JP2024032229A - ビスフェノールの製造方法及び再生ポリカーボネート樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】色調に優れたビスフェノールを得ることができる、ビスフェノールの製造方法を提供する。【解決手段】ポリカーボネート樹脂を、(i)分解剤としての機能を有する有機溶媒、触媒及びチオールの存在下、又は(ii)分解剤としての機能を有さない有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの存在下で、解重合し、ビスフェノールを含有する分解液を得る分解工程を有する、ビスフェノールの製造方法であり、前記チオールが、前記有機溶媒に溶解し、かつ、前記有機溶媒の沸点よりも10℃以上高い沸点を有することを特徴とする、ビスフェノールの製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂の再生に関するものである。本発明は、ポリカーボネート樹脂を原料とするビスフェノールの製造方法及び前記ビスフェノールの製造方法により得られたビスフェノールを用いるポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
プラスチックはその優れた機能、性質から現代社会において必要不可欠なものであり、我が国のみならず世界中で大量に生産、消費されている。持続的な開発の為には消費後のプラスチック資源の循環が重要であり、その手段として、消費後のプラスチックを、プラスチック製品の原料に再生するマテリアルリサイクル、化学原料に再生するケミカルリサイクル、エネルギー源として用いるサーマルリサイクルといった大きく3つの方法が挙げられる。
我が国における各リサイクル法による廃プラスチックの有効利用率はサーマルリサイクルが最も高い。プラスチックを燃焼させる際に発生する発熱量は石炭や石油と遜色なく、その熱量は発電等に有効利用される。しかし、欧米ではサーマルリサイクルはリサイクルとみなされない場合が多く、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの更なる推進が求められており、特にケミカルリサイクルが重要である。
リサイクルを繰り返す毎に劣化が避けられないマテリアルリサイクルに対し、ケミカルリサイクルはモノマーまで分解精製するため、再生プラスチック製品の品質維持が期待できる。また、複数の材料からなるシートやフィルム等にも対応可能であり、マテリアルリサイクルよりも受け入れ可能な廃プラスチックの制限が緩いという利点がある。
透明性、機械物性、難燃性、寸法安定性、電気特性により、幅広い分野で用いられるポリカーボネート樹脂も例外ではなく、他のプラスチックと同様に、資源の循環が求められている。
ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールユニットとカーボネートユニットとの繰り返し構造を有する。ケミカルリサイクルでは、ポリカーボネート樹脂を化学的に分解することで、ビスフェノールユニットと、カーボネートユニットとを回収することができる。
そして、カーボネートユニットの回収方法により分解の方法が異なり、カーボネートを二酸化炭素として回収する加水分解法(特許文献1~3)、炭酸ジフェニルとして回収するフェノリシス(特許文献4及び5)、炭酸ジアルキルとして回収するアルコリシス、イミダゾリジノンとして回収するアミノリシス等、様々な分解法が知られている。
特公昭40-16536号公報 国際公開第2006/114893号 特開2011-195514号公報 特開平7-196582号公報 特開平7-316280号公報
リサイクルの目的は、資源の循環利用と環境負荷の低減である。ポリカーボネート樹脂のケミカルリサイクルは、天然資源である石油の消費を抑制することができる、重要な技術の一つであるが、ケミカルリサイクルを実施する場合には環境負荷にも留意しなければならない。
特許文献1の実施例1によれば、ポリカーボネート樹脂を180~185℃で加水分解させており、比熱の大きい水を沸点以上まで加熱するために多くのエネルギーを消費している。
そこで、本発明者らは、フェノールやクレゾールといった芳香族モノアルコールや、炭酸ジメチルや炭酸ジエチルといった炭酸ジアルキルを溶媒として用い、常圧、100℃以下の温和な条件においてポリカーボネート樹脂を分解する、環境負荷が小さい分解方法の開発に着手した。しかし、ポリカーボネート樹脂を解重合する際、分解液が徐々に着色し、得られるビスフェノールの色調が悪化する問題が顕在化した。光学用途においては、ポリカーボネート樹脂は無色であり、かつ高い透明性が求められる。その原料であるビスフェノールについても同様であり、ポリカーボネート樹脂を解重合して得るビスフェノールの色調改善はケミカルリサイクルにおける重要な課題である。
これを解決するため、特許文献3の実施例1に倣い、ポリカーボネート樹脂の解重合の際、ハイドロサルファイトナトリウムを添加し、分解液の着色の防止を試みた。ハイドロサルファイトナトリウムを添加したところ、分解液の色調は改善されたが、分解液を濃縮する工程で激しく着色が生じた。これはハイドロサルファイトナトリウムが熱分解し失活したためと推定される。
つまり、ハイドロサルファイトナトリウムは塩化メチレンのような沸点が非常に低い溶媒下でのみ使用可能であり、前述した芳香族モノアルコールや炭酸ジアルキルといった比較的沸点が高い溶媒下では使用できないことが示唆された。また、ハイドロサルファイトナトリウムは熱分解する際、SO2を発生させる。加水分解で副生する二酸化炭素を回収する場合、ハイドロサルファイトナトリウム由来のSO2が二酸化炭素に混入し純度を低下させるため好ましくない。更に、無機系の酸化防止剤は有機溶媒に溶解しにくく、水を使用しないアルコリシスやフェノリシス、グリコリシスといった分解法にも不適である。
かかる状況下、本発明は、色調に優れたビスフェノールを得ることができる、ビスフェノールの製造方法を提供することを目的とする。また、得られたビスフェノールを原料とした再生ポリカーボネート樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、有機溶媒存在下でポリカーボネート樹脂を解重合する際、使用する有機溶媒の沸点よりも高い沸点を有するチオール類の存在下でポリカーボネート樹脂の解重合、及び未反応原料を含む溶媒の濃縮工程を実施することで、分解液の色調悪化を防止することが可能であり、色調の良いビスフェノールを製造することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> ポリカーボネート樹脂を、(i)分解剤としての機能を有する有機溶媒、触媒及びチオールの存在下、又は(ii)分解剤としての機能を有さない有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの存在下で、解重合し、ビスフェノールを含有する分解液を得る分解工程を有する、ビスフェノールの製造方法であり、前記チオールが、前記有機溶媒に溶解し、かつ、前記有機溶媒の沸点よりも10℃以上高い沸点を有することを特徴とする、ビスフェノールの製造方法。
<2> 前記チオールが下記一般式(2)で示される、前記<1>に記載のビスフェノールの製造方法。
(Rは、炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を示す。)
<3> 前記チオールの物質量が、前記ポリカーボネート樹脂の質量に対し、0.01mmol/g以上である、前記<1>又は<2>に記載のビスフェノールの製造方法。
<4> 前記ポリカーボネート樹脂が分散したスラリー状の反応液中で解重合させて、スラリー状でない前記ビスフェノールを含有する分解液を得る、前記<1>から<3>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<5> 前記ビスフェノールを含有する分解液を、蒸留及び/又は晶析により、ビスフェノールの濃度を40質量%以上に濃縮する工程を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<6> 前記分解剤が、水、芳香族モノアルコール及び脂肪族モノアルコールからなる群から選ばれる1以上である前記<1>から<5>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<7> 前記分解工程が、ポリカーボネート樹脂を、前記分解剤としての機能を有する有機溶媒、前記触媒及び前記チオールの存在下で、解重合する工程であり、前記分解剤としての機能を有する有機溶媒が、芳香族モノアルコール及び/又は脂肪族モノアルコールである<1>から<5>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<8> 前記分解工程が、ポリカーボネート樹脂を、前記分解剤としての機能を有さない有機溶媒、前記分解剤、前記触媒及び前記チオールの存在下で、解重合する工程であり、前記分解剤としての機能を有さない有機溶媒が、芳香族炭化水素、炭酸ジアルキル、炭酸エステル及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる1以上である前記<1>から<6>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<9> 前記芳香族モノアルコールが、フェノール、クレゾール及びキシレノールからなる群から選ばれるいずれかである前記<6>又は<7>に記載のビスフェノールの製造方法。
<10> 前記炭酸ジアルキルが、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル及び炭酸ジブチルからなる群から選ばれるいずれかである前記<8>に記載のビスフェノールの製造方法。
<11> 前記チオールが、前記ビスフェノールを含有する分解液から、蒸留により回収される、前記<1>から<10>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<12> 前記ビスフェノールを含有する分解液又は前記分解液から前記有機溶媒の一部を除去した濃縮液を晶析した後、ビスフェノールと、前記有機溶媒及び前記チオールを含む母液とに固液分離し、ビスフェノールを回収する工程と、前記母液から前記チオールを回収する工程と、を有する前記<1>から<10>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<13> 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである、前記<1>から<12>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法。
<14> 前記<1>から<13>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法でビスフェノールを得る工程と、得られた前記ビスフェノール含むビスフェノール原料を用いて、再生ポリカーボネート樹脂を製造する工程と、を有する再生ポリカーボネート樹脂の製造方法。
<15> 前記<1>から<13>のいずれかに記載のビスフェノールの製造方法でビスフェノールを得る工程と、得られた前記ビスフェノールを含むビスフェノール原料と、炭酸ジフェニルとを加熱溶融した状態で再生ポリカーボネート樹脂を製造する工程と、を有する再生ポリカーボネート樹脂の製造方法。
本発明によれば、色調に優れたビスフェノールを得ることができる、ビスフェノールの製造方法が提供される。また、得られたビスフェノールを原料とした再生ポリカーボネート樹脂の製造方法が提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施の態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
[ビスフェノールの製造方法]
本発明は、ポリカーボネート樹脂を、(i)分解剤としての機能を有する有機溶媒、触媒及びチオールの存在下、又は(ii)分解剤としての機能を有さない有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの存在下で、解重合し、ビスフェノールを含有する分解液を得る分解工程を有するビスフェノールの製造方法であり、前記チオールが、前記有機溶媒に溶解し、かつ、前記有機溶媒の沸点よりも10℃以上高い沸点を有することを特徴とする、ビスフェノールの製造方法(以下、「本発明のビスフェノールの製造方法」と記載する場合がある。)に関するものである。
本発明のビスフェノールの製造方法は、ポリカーボネート樹脂のケミカルリサイクル方法を利用するものである。
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂を解重合しビスフェノールを得る際、色調に優れたビスフェノールを得るには、解重合の際に特定のチオールを存在させることが適切であることを見出した。ビスフェノールの色調悪化の主なる原因はビスフェノール骨格の酸化反応であり、該チオールはビスフェノールが溶解する有機溶媒に容易に溶解し、ビスフェノールの酸化を効率的に抑制することが可能である。また、該チオールは熱的に安定であり、熱分解し二酸化炭素を含む軽沸成分に混入する懸念が小さい。本発明は、これらの知見に基づくものである。
(ポリカーボネート樹脂)
ポリカーボネート樹脂は、カーボネート結合(-O-C(=O)-O-)を含む重合組成物を含むものである。具体的には、本発明のビスフェノールの製造方法で用いられるポリカーボネート樹脂は、一般式(1)で示される、ビスフェノールに由来する繰り返し単位(以下、単に「繰り返し単位」と記載する場合もある。)を含むポリマーを含むものである。
1~R4としては、それぞれに独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。例えば、水素原子、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
5、R6としては、それぞれに独立に水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基などが挙げられる。例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルへキシル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、i-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ノニルオキシ基、n-デシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、2,6-ジメチルフェニル基などが挙げられる。
5、R6は、2つの基の間で互いに結合又は架橋し、シクロアルキリデン基、フルオレニリデン基(フルオレン9,9-ジイル基)、キサンテニリデン基(キサンテン9,9-ジイル基)、チオキサンテニリデン基(チオキサンテン9,9-ジイル基)などを形成しても良い。シクロアルキリデン基としては、例えば、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、シクロオクチリデン、シクロノニリデン、シクロデシリデン、シクロウンデシリデン、シクロドデシリデンなどが挙げられる。
具体的には、上記一般式(1)で表される繰り返し単位は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタンなどのビスフェノールに由来するものが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
この中でも、上記一般式(1)で表される繰り返し単位は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン及び1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサンからなる群から選択されるいずれかのビスフェノールに由来するものが好ましい。
上記一般式(1)で表される繰り返し単位は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BPA)に由来するものが特に好ましい。すなわち、本発明のビスフェノールの製造方法は、上記一般式(1)のR1~R4が水素原子であり、R5、R6がメチル基であるポリカーボネート樹脂(ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂)を原料として用いることが好適である。
一般式(1)において、nは特に限定はないが、例えば、2~1000である。
本発明のビスフェノールの製造方法の原料としては、ポリカーボネート樹脂単独のものだけでなく、共重合体やポリマーアロイのようにポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含む組成物を用いてもよい。ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含む組成物としては、例えば、ポリカーボネート/ポリエステル共重合体、ポリカーボネート/ポリエステルアロイ、ポリカーボネート/ポリアリレート共重合体、ポリカーボネート/ポリアリレートアロイ等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含む組成物を用いる場合、ポリカーボネート樹脂が主成分である(組成物中にポリカーボネート樹脂を50質量%以上含む)ものが好適に使用できる。
また、ポリカーボネート樹脂は、2種類以上の異なるポリカーボネート樹脂を混合して用いることができる。なお、ポリカーボネート樹脂単独のものは、単にポリカーボネートと呼ばれることがある。
リサイクルの観点から、ポリカーボネート樹脂は、廃プラスチックに含まれるポリカーボネート樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂は、ヘッドランプなどの光学部材や、光学ディスクなどの光学記録媒体などの各種成形品に成形加工されて用いられている。ポリカーボネート樹脂を含む廃プラスチックとして、これらの成形品にポリカーボネート樹脂を成形加工する際の端材や不良品(プレ・コンシューマ材料)、使用済みの成形品(ポスト・コンシューマ材料)などを用いることができる。
廃プラスチックは、適宜、洗浄、破砕、粉砕などをしたものを用いることができる。廃プラスチックの破砕の方法としては、ジョークラッシャや旋回式クラッシャを用いて20cm以下に破砕する粗砕や、旋回式クラッシャ、コーンクラッシャ、ミルを用いて1cm以下まで破砕する中砕、ミルを用いて1mm以下まで破砕する粉砕等であり、分解槽に供給できる大きさまで小さくできれば良い。また、廃プラスチックがCDやDVDのように薄いプラスチックの場合、シュレッダー等を用いて裁断し、分解槽に供給することができる。また、共重合体やポリマーアロイの他の樹脂、光学ディスクの表面や裏面の層のようにポリカーボネート樹脂以外の成分で形成される部分を予め除去して用いてもよい。
(分解剤)
本発明のビスフェノールの製造方法では、分解工程において、ポリカーボネート樹脂を解重合させるために、分解剤としての機能を有する材料を用いる。分解剤とは、ポリカーボネート樹脂を、カーボネートユニット由来のC=Oを有する化合物と、ビスフェノールに分解することができる材料を意味する。
分解剤は、水と有機系分解剤とに分けることができる。有機系分解剤としては、芳香族モノアルコール、脂肪族モノアルコール、グリコール、第1級アミン、第2級アミン等が挙げられる。分解剤は、水、芳香族モノアルコール及び脂肪族モノアルコールからなる群から選択される1以上であることが好ましく、水、フェノール、クレゾール、キシレノール、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びn-ブタノールからなる群から選択される1以上であることがより好ましい。
芳香族モノアルコールとしては、フェノール、クレゾール、キシレノール等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂と分解剤の物質量比などにもよるが、分解剤として芳香族モノアルコールを用いた場合、ポリカーボネート樹脂と芳香族モノアルコールとが反応し、ビスフェノールと炭酸ジアリールとを生成する分解反応等が起こる。
脂肪族モノアルコールとしては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール等が挙げられる。
脂肪族モノアルコールは炭素数が1~5のアルコールであることが好ましく、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びn-ブタノールからなる群から選択されるいずれかがより好ましい。ポリカーボネート樹脂と分解剤の物質量比などにもよるが、分解剤として脂肪族モノアルコールを用いた場合、ポリカーボネート樹脂と脂肪族モノアルコールとが反応し、ビスフェノールと炭酸ジアルキルとを生成する分解反応等が起こる。
グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂と分解剤の物質量比などにもよるが、分解剤としてグリコールを用いた場合、ポリカーボネート樹脂とグリコールとが反応し、ビスフェノールと炭酸アルキレンとを生成する分解反応等が起こる。
第1級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等のアルキルモノアミン等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂と分解剤の物質量比などにもよるが、分解剤として第1級アミンを用いた場合、ポリカーボネート樹脂と第1級アミンとが反応し、ビスフェノールとイソシアネートとを生成する分解反応等が起こる。
第2級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン等のアルキルジアミン等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂と分解剤の物質量比などにもよるが、分解剤として第2級アミンを用いた場合、ポリカーボネート樹脂と第2級アミンとが反応し、ビスフェノールとテトラアルキル尿素とを生成する分解反応等が起こる。
なお、有機系分解剤は、有機溶媒とすることができるため、有機系分解剤を、分解剤かつ有機溶媒として用いてもよい。
ポリカーボネート樹脂に対する分解剤の量が少なすぎるとポリカーボネート樹脂が分解されにくくなり、分解速度の低下を招くため、分解に要する時間が長時間化するため効率的でない。そのため、ポリカーボネート樹脂のビスフェノールに由来する繰り返し単位1モルに対する分解剤の物質量比は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1.0以上が更に好ましい。また、ポリカーボネート樹脂に対し分解剤が多すぎると、分解液量が増加し、液量に対し、得られるビスフェノールの質量比が小さくなるため製造効率が悪化する。そのため、ポリカーボネート樹脂のビスフェノールに由来する繰り返し単位1モルに対する分解剤の物質量比は、20.0以下が好ましく、15.0以下がより好ましく、10.0以下が更に好ましい。
(有機溶媒)
本発明のビスフェノールの製造方法では、解重合時に、ポリカーボネート樹脂を溶解させるため、有機溶媒を用いる。有機溶媒は、ポリカーボネート樹脂の少なくとも一部を溶解させるものであれば特に限定されず、ポリカーボネート樹脂を完全に有機溶媒に溶解した状態でポリカーボネート樹脂を解重合させてもよいし、ポリカーボネート樹脂が分散したスラリーの状態で、ポリカーボネート樹脂の一部を有機溶媒に溶解させながら解重合させてもよい。
有機溶媒は、リサイクル使用することを鑑みると、沸点が200℃以下の有機溶媒を用いることが好ましい。
有機溶媒は、分解剤としての機能を有するものと、分解剤としての機能を有さないものとに分けることができる。これらは併用してもよい。
分解剤としての機能を有する有機溶媒としては、芳香族モノアルコール、脂肪族モノアルコール、グリコール、第1級アミン、第2級アミンなどの上記有機系分解剤が挙げられる。この場合、有機溶媒とは異なる分解剤の使用は必須ではないが、例えば、分解剤として水を用いてもよい。また、上記有機系分解剤の任意の成分を有機溶媒として用い、別の有機系分解剤を分解剤として用いてもよい。
分解剤としての機能を有する有機溶媒は、芳香族モノアルコール及び/又は脂肪族モノアルコールが好ましく、芳香族モノアルコールがより好ましく、フェノールが更に好ましい。チオールを用いない場合、フェノールのような芳香族モノアルコールは塩基性触媒下で酸化されやすく、ビスフェノールの酸化に加えて、芳香族モノアルコールの酸化物がビスフェノールに混入することで、ビスフェノールの色調が特に悪くなる傾向がある。一方、本発明のビスフェノールの製造方法では、上記の通り、チオールを用いることで、フェノールと塩基性触媒を用いた場合も色調に優れたビスフェノールを得ることができる。
分解剤としての機能を有さない有機溶媒は、ポリカーボネート樹脂のカーボネートユニットと反応する構造(フェノール性水酸基や、アルコール性水酸基、第1級アミノ基、第2級アミノ基など)をもたない有機溶媒である。分解剤としての機能を有する有機溶媒と他の分解剤を併用すると、分解反応が複雑になり、精製が複雑になる場合がある。分解剤による分解反応以外の所望しない反応を起こさないという観点からは、分解剤としての機能を有さない有機溶媒を用いることが好ましく、反応性の低い安定な有機溶媒を用いることがより好ましい。
分解剤としての機能を有さない有機溶媒としては、芳香族炭化水素、炭酸ジアルキル、炭酸エステル、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。好ましくは、芳香族炭化水素、炭酸ジアルキル及びハロゲン化炭化水素からなる群から選択される1以上であり、より好ましくは、芳香族炭化水素及び/又は炭酸ジアルキルであり、更に好ましくは、トルエン及び/又は炭酸ジメチルである。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。
炭酸ジアルキルとしては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジブチルなどが挙げられる。また、有機溶媒として、炭酸ジアルキルを用いる場合には、分解剤は、炭酸ジアルキルのアルキル基と同一のアルキル基を有する脂肪族モノアルコールであることが好ましい。
炭酸エステルとしては、マロン酸ジメチル、二酢酸エチレン、酢酸ブチルなどが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。
ポリカーボネート樹脂に対する有機溶媒の質量比(有機溶媒の質量/ポリカーボネート樹脂の質量)は、小さいとポリカーボネート樹脂の溶解速度が低下するためビスフェノールの製造に要する時間が長くなる傾向にある。そのため、該質量比は、好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.03以上であり、更に好ましくは0.05以上である。また、該質量比が大きいと分解槽に対する有機溶媒の体積が増え、一度に分解することができるポリカーボネート樹脂の量が小さくなり、釜効率が悪化する傾向にある。そのため、該質量比は、好ましくは100以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは50以下である。
解重合時の反応液中の有機溶媒の濃度は、小さいとポリカーボネート樹脂の溶解速度が低下し、ポリカーボネート樹脂の混合性が悪化するため分解槽内でポリカーボネート樹脂の固着が生じるリスクがある。そのため、該質量比は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。また、該濃度が大きいと分解槽に対する有機溶媒の体積が増え、一度に分解することができるポリカーボネート樹脂の量が小さくなり、釜効率が悪化する傾向にある。また、触媒が希釈されるため分解速度が低下する恐れがある。そのため、該質量比は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
(触媒)
本発明のビスフェノールの製造方法では、解重合時に、触媒としての機能を有する材料を用いる。触媒は、ポリカーボネート樹脂の解重合(分解)を促進できるものであればよいが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルキルアミン及び酸からなる群から選択されるいずれかであることが好ましい。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられる。アルカリ金属炭酸塩としては炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミンなどが挙げられる。酸としては、無機酸として塩酸、硫酸、リン酸が挙げられ、有機酸としてカルボン酸、スルホン酸が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂に対する触媒の質量比(触媒の質量/ポリカーボネート樹脂の質量)は、小さいと分解速度が低下するため、分解時間が長時間化して、効率が悪化する傾向にある。そのため、該質量比は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、該質量比が大きいと、中和に要する酸及び塩基の量が多くなる傾向にある。そのため、該質量比は、好ましくは50以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは10以下である。
(チオール)
本発明のビスフェノールの製造方法では、解重合時に、解重合の際に用いられる有機溶媒に溶解し、かつ、この有機溶媒の沸点よりも10℃以上高い沸点を有するチオールを共存させる。チオールは酸化防止剤として機能する。
「有機溶媒に溶解する」とは、チオールと有機溶媒を混合したときに、白濁や沈殿を生じず、チオールが有機溶媒中に均一に存在し、透明の溶液となることを意味する。それにより、ポリカーボネート樹脂の解重合により生成され、有機溶媒に溶解しているビスフェノールの酸化劣化を効率的に抑制することが可能である。
本発明に用いるチオールは、解重合の際に使用される有機溶媒の沸点よりも10℃以上高いものである。ビスフェノールを含有する分解液から有機溶媒を蒸留する際、該有機溶媒と該チオールとの沸点差が大きいほど、有機溶媒を高純度で回収することができる。また、ビスフェノールの酸化を防止するのに必要なチオールを有機溶媒留去後の釜残に十分に残すことができる。そのため、本発明に用いるチオールの沸点は、該有機溶媒の沸点よりも10℃以上高いものであり、20℃以上高いものが好ましく、30℃以上高いものがより好ましい。
本発明に用いるチオールは、解重合の際に用いられる有機溶媒に溶解し、この有機溶媒の沸点よりも10℃以上高い沸点を有し、かつ、以下の一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(2)中のRは、炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を示す。
炭素数3以上のアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、炭素数3以上のアルキル基の炭素数は、特に限定はないが、3~20や、5~18、8~15である。アリール基は、無置換でも置換されていてもよく、置換又は無置換のフェニル基、置換又は無置換のナフチル基などが挙げられる。
例えば、一般式(2)で表されるチオールとしては、プロパンチオール、ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、トリデカンチオール、テトラデカンチオール、ペンタデカンチオール、チオフェノールなどが挙げられる。
解重合時に供給されるチオールの物質量は、原料のポリカーボネート樹脂の質量に応じ適宜調整される。ポリカーボネート樹脂の質量に対しチオールの物質量が少ないと、生成するビスフェノールに対する酸化防止効果が十分に得られず、多いと、ビスフェノールに残留し品質が悪化する場合がある。これらのことから、ポリカーボネート樹脂の質量に対するチオールの物質量の下限は、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.02mmol/g以上、更に好ましくは0.03mmol/g以上である。また、その上限は、好ましくは1.0mmol/g以下、より好ましくは0.8mmol/g以下、更に好ましくは0.6mmol/g以下である。
(ビスフェノール)
本発明のビスフェノールの製造方法で製造されるビスフェノールは、以下の一般式(3)で表される化合物である。
一般式(3)中のR1~R6については、上記一般式(1)におけるR1~R6と同じものである。すなわち、得られるビスフェノールは、原料として使用したポリカーボネート樹脂の繰り返し単位と同じ構造のビスフェノールである。
上記の通り、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂を原料として用いることが好ましく、本発明のビスフェノールの製造方法は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンの製造方法として好適である。
(分解工程)
本発明のビスフェノールの製造方法は、ポリカーボネート樹脂を、(i)分解剤としての機能を有する有機溶媒、触媒及びチオールの存在下、又は(ii)分解剤としての機能を有さない有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの存在下で、解重合し、ビスフェノールを含有する分解液を得る分解工程を有する。分解工程において、ポリカーボネート樹脂は、分解剤及び/又は分解剤として機能を有する有機溶媒と反応し解重合される。
反応液は、ポリカーボネート樹脂が完全に溶解した状態となるように調製してもよいが、ポリカーボネート樹脂が分散したスラリー状となるように調製することが好ましい。調製された反応液がスラリー状である場合も、解重合の進行に伴い、ポリカーボネート樹脂は有機溶媒に完全に溶解するため、分解工程終了時点では、均一液(スラリー状でない分解液)を得ることができる。分解工程終了時点でポリカーボネート樹脂が残存していたとしても、ポリカーボネート樹脂は完全に溶解しており、スラリー状でない分解液を得ることができる。なお、反応液の調製時に並行して解重合が生じてもよい。
分解工程では、ポリカーボネート樹脂が分散したスラリー状の反応液中で解重合させて、ビスフェノールを含有するスラリー状でない分解液(ビスフェノールが溶解した均一液)を得ることが好ましい。ポリカーボネート樹脂が分散したスラリーの状態でポリカーボネート樹脂の一部を有機溶媒に溶解させながら解重合をすることで、溶解したポリカーボネート樹脂のみが反応に関与するため、反応制御がしやすくなったり、有機溶媒の量を低減でき製造効率をより向上させることができる。
(解重合)
ポリカーボネート樹脂を解重合させる方法は、得られるポリカーボネート樹脂のカーボネートユニット(炭酸エステルユニット)由来の生成物ごとに様々な分解方法が知られている。例えば、分解剤として水を用いる加水分解では、ビスフェノールと二酸化炭素とを生成する分解反応が起こり、ポリカーボネート樹脂のカーボネートユニット由来の生成物は二酸化炭素として得られる。その他にも、分解剤としてフェノールを利用するフェノリシスや、分解剤として脂肪族モノアルコールを利用するアルコリシス、分解剤としてアミンを利用するアミノリシスなどが挙げられる。いずれの分解方法を選択してもビスフェノールが主生成物として得られる。
例えば、分解工程は、有機溶媒として、芳香族炭化水素、炭酸ジアルキル、炭酸エステル及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる1以上を用い、分解剤として、水、芳香族モノアルコール及び脂肪族モノアルコールからなる群から選ばれる1以上を用い、有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの共存下で、ポリカーボネート樹脂を分解する工程を有するものとすることができる。
また、分解工程は、有機溶媒として、芳香族炭化水素、芳香族モノアルコール、脂肪族モノアルコール、炭酸ジアルキル、炭酸エステル及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる1以上を用い、分解剤として、水を用い、有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの共存下で、ポリカーボネート樹脂を分解する工程を有するものとすることができる。
また、分解工程は、有機溶媒として、芳香族炭化水素、芳香族モノアルコール、炭酸ジアルキル、炭酸エステル及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる1以上を用い、分解剤として、水及び/又は脂肪族モノアルコールを用い、有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの共存下で、ポリカーボネート樹脂を分解する工程を有するものとすることができる。
例えば、分解工程は、有機溶媒として、芳香族モノアルコールを用い、分解剤として、水及び/又は脂肪族モノアルコールを用い、有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの共存下で、ポリカーボネート樹脂を分解する工程を有するものとすることができる。
また、分解工程は、有機溶媒として、炭酸ジアルキルを用い、分解剤として、脂肪族モノアルコールを用い、有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの共存下で、ポリカーボネート樹脂を分解する工程を有するものとすることができる。
また、分解工程は、有機溶媒かつ分解剤として、芳香族モノアルコールを用い、有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの共存下で、ポリカーボネート樹脂を分解する工程を有するものとすることができる。
解重合時の分解温度は特に制限されない。分解方法ごとに用いる分解剤や有機溶媒の融点及び沸点に応じ、適切な温度に設定できる。温度が低すぎる場合は、ポリカーボネート樹脂の溶解度の低下や、分解液の固化が懸念されるため、一般的には10℃以上で行うことが好ましく、20℃以上で行うことがより好ましい。温度が高すぎる場合は、有機溶媒や分解剤、触媒が蒸発し、解重合が進行しにくくなる可能性がある。そのため、200℃以下で行うことが好ましく、180℃以下で行うことがより好ましく、120℃以下で行うことが更に好ましい。
解重合は、常圧下で行っても加圧下で行ってもよい。有機溶媒として、芳香族モノアルコールや炭酸ジアルキルを用いる場合には、常圧下でも十分に解重合反応は進行するため、常圧下で行うことが好ましい。
特に、有機溶媒として、芳香族モノアルコールや炭酸ジアルキルを用いる場合、ポリカーボネート樹脂の分解は、反応温度10~200℃かつ常圧下で行うことが好ましく、反応温度20~180℃かつ常圧下で行うことがより好ましく、反応温度30~120℃かつ常圧下で行うことが更に好ましい。
反応時間は、ポリカーボネート樹脂の溶解度や分解温度等に応じて適宜選択されるものであるが、長い場合は生成したビスフェノールが分解する傾向にあることから、好ましくは30時間以内、より好ましくは25時間以内、更に好ましくは20時間以内である。また、反応時間が短い場合は分解反応が十分に進行しない場合があるため、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上である。
(精製工程)
本発明のビスフェノールの製造方法は、分解工程で得られた分解液からビスフェノールを取り出す精製工程を有することができる。得られたビスフェノールの回収・精製は、常法により行うことができる。例えば、晶析やカラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段により回収・精製することが可能である。具体的には、ポリカーボネート樹脂の分解反応後、触媒及び有機溶媒の除去や精製用の有機溶媒の混合を行い、得られた有機相を水又は食塩水などで洗浄し、更に必要に応じて塩化アンモニウム水などで中和洗浄する。次いで、洗浄後の有機相を冷却し晶析させる。
精製用の有機溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデカノール、n-ドデカノール、エチレングリコール、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール等の脂肪族アルコールなどを用いることができる。
なお、該晶析前に蒸留により原料や触媒、溶媒を留去してから晶析させてもよい。また、ビスフェノールAは、フェノールの存在下で晶析すると、フェノールと共結晶を形成する。フェノールを用いてビスフェノールAに由来する繰り返し単位を含有するポリカーボネート樹脂を分解させた場合、共結晶としないためには、晶析前にフェノールを留去する必要がある。
精製工程は、分解液を、蒸留及び/又は晶析により、ビスフェノールの濃度を40質量%以上に濃縮する濃縮工程を有することが好ましい。ビスフェノールの濃度を40質量%以上に濃縮することで、分解液の体積を低減し、濃縮工程以降の精製工程において、時間当たりの精製可能なビスフェノール量を増大させることで釜効率の改善が見込める。また、精製工程において晶析を実施する場合、母液へのビスフェノールの溶解量を低減し、歩留まりを改善可能にするという利点がある。また、濃縮工程は、ビスフェノールの濃度を50質量%以上に濃縮することがより好ましい。また、ビスフェノールの濃度の上限は特に制限されないが、濃縮物を液体として次工程へ送液する場合は、ビスフェノールが析出しない濃度であるのが好ましい。濃縮物を固体として得る場合は、含液率によりビスフェノールの濃度は異なるが、一般的な固液分離により得られるケーキの含液率は10質量%~30質量%であるため、ビスフェノールの濃度の上限は90質量%以下となる。
例えば、精製工程は、ビスフェノールを含有する分解液から、蒸留によりチオールを回収する工程と、チオールを回収した後の濃縮物(残渣)に精製用の有機溶媒を加えた液を晶析した後、固液分離してビスフェノールを回収する工程とを有するものとすることができる。これにより、ビスフェノールが回収され、かつ、チオールが、ビスフェノールを含有する分解液から蒸留により回収される。ビスフェノールを含有する分解液の蒸留は、例えば、濃縮物中のビスフェノールの濃度が70~90質量%となるように行うことができる。蒸留により回収されたチオールや有機溶媒、分解剤は、分解工程に再利用することができる。
また、精製工程は、ビスフェノールを含有する分解液又は分解液から有機溶媒の一部を除去した濃縮液を晶析した後、ビスフェノールと、有機溶媒及びチオールを含む母液とに固液分離して、ビスフェノールを回収する工程を有するものとすることができる。更に、有機溶媒及びチオールを含む母液を蒸留することにより、母液からチオールが回収される。この場合、晶析の前に、ビスフェノールを含有する分解液を濃縮することが好ましい。例えば濃縮液中のビスフェノールの濃度が40~70質量%となるように、ビスフェノールを含有する分解液を蒸留して、晶析に用いることができる。ビスフェノールを含有する分解液から回収された有機溶媒や分解剤、母液から回収されたチオールや有機溶媒、分解剤は、分解工程に再利用することができる。
また、精製工程は、ビスフェノールを含有する分解液を中和し、水相を除去することで、ビスフェノールを含む有機相を得る工程を有してよい。この有機相又はこれを濃縮した濃縮液を晶析することで、ビスフェノールを回収することができる。
また、得られたビスフェノールを更に精製してもよく、1回目の晶析により得られたビスフェノールを、精製用の有機溶媒(例えば、芳香族炭化水素)に再溶解し、2回目の晶析を行うことで、純度がより高く、色調に優れたビスフェノールを得ることができる。
<ビスフェノールの用途>
本発明のビスフェノールの製造方法で得られるビスフェノール(以下、「本発明のビスフェノール」と記載する場合がある。)は、光学材料、記録材料、絶縁材料、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレ-ト樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂などの構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。また、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有用である。
これらのうち、良好な色調、良好な機械物性を付与できるため、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の原料(モノマ-)として用いることが好ましく、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることがより好ましく、光学用途に用いられるポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂の原料として用いることが更に好ましい。中でも、溶融重合法によりポリカーボネート樹脂を製造するための原料として用いることが好ましい。また、顕色剤として用いることも好ましく、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
[再生ポリカーボネート樹脂の製造方法]
本発明は、本発明のビスフェノールの製造方法でビスフェノールを得る工程と、得られたビスフェノール(本発明のビスフェノール)含むビスフェノール原料を用いて、再生ポリカーボネート樹脂を製造する工程と、を有する再生ポリカーボネート樹脂の製造方法に関するものである。
再生ポリカーボネート樹脂は、ビスフェノール原料と、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステルとを、例えば、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物の存在下でエステル交換反応させる方法などにより製造することができる。なお、ビスフェノール原料は、本発明のビスフェノールを単独で用いてもよく、本発明のビスフェノールと本発明のビスフェノールの製造方法以外の方法で得られたビスフェノールを併用してもよい。
上記エステル交換反応は、公知の方法を適宜選択して行うことができるが、以下に、ビスフェノール原料と炭酸ジフェニルを原料とした一例を説明する。
上記の再生ポリカーボネート樹脂の製造方法において、炭酸ジフェニルは、ビスフェノール原料に対して過剰量用いることが好ましい。該ビスフェノール原料に対して用いる炭酸ジフェニルの量は、製造された再生ポリカーボネート樹脂に末端水酸基が少なく、ポリマーの熱安定性に優れる点では多いことが好ましく、また、エステル交換反応速度が速く、所望の分子量の再生ポリカーボネート樹脂を製造し易い点では少ないことが好ましい。これらのことから、1モルのビスフェノール原料に対する使用する炭酸ジフェニルの量は、通常1.001モル以上、好ましくは1.002モル以上であり、また、通常1.3モル以下、好ましくは1.2モル以下である。
原料の供給方法としては、ビスフェノール原料及び炭酸ジフェニルを固体で供給することもできるが、一方又は両方を、溶融させて液体状態で供給することが好ましい。
例えば、ビスフェノール原料及び炭酸ジフェニルを固体で供給する場合、嵩高く、所望の量を供給するために大きな装置が必要になる。そのため、本発明のビスフェノールの製造方法でビスフェノールを得て、得られたビスフェノールを含むビスフェノール原料と、炭酸ジフェニルとを加熱溶融した状態で再生ポリカーボネート樹脂を製造する、再生ポリカーボネート樹脂の製造方法とすることが好ましい。
炭酸ジフェニルとビスフェノール原料とのエステル交換反応で再生ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。上記の再生ポリカーボネート樹脂の製造方法においては、このエステル交換触媒として、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を使用するのが好ましい。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。実用的には、アルカリ金属化合物を用いることが望ましい。
ビスフェノール原料又は炭酸ジフェニル1モルに対して用いられる触媒量は、通常0.05μモル以上、好ましくは0.08μモル以上、更に好ましくは0.10μモル以上であり、また、通常100μモル以下、好ましくは50μモル以下、更に好ましくは20μモル以下である。触媒の使用量が上記範囲内であることにより、所望の分子量の再生ポリカーボネート樹脂を製造するのに必要な重合活性を得やすく、且つ、ポリマー色相に優れ、また過度のポリマーの分岐化が進まず、成形時の流動性に優れた再生ポリカーボネート樹脂を得やすい。
上記方法により再生ポリカーボネート樹脂を製造するには、上記の両原料を、原料混合槽に連続的に供給し、得られた混合物とエステル交換触媒を重合槽に連続的に供給することが好ましい。
エステル交換法による再生ポリカーボネート樹脂の製造においては、通常、原料混合槽に供給された両原料は、均一に攪拌された後、触媒が添加される重合槽に供給され、ポリマーが生産される。
以下、実施例及び比較例によって、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
[原料及び試薬]
ポリカーボネート樹脂は、三菱ケミカルエンジニアリングプラスチックス株式会社のポリカーボネート樹脂「NOVAREX(登録商標) M7027BF」を使用した。
メタノール、トルエン、炭酸ジメチル、フェノール、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸、ドデカンチオール、アセトニトリル、及び炭酸セシウムは、富士フィルム和光純薬株式会社の試薬を使用した。
炭酸ジフェニルは、三菱ケミカル株式会社の製品を使用した。
[分解液の色調評価]
ポリカーボネート樹脂を解重合した分解液の色調の評価は以下の方法で実施した。
・装置:日本電色工業社製 SE6000
・器具:日電理化硝子製の試験管(24mm×200m/m P-24)
試験管に分解液を20g程度抜出し、ビスフェノールの結晶が析出しないよう40℃以上に加温した状態でハーゼン色数を測定した。
[ビスフェノールの色調(溶融色)評価]
ビスフェノールの色調(溶融色)の評価は以下の方法で実施した。
・装置:日本電色工業社製 SE6000 アルミブロックヒーター
・器具:日電理化硝子製の試験管(24mm×200m/m P-24)
試験管に製品ビスフェノールを20g計り取り、アルミブロックヒーターを用いて175℃に加温・溶融し、加温開始から30分経過時点のハーゼン色数を測定した。
[ビスフェノールAの分析]
・装置:島津製作所社製「LC10A」
Unison UK C18 3μm 250×4.6mmI.D
・分析温度:40℃
・溶離液組成:A10%/B90% イソクラティックモード
A液 水
B液 アセトニトリル
・分析時間30分
[粘度平均分子量(Mv)]
粘度平均分子量(Mv)は、ポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解し(濃度6.0g/L)、ウベローデ粘度管を用いて20℃における比粘度(ηsp)を測定し、下記の式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ηsp/C=[η](1+0.28ηsp)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
[ペレットYI]
ペレットYI(ポリカーボネート樹脂の透明性)は、ASTM D1925に準拠して、ポリカーボネート樹脂ペレットの反射光におけるYI値(イエローネスインデックス値)を測定して評価した。装置はコニカミノルタ社製分光測色計「CM-5」を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択した。
シャーレ測定用校正ガラス「CM-A212」を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックス「CM-A124」をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行った。次いで、白色校正板「CM-A210」を用いて測定を行い、L*が99.40±0.05、a*が0.03±0.01、b*が-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認した。
YIは、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行った。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いた。
[実施例1]
ジムロート冷却管、攪拌翼、温度計を備えたジャケット式セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、ポリカーボネート樹脂120g(ポリカーボネート樹脂の繰り返し単位は254g/モルであることから、120g÷254g/モル=0.47モル)、7質量%に調整した炭酸水素ナトリウム水溶液106g、フェノール360g、ドデカンチオール2.4g(11.9mmol)を室温で入れた。反応液はスラリー状であった。
その後、内温を90℃に昇温し、90℃を維持したまま4時間反応させ、均一溶液(分解液)を得た。この分解液を試験管に約20g取り、速やかに色調の測定を行ったところ、ハーゼン色数はAPHA50であった。
得られた分解液に水相がpH7.5となるまで70%硫酸水溶液を供給したところ、二酸化炭素のガスが発生した。その後、攪拌を停止して油水分離し、水相をフラスコから抜き出し、有機相A1を530g得た。
得られた有機相A1の一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成分析を実施し、ビスフェノールAの生成を確認した。
得られた有機相A1を、温度計、攪拌翼、留出管、及び圧力調整機を備えた蒸留装置に移し、留出量を見ながら、内温を徐々に130℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に10kPaまで下げて、留出率(留出液÷有機相A1×100)が75wt%になるまで水とフェノールを留去させた。
その後、フラスコ内を窒素で復圧して、内温を80℃まで降温させ、トルエン270gと水100gを加えて、有機相A2を得た。得られた有機相A2を10℃まで降温し、スラリーを得た。得られたスラリーを濾過して、粗ケーキ120gを得た。
得られた粗ケーキを再度、ジムロート冷却管、攪拌翼、温度計を備えたジャケット式セパラブルフラスコに窒素雰囲気下で供給し、トルエン400gを加え、攪拌しながら80℃に昇温し溶解させ有機相A3を得た。
有機相A3に水100gを供給し15分間攪拌し、有機相A3を洗浄した。15分後、攪拌を停止し、有機相と水相とに2相分離させ、水相を除去し、有機相を得た。
この操作を3回繰り返し、有機相A4を得た。得られた有機相A4を10℃まで降温し、スラリーを得た。得られたスラリーを濾過して、ケーキ110gを得た。
得られたケーキを、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA81gを得た。このビスフェノールA(BPA)の溶融色はAPHA30であった。
[実施例2]
ドデカンチオール2.4gをオクタンチオール1.7g(11.6mmol)とした以外、実施例1と同様の操作を実施し、ビスフェノールA80gを得た。
分解液のハーゼン色数はAPHA50であった。
ビスフェノールAの溶解色はAPHA80であった。
[実施例3]
ドデカンチオール2.4gを1.2g(5.9mmol)とした以外、実施例1と同様の操作を実施し、ビスフェノールA78gを得た。
分解液のハーゼン色数はAPHA60であった。
ビスフェノールAの溶解色はAPHA45であった。
[実施例4]
ドデカンチオール2.4gを0.1g(0.5mmol)とした以外、実施例1と同様の操作を実施し、ビスフェノールA80gを得た。
分解液のハーゼン色数はAPHA120であった。
ビスフェノールAの溶解色はAPHA640であった。
[比較例1]
ドデカンチオール2.4gを0g(使用しない)とした以外、実施例1と同様の操作を実施し、ビスフェノールA79gを得た。
分解液のハーゼン色数はAPHA200であった。
ビスフェノールAの溶解色はAPHA1000以上であった。
[比較例2]
ドデカンチオール2.4gをハイドロサルファイトナトリウム2.0g(11.5mmol)とした以外、実施例1と同様の操作を実施し、ビスフェノールA85gを得た。
分解液のハーゼン色数はAPHA45であった。
ビスフェノールAの溶解色はAPHA1000以上であった。
実施例1~4及び比較例1及び2の結果を表1にまとめた。なお、表1の「チオール/PC(mmol/g)」は、ポリカーボネート樹脂の質量(g)に対するチオールの物質量(mmol)であり、チオールの物質量(mmol)をポリカーボネート樹脂の質量(g)で割った値である。
この表から読み取れる通り、有機溶媒よりも沸点が高いチオールの存在下で解重合することで、色調に優れたビスフェノールAを得ることができる。
[実施例5]
ジムロート冷却管、攪拌翼、温度計を備えたジャケット式セパラブルフラスコに、窒素雰囲気下、メタノール52g(52g÷32g/モル=1.6モル、ポリカーボネート樹脂のビスフェノールに由来する繰り返し単位1モルに対するメタノールのモル比=1.6モル÷0.31モル=5.2)、炭酸ジメチル120g、ドデカンチオール1.5g(7.4mmol)、及び水酸化カリウム3.0gを入れた後、ポリカーボネート樹脂80g(ポリカーボネート樹脂のビスフェノールに由来する繰り返し単位の分子量は254g/モルであるので、ビスフェノールに由来する繰り返し単位のモル数=80g÷254g/モル=0.31モル)を室温で入れた。反応液はスラリー状であった。
その後、ジャケット温度を70℃に昇温し、70℃に維持したまま4時間反応させて均一の分解液を得た。分解液を試験管に約20g抜出し、速やかに色調の測定を行ったところ、ハーゼン色数はAPHA35であった。
得られた分解液に水相がpH7.5となるまで70%硫酸水溶液を供給したところ、白色の結晶が少量発生した。その後、攪拌を停止して油水分離し、水相をフラスコから抜き出し、有機相B1を250g得た。
有機相B1の一部を、高速液体クロマトグラフィーで組成を確認したところ、ビスフェノールAの生成を確認した。
得られた有機相B1を、温度計、攪拌翼、留出管、及び圧力調整機を備えた蒸留装置に移し、留出量を見ながら、内温を徐々に80℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に12kPaまで下げて、留出率(留出液÷有機相B1×100)が50wt%になるまでメタノールと炭酸ジメチルを留去させた。その後、一旦フラスコ内を窒素で復圧し、トルエンを200g供給後、内温を90℃まで昇温し、内圧を常圧から徐々に10kPaまで下げて、再度蒸留し、留出率(留出液÷(有機相B1×0.5+トルエン200g)×100)が40wt%になるまで炭酸ジメチルとトルエンを留去させた。
フラスコ内を窒素で復圧し、内温を80℃まで降温させ、トルエン100gを加えて、有機相B2を得た。
得られた有機相B2に水80gを加え15分間攪拌し、有機相B2を洗浄した。15分後、攪拌を停止し、有機相と水相とに2相分離させ、水相を除去し、有機相を得た。
この操作を3回繰り返し、有機相B3を得た。得られた有機相B3を10℃まで降温し、スラリーを得た。得られたスラリーを濾過して、ケーキ80gを得た。
得られたケーキを、ロータリーエバポレータで乾燥させて、ビスフェノールA62gを得た。このビスフェノールAの溶融色はAPHA20であった。
[比較例3]
ドデカンチオール2.4gを0g(使用しない)とした以外、実施例4と同様の操作を実施し、ビスフェノールA60gを得た。
分解液のハーゼン色数はAPHA120であった。
ビスフェノールAの溶解色はAPHA140であった。
実施例5及び比較例3の結果を表2にまとめた。
この表から読み取れる通り、異なる分解法及び有機溶媒であっても、チオールの存在下で解重合することで、色調に優れたビスフェノールAを得ることができることが分かる。
[実施例6]
攪拌機及び留出管を備えた内容量150mLのガラス製反応槽に、実施例1で得られたビスフェノールA20.00gと工業品ビスフェノールA80.00gとを混合したビスフェノールA混合物100.00g(0.44モル)、炭酸ジフェニル96.30g(0.45モル)及び400質量ppmの炭酸セシウム水溶液160μLを入れた。該ガラス製反応槽を約100Paに減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を3回繰り返し、反応槽の内部を窒素に置換した。その後、該反応槽を200℃のオイルバスに浸漬させ、内容物を溶解した。
攪拌機の回転数を毎分100回とし、反応槽内のビスフェノールAと炭酸ジフェニルのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応槽内の圧力を、絶対圧力で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて反応槽内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールを更に留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。その後、反応槽外部温度を250℃に昇温すると共に、40分間かけて反応槽内圧力を絶対圧力で13.3kPaから399Paまで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。
その後、反応槽外部温度を290℃に昇温、反応槽の絶対圧力を30Paまで減圧し、重縮合反応を行った。反応槽の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。290℃に昇温してから重合を終了するまでの時間(後段重合時間)は140分であった。
次いで、反応槽を窒素により絶対圧力で101.3kPaに復圧した後、ゲージ圧力で0.2MPaまで昇圧し、反応槽の底からポリカーボネート樹脂をストランド状で抜出し、ストランド状のポリカーボネート樹脂を得た。
その後、回転式カッターを使用して、該ストランドをペレット化して、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は20900で、ペレットYIは6.2であり、色相の良好なポリカーボネート樹脂を得ることができた。
[比較例4]
比較例1で得られたビスフェノールA20.00gと工業品ビスフェノールA80.00gとを混合したビスフェノールA混合物100.00g(0.44モル)を原料とした以外は実施例6と同じ操作を行い、ペレット状のポリカーボネート樹脂を得た。
得られたポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は20900で、ペレットYIは20.2であった。

Claims (15)

  1. ポリカーボネート樹脂を、(i)分解剤としての機能を有する有機溶媒、触媒及びチオールの存在下、又は(ii)分解剤としての機能を有さない有機溶媒、分解剤、触媒及びチオールの存在下で、解重合し、ビスフェノールを含有する分解液を得る分解工程を有する、ビスフェノールの製造方法であり、
    前記チオールが、前記有機溶媒に溶解し、かつ、前記有機溶媒の沸点よりも10℃以上高い沸点を有することを特徴とする、ビスフェノールの製造方法。
  2. 前記チオールが下記一般式(2)で示される、請求項1に記載のビスフェノールの製造方法。
    (Rは、炭素数3以上のアルキル基又はアリール基を示す。)
  3. 前記チオールの物質量が、前記ポリカーボネート樹脂の質量に対し、0.01mmol/g以上である、請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  4. 前記ポリカーボネート樹脂が分散したスラリー状の反応液中で解重合させて、スラリー状でない前記ビスフェノールを含有する分解液を得る、請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  5. 前記ビスフェノールを含有する分解液を、蒸留及び/又は晶析により、ビスフェノールの濃度を40質量%以上に濃縮する工程を有する請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  6. 前記分解剤が、水、芳香族モノアルコール及び脂肪族モノアルコールからなる群から選ばれる1以上である請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  7. 前記分解工程が、ポリカーボネート樹脂を、前記分解剤としての機能を有する有機溶媒、前記触媒及び前記チオールの存在下で、解重合する工程であり、
    前記分解剤としての機能を有する有機溶媒が、芳香族モノアルコール及び/又は脂肪族モノアルコールである請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  8. 前記分解工程が、ポリカーボネート樹脂を、前記分解剤としての機能を有さない有機溶媒、前記分解剤、前記触媒及び前記チオールの存在下で、解重合する工程であり、
    前記分解剤としての機能を有さない有機溶媒が、芳香族炭化水素、炭酸ジアルキル、炭酸エステル及びハロゲン化炭化水素からなる群から選ばれる1以上である請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  9. 前記芳香族モノアルコールが、フェノール、クレゾール及びキシレノールからなる群から選ばれるいずれかである請求項7に記載のビスフェノールの製造方法。
  10. 前記炭酸ジアルキルが、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル及び炭酸ジブチルからなる群から選ばれるいずれかである請求項8に記載のビスフェノールの製造方法。
  11. 前記チオールが、前記ビスフェノールを含有する分解液から、蒸留により回収される、請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  12. 前記ビスフェノールを含有する分解液又は前記分解液から前記有機溶媒の一部を除去した濃縮液を晶析した後、ビスフェノールと、前記有機溶媒及び前記チオールを含む母液とに固液分離し、ビスフェノールを回収する工程と、
    前記母液から前記チオールを回収する工程と、を有する請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  13. 前記ビスフェノールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンである、請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法。
  14. 請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法でビスフェノールを得る工程と、
    得られた前記ビスフェノール含むビスフェノール原料を用いて、再生ポリカーボネート樹脂を製造する工程と、を有する再生ポリカーボネート樹脂の製造方法。
  15. 請求項1又は2に記載のビスフェノールの製造方法でビスフェノールを得る工程と、
    得られた前記ビスフェノールを含むビスフェノール原料と、炭酸ジフェニルとを加熱溶融した状態で再生ポリカーボネート樹脂を製造する工程と、を有する再生ポリカーボネート樹脂の製造方法。
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