以下、実施形態の蓄電装置について説明する。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。本明細書において「略~」との記載は、略同一を例に挙げて説明すると、完全に同一はもとより、実質的に同一と認められるものを含む意図である。また、「端部」の用語は対象物の端及びその近傍を意味するものとする。また、以下で説明する形状、材料、個数などは説明のための例示であって、蓄電装置の仕様により変更が可能である。以下では同様の構成には同一の符号を付して説明する。
以下で説明する蓄電装置は、例えば電気自動車またはハイブリッド車の駆動電源、または系統電力のピークシフト用の定置用蓄電システムに利用される。
以下、図1~図8を用いて、実施形態の一例の蓄電装置10について詳説する。図1は、蓄電装置10の斜視図である。図2Aは、図1のA-A断面図である。図2Bは、蓄電装置10を構成する正極板13を示す図であり、図2Cは、蓄電装置10を構成する負極板16を示す図であり、図2Dは、蓄電装置10を構成する電極体要素12a、12bを示す図である。図3は、図1の右端寄り部分を上方から見た図である。図4は、図3のB-B断面図である。図1~図4では、外装体80の長手方向(横方向)をXで示し、厚み方向をYで示し、高さ方向である上下方向をZで示している。X、Y、Zは互いに直交する。以下では、蓄電装置10において外装体80の開口側を上とし、外装体80の底部側を下として説明する。上、下は、説明の便宜上用いる用語である。
図1に示すように、蓄電装置10は、角型の非水電解質二次電池であり、発電要素としての電極体12(図2A)と、外装体80と、蓋20とを備える。電極体12は、正極板13(図2B)、負極板16(図2C)、及び正極板13と負極板16との間に介在するセパレータ(図示せず)を含む。正極板13は第1電極板に相当し、負極板16は第2電極板に相当する。
外装体80は、電極体12を、非水電解質に相当する電解液(図示せず)とともに収容し、上端に開口81を有する有底の略直方体状である。電極体12と外装体80との間には絶縁シート82(図2A)が介在している。蓋20は、外装体80の開口81を塞ぐ。蓋20は、長手方向と幅方向とを有した矩形、すなわち長方形の板である。蓋20の長手方向は、外装体80の長手方向Xと一致し、蓋20の幅方向は外装体80の厚み方向Yと一致する。蓋20には、蓋20から外装体80の外へ一部を露出させた正極端子30及び負極端子32が固定され、互いに蓋20の長手方向Xに離れて配置される。蓋において、長手方向中間部には、注液孔21と排気弁25とが形成される。注液孔21は、排気弁25より正極端子30側に配置される。注液孔21は、外装体80内に電解液を注入するための孔である。外装体80及び蓋20は、それぞれ金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることが好ましい。
図4に示すように、電極体12は、隣り合って配置される2つの電極体要素12a、12bを含んでいる。各電極体要素12a、12bは、複数の正極板13と複数の負極板16とが1枚ずつ交互にセパレータを介して積層される。これにより、各電極体要素12a、12bは、正極板13及び負極板16がセパレータを介して積層される。電極体12において、正極板13、セパレータ及び負極板16の積層方向は、電極体12から蓋20に向かう方向に対して直交する方向であり、上下方向に対し直交する方向である厚み方向Yである。
セパレータには、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。蓄電装置10の好適な一例は、リチウムイオン電池である。
図2Bに示すように、正極板13は、例えば、アルミニウム箔からなる矩形状の芯体の両面に活物質合剤層が形成された本体部14を有する。正極板13には、正極タブ15が設けられる。正極板13の本体部14の長手方向一方側(図2Bの右側)において、一端である上端から正極の芯体が延出しており、この延出した芯体が、延在した正極タブ15を構成する。正極タブ15は、後述する正極集電体40(図4)を介して、蓋20に固定された正極端子30に電気的に接続される。
なお、正極タブは、このように芯体の一部であってもよいが、他の部材を正極板13の本体部14の芯体に接続し、延在した正極タブとしてもよい。また、図2Bに示すように、正極タブ15において活物質合剤層と隣接する部分には、活物質合剤層よりも電気抵抗の大きい保護層15aが設けられることが好ましい。この保護層15aは、アルミナ、シリカ、ジルコニア等のセラミック粒子、及びバインダーを含むことが好ましい。また、保護層15aは、炭素材料等の導電性粒子を含むことが更に好ましい。
正極板13の活物質合剤層は、例えば活物質と、導電剤と、結着剤とを含む。正極板13の活物質としてリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用い、導電剤として炭素材料、及び分散媒としてN-メチルピロリドン(NMP)をそれぞれ用いることができる。
次に、正極板13の作製方法を説明する。まず、上記の活物質、導電剤、結着剤、分散剤を含むスラリーを作製する。このスラリーを、正極板の芯体の両面に塗布する。そして、これを乾燥させることにより、スラリー中の分散媒を取り除き、芯体上に活物質合剤層を形成する。その後、活物質合剤層を所定厚みになるように圧縮処理を行う。このようにして得られた正極板13を所定の形状に切断する。
図2Cに示すように、負極板16は、例えば、銅箔からなる矩形状の芯体の両面に活物質合剤層が形成された本体部17を有する。負極板16には、負極タブ18が設けられる。負極板16の本体部17の長手方向他方側(図2Cの左側)において、一端である上端から負極の芯体が延出しており、この延出した芯体が、延在した負極タブ18を構成する。負極タブ18は、後述する負極集電体50(図2A)を介して、蓋20に固定された負極端子32に電気的に接続される。
なお、負極タブは、このように芯体の一部であってもよいが、他の部材を負極板16の本体部17の芯体に接続し、延在した負極タブとしてもよい。
負極板16の活物質合剤層は、例えば活物質と、導電剤と、結着剤、増粘剤とを含む。負極板16の活物質として、黒鉛、結着剤としてスチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)、及び分散媒として水をそれぞれ用いることができる。
次に、負極板16の作製方法を説明する。まず、上記の活物質、導電剤、結着剤、増粘剤を含むスラリーを作製する。このスラリーを、負極板の芯体の両面に塗布する。そして、これを乾燥させることにより、スラリー中の分散媒を取り除き、芯体上に活物質合剤層を形成する。その後、活物質合剤層を所定厚みになるように圧縮処理を行う。このようにして得られた負極板16を所定の形状に切断する。
複数枚(例えば50枚)の正極板13及び複数枚(例えば51枚)の負極板16を、上記の方法で作製し、これらの正極板及び負極板を、ポリオレフィン製の矩形状のセパレータを介して積層することで、2つの積層型の電極体要素12a、12b(図2D)を作製する。2つの電極体要素12a、12bは、各電極体要素の上端部の長手方向Xの一方側において各正極タブ15が積層され、各電極体要素の上端部の長手方向Xの他方側において各負極タブ18が積層されるように作製される。2つの電極体要素12a、12bの厚み方向Y両側面にはセパレータが配置され、テープ等により正極板13、負極板16及びセパレータが積層された状態に固定することができる。あるいは、セパレータに接着層を設け、セパレータと正極板13、セパレータと負極板16がそれぞれ接着されるようにしてもよい。図4では、複数の正極タブ15のうち、一部の正極タブ15のみを示している。
図2A、図4に示すように、蓄電装置10はさらに、蓋20の2つの孔をそれぞれ貫通した正極端子30及び負極端子32と、正極集電体40及び負極集電体50と、集電体ホルダ60と、安全装置90とを備える。正極端子30及び負極端子32は電極端子に相当する。正極集電体40は、安全装置90を介して、正極端子30を電極体12に電気的に接続する。負極集電体50(図2A)は、負極端子32を電極体12に電気的に接続する。
電極体12の蓋20側の端部である上端部には、正極タブ15及び負極タブ18がそれぞれ複数ずつ重ねられた状態で正極集電体40及び負極集電体50に接続される。正極タブ15は正極集電体40に接続され、負極タブ18は負極集電体50に接続される。
図2Aに示すように、正極集電体40は、正極タブ15に接続される第1集電板41と、第1集電板41と安全装置90とに接続される第2集電板45とを含む。第1集電板41と第2集電板45とは、それぞれの縁どうしを重ねて溶接接合することにより、接続される。
負極集電体50は、負極タブ18に接続される第1集電板51と、第1集電板51と負極端子32とに接続される第2集電板54とを含む。第1集電板51と第2集電板54とは、それぞれの縁どうしを重ねて溶接接合することにより、接続される。
正極集電体40の第1集電板41における電極体12と対向する面である下面には正極タブ15が接続されており、正極タブ15が湾曲した状態となっている。また、負極集電体50の第1集電板51の電極体12と対向する面である下面には負極タブ18が接続されており、負極タブ18が湾曲した状態となっている。これにより、各集電体40,50と電極体12との間のスペースを小さくでき、より体積エネルギ密度の高い二次電池を実現できる。
集電体ホルダ60は、正極集電体40の第1集電板41と蓋20との間に配置されて設けられる。集電体ホルダ60は、絶縁部材に相当する。集電体ホルダ60は、長手方向Xにおいて正極タブ15と一致する位置であり、蓋20の電極体12側の面である下面における注液孔21の開口を包囲するように形成された筒体66を含む。筒体66は、蓋20から電極体12に向かって延びている。さらに、その筒体66の電極体12側端には、電極体12と蓋20との間に介在する遮蔽部70が連結される。これにより、後述のように、体積エネルギ密度が高く、かつ信頼性が高い蓄電装置10を得られる。集電体ホルダ60は後で詳しく説明する。
正極端子30は、樹脂製の外側絶縁部材100を介して蓋20に固定されている。正極端子30には、貫通孔31が形成されるが、この貫通孔31は封止部材33により封止される。負極端子32は、樹脂製の外側絶縁部材101を介して蓋20に固定されている。正極端子30及び負極端子32は例えば、金属製である。正極端子30は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。負極端子32は例えば、銅または銅合金製である。負極端子32は、外装体80の内部側に銅または銅合金からなる部分を有し、外装体80の外部側にアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる部分を有することがさらに好ましい。
また、負極端子32の表面にはニッケルメッキ等が施されていることが好ましい。負極集電体50の第2集電板54には孔55が形成され、この孔55に負極端子32の下端部が挿入されるとともに、その下端部をかしめることによって、蓋20に第2集電板54が固定される。このとき、蓋20と第2集電板54と間に絶縁板102が介在した状態で蓋20に第2集電板54が固定される。この絶縁板102は、負極集電体50の第1集電板51と蓋20との間にも介在するように、第1集電板51側に延在している。
図2Aに示す安全装置90は、例えば、外装体80内の圧力が所定値以上となった際に作動し、電極体12の正極板13(図2B)と正極端子30との間の導電経路を遮断する電流遮断機構である。
安全装置90は、正極端子30の下端部で蓋20よりも下側に突出する部分に固定される鉢状の導電部材91と、反転板93とを有する。導電部材91は、鉢状の底の部分に孔92を有し、この孔92に正極端子30の下部が挿入され、この下部がかしめられることで、導電部材91が正極端子30とともに蓋20に固定される。このとき、蓋20と導電部材91との間に絶縁板103が介在した状態で蓋20に導電部材91が固定される。
反転板93は、中心に突起を有する円板である。この反転板93が導電部材91の下側にある開口部を塞ぐように配置されるとともに、反転板93の周縁と導電部材91の開口端部とが溶接により接合される。反転板93の中心の突起は、正極集電体40の第2集電板45に設けられた孔に嵌合した状態で第2集電板45に接続されている。これにより、反転板93は、導電部材91と第2集電板45とに電気的に接続される。なお、反転板93の中心の突起は第2集電板の孔に嵌合している必要はなく、突起が第2集電板45における蓋20と対向する面に接合によって電気的に接続されていてもよい。
安全装置90は、電極体12の負極板16と負極端子32との間の導電経路に設けられてもよい。導電部材91及び反転板93は、金属製であり、正極端子30に接続する場合には、導電部材91及び反転板93は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金製である。導電部材及び反転板を負極端子32に接続する場合には、導電部材及び反転板は、例えば、銅または銅合金製である。
なお、蓄電装置10において、安全装置を備えていることが好ましいが、本開示において、安全装置を備えることは必須ではなく、安全装置は省略してもよい。
さらに、蓋20には外装体80内の圧力が所定値以上となった際に破断し、外装体80内のガスを外装体80の外に排出する排気弁25が設けられる。なお、排気弁25の作動圧は、安全装置90の作動圧よりも大きい値に設定する。
蓋20にはさらに注液孔21(図4)が設けられる。注液孔21を通じて、外装体80内に電解液を注液した後、注液孔21はリベットである栓26(図2A)により封止される。電解液の注液時には、注液孔21にストロー状(管状)のノズル105(図4)が差し込まれ、このノズル105を通じて電解液が外装体80内に注入される。
図2A、図4、図8に示すように、蓄電装置10は、さらに、第1絶縁部61と第2絶縁部64とを有する樹脂製の集電体ホルダ60を備える。図5は、集電体ホルダ60の斜視図である。図6は、図5の上方から見た図である。図7は、図6のC-C断面図である。図8は、注液孔21を通じて電解液を外装体80内に供給する状態を示している図2AのD部拡大図に対応する図である。
集電体ホルダ60の第1絶縁部61は、正極集電体40の第2集電板45と反転板93との間に介在する。集電体ホルダ60の第2絶縁部64は、正極集電体40の第1集電板41と蓋20との間に介在する。図5~図7では、集電体ホルダ60の長手方向をaで示し、幅方向をbで示し、高さ方向をcで示す。a、b、cは互いに直交する。集電体ホルダ60は、長手方向aが蓄電装置10の長手方向Xと一致し、幅方向bが蓄電装置10の厚み方向Yと一致し、高さ方向cが上下方向Zと一致した状態で、蓋20の下側に配置される。
第1絶縁部61の下側には第2集電板45(図2A)が支持される。第1絶縁部61は、絶縁板103に形成された筒体104の外側に係止される。この筒体104には、内側に鉢状の導電部材91が嵌合される。これにより、正極集電体40は、蓋20に固定される。具体的には、第1絶縁部61には、第2集電板45に対向する面とは反対側の面である裏面(図2Aの上側面、図5の下側面)において、複数位置に爪(図示せず)が形成される。複数の爪のそれぞれは、導電部材91の下端部または反転板93の外周部に形成された外周鍔部(図示せず)を、第1絶縁部61の上面の爪とは異なる部分とで上下両側から挟む。これともに、第1絶縁部61において、上記の裏面の幅方向bの両側縁には、蓋20に向かって立設した壁状の係止部63(図5)が形成される。そして、これら各係止部63の内側面に形成された突部(図示せず)によって、係止部63に絶縁板103の筒体104の外側面が係止される。これにより、集電体ホルダ60は、絶縁板103を介して蓋20に固定される。第1絶縁部61にはさらに高さ方向cに貫通する孔61a(図5、図6)が形成されており、この孔61a内を通って、反転板93の中心の突起と第2集電板45とが接続される。
さらに、第1絶縁部61の電極体側面には、孔61aの周囲に設けられた複数の円筒状の突部61bが形成される。複数の突部61bは、第2集電板45に設けられた複数の孔46(図2A)に挿入される。複数の突部61bが第2集電板45の複数の孔46に挿入された後、突部61bの孔46を貫通した部分が熱かしめで変形されることにより、第2集電板45が第1絶縁部61に固定される。
図8に示すように、集電体ホルダ60の第2絶縁部64と正極集電体40の第1集電板41とは、蓋20の注液孔21の周縁部の近傍に配置される。第1集電板41は、第2絶縁部64と対向する面に上下方向Zに貫通する貫通孔42を有する。さらに、図6、図8に示すように、第2絶縁部64は、第1集電板41の貫通孔42と整合する位置に高さ方向c及び上下方向Zに貫通する孔65を有する。この孔65は、集電体ホルダ60の長手方向aに長い長円形である。そして、第2絶縁部64の電極体12側の面において、孔65の開口周縁部には、蓋20側から電極体12側に向かって延びる筒体66が形成される。筒体66は、孔65の形状に応じて、外周面に平行な2つの平面部67を有し、断面形状が長手方向aに長い長円形である。これにより、筒体66は、蓋20の電極体側の面である下面における注液孔21の開口を包囲するように蓋20から電極体12に向かう方向である下方向に延びている。また、筒体66は、蓋20の外側面である上面と電極体12との間に配置される。さらに、この筒体66は、第1集電板41の貫通孔42に挿入されている。第1集電板41の電極体12と対向した面に正極タブ15が接合される際には、正極タブ15の先端は、筒体66の側面である、外周面における平面部67に対向する。
このような筒体66により、第1集電板41に正極タブ15が接合される際に、正極タブ15の先端が誤って第1集電板41の貫通孔42の下に入り込むように配置されることを抑制することができる。そして、正極タブ15が貫通孔42及び注液孔21の下側を塞ぐことを抑制することができる。
上記の筒体66において、電極体12側の開口端部には、電極体12と注液孔21との間に介在する遮蔽部70が連結される。具体的には、筒体66の電極体12側端の180度位相が異なる2つの位置から電極体12側である下方に延出した部分である略平行な2つの板状の突部68が形成される。そして、これら2つの突部68の先端には、細長な平板状の遮蔽部70において、第1方向である幅方向bにおける両端が連結され、遮蔽部70は幅方向bに直線的に延在する板からなる。幅方向bは、蓋20(図1、図2A)の幅方向と平行であり、第1方向に相当する。これにより、筒体66において蓋20から電極体12に向かう方向における両端のうち、電極体12側の端側に、遮蔽部70が形成される。また、遮蔽部70は、また、筒体66の電極体12側端と遮蔽部70との間には、2つの開口73が形成される。各開口73は、筒体66内に蓋20側から電極体12側に流れる電解質を噴出させる出口である。図4、図8に示すように、蓋20の下側に集電体ホルダ60を組み付けた状態で、遮蔽部70の上下方向Zの両側面は、上下方向Zに対し直交する平面と平行である。遮蔽部70は、蓋20側である上方から衝突した電解液の流れを電極体12側である真下方向とは異なる方向に変える部分である。
外装体80内に電解液を、注液孔21を通じて供給する際には、例えば図8に示すように、ノズル105を蓋20の上側から注液孔21に挿入する。このとき、ノズル105の下端は遮蔽部70の上面と隙間をあけて対向させる。この状態で、図8の矢印αで示す方向にノズル105に上側から電解液を流す。ノズル105の下端から噴出した電解液は、遮蔽部70の上面に衝突し、電解液の流れが図8の矢印α方向から略長手方向Xである図8の矢印β方向に変更されて、2つの開口73を通じて、略長手方向Xに筒体の外側に噴出された後、流下する。
次に、図2Aを用いて、蓋20に対し正極端子30、安全装置90、正極集電体40を取り付ける方法を説明する。蓋20の孔に外側絶縁部材100を介した状態で正極端子30を挿入し、正極端子30の電極体12側の部分を、絶縁板103、導電部材91の孔92に挿入する。そして、正極端子30の電極体12側の端部をかしめて、正極端子30を蓋20に固定する。そして、導電部材91の開口端部に反転板93の周縁を接合する。その後、集電体ホルダ60の第1絶縁部61の爪により、導電部材91を第1絶縁部61に固定する。これとともに、第1絶縁部61の係止部63(図5)を、絶縁板103に係止する。また、第1絶縁部61の突部61bを正極集電体40の第2集電板45の孔46に挿入した後、突部61bの先端に熱かしめを行う。そして、反転板93の突起を第2集電板45の孔に嵌合させ、これらの孔と突起との界面をレーザー溶接によって接合する。
さらに、正極集電体40の第1集電板41の電極体12と対向する面に正極タブ15を接合する。集電体ホルダ60の筒体66が第1集電板41の貫通孔42に挿入された状態で、正極タブ15が接合された第1集電板41を第2絶縁部64に配置する。このとき、第1集電板41の縁の一部は第2集電板45の縁の一部と重なっており、この重複部分を溶接で接合する。その後、第2集電板45の電極体12と対向する面を覆うようにカバー(図示せず)を設けることもできる。
図4に示したように、電極体12は、2つに分割した電極体要素12a、12bにより構成し、各電極体要素12a、12bを、正極集電体40及び負極集電体50(図2A)に接続している。これにより、第1集電板41では、各電極体要素12a、12bから延びる正極タブ15を、筒体66を正極タブ15間に配置した状態で、第1集電板41の電極体12側の面に接合させる。
上記の蓄電装置10によれば、外装体80内に電解液を、注液孔21を通じて供給する際に、電解液は、遮蔽部70に衝突することで流速が下がった状態で、外装体80内で電極体12に向かって流れることができる。このため、外装体80内において電解液が電極体12の上端に衝突する際の電解液の流速を低下させることができる。したがって、電極体12の材料の損傷、剥離及び滑落の発生を抑制できる。さらに、蓋20と電極体との間隔を小さくできる。この結果、体積エネルギ密度が高く、かつ信頼性が高い蓄電装置10を得られる。
さらに、電極体12は、正極板13及び負極板16がセパレータを介して積層され、電極体12において正極板13、セパレータ及び負極板の積層方向は、電極体から蓋に向かう方向である上下方向Zに対し直交する方向である。これにより、電解液は正極板13、セパレータ及び負極板16の縁の重ね合わせ部に衝突する傾向となるが、この場合でも、材料の剥離、滑落を抑制できるので、本開示による効果が顕著になる。例えば、正極板13と負極板16とセパレータの積層方向が上下方向Zに対し直交する構成では、積層された正極板、負極板、セパレータの縁が電極体12の上端に位置することになる。このような構成で、電極体12の縁に電解液が高い速度で衝突すると、電極板に接着したセパレータが電極板から剥離したり、電極板の活物質層が滑落する可能性がある。本開示の構成によれば、このような不都合を抑制できる。そのため、本開示の蓄電装置に用いられる電極体は、積層型の電極体ではなく、巻回軸が電極体から蓋に向かって延びるように配置された巻回型の電極体であっても、正極板、負極板、およびセパレータの積層方向は上下方向Zに対して直交する方向になるため、電極体のダメージ抑制の効果を十分に得られる。
また、上記の遮蔽部70において、電極体12及び注液孔21と対向する部分は、板状であり、この対向した部分が延在する第1方向は、蓋20の幅方向と平行である。これにより、筒体66の下側からの電解液の噴出方向は、蓋20の形状に応じた直方体状の外装体80の内側空間における略長手方向Xとなるので、外装体80内のより広い空間に向かって電解液を噴出させることができる。このため、電解液が電極体12に衝突する際の流速をより低下させることができる。
さらに、筒体66の電極体12側の端部に形成された2つの開口73は、遮蔽部70によって長手方向X、aにおいて隔てられている。この構成により、外装体80内で電極体12に向かって流れる電解液を分散させることができ、電極体12の損傷、剥離及び滑落をさらに抑制することができる。このとき、各開口73の縁の一部を遮蔽部70の上面より高くすることにより、開口73から噴出する電解液をより広い範囲に飛び拡げて分散させた後、電極体12に向けて流すことができるので、電解液が電極体12に衝突する際の流速をより低下させやすい。
また、遮蔽部70は、1本のみにより構成される必要はなく、複数本が筒体66に連結された形状としてもよい。このとき、複数の遮蔽部が筒体66において、異なる高さ位置に設けられていてもよい。例えば、遮蔽部は、筒体の2個所位置に第1方向である幅方向における両端が連結され、幅方向に延びていてもよい。また、筒体66の電極体12側の端部を板状の遮蔽部70で塞いで、筒体66の外周面の少なくとも1つ以上の位置に電解液を噴出させる開口を形成してもよい。
さらに、遮蔽部70は、筒体66が延びる上下方向の両端のうち、下側の端側、例えば下側の端部に近い位置に設けてもよい。この構成により、注液孔21を介して、筒体66内に電解液を供給する供給源のノズルを入り込ませることができる。そのため、ノズルから供給される電解液が外装体80の外部で飛散することを抑制することができる。さらに、ノズルを遮蔽部に突き当てないようにすることが容易であり、ノズルと遮蔽部との間隔を確保しやすくなる。このため、ノズルから遮蔽部へ向かう電解液の流路を確保することが容易となり、ノズルから外装体80内への電解液の供給が妨げられることを抑制できる。
また、筒体66は、外周面に平行な2つの平面部67を有する断面長円形としており、正極タブ15を正極集電体40の第1集電板41に接合する際に、筒体66の平面部67に接合前の正極タブ15を当接させることができる。これにより、接合前の正極タブ15の配置を安定させることができる。また、第1集電板41の貫通孔42に筒体66が挿入された後、第1集電板41が筒体66の周囲を回転することを抑制することができる。
図9、図10は、それぞれ本開示の実施形態の別例において、図8のE部に対応する図である。図9に示す別例の構成では、集電体ホルダ60aの筒体66に連結された遮蔽部70aは、注液孔21(図8)と対向する側の面である上面に突出部74を有する。突出部74は、上面に、上下方向に対し平行な中間平面部75aと、中間平面部75aの両側に隣接され上下方向に対し傾斜した2つの外側平面部75bとを有する断面略山形状である。各外側平面部75bは、傾斜面に相当する。これにより、突出部74は、第1方向(幅方向b)に対して垂直な断面の形状が台形となる。このため、ノズル105を流れた電解液の流れが、下方向である矢印α方向から斜め下方向である矢印γ方向に変更されて、2つの開口73から外装体80(図2A、図8)内に噴出される。
図10に示す別例の構成では、集電体ホルダ60bの筒体66に連結された遮蔽部70bは、注液孔21(図8)と対向する側の面である上面に突出部76を有する。突出部76は、上面に、上下方向に対し逆方向に傾斜した2つの平面部76aを有する断面山形状である。これにより、突出部76は、第1方向(幅方向b)に対して垂直な断面の形状が三角形となる。各平面部76aは、傾斜面に相当する。このため、ノズル105を流れた電解液の流れが、下方向である矢印α方向から斜め下方向である矢印δ方向に変更されて、2つの開口73から外装体80(図2A、図8)内に噴出される。
また、遮蔽部70において延在方向である第1方向(幅方向b)の端部は、正極タブ15または負極タブ18と対向するように配置されていてもよい。この構成により、開口73から噴出する電解液は、タブにおいて遮蔽部70と対向する面と平行に噴出しやすくなり、タブに向かって電解液が噴出することを抑制することができる。また、筒体66からタブに向かって電解液が噴出することが抑制されるため、タブと筒体66とを対向させて配置させることが容易になる。これにより、タブと筒体66とを対向させた場合、特にタブにおいて、筒体66と対向したタブ(複数のタブのうち筒体66に最も近いタブ)と接続した電極板へのダメージが抑制される。そして、特に、その電極板の筒体66と対向した面の活物質層または活物質層と対向したセパレータに対してダメージを軽減することができる。
本開示の構造を構成する遮蔽部70、70a、70bの形状は、上記の各例の構成に限定しない。例えば、遮蔽部は、上面に突出部を有し、その突出部が、上面が曲線に沿って上側に膨らむ曲面等の曲面を有するようにしてもよい。例えば、突出部は、遮蔽部の延在方向である第1方向に対し垂直な断面の形状が円弧形、例えば半円となる曲面を有するようにしてもよい。
上記では、電極体12を2つに分割した電極体要素12a、12bにより構成し、各電極体要素から正極タブ15及び負極タブ18が延びる場合を説明した。一方、電極体12は、正極タブ及び負極タブを有する1つの電極体要素のみより構成することもできる。
なお、上記の実施形態では、筒体66及び遮蔽部70、70a、70bが集電体ホルダ60、60a、60bの一部である場合を説明したが、本開示の蓄電装置はこの構成に限定されない。例えば、集電体ホルダの第2絶縁部64と第1集電板41とが注液孔21の周縁部の近傍に位置せず、注液孔21の周縁部から第2絶縁部64と第1集電板41とが離れている構成としてもよい。この場合には、筒体及び遮蔽部を有しない集電体ホルダと、筒体と遮蔽部とを有する絶縁部材とを設けて、その絶縁部材を注液孔21の近傍に配置することで、本開示の蓄電装置を構成してもよい。この場合も、筒体は、蓋の外側面と電極体との間に配置される。また、絶縁板102、103の一部を注液孔21の近傍まで延ばし、延ばした部分に筒体66を固定してもよい。さらに、筒体は絶縁材料から構成されている必要はない。例えば、金属製の筒体および遮蔽部から構成されていてもよい。そのため、筒体は、蓋と一体に電極体側に設けられ、蓋の外側面と電極体との間に配置されて蓋の電極体側の面における注液孔の開口を包囲するように蓋から電極体に向かって延びた筒体としてもよい。このように、筒体は、蓋とは別部材に設けてもよく、または、蓋と一体の部分としてもよい。