JP2022109879A - 導電繊維およびそれを用いた被服 - Google Patents

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真史 須藤
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【課題】高い導電性や変形に対する電気特性の安定性を有し、スマートテキスタイルなどの布帛に組込むことが好適な導電繊維、およびそれを使用した被服を提供する。【解決手段】繊維表面の少なくとも一部に金属層を有しており、総繊度が10~1000dtexであって、金属層を除去した繊維表面が下記[1]および[2]を満足する凹部を有することを特徴とする導電繊維。[1]5~70個/9μm2[2]繊維軸方向の径d1と繊維軸垂直方向の径d2の比d1/d2が0.1~1.5【選択図】なし

Description

本発明は、特にスマートテキスタイルなどの布帛に組込むことが好適な導電繊維、およびそれを使用した被服に関するものである。
近年、編物や織物などのテキスタイルに、各種デバイスやセンサー、ICチップなどの電子部品を組み込んだスマートテキスタイルの需要が拡大している。これらスマートテキスタイルは、スポーツ用途から医療用途に至るまで、その目的に応じた設計が可能であることから、様々なシーンでの着用が見込まれている。
これら電子部品を組み込んだスマートテキスタイルにおいて、デバイスの駆動源となる電気の送電や、センサーからの電気信号伝達には、抵抗値の低い導電材料が必要となる。
しかし、上記の導電材料に通常の金属線を用いた場合、送電や信号伝達に十分な導電性を示すが、重く、テキスタイルの曲げなどの変形に対して追従できないため、被服に組み込んだ際に違和感を生じるという課題がある。
そこで、導電性と重量、柔軟性のバランスに優れた導電材料を得るために、鍍金処理や蒸着処理などの後加工によって金属からなる導電性被膜を繊維表面に形成させた導電繊維を用いることは広く知られている(例えば、特許文献1)。
また、特許文献2や非特許文献1には、微細なひび割れおよび/または微細凹凸を表面に多数有する繊維表面に導電性被膜を形成することで、摩擦等の外力を受けても被膜が剥離し難い導電繊維を得る技術が開示されている。
特開平5-5271号公報 特開平6-298973号公報
尾張繊維技術センター、"テキスタイル&ファッション"vol.25 No.4、2008年7月[online]、公益財団法人一宮地場産業ファッションデザインセンター編集、[2020年12月11日検索]、インターネット<URL:https://www.fdc138.com/tex&fas/25/04/18repo.pdf>
しかし、特許文献1記載のような方法では、摩擦等の外力により被覆が剥離し易いという課題があった。また、特許文献2や非特許文献1記載の方法では、摩擦等の外力を受けても被覆が剥離し難い、すなわち金属被膜の密着強度が高い導電繊維が得られるが、更なる密着強度の向上が求められていた。
そこで本発明の目的は、上記の事情を鑑みてなされたものであって、金属被膜の密着強度が高く、摩擦等の外力を受けても安定な電気特性を有し、特にスマートテキスタイルなどの布帛に組込むことが好適な導電繊維、およびそれを使用した被服を提供することにある。
上記目的は、以下の手段により達成される。すなわち、
(1)繊維表面の少なくとも一部に金属層を有しており、総繊度が10~1000dtexであって、金属層を除去した繊維表面が下記[1]および[2]を満足する凹部を有することを特徴とする導電繊維。
[1]5~70個/9μm
[2]繊維軸方向の径d1と繊維軸垂直方向の径d2の比d1/d2が0.1~1.5
(2)前記凹部において繊維軸方向の径d1が1.0μm以下であり、繊維軸垂直方向の径d2が3.0μm以下であることを特徴とする、上記(1)記載の導電繊維。
(3)2次粒子径が平均で2.0μm以下の外部粒子を含み、その含有量が2重量%以下である、上記(1)あるいは(2)に記載の導電繊維。
(4)少なくとも一部が上記(1)~(3)のいずれかに記載の導電繊維から構成される、被服、
である。
本発明の導電繊維は、金属被覆の密着強度に優れ、摩擦等の外力を受けても金属被覆が剥離し難い、高品位の導電繊維を提供することができる。
本発明における繊維表面の形態観察結果(SEM撮影画像)の例と、繊維表面の凹部における繊維軸方向の径d1と繊維軸垂直方向の径d2の測定方法を説明するための概要図である。
以下、本発明を望ましい実施形態とともに詳述する。
本発明の導電繊維は、繊維表面の少なくとも一部に金属層を有しており、総繊度が10~1000dtexであって、金属層を除去した繊維表面が下記[1]および[2]を満足する凹部を有することを特徴とする導電繊維である。
[1]5~70個/9μm
[2]繊維軸方向の径d1と繊維軸垂直方向の径d2の比d1/d2が0.1~1.5
本発明の導電繊維は、金属層以外の部分が熱可塑性ポリマーからなることが好ましい。金属層以外の部分が熱可塑性ポリマーからなることにより、溶融紡糸法を用いることで繊維形状への成型が容易となり、繊維軸方向に均一な形状を有した導電繊維となる。
本発明の導電繊維に用いられる熱可塑性ポリマーの例としては、「ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート」等のポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、「ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトン」等の脂肪族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、「ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6-12」等の脂肪族ポリアミド系ポリマーおよびその共重合体、「ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン」等のポリオレフィン系ポリマーおよびその共重合体、エチレン単位を25モル~70モル%含有する水不溶性のエチレン-ビニルアルコール共重合体系ポリマー、ポリスチレン系、ポリジエン系、塩素系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、フッ素系のエラストマー系ポリマー等であり、これらの中から選んで用いることができる。中でも、鍍金などによる金属層形成が比較的容易であり、金属層の剥離などが生じにくい点から、ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体や脂肪族ポリアミド系ポリマーおよびその共重合体が好適に用いられる。また更に、後述する減量処理により、繊維の表面状態を変化させることが容易である点から、ポリエステル系ポリマがより好ましく、中でもポリエチレンテレフタレートおよび共重合ポリエチレンテレフタレートがさらに好ましく用いられる。
本発明の導電繊維は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記の熱可塑性ポリマー中に、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機物、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。但し、無機物やカーボンブラックなどの外部粒子(無機粒子)は、繊維表面の凹部形成に大きく影響し、外部粒子が大きすぎる場合や多すぎる場合には微細な凹部が形成され難くなる傾向があるため、外部粒子の2次粒子径は平均で2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.7μm以下がさらに好ましい。また、外部粒子の含有量としては、2重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましい。外部粒子の2次粒子径ならびに含有量を上記範囲とすることで、繊維表面の凹部形成を阻害することなく外部粒子の効果を得ることができる。
本発明の導電繊維は、単成分繊維はもとより、2種類以上のポリマーを複合した複合繊維であってもよい。上記の導電繊維が複合繊維の場合、芯鞘型や海島型、サイドバイサイド型、偏心芯鞘型などが挙げられるが、ポリマーの組み合わせによって繊維に三次元コイル状(らせん状)捲縮が発現する複合形態であるサイドバイサイド型や偏心芯鞘型を採用してもよい。
複合繊維におけるポリマーの組み合わせの例としては、ポリエステル系ポリマーの組み合わせや、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートのように種類の異なるポリエステル系ポリマーの組み合わせなどが好適に用いられる。
本発明の導電繊維は、繊維表面の少なくとも一部に金属層を有していることが重要である。繊維表面に金属層を有することにより、導電繊維の体積抵抗率を低くすることが可能となり、送電や信号伝達に十分な導電性を得ることができる。その観点から、繊維表面の全面に金属層を有していることが、より好ましい。
本発明の導電繊維における繊維表面の金属層は、本発明の導電性能を満たすものであれば特に制限されないが、銅鍍金および/または銀鍍金で形成されてなることが好ましい。繊維表面の金属層が銅鍍金および/または銀鍍金で形成されてなることにより、導電繊維の体積抵抗率を低くすることが可能となる上、金属層を繊維表面に均一に形成することが容易であるため、導電性およびその繊維軸方向均一性が向上する。なお、繊維表面の金属層を銅鍍金のみで形成した場合、銀鍍金のみで形成した場合と比較して導電性が低下(体積抵抗率が増加)するものの、コストを抑えることが可能となる。
本発明の導電繊維は、体積抵抗率が2×10-6~1×10-2Ω・cmであることが好ましい。体積抵抗率を好ましくは2×10-6Ω・cm以上、より好ましくは1×10-5Ω・cm以上とすることにより、実質的に繊維断面における金属層の占める割合が小さくなるため、強度などの力学物性が向上する。また、体積抵抗率を好ましくは1×10-2Ω・cm以下、より好ましくは1×10-3Ω・cm以下とすることにより、送電や信号伝達に十分な導電性を得ることができる。
なお、本発明における体積抵抗率とは、以下のようにして求めるものである。
(1)長さ10cmの導電繊維を、温度25℃、湿度65%RHで1時間以上保持する。
(2)絶縁抵抗計に接続された端子間距離5cmの2本の棒端子からなるプローブと接するよう、張力をかけずに導電繊維をセットする。
(3)印加電圧100Vにて抵抗値(Ω)を測定し、得られた抵抗値をプローブ距離5cmで割った後、後述する方法にて測定に供した導電繊維の断面積A(cm)をかけた値を求める。
(4)上記測定を1水準につき測定場所を変更して5回実施し、その算術平均値を体積抵抗率(Ω・cm)とする。
本発明の導電繊維は、総繊度が10~1000dtexであることが重要である。総繊度を10dtex以上、好ましくは20dtex以上、より好ましくは30dtex以上とすることにより、送電や信号伝達に十分な低抵抗値を達成できることに加え、繊維の破断強力が高くなるため、後加工性や耐久性に優れた導電繊維となる。また、総繊度を1000dtex以下、好ましくは800dtex以下、より好ましくは500dtex以下とすることにより、被服などのテキスタイルに組み込んでも違和感がなく、着用快適性に優れた導電繊維となる。
なお、本発明における総繊度とは、導電繊維を100mかせ取り、かせの質量(g)に100を乗じることにより総繊度(dtex)を算出し、1水準につき5回測定を行い、その算術平均値より求めるものである。導電繊維が100mより短い場合や、かせ取りすることができない場合は、導電繊維の長さ(m)と質量(g)を測定し、質量(g)÷長さ(m)×10000によって、総繊度(dtex)を算出してもよい。
本発明の導電繊維は、平均単繊維径が5~20μmであることが好ましい。平均単繊維径を好ましくは5μm以上、より好ましくは6μm以上、さらに好ましくは7μm以上とすることにより、単繊維の強力が高くなるため摩擦などの擦過による糸切れが低減し、高い耐久性を有する導電繊維となる。また、平均単繊維径を好ましくは20μm以下、より好ましくは18μm以下、さらに好ましくは16μm以下とすることにより、曲げなどの変形に対して追従しやすく柔軟な繊維となるため、被服などのテキスタイルに組み込んでも違和感がなく、着用快適性に優れた導電繊維となる。
なお、本発明における平均単繊維径とは、以下のようにして求めるものである。
(1)マルチフィラメントの中から取り出した単繊維を繊維軸垂直方向に切断し、走査型電子顕微鏡を用いて、その単繊維断面全体が観察できる倍率として画像を撮影する。
(2)撮影した画像について、画像解析ソフトを用いて、単繊維の断面輪郭が形成する断面積Aを計測し、この断面積Aと同一面積となる真円の直径(μm)を算出する。
(3)マルチフィラメントを構成する全ての単繊維にて実施し、その算術平均値を平均単繊維径(μm)とする。
本発明の導電繊維は、金属層を除去した繊維表面の凹部が5~70個/9μmかつ凹部の繊維軸方向の径d1と繊維軸垂直方向の径d2の比d1/d2が0.1~1.5を満たすことが重要である。凹部の数を5個/9μm以上、好ましくは10個/9μm以上、より好ましくは20個/9μm以上とすることにより、金属層との比表面積が大きくなるため摩擦等の外力を受けても被覆が剥離し難い、金属被膜の密着強度が高い導電繊維が得られる。また、凹部の数を70個/9μm以下、好ましくは60個/9μm以下、より好ましくは50個/9μm以下とすることにより、金属層を形成する前の原糸における摩耗を抑え、金属被膜の密着強度に斑の少ない導電繊維が得られる。d1/d2は、0.1~1.5、好ましくは0.1~1.2、より好ましくは0.1~1.0、さらに好ましくは0.1~0.8とすることにより、凹部が繊維軸に垂直方向に溝を形成した横溝状あるいは球状、球状に近い縦溝状となるため折り曲げ変形等の外力を受けても被覆が剥離し難い、金属被覆の密着強度が高い導電繊維が得られる。ここで、横溝状とは不定形な楕円、長方形あるいは菱形などであり、それらの凹部同士の配置が繊維表面において略ハニカム構造の形状を形成している状態を言う。
また、前記凹部の繊維軸方向の径d1は1.0μm以下であることが好ましく、0.9μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることがさらに好ましい。一方、前記凹部における繊維軸と垂直方向の径d2は3.0μm以下であることが好ましく、2.7μm以下であることがより好ましく、2.4μm以下であることがさらに好ましい。但し、上記径は明らかに外部粒子の痕跡と認められる、大きな径は除いて測定したものである。両軸の径が大きくなりすぎると、筋状になり摩擦や揉みなどの外力を受けた時に摩耗し易く好ましくない。
なお、本発明における金属層の除去方法は、繊維表面を損なうことなく金属層を除去できる方法であれば特に制限されないが、例えば金属層が銅であるときには塩化第2鉄水溶液等を用いる方法を挙げることができる。
本発明の導電繊維は、金属層を除去した繊維表面に横溝状あるいは球状、球状に近い縦溝状の凹部(微細孔)を有しているが、該凹部(微細孔)を繊維表面に発現させるための繊維素材の形状としては特に制限されるものではなく、例えば未延伸糸、延伸糸や延伸仮撚り糸、あるいは織布、編布、不織布などの布帛を塩基性化合物水溶液で特殊減量することで得られる。
従来から、繊維の表面状態を変化させる等のために減量処理が行われているが、通常の減量は90℃以上の処理であり、温度が高いために結晶部と非晶部の両方がほぼ均一に加水分解されるのに対し、本発明の製造において採用する特殊減量は高濃度かつ低温であることを特徴とするため、通常減量と異なり、非晶部が選択的に加水分解されるため特異な凹部を表面に有する繊維が得られると考えられる。該方法で形成された凹部は、繊維構造を反映して横溝状あるいは球状、球状に近い縦溝状かつ微細なものとなり、このような凹部が特定数存在する繊維表面に金属層が鍍金されることにより金属被膜の密着強度が高い導電繊維が得られる。
ここで、塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、およびこれらの混合物などの水溶液が挙げられるが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムが好ましい。
塩基性化合物水溶液の濃度は、300~700g/Lが好ましく、350~650g/Lがより好ましく、400~600g/Lがさらに好ましい。処理温度は、10~60℃が好ましく、15~55℃がより好ましく、20~50℃がさらに好ましい。処理時間は、塩基性化合物水溶液の濃度ならびに処理温度、減量対象のポリマー種、必要な減量率で変わるが、例えば1~15時間、好ましくは2~10時間を挙げることができる。
本発明の導電繊維は、高配向の繊維であることが好ましい。高配向繊維は、微細な繊維構造を有するため、上述の減量処理により、繊維表面に微細な凹部が形成される傾向がある。繊維の配向度については複屈折率を指標とすることができ、用いる熱可塑性ポリマー種によっても異なるが、例えばポリエチレンテレフタレート繊維の場合、複屈折率は0.100以上が好ましく、0.120以上がより好ましく、0.140以上がさらに好ましい。
本発明の導電繊維は、JIS L0849:2013(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)に準じた密着強度試験後の体積抵抗率が2×10-6~1×10-2Ω・cmであることが好ましい。密着強度試験後の体積抵抗率を好ましくは2×10-6Ω・cm以上、より好ましくは1×10-5Ω・cm以上、好ましくは1×10-2Ω・cm以下、より好ましくは1×10-3Ω・cm以下とすることにより、摩擦に対して安定した体積抵抗率を有する導電繊維となる。
なお、本発明における密着強度試験とは、導電繊維の束に白色布を重ね、200gの荷重を加えたまま、毎分30回の往復速度で計100回の往復摩擦を行って評価した。
本発明の導電繊維は、複合形態として偏心芯鞘型を用いた場合、単繊維断面における偏心度が0.05~0.80であることが好ましい。偏心度を好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上とすることにより、平均捲縮数が増加するため、柔軟性が向上することに加え、変形に対する電気特性安定性に優れた導電繊維となる。また、偏心度を好ましくは0.80以下、より好ましくは0.65以下、さらに好ましくは0.50以下とすることにより、紡糸工程における断面形成性が向上するため、糸切れなどの欠点が少ない工程安定性に優れた導電繊維となる。
本発明の導電繊維は、長繊維もしくは短繊維からなる紡績糸など任意の形状をとることができるが、中でも長繊維からなることが好ましい。導電繊維が長繊維からなることにより、導電性の斑が少なくなるため繊維軸方向に安定した体積抵抗率を示すことに加え、高い生産性と優れた力学物性を有した導電繊維となる。
本発明の導電繊維は、破断強度が1.5cN/dtex以上であることが好ましい。破断強度を好ましくは1.5cN/dtex以上、より好ましくは2.0cN/dtex以上とすることにより、織り編みなどの後加工工程での糸切れが減少するため、工程安定性に優れた導電繊維となる。一方、本発明における破断強度の上限は特に制限されないが、10.0cN/dtex程度が実質的な上限である。
なお、本発明における破断強度とは、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法) 8.5 引張強さ及び伸び率に基づき、張力をかけずに導電繊維をセットし、試料長200mm、引張速度200mm/分の条件にて破断時の強度(cN/dtex)を測定し、1水準につき5回測定を行い、その算術平均値より求めるものである。
本発明の導電繊維は、高い導電性や変形に対する電気特性安定性に加え、優れた柔軟性を有していることから、これらの特徴を活かして、例えば帯電防止素材としてストッキング、タイツ、防塵衣などの衣料やカーテンなどのテキスタイル、または屋内外、車両内に敷くカーペットやマット、床材などの各種用途に使用することができるが、特に布帛に組み込んだデバイスの駆動源となる電気の送電やセンサーからの電気信号伝達などの、スマートテキスタイルに好適に用いることができる。
本発明の被服は、少なくとも一部が本発明の導電繊維から構成されてなる。本発明の導電繊維を少なくとも一部に用いることで、着用時の違和感がなく着用快適性に優れた被服となる。
本発明の被服とは、身体を部分的あるいは全体的に覆うために着用する物であり、上衣や下衣、または着物やカバーオールなどの衣服だけでなく、帽子や手袋、靴下なども含まれる。中でも、各種デバイスやセンサー、ICチップなどの電子部品を組み込んだ被服であるスマートテキスタイルに適用することにより、高い導電性や変形に対する電気特性安定性、柔軟性といった本発明の導電繊維の特徴を遺憾なく発揮することが可能となるため、より好ましい。
例えば、本発明の導電繊維をスマートテキスタイルに適用した場合、捲縮に起因する高い柔軟性により人体の動きを邪魔せず、また総繊度が特定の範囲内にあることで着用時に違和感のない、着用快適性に優れたスマートテキスタイルとなる。さらに、本発明の導電繊維はカーボンブラックを含有させた繊維と比較して体積抵抗率が低いため、デバイスの駆動源となる電気の送電やセンサーからの電気信号伝達も可能であることに加え、変形に対する電気特性安定性にも優れていることから、様々な用途のスマートテキスタイルに適用することができる。
本発明の被服は、導電繊維を電気の送電に用いる場合、導電繊維が配される部位を絶縁材料で被覆していても良い。導電繊維が配される部分を絶縁材料で被覆することにより、感電などを防ぐことができるため好適である。
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の特性値は、以下の方法で求めた。
(1)複屈折測定
OLYMPUS株式会社製BH-2を用い、コンペンセーター法により、5回の測定を行い、平均値として求めた。
(2)総繊度
インテック株式会社製の電動検尺機「YC-1」を用い、前述の通り測定を行った。
(3)体積抵抗率
東亜DKK株式会社製の絶縁抵抗計「SM-8220」を用い、前述の通り測定を行った。
(4)凹部の個数、d1とd2ならびに凹部の形状観察
金属層を除去した後の繊維表面をSEM撮影した。凹部の個数は10000倍のSEM撮影画像より、3μm×3μmの視野の中に含まれる凹部の個数より9μm当たりの個数を5箇所で評価し、平均値(算術平均)として求めた。また、無作為に選択した20個の凹部について、繊維軸方向ならびに繊維軸垂直方向の2方向におけるそれぞれの最大長さを径として評価し(図1参照)、平均値(算術平均)として繊維軸方向の径d1、繊維軸垂直方向の径d2として評価した。また、繊維軸方向に対する凹部の形状について観察した。
(5)繰返し変形に対する電気特性の安定性評価
導電繊維の一端を保持具に把持させて直径2mmのマンドレルに巻き付ける試験を100回繰り返した後、導電繊維の一端に日本電産株式会社製の軸流DCファン「D02X(定格電圧5V)」の端子を繋ぎ、他端に出力電圧を5Vとした直流電源装置を繋ぎ、回路を作製した。その後、電流を流して「ファンが十分に回転する」を○、「ファンの回転が低下しており、曲げなどの変形で回転数が大きく変化する」を△、「ファンの回転が著しく遅い、もしくはファンの回転が停止する」を×として、繰返し変形に対する電気特性安定性を評価した。
(6)外部粒子径の算出
繊維の長手方向に垂直な面に繊維を切断して厚さ10μmの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)にて超薄切片を10000倍で観察し、画像解析ソフトを使用して3μm×3μmの視野の中に含まれる粒子の外接円の直径を20点評価し、平均値(算術平均)を算出して求めた。
(実施例1)
酸化チタンを0.3重量%含むポリエチレンテレフタレート(PET)を150℃で12時間真空乾燥した後、紡糸温度290℃にて溶融紡糸した。溶融紡糸では二軸押出機にて溶融押出し、ギアーポンプで計量しつつ紡糸口金まで導き、孔径が0.3mmφの丸孔を48孔有した口金から紡出した。その後、1000m/分の速度で巻き取り、未延伸糸を得た。
上記の未延伸糸を、90℃で3.5倍に熱延伸後に140℃で熱セットを行い、延伸糸を得た。得られた延伸糸の複屈折率は0.152であった。続いて、得られた延伸糸を10g綛取りしてステンレス製の枠に固定し、糸に対して20重量部の浴液に浸漬しつつ、表1に示す水酸化ナトリウム水溶液濃度、処理温度、処理時間で、テクサム社製のミニカラー染色機にて特殊減量した後に繊維表面にパラジウム触媒を担持させ、硫酸銅水溶液中にて銅鍍金処理を実施した。
得られた導電繊維について、総繊度、体積抵抗率、繰返し変形に対する電気特性安定性を評価した。その後、塩化第2鉄水溶液を用いて銅鍍金層を除去した後に繊維表面の凹部を評価した。評価結果を表1に示す。なお、外部粒子である酸化チタンの2次粒子径は0.5μmであった。
特殊減量で形成された特異な凹部を繊維表面に有するため、繰返し変形に対して優れた電気特性安定性を有し、被服への搭載に優れた適性を示すものであった。
(実施例2~3)
実施例1において、表1に示すように特殊減量の条件を変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で導電繊維を得た。得られた評価結果を表1に示す。
実施例1と同様に、特殊減量で形成された特異な凹部を繊維表面に有するため、繰返し変形に致して優れた電気特性安定性を有し、被服への搭載に優れた適性を示すものであった。
(実施例4)
実施例1において、延伸倍率を3.7倍に変更しつつ繊度を同等にしたこと以外は、実施例1と同じ方法で導電繊維を得た。得られた延伸糸の複屈折率は0.160であった。得られた評価結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例1において、延伸倍率を1.5倍に変更しつつ繊度を同等にしたこと以外は、実施例1と同じ方法で導電繊維を得た。得られた延伸糸の複屈折率は0.110であった。得られた評価結果を表1に示す。
実施例5では、実施例1~4と比較して繊維表面の凹部が大きかった。低配向糸では繊維構造の発達が不十分であるためと考えられる。
(実施例6)
実施例2において、添加する外部粒子をコロイダルシリカ、添加量を0.38重量%に変更し、実施例1と同じ方法で導電繊維を得た。得られた評価結果を表1に示す。なお、外部粒子であるコロイダルシリカの2次粒子径は0.18μmであった。
(実施例7)
実施例1において、紡糸速度を3000m/分に変更し、かつ延伸倍率を1.5倍に変更しつつ繊度を同等にしたこと以外は、実施例1と同じ方法で導電繊維を得た。得られた延伸糸の複屈折率は0.145であった。得られた評価結果を表1に示す。
(実施例8)
ポリブチレンテレフタレート(PBT)を125℃で12時間真空乾燥した後、紡糸温度250℃にて溶融紡糸した。溶融紡糸では二軸押出機にて溶融押出し、ギアーポンプで計量しつつ紡糸口金まで導き、孔径が0.3mmφの丸孔を48孔有した口金から紡出した。その後、1200m/分の速度で巻き取り、未延伸糸を得た。
上記の未延伸糸を、80℃で3.3倍に熱延伸後に110℃で熱セットを行い、延伸糸を得た。得られた延伸糸を用い、表1に示すように減量の条件を変更したこと以外は実施例1と同じ方法で導電繊維を得た。
Figure 2022109879000001
(比較例1)
実施例1において、減量を実施しなかったこと以外は、実施例1と同じ方法で導電繊維を得た。得られた評価結果を表2に示す。
繊維表面の凹部は特殊減量で得られたものとは異なり、繰返し変形に対する電気特性安定性に欠けるものであった。
(比較例2~4)
実施例1において、表2に示すように減量の条件を変更したこと以外は、実施例1と同じ方法で導電繊維を得た。得られた評価結果を表2に示す。
繊維表面の凹部は特殊減量で得られたものとは異なり、繰返し変形に対する電気特性安定性に欠けるものであった。
(比較例5)
実施例1において、添加する外部粒子をコロイダルシリカ、添加量を3.5重量%に変更し、表2に示すように減量の条件を変更した以外は、実施例1と同じ方法で導電繊維を得た。得られた評価結果を表2に示す。なお、外部粒子径は0.21μmであった。
外部粒子を多く添加することで、繊維表面の凹部の数は多くすることができるが、凹部の形状は特殊減量で得られたものとは異なり、繰返し変形に対する電気特性安定性に欠けるものであった。
(比較例6)
比較例5において、表2に示すように減量の条件を変更した以外は、比較例5と同じ方法で導電繊維を得た。得られた評価結果を表2に示す。
外部粒子を多く含む糸では、繊維表面に粗大で境界が曖昧な凹部は認められるが、微細な凹部は認められず、繰返し変形に対する電気特性安定性に欠けるものであった。
(比較例7)
実施例7において、延伸を行わずに繊度を同等にし、表2に示すように減量の条件を変更したこと以外は、実施例7と同じ方法で導電繊維を得た。得られた繊維の複屈折率は0.030であった。得られた評価結果を表2に示す。比較例7では、繊維表面の凹部が大きかった。低配向糸では繊維構造の発達が不十分であるためと考えられる。
Figure 2022109879000002
本発明の導電繊維は、金属被覆の密着強度に優れ、摩擦等の外力を受けても金属被覆が剥離し難い、高品位の導電繊維を提供することができる。
1 繊維
2 繊維表面の凹部

Claims (4)

  1. 繊維表面の少なくとも一部に金属層を有しており、総繊度が10~1000dtexであって、金属層を除去した繊維表面が下記[1]および[2]を満足する凹部を有することを特徴とする導電繊維。
    [1]5~70個/9μm
    [2]繊維軸方向の径d1と繊維軸垂直方向の径d2の比d1/d2が0.1~1.5
  2. 前記凹部において繊維軸方向の径d1が1.0μm以下であり、繊維軸垂直方向の径d2が3.0μm以下であることを特徴とする、請求項1記載の導電繊維。
  3. 2次粒子径が平均で2.0μm以下の外部粒子を含み、その含有量が2重量%以下である、請求項1あるいは2記載の導電繊維。
  4. 少なくとも一部が請求項1から3のいずれかに記載の導電繊維から構成される、被服。
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