JP2017166537A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Hideo Watanabe
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Abstract

【課題】クラッチ・ツウ・クラッチ変速における変速動作や制御のばらつきを学習し、適切な変速制御を実行すること。【解決手段】変速前の第1変速段で係合させられる解放側クラッチおよび変速後の第2変速段で係合させられる係合側クラッチを備え、クラッチ・ツウ・クラッチ変速を実行する自動変速機の制御装置において、車両の走行中に、前記解放側クラッチへ供給する第1油圧を減少させて前記解放側クラッチにスリップを発生させ(ステップS2)、そのスリップを維持した状態で前記係合側クラッチへ供給する第2油圧を段階的に漸増させ(ステップS5)、前記自動変速機の入力軸回転数が前記解放側クラッチの同期回転数をアンダーシュートした時点の前記第2油圧に基づいて、前記変速制御を実行する際に前記係合側クラッチにおけるクラッチパックのクリアランスを予め低減させるパック圧を学習する(ステップS9)。【選択図】図2

Description

この発明は、車両に搭載される自動変速機の制御装置に関し、特に、複数の係合機構の係合および解放の状態を切り替えることによって複数の変速段(変速比)を設定することが可能な自動変速機の変速制御を実行する制御装置に関するものである。
特許文献1には、摩擦締結要素の油圧や作動時間のばらつきを学習して適切な変速動作を実施することにより、シフトクオリティを向上させることを目的とした自動変速機に関する発明が記載されている。この特許文献1に記載された自動変速機は、ベルト式無段変速機構と共に、複数の摩擦締結要素を選択的に締結することによって複数の変速段のいずれかを設定する副変速機構を備えている。そして、副変速機構において、トルクフェーズを経てイナーシャフェーズに移行するような変速が実施される場合に、摩擦締結要素のスリップおよび再締結による学習制御を実行するように構成されている。具体的には、この特許文献1に記載された自動変速機では、いわゆるパワーONアップシフトまたはパワーOFFダウンシフトが実施される場合に、実際の変速動作の開始前に、解放側摩擦締結要素で微小スリップを発生させるために油圧が減少させられる。その後、実際の変速動作に移行した際に、締結側摩擦締結要素の油圧が増大させられてトルク伝達開始状態に保持される。それとともに、解放側摩擦締結要素の微小スリップが解消される。すなわち、解放側摩擦締結要素が再締結される。解放側摩擦締結要素の再締結の際には、その再締結に要した締結時間および締結速度が計測されて記憶される。そして、それら記憶された締結時間および締結速度に基づいて、次回変速時の締結側摩擦締結要素に対する制御量としてトルク伝達開始油圧およびプリチャージ油圧の学習値が算出される。
なお、特許文献2には、変速動作の応答性や追随性を向上させることを目的とした自動変速機に関する発明が記載されている。この特許文献2に記載された自動変速機は、変速時に係合する摩擦係合要素を係合開始寸前の状態で待機させるための待機油圧を、エンジン回転数とトルクコンバータのタービン回転数との差分値に基づいて学習するように構成されている。具体的には、特許文献2に記載された自動変速機では、自動変速機の入力軸回転数を維持した状態で、待機油圧を設定する摩擦係合要素に対する係合油圧が所定の時間間隔毎に漸増させられ、その摩擦係合要素が係合側に推移させられる。また、所定の判定サイクルでタービン回転数が測定され、現在のタービン回転数と所定の判定サイクル前のタービン回転数との差分値が算出される。そして、現在の判定サイクルにおいて、現在の判定サイクルにおける差分値および前回の判定サイクルにおける差分値がいずれも閾値を超えており、かつ、両判定サイクルにおける差分値がいずれもタービン回転数の減少傾向を示す場合に、その時点の係合油圧が次回変速時の待機油圧として設定される。
特開2011−38634号公報 特開2008−106943号公報
上記のように、特許文献1に記載された自動変速機では、以降の変速時に締結側摩擦締結要素をトルク伝達開始状態にするための制御量(トルク伝達開始油圧およびプリチャージ油圧)が学習される。そのような制御量を学習して次回の変速制御にフィードバックすることにより、次回の変速制御における締結側摩擦締結要素の締結動作を適切に実施することができる、とされている。しかしながら、特許文献1に記載された自動変速機は、次回の変速制御におけるトルク伝達開始油圧およびプリチャージ油圧等の制御量を、解放側摩擦締結要素の再締結動作に基づいて学習しているため、次回の変速制御における制御量を誤学習してしまうおそれがある。すなわち、上記のような締結側摩擦締結要素の再締結動作時には、解放側摩擦締結要素で微小スリップを発生させる際の制御油圧のばらつきやエンジントルクの低下など影響を受ける場合がある。また、再締結のための油圧供給開始から再締結が完了するまでの間の応答遅れの影響を受ける場合もある。そのため、上記のような再締結動作に基づいて次回の変速制御における制御量を学習すると、その際の学習値に油圧やエンジントルクのばらつきあるいは応答遅れに起因する誤差を含んでしまい、適切な制御量の学習値を得られない、すなわち、制御量を誤学習してしまう可能性がある。
この発明は上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、複数の係合機構の係合および解放状態の切り替えを伴う変速制御のばらつきを学習し、適切な変速制御を実行することのできる自動変速機の制御装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、この発明は、駆動力源として車両に搭載されるエンジンと、前記エンジンの出力側に連結されるとともに変速前の第1変速段で係合させられる第1摩擦係合機構および変速後の第2変速段で係合させられる第2摩擦係合機構を有する自動変速機とを備え、前記第1摩擦係合機構の第1伝達トルク容量を低下させるとともに前記第2摩擦係合機構の第2伝達トルク容量を増大させて前記第1変速段から前記第2変速段への変速制御を実行する自動変速機の制御装置において、前記エンジンおよび前記自動変速機を制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記車両の走行中に、前記第1摩擦係合機構へ供給する第1油圧を減少させて前記第1伝達トルク容量を低下させることにより前記第1摩擦係合機構にスリップを発生させ、前記第1油圧をフィードバック制御して前記第1摩擦係合機構のスリップを維持した状態で、前記第2摩擦係合機構へ供給する第2油圧を増大させて前記第2伝達トルク容量を段階的に漸増させ、前記自動変速機の入力軸回転数が前記第1摩擦係合機構の同期回転数を下回るまたは上回る時点の前記第2伝達トルク容量を設定している前記第2油圧に基づいて、前記変速制御を実行する際に前記第2摩擦係合機構におけるクラッチパックのクリアランスを予め低減させるためのパック圧を学習することを特徴とする制御装置である。
この発明によれば、車両の走行時に、第1摩擦係合機構で意図的に微小なスリップ状態がつくられ、そのスリップ状態から入力軸回転数が同期回転数を越えた時点、すなわち、入力軸回転数が同期回転数をアンダーシュートもしくはオーバーシュートした時点の第2摩擦係合機構に対する第2油圧が、以降の変速制御におけるパック圧として学習される。そのため、第1摩擦係合機構を再係合させる場合に、第1摩擦係合機構で微小スリップを発生させる際の制御油圧のばらつきやエンジントルクの低下、あるいは、応答遅れなど影響を排除し、パック圧を適切に学習することができる。
この発明の制御装置で対象とする車両のパワートレーンおよび制御系統の一例を説明するためのブロック図である。 この発明の制御装置で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。 図2のフローチャートに示す制御を実行した場合のエンジン回転数ならびに係合側クラッチ(クラッチC1)に対するクラッチトルク指令値および解放側クラッチ(クラッチC2)に対するクラッチトルク指令値の変化を説明するためのタイムチャートである。
図1は、この発明で対象とする自動変速機を搭載する車両のパワートレーンを模式的に示している。駆動力源であるエンジン1の出力側に、自動変速機2が連結されている。自動変速機2は、変速比が互いに異なる複数の変速段を設定することのできる有段変速機である。自動変速機2は、クラッチやブレーキなどの複数の係合機構(以下、単にクラッチと記す)の係合および解放の組み合わせに応じた変速段(変速比)が設定されるように構成されている。それらのクラッチは、一例として、油圧によって作動させられ、また油圧に応じた伝達トルク容量(クラッチトルク)を持つ油圧式の摩擦係合機構である。図1には、所定の変速段で係合させられるクラッチC1と、その所定の変速段と変速比が異なる他の変速段で係合させられるクラッチC2とを模式的に示してある。なお、これらのクラッチC1,C2のいずれか一方が、この発明における第1摩擦係合機構に相当し、他方がこの発明における第2摩擦係合機構に相当している。
自動変速機2の出力側にプロペラシャフト3が連結されている。プロペラシャフト3は、終減速機であるデファレンシャルギヤ4に連結されている。そして、車両Veは、デファレンシャルギヤ4から左右の駆動軸5を介して駆動輪6に駆動トルクを伝達するように構成されている。
エンジン1は、燃料の供給や点火時期あるいは燃焼気筒数を電気的に制御できるように構成されている。そのような制御を行うためのコントローラ(E−ECU)7が設けられている。このE−ECU7は、マイクロコンピュータを主体として構成された電子制御装置である。E−ECU7は、例えば、入力されたデータや予め記憶しているデータを使用して演算を行い、その演算結果を制御指令信号としてエンジン1に出力するように構成されている。E−ECU7には、例えば、車速センサ8、アクセル開度センサ9、および、エンジン回転数センサ(図示せず)などが連結され、車両の走行状態を示すデータとして車速、アクセル開度、および、エンジン回転数などが、各センサからE−ECU7に入力される。そして、E−ECU7は、入力されたデータおよび予め記憶させられているデータ等を使用して演算を行い、その演算結果を基に制御指令信号を出力するように構成されている。
自動変速機2は、上記の各クラッチの係合および解放の状態に応じて所定の変速段に設定される変速機構と、その変速機構の入力側に配置されたトルクコンバータ(図示せず)とを備えている。なお、自動変速機2は、例えば、前掲の特許文献2の[図1]に記載されている構成と同様の構成の機構であってもよい。また、自動変速機2に備えられるトルクコンバータは、ロックアップクラッチを有する従来知られている構成のものであってもよい。自動変速機2には、上記のような各クラッチやロックアップクラッチを作動させるための油圧制御部10が設けられている。油圧制御部10は、電気的に制御されるバルブ(図示せず)によってライン圧を制御し、また、各クラッチC1,C2やロックアップクラッチなどに対する油圧の供給および排出、ならびに、各クラッチC1,C2のクラッチトルクを設定するための油圧などを制御するように構成されている。この油圧制御部10は、従来知られている車両用の自動変速機に備えられている油圧制御部と同様の構成のものであってよい。
上記のような油圧制御部10を介して自動変速機2を制御するためのコントローラ(T−ECU)11が設けられている。このT−ECU11は、マイクロコンピュータを主体として構成された電子制御装置である。T−ECU11は、上記のE−ECU7とデータ通信可能に接続されている。また、T−ECU11は、例えば、入力されたデータや予め記憶しているデータを使用して演算を行い、その演算結果を制御指令信号として油圧制御部10に出力するように構成されている。T−ECU11には、各センサから、あるいはE−ECU7を介して、例えば、車両の走行状態を示すデータとして車速、アクセル開度、および、エンジン回転数などが入力される。そして、T−ECU11は、入力されたデータおよび予め記憶させられているデータ等を使用して演算を行い、その演算結果を基に制御指令信号を出力するように構成されている。
T−ECU11が予め記憶しているデータには、変速線図が含まれる。変速線図は、一例として、車速とアクセル開度とによって変速段の領域を定めた線図であって、アップシフト線とダウンシフト線とが定められている。そして、変速線図は、車速とアクセル開度とによって決まる走行状態がアップシフト線を横切るように変化することによりアップシフトの判断が成立し、また、走行状態がダウンシフト線を横切るように変化することによりダウンシフトの判断が成立するように構成されている。
なお、図1では、制御対象毎にE−ECU7とTECU11とが別々に設けられた例を示しているが、複数の制御対象を集約して一体のコントローラによって制御するように構成することもできる。
この自動変速機2は、変速比の異なる複数の変速段を設定するための複数の係合機構(図1に示す例では、クラッチC1およびクラッチC2)を有し、各係合機構の係合および解放の状態を切り換えることにより変速が達成される。具体的には、変速前の変速段で係合していた係合機構(解放側クラッチ)を解放し、かつ、変速後の変速段を設定する係合機構(係合側クラッチ)を係合させるいわゆるクラッチ・ツウ・クラッチ変速を行うように構成されている。
そして、この自動変速機2の制御装置は、複数の係合機構の係合および解放状態の切り替えを伴う変速、すなわち、上記のようなクラッチ・ツウ・クラッチ変速における変速動作や制御のばらつきを学習し、適切な変速を実行することができるように構成されている。図2のフローチャートに、その制御の一例を示してある。図2のフローチャートに示す各ステップでの制御は、車両の走行中に、前述したE−ECU7あるいはT−ECU11によって実行される。したがって、これらE−ECU7およびT−ECU11が、この発明におけるコントローラに相当している。
図2に示す制御例では、先ず、解放側クラッチ(図2,図3に示す例ではクラッチC1)が徐々に解放されてスリップが発生させられる。それとともに、スリップ発生後は、クラッチC1が微小スリップ状態となるように、クラッチC1に対する油圧(第1油圧)がフィードバック制御される(ステップS1)。
具体的には、図3のタイムチャートに示すように、先ず、クラッチC1のクラッチトルクを制御するソレノイドに対する指令値(クラッチトルク指令値)が徐々に低下させられる(時刻t0から時刻t1)。実際には、クラッチトルク指令値としてクラッチC1に供給される第1油圧が減少させられる。クラッチC1に対するクラッチトルク指令値が徐々に低下させられることにより、クラッチC1が徐々に解放し、時刻t1でスリップが発生する。このスリップは、この図3のタイムチャートに示すように、現在の変速段における変速前の同期回転数Nogearと、トルクコンバータのタービン回転数Ntもしくはエンジン回転数Neとの偏差を算出することによって検出することができる。例えば、その偏差が所定のスリップ判定閾値以上となった場合に、クラッチC1におけるスリップの発生を判断することができる。
クラッチC1におけるスリップの発生が判定された時刻t1以降は、そのスリップが微小スリップ状態となるように、クラッチトルク指令値がフィードバック制御される。実際には、第1油圧がフィードバック制御される。微小スリップ状態は、例えば、上記の偏差がスリップ判定閾値以上でかつ所定の微小スリップ閾値未満であるスリップの状態として定義することができる。
なお、同期回転数は自動変速機2の出力軸回転数と変速比とから求まる回転数である。また、図3のタイムチャートでは、所定値以上のアクセル開度で車両が走行するアクセルON走行時に実行される制御の一例を示している。
次いで、クラッチC1の微小スリップ状態が安定したか否かが判断される(ステップS2)。例えば、上記のように判定された微小スリップ状態が所定時間以上継続している場合に、クラッチC1における微小スリップ状態が安定したと判断することができる。
未だ、クラッチC1の微小スリップ状態が安定していないことにより、このステップS2で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、このルーチンを一旦終了する。すなわち、クラッチC1の微小スリップ状態が安定するまで、ステップS1およびステップS2の制御が繰り返される。
これに対して、クラッチC1の微小スリップ状態が安定したことにより、ステップS2で肯定的に判断された場合には、ステップS3へ進む。ステップS3では、クラッチC1を微小スリップ状態にするためのフィードバック制御が停止される。
ステップS4では、係合側クラッチ(図2,図3に示す例ではクラッチC2)のクラッチトルクがステップアップされる。すなわち、クラッチC2に対するクラッチトルク指令値が、図3のタイムチャートに示すように、段階的に漸増させられる。実際には、クラッチトルク指令値としてクラッチC2に供給される第2油圧が段階的に漸増させられる。
続いて、エンジン回転数Neの変化が開始したか否かが判断される(ステップS5)。具体的には、図3のタイムチャートに示すように、実際のエンジン回転数Neが、エンジン回転数見込み値Nepよりも小さくなった場合に、エンジン回転数Neが低下する変化が開始したと判断することができる(加速時)。あるいは、エンジン回転数Neが、エンジン回転数見込み値Nepよりも大きくなった場合に、エンジン回転数Neが上昇する変化が開始したと判断することができる(減速時)。エンジン回転数見込み値Nepは、上記のようにエンジン回転数Neの変化(低下または上昇)の開始時点を判断するための閾値であり、エンジン回転数Neの変化が開始したと見なすことができる値に設定されている。例えば、エンジン回転数見込み値Nepは、上記のような微小スリップ状態のフィードバック制御を実行する際の目標回転数と、同期回転数Nogearとの間の値に設定されている。
未だ、エンジン回転数Neの変化が開始していないことにより、このステップS5で否定的に判断された場合は、前述のステップS4へ戻り、従前と同様の制御が実行される。すなわち、このステップS5でエンジン回転数Neの変化が開始したと判断されるまで、ステップS4およびステップS5の制御が繰り返される。
これに対して、エンジン回転数Neの変化が開始したことにより、ステップS5で肯定的に判断された場合には、ステップS6へ進む。ステップS6では、上述のステップS4で開始された係合側クラッチにおけるクラッチトルクのステップアップが停止される。すなわち、図3のタイムチャートに示すように、エンジン回転数Neの変化が開始した場合(時刻t3)に、クラッチC2に対するクラッチトルク指令値が、時刻t3の時点で出力されていた値に一旦保持される。これは、上記のようなエンジン回転数Neの変化が開始する時点(時刻t3)を判断する際の誤学習を防止するための制御である。上記のような時刻t3を検出する場合に、仮に、第2油圧を段階的に漸増(ステップアップ)させる間隔が短いと、変化を開始したエンジン回転数Neが同期回転数Nogearに至る前にクラッチトルク指令値が次の段階にステップアップされてしまい、後述するパック圧を誤学習してしまう可能性がある。そのため、このステップS6では、クラッチトルクのステップアップが停止され、エンジン回転数Neの変化開始を判断した時点(時刻t3)のクラッチトルク指令値が保持される。
続いて、ステップS7では、エンジン回転数Neの低下開始を判断した時点のクラッチC2に対するクラッチトルク指令値および第2油圧が一時保存される。また、そのクラッチトルク指令値が出力された時点からエンジン回転数Neの低下が開始するまでに要した時間が一時保存される。すなわち、図3のタイムチャートに示すように、エンジン回転数Neの変化開始を判断した時点(時刻t3)のクラッチC2に対するクラッチトルク指令値Ctおよび第2油圧が、T−ECU11のメモリに読み込まれる。それと共に、時刻t3のクラッチC2に対するクラッチトルク指令値Ctが出力された時点(時刻t2)から時刻t3までの時間Tdが、クラッチトルク指令値Ctに対する応答遅れ(むだ時間)としてT−ECU11のメモリに読み込まれる。
続いて、エンジン回転数Neが閾値を超えたか否か、すなわち、エンジン回転数Neがアンダーシュートまたはオーバーシュートしたか否かが判断される(ステップS8)。例えば、図3のタイムチャートに時刻t4で示すように、実際のエンジン回転数Neが、閾値として設定された同期回転数Nogearを下回った場合(加速時)に、エンジン回転数Neがアンダーシュートしたと判断することができる。あるいは、実際のエンジン回転数Neが、閾値として設定された同期回転数Nogearを上回った場合(減速時)に、エンジン回転数Neがオーバーシュートしたと判断することができる。
未だ、エンジン回転数Neが閾値を超えていない、すなわち、エンジン回転数Neは、アンダーシュートおよびオーバーシュートのいずれも生じていないことにより、このステップS8で否定的に判断された場合は、ステップS9へ進む。ステップS9では、エンジン回転数Neの変化が終了したか否かが判断される。具体的には、図3のタイムチャートに示すように、時刻t3で変化開始と判断されたエンジン回転数Neの変化が終了したか否かが判断される。この場合の変化の終了は、エンジン回転数Neが変化する際の変化傾向(傾き)が変化したか否かで判断することができる。例えば、図3のタイムチャートに示すように、加速時に、エンジン回転数Neが低下している状態の変化傾向が上昇に転じること、または、エンジン回転数Neが一定になることにより、エンジン回転数Neの変化が終了したと判断される。あるいは、減速時に、エンジン回転数Neが上昇している状態の変化傾向が低下に転じること、または、エンジン回転数Neが一定になることにより、エンジン回転数Neの変化が終了したと判断される。
エンジン回転数Neの変化が終了したことにより、このステップS9で肯定的に判断された場合は、ステップS10へ進む。ステップS10では、前述のステップS7で一時保存されたクラッチC2に対するクラッチトルク指令値および第2油圧がクリアされる。その後、前述のステップS4へ戻り、従前と同様の制御が実行される。すなわち、この場合は、ステップS4でクラッチトルクのステップアップが開始されることによって変化を開始したエンジン回転数Neが、同期回転数Nogearに到達する以前に変化を終了してしまった状態である。したがって、この場合は、上記のように、一時保存されたクラッチトルク指令値および第2油圧がクリアされるとともに、ステップS4へ戻り、再度、クラッチトルクのステップアップが開始される。
一方、エンジン回転数Neの変化が未だ終了していないことにより、ステップS9で否定的に判断された場合には、ステップS8へ戻り、従前と同様の制御が実行される。すなわち、この場合は、未だ変化が継続しているエンジン回転数Neが、閾値である同期回転数Nogearを超えるまで、言い換えると、エンジン回転数Neが同期回転数Nogearをアンダーシュートまたはオーバーシュートするまで、ステップS8およびステップS9の制御が繰り返される。
そして、エンジン回転数Neが閾値を超えた、すなわち、エンジン回転数Neが同期回転数Nogearをアンダーシュートした、または、エンジン回転数Neが同期回転数Nogearをオーバーシュートしたことにより、前述のステップS8で肯定的に判断された場合には、ステップS11へ進む。ステップS11では、上記のステップS7で一時保存されたクラッチトルク指令値Ctおよび第2油圧ならびにむだ時間Tdが確定保存される。すなわち、クラッチトルク指令値Ctおよび第2油圧ならびにむだ時間Tdが学習値として記憶され、次回の変速制御にフィードバックされる。例えば、このステップS11で確定保存された第2油圧は、自動変速機2に対する変速制御を実行する際に、クラッチC2におけるクラッチパックのクリアランスを予め低減させておくためのパック圧として学習され、次回の変速制御にフィードバックされる。また、自動変速機2の変速応答性が向上するように、このステップS11で確定保存されたむだ時間Tdが考慮されて、次回の変速制御にフィードバックされる。そしてその後、このルーチンを一旦終了する。
以上のように、この自動変速機2の制御装置によって実行される変速制御によれば、車両の走行時に、クラッチC1で意図的に微小スリップ状態がつくられ、その微小スリップ状態から、エンジン回転数Ne(もしくはタービン回転数Nt)すなわち自動変速機2の入力軸回転数が、クラッチC1の同期回転数Nogearを越えた時点、すなわち、入力軸回転数が同期回転数Nogearをアンダーシュートまたはオーバーシュートした時点のクラッチC2に対する第2油圧が、以降の変速制御におけるパック圧として学習される。そのため、微小スリップ状態からクラッチC1を再係合させる場合に、制御油圧のばらつきやエンジントルクの低下、あるいは、応答遅れなど影響を排除し、パック圧を適切に学習することができる。また、パック圧を設定する際のむだ時間も適切に学習することができる。
また、上記のような学習制御は、車両の走行中に実行される。すなわち、自動変速機2の変速の有無にかかわらず、車両の加速走行時および減速走行時に実行される。したがって、上記のような学習制御の実行頻度を増大することができ、上記のようなパック圧やむだ時間を精度良く学習することができる。
また、自動変速機2が、3段以上の変速段を設定することが可能な多段式の変速機である場合には、上記のような学習制御は、例えば第1速から第2速への変速時に、第2速用のクラッチ(第2速で係合されるクラッチ)に対する学習だけではなく、回転数を低下させる方向に作用するクラッチであれば、他のどのクラッチに対しても適用することができる。そのため、上記のような学習制御を適用するクラッチの自由度が高くなり、また、上記のような学習制御の実行頻度を増大することができ。
なお、上記の具体例では、アクセルON走行時に実行される制御の一例を説明したが、この自動変速機2の制御装置は、アクセル開度が0もしくは所定値未満のアクセル開度で車両が走行するアクセルOFF走行時にも、上記と同様の学習制御を実行することができる。
1…エンジン、 2…自動変速機、 3…プロペラシャフト、 4…デファレンシャルギヤ、 5…車軸、 6…駆動輪、 7…コントローラ(E−ECU)、 8…車速センサ、 9…アクセル開度センサ、 10…油圧制御部、 11…コントローラ(T−ECU)、 C1,C2…クラッチ(摩擦係合機構)。

Claims (1)

  1. 駆動力源として車両に搭載されるエンジンと、前記エンジンの出力側に連結されるとともに変速前の第1変速段で係合させられる第1摩擦係合機構および変速後の第2変速段で係合させられる第2摩擦係合機構を有する自動変速機とを備え、前記第1摩擦係合機構の第1伝達トルク容量を低下させるとともに前記第2摩擦係合機構の第2伝達トルク容量を増大させて前記第1変速段から前記第2変速段への変速制御を実行する自動変速機の制御装置において、
    前記エンジンおよび前記自動変速機を制御するコントローラを備え、
    前記コントローラは、
    前記車両の走行中に、前記第1摩擦係合機構へ供給する第1油圧を減少させて前記第1伝達トルク容量を低下させることにより前記第1摩擦係合機構にスリップを発生させ、
    前記第1油圧をフィードバック制御して前記第1摩擦係合機構のスリップを維持した状態で、前記第2摩擦係合機構へ供給する第2油圧を増大させて前記第2伝達トルク容量を段階的に漸増させ、
    前記自動変速機の入力軸回転数が前記第1摩擦係合機構の同期回転数を下回るまたは上回る時点の前記第2伝達トルク容量を設定している前記第2油圧に基づいて、前記変速制御を実行する際に前記第2摩擦係合機構におけるクラッチパックのクリアランスを予め低減させるためのパック圧を学習する
    ことを特徴とする自動変速機の制御装置。
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CN113217587A (zh) * 2021-06-02 2021-08-06 田应雄 变径齿轮无级变速器
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