参照)。
本実施形態では、電池セル1の放電が開始されると、制御部14が、連続的または間欠的に予め決定された休止条件を満たすか否かを判断する。休止条件は、電気製品13の用途等に応じて適宜決定される。
制御部14が、休止条件を満たさないと判断した場合、電池セル1の放電が継続される。一方、制御部14が休止条件を満たすと判断した場合、制御部14は、放電中のリチウムイオン電池モジュール100と電気製品13との間の電気的接続を制御して、放電中の電池セル1への通電を休止する(休止ステップ)。
放電中の電池セル1への通電が休止されると、制御部14が、連続的または間欠的に予め決定された再開条件を満たすか否かを判断する。再開条件としては、例えば、休止ステップを開始してからの経過時間(放電休止時間)などを用いることができる。放電休止時間は、例えば、0.5~15分間とすることができ、電気製品13の用途等に応じて適宜決定される。
制御部14が、再開条件を満たさないと判断した場合、リチウムイオン電池モジュール100への通電の休止が継続される。一方、制御部14が、再開条件を満たすと判断した場合、制御部14は、放電中のリチウムイオン電池モジュール100と電気製品13との間の電気的接続を制御して、通電を休止した電池セル1への通電を再開し、電池セル1の放電が再開される(再開ステップ)。
本実施形態では、電池セル1の放電が再開されると、電池セル1の放電が開始されたときと同様に、制御部14が、連続的または間欠的に予め決定された休止条件を満たすか否かを判断する。
その後、上記と同様にして、上述した休止ステップと再開ステップとを、この順に複数回繰り返し行うことが好ましい。休止ステップおよび再開ステップを行う回数は、特に限定されるものではなく、それぞれ1回のみであってもよく、電気製品13の用途等に応じて適宜決定される。本実施形態では、電池セル1の取り出し容量を効果的に増加させるために、上述した休止ステップと再開ステップを、この順に複数回繰り返し行う。
休止ステップと再開ステップとを、この順に複数回繰り返し行う場合、各回の休止ステップにおける放電休止時間は全て同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよいし、一部の回のみ同じであってもよい。
また、休止ステップと再開ステップとを、この順に複数回繰り返し行う場合、電池セル1の放電を再開してから休止ステップを行うまでの時間は、電池セル1の放電を開始してから1回目の休止ステップを行うまでの時間と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、休止ステップを3回以上行う場合、電池セル1の放電を再開してから2回目の休止ステップを行うまでの時間と、電池セル1の放電を再開してから3回目以降の各休止ステップを行うまでの時間とは、全て同じであってもよいし、それぞれ異なっていてもよいし、一部のみ同じであってもよい。
本実施形態においては、放電末期における電圧低下を効果的に緩和するために、休止ステップを2回以上行う場合には、電池セル1の放電を再開してから次の休止ステップを行うまでの時間を、電池セル1の放電を開始してから1回目の休止ステップを行うまでの時間よりも短くし、かつ休止ステップを行う度に徐々に短くしていくことが好ましい。
次に、本実施形態のリチウムイオン二次電池の放電制御方法を行うことによる作用について、図4~図8を用いて説明する。
図4~図7において、符号1は本実施形態のリチウムイオン電池モジュール100の有する電池セルを示している。また、符号2は電解液中のリチウムイオンを示し、符号8はセパレータを示している。また、符号4は正極集電体を示し、符号6は正極活物質層を示している。符号5は負極集電体を示し、符号7は負極活物質層を示している。
電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度は、電池セル1の放電を行うことによって変化する。本実施形態の放電制御方法では、正極活物質層6および負極活物質層7の厚みが厚い電池セル1を用いるため、放電することによって電解液中のリチウムイオン2の濃度が不均一になりやすい。
図4は、放電が開始された直後の電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度を示した模式図である。
図4に示すように、電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度は、電池セル1の放電に起因する影響をほとんど受けておらず、略均一となっている。
図5は、放電中の電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度変化を説明するための模式図である。
図5において矢印で示すように、負極活物質層7に存在する電解液中のリチウムイオン2が、セパレータ8を通過して正極活物質層6に移動する。また、負極活物質層7中では、リチウムイオン2が負極活物質粒子(不図示)から放出される。一方、正極活物質層6中では、リチウムイオン2が正極活物質粒子(不図示)に吸蔵される。
本実施形態では、負極活物質層7が、厚み250μm以上の厚膜であるので、負極活物質層7中の負極活物質粒子数が多い。このため、セパレータ8を通過して正極活物質層6に移動する電解液中のリチウムイオン2よりも、負極活物質粒子から電解液中に放出されるリチウムイオン2が多くなりやすい。また、本実施形態では、正極活物質層6が、厚み250μm以上の厚膜であるので、正極活物質層6中の正極活物質粒子数が多い。このため、セパレータ8を通過して負極活物質層7から正極活物質層6に移動する電解液中のリチウムイオン2よりも、正極活物質粒子に吸蔵されるリチウムイオン2が多くなりやすい。これらのことから、電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度は、不均一になりやすく、濃度勾配が大きくなりやすい。
図6は、放電末期の電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度分布を説明するための模式図である。
図6に示すように、放電末期における電解液中のリチウムイオン2の濃度は、負極活物質層7中よりも正極活物質層6中の方が低くなっている。また、負極活物質層7中でも正極活物質層6中でも、電解液中のリチウムイオン2の濃度は、負極集電体5側が高く、正極集電体4側が低くなっている。
より詳細には、負極活物質層7中では、負極活物質粒子から放出されるリチウムイオン2によって、負極集電体5近傍のリチウムイオン2が多くなっている。また、リチウムイオン2がセパレータ8を通過することにより、負極活物質層7中では、セパレータ8近傍のリチウムイオン2が少なくなっている。
また、正極活物質層6中では、リチウムイオン2がセパレータ8を通過することにより、セパレータ8近傍のリチウムイオン2が多くなっているものの、リチウムイオン2が正極活物質粒子に吸蔵されることにより、正極集電体4近傍のリチウムイオン2が少なくなっている。
また、セパレータ8近傍の電解液中に着目すると、放電によって電解液中のリチウムイオン2がセパレータ8を通過するため、負極活物質層7側のリチウムイオン2が少なく、正極活物質層6側のリチウムイオン2が多くなっている。
電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2が、図6に示すような濃度分布であると、負極集電体5から正極集電体4へのリチウムイオン2の移動が生じにくい。その結果、放電末期において電池セル1の抵抗が高くなり、電池セル1の取り出し容量が減少する。
図7は、電池セル1への通電を休止した場合の電池セル1内における電解液中のリチウムイオン2の濃度変化を説明するための模式図である。
図7に示すように、電池セル1への通電を休止すると、電池セル1内の電解液中のリチウムイオン2は、濃度が均一になるように移動する。
具体的には、負極活物質層7に存在する電解液中のリチウムイオン2が、セパレータ8を通過して正極活物質層6に移動するとともに、負極活物質層7内および正極活物質層6内で、電解液中のリチウムイオン2が負極集電体5側から正極集電体4側に移動する。その結果、電池セル1への通電を休止すると、図7に示すように、放電中の電池セル1において生じた電解液中のリチウムイオン2の濃度勾配が緩和される。電池セル1内の電解液中におけるリチウムイオン2の濃度は、休止してからの時間が長いほど、均一に近づく。
したがって、電池セル1への通電を休止した後に再開すると、電解液中のリチウムイオン2の濃度勾配に起因する抵抗上昇が軽減され、休止前よりも電池セル1の抵抗が低くなる。その結果、電池セル1の取り出し容量が増加する。
よって、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の放電制御方法を用いて放電し、上述した休止ステップと再開ステップとを、この順に複数回繰り返し行った場合、放電時間と電圧との関係は、例えば、図8に示すグラフに示される関係となる。
図8は、本発明の実施形態に係るリチウムイオン二次電池の放電制御方法を用いて放電した場合と、休止ステップを行わない場合とにおける放電時間と電圧との関係の一例を示したグラフである。図8に示す実線は、本発明のリチウムイオン二次電池の放電制御方法を用いた場合の例である。図8に示す点線は、休止ステップを行わない場合の例である。
図8に示す実線には、複数のピークがある。このピークは、上述した休止ステップを行ったことによって得られたものである。図8に示されるように、休止ステップを行うことにより、休止ステップを行う前よりも電圧が高くなっている。すなわち、休止ステップを行うことにより、電圧低下が緩和され、終止電圧に達するまでの時間が長くなり、取り出し容量が増加している。また、図8に示す例では、放電末期に休止ステップを複数回、休止ステップと次の休止ステップとの間の時間を徐々に短くして行うことにより、放電末期における電圧低下が効果的に緩和され、終止電圧に達するまでの時間がより長くなり、取り出し容量がより一層増加している。
本実施形態のリチウムイオン二次電池の放電制御方法は、放電中の電池セル1への通電を休止する休止ステップと、通電を休止した電池セル1への通電を再開する再開ステップとを含む。休止ステップでは、放電中の電池セル1において生じた電解液中のリチウムイオン2の濃度勾配が緩和される。このため、再開ステップでは、電解液中のリチウムイオン2の濃度勾配に起因する抵抗上昇が軽減される。その結果、厚み250μm以上の正極活物質層6を備える正極と、厚み250μm以上の負極活物質層7を備える負極とを備える充放電できるリチウムイオン量が多い電池セル1であっても、放電末期の抵抗上昇が抑制され、取り出し容量が増加する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池システム10は、厚み250μm以上の正極活物質層6を備える正極と、厚み250μm以上の負極活物質層7を備える負極とを備える充放電できるリチウムイオン量が多い電池セル1と、放電中の電池セル1への通電を間欠的に休止する制御部14とを含む。このため、本実施形態のリチウムイオン二次電池システム10に含まれる電池セル1では、放電中に生じた電解液中のリチウムイオン2の濃度勾配が、通電が休止されることにより緩和される。よって、通電が休止された後の放電におけるリチウムイオン2の濃度勾配に起因する抵抗上昇が軽減される。その結果、放電末期の抵抗上昇が抑制され、取り出し容量が増加する。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(実施例1)
以下に示す方法により、電池セルを製造し、評価した。
<電極活物質被覆用樹脂の作製>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロート及び窒素ガス導入管を付した4つ口コルベンに、トルエン65部を仕込み、75℃に昇温した。次いで、ラウリルメタクリレート80部、メチルメタクリレート15部、メタクリル酸4.6部及び1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート0.4部を配合したモノマー配合液と、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.03部をトルエン5部に溶解した開始剤溶液とを、4つ口コルベン内に窒素を吹き込みながら、滴下ロートで2時間かけて攪拌しながら連続的に滴下し、ラジカル重合を行った。滴下終了後、75℃に昇温し、反応を1時間継続した。
さらに、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.01部をトルエン1部に溶解した開始剤溶液を、滴下ロートで投入し、反応を3時間継続し、共重合体溶液を得た。得られた共重合体溶液をテフロン(登録商標)製のバットに移し、80℃、0.09MPaで3時間、減圧乾燥してトルエンを留去した。次いで、100℃に昇温して、1時間、さらに120℃に昇温して、0.01MPaで1時間、減圧乾燥器で加熱を行い、電極活物質被覆用樹脂を作製した。
<正極活物質粒子の作製>
電極活物質被覆用樹脂1部をトルエン3部に溶解した。
正極活物質粒子(LiNi0.8Co0.15Al0.05粉末、体積平均粒子径7μm)92部を、万能混合機に入れ、室温、720rpmで撹拌しながら、トルエンに溶解した電極活物質被覆用樹脂12部を2分間かけて滴下し、さらに5分間撹拌した。
次いで、撹拌した状態で、導電助剤であるアセチレンブラック3部及びカーボンナノファイバー1部を、分割しながら2分間で投入し、30分間撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を120℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、導電助剤を含む電極活物質被覆用樹脂が正極活物質粒子に結着してなる被覆層を有する被覆活物質粒子である粒径200μm以下の正極活物質粒子を得た。
<樹脂集電体の作製>
2軸押出機にて、ポリプロピレン70部、導電助剤であるカーボンナノチューブ25部及び分散剤[商品名「ユーメックス1001」、三洋化成工業株式会社製]5部を、200℃、200rpmの条件で溶融混練して樹脂混合物を得た。得られた樹脂混合物を、Tダイ押出しフィルム成形機に通して、それを延伸圧延することにより、膜厚50μmの樹脂集電体用導電性フィルムを得た。
次いで、得られた樹脂集電体用導電性フィルムを、縦4.0cm、横3.0cmとなるように切断し、片面にニッケル蒸着を施して、樹脂集電体を得た。
その後、樹脂集電体に、Cu箔からなる電流取り出し用の端子(縦5mm、横3cm)を接続した。
<電解液の作製>
エチレンカーボネート(EC)とプロピレンカーボネート(PC)との混合溶媒(体積比率1:1)に、電解質であるLiN(FSOを2.0mol/Lの割合で溶解して、電解液を作製した。
<正極の作製>
作製した正極活物質粒子を196mg測り取り、外径15mm、内径14mmの打錠治具に入れ、100MPaの圧力で10秒間加圧し、正極前駆体を作製した。得られた正極前駆体を、上記の樹脂集電体のニッケル蒸着を施した面に積層し、厚み450μmの正極活物質層を得た。その後、正極活物質層に上記の電解液を注液し、正極を得た。
<負極活物質粒子の作製>
電極活物質被覆用樹脂1部をトルエン3部に溶解した。
負極活物質粒子(ハードカーボン粉末、体積平均粒子径20μm)80部を、万能混合機に入れ、室温、720rpmで撹拌しながら、トルエンに溶解した電極活物質被覆用樹脂32部を2分間かけて滴下し、さらに5分間撹拌した。
次いで、撹拌した状態で、導電助剤であるアセチレンブラック10部及びカーボンナノファイバー2部を、分割しながら2分間で投入し、30分間撹拌を継続した。
その後、撹拌を維持したまま0.01MPaまで減圧し、次いで撹拌と減圧度を維持したまま温度を120℃まで昇温し、撹拌、減圧度及び温度を8時間維持して揮発分を留去した。
得られた粉体を目開き200μmの篩いで分級し、導電助剤を含む電極活物質被覆用樹脂が負極活物質粒子に結着してなる被覆層を有する被覆活物質粒子である粒径200μm以下の負極活物質粒子を得た。
<負極の作製>
作製した負極活物質粒子を117mg測り取り、外径16mm、内径15mmの打錠治具に入れ、100MPaの圧力で10秒間加圧し、負極前駆体を作製した。得られた負極前駆体を、上記の樹脂集電体のニッケル蒸着を施した面に積層し、厚み600μmの負極活物質層を得た。その後、負極活物質層に上記の電解液を注液し、負極を得た。
その後、正極活物質層と負極活物質層とを、厚さ10μmのセパレータ(アラミドコートPEセパレータ(厚み10μm、空隙率45%))を介して対向配置し、実施例1の電池セルを得た。
得られた電池セルを、正極の樹脂集電体および負極の樹脂集電体に接続された電流取り出し用の端子を外部に露出させた状態で、外装体に封入し、ラミネートセルとした。外装体としては、アルミニウム箔の両面に絶縁フィルムが配置されたラミネートフィルムからなるものを用いた。
このようにして作成したラミネートセル内の電池セルを、正極の樹脂集電体および負極の樹脂集電体に接続された電流取り出し用の端子を介して、電池充放電装置に接続し、0.5mA/cmで4.2VまでCCCV充電(0.1mAでカットオフ)を行った。その後、0.5mA/cmで放電を行った。この時の放電容量を、電池セルの正極活物質層と負極活物質層との対抗面積(直径15mmの円形の面積)で除した単位面積当たりの電池セルの容量(対抵部セル容量)は、14.7mAh/cmであった。
その後、電池セルを再度、0.5mA/cmで4.2VまでCCCV充電(0.1mAでカットオフ)し、0.3C(電流密度4.41mA/cm)で放電を行い、放電開始後15分経過する毎に、放電中の電池セルへの通電を0.5分間休止する(通電休止時間0.5分)休止ステップと、通電を休止した電池セルへの通電を再開し、電池セルの放電を再開する再開ステップとを、終止電圧に達するまで交互に行った。
(実施例2)
休止ステップにおいて、放電中の電池セルへの通電を1分間休止したこと以外は、実施例1と同様にして電池セルの放電を行った。
(実施例3)
休止ステップにおいて、放電中の電池セルへの通電を2分間休止したこと以外は、実施例1と同様にして電池セルの放電を行った。
(実施例4)
休止ステップにおいて、放電中の電池セルへの通電を15分間休止したこと以外は、実施例1と同様にして電池セルの放電を行った。
(比較例1)
休止ステップを行わないこと以外は、実施例1と同様にして電池セルの放電を行った。
(比較例2)
正極活物質粒子の使用量を53.3mgとし、厚み120μmの正極活物質層を得たことと、負極活物質粒子の使用量を31.8mgとし、厚み160μmの正極活物質層を得たこと以外は、実施例1と同様にして電池セルを形成し、実施例1と同様にしてラミネートセルとした。
このようにして作成したラミネートセル内の電池セルを、正極の樹脂集電体および負極の樹脂集電体に接続された電流取り出し用の端子を介して、電池充放電装置に接続し、0.5mA/cmで4.2VまでCCCV充電(0.1mAでカットオフ)を行った。その後、0.5mA/cmで放電を行った。この時の放電容量を、電池セルの正極活物質層と負極活物質層との対抗面積(直径15mmの円形の面積)で除した単位面積当たりの電池セルの容量(対抵部セル容量)は、4.0mAh/cmであった。
その後、電池セルを再度、0.5mA/cmで4.2VまでCCCV充電(0.1mAでカットオフ)し、0.3C(電流密度1.2mA/cm)で放電を行い、放電開始後15分経過する毎に、放電中の電池セルへの通電を0.5分間休止する(通電休止時間0.5分)休止ステップと、通電を休止した電池セルへの通電を再開し、電池セルの放電を再開する再開ステップとを、終止電圧に達するまで交互に行った。
(比較例3)
休止ステップにおいて、放電中の電池セルへの通電を1分間休止したこと以外は、比較例2と同様にして電池セルの放電を行った。
(比較例4)
休止ステップにおいて、放電中の電池セルへの通電を2分間休止したこと以外は、比較例2と同様にして電池セルの放電を行った。
(比較例5)
休止ステップにおいて、放電中の電池セルへの通電を15分間休止したこと以外は、比較例2と同様にして電池セルの放電を行った。
(比較例6)
休止ステップを行わないこと以外は、比較例2と同様にして電池セルの放電を行った。
実施例1~実施例4、比較例1~比較例6について、電池セルの取り出し容量を算出した。その結果を表1に示す。
Figure 2022113565000001
表1に示すように、休止ステップおよび再開ステップを行った実施例1~実施例4では、休止ステップを行わなかった比較例1と比較して、電池セルの取り出し容量が大きかった。
また、実施例1~実施例4より、休止ステップにおいて、通電を休止する時間(通電休止時間)を長くするほど、電池セルの取り出し容量が大きくなることが分かった。
また、表1に示すように、正極活物質層の厚さが120μmであり、負極活物質層の厚さが160μmである比較例2~比較例6では、休止ステップを行っても、取り出し容量を大きくする効果が得られなかった。
1…電池セル(リチウムイオン二次電池)、2…リチウムイオン、3…枠状部材、3a…開口、4…正極集電体、5…負極集電体、6…正極活物質層、7…負極活物質層、8…セパレータ、10…リチウムイオン二次電池システム、11…電圧センサ、12…電流センサ、13…電気製品、14…制御部、100…リチウムイオン電池モジュール、101…外装体、102…電流取り出し部。

Claims (6)

  1. 厚み250μm以上の正極活物質層を備える正極と、厚み250μm以上の負極活物質層を備える負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを備えるリチウムイオン二次電池の放電を制御する方法であり、
    放電中の前記リチウムイオン二次電池への通電を休止する休止ステップと、
    通電を休止した前記リチウムイオン二次電池への通電を再開する再開ステップと、を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池の放電制御方法。
  2. 前記リチウムイオン二次電池は、電流密度2.1mA/cm以上で放電され、前記正極と前記負極とが対向している部分における単位面積当たりの容量が7.3Ah/cm以上である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の放電制御方法。
  3. 前記休止ステップと前記再開ステップとを、この順に複数回繰り返し行う請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の放電制御方法。
  4. 前記休止ステップにおいて、前記放電中の前記リチウムイオン二次電池への通電を、0.5~15分間休止する請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の放電制御方法。
  5. 前記リチウムイオン二次電池が厚さ方向に複数積層されている請求項1~請求項4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池の放電制御方法。
  6. リチウムイオン二次電池と、
    放電中の前記リチウムイオン二次電池への通電を間欠的に休止する制御部と、
    を含み、
    前記リチウムイオン二次電池は、厚み250μm以上の正極活物質層を備える正極と、厚み250μm以上の負極活物質層を備える負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを備えるリチウムイオン二次電池システム。
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