本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面では、複数の同一構成要素について、区別する場合には同一の数字の符号の末尾にさらに小文字のアルファベットを識別子として付記し、特に区別する必要がない場合には識別子を省略して数字のみの符号を用いる。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態について図1乃至図5Eを用いて説明する。
まず、本実施形態による加工システムの構成について図1乃至図2Bを用いて説明する。図1は、本実施形態による加工システム1の全体構成を示す概略図であり、搬送システム4を含む加工システム1全体を上方から見た上面図である。図2Aは、本実施形態による搬送システム4におけるリニアモータを構成する可動子側の台車20及び固定子側の直線搬送モジュール10の構成を示す平面図である。図2Bは、台車20及び直線搬送モジュール10の構成を示す側面図である。
図1に示すように、本実施形態による加工システム1は、搬送路101と、台車移載装置11と、加工ステーション30と、台車20とを有している。本実施形態による加工システム1は、加工すべき加工対象であるワークWを搬送する搬送システム4を含んでいる。加工システム1は、ワークWの組立てライン等の生産ラインを構成する。なお、図面では、ワークWについて、「W-n」(nは正の整数)で表される符号を付して個々のワークWを区別している。搬送システム4は、搬送路101と、台車移載装置11と、台車20とを有している。
ここで、以降の説明において用いる直交座標系であるXYZ座標系のX軸、Y軸及びZ軸の各座標軸を定義する。まず、水平に搬送される台車20の搬送方向に沿ってX軸をとる。水平に置かれた不図示の架台に対し、鉛直方向をZ軸とし、X軸及びZ軸と直交する軸をY軸とする。なお、架台は、その上に加工システム1が設置されるものである。このように座標軸を定義したXYZ座標系において、X軸に沿った方向をX軸方向といい、Y軸に沿った方向をY軸方向といい、Z軸に沿った方向をZ軸方向という。
加工システム1における搬送システム4は、複数の台車20が循環して搬送される循環式の搬送システムである。搬送システム4において、台車20が搬送される搬送路101は、往路となる搬送路101a及び復路となる搬送路101bの2系統の搬送路になっている。往路となる搬送路101a及び復路となる搬送路101bは、互いに平行に設置されている。
搬送路101は、台車20の搬送路であり、複数の直線搬送モジュール10が連結されて構成されている。直線搬送モジュール10は、直線状に台車20が移動する直線状の搬送モジュールである。
直線搬送モジュール10は、図2A及び図2Bに示すように、直線状のガイドレール9と、リニアモータの固定子である複数のコイル19とを有している。複数のコイル19は、コイル群を構成し、以下のようにして台車20を駆動する駆動部として機能する。直線搬送モジュール10では、その上部にX軸方向に沿ってガイドレール9が設置されている。また、台車20が走行するX軸方向にコイル19が複数個配列されている。こうして構成される直線搬送モジュール10は、搬送路101よりも短寸法のモジュールになっており、複数の直線搬送モジュール10が連結されて搬送路101が構成されている。図1には、5台の直線搬送モジュール10が連結されて搬送路101が構成されている場合を例示している。また、図2Aでは、ガイドレール9が直線搬送モジュール10と同じ長さで構成されている場合が例示されているが、ガイドレール9は、複数の直線搬送モジュール10を跨ぐ長さで構成されていてもよい。
台車20は、加工対象のワークWを保持して搭載し、そのワークWを搬送するものである。台車20は、その走行方向であるX軸方向にN極とS極とが交互に配置されている複数の永久磁石21を有している。複数の永久磁石21と、直線搬送モジュール10のコイル19との間には、駆動部としてのコイル19に電流が印加されることで、台車20を駆動する電磁力が発生する。こうして、台車20は、リニアモータの可動子として、複数の永久磁石21とコイル19との間に発生する電磁力により駆動されて、直線搬送モジュール10の上面に設置されたガイドレール9上をガイドレール9に沿って走行する。このように、本実施形態では、可動磁石型リニアモータによる搬送システム4が構成されている。なお、永久磁石21に代えて、鉄心等の強磁性体が用いられ、リラクタンス型リニアモータが構成されてもよい。
加工ステーション30は、ワークWを加工する加工部として機能する。加工ステーション30は、後述の加工作業領域100の内側に、搬送路101に沿って設置されている。なお、図1では、往路の搬送路101a側にのみ加工ステーション30が設置され、復路の搬送路101b側に加工ステーション30が設置されていない場合を例示しているが、これに限定されるものではない。復路の搬送路101b側にも加工ステーション30が設置されていてもよい。また、加工ステーション30の台数は、特に限定されるものではなく、1台であっても複数台であってもよい。
加工ステーション30には、台車20により搬送されるワークWに対して加工を施す加工ロボット31が設置されている。加工ロボット31は、例えば、2軸直交ロボット、多関節ロボット等である。台車20は、加工ステーション30に対して搬送路101上の所定の停止位置で停止する。搬送路101上で停止した台車20上のワークWに対しては、ロボットコントローラ(図3参照)の制御の下、加工ロボット31による加工処理が実施される。加工ロボット31は、台車20に搭載されたワークWに対して、部品の組み立てや塗布等の所定の加工作業を施す。なお、加工ロボット31としては、特に限定されるものではなく、ワークWに対して種々の加工作業を施すロボットを用いることができる。
ここで、搬送路101は、連結する直線搬送モジュール10の台数を変更することによりその搬送路長を変更することができるため、その搬送路長の設計に高い自由度を有している。このため、搬送路101は、加工システム1内の加工ステーション30の台数に応じてその搬送路長を容易に変更することができる。
こうして、加工部として機能する加工ステーション30の加工ロボット31によりワークWを加工することより、電子機器等の物品が製造される。製造される物品は特定のものに限定されるものではなく、あらゆる物品であってよい。本実施形態による加工システム00を用いた物品の製造方法により、種々の物品を製造することができる。
台車移載装置11は、互いに異なる搬送路の間で、すなわち互いに連結されていない搬送モジュールの間で台車20を移載するための装置である。搬送システム4には、往路の搬送路101aと復路の搬送路101bとの間で台車20を移載する2台の台車移載装置11a、11bが設置されている。
台車移載装置11は、Y軸方向に移動可能な可動式の直線搬送モジュール12を有している。台車移載装置11は、直線搬送モジュール12をY軸方向に移動させて、搬送路101の端部に隣接して直線搬送モジュール12を停止させることができるようになっている。直線搬送モジュール12をY軸方向に移動させる機構は、特に限定されるものではないが、例えばボールねじ等を含む一軸アクチュエータを用いることができる。
台車移載装置11に設置された可動式の直線搬送モジュール12は、搬送路101を構成する直線搬送モジュール10と同様の構成を有し、ガイドレール9と、リニアモータの固定子であるコイル19とを有している。可動式の直線搬送モジュール12においても、搬送路101の直線搬送モジュール10と同様に台車20を移動させるため、その上部にX軸方向に沿ってガイドレール9が設置され、台車20が走行するX軸方向にコイル19が複数個配列されている。
こうして、台車移載装置11の直線搬送モジュール12は、搬送路101の直線搬送モジュール10と連結する位置に移動可能に構成され、搬送路101の直線搬送モジュール10との間で台車20が移動可能になっている。これにより、直線搬送モジュール12は、一方の搬送路101上の台車20を引き込み、その上に台車20を載せて停止させた状態でY軸方向に移動して、他方の搬送路101へ台車20を移載することができる。
具体的には、図1に示すように、台車移載装置11aは、往路の搬送路101aの下流側の端部(図中、右側端部)と、復路の搬送路101bの上流側の端部(図中、右側端部)とに結合されている。台車移載装置11aの直線搬送モジュール12aは、往路の搬送路101aの下流端の直線搬送モジュール10eと連結可能に構成されている。これにより、台車20は、直線搬送モジュール10eから直線搬送モジュール12aに乗り移ることが可能になっている。また、直線搬送モジュール12aは、復路の搬送路101bの上流端の直線搬送モジュール10fと連結可能に構成されている。これにより、台車20は、直線搬送モジュール12aから直線搬送モジュール10fに乗り移ることが可能になっている。このような直線搬送モジュール12aを介して、台車移載装置11aは、往路の搬送路101a上の台車20を、その下流端の直線搬送モジュール10eから、復路の搬送路101bの上流端の直線搬送モジュール10fへ移載することができる。
同じく図1に示すように、台車移載装置11bは、往路の搬送路101aの上流側の端部(図中、左側端部)と、復路の搬送路101bの下流側の端部(図中、左側端部)とに結合されている。台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bは、復路の搬送路101bの下流端の直線搬送モジュール10jと連結可能に構成されている。これにより、台車20は、直線搬送モジュール10jから直線搬送モジュール12bに乗り移ることが可能になっている。また、直線搬送モジュール12bは、往路の搬送路101aの上流端の直線搬送モジュール10aと連結可能に構成されている。これにより、台車20は、直線搬送モジュール12bから直線搬送モジュール10aに乗り移ることが可能になっている。このような直線搬送モジュール12bを介して、台車移載装置11bは、復路の搬送路101b上の台車20を、その下流端の直線搬送モジュール10jから、往路の搬送路101aの上流端の直線搬送モジュール10aへ移載することができる。
こうして、搬送システム4では、搬送路101a、台車移載装置11a、搬送路101b及び台車移載装置11bにより循環搬送路が構成されており、全体で台車20を循環搬送することが可能となっている。なお、搬送システム4は、循環搬送路とは別個の搬送路を構成する後述する保守用直線搬送モジュール13を有している。
ここで、直線搬送モジュール10、12の間の台車20の乗り移り移動に際し、直線搬送モジュール12と直線搬送モジュール10とのY軸方向の位置が高精度に一致していないと、両直線搬送モジュール10、12の間に位置ずれが生じる。具体的には、両直線搬送モジュール10、12のガイドレール9の間に位置ずれが生じる。ガイドレール9に位置ずれが生じた状態で台車20が乗り移ると、衝撃等により台車20又は直線搬送モジュール10、12に高負荷が加わり、台車20又は直線搬送モジュール10、12がダメージを受けるおそれがある。このため、加工システム1における台車20、直線搬送モジュール10、12その他の構成要素の破損が発生したり、台車20に把持されているワークWに不良が発生したりするおそれがある。さらには、台車20の乗り移り移動が可能な位置に台車移載装置11の直線搬送モジュール12が位置していない状態で台車20の乗り移り移動が行われると、台車20が搬送路101から脱落するおそれもある。
これらを防ぐため、本実施形態による搬送システム4は、台車移載装置11に設けられた位置検出センサ14を有している。位置検出センサ14は、台車移載装置11の直線搬送モジュール12の移動方向(Y軸方向)における位置を検出してその位置情報を含む出力信号を出力する位置検出部として機能する。
図1に示すように、台車移載装置11aには、位置検出センサ14として、直線搬送モジュール10e、10fにそれぞれ連結する直線搬送モジュール12aのY軸方向の位置をそれぞれ検出する位置検出センサ14a、14bが設けられている。このうち、位置検出センサ14aは、後述の保守用直線搬送モジュール13bに連結する直線搬送モジュール12aのY軸方向の位置をも検出する。
また、台車移載装置11bには、位置検出センサ14として、直線搬送モジュール10j、10aにそれぞれ連結する直線搬送モジュール12bのY軸方向の位置をそれぞれ検出する位置検出センサ14c、14eが設けられている。さらに、台車移載装置11bには、位置検出センサ14として、後述の保守用直線搬送モジュール13aに連結する直線搬送モジュール12bのY軸方向の位置を検出する位置検出センサ14dが設けられている。
位置検出センサ14は、特に限定されるものではないが、例えばリニアエンコーダである。本実施形態では、後述するように、搬送コントローラ40は、位置検出センサ14により出力された位置情報を含む出力信号に基づき、台車20の移動を開始する前に直線搬送モジュール12のY軸方向の位置を確認してその位置を補正することができる。これにより、本実施形態では、台車移載装置11の直線搬送モジュール12は、直線搬送モジュール10に対して、Y軸方向においても高精度に位置決めすることが可能になっている。
図1に示すように、加工システム1においては、図中に一点鎖線で示す加工作業領域100が画定されている。加工作業領域100は、搬送路101a、台車移載装置11a、搬送路101b、台車移載装置11b及び加工ステーション30を含む領域になっている。加工作業領域100は、稼働中の加工ロボット31や台車移載装置11と接触する危険があるため、加工システム1が例えば自動運転モードで稼働中の場合にはオペレータの侵入を禁止すべき領域である。実際の運用では、例えば、加工作業領域100の境界に安全柵と扉と扉開閉検知センサとを設置して扉の開閉状態を監視することや、加工作業領域100内への侵入を検知する侵入検知センサを設けて侵入監視をすることもある。
搬送システム4は、加工作業領域100の外側に設置された保守用直線搬送モジュール13を有している。保守用直線搬送モジュール13は、加工作業領域100の内側の台車移載装置11に隣接して設置されている。図1では、台車移載装置11aに隣接して保守用直線搬送モジュール13bが設置されている。保守用直線搬送モジュール13bは、搬送路101aの延長線上に設置されている。また、台車移載装置11bに隣接して保守用直線搬送モジュール13aが設置されている。保守用直線搬送モジュール13aは、搬送路101aと搬送路101bとの間に設置されている。
保守用直線搬送モジュール13は、台車20の保守等を行うための直線搬送モジュールであり、搬送路101上の特定の台車20に人手でアクセスするための手段として機能する。なお、保守用直線搬送モジュール13は、後述するように、台車20を保守する目的以外の他の目的、例えば、台車20上のワークWの回収、台車20の追越し等の目的でも使用することができる。
保守用直線搬送モジュール13は、搬送路101を構成する直線搬送モジュール10と同様の構成を有し、ガイドレール9と、リニアモータの固定子であるコイル19とを有している。保守用直線搬送モジュール13においても、直線搬送モジュール10、12と同様に台車20を移動させるため、その上部にX軸方向に沿ってガイドレール9が設置され、台車20が走行するX軸方向にコイル19が複数個配列されている。
保守用直線搬送モジュール13に隣接する台車移載装置11の直線搬送モジュール12は、保守用直線搬送モジュール13と連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、台車20は、直線搬送モジュール12と保守用直線搬送モジュール13との間で乗り移り移動が可能になっている。
例えば、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bは、搬送路101bから台車20を引き込み、その上に台車20を載せて停止させて状態でY軸方向に移動して、保守用直線搬送モジュール13aに台車20を移動して移載することができる。また、直線搬送モジュール12bは、例えば、保守用直線搬送モジュール13aから台車20を引き込み、その上に台車20を載せて停止させた状態でY軸方向に移動して、搬送路101aに台車20を移動して移載することができる。なお、他方の台車移載装置11aの直線搬送モジュール12aも、保守用直線搬送モジュール13bに対して同様に動作することができる。
保守用直線搬送モジュール13は、搬送路101を含む加工作業領域100の外側に設置されている。このため、保守用直線搬送モジュール13は、加工作業領域100の内側の直線搬送モジュール10、12と異なり、加工システム1が例えば自動運転モードで稼働中の場合でも、台車20に対してオペレータが安全にアクセス可能になっている。したがって、オペレータは、加工システム1が稼働中であっても、保守用直線搬送モジュール13に移載された台車20に安全にアクセスして、その台車20の保守を実施することができる。
保守用直線搬送モジュール13に移載された台車20へのアクセスの他の目的としては、加工済みのワークWの回収及び未加工の新規ワークWの投入が例示される。この場合、例えば、保守用直線搬送モジュール13aには、復路の搬送路101bから、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bを介して、加工済みのワークW-1を搭載する台車20aを移載してワークW-1を回収する。続いて、保守用直線搬送モジュール13aに移載されている台車20aに未加工の新規のワークW-6を搭載して、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bを介して、往路の搬送路101aに投入する。
この際、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bは、搬送路101a、101bの直線搬送モジュール10a、10jに対するのと同様、保守用直線搬送モジュール13aに対しても、Y軸方向における高精度な位置決めが必要である。上述のように、台車移載装置11bには、位置検出センサ14として、保守用直線搬送モジュール13aと連結する直線搬送モジュール12bのY軸方向の位置を検出する位置検出センサ14dが設けられている。このため、直線搬送モジュール12bは、保守用直線搬送モジュール13aに対しても、Y軸方向において高精度に位置決めすることが可能になっている。なお、他方の台車移載装置11aの直線搬送モジュール12aも、位置検出センサ14aにより、保守用直線搬送モジュール13bに対して、Y軸方向において高精度に位置決めすることが可能になっている。
また、例えば、往路の搬送路101a上の加工ステーション30a乃至30eで施す加工の途中で不具合が発生し、ワークWが不良品となる場合が起こりうる。この場合、不良品となったワークWを搭載する台車20を、往路の搬送路101aの延長線上に設置された保守用直線搬送モジュール13bに移載する。続いて、保守用直線搬送モジュール13bに移載された台車20から不良品となったワークWを回収する。ここで、保守用直線搬送モジュール13bは、加工作業領域100の外側に配置されているため、他の台車20を停止することなく、不良品となったワークWを搭載する台車20を回収することができる。なお、不具合が発生した以降の加工ステーション30における処理は、後述のシステムコントローラ50からNOP(No Operation)命令を指令して、不要な処理としてスキップすることができる。
さらに、保守用直線搬送モジュール13bでは、台車20のメンテナンスを行うことも可能である。この際も、稼働中の他の台車20に影響を与えることなく、保守用直線搬送モジュール13上で特定の台車20のみにアクセスすることができる。
その他、先行する台車20を保守用直線搬送モジュール13bに一時的に退避させておき、後続する台車を先に次工程を流すこと、すなわち稼働中の台車20の追越しを行うことも可能である。
このように、本実施形態によれば、短時間で効率よく特定の台車20にアクセスすることができ、よって他の台車20を停止することなく、台車20の回収、投入、メンテナンス等を行うことができる。
また、本実施形態による加工システム1は、搬送コントローラ40と、システムコントローラ50とを有している。搬送コントローラ40は、加工システム1における直線搬送モジュール10、12、13及び台車移載装置11のそれぞれのコントローラ、並びに位置検出センサ14と同一の通信網である搬送系シリアル通信網41で接続されている。搬送コントローラ40は、各直線搬送モジュール10、12、13内のコイル19の通電制御を司っている。システムコントローラ50は、加工システム1におけるロボットコントローラ(不図示)及び搬送コントローラ40と全体系シリアル通信網51で接続されている。システムコントローラ50は、加工ロボット31と搬送コントローラ40との同期制御を実現している。
また、本実施形態による搬送システム4は、搬送路101に設置された台車固定機構15を有している。台車固定機構15は、搬送路101における所定の停止位置で台車20を搬送路101に固定する固定部として機能する。ここで、搬送路101における所定の停止位置とは、複数台の加工ステーション30のうちの特定の加工ステーション30が台車20上のワークWを加工するための台車20の停止位置である。台車固定機構15は、搬送路101に台車20を固定することにより、加工ステーション30によるワークWの加工中における台車20の位置ずれを防止する。
図1には、5台の加工ステーション30a乃至30eのうちの1台の加工ステーション30dがワークWを加工するための停止位置で台車20を搬送路101aに固定する台車固定機構15を示している。以下、さらに図3を用いて、加工中の台車20の位置ずれを防止する固定部として機能する台車固定機構15について説明する。図3は、本実施形態による台車固定機構15の構成を示す概略図であり、台車固定機構15及びこれにより固定される台車20を上方から見た上面図である。
加工ステーション30の中には、その加工ロボット31によるワークWの加工に際して、台車20上のワークWを介してその台車20に大きな外力が加わる工程を実施するものがある。台車20に大きな外力が加わる工程としては、特に限定されるものではないが、例えば、圧入組立て等の工程がある。加工中、台車20は、搬送コントローラ40による制御下においてサーボ制御により所定の停止位置に位置決めされている。しかしながら、加工中のワークWを介して台車20が所定の大きさ以上の外力を受けると、台車20の位置ずれが発生するおそれがある。加工中のワークWを搭載する台車20に位置ずれが発生すると、加工中のワークWは不良品となる。台車固定機構15は、上述のように所定の停止位置で台車20を搬送路101に固定することにより、ワークWの加工中における台車20の位置ずれを防止する。
図3は、台車固定機構15が台車20を固定する様子を示している。台車固定機構15が設置される搬送路101の両側端には、それぞれ搬送路101に沿ってガードレール等の柵1011が設置されている。台車固定機構15は、搬送路101の両側端の柵1011にそれぞれ設置された一対の固定ユニット150を有している。各固定ユニット150は、固定パッド151と、固定アクチュエータ152とを有している。固定パッド151は、搬送路101上の台車20を、台車20の側方からY軸方向に搬送路101の中心線に向かって押し付けることが可能に構成されている。固定アクチュエータ152は、固定パッド151をY軸方向に駆動するものである。固定アクチュエータ152は、例えばソレノイドであり、システムコントローラ50からの指令の下に駆動される。
搬送路101に設置された台車固定機構15は、一対の固定ユニット150の固定アクチュエータ152により一対の固定パッド151を駆動して、互いに反対方向に台車20を押し付ける一対の固定パッド151により台車20を挟み込んで固定する。
ここで、搬送コントローラ40からの指令の下、モジュールコントローラ110(図4参照)は、直線搬送モジュール10のコイル19への通電を制御して、搬送路101における台車20の搬送を制御する。台車固定機構15による台車20の固定に際して、モジュールコントローラ110は、サーボ制御により、搬送路101における目標の停止位置に台車20を位置決めして停止する。
台車固定機構15により台車20を固定する前後において、モジュールコントローラ110は、上記台車20のサーボ制御のオンオフを次のように切り替える。まず、上述のようにモジュールコントローラ110によるサーボ制御により、台車20が停止位置に位置決めされて停止される。すると、システムコントローラ50からの指令の下、台車固定機構15は、固定アクチュエータ152をオンにして駆動する。これにより、台車固定機構15は、一対の固定ユニット150の固定パッド151で互いに台車20を押し付け合って挟み込み、台車20を搬送路101に固定する。台車固定機構15により台車20が固定されると、モジュールコントローラ110は、台車20のサーボ制御をオフにして停止にする。
固定された台車20上のワークWに対しては、加工ステーション30の加工ロボット31により加工が施される。加工終了後、固定アクチュエータ152をオフにして台車20の固定を解除する前に、モジュールコントローラ110は、台車20の現在位置を目標位置に設定して、台車20のサーボ制御を再度オンにして開始する。これは、サーボエラーや急激に台車20が補正駆動することを回避するためである。
台車20のサーボ制御が再度開始された後、システムコントローラ50からの指令の下、台車固定機構15は、固定アクチュエータ152をオフにする。これにより、台車固定機構15は、一対の固定ユニット150の固定パッド151を台車20から離して、台車20の固定を解除する。
以上の一連の制御により、加工ロボット31により台車20上のワークWを加工する際に、台車固定機構15により台車20を搬送路101に機械的に固定することで、見掛け上の台車20の剛性を上げることができる。これにより、台車20に大きな外力が加わっても、高精度な台車20の位置決めを維持することができるため、ワークWの加工不良を防ぐことができる。
本実施形態において、上述した台車固定機構15は、加工ステーション30a乃至30eにおける加工ロボット31a乃至31eによるワークWの加工工程が実施される停止位置の全てについては設置されていない。すなわち、台車固定機構15は、図1に示すように、加工ステーション30a乃至30eのうちの加工ステーション30dの加工ロボット31dによる加工工程が実施される停止位置についてのみ、その停止位置に台車20を固定するように設置されている。
加工に際して台車固定機構15により台車20が固定される加工ロボット31dは、ワークWを介して所定の大きさ以上の外力を台車20に加えつつワークWを加工する。これに対して、加工に際して台車固定機構15により台車20が固定されない他の加工ロボット31a乃至31c、31eは、所定の大きさの外力を台車20に加えずにワークWを加工する。このように、本実施形態では、台車20が停止する複数の停止位置のうち、所定の大きさ以上の外力が台車20に加わる停止位置についてのみ、その停止位置に台車20を固定する台車固定機構15が設置されている。複数の停止位置のうち、所定の大きさ以上の外力が加わらない停止位置には、台車固定機構15により台車20は固定されない。これにより、複数の停止位置のそれぞれについて一律に台車固定機構15を設置する場合と比較して、本実施形態の場合、台車固定機構15の設置数を低減することができるため、コストの低減することができる。
このように、本実施形態では、台車20を固定する手段である台車固定機構15の設置数を低減することができるため、搬送システム4を含む加工システム1の低コストを図ることができる。本実施形態では、上述のように設置される台車固定機構15により、台車20をより確実に停止して高精度な位置決めを低コストに実現することができる。
図4は、本実施形態による加工システム1の制御構成を示す制御ブロック図である。システムコントローラ50は、加工システム1全体の制御を司る制御部である。システムコントローラ50には、図3に示すように、搬送コントローラ40と、各加工ステーション30における加工ロボット31を制御するロボットコントローラ32が全体系シリアル通信網51で接続されている。なお、ロボットコントローラ32は、複数の加工ロボット31のそれぞれに対応して設けられている。
搬送コントローラ40は、搬送路101を構成する直線搬送モジュール10を制御するモジュールコントローラ110と搬送系シリアル通信網41で接続されている。モジュールコントローラ110は、複数の直線搬送モジュール10のそれぞれに対応して設けられている。各モジュールコントローラ110には、対応する直線搬送モジュール10上の台車20の搬送方向(X軸方向)の位置を検出する位置検出センサ114が接続されている。位置検出部としての位置検出センサ114は、特に限定されるものではないが、例えばリニアエンコーダである。なお、位置検出センサ114は、図1中には示していない。
また、搬送コントローラ40は、台車移載装置11を制御する装置コントローラ111と搬送系シリアル通信網41で接続されている。装置コントローラ111は、複数の台車移載装置11のそれぞれに対応して設けられている。各装置コントローラ111には、対応する台車移載装置11の直線搬送モジュール12の移動方向(Y軸方向)の位置を検出する上述した位置検出部としての位置検出センサ14が接続されている。
また、搬送コントローラ40は、台車移載装置11の直線搬送モジュール12を制御するモジュールコントローラ112と搬送系シリアル通信網41で接続されている。モジュールコントローラ112は、複数の直線搬送モジュール12のそれぞれに対応して設けられている。各モジュールコントローラ112には、対応する直線搬送モジュール12上の台車20の搬送方向(X軸方向)の位置を検出する位置検出センサ214が接続されている。位置検出部としての位置検出センサ214は、特に限定されるものではないが、例えばリニアエンコーダである。なお、位置検出センサ214は、図1中には示していない。
さらに、搬送コントローラ40は、保守用直線搬送モジュール13を制御するモジュールコントローラ113と搬送系シリアル通信網41で接続されている。モジュールコントローラ113は、複数の保守用直線搬送モジュール13に対応して設けられている。各モジュールコントローラ113は、対応する保守用直線搬送モジュール13上の台車20の搬送方向(X軸方向)の位置を検出する位置検出センサ314が接続されている。位置検出部としての位置検出センサ314は、特に限定されるものではないが、例えばリニアエンコーダである。なお、位置検出センサ314は、図1中には示していない。
このように、搬送コントローラ40は、対応する搬送モジュール上の台車20の移動を制御する制御部であるモジュールコントローラ110、112、113と接続されている。また、搬送コントローラ40は、台車移載装置11の直線搬送モジュールの移動を制御する制御部である装置コントローラ111と接続されている。
搬送コントローラ40は、上述のように搬送系シリアル通信網41に接続されたモジュールコントローラ110、112、113、及び装置コントローラ111を制御する制御部として機能する。また、搬送コントローラ40には、位置検出センサ14、114、214、314が搬送系シリアル通信網41で接続されており、各センサの出力信号が送信されるようになっている。これら各種コントローラ及びセンサが同一の通信網である搬送系シリアル通信網41に接続されていることにより、搬送システム4におけるレイテンシを低減することができる。
搬送コントローラ40の指令により、各モジュールコントローラ110、112、113は、その制御下の対応する直線搬送モジュール10、12、13のコイル19の通電制御を行う。これにより、各モジュールコントローラ110、112、113は、制御部として機能し、対応する直線搬送モジュール10、12、13上の台車20の移動を制御する。また、搬送コントローラ40の指令により、装置コントローラ111は、制御部として機能し、台車移載装置11によるその直線搬送モジュール12の移動を制御する。こうして、搬送コントローラ40は、各モジュールコントローラ110、112、113及び装置コントローラ111を制御して、搬送路101上の複数の台車20をそれぞれ所望の駆動プロファイルで個別制御することができる。
また、台車固定機構15は、システムコントローラ50の入出力制御ポートに接続されている。システムコントローラ50は、台車固定機構15の動作を台車20の搬送にあわせて制御する。なお、コマンド体系によっては、台車固定機構15は、搬送コントローラ40の入出力制御ポートに接続されていてもよい。この場合、搬送コントローラ40が、台車固定機構15の動作を、台車20の搬送にあわせて制御する。
搬送コントローラ40は、搬送路101上の各直線搬送モジュール10と台車移載装置11とを同期させて制御する。これにより、本実施形態では、加工システム1におけるタクトタイムを短縮することが可能である。以下、図5A乃至図5Eを用いて具体的な台車20の移載処理の手順を時系列に説明する。図5A乃至図5Eは、搬送路101と台車移載装置11との間の台車20の移載処理の手順を示す概略図であり、台車20及び台車移載装置11の直線搬送モジュール12の位置を時系列に示している。なお、以下では、図1に示す直線搬送モジュール10a乃至10jに対応して設けられた図4に示すモジュールコントローラ110を、それぞれモジュールコントローラ110a乃至110jと適宜称する。また、図1に示す台車移載装置11a、11bに対応して設けられた図4に示す装置コントローラ111を、それぞれ装置コントローラ111a、111bと適宜称する。また、図1に示す直線搬送モジュール12a、12bに対応して設けられた図4に示すモジュールコントローラ112を、それぞれモジュールコントローラ112a、112bと適宜称する。また、図1に示す保守用直線搬送モジュール13aに対応して設けられた図4に示すモジュールコントローラ113を、モジュールコントローラ113aと適宜称する。
図5Aは、往路の搬送路101aに沿って設置された加工ステーション30a、30c、30d、30eでのワークWの加工が終了して、次工程へ各台車20a、20b、20c、20dが移動を開始した状態を示している。すなわち、台車20aは、そのワークW-1の加工ステーション30eでの加工が終了して移動を開始している。台車20bは、そのワークW-2の加工ステーション30dでの加工が終了して移動を開始している。台車20cは、そのワークW-3の加工ステーション30cでの加工が終了して移動を開始している。台車20dは、そのワークW-4の加工ステーション30aでの加工が終了して移動を開始している。
まず、搬送コントローラ40は、台車移載装置11aの直線搬送モジュール12aが、搬送路101aの直線搬送モジュール10eと連結状態にあることを位置検出センサ14aの出力信号により検知する。すると、搬送コントローラ40は、台車20aの駆動指令をモジュールコントローラ110e、112aへ送信する。この台車20aの駆動指令を受信したモジュールコントローラ110e、112aは、それぞれ直線搬送モジュール10e、12aのコイル19の通電を制御する。これにより、モジュールコントローラ110e、112aは、図5Aに示すように、台車20aを直線搬送モジュール10e上から直線搬送モジュール12a上に移動させて停止させる。
次いで、搬送コントローラ40は、台車移載装置11aの直線搬送モジュール12a上に台車20aが移動したことを位置検出センサ214の出力信号により検知する。すると、搬送コントローラ40は、Y軸に沿って搬送路101a側から搬送路101b側に向かう方向(-Y軸方向)への直線搬送モジュール12aの駆動指令を装置コントローラ111aへ送信する。この直線搬送モジュール12aの駆動指令を受信した装置コントローラ111aは、図5Bに示すように、台車移載装置11aの直線搬送モジュール12aを-Y軸方向に移動させる。これにより、装置コントローラ111aは、直線搬送モジュール12aを復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10fと連結させる。
次いで、搬送コントローラ40は、台車移載装置11aの直線搬送モジュール12aが直線搬送モジュール10fと連結したことを位置検出センサ14bの出力信号により検知する。すると、搬送コントローラ40は、台車20aの駆動命令をモジュールコントローラ112a、110fへ送信する。この台車20aの駆動指令を受信したモジュールコントローラ112a、110fは、それぞれ直線搬送モジュール12a、10fのコイル19の通電を制御する。これにより、モジュールコントローラ112a、110fは、図5Cに示すように、台車20aを直線搬送モジュール12a上から直線搬送モジュール10f上に移動させる。
なお、台車20aが直線搬送モジュール12a上から直線搬送モジュール10f上に移動した後、搬送コントローラ40は、台車20aを排出した台車移載装置11aの直線搬送モジュール12aを戻す制御を行う。すなわち、搬送コントローラ40は、Y軸に沿って搬送路101b側から搬送路101a側に向かう方向(+Y軸方向)への直線搬送モジュール12aの駆動指令を装置コントローラ111aに送信する。この直線搬送モジュール12aの駆動指令を受信した装置コントローラ111aは、図5D及び図5Eに示すように、台車移載装置11aの直線搬送モジュール12aを+Y軸方向に移動させる。これにより、装置コントローラ111aは、直線搬送モジュール12aを往路の搬送路101aの直線搬送モジュール10eと再び連結させる。
上述のようにして、往路の搬送路101aにおいて加工処理が行われたワークW-1を搭載する台車20aが、往路の搬送路101aから復路の搬送路101bに移載される。復路の搬送路101b上では加工処理が行われないため、続いて、直線搬送モジュール10f上の台車20aの回収が行われる。このため、搬送コントローラ40は、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bまでの台車20aの駆動指令をモジュールコントローラ110f乃至110j、112bへ送信する。この台車20aの駆動指令を受信したモジュールコントローラ110f乃至110j、112bは、それぞれ直線搬送モジュール10f乃至10j、12bのコイル19の通電を制御する。これにより、モジュールコントローラ110f乃至110j、112bは、図5Dに示すように、台車20aを直線搬送モジュール10f上から直線搬送モジュール12b上に向けて移動させる。
図5Cに示すように台車移載装置11bの直線搬送モジュール12b上に向けた台車20aの移動が開始された時点では、直線搬送モジュール12bは、往路の搬送路101aの上流端の直線搬送モジュール10aと連結する停止位置に停止している。すなわち、この時点では、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bは、復路の搬送路101bの下流端の直線搬送モジュール10jと連結状態にない。このため、搬送コントローラ40は、Y軸に沿って搬送路101a側から搬送路101b側に向かう方向(-Y軸方向)への直線搬送モジュール12bの駆動指令を装置コントローラ111bへ送信する。この直線搬送モジュール12bの駆動指令を受信した装置コントローラ111bは、図5Dに示すように、直線搬送モジュール12bを-Y軸方向に移動させて、直線搬送モジュール12bを復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10jと連結させる。
ここで、搬送コントローラ40は、台車20aの移動距離及び速度と、直線搬送モジュール12bの移動距離及び速度とを考慮して、上記モジュールコントローラ110f乃至110jへの駆動指令、及び上記装置コントローラ111bへの駆動指令を送信する。すなわち、搬送コントローラ40は、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bと直線搬送モジュール10jとの連結を待たずに、モジュールコントローラ110f乃至110jへの台車20aの駆動指令を送信して台車20aを駆動させる。このように、直線搬送モジュール12bと直線搬送モジュール10jとの連結を待たずに台車20aを移動することで、全体の処理時間を短縮することができる。そして、搬送コントローラ40は、台車20aが搬送路101bの所定の位置を通過するまでに、直線搬送モジュール12bが直線搬送モジュール10jと連結するように、モジュールコントローラ110f乃至110j及び装置コントローラ111bを制御する。
次いで、搬送コントローラ40は、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bが直線搬送モジュール10jと連結したことを位置検出センサ14cの出力信号により検知する。すると、搬送コントローラ40は、台車20aの駆動指令をモジュールコントローラ110j、112bへ送信する。この台車20aの駆動指令を受信したモジュールコントローラ110j、112bは、それぞれ直線搬送モジュール10j、12bのコイル19の通電を制御する。これにより、モジュールコントローラ110j、112bは、図5Eに示すように、台車20aを直線搬送モジュール10j上から直線搬送モジュール12b上に移動させて停止させる。こうして、加工されたワークW-1を搭載する台車20aが、往路の搬送路101aから復路の搬送路101bに移載されて回収される。なお、台車20aは、再びワークWを搭載させて台車移載装置11bにより往路の搬送路101aに移載して投入することができる。
なお、図5Eに示す時点では、台車移載装置11aの直線搬送モジュール12aが、往路の搬送路101a側に向かって+Y軸方向に移動しており、直線搬送モジュール10eと連結した状態にはなっていない。このため、搬送コントローラ40は、台車20b、20cの駆動指令を送信していない。一方、その後続の台車20dは、直線搬送モジュール10cにおける停止位置に移動可能である。このため、搬送コントローラ40は、モジュールコントローラ110b、110cへ台車20dの駆動指令を送信している。
また、保守用直線搬送モジュール13と台車移載装置11の直線搬送モジュール12との間の台車20の移動も、上述した直線搬送モジュール10と直線搬送モジュール12との間の台車20の移動と同様に実行することができる。以下、台車移載装置11bに隣接して設置された保守用直線搬送モジュール13aと台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bとの間の台車20の移動を例に説明する。
台車移載装置11bの直線搬送モジュール12b上から保守用直線搬送モジュール13a上には、次のように台車20を移載させることができる。なお、直線搬送モジュール12b上には、例えば上記と同様にして台車20を移動させて停止させることができる。
まず、搬送コントローラ40は、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12b上に台車20が移動したことを位置検出センサ214の出力信号により検知する。すると、搬送コントローラ40は、保守用直線搬送モジュール13a側に向かうY軸方向への直線搬送モジュール12bの駆動指令を装置コントローラ111bへ送信する。この直線搬送モジュール12bの駆動指令を受信した装置コントローラ111bは、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bをY軸方向に移動させて、直線搬送モジュール12bを保守用直線搬送モジュール13aと連結させる。
次いで、搬送コントローラ40は、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bが保守用直線搬送モジュール13aと連結したことを位置検出センサ14dの出力信号により検知する。すると、搬送コントローラ40は、台車20の駆動命令をモジュールコントローラ112b、113aへ送信する。
この台車20aの駆動指令を受信したモジュールコントローラ112b、113aは、それぞれ直線搬送モジュール12b、13aのコイル19の通電を制御する。これにより、モジュールコントローラ112b、113aは、台車20を直線搬送モジュール12b上から保守用直線搬送モジュール13a上に移動させて停止させる。
一方、保守用直線搬送モジュール13a上から台車移載装置11bの直線搬送モジュール12b上には、次のように台車20を移載することができる。
まず、搬送コントローラ40は、台車20が停止している保守用直線搬送モジュール13a側に向かうY軸方向への直線搬送モジュール12bの駆動指令を装置コントローラ111bへ送信する。この直線搬送モジュール12bの駆動指令を受信した装置コントローラ111bは、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bをY軸方向に移動させて、直線搬送モジュール12bを保守用直線搬送モジュール13aと連結させる。
次いで、搬送コントローラ40は、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bが保守用直線搬送モジュール13aと連結したことを位置検出センサ14dの出力信号により検知する。すると、搬送コントローラ40は、台車20の駆動命令をモジュールコントローラ113a、112bへ送信する。この台車20aの駆動指令を受信したモジュールコントローラ113a、112bは、それぞれ直線搬送モジュール13a、12bのコイル19の通電を制御する。これにより、モジュールコントローラ113a、112bは、台車20を保守用直線搬送モジュール13a上から直線搬送モジュール12b上に移動させて停止させる。以後、直線搬送モジュール12b上の台車20は、例えば、台車移載装置11bにより往路の搬送路101aに移載して投入することができる。
以上のとおり、本実施形態による加工システム1では、各直線搬送モジュール10、12、13のモジュールコントローラ110、112、113及び台車移載装置11の装置コントローラ111が搬送コントローラ40の制御下にある。したがって、本実施形態では、全ての台車20を加工システム1全体の進捗状況に応じて、効率よくかつ、安全に制御することができる。
また、台車移載装置11の直線搬送モジュール12と搬送路101の直線搬送モジュール10との連結に際しては、上述のように、直線搬送モジュール10に対して、直線搬送モジュール12をY軸方向において高精度に位置決めする必要がある。本実施形態では、位置検出センサ14を用いて位置ずれを補正し、直線搬送モジュール12のY軸方向における高精度の位置決めを実現する。以下では、上記図5Dに示すように台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bを復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10jと連結させる場合を例に説明する。なお、他の連結の場合についても同様に位置ずれを補正して連結させることができる。また、保守用直線搬送モジュール13と直線搬送モジュール12とを連結させる場合についても同様に位置ずれを補正して連結させることができる。
装置コントローラ111bは、上述のように、直線搬送モジュール12bを-Y軸方向に移動させて、復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10jと連結させるための目標停止位置に直線搬送モジュール12bを停止させる。停止した直線搬送モジュール12bと直線搬送モジュール10jとの間には、Y軸方向において位置ずれが生じうる。
この際、搬送コントローラ40は、位置検出センサ14cの出力信号に基づき、停止した直線搬送モジュール12bと直線搬送モジュール10jとの間のY軸方向における位置ずれ量を算出する。具体的には、直線搬送モジュール12bのガイドレール9と直線搬送モジュール10jのガイドレール9との間のY軸方向における位置ずれ量を算出する。
次いで、搬送コントローラ40は、直線搬送モジュール12bを補正駆動して位置ずれを補正するための補正駆動指令を装置コントローラ111bへ送信する。補正駆動指令は、算出した位置ずれ量を打ち消す方向にその位置ずれ量に相当する補正移動量で直線搬送モジュール12bを駆動して移動させることを指令するものである。こうして、搬送コントローラ40は、位置ずれ量を低減するように、直線搬送モジュール12bが直線搬送モジュール10jと連結する位置を補正する。
なお、位置ずれ量が大きすぎる場合、台車移載装置11b等の不具合のおそれがあり、また、不具合がなくとも位置ずれを補正していたのでは、加工システム1における処理効率が損なわれるおそれがある。そこで、位置ずれ量が所定の閾値を超える場合、連結位置の位置ずれの補正に代えて、閾値を超えたことを通知する処理を行うことができる。この場合、搬送コントローラ40は、位置ずれ量が所定の閾値を超えたことを示す通知信号を出力して、全体系シリアル通信網51を介してシステムコントローラ50に送信するように構成することができる。通知信号を受信したシステムコントローラ50は、加工システム1を一時的に停止したり、オペレータに対する警告表示等の警告処理を行ったりすることができる。
上記の補正駆動指令を受信した装置コントローラ111bは、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bを、位置ずれ量を打ち消す方向に補正移動量だけ直線搬送モジュール12bを移動させる。こうして、装置コントローラ111bは、位置ずれを補正して、直線搬送モジュール12bを直線搬送モジュール10jと連結させる。こうして、本実施形態では、台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bを直線搬送モジュール10jと連結する際に、直線搬送モジュール10jに対して直線搬送モジュール12bをY軸方向において高精度に位置決めすることができる。また、本実施形態では、上述のように、搬送コントローラ40に、モジュールコントローラ110、112、113及び装置コントローラ111及び位置検出センサ14が同一の通信網である搬送系シリアル通信網41で接続されている。このため、本実施形態では、位置ずれの補正を高速に行って台車20を高速に移載することができる。
本実施形態では、搬送コントローラ40が、台車移載装置11の直線搬送モジュール12の連結部の位置ずれ量を、直線搬送モジュール12自体の位置変動として検知することができ、台車移載装置11の位置補正として制御することができる。また、本実施形態では、所定以上の位置ずれと認識した際に警告を発生することができる。
このように、本実施形態では、台車20を移載する際の搬送路101又は台車20に対するダメージを低減するとともに、高速に台車20を移載することができる。
なお、経時変化等により、上述した台車移載装置11の直線搬送モジュール12と搬送路101の直線搬送モジュール10との間の位置ずれ量が変動することがありうる。具体的には、位置ずれ量が増大していくことがありうる。台車移載装置11の直線搬送モジュール12と保守用直線搬送モジュール13との間の位置ずれ量も同様である。この場合、搬送コントローラ40は、台車移載装置11における位置検出センサ14の出力信号をモニタリングするようにしてもよい。これにより、搬送コントローラ40は、経時変化等により変動する位置ずれ量に応じて、台車移載装置11の直線搬送モジュール12の補正駆動量を適切に算出して直線搬送モジュール12を補正駆動することができる。したがって、この場合、変動する位置ずれ量に応じて、常に高い位置決め精度で、台車移載装置11の直線搬送モジュール12を直線搬送モジュール10、13に対して位置決めすることができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について図6及び図7を用いて説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
図6A及び図6Bは、本実施形態による台車固定機構15′の構成を示す概略図であり、それぞれ本実施形態による台車固定機構15′及びこれにより固定される台車20を上方から見た上面図及び側方から見た側面図である。図7は、本実施形態による加工システムの制御構成を示す制御ブロック図である。
本実施形態による台車固定機構15′は、第1実施形態による台車固定機構15と同様に搬送路101における所定の停止位置で台車20を搬送路101に固定するものであるが、その設置場所が第1実施形態とは異なっている。すなわち、本実施形態と第1実施形態とが異なる点は、第1実施形態による台車固定機構15が搬送路101に設置されているのに対し、本実施形態による台車固定機構15′は台車20に設置されている点である。
図6A及び図6Bに示すように、本実施形態による台車固定機構15′は、台車20に設置された一対の固定ユニット150′を有している。各固定ユニット150′は、固定パッド151′と、固定アクチュエータ152′とを有している。固定パッド151′は、Y軸方向に台車20の外側に向かって搬送路101の柵1011に押し付けて突っ張ることが可能に構成されている。固定アクチュエータ152′は、固定パッド151′をY軸方向に駆動するアクチュエータである。固定アクチュエータ152′には、台車20を走行させるための永久磁石21に加えて台車20に設置された永久磁石22が連結されている。永久磁石22は、直線搬送モジュール10のコイル19との間に発生する電磁力により固定アクチュエータ152′を駆動するための受力部として機能する永久磁石である。なお、永久磁石22に代えて、受力部として鉄心等の強磁性体を用いることもできる。
受力用の永久磁石22とコイル19との間に発生する電磁力は、例えば、ラック・アンド・ピニオン等の伝達機構による回転運動から直線運動への変換を経て、駆動力として固定アクチュエータ152′を駆動する。なお、固定アクチュエータ152′は、モジュールコントローラ110からの指令の下に駆動される。
台車20に設置された台車固定機構15′は、一対の固定ユニット150′の固定アクチュエータ152′を駆動して台車20の外側に向かってY軸方向に伸長させる。これにより、台車固定機構15′は、一対の固定パッド151′を搬送路101の両側端の柵1011に突っ張らせて台車20をその場に固定する。
第1実施形態では、台車固定機構15が搬送路101に設置されるため、台車固定機構15により台車20を固定する位置が搬送路101の設計時に決定される。これに対し、本実施形態では、台車固定機構15′が台車20に設置されており、直線搬送モジュール10のコイル19の通電制御を変更することにより、台車固定機構15′により台車20を固定する位置を変更することができる。したがって、本実施形態では、台車固定機構15′により台車20を固定する位置を高い自由度で設定し、また、変更することもできる。同一の加工システム内で多品種生産を行う際には、生産する品種によって加工を実施する場所やワークに加わる外力が異なることが多い。この点、本実施形態では、ソフトウェア制御を変更するだけで台車固定機構15′により台車20を固定する位置を変更することができる。したがって、本実施形態には、段取り換えに要する加工システムの停止時間を短縮できる利点がある。
このように、本実施形態では、台車固定機構15′が台車20に設置されていることにより、台車20の固定位置の決定に柔軟性を持たせることができる。本実施形態によれば、台車20の固定位置に修正が生じても、台車停止指令と台車固定指令をソフト的に変更すれば良く、ハード的な変更は不要である。したがって、本実施形態では、台車20の固定位置を修正する修正工数を短くすることができる。
また、本実施形態では、上述のように、直線搬送モジュール10のコイル19の通電制御により、台車固定機構15′の固定アクチュエータ152′が駆動される。このため、図4に示す第1実施形態の制御構成とは異なり、本実施形態では、図7に示すように、システムコントローラ50の入出力制御ポートに台車固定機構15′が接続されていない。
本実施形態による台車固定機構15′の制御は、次のように実行される。まず、システムコントローラ50から搬送コントローラ40に台車20の固定が必要な加工ステーション30の情報が通知される。搬送コントローラ40は、台車20を固定すべき直線搬送モジュール10のモジュールコントローラ110に、台車20を固定するためのコイル19の制御情報を送信する。モジュールコントローラ110は、受信した制御情報に従ってコイル19の通電制御を行って、台車固定機構15′を駆動して台車20を固定する。
なお、本実施形態による台車固定機構15′は、第1実施形態による台車固定機構15と併用することも可能である。両機構を併用することにより、より大きな外力がかかる工程においてもその停止位置における台車20の位置ずれを回避することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について図8及び図9を用いて説明する。なお、上記第1及び第2実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
図8は、本実施形態による加工システム2の全体構成を示す概略図であり、搬送システム5を含む加工システム2全体を上方から見た上面図である。
第1及び第2実施形態では、2本の搬送路101a、101bとその両端に連結する2台の台車移載装置11a、11bとから環状の搬送路が構成されている。これに対し、本実施形態では、台車移載装置11の代りに曲線搬送モジュール16が用いられて、閉ループ状、より具体的にはオーバル(長円)状の循環型の搬送路101′が構成されている。この点で、本実施形態は、第1及び第2実施形態と異なっている。
図8に示すように、本実施形態による搬送システム5では、台車移載装置11aに代えて、曲線搬送モジュール16b、16cが設置されている。曲線搬送モジュール16b、16cは、互いに隣接して半円弧状の搬送路を構成している。曲線搬送モジュール16bの端部は、往路の搬送路101aの直線搬送モジュール10eの端部に連結されている。曲線搬送モジュール16cの端部は、復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10fの端部に連結されている。
また、本実施形態による搬送システム5では、台車移載装置11bに代えて、曲線搬送モジュール16d、16aが設置されている。曲線搬送モジュール16d、16aは、互いに隣接して半円弧状の搬送路を構成している曲線搬送モジュール16dの端部は、復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10jの端部に連結されている。曲線搬送モジュール16aの端部は、往路の搬送路101aの直線搬送モジュール10aの端部に連結されている。
曲線搬送モジュール16は、曲線状に、具体的には円弧状に台車20が移動する曲線状の搬送モジュールである。曲線搬送モジュール16は、直線状のガイドレール9に代えて曲線状のガイドレール9を有する点を除き、直線搬送モジュール10とほぼ同様の構成を有している。各曲線搬送モジュール16は、直線搬送モジュール10と同様に、モジュールコントローラ116(図9参照)によりそのコイル19の通電制御が行われ、その上の台車20の移動が制御される。
このように、本実施形態による搬送システム5では、閉ループ、すなわち往路及び復路に終端部が存在しない構成を有する閉じた搬送路101′が構成されている。このため、本実施形態では、第1実施形態のように直線搬送モジュール10、12間の連結状態の確認を必要とせずに、台車20の駆動制御を実行することができる。したがって、本実施形態による加工システム2は、第1実施形態による加工システム1に比べて、より高速かつ安全に台車20を走行させることができる。
具体的には、第1実施形態では、例えば、図5Eに示すように、加工ステーション30eでの工程が終了しているにもかかわらず、直線搬送モジュール10eと台車移載装置11aの直線搬送モジュール12aとが連結されていないことがある。この場合、加工ステーション30eでの工程が終了した台車20bを移動するためには、直線搬送モジュール10e、12a間の連結の確立を待機する必要がある。一方、本実施形態では、このような直線搬送モジュール10、12間の連結の確立を待機する必要がないため、台車20が待機状態となる無駄を解消することができる。
一方、本実施形態による搬送システム5では、閉じた搬送路101′に端部が存在しない。このため、本実施形態による搬送システム5では、保守用直線搬送モジュール13を搬送路101′と接続可能にするため、搬送路101′における一部の直線搬送モジュール10が、台車移載装置11の直線搬送モジュール12に置き換えられている。
具体的には、本実施形態では、図8に示すように、復路の搬送路101bに対して、加工作業領域100の境界を跨ぐように台車移載装置11cが設置されている。加工作業領域100の外側には、台車移載装置11cの一方の側に隣接するように保守用直線搬送モジュール13cが設置されている。
台車移載装置11cは、第1実施形態による台車移載装置11a、11bと同様に、Y軸方向に移動可能な可動式の直線搬送モジュール12cを有している。直線搬送モジュール12cは、復路の搬送路101bを構成する一部の直線搬送モジュール10として機能可能に構成されている。
台車移載装置11cの直線搬送モジュール12cは、復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hとこれらの間で連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、直線搬送モジュール12cは、復路の搬送路101bの一部を構成することが可能になっている。また、直線搬送モジュール12cは、保守用直線搬送モジュール13cと連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、台車20は、直線搬送モジュール12cと保守用直線搬送モジュール13cとの間の乗り移り移動が可能になっている。
保守用直線搬送モジュール13cは、第1実施形態による保守用直線搬送モジュール13a、13bと同様に、搬送路101′を含む加工作業領域100の外側に設置されている。このため、保守用直線搬送モジュール13cでも、保守用直線搬送モジュール13a、13bと同様に、工程動作を停止せずに、台車20へのワークWの投入、台車20の回収、台車20のメンテナンスを行うことができる。
このように、本実施形態では、閉じた搬送路101′に対して、作業工程を停止させずに保守用直線搬送モジュール13cを連結することができる。したがって、本実施形態によれば、閉じた搬送路101′であっても、短時間で効率よく特定の台車20にアクセスすることができ、よって他の台車20を停止することなく、台車20の回収、投入、メンテナンス等を行うことができる。
図9は、本実施形態による加工システム2の制御構成を示す制御ブロック図である。なお、図9に示す制御構成は、図4に示す第2実施形態の制御構成と同様に、台車20に設置された台車固定機構15′を用いた場合のものである。本実施形態でも、第1実施形態と同様に、台車固定機構15′に代えて又はこれとともに搬送路101′に設置された台車固定機構15を用いて台車20を固定することができる。
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、図9に示すように、搬送コントローラ40に、曲線搬送モジュール16を制御するモジュールコントローラ116が搬送系シリアル通信網41で接続されている点である。モジュールコントローラ116は、複数の曲線搬送モジュール16のそれぞれに対応して設けられている。各モジュールコントローラ116には、対応する曲線搬送モジュール16上の台車20の搬送方向の位置を検出する位置検出センサ414が接続されている。位置検出部としての位置検出センサ414は、特に限定されるものではないが、例えばリニアエンコーダである。なお、位置検出センサ414は、図8中には示していない。
搬送コントローラ40の指令により、モジュールコントローラ116は、その制御下の対応する曲線搬送モジュール16のコイル19の通電制御を行う。これにより、モジュールコントローラ116は、対応する曲線搬送モジュール16上の台車20の移動を制御する。
また、台車移載装置11cに対しては、第1実施形態による台車移載装置11a、11bと同様に、装置コントローラ111が設けられている。また、台車移載装置11cの直線搬送モジュール12cに対しては、第1実施形態による直線搬送モジュール12a、12bと同様に、モジュールコントローラ112が設けられている。また、保守用直線搬送モジュール13cに対しては、第1実施形態による保守用直線搬送モジュール13a、13bと同様に、モジュールコントローラ113が設けられている。
また、台車移載装置11cには、位置検出センサ14として、保守用直線搬送モジュール13cに連結する直線搬送モジュール12cのY軸方向の位置を検出する位置検出センサ14fが設けられている。また、台車移載装置11cには、位置検出センサ14として、復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hにそれぞれ連結する直線搬送モジュール12cのY軸方向の位置を検出する位置検出センサ14gが設けられている。
保守用直線搬送モジュール13cと台車移載装置11cの直線搬送モジュール12cとの間の台車20の移動も、第1実施形態と同様に実行することができる。すなわち、この台車20の移動は、第1実施形態における保守用直線搬送モジュール13aと台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bとの間の台車20の移動と同様に実行することができる。
また、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14fを用いた位置ずれ補正により、台車移載装置11cの直線搬送モジュール12cを、保守用直線搬送モジュール13cに対してY軸方向において高精度に位置決めすることができる。また、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14gを用いた位置ずれ補正により、直線搬送モジュール12cを、搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hに対してY軸方向において高精度に位置決めすることができる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態について図10を用いて説明する。なお、上記第1乃至第3実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
図10は、本実施形態による加工システム2′の全体構成を示す概略図であり、搬送システム5を含む加工システム2′全体を上方から見た上面図である。なお、本実施形態でも、図9に示す制御構成と同様の制御構成を採用することができる。
本実施形態による加工システム2′の基本的構成は、第3実施形態による加工システム2の構成と同様である。本実施形態による加工システム2′が第3実施形態による加工システム2と異なる点は、台車移載装置11cの直線搬送モジュール12cが、保守用直線搬送モジュール13cとの連結位置で、他の保守用直線搬送モジュール13dとも連結可能な点である。すなわち、本実施形態による搬送システム5では、直線搬送モジュール12cの両端部に、保守用直線搬送モジュール13c、13dが連結可能になっている。
本実施形態による搬送システム5では、図10に示すように、加工作業領域100の外側に、他の保守用直線搬送モジュール13dが設置されている。他の保守用直線搬送モジュール13dは、保守用直線搬送モジュール13cが設置された側と反対の台車移載装置11cの他方の側に隣接するように設置されている。保守用直線搬送モジュール13dに対しても、保守用直線搬送モジュール13cと同様に、モジュールコントローラ113が設けられている。
台車移載装置11cの直線搬送モジュール12cは、その一方の端部が保守用直線搬送モジュール13cと連結する停止位置で、その他方の端部が他の保守用直線搬送モジュール13dと連結可能に構成されている。すなわち、本実施形態では、直線搬送モジュール12cが、同一の停止位置で、その両端部で保守用直線搬送モジュール13c、13dと連結可能に構成されている。これにより、台車20は、直線搬送モジュール12cと保守用直線搬送モジュール13c、13dのいずれかとの間の乗り移り移動が可能になっている。
このように、本実施形態による搬送システム5では、台車移載装置11cの直線搬送モジュール12cが、1箇所の停止位置で2台の保守用直線搬送モジュール13c、13dの両方と同時に連結することができる。これにより、本実施形態では、次のような台車20の移動が可能である。本実施形態では、台車移載装置11cの直線搬送モジュール12cが2台の保守用直線搬送モジュール13c、13dの両方と同時に連結するため、人手を介さずかつより短時間で操作が可能である。
例えば、事前に保守用直線搬送モジュール13d上に、加工すべきワークW-5を搭載した台車20eを準備しておく。一方、加工の完了したワークW-1を搭載した台車20aを、保守用直線搬送モジュール13cに回収する。この台車20aを回収するタイミングで、ワークW-5を搭載した台車20eを、台車移載装置11cの直線搬送モジュール12cに移動する。直線搬送モジュール12cに移動した台車20eは、台車移載装置11cにより搬送路101′に投入する。搬送路101′に投入された台車20eは、往路の搬送路101aに移動してワークW-5の加工が行われる。このように、本実施形態では、加工を完了したワークWを回収するタイミングで加工すべきワークWを投入することができるため、より短時間で効率よくワークWの回収及び投入を行うことができる。
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態について図11を用いて説明する。なお、上記第1乃至第4実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
図11は、本実施形態による加工システム2″の全体構成を示す概略図であり、搬送システム5を含む加工システム2″全体を上方から見た上面図である。なお、本実施形態でも、図9に示す制御構成と同様の制御構成を採用することができる。
本実施形態による加工システム2″の基本的構成は、第3及び第4実施形態による加工システム2、2′の構成と同様である。第3及び第4実施形態と異なる点は、台車移載装置11dが搬送路と2ヶ所で交差している点、及び台車移載装置11dが2台の直線搬送モジュール12d、12eを有している点である。
本実施形態による搬送システム5では、図11に示すように、台車移載装置11dが、往路及び復路の搬送路101a、101bと交差して、搬送路101a、101bのそれぞれの側で加工作業領域100の境界を跨ぐように設置されている。
また、本実施形態では、往路の搬送路101aに沿って加工ステーション30a乃至30dが設置され、復路の搬送路101bに沿って加工ステーション30e乃至30hが設置されている。台車移載装置11dは、加工ステーション30c、30dの間で搬送路101aと交差している。また、台車移載装置11dは、加工ステーション30e、30fの間で搬送路101bと交差している。
搬送路101bの側の加工作業領域100の外側には、第4実施形態と同様に、台車移載装置11dの両側に隣接するように保守用直線搬送モジュール13c、13dが設置されている。搬送路101aの側の加工作業領域100の外側には、保守用直線搬送モジュール13c、13dと同様に、台車移載装置11dの両側に隣接するように保守用直線搬送モジュール13e、13fが設置されている。
台車移載装置11dは、Y軸方向に移動可能な可動式の直線搬送モジュール12d、12eを有している。台車移載装置11dは、直線搬送モジュール12d、12eを、それぞれ互いに独立した一軸アクチュエータ(不図示)でY軸方向に駆動する。直線搬送モジュール12dは、復路の搬送路101bを構成する一部の直線搬送モジュール10として機能可能に構成されているとともに、往路の搬送路101aを構成する一部の直線搬送モジュール10としても機能可能に構成されている。直線搬送モジュール12eは、往路の搬送路101aを構成する一部の直線搬送モジュール10として機能可能に構成されているとともに、復路の搬送路101bを構成する一部の直線搬送モジュール10としても機能可能に構成されている。
台車移載装置11dの一方の直線搬送モジュール12dは、復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hとこれらの間で連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、直線搬送モジュール12dは、復路の搬送路101bの一部を構成することが可能になっている。また、直線搬送モジュール12dは、往路の搬送路101aの直線搬送モジュール10c、10dとこれらの間で連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、直線搬送モジュール12dは、往路の搬送路101aの一部を構成することが可能になっている。さらに、直線搬送モジュール12dは、保守用直線搬送モジュール13c、13dと連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、台車20は、直線搬送モジュール12dと保守用直線搬送モジュール13c、13dのいずれかとの間の乗り移り移動が可能になっている。なお、直線搬送モジュール12dが保守用直線搬送モジュール13c、13dと連結する停止位置は、別の直線搬送モジュール12eが復路の搬送路101bの一部を構成する際の直線搬送モジュール12dの退避位置になっている。
台車移載装置11dの他方の直線搬送モジュール12eは、往路の搬送路101aの直線搬送モジュール10c、10dとこれらの間で連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、直線搬送モジュール12eは、往路の搬送路101aの一部を構成することが可能になっている。また、直線搬送モジュール12eは、復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hとこれらの間で連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、直線搬送モジュール12eは、復路の搬送路101bの一部を構成することが可能になっている。さらに、直線搬送モジュール12eは、保守用直線搬送モジュール13e、13fと連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、台車20は、直線搬送モジュール12eと保守用直線搬送モジュール13e、13fのいずれかとの間の乗り移り移動が可能になっている。なお、直線搬送モジュール12eが保守用直線搬送モジュール13e、13fと連結する停止位置は、別の直線搬送モジュール12dが往路の搬送路101aの一部を構成する際の直線搬送モジュール12eの退避位置になっている。
台車移載装置11dに対しては、第1実施形態による台車移載装置11a、11bと同様に、装置コントローラ111が設けられている。また、台車移載装置11dの直線搬送モジュール12d、12eに対しては、第1実施形態による直線搬送モジュール12a、12bと同様に、モジュールコントローラ112が設けられている。また、保守用直線搬送モジュール13c、13d、13e、13fに対しては、第1実施形態による保守用直線搬送モジュール13a、13bと同様に、それぞれモジュールコントローラ113が設けられている。
また、台車移載装置11dには、位置検出センサ14として、保守用直線搬送モジュール13c、13dに連結する直線搬送モジュール12dのY軸方向の位置を検出する位置検出センサ14fが設けられている。また、台車移載装置11dには、位置検出センサ14として、復路の搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hにそれぞれ連結する直線搬送モジュール12dのY軸方向の位置を検出する位置検出センサ14gが設けられている。
また、台車移載装置11dには、位置検出センサ14として、往路の搬送路101aの直線搬送モジュール10c、10dにそれぞれ連結する直線搬送モジュール12eのY軸方向の位置を検出する位置検出センサ14hが設けられている。台車移載装置11dには、位置検出センサ14として、保守用直線搬送モジュール13e、13fに連結する直線搬送モジュール12eのY軸方向の位置を検出する位置検出センサ14iが設けられている。
保守用直線搬送モジュール13c、13dと台車移載装置11dの直線搬送モジュール12dとの間の台車20の移動も、第1実施形態と同様に実行することができる。また、保守用直線搬送モジュール13e、13fと台車移載装置11dの直線搬送モジュール12eとの間の台車20の移動も、第1実施形態と同様に実行することができる。すなわち、これらの台車20の移動は、第1実施形態における保守用直線搬送モジュール13aと台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bとの間の台車20の移動と同様に実行することができる。
また、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、台車移載装置11dの直線搬送モジュール12d、12eを高精度に位置決めすることができる。
すなわち、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14fを用いた位置ずれ補正により、一方の直線搬送モジュール12dを、保守用直線搬送モジュール13c、13dに対してY軸方向において高精度に位置決めすることができる。また、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14gを用いた位置ずれ補正により、一方の直線搬送モジュール12dを、搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hに対してY軸方向において高精度に位置決めすることができる。さらに、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14hを用いた位置ずれ補正により、一方の直線搬送モジュール12dを、搬送路101aの直線搬送モジュール10c、10dに対してY軸方向において高精度に位置決めすることができる。
また、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14hを用いた位置ずれ補正により、他方の直線搬送モジュール12eを、搬送路101aの直線搬送モジュール10c、10dに対してY軸方向において高精度に位置決めすることができる。また、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14iを用いた位置ずれ補正により、他方の直線搬送モジュール12eを、保守用直線搬送モジュール13e、13fに対してY軸方向において高精度に位置決めすることができる。さらに、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14gを用いた位置ずれ補正により、他方の直線搬送モジュール12eを、搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hに対してY軸方向において高精度に位置決めすることができる。
本実施形態による加工システム2″では、台車移載装置11dが加工ステーション30の間に位置している。これにより、本実施形態による加工システム2″は、加工ステーション30による加工順序を変更し、また、一部の加工ステーション30による加工を省略することが可能になっている。
例えば、加工ステーション30d、30eによる加工工程が必ずしも全ワークWに対して必要でない工程である場合、加工ステーション30cによる工程の終了後、搬送路101a上の台車20を台車移載装置11dの直線搬送モジュール12eに移動する。次いで、直線搬送モジュール12eを搬送路101bに向かってY軸方向に移動して、位置検出センサ14gで検出できる位置で、直線搬送モジュール12eを搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hと連結する。次いで、直線搬送モジュール12e上の台車20を直線搬送モジュール10hに移動して、加工ステーション30fへ送る。こうして、加工ステーション30d、30eによる加工工程を省略することができる。
逆に、例えば、加工ステーション30d、30eによる加工工程を複数回、続けて繰り返すことができる。この場合、加工ステーション30eによる加工工程の終了後、搬送路101b上の台車20を台車移載装置11dの直線搬送モジュール12dに移動する。次いで、直線搬送モジュール12dを搬送路101aに向かってY軸方向に移動して、位置検出センサ14hで検出できる位置で、直線搬送モジュール12dを搬送路101aの直線搬送モジュール10c、10dと連結する。次いで、直線搬送モジュール12d上の台車20を直線搬送モジュール10dに移動して、再び加工ステーション30dへ送る。こうして、加工ステーション30d、30eによる加工工程を繰り返すことができる。
さらには、例えば、加工ステーション30e、30dによる加工工程の順序を変更することもできる。この場合、加工ステーション30cによる加工工程の終了後、搬送路101a上の台車20を台車移載装置11dの直線搬送モジュール12eに移動する。次いで、直線搬送モジュール12eを搬送路101bに向かってY軸方向に移動して、位置検出センサ14gで検出できる位置で、直線搬送モジュール12eを搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hと連結する。次いで、直線搬送モジュール12e上の台車20を直線搬送モジュール10gに移動して、加工ステーション30eへ送る。加工ステーション30eによる加工工程の終了後、曲線搬送モジュール16c、16bにより台車20を加工ステーション30dへ送る。加工ステーション30dによる加工工程の終了後、搬送路101aの台車20を再度、台車移載装置11dの直線搬送モジュール12eに移動する。次いで、直線搬送モジュール12eを搬送路101bに向かってY軸方向に移動して、直線搬送モジュール12eを搬送路101bの直線搬送モジュール10g、10hと再度連結する。次いで、今度は、直線搬送モジュール12e上の台車20を直線搬送モジュール10hに移動して、加工ステーション30fへ送る。
要するに、本実施形態では、台車移載装置11dを介して加工ステーション30c、30d、30e、30fの間を任意に繋げてその間で台車20を移動することが可能である。
また、本実施形態では、台車移載装置11dの直線搬送モジュール12d、12eの退避位置が、それぞれ加工作業領域100の外側に設けられている。これらの退避位置は、直線搬送モジュール12dと保守用直線搬送モジュール13c、13dとの連結位置、及び直線搬送モジュール12eと保守用直線搬送モジュール13e、13fとの連結位置を兼ねている。このように退避位置が連結位置を兼ねることにより、本実施形態では、加工システム2″の設置場所の省スペース化を図ることができる。
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態について図12及び図13を用いて説明する。なお、上記第1乃至第5実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
図12は、本実施形態による加工システム3の全体構成を示す概略図であり、搬送システム6を含む加工システム3全体を上方から見た上面図である。図13は、本実施形態による加工システム3の制御構成を示す制御ブロック図である。
本実施形態による加工システム3に含まれる搬送システム6では、互いに同一の曲率を有する複数台の曲線搬送モジュール16が連結されて、円環状の循環型の搬送路101″が構成されている。第3乃至第5実施形態によるオーバル状の循環型の搬送路101′では、直線搬送モジュール10及び曲線搬送モジュール16の2種類の搬送モジュールが連結されている。これに対し、本実施形態よる円環状の循環型の搬送路101″では、互いに同一の曲率を有する曲線搬送モジュール16、17の1種類の搬送モジュールのみが連結されている。なお、複数の曲線搬送モジュール16、17のうち、曲線搬送モジュール17は、台車移載装置11eの曲線搬送モジュール17である。
具体的には、図12に示すように、円環状の搬送路101″は、互いに同一の曲率を有する曲線搬送モジュール16a乃至16g、17が円環状に連結されて構成されている。本実施形態では、搬送路101″の曲率が均一であるため、搬送路101″走行する台車20に加わる外力の大きさ及び方向の変動を抑制してこれらを一定に維持することができる。したがって、本実施形態によれば、搬送路101″を走行する台車20及び台車20に搭載されたワークWの外力による位置ずれの影響を抑制することができる。
本実施形態では、円環状の搬送路101″に沿って、加工ステーション30a乃至30gが設置されている。また、円環状の搬送路101″に対しては、加工作業領域100の境界を跨ぐように、台車移載装置11eが設置されている。加工作業領域100の外側には、台車移載装置11eの一方の側に隣接するように、保守用直線搬送モジュール13gが設置されている。
台車移載装置11eは、移動可能な可動式の曲線搬送モジュール17を有している。台車移載装置11eは、曲線搬送モジュール17を一軸アクチュエータ(不図示)で後述のOA方向に駆動する。曲線搬送モジュール17は、搬送路101″を構成している曲線搬送モジュール16と同一の構成を有し、曲線搬送モジュール16と同一の曲率を有している。曲線搬送モジュール17は、曲線搬送モジュール16と同様に、モジュールコントローラ117(図13参照)によりそのコイル19の通電制御が行われ、その上の台車20の移動が制御される。
台車移載装置11eの曲線搬送モジュール17は、搬送路101″を構成する一部の曲線搬送モジュール16として機能可能に構成されている。すなわち、曲線搬送モジュール17は、搬送路101″の曲線搬送モジュール16a、16gとこれらの間で連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、曲線搬送モジュール17は、搬送路101″の一部を構成することが可能になっている。
台車移載装置11eは、曲線搬送モジュール17の端面Aと搬送路101″の中心Oを結ぶ方向であるOA方向に曲線搬送モジュール17を駆動する。これに対して、保守用直線搬送モジュール13gは、OA方向と直角をなす方向である、円環状の搬送路101″の接線方向と平行な方向に沿って設置される。なお、図12では、OA方向がY軸方向に沿った方向になっており、OA方向と直角をなす方向であるX軸方向に沿って保守用直線搬送モジュール13gが設置されている。
また、台車移載装置11eの曲線搬送モジュール17は、上述のように台車移載装置11eに隣接して設置された保守用直線搬送モジュール13gと連結する位置に移動可能に構成されている。これにより、台車20は、曲線搬送モジュール17と保守用直線搬送モジュール13gとの間の乗り移り移動が可能になっている。
上述のように、保守用直線搬送モジュール13gは、OA方向と直角をなす方向に沿って設置されている。このため、曲線搬送モジュール17が保守用直線搬送モジュール13gと連結した際、台車20は、両モジュール搬送17、13gの連結部を曲線搬送モジュール17の接線方向に走行する。したがって、本実施形態では、両搬送モジュール17、13gの間の乗り継ぎの際に台車20が受ける外力を抑制することができる。
図13は、本実施形態による加工システム3の制御構成を示す制御ブロック図である。なお、図13に示す制御構成は、図4に示す第2実施形態の制御構成と同様に、台車20に設置された台車固定機構15′を用いた場合のものである。本実施形態でも、第1実施形態と同様に、台車固定機構15′に代えて又はこれとともに搬送路101″に設置された台車固定機構15を用いて台車20を固定することができる。
本実施形態では、搬送路101″に直線搬送モジュール10が用いられていないため、図13に示すように、直線搬送モジュール10を制御するモジュールコントローラ110が設けられていない。
また、台車移載装置11eに対しては、第1実施形態による台車移載装置11a、11bと同様に、装置コントローラ111が設けられている。
搬送コントローラ40には、台車移載装置11eの曲線搬送モジュール17を制御するモジュールコントローラ117が搬送系シリアル通信網41で接続されている。モジュールコントローラ117には、曲線搬送モジュール17上の台車20の搬送方向の位置を検出する位置検出センサ514が接続されている。位置検出部としての位置検出センサ514は、特に限定されるものではないが、例えばリニアエンコーダである。なお、位置検出センサ514は、図12中には示していない。
搬送コントローラ40の指令により、モジュールコントローラ117は、曲線搬送モジュール17のコイル19の通電制御を行う。これにより、モジュールコントローラ117は、曲線搬送モジュール17上の台車20の位置を制御する。
また、台車移載装置11eには、位置検出センサ14として、搬送路101″の曲線搬送モジュール16aに連結する曲線搬送モジュール17のOA方向の位置を検出する位置検出センサ14jが設けられている。また、台車移載装置11eには、位置検出センサ14として、保守用直線搬送モジュール13gに連結する曲線搬送モジュール17のOA方向の位置を検出する位置検出センサ14kが設けられている。
保守用直線搬送モジュール13gに対しては、第1実施形態による保守用直線搬送モジュール13a、13bと同様に、モジュールコントローラ113が設けられている。
保守用直線搬送モジュール13gと台車移載装置11eの曲線搬送モジュール17との間の台車20の移動も、第1実施形態と同様に実行することができる。すなわち、この台車20の移動は、第1実施形態における保守用直線搬送モジュール13aと台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bとの間の台車20の移動と同様に実行することができる。
また、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14kを用いた位置ずれ補正により、台車移載装置11eの曲線搬送モジュール17を、保守用直線搬送モジュール13gに対してOA方向において高精度に位置決めすることができる。また、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14jを用いた位置ずれ補正により、曲線搬送モジュール17を、搬送路101″の曲線搬送モジュール16に対してOA方向において高精度に位置決めすることができる。
なお、本実施形態では、円環状の搬送路101″に対して台車移載装置11e及び保守用直線搬送モジュール13gを設置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第3実施形態によるオーバル状の搬送路101′の曲線部に対しても、本実施形態と同様に、台車移載装置11e及び保守用直線搬送モジュール13gを設置することができる。
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態について図14及び図15を用いて説明する。なお、上記第1乃至第6実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
図14は、本実施形態による加工システム3′の全体構成を示す概略図であり、搬送システム6を含む加工システム3′全体を上方から見た上面図である。図15は、本実施形態による加工システム3′の制御構成を示す制御ブロック図である。
本実施形態による加工システム3′の基本的構成は、第6実施形態による加工システム3の構成と同様である。本実施形態による加工システム3′が第6実施形態による加工システム3と異なる点は、台車移載装置11fの曲線搬送モジュール17′の端面及び保守用搬送モジュールの形状である。
本実施形態では、図14に示すように、円環状の搬送路101″に対して、加工作業領域100の境界を跨ぐように、台車移載装置11fが設置されている。加工作業領域100の外側には、台車移載装置11fの両側に隣接するように、保守用曲線搬送モジュール18a、18bが設置されている。なお、保守用曲線搬送モジュール18a、18bの両方が設置されていなくてもよく、いずれか一方が設置されていてもよい。
台車移載装置11fは、移動可能な可動式の曲線搬送モジュール17′を有している。台車移載装置11fは、円環状の搬送路101″の所定の半径方向である移動方向に曲線搬送モジュール17′を一軸アクチュエータ(不図示)で駆動する。曲線搬送モジュール17′は、搬送路101″を構成している曲線搬送モジュール16と同一の構成を有し、曲線搬送モジュール16と同一の曲率を有している。曲線搬送モジュール17′は、曲線搬送モジュール16と同様に、モジュールコントローラ117(図15参照)によりそのコイル19の通電制御が行われ、その上の台車20の移動が制御される。
台車移載装置11fの曲線搬送モジュール17′は、搬送路101″を構成する一部の曲線搬送モジュール16として機能可能に構成されている。すなわち、曲線搬送モジュール17′は、搬送路101″の曲線搬送モジュール16a、16gとこれらの間で連結する位置に移動可能に構成されている。
本実施形態では、台車移載装置11fの曲線搬送モジュール17′の両端面Bが、台車移載装置11fにより駆動される曲線搬送モジュール17′の移動方向と平行になっている。一方、搬送路101″の曲線搬送モジュール16a、16gの曲線搬送モジュール17′と連結する端面も、それぞれ曲線搬送モジュール17′の移動方向と平行になっている。これにより、本実施形態では、曲線搬送モジュール17′が、曲線搬送モジュール16a、16gとこれらの間で連結可能になっている。
また、台車移載装置11fの曲線搬送モジュール17′は、その両端部で、上述のように台車移載装置11fに隣接して設置された保守用曲線搬送モジュール18a、18bと連結可能に構成されている。保守用曲線搬送モジュール18a、18bは、搬送路101″を含む加工作業領域100の外側に設置されている。曲線搬送モジュール17′は、同一の停止位置で、保守用曲線搬送モジュール18a、18bと連結可能になっている。これにより、台車20は、曲線搬送モジュール17′と保守用曲線搬送モジュール18a、18bのいずれかとの間の乗り移り移動が可能になっている。保守用曲線搬送モジュール18a、18bは、それぞれ、搬送路101″を構成する曲線搬送モジュール16と同一の構成を有し、曲線搬送モジュール16と同一の曲率を有している。保守用曲線搬送モジュール18a、18bは、曲線搬送モジュール16と同様に、それぞれ、モジュールコントローラ118(図15参照)によりその通電制御が行われ、その上の台車20の移動が制御される。
本実施形態でも、第4実施形態による加工システム2′と同様、台車移載装置11fの曲線搬送モジュール17′が1箇所の停止位置で2台の保守用曲線搬送モジュール18a、18bに連結することができる。これにより、本実施形態でも、第4実施形態と同様に、短時間で効率よくワークWの回収及び投入を行うことができる。
このように、曲線搬送モジュール17′が、平面上を直線方向かつ円の内側から外側に移動して、同一位置で保守用曲線搬送モジュール18a、18bと連結するには、上述のように曲線搬送モジュール17′の両端面Bがその移動方向と平行である必要がある。すなわち、両端面がそれぞれ円の半径方向と平行な扇形の外周部をなす形状の曲線搬送モジュールでは、保守用曲線搬送モジュール18a、18bとの連結は不可能である。
また、搬送路101″の外形、すなわち加工作業領域100と干渉しないように加工作業領域100の外側に保守用曲線搬送モジュール18a、18bを設置するためには、距離y及び角度θが所定の条件を満足する必要がある。ここで、距離yは、台車移載装置11fの曲線搬送モジュール17′を保守用曲線搬送モジュール18a、18bと連結するために搬送路101″からの移動させる距離である。また、角度θは、保守用曲線搬送モジュール18a、18bそれぞれの外側の端面C、Dの中心と、円環状の搬送路101″の中心Oから距離yだけ曲線搬送モジュール17′の移動方向に離間した中心O′とがなす角∠CO′Dの角度の1/2である。これら距離y及び角度θが満足すべき条件は、次式(1)で表される。
y(y+2r1cosθ) ≧ r2
2-r1
2 … (1)
ここで、r1は、搬送路101″の内側の柵1011により画定される搬送路101″の内径である。また、r2は、搬送路101″外側の柵1011により画定される搬送路101″の外径である。
なお、第6実施形態では、本実施形態とは異なり、保守用直線搬送モジュール13gが直線搬送モジュールであり、搬送路101″の接線方向に平行な方向に沿って設置している。このため、第6実施形態では、台車移載装置11eの曲線搬送モジュール17が加工作業領域100と干渉しない位置で保守用直線搬送モジュール13gと連結することができる位置に、保守用曲線搬送モジュール13gを設置することができる。
また、本実施形態では、円環状の搬送路101″に対して台車移載装置11f及び保守用曲線搬送モジュール18a、18bを設置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第3の実施形態によるオーバル状の搬送路101′の曲線部に対しても、本実施形態と同様に、台車移載装置11f及び保守用曲線搬送モジュール18a、18bを設置することができる。
図15は、本実施形態による加工システム3′の制御構成を示す制御ブロック図である。なお、図15に示す制御構成は、図4に示す第2実施形態の制御構成と同様に、台車20に設置された台車固定機構15′を用いた場合のものである。本実施形態でも、第1実施形態と同様に、台車固定機構15′に代えて又はこれとともに搬送路101″に設置された台車固定機構15を用いて台車20を固定することができる。
台車移載装置11fに対しては、第6実施形態による台車移載装置11eと同様に、装置コントローラ111が設けられている。台車移載装置11fの曲線搬送モジュール17′に対しては、第6実施形態による曲線搬送モジュール17と同様に、モジュールコントローラ117が設けられている。
台車移載装置11fには、位置検出センサ14として、搬送路101″の曲線搬送モジュール16a、16gに連結する曲線搬送モジュール17′の移動方向の位置を検出する位置検出センサ14lが設けられている。また、台車移載装置11fには、位置検出センサ14として、保守用曲線搬送モジュール18a、18bに連結する曲線搬送モジュール17′の移動方向の位置を検出する位置検出センサ14mが設けられている。
搬送コントローラ40には、保守用曲線搬送モジュール18a、18bを制御するモジュールコントローラ118がそれぞれ搬送系シリアル通信網41で接続されている。それぞれのモジュールコントローラ118には、保守用曲線搬送モジュール18a、18b上の台車20の搬送方向の位置を検出する位置検出センサ614がそれぞれ接続されている。位置検出部としての位置検出センサ614は、特に限定されるものではないが、例えばリニアエンコーダである。なお、位置検出センサ614は、図14中には示していない。
保守用曲線搬送モジュール18a、18bと台車移載装置11fの曲線搬送モジュール17′との間の台車20の移動も、第1実施形態と同様に実行することができる。すなわち、この台車20の移動は、第1実施形態における保守用直線搬送モジュール13aと台車移載装置11bの直線搬送モジュール12bとの間の台車20の移動と同様に実行することができる。
また、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14mを用いた位置ずれ補正により、台車移載装置11fの曲線搬送モジュール17′を、保守用曲線搬送モジュール18a、18bに対して移動方向において高精度に位置決めすることができる。また、第1実施形態と同様に、位置検出センサ14lを用いた位置ずれ補正により、曲線搬送モジュール17′を、搬送路101″の曲線搬送モジュール16に対して移動方向において高精度に位置決めすることができる。
[その他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、Y軸方向等の搬送路が形成する平面内で搬送モジュール12、17、17′を移動させる台車移載装置11を用いた場合を例に説明したが、これらに限定されるものではない。台車移載装置として、例えば、その直線又は曲線搬送モジュールの移動方向、すなわち台車の移載方向がZ軸方向である台車移載装置を用いることもできる。この場合、台車移載装置は、搬送路が形成する平面に対して上方又は下方にその搬送モジュールを移動して、Z軸方向の位置が互いに異なる一の搬送路から他の搬送路又は保守用搬送モジュールに台車を移載することができる。これにより、搬送システムのフットプリントを拡大することなく、他の台車の処理を止めることなく、特定の台車の保守を行うことができる。
固定搬送路の搬送モジュール連結面は、台車走行方向に凹凸で噛み合うように構成される場合がある。このような場合、搬送路が形成する平面内で台車走行方向と異なる方向移動する搬送モジュールを有する台車移載装置を用いることは困難である。このような場合であっても、上述のようにZ軸方向へ搬送モジュールを移動する台車移載装置を用いることで、互いに異なる搬送路間又は搬送路と保守用搬送モジュールとの間の台車の移動を実現することができる。
また、上記の場合、保守用搬送モジュールは、加工作業領域と干渉しない加工作業領域とは異なるZ軸方向の位置に配置して、台車移載装置と連結可能に構成することができる。これにより、搬送路の曲線搬送モジュールが用いられた部分においても、搬送モジュールの端面形状に関する制約や、保守用搬送モジュールと加工作業領域との干渉を回避するための制約を大幅に緩和することができる。
また、上記実施形態では、同期型リニアモータにより搬送システムを構成した場合を例に説明したが、これに限定されるものでなく、リラクタンス型リニアモータを用いて搬送システムを構成することもできる。
また、上記実施形態では、加工システムがワークの組立てライン等の生産ラインを構成する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、一連の作業工程を複数のステーションで分割して実行するラインに適用でき、生産ライン以外の多様な作業のラインにおいても適用可能である。