JP2022085144A - ビスフェノールの製造方法および再生ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

ビスフェノールの製造方法および再生ポリカーボネート樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】温和で、効率の良くポリカーボネート樹脂を分解することのできる分解方法を利用してビスフェノールを製造するビスフェノールの製造方法を提供する。【解決手段】ポリカーボネート樹脂、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒を含む反応液を調製する調製工程と、前記調製工程で調製した反応液中で前記ポリカーボネート樹脂をビスフェノールと炭酸アルキレンに分解させる分解反応工程と、前記分解反応工程で得られたビスフェノールを回収するビスフェノール回収工程とを、有するビスフェノールの製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、ビスフェノールの製造方法に関する。詳しくは、ポリカーボネート樹脂の分解を利用したビスフェノールの製造方法に関する。更に、前記ビスフェノールの製造方法で得られるビスフェノールを用いた再生ポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
プラスチックは手軽で耐久性に富み、安価であることから我が国のみならず世界中で大量に生産されている。そのプラスチックの多くは「使い捨て」として用いられるため、適切に処理されず、環境中に流出するものもある。具体的には、プラスチックごみは河川から海へと流れ込み、その過程で波や紫外線で劣化して5mm以下となる。このような小さなプラスチックゴミは、マイクロプラスチックと呼ばれる。このマイクロプラスチックを、動物や魚が誤飲してしまう。このように、プラスチックゴミは生態系に甚大な影響を与え、近年、海洋プラスチック問題として世界中で問題視されている。透明性、機械物性、難燃性、寸法安定性、電気特性により、幅広い分野で用いられるポリカーボネート樹脂も例外ではない。
ポリカーボネート樹脂のリサイクル方法の1つとして、ポリカーボネート樹脂を化学的に分解しビスフェノールまで戻して再利用するケミカルリサイクルがあり、ポリカーボネート樹脂の分解方法の1つとして、グリコリシスが知られている。そのグリコリシスの方法として、ビスフェノール系ポリカーボネート(PC)を、脂肪族ジオール、ポリオール、または対応するエポキシド、及び、アルキレンカーボネート、と反応させることによりPCの一つの構成単位であるビスフェノール及び/又は前記ビスフェノールのヒドロキシアルキルエーテル化合物を製造する方法が知られている(特許文献1)。また、酸化亜鉛ナノ粒子やイオン性液体などを触媒として用い、テトラヒドロフラン中でポリカーボネート樹脂と1,2-プロパンジオールとを反応させて、ポリカーボネート樹脂を解重合させる方法も知られている(非特許文献1)。
特開2001-192497号公報
J. Mol. Catal. A: Chem. 2017, 426, 107-116.
しかしながら、特許文献1の方法は、ビスフェノールのヒドロキシアルキルエーテル化合物が主成分として得られ、ビスフェノールの収率は低いという問題があった。例えば、特許文献1の実施例1では、ビスヒドロキシエチルエーテル(BHE-BPA)が定量的に生成されており、ビスフェノールA(BPA)の生成は確認されていない。
また、非特許文献1の方法は、酸化亜鉛ナノ粒子やイオン性液体など特殊な触媒を用いたり、触媒によっては反応率が低く、反応時間が長いという問題があり、更なる改良が求められていた。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、温和で、効率の良くポリカーボネート樹脂を分解することのできる分解方法を利用して、ビスフェノールを製造するビスフェノールの製造方法を提供することを目的とする。更に、得られた前記ビスフェノールを用いた再生ポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、芳香族モノアルコールとグリコールを併用して、ポリカーボネート樹脂を分解させる分解方法を見出した。また、前記ポリカーボネート樹脂の分解方法を用い、ビスフェノールを製造する方法を見出した。更に、得られた前記ビスフェノールを用いた再生ポリカーボネート樹脂の製造方法を見出した。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> ポリカーボネート樹脂、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒を含む反応液を調製する調製工程と、前記調製工程で調製した反応液中で前記ポリカーボネート樹脂をビスフェノールと炭酸アルキレンに分解させる分解反応工程と、前記分解反応工程で得られたビスフェノールを回収するビスフェノール回収工程とを、有するビスフェノールの製造方法。
<2> 前記触媒が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルキルアミン及び酸からなる群から選択されるいずれかである、前記<1>に記載のビスフェノールの製造方法。
<3> 前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、前記<2>に記載のビスフェノールの製造方法。
<4> 前記アルキルアミンが、下記式(I)で示される、前記<2>に記載のビスフェノールの製造方法。
Figure 2022085144000001
式中、RAは、炭素数1~3のアルキル基を表し、RB~RCは、それぞれに独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。
<5> 前記アルキルアミンが、第三級アミンである、前記<2>又は<4>に記載のビスフェノールの製造方法。
<6> 前記酸が、塩酸、硫酸、リン酸及びスルホン酸からなる群から選択されるいずれかである、前記<2>に記載のビスフェノールの製造方法。
<7> 前記芳香族モノアルコールが、フェノール、クレゾール及びキシレノールからなる群から選択されるいずれかである、前記<1>から<6>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<8> 前記グリコールが、エチレングリコール又はプロピレングリコールである、前記<1>から<7>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<9> 前記ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対する、前記グリコールのモル比が、1.0以上2.0以下である、前記<1>から<8>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<10> 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである、前記<1>から<9>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<11> 前記分解反応工程で得られた炭酸アルキレンを回収する炭酸アルキレン回収工程を有する、前記<1>から<10>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法で得られたビスフェノールを含むビスフェノール原料を用いて、再生ポリカーボネート樹脂を製造する、再生ポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明によれば、温和な条件で、効率の良く、ポリカーボネート樹脂を分解することができる分解法方法を利用してビスフェノールを製造するビスフェノールの製造方法が提供される。更に、得られた前記ビスフェノールを用いた再生ポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
<ビスフェノールの製造方法>
本発明は、ポリカーボネート樹脂、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒を含む反応液を調製する調製工程と、前記調製工程で調製した反応液中で前記ポリカーボネート樹脂をビスフェノールと炭酸アルキレンに分解させる分解反応工程と、前記分解反応工程で得られたビスフェノールを回収するビスフェノール回収工程とを、有するビスフェノールの製造方法(以下、「本発明のビスフェノールの製造方法」と記載する場合がある)に関するものである。
本発明のビスフェノールの製造方法は、ポリカーボネート樹脂を、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒の存在下で分解させる分解方法を利用するものである。
本発明者らは、触媒の存在下で、芳香族モノアルコールとグリコールを併用することで、温和な条件であっても、ポリカーボネート樹脂をビスフェノールと炭酸アルキレンに分解できることを見出した。また、ハロゲン溶媒のようなポリカーボネート樹脂の溶解性が高い溶媒を用いてポリカーボネート樹脂を完全に溶解させなくても、芳香族モノアルコールとグリコールを併用することで、ポリカーボネート樹脂の分解反応が高い反応率で生じることがわかった。
芳香族モノアルコールとグリコールを併用することで、芳香族モノアルコールによる加溶媒分解とグリコールによる加溶媒分解の両方の反応が系内で起こるため、ポリカーボネート樹脂が温和な条件であっても分解されやすくなると考えられる。
<調製工程>
本発明のビスフェノールの製造方法は、ポリカーボネート樹脂、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒を含む反応液を調製する調製工程を有する。
(ポリカーボネート樹脂)
本発明のビスフェノールの製造方法で用いられるポリカーボネート樹脂は、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)を含む重合組成物を含むものである。具体的には、本発明のビスフェノールの製造方法で用いられるポリカーボネート樹脂は、一般式(1)で示される、ビスフェノールに由来する繰り返し単位を含むポリマーを含むものである。
Figure 2022085144000002
1~R4の置換基としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。例えば、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
5とR6の置換基としては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルへキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
5とR6は、2つの基の間で互いに結合又は架橋し、シクロアルキリデン基を形成しても良い。例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデン、フルオレニリデン、キサントニリデン、チオキサントニリデンなどが挙げられる。
また、ポリカーボネート樹脂は、一般に単にポリカーボネートと呼ばれることもある、ポリカーボネート樹脂単独のものだけでなく、共重合体やポリマーアロイのようにポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含む組成物を用いてもよい。ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含む組成物としては、例えば、ポリカーボネート/ポリエステル共重合体、ポリカーボネート/ポリエステルアロイ、ポリカーボネート/ポリアリレート共重合体、ポリカーボネート/ポリアリレートアロイ等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含む組成物を用いる場合、ポリカーボネート樹脂が主成分である(組成物中にポリカーボネート樹脂を50質量%以上含む)ものが好適である。
また、ポリカーボネート樹脂は、2種類以上の異なるポリカーボネート樹脂を混合して用いてよい。
ケミカルリサイクルの観点から、ポリカーボネート樹脂は、廃プラスチックに含まれるポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂は、ヘッドランプなどの光学部材や、光学ディスクなどの光学記録媒体などの各種成形品に成形加工されて用いられている。ポリカーボネート樹脂を含む廃プラスチックとして、これらの成形品にポリカーボネート樹脂を成形加工する際の端材や不良品、使用済みの成形品などを用いることができる。
廃プラスチックは、適宜、洗浄、破砕、粉砕などをして用いてよい。廃プラスチックの破砕の方法としては、ジョークラッシャや旋回式クラッシャを用いて20cm以下に破砕する粗砕や、旋回式クラッシャ、コーンクラッシャ、ミルを用いて1cm以下まで破砕する中砕、ミルを用いて1mm以下まで破砕する粉砕等であり、分解槽に供給出来る大きさまで小さくできれば良い。また、廃プラスチックがCDやDVDのように薄いプラスチックの場合、シュレッダー等を用いて裁断し、分解槽に供給することができる。また、共重合体やポリマーアロイの他の樹脂、光学ディスクの表面や裏面の層のようにポリカーボネート樹脂以外の成分で形成される部分をあらかじめ除去して用いてもよい。
(芳香族モノアルコール)
本発明のビスフェノールの製造方法は、芳香族モノアルコールを用いることが特徴の一つである。芳香族モノアルコールは、1つのヒドロキシル基が芳香環を形成する炭素原子に結合した化合物であり、フェノール、クレゾールおよびキシレノールからなる群から選択されるいずれかが好ましい。
クレゾールとしては、オルトクレゾール、メタクレゾール、パラクレゾール、および、これらを1以上含む異性体混合物が挙げられる。30℃付近で液体であれば分解槽に供給しやすいことから、好ましくは、オルトクレゾール、メタクレゾール、メタクレゾールとパラクレゾールの異性体混合物、又はオルトクレゾールとメタクレゾールとパラクレゾールの異性体混合物である。
キシレノールとしては、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,5-キシレノール、3,4-キシレノール、および、これらを1以上含む異性体混合物が挙げられる。工業的に安価に入手できることから、好ましくは、2,5-キシレノールである。
使用するポリカーボネート樹脂に対して使用する芳香族モノアルコールの量が小さいと、液に対する固体(ポリカーボネート樹脂)の量が多くなってスラリー濃度が高くなり、混合不良となる傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位(すなわち、上記一般式(1)で表される繰り返し単位)1モルに対する芳香族モノアルコールのモル比((使用する芳香族モノアルコールの質量[g]/芳香族モノアルコールの分子量[g/mol])/(使用するポリカーボネート樹脂の質量[g]/繰り返し単位の分子量[g/mol]))は、0.005以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.03以上が更に好ましい。また、使用するポリカーボネート樹脂に対して使用する芳香族モノアルコールの量が大きいと、製造効率が悪化する傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対する芳香族モノアルコールのモル比は、100以下が好ましく、70以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。
(グリコール)
本発明のビスフェノールの製造方法は、グリコールを用いることが特徴の一つである。グリコールは、炭素数2以上のアルキル基の2つの炭素原子に1つずつヒドロキシル基が結合した化合物である。グリコールは、エチレングリコール又はプロピレングリコールであることが好ましい。
使用するポリカーボネート樹脂に対して使用するグリコールの量が小さいと、ポリカーボネート樹脂が分解されにくくなったり、分解速度が低下するため、分解時間が長時間化して、効率が悪化する傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対するグリコールのモル比((使用するグリコールの質量[g]/グリコールの分子量[g/mol])/(使用するポリカーボネート樹脂の質量[g]/繰り返し単位の分子量[g/mol]))は、1.0以上が好ましく、1.1以上がより好ましく、1.2以上が更に好ましい。また、使用するポリカーボネート樹脂に対して使用するグリコールの量が大きいと、製造効率が悪化する傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対するグリコールのモル比は、2.0以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.8以下が更に好ましい。
また、使用する芳香族モノアルコールに対する使用するグリコールのモル比(使用するグリコールのモル数/使用する芳香族モノアルコールのモル数)は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましい。また、該モル比は、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。使用する芳香族モノアルコールに対する使用するグリコールのモル比が小さいと、ポリカーボネート樹脂が分解されにくくなったり、分解速度が低下して分解時間が長時間化する。また、該モル比が大きいと、炭酸アルキレンを回収する場合には、グリコールと炭酸アルキレンとの分離が煩雑となる。
(触媒)
本発明のビスフェノールの製造方法では、更に触媒を用いることが特徴の一つである。触媒は、ポリカーボネート樹脂の分解を促進できるものであればよいが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルキルアミンおよび酸からなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。
[アルカリ金属水酸化物]
アルカリ金属水酸化物は、アルカリ金属イオン(M+)と水酸化物イオン(OH-)との塩であり、MOH(Mはアルカリ金属原子を表す)で表される化合物である。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましい。
使用するポリカーボネート樹脂に対して使用するアルカリ金属水酸化物の量が小さいと分解速度が遅くなり、分解時間が長時間化して、効率が悪化する傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対するアルカリ金属水酸化物のモル比((使用するアルカリ金属水酸化物の質量[g]/アルカリ金属水酸化物の分子量[g/mol])/(使用するポリカーボネート樹脂の質量[g]/繰り返し単位の分子量[g/mol]))は、0.0001以上が好ましく、0.0005以上がより好ましく、0.0007以上が更に好ましい。例えば、0.001以上や、0.01以上、0.1以上などとすることができる。使用するポリカーボネート樹脂に対して使用するアルカリ金属水酸化物の量が大きいと、分解後の中和に要する酸の量が増加して、製造効率が低下する傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対するアルカリ金属水酸化物のモル比は、1以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい。
[アルカリ金属炭酸塩]
アルカリ金属炭酸塩は、アルカリ金属イオン(M+)と炭酸イオン(CO3 2-)との塩であり、M2CO3(Mはアルカリ金属原子を表す)で表される化合物である。アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムが好ましい。
使用するポリカーボネート樹脂に対して使用するアルカリ金属炭酸塩の量が小さいと分解速度が遅くなり、分解時間が長時間化して、効率が悪化する傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対するアルカリ金属炭酸塩のモル比((使用するアルカリ金属炭酸塩の質量[g]/アルカリ金属炭酸塩の分子量[g/mol])/(使用するポリカーボネート樹脂の質量[g]/繰り返し単位の分子量[g/mol]))は、0.0001モル以上が好ましく、0.0005以上がより好ましく、0.0007以上が更に好ましい。例えば、0.001以上や、0.01以上、0.1以上などとすることができる。使用するポリカーボネート樹脂に対して使用するアルカリ金属炭酸塩の量が大きいと、分解後の中和に要する酸の量が増加して、製造効率が低下する傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対するアルカリ金属炭酸塩のモル比は、1以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい。
[アルキルアミン]
アルキルアミンは、アンモニアの少なくとも1つの水素原子がアルキル基で置換された化合物である。アルキルアミンの中でも1級アミンであるモノアルキルアミンはポリカーボネート樹脂のカーボネート結合部分と反応してイソシアネートを生成するので、より好ましくは2級アミンであるジアルキルアミン及び3級アミンであるトリアルキルアミンである。
2級アミンであるジアルキルアミンはポリカーボネート樹脂のカーボネート結合部分と反応してテトラアルキル尿素を生成するので、更に好ましくは3級アミンであるトリアルキルアミンである。
アルキルアミンは、200℃以下の沸点のものが好ましく、160℃以下の沸点のものがより好ましい。このような沸点であれば、フェノールなどの芳香族モノアルコールと共に減圧加熱により除去することができる。また、沸点が低すぎると、分解反応中にアルキルアミンが揮発し分解速度が低下する場合があるため、アルキルアミンの沸点は、10℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましい。
アルキルアミンは、一般式(I)で示されるものであることが好ましい。
Figure 2022085144000003
一般式(I)中、RAは、炭素数1~3のアルキル基を表し、RB~RCは、それぞれに独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。
Aは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基が好ましく、RB~RCは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、又はイソプロピル基が好ましい。
一般式(I)で示されるアルキルアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
使用するポリカーボネート樹脂に対して使用するアルキルアミンの量が小さいと分解速度が遅くなり、分解時間が長時間化して、効率が悪化する傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対するアルキルアミンのモル比((使用するアルキルアミンの質量[g]/アルキルアミンの分子量[g/mol])/(使用するポリカーボネート樹脂の質量[g]/繰り返し単位の分子量[g/mol]))は、0.0001以上が好ましく、0.0005以上がより好ましく、0.0007以上が更に好ましい。使用するポリカーボネート樹脂に対して使用するアルキルアミンの量が大きいと、アミン臭がより発生しやすくなったり、炭酸アルキレンが生成しにくくなる。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対するアルキルアミンのモル比は、1モル以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい。
[酸]
酸としては、塩酸や硫酸、リン酸などの無機酸、および、カルボン酸やスルホン酸などの有機酸が挙げられる。好ましくは、塩酸、硫酸、リン酸及びスルホン酸からなる群から選択されるいずれかである。スルホン酸としては、メタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸などが挙げられる。
使用するポリカーボネート樹脂に対して使用する酸の量が小さいと分解速度が遅くなり、分解時間が長時間化して、効率が悪化する傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対する酸のモル比((使用する酸の質量[g]/酸の分子量[g/mol])/(使用するポリカーボネート樹脂の質量[g]/繰り返し単位の分子量[g/mol]))は、0.0001モル以上が好ましく、0.0005以上がより好ましく、0.0007以上が更に好ましい。使用するポリカーボネート樹脂に対して使用する酸の量が大きいと、分解後の中和に要する塩基の量が増加して、製造効率が低下する傾向にある。そのため、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対する酸のモル比は、1以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下が更に好ましい。
(反応液の調製)
調製工程で調製される反応液は、ポリカーボネート樹脂、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒を含む。ポリカーボネート樹脂を完全に溶解させなくても、芳香族モノアルコールとグリコールを併用することで、ポリカーボネート樹脂の分解反応が進行するため、調製される反応液はスラリー状とすることができる。芳香族モノアルコールおよびグリコールを含む溶媒中にポリカーボネート樹脂を分散させたスラリー状の反応液を調製し、スラリー状の反応液中でポリカーボネート樹脂を分解させることで、溶解度分だけ溶解したポリカーボネート樹脂のみが分解反応に関与し、急激に分解反応が進行することなく、安定して反応を進行させることができるため、反応の制御がしやすく好ましい。
反応液中のスラリー濃度(反応液中の固形分の質量/反応液の質量)は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましい。また、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。スラリー濃度(固形分の濃度)が低すぎると分解効率が低下し、スラリー濃度が高すぎると混合不良となる。
調製される反応液中の液体成分は、芳香族モノアルコール及びグリコールを主成分とするものであり、液体成分の質量に対する芳香族モノアルコール及びグリコールの合計質量は、0.8以上や0.9以上、0.95以上などである。
ビスフェノールと共に炭酸アルキレンを得ようとする場合、反応液中に水を含むと炭酸アルキレンが分解されやすくなる。そのため、反応液中の水の含有量(水の質量/反応液の質量)は、通常、0.5以下である。反応液中の水の含有量は0.1以下が好ましく、0.05以下がより好ましい。
反応液の調製は、10℃以上で行うことが好ましく、20℃以上で行うことがより好ましい。また、反応液の調製は、40℃以下で行うことが好ましく、35℃以下が行うことがより好ましい。反応液調製時の温度が低すぎると芳香族モノアルコールの種類によっては固化しやすくなり、混合不良が生じやすくなったり、均一に混合することが困難になる場合がある。また、反応液の調製時の温度が高すぎると、触媒の種類によっては揮発しやすく、所定濃度に調製することや分解反応の制御が困難になるおそれもある。
ポリカーボネート樹脂、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒の混合順は特に限定されず、例えば、ポリカーボネート樹脂に、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒を順次供給してもよいし、芳香族モノアルコールに、ポリカーボネート樹脂、グリコール及び触媒を順次供給してもよい。より均一に混合できるため、ポリカーボネート樹脂は、芳香族モノアルコール及び/又はグリコールの後に反応槽に供給することが好ましい。
<分解反応工程>
本発明のビスフェノールの製造方法は、調製工程で調製した反応液中で前記ポリカーボネート樹脂をビスフェノールと炭酸アルキレンに分解させる分解反応工程を有する。分解反応工程では、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒の存在により、ポリカーボネート樹脂のカーボネート結合部分が切断され、ビスフェノールと炭酸アルキレンが生成される。例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコールを用いる場合は、以下の反応式(2)に示す反応が起こる。なお、反応式(2)において、R1~R6は、上記一般式(1)のと同義であり、R7は、水素原子又はメチル基である。
Figure 2022085144000004
分解反応は、常圧下で行っても加圧下で行ってもよいが、常圧下でも十分に反応は進行するため、常圧下で行うことが好ましい。
(反応温度)
分解反応は、反応液の調製時の温度と同じ温度で行ってもよいが、反応液を調製後に所定の反応温度に昇温して行うことが好ましい。反応液の調製時の温度が高すぎると分解反応の制御が困難になるおそれがある。反応液を調製後に昇温して分解反応を行うことで、分解反応を安定に進行させることができるため好ましい。
反応温度は、芳香族モノアルコールの種類や反応時間等に応じて適宜選択されるものであるが、高温の場合は反応液中のグリコールが蒸発してしまい、グリコリシスが停止する。また、低温の場合は、芳香族モノアルコールが固化したり、加溶媒分解が進行しにくくなり反応速度が低下したりするため、分解に要する時間が長時間化する。これらのことから、反応温度は、60℃以上が好ましく、70℃以上、75℃以上、80℃以上の順で数値が大きくなる程より好ましい。また、150℃以下が好ましく、130℃以下、110℃以下、100℃以下、95℃以下の順で数値が小さくなる程より好ましい。
なお、反応液の調製時と同じ温度で反応を行う場合、反応温度は、ポリカーボネート樹脂、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒の混合が完了した時点から、分解反応を停止させるための中和や留去の操作を始める時点までの平均の温度である。また、反応液調製後に昇温を行い、反応を行う場合は、所定の温度に到達した時点から、分解反応を停止させるための中和や留去の操作を始める時点までの平均の温度である。
(反応時間)
反応時間は、スラリー濃度や反応温度等に応じて適宜選択されるものであるが、長い場合は生成したビスフェノールが分解する傾向にあることから、30時間以下が好ましく、25時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下、5時間以下の順で数値が小さくなる程より好ましい。また、反応時間が短い場合は分解反応が十分に進行しない場合があるため、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上である。
なお、反応時間は、ポリカーボネート樹脂、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒の混合が完了した時点から、分解反応を停止させるための中和や留去の操作を始める時点までの時間である。反応時間の終点は、液体クロマトグラフィーなどで分解反応を追跡して決定してもよい。
<ビスフェノール回収工程>
本発明のビスフェノールの製造方法は、分解反応工程で得られたビスフェノールを回収するビスフェノール回収工程を有する。分解反応後の反応液からのビスフェノールの回収は、ポリカーボネート樹脂の分解反応を停止させた後、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの手段により行うことができる。
(ポリカーボネート樹脂の分解反応の停止方法)
ポリカーボネート樹脂の分解反応の停止方法は、用いる触媒の種類によって、適宜選択される。触媒として、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩又は酸が使用される場合は、中和などにより分解反応を停止することができる。また、触媒として、アルキルアミンが使用される場合は、アルキルアミンを留去や中和することにより、分解反応を停止することができる。酸を供給して中和によりアルキルアミンを除去する方法では、アンモニウム塩が発生し、その除去も必要となることから、アルキルアミンの除去は、好ましくは留去する方法である。
ビスフェノール回収工程は、晶析によりビスフェノールを回収する晶析工程を有することが好ましい。具体的には、ポリカーボネート樹脂の分解反応後、反応液からの触媒及び溶媒の除去や有機溶媒の混合を行い得られた有機相を、水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて塩化アンモニウム水などで中和洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。
中和時や晶析時に用いることのできる有機溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール等の脂肪族アルコールなどを用いることができる。
なお、該晶析前に蒸留により余剰の芳香族モノアルコールや有機溶媒を留去してから晶析させてもよい。また、ビスフェノールAは、フェノールの存在下で晶析すると、フェノールと共結晶を形成する。フェノールを用いてビスフェノールAに由来する繰り返し単位(上記一般式(1)のR1~R6が水素原子である繰り返し単位)を含有するポリカーボネート樹脂を分解させた場合、共結晶としないためには、晶析前にフェノールを留去する必要がある。
<炭酸アルキレン回収工程>
本発明のビスフェノールの製造方法では、分解反応工程で得られた炭酸アルキレンを回収する炭酸アルキレン回収工程を有してもよい。炭酸アルキレンの回収(単離、精製)は、常法により行うことが出来る。例えば、反応液または反応液を中和した後の有機相を蒸留する方法が挙げられる。蒸留は、例えば10~101kPa、100~250℃の条件とすることができる。
以下、芳香族モノアルコールとしてフェノールを用い、グリコールとしてエチレングリコールを用い、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)に由来する繰り返し単位を含有するポリカーボネート樹脂をビスフェノールAと炭酸エチレンに分解することでビスフェノールAを製造する、ビスフェノールの製造方法(A)~(C)を例として、本発明のビスフェノールの製造方法をより具体的に説明する。
<ビスフェノールの製造方法(A)>
ビスフェノールの製造方法(A)は、ビスフェノールAに由来する繰り返し単位を含有するポリカーボネート樹脂、フェノール、エチレングリコール、及び、触媒としてアルカリ金属水酸化物を含む反応液を調製する工程(A1)と、反応液中でポリカーボネート樹脂を分解させる工程(A2)と、工程(A2)後の反応液を中和し、ビスフェノールAが溶解した有機相を得る工程(A3)と、工程(A3)で得られた有機相を減圧加熱した後、晶析によりビスフェノールAを回収する工程(A4)を有する。
本発明のビスフェノールの製造方法(A)は、工程(A1)が調製工程であり、工程(A2)が分解反応工程であり、工程(A3)および工程(A4)がビスフェノール回収工程である。
工程(A3)では、反応液と酸と水とを混合し中和した後、油水分離させ、分離した水相を除去する。アルカリ金属水酸化物等(アルカリ金属水酸化物や、中和のために加えた酸、中和により生じた塩)は水相に含まれるため、水相を除去すればアルカリ金属水酸化物等を除去できる。また、エチレングリコールも水と混和するため、水相に除去される。これにより、生成したビスフェノールAが溶解した有機相が得られる。
中和に用いられる酸としては、塩酸や硫酸、リン酸などが挙げられる。酸の混合による中和は、反応液のpHが7よりも小さくなるようしても、pH7よりも大きくなるようにしてもよいが、pHが7よりも小さくなると、単離されるビスフェノールAの品質が低下するおそれがある。そのため、酸の混合は、反応液のpHが7よりも大きいところ(例えば、pH7.5以上やpH8.0以上)が終点となるように行うことが好ましい。一方で、反応液のpHが高すぎるとすると、炭酸アルキレンが加水分解しやすくなり、炭酸ジアルキルを回収する場合の収率が低下するため、pH10以下となるように酸の混合は行われ、pH9.5以下とすることが好ましい。
また、酸を混合する前又は後に、芳香族炭化水素などの有機溶媒を混合してもよい。反応液に酸、水及び有機溶媒を混合し中和を行った後、油水分離させ、水相を除去することで、ビスフェノールAが溶解した有機相が得られる。有機溶媒を混合することで、油水分離させやすくなるため、アルカリ金属水酸化物等が溶解した水相の除去がより容易になる。
工程(A4)では、工程(A3)で得られた有機相を減圧加熱した後、晶析によりビスフェノールAを回収する。ビスフェノールAは、晶析時にフェノールが存在する場合、フェノールと共結晶を形成し、析出するため、ビスフェノールAを得るために、工程(A4)では晶析前にフェノールを除去する。
具体的には、工程(A3)で得られる有機相を減圧加熱して、フェノール、炭酸エチレンなどの液体成分を留去し、ビスフェノールAの粗生成物を得る。次いで、ビスフェノールAの粗生成物に芳香族炭化水素などの有機溶媒を加えて、ビスフェノールAが溶解した晶析用溶液を調製した後、これを冷却してビスフェノールAを析出させる。析出したビスフェノールAを、固液分離により回収する。
また、工程(A3)で得られる有機相を減圧加熱し、液体成分を留去する際の圧力と温度を制御することで、炭酸エチレンを回収することができる。例えば、常圧下(101kPa)で、工程(A3)で得られる有機相を蒸留装置に移した後、80~250℃(好ましくは100~250℃)まで昇温する、及び/又は、10~100kPaまで減圧することで、フェノールが留去され、次いで、炭酸エチレンが留去される。炭酸エチレンの留分を回収することで、炭酸エチレンを得ることができる。得られた炭酸エチレンは、更に蒸留してもよい。
また、触媒としてアルカリ金属炭酸塩を用いる場合も、ビスフェノールの製造方法(A)と同様の方法で実施することができる。
<ビスフェノールの製造方法(B)>
ビスフェノールの製造方法(B)は、ビスフェノールAに由来する繰り返し単位を含有するポリカーボネート樹脂、フェノール、エチレングリコール、及び、触媒としてアルキルアミンを含む反応液を調製する工程(B1)と、反応液中でポリカーボネート樹脂を分解させる工程(B2)と、工程(B2)後の反応液を減圧加熱した後、晶析によりビスフェノールAを回収する工程(B3)を有する。
本発明のビスフェノールの製造方法(B)は、工程(B1)が調製工程であり、工程(B2)が分解反応工程であり、工程(B3)がビスフェノール回収工程である。
工程(B3)は、具体的には、工程(B2)後の反応液を減圧加熱して、アルキルアミンやフェノール、エチレングリコール、炭酸エチレンなどの液体成分を留去し、ビスフェノールAの粗生成物を得る。次いで、ビスフェノールAの粗生成物に芳香族炭化水素などの有機溶媒を加えて、ビスフェノールAが溶解した晶析用溶液を調製した後、これを冷却してビスフェノールAを析出させる。析出したビスフェノールAを、固液分離により回収する。
また、工程(B2)後の反応液を減圧加熱し、液体成分を留去する際の圧力と温度を制御することで、炭酸エチレンを回収することができる。例えば、常圧下(101kPa)で、工程(B2)後の反応液を蒸留装置に移した後、80~250℃(好ましくは100~250℃)まで昇温する、及び/又は、10~100kPaまで減圧することで、エチレングリコール、炭酸エチレン、アルキルアミン、フェノールが沸点の低い順に留去される。
なお、触媒としてアルキルアミンを用いる場合、酸を供給して中和する方法を用いてアルキルアミンを除去してもよい。この場合、ビスフェノールの製造方法(A)の工程(A3)のように、分解反応後の反応液に酸及び水を混合し中和した後、油水分離させ、水相を除去することで、ビスフェノールAが溶解した有機相を得る。次いで、ビスフェノールの製造方法(A)の工程(A4)のように、得られる有機相を減圧加熱し、晶析によりビスフェノールAが回収できる。
このように、ポリカーボネート樹脂の分解反応液から、アルキルアミンの除去としては、留去する方法、酸を供給して中和する方法が挙げられるが、酸を供給して中和する方法では、アンモニウム塩が発生し、その除去も必要となることから、好ましくは留去する方法である。触媒としてアルキルアミンを用いることで、減圧加熱によりフェノールともにアルキルアミンを除去することができ、中和を必須としないため、精製を簡略化することができる。
<ビスフェノールの製造方法(C)>
ビスフェノールの製造方法(C)は、ビスフェノールAに由来する繰り返し単位を含有するポリカーボネート樹脂、フェノール、エチレングリコール、及び、触媒として酸を含む反応液を調製する工程(C1)と、反応液中でポリカーボネート樹脂を分解させる工程(C2)と、工程(C2)後の反応液を中和し、ビスフェノールAが溶解した有機相を得る工程(C3)と、工程(C3)で得られた有機相を減圧加熱した後、晶析によりビスフェノールAを回収する工程(C4)を有する。
本発明のビスフェノールの製造方法(C)は、工程(C1)が調製工程であり、工程(C2)が分解反応工程であり、工程(C3)および工程(C4)がビスフェノール回収工程である。
工程(C3)では、反応液と塩基と水とを混合し中和した後、油水分離させ、分離した水相を除去し、ビスフェノールAが溶解した有機相を得る。また、反応液と塩基と水と有機溶媒の混合液を油水分離させ、水相を除去することで、ビスフェノールAが溶解した有機相を得てもよい。
中和に用いられる塩基としては、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。中和は、ビスフェノールの製造方法(A)の工程(A3)と同様に、反応液のpHが7よりも大きいところが終点となるように行うことが好ましい。例えば、pH7.5以上やpH8.0以上となるように塩基を混合することが好ましい。また、pH10以下やpH9.5以下となるように塩基を混合することが好ましい。
工程(C4)では、工程(C3)で得られるビスフェノールAが溶解した有機相からビスフェノールAを回収する。ビスフェノールの製造方法(A)の工程(A4)と同様に、工程(C3)で得られた有機相を減圧加熱した後、晶析によりビスフェノールAを回収できる。
また、工程(C3)の減圧加熱の際の圧力と温度を制御することで、ビスフェノールの製造方法(A)と同様に炭酸エチレンを回収することができる。
なお、ビスフェノールの製造方法(A)~(C)は、芳香族モノアルコールとしてフェノールを用いた例であるが、芳香族モノアルコールとして、クレゾールやキシレノールなどのフェノール以外の芳香族モノアルコールを用いる場合には、ビスフェノールAは共結晶を形成しないため、工程(A4)や工程(B3)、工程(C4)の減圧加熱による芳香族モノアルコールの除去は必須ではない。この場合、工程(B2)後の反応液や、工程(A3)、工程(C3)で得られる有機相を冷却して、ビスフェノールAを析出させることで、ビスフェノールAを回収することができる。クレゾールやキシレノールを用いることで、ビスフェノールAの精製を簡略化することができる。
また、ビスフェノールAを、ビスフェノールAとフェノールの共結晶として回収してもよい。この場合、フェノールを留去せずに、工程(B2)後の反応液や工程(A3)、工程(C3)で得られる有機相を冷却して、ビスフェノールAとフェノールの共結晶を析出させ、回収する。
また、上記の通り、本発明のビスフェノールの製造方法に用いられるポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールAに由来する繰り返し単位を含有するポリカーボネート樹脂に限定されない。ビスフェノールA以外のビスフェノールに由来する繰り返し単位を含有するポリカーボネート樹脂を用いた本発明のビスフェノールの製造方法も、上記のビスフェノールの製造方法(A)~(C)と同様に適宜実施することができる。
<ビスフェノールの用途>
本発明のビスフェノールの製造方法で得られるビスフェノール(以下、「再生ビスフェノール」と記載する場合がある。)は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できるため、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマ-)として用いることが好ましく、中でもポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
<再生ポリカーボネート樹脂の製造方法>
また、本発明は、本発明のビスフェノールの製造方法で得られたビスフェノール(再生ビスフェノール)を含むビスフェノール原料を用いて、再生ポリカーボネート樹脂を製造する、再生ポリカーボネート樹脂の製造方法(以下、「本発明の再生ポリカーボネート樹脂の製造方法」と記載する場合がある。)に関するものである。本発明の再生ポリカーボネート樹脂の製造方法は、廃プラスチック等に含まれるポリカーボネート樹脂をモノマーであるビスフェノールまで分解して得られる再生ビスフェノールを原料としてポリカーボネート樹脂を製造するケミカルリサイクル方法を利用するものである。
再生ポリカーボネート樹脂は、具体的には、再生ビスフェノール(本発明のビスフェノールの製造方法により、ポリカーボネート樹脂を分解することによって得られた再生ビスフェノール)を含むビスフェノール原料と炭酸ジエステル原料とを重合させることで得ることができる。重合は公知の方法を適宜選択して行うことができる。
例えば、再生ビスフェノールを含むビスフェノール原料と、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステル原料とを、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより再生ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
再生ビスフェノールは、ビスフェノール原料の全部として使用しても良いし、再生ビスフェノールでない一般のビスフェノールと混合してビスフェノール原料の一部として使用しても良い。再生ビスフェノールの量に特に限定はないが、再生ビスフェノールの割合が多いほど、環境に優しい。そのため、環境への配慮の観点からは、ビスフェノール原料に対する再生ビスフェノールの量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上の順で大きい程より好ましい。
上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に炭酸ジエステル原料として炭酸ジフェニルを用いた方法の一例を説明する。
上記の再生ポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノール原料に対して過剰量用いることが好ましい。該ビスフェノール原料に対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造された再生ポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では大きいことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量の再生ポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、ビスフェノール原料1モルに対する使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上であり、また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
原料の供給方法としては、ビスフェノール原料及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノール原料とのエステル交換反応で再生ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
ビスフェノール原料又は炭酸ジフェニル1モルに対して用いられる触媒量は、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、さらに好ましくは0.10μモル以上であり、また、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、さらに好ましくは20μモル以下である。
触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量の再生ポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れたポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法により再生ポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法による再生ポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
得られた再生ポリカーボネート樹脂は、そのまま用いてもよいし、未使用のポリカーボネート樹脂と再生ポリカーボネート樹脂とを含む再生ポリカーボネート樹脂組成物として用いてもよい。再生ポリカーボネート樹脂組成物は、公知の混練方法等を適宜選択して、未使用のポリカーボネート樹脂と再生ポリカーボネート樹脂とを混合することで得ることができる。未使用のポリカーボネート樹脂と再生ポリカーボネート樹脂とを含む再生ポリカーボネート樹脂組成物とする場合、再生ポリカーボネート樹脂の量に特に限定はないが、再生ポリカーボネート樹脂の割合が多いほど、環境に優しい。そのため、環境への配慮の観点からは、再生ポリカーボネート樹脂組成物に対する再生ポリカーボネート樹脂の量は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上の順で大きい程より好ましい。
得られた再生ポリカーボネート樹脂や組成物は、未使用のポリカーボネート樹脂と同様に、光学部材や光学記録媒体などの各種成形品に成形加工することができる。
以下、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
ポリカーボネート樹脂は、三菱ケミカルエンジニアリングプラスチックス株式会社のポリカーボネート樹脂「NOVAREX(登録商標)M7027BF」を使用した。
フェノール、トルエン、水酸化ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチルアミン、アセトニトリル、及び炭酸セシウムは、富士フィルム和光純薬株式会社の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社の製品を使用した。
[分析]
ビスフェノールの生成確認と純度は、高速液体クロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製LC-2010A、Waters社 5μm 150mm×4.6mmID
・方式:低圧グラジェント法
・分析温度:40℃
・溶離液組成:
A液 アセトニトリル
B液 85%リン酸:水=1mL:999mLの溶液
分析時間0分では、A液:B液=35:65(体積比、以下同様。)、分析時間0~5分は溶離液組成をA液:B液=35:65とした後、分析時間5~40分で徐々にA液:B液=90:10にした。
・流速:0.85mL/分
・検出波長:280nm
炭酸エチレン、炭酸プロピレンの分析は、ガスクロマトグラフィーにより、以下の手順と条件で行った。
・装置:島津製作所社製 GC-2014
Agilent DB-1 0.530mm×30m 1.5μm
・検出方法:FID
・気化室温度:230℃
・検出器温度:300℃
・分析時間0分から5分では、カラム温度を50℃に保ち、分析時間5~30分はカラム温度を280℃まで徐々に昇温し、分析時間30分から40分はカラム温度を280℃に維持した。
・定量法:ビフェニルを内部標準とした内部標準方法
[粘度平均分子量(Mv)]
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
[ビスフェノールの溶融色]
ビスフェノールの溶融色は、日電理化硝子社製試験管「P-24」(2mmφ×200mm)にビスフェノールを20g入れて、174℃で30分溶融させ、日本電色工業社製「OME7700」を用い、そのハーゼン色数を測定した。
[pHの測定]
pHの測定は、株式会社堀場製作所pH計「pH METER ES-73」を用いて、フラスコから取り出した25℃の水相に対して実施した。
[実施例1]
(調製工程)
ジムロート冷却管、攪拌翼、温度計を備えたジャケット式セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、ポリカーボネート樹脂80g(ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位の分子量は254g/モルであるので、繰り返し単位のモル数=80g÷254g/モル=0.31モル)、フェノール240g、エチレングリコール35g(0.56モル、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対するエチレングリコールのモル比=0.56モル÷0.31モル=1.8)、水酸化ナトリウム2g(2g÷40g/モル=0.05モル)を室温で入れた(液量は、80g+240g+35g+2g=357g)。
(分解反応工程)
その後、内温を85℃に昇温した。85℃に到達した時の反応液には、未溶解分のポリカーボネート樹脂が見られた(スラリー状であった)。そのまま、85℃を維持したまま4時間反応させて均一の反応液を得た。
得られた反応液の一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAが19.4質量%(19.4÷100×357g÷228g/モル÷0.31モル=98モル%)生成していることを確認した。また、炭酸エチレンの生成も確認した。
[実施例2]
実施例1において、エチレングリコール35gの代わりに、プロピレングリコール43g(0.56モル)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた反応液の一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAが19.6質量%(19.6÷100×365g÷228g/モル÷0.31モル=100モル%)生成していることを確認した。また、炭酸プロピレンの生成も確認した。
[実施例3]
実施例1において、水酸化ナトリウム2gの代わりに、パラトルエンスルホン酸20g(0.12モル)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた反応液の一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAが10.2質量%(10.2÷100×375g÷228g/モル÷0.31モル=54モル%)生成していることを確認した。また、炭酸エチレンの生成も確認した。
[実施例4]
(調製工程)
ジムロート冷却管、攪拌翼、温度計を備えたジャケット式セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、ポリカーボネート樹脂80g(0.31モル)、フェノール240g、エチレングリコール35g(0.56モル、ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対するエチレングリコールのモル比=1.8)、トリエチルアミン8g(8g÷101g/モル=0.08モル)を室温で入れた(液量は、80g+240g+35g+8g=363g)。
(分解反応工程)
その後、内温を85℃に昇温した。85℃に到達した時の反応液には、未溶解分のポリカーボネート樹脂が見られた(スラリー状であった)。そのまま、85℃を維持したまま4時間反応させて均一の反応液を得た。
得られた反応液の一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAが19.0質量%(19.0÷100×363g÷228g/モル÷0.31モル=98モル%)生成していることを確認した。
また、得られた反応液の一部を、ガスクロマトグラフィーで組成を確認したところ、炭酸エチレンが6.9質量%(6.9÷100×363g÷88g/モル÷0.31モル=92モル%)生成していることを確認した。
(ビスフェノール回収工程および炭酸アルキレン回収工程)
得られた反応液を、温度計、攪拌翼、留出管、及び圧力調整機を備えた蒸留装置に移し、留出量を見ながら、内温を徐々に180℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に100kPaまで下げて、トリエチルアミン、フェノールを留去させた。更に、10kPaまで下げて、炭酸エチレンを留出させて、炭酸エチレン14gを得た。
その後、フラスコ内を窒素で復圧して、内温を80℃まで降温させ、トルエン200gを加えて、有機相1を得た。得られた有機相1を脱塩水50gで5回洗浄し、有機相2を得た。
得られた有機相2を20℃まで降温し、スラリーを得た。得られたスラリーを濾過して、ケーキを得た。得られたケーキを、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA32gを得た。
得られたビスフェノールAの純度は99.8質量%、溶融色はAPHA181であった。
[比較例1]
実施例4において、フェノール240gを入れず、エチレングリコール35gの代わりにエチレングリコール275gを入れた以外は、実施例4と同様に実施した。85℃を維持したまま4時間反応させたが、ポリカーボネート樹脂の固形分が残っていた。得られた反応液の一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAが痕跡量見られ、分解が進行していないことが確認された。
[比較例2]
実施例4において、エチレングリコール35gを入れず、トリエチルアミン8gの代わりにトリエチルアミン15gを入れた以外は、実施例4と同様に実施した。
得られた反応液の一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAが8.5質量%(8.5÷100×335g÷228g/モル÷0.31モル=40モル%)生成していることを確認した。
実施例1~4及び比較例1、2において、芳香族モノアルコール、グリコールおよび触媒の種類、ビスフェノールAの生成率について、表1に纏めた。表1より、フェノールとグリコールを用いることで、効率的にポリカーボネート樹脂が分解され、ビスフェノールAが得られることが分かる。
Figure 2022085144000005
[実施例5]
撹拌機及び留出管を備えた内容量45mLのガラス製反応槽に、実施例4で得られたビスフェノールA10.00g(0.04モル)、炭酸ジフェニル9.95g(0.05モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液18μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を220℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
撹拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールAと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。
続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。
その後、反応槽外部温度を290℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。
その後、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の撹拌機が予め定めた所定の撹拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。290℃に昇温してから重合を終了するまでの時間は120分であった。
次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽からポリカーボネート樹脂を抜出し、ポリカーボネート樹脂を得た。得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は27100であった。
本発明のビスフェノールの製造方法によれば、ケミカルリサイクルを利用して廃プラスチック等からビスフェノールを得ることができる。更に、これを用いて、再度、ポリカーボネート樹脂を製造することができ、産業上有用である。

Claims (12)

  1. ポリカーボネート樹脂、芳香族モノアルコール、グリコール及び触媒を含む反応液を調製する調製工程と、
    前記調製工程で調製した反応液中で前記ポリカーボネート樹脂をビスフェノールと炭酸アルキレンに分解させる分解反応工程と、
    前記分解反応工程で得られたビスフェノールを回収するビスフェノール回収工程とを、有するビスフェノールの製造方法。
  2. 前記触媒が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルキルアミン及び酸からなる群から選択されるいずれかである、請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
  3. 前記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムである、請求項2に記載のビスフェノールの製造方法。
  4. 前記アルキルアミンが、下記式(I)で示される、請求項2に記載のビスフェノールの製造方法。
    Figure 2022085144000006
    式中、RAは、炭素数1~3のアルキル基を表し、RB~RCは、それぞれに独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。
  5. 前記アルキルアミンが、第三級アミンである、請求項2または4に記載のビスフェノールの製造方法。
  6. 前記酸が、塩酸、硫酸、リン酸及びスルホン酸からなる群から選択されるいずれかである、請求項2に記載のビスフェノールの製造方法。
  7. 前記芳香族モノアルコールが、フェノール、クレゾール及びキシレノールからなる群から選択されるいずれかである、請求項1から6のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
  8. 前記グリコールが、エチレングリコール又はプロピレングリコールである、請求項1から7のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
  9. 前記ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位1モルに対する、前記グリコールのモル比が、1.0以上2.0以下である、請求項1から8のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
  10. 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである、請求項1から9のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
  11. 前記分解反応工程で得られた炭酸アルキレンを回収する炭酸アルキレン回収工程を有する、請求項1から10のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
  12. 請求項1から11のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法で得られたビスフェノールを含むビスフェノール原料を用いて、再生ポリカーボネート樹脂を製造する、再生ポリカーボネート樹脂の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2024048494A1 (ja) * 2022-08-29 2024-03-07 三菱ケミカル株式会社 ビスフェノールの製造方法、及び、ポリカーボネート樹脂の製造方法
WO2024106999A1 (ko) * 2022-11-18 2024-05-23 주식회사 엘지화학 재활용 고리형 카보네이트 조성물 및 이의 제조방법

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