JP2022108999A - 転がり軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】環状空間において潤滑油が軸方向一方側から他方側へ向かう作用が生じる転がり軸受において、軸方向における潤滑油の偏りを抑制する。【解決手段】転がり軸受20は、内輪21と、外輪22と、内輪21と外輪22との間の形成されている環状空間29に設けられている複数の玉23と、を備え、環状空間29において潤滑油13が軸方向一方側から他方側へ向かう作用が生じる転がり軸受20であって、潤滑油13が含浸される多孔質体10を有し、多孔質体10から環状空間29に潤滑油13を供給する第1潤滑油供給装置1A,1Bを備え、第1潤滑油供給装置1A,1Bが、多孔質体10として、環状空間29の軸方向一方側に設けられる第1多孔質体10Aと、環状空間29の軸方向他方側に設けられる第2多孔質体10Bと、を有し、第2多孔質体10Bが、第1多孔質体10Aに比べて高い潤滑油13の供給能力を有している。【選択図】図1

Description

本開示は、転がり軸受に関する。
特許文献1に、内輪と外輪の間に形成された環状空間において、グリースを軸方向一方側から他方側へ向かわせる作用(ポンプ作用)が生じる転がり軸受が開示されている。前記転がり軸受では、内輪及び外輪における肩おとし形状に起因して、前記ポンプ作用が生じている。また、前記転がり軸受では、保持器に傾斜溝(気流発生部)を設けることによって、積極的に前記ポンプ作用を生じさせている。
前記転がり軸受では、ポンプ作用が働くことを見越して、環状空間の軸方向一方側にグリースを予め付与している。このため、前記転がり軸受では、前記ポンプ作用によって、グリースに含まれる潤滑油(基油)を、環状空間の軸方向一方側から他方側にわたる全体に供給することができる。
特開2018-162815号公報
前記転がり軸受では、前記ポンプ作用によって、環状空間の軸方向他方側に潤滑油が集められる。このため、前記転がり軸受では、運転時間の増加に伴って、環状空間における軸方向他方側の潤滑油が多くなる。
そこで、本開示では、環状空間において潤滑油が軸方向一方側から他方側へ向かう作用が生じる転がり軸受において、軸方向における潤滑油の偏りを抑制することを目的する。
本開示の一態様に係る転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間の形成されている環状空間に設けられている複数の転動体と、を備え、前記環状空間において潤滑油が軸方向一方側から他方側へ向かう作用が生じる転がり軸受であって、前記潤滑油が含浸される多孔質体を有し、当該多孔質体から前記環状空間に前記潤滑油を供給する潤滑油供給装置を備え、前記潤滑油供給装置が、前記多孔質体として、前記環状空間の軸方向一方側に設けられる第1多孔質体と、前記環状空間の軸方向他方側に設けられる第2多孔質体と、を有し、前記第1多孔質体に比べて高い前記潤滑油の供給能力を、前記第2多孔質体が有している。
本開示によれば、環状空間において潤滑油が軸方向一方側から他方側へ向かう作用が生じる転がり軸受において、軸方向における潤滑油の偏りを抑制することができる。
図1は、潤滑油供給装置を備えた第1の転がり軸受を示す模式図である。 図2は、第一実施形態に係る潤滑油供給装置の模式図である。 図3は、潤滑油が含浸されている状態の第一実施形態に係る潤滑油供給装置の模式図である。 図4は、第二実施形態に係る潤滑油供給装置の模式図である。 図5Aは、多孔質体の平均気孔径と潤滑油供給量との関係を示した図である。 図5Bは、多孔質体の気孔率と潤滑油供給量との関係を示した図である。 図6は、潤滑油供給装置を備えた第2の転がり軸受を示す模式図である。 図7は、潤滑油供給装置を備えた第3の転がり軸受を示す模式図である。 図8は、潤滑油供給装置を備えた第4の転がり軸受を示す模式図である。
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
(1)本実施形態の転がり軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間の形成されている環状空間に設けられている複数の転動体と、を備え、前記環状空間において滑油が軸方向一方側から他方側へ向かう作用が生じる転がり軸受であって、前記潤滑油が含浸される多孔質体を有し、当該多孔質体から前記環状空間に前記潤滑油を供給する潤滑油供給装置を備え、前記潤滑油供給装置が、前記多孔質体として、前記環状空間の軸方向一方側に設けられる第1多孔質体と、前記環状空間の軸方向他方側に設けられる第2多孔質体と、を有し、前記第2多孔質体が、前記第1多孔質体に比べて高い前記潤滑油の供給能力を有している。
本実施形態の転がり軸受によれば、環状空間に対する軸方向他方側からの潤滑油の供給量を軸方向一方側からの潤滑油の供給量に比べて多くすることができる。これにより、環状空間において、潤滑油供給装置によって、軸方向他方側から一方側への潤滑油の流れを生み出すことができる。そして、潤滑油が軸方向一方側から他方側へ向かう作用が生じる転がり軸受において、環状空間の軸方向他方側に潤滑油が偏るのを抑制することができる。言い換えれば、本実施形態の転がり軸受によれば、軸方向について環状空間における潤滑油の供給ムラを抑制することが可能となる。
(2)また、好ましくは、前記潤滑油供給装置が、前記潤滑油を含有するグリースが塗布される前記多孔質体を有している。
この場合、グリースを使用する潤滑油供給装置を備えた転がり軸受において、環状空間に対する軸方向一方側からの潤滑油の供給量に比べて、軸方向他方側からの潤滑油の供給量を多くすることができる。
(3)また、好ましくは、前記第1多孔質体が、第1平均気孔径を有し、前記第2多孔質体が、前記第1平均気孔径に比べて大きい第2平均気孔径を有している。
この場合、環状空間に対する第1多孔質体からの潤滑油の供給量に比べて、第2多孔質体からの潤滑油の供給量を多くすることができる。これにより、環状空間において、潤滑油供給装置によって、軸方向他方側から一方側への潤滑油の流れを生み出すことができる。
(4)また、好ましくは、前記第1多孔質体が、第1気孔率を有し、前記第2多孔質体が、前記第1気孔率に比べて大きい第2気孔率を有している。
この場合、環状空間に対する第1多孔質体からの潤滑油の供給量に比べて、第2多孔質体からの潤滑油の供給量を多くすることができる。これにより、環状空間において、潤滑油供給装置によって、軸方向他方側から一方側への潤滑油の流れを生み出すことができる。
(5)また、好ましくは、前記内輪又は前記外輪の何れか一方において、軸方向一方側の端部に前記第1多孔質体が設けられるとともに、軸方向他方側の端部に前記第2多孔質体が設けられている。
この場合、内輪又は外輪の軸方向端部に多孔質体を設けることで、転がり軸受の軸方向寸法が抑えやすくなる。これにより、潤滑油供給装置を有する転がり軸受をコンパクトに構成することができる。
(6)また、好ましくは、前記内輪及び前記外輪のうちの固定輪側に、前記多孔質体が設けられている。
この場合、内輪及び外輪のうちの回転輪の回転に関わらず、環状空間に対して潤滑油を安定して供給することができる。
(7)また、好ましくは、前記固定輪側の軸方向両端部に固定された環状部材をさらに備え、前記多孔質体が、前記環状部材の軸方向内側と前記固定輪との間に配置され、前記環状部材と前記固定輪とによって挟まれている。
この場合、潤滑油供給装置を備えた転がり軸受において、固定輪の軸方向両端部に、簡易に多孔質体を設けることができる。
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
〔転がり軸受20の全体構成〕
本開示の実施形態に係る転がり軸受について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る転がり軸受20の模式図である。図2は、第一実施形態に係る潤滑油供給装置の模式図である。図3は、潤滑油が含浸されている状態の第一実施形態に係る潤滑油供給装置の模式図である。図1に示す転がり軸受20は、本開示に係る転がり軸受の一実施形態であり、内輪21と、外輪22と、複数の玉(転動体)23と、環状の保持器24と、一対の潤滑油供給装置1,1とを備えている。本開示の転がり軸受20は、アンギュラ玉軸受である。なお、本説明で単に「転がり軸受20」と称する場合には、以下に示す実施形態の各転がり軸受20(図1及び図6~図8参照)において共通する構成を説明している。
本開示において、内輪21及び外輪22の各説明における「軸方向」「径方向」「周方向」について定義する。「軸方向」とは、内輪21及び外輪22それぞれの中心線に沿った方向である。なお、その軸方向には、前記中心線に平行な方向も含まれる。「径方向」とは、内輪21及び外輪22それぞれの中心線に直交する方向である。「周方向」とは、内輪21及び外輪22それぞれの中心線を中心とした円に沿う方向である。各図において、内輪21、外輪22それぞれの中心線が一致した状態でのその中心線の符号を「C」としている。
図1から図3に示す潤滑油供給装置1は、本開示の転がり軸受20に適用する潤滑油供給装置の第一実施形態であり、多孔質体10を備えている。以下では、第一実施形態に係る潤滑油供給装置1を、第1潤滑油供給装置1と称する。図3に示すように、第1潤滑油供給装置1は、多孔質体10に潤滑油13を含浸させた状態で使用する。第1潤滑油供給装置1に用いる潤滑油13としては、例えば、従来転がり軸受の潤滑に用いられている潤滑油を採用することができ、例えば、グリースに含まれている基油を採用することができる。なお、本実施形態では、多孔質体10に潤滑油13が含浸されていない状態(図2参照)、及び多孔質体10に潤滑油13が含浸されている状態(図3参照)、のいずれの状態も第1潤滑油供給装置1と称する。
図1に示すように、転がり軸受20では、内輪21の外周面に、玉23が転動する内輪軌道25が形成されている。内輪21は、内輪軌道25を挟んで、軸方向一方側と他方側にそれぞれ肩部26,26を有している。以下の説明では、軸方向一方側の肩部26を第一内肩部26aと称し、軸方向他方側の肩部26を第二内肩部26bと称する。本実施形態では、第一内肩部26a及び第二内肩部26bの各外径(肩径)が等しくなっている。なお、本実施形態の転がり軸受20は、第一内肩部26a及び第二内肩部26bの各外径(肩径)が等しい内輪21を有しているが、本開示の転がり軸受は、内輪の外周面が、全体として軸方向一方側から他方側に向かって外径が大きくなる形状を有していてもよい。
外輪22の内周面には、玉23が転動する外輪軌道27が形成されている。この外輪軌道27に対して玉23が所定の接触角で接触する。外輪22は、外輪軌道27を挟んで軸方向一方側と他方側にそれぞれ肩部28,28を有している。以下の説明では、軸方向一方側の肩部28を第一外肩部28aと称し、軸方向他方側の肩部28を第二外肩部28bと称する。転がり軸受20では、第一外肩部28aの内径(肩径)よりも第二外肩部28bの内径(肩径)が大きくなっている。なお、本実施形態のように、軸方向一方側と他方側とで肩径が異なる外輪22の形状は、肩おとし形状と称することができる。
外輪22の軸方向両端部には、第1潤滑油供給装置1を固定するための溝部31が形成されている。第一外肩部28aの軸方向一方側の端部に形成された溝部31を第一溝31aと称し、第二外肩部28bの軸方向他方側の端部に形成された溝部31を第二溝31bと称する。外輪2の内周面は、(第一溝31a及び第二溝31bの形成領域を除いて)全体として軸方向一方側から他方側に向かって内径が大きくなる形状を有し、第一溝31aに隣接する第一外肩部28aが最も小径であり、第二溝31bに隣接する第二外肩部28bが最も大径となっている。
複数の玉23は、内輪21と外輪22との間の環状空間29に設けられており、転がり軸受20が回転すると(本実施形態では内輪21が回転すると)、玉23は、保持器24によって保持された状態で、内輪軌道25及び外輪軌道27を転動する。
図1に示す転がり軸受20では、内輪21が回転すると、環状空間29において潤滑油13を軸方向一方側から他方側(図1では左側から右側)へ向かわせる作用(ポンプ作用)が生じる。本実施形態の転がり軸受20では、外輪22の肩おとし形状に起因して、外輪22の内周面に沿って軸方向一方側(第一外肩部28a側)から軸方向他方側(第二外肩部28b)へ潤滑油13が向かう作用が生じる。また、公転する玉23のスピン(自転)によっても、同方向の潤滑油13の移動が生じる。特に軸受が高速回転する場合、この作用は強まる。
〔第1潤滑油供給装置1〕
図2及び図3に示す第1潤滑油供給装置1は、本開示の転がり軸受20に用いることができる潤滑油供給装置の第一実施形態であり、多孔質体10を有している。図2及び図3に示すように、多孔質体10は、多孔質材で構成された部材であり、第1多孔質部11と第2多孔質部12とを有している。多孔質体10では、第1多孔質部11と第2多孔質部12とが連続しており、第1多孔質部11と第2多孔質部12との間に仮想の境界部10aが形成されている。
多孔質体10を構成する多孔質材としては、焼結体、発泡材、繊維材を用いることが好ましい。多孔質材の材質としては、ポリエチレン、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性高分子材、又は金属材、セラミックス材を用いることが好ましく、耐熱性を考慮すると、ステンレス合金、銅合金、ニッケル合金等の金属製の多孔質材であるのがより好ましい。多孔質体10を構成する金属製の多孔質材は、連続する空孔を多数形成するために、金属粉末を焼結によって成形した金属焼結材であると好ましい。
第1多孔質部11は、主に潤滑油13を蓄える機能を有するとともに、第2多孔質部12に対して潤滑油13を供給する機能を有する部位である。第2多孔質部12は、主に第1多孔質部11から供給された潤滑油13を蓄える機能を有するとともに、多孔質体10の外部に供給する機能を有する部位である。多孔質体10では、第1多孔質部11と第2多孔質部12とを、それぞれ異なる性質を有する多孔質材で構成している。具体的には、第1多孔質部11と第2多孔質部12とは、以下で説明する浸透深さがそれぞれ異なっている。
第1多孔質部11と第2多孔質部12とは、以下に示すLucas-Washburnの式(数式1)で算出される浸透深さLが異なる多孔質材で構成されている。Lucas-Washburnの式は、毛細管現象の支配的論理式であり、同数式によれば、物体における液体の浸透深さLを算出することができる。なお、数式1に用いられている各記号は、L:浸透深さ、r:毛管半径、γ:表面張力、θ:接触角、t:時間、η:液体動粘度、である。
Figure 2022108999000002
浸透深さLが異なる二つの部材を連続させて配置した場合、各部材に含浸されている液体は、毛細管現象によって、浸透深さLが大きい側の部材へ移動する。図2に示すように、多孔質体10では、第1多孔質部11の第1浸透深さL1に比べて、第2多孔質部12の第2浸透深さL2を大きくしている。このため、図3に示すように、多孔質体10では、第1多孔質部11に含侵された潤滑油13(液体)が、境界部10aを越えて第2多孔質部12に移動する。そして、多孔質体10では、第2多孔質部12から外部へ潤滑油13を滲出させることができる。なお、ここでいう「含浸」とは、多孔質体10が有する気孔内に液体が浸入している状態を意味する。
[浸透深さLの調整方法]
ここでは、第1多孔質部11及び第2多孔質部12の浸透深さLを調整する方法について説明する。前記数1から判るとおり、浸透深さLは、毛管半径rが大きいほど大きくなる。多孔質体10では、当該多孔質体10に形成された気孔の気孔径が、前記数1における毛管半径rに対応する。このため、第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11の平均気孔径φ1と、第2多孔質部12の平均気孔径φ2を調整することで、第1多孔質部11と第2多孔質部12との浸透深さLの大小関係を調整している。
本開示の第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11の平均気孔径φ1に比べて、第2多孔質部12の平均気孔径φ2を大きくしている。このため、第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11の第1浸透深さL1に比べて、第2多孔質部12の第2浸透深さL2が大きくなっている(L1<L2)。このように構成された多孔質体10では、第1多孔質部11に含侵された潤滑油13が、境界部10aを越えて第2多孔質部12に移動する。
このように、第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11が、第1平均気孔径φ1を有し、第2多孔質部12が、第1平均気孔径φ1に比べて大きい第2平均気孔径φ2を有している。このような第1潤滑油供給装置1によれば、第1多孔質部11に含浸されている潤滑油13を、毛細管現象を利用して、第2多孔質部12に吸収させることができる。なお、第1潤滑油供給装置1では、多孔質体10の全体としての平均気孔径を、全体気孔径φ3と称する。
また、前記数1から判るとおり、浸透深さLは、表面張力γが大きいほど大きくなる。多孔質体10における表面張力は、多孔質体10の材質に応じて決まる。このため、第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11と第2多孔質部12とを構成するそれぞれの多孔質材の材質を変更することで、第1多孔質部11と第2多孔質部12との浸透深さLの大小関係を調整している。
第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11を構成する多孔質材の第1表面張力γ1に比べて、第2多孔質部12を構成する多孔質材の第2表面張力γ2を大きくしている。樹脂等の有機材料と金属とを比べた場合、一般的に有機材料のほうが金属より表面張力が大きい。このため、例えば、第1多孔質部11を金属製とし、第2多孔質部12を樹脂製とすることで、第1表面張力γ1に比べて、第2表面張力γ2を大きくすることができる。このように構成された多孔質体10では、第1多孔質部11の第1浸透深さL1に比べて、第2多孔質部12の第2浸透深さL2が大きくなっている(L1<L2)ため、第1多孔質部11に含侵された潤滑油13が、境界部10aを越えて第2多孔質部12に移動する。言い換えれば、親油性がより低い金属製の第1多孔質部11側から、親油性がより高い樹脂製の第2多孔質部12側へ、潤滑油13が移動する。
このように、本開示の第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11が、第1表面張力γ1を有し、第2多孔質部12が、第1表面張力γ1に比べて大きい第2表面張力γ2を有している。このような第1潤滑油供給装置1によれば、第1多孔質部11に含浸されている潤滑油13を、毛細管現象を利用して、第2多孔質部12に吸収させることができる。
なお、上記説明では、多孔質体10の浸透深さLを調整するために、毛管半径r(各平均気孔径φ1,φ2)と表面張力γ(各表面張力γ1,γ2)の両方を調整した場合を例示しているが、浸透深さLを調整するには、毛管半径r又は表面張力γの少なくともいずれか一方を調整すればよい。
第1潤滑油供給装置1は、多孔質体10から潤滑油13を供給(放出)する機能だけでなく、多孔質体10によって周囲の潤滑油13を吸収する機能も有している。第1潤滑油供給装置1は、多孔質体10における潤滑油13の保持量が多くなるほど、潤滑油13の供給量(多孔質体10から滲みだす量)が増大し、多孔質体10における潤滑油13の保持量が少なくなるほど、潤滑油13の吸収量が増大する。
[気孔率]
図2に示すように、多孔質体10では、第1多孔質部11と第2多孔質部12とが異なる気孔率を有している。気孔率とは、各多孔質部11,12の体積に対する、各多孔質部11,12に含まれる気孔の体積の割合である。多孔質体10では、主に第1多孔質部11が、潤滑油13を蓄える役割を果たしている。このため、多孔質体10では、第2多孔質部12の第2気孔率X2に比べて、第1多孔質部11の第1気孔率X1を大きくしている。このような構成とすることで、第1多孔質部11における単位体積当たりの潤滑油13の保持量を、第2多孔質部12に比べて大きくすることができる。なお、第1潤滑油供給装置1では、多孔質体10の全体としての気孔率を、全体気孔率X3と称する。
多孔質体10では、第1気孔率X1及び第2気孔率X2を、前記大小関係を有しつつ、全体気孔率X3を、50vol%以上でかつ90vol%以下とすることが好ましい。そして、多孔質体10では、第1気孔率X1を、85vol%以上でかつ90vol%以下とすることが好ましい。この「85vol%以上でかつ90vol%以下」という値は、グリースに含まれている増ちょう剤の気孔率とほぼ同じである。このような構成とすれば、第1多孔質部11が、増ちょう剤と同様の役割を果たし、第1多孔質部11において、グリースを用いた場合と同程度の潤滑油13の保持量を確保することが可能となる。そして、第1多孔質部11における潤滑油13の保持量を、第2多孔質部12における潤滑油13の保持量に比べて多くすることができる。
このように、第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11が、第1気孔率X1を有し、第2多孔質部12が、第1気孔率X1に比べて小さい第2気孔率X2を有している。この場合、第1多孔質部11における単位体積当たりの潤滑油13の保持量を、第2多孔質部12に比べて大きくすることができる。これにより、多孔質体10における潤滑油13の保持量が確保しやすくなる。
このような構成の第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11に含浸されている潤滑油13を、毛細管現象を利用して、第2多孔質部12に吸収させることができる。また、第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11及び第2多孔質部12が、グリースにおける増ちょう剤と同じ役割を果たして、多孔質体10において潤滑油13を保持することができる。これにより、グリースを使用せずに、第1多孔質部11に蓄えた潤滑油13を第2多孔質部12に供給するとともに、第2多孔質部12から目的の部位に潤滑油13を供給することができる。
〔第2潤滑油供給装置2〕
図4には、第二実施形態に係る潤滑油供給装置2を示している。以下では、第二実施形態に係る潤滑油供給装置2を、第2潤滑油供給装置2と称する。本開示の転がり軸受20では、前記第1潤滑油供給装置1の代わりに、第2潤滑油供給装置2を適用してもよい。図4に示す第2潤滑油供給装置2は、潤滑油供給装置の第二実施形態であり、多孔質体15を有している。第2潤滑油供給装置2は、単一の多孔質体15にグリース16を塗布した状態で使用する。なお、本実施形態では、多孔質体15にグリース16を塗布している状態(図4参照)、及び多孔質体15にグリース16を塗布していない状態(図示せず)のいずれの状態も第2潤滑油供給装置2と称する。多孔質体15は、グリース16に含まれている潤滑油(基油)13を当該グリース16から吸収する。つまり、多孔質体15にグリース16が塗布されることによって、当該多孔質体15に潤滑油13が含浸される。なお、第2潤滑油供給装置2では、多孔質体15の全体としての平均気孔径を、全体気孔径φ4と称する。また、第2潤滑油供給装置2では、多孔質体15の全体としての気孔率を、全体気孔率X4と称する。
第2潤滑油供給装置2では、多孔質体15から外部へ潤滑油13を滲出させることができる。また、第2潤滑油供給装置2は、多孔質体15から潤滑油13を供給(放出)する機能だけでなく、多孔質体15によって周囲の潤滑油13を吸収する機能も有している。第2潤滑油供給装置2は、多孔質体15における潤滑油13の保持量が多くなるほど、潤滑油13の供給量(多孔質体15から滲みだす量)が増大し、多孔質体15における潤滑油13の保持量が少なくなるほど、潤滑油13の吸収量が増大する。
[多孔質体からの潤滑油の供給量]
ここでは、多孔質体からの潤滑油の供給量について説明する。図5Aは、多孔質体の平均気孔径と潤滑油供給量との関係を示した図である。図5Bは、多孔質体の気孔率と潤滑油供給量との関係を示した図である。
[平均気孔径について]
図5Aには、多孔質体の平均気孔径の違いによる潤滑油供給量の違いを調べた実験の結果を示している。この実験では、平均気孔径が異なる3種類(A~C)の多孔質体を用意し、これらの各多孔質体について潤滑油の供給量を測定した。この実験で用いた3種類の多孔質体は、平均気孔径がA)80μm、B)130μm、C)200μm、のようにそれぞれ異なっている。これらの多孔質体(A~C)では、気孔率が90%で共通している。
図5Aに示すように、3種類(A~C)の多孔質体では、Cの多孔質体が潤滑油の供給量が最も多く、Aの多孔質体が潤滑油の供給量が最も少なかった。この実験の結果より、多孔質体は、平均気孔径が大きいほど潤滑油の供給能力が高くなることが判った。
[気孔率について]
図5Bには、多孔質体の気孔率の違いによる潤滑油供給量の違いを調べた実験の結果を示している。この実験では、平均気孔径が異なる2種類の多孔質体(D,E)を用意し、これらの各多孔質体について潤滑油の供給量を測定した。この実験で用いた2種類の多孔質体は、気孔率がD)50%、E)65%、のようにそれぞれ異なっている。これらの多孔質体(D,E)では、平均気孔径が50μmで共通している。
図5Bに示すように、2種類(D,E)の多孔質体では、Eの多孔質体の方が潤滑油の供給量が多かった。この実験の結果より、多孔質体は、気孔率が大きいほど潤滑油の供給能力が高くなることが判った。
以上の実験の結果より、第1潤滑油供給装置1では、多孔質体10の全体気孔径φ3及び全体気孔率X3の少なくとも何れか一方を調整することによって、多孔質体10からの潤滑油13の供給量を調整できることが確認された。また、以上の実験の結果より、第2潤滑油供給装置2では、多孔質体15の全体気孔径φ4及び全体気孔率X4の少なくとも何れか一方を調整することによって、多孔質体15からの潤滑油13の供給量を調整できることが確認された。
〔第一実施形態に係る転がり軸受20〕
図1には、第一実施形態に係る転がり軸受20を示している。第一実施形態に係る転がり軸受20では、外輪22の軸方向両端部の各溝部31に一対の第1潤滑油供給装置1,1が設けられている。以下の説明では、この転がり軸受20を第1転がり軸受20Aと称する。第1転がり軸受20Aでは、外輪22の肩おとし形状に起因して、前記ポンプ作用が生じる。このため、第1転がり軸受20Aでは、環状空間29において、軸方向一方側から軸方向他方側への潤滑油13の流れFA1が生じる。
第1転がり軸受20Aでは、溝部31に第1潤滑油供給装置1(多孔質体10)が嵌め込まれている。以下の説明では、軸方向一方側の第1潤滑油供給装置1を一方側装置1Aと称し、軸方向他方側の第1潤滑油供給装置1を他方側装置1Bと称する。また、本説明では、一方側装置1Aが有する多孔質体10を第1多孔質体10Aと称し、他方側装置1Bが有する多孔質体10を第2多孔質体10Bと称する。そして、本説明では、第1多孔質体10Aの全体気孔径φ3を、第1全体気孔径φ3Aと称し、第2多孔質体10Bの全体気孔径φ3を、第2全体気孔径φ3Bと称する。また、本説明では、第1多孔質体10Aの全体気孔率X3を、第1全体気孔率X3Aと称し、第2多孔質体10Bの全体気孔率X3を、第2全体気孔率X3Bと称する。
第1転がり軸受20Aでは、各装置1A,1Bを構成する多孔質体10が円環状の形態を有している。図1に示す多孔質体10は、それぞれ円環状である第1多孔質部11と第2多孔質部12とを有している。各多孔質部11,12は、同心状に配置されるとともに、軸方向に並んで配置されている。各多孔質部11,12は、それぞれの内径は同じである。また、第2多孔質部12の外径は、第1多孔質部11の外径に比べて大きくなっている。第1転がり軸受20Aでは、第2多孔質部12の径方向外側部(外径が第1多孔質部11に比べて大きくなっている部分)を溝部31に嵌め込んで、外輪22に多孔質体10を固定している。
第1転がり軸受20Aでは、潤滑油13が含浸されている多孔質体10を固定輪である外輪22に固定している。多孔質体10を外輪22(固定輪)に固定することで、多孔質体10から潤滑油13を安定して滲出させることができる。第1転がり軸受20Aでは、外輪22の軸方向両端部に配置された各装置1A,1Bが、環状空間29から軸受外部に潤滑油13が漏れるのを防ぐ機能を有している。なお、図1に示す第1転がり軸受20Aでは、多孔質体10を外輪22(固定輪)の軸方向両端部に設けた場合を例示しているが、本開示の転がり軸受では、多孔質体を内輪(回転輪)の軸方向両端部に設けてもよい。
このように、第1転がり軸受20Aでは、外輪22の軸方向一方側の端部(溝部31)に第1多孔質体10Aが設けられ、外輪22の軸方向他方側の端部(溝部31)に第2多孔質体10Bが設けられている。この場合、多孔質体10を軸受内部に配置する場合に比べて、第1転がり軸受20Aの軸方向寸法を抑えやすい。このため、第1潤滑油供給装置1A,1Bを有する第1転がり軸受20Aをコンパクトに構成することができる。また、第1転がり軸受20Aでは、内輪21及び外輪22のうちの固定輪(本実施形態では外輪22)側に、各多孔質体10A,10Bが設けられている。この場合、内輪21(回転輪)の回転に関わらず、環状空間29に対して潤滑油13を安定して供給することができる。
第1潤滑油供給装置1では、第1多孔質部11に蓄えた潤滑油13を第2多孔質部12に供給し、第2多孔質部12から肩部28に潤滑油13を供給することができる。そして、第1転がり軸受20Aでは、各第1潤滑油供給装置1,1によって軸方向両側の各肩部28,28に供給された潤滑油13が、メニスカスの吸着力によって各肩部28,28を伝って軸方向両側から外輪軌道27に到達する。
第1転がり軸受20Aでは、第2多孔質体10Bの第2全体気孔径φ3Bを、第1多孔質体10Aの第1全体気孔径φ3Aに比べて大きくしている。このため、第2多孔質体10Bは、第1多孔質体10Aに比べて、潤滑油13の供給能力が高くなっている。また、第1転がり軸受20Aでは、第2多孔質体10Bの第2全体気孔率X3Bを、第1多孔質体10Aの第1全体気孔率X3Aに比べて大きくしている。このため、第2多孔質体10Bは、第1多孔質体10Aに比べて、潤滑油13の供給能力が高くなっている。
第1転がり軸受20Aでは、各多孔質体10A,10Bの各全体気孔率X3A,X3Bを、50vol%以上でかつ90vol%以下としている。この場合、第1多孔質体10A及び第2多孔質体10Bにおける潤滑油13の保持量を確保することができる。
このような構成を有する一対の各装置1A,1Bを備えた第1転がり軸受20Aでは、環状空間29において、他方側装置1Bから一方側装置1Aに向かう潤滑油13の流れFA2を生じさせることができる。この流れFA2の流量は、各多孔質体10A,10Bにおける潤滑油13の保持量の差異に応じて変化する。そして、第1転がり軸受20Aでは、この軸方向他方側から一方側への潤滑油13の流れFA2によって、前記ポンプ作用に起因して環状空間29を軸方向一方側から他方側へ流れる潤滑油13の流れFA1を抑制することができる。第1転がり軸受20Aでは、これにより、環状空間29における軸方向他方側への潤滑油13の偏りを抑制することができる。
このように、第1転がり軸受20Aでは、第2多孔質体10Bの平均気孔径(第2全体気孔径φ3B)が、第1多孔質体10Aの平均気孔径(第1全体気孔径φ3A)に比べて大きい。この場合、環状空間29に対する第1多孔質体10Aからの潤滑油13の供給能力に比べて、第2の多孔質部10Bからの潤滑油13の供給能力が高くなっている。このため、環状空間29に対する第1多孔質体10Aからの潤滑油13の供給量に比べて、第2多孔質体10Bからの潤滑油13の供給量を多くすることができる。
第1転がり軸受20Aでは、第2多孔質体10Bの気孔率(第2全体気孔率X3B)が、第1多孔質体10Aの気孔率(第1全体気孔率X3A)に比べて大きい。この場合、環状空間29に対する第1多孔質体10Aからの潤滑油13の供給能力に比べて、第2多孔質体10Bからの潤滑油13の供給能力が高くなっている。このため、環状空間29に対する第1多孔質体10Aからの潤滑油13の供給量に比べて、第2多孔質体10Bからの潤滑油13の供給量を多くすることができる。
〔第二実施形態に係る転がり軸受20〕
図6には、第二実施形態に係る転がり軸受20を示している。第二実施形態に係る転がり軸受20では、外輪22の軸方向両端部に一対の第2潤滑油供給装置2,2が設けられている。以下の説明では、この転がり軸受20を第2転がり軸受20Bと称する。第2転がり軸受20Bでは、外輪22の肩おとし形状に起因して、前記ポンプ作用が生じる。このため、第2転がり軸受20Bでは、環状空間29において、軸方向一方側から軸方向他方側への潤滑油13の流れFB1が生じる。
第2転がり軸受20Bは、第1潤滑油供給装置1に代えて第2潤滑油供給装置2を使用している点で、第1転がり軸受20A(図1参照)と異なっている。なお、図6に示す第2転がり軸受20Bでは、図1で説明した構成と同じ構成については同じ符号が付されており、その説明を省略する。
図6に示す第2転がり軸受20Bでは、軸方向両側の各溝部31,31にそれぞれ第2潤滑油供給装置2(多孔質体15)が嵌め込まれている。以下の説明では、軸方向一方側の第2潤滑油供給装置2を一方側装置2Aと称し、軸方向他方側の第2潤滑油供給装置2を他方側装置2Bと称する。
本説明では、一方側装置2Aが有する多孔質体15を第1多孔質体15Aと称し、他方側装置2Bが有する多孔質体15を第2多孔質体15Bと称する。そして、本説明では、第1多孔質体15Aの全体気孔径φ4を、第1全体気孔径φ4Aと称し、第2多孔質体15Bの全体気孔径φ4を、第2全体気孔径φ4Bと称する。また、本説明では、第1多孔質体15Aの全体気孔率X4を、第1全体気孔率X4Aと称し、第2多孔質体15Bの全体気孔率X4を、第2全体気孔率X4Bと称する。
図6に示すように、第2転がり軸受20Bでは、円環状の多孔質体15を用いている。第2転がり軸受20Bでは、多孔質体15の径方向外側部を溝部31に嵌め込んで、多孔質体15を外輪22に固定している。
第2転がり軸受20Bでは、グリース16が塗布される多孔質体15を固定輪である外輪22に固定している。多孔質体15を外輪22(固定輪)に固定することで、多孔質体15から潤滑油13を安定して滲出させることができる。
第2転がり軸受20Bでは、多孔質体15がグリース16から吸収した潤滑油13を、軸方向両側の各多孔質体15,15から各肩部28,28に供給することができる。そして、第2転がり軸受20Bでは、各多孔質体15,15から各肩部28,28に供給された潤滑油13が、メニスカスの吸着力によって各肩部28,28を伝って軸方向両側から外輪軌道27に到達する。
第2転がり軸受20Bでは、第2多孔質体15Bの第2全体気孔径φ4Bを、第1多孔質体15Aの第1全体気孔径φ4Aに比べて大きくしている。このため、第2多孔質体15Bは、第1多孔質体15Aに比べて、潤滑油13の供給能力が高くなっている。また、第2転がり軸受20Bでは、第2多孔質体15Bの第2全体気孔率X4Bを、第1多孔質体15Aの第1全体気孔率X4Aに比べて大きくしている。このため、第2多孔質体15Bは、第1多孔質体15Aに比べて、潤滑油13の供給能力が高くなっている。
第2転がり軸受20Bでは、各多孔質体15A,15Bの各全体気孔率X4A,X4Bを、50vol%以上でかつ90vol%以下としている。この場合、第1多孔質体15A及び第2多孔質体15Bにおける潤滑油13の保持量を確保することができる。
このような一対の各装置2A,2Bを備えた第2転がり軸受20Bでは、他方側装置2Bから一方側装置2Aに向かう潤滑油13の流れFB2を生じさせることができる。この流れFB2の流量は、各多孔質体15A,15Bにおける潤滑油13の保持量の差異に応じて変化する。そして、第2転がり軸受20Bでは、この軸方向他方側から一方側への潤滑油13の流れFB2によって、前記ポンプ作用に起因して環状空間29を軸方向一方側から他方側へ流れる潤滑油13の流れFB1を抑制することができる。第2転がり軸受20Bでは、これにより、環状空間29における軸方向他方側への潤滑油13の偏りを抑制することができる。
第2転がり軸受20Bでは、多孔質体15を、外輪22の軸方向端部に配置している。この場合、多孔質体15を軸受内部に配置する場合に比べて、第2転がり軸受20Bの軸方向寸法を抑えやすい。このため、第2転がり軸受20Bでは、第2潤滑油供給装置2を備えた第2転がり軸受20Bを、コンパクトに構成することができる。
このように、第2転がり軸受20Bでは、第2多孔質体15Bの平均気孔径(第2全体気孔径φ4B)が、第1多孔質体15Aの平均気孔径(第1全体気孔径φ4A)に比べて大きい。この場合、環状空間29に対する第1多孔質体15Aからの潤滑油13の供給能力に比べて、第2多孔質部15Bからの潤滑油13の供給能力が高くなっている。このため、グリース16を使用する第2潤滑油供給装置2を備えた第2転がり軸受20Bにおいて、環状空間29に対する軸方向一方側からの潤滑油13の供給量に比べて、軸方向他方側からの潤滑油13の供給量を多くすることができる。
第2転がり軸受20Bでは、第2多孔質体15Bの気孔率(第2全体気孔率X4B)が、第1多孔質体15Aの気孔率(第1全体気孔率X4A)に比べて大きい。この場合、環状空間29に対する第1多孔質体15Aからの潤滑油13の供給能力に比べて、第2多孔質体15Bからの潤滑油13の供給能力が高くなっている。このため、グリース16を使用する第2潤滑油供給装置2を備えた第2転がり軸受20Bにおいて、環状空間29に対する軸方向一方側からの潤滑油13の供給量に比べて、軸方向他方側からの潤滑油13の供給量を多くすることができる。
〔第三実施形態に係る転がり軸受20〕
図7には、第三実施形態に係る転がり軸受20を示している。第三実施形態に係る転がり軸受20では、外輪22の軸方向両端部において、環状部材35を用いて第1潤滑油供給装置1が固定されている。第三実施形態に係る転がり軸受20は、外輪22に対して第1潤滑油供給装置1を固定する態様が、第1転がり軸受20A(図1参照)と異なっている。以下の説明では、この転がり軸受20を第3転がり軸受20Cと称する。なお、図7に示す第3転がり軸受20Bでは、図1で説明した構成と同じ構成については同じ符号が付されており、その説明を省略する。
図7に示すように、環状部材35は、それぞれ円環状である環状部35aと外周縁部35bとを有している。本実施形態の環状部材35では、環状部35aは金属製であり、中心線Cを含む断面において略L字状となる形状を有している。本実施形態の環状部材35では、外周縁部35bは弾性を有する樹脂製であり、溝部31に対して嵌め込むことが可能な形状を有している。なお、環状部材35としては、例えば、転がり軸受の軸受内部を密封するために従来用いられているシール部材を加工して流用することができる。また、環状部材35は、外周縁部35bまでのすべての部分を金属製としてもよい。
第3転がり軸受20Cでは、外輪22の軸方向両側の溝部31に外周縁部35bを嵌め込んで、外輪22に対して環状部材35を固定している。外輪22に固定された環状部材35の環状部35aと外輪22の間には、溝部36が形成されている。そして、第3転がり軸受20Cでは、潤滑油13が含浸されている多孔質体10を、環状部材35の軸方向内側と外輪22との間の溝部36に配置して、環状部35aと外輪22とで多孔質体10を挟んで固定している。第3転がり軸受20Cでは、このようにして、固定輪である外輪22の軸方向両端部に各多孔質体10A,10Bを配置している。
環状部材35は、外周縁部35bが有する弾性によって、環状部35aが、外周縁部35b側の端部を支点として揺動可能となっている。そして、第3転がり軸受20Cでは、溝部36の溝幅(溝部36の軸方向の長さ)が変更可能となっている。このため、環状部材35を用いて多孔質体10を外輪22に固定する場合には、多孔質体10の形状や大きさにバラつきがあっても、環状部35aと外輪22で多孔質体10を挟むことで、多孔質体10を外輪22に簡易に固定することができる。また、多孔質体10が樹脂のような弾性を有する材料からなり、多孔質体10の形状が容易に変形するような場合であっても、環状部材35を用いることで、多孔質体10を外輪22に簡易に固定することができる。
このように、第3転がり軸受20Cでは、外輪22(固定輪)側の軸方向両端部に固定された環状部材35,35をさらに備えている。そして、第3転がり軸受20Cでは、各多孔質体10A,10Bが、環状部材35の軸方向内側と外輪22との間に配置され、環状部材35と外輪22とによって挟まれている。この場合、一対の各装置1A,1Bを備えた第3転がり軸受20Cにおいて、外輪22の軸方向両端部に、簡易に各多孔質体10A,10Bを設けることができる。
〔第四実施形態に係る転がり軸受20〕
図8には、第四実施形態に係る転がり軸受20を示している。第四実施形態に係る転がり軸受20では、外輪22の軸方向両端部に、環状部材35を用いて第2潤滑油供給装置2が固定されている。第四実施形態に係る転がり軸受20では、環状部材35を用いて第2潤滑油供給装置2を固定している点で、第2転がり軸受20B(図6参照)と異なっている。また、第四実施形態に係る転がり軸受20では、多孔質体15を備えた第2潤滑油供給装置2を用いている点で、第3転がり軸受20C(図7参照)と異なっている。以下の説明では、この第四実施形態に係る転がり軸受20を第4転がり軸受20Dと称する。なお、図8に示す第4転がり軸受20Dでは、図6及び図7で説明した構成と同じ構成については同じ符号が付されており、その説明を省略する。
図8に示すように、第4転がり軸受20Dでは、グリース16が塗布される多孔質体15を、環状部材35の軸方向内側と外輪22との間の溝部36に配置して、環状部35aと外輪22とで多孔質体15を挟んで固定している。第4転がり軸受20Dでは、このようにして、固定輪である外輪22の軸方向端部に多孔質体15を配置している。環状部材35を用いて多孔質体15を外輪22に固定する場合には、多孔質体15の形状や大きさにバラつきがあっても、環状部35aと外輪22で多孔質体15を挟むことで、多孔質体15を外輪22に簡易に固定することができる。また、多孔質体15が樹脂のような弾性を有する材料からなり、多孔質体15の形状が容易に変形するような場合であっても、環状部材35を用いることで、多孔質体15を外輪22に簡易に固定することができる。
このように、第4転がり軸受20Dでは、外輪22(固定輪)側の軸方向両端部に固定された環状部材35,35をさらに備えている。そして、第4転がり軸受20Dでは、各多孔質体15A,15Bが、環状部材35の軸方向内側と外輪22との間に配置され、環状部材35と外輪22とによって挟まれている。この場合、一対の各装置2A,2Bを備えた第4転がり軸受20Dにおいて、外輪22の軸方向両端部に、簡易に各多孔質体15A,15Bを設けることができる。
以上に説明した本実施形態の各転がり軸受20A~20Dは、内輪21と、外輪22と、内輪21と外輪22との間の形成されている環状空間29に設けられている複数の玉23と、を備え、環状空間29において潤滑油13が軸方向一方側から他方側へ向かう作用が生じる。各転がり軸受20A,20Cは、潤滑油13が含浸される多孔質体10を有し、当該多孔質体10から環状空間29に潤滑油13を供給する第1潤滑油供給装置1A,1Bを備えている。また、各転がり軸受20B,20Dは、潤滑油13が含浸される多孔質体15を有し、当該多孔質体15から環状空間29に潤滑油13を供給する第2潤滑油供給装置2A,2Bを備えている。そして、各装置1A,1Bでは、多孔質体10として、環状空間29の軸方向一方側に設けられる第1多孔質体10Aと、環状空間29の軸方向他方側に設けられる第2多孔質体10Bと、を有しており、第2多孔質体10Bが、第1多孔質体10Aに比べて高い潤滑油13の供給能力を有している。また、各装置2A,2Bでは、多孔質体15として、環状空間29の軸方向一方側に設けられる第1多孔質体15Aと、環状空間29の軸方向他方側に設けられる第2多孔質体15Bと、を有しており、第2多孔質体15Bが、第1多孔質体15Aに比べて高い潤滑油13の供給能力を有している。
このような各転がり軸受20A~20Dによれば、環状空間29に対する軸方向他方側からの潤滑油13の供給量を軸方向一方側からの潤滑油13の供給量に比べて多くすることができる。これにより、環状空間29において潤滑油13が軸方向一方側から他方側へ向かう作用が生じる転がり軸受20において、各装置1A,1B又は各装置2A,2Bで、軸方向他方側から一方側への潤滑油13の流れ(図1の流れFA2及び図6の流れFB2)を生み出すことができる。これにより、転がり軸受20において、環状空間29の軸方向他方側に潤滑油13が偏るのを抑制することができる。言い換えれば、本実施形態の各転がり軸受20A~20Dによれば、軸方向について環状空間29における潤滑油13の供給ムラを抑制することが可能となる。
なお、本実施形態の各転がり軸受20A~20Dでは、外輪22の肩おとし形状に起因して潤滑油13が軸方向一方側から他方側へ向かう作用(ポンプ作用)が生じる場合を例示しているが、本開示の転がり軸受は、内輪の肩おとし形状に起因して前記ポンプ作用が生じる構成であってもよく、あるいは保持器に設けた傾斜溝(気流発生部)に起因して前記ポンプ作用が生じる構成であってもよい。
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
1 潤滑油供給装置
10 多孔質体
10A 第1多孔質体
10B 第2多孔質体
10a 境界部
11 第1多孔質部
12 第2多孔質部
13 潤滑油
15 多孔質体
15A 第1多孔質体
15B 第2多孔質体
16 グリース
20 転がり軸受
20A 第1転がり軸受
20B 第2転がり軸受
20C 第3転がり軸受
20D 第4転がり軸受
21 内輪
22 外輪
23 玉(転動体)
29 環状空間
35 環状部材
φ3 全体気孔径(平均気孔径)
φ4 全体気孔径(平均気孔径)
X3 全体気孔率(気孔率)
X4 全体気孔率(気孔率)

Claims (7)

  1. 内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間の形成されている環状空間に設けられている複数の転動体と、を備え、前記環状空間において潤滑油が軸方向一方側から他方側へ向かう作用が生じる転がり軸受であって、
    前記潤滑油が含浸される多孔質体を有し、当該多孔質体から前記環状空間に前記潤滑油を供給する潤滑油供給装置を備え、
    前記潤滑油供給装置が、前記多孔質体として、前記環状空間の軸方向一方側に設けられる第1多孔質体と、前記環状空間の軸方向他方側に設けられる第2多孔質体と、を有し、
    前記第2多孔質体が、前記第1多孔質体に比べて高い前記潤滑油の供給能力を有している、転がり軸受。
  2. 前記潤滑油供給装置が、
    前記潤滑油を含有するグリースが塗布される前記多孔質体を有している、請求項1に記載の転がり軸受。
  3. 前記第2多孔質体の平均気孔径が、前記第1多孔質体の平均気孔径に比べて大きい、請求項1又は請求項2に記載の転がり軸受。
  4. 前記第2多孔質体の気孔率が、前記第1多孔質体の気孔率に比べて大きい、請求項1~請求項3の何れか一項に記載の転がり軸受。
  5. 前記内輪又は前記外輪の何れか一方において、軸方向一方側の端部に前記第1多孔質体が設けられるとともに、軸方向他方側の端部に前記第2多孔質体が設けられている、請求項1~請求項4の何れか一項に記載の転がり軸受。
  6. 前記内輪及び前記外輪のうちの固定輪側に、前記多孔質体が設けられている、請求項1~請求項5の何れか一項に記載の転がり軸受。
  7. 前記固定輪側の軸方向両端部に固定された環状部材をさらに備え、
    前記多孔質体が、
    前記環状部材の軸方向内側と前記固定輪との間に配置され、前記環状部材と前記固定輪とによって挟まれている、請求項6に記載の転がり軸受。
JP2021004280A 2021-01-14 2021-01-14 転がり軸受 Pending JP2022108999A (ja)

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