以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、図面の厚み比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
図1は、リチウムイオン二次電池システム100の全体構成を説明するためのブロック図、図2および図3は、リチウムイオン二次電池システム100の加圧部40を示す斜視図および側面図である。
図1を参照して、本実施形態のリチウムイオン二次電池システム100は、概説すると、電極厚みが厚いリチウムイオン二次電池10と、リチウムイオン二次電池10を単電池の積層方向に拘束する加圧力をリチウムイオン二次電池10に付勢する加圧部40と、リチウムイオン二次電池10に充電する充電部50と、加圧部40および充電部50の作動を制御するコントローラ60(制御部に相当する)と、を有している。本実施形態のリチウムイオン二次電池10は、正極および負極のうち少なくとも一方の厚さが150μm以上である単電池を複数積層して構成されている。加圧部40は、加圧力の大きさを調節自在である。コントローラ60は、リチウムイオン二次電池10への充電を開始するときに、リチウムイオン二次電池10を単電池の積層方向に拘束している加圧力を放電時における第1の圧力よりも低くする必要性の有無を判断する。そして、コントローラ60は、低くする必要性が有ると判断したときには、加圧部40が付勢する加圧力を第1の圧力よりも低い第2の圧力にする。また、コントローラ60は、リチウムイオン二次電池10を第2の圧力によって拘束した状態において充電しているときに、加圧力を第1の圧力に復帰させる必要性の有無を判断する。そして、コントローラ60は、復帰させる必要性が有ると判断したときには、加圧部40が付勢する加圧力を第2の圧力よりも高い第1の圧力に復帰させる。以下、詳述する。なお、以下の説明においては、「リチウムイオン二次電池10」を単に「リチウム電池10」ともいう。
リチウムイオン二次電池システム100は、リチウム電池10と、インバータ71と、負荷70とを接続する回路を有している。インバータ71は、負荷70に供給する電圧を変更する。回路には、リチウム電池10の電圧を測定する電圧計62が並列に接続され、電流計61が直列に接続されている。電圧計62および電流計61は、コントローラ60に接続されている。電圧計62の測定値および電流計61の測定値は、それぞれコントローラ60に入力される。
充電部50は、リチウム電池10に接続された充電回路を有している。充電部50は、充電時には充電プラグ51を介して外部電源52に接続される。リチウム電池10の残存容量が低下した場合、外部電源52がコントローラ60および加圧部40を動作させるための電源となる。なお、リチウム電池10の残存容量がコントローラ60および加圧部40を動作させるために必要な量以上ある場合、リチウム電池10がコントローラ60および加圧部40を動作させるための電源となる。
リチウムイオン二次電池システム100は、リチウム電池10の温度を測定する温度センサー63、および経過時間を測定するタイマー64をさらに有している。温度センサー63およびタイマー64は、コントローラ60に接続されている。温度センサー63の測定値およびタイマー64の測定値は、それぞれコントローラ60に入力される。
加圧部40は、図2および3に示すように、下板42と、上板43と、下板42と上板43との間に可動自在に配置された規制板41と、加圧力の大きさを調節する調整部49とを有している。下板42と上板43とは、ボルトナット44によって固定されている。リチウム電池10は、下板42と規制板41との間に挟み込まれている。リチウム電池10は、下板42と規制板41とによって挟まれることによって、単電池の積層方向に拘束する加圧力が付勢される。なお、図2および3においては、リチウム電池10の負極タブ18および正極タブ19(図4参照)の図示を省略している。
加圧部40の調整部49は、下板42に対して規制板41を昇降し、下板42と規制板41との間隔を調整することによって、リチウム電池10に付勢される加圧力の大きさを調節する。調整部49は、締め付けトルクまたは流体圧力によって加圧力の大きさを調節することができる。図示する実施形態では、締め付けトルクを管理することによって、下板42と規制板41との間隔を調整し、加圧力の大きさを調節している。調整部49は、規制板41の四隅に設けられたボールねじ45と、ボールねじ45を回転駆動するモータ48とを有している。ボールねじ45は、下板42および上板43に対して回転自在に取り付けられたねじ軸46を有している。ねじ軸46の一部は、上板43から突出している。この突出した部分に、ギア列(不図示)を介してモータ48が接続されている。規制板41には、ボールねじ45のナット部47が固定されている。4つのボールねじ45のねじ軸46が正逆に回転されることによって、規制板41は、上板43と下板42との間において昇降移動する。この結果、下板42と規制板41との間隔が変わり、リチウム電池10に付勢される加圧力の大きさが調節される。加圧力はリチウム電池10の構造によって最適値は異なるが、例えば、0.5kg/cm2〜1kg/cm2が加わるように、締め付けトルクが調整される。
モータ48は4つのボールねじ45を同期して動作させるために、エンコーダ付きのサーボモータやステッピングモータなどを使用することが好ましい。コントローラ60はエンコーダからの信号により規制板41の位置を把握するとともに、4つのボールねじ45を同期させて、規制板41が傾いたりせずに移動させる。
コントローラ60は、CPU、信号の入出力部、RAMやROMなどのメモリなどを主体に構成されている。コントローラ60は、放電時に加圧部40によってリチウム電池10を拘束していた圧力(第1の圧力P1)の値をメモリに保持する。メモリには、加圧部40が付勢する加圧力として、第1の圧力P1よりも低い第2の圧力P2の値が保持されている。第2の圧力P2は、リチウム電池10の充電制御のときに使用される。なお、メモリに保持する第2の圧力P2の値は、特定の圧力値のほか、第1の圧力P1の値に乗算する比率(<1)でもよい。
次に、リチウム電池10について説明する。
図4は、リチウム電池10の一例を説明するための内部断面図である。
図4を参照して、リチウム電池10は、双極型電極がセパレーター14を介して積層されている。双極型電極は、一つの集電体11の一方の面に正極12が形成され、他方の面に負極13が形成されている。一つの単電池15は、正極12、セパレーター14、および負極13によって形成されている。発電要素16は、複数の単電池15が電気的に直列に接続されるように積層されている。発電要素16における最外層に位置する最外層集電体11a、11bは、片面のみに、負極13または正極12のいずれか一方が形成されている。最外層集電体11a、11bのさらに外側に、集電板18a、19bが設けられている。隣接する集電体11の間を絶縁するために、単電池15の外周にシール部材20が設けられている。これら各部材は、ラミネートシート17によって封止されている。集電板18aは、ラミネートシート17の外に延長され、負極タブ18を構成する。集電板19bは、ラミネートシート17の外に延長され、正極タブ19を構成する。
なお、集電板に代えて、最外層集電体11a、11bを厚くして、そのままラミネートシート17の外に延長して負極タブ18および正極タブ19としてもよい。また、最外層集電体は、片面のみに電極(正極12または負極13)を有する最外層専用の集電体11a、11bを用いるのに代えて、両面に電極(正極12および負極13)を有する集電体11を用いてもよい。
本実施形態のリチウム電池10は、正極12および負極13のうち少なくとも一方の厚さが150μm以上である単電池15を複数積層して構成されている。リチウム電池10を構成する各部材についての一例を挙げれば下記のとおりである。
集電体11は、例えば、金属箔によって構成することが可能である。金属は、例えば、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、銅などである。
集電体11は、金属によって構成する形態に限定されず、例えば、導電性高分子材料によって構成することが可能である。また、集電体11は、導電性フィラーと樹脂とを主に含む樹脂集電体から構成することもできる。
正極12は、正極活物質粒子を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。負極13は、負極活物質粒子を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
正極活物質粒子の構成材料は、例えば、リチウムと遷移金属との複合酸化物である。例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2およびLiMn2O4である。
負極活物質粒子の構成材料は、例えば、黒鉛、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体、コークス類、カーボン繊維、導電性高分子、スズ、シリコン、金属合金、リチウムと遷移金属との複合酸化物などである。高分子化合物焼成体は、例えば、フェノール樹脂およびフラン樹脂を焼成し炭素化したものである。コークス類は、例えば、ピッチコークス、ニードルコークス、石油コークスである。導電性高分子は、例えば、ポリアセチレン、ポリピロールである。金属合金は、例えば、リチウム−スズ合金、リチウム−シリコン合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−アルミニウム−マンガン合金である。リチウムと遷移金属との複合酸化物は、例えば、Li4Ti5O12である。
なお、正極12、負極13の材料は2種以上の活物質が併用されていてもよい。さらに、上記に例示した以外の正極活物質、負極活物質が用いられてもよいことは勿論である。
正極12および負極13には、添加剤としては、たとえば、バインダー、導電助剤、電解質塩(リチウム塩)、イオン伝導性ポリマー等が混合されうる。
導電助剤は、正極活物質層または負極活物質層の導電性を向上させるために配合される添加物である。導電助剤としては、たとえばアセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、気相成長炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。活物質層が導電助剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上に寄与しうる。
電解質塩(リチウム塩)としては、Li(C2F5SO2)2N)、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3等が挙げられる。
イオン伝導性ポリマーとしては、たとえば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。
正極12および負極13は、150〜1500μmの厚さを有する。これにより、多くの活物質を含ませることが可能となり、高容量化およびエネルギー密度向上が図られる。なお、正極12の厚さおよび負極13の厚さは、好ましくは、200〜950μm、さらに好ましくは250〜900μmである。
セパレーター14は、正極12と負極13との間に位置する多孔性(ポーラス)の絶縁体である。セパレーター14は、電解質が浸透することによって、イオンの透過性および電気伝導性を呈する。電解質は、例えば、ゲルポリマー系であり、電解液およびホストポリマーを有する。
電解液は、プロピレンカーボネートおよびエチレンカーボネートからなる有機溶媒、支持塩としてのリチウム塩(LiPF6)を含んでいる。有機溶媒は、その他の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類、テトラヒドロフラン等のエーテル類を適用することが可能である。リチウム塩は、その他の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3等の有機酸陰イオン塩を、適用することが可能である。
ホストポリマーは、HFP(ヘキサフルオロプロピレン)コポリマーを10%含むPVDF−HFP(ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体)である。ホストポリマーは、その他のリチウムイオン伝導性を持たない高分子や、イオン伝導性を有する高分子(固体高分子電解質)を適用することも可能である。その他のリチウムイオン伝導性を持たない高分子は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートである。イオン伝導性を有する高分子は、例えば、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシドである。
シール部材20の形成材料は、絶縁性、シール性、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよい。シール部材20は、例えば、熱可塑性樹脂からなる。具体的には、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂などが用いられ得る。
次に、上述したリチウムイオン二次電池システム100においてリチウム電池10に充電するときの制御について説明する。
図5は、リチウムイオン二次電池システム100の制御手順を示すフローチャートである。
リチウム電池10から放電しているとき、コントローラ60は、加圧部40の作動を制御し、リチウム電池10を拘束している加圧力Pを調整している。コントローラ60は、放電時に加圧部40によってリチウム電池10を拘束していた加圧力Pの値(第1の圧力P1)をメモリに保持している。
コントローラ60は、充電部50に充電プラグ51が差し込まれると(ステップS11)、メモリに保持された放電時の加圧力Pの値(第1の圧力P1)を読み出し、その値(第1の圧力P1)に基づいて加圧部40の作動を制御する(ステップS12)。加圧部40は、モータ48を駆動して規制板41を昇降移動させ、下板42と規制板41との間隔を調整する。加圧部40は、リチウム電池10に付勢される加圧力Pの大きさをメモリから読み出した第1の圧力P1に調節する。
コントローラ60は、温度センサー63によってリチウム電池10の温度Tを測定する(ステップS13)。
コントローラ60は、リチウム電池10の加圧力Pを放電時における第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を判断する(ステップS14)。
本実施形態では、コントローラ60は、この必要性の有無の判断を、温度センサー63によって測定されたリチウム電池10の温度Tに基づいて行う。コントローラ60は、リチウム電池10の温度Tが第1設定温度T1よりも低いときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が有ると判断する(ステップS14:YES)。コントローラ60は、リチウム電池10の温度Tが第1設定温度T1以上のときには、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が無いと判断する(ステップS14:NO)。
第1設定温度T1は適宜の温度を設定することができるが、電極厚みが厚いリチウム電池10においてリチウムイオンの輸送抵抗を低減する観点から選択することができる。第1設定温度T1は、例えば20〜35℃の範囲の温度から選択して設定される。
コントローラ60は、低くする必要性が有ると判断したときには(ステップS14:YES)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第1の圧力P1よりも低い第2の圧力P2にする(ステップS15)。具体的には、コントローラ60は、第2の圧力P2に基づいて加圧部40の作動を制御する。加圧部40は、モータ48を駆動して規制板41を昇降移動させ、下板42と規制板41との間隔を放電時よりも広くする。これによって、加圧部40は、リチウム電池10に付勢される加圧力Pの大きさを第1の圧力P1よりも低い第2の圧力P2に調節する。
第2の圧力P2は電極厚みなどに応じて適宜の値を設定することができるが、充電時にリチウム電池10の内部抵抗を上昇させ、リチウム電池10の温度を高くして、リチウムイオンの移動速度を上昇させる観点から選択することができる。
その後、コントローラ60は、リチウム電池10への充電を開始する(ステップS16)。
一方、コントローラ60は、低くする必要性が無いと判断したときには(ステップS14:NO)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第1の圧力P1に維持したまま、リチウム電池10への充電を開始する(ステップS17)。
コントローラ60は、リチウム電池10を第2の圧力P2によって拘束した状態において充電しているときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を判断する(ステップS18)。
本実施形態では、コントローラ60は、この必要性の有無の判断を、温度センサー63によって測定されたリチウム電池10の温度Tに基づいて行う。コントローラ60は、リチウム電池10の温度Tが第2設定温度T2よりも高いときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が有ると判断する(ステップS18:YES)。コントローラ60は、リチウム電池10の温度Tが第2設定温度T2以下のときには、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が無いと判断する(ステップS18:NO)。
第2設定温度T2は適宜の温度を設定することができるが、支持塩の分解等の不具合が生じることを防止するために、リチウム電池10の内部抵抗の上昇に伴ってリチウム電池10の温度が過度に上昇することを抑える観点から選択することができる。第2設定温度T2は、例えば45〜50℃の範囲の温度から選択して設定される。
コントローラ60は、復帰させる必要性が有ると判断したときには(ステップS18:YES)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第2の圧力P2よりも高い第1の圧力P1に復帰させる(ステップS19)。具体的には、コントローラ60は、第1の圧力P1に基づいて加圧部40の作動を制御する。加圧部40は、モータ48を駆動して規制板41を昇降移動させ、下板42と規制板41との間隔を放電時と同じになるように狭くする。これによって、加圧部40は、リチウム電池10に付勢される加圧力Pの大きさを第2の圧力P2よりも高い第1の圧力P1に調節する。
その後、コントローラ60は、リチウム電池10への充電を継続する。
一方、コントローラ60は、復帰させる必要性が無いと判断したときには(ステップS18:NO)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第2の圧力P2に維持したまま、判断を継続する。
コントローラ60は、リチウム電池10への充電として、定電流充電を開始し、所定のタイミングで定電圧充電に移行する。コントローラ60は、測定した電流値が充電終了電流値以下となったか否かを判断し(ステップS20)、充電終了電流値以下であれば充電動作を終了する(ステップS20:YES、ステップS21)。一方、充電終了電流値にならなければ、充電動作を継続る(ステップS20:NO)。
本実施形態の効果を実験によって確認した。充電条件、効果を下記の表1に示す。
表1に示すように、対比例1、2、および実施例1は、充電レートが1Cの充電である。対比例1においては充電時の加圧力Pが2atm、対比例2においては充電時の加圧力Pが4atmである。実施例1においては、充電開始前の加圧力Pが4atmであり、充電を開始すると、加圧力Pを4atmよりも低い圧力P2(atm)にした。加圧力PをP2(atm)としたまま充電を継続し、電池の温度が第2設定温度T2(45℃)に達したら、加圧力Pを元の4atmに戻した。
対比例1および対比例2より、充電時の加圧力Pを高めることによって、容量を増加させることはできる。対比例1のときの容量を1とすると、対比例2のときの容量は1.44であった。
しかしながら、実施例1のように、充電時の加圧力Pを一旦下げ、所定のタイミング(T2=45℃)において加圧力Pを元に戻すことによって、容量を一層増加させることができる。対比例1のときの容量を1とすると、実施例1のときの容量は1.95であった。
表1に示すように、対比例3、4、および実施例2は、充電レートが0.1Cの充電である。対比例3においては充電時の加圧力Pが2atm、対比例4においては充電時の加圧力Pが4atmである。実施例2においては、実施例1と同様に、充電開始前の加圧力Pが4atmであり、充電を開始すると、加圧力Pを4atmよりも低い圧力P2(atm)にした。加圧力PをP2(atm)としたまま充電を継続し、電池の温度が第2設定温度T2(45℃)に達したら、加圧力Pを元の4atmに戻した。
対比例3および対比例4より、充電時の加圧力Pを高めることによって、容量を増加させることはできる。対比例3のときの容量を1とすると、対比例4のときの容量は1.17であった。
しかしながら、実施例2のように、充電時の加圧力Pを一旦下げ、所定のタイミング(T2=45℃)において加圧力Pを元に戻すことによって、容量を一層増加させることができる。対比例3のときの容量を1とすると、実施例2のときの容量は1.19であった。
上述したように、本実施形態のリチウムイオン二次電池システム100にあっては、コントローラ60は、リチウム電池10への充電を開始するときに、リチウム電池10を拘束している加圧力Pを放電時における第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を判断する。そして、コントローラ60は、低くする必要性が有ると判断したときには、加圧部40が付勢する加圧力Pを第1の圧力P1よりも低い第2の圧力P2にする。
このように構成することによって、充電初期において、リチウム電池10を拘束する加圧力Pは低くされる。電池を構成する部材の接触抵抗が増加し、リチウム電池10の内部抵抗が上昇する。これによって抵抗過電圧が大きくなり、抵抗に依存した発熱が生じる。この発熱に伴って、リチウム電池10の温度が上昇する。電池温度が上昇すると、リチウムイオンの移動速度が上昇し、充電反応過電圧が低下し、充電速度が上昇する。この結果、電極厚みが厚いリチウム電池10を充電するときの効率を高めることができる。したがって、リチウム電池10の充電時間の短縮を図ることができ、急速充電に対応することができる。急速充電の充電レートは、例えば、1.5Cである。
コントローラ60は、リチウム電池10を第2の圧力P2によって拘束した状態において充電しているときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を判断する。そして、コントローラ60は、復帰させる必要性が有ると判断したときには、加圧部40が付勢する加圧力Pを第2の圧力P2よりも高い第1の圧力P1に復帰させる。
リチウム電池10を拘束する加圧力Pを低くしたままでは、抵抗に依存した発熱が続き、電池温度の上昇が継続し、含まれる支持塩の分解等が起こってしまう。そこで、上記のように構成することによって、充電の途中において、リチウム電池10を拘束する加圧力Pは高くされる。電池を構成する部材の接触抵抗が低下し、リチウム電池10の内部抵抗が低下する。これによって抵抗過電圧が小さく、抵抗に依存した発熱が抑えられる。発熱量の減少に伴って、リチウム電池10の過度の温度上昇が抑えられ、支持塩の分解等が防止される。これと同時に、リチウム電池10の内部抵抗が低下することによって、充電反応過電圧が低下し、充電速度が上昇する。この結果、電極厚みが厚いリチウム電池10を充電するときの効率を高めることができる。なお、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる時点においては、リチウム電池10の温度はリチウムイオンの移動速度を十分に速くし得る温度に達している。したがって、リチウム電池10を拘束する加圧力Pを高くしても、充電効率に悪影響を与えることはない。
コントローラ60は、リチウム電池10の温度Tが第1設定温度T1よりも低いときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が有ると判断する。
このように構成することによって、リチウム電池10への充電を開始するときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を、リチウム電池10の温度Tに基づいて正確に判断することができる。
コントローラ60は、リチウム電池10の温度Tが第2設定温度T2よりも高いときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が有ると判断する。
このように構成することによって、リチウム電池10を第2の圧力P2によって拘束した状態において充電しているときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を、リチウム電池10の温度Tに基づいて正確に判断することができる。
第1設定温度T1は20〜35℃の範囲の温度から選択して設定される。
このように構成することによって、第1設定温度T1は、電極厚みが厚いリチウム電池10においてリチウムイオンの輸送抵抗を低減する観点から定まっている。したがって、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を正確に判断することができる。
第2設定温度T2は45〜50℃の範囲の温度から選択して設定される。
このように構成することによって、第2設定温度T2は、支持塩の分解等の不具合が生じることを防止するためにリチウム電池10の温度が過度に上昇することを抑える観点から定まっている。したがって、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を正確に判断することができる。
(改変例1)
図6は、リチウムイオン二次電池システム100の制御手順の改変例1を示すフローチャートである。
改変例1は、リチウム電池10を拘束する加圧力Pを調整する必要性の有無の判断を、タイマー64によって測定された経過時間t1、t2に基づいて行っている。この点において、リチウム電池10の温度Tを指標として必要性の有無を判断する実施形態と相違する。以下の説明において、上述した実施形態と共通する手順については、その説明を適宜省略する。
実施形態と同様に、コントローラ60は、放電時に加圧部40によってリチウム電池10を拘束していた加圧力Pの値(第1の圧力P1)をメモリに保持している。タイマー64は、リチウム電池10の放電を停止してから充電を開始するまでの経過時間t1、およびリチウム電池10への充電を開始してからの経過時間t2を測定する。コントローラ60は、タイマー64によって測定された経過時間t1、t2をメモリに保持している。
コントローラ60は、充電部50に充電プラグ51が差し込まれると(ステップS31)、メモリに保持された放電時の加圧力Pの値(第1の圧力P1)を読み出し、その値(第1の圧力P1)に基づいて加圧部40の作動を制御する(ステップS32)。
コントローラ60は、メモリに保持されたリチウム電池10の放電を停止してから充電を開始するまでの経過時間t1を読み出す(ステップS33)。
コントローラ60は、リチウム電池10の加圧力Pを放電時における第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を判断する(ステップS34)。
改変例1では、コントローラ60は、この必要性の有無の判断を、タイマー64によって測定された経過時間t1に基づいて行う。コントローラ60は、経過時間t1が第1設定時間ts1よりも長いときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が有ると判断する(ステップS34:YES)。コントローラ60は、経過時間t1が第1設定時間ts1以下のときには、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が無いと判断する(ステップS34:NO)。
第1設定時間ts1は適宜の時間を設定することができるが、リチウム電池10の放電を停止した後、電池温度が外気温度とほぼ同程度の温度にまで低下する経過時間が設定されている。外気温度によっては、充電初期において、リチウムイオンの輸送抵抗を低減する観点から、電池温度を迅速に上昇させることが必要になる。外気温度や冷却水温度などによって、時間の経過に伴う電池温度の低下の割合が異なってくる。このため、外気温度や冷却水温度などによって第1設定時間ts1を長くするまたは短くする等の補正を行っても良い。
コントローラ60は、低くする必要性が有ると判断したときには(ステップS34:YES)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第1の圧力P1よりも低い第2の圧力P2にする(ステップS35)。その後、コントローラ60は、リチウム電池10への充電を開始する(ステップS36)。一方、コントローラ60は、低くする必要性が無いと判断したときには(ステップS34:NO)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第1の圧力P1に維持したまま、リチウム電池10への充電を開始する(ステップS37)。
コントローラ60は、リチウム電池10を第2の圧力P2によって拘束した状態において充電しているときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を判断する(ステップS38)。
改変例1では、コントローラ60は、この必要性の有無の判断を、タイマー64によって測定されたリチウム電池10への充電を開始してからの経過時間t2に基づいて行う。コントローラ60は、経過時間t2が第2設定時間ts2を越えたときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が有ると判断する(ステップS38:YES)。コントローラ60は、経過時間t2が第2設定時間ts2以下のときには、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が無いと判断する(ステップS38:NO)。
第2設定時間ts2は適宜の時間を設定することができるが、リチウム電池10の充電を開始した後、電池温度が過度に上昇することがない経過時間が設定されている。過度に上昇した電池温度とは、例えば、支持塩の分解等の不具合が生じ得る温度である。外気温度や冷却水温度などによって、時間の経過に伴う電池温度の上昇の割合が異なってくる。このため、外気温度や冷却水温度などによって第2設定時間ts2を長くするまたは短くする等の補正を行っても良い。
コントローラ60は、復帰させる必要性が有ると判断したときには(ステップS38:YES)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第2の圧力P2よりも高い第1の圧力P1に復帰させる(ステップS39)。その後、コントローラ60は、リチウム電池10への充電を継続する。一方、コントローラ60は、復帰させる必要性が無いと判断したときには(ステップS38:NO)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第2の圧力P2に維持したまま、判断を継続する。
コントローラ60は、測定した電流値が充電終了電流値以下となったか否かを判断し(ステップS40)、充電終了電流値以下であれば充電動作を終了する(ステップS40:YES、ステップS41)。充電終了電流値にならなければ、充電動作を継続する(ステップS40:NO)。
上述した改変例1の制御を行うリチウムイオン二次電池システム100にあっても、実施形態と同様に、電極厚みが厚いリチウム電池10を充電するときの効率を高めることができる。
コントローラ60は、リチウム電池10の放電を停止してから充電を開始するまでの経過時間t1が第1設定時間ts1よりも長いときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が有ると判断する。
このように構成することによって、リチウム電池10への充電を開始するときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を、放電停止後の経過時間t1に基づいて正確に判断することができる。
コントローラ60は、リチウム電池10への充電を開始してからの経過時間t2が第2設定時間ts2を越えたときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が有ると判断する。
このように構成することによって、リチウム電池10を第2の圧力P2によって拘束した状態において充電しているときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を、充電開始後の経過時間t2に基づいて正確に判断することができる。
(改変例2)
図7は、リチウムイオン二次電池システム100の制御手順の改変例2を示すフローチャートである。
改変例2は、リチウム電池10を拘束する加圧力Pを調整する必要性の有無の判断を、リチウム電池10の残存容量c1、c2に基づいて行っている。この点において、リチウム電池10の温度Tを指標として必要性の有無を判断する実施形態、タイマー64によって測定された経過時間t1、t2を指標として必要性の有無を判断する改変例1と相違する。以下の説明において、上述した実施形態と共通する手順については、その説明を適宜省略する。
リチウム電池10の残存容量(SOC:State Of Charge)は、満充電状態における容量と現在時点における容量との比をいう。このSOCの算出(推定)は、種々の方法によって行うことができる。たとえば、電流値を時間積分する方法、開路電圧と電池の内部抵抗とから推定する方法などがある。開路電圧は、負荷70が接続されていない状態に電圧であり、開放電圧ともいう。改変例2では、リチウム電池10に負荷70が接続された状態でもSOCを求めることができるように、電流値を時間積分する方法を採用する。具体的には、満充電から取り出すことのできる電流量(電流×時間)を予め求めておき、放電を行った電流値と放電時間とをかけたものを減算し、充電を行った電流値と充電時間とをかけたものを加算することによって、残存容量を簡単に算出(推定)できる。つまり、残存容量(SOC)=初期容量±電流値×時間となる。ここで、±の符号は、充電時は「+」、放電時は「−」となる。なお、SOCの算出(推定)は、このような方法に限定されず、他の方法を使用して算出(推定)してもよい。
実施形態と同様に、コントローラ60は、放電時に加圧部40によってリチウム電池10を拘束していた加圧力Pの値(第1の圧力P1)をメモリに保持している。コントローラ60は、放電時および充電時の電流値を時間積分して、残存容量(SOC)を算出(推定)し、現時点における残存容量(SOC)をメモリに保持している。
コントローラ60は、充電部50に充電プラグ51が差し込まれると(ステップS51)、メモリに保持された放電時の加圧力Pの値(第1の圧力P1)を読み出し、その値(第1の圧力P1)に基づいて加圧部40の作動を制御する(ステップS52)。
コントローラ60は、メモリに保持された残存容量(SOC)c1を読み出す(ステップS53)。
コントローラ60は、リチウム電池10の加圧力Pを放電時における第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を判断する(ステップS54)。
改変例2では、コントローラ60は、この必要性の有無の判断を、リチウム電池10の残存容量c1に基づいて行う。コントローラ60は、残存容量c1が第1残存容量cs1よりも小さいときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が有ると判断する(ステップS54:YES)。コントローラ60は、残存容量c1が第1残存容量cs1以上のときには、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が無いと判断する(ステップS54:NO)。
第1残存容量cs1は適宜の容量を設定することができるが、残存容量c1が少なく急速充電が必要とされる残存容量c1が設定されている。一例を挙げれば、残存容量c1は、1〜30%の範囲の値が設定される。なお、残存容量c1が0%になってから充電することは少ないことから、最小値を1%とした。また、残存容量c1が30%を超えるときには急速充電を必要とする頻度が一般的に下がることから、上限値を30%とした。
コントローラ60は、低くする必要性が有ると判断したときには(ステップS54:YES)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第1の圧力P1よりも低い第2の圧力P2にする(ステップS55)。その後、コントローラ60は、リチウム電池10への充電を開始する(ステップS56)。一方、コントローラ60は、低くする必要性が無いと判断したときには(ステップS54:NO)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第1の圧力P1に維持したまま、リチウム電池10への充電を開始する(ステップS57)。
コントローラ60は、リチウム電池10を第2の圧力P2によって拘束した状態において充電しているときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を判断する(ステップS58)。
改変例2では、コントローラ60は、この必要性の有無の判断を、リチウム電池10の現在の残存容量c2に基づいて行う。コントローラ60は、残存容量c2が第2残存容量cs2を越えたときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が有ると判断する(ステップS58:YES)。コントローラ60は、残存容量c2が第2残存容量cs2以下のときには、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が無いと判断する(ステップS58:NO)。
第2残存容量cs2は適宜の容量を設定することができるが、改変例2では、充電開始時の残存容量c1に予め設定した容量増加分を加算した容量を第2残存容量cs2としている。容量増加分を予め設定するのは、電池温度が過度に上昇することを防止するためである。過度に上昇した電池温度とは、改変例1と同様に、例えば、支持塩の分解等の不具合が生じ得る温度である。残存容量c1、c2の算出(推定)は、電流値を時間積分する方法によって行っている。このことから、容量増加分を予め設定することは、リチウム電池10の充電を開始した後の経過時間を参照することと同様である。
残存容量が多い状態では、急速充電をするために大電流を流しても、過電圧が大きくなり、急速充電の効果が得られない。この観点から、一例を挙げれば、第2残存容量cs2は、60〜70%の範囲の値が設定される。
コントローラ60は、復帰させる必要性が有ると判断したときには(ステップS58:YES)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第2の圧力P2よりも高い第1の圧力P1に復帰させる(ステップS59)。その後、コントローラ60は、リチウム電池10への充電を継続する。一方、コントローラ60は、復帰させる必要性が無いと判断したときには(ステップS58:NO)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第2の圧力P2に維持したまま、判断を継続する。
コントローラ60は、測定した電流値が充電終了電流値以下となったか否かを判断し(ステップS60)、充電終了電流値以下であれば充電動作を終了する(ステップS60:YES、ステップS61)。充電終了電流値にならなければ、充電動作を継続する(ステップS60:NO)。
上述した改変例2の制御を行うリチウムイオン二次電池システム100にあっても、実施形態および改変例1と同様に、電極厚みが厚いリチウム電池10を充電するときの効率を高めることができる。
コントローラ60は、リチウム電池10の残存容量c1が第1残存容量cs1よりも小さいときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が有ると判断する。
このように構成することによって、リチウム電池10への充電を開始するときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を、リチウム電池10の残存容量c1に基づいて正確に判断することができる。
コントローラ60は、リチウム電池10の残存容量c2が第2残存容量cs2を越えたときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が有ると判断する。
このように構成することによって、リチウム電池10を第2の圧力P2によって拘束した状態において充電しているときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を、リチウム電池10の残存容量c2に基づいて正確に判断することができる。
(改変例3)
図8は、リチウムイオン二次電池システム100の制御手順の改変例3を示すフローチャートである。
改変例3は、リチウム電池10を拘束する加圧力Pを調整する必要性の有無の判断を、リチウム電池10の電圧vに基づいて行っている。この点において、リチウム電池10の温度Tを指標として必要性の有無を判断する実施形態、タイマー64によって測定された経過時間t1、t2を指標として必要性の有無を判断する改変例1、リチウム電池10の残存容量c1、c2を指標として必要性の有無を判断する改変例2と相違する。以下の説明において、上述した実施形態と共通する手順については、その説明を適宜省略する。
実施形態と同様に、コントローラ60は、放電時に加圧部40によってリチウム電池10を拘束していた加圧力Pの値(第1の圧力P1)をメモリに保持している。
コントローラ60は、充電部50に充電プラグ51が差し込まれると(ステップS71)、メモリに保持された放電時の加圧力Pの値(第1の圧力P1)を読み出し、その値(第1の圧力P1)に基づいて加圧部40の作動を制御する(ステップS72)。
コントローラ60は、電圧計62によってリチウム電池10の電圧vを測定する(ステップS73)。
コントローラ60は、リチウム電池10の加圧力Pを放電時における第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を判断する(ステップS74)。
改変例3では、コントローラ60は、この必要性の有無の判断を、電圧計62によって測定されたリチウム電池10の電圧vに基づいて行う。コントローラ60は、リチウム電池10の電圧vが第1電圧値v1よりも小さいときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が有ると判断する(ステップS74:YES)。コントローラ60は、リチウム電池10の電圧vが第1電圧値v1以上のときには、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が無いと判断する(ステップS74:NO)。
第1電圧値v1は適宜の値を設定することができるが、一例を挙げれば、2.7〜3.4ボルトの範囲の値が設定される。
コントローラ60は、低くする必要性が有ると判断したときには(ステップS74:YES)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第1の圧力P1よりも低い第2の圧力P2にする(ステップS75)。その後、コントローラ60は、リチウム電池10への充電を開始する(ステップS76)。一方、コントローラ60は、低くする必要性が無いと判断したときには(ステップS74:NO)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第1の圧力P1に維持したまま、リチウム電池10への充電を開始する(ステップS77)。
コントローラ60は、リチウム電池10を第2の圧力P2によって拘束した状態において充電しているときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を判断する(ステップS78)。
改変例3では、コントローラ60は、この必要性の有無の判断を、電圧計62によって測定されたリチウム電池10の電圧vに基づいて行う。コントローラ60は、リチウム電池10の電圧vが第2電圧値v2を越えたときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が有ると判断する(ステップS78:YES)。コントローラ60は、リチウム電池10の電圧vが第2電圧値v2以下のときには、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が無いと判断する(ステップS78:NO)。
第2電圧値v2は適宜の値を設定することができるが、一例を挙げれば、3.7〜3.9ボルトの範囲の値が設定される。
コントローラ60は、復帰させる必要性が有ると判断したときには(ステップS78:YES)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第2の圧力P2よりも高い第1の圧力P1に復帰させる(ステップS79)。その後、コントローラ60は、リチウム電池10への充電を継続する。一方、コントローラ60は、復帰させる必要性が無いと判断したときには(ステップS78:NO)、加圧部40が付勢する加圧力Pを第2の圧力P2に維持したまま、判断を継続する。
コントローラ60は、測定した電流値が充電終了電流値以下となったか否かを判断し(ステップS80)、充電終了電流値以下であれば充電動作を終了する(ステップS80:YES、ステップS81)。充電終了電流値にならなければ、充電動作を継続する(ステップS80:NO)。
上述した改変例3の制御を行うリチウムイオン二次電池システム100にあっても、実施形態および改変例1、2と同様に、電極厚みが厚いリチウム電池10を充電するときの効率を高めることができる。
コントローラ60は、電圧計62によって測定されたリチウム電池10の電圧vが第1電圧値v1よりも小さいときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性が有ると判断する。
このように構成することによって、リチウム電池10への充電を開始するときに、加圧力Pを第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を、リチウム電池10の電圧vに基づいて正確に判断することができる。
コントローラ60は、電圧計62によって測定されたリチウム電池10の電圧が第2電圧値v2を越えたときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性が有ると判断する。
このように構成することによって、リチウム電池10を第2の圧力P2によって拘束した状態において充電しているときに、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を、リチウム電池10の電圧vに基づいて正確に判断することができる。
(加圧部140の改変例)
図9は、リチウムイオン二次電池システム100の加圧部140の改変例を示す断面図である。
改変例の加圧部140は、流体圧力によって加圧力Pの大きさを調節する調整部149を有している。この点において、締め付けトルクによって加圧力Pの大きさを調節する調整部49を有する実施形態と相違する。
改変例の加圧部140は、剛性を有する材料から形成された下ケース141および上ケース142と、可撓性を有する材料から形成された押圧プレート143と、を有している。「剛性を有する材料から形成された上下のケース141、142」とは、上下のケース141、142に外部から力が作用した場合に、各ケース141、142が容易に変形せず、内部に配置したリチウム電池10を十分に保護できる程度に、上下のケース141、142が剛体であることを意味する。また、「可撓性を有する材料から形成された押圧プレート143」とは、押圧プレート143の上面および下面に作用する圧力の差圧によって押圧プレート143が変形できる程度に、押圧プレート143が柔軟性を有していることを意味する。具体的には、上下のケース141、142は、アルミニウム等の良好な剛性を有する軽量の材料から構成される。押圧プレート143は、ウレタンゴムなどの弾性体膜から構成される。
上ケース142と押圧プレート143との間の空間144は密閉されている。空間144は、所定圧力の流体(例えば、空気)を吐出するポンプ146に接続されている。下ケース141と押圧プレート143との間の空間145にリチウム電池10が収容されている。空間145は、真空ポンプ147に接続されている。
ポンプ146および真空ポンプ147はコントローラ60に接続されている。コントローラ60は、ポンプ146および真空ポンプ147の作動をそれぞれ制御し、押圧プレート143の上下面のそれぞれに作用する流体圧力を調整する。これによって、リチウム電池10を拘束する加圧力Pの大きさが、押圧プレート143に作用する差圧に応じて調節される。
(その他の変形例)
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができ、実施形態と変形例1〜3とを適宜組み合わせることができる。例えば、変形例1〜3において、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させる必要性の有無を判断するとき、実施形態と同様に、リチウム電池10の温度Tに基づいて判断してもよい。具体的には、リチウム電池10の加圧力Pを放電時における第1の圧力P1よりも低くする必要性の有無を、タイマー64によって測定された経過時間t1(変形例1)、リチウム電池10の残存容量c1(変形例2)、または電圧計62によって測定されたリチウム電池10の電圧v(変形例3)に基づいて行う。そして、リチウム電池10を第2の圧力P2によって拘束した状態において充電しているときに、リチウム電池10の温度Tが第2設定温度T2よりも高くなると、加圧力Pを第1の圧力P1に復帰させるようにしてもよい。