JP2022097302A - 睡眠状態マーカー及びそれを用いた睡眠状態の検出方法 - Google Patents

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Mayumi Otsuka
尚也 北村
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泰徳 山本
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高良 井上
Takayoshi Inoue
知佳 鈴鴨
Chika Suzugamo
幸一 三澤
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Abstract

【課題】バイオマーカーによる睡眠状態の検出。【解決手段】睡眠状態を検出するための睡眠状態マーカー、及び該睡眠状態マーカーを用いた睡眠状態の検出方法。【選択図】なし

Description

本発明は、睡眠状態マーカー及びそれを用いた睡眠状態の検出方法に関する。
近年、多くの人々が睡眠の問題を抱えている。不眠は、寝つきが悪い、眠りが浅い、早く目が覚める、十分眠った感じがしないなどの睡眠の質の低下が自覚される状態を招く。睡眠の質の低下は、心筋梗塞や脳梗塞等の重大な疾患に繋がるだけでなく、日中の眠気から作業能率を低下させ、重大な事故を誘発する可能性がある。睡眠の質を改善することは保健上の重要な課題である。
特許文献1には、睡眠障害の検出するためのマーカーとしてトランスサイレチンが開示されている。特許文献2には、時計遺伝子hPer2の発現が睡眠/覚醒リズムに関連していることが開示されている。しかしながら、バイオマーカーによる睡眠障害や不眠の客観的又は定量的な評価手法は未だ確立されていない。
生体試料中のDNAやRNA等の核酸の解析によりヒトの生体内の現在、さらには将来の生理状態を調べる技術が開発されている。生体由来の核酸は、血液等の組織、体液、分泌物などから抽出することができる。特許文献3には、皮膚表上脂質(SSL)から被験体の皮膚細胞に由来するRNA等の核酸を分離し、生体の解析用の試料として用いることが記載されている。
特開2007-075071号公報 特開2005-080603号公報 国際公開公報第2018/008319号
本発明は、バイオマーカーを用いた睡眠状態の検出に関する。本発明は、新規な睡眠状態マーカー、及びそれを用いた睡眠状態の検出方法に関する。
一態様において、本発明は、以下の遺伝子:ATG7、DNAJB6、TBC1D17、ZNF410、TRAPPC5、PSMD3、ABI1、及びMARCH6をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、睡眠状態マーカーを提供する。
別の一態様において、本発明は、被験体から採取した生体試料における前記睡眠状態マーカーの発現レベルを測定することを含む、被験体の睡眠状態の検出方法を提供する。
別の一態様において、本発明は、試験物質を適用した被験体から採取した生体試料における前記睡眠状態マーカーの発現レベルを測定することを含む、睡眠制御剤の評価方法を提供する。
別の一態様において、本発明は、前記睡眠状態の検出方法に用いられる睡眠状態検出用キット又は睡眠制御剤の評価用キットを提供する。
本発明は、新規な睡眠状態マーカーを提供する。本発明の睡眠状態マーカーは、睡眠状態の検出を可能にする。また本発明の睡眠状態マーカーは、皮膚表上脂質(SSL)から非侵襲的に採取可能であるので、採取の手間や、採取による被験体への負担を低減することができる。
本明細書中で引用された全ての特許文献、非特許文献、及びその他の刊行物は、その全体が本明細書中において参考として援用される。
本明細書中に開示される遺伝子の名称は、NCBI([www.ncbi.nlm.nih.gov/])に記載のあるOfficial Symbolに従う。
本明細書において、「皮膚表上脂質(skin surface lipids;SSL)」とは、皮膚の表上に存在する脂溶性画分をいい、皮脂と呼ばれることもある。一般に、SSLは、皮膚にある皮脂腺等の外分泌腺から分泌された分泌物を主に含み、皮膚表面を覆う薄い層の形で皮膚表上に存在している。
本明細書において、「皮膚」とは、特に限定しない限り、体表の表皮、真皮、毛包、ならびに汗腺、皮脂腺及びその他の腺などの組織を含む領域の総称である。
本明細書において、「睡眠状態」とは、睡眠の質、すなわち睡眠時間に関わらない睡眠に対する満足度を表す。好適には、本明細書における「睡眠状態」は、OSA睡眠調査票(山本由華吏ら:脳と精神の医学 10:401-409,1999)のスコアに反映される。OSA睡眠調査票では、個人の自覚症状に基づく睡眠の質、すなわち、一般的な生活態度や、就寝前の身体的・精神的状態、起床時の自覚的睡眠の質を評価する。より具体的には、OSA睡眠調査票では、睡眠の質を第1因子~第5因子の5つの評価尺度から総合的に評価する。第1因子は起床時眠気の評価であり、第2因子は入眠と睡眠維持の評価であり、第3因子は夢みの評価であり、第4因子は疲労回復の評価であり、第5因子は睡眠時間の評価である。したがって、本明細書における「睡眠状態」とは、OSA睡眠調査票で評価される5因子、すなわち起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復、及び睡眠時間のいずれか1つのスコア、あるいは第1~第5因子のスコアの平均値に反映される。これらのスコアが高いとき睡眠状態は良好(すなわち睡眠の質が高い)であり、一方、該スコアが低いとき(例えば、該第1~第5因子のスコアの平均値が15未満のとき)、睡眠状態は不良(すなわち睡眠の質が低い)である。本明細書においては睡眠の質が低いことを「不眠」と定義する。一方、本明細書において、睡眠状態が「健常」とは、不眠に該当しない状態(例えば該第1~第5因子のスコアの平均値が15以上であるとき)をいい、睡眠状態が「良好」とは、「健常」のうち該第1~第5因子のスコアの平均値が20以上であることをいう。本明細書において「睡眠の改善」とは、睡眠状態(睡眠の質)の向上をいう。
本明細書において、睡眠状態の「検出」は、検査、測定、判定又は評価支援などの用語で言い換えることもできる。本明細書における睡眠状態の「検出」、「検査」、「測定」、「判定」又は「評価」という用語は、医師による睡眠障害等の疾患の診断を含むものではない。
(1.睡眠状態マーカー)
従来、睡眠状態は、主に問診やアンケート(例えば、前述のOSA睡眠調査票)に基づくスコアリングによって評価されている。このような評価法は、客観性や定量性に劣ることがあり、また試験間での評価の比較を困難にする。
本発明者は、被験体の睡眠状態が特定の遺伝子の発現に反映されることを見出した。後述の実施例に示すとおり、OSA睡眠調査票に基づき判定された睡眠状態の良好群と不眠群の間で、発現レベルが異なっている遺伝子が見出された。このような両群の間で異なる発現レベルを示した遺伝子をコードする核酸、及びそれらの遺伝子にコードされるタンパク質は、睡眠状態マーカーとして使用できる。例えば、それらの遺伝子をコードする核酸、又はそれらの遺伝子にコードされるタンパク質の発現レベルを指標に、睡眠状態を検出することができる。
したがって、一態様において本発明は、睡眠状態を検出するための睡眠状態マーカーを提供する。本発明で提供される、睡眠状態マーカー(以下、本発明のマーカーともいう)は、該マーカーが由来する個々の被験体の睡眠状態を検出することを可能にする。
本発明のマーカーは、下記表1に示す78遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。本発明のマーカーは、下記表1に示す遺伝子をコードする核酸(核酸マーカー)であっても、該遺伝子にコードされるタンパク質(タンパク質マーカー)であっても、それらの組み合わせであってもよいが、好ましくは核酸マーカーである。好ましくは、本発明の睡眠状態マーカーは、不眠の検出のためのマーカーである。
Figure 2022097302000001
一実施形態において、本発明のマーカーは、表2及び表3に示す遺伝子をコードする核酸(以下、それぞれ表2及び表3の核酸マーカーともいう)、及び該遺伝子にコードされるタンパク質(以下、それぞれ表2及び表3のタンパク質マーカーともいう)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。表2の核酸マーカーとタンパク質マーカーとを総称して表2のマーカーということがあり、また表3の核酸マーカーとタンパク質マーカーとを総称して表3のマーカーということがある。好ましくは、表2及び表3のマーカーは核酸マーカーである。後述する実施例に示すように、表2に示す18遺伝子は、被験体の睡眠状態の悪化(睡眠の質の低下)に応じて発現レベルが増加し、表3に示す17遺伝子は、被験体の睡眠状態の悪化(睡眠の質の低下)に応じて発現レベルが低下する。したがって、表2のマーカーは、その発現レベルが被験体の睡眠の質の低下に応じて増加する、ポジティブマーカーである。一方、表3のマーカーは、その発現レベルが被験体の睡眠の質の低下に応じて低下する、ネガティブマーカーである。本発明においては、前者のポジティブマーカーと、後者のネガティブマーカーのいずれか一方を使用してもよく、又は両方を組み合わせて使用してもよい。
別の一実施形態において、本発明のマーカーは、表4に示す49遺伝子をコードする核酸(以下、表4の核酸マーカーともいう)、及び該遺伝子にコードされるタンパク質(以下、表4のタンパク質マーカーともいう)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。表4の核酸マーカーとタンパク質マーカーとを総称して表4のマーカーということがある。好ましくは、表4のマーカーは核酸マーカーである。後述する実施例に示すように、表4に示す遺伝子は、被験体におけるその発現レベルのデータを説明変数とし、睡眠状態を目的変数として、機械学習アルゴリズムとしてランダムフォレストを用いて、特徴量遺伝子の抽出及び予測モデルの構築を実施した際に抽出された、ジニ係数に基づく変数重要度上位49に相当する遺伝子である。
別の一実施形態において、本発明のマーカーは、表5に示す2遺伝子をコードする核酸(以下、表5の核酸マーカーともいう)、及び該遺伝子にコードされるタンパク質(以下、表5のタンパク質マーカーともいう)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。表5の核酸マーカーとタンパク質マーカーとを総称して表5のマーカーということがある。好ましくは、表5のマーカーは核酸マーカーである。後述する実施例に示すように、表5に示す遺伝子は、機械学習アルゴリズムとしてBoruta法を用いた場合に特徴量遺伝子として抽出された遺伝子である。
好ましい一実施形態において、本発明のマーカーは、表6に示す8遺伝子をコードする核酸(以下、表6の核酸マーカーともいう)、及び該遺伝子にコードされるタンパク質(以下、表6のタンパク質マーカーともいう)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。表6の核酸マーカーとタンパク質マーカーとを総称して表6のマーカーということがある。好ましくは、表6のマーカーは核酸マーカーである。表6に示す遺伝子は、表2又は表3と表4に共通に含まれる6遺伝子、ならびに表4と表5に共通に含まれる2遺伝子をからなる。
好ましい一実施形態において、本発明のマーカーは、表6のマーカーからなる群より選択される少なくとも1種に加えて、さらに表1のマーカーからなる群より選択される少なくとも1種(ただし表6のマーカー以外のもの)を含んでいてもよい。例えば、本発明のマーカーは、表6のマーカーからなる群より選択される少なくとも1種に加えて、さらに表2のマーカー、表3のマーカー、又は表4のマーカーからなる群より選択される少なくとも1種(ただし表6のマーカー以外のもの)を含んでいてもよい。例えば、本発明のマーカーは、表6の核酸マーカーからなる群より選択される少なくとも1種、好ましくは全部を含み、さらに表2、表3又は表4の核酸マーカーからなる群より選択される少なくとも1種(ただし表6の核酸マーカー以外のもの)を含んでいてもよい。例えば、本発明のマーカーは、表6のタンパク質マーカーからなる群より選択される少なくとも1種、好ましくは全部を含み、さらに表2、表3又は表4のタンパク質マーカーからなる群より選択される少なくとも1種(ただし表6のタンパク質マーカー以外のもの)を含んでいてもよい。上記の場合、表6のマーカーからなる群より選択される少なくとも1種としては、表2又は表3と表4に共通に含まれるATG7、DNAJB6、TBC1D17、ZNF410、TRAPPC5及びPSMD3の6種のマーカー全て、表4と表5に共通に含まれるABI1及びMARCH6の2種のマーカー全て、又は表6の8種のマーカー全てを含むことが好ましい。
別の好ましい一実施形態においては、表2もしくは表3の核酸マーカーの全て、又は表2もしくは表3のタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
別の好ましい一実施形態においては、表2及び表3の核酸マーカーの全て、又は表2及び表3のタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
別の好ましい一実施形態においては、表4の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
別の好ましい一実施形態においては、表5の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
別の好ましい一実施形態においては、表6の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
別の好ましい一実施形態においては、表1の核マーカー酸又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
Figure 2022097302000002
Figure 2022097302000003
Figure 2022097302000004
Figure 2022097302000005
Figure 2022097302000006
本発明のマーカーは、被験体から採取した生体試料、例えば、細胞、角層、組織(生検等)、体液(血液等)、尿、分泌物(唾液、SSL等)などから常法に従って調製することができる。例えば、生体試料からの核酸又はタンパク質の調製には、市販のキットを使用することができる。好ましくは、本発明のマーカーは核酸マーカーであり、生体試料から調製される核酸の好ましい例としては、ゲノムDNA、及びmRNA等のRNAなどが挙げられる。
本発明のマーカーを含む生体試料を採取される被験体の例としては、ヒト及び非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物が挙げられる。好ましくは、該被験体は、睡眠状態の検出を必要とするヒト及び非ヒト哺乳動物、又は睡眠状態の検出を希望するヒトであり、より好ましくは不眠の検出を必要とするヒト及び非ヒト哺乳動物、又は不眠の検出を希望するヒトである。より好ましくは、該被験体はヒトである。
より好ましくは、本発明のマーカーは、被験者のSSLから調製される核酸又はタンパク質、さらに好ましくはmRNAである。SSLが採取される皮膚の部位としては、頭、顔、首、体幹、手足等の身体の任意の部位の皮膚が挙げられ、皮脂の分泌が多い部位、例えば顔の皮膚が好ましい。
被験体の皮膚からのSSLの採取には、皮膚からのSSLの回収又は除去に用いられているあらゆる手段を採用することができる。好ましくは、後述するSSL吸収性素材、SSL接着性素材、又は皮膚からSSLをこすり落とす器具を使用することができる。SSL吸収性素材又はSSL接着性素材としては、SSLに親和性を有する素材であれば特に限定されず、例えばポリプロピレン、パルプ等が挙げられる。皮膚からのSSLの採取手順のより詳細な例としては、あぶら取り紙、あぶら取りフィルム等のシート状素材へSSLを吸収させる方法、ガラス板、テープ等へSSLを接着させる方法、スパーテル、スクレイパー等によりSSLをこすり落として回収する方法、などが挙げられる。SSLの吸着性を向上させるため、脂溶性の高い溶媒を予め含ませたSSL吸収性素材を用いてもよい。一方、SSL吸収性素材は、水溶性の高い溶媒や水分を含んでいるとSSLの吸着が阻害されるため、水溶性の高い溶媒や水分の含有量が少ないことが好ましい。SSL吸収性素材は、乾燥した状態で用いることが好ましい。
採取されたSSLは、直ちに後述の核酸又はタンパク質の抽出工程に用いられてもよいが、該核酸又はタンパク質抽出工程に用いるまで保存されてもよい。保存する場合、SSLは、好ましくは低温条件で保存される。SSLの保存の温度条件は、好ましくは10℃以下、より好ましくは5℃以下、さらに好ましくは0℃以下、さらに好ましくは-20±20℃~-80±20℃、さらに好ましくは-20±10℃~-80±10℃、さらに好ましくは-20±5℃~-80±5℃である。SSLの保存の期間は、特に限定されないが、好ましくは12か月以下、例えば6時間以上12ヶ月以下、より好ましくは6ヶ月以下、例えば1日間以上6ヶ月以下、さらに好ましくは3ヶ月以下、例えば3日間以上3ヶ月以下である。
採取したSSLからの核酸又はタンパク質の抽出には、生体試料からの核酸又はタンパク質の抽出又は精製に通常使用される方法を使用することができる。核酸の抽出又は精製方法の例としては、フェノール/クロロホルム法、AGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法、又はTRIzol(登録商標)、RNeasy(登録商標)、QIAzol(登録商標)などのカラムを用いた方法、シリカをコーティングした特殊な磁性体粒子を用いる方法、Solid Phase Reversible Immobilization磁性体粒子を用いる方法、ISOGEN等の市販のRNA抽出試薬による抽出、などが挙げられる。タンパク質の抽出又は精製には、QIAzol Lysis Reagent(Qiagen)等の市販のタンパク質抽出試薬を用いることができる。
(2.睡眠状態の検出方法)
(2.1.マーカーの発現レベルに基づく睡眠状態の検出)
別の一態様において、本発明は、本発明の睡眠状態マーカーを用いた被験体の睡眠状態の検出方法を提供する。該方法では、被験体における本発明のマーカーの発現レベルに基づいて該被験体の睡眠状態を検出する。好ましくは、該方法は、不眠の検出方法である。本発明による睡眠状態の検出方法が適用される被験体は、上述した本発明の睡眠状態マーカーを含む生体試料を採取される被験体と同様である。
好ましい実施形態において、本発明による睡眠状態の検出方法は、被験体から採取した生体試料における本発明のマーカーの発現レベルを測定することを含む。該生体試料の種類は、上述したとおりであり、好ましくはSSLである。一実施形態において、本発明の方法は、該被験体のSSLを採取することをさらに含んでいてもよい。SSLの採取手順、及びSSLからのマーカーの抽出手順は、上述したとおりである。
本発明のマーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられる核酸又はタンパク質の定量法に従って、測定することができる。例えば、核酸マーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられる遺伝子発現解析の手順に従って測定すればよい。遺伝子発現解析の手法の例としては、リアルタイムPCR、マルチプレックスPCR、マイクロアレイ、シーケンシング、クロマトグラフィーなどによりDNA又はその増幅産物を定量する方法が挙げられる。核酸がRNAの場合は、RNAを逆転写によりcDNAに変換した後、上記方法で定量することができる。タンパク質マーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられるタンパク質定量法、例えばELISA、免疫染色、蛍光法、電気泳動、クロマトグラフィー、質量分析などを用いて測定することができる。算出されるマーカーの発現レベルは、生体試料中の該標的マーカーの絶対量に基づく発現レベルであっても、他の標準物質や、全核酸又はタンパク質の発現レベルに対する相対発現レベルであってもよい。
好ましくは、本発明による睡眠状態の検出方法で使用される本発明のマーカーは、SSL由来mRNAである。好ましくは、SSLから抽出したRNAを逆転写によりcDNAに変換した後、該cDNA又はその増幅産物を上記の手法で定量することで、該SSL由来RNAの発現レベルが測定される。該逆転写には、解析したい特定のRNAを標的としたプライマーを用いてもよいが、より包括的な核酸の保存及び解析のためにはランダムプライマーを用いることが好ましい。該逆転写には、一般的な逆転写酵素又は逆転写試薬キットを使用することができる。好適には、正確性及び効率性の高い逆転写酵素又は逆転写試薬キットが用いられ、その例としては、M-MLV Reverse Transcriptase及びその改変体、あるいは市販の逆転写酵素又は逆転写試薬キット、例えばPrimeScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(タカラバイオ社)、SuperScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(Thermo Scientific社)等が挙げられる。SuperScript(登録商標)III Reverse Transcriptase、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(いずれもThermo Scientific社)などが好ましく用いられる。得られたcDNAのPCRでは、解析したい特定のDNAを標的としたプライマーペアを用いて該特定のDNAのみを増幅してもよいが、複数のプライマーペアを用いて複数のDNAを増幅してもよい。好ましくは、該PCRはマルチプレックスPCRである。マルチプレックスPCRは、PCR反応系に複数のプライマー対を同時に使用することで、複数の遺伝子領域を同時に増幅する方法である。マルチプレックスPCRは、市販のキット(例えば、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit;ライフテクノロジーズジャパン株式会社等)を用いて実施することができる。
当該逆転写及びPCRの反応条件を調整することで、PCR反応産物の収率がより向上し、ひいてはそれを用いた解析の精度がより向上する。好適には、該逆転写での伸長反応において、温度を好ましくは42℃±1℃、より好ましくは42℃±0.5℃、さらに好ましくは42℃±0.25℃に調整し、一方、反応時間を好ましくは60分間以上、より好ましくは80~120分間に調整する。また好適には、該PCRにおけるアニーリング及び伸長反応の温度は、好ましくは62℃±1℃、より好ましくは62℃±0.5℃、さらに好ましくは62℃±0.25℃である。したがって、該PCRでは、好ましくはアニーリング及び伸長反応が1ステップで行われる。該アニーリング及び伸長反応のステップの時間は、増幅すべきDNAのサイズ等に依存して調整され得るが、好ましくは14~18分間である。該PCRにおける変性反応の条件は、増幅すべきDNAに依存して調整され得るが、好ましくは95~99℃で10~60秒間である。上記のような温度及び時間での逆転写及びPCRは、一般的にPCRに使用されるサーマルサイクラーを用いて実行することができる。
当該PCRで得られた反応産物の精製は、反応産物のサイズ分離によって行われることが好ましい。サイズ分離により、目的のPCR反応産物を、PCR反応液中に含まれるプライマーやその他の不純物から分離することができる。DNAのサイズ分離は、例えば、サイズ分離カラムや、サイズ分離チップ、サイズ分離に利用可能な磁気ビーズなどによって行うことができる。サイズ分離に利用可能な磁気ビーズの好ましい例としては、Ampure XP等のSolid Phase Reversible Immobilization(SPRI)磁性ビーズが挙げられる。
精製したPCR反応産物に対して、その後の定量解析を行うために必要なさらなる処理を施してもよい。例えば、DNAのシーケンシングのために、精製したPCR反応産物を、適切なバッファー溶液へと調製したり、PCR増幅されたDNAに含まれるPCRプライマー領域を切断したり、増幅されたDNAにアダプター配列をさらに付加したりしてもよい。例えば、精製したPCR反応産物をバッファー溶液へと調製し、増幅DNAに対してPCRプライマー配列の除去及びアダプターライゲーションを行い、得られた反応産物を、必要に応じて増幅して、定量解析のためのライブラリーを調製することができる。これらの操作は、例えば、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×VILO RT Reaction Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×Ion AmpliSeq HiFi Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Core Panelを用いて、各キット付属のプロトコルに従って行うことができる。シーケンシングには、好ましくは次世代シーケンサー(例えばIon S5/XLシステム、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)が用いられる。シーケンシングで作成されたリードの数(リードカウント)に基づいて、RNA発現レベルを定量することができる。
本発明による睡眠状態の検出方法の一実施形態においては、被験体における本発明のマーカーの発現レベル(好ましくは、該被験体から採取した生体試料中に含まれる本発明のマーカーの発現レベル)を指標に、被験体の睡眠状態を検出する。
上述したように、表2の核酸マーカー及びタンパク質マーカーは、その発現レベルが被験体の睡眠の質の低下に応じて増加するポジティブマーカーであり、一方、表3の核酸マーカー及びタンパク質マーカーは、その発現レベルが被験体の睡眠の質の低下に応じて低下するネガティブマーカーである。したがって、該ポジティブマーカーの発現レベルが増加した場合、被験体の睡眠状態は、悪い又は不眠と検出され、そうでない場合、被験体の睡眠状態は、悪くない又は不眠ではない(すなわち被験体の睡眠状態は良好又は健常)と検出される。あるいは、該ネガティブマーカーの発現レベルが低下した場合、被験体の睡眠状態は、悪い又は不眠と検出され、そうでない場合、被験体の睡眠状態は、悪くない又は不眠ではない(すなわち被験体の睡眠状態は良好又は健常)と検出される。あるいは、本発明による睡眠状態の検出方法においては、該ポジティブマーカーと該ネガティブマーカーを組み合わせて使用してもよい。
一実施形態においては、被験体から測定された本発明のマーカーの発現レベルを、基準値と比べることで、該被験体の睡眠状態を検出することができる。あるいは、一被験体から本発明のマーカーの発現レベルを定期的に(例えば毎月)測定し、その発現レベルの変動を追跡することで、該被験体の睡眠状態を検出することができる。該基準値には、予め決定した値、例えば、本発明のマーカーの発現レベルの統計値(例えば平均値)を用いることができる。該基準値は、被験体ごとに設定されてもよい。例えば、同じ被験体から複数回測定したマーカーの発現レベルの統計値から該基準値を算出してもよい。あるいは、該基準値は、参照集団(睡眠状態が任意である個体からなる群)、健常群(睡眠状態が正常範囲[例えば前述したOSA睡眠調査票の第1~第5因子のスコアの平均値が15以上]である個体からなる群)、又は良好群(睡眠状態が良好範囲[例えば前述したOSA睡眠調査票の第1~第5因子のスコアの平均値が20以上]から測定した本発明のマーカーの発現レベルの統計値(例えば平均値など)に基づいて決定することができる。本発明のマーカーとして複数種の核酸又はタンパク質を用いる場合は、各々の核酸又はタンパク質について基準値を求めることが好ましい。
例えば、本発明のマーカーがポジティブマーカーの場合、該マーカーの発現レベルが基準値よりも高い場合、被験体の睡眠状態は悪い又は不眠と検出され得、そうでない場合、被験体の睡眠状態は、悪くない又は不眠ではない(睡眠状態は良好又は健常)と検出され得る。例えば、被験体におけるポジティブマーカーの発現レベルが基準値と比べて統計学的に有意に高ければ、該被験体の睡眠状態は、悪い又は不眠と検出され得、そうでない場合、被験体の睡眠状態は、悪くない又は不眠ではない(睡眠状態は良好又は健常)と検出され得る。また例えば、被験体におけるポジティブマーカーの発現レベルが基準値に対して、好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは150%以上であれば、該被験体の睡眠状態は、悪い又は不眠と検出され得、そうでない場合、被験体の睡眠状態は、悪くない又は不眠ではない(睡眠状態は良好又は健常)と検出され得る。
一方、本発明のマーカーがネガティブマーカーの場合、該マーカーの発現レベルが基準値よりも低い場合、被験体の睡眠状態は悪い又は不眠と検出され得、そうでない場合、被験体の睡眠状態は悪くない又は不眠ではない(睡眠状態は良好又は健常)と検出され得る。例えば、被験体におけるネガティブマーカーの発現レベルが基準値と比べて統計学的に有意に低ければ、該被験体の睡眠状態は悪い又は不眠と検出され得、そうでない場合、被験体の睡眠状態は、悪くない又は不眠ではない(睡眠状態は良好又は健常)と検出され得る。また例えば、被験体におけるネガティブマーカーの発現レベルが基準値に対して、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下であれば、該被験体の睡眠状態は悪い又は不眠と検出断され得、そうでない場合、被験体の睡眠状態は、悪くない又は不眠ではない(睡眠状態は良好又は健常)と検出され得る。
あるいは、複数の核酸又はタンパク質を組み合わせてマーカーとして用いる場合には、それらの核酸又はタンパク質の一定割合、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%が上述した発現レベルの基準を満たすか否かに基づいて、被験体の睡眠状態を検出することができる。
(2.2.予測モデルに基づく睡眠状態の検出)
本発明による睡眠状態の検出方法の別の一実施形態においては、本発明のマーカー(該被験体から採取した生体試料中に含まれる本発明のマーカー)の発現レベルについてのデータ(以下、発現プロファイルと呼ぶ)を用いて構築した予測モデルに基づいて、被験体の睡眠状態を検出する。発現プロファイルの例としては、シーケンシングリード数等の発現レベルに関するデータが挙げられる。
例えば、教師サンプル集団(例えば、睡眠状態の健常群もしくは良好群、及び不眠群を含む集団)の各個体から取得した1つ以上のマーカー(核酸又はタンパク質)の各々についての発現プロファイルを説明変数とし、該集団の各個体における睡眠状態(例えば、健常、良好又は不眠)についてのデータを目的変数とした機械学習により、任意の被験体における睡眠状態を判別するための予測モデル(例えば判別式)を構築することができる。
本明細書において、「特徴量」とは、機械学習における「説明変数」と同義である。本明細書において、その発現プロファイルが機械学習の説明変数(特徴量)として使用されるマーカーを「特徴量マーカー(群)」と称することがある。また特徴量マーカーが核酸マーカーの場合、特徴量遺伝子と称することがある。
本実施形態で用いられる特徴量マーカー(群)は、表1の核酸マーカー及びタンパク質マーカーからなる群より選択される少なくとも1種であればよい。特徴量マーカーの発現プロファイルは、絶対値であっても相対値であってもよく、あるいは正規化処理されていてもよい。特徴量マーカー群として複数のマーカーを使用する場合、例えば、本発明のマーカーの中から睡眠状態との相関が高いものを複数選択し、それらの発現プロファイルの各々を説明変数として用いることができる。
好ましい実施形態においては、表2及び表3の核酸マーカーの全て、又は表2及び表3のタンパク質マーカーの全てを組み合わせて、特徴量マーカー群として使用する。別の好ましい実施形態においては、表4の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて特徴量マーカー群として使用する。別の好ましい実施形態においては、表5の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて特徴量マーカー群として使用する。別の好ましい実施形態においては、表6の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて特徴量マーカー群として使用する。別の好ましい実施形態においては、表6の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てと、表2、表3又は表4のいずれかの核酸マーカー又はタンパク質マーカーのいずれか1つ以上、好ましくは全て(ただし表6のマーカー以外のもの)とを組み合わせて特徴量マーカー群として使用する。別の好ましい実施形態においては、表1の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて特徴量マーカー群として使用する。
好ましい実施形態においては、機械学習のための教師サンプルとして、睡眠状態の良好な個体(良好群)と睡眠状態の悪い個体(不眠群)における特徴量マーカー(群)の発現プロファイルを用いる。該教師サンプルを用いて、個体を良好群と不眠群に分けるための判別式(予測モデル)を構築する。判別式の構築に用いる説明変数としては、特徴量マーカー(群)の発現プロファイルを用いることができる。目的変数としては、例えば、特徴量マーカー(群)が由来する個体が良好群か不眠群かを表す変数を用いることができる。構築した判別式に基づいて、良好群と不眠群を判別するためのカットオフ値を求めることができる。次いで、睡眠状態を調べたい被験体由来の該特徴量マーカー(群)の発現プロファイルを測定し、得られた測定値を当該判別式に代入し、該判別式から得られた結果を該カットオフ値と比較することによって、該被験体が不眠群か否かを判別する。
例えば、判別すべき2群間(良好群及び不眠群)の統計学的に有意な差異、例えば、発現プロファイルが2群間で有意に変動するマーカーを特徴量マーカー(群)とし、その発現プロファイルを説明変数として用いることができる。あるいは、特徴量マーカー(群)は、機械学習アルゴリズムなどの公知のアルゴリズムを利用して抽出することができる。例えば、下記実施例に示すように、ランダムフォレストにおける変数重要度の高さや、R言語の“Boruta”パッケージなどを用いて、特徴量マーカー(群)を抽出することができる。
あるいは、予測モデルの構築に複数のマーカーの発現プロファイルを使用する場合、必要に応じて、次元削減によってデータを圧縮してから予測モデルの構築を行ってもよい。例えば、表1に示す遺伝子群をコードする核酸マーカーの中から複数のマーカーを抽出する。次いで、該抽出したマーカーの発現プロファイルについて主成分分析を実施する。該主成分分析で算出された1つ以上の主成分を説明変数とし、該説明変数が由来する個体が良好群か不眠群かを表す変数を目的変数とした機械学習により、被験体が不眠群か否かを判別するための予測モデルを構築することができる。
予測モデルの構築におけるアルゴリズムは、機械学習に用いるアルゴリズムなどの公知のものを利用することができる。機械学習アルゴリズムの例としては、限定ではないが、線形回帰モデル(Linear model)、ラッソ回帰(Lasso)、ランダムフォレスト(Random Forest)、ニューラルネットワーク(Neural net)、線形カーネルのサポートベクターマシン(SVM (linear))、rbfカーネルのサポートベクターマシン(SVM (rbf))などのアルゴリズムが挙げられる。本発明で用いるアルゴリズムとしては、ランダムフォレストが好ましい。
構築した予測モデルに検証用のデータを入力して予測値を算出し、該予測値が実測値と最も適合するモデル、例えば、該予測値の実測値に対する正解率(Accuracy)が最も大きいモデル、又は該予測値と実測値の差の二乗平均平方根誤差(RMSE)が最も小さいモデルを、最適モデルとして選択することができる。構築した予測モデルに対して被験体から実測した特徴量マーカー(群)の発現プロファイルを入力することによって、該被験体の睡眠状態を検出することができる。
(3.睡眠制御剤の評価方法)
さらなる一態様において、本発明は、本発明の睡眠状態マーカーを用いた睡眠制御剤の評価方法を提供する。該方法は、本発明のマーカーの発現レベルに基づいて睡眠制御剤を評価する。好ましくは、該方法は、試験物質を適用した被験体から採取した生体試料における本発明のマーカーの発現レベルを測定することを含む。該方法において、用いられる生体試料の種類は、上述したとおりである。好ましくは、該生体試料はSSLであり、本発明のマーカーは、SSL由来mRNAである。一実施形態において、該方法は、被験体のSSLを採取することをさらに含んでいてもよい。本発明で評価される睡眠制御剤としては、不眠改善剤又は不眠誘導剤が挙げられ、好ましくは、不眠改善剤である。
生体試料を採取される被験体は、ヒト又は非ヒト哺乳動物である。評価される睡眠制御剤に応じて適宜適当な被験体を選択することができる。該被験体としては、不眠改善剤を評価する場合は、好ましくは不眠を有するヒト又は非ヒト哺乳動物が用いられ、不眠誘導剤を評価する場合は、好ましくは睡眠状態が良好又は健常なヒト又は非ヒト哺乳動物が用いられる。好ましくは、該被験体はヒトである。
本発明の評価方法に用いられる試験物質は、睡眠制御剤として使用することを所望する物質であれば、特に制限されない。試験物質は、天然に存在する物質であっても、化学的又は生物学的方法等で人工的に合成した物質であってもよく、また化合物であっても、組成物もしくは混合物であってもよい。試験物質の形態は、特に制限されず、固形、半固形、ゲル、液体、気体等いずれの形態であってもよいが、ゲル又は液体が好ましい。また試験物質は、光照射、温熱、マッサージなどの物理刺激であってもよい。被験体に試験物質を適用する手法としては、経口投与、及び注射、塗布、噴霧、散布、滴下、貼付、照射等の非経口投与が挙げられ、特に限定されない。被験体へ適用する試験物質の用量及び適用期間は、試験物質の種類や投与形態に応じて適宜設定することができる。
被験体からの生体試料の採取、採取した生体試料からのマーカーの抽出、マーカーの発現レベルの測定の手順は、上述したとおりである。
抽出した該被験体由来の本発明のマーカーの発現レベルは、該被験体の睡眠状態の悪化に応じてポジティブマーカーであれば増加し、ネガティブマーカーであれば低下している。試験物質による該マーカーの発現レベルの変化に基づいて、該試験物質が睡眠制御剤であるか否かを評価することができる。より詳細には、ポジティブマーカーの発現レベルを低下させる試験物質、又はネガティブマーカーの発現レベルを増加させる試験物質は、睡眠改善剤、又は不眠改善剤と判断される。反対に、ポジティブマーカーの発現レベルを増加させる試験物質、又はネガティブマーカーの発現レベルを低下させる試験物質は、不眠誘導剤と判断される。
一実施形態においては、該被験体由来の本発明のマーカーの発現レベルを対照と比較することで、該試験物質の睡眠に対する効果を評価する。より詳細には、試験物質の適用下での本発明のマーカーの発現レベルが対照と比べて変化しているかを調べる。対照としては、試験物質の非適用下での本発明のマーカーの発現レベル、上述した睡眠状態の評価のための基準値などが挙げられる。
一例において、試験物質の適用下でのポジティブマーカーの発現レベルが対照と比べて低下する場合、該試験物質は睡眠改善剤又は不眠改善剤と判断され得る。より詳細には、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのポジティブマーカーの発現レベルが対照と比較して統計学的に有意に低下していれば、該試験物質は睡眠改善剤又は不眠改善剤と判断され得る。あるいは、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのポジティブマーカーの発現レベルが対照に対して好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下に低下していれば、該試験物質は睡眠改善剤又は不眠改善剤と判断され得る。
別の例において、試験物質の適用下でのポジティブマーカーの発現レベルが対照と比べて増加する場合、該試験物質は不眠誘導剤と判断され得る。より詳細には、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのポジティブマーカーの発現レベルが対照と比較して統計学的に有意に増加していれば、該試験物質は不眠誘導剤と判断され得る。あるいは、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのネガティブマーカーの発現レベルが対照に対して好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは150%以上に増加していれば、該試験物質は不眠誘導剤と判断され得る。
さらに別の例において、試験物質の適用下でのネガティブマーカーの発現レベルが対照と比べて増加する場合、該試験物質は睡眠改善剤又は不眠改善剤と判断され得る。より詳細には、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのネガティブマーカーの発現レベルが対照と比較して統計学的に有意に増加していれば、該試験物質は睡眠改善剤又は不眠改善剤と判断され得る。あるいは、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのネガティブマーカーの発現レベルが対照に対して好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは150%以上に増加していれば、該試験物質は睡眠改善剤又は不眠改善剤と判断され得る。
さらに別の例において、試験物質の適用下でのネガティブマーカーの発現レベルが対照と比べて低下する場合、該試験物質は不眠誘導剤と判断され得る。より詳細には、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのネガティブマーカーの発現レベルが対照と比較して統計学的に有意に低下していれば、該試験物質は不眠誘導剤と判断され得る。あるいは、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのポジティブマーカーの発現レベルが対照に対して好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下に低下していれば、該試験物質は不眠誘導剤と判断され得る。
(4.睡眠状態検出用キット及び睡眠制御剤の評価用キット)
さらなる一態様において、本発明による睡眠状態の検出方法に従って被験体の睡眠状態を検出するための睡眠状態検出用キット、及び睡眠制御剤の評価方法に従って睡眠制御剤を評価するための睡眠制御剤の評価用キットを提供する。一実施形態において、本発明のキットは、上述した本発明の睡眠状態マーカーの発現レベルを測定するための試薬又は器具を備える。例えば、本発明のキットは、本発明の核酸マーカーを増幅又は定量するための試薬(例えば、逆転写酵素、PCR用試薬、プライマー、プローブ、シーケンシング用アダプター配列等)、又は本発明のタンパク質マーカーを定量するための試薬(例えば、免疫学的測定のための試薬、抗体など)を備え得る。好ましくは、本発明のキットは、本発明の核酸マーカーと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(例えば、PCR用のプライマー、又はプローブ)、あるいは、本発明のタンパク質マーカーを認識する抗体を含有する。好ましくは、本発明のキットは、本発明のマーカーの発現レベルを検出するための指標又はガイダンスを備える。例えば、本発明のキットは、各マーカーの発現レベルの増減と睡眠状態との関係を説明するガイダンス、又は睡眠状態検出のための各マーカーの発現レベルの基準値を説明するガイダンスを備え得る。また本発明のキットは、生体試料採取デバイス(例えば、上記のSSL吸収性素材又はSSL接着性素材)、生体試料から本発明のマーカーを抽出するための試薬(例えば核酸精製用試薬)、生体試料採取後の試料採取デバイスの保存剤や保存用容器などをさらに備えていてもよい。
本発明の例示的実施形態として、以下の物質、製造方法、用途、方法等をさらに本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〔1〕以下の遺伝子:ATG7、DNAJB6、TBC1D17、ZNF410、TRAPPC5、PSMD3、ABI1、及びMARCH6をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、睡眠状態マーカー。
〔2〕好ましくは、以下の遺伝子:ATG7、DNAJB6、TBC1D17、ZNF410、TRAPPC5、PSMD3、ABI1、及びMARCH6のそれぞれをコードする核酸の全部、又は該遺伝子のそれぞれにコードされるタンパク質の全部を含む、〔1〕記載の睡眠状態マーカー。
〔3〕好ましくは、さらに、前記表1に示す遺伝子をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕記載の睡眠状態マーカー。
〔4〕好ましくは、さらに、前記表2及び表3に示す遺伝子をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕記載の睡眠状態マーカー。
〔5〕好ましくは、前記表2に示す遺伝子をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔4〕記載の睡眠状態マーカー。
〔6〕好ましくは、前記表3に示す遺伝子をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔4〕記載の睡眠状態マーカー。
〔7〕好ましくは、さらに、前記表4に示す遺伝子をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕記載の睡眠状態マーカー。
〔8〕好ましくは不眠の検出のためのマーカーである、〔1〕~〔7〕のいずれか1項記載の睡眠状態マーカー。
〔9〕好ましくは核酸マーカーである、〔1〕~〔8〕のいずれか1項記載の睡眠状態マーカー。
〔10〕好ましくは、前記核酸が皮膚表上脂質から採取されたmRNAである、〔9〕記載の睡眠状態マーカー。
〔11〕被験体から採取した生体試料における〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の睡眠状態マーカーの発現レベルを測定することを含む、被験体の睡眠状態の検出方法。
〔12〕好ましくは不眠を検出するための方法である、〔11〕記載の方法。
〔13〕前記睡眠状態マーカーの発現レベルに基づいて前記被験体の睡眠状態を検出することをさらに含む、〔11〕又は〔12〕記載の方法。
〔14〕前記睡眠状態マーカーが、
好ましくは、前記表2に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であり、
より好ましくは、前記表2に示す遺伝子をコードする皮膚表上脂質由来mRNAからなる群より選択される少なくとも1種であり、
かつ、該方法が、
好ましくは、該睡眠状態マーカーの発現レベルが増加した場合に、前記被験体の睡眠状態を悪い又は不眠と検出することを含み、
より好ましくは、該睡眠状態マーカーの発現レベルが基準値より高い場合に、前記被験体の睡眠状態を悪い又は不眠と検出することを含む、
〔13〕記載の方法。
〔15〕前記睡眠状態マーカーが、
好ましくは、前記表3に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であり、
より好ましくは、前記表3に示す遺伝子をコードする皮膚表上脂質由来のmRNAからなる群より選択される少なくとも1種であり、
かつ、該方法が、
好ましくは、該睡眠状態マーカーの発現レベルが低下した場合に、前記被験体の睡眠状態を悪い又は不眠と検出することを含み、
より好ましくは、該睡眠状態マーカーの発現レベルが基準値より低い場合に、前記被験体の睡眠状態を悪い又は不眠と検出することを含む、
〔13〕記載の方法。
〔16〕好ましくは、前記睡眠状態マーカーの発現レベルについてのデータを用いて構築した予測モデルに基づいて、前記被験体の睡眠状態を検出することを含む、〔13〕記載の方法。
〔17〕好ましくは、前記予測モデルが、睡眠状態の健常群もしくは良好群と不眠群とを含む集団の各個体から取得した前記睡眠状態マーカーの発現レベルについてのデータを説明変数とし、該集団の各個体の睡眠状態を目的変数とした機械学習により構築される、〔16〕記載の方法。
〔18〕試験物質を適用した被験体から採取した生体試料における〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の睡眠状態マーカーの発現レベルを測定することを含む、睡眠制御剤の評価方法。
〔19〕好ましくは前記睡眠制御剤が、睡眠改善剤、不眠改善剤又は不眠誘導剤である、〔18〕記載の方法。
〔20〕好ましくは、前記試験物質による前記マーカーの発現レベルの変化に基づいて、該試験物質が睡眠制御剤であるか否かを評価することをさらに含む、〔18〕又は〔19〕記載の方法。
〔21〕前記睡眠状態マーカーが、
好ましくは、前記表2に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であり、
より好ましくは、前記表2に示す遺伝子をコードする皮膚表上脂質由来mRNAからなる群より選択される少なくとも1種であり、
かつ、該方法が、
好ましくは、前記試験物質の適用下での該睡眠状態マーカーの発現レベルが対照と比べて低下する場合、該試験物質を睡眠改善剤又は不眠改善剤と判断し、前記試験物質の適用下での該睡眠状態マーカーの発現レベルが対照と比べて増加する場合、該試験物質を不眠誘導剤と判断することを含む、
〔20〕記載の方法。
〔22〕前記睡眠状態マーカーが、
好ましくは、前記表3に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であり、
より好ましくは、前記表3に示す遺伝子をコードする皮膚表上脂質由来mRNAからなる群より選択される少なくとも1種であり、
かつ、該方法が、
好ましくは、前記試験物質の適用下での該睡眠状態マーカーの発現レベルが対照と比べて増加する場合、該試験物質を睡眠改善剤又は不眠改善剤と判断し、前記試験物質の適用下での該睡眠状態マーカーの発現レベルが対照と比べて低下する場合、該試験物質を不眠誘導剤と判断することを含む、
〔20〕記載の方法。
〔23〕〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の睡眠状態マーカーである核酸と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の睡眠状態マーカーであるタンパク質を認識する抗体を含有する、〔11〕~〔17〕のいずれか1項記載の方法に用いられる睡眠状態検出用キット又は〔18〕~〔22〕のいずれか1項記載の方法に用いられる睡眠制御剤の評価用キット。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 発現変動遺伝子を用いた睡眠状態判別モデルの構築
1)被験者の選抜及びSSL採取
20~60歳代の健常な男女175名の方にOSA睡眠調査票に回答させ、その第1~第5因子のスコアの平均値が20.2以上の上位25%(42名)を睡眠状態の良好群の被験者として選抜し、14.3以下の下位25%(40名)を不眠群の被験者として選抜した。選抜した両群合わせて82名の各被験者の全顔からあぶら取りフィルム(5cm×8cm、ポリプロピレン製、3M社)を用いて皮脂を回収した。該あぶら取りフィルムはガラスバイアルに移し、RNA抽出に使用するまで-80℃で保存した。
2)RNA調製及びシーケンシング
上記1)のあぶら取りフィルムを適当な大きさに切断し、QIAzol Lysis Reagent(Qiagen)を用いて、付属のプロトコルに準じてRNAを抽出した。抽出したRNAは、SuperScript VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて42℃、90分間逆転写し、cDNAを合成した。逆転写反応のプライマーには、キットに付属しているランダムプライマーを使用した。得られたcDNAから、マルチプレックスPCRにより20802遺伝子に由来するDNAを含むライブラリーを調製した。マルチプレックスPCRは、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて、[99℃、2分→(99℃、15秒→62℃、16分)×20サイクル→4℃、Hold]の条件で行った。得られたPCR産物は、Ampure XP(ベックマン・コールター株式会社)で精製した後に、バッファーの再構成、プライマー配列の消化、アダプターライゲーションと精製、及び増幅を行い、ライブラリーを調製した。調製したライブラリーをIon 540 Chipにローディングし、Ion S5/XLシステム(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いてシーケンシングした。シーケンシングで得られた各リード配列をヒトゲノムのリファレンス配列であるhg19 AmpliSeq Transcriptome ERCC v1を用いて遺伝子マッピングすることで各リード配列の由来する遺伝子を決定した。
3)データ解析及び特徴量遺伝子の選択
上記2)で測定した被験者由来のRNAの発現レベルのデータ(リードカウント値)を、DESeq2という手法を用いて補正した。但し、全被験者の発現レベルデータのうち90%以上の被験者で欠損値ではない発現レベルデータが得られた4195遺伝子のみ以下の解析に使用した。解析では、DESeq2という手法を用いて補正されたカウント値(Normalized count値)を用い、群間(良好群及び不眠群)で尤度比検定によるp値の補正値(FDR)が0.25未満となる遺伝子を抽出した。その結果、表7に示す、群間で統計学的に有意に発現が変動する35種の遺伝子が得られた。表7Aの18遺伝子は、不眠群で発現レベルがより高かったことから、不眠群でその発現レベルが高いマーカー(ポジティブマーカー)であった。表7Bの17遺伝子は、不眠群で発現レベルがより低かったことから、不眠群でその発現レベルが低いマーカー(ネガティブマーカー)であった。これらの遺伝子を以下の予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
Figure 2022097302000007
4)モデル構築
3)で選択した特徴量遺伝子の発現レベルデータを、負の二項分布に従うRPM値から正規分布に近似するため、整数1を加算した底2の対数値(Log2(RPM+1)値)に変換した。得られた35の特徴量遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、睡眠状態(良好群か不眠群か)を目的変数として用いて、睡眠状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rateを算出した。その結果、35遺伝子全ての発現レベルデータを変数に用いた場合のモデルではOOB error rateは31.7%であり、表7に示す遺伝子を、睡眠状態を検出するためのマーカーとして使用できることが示された。
実施例2 ランダムフォレスト変数重要度の高い遺伝子を用いた睡眠状態判別モデルの構築
1)使用データ
実施例1の3)で取得した90%以上の被験者で欠損値ではない発現レベルデータが得られた4195種の遺伝子を以下の解析に使用した。遺伝子の発現レベルデータを、負の二項分布に従うRPM値から正規分布に近似するため、整数1を加算した底2の対数値(Log2(RPM+1)値)に変換した。
2)特徴量遺伝子の選択
ランダムフォレストのアルゴリズムを用いて、予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子の選択を行った。1)で得られた4195遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、睡眠状態(良好群か不眠群か)を目的変数として用いて、睡眠状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、ジニ係数に基づく変数重要度の上位49遺伝子を算出した(表8)。これら49遺伝子を予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
Figure 2022097302000008
3)モデル構築
2)で選択した49の特徴量遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、睡眠状態(良好群か不眠群か)を目的変数として用いて、睡眠状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rate)を算出した。その結果、49遺伝子の発現レベルデータを変数に用いた場合のモデルではOOB error rateは18.3%であり、表8に示す遺伝子を、睡眠状態を検出するためのマーカーとして使用できることが示された。
実施例3 Boruta法により抽出した特徴量遺伝子を用いた睡眠状態判別モデルの構築
1)使用データ
実施例1の3)で取得した90%以上の被験者で欠損値ではない発現レベルデータが得られた4195種の遺伝子を以下の解析に使用した。遺伝子の発現レベルデータを、負の二項分布に従うRPM値から正規分布に近似するため、整数1を加算した底2の対数値(Log2(RPM+1)値)に変換した。
2)特徴量遺伝子の選択
1)で得られた4195遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、睡眠状態(良好群か不眠群か)を目的変数として用いて、R言語の“Boruta”パッケージのアルゴリズムを実行し、睡眠状態を判別する予測モデルを構築した。最大試行回数を1000回とし、p値が0.01未満である2遺伝子(ABI1、MARCH6)を算出した。これら2遺伝子を予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
3)モデル構築
2)で選択した2つの特徴量遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、睡眠状態(良好群か不眠群か)を目的変数として用いて、睡眠状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rate)を算出した。その結果、2遺伝子の発現レベルデータを変数に用いた場合のモデルではOOB error rateは35.4%であった。ABI1、MARCH6の2遺伝子を、睡眠状態を検出するためのマーカーとして使用できることが示された。
実施例4 実施例1~3で重複して用いられた特徴量遺伝子に基づく睡眠状態判別モデルの構築
1)特徴量遺伝子の選択
実施例1~3で用いられた特徴量遺伝子のうち、実施例間で重複して用いられた遺伝子は、実施例1と2で重複して用いられたATG7、DNAJB6、TBC1D17、ZNF410、TRAPPC5及びPSMD3の6遺伝子と、実施例2と実施例3で重複して用いられたABI1及びMARCH6の2遺伝子の計8遺伝子であった。これら8遺伝子を予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
2)モデル構築
1)で選択した8の特徴量遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、睡眠状態(良好群か不眠群か)を目的変数として用いて、睡眠状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rate)を算出した。その結果、8遺伝子の発現レベルデータを変数に用いた場合のモデルではOOB error rateは32.9%であり、上記8遺伝子を、睡眠状態を検出するためのマーカーとして使用できることが示された。
実施例5 実施例1~3で用いられた全ての特徴量遺伝子に基づく睡眠状態判別モデルの構築
1)特徴量遺伝子の選択
実施例1~3のいずれかで用いられた特徴量遺伝子の全て(表1に示された計78種の遺伝子)を予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
2)モデル構築
1)で選択した78の特徴量遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、睡眠状態(良好群か不眠群か)を目的変数として用いて、睡眠状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rate)を算出した。その結果、78遺伝子の発現レベルデータを変数に用いた場合のモデルではOOB error rateは22.0%であり、表1の78遺伝子を、睡眠状態を検出するためのマーカーとして使用できることが示された。

Claims (14)

  1. 被験体から採取した生体試料における、以下の遺伝子:ATG7、DNAJB6、TBC1D17、ZNF410、TRAPPC5、PSMD3、ABI1及びMARCH6をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、被験体の睡眠状態の検出方法。
  2. さらに、下記表1A及び1Bに示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、請求項1記載の方法。
    Figure 2022097302000009
  3. さらに、下記表2に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、請求項1記載の方法。
    Figure 2022097302000010
  4. さらに、下記表3に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、請求項1記載の方法。
    Figure 2022097302000011
  5. 不眠を検出するための方法である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
  6. 前記核酸が皮膚表上脂質から採取されたmRNAである、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記核酸又はタンパク質の発現レベルに基づいて前記被験体の睡眠状態を検出することをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記表1Aに示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルが増加した場合に、前記被験体の睡眠状態を悪い又は不眠と検出することを含む、請求項7記載の方法。
  9. 前記表1Bに示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルが低下した場合に、前記被験体の睡眠状態を悪い又は不眠と検出することを含む、請求項7記載の方法。
  10. 前記核酸又はタンパク質の発現レベルについてのデータを用いて構築した予測モデルに基づいて、前記被験体の睡眠状態を検出することを含む、請求項7記載の方法。
  11. 試験物質を適用した被験体から採取した生体試料における、以下の遺伝子:ATG7、DNAJB6、TBC1D17、ZNF410、TRAPPC5、PSMD3、ABI1、及びMARCH6をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、睡眠制御剤の評価方法。
  12. 前記睡眠制御剤が不眠制御剤である、請求項11記載の方法。
  13. 以下の遺伝子:ATG7、DNAJB6、TBC1D17、ZNF410、TRAPPC5、PSMD3、ABI1、及びMARCH6をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、睡眠状態マーカー。
  14. 請求項13記載の睡眠状態マーカーである核酸と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は請求項13記載の睡眠状態マーカーであるタンパク質を認識する抗体を含有する、請求項1~12のいずれか1項記載の方法に用いられる睡眠状態検出用キット又は睡眠制御剤の評価用キット。
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