JP2022076743A - 回転電機のステータの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】狭小な空間内であっても、セグメントコイルを直接的にかつ確実に接合し、その際に、周囲の部材へ及ぼす影響を軽減することができる回転電機のステータの製造方法を提供する。【解決手段】本方法は、平断面凹状をなす複数のスロットを有するステータコアと、それに巻回されるステータコイルとを有する回転電機のステータの製造方法であって、ステータコイルを構成する複数のセグメントコイルの端部を、スロット内の対向する側壁面を覆うように設置された絶縁部材の内側空間に配置する配置工程と、複数のセグメントコイルの端部において、スロット内の一方の側壁面側に位置する絶縁部材からの距離と、他方の側壁面側に位置する絶縁部材からの距離とが均等となる領域に、高エネルギー線を照射してセグメントコイルを溶接する溶接工程とを含む。【選択図】図6
Description
本発明は、回転電機のステータ及びその製造方法、並びに、該ステータを備える回転電機に関する。
従来、回転電機のステータとして、周方向に複数のスロットが形成されたステータコアと、複数のスロットに挿入されてステータコアに巻回されたステータコイルとを含む構造が知られている。また、ステータコイルとしては、複数のセグメントコイルを連結してなるものが知られている。例えば、特許文献1には、複数のセグメントコイルの端部同士を、ステータコアのスロット内に対向配置し、両者を導電性結合剤(導電粒子含有のペースト材等)によって接合することによりステータコイルを形成する方法が記載されている。また、特許文献2には、同様に、複数のセグメントコイルの端部同士を、ステータコアのスロット内に対向配置し、両者を筒状の導電性連結部材(導体パイプ等)によって連結することによりステータコイルを形成する方法が記載されている。
しかし、上記従来の如く、導電性結合剤や導電性連結部材を用いる場合、それらの部品点数の増大、及び、連結部材の高精度加工による工数の増大を招き、その結果、コストが嵩んでしまい経済性が悪化してしまうといった問題があった。また、発明者の知見によれば、従来のような方法による対応を余儀なくされているのは、セグメントコイルの端部同士が配置されるステータコアのスロット内の空間が、一般に、非常に狭小であって、セグメントコイルの端部同士を直接的にかつ確実に、また、周囲の部材(セグメントコイルとスロット内の壁面との絶縁部材等)に影響を及ぼすことなく接合することが困難であることに起因する。
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、狭小な空間内であっても、セグメントコイルを直接的にかつ確実に接合し、その際、周囲の部材へ及ぼす影響を軽減することができ、これにより、部品点数及び工数の増大を抑止して経済性を向上させることが可能な回転電機のステータ及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用する。すなわち、本開示に係る回転電機のステータの製造方法の一例は、平断面凹状をなす複数のスロットを有するステータコアと、該ステータコアに巻回されるステータコイルとを有する回転電機のステータの製造方法であって、前記ステータコイルを構成する複数のセグメントコイルの端部を、前記スロット内の対向する側壁面を覆うように設置された絶縁部材(例えば、絶縁用スロット紙等)の内側空間に配置する配置工程と、前記複数のセグメントコイルの端部において、前記スロット内の一方の側壁面側に位置する前記絶縁部材からの距離と、前記スロット内の他方の側壁面側に位置する前記絶縁部材からの距離とが均等(「同一」及び「ほぼ同一」を含む。)となる領域に、高エネルギー線(例えば、レーザや電子ビーム等)を照射して前記複数のセグメントコイルの端部同士を溶接する溶接工程とを含む。
かかる構成では、複数のセグメントコイルの端部同士を、ステータコアのスロット内に配置した状態で高エネルギー線を照射することによって溶接することにより、ステータコイルを形成する。よって、スロット内のような狭小な空間であっても、従来の導電性結合剤や導電性連結部材による接合を用いることなく、複数のセグメントコイルを直接的にかつ確実に接合することができる。また、複数のセグメントコイルの端部における高エネルギー線の照射部位を、スロット内の一方の側壁面側に位置する絶縁部材からの距離と、スロット内の他方の側壁面側に位置する絶縁部材からの距離とが均等となる領域とするので、セグメントコイルへの入熱エネルギーが両側壁面側の絶縁部材へ伝達又は伝播する経路長が平均化される。よって、絶縁部材への入熱量が偏ることに起因して一方の側壁面側の絶縁部材に熱害(例えば、焦げや穴あき等)が生じてしまうことを抑制することができる。
以上のことから、本開示によれば、スロットのような狭小な空間内であっても、セグメントコイルを直接的にかつ確実に接合することができ、また、絶縁部材といった周囲の部材に与える熱害等の影響を軽減することができる。また、その結果、部品点数及び工数の増大を抑止して経済性を向上させることが可能となり、さらに、製品の信頼性を高めることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、一部の断面部の表示においては、視認性の観点から、断面であることを示すハッチングを適宜省略する。
[第1実施形態]
図1は、本開示の第1実施形態に係る回転電機のステータの概略構成を示す分解斜視図である。なお、ステータ10は、通常、多数のセグメントコイル22を有しているが、図1においては、理解を容易にする観点及び視認性の観点から、ごく一部のセグメントコイル22のみを図示した(他の図においても同様とする。)。
図1は、本開示の第1実施形態に係る回転電機のステータの概略構成を示す分解斜視図である。なお、ステータ10は、通常、多数のセグメントコイル22を有しているが、図1においては、理解を容易にする観点及び視認性の観点から、ごく一部のセグメントコイル22のみを図示した(他の図においても同様とする。)。
ステータ10は、ロータと組み合わされて回転電機を構成するものであり、ステータ10が適用される回転電機は、電動機として用いられるものでもよいし、発電機として用いられるものであってもよい。より具体的には、本実施形態におけるステータ10は、例えば、電動車両に搭載される回転電機であって、走行用動力を生成する電動機として機能するとともに、回生トルク等で発電を行う発電機としても機能する回転電機に好適に適用される。
ステータ10は、ステータコア12と、当該ステータコア12に巻回されるステータコイル20を有する。ステータコア12は、略円環状のコアバック14と、そのコアバック14の内周面から径方向内側に突出する複数のティース16とに大別される。これらの周方向に隣接するティース16間には、ステータコイル20の一部が収容される空間である平断面凹状をなすスロット18が形成されている。かかるステータコア12は、例えば、複数の電磁鋼板(例えばケイ素鋼板)を厚み方向に積層して作成される積層鋼板であってもよく、或いは、絶縁被覆された磁性粒子をプレス成形してなる圧粉磁芯であってもよい。
ステータコイル20は、ステータコア12のティース16に巻回される。かかるステータコイル20の結線態様及び巻回態様は、回転電機の仕様に応じて、適宜、選択することができる。例えば、ステータコイル20は、U相、V相、及びW相のコイルをスター結線又はデルタ結線した構成でもよい。また、ステータコイル20は、分布巻で巻回されてもよいし、集中巻で巻回されてもよい。いずれの場合であっても、本実施形態では、ステータコイル20は、複数のセグメントコイル22が連結されて構成されたものである。
セグメントコイル22は、ステータコイル20を、適宜の取扱長で切断したものである。本実施形態では、セグメントコイル22は、略U字状をなす第1セグメントコイル22aと、同じく略U字状をなす第2セグメントコイル22bから構成される。なお、以下において、「第1」及び「第2」を区別しない場合には、添え字のアルファベットを省略して単に「セグメントコイル22」という。
図2は、第1セグメントコイル22aの正面図である。第1セグメントコイル22aは、導電性材料(例えば銅等)からなる導線32を、絶縁材料からなるコイル皮膜34(グレーハッチングで図示)で被覆したものである。導線32は、断面略矩形状をなす角線である。このように導線32を角線とすることにより、スロット18内における線積率を向上させることができる。
また、第1セグメントコイル22aは、ステータ完成時と同じ形状、すなわち、最終形状に屈曲及び成形されている。具体的には、第1セグメントコイル22aは、スロット18内に収容される一対の縦線部28と、この一対の縦線部28を接続する接続部27とを有する略U字状の部材である。本実施形態において、縦線部28の長さは、ステータコア12の軸方向寸法の略半分の長さとされている。これにより、縦線部28をスロット18内に挿入した際、縦線部28の末端がスロット18の軸方向の中間部位に位置するようになっている。
また、接続部27は、ステータコア12の軸方向外側において、周方向に延びて、コイルエンドの一部を構成する。この第1セグメントコイル22aの両端、すなわち、縦線部28の末端では、コイル皮膜34が剥離され、導線32が外部に露出した剥離部30が形成されている。剥離部30(導線32)の先端は、図示において平坦状とされているが、これに限定されず、例えば先細り状のテーパー形状や段差形状としてもよい。
図3は、第2セグメントコイル22bの正面図である。第2セグメントコイル22bも、導電性材料(例えば銅等)からなる導線32を、コイル皮膜34で被覆したものである。この第2セグメントコイル22bも、ステータ完成時と同じ形状、すなわち、最終形状に屈曲及び成形されている。具体的には、第2セグメントコイル22bも、スロット18内に収容される一対の縦線部26と、この一対の縦線部26を接続する接続部25とを有する略U字状の部材である。本実施形態において、縦線部26の長さは、第1セグメントコイル22aの縦線部28と同様に、ステータコア12の軸方向寸法の略半分の長さとされている。これにより、縦線部26をスロット18内に挿入した際、縦線部26の末端がスロット18の軸方向の中間部位に位置するようになっており、この位置において、第1セグメントコイル22aの縦線部28の末端と対向配置される。
また、接続部25も、ステータコア12の軸方向外側において、周方向に延びて、コイルエンドの一部を構成する。この第2セグメントコイル22bの両端、すなわち、縦線部26の末端では、コイル皮膜34が剥離され、導線32が外部に露出した剥離部30が形成されている。剥離部30(導線32)の先端も、図示において平坦状とされているが、これに限定されず、例えば先細り状のテーパー形状や段差形状としてもよい。
さらに、第2セグメントコイル22bに用いられる導線32は、第1セグメントコイル22aに用いられる導線32と同様に、角線でもよく、或いは、図3に示すように、断面円形状をなす丸線でもよい。丸線を用いた場合、第2セグメントコイル22bの曲げ加工を容易ならしめることができる。すなわち、ステータコイル20を巻回形成するために、第2セグメントコイル22bは、第1セグメントコイル22aに比して、ステータ10の周方向だけではなく、ステータ10の径方向にも屈曲又は湾曲させる必要がある。そのため、第2セグメントコイル22bには、第1セグメントコイル22aよりも柔軟な曲げ性が望まれるので、第2セグメントコイル22bを丸線にした場合、この点において、角線に比して有利な場合がある。
なお、第1及び第2セグメントコイル22a,22bの導線32だけでなく、コイル皮膜34も、互いに異なっていてもよい。例えば、第2セグメントコイル22bの導線32を、曲げやすい丸線とした場合、曲げ加工時におけるコイル皮膜34のダメージを軽減できる。そのため、第2セグメントコイル22bのコイル皮膜34を、第1セグメントコイル22aのコイル皮膜34に比して、薄くすることもできる。
次に、図4は、図1及び後記図5におけるIV-IV線に沿う断面図(一部省略)であり、ステータコア12の軸方向寸法の略半分位置における平断面図を示す。また、図5は、図1及び図4におけるV-V線に沿って側面方向から視認したときの斜視図(一部省略)である。なお、図5においては、第1セグメントコイル22a及び第2セグメントコイル22bのいずれも角線である場合の例を示す。さらに、図6は、図4及び図5におけるVI-VI線に沿って正面方向から視認したときの斜視図(一部省略)である。なお、図6においては、スロット紙35aを透過表示した(図8、図9、図11、及び図12において同様)。
図4に示すとおり、ステータコア12のスロット18内には、スロット18内の側壁面全体を覆うようにスロット紙35(絶縁部材)が設けられており、複数のセグメントコイル22が、スロット紙35が画成する内側空間に連接配置される。また、図5に示すように、スロット18内に挿入されたセグメントコイル22a,22bの末端であるそれぞれの剥離部30は、スロット18の軸方向寸法の中間部位において対向配置される。そして、本実施形態では、図4及び図5に示すように、剥離部30,30の対向部位に、例えば、レーザや電子ビーム等の高エネルギー線Lを照射して、剥離部30,30同士を溶接して電気的に接続する。
ここで、高エネルギー線Lによる剥離部30,30の照射により、照射位置からは、剥離部30を構成する導体材料のスパッタ成分を含み得る高温蒸気HVが発生し得る。このとき、高エネルギー線Lの照射位置が、例えば、スロット内18の一方の側壁面側に位置するスロット紙35aに比較的近い領域R1である場合、スロット紙35aは、生じた高温蒸気HVからの熱に比較的曝露され易くなってしまい、スロット紙35aの一部が焦げたり穴があいてしまったりといった熱害HDが生じ得る(図4及び図5参照)。こうなると、熱害HDの発生部位において、スロット紙35aの絶縁機能が損なわれてしまうおそれがある。
これに対し、本実施形態では、図6に示すとおり、互いに対向配置したセグメントコイル22a,22bの端部である剥離部30,30において、スロット18内の一方の側壁面側に位置するスロット紙35aからの距離Daと、スロット18内の他方の側壁面側に位置するスロット紙35bからの距離Dbとが均等となる領域R2に、高エネルギー線Lを照射してセグメントコイル22a,22bの剥離部30,30を溶接する。このときの領域R2は、適宜の面積を有していてもよく、その領域R2を高エネルギー線Lで走査することにより、所望の溶接ビードBEを形成し、剥離部30,30同士を強固に接続することができる。また、領域R2の決定方法は、特に制限されず、例えば、スロット18内に配置された剥離部30,30の周辺部位を適宜の測距手段で距離測定した結果から、距離Da,Dbが均等となるような部位として決定することができる。或いは、スロット18内に配置された剥離部30,30の周辺部位を適宜の撮像手段で撮像し、その画像データの画像処理によって、領域R2を決定してもよい。
次に、ステータ10の製造の流れについて図7を参照して説明する。図7は、ステータ10を製造している手順の一例を示すフローチャートである。ここでは、まず、ステータコイル20を構成するセグメントコイル22を製造する。具体的には、長尺なコイル材料を、所望の長さに切断する(ステップS10)。コイル材料は、セグメントコイル22の材料となるもので、長尺な導線32をコイル皮膜34で被覆したものである。本実施形態では、2種類のコイル材料(断面略矩形の角線を使用したコイル材料と、断面略円形の丸線を使用したコイル材料)を準備してもよい。各コイル材料は、専用の刃物を用いて、所望の切断形状が得られるように切断される。本実施形態では、端部が平面形状となるように、コイル材料を切断する。
次に、各セグメントコイル22の端部においてコイル皮膜34を剥離して、剥離部30を形成する(ステップS20)。この剥離部30は、例えば、レーザ等を用いて、コイル皮膜34を非接触で切断して形成してもよいし、適宜のカッター等によりコイル皮膜34を切削して形成してもよい。
続いて、セグメントコイル22を、屈曲又は湾曲させて、所望の形状(例えば図2及び図3に示す形状)に成形する(ステップS30)。この成形は、例えば、セグメントコイル22を専用の金型に押し付けたり、専用のローラで曲げたりして行うことができる。また、この成形において、各セグメントコイル22は、最終形状に成形される。換言すれば、ステータコア12への組み付け後に、各セグメントコイル22に曲げ加工は、施されない。
次いで、成形後のセグメントコイル22をステータコア12に組み付ける(ステップS40:配置工程)。具体的には、第1セグメントコイル22aの縦線部28と、第2セグメントコイル22bの縦線部26を、それぞれ所定のスロット18内のスロット紙35の内側空間に挿入して、両者の剥離部30,30を適宜の距離で対向配置又は当接配置する。ステータコア12に組みつけられたセグメントコイル22は、その組み付け状態を維持するように、専用の治具で保持することができる。
次に、その状態で、前述した適宜の方法により、剥離部30,30の対向部位において、高エネルギー線Lを照射する領域R2を決定する(ステップS50)。それから、高エネルギー線Lをその領域R2に走査しながら照射し、剥離部30,30を溶接して電気的に連結する(ステップS60:溶接工程)。そして、こうした連結を全ての第1及び第2セグメントコイル22a,22bについて行うことにより、ステータコイル20を完成させる。
以上説明した第1実施形態の方法によれば、複数のセグメントコイル22の端部である剥離部30同士を、ステータコア12のスロット18内に配置した状態で、高エネルギー線Lを照射することによって溶接することにより、ステータコイル20を形成する。よって、スロット18内のような狭小な空間であっても、従来の導電性結合剤や導電性連結部材による接合を用いることなく、複数のセグメントコイル22を直接的にかつ確実に接合することができる。また、複数のセグメントコイル22の端部である剥離部30における高エネルギー線Lの照射部位を、スロット18内の一方の側壁面側に位置するスロット紙35aからの距離Daと、スロット18内の他方面側に位置するスロット紙35bからの距離とが均等となる領域R2とするので、セグメントコイル22への入熱エネルギーが両壁面側のスロット紙35a,35bへ伝達又は伝播する経路長が平均化される。よって、スロット紙35への入熱量が偏ることに起因して一方の壁面側のスロット紙35に熱害HDが生じてしまうことを有効に抑制することができる。
その結果、スロット18のような狭小な空間内であっても、セグメントコイル22を直接的にかつ確実に接合することができ、また、スロット紙35といった周囲の部材へ与える熱害等の影響を抑制することができる。これにより、部品点数及び工数の増大を抑止して経済性を向上させることが可能となり、また、製品の信頼性を高めることができる。
[第1実施形態の変形例]
図8は、図6と同様に、図4及び図5におけるVI-VI線に沿って正面方向から視認したときの斜視図(一部省略)である。本変形例は、高エネルギー線Lを照射する領域R2を、別の領域R3に変更したこと以外は、第1実施形態における方法と同等の構成を有する。ここで、領域R3は、互いに対向配置したセグメントコイル22a,22bの端部である剥離部30,30において、第1セグメントコイル22aのコイル皮膜34の末端からの距離Dcと、第2セグメントコイル22bのコイル皮膜34の末端からの距離Ddとが均等となる部位である。領域R3は、領域R2と同様に、適宜の面積を有していてもよく、その領域R3を高エネルギー線Lで走査することにより、所望の溶接ビードBEを形成し、剥離部30,30同士を強固に接続することができる。また、領域R3の決定方法も、特に制限されず、例えば、スロット18内に配置された剥離部30,30の周辺部位を適宜の測距手段で距離測定した結果から、距離Dc,Ddが均等となるような部位として決定することができる。また、スロット18内に配置された剥離部30,30の周辺部位を撮像し、その画像データの画像処理によって、領域R3を決定してもよい。
図8は、図6と同様に、図4及び図5におけるVI-VI線に沿って正面方向から視認したときの斜視図(一部省略)である。本変形例は、高エネルギー線Lを照射する領域R2を、別の領域R3に変更したこと以外は、第1実施形態における方法と同等の構成を有する。ここで、領域R3は、互いに対向配置したセグメントコイル22a,22bの端部である剥離部30,30において、第1セグメントコイル22aのコイル皮膜34の末端からの距離Dcと、第2セグメントコイル22bのコイル皮膜34の末端からの距離Ddとが均等となる部位である。領域R3は、領域R2と同様に、適宜の面積を有していてもよく、その領域R3を高エネルギー線Lで走査することにより、所望の溶接ビードBEを形成し、剥離部30,30同士を強固に接続することができる。また、領域R3の決定方法も、特に制限されず、例えば、スロット18内に配置された剥離部30,30の周辺部位を適宜の測距手段で距離測定した結果から、距離Dc,Ddが均等となるような部位として決定することができる。また、スロット18内に配置された剥離部30,30の周辺部位を撮像し、その画像データの画像処理によって、領域R3を決定してもよい。
かかる第1実施形態の変形例によれば、セグメントコイル22への入熱エネルギーが、第1セグメントコイル22aのコイル皮膜34と第2セグメントコイル22bのコイル皮膜34へ伝達又は伝播する経路長が平均化される。よって、コイル皮膜34への入熱量が偏ることに起因して一方のセグメントコイル22のコイル皮膜34に熱害HDが生じてしまうことを有効に抑制することができる。
[第2実施形態]
図9は、図6と同様に、図4及び図5におけるVI-VI線に沿って正面方向から視認したときの斜視図(一部省略)であり、(A)は、第1セグメントコイル22a及び第2セグメントコイル22bの形状のみを示し、(B)は、両者がスロット18内に配置されて溶接されている状態を示す。本実施形態では、図9(A)に示すように、第1セグメントコイル22aの剥離部30の導体形状が、単一の直方体状をなし、第2セグメントコイル22bの剥離部30の導体形状が、複数(ここでは2つ)に分断された直方体状をなしている。そして、これらの剥離部30を、スロット18内で、図9(B)に示すように、スロット18の径方向に沿って対向配置させた状態で、高エネルギー線Lを、第2セグメントコイル22bの剥離部30,30の間の領域R4に照射し、全ての剥離部30間を溶接によって接続する。
図9は、図6と同様に、図4及び図5におけるVI-VI線に沿って正面方向から視認したときの斜視図(一部省略)であり、(A)は、第1セグメントコイル22a及び第2セグメントコイル22bの形状のみを示し、(B)は、両者がスロット18内に配置されて溶接されている状態を示す。本実施形態では、図9(A)に示すように、第1セグメントコイル22aの剥離部30の導体形状が、単一の直方体状をなし、第2セグメントコイル22bの剥離部30の導体形状が、複数(ここでは2つ)に分断された直方体状をなしている。そして、これらの剥離部30を、スロット18内で、図9(B)に示すように、スロット18の径方向に沿って対向配置させた状態で、高エネルギー線Lを、第2セグメントコイル22bの剥離部30,30の間の領域R4に照射し、全ての剥離部30間を溶接によって接続する。
かかる第2実施形態によれば、高エネルギー線Lの照射によって生じ得る高温蒸気HVは、分断された直方体状をなす第2セグメントコイル22bの剥離部30が障壁となって、スロット紙35側への拡散が抑止される。これにより、スロット紙35に熱害HDが生じてしまうことを有効に抑制することができる。
[第3実施形態]
図10は、図6と同様に、図4及び図5におけるVI-VI線に沿って正面方向から視認したときの斜視図(一部省略)である。本実施形態では、図10に示すように、スロット紙35とセグメントコイル22との間に適宜のマスク36を配置した状態で、高エネルギー線Lによる剥離部30,30の溶接を行う。図示を省略したが、図4に示すように、セグメントコイル22は、スロット18内に複数連接して設置されるので、溶接対象であるセグメントコイル22の位置に応じて、マスク36を順次移動すると好適である。
図10は、図6と同様に、図4及び図5におけるVI-VI線に沿って正面方向から視認したときの斜視図(一部省略)である。本実施形態では、図10に示すように、スロット紙35とセグメントコイル22との間に適宜のマスク36を配置した状態で、高エネルギー線Lによる剥離部30,30の溶接を行う。図示を省略したが、図4に示すように、セグメントコイル22は、スロット18内に複数連接して設置されるので、溶接対象であるセグメントコイル22の位置に応じて、マスク36を順次移動すると好適である。
かかる第3実施形態によれば、高エネルギー線Lの照射によって生じ得る高温蒸気HVは、マスク36によって遮断されるので、この場合も、スロット紙35に熱害HDが生じてしまうことを有効に抑制することができる。
[第4実施形態]
図11及び図12は、図6と同様に、図4及び図5におけるVI-VI線に沿って正面方向から視認したときの斜視図(一部省略)である。本実施形態では、高エネルギー線Lによる剥離部30の溶接を実施しているときに、スロット紙35とセグメントコイル22との間にガスを連続的に送通させることにより、エアカーテンを画成する。例えば、図11に示す例では、高エネルギー線Lによる溶接部位よりも後方側から、図示矢印W1で示す方向にガス(空気、不活性ガス等)を送通させる(ブローする)。また、図12に示す例では、高エネルギー線Lによる溶接部位における図示矢印W2で示す平面方向にガスを送通させる。なお、送通するガスは、冷媒機能を有していても、有していなくてもよい。
図11及び図12は、図6と同様に、図4及び図5におけるVI-VI線に沿って正面方向から視認したときの斜視図(一部省略)である。本実施形態では、高エネルギー線Lによる剥離部30の溶接を実施しているときに、スロット紙35とセグメントコイル22との間にガスを連続的に送通させることにより、エアカーテンを画成する。例えば、図11に示す例では、高エネルギー線Lによる溶接部位よりも後方側から、図示矢印W1で示す方向にガス(空気、不活性ガス等)を送通させる(ブローする)。また、図12に示す例では、高エネルギー線Lによる溶接部位における図示矢印W2で示す平面方向にガスを送通させる。なお、送通するガスは、冷媒機能を有していても、有していなくてもよい。
かかる第4実施形態によれば、高エネルギー線Lの照射によって生じ得る高温蒸気HVは、ガスの流通によって画成されるエアカーテンによって遮断され、また、ガスによって冷却され得るので、この場合も、スロット紙35に熱害HDが生じてしまうことを有効に抑制することができる。
以上、本開示の一例としての上記実施形態について詳細に説明してきたが、前述した説明はあらゆる点において本開示の一例を示すに過ぎず、本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。また、上記実施形態は、部分的に置換してもよく、適宜組み合わせて構成することも可能である。
10…ステータ、12…ステータコア、14…コアバック、16…ティース、18…スロット、20…ステータコイル、22…セグメントコイル、22a…第1セグメントコイル、22b…第2セグメントコイル、25…接続部、26…縦線部、27…接続部、28…縦線部、30…剥離部、32…導線、34…コイル皮膜、35,35a,35b…スロット紙、36…マスク、BE…溶接ビード、Da,Db,Dc,Dd…距離、HD…熱害、HV…高温蒸気、L…高エネルギー線、R1~R4…領域。
Claims (1)
- 平断面凹状をなす複数のスロットを有するステータコアと、該ステータコアに巻回されるステータコイルとを有する回転電機のステータの製造方法であって、
前記ステータコイルを構成する複数のセグメントコイルの端部を、前記スロット内の対向する側壁面を覆うように設置された絶縁部材の内側空間に配置する配置工程と、
前記複数のセグメントコイルの端部において、前記スロット内の一方の側壁面側に位置する前記絶縁部材からの距離と、前記スロット内の他方の側壁面側に位置する前記絶縁部材からの距離とが均等となる領域に、高エネルギー線を照射して前記複数のセグメントコイルの端部同士を溶接する溶接工程と、
を含む、
回転電機のステータの製造方法。
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