JP2022112205A - ガラス物品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】全電気溶融炉を用いてガラス物品を製造するにあたり、酸化スズ粉末を含んだガラス原料を使用する場合に、ガラス物品における欠陥の発生を回避すること。【解決手段】ガラス溶解炉1に収容された溶融ガラス2上に酸化スズ粉末を含んだガラス原料4を供給すると共に、供給したガラス原料4を溶融ガラス2に浸漬させた電極7,8により加熱して溶解させる溶解工程を備えたガラス物品の製造方法において、酸化スズ粉末として、100gを採取してASTM規格 E11の140メッシュである篩に通した場合に、篩上に残存する質量が0.01g以下となる粉末を用いるようにした。【選択図】図1

Description

本開示は、ガラス物品の製造方法に関する。
周知のように、ガラス板やガラス管、ガラス繊維等に代表されるガラス物品は、ガラス溶解炉にてガラス原料を加熱、溶解させて生成した溶融ガラスを所定の形状に成形することで製造される。ガラス溶解炉としては、炉内の溶融ガラスに浸漬させた電極のみで加熱を行う形態の全電気溶融炉(特許文献1を参照)や、電極と燃焼バーナーとを併用して加熱を行う形態の炉等がある。
ガラス原料には、溶融ガラスから気泡を脱泡させるための清澄剤が含まれており、清澄剤としては、酸化スズ(SnO)粉末が広く用いられている。例えば、特許文献2には、泡品位に優れたガラス物品を製造するべく、酸化スズ粉末としてメディアン径D50が2μm~9μmである粉末を用いることが開示されている。
特開2003-183031号公報 特開2016-74598号公報
ところで、全電気溶融炉を用いてガラス物品を製造するにあたり、酸化スズ粉末を含んだガラス原料を使用した場合には、以下のような問題が発生することがあった。
すなわち、全電気溶融炉では燃焼バーナーによる加熱を行わないことから、炉内の上部空間における温度が低くなり、その結果、酸化スズ粉末の一部が溶解せずに溶け残りやすくなる。これに由来して、製造されたガラス物品に粒状スズが欠陥として発生する場合があった。
上述の事情に鑑みて解決すべき技術的課題は、全電気溶融炉を用いてガラス物品を製造するにあたり、酸化スズ粉末を含んだガラス原料を使用する場合に、ガラス物品における欠陥の発生を回避することである。
上記の課題を解決するためのガラス物品の製造方法は、ガラス溶解炉に収容された溶融ガラス上に酸化スズ粉末を含んだガラス原料を供給すると共に、供給したガラス原料を溶融ガラスに浸漬させた電極により加熱して溶解させる溶解工程を備えたガラス物品の製造方法であって、酸化スズ粉末として、100gを採取してASTM規格 E11の140メッシュである篩に通した場合に、篩上に残存する質量が0.01g以下である粉末を用いることを特徴とする。
本方法では、酸化スズ粉末として、100gを採取してASTM規格 E11の140メッシュである篩に通した場合に、篩上に残存する質量が0.01g以下である粉末を用いている。このような酸化スズ粉末を用いた場合には、溶解工程での酸化スズ粉末の溶け残りを好適に防止することが可能となる。その結果、ガラス物品における欠陥の発生を回避することができる。
上記の方法では、酸化スズ粉末として、メディアン径D50が1μm~80μmである粉末を用いることが好ましい。
メディアン径D50が小さすぎる場合、酸化スズ粉末に含まれる粒子が相応に微細であることになり、このような微細な粒子を作り出すためにコストが嵩むことから、結果として酸化スズ粉末を含んだガラス原料の生産コストが増大しやすくなる。一方、メディアン径D50が大きすぎる場合、篩上に残存する質量が100gあたり0.01g以下という条件を満たし難くなる。しかしながら、メディアン径D50が1μm~80μmであれば、ガラス原料の生産コストの増大を防止しつつ、上述の条件を満たしやすくなる。
上記の方法では、酸化スズ粉末として、メディアン径D50が50μm超~80μmである粉末を用いることが好ましい。
このようにすれば、メディアン径D50が50μm超であることで、ガラス原料の生産コストを削減できる。さらに、酸化スズ粉末に過度に微細な粒子が含まれ難いことで、例えば、ガラス溶解炉にガラス原料を供給するにあたって原料をフィーダーで送りやすくなる等、ガラス原料の取り扱いを容易にすることが可能となる。
上記の方法では、溶融ガラスが、質量%で、0.01%~1.5%のSnOを含有するように、ガラス原料を調合することが好ましい。
このようにすれば、溶融ガラスから気泡を好適に脱泡させることができる。
上記の方法では、溶融ガラスが、質量%で、SiO:50%~70%、Al:12%~25%、B:0%~12%、LiO+NaO+KO(LiO、NaO、及びKOの合量):0%~1%未満、MgO:0%~8%、CaO:0%~15%、SrO:0%~12%、BaO:0%~15%を含有するように、ガラス原料を調合してもよい。
このようにすれば、ガラス物品としてディスプレイ用のガラス基板を製造するような場合に、欠陥の発生を回避できるという効果を享受することが可能となる。
上記の方法では、ガラス原料のカレット率が40%以下であってもよい。
ガラス原料のカレット率が低いほど、酸化スズ粉末の溶け残りに由来してガラス物品に欠陥が発生しやすい。そのため、カレット率が40%以下である場合に、篩上に残存する質量が100gあたり0.01g以下となる酸化スズ粉末を用いるようにすれば、欠陥の発生を回避する効果を好適に享受できる。
上記の方法では、溶融ガラスにおける粘度102.5Pa・sに相当する温度が、1630℃以下であってもよい。
溶融ガラスが上記のような温度の条件を満たす場合には、酸化スズ粉末の溶け残りに由来してガラス物品に欠陥が発生しやすい。従って、上記の条件を満たす場合に、篩上に残存する質量が100gあたり0.01g以下となる酸化スズ粉末を用いるようにすれば、欠陥の発生を回避する効果を好適に享受できる。
上記のガラス物品の製造方法によれば、全電気溶融炉を用いてガラス物品を製造するにあたり、酸化スズ粉末を含んだガラス原料を使用する場合に、ガラス物品における欠陥の発生を回避することが可能となる。
ガラス物品の製造方法を示す断面図である。 ガラス物品の製造方法を示す概略図である。
以下、実施形態に係るガラス物品の製造方法について、添付の図面を参照しながら説明する。まず、本製造方法に用いるガラス溶解炉について説明する。
図1に示すガラス溶解炉1は、溶融ガラス2の収容が可能な溶解室3を備えた全電気溶融炉である。本ガラス溶解炉1は、溶解室3内の溶融ガラス2の表面2a上に供給されたガラス原料4を加熱して溶解させる溶解工程P1を実行すると共に、溶解工程P1により生成された溶融ガラス2を溶解室3外に流出させる構成となっている。
溶解室3は、当該溶解室3内でのガラス原料4(溶融ガラス2)の流れ方向Dにおける上流端に位置する前壁3aと、下流端に位置する後壁3bと、一対の側壁3c(図1には一対の片方のみ表示)と、天井壁3dと、底壁3eとを有する。
前壁3aには、ガラス原料4を連続的に供給するためのスクリューフィーダー5が設置されている。スクリューフィーダー5から供給されたガラス原料4は、溶融ガラス2の表面2a上で流れ方向Dに流れながら溶解していく。これにより、表面2aにおける一部の領域がガラス原料4で覆われた状態となっている。後に詳述するが、ガラス原料4には、清澄剤としての酸化スズ(SnO)粉末が含まれている。後壁3bには、溶融ガラス2を連続的に流出させるための流出口6が形成されている。ここで、酸化スズ粉末とは、SnOを主成分とする粉末を意味し、その製造過程や取り扱い過程で不可避的に混入する不純物を含んでもよい。例えば、酸化スズ粉末のSnOの含有量は、98質量%以上である。
底壁3eには、溶融ガラス2を通電により加熱するための棒状の電極7が、溶融ガラス2に浸漬された状態で複数設置されている。また、一対の側壁3cの各々には、溶融ガラス2を通電により加熱するための板状の電極8が、溶融ガラス2に浸漬された状態で複数設置されている。これら電極7,8が溶融ガラス2を加熱するのに伴って、溶融ガラス2の表面2a上のガラス原料4が間接的に加熱されて順次に溶解していく。
本ガラス溶解炉1では、溶融ガラス2の連続的な生成の開始後(溶解工程P1の開始後)においては、溶解室3内の溶融ガラス2に付与する熱エネルギーを電極7,8のみにより発生させる。これにより、溶解室3内で溶融ガラス2の水分量が増加するのを抑制でき、得られるガラス(ガラス物品)の水分量を低下させることができる。また、燃焼バーナーによる加熱を行うことなく、炉内の上部空間における温度を低くした状態で溶融ガラス2を生成できる。このため、温室効果ガスの排出量を削減できると共に、ガラス原料4の溶解に必要なエネルギーを削減できる。なお、連続的な生成の開始前の段階(溶解工程P1を実行できる状態まで炉を立ち上げる段階)では、例えば、側壁3cに設置した燃焼バーナー(図示省略)により溶融ガラス2、及び/又は、ガラス原料4を加熱する場合がある。
ガラスの水分量の低下、温室効果ガスの排出量の削減及び溶解に必要なエネルギーの削減を促進する観点から、溶解工程P1では、複数のガラス溶融炉1を用いることなく、単一のガラス溶解炉1を用いて溶融ガラス2を生成することが好ましい。温室効果ガスの排出量の削減及び溶解に必要なエネルギーの削減を促進する観点から、ガラス溶融炉1における溶融ガラス2の最高温度は1400℃~1700℃であることが好ましく、ガラス溶融炉1における溶融ガラス2の滞在時間は2時間~240時間であることが好ましい。
ガラスの水分量を示す指標として、β-OHを用いることができる。このβ-OHを低下させると、歪点を高めることができる。また、ガラス組成が同じ場合でも、β―OHが小さい方が、歪点以下温度での熱収縮率が小さくなる。β-OHは、好ましくは0.30/mm以下、0.25/mm以下、0.20/mm以下、0.15/mm以下、特に0.10/mm以下である。なお、β-OHが小さ過ぎると、溶融性が低下し易くなる。よって、β-OHは、好ましくは0.01/mm以上、特に0.03/mm以上である。
ここで、「β-OH」は、FT-IRを用いてガラスの透過率を測定し、下記の数式1を用いて求めた値を指す。
[数1]
β-OH=(1/X)log(T1/T2)
X:板厚(mm)
T1:参照波長3846cm-1における透過率(%)
T2:水酸基吸収波長3600cm-1付近における最小透過率(%)
以下、上記のガラス溶解炉1を用いたガラス物品の製造方法について説明する。本実施形態では、ガラス物品としてディスプレイ用のガラス基板を製造する場合を例に挙げる。
本製造方法では、上述のとおり、ガラス溶解炉1に収容された溶融ガラス2上に酸化スズ粉末を含んだガラス原料4を供給する。酸化スズ粉末としては、溶解工程P1での酸化スズ粉末の溶け残りを防止する目的の下、酸化スズ粉末100gを採取してASTM規格 E11の140メッシュである篩(目開きが105μmである篩)に通した場合に、篩上に残存する酸化スズ粉末の質量が0.01g以下である酸化スズ粉末を用いる。なお、篩上に残存する酸化スズ粉末の質量は、0.005g以下であることが好ましく、0.001g以下であることがより好ましい。一方、篩上に残存する酸化スズ粉末の質量の下限は、0gとすることができる。ここで言う「篩上に残存する酸化スズ粉末」とは、以下のような酸化スズ粉末を意味している。すなわち、酸化スズ粉末の粒子は凝集を起こすことから、これを考慮して篩上に残った酸化スズ粉末を篩の網目に押し付け、それでもなお篩を通らない酸化スズ粉末を「篩上に残存する酸化スズ粉末」とする。
酸化スズ粉末を含んだガラス原料4の生産コストの増大を防止する観点と、上述した篩上に残存する質量が100gあたり0.01g以下という条件を満たしやすくする観点とから、酸化スズ粉末におけるメディアン径D50は1μm~80μmとしている。なお、好ましくはメディアン径D50を50μm超~80μmとする。これにより、ガラス原料4の計量及び搬送を安定させることができる。
ガラス原料4は、カレット率が40%以下とされている。また、ガラス原料4は、当該ガラス原料4が溶解して溶融ガラス2が生成された際に、質量%で、0.01%~1.5%のSnOが含有されるように調合されている。さらに、ガラス原料4は、溶融ガラス2が生成された際に、質量%で、SiO:50%~70%、Al:12%~25%、B:0%~12%、LiO+NaO+KO(LiO、NaO、及びKOの合量):0%~1%未満、MgO:0%~8%、CaO:0%~15%、SrO:0%~12%、BaO:0%~15%が含有されるように調合されている。なお、この溶融ガラス2では、粘度102.5Pa・sに相当する温度が1630℃以下となっている。
図2に示すように、溶解工程P1の実行によりガラス溶解炉1で生成された溶融ガラス2は、その後に清澄工程P2、撹拌工程P3、状態調整工程P4、成形工程P5を順次に経る。
清澄工程P2の実行には清澄槽9を用いる。清澄槽9では、ガラス溶解炉1から清澄槽9に流入した溶融ガラス2について、当該溶融ガラス2を加熱しながら清澄剤(酸化スズ粉末)の作用により溶融ガラス2から気泡を脱泡させる。
撹拌工程P3の実行には撹拌槽10と撹拌翼を備えたスターラー11とを用いる。具体的には、清澄槽9から撹拌槽10に流入した溶融ガラス2について、当該溶融ガラス2をスターラー11により撹拌することにより、溶融ガラス2を均質化させる。
状態調整工程P4の実行には状態調整槽12を用いる。状態調整槽12では、溶融ガラス2を成形に適した状態にするべく、溶融ガラス2の温度(粘度)や流量等を調整する。
成形工程P5の実行には成形体13を用いる。成形体13では、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラス2からガラスリボン14を連続的に成形する。なお、成形体13は、スロットダウンドロー法、リドロー法、フロート法等の他の成形法によりガラスリボン14を成形するものであっても構わない。
その後、成形したガラスリボン14からガラス基板の元となるガラス板を切り出す切断工程、ガラス板の研削・研磨工程、洗浄工程、検査工程等の種々の工程を経ることで、ディスプレイ用のガラス基板が製造される。なお、本実施形態では、ガラス物品としてディスプレイ用のガラス基板を製造しているが、勿論、これ以外のガラス物品(例えばガラス管、ガラス繊維等)を製造するようにしてもよい。
上記の実施形態と同様の態様の下、下記の[表1]に示すように、100gを採取してASTM規格 E11の140メッシュである篩に通した場合に、篩上に残存する質量が相互に異なる4種類の酸化スズ粉末(実施例:3種、比較例:1種)をそれぞれ使用し、ディスプレイ用のガラス基板を製造した。そして、製造された100kgのガラス基板群について、酸化スズ粉末の溶け残りに由来した欠陥(粒状スズ)が発生しているか否かを調査した。具体的には、酸化スズ粉末の溶け残りに由来し、かつ、長さ10μm以上である欠陥の個数をカウントした。
ここで、[表1]における欠陥の有無の項目について、「◎」とは上記欠陥の個数が0.01個以下であったことを意味し、「○」とは上記欠陥の個数が0.01個を上回り、かつ、0.1個以下であったことを意味し、「△」とは上記欠陥の個数が0.1個を上回り、かつ、0.2個以下であったことを意味し、「×」とは上記欠陥の個数が0.2個を上回ったことを意味している。
Figure 2022112205000002
[表1]に示す結果のとおり、実施例1~3においては、比較例とは異なってガラス基板における欠陥の発生を回避することが可能であった。このような結果が得られたのは、実施例1~3においては、比較例とは異なって溶解工程P1での酸化スズ粉末の溶け残りを好適に防止できたためと推認される。なお、比較例のガラス原料4、及び、実施例1~3のガラス原料4をそれぞれ使用し、全電気溶融炉である上記のガラス溶解炉1ではなく、電極と燃焼バーナーとを併用する形態の炉を用いてガラス基板を製造した場合には、いずれも欠陥は発生しなかった。
1 ガラス溶解炉
2 溶融ガラス
4 ガラス原料
7 電極
8 電極
P1 溶解工程

Claims (7)

  1. ガラス溶解炉に収容された溶融ガラス上に酸化スズ粉末を含んだガラス原料を供給すると共に、供給した前記ガラス原料を前記溶融ガラスに浸漬させた電極により加熱して溶解させる溶解工程を備えたガラス物品の製造方法であって、
    前記酸化スズ粉末として、100gを採取してASTM規格 E11の140メッシュである篩に通した場合に、前記篩上に残存する質量が0.01g以下である粉末を用いることを特徴とするガラス物品の製造方法。
  2. 前記酸化スズ粉末として、メディアン径D50が1μm~80μmである粉末を用いることを特徴とする請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
  3. 前記酸化スズ粉末として、メディアン径D50が50μm超~80μmである粉末を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス物品の製造方法。
  4. 前記溶融ガラスが、質量%で、0.01%~1.5%のSnOを含有するように、前記ガラス原料を調合することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
  5. 前記溶融ガラスが、質量%で、SiO:50%~70%、Al:12%~25%、B:0%~12%、LiO+NaO+KO(LiO、NaO、及びKOの合量):0%~1%未満、MgO:0%~8%、CaO:0%~15%、SrO:0%~12%、BaO:0%~15%を含有するように、前記ガラス原料を調合することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
  6. 前記ガラス原料のカレット率が40%以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
  7. 前記溶融ガラスにおける粘度102.5Pa・sに相当する温度が、1630℃以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
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