JP2022102464A - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両のコースト減速走行中にダウンシフトが実行される場合であっても、摩擦係合要素の解放点や係合点の学習を好適に行うことができる車両用駆動装置の制御装置を提供すること。【解決手段】エンジンと、減速時に回生発電可能なモータジェネレータと、複数の摩擦係合要素の係合と解放との組み合わせにより複数の変速段のうちいずれかの変速段を選択的に成立させる自動変速機とを備えた車両用駆動装置の制御装置であって、コースト減速走行中にダウンシフトが実行される場合、一の摩擦係合要素の解放に伴いエンジンブレーキトルクが減少するのに応じて回生トルクを増加させ、他の摩擦係合要素の係合に伴いエンジンブレーキトルクが増加するのに応じて回生トルクを減少させることにより、摩擦係合要素の解放点及び係合点を学習する学習期間においてエンジンブレーキトルクと回生トルクとを合算した入力トルクの変化割合を所定値以下とする。【選択図】図5

Description

本発明は、車両用駆動装置の制御装置に関する。
特許文献1には、エンジンから変速機に至る途中に流体継手と湿式摩擦クラッチとを直列に設け、湿式摩擦クラッチに供給される作動流体圧をECUから出力されるデューティパルスに応じて変化させ、これによりクラッチの断接状態を制御する車両の動力伝達装置が開示されている。
この車両の動力伝達装置においては、湿式摩擦クラッチが断状態から接続されていくときに最初に所定トルクを伝達するトルク点をECUに学習する際に、湿式摩擦クラッチの入力側回転数とエンジン回転数とを検出しつつ湿式摩擦クラッチを接状態から徐々に断していき、その過程でエンジン回転数と湿式摩擦クラッチの入力側回転数との差が所定回転数以下になったとき、そのときのデューティ比の値をトルク点として学習するようになっている。
特開2002-286055号公報
ところで、湿式多板クラッチのような摩擦係合要素にあっては、クラッチプレートが油中で滑って動力を伝達するため、自動変速機に入力されるトルクの変化が少ない状態で解放点や係合点を学習することが望ましい。
そこで、例えば、車両のコースト減速走行中に摩擦係合要素の解放点や係合点の学習を行うことが考えられる。
しかしながら、車両がコースト減速走行中であっても、自動変速機においてダウンシフトが実行される場合には自動変速機に入力されるトルクが大きく変化してしまう。このため、摩擦係合要素の解放点や係合点の学習を好適に行うことができない。
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、車両のコースト減速走行中にダウンシフトが実行される場合であっても、摩擦係合要素の解放点や係合点の学習を好適に行うことができる車両用駆動装置の制御装置を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため、車両の駆動源としてのエンジンと、前記車両の減速時に回生発電可能な発電機と、複数の摩擦係合要素の係合と解放との組み合わせにより複数の変速段のうちいずれかの変速段を選択的に成立させて、前記エンジンから入力される回転を、選択された変速段に応じた変速比で変速して出力する自動変速機と、を備えた車両用駆動装置の制御装置であって、前記発電機の回生トルクを制御する発電機制御部と、前記車両のコースト減速走行中に前記摩擦係合要素の解放点及び係合点の少なくとも一方を学習する学習制御部と、を備え、前記発電機制御部は、前記コースト減速走行中にダウンシフトが実行される場合、一の摩擦係合要素の解放に伴い前記自動変速機に入力される制動トルクが減少するのに応じて前記回生トルクを増加させ、他の摩擦係合要素の係合に伴い前記自動変速機に入力される制動トルクが増加するのに応じて前記回生トルクを減少させることにより、前記摩擦係合要素の解放点及び係合点の少なくとも一方を学習する学習期間において前記自動変速機に入力される前記制動トルクと前記回生トルクとを合算した入力トルクの変化割合を所定値以下とする構成を有する。
本発明によれば、車両のコースト減速走行中にダウンシフトが実行される場合であっても、摩擦係合要素の解放点や係合点の学習を好適に行うことができる車両用駆動装置の制御装置を提供することができる。
図1は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の制御装置を備えた車両の概略構成図である。 図2は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の自動変速機のスケルトン図である。 図3は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の自動変速機における摩擦係合要素の作動表である。 図4は、比較例の車両におけるコースト減速走行時にダウンシフトが実行された場合のタイミングチャートの一例である。 図5は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の制御装置を備えた車両におけるコースト減速走行時にダウンシフトが実行された場合のタイミングチャートの一例である。 図6は、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の制御装置によって実行されるコースト減速走行時処理の流れを示すフローチャートである。
本発明の一実施の形態に係る車両用駆動装置の制御装置は、車両の駆動源としてのエンジンと、車両の減速時に回生発電可能な発電機と、複数の摩擦係合要素の係合と解放との組み合わせにより複数の変速段のうちいずれかの変速段を選択的に成立させて、エンジンから入力される回転を、選択された変速段に応じた変速比で変速して出力する自動変速機と、を備えた車両用駆動装置の制御装置であって、発電機の回生トルクを制御する発電機制御部と、車両のコースト減速走行中に摩擦係合要素の解放点及び係合点の少なくとも一方を学習する学習制御部と、を備え、発電機制御部は、コースト減速走行中にダウンシフトが実行される場合、一の摩擦係合要素の解放に伴い自動変速機に入力される制動トルクが減少するのに応じて回生トルクを増加させ、他の摩擦係合要素の係合に伴い自動変速機に入力される制動トルクが増加するのに応じて回生トルクを減少させることにより、摩擦係合要素の解放点及び係合点の少なくとも一方を学習する学習期間において自動変速機に入力される制動トルクと回生トルクとを合算した入力トルクの変化割合を所定値以下とすることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用駆動装置の制御装置は、車両のコースト減速走行中にダウンシフトが実行される場合であっても、摩擦係合要素の解放点や係合点の学習を好適に行うことができる。
以下、本発明の一実施例に係る車両用駆動装置の制御装置を備えた車両について図面を参照して説明する。
図1に示すように、車両1は、エンジン2と、自動変速機3と、発電機としてのモータジェネレータ4と、左右の駆動輪5と、制御装置10と、を含んで構成されている。本実施例においては、エンジン2、自動変速機3及びモータジェネレータ4が車両用駆動装置を構成している。
(エンジン)
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うように構成されている。エンジン2は、車両1の駆動源として構成されており、クランク軸21を有する。クランク軸21には、モータジェネレータ4が接続されている。
(自動変速機)
自動変速機3は、エンジン2と駆動輪5との間の動力伝達経路に設けられている。自動変速機3は、トルクコンバータ30と、遊星歯車機構31と、を含んで構成されている。
自動変速機3は、複数の摩擦係合要素の係合と解放との組み合わせにより複数の変速段のうちいずれかの変速段を選択的に成立させる、遊星歯車式の多段の自動変速機である。本実施例においては、後退、1速段(Lレンジ)、1速段(Dレンジ)、2速段、3速段、4速段を複数の変速段として設定している。
トルクコンバータ30は、エンジン2と遊星歯車機構31との間の動力伝達経路に設けられ、流体を介して動力の伝達を行う。トルクコンバータ30は、図示しないロックアップクラッチを有する。トルクコンバータ30は、クランク軸21に接続されており、エンジン2の回転が伝達されるようになっている。
自動変速機3は、タービン軸33と、出力軸34とを有している。タービン軸33は、トルクコンバータ30と遊星歯車機構31とに接続されており、トルクコンバータ30から出力された回転が伝達されるようになっている。出力軸34は、遊星歯車機構31に接続されており、かつ図示しないデファレンシャルを介して左右の駆動輪5に接続されている。
自動変速機3は、エンジン2から入力される回転を、選択された変速段に応じた変速比で変速して出力軸34に出力する。
図2に示すように、遊星歯車機構31は、第1遊星歯車機構60と、第2遊星歯車機構70と、を備えている。第1遊星歯車機構60は、第1サンギヤ61と、第1インターナルギヤ62と、第1キャリヤ63と、を有している。第2遊星歯車機構70は、第2サンギヤ71と、第2インターナルギヤ72と、第2キャリヤ73と、を有している。
自動変速機3は、複数の摩擦係合要素として、クラッチC1からC3と、ブレーキB1及びブレーキB2と、ワンウェイクラッチC4と、を備えている。複数の摩擦係合要素としては、前述したものに限らず他の摩擦係合要素をさらに備えていてもよい。
本実施例において、上述したクラッチC1、C2、C3、ブレーキB1、B2のそれぞれは、湿式多板クラッチによって構成されている。
クラッチC1は、第2インターナルギヤ72と第1キャリヤ63との接続を行うクラッチである。クラッチC2は、第1キャリヤ63とタービン軸33とを接続するクラッチである。クラッチC3は、第1サンギヤ61とタービン軸33とを接続するクラッチである。
ブレーキB1は、第1キャリヤ63を固定するブレーキである。ブレーキB2は、第1サンギヤ61を固定するブレーキである。ワンウェイクラッチC4は、第1キャリヤ63の逆転を防止するクラッチである。
自動変速機3における複数の摩擦係合要素の組み合わせは、図3に示す通りである。図3においては、係合する摩擦係合要素については丸印を記載し、解放する摩擦係合要素については空欄とした。
図3に示すように、後退時は、クラッチC3及びブレーキB1のそれぞれを係合し、他のクラッチ及びブレーキを解放する。1速段(Lレンジ)では、クラッチC1及びブレーキB1のそれぞれを係合し、他のクラッチ及びブレーキを解放する。1速段(Dレンジ)では、クラッチC1及びワンウェイクラッチC4のそれぞれを係合し、他のクラッチ及びブレーキを解放する。ただし、1速段(Dレンジ)におけるワンウェイクラッチC4は、加速時のみ作動する。
2速段では、クラッチC1及びブレーキB2のそれぞれを係合し、他のクラッチ及びブレーキを解放する。3速段では、クラッチC1及びクラッチC2のそれぞれを係合し、他のクラッチ及びブレーキを解放する。4速段では、クラッチC2及びブレーキB2のそれぞれを係合し、他のクラッチ及びブレーキを解放する。
このような複数の摩擦係合要素の組み合わせにおいて、例えば4速段から3速段にダウンシフトを行う場合には、4速段で係合していたブレーキB2を一の摩擦係合要素として解放しつつ、4速段で解放していたクラッチC1を他の摩擦係合要素として係合する。また、クラッチC2はそのまま係合を維持する。
(モータジェネレータ)
図1に示すように、モータジェネレータ4は、エンジン2と自動変速機3との間の動力伝達経路に設けられ、車両1の減速時に回生発電可能に構成されている。
(制御装置)
制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
コンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御装置10として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、本実施例における制御装置10として機能する。
制御装置10には、油圧制御装置11等の各種装置、アクセルセンサ12、クランク角センサ13、タービン回転数センサ14、出力軸回転数センサ15及び車速センサ16等の各種センサ類が接続されている。
油圧制御装置11は、トルクコンバータ30のロックアップクラッチや各摩擦係合要素に供給する作動油圧を制御する。油圧制御装置11は、制御装置10からの指令に基づきロックアップクラッチや各摩擦係合要素に供給する作動油圧の大きさを調整することにより、ロックアップクラッチや各摩擦係合要素の係合又は解放を行う。
アクセルセンサ12は、運転者による図示しないアクセルペダルの踏込み量を表すアクセル開度を検出する。クランク角センサ13は、エンジン2のクランク軸21の回転角(以下、「クランク角」という)を検出する。制御装置10は、クランク角センサ13から入力されたクランク角を示す情報に基づきエンジン2の回転数であるエンジン回転数を算出する。
タービン回転数センサ14は、タービン軸33の回転数(以下、「タービン回転数Nt」という)を検出する。出力軸回転数センサ15は、出力軸34の回転数(以下、「出力軸回転数Nout」という)を検出する。車速センサ16は、車両1の速度である車速Vを検出する。
制御装置10は、モータジェネレータ4の回生トルクを制御する発電機制御部101としての機能を有する。制御装置10は、モータジェネレータ4の回生電力を調整することによりモータジェネレータ4の回生トルクを増減させることができる。
制御装置10は、車速及びアクセル開度に基づき変速マップを参照することにより、自動変速機3において変速を行う。具体的には、制御装置10は、油圧制御装置11を制御することにより、遊星歯車機構31における複数の摩擦係合要素の係合と解放との組み合わせを変更する。変速マップは、車速及びアクセル開度と変速線とが対応付けられたマップで、予め実験的に求めて制御装置10のROMに記憶されている。
制御装置10は、車両1のコースト減速走行中に自動変速機3においてダウンシフトが実行される場合に、遊星歯車機構31の摩擦係合要素の解放点及び係合点の少なくとも一方を学習する学習制御部102としての機能を有する。
本実施例において、上記学習の開始条件は、車両1がコースト減速走行中であること、及び、シフトダウン要求があること、である。なお、学習の開始条件は、これに限定されるものではなく、他の条件がさらに付加されていてもよい。
制御装置10は、上記学習が開始されると、ダウンシフトに伴い解放される一の摩擦係合要素(以下、この摩擦係合要素を「摩擦係合要素Cr」という)の解放点を学習する。
具体的には、制御装置10のROMには、各ダウンシフトにおいて対応する摩擦係合要素が解放されたときのタービン回転数Ntmと、車速Vと、の関係を示す解放マップが記憶されている。制御装置10は、タービン回転数センサ14で検出される実際のタービン回転数Ntと上記解放マップに定義されたタービン回転数Ntmとの回転数差ΔNtの絶対値|ΔNt|が所定回転数差ΔNth以下となったときの摩擦係合要素Crに対する作動油圧の指示値を上記解放点として学習する。
制御装置10は、摩擦係合要素Crの解放点の学習が完了すると、ダウンシフトに伴い係合される他の摩擦係合要素(以下、この摩擦係合要素を「摩擦係合要素Ce」という)の係合点を学習する。
具体的には、制御装置10のROMには、各ダウンシフトにおいて対応する摩擦係合要素が係合されたときのタービン回転数Ntmと、車速Vと、の関係を示す解放マップが記憶されている。制御装置10は、タービン回転数センサ14で検出される実際のタービン回転数Ntと上記解放マップに定義されたタービン回転数Ntmとの回転数差ΔNtの絶対値|ΔNt|が所定回転数差ΔNth以下となったときの摩擦係合要素Ceに対する作動油圧の指示値を上記係合点として学習する。
本実施例においては、上述した所定回転数差ΔNthを解放点の学習と係合点の学習とで共通としたが、解放点の学習と係合点の学習とで異なる値としてもよい。また、制御装置10は、上記学習において、絶対値|ΔNt|が0となったとき、すなわち実際のタービン回転数Ntと上記解放マップに定義されたタービン回転数Ntmとが一致したときの摩擦係合要素Cr又は摩擦係合要素Ceに対する作動油圧の指示値を上記解放点又は上記係合点として学習してもよい。
上記学習は、ダウンシフトに伴い解放される摩擦係合要素Crの解放動作が開始されてから、ダウンシフトに伴い係合される摩擦係合要素Ceの係合動作が完了するまでの変速動作期間に行われるようになっている。本実施例においては、当該期間を学習期間といい、この学習期間はダウンシフトの変速動作期間に相当する。摩擦係合要素Crの解放動作は、シフトダウン要求がなされると開始される。当該シフトダウン要求は、摩擦係合要素Ceの係合動作が完了すると解除される。
(学習期間における入力トルクの変動について)
ここで、本実施例の上記学習期間における自動変速機3の入力トルクの変動について、図4の比較例と比較して説明する。
図4は、上記学習期間において自動変速機3の入力トルクについて何ら調整を行わない比較例における、当該入力トルクの変動について説明するタイミングチャートである。
図4に示すように、比較例においては、アクセル開度が0とされ、コースト減速走行が開始されると、エンジントルク及びモータジェネレータ4の出力トルクであるモータトルクが負側に遷移、つまり自動変速機3に対して負荷となる。
ここで、負側に遷移したエンジントルクを、エンジン2において発生する制動トルクとしてのエンジンブレーキトルクと定義し、負側に遷移したモータトルクを回生トルクと定義する。エンジンブレーキトルク及び回生トルクは、いずれも負側に増加するほど、すなわち負の値として大きくなるほど、タービン軸33を制動する制動力が大きくなるように作用する。
本実施例において、自動変速機3の入力トルクは、エンジントルクとモータトルクとを合算したトルクであり、コースト減速走行中においてはエンジンブレーキトルクと回生トルクとを合算したトルクである。
したがって、自動変速機3の入力トルクは、コースト減速走行が開始されると、エンジンブレーキトルク及び回生トルクに応じて負側に遷移する。つまり、自動変速機3の入力トルクは、タービン軸33に対して制動力として作用する。
その後、コースト減速走行が継続されるのに従い、エンジントルク及びモータトルクが負側の値が小さくなるよう徐々に減少、すなわちエンジンブレーキトルク及び回生トルクが徐々に減少する。
そして、車速Vの低下に伴いシフトダウン要求がなされると、遊星歯車機構31の摩擦係合要素の解放点及び係合点の学習が開始される。このとき、エンジンブレーキトルク及び回生トルクが減少し続けるため、自動変速機3の入力トルクも負側の値が小さくなるよう徐々に減少し続ける。
その後、高速側の変速段から低速側の変速段に変速段が切り替わると、エンジントルク及びモータトルクが減少に転じ、すなわちエンジンブレーキトルク及び回生トルクが増加に転じる。これにより、自動変速機3の入力トルクも負側の増加に転じる。
その後、シフトダウン要求が解除されて学習期間が終了すると、エンジントルク及びモータトルクが再び負側の値が小さくなるよう徐々に減少、すなわちエンジンブレーキトルク及び回生トルクが徐々に減少する。これにより、自動変速機3の入力トルクも再び負側の値が小さくなるよう徐々に減少する。
このように、図4に示す比較例では、学習期間において、エンジンブレーキトルク及び回生トルクの変動に応じて自動変速機3の入力トルクが大きく変動してしまう。このような自動変速機3の入力トルクの大きな変動は、摩擦係合要素の解放点及び係合点の学習を行う上で好ましくない。
そこで、本実施例においては、上記学習期間において自動変速機3の入力トルクが大きく変動しないように、制御装置10が回生トルクを制御する構成とした。
図5は、本実施例における、当該入力トルクの変動について説明するタイミングチャートである。なお、本実施例においても、図5に示す通り、学習期間の前後は上述の図4の比較例と同一である。
図5に示すように、本実施例において、制御装置10は、学習期間中、高速側の変速段を成立させていた摩擦係合要素Crの解放に伴いエンジンブレーキトルクが減少するのに応じて回生トルクを増加させるよう、モータジェネレータ4の回生電力を調整する。
また、制御装置10は、学習期間中、低速側の変速段を成立させる摩擦係合要素Ceの係合に伴いエンジンブレーキトルクが増加するのに応じて回生トルクを減少させるよう、モータジェネレータ4の回生電力を調整する。
さらに、制御装置10は、学習期間において自動変速機3の入力トルクの変化割合が所定値以下となるように、回生トルクを制御する。好ましくは、制御装置10は、学習期間において自動変速機3の入力トルクの変化割合が0となるように、回生トルクを制御する。
これにより、学習期間中は、自動変速機3の入力トルクに大きな変動が生じることが防止される。したがって、本実施例においては、学習期間において摩擦係合要素の解放点及び係合点の学習が好適に行われることとなる。
入力トルクの変化割合は、例えば単位時間当たりの入力トルクの変化量で示すことができる。上記所定値は、摩擦係合要素の解放点及び係合点の学習を好適に行うことができる入力トルクの変化割合の上限であって、予め実験的に求めて制御装置10のROMに記憶されている。なお、上記所定値は、固定値であってもよいし、例えば車速等に応じて変動する変数であってもよい。さらに、上記所定値は、ダウンシフトの対象変速段に応じて変動する値であってもよい。
(コースト減速走行時処理)
次に、図6を参照して、本実施例の制御装置10によって実行されるコースト減速走行時処理の流れについて説明する。
図6に示すように、制御装置10は、車両1がコースト減速走行中であるか否かを判定する(ステップS1)。制御装置10は、例えばアクセル開度が0で、車速Vが低下傾向にある場合に、車両1がコースト減速走行中であると判定することができる。
制御装置10は、ステップS1において車両1がコースト減速走行中でないと判定した場合には、本コースト減速走行時処理を終了する。制御装置10は、ステップS1において車両1がコースト減速走行中であると判定した場合には、車速V及びアクセル開度に基づき変速マップを参照することにより、シフトダウン要求があるか否かを判定する(ステップS2)。
制御装置10は、ステップS2においてシフトダウン要求がないと判定した場合には、本コースト減速走行時処理を終了する。制御装置10は、ステップS2においてシフトダウン要求があると判定した場合には、遊星歯車機構31の摩擦係合要素の解放点及び係合点の学習を開始する(ステップS3)。
次いで、制御装置10は、エンジンブレーキトルクを検出し(ステップS4)、自動変速機3の入力トルクの変化割合を所定値以下にするようモータジェネレータ4の回生トルクを制御する(ステップS5)。
制御装置10は、例えば、自動変速機3の入力トルクの変化割合が所定値以下となるようなエンジンブレーキトルクと回生トルクとの関係を定義したマップを参照することにより、モータジェネレータ4の回生トルクを決定することができる。当該マップは、予め実験的に求めて制御装置10のROMに記憶されている。
次いで、制御装置10は、摩擦係合要素の解放点及び係合点を更新することによって学習を終了して(ステップS6)、本コースト減速走行時処理を終了する。
以上のように、本実施例に係る車両用駆動装置の制御装置は、車両1のコースト減速走行中にダウンシフトが実行される場合、摩擦係合要素Crの解放に伴いエンジンブレーキトルクが減少するのに応じてモータジェネレータ4の回生トルクを増加させ、摩擦係合要素Ceの係合に伴いエンジンブレーキトルクが増加するのに応じてモータジェネレータ4の回生トルクを減少させるよう構成されている。
さらに、本実施例に係る車両用駆動装置の制御装置は、上述の回生トルクの増減により、摩擦係合要素の解放点及び係合点を学習する学習期間においてエンジンブレーキトルクと回生トルクとを合算した自動変速機3の入力トルクの変化割合を所定値以下とするよう構成されている。
これら構成により、本実施例に係る車両用駆動装置の制御装置は、コースト減速走行中にダウンシフトが実行される場合であっても、摩擦係合要素の解放点及び係合点を学習する学習期間において、自動変速機3の入力トルクに大きな変動が生じることを防止でき、当該学習を安定した状態で好適に行うことができる。
また、本実施例に係る車両用駆動装置の制御装置は、エンジン2において発生するエンジンブレーキトルクの増減に応じて回生トルクを制御するので、自動変速機3に入力されるエンジンブレーキトルク以外の例えば補機類等の負荷トルクを考慮する必要がなく、制御を容易にすることができる。
また、本実施例に係る車両用駆動装置の制御装置において、上記学習期間における自動変速機3の入力トルクの変化割合が0となるように回生トルクを制御した場合には、より好適に上記学習を行うことができる。
なお、本実施例においては、コースト減速走行中におけるエンジンブレーキトルクと回生トルクとを合算したトルクを自動変速機3の入力トルクとして定義したが、コースト減速走行中における自動変速機3の入力トルクに補機類等の負荷トルクを加えてもよい。この場合、摩擦係合要素の解放点及び係合点を学習する学習期間においては、エンジンブレーキトルク及び補機類等の負荷トルクの増減に応じて回生トルクを制御するのが好ましい。
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
1 車両
2 エンジン
3 自動変速機
4 モータジェネレータ(発電機)
5 駆動輪
10 制御装置
11 油圧制御装置
12 アクセルセンサ
13 クランク角センサ
14 タービン回転数センサ
15 出力軸回転数センサ
16 車速センサ
21 クランク軸
31 遊星歯車機構
33 タービン軸
34 出力軸
101 発電機制御部
102 学習制御部
C1、C2、C3 クラッチ
C4 ワンウェイクラッチ
B1、B2 ブレーキ
Cr 摩擦係合要素(一の摩擦係合要素)
Ce 摩擦係合要素(他の摩擦係合要素)

Claims (4)

  1. 車両の駆動源としてのエンジンと、
    前記車両の減速時に回生発電可能な発電機と、
    複数の摩擦係合要素の係合と解放との組み合わせにより複数の変速段のうちいずれかの変速段を選択的に成立させて、前記エンジンから入力される回転を、選択された変速段に応じた変速比で変速して出力する自動変速機と、を備えた車両用駆動装置の制御装置であって、
    前記発電機の回生トルクを制御する発電機制御部と、
    前記車両のコースト減速走行中に前記摩擦係合要素の解放点及び係合点の少なくとも一方を学習する学習制御部と、を備え、
    前記発電機制御部は、
    前記コースト減速走行中にダウンシフトが実行される場合、
    一の摩擦係合要素の解放に伴い前記自動変速機に入力される制動トルクが減少するのに応じて前記回生トルクを増加させ、他の摩擦係合要素の係合に伴い前記自動変速機に入力される制動トルクが増加するのに応じて前記回生トルクを減少させることにより、前記摩擦係合要素の解放点及び係合点の少なくとも一方を学習する学習期間において前記自動変速機に入力される前記制動トルクと前記回生トルクとを合算した入力トルクの変化割合を所定値以下とすることを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
  2. 前記制動トルクは、前記エンジンにおいて発生するエンジンブレーキトルクであることを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
  3. 前記発電機制御部は、前記学習期間において前記自動変速機に入力される前記入力トルクの変化割合が0となるよう、前記回生トルクを制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
  4. 前記学習期間は、前記ダウンシフトの変速動作期間であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
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