JP2022098577A - 硬化性組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】 良好な保存安定性(ポットライフ)を有し、良好な硬化物の物物性が発現可能な硬化性組成物を提供することを目的とする。【解決手段】カルボキシ基を有するアクリル樹脂と、多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートと、酸安定剤とを含み、カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比が0.01/1以上、0.5/1未満である、硬化性組成物である。【選択図】なし
Description
本発明は、硬化性組成物に関する。
例えば、特許文献1には、セメント系成形体の養生時にセメント系成形体の表面から水分の散逸を抑制するための硬化性組成物として、下記式(1)で表されるジエステル化合物を含有する養生剤が開示されている。
上記式(I)において、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、若しくは1~15個の炭素原子を有する一価の炭化水素基である、又はR1及びR2が一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成しており、R3及びR4は、それぞれ独立に1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表す、又はR3及びR4が一緒になって3~30個の炭素原子を有する2価の有機基を形成している。
特許文献1には、上記組成物によれば、養生時にセメント系成形体の表面からの水分の散逸を効果的に抑制できることが開示されている。
上記のとおり種々の硬化性組成物が知られているが、保存安定性と、硬化性とを両立させるという観点から、改良の余地があった。
よって、本開示は、良好な保存安定性(ポットライフ)を有し、良好な硬化物の物性が発現可能な硬化性組成物を提供することを目的とする。
よって、本開示は、良好な保存安定性(ポットライフ)を有し、良好な硬化物の物性が発現可能な硬化性組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成する為に種々検討を行ない、本発明に想到した。
すなわち、本開示の硬化性組成物は、カルボキシ基を有するアクリル樹脂と、多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートと、酸安定剤とを含み、カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比が0.01/1以上、0.5/1未満である、硬化性組成物である。
すなわち、本開示の硬化性組成物は、カルボキシ基を有するアクリル樹脂と、多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートと、酸安定剤とを含み、カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比が0.01/1以上、0.5/1未満である、硬化性組成物である。
本開示の硬化性組成物は、良好な保存安定性(ポットライフ)を有し、硬化した際には良好な硬化物の物性を発現することが可能となる。
以下、本開示を詳細に説明する。
なお、以下において記載する本開示の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本開示の好ましい形態である。
なお、以下において記載する本開示の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本開示の好ましい形態である。
[本開示の硬化性組成物]
<多官能メチレンマロネート>
本開示の硬化性組成物は、1種または2種以上の多官能メチレンマロネートを含むことができる。多官能メチレンマロネートとしては、メチレンマロネート構造単位を2または3以上含む化合物であれば、特に制限されない。多官能メチレンマロネートとしては、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位を2または3以上含む化合物が例示される。
<多官能メチレンマロネート>
本開示の硬化性組成物は、1種または2種以上の多官能メチレンマロネートを含むことができる。多官能メチレンマロネートとしては、メチレンマロネート構造単位を2または3以上含む化合物であれば、特に制限されない。多官能メチレンマロネートとしては、例えば、下記一般式(2)で表される構造単位を2または3以上含む化合物が例示される。
一般式(2)において、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、1~15個の炭素原子を有する一価の炭化水素基である、又はR1及びR2が一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成していることを示す。なお、一般式(2)で表される構造単位とは、上記一般式(2)のカッコ内の構造単位を表す。
上記多官能メチレンマロネートは、上記一般式(2)で表される構造単位以外に、多価アルコールの残基を含むことが好ましい。多価アルコールの残基とは、多価アルコールから少なくとも2の水素原子を除いた基を表す。例えば、エチレングリコール、HO-CH2CH2-OH、の残基は、-CH2CH2-で表すことができる。
上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール等の2価のアルコール;グリセリン、ポリグリセリン、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上のアルコールなどが例示される。
上記多価アルコールとしては、分子量が400以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、50以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましい。
本開示の硬化性組成物は、多官能メチレンマロネートとして、下記一般式(3)で表される構造単位を2または3以上含む化合物を含んでいても良い。
一般式(3)において、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、1~15個の炭素原子有する一価の炭化水素基である、又はR1及びR2が一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成していることを示し、R5は、分子量400以下の多価アルコールの残基を表す。なお、一般式(3)で表される構造単位とは、上記一般式(3)のカッコ内の構造単位を表す。
本開示の硬化性組成物は、多官能メチレンマロネートとして、下記一般式(4)で表される構造の化合物を含んでいても良い。
一般式(4)において、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、1~15個の炭素原子有する一価の炭化水素基である、又はR1及びR2が一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成していることを示し、R3及びR4は、それぞれ独立に1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表し、R5は、同一もしくは異なって、分子量400以下の多価アルコールの残基を表し、nは1以上、55以下の数である。
本開示の硬化性組成物に含まれる多官能メチレンマロネートに含まれる式(2)で表される構造単位の含有量は、架橋効率を向上させる観点から、1.0mmol/g以上であることが好ましく、より好ましくは1.5mmol/g以上、さらに好ましくは2.0mmol/g以上、よりさらに好ましくは2.5mmol/g以上である。また後述する本開示のアクリル樹脂との相溶性を向上させる観点から、6.0mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは5.6mmol/g以下、さらに好ましくは5.2mmol/g以下である。
本開示の硬化性組成物に含まれる多官能メチレンマロネートは、特に限定されないが、重量平均分子量(以下、Mwともいう)が、300以上10000以下であることが好ましく、300以上5000以下であることがより好ましく、更に400以上3000以下であることがより好ましい。
本開示における多官能メチレンマロネートの重量平均分子量は、通常はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)の測定装置として、東ソー(株)製、品番:HLC-8220GPC、分離カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel Super MultiporeHZ-Nを用い、標準ポリスチレン〔東ソー(株)製〕によって換算した値である。上記の条件で測定することが妥当でない多官能メチレンマロネートについては、上記条件を適宜、最小限の変更を加えて測定しても良い。
上記多官能メチレンマロネートは、所望により上記多官能メチレンマロネートに含まれる2官能のメチレンマロネートの割合を低減しても良い。例えば、多官能メチレンマロネート100質量%に対し、2官能のメチレンマロネートの含有量を、40質量%以下、35質量%以下、あるいは25質量%以下としても良い。上記範囲であることにより、例えば硬化塗膜の機械物性が向上する傾向にあり、未硬化の2官能のメチレンマロネートのブリードアウトを減ずる傾向にある。
なお、2官能のメチレンマロネートとしては、下記一般式(5)の化合物が例示される。
一般式(5)において、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、1~15個の炭素原子有する一価の炭化水素基である、又はR1及びR2が一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成していることを示し、R3及びR4は、それぞれ独立に1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表し、R5は、分子量400以下の多価アルコールの残基を表す。
上記一般式(2)~(5)、および後述する一般式(6)において、R1およびR2の炭素数は、0~10個が好ましく、0~5個が好ましい。R1及びR2の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n-ブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基等が例示される。
上記一般式(2)~(5)、および後述する一般式(6)において、R1及びR2が一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成している場合、2価の炭化水素基の炭素数としては、4~12個が好ましく、5~9個がより好ましい。2価の炭化水素基の具体例としては、1,3-プロピレン基、1、4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-へキシレン基、1,5-へキシレン基等が挙げられる。
上記一般式(3)~(5)において、R5は、分子量400以下の多価アルコールの残基を表すが、多価アルコールの好ましい形態としては、上記のとおりである。
上記多官能メチレンマロネートは、例えば、ジエチルメチレンマロネート等のジアルキルメチレンマロネートと多価アルコールとをエステル交換させて製造することが可能であり、例えば、国際公開第2017/210415号、特表2015-517973号公報、特表2018-502852号公報、または国際公開第2018/031101号公報に記載の方法や、これに適宜、公知の製法を組み合わせた方法により製造することが可能である。
所望により、上記の方法に加え、多官能メチレンマロネートの合成・精製工程において酸安定剤としてリン酸またはリン酸エステルを共存させることにより製造した、上記2官能のメチレンマロネートや単官能のメチレンマロネートの含有量をより低減した多官能メチレンマロネート得ることができる。特に、多官能メチレンマロネートの合成原料としてジエチルメチレンマロネートを使用することが知られているが、ジエチルメチレンマロネートは反応性が高いため、生成物の多官能メチレンマロネートから、精製により除去することが難しかった。よって、従前の多官能メチレンマロネートには、ジエチルメチレンマロネートが多く含まれており、保存安定性に問題が生じることがあった。上記の精製方法により、ジエチルメチレンマロネートの含有量を低減した多官能メチレンマロネートを製造することが可能となった。後述するとおり、ジエチルメチレンマロネートの含有量の少ない硬化性組成物は、本開示の硬化性組成物の好ましい形態の一つである。
<単官能メチレンマロネート>
本開示の硬化性組成物は、1種または2種以上の単官能メチレンマロネートを含むことができる。単官能のメチレンマロネートとしては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(6)で表される構造単位を2または3以上含む化合物が例示される。
本開示の硬化性組成物は、1種または2種以上の単官能メチレンマロネートを含むことができる。単官能のメチレンマロネートとしては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(6)で表される構造単位を2または3以上含む化合物が例示される。
一般式(6)において、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、1~15個の炭素原子有する一価の炭化水素基である、又はR1及びR2が一緒になって3~15個の炭素原子を有する2価の炭化水素基を形成していることを示し、R3及びR4は、それぞれ独立に1~30個の炭素原子を有する1価の有機基を表す。
本開示の硬化性組成物の保存安定性を向上する観点から、R3とR4の合計の炭素数が12以上であることが好ましく、R3とR4の炭素数がそれぞれ6以上であることがより好ましい。
なお、高沸点の単官能メチレンマロネートの合成原料としてジエチルメチレンマロネートを使用することが知られているが、ジエチルメチレンマロネートは反応性が高いため、生成物の高沸点の単官能メチレンマロネートから、精製により除去することが難しかった。よって、従前の高沸点の単官能メチレンマロネートには、ジエチルメチレンマロネートが多く含まれており、保存安定性に問題が生じることがあった。上記の精製方法により、ジエチルメチレンマロネートの含有量を低減した高沸点の単官能メチレンマロネートを製造することが可能となった。後述するとおり、ジエチルメチレンマロネートの含有量の少ない硬化性組成物は、本開示の硬化性組成物の好ましい形態の一つである。
<アクリル系樹脂>
本開示の樹脂組成物は、カルボキシ基を有するアクリル系樹脂(以下、「本開示のアクリル系樹脂」という)を含む。本開示のアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上の(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位(以下、「(メタ)アクリル系構造単位」とも称する)を、(メタ)アクリル系構造単位と後述するその他の単量体構造単位の合計に対し、5質量%以上含む共重合体または単独重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸および/またはアクリル酸を意味する。(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位とは、(メタ)アクリル系単量体がラジカル重合して形成される構造と同じ構造を有する構造単位を言い、構造が同じであれば、実際に(メタ)アクリル系単量体がラジカル重合する方法以外の方法で形成された構造単位も含む。例えば、アクリル酸、CH2=CH(COOH)、由来の構造単位であれば-CH2-CH(COOH)-で表すことができる。
本開示の樹脂組成物は、カルボキシ基を有するアクリル系樹脂(以下、「本開示のアクリル系樹脂」という)を含む。本開示のアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上の(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位(以下、「(メタ)アクリル系構造単位」とも称する)を、(メタ)アクリル系構造単位と後述するその他の単量体構造単位の合計に対し、5質量%以上含む共重合体または単独重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル酸とは、メタクリル酸および/またはアクリル酸を意味する。(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位とは、(メタ)アクリル系単量体がラジカル重合して形成される構造と同じ構造を有する構造単位を言い、構造が同じであれば、実際に(メタ)アクリル系単量体がラジカル重合する方法以外の方法で形成された構造単位も含む。例えば、アクリル酸、CH2=CH(COOH)、由来の構造単位であれば-CH2-CH(COOH)-で表すことができる。
本開示のアクリル系樹脂に含まれるカルボキシ基の含有量は特に限定されないが、架橋率向上の観点から、カルボキシ基を0.6mmol/g以上含むことが好ましい。より好ましくは0.8mmol/g以上、さらに好ましくは1.0mmol/g以上、特に好ましくは1.2mmol/g以上である。なお、本開示において、「カルボキシ基」という用語を用いる場合には、特に言及する場合を除き、カルボキシ基の塩を含む。カルボキシ基の塩も架橋に寄与する。ポットライフ等の所望に応じてカルボキシ基の塩を含めても良い。塩としては、制限されないが、例えばアンモニウム塩、有機アミン塩、金属塩等が例示され、アルカリ金属塩、または有機アミンの塩が好ましい。
カルボキシ基は、重合体鎖のどこかに共有結合で結合していればよく、例えば主鎖に結合してもいてもよいしグラフト鎖に結合していてもよい。また重合体鎖の中央に結合していてもよいし末端に結合していてもよい。カルボキシ基含有量としては、架橋効率を向上させる観点か
本開示のアクリル系樹脂に含まれるカルボキシ基は、一部又は全部が中和されてもよく、その中和度は用途によって要求される硬化条件を満たすように選択すればよい。例えば、可使時間の確保を重視する場合は、本開示のアクリル系樹脂に含まれるカルボキシ基の内、中和度は50mol%以下が好ましく、より好ましくは20mol%以下、更により好ましくは10mol%以下である。また例えば、硬化の迅速性を重視する場合は、中和度は50mol%以上が好ましく、より好ましくは80mol%以上、更により好ましくは90mol%以上である。また、カルボキシ基の含有量の上限は、本開示の単官能メチレンマロネートもしくは多官能メチレンマロネートとの良好な相溶性を確保する観点から、6.0mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは5.0mmol/g以下であり、さらに好ましくは3.5mmol/g以下である。
本開示のアクリル系樹脂に含まれるカルボキシ基は、一部又は全部が中和されてもよく、その中和度は用途によって要求される硬化条件を満たすように選択すればよい。例えば、可使時間の確保を重視する場合は、本開示のアクリル系樹脂に含まれるカルボキシ基の内、中和度は50mol%以下が好ましく、より好ましくは20mol%以下、更により好ましくは10mol%以下である。また例えば、硬化の迅速性を重視する場合は、中和度は50mol%以上が好ましく、より好ましくは80mol%以上、更により好ましくは90mol%以上である。また、カルボキシ基の含有量の上限は、本開示の単官能メチレンマロネートもしくは多官能メチレンマロネートとの良好な相溶性を確保する観点から、6.0mmol/g以下であることが好ましく、より好ましくは5.0mmol/g以下であり、さらに好ましくは3.5mmol/g以下である。
本開示のアクリル系樹脂は、ラジカル重合法により種々の組成や分子量のものを容易に得ることができる観点から、(メタ)アクリル系構造単位を10質量%以上100質量%以下含むことがより好ましく、さらに好ましくは20質量%以上100質量%以下、よりさらに好ましくは30質量%以上100質量%以下、特に好ましくは40質量%以上100質量%以下である。
(メタ)アクリル系単量体としては、特に制限されず、本開示の架橋性樹脂組成物の用途に応じて適宜選択すればよいが、具体的に例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウムなどの(メタ)アクリル酸またはその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル類;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリルアミド類が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本開示のアクリル系樹脂は、(メタ)アクリル系単量体以外の単量体(以下、「その他の単量体」ともいう)に由来する構造単位(以下、「その他の単量体構造単位」ともいう)を含んでいても良い。その他の単量体としては、例えば、クロトン酸、けい皮酸、ビニル安息香酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和酸無水物類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル類;シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド等のN置換マレイミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;n-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニルアミド類;1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類;エチレン、プロピレン、1-ブテンなどのα-オレフィン類が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。その他の単量体は、本開示の架橋性樹脂組成物の用途に応じて適宜使用すれば良い。
本開示のアクリル系樹脂におけるその他の単量体構造単位の含有量は、(メタ)アクリル系構造単位とその他の単量体構造単位の合計に対し、好ましくは0質量%以上95質量%以下、より好ましくは0質量%以上90質量%以下含むことが好ましく、さらに好ましくは0質量%以上80質量%以下、よりさらに好ましくは0質量%以上70質量%以下、特に好ましくは0質量%以上60質量%以下である。
本開示の(メタ)アクリル系単量体を重合させる際には、連鎖移動剤を用いてもよく、連鎖移動剤の量を調整することによって重合体の分子量を調節することができる。連鎖移動剤の例として、例えば、2-メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3-メルカプトプロピオン酸オクチル、2-メルカプトエタンスルホン酸、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレートなどのチオール化合物;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタンなどのハロゲン化物;イソプロパノールなどの第2級アルコール;亜リン酸及びその塩、次亜リン酸及びその塩、亜硫酸及びその塩、亜硫酸水素及びその塩、亜二チオン酸及びその塩、メタ重亜硫酸及びその塩などが挙げられる。
また、(メタ)アクリル系単量体を重合させる際には、溶媒を用いてもよく、溶媒の例として、n-ヘキサン、n-ヘプタなどの脂肪族炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコールなどのアルコール;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン;ジメチルホルムアミドなどのアミドなどの有機溶媒が挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本開示のアクリル系樹脂の分子量は、本発明の架橋性樹脂組成物の用途に応じて適宜調整すればよいが、架橋効率の観点から500以上が好ましく、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは2000以上である。また作業性や本開示の単官能メチレンマロネートもしくは多官能メチレンマロネートとの相溶性の観点から1000000以下が好ましく、より好ましくは500000以下、さらに好ましくは300000以下である。本開示における分子量は、通常はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)の測定装置として、東ソー(株)製、品番:HLC-8220GPC、分離カラム:東ソー(株)製、品番:TSKgel Super HZM-Mを用い、標準ポリスチレン(東ソー(株)製)によって換算した値である。上記の条件で測定することが妥当でないアクリル系樹脂については、上記条件を適宜、最小限の変更を加えて測定しても良い。
<酸安定剤>
酸安定剤としては、有機スルホン酸が好ましく、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(トシル酸)等の芳香族スルホン酸等が挙げられる。
その他の酸安定剤としては、硫酸、亜硫酸、リン酸、リン酸エステル、トルフルオロ酢酸等の水中での酸解離定数(pKa)が3以下である酸、好ましくは2.5以下である酸が例示される。
上記酸安定剤は、限定されないが、本開示の硬化性組成物の製造時、保管時、輸送時などにおける、意図しないアニオン重合を抑制する目的で配合することが好ましい。
酸安定剤としては、有機スルホン酸が好ましく、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸等のアルキルスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸(トシル酸)等の芳香族スルホン酸等が挙げられる。
その他の酸安定剤としては、硫酸、亜硫酸、リン酸、リン酸エステル、トルフルオロ酢酸等の水中での酸解離定数(pKa)が3以下である酸、好ましくは2.5以下である酸が例示される。
上記酸安定剤は、限定されないが、本開示の硬化性組成物の製造時、保管時、輸送時などにおける、意図しないアニオン重合を抑制する目的で配合することが好ましい。
<その他の成分>
本開示の硬化組成物は、水酸基、エーテル基、エステル基、およびケトン基から選択される基の少なくともいずれか1つを有する有機化合物(以下、有機化合物(A)とも言う)を含有しても良い。なお、カルボキシ基を有するアクリル樹脂、多官能メチレンマロネート、単官能メチレンマロネート、および酸安定剤に該当する化合物は、有機化合物(A)には該当しないものとする。
本開示の硬化組成物は、水酸基、エーテル基、エステル基、およびケトン基から選択される基の少なくともいずれか1つを有する有機化合物(以下、有機化合物(A)とも言う)を含有しても良い。なお、カルボキシ基を有するアクリル樹脂、多官能メチレンマロネート、単官能メチレンマロネート、および酸安定剤に該当する化合物は、有機化合物(A)には該当しないものとする。
有機化合物(A)としては、特に言及する場合を除き、特に制限されないが、アニオン重合性を有さないか、メチレンマロネートジエチルエステルと比較して、低いアニオン重合性を有する化合物であることが好ましい。有機化合物(A)としては、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、n-ヘキサノール、n-オクタノール等のアルカン骨格にヒドロキシ基が結合した化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリトリトール等のポリオール;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル基含有アルコール;イソ酪酸3-ヒドロキシー2,2,4-トリメチルペンチル、2-メチル酪酸3-ヒドロキシー2-エチル2,4-ジメチルヘキシル、2-メチル酪酸3-ヒドロキシ-2,2,4-トリエチルヘキシル、酢酸3-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチルペンチル、2-メチル酪酸2-エチル-3-ヒドロキシ-2,4-ジメチルヘキシル、2-エチルヘキサン酸―ブチル2,4--ジエチル-3-ヒドロキシオクチル、2-エチルー4-メチルペンタン酸2,4-ジエチル-3-ヒドロキシ-2-イソブチルへプチル、2-エチル酪酸3-ヒドロキシ2,2,4-トリエチルヘキシル、2-シクロヘキシルプロピオン酸2-シクロヘキシル-3-ヒドロキシ-2,4-ジメチルヘキシル、2,2-ジシクロヘキシル酪酸3-ヒドロキシー2,2,4-トリシクロヘキシルブチル、2-メチル3-ヒドロキシ-2,4-ジ(p-メチルフェニル)ペンチル2(p-メチルフェニル)プロピオネート、1-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチルペンチル―3-イソブチレート、1-ヒドロキシ-2-エチル-2,4-ジメチルヘキシル-3(2-メチルブチレート)、1-ヒドロキシ-2,2,4-トリエチルヘキシル3(2-メチルブチレート)、1-ヒドロキシ-2,2,4-トリメチルペンチル3-アセテート等の飽和2,2,4-三置換モノエステル;1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のモノエステル;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジーn―ヘキシル、マロン酸ジシクロヘキシル等のジエステル;アセトン、2-ブタノン、3-ペンタノン、シクロヘキサノン、4-メチルー2-ペンタノンなどが例示される。好ましくは、n-ヘキサノール、イソ酪酸3-ヒドロキシー2,2,4-トリメチルペンチル、酢酸ブチル、4-メチルー2-ペンタノン、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールジエチルエーテルである。
上記有機化合物(A)は、活性水素基を有する場合には、酸型の形態における第1酸解離定数(pKa1)が14より大きいことが好ましい。
上記有機化合物(A)としては、炭素数が1以上であることが好ましく、炭素数が2以上であることがより好ましく、炭素数が4以上であることがさらに好ましく、炭素数が30以下であることが好ましく、炭素数が20以下であることがより好ましく、炭素数が10以下であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、本開示の硬化性組成物は、例えばアルカリ性表面などへ塗布した場合の硬化性が向上する傾向にある。
上記有機化合物(A)は、本開示の硬化性組成物の良好な保存安定性を確保する観点から、多官能メチレンマロネートのアニオン重合を開始する官能基を含まないことが好ましい。多官能メチレンマロネートのアニオン重合を開始する官能基は、例えばアミノ基等が挙げられる。
上記有機化合物(A)としては、沸点が50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましく、沸点が400℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましく、200℃以下であることがさらに好ましい。
上記以外のその他の成分としては、特に制限されないが、本開示の硬化性組成物は、所望に応じて、溶剤、分散剤、成膜助剤、湿潤剤、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ラジカル重合禁止剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、界面活性剤、活性水素を有するポリマー以外の重合体、単官能又は多官能の単量体、接着促進剤、充填剤、チキソトロープ剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、乳白剤、消泡剤、重合開始剤、染料、顔料などを含んでも良い。
<本開示の硬化性組成物の組成>
本開示の硬化性組成物は、硬化物の物性(機械的特性や、基材との密着性等)の観点から、カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比が0.01/1以上、0.5/1未満であることが好ましい。より好ましくは、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計1に対し、0.02以上、0.49以下であり、さらに好ましくは0.03以上、0.48以下であり、特に好ましくは0.04以上、0.47以下である。本開示の硬化性組成物は、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートから選択される少なくとも1種を有する。多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートは、それぞれ2種以上含んでも良い。多官能メチレンマロネートと単官能メチレンマロネートとの配合割合は、所望により設定することが可能であるが、多官能メチレンマロネートが多い場合、保存安定性が良好になる傾向があり、単官能メチレンマロネートが多い場合、硬化膜におけるメチレンマロネートに由来する構造単位の濃度を高めることができる。多官能メチレンマロネートと単官能メチレンマロネートの合計100質量%に対して、多官能メチレンマロネートまたは単官能メチレンマロネートのいずれか一方を90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上含むことがより好ましい。
本開示の硬化性組成物は、硬化物の物性(機械的特性や、基材との密着性等)の観点から、カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比が0.01/1以上、0.5/1未満であることが好ましい。より好ましくは、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計1に対し、0.02以上、0.49以下であり、さらに好ましくは0.03以上、0.48以下であり、特に好ましくは0.04以上、0.47以下である。本開示の硬化性組成物は、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートから選択される少なくとも1種を有する。多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートは、それぞれ2種以上含んでも良い。多官能メチレンマロネートと単官能メチレンマロネートとの配合割合は、所望により設定することが可能であるが、多官能メチレンマロネートが多い場合、保存安定性が良好になる傾向があり、単官能メチレンマロネートが多い場合、硬化膜におけるメチレンマロネートに由来する構造単位の濃度を高めることができる。多官能メチレンマロネートと単官能メチレンマロネートの合計100質量%に対して、多官能メチレンマロネートまたは単官能メチレンマロネートのいずれか一方を90質量%以上含むことが好ましく、95質量%以上含むことがより好ましい。
本開示の硬化性組成物は、2官能のメチレンマロネートの含有量を、多官能メチレンマロネートと単官能メチレンマロネートの合計100に対し、40質量%以下にすることが好ましく、35質量%以下にすることがより好ましく、25質量%以下とすることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、例えば硬化塗膜の機械物性が向上する傾向にあり、未硬化の2官能のメチレンマロネートのブリードアウトを減ずる傾向にある。
本開示の硬化性組成物は、ジエチルメチレンマロネートの含有量を多官能メチレンマロネートと単官能メチレンマロネートの合計100に対し、10質量%以下にすることが好ましく、5質量%以下にすることがより好ましく、1質量%以下とすることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、硬化性組成物の保存安定性が良好なものとなる傾向にある。
本開示の硬化組成物は、酸安定剤を多官能メチレンマロネートと単官能メチレンマロネートの合計100質量%に対して、0.0001質量部以上含むことが好ましく、0.001質量部以上含むことがより好ましく、0.003質量部以上含むことがさらに好ましく、0.1質量部以下含むことが好ましく、0.05質量部以下含むことがより好ましく、0.03質量部以下含むことがさらに好ましい。上記範囲であることにより、本開示の硬化性組成物の保存安定性が向上する傾向にあり、例えばアルカリ性表面などへ塗布した場合の硬化性が向上する傾向にある。
本開示の硬化組成物で、上記有機化合物(A)を含む場合は、多官能メチレンマロネート100質量部に対して、1質量部以上含むことが好ましく、3質量部以上含むことがより好ましく、5質量部以上含むことがさらに好ましく、100質量部以下含むことが好ましく、75質量部以下含むことがより好ましく、40質量部以下含むことがさらに好ましい。上記範囲であることにより、本開示の硬化性組成物の硬化速度を適切な範囲に制御しやすくなる傾向にある。
[本開示の架橋体]
本開示の架橋体は、カルボキシ基を有するアクリル樹脂と、多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートと、塩基とを接触させて得られる架橋体であって、上記カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、上記多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比が0.01/1以上、0.5/1未満である架橋体である。上記カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、上記多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比は、より好ましくは、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計1に対し、0.02以上、0.49以下であり、さらに好ましくは0.03以上、0.48以下であり、特に好ましくは0.04以上、0.47以下である。
本開示の架橋体は、カルボキシ基を有するアクリル樹脂と、多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートと、塩基とを接触させて得られる架橋体であって、上記カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、上記多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比が0.01/1以上、0.5/1未満である架橋体である。上記カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、上記多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比は、より好ましくは、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計1に対し、0.02以上、0.49以下であり、さらに好ましくは0.03以上、0.48以下であり、特に好ましくは0.04以上、0.47以下である。
本開示の架橋体における、カルボキシ基を有するアクリル樹脂と、多官能メチレンマロネート、および単官能メチレンマロネートの形態、好ましい形態等については、特に言及する場合を除き、上記本開示の硬化性組成物における形態、好ましい形態等と同様である。
[本開示の架橋体の製造方法]
本開示の架橋体の製造方法は、上記カルボキシ基を有するアクリル系樹脂、上記多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネート、および塩基を接触させる工程を含む。上記工程における、カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比は、0.01/1以上、0.5/1未満であり、より好ましくは、0.02以上、0.49以下であり、さらに好ましくは0.03以上、0.48以下であり、特に好ましくは0.04以上、0.47以下である。
本開示の架橋体の製造方法は、上記カルボキシ基を有するアクリル系樹脂、上記多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネート、および塩基を接触させる工程を含む。上記工程における、カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比は、0.01/1以上、0.5/1未満であり、より好ましくは、0.02以上、0.49以下であり、さらに好ましくは0.03以上、0.48以下であり、特に好ましくは0.04以上、0.47以下である。
本開示のアクリル系樹脂の存在下で、本開示の多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートと塩基とを接触させることが好ましく、本開示のアクリル系樹脂と本開示の多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートを接触させてから塩基と接触させる方法、本開示のアクリル系樹脂と塩基とを接触させてから、本開示の多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートと接触させる方法などが例示される。
上記接触させる工程は、必要に応じて他の成分の存在下で行っても良く、例えば本開示の樹脂組成物の任意成分などが例示される。本開示のアクリル系樹脂と本開示の多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートの好ましい使用割合は、本開示の樹脂組成物における本開示のアクリル系樹脂と本開示の多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートの含有割合と同様である。上記接触させる工程の好ましい温度条件としては、本開示の樹脂組成物と塩基とを接触させる工程と同様である。上記接触させる工程で使用する塩基およびその使用割合については、好ましくは本開示の樹脂組成物と塩基とを接触させる工程と同様である。
本開示のアクリル系樹脂の存在下で、本開示の多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートと塩基とを接触させる際に、本開示の多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートの含有量1質量部に対して、水の存在する量を2質量部以下とすることが好ましく、1質量部以下とすることがより好ましく、0.5質量部以下とすることが好ましい。上記接触する際の水の存在量は、0質量部以上であってよい。
本開示の架橋体の製造方法は、本開示の硬化性組成物と塩基とを接触させる工程(以下、「接触工程」ともいう)を含むことが好ましい。上記接触工程において、塩基と本開示の硬化性組成物とを接触させる方法としては、例えば、塩基を本開示の硬化性組成物に添加して混合する、表面に塩基を含む基材上に本開示の硬化性組成物を塗布する、本開示の硬化性組成物を基材上に塗布した後その上に塩基を塗布するなどが挙げられるが、これらに限定されるもので
はない。
はない。
塩基を本開示の硬化性組成物に添加して混合する場合、その添加量は塩基の種類、本開示のアクリル系樹脂の構造等に応じて適宜選択すればよい。また添加する塩基が本開示のアクリル樹脂のカルボキシ基と反応してカルボン酸塩を形成する低分子化合物であれば、架橋システムの効率性の観点で好ましい。
本開示の架橋体の製造方法で使用できる塩基としては、塩基として作用するものであれば特に制限されず、アルカリ金属、塩基性の低分子化合物から高分子化合物、塩基性表面を有する固体状物質まで種々のものを適用できる。塩基性の低分子化合物としては、入手性や取扱い性の観点から、金属酸化物、水酸化物塩、アルコキシド化合物、カルボン酸塩、アミン類などが好ましく挙げられる。
金属酸化物としては塩基性の金属酸化物が挙げられ、例えば、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化カリウム(K2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化銅(CuO)、酸化亜鉛(ZnO)などが挙げられる。
水酸化物塩としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化銅、水酸化亜鉛などの金属水酸化物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのアンモニウムヒドロキシド類;が挙げられる。
水酸化物塩としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化銅、水酸化亜鉛などの金属水酸化物;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどのアンモニウムヒドロキシド類;が挙げられる。
アルコキシド化合物としては式(R5O)m1Mで表される化合物が挙げられ(式中、R5は、置換基を有していてもよいアルキル基又はアリール基であり、より具体的には、1~10個の炭素原子を有するアルキル基又はアリール基であってよく、Mは、m1価のカチオンを表し、m1は1~4の整数である)、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、チタンテトライソプロポキシドなどの金属アルコキシド類が挙げられる。
カルボン酸塩としては、モノカルボン酸、又はジカルボン酸の塩が挙げられ、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸の塩のいずれであってもよい。当該カルボン酸の炭素数は、1~10個であってよく、1~6個であってもよい。カルボン酸塩としては、より具体的には例えば、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸亜鉛、安息香酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、酢酸とトリエチルアミンからなる塩などのカルボン酸塩類
が挙げられる。
が挙げられる。
アミン類はR1R2R3N(R1、R2、R3は、それぞれ独立して、水素、または置換基を有していてもよいアルキル基、または置換基を有していてもよいアリール基であり、それぞれ結合して環状構造を形成していてもよい)と表すことができ、例えばアンモニア、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、1-メチルピペリジン、モルホリン、4-メチルモルホリン、ピリジン、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、テトラメチルグアニジンなどが具体的に挙げられる。
塩基性の高分子化合物としては上述した塩基性の低分子化合物と同等の構造を有する高分子化合物を挙げることができ、具体的には例えば、(メタ)アクリル酸共重合体のナトリウム塩、(メタ)アクリル酸共重合体のアミン塩、(メタ)アクリル酸系共重合体以外のカルボン酸塩を有する重合体、ビニルピリジン共重合体、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
これらの塩基性化合物は、何らかの材料でカプセル化され、外部刺激によって放出されるものであってもよい。
これらの塩基性化合物は、何らかの材料でカプセル化され、外部刺激によって放出されるものであってもよい。
使用する塩基の使用量は、用途によって要求される硬化条件を満たすように選択すればよい。例えば、可使時間の確保を重視する場合は、本開示のアクリル系樹脂に含まれるカルボキシ基の内、中和度は50mol%以下が好ましく、より好ましくは20mol%以下、更により好ましくは10mol%以下である。また例えば、硬化の迅速性を重視する場合は、中和度は50mol%以上が好ましく、より好ましくは80mol%以上、更により好ましくは90mol%以上である。
なお、塩基性化合物のモル数は、塩基性化合物を化学量論的に完全に中和するのに必要な一価の強酸のモル数とする。
また、塩基性表面を有する固体状物質としては上記の塩基性の低分子化合物と同等の構造を表面に有する固体状物質を挙げることができ、具体的には例えば、塩基性アルミナ、ソーダライムガラス、モルタル、コンクリートなどが挙げられる。
なお、塩基性化合物のモル数は、塩基性化合物を化学量論的に完全に中和するのに必要な一価の強酸のモル数とする。
また、塩基性表面を有する固体状物質としては上記の塩基性の低分子化合物と同等の構造を表面に有する固体状物質を挙げることができ、具体的には例えば、塩基性アルミナ、ソーダライムガラス、モルタル、コンクリートなどが挙げられる。
本開示の本開示の硬化性組成物を架橋させる際の温度条件としては、使用する塩基との接触方法、塩基の種類、塩基の添加量、本発明の架橋性組成物の用途などに応じて適宜選択すればよいが、架橋プロセスで使用するエネルギーを抑制できる観点から、120℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。また周囲環境温度以上で架橋させることが好ましく、具体的には-20℃以上、より好ましくは-10℃以上、さらに好ましくは0℃以上である。
本開示の架橋体が硬化膜であることは、本開示の好ましい形態の一つである。本開示の硬化性組成物は、基材の上に直接硬化膜を形成しても良いし、基材の上に複数の膜が形成されている場合は、そのうちの1または2以上の膜が本開示の硬化性組成物を用いて形成した硬化膜であっても良い。
基材の上に複数の硬化膜を形成する場合には、本開示の硬化性組成物の層および本開示の硬化性組成物以外の硬化性組成物の層を形成した後、まとめて硬化しても良く、1の硬化性組成物の層を形成し、硬化した後に、別の硬化性組成物の層を形成しても良い。
本開示の硬化性組成物は、プライマー層、中間層、クリアトップコート層などいずれの層を形成しても良い。
本開示の硬化性組成物を、塩基性の表面を有する基材に塗布することにより、硬化膜を形成しても良い。塩基性の表面を有する基材としては、例えば、塩基性アルミナ、ソーダライムガラス、モルタル、コンクリート、ポリエチレンイミンなどの塩基性のプラスチックなどが挙げられる。
本開示のアクリル樹脂と塩基とを混合した組成物の層と、本開示の多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートの層のいずれかの層を形成した後、もう一方の層を重ね塗りするなどして形成することにより、基材上で本開示の硬化性組成物を形成しても良い。
[本開示の硬化性組成物の用途]
本開示の硬化性組成物およびその架橋体は、例えば温和な温度条件での架橋を必要とする種々の用途に好適に用いることができる。したがって本開示の硬化性組成物およびその架橋体は、接着剤、粘着剤、インク、プライマー、保護コーティング剤、シーリング剤、建築塗料、自動車塗料など、種々の用途・分野において幅広く使用できる。また、各種表面に対する塗料組成物、接着・粘着剤組成物、例えば、コンクリートやモルタル基材の養生被膜剤、表面保護剤、塗膜防水材、フロアコート剤、ガラスや樹脂のハードコート剤などに好適に使用することができる。さらに、低温硬化が可能であることから、例えば電子部品の接着剤や封止剤、フィルム、プルプレグ用の硬化性組成物として好適に使用することができる。
本開示の硬化性組成物およびその架橋体は、例えば温和な温度条件での架橋を必要とする種々の用途に好適に用いることができる。したがって本開示の硬化性組成物およびその架橋体は、接着剤、粘着剤、インク、プライマー、保護コーティング剤、シーリング剤、建築塗料、自動車塗料など、種々の用途・分野において幅広く使用できる。また、各種表面に対する塗料組成物、接着・粘着剤組成物、例えば、コンクリートやモルタル基材の養生被膜剤、表面保護剤、塗膜防水材、フロアコート剤、ガラスや樹脂のハードコート剤などに好適に使用することができる。さらに、低温硬化が可能であることから、例えば電子部品の接着剤や封止剤、フィルム、プルプレグ用の硬化性組成物として好適に使用することができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。なお、実施例中のBD-PESとは、1,4-ブタンジオールとメチレンマロン酸ジエチル(DEMM)とのエステル交換によって得られる多官能メチレンマロン酸エステルであり、10~20質量ppmのメタンスルホン酸、及び1質量%未満の単官能メチレンマロネートとしてのメチレンマロン酸ジエチルを含むものを用いた。
<製造例1>
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗及び撹拌機を備えた反応容器内にメチルエチルケトン(MEK)40質量部を入れた。メチルメタクリレート(MMA)70.1質量部、ブチルアクリレート(BA)23.5質量部、アクリル酸(AA)6.4質量部、MEK2質量部の混合液と、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)5.0質量部とMEK7.0質量部の混合液とを4時間かけて滴下しながら、窒素ガス雰囲気中にて80℃で5時間反応させた後に、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)2.0質量部を添加し、更に80℃で3時間反応させることで、重量平均分子量が18,000のアクリル系重合体の溶液を得た。その後、得られたアクリル系重合体の溶液を室温まで冷却した後、MEK48.7質量部を加えて、本開示のカルボキシ基を有するアクリル樹脂(M-1)を製造した。
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗及び撹拌機を備えた反応容器内にメチルエチルケトン(MEK)40質量部を入れた。メチルメタクリレート(MMA)70.1質量部、ブチルアクリレート(BA)23.5質量部、アクリル酸(AA)6.4質量部、MEK2質量部の混合液と、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)5.0質量部とMEK7.0質量部の混合液とを4時間かけて滴下しながら、窒素ガス雰囲気中にて80℃で5時間反応させた後に、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)2.0質量部を添加し、更に80℃で3時間反応させることで、重量平均分子量が18,000のアクリル系重合体の溶液を得た。その後、得られたアクリル系重合体の溶液を室温まで冷却した後、MEK48.7質量部を加えて、本開示のカルボキシ基を有するアクリル樹脂(M-1)を製造した。
<実施例1-3、比較例1>
表1に記載した組成で、多官能メチレンマロネート、カルボキシ基を有するアクリル樹脂、塩基、および溶剤を配合し、本開示の硬化性組成物を製造した。下記に示した方法で、本開示の硬化性組成物を作成し、硬化特性、硬化物の物性を評価した。塩基としては、ジメチルベンジルアミン(DMBA)を使用した。
表1に記載した組成で、多官能メチレンマロネート、カルボキシ基を有するアクリル樹脂、塩基、および溶剤を配合し、本開示の硬化性組成物を製造した。下記に示した方法で、本開示の硬化性組成物を作成し、硬化特性、硬化物の物性を評価した。塩基としては、ジメチルベンジルアミン(DMBA)を使用した。
<配合方法>
表1の各実施例および比較例について、カルボキシ基を有するアクリル樹脂、塩基、および溶媒をFlackTek SpeedMixerを用いて1500rpmで1分間混合し、1時間静置した。その後、各溶液を室温に戻した。次いで、この混合物を多官能メチレンマロネートに添加し、FlackTek SpeedMixerを用いて1500rpmで1分間混合した。
表1の各実施例および比較例について、カルボキシ基を有するアクリル樹脂、塩基、および溶媒をFlackTek SpeedMixerを用いて1500rpmで1分間混合し、1時間静置した。その後、各溶液を室温に戻した。次いで、この混合物を多官能メチレンマロネートに添加し、FlackTek SpeedMixerを用いて1500rpmで1分間混合した。
<ポットライフの評価>
この試験のために、2グラムの硬化性組成物を5mlのバイアル中で硬化させた。上記の配合方法において、多官能メチレンマロネートを添加後、バイアルを反転させたときに混合物が自重で流れなくなった時点までの経過時間を測定し、ポットライフとした。
この試験のために、2グラムの硬化性組成物を5mlのバイアル中で硬化させた。上記の配合方法において、多官能メチレンマロネートを添加後、バイアルを反転させたときに混合物が自重で流れなくなった時点までの経過時間を測定し、ポットライフとした。
<C=C転化率の評価>
硬化フィルムのC=C転化率はFTIRスぺクトルで算出した。FTIRスぺクトルは混合直後の液体混合物の減衰全反射により測定し、1週間後に再度、硬化物の測定を実施した。転化率は混合直後(未硬化)と1週間後の硬化フィルムの829-775cm-1の間のピーク面積比から算出した。これらのピークは1850-1650cm-1カルボニルのピーク面積により正規化した。
硬化フィルムのC=C転化率はFTIRスぺクトルで算出した。FTIRスぺクトルは混合直後の液体混合物の減衰全反射により測定し、1週間後に再度、硬化物の測定を実施した。転化率は混合直後(未硬化)と1週間後の硬化フィルムの829-775cm-1の間のピーク面積比から算出した。これらのピークは1850-1650cm-1カルボニルのピーク面積により正規化した。
<ショアD硬度の評価>
表1の組成の溶液を直径2cmの10mlバイアルで混合してすぐ、その5gをキャストすることで試験片を作成した。その試験片を前記バイアルで1週間硬化させた後に取り出して、テストした。
表1の組成の溶液を直径2cmの10mlバイアルで混合してすぐ、その5gをキャストすることで試験片を作成した。その試験片を前記バイアルで1週間硬化させた後に取り出して、テストした。
ショアD硬度計を硬化物試験片の丸くなっている側に押し込み、最も高いショアD値が出る位置に調整した。(つまり、ショアD硬度計と試験片の接触点が垂直になる位置)複数の点でテストし、その平均値をショアD値として記録した。
<鉛筆硬度の評価>
鉛筆硬度評価用の試験片として1mmスペーサーで隔てられた2枚のガラス板の間に混合直後の10gの溶液をキャストした1mm厚のフィルムを作成した。これらのフィルムは室温で1週間硬化してから鉛筆硬度を評価した。1週間後、ガラス板からフィルムを取り除き、平らな表面に置いた。鉛筆硬度はBYK社製鉛筆硬度テスターを用いて、Wolf-Wilborn鉛筆硬度試験に従って、実施した。鉛筆に関しては6Bから8Hまでの三菱ブランドの鉛筆を使用した。
鉛筆硬度評価用の試験片として1mmスペーサーで隔てられた2枚のガラス板の間に混合直後の10gの溶液をキャストした1mm厚のフィルムを作成した。これらのフィルムは室温で1週間硬化してから鉛筆硬度を評価した。1週間後、ガラス板からフィルムを取り除き、平らな表面に置いた。鉛筆硬度はBYK社製鉛筆硬度テスターを用いて、Wolf-Wilborn鉛筆硬度試験に従って、実施した。鉛筆に関しては6Bから8Hまでの三菱ブランドの鉛筆を使用した。
<テーバー摩耗試験の評価>
テーバー摩耗試験は鉛筆硬度と同じ試験片を用いて実施し、溶液を混合後、1週間硬化させた試験片を用いた。テーバー社製の直線往復式のテーバー摩耗試験機にH-18Calibrade研磨剤が取り付けられ、研磨剤の底面を水平および前の試験の物質が除去されるまで、サンドペーパーで表面を新しくした。750gの荷重が研磨アームに追加され、研磨アームをトータル1kgの質量とした。その後、硬化物の試験片を研磨機アームの真下のプラットフォームに固定し、75サイクル/分の回転数で500サイクルの振動摩耗を実行した。500サイクル完了後、試験片を拭いて、あらゆるダストやポリマー粒子を除去し、試験前後の質量を比較した。表1に別々に実施した3回のテストの平均値を示した。
テーバー摩耗試験は鉛筆硬度と同じ試験片を用いて実施し、溶液を混合後、1週間硬化させた試験片を用いた。テーバー社製の直線往復式のテーバー摩耗試験機にH-18Calibrade研磨剤が取り付けられ、研磨剤の底面を水平および前の試験の物質が除去されるまで、サンドペーパーで表面を新しくした。750gの荷重が研磨アームに追加され、研磨アームをトータル1kgの質量とした。その後、硬化物の試験片を研磨機アームの真下のプラットフォームに固定し、75サイクル/分の回転数で500サイクルの振動摩耗を実行した。500サイクル完了後、試験片を拭いて、あらゆるダストやポリマー粒子を除去し、試験前後の質量を比較した。表1に別々に実施した3回のテストの平均値を示した。
<ヤング率、破断伸び、最大引張強度の評価>
全ての引張強度用試験片は100μmスペーサーで隔てられた2枚のガラス板の間に混合直後の溶液をキャストした0.1mm厚のフィルムを作成した。1時間以内にフィルムを硬化させ、ペーパーカッターで19mmの幅の細片にカットした。それらの細片を引き続き、室温で1週間硬化させ、引張物性試験を評価した。インストロン試験機を用いた1kNのロードセルの引張モードで引張試験を実施した。硬化したポリマーの細片をインストロンのクランプに約40mmのギャップをつけて、セットした。その後、0.2インチ/分の引張速度で破壊―ひずみ試験を開始した。ヤング率、破断伸び、最大引張強度のすべてのデータは4回の平均値として示した。
全ての引張強度用試験片は100μmスペーサーで隔てられた2枚のガラス板の間に混合直後の溶液をキャストした0.1mm厚のフィルムを作成した。1時間以内にフィルムを硬化させ、ペーパーカッターで19mmの幅の細片にカットした。それらの細片を引き続き、室温で1週間硬化させ、引張物性試験を評価した。インストロン試験機を用いた1kNのロードセルの引張モードで引張試験を実施した。硬化したポリマーの細片をインストロンのクランプに約40mmのギャップをつけて、セットした。その後、0.2インチ/分の引張速度で破壊―ひずみ試験を開始した。ヤング率、破断伸び、最大引張強度のすべてのデータは4回の平均値として示した。
表1に、本開示の硬化性組成物の硬化特性をまとめた。なお、表1中のJoncryl611は、BASF社製、Actflow CBB-3098は、綜研化学社製である。
<実施例4-7、比較例2-3>
<評価用塗膜の作成>
表2の実施例4に示す通り、90部のBD-PESに対してカルボキシ基を有するアクリル樹脂としてのJoncryl611(BASF社製)を10部、アニオン重合開始剤であるジメチルベンジルアミン(東京化成社製)を0.15部、さらに固形分が70%となるように酢酸ブチルを40部添加後、混合して塗膜用反応液を得た。この反応液を基材(PC樹脂、PC/ABS樹脂、ABS樹脂)に塗布膜圧が200μmとなるように塗布し、25℃で72時間養生させることにより塗膜を作製した。この塗膜を用いて物性の評価を行った。
実施例5~7、比較例2、3についても表2に記載のとおり配合した以外は実施例4と同様に塗膜を作成し、物性の評価を行った。
<作業性の評価>
塗料組成物を室温条件下で混合し、増粘するまで時間を測定し、下記の基準により作業性を評価した。
○:10分以上
×:10分以内
<密着性の評価>
作製した塗膜試験片の硬化塗膜表面をJIS K-5400の碁盤目試験法に基づいて測定した。前記塗膜の上にカッターで1mm幅の切込みを入れ碁盤目の数を100個とし、全ての碁盤目を覆うようにセロハンテープを貼り付け、すばやく引き剥がして密着して残っている碁盤目の数から、下記の基準により密着性を評価した。
○:100個
△:50~99個
×:49個以下
<鉛筆硬度の評価>
作製した塗膜試験片の硬化塗膜表面をJIS K-5400の鉛筆引っかき試験方法に従い評価し、塗膜のキズが目視で認められない鉛筆の硬度記号で結果を示した。
塗料組成物を室温条件下で混合し、増粘するまで時間を測定し、下記の基準により作業性を評価した。
○:10分以上
×:10分以内
<密着性の評価>
作製した塗膜試験片の硬化塗膜表面をJIS K-5400の碁盤目試験法に基づいて測定した。前記塗膜の上にカッターで1mm幅の切込みを入れ碁盤目の数を100個とし、全ての碁盤目を覆うようにセロハンテープを貼り付け、すばやく引き剥がして密着して残っている碁盤目の数から、下記の基準により密着性を評価した。
○:100個
△:50~99個
×:49個以下
<鉛筆硬度の評価>
作製した塗膜試験片の硬化塗膜表面をJIS K-5400の鉛筆引っかき試験方法に従い評価し、塗膜のキズが目視で認められない鉛筆の硬度記号で結果を示した。
<耐擦傷性の評価>
作製した塗膜試験片の硬化塗膜表面上に荷重500gを載せたスチールウール(#000)を置き、ラビングテスターで50往復擦り、表面の傷付きを目視にて確認した。
○;確認できる傷が0本以上5本未満
△;確認できる傷が5本以上10本未満
×;確認できる傷が10本以上
<耐薬品性の評価>
作製した塗膜試験片の硬化塗膜表面上に、トルエン、アセトン、37%硫酸を0.1mL滴下し、室温で1時間放置後、薬品を拭き取り、目視による表面の変化を下記評価基準で評価した。
作製した塗膜試験片の硬化塗膜表面上に荷重500gを載せたスチールウール(#000)を置き、ラビングテスターで50往復擦り、表面の傷付きを目視にて確認した。
○;確認できる傷が0本以上5本未満
△;確認できる傷が5本以上10本未満
×;確認できる傷が10本以上
<耐薬品性の評価>
作製した塗膜試験片の硬化塗膜表面上に、トルエン、アセトン、37%硫酸を0.1mL滴下し、室温で1時間放置後、薬品を拭き取り、目視による表面の変化を下記評価基準で評価した。
(目視による表面の変化の評価基準)
○:変化なし(実用レベル)
×:シワ、膨れ(実用不適)
<耐紫外線吸収剤性の評価>
作製した塗膜試験片の硬化塗膜表面上に、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルを0.1mL滴下し、80℃で4時間放置後、薬品を拭き取り、目視による表面の変化を下記評価基準で評価した。
○:変化なし(実用レベル)
×:シワ、膨れ(実用不適)
<耐紫外線吸収剤性の評価>
作製した塗膜試験片の硬化塗膜表面上に、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルを0.1mL滴下し、80℃で4時間放置後、薬品を拭き取り、目視による表面の変化を下記評価基準で評価した。
(目視による表面の変化の評価基準)
○:変化なし(実用レベル)
×:シワ、膨れ(実用不適)
表2に、本開示の硬化性組成物から得られる塗膜の特性をまとめた。なお、表2中、「アクリル樹脂(B)」とは、使用したカルボキシ基を有するアクリル樹脂を、「A/B(質量比)」とは、多官能メチレンマロネート(A)とカルボキシ基を有するアクリル樹脂(B)との含有比率(質量比)を表す。多官能メチレンマロネート(A)としては、上記本開示の多官能メチレンマロネート(A-1)を使用した。MEKは、メチルエチルケトンを、DMBAは、ジメチルベンジルアミンを表す。
使用したPC、PC/ABS、ABSの基材は、日本テストパネル社から入手した。
○:変化なし(実用レベル)
×:シワ、膨れ(実用不適)
表2に、本開示の硬化性組成物から得られる塗膜の特性をまとめた。なお、表2中、「アクリル樹脂(B)」とは、使用したカルボキシ基を有するアクリル樹脂を、「A/B(質量比)」とは、多官能メチレンマロネート(A)とカルボキシ基を有するアクリル樹脂(B)との含有比率(質量比)を表す。多官能メチレンマロネート(A)としては、上記本開示の多官能メチレンマロネート(A-1)を使用した。MEKは、メチルエチルケトンを、DMBAは、ジメチルベンジルアミンを表す。
使用したPC、PC/ABS、ABSの基材は、日本テストパネル社から入手した。
<実施例8、9>
表3に示した配合で組成物を調整し、100μmのアプリケーターを使用して各基材上に塗膜を形成した。上記組成分の固形分は、70質量%であった。室温で3日間静置することにより、硬化を行った。
下記の方法により、塗膜の評価を行った。
MEKラビング:冷間圧延鋼板(ブライト仕上、75mm×150mm×3mm、日本テストパネル社製)上に形成した塗膜に対して、メチルエチルケトン(MEK)を含んだ綿棒で1Kgの荷重をかけながら擦り、塗膜に破れが生じるまで往復した回数を数えた。
耐水性評価:上記1で得られた樹脂組成物を、JIS K6717(2006年)に準ずるメタクリル酸メチルを用いて押出成形により作製した黒アクリル板(75mm×150mm×3mm、日本テストパネル社製)に100μmアプリケーターで塗装し試験板を作成し、室温で3日間養生した。養生後、該試験板のL値(L0)を色差計(日本電色工業社製、分光式色差計SE-2000)にて測定し、続けて50℃に調温した温水中に没水浸漬させ試験を開始した。同温度で一週間後、該試験板を温水から引き上げ、キムタオル(クレシア社製)で水分をふき取り、1分以内に上記色差計でL値(L1)を測定した。
表3に示した配合で組成物を調整し、100μmのアプリケーターを使用して各基材上に塗膜を形成した。上記組成分の固形分は、70質量%であった。室温で3日間静置することにより、硬化を行った。
下記の方法により、塗膜の評価を行った。
MEKラビング:冷間圧延鋼板(ブライト仕上、75mm×150mm×3mm、日本テストパネル社製)上に形成した塗膜に対して、メチルエチルケトン(MEK)を含んだ綿棒で1Kgの荷重をかけながら擦り、塗膜に破れが生じるまで往復した回数を数えた。
耐水性評価:上記1で得られた樹脂組成物を、JIS K6717(2006年)に準ずるメタクリル酸メチルを用いて押出成形により作製した黒アクリル板(75mm×150mm×3mm、日本テストパネル社製)に100μmアプリケーターで塗装し試験板を作成し、室温で3日間養生した。養生後、該試験板のL値(L0)を色差計(日本電色工業社製、分光式色差計SE-2000)にて測定し、続けて50℃に調温した温水中に没水浸漬させ試験を開始した。同温度で一週間後、該試験板を温水から引き上げ、キムタオル(クレシア社製)で水分をふき取り、1分以内に上記色差計でL値(L1)を測定した。
耐熱性評価:冷間圧延鋼板(ブライト仕上、75mm×150mm×3mm、日本テストパネル社製)に100μmアプリケーターで塗装し試験板を作成し、室温で3日間養生した。試験版の色差(L0、a0、b0)を色差計(日本電色工業社製、分光式色差計SE-2000)にて測定後、サンプルを100℃オーブンに入れ、1週間後の該試験板の色差試験を行い、上記色差計で、該試験板の色差(L1、a1、b1)を測定し、下記式により算出した。
表3に、本開示の硬化性組成物から得られた塗膜について、耐水性及び耐熱性を評価した結果をまとめた。なお、表3中、多官能メチレンマロネートとしては、上記本開示の多官能メチレンマロネート(A-1)を、アクリル樹脂としては、上記本開示のカルボキシ基を有するアクリル樹脂(M-1)を使用した。
以上より、本開示の樹脂組成物は、良好な保存安定性(ポットライフ)を有し、良好な硬化物の物物性が発現可能であることが明らかとなった。
Claims (5)
- カルボキシ基を有するアクリル樹脂と、多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートと、酸安定剤とを含み、カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比が0.01/1以上、0.5/1未満である、硬化性組成物。
- カルボキシ基を有するアクリル樹脂と、多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネートと、塩基とを接触させて得られる架橋体であって、上記カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、上記多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比が0.01/1以上、0.5/1未満である架橋体。
- (i)カルボキシ基を有するアクリル系樹脂、(ii)上記多官能メチレンマロネートおよび/または単官能メチレンマロネート、および(iii)塩基を接触させる工程を含み、該における、カルボキシ基を有するアクリル樹脂の、多官能メチレンマロネート及び単官能メチレンマロネートの合計に対する質量比は、0.01/1以上、0.5/1未満である、架橋体の製造方法。
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