JP2022097775A - グリーンシートおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】緻密な窒化物系セラミック粉末を含むグリーンシートを製造する技術を提供する。【解決手段】ここで開示される技術によると、窒化物系セラミック粉末と、水溶性樹脂バインダと、可塑剤と、を含むグリーンシートが提供される。このグリーンシートは、上記水溶性樹脂バインダとして、ガラス転移点が30℃以下のアクリル樹脂を含む。【選択図】図2

Description

本発明は、グリーンシートおよびその製造方法に関する。詳しくは、窒化物系セラミック粉末を含むグリーンシートおよびその製造方法に関する。
電気エネルギーを効率的に利用するために、電力用半導体素子(いわゆるパワーデバイス)が不可欠な存在となっている。また、省電力、高寿命の高輝度・パワーLEDランプ等に用いられる照明用半導体素子(いわゆるハイパワーLEDデバイス)の需要も高まっている。近年、特許文献1~5に示されるように、パワーデバイスの小型化、高密度化、および高速化に関する技術の研究開発が精力的に行われている。
特許6256158号公報 特開2019-117916号公報 特開2004-339426号公報 特開2005-48124号公報 特開2005-272599号公報
ところで、パワーデバイスの適切な使用に関して、上掲の特許文献1~5では、セラミック粉末(例えば、酸化物系セラミック粉末、窒化物系セラミック粉末)および樹脂バインダを含むシート状組成物を用いることが提案されている。パワーデバイスが制御する電流が大きくなるほど、より大きな熱量が発生し得るため、パワーデバイスの使用によって発生した熱量を放出するための構成が求められている。その一例として、上記のようなシート状組成物を用いて、パワーデバイス使用によって発生した熱量を放出する構成が開示されている。
上記のようなシート状組成物は、例えば、セラミック粉末、樹脂バインダ、および必要に応じてその他の材料と、水または有機溶剤とを混合してスラリーを調製し、該スラリーを塗膜することによって得ることができる。しかし、セラミック粉末として窒化物系セラミック粉末を用いる場合、該粉末は、水や有機溶剤に対する濡れ性が低いため、これらの溶媒を用いて他材料と均一に混合して、緻密なシート状組成物を製造することが困難であった。シート状組成物の緻密性が低いと、パワーデバイス、延いては電子機器の放熱が適切に行われなくなる虞があり、好ましくない。
本発明は、かかる点を鑑みて創出されたものであり、その目的とするところは、緻密な窒化物系セラミック粉末を含むシート状組成物(グリーンシート)を製造する技術を提供することである。
ここで開示される技術によると、窒化物系セラミック粉末と、水溶性樹脂バインダと、可塑剤と、を含むグリーンシートが提供される。このグリーンシートは、上記水溶性樹脂バインダとして、ガラス転移点が30℃以下のアクリル樹脂を含む。本明細書において「グリーンシート」とは、乾燥処理の前後を問わず、未焼成のシート状構造体をいう。かかる構成のグリーンシートでは、ガラス転移点が30℃以下の水溶性アクリル樹脂を使用することによって、グリーンシートの緻密性を向上させることができる。
好ましい一態様において、ここで開示されるグリーンシートは、上記窒化物系セラミック粉末の体積と上記水溶性樹脂バインダの体積との合計を100vol%としたときに、上記窒化物系セラミック粉末と上記水溶性樹脂バインダとを、以下の体積割合:
(1)前記窒化物系セラミック粉末 45vol%超過75vol%未満;および、
(2)前記水溶性樹脂バインダ 25vol%超過55vol%未満、
で含む。かかる構成によると、上記の効果に加えて、グリーンシートの熱伝導性を向上させることができる。
他の好ましい一態様において、ここで開示されるグリーンシートは、密度が1.5g/cm以上2.5g/cm以下であることを特徴とする。かかる構成のグリーンシートでは、緻密性の向上が実現されている。また、かかる構成のグリーンシートでは、熱伝導性の向上が実現されている。
他の好ましい一態様において、ここで開示されるグリーンシートは、断面の電子顕微鏡観察下において、長径が30μm以上の空隙が存在しないことを特徴とする。かかる構成のグリーンシートでは、緻密性の向上が実現されている。また、かかる構成のグリーンシートでは、熱伝導性の向上が実現されている。
他の好ましい一態様において、上記水溶性樹脂バインダ(A)と上記可塑剤(B)との体積比(A:B)は、99:2~65:35である。かかる構成によると、上記効果に加えて、成形性が向上されている。
他の好ましい一態様において、上記可塑剤は、グリセリン系可塑剤である。かかる構成によると、本発明の効果がより好適に発揮され得る。
他の好ましい一態様において、上記窒化物系セラミック粉末は、窒化ホウ素、窒化ケイ素、および窒化アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の窒化化合物を含む粉末である。かかる構成によると、窒化物セラミック粉末として上記のような化合物を含むグリーンシートを提供することができる。
また、ここで開示される技術によると、グリーンシートの製造方法が提供される。ここで開示される製造方法では、乾式粉末圧延法を用いて上記グリーンシートを製造する。かかる構成の製造方法では、乾式粉末圧延法を用いることによって、緻密な窒化物系セラミックグリーンシートを提供することができる。また、かかる構成の製造方法によると、熱伝導率が向上された窒化物系セラミックグリーンシートを提供することができる。
乾式粉末圧延法を用いて一実施形態に係るグリーンシートを製造する方法を説明する模式図である。 好適な一実施例で得られたグリーンシートの電子顕微鏡観察画像である。 一比較例で得られたグリーンシートの電子顕微鏡観察画像である。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書により教示されている技術内容と、当該分野における当業者の一般的な技術常識とに基づいて理解することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。本明細書および特許請求の範囲において、所定の数値範囲をA~B(A、Bは任意の数値)と記すときは、A以上B以下を意味する。したがって、かかる記載は、Aを上回り、かつ、Bを下回る場合を包含する。
[グリーンシート]
ここで開示されるグリーンシートは、未焼成のシート状構造体であり、窒化物系セラミック粉末と、水溶性樹脂バインダと、可塑剤と、を含む。このグリーンシートは、典型的には、上記の材料を含む造粒粉末を圧縮成形(例えば後述の乾式粉末圧延方法等)することによって得られる圧縮成形体である。
ここで開示されるグリーンシートは、密度が1.5g/cm以上となるように成形され得る。上記密度範囲のグリーンシートは、緻密性の向上が実現されている。グリーンシートの密度は、グリーンシートに含まれる原料の種類によって異なり得るが、典型的には、2.5g/cm以下(例えば、2.45g/cm以下、2.4g/cm以下)とすることができる。また、熱伝導性や成形性向上の観点から、密度を1.6g/cm以上、1.7g/cm以上、1.8g/cm以上、1.9g/cm以上、あるいは2.0g/cm以上とすることができる。同様の観点から、1.9g/cm以下、1.8g/cm以下、1.7g/cm以下、あるいは1.6g/cm以下としてもよい。なお、上記密度は、例えば、以下の実施例に記載されるように、グリーンシート(測定用に試験片を用意してもよい。)の外径と重量とを測定し、これらの実測値に基づいて得られる実測密度であり得る。
上記密度を、ここで開示されるグリーンシートの緻密性の一指標として使用することができる。また、緻密性の評価の指標の他の例として、以下の実施例に記載されるとおり、理論密度比(%)を使用してもよい。理論密度比(%)は、下記式(1):
理論密度比(%)=(実測密度)/(理論密度)×100 (1)
に基づいて算出することができる。理論密度とは、グリーンシートの成形に用いた材料の比重と調合比率とに基づく計算値である。理論密度比(%)が大きいほど緻密性が高く、85%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは90%以上であり、上限値(100%)に近いほどよい。
あるいは、下記式(2):
空隙率(%)=(1-(実測密度)/(理論密度))×100 (2)
に基づいてグリーンシートの空隙率(%)を算出して、緻密性を評価してもよい。空隙率(%)が小さいほど緻密性が高く、15%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下であり、下限値(0%)に近いほどよい。
ここで開示されるグリーンシートは、断面の電子顕微鏡観察下において、長径が30μm以上の空隙が存在しないことが好ましい。上記空隙が存在しないように成形することで、グリーンシートの緻密性を向上することができる。また、上記空隙の不存在は、グリーンシートの熱伝導性を向上する観点から、好ましい。例えば以下の実施例に記載されるとおり、グリーンシートの表面に垂直な断面(厚み方向(グリーンシートの面方向に直交する方向をいう。以下同じ。)に沿う断面)を観察できるような試料を用意して、該断面を走査型電子顕微鏡(Scannning Electron Microscope:SEM)を用いて観察し、上記空隙の存在の有無を確認するとよい。SEMの観察倍率は、特に限定されないが、例えば、1000倍~3000倍程度に設定するとよい。また、特に限定するものではないが、複数(例えば5以上、10以上、15以上、またはそれ以上)の観察視野を無作為に得て、上記空隙の存在の有無を確認するとよい。なお、グリーンシートには、断面の電子顕微鏡観察下において、長径が30μm以上の空隙が存在しない限りは、長径が30μm未満の空隙は存在してもよい。
窒化物系セラミック粉末として熱伝導性が高いものを含ませると、グリーンシートの熱伝導性を向上することができる。かかるグリーンシートの厚み方向における熱伝導率は、例えば1.7W/m・K以上、好ましくは2.0W/m・K以上、より好ましくは2.5W/m・K以上、さらに好ましくは3.0W/m・K以上とすることができる。
グリーンシートの厚みは、特に限定されないが、例えば10μm以上、20μm以上、50μm以上、または100μm以上であり得る。また、上記厚みは、例えば3000μm以下、2000μm以下、1000μm以下、または500μm以下であり得る。
窒化物系セラミック粉末は、窒化化合物からなるセラミックを主体とする粉末である。また、「Aを主体とする」とは、少なくとも90質量%以上、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99%質量%以上、あるいは100質量%のAを含むことをいう。窒化物系セラミックの具体例としては、窒化ホウ素(BN)、窒化ケイ素(Si)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。上記窒化化合物は熱伝導性に優れており、ここで開示されるグリーンシートの熱伝導性を向上させる観点から好適である。この観点から、窒化物系セラミック粉末は、BN、Si、およびAlNからなる群から選ばれる少なくとも一種の窒化化合物を含む粉末であることが好ましい。
なお、上記セラミックおよび後述のセラミックは、代表組成を併せて記しているが、必ずしも厳密に当該組成をとるものに限定されない。例えば、所望の特性を得る目的等で、各種の他の元素が添加されたものや複合化されたものであってよい。
窒化物系セラミック粉末の形状は、特に限定されないが、球状(略球状を含む。)、鱗片状、繊維状、板状、不定形状、凝集粉、顆粒等であり得る。
窒化物系セラミック粉末を構成する粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01μm~50μm程度であり得る。熱伝導性の観点から、平均粒子径を0.1μm以上とすることが好ましく、0.5μm以上とすることもできる。また、シート加工性の観点から、平均粒子径は45μm以下であってよく、30μm以下であってよく、15μm以下であってもよい。なお、本明細書において「平均粒子径」とは、一般的なレーザー回折・光散乱法に基づく粒度分布測定により測定した体積基準の粒度分布において、微粒子側から累積50%に相当する粒径(D50粒径ともいう。)をいう。
特に限定するものではないが、窒化物系セラミック粉末の平均アスペクト比は、1~100程度であり得る。平均アスペクト比は、窒化物系セラミック粉末をSEMで観察し、得られた観察画像から複数(例えば10~300個)の粒子を無作為に選択し、各粒子における長径と短径とに基づいてアスペクト比(長径と短径との比)を算出し、その算術平均値を得ることによって得ることができる。
ここで開示されるグリーンシートは、水溶性樹脂バインダを含む。水溶性樹脂バインダは、窒化物系セラミック粉末およびその他のグリーンシート構成材料を結着する成分である。水溶性バインダとしては、グリーンシートを乾燥させるための加熱処理(典型的には、100℃~200℃の加熱処理)によっては分解されず、かつ、脱バインダ処理(典型的には、200℃超過600℃以下程度の加熱処理)や600℃超過(例えば1500℃~2500℃)での焼成工程によって分解除去し易いものを好ましく用いることができる。ここで、「水溶性樹脂バインダ」とは、水系溶媒中で完全に溶解した状態となる樹脂バインダ、または、水中で分散状態となる樹脂バインダを意味する。水系溶媒としては、イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水等の水を好ましく用いることができる。なお、水系溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲において、水と均一に混合し得る非水系溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)を必要に応じて含有してもよい。この場合、水系溶媒の95vol%以上が水であることが好ましく、99vol%以上が水であることがより好ましい。
セラミック粉末と樹脂バインダとの混合物を用いてグリーンシートを作製する時、一般的な一手法として、ドクターブレードを用いる方法(以下、「ドクターブレード法」ともいう。)等の湿式プロセスが挙げられる。ドクターブレード法では、典型的には、セラミック粉末、樹脂バインダ、および必要に応じて各種添加剤の混合物を用意して、該混合物に液性材料(例えば水系溶媒、有機系溶媒)を加えてスラリーを調製する。該スラリーを基材等に塗膜して、乾燥等によって上記液性材料を除去し、グリーンシートを作製することができる。
しかし、セラミック粉末として窒化物系セラミック粉末を用いると、窒化物系セラミック粉末は水系溶媒や有機系溶媒に対する濡れ性が低く、他材料との混合不良や成形不良を起こしやすい。そのため、湿式プロセスを用いて窒化物系セラミック粉末が高い密度で充填されたグリーンシートを得ることは、困難であった。これに対して、従来では、大きな圧力を加えて窒化物系セラミック粉末を含むグリーンシートの高密度化が検討されてきた。しかし、湿式プロセスにおける加圧は、窒化物系セラミック粉末が、その長径がグリーンシートの面方向に沿うように配向する要因となり得た。かかる配向は、グリーンシートの緻密性を低下させる要因となり得る。そうすると、一例として、窒化物系セラミック粉末を含むグリーンシートを放熱用途で使用する場合に、良好な熱伝導性を実現することができず、好ましくない。なお、特に、窒化物系セラミック粉末の外形が板状や繊維状等である場合に、上記傾向は多くみられていた。
そこで、本発明者らは、窒化物系セラミック粉末を含むグリーンシートの作製を、上記のような湿式プロセスではなく、乾式粉末圧延法等の乾式プロセスを採用することに着目した。本発明者らの鋭意検討の結果、窒化物系セラミック粉末と混合する樹脂バインダとして水溶性樹脂バインダを採用し、さらに該水溶性樹脂バインダにガラス転移点が30℃以下のアクリル樹脂を含ませることによって、乾式プロセスによって、緻密なグリーンシートを作製することができた。そして、かかるグリーンシートでは、緻密性の向上とともに、熱伝導率の向上も確認された。
ここで開示されるグリーンシートは、水溶性樹脂バインダとして、少なくとも、ガラス転移点が30℃以下のアクリル樹脂からなる水溶性樹脂バインダA1を含む。アクリル樹脂としては、上記範囲のガラス転移点を有するものであれば特に限定されず、各種のアクリル系高分子化合物を使用することができる。上記アクリル系高分子化合物は、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、アミノ基等の種々の親水性官能基を含んでよい。
上記アクリル樹脂の一例として、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマー(単量体全体の50重量%超を占める成分)として含み、当該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含むモノマー混合物が挙げられる。該モノマー混合物は、上記主モノマーおよび上記副モノマーに加えて、任意に、他の共重合成分を含むことができる。これらのモノマーが共重合することによって、所定の機能を有するアクリル系高分子化合物が形成され得る。なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを意味する。同様に、「(メタ)アクリル」はアクリルおよびメタクリルを意味する。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、一般式:CH=C(R)COORで表される化合物を好適に用いることができる。ここで、式中のRは水素原子またはメチル基を示している。また、Rは炭素原子数が1~20の鎖状アルキル基を示している。Rは、炭素原子数が1~14の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素原子数が1~12の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
副モノマーとしては、アクリル系高分子化合物に架橋点を導入したり、アクリル系高分子化合物の結着性を制御したりする機能を有し、所望のバインダ特性に応じて各種の官能基を含むモノマー成分を用いることができる。かかる官能基は、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等であり得る。副モノマーの量は特に限定されず、グリーンシートに所望の緻密性が実現されるように適宜設計することができる。なお、ここに例示した副モノマー以外の他の共重合成分を含むようにしてもよい。上記モノマー(主モノマーと副モノマーの総量)に占める副モノマーの割合は、所望の架橋度に応じて適宜選択すればよく、例えば、全モノマー成分100質量%に対して、1~10質量%程度とすることができる。また、モノマー混合物を重合する方法は特に制限されず、従来公知の一般的な重合方法(エマルション重合、溶液重合等)を採用することができる。
水溶性樹脂バインダA1のガラス転移点は、30℃以下であり、グリーンシートの加工容易性、柔軟性、緻密性の向上の観点から、25℃以下とすることもできる。水溶性樹脂バインダのガラス転移点は、20℃以下、10℃以下、0℃以下、-10℃以下または-20℃以下とすることができる。また、上記ガラス転移点は、例えば-200℃以上であってよく、-100℃以上でもよく、-80℃以上でもよく、-60℃以上でもよい。なお、ガラス転移点の測定は、一般的な示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry:DSC)を用いて測定することができる。また、必要に応じてメーカーの公称値を使用することができる。
特に限定するものではないが、水溶性樹脂バインダA1の重量平均分子量は、概ね5千以上(例えば1万以上)とすることができる。また、上記重量平均分子量は、概ね100万以下、典型的には50万以下、例えば30万以下、20万以下、10万以下とすることができる。なお、水溶性樹脂バインダA1の重量平均分子量は、ゲルクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)によって測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて換算した重量基準の平均分子量を採用し得る。あるいは、メーカーの公称値を採用してもよい。
ここで開示される技術の効果を実現できる限り、水溶性樹脂バインダとして、水溶性樹脂バインダA1以外の水溶性樹脂バインダA2を含んでよい。水溶性樹脂バインダA2としては、特に限定されないが、例えば、ガラス転移点が30℃を超えるアクリル系樹脂、種々のポリエーテル樹脂、セルロース系化合物、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
水溶性樹脂バインダA1の体積と水溶性樹脂バインダA2の体積との合計を100vol%とすると、水溶性樹脂バインダA1の体積割合は、70vol%以上であることが好ましい。グリーンシートの成形性、緻密性、熱伝導性を向上する観点から、水溶性樹脂バインダA1の体積割合は、例えば80vol%以上とするとよく、好ましくは90vol%以上、より好ましくは95vol%以上、さらに好ましくは98vol%以上である。水溶性樹脂バインダは、水溶性樹脂バインダA1からなってもよい。
窒化物系セラミック粉末の体積と水溶性樹脂バインダの体積との合計を100vol%とすると、窒化物系セラミック粉末の体積割合は45vol%超過であり得る。グリーンシートの緻密性、熱伝導性を向上する観点から、窒化物系セラミック粉末の体積割合は、例えば50vol%以上とするとよく、好ましくは55vol%以上、より好ましくは60vol%以上、さらに好ましくは65vol%以上である。また、成形性の観点から、上記体積割合は、75vol%未満、あるいは70vol%以下、または65vol%以下とすることができる。一方、水溶性樹脂バインダの体積割合は、成形性および加工容易性の観点から、55vol%未満であり、グリーンシートの熱伝導性を向上する観点から、好ましくは50vol%以下であり、45vol%以下であってよく、40vol%以下でもよく、35vol%以下でもよく、30vol%以下でもよく、25vol%超過とすることが適当である。
可塑剤は、主として上記水溶性樹脂バインダを構成するポリマーの分子間に入り込んでポリマーの分子間力を弱め、それぞれの分子を動きやすくすることによって、ポリマーに柔軟性を付与する機能を有する成分である。ここで開示される技術において、可塑剤は、グリーンシートの緻密性向上や加工性向上に寄与し得る。可塑剤としては、グリーンシートを乾燥させるための加熱処理(典型的には、100℃~200℃の加熱処理)によっては分解されず、かつ、脱バインダ処理(典型的には、200℃超過600℃以下程度の加熱処理)や600℃超過(例えば1500℃~2500℃)での焼成工程によって分解除去し易いものを好ましく用いることができる。
可塑剤として、水溶性可塑剤を好ましく用いることができる。水溶性可塑剤としては、公知の水溶性可塑剤を特に制限なく使用することができるが、例えば、多価アルコール、ポリエーテル等を使用することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ここで開示される技術の効果を実現し得る限りは、水溶性可塑剤の種類、平均分子量、その他の性状は特に限定されない。
多価アルコールは、3価以上のアルコールであり得る。具体例としては、グリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。ポリグリセリンは、2以上のグリセリンが重合した構造を有する化合物であり、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等が挙げられる。
ポリエーテルは、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等であり得る。ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、およびポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルは、グリセリンまたはポリグリセリンにオキシアルキレンを付加重合して得られる化合物である。ポリオキシアルキレンを構成するオキシアルキレン基は、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基であり得る。即ち、ポリオキシアルキレングリセリルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル等が挙げられる。ポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルの具体例としては、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンポリグリセリルエーテル等が挙げられる。なお、オキシアルキレン基の繰り返し数は、1以上であるが、特に限定されず、適宜設定することができる。また、ポリオキシアルキレンを構成するオキシアルキレン基は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
グリーンシートの成形性、加工容易性、および緻密性を向上する観点から、上記化合物の中でも、グリセリン系可塑剤を好ましく用いることができる。グリセリン系可塑剤は、グリセリン、ポリグリセリン、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、およびポリオキシアルキレンポリグリセリルエーテルを含む。また、グリセリン系可塑剤は、グリーンシートの保存安定性を向上する観点からも、好ましく使用され得る。
グリーンシートの成形性、緻密性、および熱伝導性を向上する観点から、好ましくは、水溶性樹脂バインダ(A)と可塑剤(B)との体積比(A:B)は、98:2~65:35となるように設定される。ただし、水溶性樹脂バインダの体積と水溶性バインダの体積との体積比の好適範囲は、これらの構成材料によって、上記範囲内あるいは範囲外にも適宜変更され得る。
ここで開示されるグリーンシートは、上記のとおり、窒化物系セラミック粉末の含有を必須とするが、その他のセラミック粉末を含んでもよい。その他のセラミック粉末を構成するセラミックとしては、例えば、炭化ケイ素等の炭化物系セラミック、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化チタン等の酸化物系セラミック等が挙げられる。これらを1種単独でまたは2種以上含んでよい。なお、上記その他のセラミック粉末を含む場合、グリーンシートに含まれる窒化物系セラミック粉末の含有量とその他のセラミック粉末の含有量との合計を100質量%とすると、窒化物系セラミック粉末の含有量は、70質量%以上であってよく、80質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。グリーンシートに含まれるセラミック成分を、すべて窒化物系セラミック粉末としてもよい。
ここで開示されるグリーンシートは、必要に応じて、上記成分のほか、分散剤、離型剤、消泡剤、酸化防止剤、増粘剤等の各種添加剤等を含んでよい。
[グリーンシートの製造方法]
ここで開示されるグリーンシートを製造する方法の好適例としては、乾式粉末圧延法(例えばロール成形)が挙げられる。乾式粉末圧延法は、例えば図1に示される乾式粉末圧延装置5を使用して実施され得る。乾式粉末圧延装置5は、おおまかにいって、貯留タンク1と、一対のロール2とを備える。貯留タンク1は、グリーンシート10Gの原料で構成される造粒粉末1aを貯留する容器である。また、貯留タンク1は、その底部にフィーダー1bを備えており、フィーダー1bの吐出口から一定量の造粒粉末1aを一対のロール2の間に連続的に供給するよう構成されている。フィーダー1bとしては、定量性に優れるものであれば特に限定されず、例えばスクリュー式、振動式、流動式等の各種フィーダーを適宜採用し得る。
上記製造方法は、おおまかにいって、原料用意工程、造粒工程、およびシート成形工程を含む。原料用意工程では、グリーンシート10Gの原料として、窒化物系セラミック粉末、水溶性樹脂バインダ、可塑剤、および、必要に応じて各種添加剤を含む原料を用意する。これらの構成材料および体積割合等については上記のとおりである。
造粒工程では、上記原料を用いて造粒粉末1aを作製する。造粒方法は特に限定されず、湿式造粒および乾式造粒のいずれを採用してもよい。造粒方法としては、例えば、転動造粒法、流動層造粒法、撹拌造粒法、圧縮造粒法、押出造粒法、破砕造粒法、スプレードライ法(噴霧造粒法)等が挙げられる。より微細な原料粉末を扱いやすいという観点からは、噴霧造粒法等の湿式造粒法の採用が好ましい。噴霧造粒法では、まず、用意した原料の混合物を調製し、該混合物を分散媒中に分散して、原料スラリーを得る。原料の混合方法は特に限定されず、従来公知の撹拌・混合装置を使用することができる。例えば、ボールミル、ミキサー、ディスパー、ニーダ等を使用することができる。混合物分散媒としては、環境負荷を減らす観点から、例えば水が好適例として挙げられる。次いで、スプレードライ装置を用いて、上記原料スラリーを液的状に噴霧して乾燥させることで、造粒粉末を得ることができる。造粒粉末のサイズは、特に限定されず、例えば10μm以上200μm以下とすることができる。
シート成形工程では、上記造粒粉末をシート状に成形する。具体的には、図1に示されるように、上記造粒工程で得られた造粒粉末1aを、乾式粉末圧延装置5の貯留タンク1に投入する。造粒粉末1aは、貯留タンク1の底部のフィーダー1bを通って外部に吐出される。そして、吐出された造粒粉末1aは、一対のロール2の間に供給される。そして、ロール2が回転(図1中の矢印を参照。)することによって、上記供給された造粒粉末1aが圧縮されることによって、シート状に成形されて、グリーンシート10Gが得られる。ここでの温度条件や圧力条件は、原料の種類等によって異なり得るため、特に制限されず、適宜変更され得る。また、ロール2の間の間隔は、グリーンシート10Gの厚みとして所望される厚みを実現できるように、適宜変更され得る。
上記製造方法では、グリーンシートの原料を含む造粒粉末を作製して用いることによって、成形されたグリーンシートにおける原料の分離を抑制することができる。また、窒化物系セラミック粉末の、グリーンシートの面方向における配向を抑制することができる。そして、グリーンシートにより多くの窒化物系セラミック粉末を含ませることができる。
<グリーンシートの用途>
ここで開示されるグリーンシートの用途は、特に限定されないが、例えば、放熱材料として使用することができる。一例として、発熱部品(例えばパワーデバイス等)と放熱部品(放熱フィン、ヒートシンク、放熱板等)との間に介在させて、あるいは、放熱部品に替えて、発熱部品の放熱を行う放熱シートを作製するためのグリーンシートとして使用することができる。また、上記放熱部品と組み合わせた放熱装置を構成する材料としても使用され得る。
ここで開示される技術によると、窒化物系セラミック粉末と、水溶性樹脂バインダと、可塑剤とを含み、上記水溶性樹脂バインダとしてガラス転移点が30℃以下のアクリル樹脂を含み、さらに上記窒化物セラミック粉末の体積割合と、上記水溶性樹脂バインダの体積割合とを所定範囲内とすることによって、グリーンシートの緻密性を向上することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を係る実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<1.水溶性アクリル樹脂の検討>
水溶性アクリル樹脂として、アクリル樹脂A~Eを用意した。アクリル樹脂A~Eとして、以下に記載の市販のアクリル樹脂:
アクリル樹脂Aとして、ボンコート5494EF(DIC株式会社);
アクリル樹脂Bとして、ボンコートCE-8510(DIC株式会社);
アクリル樹脂Cとして、ボンコートCE-1400(DIC株式会社);
アクリル樹脂Dとして、ボンコートYG-651(DIC株式会社);および、
アクリル樹脂Eとして、グランドールPP-1000EF(DIC株式会社)、
を使用した。アクリル樹脂A~Eのガラス転移点を、市販の示差走査熱量分析装置(Differential Scanning Calorimetry(株式会社リガク))を用いて測定した。当該装置を用いて測定されたガラス転移点を、表1の該当欄に示す。
[グリーンシートの作製]
-例1~例5-
窒化物系セラミック粉末としての窒化ホウ素粉末(BN、平均粒子径5.7μm、UHP-G1H(昭和電工))、水溶性樹脂バインダとしての水溶性アクリル樹脂(種類については表1参照)、可塑剤(PEG-1500(三洋化成工業株式会社))、離型剤、分散剤、および消泡剤を用意した。BNは、板状(鱗片状)の一次粒子を凝集させて顆粒状にしたものである。窒化物系セラミック粉末の体積と水溶性樹脂バインダの体積との合計を100vol%としたときに、窒化物系セラミック粉末は60vol%であり、水溶性樹脂バインダは40vol%であった(体積比1)。水溶性樹脂バインダの体積と可塑剤の体積との合計を100vol%としたときに、水溶性樹脂バインダは90vol%であり、可塑剤は10vol%であった(体積比2)。
用意した材料を、同質量の水(分散媒)と共にポットミルに投入し、混合することで造粒用スラリーを調製した。スプレードライ装置を用いてこの造粒用スラリーを噴霧乾燥して、各例に係る造粒粉末を作製した。造粒粉末の平均粒子径が、それぞれ約80μmとなるように噴霧条件を設定した。噴霧乾燥における乾燥温度は180~200℃程度であり、造粒粉末中に含まれる分散媒の残量は、ほぼ0質量%であった。
上述のように作製した造粒粉末を用いて、乾式粉末圧延装置を用いて各例に係るグリーンシートを作製した。グリーンシートの厚みを表1の該当欄に示す。
[シート密度]
各例に係るグリーンシートを所定の寸法に加工して、試験片を用意した。試験片の外径寸法と重量とを測定して、実測密度を算出した。得られた結果を表1の該当欄に示す。上記式(1)を用いてグリーンシートの理論密度比(%)を算出した。結果を表1の該当欄に示す。
[熱伝導率]
熱伝導率測定装置(LFA 467 HyperFlash(登録商標)(NETZSCH社))を用いて、装置のマニュアルに従って、各例に係るグリーンシートの厚み方向における熱伝導率(W/m・K)を測定した。結果を表1の該当欄に示す。
[電子顕微鏡観察]
SEMを用いて、各例に係るグリーンシートの表面に垂直な断面(厚み方向に沿う断面)の観察を行った。観察倍率2000倍の断面SEM像を得て、グリーンシートの断面における、長径が30μm以上の空隙の有無を評価した。結果を表1の該当欄に示す。表1の該当欄における「なし」は、長径が30μm以上の空隙が観察されなかったことを示す。「あり」は、上記空隙が1個以上観察されたことを示す。なお、上記空隙の有無の評価は、無作為に得られた10個の上記断面SEM像を用いて行った。また、一実施例における断面SEM像を図2に、一比較例における断面SEM像を図3に示す。
Figure 2022097775000002
[結果]
表1に示されるように、例1~5において、窒化物系セラミック粉末と、水溶性樹脂バインダと、可塑剤と、を含むグリーンシートが得られた。例1~5に係るグリーンシートは、いずれも密度が1.5g/cm以上であった。ただし、水溶性バインダとして、ガラス転移点が30℃以下の水溶性アクリル樹脂を含む例1~3と、ガラス転移点が30℃超の水溶性アクリル樹脂のみを含む例4,5とを比較すると、例1~3のグリーンシートでは、SEM観察において長径が30μm以上の空隙が観察されなかったのに対して、例4,5のグリーンシートでは、長径が30μm以上の空隙が観察された。このことから、水溶性樹脂バインダとしてガラス転移点が30℃以下の水溶性アクリル樹脂を含むことによって、グリーンシートの緻密性が向上し得ることが確認された。また、例1~3のグリーンシートでは、熱伝導率の向上が確認された。
<2.窒化物系セラミック粉末および水溶性樹脂バインダの体積割合の検討>
本例では、窒化物系セラミック粉末の体積と水溶性樹脂バインダの体積との比を変更した検討を行った。
[グリーンシートの作製]
-例6~例10-
窒化物系セラミック粉末の体積と水溶性樹脂バインダの体積との合計を100vol%としたときの、窒化物系セラミック粉末の体積割合と、水溶性樹脂バインダの体積割合とを表2の「体積比1」欄に記載のとおりとしたこと以外は例3と同様の材料および手順を用いて、例6~10に係るグリーンシートを作製した。
また、上記1.に記載のとおり、上記各例に係るグリーンシートの厚み、密度、熱伝導率、および長径が30μm以上の空隙の存在を評価した。結果を表2の該当欄に示す。
Figure 2022097775000003
[結果]
例3,6~10において、グリーンシートに含まれる窒化物系セラミック粉末の体積割合と、水溶性樹脂バインダの体積割合とを検討すると、例3,6~9に係るグリーンシートは、いずれも密度が1.5g/cm以上であった。また、水溶性樹脂バインダの体積割合を大きくすると、SEM観察において長径が30μm以上の空隙の形成が抑制された(例3,6~8,10)。上記空隙の形成を抑制しつつ窒化物系セラミック粉末の体積割合を大きくすると、良好な熱伝導率が実現されることが確認された(例3,6~8)。
<3.水溶性樹脂バインダおよび可塑剤の体積割合の検討>
本例では、水溶性樹脂バインダの体積と可塑剤の体積との比を変更した検討を行った。
[グリーンシートの作製]
-例11~例15-
水溶性樹脂バインダの体積と可塑剤の体積との合計を100vol%としたときの、水溶性樹脂バインダの体積割合と、可塑剤の体積割合とを表3の「体積比2」欄に記載のとおりとしたこと以外は例3と同様の材料および手順を用いて、例11~例15に係るグリーンシートを作製した。ただし、例14ではグリーンシートが成形できなかった。
上記1.に記載のとおり、上記各例に係るグリーンシートの厚み、密度、熱伝導率、および長径が30μm以上の空隙を評価した。結果を表3の該当欄に示す。なお、例14については上記評価を省略しており、表3の該当欄に「-」と示している。
Figure 2022097775000004
[結果]
表3に示されるように、可塑剤を含む例3、11~13と、可塑剤を含まない例15とを比較すると、可塑剤の含有によって、SEM観察において長径が30μm以上の空隙の形成が抑制された。また、良好な熱伝導率が実現されることが確認された。
<4.窒化物系セラミック粉末の種類の検討>
本例では、窒化物系セラミック粉末の種類を変更した検討を行った。窒化物系セラミック粉末として、窒化ケイ素(青島社製)および窒化アルミニウム(株式会社燃焼合成製)を用意した。上記窒化ケイ素は不定形であり、平均粒子径は0.8μmであった。上記窒化アルミニウムは不定形であり、平均粒子径は5μmであった。
[グリーンシートの作製]
-例16、例17-
窒化物系セラミック粉末として窒化ケイ素(例16)および窒化アルミニウム(例17)を使用したこと以外は例3と同様の材料および手順を用いて、例16、例17に係るグリーンシートを作製した。
上記1.に記載のとおり、上記各例に係るグリーンシートの厚み、密度、熱伝導率、および長径が30μm以上の空隙を評価した。結果を表4の該当欄に示す。
Figure 2022097775000005
[結果]
表4に示されるように、窒化物系セラミック粉末の他の例として窒化ケイ素や窒化アルミニウムを使用した場合であっても、グリーンシートの緻密性を向上し得ることが確認された。また、例16、例17に係るグリーンシートでは、良好な熱伝導率が実現されることが確認された。
以上より、ここで開示される技術によると、窒化物系セラミック粉末と、水溶性樹脂バインダと、可塑剤と、を含むグリーンシートが提供される。当該グリーンシートは、上記水溶性樹脂バインダとして、ガラス転移点が30℃以下のアクリル樹脂を含む。ここで開示される技術によると、窒化物系セラミック粉末を含む、緻密なグリーンシートを製造する技術が提供される。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
1 貯留タンク
1a 造粒粉末
1b フィーダー
2 ロール
5 乾式粉末圧延装置
10G グリーンシート

Claims (8)

  1. 窒化物系セラミック粉末と、水溶性樹脂バインダと、可塑剤と、を含み、
    前記水溶性樹脂バインダとして、ガラス転移点が30℃以下のアクリル樹脂を含む、グリーンシート。
  2. 前記窒化物系セラミック粉末の体積と前記水溶性樹脂バインダの体積との合計を100vol%としたときに、前記窒化物系セラミック粉末と前記水溶性樹脂バインダとを、以下の体積割合:
    (1)前記窒化物系セラミック粉末 45vol%超過75vol%未満;および、
    (2)前記水溶性樹脂バインダ 25vol%超過55vol%未満、
    で含む、請求項1に記載のグリーンシート。
  3. 密度が1.5g/cm以上2.5g/cm以下である、請求項1または2に記載のグリーンシート。
  4. 断面の電子顕微鏡観察下において、長径が30μm以上の空隙が存在しない、請求項1~3のいずれか1項に記載のグリーンシート。
  5. 前記水溶性樹脂バインダ(A)と前記可塑剤(B)との体積比(A:B)は、98:2~65:35である、請求項1~4のいずれか1項に記載のグリーンシート。
  6. 前記可塑剤は、グリセリン系可塑剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載のグリーンシート。
  7. 前記窒化物系セラミック粉末は、窒化ホウ素、窒化ケイ素、および窒化アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の窒化化合物を含む粉末である、請求項1~6のいずれか1項に記載のグリーンシート。
  8. グリーンシートの製造方法であって、
    乾式粉末圧延法を用いて請求項1~7のいずれか一項に記載のグリーンシートを製造する方法。
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