JP2022097303A - 疲労マーカー及びそれを用いた疲労の検出方法 - Google Patents

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Mayumi Otsuka
尚也 北村
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泰徳 山本
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高良 井上
Takayoshi Inoue
知佳 鈴鴨
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幸一 三澤
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Abstract

【課題】バイオマーカーによる疲労の検出。【解決手段】疲労を検出するための疲労マーカー、及び該マーカーを用いた疲労の検出方法。【選択図】なし

Description

本発明は、疲労マーカー及びそれを用いた疲労の検出方法に関する。
疲労は、肉体的及び精神的活動、又は疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態であり、生体が身体の状態や機能を保つための仕組みである。疲労の持続は、思考能力の低下、注意力の低下、作業効率の低下をもたらし、さらには体調不良や疾患の原因となる。
特許文献1~4には、疲労を評価するマーカーとして、翻訳開始因子2α(eIF-2α)リン酸化関連因子(特許文献1)、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)及び好酸球由来ニューロトキシン(EDN)(特許文献2)、ならびに各種遺伝子マーカー(特許文献3、4)が開示されている。特許文献5~7には、慢性疲労症候群を評価するマーカーとして、アクチビンβB(特許文献5)、約30kDaのRNase L(特許文献6)、ならびに各種遺伝子マーカー(特許文献7)が開示されている。しかしながら、バイオマーカーによる疲労の客観的又は定量的な評価手法は未だ確立されていない。
生体試料中のDNAやRNA等の核酸の解析によりヒトの生体内の現在、さらには将来の生理状態を調べる技術が開発されている。生体由来の核酸は、血液等の組織、体液、分泌物などから抽出することができる。特許文献8には、皮膚表上脂質(SSL)から被験体の皮膚細胞に由来するRNA等の核酸を分離し、生体の解析用の試料として用いることが記載されている。
国際公開公報第2016/031581号 特開2013-76691号公報 特開2013-150558号公報 特開2012-019784号公報 特表2017-505428号公報 特表2000-516818号公報 特開2007-228878号公報 国際公開公報第2018/008319号
本発明は、バイオマーカーを用いた疲労の検出に関する。本発明は、新規な疲労マーカー、及びそれを用いた疲労の検出方法に関する。
一態様において、本発明は、以下の遺伝子:OPA1、HSPBAP1、TYMP、TOX4、FAM168B、FCHO2、KRTAP19-1、EID1、C1orf21、CYB5B、CAMSAP1、NIPBL、DPYSL3、SNRPB2、SNHG6、MOB1B、STARD5、及びTBC1D23をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、疲労マーカーを提供する。
別の一態様において、本発明は、被験体から採取した生体試料における前記疲労マーカーの発現レベルを測定することを含む、被験体の疲労の検出方法を提供する。
別の一態様において、本発明は、試験物質を適用した被験体から採取した生体試料における前記疲労マーカーの発現レベルを測定することを含む、疲労制御剤の評価方法を提供する。
別の一態様において、本発明は、前記疲労の検出方法に用いられる疲労検出用キット又は疲労制御剤の評価用キットを提供する。
本発明は、新規な疲労マーカーを提供する。本発明の疲労マーカーは、疲労の検出を可能にする。また本発明の疲労マーカーは、皮膚表上脂質(SSL)から非侵襲的に採取可能であるので、採取の手間や、採取による被験体への負担を低減することができる。
本明細書中で引用された全ての特許文献、非特許文献、及びその他の刊行物は、その全体が本明細書中において参考として援用される。
本明細書中に開示される遺伝子の名称は、NCBI([www.ncbi.nlm.nih.gov/])に記載のあるOfficial Symbolに従う。
本明細書において、「皮膚表上脂質(skin surface lipids;SSL)」とは、皮膚の表上に存在する脂溶性画分をいい、皮脂と呼ばれることもある。一般に、SSLは、皮膚にある皮脂腺等の外分泌腺から分泌された分泌物を主に含み、皮膚表面を覆う薄い層の形で皮膚表上に存在している。
本明細書において、「皮膚」とは、特に限定しない限り、体表の表皮、真皮、毛包、ならびに汗腺、皮脂腺及びその他の腺などの組織を含む領域の総称である。
本明細書において、「疲労」とは、身体的倦怠感、精神的倦怠感、及び認知的倦怠感を含む倦怠感を有する状態を表す。例えば、本明細書における「疲労」の程度は、米国疾病予防管理センター(CDC)が疲労の評価に用いることを推奨するチャルダー疲労質問票(CFS)のスコアに反映される。CFSは身体疲労及び精神疲労に関する14項目の質問から構成されており、身体と精神の双方の疲労を総合的に評価することができる。CFSスコアが15点以上、好ましくは18点以上になると疲労している(疲労度が高い)と判断される(Narumi D., et al. AIJ Journal of Technology and Design 54 (2017):563-566.)。一方、本明細書において、疲労度についての「健常」とは、CFSのスコアが15点未満、好ましくは11点以下である状態をいう。
本明細書において、疲労の「検出」は、検査、測定、判定又は評価支援などの用語で言い換えることもできる。本明細書における疲労の「検出」、「検査」、「測定」、「判定」又は「評価」という用語は、医師による疲労を伴う疾患(例えば慢性疲労症候群)の診断を含むものではない。
(1.疲労マーカー)
従来、疲労は、主に問診やアンケート(例えば、前述のチャルダー疲労質問票)に基づくスコアリングによって評価されている。このような評価法は、客観性や定量性に劣ることがあり、また試験間での評価の比較を困難にする。
本発明者は、被験体の疲労が特定の遺伝子の発現に反映されることを見出した。後述の実施例に示すとおり、チャルダー疲労質問票に基づき判定された、疲労度の特に低いCFSスコアが11点以下の健常群と疲労度が特に高いCFSスコアが18点以上の疲労群との間で、発現レベルが異なっている遺伝子が見出された。このような両群の間で異なる発現レベルを示した遺伝子をコードする核酸、及びそれらの遺伝子にコードされるタンパク質は、疲労マーカーとして使用できる。例えば、それらの遺伝子をコードする核酸、又はそれらの遺伝子にコードされるタンパク質の発現レベルを指標に、疲労を検出することができる。
したがって、一態様において本発明は、疲労を検出するための疲労マーカーを提供する。本発明で提供される疲労マーカー(以下、本発明のマーカーともいう)は、該マーカーが由来する個々の被験者の疲労を検出することを可能にする。
本発明のマーカーは、下記表1に示す222遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。本発明のマーカーは、下記表1に示す遺伝子をコードする核酸(核酸マーカー)であっても、該遺伝子にコードされるタンパク質(タンパク質マーカー)であっても、それらの組み合わせであってもよいが、好ましくは核酸マーカーである。
Figure 2022097303000001
一実施形態において、本発明のマーカーは、表2及び表3に示す遺伝子をコードする核酸(以下、それぞれ表2及び表3の核酸マーカーともいう)、及び該遺伝子にコードされるタンパク質(以下、それぞれ表2及び表3のタンパク質マーカーともいう)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。表2の核酸マーカーとタンパク質マーカーとを総称して表2のマーカーということがあり、また表3の核酸マーカーとタンパク質マーカーとを総称して表3のマーカーということがある。好ましくは、表2及び表3のマーカーは核酸マーカーである。後述する実施例に示すように、表2に示す36遺伝子は、被験体の疲労に応じて発現レベルが増加し、表3に示す179遺伝子は、被験体の疲労に応じて発現レベルが低下する。したがって、表2のマーカーは、その発現レベルが被験体の疲労に応じて増加する、ポジティブマーカーである。一方、表3のマーカーは、その発現レベルが被験体の疲労に応じて低下する、ネガティブマーカーである。本発明においては、前者のポジティブマーカーと、後者のネガティブマーカーのいずれか一方を使用してもよく、又は両方を組み合わせて使用してもよい。
別の一実施形態において、本発明のマーカーは、表4に示す23遺伝子をコードする核酸(以下、表4の核酸マーカーともいう)、及び該遺伝子にコードされるタンパク質(以下、表4のタンパク質マーカーともいう)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。表4の核酸マーカーとタンパク質マーカーとを総称して表4のマーカーということがある。好ましくは、表4のマーカーは核酸マーカーである。後述する実施例に示すように、表4に示す遺伝子は、被験体におけるその発現レベルのデータを説明変数とし、疲労状態を目的変数として、機械学習アルゴリズムとしてランダムフォレストを用いて、特徴量遺伝子の抽出及び予測モデルの構築を実施した際に抽出された、ジニ係数に基づく変数重要度上位23に相当する遺伝子である。
別の一実施形態において、本発明のマーカーは、表5に示す9遺伝子をコードする核酸(以下、表5の核酸マーカーともいう)、及び該遺伝子にコードされるタンパク質(以下、表5のタンパク質マーカーともいう)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。表5の核酸マーカーとタンパク質マーカーとを総称して表5のマーカーということがある。好ましくは、表5のマーカーは核酸マーカーである。後述する実施例に示すように、表5に示す遺伝子は、機械学習アルゴリズムとしてBoruta法を用いた場合に特徴量遺伝子として抽出された遺伝子である。
好ましい一実施形態において、本発明のマーカーは、表6に示す18遺伝子をコードする核酸(以下、表6の核酸マーカーともいう)、及び該遺伝子にコードされるタンパク質(以下、表6のタンパク質マーカーともいう)からなる群より選択される少なくとも1種を含む。表6の核酸マーカーとタンパク質マーカーとを総称して表6のマーカーということがある。好ましくは、表6のマーカーは核酸マーカーである。表6に示す遺伝子は、表2又は表3と、表4と、表5の全てに共通して含まれる7遺伝子(OPA1、HSPBAP1、TOX4、KRTAP19-1、C1orf21、CYB5B、CAMSAP1)、表2又は表3と表4に共通して含まれ、表5には含まれない9遺伝子(TYMP、FAM168B、FCHO2、EID1、NIPBL、DPYSL3、SNRPB2、SNHG6、MOB1B)、ならびに表2又は表3と表5に共通して含まれ、表4には含まれない2遺伝子(STARD5、TBC1D23)からなる。
好ましい一実施形態において、本発明のマーカーは、表6のマーカーからなる群より選択される少なくとも1種に加えて、さらに表1のマーカーからなる群より選択される少なくとも1種(ただし表6のマーカー以外のもの)を含んでいてもよい。例えば、本発明のマーカーは、表6のマーカーからなる群より選択される少なくとも1種に加えて、さらに表2のマーカー、表3のマーカー、又は表4のマーカーからなる群より選択される少なくとも1種(ただし表6のマーカー以外のもの)を含んでいてもよい。例えば、本発明のマーカーは、表6の核酸マーカーからなる群より選択される少なくとも1種、好ましくは全部を含み、さらに表2、表3又は表4の核酸マーカーからなる群より選択される少なくとも1種(ただし表6の核酸マーカー以外のもの)を含んでいてもよい。例えば、本発明のマーカーは、表6のタンパク質マーカーからなる群より選択される少なくとも1種、好ましくは全部を含み、さらに表2、表3又は表4のタンパク質マーカーからなる群より選択される少なくとも1種(ただし表6のタンパク質マーカー以外のもの)を含んでいてもよい。上記の場合、表6のマーカーからなる群より選択される少なくとも1種としては、好ましくは、OPA1、HSPBAP1、TOX4、KRTAP19-1、C1orf21、CYB5B、及びCAMSAP1の7遺伝子から選択される1種以上、より好ましくは2種以上、さらに好ましくは7種全てを含み、さらに好ましくは表6の18種のマーカー全てである。
別の好ましい一実施形態においては、表2もしくは表3の核酸マーカーの全て、又は表2もしくは表3のタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
別の好ましい一実施形態においては、表2及び表3の核酸マーカーの全て、又は表2及び表3のタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
別の好ましい一実施形態においては、表4の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
別の好ましい一実施形態においては、表5の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
別の好ましい一実施形態においては、表6の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
別の好ましい一実施形態においては、表1の核マーカー酸又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて本発明のマーカーとして使用する。
Figure 2022097303000002
Figure 2022097303000003
Figure 2022097303000004
Figure 2022097303000005
Figure 2022097303000006
本発明のマーカーは、被験体から採取した生体試料、例えば、細胞、角層、組織(生検等)、体液(血液等)、尿、分泌物(唾液、SSL等)などから常法に従って調製することができる。例えば、生体試料からの核酸又はタンパク質の調製には、市販のキットを使用することができる。好ましくは、本発明のマーカーは核酸マーカーであり、生体試料から調製される核酸の好ましい例としては、ゲノムDNA、及びmRNA等のRNAなどが挙げられる。
本発明のマーカーを含む生体試料を採取される被験体の例としては、ヒト及び非ヒト哺乳動物を含む哺乳動物が挙げられる。好ましくは、該被験体は、疲労の状態の検出を必要とするヒト及び非ヒト哺乳動物、又は疲労の状態の検出を希望するヒトである。より好ましくは、該被験体はヒトである。
より好ましくは、本発明のマーカーは、被験者のSSLから調製される核酸又はタンパク質、さらに好ましくはmRNAである。SSLが採取される皮膚の部位としては、頭、顔、首、体幹、手足等の身体の任意の部位の皮膚が挙げられ、皮脂の分泌が多い部位、例えば顔の皮膚が好ましい。
被験体の皮膚からのSSLの採取には、皮膚からのSSLの回収又は除去に用いられているあらゆる手段を採用することができる。好ましくは、後述するSSL吸収性素材、SSL接着性素材、又は皮膚からSSLをこすり落とす器具を使用することができる。SSL吸収性素材又はSSL接着性素材としては、SSLに親和性を有する素材であれば特に限定されず、例えばポリプロピレン、パルプ等が挙げられる。皮膚からのSSLの採取手順のより詳細な例としては、あぶら取り紙、あぶら取りフィルム等のシート状素材へSSLを吸収させる方法、ガラス板、テープ等へSSLを接着させる方法、スパーテル、スクレイパー等によりSSLをこすり落として回収する方法、などが挙げられる。SSLの吸着性を向上させるため、脂溶性の高い溶媒を予め含ませたSSL吸収性素材を用いてもよい。一方、SSL吸収性素材は、水溶性の高い溶媒や水分を含んでいるとSSLの吸着が阻害されるため、水溶性の高い溶媒や水分の含有量が少ないことが好ましい。SSL吸収性素材は、乾燥した状態で用いることが好ましい。
採取されたSSLは、直ちに後述の核酸又はタンパク質の抽出工程に用いられてもよいが、該核酸又はタンパク質抽出工程に用いるまで保存されてもよい。保存する場合、SSLは、好ましくは低温条件で保存される。SSLの保存の温度条件は、好ましくは10℃以下、より好ましくは5℃以下、さらに好ましくは0℃以下、さらに好ましくは-20±20℃~-80±20℃、さらに好ましくは-20±10℃~-80±10℃、さらに好ましくは-20±5℃~-80±5℃である。SSLの保存の期間は、特に限定されないが、好ましくは12か月以下、例えば6時間以上12ヶ月以下、より好ましくは6ヶ月以下、例えば1日間以上6ヶ月以下、さらに好ましくは3ヶ月以下、例えば3日間以上3ヶ月以下である。
採取したSSLからの核酸又はタンパク質の抽出には、生体試料からの核酸又はタンパク質の抽出又は精製に通常使用される方法を使用することができる。核酸の抽出又は精製方法の例としては、フェノール/クロロホルム法、AGPC(acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction)法、又はTRIzol(登録商標)、RNeasy(登録商標)、QIAzol(登録商標)などのカラムを用いた方法、シリカをコーティングした特殊な磁性体粒子を用いる方法、Solid Phase Reversible Immobilization磁性体粒子を用いる方法、ISOGEN等の市販のRNA抽出試薬による抽出、などが挙げられる。タンパク質の抽出又は精製には、QIAzol Lysis Reagent(Qiagen)等の市販のタンパク質抽出試薬を用いることができる。
(2.疲労の検出方法)
(2.1.マーカーの発現レベルに基づく疲労の検出)
別の一態様において、本発明は、本発明の疲労マーカーを用いた被験体の疲労の検出方法を提供する。該方法では、被験体における本発明のマーカーの発現レベルに基づいて該被験体の疲労を検出する。本発明による疲労の検出方法が適用される被験体は、上述した本発明の疲労マーカーを含む生体試料を採取される被験体と同様である。
好ましい実施形態において、本発明による疲労の検出方法は、被験体から採取した生体試料における本発明のマーカーの発現レベルを測定することを含む。該生体試料の種類は、上述したとおりであり、好ましくはSSLである。一実施形態において、本発明の方法は、該被験体のSSLを採取することをさらに含んでいてもよい。SSLの採取手順、及びSSLからのマーカーの抽出手順は、上述したとおりである。
本発明のマーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられる核酸又はタンパク質の定量法に従って、測定することができる。例えば、核酸マーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられる遺伝子発現解析の手順に従って測定すればよい。遺伝子発現解析の手法の例としては、リアルタイムPCR、マルチプレックスPCR、マイクロアレイ、シーケンシング、クロマトグラフィーなどによりDNA又はその増幅産物を定量する方法が挙げられる。核酸がRNAの場合は、RNAを逆転写によりcDNAに変換した後、上記方法で定量することができる。タンパク質マーカーの発現レベルは、当該分野で通常用いられるタンパク質定量法、例えばELISA、免疫染色、蛍光法、電気泳動、クロマトグラフィー、質量分析などを用いて測定することができる。算出されるマーカーの発現レベルは、生体試料中の該標的マーカーの絶対量に基づく発現レベルであっても、他の標準遺伝子や、全核酸又はタンパク質の発現レベルに対する相対発現レベルであってもよい。
好ましくは、本発明による疲労の検出方法で使用される本発明のマーカーは、SSL由来mRNAである。好ましくは、SSLから抽出したRNAを逆転写によりcDNAに変換した後、該cDNA又はその増幅産物を上記の手法で定量することで、該SSL由来RNAの発現レベルが測定される。該逆転写には、解析したい特定のRNAを標的としたプライマーを用いてもよいが、より包括的な核酸の保存及び解析のためにはランダムプライマーを用いることが好ましい。該逆転写には、一般的な逆転写酵素又は逆転写試薬キットを使用することができる。好適には、正確性及び効率性の高い逆転写酵素又は逆転写試薬キットが用いられ、その例としては、M-MLV Reverse Transcriptase及びその改変体、あるいは市販の逆転写酵素又は逆転写試薬キット、例えばPrimeScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(タカラバイオ社)、SuperScript(登録商標)Reverse Transcriptaseシリーズ(Thermo Scientific社)等が挙げられる。SuperScript(登録商標)III Reverse Transcriptase、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(いずれもThermo Scientific社)などが好ましく用いられる。得られたcDNAのPCRでは、解析したい特定のDNAを標的としたプライマーペアを用いて該特定のDNAのみを増幅してもよいが、複数のプライマーペアを用いて複数のDNAを増幅してもよい。好ましくは、該PCRはマルチプレックスPCRである。マルチプレックスPCRは、PCR反応系に複数のプライマー対を同時に使用することで、複数の遺伝子領域を同時に増幅する方法である。マルチプレックスPCRは、市販のキット(例えば、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit;ライフテクノロジーズジャパン株式会社等)を用いて実施することができる。
当該逆転写及びPCRの反応条件を調整することで、PCR反応産物の収率がより向上し、ひいてはそれを用いた解析の精度がより向上する。好適には、該逆転写での伸長反応において、温度を好ましくは42℃±1℃、より好ましくは42℃±0.5℃、さらに好ましくは42℃±0.25℃に調整し、一方、反応時間を好ましくは60分間以上、より好ましくは80~120分間に調整する。また好適には、該PCRにおけるアニーリング及び伸長反応の温度は、好ましくは62℃±1℃、より好ましくは62℃±0.5℃、さらに好ましくは62℃±0.25℃である。したがって、該PCRでは、好ましくはアニーリング及び伸長反応が1ステップで行われる。該アニーリング及び伸長反応のステップの時間は、増幅すべきDNAのサイズ等に依存して調整され得るが、好ましくは14~18分間である。該PCRにおける変性反応の条件は、増幅すべきDNAに依存して調整され得るが、好ましくは95~99℃で10~60秒間である。上記のような温度及び時間での逆転写及びPCRは、一般的にPCRに使用されるサーマルサイクラーを用いて実行することができる。
当該PCRで得られた反応産物の精製は、反応産物のサイズ分離によって行われることが好ましい。サイズ分離により、目的のPCR反応産物を、PCR反応液中に含まれるプライマーやその他の不純物から分離することができる。DNAのサイズ分離は、例えば、サイズ分離カラムや、サイズ分離チップ、サイズ分離に利用可能な磁気ビーズなどによって行うことができる。サイズ分離に利用可能な磁気ビーズの好ましい例としては、Ampure XP等のSolid Phase Reversible Immobilization(SPRI)磁性ビーズが挙げられる。
精製したPCR反応産物に対して、その後の定量解析を行うために必要なさらなる処理を施してもよい。例えば、DNAのシーケンシングのために、精製したPCR反応産物を、適切なバッファー溶液へと調製したり、PCR増幅されたDNAに含まれるPCRプライマー領域を切断したり、増幅されたDNAにアダプター配列をさらに付加したりしてもよい。例えば、精製したPCR反応産物をバッファー溶液へと調製し、増幅DNAに対してPCRプライマー配列の除去及びアダプターライゲーションを行い、得られた反応産物を、必要に応じて増幅して、定量解析のためのライブラリーを調製することができる。これらの操作は、例えば、SuperScript(登録商標)VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×VILO RT Reaction Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)に付属している5×Ion AmpliSeq HiFi Mix、及びIon AmpliSeq Transcriptome Human Gene Expression Core Panelを用いて、各キット付属のプロトコルに従って行うことができる。シーケンシングには、好ましくは次世代シーケンサー(例えばIon S5/XLシステム、ライフテクノロジーズジャパン株式会社)が用いられる。シーケンシングで作成されたリードの数(リードカウント)に基づいて、RNA発現レベルを定量することができる。
本発明による疲労の検出方法の一実施形態においては、被験体における本発明のマーカーの発現レベル(好ましくは、該被験体から採取した生体試料中に含まれる本発明のマーカーの発現レベル)を指標に、被験体の疲労を検出する。
上述したように、表2の核酸マーカー及びタンパク質マーカーは、その発現レベルが被験体の疲労に応じて増加するポジティブマーカーであり、一方、被験体における表3の核酸マーカー及びタンパク質マーカーは、その発現レベルが被験体の疲労に応じて低下するネガティブマーカーである。したがって、該ポジティブマーカーの発現レベルが増加した場合、被験体は疲労しているとして検出され、そうでない場合、被験体は疲労していないと検出される。あるいは、該ネガティブマーカーの発現レベルが低下した場合、被験体は疲労しているとして検出され、そうでない場合、被験体は疲労していないと検出される。あるいは、本発明による疲労の検出方法においては、該ポジティブマーカーと該ネガティブマーカーを組み合わせて使用してもよい。
一実施形態においては、被験体から測定された本発明のマーカーの発現レベルを、基準値と比べることで、該被験体の疲労を検出することができる。あるいは、一被験体から本発明のマーカーの発現レベルを定期的に(例えば毎月)測定し、その発現レベルの変動を追跡することで、該被験体の疲労を検出することができる。該基準値には、予め決定した値、例えば、本発明のマーカーの発現レベルの統計値(例えば平均値)を用いることができる。該基準値は、被験体ごとに設定されてもよい。例えば、同じ被験体から複数回測定したマーカーの発現レベルの統計値から該基準値を算出してもよい。あるいは、該基準値は、参照集団(疲労度が任意である個体からなる群)、又は健常群(疲労度が正常範囲[例えば前述したCFSのスコアが15点未満]である個体からなる群)から測定した本発明のマーカーの発現レベルの統計値(例えば平均値など)に基づいて決定することができる。本発明のマーカーとして複数種の核酸又はタンパク質を用いる場合は、各々の核酸又はタンパク質について基準値を求めることが好ましい。
例えば、本発明のマーカーがポジティブマーカーの場合、該マーカーの発現レベルが基準値よりも高い場合、被験体は疲労している(すなわち被験体の疲労度は高い)として検出され得、そうでない場合、被験体は疲労していない(すなわち被験体の疲労度は健常)と検出され得る。例えば、被験体におけるポジティブマーカーの発現レベルが基準値と比べて統計学的に有意に高ければ、該被験体は疲労しているとして検出され得、そうでない場合、被験体は疲労していないと検出され得る。また例えば、被験体におけるポジティブマーカーの発現レベルが基準値に対して、好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは150%以上であれば、該被験体は疲労しているとして検出され得、そうでない場合、被験体は疲労していないと検出され得る。
一方、本発明のマーカーがネガティブマーカーの場合、該マーカーの発現レベルが基準値よりも低い場合、被験体は疲労しているとして検出され得、そうでない場合、被験体は疲労していないと検出され得る。例えば、被験体におけるネガティブマーカーの発現レベルが基準値と比べて統計学的に有意に低ければ、該被験体は疲労しているとして検出され得、そうでない場合、被験体は疲労していないと検出され得る。また例えば、被験体におけるネガティブマーカーの発現レベルが基準値に対して、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下であれば、該被験体は疲労しているとして検出され得、そうでない場合、被験体は疲労していないと検出され得る。
あるいは、複数の核酸又はタンパク質を組み合わせてマーカーとして用いる場合には、それらの核酸又はタンパク質の一定割合、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%が上述した発現レベルの基準を満たすか否かに基づいて、被験体の疲労を検出することができる。
(2.2.予測モデルに基づく疲労の検出)
本発明による疲労の検出方法の別の一実施形態においては、本発明のマーカー(該被験体から採取した生体試料中に含まれる本発明のマーカー)の発現レベルについてのデータ(以下、発現プロファイルと呼ぶ)を用いて構築した予測モデルに基づいて、被験体の疲労状態を検出する。発現プロファイルの例としては、シーケンシングリード数等の発現レベルに関するデータが挙げられる。
例えば、教師サンプル集団(例えば、健常群及び疲労群を含む集団)の各個体から取得した1つ以上のマーカー(核酸又はタンパク質)の各々についての発現プロファイルを説明変数とし、該集団の各個体における疲労状態(例えば、健常又は疲労)についてのデータを目的変数とした機械学習により、任意の被験体における疲労状態を判別するための予測モデル(例えば判別式)を構築することができる。
本明細書において、「特徴量」とは、機械学習における「説明変数」と同義である。本明細書において、その発現プロファイルが機械学習の説明変数(特徴量)として使用されるマーカーを「特徴量マーカー(群)」と称することがある。また特徴量マーカーが核酸マーカーの場合、特徴量遺伝子と称することがある。
本実施形態で用いられる特徴量マーカー(群)は、表1の核酸マーカー及びタンパク質マーカーからなる群より選択される少なくとも1種であればよい。特徴量マーカーの発現プロファイルは、絶対値であっても相対値であってもよく、あるいは正規化処理されていてもよい。特徴量マーカー群として複数のマーカーを使用する場合、例えば、本発明のマーカーの中から疲労状態との相関が高いものを複数選択し、それらの発現プロファイルの各々を説明変数として用いることができる。
好ましい実施形態においては、表2及び表3の核酸マーカーの全て、又は表2及び表3のタンパク質マーカーの全てを組み合わせて、特徴量マーカー群として使用する。別の好ましい実施形態においては、表4の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて特徴量マーカー群として使用する。別の好ましい実施形態においては、表5の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて特徴量マーカー群として使用する。別の好ましい実施形態においては、表6の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて特徴量マーカー群として使用する。別の好ましい実施形態においては、表6の核酸マーカー又はタンパク質マーカーの全てと、表2、表3又は表4のいずれかの核酸マーカー又はタンパク質マーカーのいずれか1つ以上、好ましくは全て(ただし表6のマーカー以外のもの)とを組み合わせて特徴量マーカー群として使用する。別の好ましい実施形態においては、表1の核酸又はタンパク質マーカーの全てを組み合わせて特徴量マーカー群として使用する。
好ましい実施形態においては、機械学習のための教師サンプルとして、疲労度の低い個体(健常群)及び疲労度の高い個体(疲労群)における特徴量マーカー(群)の発現プロファイルを用いる。該教師サンプルを用いて、個体を健常群と疲労群に分けるための判別式(予測モデル)を構築する。判別式の構築に用いる説明変数としては、特徴量マーカー(群)の発現プロファイルを用いることができる。目的変数としては、例えば、特徴量マーカー(群)が由来する個体が健常群か疲労群かを表す変数を用いることができる。構築した判別式に基づいて、健常群と疲労群を判別するためのカットオフ値を求めることができる。次いで、疲労状態を調べたい被験体由来の該特徴量マーカー(群)の発現プロファイルを測定し、得られた測定値を当該判別式に代入し、該判別式から得られた結果を該カットオフ値と比較することによって、該被験体が健常群か疲労群かを判別する。
例えば、判別すべき2群間(健常群及び疲労群)の統計学的に有意な差異、例えば、発現プロファイルが2群間で有意に変動するマーカーを特徴量マーカー(群)とし、その発現プロファイルを説明変数として用いることができる。あるいは、特徴量マーカー(群)は、機械学習アルゴリズムなどの公知のアルゴリズムを利用して抽出することができる。例えば、下記実施例に示すように、ランダムフォレストにおける変数重要度の高さや、R言語の“Boruta”パッケージなどを用いて、特徴量マーカー(群)を抽出することができる。
あるいは、予測モデルの構築に複数のマーカーの発現プロファイルを使用する場合、必要に応じて、次元削減によってデータを圧縮してから予測モデルの構築を行ってもよい。例えば、表1に示す遺伝子群をコードする核酸マーカーの中から複数のマーカーを抽出する。次いで、該抽出したマーカーの発現プロファイルについて主成分分析を実施する。該主成分分析で算出された1つ以上の主成分を説明変数とし、該説明変数が由来する個体が健常群か疲労群かを表す変数を目的変数とした機械学習により、被験体が健常群か疲労群かを判別するための予測モデルを構築することができる。
予測モデルの構築におけるアルゴリズムは、機械学習に用いるアルゴリズムなどの公知のものを利用することができる。機械学習アルゴリズムの例としては、限定ではないが、線形回帰モデル(Linear model)、ラッソ回帰(Lasso)、ランダムフォレスト(Random Forest)、ニューラルネットワーク(Neural net)、線形カーネルのサポートベクターマシン(SVM (linear))、rbfカーネルのサポートベクターマシン(SVM (rbf))などのアルゴリズムが挙げられる。本発明で用いるアルゴリズムとしては、ランダムフォレストが好ましい。
構築した予測モデルに検証用のデータを入力して予測値を算出し、該予測値が実測値と最も適合するモデル、例えば、該予測値の実測値に対する正解率(Accuracy)が最も大きいモデル、又は該予測値と実測値の差の二乗平均平方根誤差(RMSE)が最も小さいモデルを、最適モデルとして選択することができる。構築した予測モデルに対して被験体から実測した特徴量マーカー(群)の発現プロファイルを入力することによって、該被験体の疲労を検出することができる。
(3.疲労制御剤の評価方法)
さらなる一態様において、本発明は、本発明の疲労マーカーを用いた疲労制御剤の評価方法を提供する。該方法は、本発明のマーカーの発現レベルに基づいて疲労制御剤を評価する。好ましくは、該方法は、試験物質を適用した被験体から採取した生体試料における本発明のマーカーの発現レベルを測定することを含む。該方法において、用いられる生体試料の種類は、上述したとおりである。好ましくは、該生体試料はSSLであり、本発明のマーカーは、SSL由来mRNAである。一実施形態において、該方法は、被験体のSSLを採取することをさらに含んでいてもよい。本発明で評価される疲労制御剤としては、疲労改善剤又は疲労亢進剤が挙げられ、好ましくは、疲労改善剤である。
生体試料を採取される被験体は、ヒト又は非ヒト哺乳動物である。評価される疲労制御剤に応じて適宜適切な被験体を選択することができる。該被験体としては、疲労改善剤を評価する場合は、好ましくは疲労度が高いヒト又は非ヒト哺乳動物が用いられ、疲労亢進剤を評価する場合は、好ましくは疲労度が健常なヒト又は非ヒト哺乳動物が用いられる。好ましくは、該被験体はヒトである。
本発明の評価方法に用いられる試験物質は、疲労制御剤として使用することを所望する物質であれば、特に制限されない。試験物質は、天然に存在する物質であっても、化学的又は生物学的方法等で人工的に合成した物質であってもよく、また化合物であっても、組成物もしくは混合物であってもよい。試験物質の形態は、特に制限されず、固形、半固形、ゲル、液体、気体等いずれの形態であってもよいが、ゲル又は液体が好ましい。また試験物質は、光照射、温熱、マッサージなどの物理刺激であってもよい。被験体に試験物質を適用する手法としては、経口投与、及び注射、塗布、噴霧、散布、滴下、貼付、照射等の非経口投与が挙げられ、特に限定されない。被験体へ適用する試験物質の用量及び適用期間は、試験物質の種類や投与形態に応じて適宜設定することができる。
被験体からの生体試料の採取、採取した生体試料からのマーカーの抽出、マーカーの発現レベルの測定の手順は、上述したとおりである。
抽出した該被験体由来の本発明のマーカーの発現レベルは、該被験体の疲労に応じてポジティブマーカーであれば増加し、ネガティブマーカーであれば低下している。試験物質による該マーカーの発現レベルの変化に基づいて、該試験物質が疲労制御剤であるか否かを評価することができる。より詳細には、ポジティブマーカーの発現レベルを低下させる試験物質、又はネガティブマーカーの発現レベルを増加させる試験物質は、疲労改善剤と判断される。反対に、ポジティブマーカーの発現レベルを増加させる試験物質、又はネガティブマーカーの発現レベルを低下させる試験物質は、疲労亢進剤と判断される。
一実施形態においては、該被験体由来の本発明のマーカーの発現レベルを対照と比較することで、該試験物質の疲労に対する効果を評価する。より詳細には、試験物質の適用下での本発明のマーカーの発現レベルが対照と比べて変化しているかを調べる。対照としては、試験物質の非適用下での本発明のマーカーの発現レベル、上述した疲労の評価のための基準値などが挙げられる。
一例において、試験物質の適用下でのポジティブマーカーの発現レベルが対照と比べて低下する場合、該試験物質は疲労改善剤と判断され得る。より詳細には、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのポジティブマーカーの発現レベルが対照と比較して統計学的に有意に低下していれば、該試験物質は疲労改善剤と判断され得る。あるいは、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのポジティブマーカーの発現レベルが対照に対して好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下に低下していれば、該試験物質は疲労改善剤と判断され得る。
別の例において、試験物質の適用下でのポジティブマーカーの発現レベルが対照と比べて増加する場合、該試験物質は疲労亢進剤と判断され得る。より詳細には、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのポジティブマーカーの発現レベルが対照と比較して統計学的に有意に増加していれば、該試験物質は疲労亢進剤と判断され得る。あるいは、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのネガティブマーカーの発現レベルが対照に対して好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは150%以上に増加していれば、該試験物質は疲労亢進剤と判断され得る。
さらに別の例において、試験物質の適用下でのネガティブマーカーの発現レベルが対照と比べて増加する場合、該試験物質は疲労改善剤と判断され得る。より詳細には、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのネガティブマーカーの発現レベルが対照と比較して統計学的に有意に増加していれば、該試験物質は疲労改善剤と判断され得る。あるいは、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのネガティブマーカーの発現レベルが対照に対して好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは150%以上に増加していれば、該試験物質は疲労改善剤と判断され得る。
さらに別の例において、試験物質の適用下でのネガティブマーカーの発現レベルが対照と比べて低下する場合、該試験物質は疲労亢進剤と判断され得る。より詳細には、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのネガティブマーカーの発現レベルが対照と比較して統計学的に有意に低下していれば、該試験物質は疲労亢進剤と判断され得る。あるいは、試験物質を適用した被験体又は被験体群でのポジティブマーカーの発現レベルが対照に対して好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは75%以下に低下していれば、該試験物質は疲労亢進剤と判断され得る。
(4.疲労検出用キット及び疲労制御剤の評価用キット)
さらなる一態様において、本発明による疲労の検出方法に従って被験体の疲労を検出するための疲労検出用キット、及び本発明による疲労制御剤の評価方法に従って疲労制御剤を評価するするための疲労制御剤の評価用キットを提供する。一実施形態において、本発明のキットは、上述した本発明の疲労マーカーの発現レベルを測定するための試薬又は器具を備える。例えば、本発明のキットは、本発明の核酸マーカーを増幅又は定量するための試薬(例えば、逆転写酵素、PCR用試薬、プライマー、プローブ、シーケンシング用アダプター配列等)、又は本発明のタンパク質マーカーを定量するための試薬(例えば、免疫学的測定のための試薬、抗体など)を備え得る。好ましくは、本発明のキットは、本発明の核酸マーカーと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(例えば、PCR用のプライマー、又はプローブ)、あるいは、本発明のタンパク質マーカーを認識する抗体を含有する。好ましくは、本発明のキットは、本発明のマーカーの発現レベルを検出するための指標又はガイダンスを備える。例えば、本発明のキットは、各マーカーの発現レベルの増減と疲労との関係を説明するガイダンス、又は疲労の検出のための各マーカーの発現レベルの基準値を説明するガイダンスを備え得る。また本発明のキットは、生体試料採取デバイス(例えば、上記のSSL吸収性素材又はSSL接着性素材)、生体試料から本発明のマーカーを抽出するための試薬(例えば核酸精製用試薬)、生体試料採取後の試料採取デバイスの保存剤や保存用容器などをさらに備えていてもよい。
本発明の例示的実施形態として、以下の物質、製造方法、用途、方法等をさらに本明細書に開示する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
〔1〕以下の遺伝子:OPA1、HSPBAP1、TYMP、TOX4、FAM168B、FCHO2、KRTAP19-1、EID1、C1orf21、CYB5B、CAMSAP1、NIPBL、DPYSL3、SNRPB2、SNHG6、MOB1B、STARD5、及びTBC1D23をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、疲労マーカー。
〔2〕好ましくは、以下の遺伝子:OPA1、HSPBAP1、TYMP、TOX4、FAM168B、FCHO2、KRTAP19-1、EID1、C1orf21、CYB5B、CAMSAP1、NIPBL、DPYSL3、SNRPB2、SNHG6、MOB1B、STARD5、及びTBC1D23のそれぞれをコードする核酸の全部、又は該遺伝子のそれぞれにコードされるタンパク質の全部を含む、〔1〕記載の疲労マーカー。
〔3〕好ましくは、さらに、前記表1に示す遺伝子をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕記載の疲労マーカー。
〔4〕好ましくは、さらに、前記表2及び表3に示す遺伝子をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕記載の疲労マーカー。
〔5〕好ましくは、前記表2に示す遺伝子をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔4〕記載の疲労マーカー。
〔6〕好ましくは、前記表3に示す遺伝子をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔4〕記載の疲労マーカー。
〔7〕好ましくは、さらに、前記表4に示す遺伝子をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、〔1〕又は〔2〕記載の疲労マーカー。
〔8〕好ましくは疲労の検出のためのマーカーである、〔1〕~〔7〕のいずれか1項記載の疲労マーカー。
〔9〕好ましくは核酸マーカーである、〔1〕~〔8〕のいずれか1項記載の疲労マーカー。
〔10〕好ましくは、前記核酸が皮膚表上脂質から採取されたmRNAである、〔9〕記載の疲労マーカー。
〔11〕被験体から採取した生体試料における〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の疲労マーカーの発現レベルを測定することを含む、被験体の疲労の検出方法。
〔12〕好ましくは疲労度の高い被験体を検出するための方法である、〔11〕記載の方法。
〔13〕前記疲労マーカーの発現レベルに基づいて前記被験体の疲労を検出することをさらに含む、〔11〕又は〔12〕記載の方法。
〔14〕前記疲労状態マーカーが、
好ましくは、前記表2に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であり、
より好ましくは、前記表2に示す遺伝子をコードする皮膚表上脂質由来mRNAからなる群より選択される少なくとも1種であり、
かつ、該方法が、
好ましくは、該疲労マーカーの発現レベルが増加した場合に、前記被験体を疲労しているとして検出することを含み、
より好ましくは、該疲労マーカーの発現レベルが基準値より高い場合に、前記被験体を疲労しているとして検出することを含む、
〔13〕記載の方法。
〔15〕前記疲労状態マーカーが、
好ましくは、前記表3に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であり、
より好ましくは、前記表3に示す遺伝子をコードする皮膚表上脂質由来のmRNAからなる群より選択される少なくとも1種であり、
かつ、該方法が、
好ましくは、該疲労マーカーの発現レベルが低下した場合に、前記被験体を疲労しているとして検出することをさらに含み、
より好ましくは、該疲労マーカーの発現レベルが基準値より低い場合に、前記被験体を疲労しているとして検出することを含む、
〔13〕記載の方法。
〔16〕好ましくは、前記疲労状態マーカーの発現レベルについてのデータを用いて構築した予測モデルに基づいて、前記被験体の疲労を検出することを含む、〔13〕記載の方法。
〔17〕好ましくは、前記予測モデルが、健常群と疲労群とを含む集団の各個体から取得した前記疲労マーカーの発現レベルについてのデータを説明変数とし、該集団の各個体の疲労状態を目的変数とした機械学習により構築される、〔16〕記載の方法。
〔18〕試験物質を適用した被験体から採取した生体試料における〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の疲労マーカーの発現レベルを測定することを含む、疲労制御剤の評価方法。
〔19〕好ましくは前記疲労制御剤が疲労改善剤又は疲労亢進剤であり、より好ましくは疲労改善剤である、〔18〕記載の方法。
〔20〕好ましくは、前記試験物質による前記マーカーの発現レベルの変化に基づいて、該試験物質が疲労制御剤であるか否かを評価することをさらに含む、〔18〕又は〔19〕記載の方法。
〔21〕前記疲労マーカーが、
好ましくは、前記表2に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であり、
より好ましくは、前記表2に示す遺伝子をコードする皮膚表上脂質由来mRNAからなる群より選択される少なくとも1種であり、
かつ、該方法が、
好ましくは、前記試験物質の適用下での該疲労マーカーの発現レベルが対照と比べて低下する場合、該試験物質を疲労改善剤と判断し、前記試験物質の適用下での該疲労マーカーの発現レベルが対照と比べて増加する場合、該試験物質を疲労亢進剤と判断することを含む、
〔20〕記載の方法。
〔22〕前記疲労マーカーが、
好ましくは、前記表3に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種であり、
より好ましくは、前記表3に示す遺伝子をコードする皮膚表上脂質由来mRNAからなる群より選択される少なくとも1種であり、
かつ、該方法が、
好ましくは、前記試験物質の適用下での該疲労マーカーの発現レベルが対照と比べて増加する場合、該試験物質を疲労改善剤と判断し、前記試験物質の適用下での該疲労マーカーの発現レベルが対照と比べて低下する場合、該試験物質を疲労亢進剤と判断することを含む、
〔20〕記載の方法。
〔23〕〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の疲労マーカーである核酸と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の疲労マーカーであるタンパク質を認識する抗体を含有する、〔11〕~〔17〕のいずれか1項記載の方法に用いられる疲労検出用キット又は〔18〕~〔22〕のいずれか1項記載の方法に用いられる疲労制御剤の評価用キット。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 発現変動遺伝子を用いた疲労状態判別モデルの構築
1)被験者の選抜及びSSL採取
20~60歳代の健常な男女175名の方に、チャルダー疲労質問票に回答させ、そのスコアが18点以上の上位25%(48名)の疲労度の高い方々を疲労群の被験者として選抜し、11点以下の下位25%(42名)の疲労度の低い方々を健常群の被験者として選抜した。各被験者の全顔からあぶら取りフィルム(5cm×8cm、ポリプロピレン製、3M社)を用いて皮脂を回収した。該あぶら取りフィルムはガラスバイアルに移し、RNA抽出に使用するまで-80℃で保存した。
2)RNA調製及びシーケンシング
上記1)のあぶら取りフィルムを適当な大きさに切断し、QIAzol Lysis Reagent(Qiagen)を用いて、付属のプロトコルに準じてRNAを抽出した。抽出したRNAは、SuperScript VILO cDNA Synthesis kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて42℃、90分間逆転写し、cDNAを合成した。逆転写反応のプライマーには、キットに付属しているランダムプライマーを使用した。得られたcDNAから、マルチプレックスPCRにより20802遺伝子に由来するDNAを含むライブラリーを調製した。マルチプレックスPCRは、Ion AmpliSeqTranscriptome Human Gene Expression Kit(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いて、[99℃、2分→(99℃、15秒→62℃、16分)×20サイクル→4℃、Hold]の条件で行った。得られたPCR産物は、Ampure XP(ベックマン・コールター株式会社)で精製した後に、バッファーの再構成、プライマー配列の消化、アダプターライゲーションと精製、及び増幅を行い、ライブラリーを調製した。調製したライブラリーをIon 540 Chipにローディングし、Ion S5/XLシステム(ライフテクノロジーズジャパン株式会社)を用いてシーケンシングした。シーケンシングで得られた各リード配列をヒトゲノムのリファレンス配列であるhg19 AmpliSeq Transcriptome ERCC v1を用いて遺伝子マッピングすることで各リード配列の由来する遺伝子を決定した。
3)データ解析
上記2)における被験者のSSL由来RNAのシーケンシングで得られた各リードのリードカウントを、各RNAの発現レベルのデータとした。サンプル間の総リードカウントの違いを補正するため、各リードカウントをRPM(Reads per million mapped reads)値に変換した。但し、リードカウントが10未満のリードは欠損値として扱った。90%以上の被験者で欠損値ではない発現レベルデータが得られた3918種の遺伝子について、その発現情報に基づいて群間(健常群及び疲労群)でStudent’s t testを行い、p<0.05となる遺伝子を抽出した。表7及び表8に示す、群間で統計学的に有意に発現レベルが変動する215種の遺伝子が得られた。表7の36遺伝子は、疲労群で発現レベルがより高かったことから、疲労群でその発現レベルが高いマーカー(ポジティブマーカー)であった。表8の179遺伝子は、疲労群で発現レベルがより低かったことから、疲労群でその発現レベルが低いマーカー(ネガティブマーカー)であった。これらの遺伝子を以下の予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
Figure 2022097303000007
Figure 2022097303000008
4)モデル構築
3)で選択した特徴量遺伝子の発現レベルデータを、負の二項分布に従うRPM値から正規分布に近似するため、整数1を加算した底2の対数値(Log2(RPM+1)値)に変換した。得られた215の特徴量遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、疲労状態(健常群か疲労群か)を目的変数として用いて、健常群と疲労群を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rateを算出した。その結果、215遺伝子全ての発現量データを変数に用いた場合のモデルではOOB error rateは32.2%であり、表7及び表8に示す遺伝子を、疲労を検出するためのマーカーとして使用できることが示された。
実施例2 ランダムフォレスト変数重要度の高い遺伝子を用いた疲労状態判別モデルの構築
1)使用データ
実施例1の3)で取得した90%以上の被験者で欠損値ではない発現レベルデータが得られた3918種の遺伝子を以下の解析に使用した。遺伝子の発現レベルデータを、負の二項分布に従うRPM値から正規分布に近似するため、整数1を加算した底2の対数値(Log2(RPM+1)値)に変換した。
2)特徴量遺伝子の選択
ランダムフォレストのアルゴリズムを用いて、予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子の選択を行った。1)で得られた3918遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、疲労状態(健常群か疲労群か)を目的変数として用いて、疲労状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、ジニ係数に基づく変数重要度の上位23遺伝子を算出した(表9)。これら23遺伝子を予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
Figure 2022097303000009
3)モデル構築
2)で選択した23の特徴量遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、疲労状態(健常群か疲労群か)を目的変数として用いて、疲労状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rate)を算出した。その結果、23遺伝子の発現レベルデータを変数に用いた場合のモデルではOOB error rateは14.4%であり、表9に示す遺伝子を、疲労を検出するためのマーカーとして使用できることが示された。
実施例3 Boruta法により抽出した特徴量遺伝子を用いた疲労状態判別モデルの構築
1)使用データ
実施例1の6)で取得した90%以上の被験者で欠損値ではない発現レベルデータが得られた3918種の遺伝子を以下の解析に使用した。遺伝子の発現レベルデータを、負の二項分布に従うRPM値から正規分布に近似するため、整数1を加算した底2の対数値(Log2(RPM+1)値)に変換した。
2)特徴量遺伝子の選択
1)で得られた3918遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、疲労状態(健常群か疲労群か)を目的変数として用いて、R言語の“Boruta”パッケージのアルゴリズムを実行し、疲労状態を判別する予測モデルを構築した。最大試行回数を1000回とし、p値が0.01未満である9遺伝子(OPA1、HSPBAP1、TOX4、KRTAP19-1、C1orf21、CYB5B、CAMSAP1、STARD5及びTBC1D23)を算出した。これら9遺伝子を予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
3)モデル構築
2)で選択した9つの特徴量遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、疲労状態(健常群か疲労群か)を目的変数として用いて、疲労状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rate)を算出した。その結果、9遺伝子の発現レベルデータを変数に用いた場合のモデルではOOB error rateは21.1%であり、上記9遺伝子を、疲労を検出するためのマーカーとして使用できることが示された。
実施例4 実施例1~3で重複して用いられた特徴量遺伝子に基づく疲労状態判別モデルの構築
1)特徴量遺伝子の選択
実施例1~3で用いられた特徴量遺伝子のうち、いずれか2つ以上の実施例間で重複して用いられた遺伝子は、OPA1、HSPBAP1、TYMP、TOX4、FAM168B、FCHO2、KRTAP19-1、EID1、C1orf21、CYB5B、CAMSAP1、NIPBL、DPYSL3、SNRPB2、SNHG6、MOB1B、STARD5及びTBC1D23の計18遺伝子であった。これら18遺伝子を予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
2)モデル構築
1)で選択した18の特徴量遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、疲労状態(健常群か疲労群か)を目的変数として用いて、疲労状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rate)を算出した。その結果、18遺伝子の発現レベルデータを変数に用いた場合のモデルではOOB error rateは17.8%であり、上記18遺伝子を、疲労を検出するためのマーカーとして使用できることが示された。
実施例5 実施例1~3で用いられた全ての特徴量遺伝子に基づく疲労状態判別モデルの構築
1)特徴量遺伝子の選択
実施例1~3のいずれかで用いられた特徴量遺伝子の全て(表1に示された計222種の遺伝子)を予測モデル構築に用いる特徴量遺伝子として選択した。
2)モデル構築
1)で選択した222の特徴量遺伝子の発現レベルデータのLog2(RPM+1)値を説明変数とし、疲労状態(健常群か疲労群か)を目的変数として用いて、疲労状態を判別する予測モデルを構築した。R言語の“caret”パッケージにおいてランダムフォレストのアルゴリズムをメソッドとして指定し、1回の決定木の構築に用いる変数の数(mtry値)の最適値をチューニングした。チューニングによって決定したmtry値を用いて、ランダムフォレストのアルゴリズムを実行し、推定誤答率(OOB error rate)を算出した。その結果、222遺伝子の発現レベルデータを変数に用いた場合のモデルではOOB error rateは31.1%であり、表1の222遺伝子を、疲労を検出するためのマーカーとして使用できることが示された。

Claims (13)

  1. 被験体から採取した生体試料における、以下の遺伝子:OPA1、HSPBAP1、TYMP、TOX4、FAM168B、FCHO2、KRTAP19-1、EID1、C1orf21、CYB5B、CAMSAP1、NIPBL、DPYSL3、SNRPB2、SNHG6、MOB1B、STARD5、及びTBC1D23をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、被験体の疲労の検出方法。
  2. さらに、下記表1及び表2に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、請求項1記載の方法。
    Figure 2022097303000010
    Figure 2022097303000011
  3. さらに、下記表3に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、請求項1記載の方法。
    Figure 2022097303000012
  4. さらに、下記表4に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、請求項1記載の方法。
    Figure 2022097303000013
  5. 前記核酸が皮膚表上脂質から採取されたmRNAである、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
  6. 前記核酸又はタンパク質の発現レベルに基づいて前記被験体の疲労を検出することをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
  7. 前記表1に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルが増加した場合に、前記被験体を疲労しているとして検出することを含む、請求項6記載の方法。
  8. 前記表2に示す遺伝子をコードする核酸、及び該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルが低下した場合に、前記被験体を疲労しているとして検出することを含む、請求項6記載の方法。
  9. 前記核酸又はタンパク質の発現レベルについてのデータを用いて構築した予測モデルに基づいて、前記被験体の疲労を検出することを含む、請求項6記載の方法。
  10. 試験物質を適用した被験体から採取した生体試料における、以下の遺伝子:OPA1、HSPBAP1、TYMP、TOX4、FAM168B、FCHO2、KRTAP19-1、EID1、C1orf21、CYB5B、CAMSAP1、NIPBL、DPYSL3、SNRPB2、SNHG6、MOB1B、STARD5、及びTBC1D23をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種の発現レベルを測定することを含む、疲労制御剤の評価方法。
  11. 前記疲労制御剤が疲労改善剤である、請求項10記載の方法。
  12. 以下の遺伝子:OPA1、HSPBAP1、TYMP、TOX4、FAM168B、FCHO2、KRTAP19-1、EID1、C1orf21、CYB5B、CAMSAP1、NIPBL、DPYSL3、SNRPB2、SNHG6、MOB1B、STARD5、及びTBC1D23をコードする核酸、ならびに該遺伝子にコードされるタンパク質からなる群より選択される少なくとも1種を含む、疲労マーカー。
  13. 請求項12記載の疲労マーカーである核酸と特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、又は請求項12記載の疲労マーカーであるタンパク質を認識する抗体を含有する、請求項1~11のいずれか1項記載の方法に用いられる疲労検出用キット又は疲労制御剤の評価用キット。
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