JP2022067231A - ゴム組成物及び加硫ゴム - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた耐久性を有するクロロプレンゴム組成物を提供する【解決手段】 クロロプレンゴムと平均繊維経が1~100μmで、平均繊維長が1~500μmであって、セルロースのヒドロキシメチル基がカルボン酸又はカルボン酸で変性されていないセルロースマイクロファイバーを含む組成物であって、セルロースマイクロファイバーの量がクロロプレンゴム100重量部に対して0.01~10重量部含むことを特徴とするゴム組成物を用いる。【選択図】 なし

Description

本発明は、より耐久性に優れる、クロロプレンゴムを含むゴム組成物に関するものである。
クロロプレンゴムは、各種合成ゴムの中でも各物性のバランスが良好であるため幅広い用途に使用されており、例えば、ベルト、ホース、ブーツ、エアスプリング、ウェットスーツ、引き布、接着剤などに使用されている。クロロプレンゴムには、汎用のメルカプタン変性と動特性に優れる硫黄変性クロロプレンがあり、後者の方がより耐久性に優れるが、近年の高性能化の要求により、更なる耐久性が求められている。
通常、カーボンブラックやシリカなどの補強材や可塑剤の配合量、成形温度や成形方法を調整することで耐久性を向上させることができるが、目的の成形物の硬度が決まっているためこれらの処方には限界がある。また、耐久性を向上させることができても圧縮永久歪や摩耗性が悪化してしまうという問題がある。
そこで、繊維形状の補強材が提案されており、ナノオーダーのセルロース繊維を配合したタイヤ等が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)しかし、疎水性のゴムに対し、親水性のセルロースは分散性が劣るため補強効果が低く、更に、セルロースの水酸基同士が水素結合によって凝集し耐久性を損なう。その対策として、ナノオーダーのセルロースと、それを分散するための分散剤や固定するためのシランカップリング剤を天然ゴムラテックスに配合したタイヤが提案されている。(例えば、特許文献2、3参照。)しかし、これらの方法では分散剤等のゴムとセルロースを分散するための薬剤が別途必要であり、コストが高くなる。また、機械解繊されたナノオーダーのセルロースの水分散体を1~25重量部、ポリマーと配合剤と共に直接混練して分散させることで優れた耐久性や強度、耐摩耗性を有するコンベアベルトが提案されている。(例えば、特許文献4参照。)
しかし、コンベアベルトのような使用時の材料の発熱有無が重要となる用途では有効であるが、その他の用途にてナノオーダーのセルロースを1~25重量部配合すると耐久性や耐摩耗性を損なう。また、ナノオーダーのセルロースは価格が高いため、補強材として多量に用いると、ゴム組成物のコストが高くなる。
特開2006-206864号公報 特開2009-191197号公報 特開2009-191198号公報 特開2020-7156号公報
本発明はこの問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は優れた耐久性を有するクロロプレンゴム組成物を安価な手法で提供するものである。
本発明者は、このような背景の下、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、未変性のマイクロオーダーのセルロース繊維を、クロロプレンゴム100重量部に対し0.01~10重量部混合分散させ、そのゴム組成物を加硫成形して得た加硫物が優れた耐久性を示すことを見出した。即ち、本発明は、以下の[1]~[4]に係るものである。
[1] クロロプレンゴム100重量部に対し、平均繊維径が1~100μmで、平均繊維長が1~500μmであって、セルロースのヒドロキシメチル基がカルボン酸又はカルボン酸塩で変性されていないセルロースマイクロファイバーを0.01~10重量部含むことを特徴とするゴム組成物。
[2] クロロプレンゴムが、カルボン酸又はカルボン酸のアルカリ金属塩を3~7重量%含むクロロプレンゴムであることを特徴とする上記[1]に記載のゴム組成物。
[3] セルロースマイクロファイバーが、未変性のものであることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のゴム組成物
[4] 上記[1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物の加硫物であることを特徴とする加硫ゴム。
本発明のセルロースマイクロファイバー含有クロロプレンゴム組成物を用いることで、優れた耐久性を有する加硫ゴムを安価に得ることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の一態様であるゴム組成物は、クロロプレンゴム100重量部に対し、平均繊維経が1~100μmで、平均繊維長が1~500μmであって、セルロースのヒドロキシメチル基がカルボン酸又はカルボン酸塩で変性されていないセルロースマイクロファイバーを0.01~10重量部含むものである。
クロロプレンゴムは、クロロプレン、又はクロロプレン及びこれと共重合可能な単量体を乳化重合し、次いで水を乾燥することにより得ることができる。
クロロプレンと共重合可能な単量体としては、例えば、硫黄、2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエン、2-シアノ-1,3-ブタジエン、1-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ブタジエン、スチレン、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸等が挙げられ、このうち1種類以上を併用して用いることが可能であるが、例えば架橋点となる硫黄を共重合することでモジュラス等の力学物性向上が可能である反面耐熱性は低下するため、必ずしも必要ではなく、要求物性に応じて適時使用する。共重合可能な単量体量は特に限定するものではないが、クロロプレン重合体の特性を損なわない程度としてクロロプレンゴム100重量部に対し一般的に30重量部以下が用いられる。特に硫黄に関しては耐熱性が低下するため、クロロプレン単量体100重量部に対し3重量部以下が好ましく、さらには1重量部以下が好ましい。
クロロプレンゴムの乳化重合では、例えば、上記の単量体を乳化剤、水、重合開始剤、連鎖移動剤、その他安定剤等を混合し、所定温度にて重合を行い、所定の重合転化率で重合停止剤を添加し重合を停止する方法があげられる。
乳化剤としては、カルボン酸のアルカリ金属塩やスルホン酸のアルカリ金属塩を等が挙げられ、例えば、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩、ポリカルボン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン系乳化剤、水溶性高分子化合物等があげられる。アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等があげられる。これらは、1種類でも良く、2種類以上を含んでいても良いが、重合安定性、乾燥時の凝集性、及びゴムの性能の観点からカルボン酸のアルカリ金属塩を含む事が好ましく、なかでもロジン酸のアルカリ金属塩、更にはロジン酸のカリウム塩を含むことが好ましい。
乳化剤の量は特に限定するものではないが、重合後に得られるクロロプレンゴムラテックスの安定性および乾燥によるゴム取り出し性を考慮するとクロロプレンゴム100重量部に対し、3~10重量部が好ましい。また、そのうちカルボン酸のアルカリ金属塩は3~8重量部が好ましく、更には5~7重量部含むことが好ましい。
クロロプレンゴムは、カルボン酸又はカルボン酸のアルカリ金属塩を3~7重量%含むことが好ましい。3重量%以上ではクロロプレン重合時の乳化安定性に優れ、7重量%以下ではクロロプレンゴムラテックスの凍結によるゴム析出工程にて凍結不良が生じることなく安定的なゴム製品の生産が可能となる。
乳化重合の開始剤としては、公知のフリーラジカル性物質、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過酸化物、過酸化水素、ターシャリーブチルヒドロパーオキサイド等の無機又は有機過酸化物等を用いることができる。また、これらは単独又は還元性物質、例えば、チオ硫酸塩、チオ亜硫酸塩、ハイドロサルファイト、有機アミン等との併用レドックス系で用いても良い。
重合温度は特に限定するものではないが、10~50℃の範囲が好ましい。
重合終了時期は特に限定するものでは無いが、生産性の面から、単量体の転化率が60%以上95%まで重合を行うことが好ましい。
重合停止剤としては、通常用いられる停止剤であれば特に限定するものでなく、例えば、フェノチアジン、2,6-t-ブチル-4-メチルフェノール、ヒドロキシルアミン等が使用できる。
硫黄を共重合した硫黄変性クロロプレンの場合は、続いて重合停止したラテックスに解膠剤及び解膠助剤を添加し適当なムーニー粘度になるまで解膠を行うことが可能である。解膠剤にはテトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド等のチウラム化合物が挙げられ、前記の乳化剤等を用いて乳化した状態で添加することができる。解膠反応開始剤としてはジブチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸アンモニウム等のチオカルバミン酸化合物等が挙げられる。
解膠温度は5~60℃の範囲で行うことができ、好ましくは20~50℃の範囲である。一般に解膠温度が高いほど解膠反応が速くなる。
解膠反応を終了させるムーニー粘度は、本発明の高弾性応力を満足させるものであれば特に限定はしないが、混練作業性を考慮すると20~80が好ましい。
セルロースマイクロファイバーは木材に含まれるセルロースの繊維を平均繊維経が1~100μmまで解繊したものである。解繊処理は主に機械的処理によるものと、化学処理により各種官能基を付与し、機械処理と併用するものがあるが、本発明では主に機械処理により得た、平均繊維経が1~100μmで、平均繊維長が1~500μmであって、セルロースのヒドロキシメチル基がカルボン酸又はカルボン酸塩で変性されていないセルロースマイクロファイバーを使用する。平均繊維経が1μm未満、平均繊維長が1μm未満のセルロースファイバーは凝集力が高いために粉体保管は出来ず、水やトルエンのような溶媒中で保管する必要がある。そのため、ゴムと混合する後にその溶媒を取り除く工程が必要となるため、ゴム組成物の製造コストが高くなる。平均繊維経が100μm、平均繊維長が500μmを超えるセルロースファイバーはゴムに混合しても耐久性の改善効果は得られない。また、セルロースマイクロファイバーがカルボン酸塩又はカルボン酸を有するとゴム中でのセルロースマイクロファイバーの分散状態が悪化し、得られる加硫ゴムの耐久性が低下するため、セルロースマイクロファイバーにはカルボン酸塩及びカルボン酸を含まないものを用いる。
セルロースマイクロファイバーは、化学変性によって疎水化されたものは未変性のものに対して非常に高額になるため、未変性のものが好ましい。
本発明において、セルロースマイクロファイバーの含有量は、クロロプレンゴム100重量部に対して0.01~10重量部である。セルロースマイクロファイバー量が0.01重量部未満である場合には、耐久性の改善効果は得られない。セルロースマイクロファイバーの含有量が10重量部を超える場合には耐久性が悪化し、更に補強性、摩耗性、圧縮永久歪や耐水性の悪化が顕著になる。好ましくは0.01~5重量部、更に好ましくは0.05~2重量部である。
本発明のゴム組成物は、クロロプレンゴムにセルロースマイクロファイバーの粉体を混合することにより得ることができる。
セルロースマイクロファイバーの粉体は、木材やパルプ等を機械処理にて平均繊維径が1~100μm、平均繊維長が1~500μmとなるまで解繊したものである。
本発明において、クロロプレンゴムとセルロースマイクロファイバーを混合する方法としては特に制限はなく、密閉式混合機、混合ロール、押出機などを用いて得ることができる。また、セルロースマイクロファイバーの混合は、各種配合剤と同時に混練することができ、得られたセルロースマイクロファイバー含有クロロプレンゴムは、通常のクロロプレンゴムと同様に加熱により加硫ゴムとすることができる。
本発明の一態様である加硫ゴムは、通常のクロロプレンゴム同様に各種配合剤を配合混練し、上記のゴム組成物を適切な加硫温度で試験材料の最大トルクに対し約90%硬化するまで加硫することにより得られる。得られた加硫ゴムは、同一硬さであるセルロースマイクロファイバーを含有しないクロロプレンゴム加硫物と比較して優れた耐久性を示すため、様々な用途に用いることができる。特に高い耐久性が求められる防振ゴム、ワイパー、CVJブーツ、ボールジョイントブーツ、スポンジへの適用が好ましい。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<コンパウンドの作成>
硫黄変性クロロプレンゴム100重量部に対し、表1に示す重量部のセルロースマイクロファイバー、カーボンブラック(東海カーボン(株)製 シーストSO)、酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製)4重量部、ステアリン酸(新日本理科(株)製)1.5重量部、酸化亜鉛(堺化学(株)製)5重量部、ノンフレックスOD-3(精工化学(株)製)2重量部、ノクラックDP(大内新興化学(株)製)0.35重量部、DOA(大八化学工業(株)製)5重量部をニーダー混練機にて混合し、セルロースマイクロファイバー含有クロロプレンゴムコンパウンドを得た。
<加硫物の作成>
得られたセルロースマイクロファイバー含有クロロプレンゴムコンパウンドを150℃で35分プレス加硫し、加硫シート及び、耐久性試験用試験片、摩耗試験用試験片を作成した。また、150℃で40分加硫し、圧縮永久ひずみ試験用試験片を作成した。
<加硫物の硬さ測定>
得られた加硫シートの硬さをJIS K6253(2012)に従い、評価した。デュロメータにはタイプAを選択した。
<加硫物の耐久性測定>
得られた耐久性試験用試験片をJIS K6260(2017)に従い、あらかじめ切込みを入れた試験片に繰り返し屈曲変形を与え、切込みを起点とした亀裂が成長する速度を評価した。表中の値は亀裂が10mmに達した時の屈曲回数を比較例1の値を100として比で表したものであり、数値が大きいほど耐久性が優れていることを示す。
<加硫物の摩耗性測定>
得られた摩耗試験用試験片をJIS K6264(2005)に従い、評価した。摩耗試験の種類にはDIN摩耗試験を選択した。表中の値は摩耗体積を表したものであり、数値が小さいほど耐摩耗性が優れていることを示す。
<加硫物の圧縮永久ひずみ測定>
得られた圧縮永久ひずみ試験用試験片をJIS K6262(2013)に従い、評価した。
実施例1
クロロプレンゴム100部重量に対して、機械的解繊手段によって製造されたセルロースマイクロファイバーの粉体(レッテンマイヤー(株)製、グレード:ARBOCEL FD40、平均繊維経35μm、平均繊維長250μm、未変性)0.2重量部とカーボンブラック(東海カーボン(株)製 シーストSO)40重量部を各種配合剤と同時にニーダー混練機にて混合し、セルロースマイクロファイバーを含むクロロプレンゴム組成物が得られた。
このセルロースマイクロファイバーを含むクロロプレンゴム組成物を上記方法に従ってセルロースマイクロファイバー含有クロロプレンゴムコンパウンド及び加硫シート、耐久性試験用試験片、摩耗試験用試験片、圧縮永久ひずみ試験用試験片を得て、硬さ及び耐久性試験、摩耗試験、圧縮永久ひずみ試験を実施した。結果を表1に示す。表1から、硬さは69、耐久性は945であり、耐久性は良好であった。また、摩耗体積は91、圧縮永久ひずみは61でありセルロースマイクロファイバーの添加による悪化は確認されなかった。
実施例2
セルロースマイクロファイバーの混合量を、固形部のゴム成分100重量部に対してセルロースマイクロファイバーの含有量が1重量部となる量にした以外は実施例1と同様にセルロースマイクロファイバー含有クロロプレンゴムコンパウンド及び加硫シート、耐久性試験用試験片、摩耗試験用試験片、圧縮永久ひずみ試験用試験片を得て硬さ及び耐久性試験、摩耗試験、圧縮永久ひずみ試験を実施した。結果を表1に示す。硬さは69、耐久性は201であり、耐久性は良好あった。また、摩耗体積は94、圧縮永久ひずみは63でありセルロースマイクロファイバーの添加による悪化は殆ど確認されなかった。
比較例1
セルロースマイクロファイバーの混合量を、固形部のゴム成分100重量部に対してセルロースマイクロファイバーの含有量が20重量部となる量にし、カーボンブラックの含有量が20重量部となるようにした以外は実施例1と同様にセルロースマイクロファイバー含有クロロプレンゴムコンパウンド及び加硫シート、耐久性試験用試験片、摩耗試験用試験片、圧縮永久ひずみ試験用試験片を得て硬さ及び耐久性試験、摩耗試験、圧縮永久ひずみ試験を実施した。結果を表1に示す。硬さは73、耐久性は24であり、耐久性が悪化した。また、摩耗体積は269、圧縮永久ひずみは76でありセルロースマイクロファイバーの添加による悪化が確認された。
比較例2
セルロースマイクロファイバーを混合しなかった以外は実施例1と同様にセルロースマイクロファイバー含有クロロプレンゴムコンパウンド及び加硫シート、耐久性試験用試験片、摩耗試験用試験片、圧縮永久ひずみ試験用試験片を得て硬さ及び耐久性試験、摩耗試験、圧縮永久ひずみ試験を実施した。結果を表1に示す。硬さは69、耐久性は100であり、耐久性は不十分であった。
Figure 2022067231000001

Claims (4)

  1. クロロプレンゴム100重量部に対し、平均繊維径が1~100μmで、平均繊維長が1~500μmであって、セルロースのヒドロキシメチル基がカルボン酸又はカルボン酸塩で変性されていないセルロースマイクロファイバーを0.01~10重量部含むことを特徴とするゴム組成物。
  2. クロロプレンゴムが、カルボン酸又はカルボン酸のアルカリ金属塩を3~7重量%含むクロロプレンゴムであることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
  3. セルロースマイクロファイバーが、未変性のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴム組成物
  4. 請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物の加硫物であることを特徴とする加硫ゴム。
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