JP2022065639A - 積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、優れた帯電防止性と架橋緻密性を持った樹脂層を有する積層フィルム、特にシリコーンによる汚染がなく、優れた剥離性と帯電防止性を両立する積層フィルムを提供することをその課題とする。【解決手段】基材フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有する積層フィルムであって、前記樹脂層が特定の電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)と、ポリチオフェン系化合物(B)を含む、樹脂層であって、かつ飛行時間型2次イオン質量分析により前記樹脂層の表面を分析した際、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.1未満である積層フィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層を有する積層フィルムに関する。
プラスチックフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。これらのプラスチックフィルムは、表面に塗料を塗布し、硬化することで表面に機能性の樹脂層を付与した機能性の積層フィルムの形で使用されることが一般的である。前述の樹脂層の形成においては、塗工性や造膜性の観点からアミノ樹脂、特にメラミン樹脂がしばしば採用される。
また、近年、粘着製品における粘着材層の保護フィルムや、各種工業製品の加工工程におけるキャリアフィルムとして、離型性や帯電防止性に優れたフィルムの需要が高まっている。離型性に優れるフィルムとしては、工業的な生産性や耐熱性の点から、シリコーン化合物とアミノ樹脂を樹脂層に含有せしめたフィルムが一般的に使用されている(特許文献1)。
さらに、シリコーン化合物とアミノ樹脂、帯電防止材料を併用することで帯電防止性との両立を目指す検討がなされている(特許文献2)。しかし、これらシリコーン化合物を樹脂層に含有せしめる場合には、樹脂層の表面自由エネルギーが低くなるため、被着体の塗布性が不良となる場合がある。
一方、シリコーン化合物を含まない離型剤(以下、非シリコーン離型剤と記載する)として、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物、中でも長鎖アルキル基含有樹脂と、緻密な架橋膜を構成可能なアミノ樹脂、帯電防止剤を併用する技術が報告されている(特許文献3)。
特開2017-105092号公報 特開2020-23690号公報 特開2019-131826号広報
上記技術について本発明者らが検討した結果、シリコーン化合物による汚染を回避した引用文献3の処方であっても、帯電防止性が湿度に依存するなど、十分な抵抗値が得られなかった。さらに湿度の影響を受けない電子導電型の帯電防止剤と、アミノ樹脂を併用した際には、抵抗値が不十分となる帯電防止性の悪化が確認された。そこで、本発明では上記の帯電防止性の悪化の原因を明らかにし、適切な設計を施すことで、優れた帯電防止性と、アミノ樹脂特有の架橋緻密性を持った樹脂層を有する積層フィルム、特にシリコーンによる汚染がなく、優れた剥離性と帯電防止性を両立する離型性積層フィルムを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、導電性の化合物と特定のアミノ樹脂の組み合わせにおいて帯電防止性が悪化する現象を確認した。さらに、アミノ樹脂の側鎖を適切に設計することで帯電防止性の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は次の構成からなる。すなわち、
[1]基材フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有する積層フィルムであって、前記樹脂層が少なくとも以下の電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)と、ポリチオフェン系化合物(B)を含む、樹脂層であって、かつ飛行時間型2次イオン質量分析により前記樹脂層の表面を分析した際、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.1未満である、積層フィルム。
<電子供与基>
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル基などの低級アルキル基;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ基などの低級アルコキシ基のいずれかの官能基
[2]前記電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)がメチロール基またはアルキルエーテル基で置換されたアミノ樹脂である、[1]に記載の積層フィルム。
[3]前記電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)がトリアジン環を有し、前記トリアジン環1個当たりのメチロール基とアルキルエーテル基の合計量が3以上6以下であり、かつ、前記トリアジン環1個当たりのイミノ基量が3以下である、[1]または[2]に記載の積層フィルム。
[4]前記樹脂層に対し、部分電子収量法によって測定したXAFSスペクトルのうち、炭素のK吸収端のX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルについて、入射X線と樹脂層面がなす角をθとし、293.5eVのスペクトル強度をI(θ)としたときに、[I(15°)-0.1]/I(90°)>1を満たす、[1]から[3]のいずれかに記載の積層フィルム。
[5]前記樹脂層が離型剤(X)として長鎖アルキル系樹脂を含み、かつ前記長鎖アルキル系樹脂を示差走査熱量計(DSC)で25℃から200℃まで20℃/minで昇温後、200℃から-50℃まで20℃/minで降温した際の、降温過程における発熱ピーク温度(Tc)が30℃以上90℃以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の積層フィルム。
[6]基材フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有する積層フィルムであって、前記樹脂層の表面比抵抗が9.0×10Ω/□以下であり、テープ剥離力が3N/50mm以下であり、かつ飛行時間型2次イオン質量分析により前記樹脂層の表面を分析した際、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.1未満である、積層フィルム。
[7]前記樹脂層に対し、部分電子収量法によって測定したXAFSスペクトルのうち、炭素のK吸収端のX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルについて、入射X線と樹脂層面がなす角をθとし、293.5eVのスペクトル強度をI(θ)としたときに、[I(15°)-0.1]/I(90°)>1を満たす、[6]に記載の積層フィルム。
[8]前記樹脂層が電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)とポリチオフェン系化合物(B)を含み、前記電子供与基がメチロール基またはアルキルエーテル基である、[6]または[7]に記載の積層フィルム。
[9]前記電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)がトリアジン環を有し、トリアジン環1個当たりのメチロール基とアルキルエーテル基の合計量が3以上6以下であり、かつ、トリアジン環1個当たりのイミノ基量が3以下である、[8]に記載の積層フィルム。
[10]前記樹脂層が離型剤(X)として長鎖アルキル系樹脂を含み、かつ前記長鎖アルキル系樹脂を示差走査熱量計(DSC)で25℃から200℃まで20℃/minで昇温後、200℃から-50℃まで20℃/minで降温した際の、降温過程における発熱ピーク温度(Tc)が30℃以上90℃以下である、[6]から[9]のいずれかに記載の積層フィルム。
本発明によれば、優れた帯電防止性と架橋緻密性を持った樹脂層を有する積層フィルム、特にシリコーンによる汚染がなく、優れた剥離性と帯電防止性を両立する積層フィルムを提供することができる。
初めに本発明の積層フィルムの特徴について、特性の意味と制御方法の例について説明する。
まず、樹脂層の形成に際する帯電防止機能の低下(表面比抵抗の悪化)について、本発明者らが検証した結果、単に帯電防止材料の濃度が、その他の成分で希釈されることで性能が悪化する以外に、特定の材料の組み合わせにおいて、導電性が急激に低下することを見出した。すなわち、チオフェン系材料に代表される電子伝導型の帯電防止材料とアミノ樹脂の共存化において、大幅な導電性の悪化を確認した。さらに本発明者らが比較検討を実施した結果、イミノ基を有するアミノ樹脂の併用により、顕著な表面比抵抗の悪化が確認された。
表面比抵抗の悪化が生じる原因については、アミノ樹脂のN元素が持つ非共有電子が、電子伝導型帯電防止材料へと供与されることで、正の電荷単体であるホールが消滅し、材料全体の導電性が低下するものと考えられる。更に、前述の仮説から相対的に電子供与性を弱める作用のあるメチロール基やアルキルエーテル基を有するアミノ樹脂であれば帯電防止性を低下させることがないことを見出した。
すなわち本発明の積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有する積層フィルムであって、前記樹脂層が少なくとも、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル基などの低級アルキル基;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ基などの低級アルコキシ基のいずれかの官能基より選ばれる電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)と、ポリチオフェン系化合物(B)を含む、樹脂層であって、かつ飛行時間型2次イオン質量分析により前記樹脂層の表面を分析した際、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.1未満である積層フィルム、である。
アミノ樹脂(A)が前記電子供与基を含まない場合には、前述の帯電防止成分の悪化を防ぐことができない。一方、ポリチオフェン系化合物(B)を含まない場合には、十分な帯電防止性を樹脂層に付与することが困難となる。以下、本発明の積層フィルムについて詳細に説明する。
<基材フィルム、ポリエステルフィルム>
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有する。以下、本発明の積層フィルムにおける基材フィルムについて詳しく説明する。基材フィルムの種類に特に制限はないが、耐熱性およびコストの観点からはポリエステルフィルムが好適に用いられる(以下、基材フィルムとして用いるポリエステルフィルムを、「基材フィルム」と呼称する場合がある。)。ポリエステルフィルムとは、ポリエステルを主成分とするフィルムをいい、主成分とは、フィルムを構成する樹脂全体を100質量%としたときに、50質量%を超えて含まれる成分をいう。
本発明において基材フィルムは、粒子を含むことができる。粒子を含む場合、その含有量が基材フィルム全体に対して0.1質量%以下であることが好ましい。粒子の含有量を上記の範囲とすることで、内部へイズを0.2%以下とすることができ、透明性に優れた積層フィルムとすることができる。
以下、本発明の積層フィルムの基材フィルムに用いられるポリエステルについて述べる。まずポリエステルとは、エステル結合を主鎖に有する高分子の総称であって、エチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、エチレン-2,6-ナフタレート、ブチレンテレフタレート、プロピレン-2,6-ナフタレート、エチレン-α,β-ビス(2-クロロフェノキシ)エタン-4,4’-ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種の構成成分とするものを好ましく用いることができる。
上記ポリエステルを使用したポリエステルフィルムは、二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。二軸配向ポリエステルフィルムとは、直交する二方向に配向したポリエステルフィルムをいい、これは広角X線回折で二軸配向のパターンを示す。二軸配向ポリエステルフィルムは、一般に、未延伸状態のポリエステルシート又はフィルムを長手方向および長手方向に直交する幅方向に各々2.5~5.0倍程度延伸し、その後、熱処理を施して結晶配向を完了させることにより得られる。二軸配向ポリエステルフィルムは、熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度が十分であり、平面性も良好である。
また、ポリエステルフィルム中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機系易滑剤、顔料、染料、有機又は無機の微粒子、充填剤、帯電防止剤、核剤などがその特性を悪化させない程度に添加されていてもよい。
ポリエステルフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、用途や種類に応じて適宜選択されるが、機械的強度、ハンドリング性などの点から、通常は好ましくは10~500μm、より好ましくは15~250μm、さらに好ましくは20~200μmである。また、ポリエステルフィルムは、単層フィルム、共押出しによる複合フィルム、得られたフィルムを各種の方法で貼り合わせたフィルムのいずれであってもよい。
<樹脂層>
本発明の積層フィルムは、優れた剥離性と帯電防止性を両立させる観点から、基材フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有する。本発明の積層フィルムの樹脂層は、以下の電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)とポリチオフェン系化合物(B)を含むことが重要である。また、当該末端置換されたアミノ樹脂(A)はメチロール基またはアルキルエーテル基で置換されたアミノ樹脂であることが好ましい。なお、以下の電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)について、以下「電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)」ともいうことがある。
<電子供与基>
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル基などの低級アルキル基;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ基などの低級アルコキシ基のいずれかの官能基。
特に好ましい態様としては、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)がトリアジン環構造を有し、トリアジン環1個当たりのメチロール基とアルキルエーテル基の合計量が3以上6以下であり、かつ、トリアジン環1個当たりのイミノ基量が3以下である態様が挙げられる。電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)がトリアジン環構造を有することにより、樹脂層の架橋性が向上し、品位の悪化や樹脂層の削れ、脱落などが軽減される。また、トリアジン環1個当たりのメチロール基とアルキルエーテル基の合計量が3以上であることや、トリアジン環1個当たりのイミノ基量が3以下であることにより、前述の帯電防止性の悪化を抑制する効果が向上する。なお、工業的にトリアジン環1個当たりに末端置換できる官能基の数は最大6個であるため、トリアジン環1個当たりのメチロール基とアルキルエーテル基の合計量は理論上6以下となる。
本発明の積層フィルムの樹脂層は、膜厚が5nmより大きく200nm未満であることが好ましい。樹脂層の膜厚を5nmより大きく200nm未満とすることで、基材フィルムとしてのポリエステルフィルム上に均一な塗布性、離型性を有する樹脂層を設けることが容易となる。樹脂層の膜厚が200nm未満であることにより、製造コストの上昇が抑えられる他、樹脂層を形成するための塗料組成物の塗布時におけるムラやスジの発生が軽減され、積層フィルムの品位が向上する。一方、樹脂層の膜厚が5nmより大きいことで、樹脂層に付与した機能が十分に発揮される。
本発明の樹脂層を得る方法としては、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)とポリチオフェン系化合物(B)を含有する塗料組成物から形成する方法がある。詳細は塗料組成物および製造方法の項に記載する。
一方、本発明の積層フィルムの具体的な樹脂層としては離型層が好ましい。離型層とは、層上にさらに粘着テープやセラミクスラリーなどの被着体を積層後、積層フィルムから前述の被着体を剥離させる工程において、剥離を容易にする役割を担う層である。
本発明の積層フィルムは、樹脂層に対し、部分電子収量法によって測定したXAFSスペクトルのうち、炭素のK吸収端のX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルについて、入射X線と離型層面がなす角をθとし、293.5eVのスペクトル強度をI(θ)としたとき、[I(15°)-0.1]/I(90°)>1を満たすことが好ましい。樹脂層が[I(15°)-0.1]/I(90°)>1を充足するということは、樹脂層の長鎖アルキル基の垂直方向の配向度が高いことを意味し、これにより被着体成分の樹脂層への浸透が起こりにくくなり、被着体の剥離性を良好なものとすることが可能になる。言い換えると、樹脂層が離型層として好適に機能することを意味する。[I(15°)-0.1]/I(90°)は、上記観点からより好ましくは[I(15°)-0.1]/I(90°)>1.2、さらに好ましくは[I(15°)-0.1]/I(90°)>1.4である。[I(15°)-0.1]/I(90°)を上記した好ましい範囲とすることで、テープ剥離力及び被着体の剥離力を良好なものとすることが可能になる。なお、[I(15°)-0.1]/I(90°)>1とする方法としては、樹脂層が離型剤(X)を含む態様とし、その種類や量を調節する方法が挙げられる。離型剤(X)の詳細は後述する。
本発明の積層フィルムは、樹脂層を離型層として機能させる観点から、樹脂層が離型剤(X)として長鎖アルキル系樹脂を含み、かつその長鎖アルキル系樹脂を示差走査熱量計(DSC)で25℃から200℃まで20℃/minで昇温後、200℃から-50℃まで20℃/minで降温した際の、降温過程における発熱ピーク温度(Tc)が30℃以上90℃以下であることが好ましい。当該発熱ピーク温度(Tc)は、より好ましくは35℃以上80℃以下、さらに好ましくは45℃以上70℃以下である。発熱ピーク温度Tcが30℃以上であることで、離型剤(X)の長鎖アルキル基が垂直配向し易くなり、[I(15°)-0.1]/I(90°)>1を満たすことが容易となる。
本発明の積層フィルムにおける樹脂層は、帯電防止性と緻密架橋性を両立する観点から、表面比抵抗が9.0×10Ω/□以下であり、テープ剥離力が3N/50mm以下であることが好ましい。なお、それぞれの特性の測定方法の詳細は後述する。
樹脂層の表面比抵抗が9.0×10Ω/□を超える場合には、十分な帯電防止性が得られないことがある。上記観点から、樹脂層の表面比抵抗は1.0×10Ω/□以下がより好ましく、5.0×10Ω/□以下が特に好ましい。また、樹脂層の表面比抵抗は特に制限はないが、実現可能性の観点から下限は1.0×10Ω/□となる。
樹脂層のテープ剥離力が3N/50mmを超える場合には、塗膜の緻密架橋性が不十分となることがある。上記観点から、樹脂層の樹脂層のテープ剥離力は2.5N/50mm以下がより好ましく、2.0N/50mm以下がさらに好ましい。また、樹脂層のテープ剥離力は小さいほど好ましく特に制限はないが、実現可能性の観点から下限は0.5N/50mmとなる。
本発明の積層フィルムにおける樹脂層は、帯電防止性の観点から、飛行時間型2次イオン質量分析(GCIB-TOF-SIMS)において、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.1未満であることが重要である。
飛行時間型2次イオン質量分析(GCIB-TOF-SIMS)のピーク強度の比(P/K)[-]が0.1を超える場合、樹脂層がポリジメチルシロキサンに由来する成分が多いため、本発明の積層フィルムを電子部品製造用の工程フィルムとして使用した際、製品側へのポリジメチルシロキサンに由来するシリコーン化合物が移行(転写)し、導電不良などのトラブルを招く場合がある。上記観点から、樹脂層の(P/K)[-]は0.01以下がより好ましく、特に制限はないが、実現可能性の観点から0.001(測定下限値)以下がさらに好ましい。
樹脂層の表面比抵抗、テープ剥離力、(P/K)[-]を上記範囲とする方法としては、例えば、後述の電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)とポリチオフェン系化合物(B)、離型剤(X)を含む塗料組成物を、基材フィルムの少なくとも一方の面に塗布し、樹脂層を形成させる方法が好ましい。
<塗料組成物>
以下、本発明の積層フィルムの樹脂層を形成するための好ましい塗料組成物について記載する。本発明の積層フィルムの樹脂層は、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)とポリチオフェン系化合物(B)と、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂を含有する塗料組成物から形成されることが好ましい。ここで電子供与基とは、「メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル基などの低級アルキル基;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ基などの低級アルコキシ基のいずれかの官能基」をいう。かかる構成とすることで、優れた帯電防止性と架橋緻密性を持った樹脂層とすることが容易となる。さらに離型剤(X)を含有することで架橋度が高い樹脂層として、表面層に対する剥離性を良好なものとすることが容易になる。以下、各材料の詳細について説明する。
<電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)>
本発明において用いることのできる、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)としては特に限定されないが、例えば、尿素樹脂やメラミン樹脂、ベンゾグアナミン誘導体樹脂などの末端置換体が好適である。中でも樹脂層の架橋度を高くすることが容易であり、表面に対する剥離力を軽剥離としやすいことからメラミン樹脂の末端置換体がより好ましい。
メラミン樹脂としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン樹脂としては、単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール及びイソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂及び完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。
ここで用いるメラミン樹脂は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル基などの低級アルキル基;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ基などの低級アルコキシ基のいずれかの官能基を有する、電子供与基により末端置換されたメラミン樹脂であり、特に好ましくは、メチロール化メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂及び完全アルキル型メチル化メラミン樹脂である。前述のとおり、電子伝導型の帯電防止剤とイミノ基を有するメラミン樹脂の併用では、顕著な抵抗値の悪化が確認されることからメラミン樹脂に含有されるイミノ基は少ないことが必要である。具体的にはアミノ樹脂(A)がトリアジン環を有し、トリアジン環1個当たりのメチロール基とアルキルエーテル基の合計量が3以上6以下であり、かつ、トリアジン環1個当たりのイミノ基量が3以下であることが好ましい。ここで電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)を複数種類併用する場合には、官能基量はその配合量の質量平均値に相当する。電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)として上記の要件を満たすものを使用することで、優れた帯電防止性と架橋緻密性を持った樹脂層とすることが容易となる。
<ポリチオフェン系化合物(B)>
本発明の積層フィルムの樹脂層を形成する塗料組成物は、成分としてポリチオフェン系化合物(B)を含有する。
ポリチオフェン系化合物(B)としては、例えば、チオフェン環の3位と4位の位置が置換された構造を有する化合物などを用いることができる。更にはチオフェン環の3位と4位の炭素原子に酸素原子が結合した化合物を好適に用いることができる。該炭素原子に直接、水素原子あるいは炭素原子が結合したものは、塗液の水性化が容易でない場合がある。上記化合物は、例えば、特開2000-6324号公報、ヨーロッパ特許602713号、米国特許第5391472号に開示された方法により製造することができるが、これら以外の方法であってもよい。
例えば、3,4-ジヒドロキシチオフェン-2,5、-ジカルボキシエステルのアルカリ金属塩を出発物質として、3,4-エチレンジオキシチオフェンを得た後、ポリスチレンスルホン酸水溶液にペルオキソ二硫酸カリウムと硫酸鉄と、先に得た3,4-エチレンジオキシチオフェンを導入して反応させることにより、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などのポリチオフェンに、ポリスチレンスルホン酸などの酸性ポリマーが複合体化した組成物を得ることができる。
またポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン及びポリスチレンスルホン酸を含む水性の塗料組成物として、H.C.Starck社(ドイツ国)から、“Baytron”Pとして販売されているものなどを用いることができる。
一方、遊離酸状態の酸性高分子としては、例えば高分子カルボン酸、あるいは、高分子スルホン酸、ポリビニルスルホン酸などが挙げられる。高分子カルボン酸としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸が例示される。また、高分子スルホン酸としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸が例示され、特に、ポリスチレンスルホン酸が帯電防止性の点で好ましい。なお、遊離酸は、一部が中和された塩の形をとってもよい。また、共重合可能な他のモノマー、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンなどと共重合した形で用いることもできる。高分子カルボン酸や高分子スルホン酸の分子量は特に限定されないが、塗剤の安定性や帯電防止性の点で、その重量平均分子量は1000以上1000000以下であることが好ましく、より好ましくは5000以上150000以下である。また、発明の特性を阻害しない範囲で、一部、リチウム塩やナトリウム塩などのアルカリ塩やアンモニウム塩などを含んでもよい。ポリ陰イオンが中和された塩の場合も、トーパントとして作用すると考えられる。これは、非常に強い酸として機能するポリスチレンスルホン酸とアンモニウム塩は、中和後の平衡反応の進行により、酸性サイドに平衡がずれるためである。
<樹脂>
本発明において、樹脂層を形成するための塗料組成物に用いることのできる、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)以外の樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂が挙げられる。樹脂は、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)との架橋点となる官能基を含んでいることが好ましい。架橋点となる官能基を含んでいることで、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)との架橋反応が効率的に行われるようになり、樹脂層の架橋度がより高くなる結果、表面層に対する剥離性を良好なものとすることが容易になる。
樹脂層を形成するための塗料組成物における樹脂として用いることができるポリエステル樹脂は、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するもので、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得られるものが好ましい。該ポリエステル樹脂の原料となるジカルボン酸としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,2-ビスフェノキシエタン-p-p’-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸など、及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
該ポリエステル樹脂の原料となるジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチルー1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1、3-シクロブタンジオール、4,4’-チオジフェノール、ビスフェノールA、4、4’-メチレンジフェノール、4、4’-(2-ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェノール、o-、m-、及びp-ジヒドロキシベンゼン、4,4’-イソプロピリデンフェノール、4,4’-イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン-1、2-ジオール、シクロヘキサン-1,2’-ジオール、シクロヘキサン-1、2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオールなどを用いることができる。また、該ポリエステル樹脂として、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などを用いることも可能である。
樹脂層を形成するための塗料組成物における樹脂として用いることができるアクリル樹脂は、特に限定されることはないが、アルキルメタクリレート及び/またはアルキルアクリレートから構成されるものが好ましい。アルキルメタクリレート及び/またはアルキルアクリレートとしては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどを用いるのが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を用いることができる。
樹脂層を形成するための塗料組成物における樹脂として用いることができるウレタン樹脂は、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物を、乳化重合、懸濁重合などの公知のウレタン樹脂の重合方法によって反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
ポリヒドロキシ化合物としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプトラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、グリセリンなどを挙げることができる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチレンプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを用いることができる。
さらに、本発明の積層フィルムの樹脂層は、架橋触媒を含んでいてもよい。架橋触媒を含んでいることで、熱処理時の電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)と樹脂の架橋反応が効率的に行われるようになり、樹脂層の架橋度がより高くなる。その結果、樹脂層に表面層を塗布した際、表面層の樹脂層への浸透がより起こりにくくなり、表面層に対する剥離性を良好なものとすることが容易になる。架橋触媒としては、例えば、p-トルエンスルホン酸などの酸性触媒や、アミン塩系の触媒などを用いることができる。
<離型剤(X)>
本発明の積層フィルムにおける離型剤(X)とは、塗料組成物に含有することにより、樹脂層の表面に離型性(すなわち樹脂の表面自由エネルギーを低下させたり、樹脂の静止摩擦係数を低下させたりする特性)を付与する化合物を示す。本発明において用いることのできる離型剤(X)としては、長鎖アルキル系樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物などが挙げられる。中でも、長鎖アルキル系樹脂は、長鎖アルキル基が主骨格に共有結合された樹脂であり、良好な剥離性を付与できる点で好ましい。長鎖アルキル系樹脂を用いた場合、表面自由エネルギーが低い長鎖アルキル基が離型層の表面に偏析し、表面に対し垂直方向に配向、結晶化する。その結果、末端のメチル基が表面に露出し、表面自由エネルギーを低下させることで軽剥離性が発現する。
また本発明で使用する長鎖アルキル系樹脂は、示差走査熱量計(DSC)で25℃から200℃まで20℃/minで昇温後、200℃から-50℃まで20℃/minで降温した際の、降温過程における発熱ピーク温度(Tc)が30℃以上90℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは35℃以上80℃以下、特に好ましくは45℃以上70℃以下である。発熱ピーク温度Tcが30℃以上であることで、離型層中に含まれる離型剤の長鎖アルキル基が垂直配向し易くなり、[I(15°)-0.1]/I(90°)>1を満たすことが容易となる。
さらに離型剤(X)は、長鎖アルキル基を有する単位からなるブロック共重合体であることがより好ましい。離型剤が長鎖アルキル基を有する単位からなるブロック共重合体であることで、長鎖アルキル基が配向し易くなる。ブロック共重合体の製造方法としては、原子移動ラジカル重合法(ATRP法)以外のリビングラジカル重合法であれば特段の制限はなく、可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT法)有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)、有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)、有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)及びヨウ素移動重合法等の交換連鎖機構のリビングラジカル重合法、並びに、ニトロキシラジカル法(NMP法)等の各種重合方法を採用することができる。これらの中でも、重合の制御性と実施の簡便さの観点から、RAFT法及びNMP法が好ましい。
離型剤(X)における長鎖アルキル基含有モノマーの、長鎖アルキル基非含有モノマーに対する割合はモル比で50~99%であることが好ましく、より好ましくは60~97%、さらに好ましくは70~95%である。長鎖アルキル基含有モノマーを上記の割合とすることで、前述したポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種類の樹脂に対する離型剤(X)の相溶性を高め、分散安定化された塗料組成物を作製することができる。
長鎖アルキル基含有化合物は市販されているものを使用してもよく、具体的には、アシオ産業社製の長鎖アルキル系化合物である“アシオレジン”(登録商標)シリーズ、一方社油脂社製の長鎖アルキル化合物である“ピーロイル”シリーズ、中京油脂社製の長鎖アルキル系化合物の水性分散体である“レゼム”シリーズなどを使用することができる。離型剤(X)は、炭素数12以上のアルキル基を有することが好ましく、炭素数16以上のアルキル基を有することがより好ましい。アルキル基の炭素数を12以上にすることで、疎水性が高まることとなり、離型剤(X)として十分な離型性能を発現させることができる。アルキル基の炭素数の上限は特に限定されるものではないが、25以下であると製造が容易であるため好ましい。
前記炭素数12以上のアルキル基を有する樹脂は、ポリメチレンの主鎖に炭素数12以上のアルキル基の側鎖を有する樹脂であることがより好ましい。主鎖がポリメチレンであることで、樹脂全体の親水基が少なくなるため、離型剤(X)の離型効果をより優れたものとすることができる。
<塗料組成物の好ましい組成>
本発明の積層フィルムの樹脂層は、離型剤(X)と、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)と、ポリチオフェン系化合物(B)を含有する塗料組成物から形成されることが好ましく、当該塗料組成物は、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)とポリチオフェン系化合物(B)の合計100質量部に対して、離型剤(X)を0~60質量部含有することが好ましい。より好ましくは40~50質量部である。離型剤(X)を60質量部以下とすることで、後加工時のハジキやピンホールといった欠点が抑制されるだけでなく、塗料組成物中のアミノ樹脂(A)が占める割合が十分大きくなる。その結果、樹脂層の架橋度が高くなり、特に表面層に対する剥離性を良好なものとすることができる。なお、ここで「0質量部」とは離型剤(X)を含まないことを意味する。
本発明の積層フィルムの樹脂層をなす塗料組成物は、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)とポリチオフェン系化合物(B)の質量比が95/5~60/40の範囲であることが好ましい。より好ましくは90/10~70/30の範囲である。かかる範囲とすることで、本発明が課題とする緻密架橋と帯電防止を両立しやすくすることが出来る。
<製造方法>
本発明の積層フィルムにおいて、基材フィルムの少なくとも片面に樹脂層を設ける方法は、インラインコート法、オフコート法のどちらでも用いることができるが、好ましくはインラインコート法である。インラインコート法とは、ポリエステルフィルムの製造の工程内で塗布を行う方法である。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)ポリエステルフィルム(Aフィルム)、その後に長手方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)ポリエステルフィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)ポリエステルフィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
一方、オフラインコート法とは、上記Aフィルムを一軸又は二軸に延伸し、加熱処理を施しポリエステルフィルムの結晶配向を完了させた後のフィルム(Cフィルム)に、フィルムの製膜工程とは別工程で樹脂組成物を塗布する方法である。
本発明では、インラインコート法によって積層フィルムを製造することが好ましい。インラインコート法によって製造することで、例えば二軸延伸されたPETフィルム上にオフコートによって樹脂層を形成させるよりも、より低コストで積層フィルムを製造できるだけでなく、オフコートでは実質的に不可能である200℃以上の高温熱処理を施すことにより、樹脂層の緻密架橋を促進することができ、特に離型層を形成する場合には、剥離力を小さくすることができる。特に、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗料組成物を塗布した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を施して、該ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる製造方法によって製造されることが、製造コストおよび熱処理後の寸法安定性、熱収縮特性、および樹脂層の緻密性の観点から好ましい。
<塗布方式>
ポリエステルフィルムへの樹脂組成物の塗布方式は、公知の塗布方式、例えばバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法等の任意の方式を用いることができる。ここで、ポリエステルフィルムと樹脂層の密着性について説明する。
通常のオフコート法でポリエステルフィルム上に樹脂層を設けると、低表面エネルギーである樹脂層はフィルムとの密着性に乏しいため、フィルムロールの巻き直しなどを行った場合に樹脂層が削れてしまい、剥離力が悪化するといった問題が生じる場合がある。しかし、インラインコート法によって樹脂層を積層した場合には、結晶配向完了前のポリエステルフィルムへ塗料組成物を塗布することで、ごく微量の塗料組成物がポリエステルフィルムへ浸透するため、樹脂層と熱可塑性樹脂フィルムの密着性を付与することができる。その結果、優れた剥離力を実現することができる。
<樹脂層の形成方法>
本発明では、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、塗料組成物を塗布した後、乾燥せしめることにより樹脂層を形成させることが好ましい。本発明において、塗料組成物に溶媒を含有せしめる場合は、溶媒として水系溶媒を用いることが好ましい。水系溶媒を用いることで、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発を抑制でき、均一かつ高品位な樹脂層を形成できるだけでなく、環境負荷の点で優れる。
ここで、水系溶媒とは、水、または水とメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など水に可溶である有機溶媒が、相分離することのない任意の比率で混合させているものを指す。
塗料組成物のフィルムへの塗布方法は、前述したとおり、インラインコート法であることが好ましい。具体的には、ポリエステル樹脂を溶融押し出ししてから二軸延伸後熱処理して巻き上げるまでの任意の段階で塗布を行う方法を指し、通常は、溶融押出し後・急冷して得られる実質的に非晶状態の未延伸(未配向)フィルム(Aフィルム)、その後に長手方向または幅方向に延伸された一軸延伸(一軸配向)フィルム(Bフィルム)、またはさらに幅方向または長手方向に延伸された熱処理前の二軸延伸(二軸配向)フィルム(Cフィルム)の何れかのフィルムに塗布する。
本発明では、結晶配向が完了する前の上記Aフィルム、Bフィルム、の何れかのフィルムに、塗料組成物を塗布し、その後、フィルムを一軸方向又は二軸方向に延伸し、溶媒の沸点より高い温度で熱処理を施しフィルムの結晶配向を完了させるとともに樹脂層を設ける方法を採用することが好ましい。この方法によれば、フィルムの製膜と、塗料組成物の塗布乾燥(すなわち、樹脂層の形成)を同時に行うことができるために製造コスト上のメリットがあるほか、前述の基材密着性を確保することが容易となる。
中でも、長手方向に一軸延伸されたフィルム(Bフィルム)に、塗料組成物を塗布し、その後、幅方向に延伸し、熱処理する方法が優れている。未延伸フィルムに塗布した後、二軸延伸する方法に比べ、延伸工程が1回少ないため、延伸による樹脂層の欠陥や亀裂が発生しづらく、平滑性に優れた樹脂層を形成できるためである。また、先述の通り、結晶配向完了前のフィルムへ塗料組成物を塗布することで、樹脂層とポリエステルフィルムとの密着性を付与することができる。
従って、本発明において好ましい樹脂層の形成方法は、水系溶媒を用いた塗料組成物を、ポリエステルフィルム上にインラインコート法を用いて塗布し、乾燥、熱処理することによって形成する方法である。またより好ましくは、一軸延伸後のBフィルムに塗料組成物をインラインコートする方法である。本発明の積層フィルムの製造方法において、乾燥は塗料組成物の溶媒の除去を完了させるために、80~130℃の温度範囲で実施することができる。また、熱処理はポリエステルフィルムの結晶配向を完了させるとともに塗料組成物の熱硬化を完了させ樹脂層の形成を完了させるために、160~240℃の温度範囲で実施することができる。特に好ましくは180~240℃である。熱処理温度が160℃に満たない場合には、基材の耐熱性が低下するなど基材フィルムであるポリエステルの性能が低下するばかりでなく、本発明が課題とする樹脂層の緻密架橋性を得ることが困難である。例えば、樹脂層が離型層である場合には、剥離性の悪化を招く場合がある。
さらに塗料組成物の固形分濃度は40質量%以下であることが好ましい。固形分濃度を40質量%以下とすることにより、塗料組成物に良好な塗布性を付与でき、均一な樹脂層を有する積層フィルムを製造することができる。
なお、固形分濃度とは、塗料組成物の質量に対して、塗料組成物の質量から溶媒の質量を除いた質量が占める割合を表す(すなわち、[固形分濃度]=[(塗料組成物の質量)-(溶媒の質量)]/[塗料組成物の質量]である。)。
<積層フィルムの製造方法>
次に、本発明の積層フィルムの製造方法について基材フィルムがポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである例を用いて具体的に説明するが、本発明の積層フィルムは当該製造方法により得られたものに限定されない。
まず、PETペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、約280℃でシート状に溶融押出し、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルム(Aフィルム)を作製する。このAフィルムを80~120℃に加熱したロールで長手方向に2.5~5.0倍延伸して一軸配向PETフィルム(Bフィルム)を得る。このBフィルムの片面に所定の濃度に調製した塗料組成物を塗布する。この時、塗布前にPETフィルムの塗布面にコロナ放電処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ放電処理等の表面処理を行うことで、樹脂組成物のPETフィルムへの濡れ性を向上させ、樹脂組成物のハジキを防止し、均一な塗布厚みを達成することができる。
塗布後、PETフィルムの端部をクリップで把持して80~130℃の熱処理ゾーン(予熱ゾーン)へ導き、塗料組成物の溶媒を乾燥させ、乾燥後幅方向に1.1~5.0倍延伸する。引き続き150~250℃の加熱ゾーン(熱処理ゾーン)へ導き1~30秒間の熱処理を行い、結晶配向を完了させるとともに、樹脂層の形成を完了させる。この加熱工程(熱処理工程)により、樹脂層の架橋が促進されると考えている。なお、この加熱工程(熱処理工程)で、必要に応じて幅方向、あるいは長手方向に3~15%の弛緩処理を施してもよい。このようにして積層フィルムを得ることができ、得られた積層フィルムはロール状に巻き取ってフィルムロールとすることもできる。
<第二の態様>
本発明の積層フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有する積層フィルムであって、前記樹脂層の表面比抵抗が9.0×10Ω/□以下であり、テープ剥離力が3N/50mm以下であり、かつ飛行時間型2次イオン質量分析により前記樹脂層の表面を分析した際、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.1未満である、積層フィルム、とすることもできる。なお、それぞれの特性の測定方法の詳細は後述する。
樹脂層の表面比抵抗が9.0×10Ω/□を超える場合には、十分な帯電防止性が得られないことがある。上記観点から、樹脂層の表面比抵抗は1.0×10Ω/□以下がより好ましく、5.0×10Ω/□以下が特に好ましい。また、樹脂層の表面比抵抗の下限は特に制限はないが、実現可能性の観点から下限は1.0×10Ω/□となる。
樹脂層のテープ剥離力が3N/50mmを超える場合には、塗膜の緻密架橋性が不十分となることがある。上記観点から、樹脂層の樹脂層のテープ剥離力は2.5N/50mm以下がより好ましく、2.0N/50mm以下がさらに好ましい。また、樹脂層のテープ剥離力は小さいほど好ましく特に制限はないが、実現可能性の観点から下限は0.5N/50mmとなる。
飛行時間型2次イオン質量分析(GCIB-TOF-SIMS)のピーク強度の比(P/K)[-]が0.1を超える場合、樹脂層がポリジメチルシロキサンに由来する成分が多いため、本発明の積層フィルムを電子部品製造用の工程フィルムとして使用した際、製品側へのポリジメチルシロキサンに由来するシリコーン化合物が移行し、導電不良などのトラブルを招く場合がある。上記観点から、樹脂層の(P/K)[-]は0.01以下がより好ましく、特に制限はないが、実現可能性の観点から0.001(測定下限値)以下がさらに好ましい。
樹脂層の表面比抵抗、テープ剥離力、(P/K)[-]を上記範囲とする方法としては、例えば、前述の電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)とポリチオフェン系化合物(B)、離型剤(X)を含む塗料組成物を、基材フィルムの少なくとも一方の面に塗布し、樹脂層を形成させる方法が好ましい。
また、第2の態様の積層フィルムにおいては、[I(15°)-0.1]/I(90°)>1を満たすことが好ましく、樹脂層が電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)とポリチオフェン系化合物(B)を含み、前記電子供与基がメチロール基またはアルキルエーテル基であることも好ましい。また、電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)がトリアジン環を有し、前記トリアジン環1個当たりのメチロール基とアルキルエーテル基の合計量が3以上6以下であり、かつ、トリアジン環1個当たりのイミノ基量が3以下であることも好ましい。樹脂層が離型剤(X)として長鎖アルキル系樹脂を含み、かつ長鎖アルキル系樹脂を示差走査熱量計(DSC)で25℃から200℃まで20℃/minで昇温後、200℃から-50℃まで20℃/minで降温した際の、降温過程における発熱ピーク温度(Tc)が30℃以上90℃以下であることも好ましい。各パラメータの定義、より好ましい範囲は、これまでに述べたものと同様である。
以下、実施例を用いて本発明の積層フィルムについてより具体的に説明するが、本発明の積層フィルムはこれに限定されない。
<特性の測定方法及び効果の評価方法>
本発明における特性の測定方法、及び効果の評価方法は次の通りである。
(1-1)樹脂層中のアミノ樹脂の分析方法
樹脂層を形成する樹脂中のアミノ樹脂構造の確認方法は、特に特定の手法に限定されないが、以下のような方法が例示できる。例えば、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)による側鎖の構造に由来する重量ピークの有無を確認した。次に、フーリエ変換型赤外分光(FT-IR)にて、式側鎖構造が有する各原子間の結合に由来するピークの有無を確認した。さらに、プロトン核磁気共鳴分光(H-NMR)およびカーボン核磁気共鳴分光(13C-NMR)にて、各構造が有する水素ならびに炭素原子の位置に由来する化学シフトの位置と水素および炭素原子の個数に由来する吸収線面積を確認した。これらの結果を合わせて樹脂層中のアミノ樹脂を確認した。
(1-2)塗料組成物中のアミノ樹脂の分析方法
塗料組成物中のアミノ樹脂の各官能基の量については、例えば水素核磁気共鳴(H-NMR)分析で求めた。具体的にはメラミン化合物の場合には、H-NMR分析法では、Bruker AC-200 NMR測定装置で5mmの溶液プローブを用いて、30℃で、20Hzでスピニングし、積算間隔(acquisition time)4秒、スキャン32回、および200.13MHzのスペクトル周波数で繰返し遅延時間(recycle delay)22.5秒を用いて測定した。ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)標準原液(HMDS0.05wt.%)を、HMDS100mgをアセトン-d6に溶解することによって調製した。試料は、約20mgのメラミン化合物を名目上500μlの原液に溶解することによって調製した。スペクトルの基準化は、HMDSのメチルピークを0.0ppmと基準設定することによって行った。例えば「イミノ基含有量」は、7.0ppm(7.3から6.7ppmを積分)の>NHピークによって定量化した。
HMDSのモル数=(原液の質量)(0.0005)/162.38g/モル
NHのモル数=(NHの面積)(18)(HMDSのモル数)/(HMDSの面積)
イミノ含有量=(NHのモル数)(15.01g/モル)/(試料の質量)
因数162.38は、HMDSの分子量であり、18はHMDS1モル中のメチルプロトンの数であり、15.01はイミノ基の分子量である。アルコキシメチル基(>N-CHOR)、メチロール基(>N-CHOH)についても同様に定量を実施した。
(2)ポリチオフェン系化合物の有無
本発明の樹脂層がポリチオフェン系化合物を含むかどうかは樹脂層の赤外-可視スペクトルによって判断した。ポリチオフェン系化合物において典型的に観察されるモードは、689cm-1、842cm-1および979cm-1におけるC-S結合の振動モード、ならびに922cm-1におけるエチレンジオキシ環変形モードである。具体的には樹脂層を片刃で削り取り、KBR錠を形成した後、(株)パーキンエルマー製のFrontier FT-IRを用いてスペクトル強度を測定した。分光器の分解能は1cm-1、スペクトルの積算回数は32回として測定した。スペクトル強度は、各波長での吸光度(arb.unit)とし、前述のピークの有無により、ポリチオフェン系化合物の有無を判定した。
(3)帯電防止性能
表面比抵抗の測定は、測定する積層フィルムを作製後、相対湿度23%、25℃において24時間放置し、その雰囲気下でデジタル超高抵抗/微小電流計R8340Aおよびレジスティビティ・チェンバ 12702A(アドバンテスト(株)製、主電極:Φ50mm、対抗電極:Φ103mm)を用い、印加電圧100V、10秒間印加後、測定を行った。表面比抵抗の単位は、Ω/□である。積層フィルムの樹脂層側を評価し、合計10回測定した平均値をサンプルの表面比抵抗とした。なお、帯電防止性能は表面比抵抗に基づいて評価し、9.0×10Ω/□以下は実用使用可能なレベル、9.0×10Ω/□を超える場合は実用上問題あるレベルとした。
(4)テープ剥離力
テープ剥離力は下記の通り測定した。まず、アクリル系ポリエステル粘着テープ(日東電工社製、日東31Bテープ、19mm幅)を、積層フィルムの樹脂層上に貼り合わせ、その上から荷重2kgfのローラを1往復させ、テープ貼合積層フィルムを作製した。テープ貼合積層フィルムを25℃65%RHの環境下に24時間静置した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG‐1S」を用いて、剥離角度180°、引張速度300mm/分で剥離力(N/19mm)を測定した。測定により得られた、剥離力(N/19mm)-試験時間(sec)のグラフから、5~10secにおける剥離力の平均値を算出した。この測定を5回行い、最大値と最小値を省いた3回の平均を積層フィルムの剥離力(N/19mm)とし、その値をN/50mmに換算した値を初期テープ剥離力とした(すなわち、[初期テープ剥離力(N/50mm)]=[剥離力(N/19mm)]/19×50)。
(5)樹脂層表面の組成の分析方法
GCIB-TOF-SIMS(GCIB:ガスクラスターイオンビーム、TOF-SIMS:飛行時間型2次イオン質量分析法)を用いて、積層フィルムの樹脂層表面の組成を分析した。測定条件は、下記の通りである。測定により得られたチャートにおいて、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度をK、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメント(SiCH フラグメントイオン(M/Z=43))のピーク強度をPとし、その比P/Kを算出した。P/K<0.1の場合、樹脂層は実質的にシリコーン化合物を含んでいないと判断した。
<スパッタリング条件>
イオン源:アルゴンガスクラスターイオンビーム
<検出条件>
1次イオン:Bi3++(25keV)
2次イオン極性:Negative
質量範囲:m/z 0~1000
測定範囲:200×200μm
(6)樹脂層の厚み
積層フィルムをRuO及び/またはOsOを用いて染色した。次に、積層フィルムを凍結せしめ、フィルム厚み方向に切断して樹脂層断面観察用の超薄切片サンプルを10点(10個)得た。それぞれのサンプル断面をTEM(透過型電子顕微鏡:(株)日立製作所製H7100FA型)にて1万~100万倍で観察し、断面写真を得た。その10点(10個)のサンプルの樹脂層厚みの測定値を平均して、積層フィルムの樹脂層厚みとした。
(7)転写防止性
転写防止性については、「貼り付け剥離した後の粘着テープ剥離力(P1)」(後述)/「テープ剥離力(4)」の比を100倍の値[%]をもとに判定した。以下に測定方法を述べる。なお、ここでテープ剥離力(4)とは、「(4)テープ剥離力」に記載の方法で測定したテープ剥離力を意味する。
(7-1)貼り付け剥離した後の粘着テープ剥離力(P1)
本発明の積層フィルムの樹脂層側に粘着テープ(日東電工社製ポリエステルテープNo.31B、幅19mm)を5kgのゴムローラーを1往復させて圧着し、23℃/65%RHの環境で24時間静置した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG-1S」及び50Nロードセルを用いて、剥離速度300mm/minにて180°剥離試験を実施し、粘着テープを剥離した。その後、剥離した粘着テープを、ステンレス板(SUS304番)に貼り付け、23℃/65%RHの環境で24時間静置した後、島津(株)製万能試験機「オートグラフAG-1S」及び50Nロードセルを用いて、剥離速度300mm/minにて180°剥離試験を行った。測定により得られた、剥離力(N)-試験時間(sec)のグラフから、5~10secにおける剥離力の平均値を算出した。この測定を5回行い、最大値と最小値を省いた3回の平均を、初期粘着テープ剥離力(P1)とした。
(7-2)転写防止性の評価
得られた剥離力について、「貼り付け剥離した後の粘着テープ剥離力(P1)」/「テープ剥離力(4)」×100[%]の値をもとに転写防止性を判定した。A以上のものを良好とし、Bは実用上問題ないレベルとした。
S:95%以上
A:90%以上95%未満
B:85%以上90%未満
C:85%未満。
(8)ヘイズ
東洋精機(株)製直読ヘイズメーターを用いて、積層フィルムの23℃でのヘイズ(%)を3回測定し、平均値を当該積層フィルムのヘイズ(%)とした。
(9)X線吸収端近傍構造(XANES)スペクトル
積層フィルムの樹脂層面と反対面側に研磨処理を行い、積層フィルムの厚みを10μmに調整した。研磨処理後の積層フィルムから、長手方向12mm、幅方向6mmに切り出し、測定サンプルとした。次いで、測定サンプルの樹脂層面にX線を照射し、その吸収量を計測することにより、X線吸収微細構造(XAFS:X-ray Absorption Fine Structure)スペクトルを測定した。測定条件および解析条件は下記の通りとした。
分光器:回折格子分光器
吸収端:炭素のK(284.2eV)吸収端
E0:287.319eV
Pre-edge range:-20~10eV
Normalization range:15~70eV
横軸補正:高配向性熱分解グラファイトのΠ*ピークを255.5eVに補正
上記XAFSスペクトル中、炭素のK吸収端のX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルについて、入射X線と積層フィルムの樹脂層面の長手方向ベクトルのなす角をθとし、部分電子収量法によって得られる293.5eVのスペクトル強度をIθとした。θが15°におけるスペクトル強度I(15°)、θが90°におけるスペクトル強度I(90°)の値を式[I(15°)-0.1]/I(90°)に適用し、値を算出した。
(10)示差走査熱量計(DSC)降温過程における発熱ピーク温度Tc
離型剤(X)、または積層フィルムの表面から切削した樹脂層を直径5cmのアルミカップに1g入れ、熱風オーブン内で、80℃×24時間の温度条件で乾燥させ、乾燥した離型剤(X)、または離型層の固形サンプルを作製した。作製した固形サンプルを3mg採取し、示差走査熱量計((株)日立ハイテクサイエンス製DSC6220)を用いて測定した。まず、窒素雰囲気中で、25℃から200℃まで20℃/minの条件で昇温し、200℃で5分間保持した。その後、20℃/minの条件で-50℃まで降温し、この降温時に得られるカーブのピーク温度を計測した。本測定を3回行った平均値をTcとした。このとき、融解ピーク温度が、前記温度範囲の中で2つ以上観測される場合や、ショルダーと言われる多段型のDSCチャートに観測できるピーク温度(2つ以上のピークが重なり合ったチャートの場合に観測される)となる場合があるが、本発明においては、DSCチャートの縦軸の熱量(単位:mW)の絶対値が最も大きいビーク温度をTc(℃)とした。
<積層フィルムの製造に用いた樹脂等>
・離型剤1:長鎖アルキル系樹脂
4つ口フラスコにキシレン200質量部、オクタデシルイソシアネート600質量部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100質量部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行って反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してからメタノール中に加え、反応生成物を白色沈殿として析出させ、この沈殿を濾別した後、キシレン140部を加えて加熱することで完全に溶解させた。その後、再びメタノールを加えて沈殿させる操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄して乾燥粉砕することで、長鎖アルキル基含有樹脂(a-1:ポリメチレンを主鎖として側鎖に炭素数18のアルキル基を有する。)を得た。これを水で希釈し、20質量%に調製した。
・離型剤2:シリコーン樹脂
シリコーン系樹脂として、信越化学工業(株)製KM-3951、信越化学工業(株)製X-52-6015、信越化学工業(株)製CAT-PM-10Aを質量比85:15:5で混合したものを調製した。
・離型剤3:長鎖アルキル系樹脂
25mL耐圧ガラス製重合用アンプルに、メタクリル酸メチル(MMA)(関東化学(株)社製)、重合開始剤としてα,α’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(関東化学(株)社製)、RAFT剤としてクミルジチオベンゾエート(CDB)、および溶媒であるトルエンを、MMA/CDB/AIBN/トルエン=2.92/0.03/0.007/2.27の重量(g)で仕込んだ。次に、アンプル内の混合溶液を凍結脱気法により2回脱気した後、アンプルを密閉して100℃のオイルバス中で18時間加熱し、重合溶液1を得た。次に、アンプル内の反応液に、ドコシルアクリレート、重合開始剤としてAIBN、および溶媒であるトルエンを、ドコシルアクリレート/AIBN/トルエン=1.37/0.003/1.3の重量(g)で加え、凍結脱気を2回行った後、アンプルを密閉して100℃で48時間加熱した。その後、重合溶液1を20倍質量のヘキサンに滴下し、撹拌して固体を析出させた。得られた固体を濾過し、40℃で一晩真空乾燥して炭素数22のアルキル基を有する長鎖アルキル系樹脂(a-2)を得た。得られた長鎖アルキル系樹脂(a-2)を以下の様に乳化し、水系樹脂エマルションとした。容量1Lのホモミキサーに375gの水を入れ、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル45g、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール30g、長鎖アルキル系樹脂(a-2)を200g、トルエン150gを順次加えた後、70℃に加熱して均一に撹拌した。この混合液を加圧式ホモジナイザーに移して乳化を行った後、さらに加温下で減圧しトルエンを留去した。
・架橋剤a1:アミノ樹脂(イミノ化メラミン)
(株)三和ケミカル製、“ニカラック”(登録商標)MX-730(固形分濃度70質量%、溶媒:水)を用いた。
・架橋剤a2:アミノ樹脂(メチロール化メラミン)
(株)三和ケミカル製、“ニカラック”(登録商標)MW-035(固形分濃度70質量%、溶媒:水)を用いた。
・架橋剤a3:アミノ樹脂(メチルエーテル型メラミン)
サイメル303LF(フルエーテル型メチル化メラミン樹脂 固形分濃度100% オルネクスジャパン(株)製)を用いた。
・導電材1:ポリチオフェン系化合物
酸性ポリマー化合物であるポリスチレンスルホン酸を20.8質量部含む1887質量部の水溶液中に、1質量%硫酸鉄(III)水溶液49質量部、チオフェン化合物である3,4-エチレンジオキシチオフェン8.8質量部、および10.9質量%のペルオキソ二硫酸水溶液117質量部を加えた。この混合物を18℃で23時間攪拌し、この混合物に154質量部の陽イオン交換樹脂(レバチット モノプラス S100H)および232質量部の陰イオン交換樹脂(レバチット モノプラス M800)を加えて、2時間攪拌した後、イオン交換樹脂をろ別して、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる混合物の導電材1(固形分濃度は1.3重量%)を得た。
・樹脂1:アクリル樹脂
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(α)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(β)、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製、“アートレジン”(登録商標)UN-3320HA、アクリロイル基の数が6)(γ)を(α)/(β)/(γ)=94/1/5の質量比で仕込み、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを(α)~(γ)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液1を調製した。次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を準備した。上記混合液1を60質量部と、イソプロピルアルコール200質量部、重合開始剤として過硫酸カリウム5質量部を反応装置に仕込み、60℃に加熱して混合液2を調製し、これを60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。次に、40質量部の混合液1とイソプロピルアルコール50質量部、過硫酸カリウム5質量部からなる混合液3を調製した。続いて、滴下ロートを用いて混合液3を2時間かけて混合液2へ滴下し、混合液4を調製した。その後、混合液4は60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液4を50℃以下に冷却した後、攪拌機、減圧設備を備えた容器に移した。そこに、25%アンモニア水60質量部、及び純水900質量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコール及び未反応モノマーを回収し、純水に分散されたアクリル樹脂を得た。
(実施例1)
・塗料組成物1
架橋剤a1/架橋剤a2/導電材1/樹脂1/離型剤1を、固形分質量比で20/10/10/40/20となるように混合した。さらに、ポリエステルフィルムへの塗布性を向上するために、フッ素系界面活性剤(互応化学工業(株)製“プラスコート”(登録商標)RY-2)を、上記の混合した塗料組成物全体100質量部に対して0.1質量部になるように添加した。
・ポリエステルフィルム:
2種類の粒子(1次粒径0.3μmのシリカ粒子を4質量%、1次粒径0.8μmの炭酸カルシウム粒子を2質量%)を含有したPETペレット(極限粘度:0.64dl/g)を十分に真空乾燥した後、押出機に供給して280℃で溶融してT字型口金よりシート状に押出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルム(Aフィルム)を90℃に加熱して長手方向に3.1倍延伸し、一軸延伸フィルム(Bフィルム)とした。
・積層フィルム
一軸延伸フィルム(Bフィルム)に空気中でコロナ放電処理を施した後、表に示す塗料組成物を、バーコートを用いて塗布厚み約6μmで塗布した。続いて、塗料組成物を塗布した一軸延伸フィルムの幅方向の両端部をクリップで把持して予熱ゾーンに導いた。予熱ゾーンの雰囲気温度は90~100℃にし、塗料組成物の溶媒を乾燥させた。引き続き、連続的に100℃の延伸ゾーンで幅方向に3.6倍延伸した後、240℃の熱処理ゾーンで20秒間熱処理を施して樹脂層を形成せしめ、さらに同温度にて幅方向に5%の弛緩処理を施すことにより、ポリエステルフィルムの結晶配向の完了した積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいてPETフィルムの厚みは50μm、樹脂層の厚みは50nmであった。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(実施例2)
・塗料組成物2:
架橋剤a1/架橋剤a2/導電材1/樹脂1/離型剤1を、固形分質量比で15/15/10/40/20となるように混合し、以下塗料組成物1と同様に調製した。塗料組成物2を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(実施例3)
・塗料組成物3:
架橋剤a2/導電材b1/樹脂1/離型剤1を、固形分質量比で30/10/40/20となるように混合し、以下塗料組成物1と同様に調製した。塗料組成物3を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(実施例4)
・塗料組成物4:
塗料組成物3の架橋剤a2を架橋剤a3に変更した以外は同様に調製した塗料組成物(塗料組成物4)を用いた点を除き、実施例3と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(実施例5)
・塗料組成物5:
架橋剤a1/架橋剤a2/導電材1/樹脂1を、固形分質量比で20/10/10/40となるように混合し、以下塗料組成物1と同様に調製した。塗料組成物5を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(実施例6)
・塗料組成物6:
架橋剤a1/架橋剤a2/導電材1/樹脂1を、固形分質量比で15/15/10/40となるように混合し、以下塗料組成物1と同様に調製した。塗料組成物6を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(実施例7、8)
樹脂層の厚みが10nm、180nmになるようにバーコートを調整した以外は実施例3と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(実施例9)
・塗料組成物8:
離型剤1と離型剤2を表1の比率で併用した以外は塗料組成物3と同様に調製した塗料組成物(塗料組成物8)を使用した点を除き、実施例3と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(実施例10)
・塗料組成物13:
離型剤1を離型剤3に変更した以外は塗料組成物3と同様に調製した塗料組成物(塗料組成物13)を使用した点を除き、実施例3と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(実施例11)
・塗料組成物14:
架橋剤a2/導電材1/樹脂1/離型剤3を、固形分質量比で40/10/10/40となるように混合し、以下塗料組成物1と同様に調製した。塗料組成物14を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(比較例1)
・塗料組成物9:
架橋剤a2を架橋剤a1に変更した以外は塗料組成物3と同様に調製した塗料組成物(塗料組成物9)を使用した点を除き、実施例3と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(比較例2)
・塗料組成物10:
架橋剤a1/導電材1/樹脂1を、固形分質量比で35/15/50となるように混合し、以下塗料組成物1と同様に調製した。塗料組成物10を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(比較例3)
・塗料組成物11:
導電材1/樹脂1/離型剤1を、固形分質量比で20/50/30となるように混合し、以下塗料組成物1と同様に調製した。塗料組成物11を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(比較例4)
・塗料組成物12:
架橋剤a2/樹脂1/離型剤1を、固形分質量比で30/50/20となるように混合し、以下塗料組成物1と同様に調製した。塗料組成物12を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
(比較例5)
・塗料組成物7:
離型剤1を離型剤2に変更した以外は塗料組成物3と同様に調製した塗料組成物(塗料組成物7)を使用した点を除き、実施例3と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性等を表に示す。
Figure 2022065639000001
Figure 2022065639000002
Figure 2022065639000003
Figure 2022065639000004
本発明の積層フィルムは、表面の帯電防止性と緻密架橋性に優れることから、工程用の離型フィルム、特にセラミックスラリーに代表される表面層の塗布性、及び剥離性に優れ、積層型セラミック電子部品、特にインダクタ素子の製造工程用の工程フィルムとして好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. 基材フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有する積層フィルムであって、前記樹脂層が少なくとも以下の電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)と、ポリチオフェン系化合物(B)を含む、樹脂層であって、かつ飛行時間型2次イオン質量分析により前記樹脂層の表面を分析した際、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.1未満である、積層フィルム。
    <電子供与基>
    メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル基などの低級アルキル基;ヒドロキシル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ基などの低級アルコキシ基のいずれかの官能基
  2. 前記電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)がメチロール基またはアルキルエーテル基で置換されたアミノ樹脂である、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)がトリアジン環を有し、前期トリアジン環1個当たりのメチロール基とアルキルエーテル基の合計量が3以上6以下であり、かつ、前記トリアジン環1個当たりのイミノ基量が3以下である、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 前記樹脂層に対し、部分電子収量法によって測定したXAFSスペクトルのうち、炭素のK吸収端のX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルについて、入射X線と樹脂層面がなす角をθとし、293.5eVのスペクトル強度をI(θ)としたときに、[I(15°)-0.1]/I(90°)>1を満たす、請求項1から3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 前記樹脂層が離型剤(X)として長鎖アルキル系樹脂を含み、かつ前記長鎖アルキル系樹脂を示差走査熱量計(DSC)で25℃から200℃まで20℃/minで昇温後、200℃から-50℃まで20℃/minで降温した際の、降温過程における発熱ピーク温度(Tc)が30℃以上90℃以下である、請求項1から4のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 基材フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を有する積層フィルムであって、前記樹脂層の表面比抵抗が9.0×10Ω/□以下であり、テープ剥離力が3N/50mm以下であり、かつ飛行時間型2次イオン質量分析により前記樹脂層の表面を分析した際、最大強度で検出されるフラグメントのピーク強度(K)に対する、ポリジメチルシロキサンに由来するフラグメントのピーク強度(P)の比(P/K)[-]が0.1未満である、積層フィルム。
  7. 前記樹脂層に対し、部分電子収量法によって測定したXAFSスペクトルのうち、炭素のK吸収端のX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルについて、入射X線と樹脂層面がなす角をθとし、293.5eVのスペクトル強度をI(θ)としたときに、[I(15°)-0.1]/I(90°)>1を満たす、請求項6に記載の積層フィルム。
  8. 前記樹脂層が電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)とポリチオフェン系化合物(B)を含み、前記電子供与基がメチロール基またはアルキルエーテル基である請求項6または7に記載の積層フィルム。
  9. 前記電子供与基により末端置換されたアミノ樹脂(A)がトリアジン環を有し、前記トリアジン環1個当たりのメチロール基とアルキルエーテル基の合計量が3以上6以下であり、かつ、トリアジン環1個当たりのイミノ基量が3以下である、請求項8に記載の積層フィルム。
  10. 前記樹脂層が離型剤(X)として長鎖アルキル系樹脂を含み、かつ前記長鎖アルキル系樹脂を示差走査熱量計(DSC)で25℃から200℃まで20℃/minで昇温後、200℃から-50℃まで20℃/minで降温した際の、降温過程における発熱ピーク温度(Tc)が30℃以上90℃以下である、請求項6から9のいずれかに記載の積層フィルム。
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