JP2022057736A - ケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法、リチウムイオン二次電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い初期放電容量を有するとともに、初期効率に優れたリチウムイオン二次電池等の負極用炭素材料を提供する。【解決手段】炭素原料とケイ素粒子又は酸化ケイ素粒子とを混合して乾式造粒する工程と、造粒された粒子を不活性ガス雰囲気下で炭化する工程とを備え、前記炭素原料として、揮発成分(1000℃で焼成時)が、10~45重量%であるピッチを用いるケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法。【選択図】なし
Description
本明細書に開示された技術は、リチウムイオン二次電池の負極等に使用されるケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池は、従来の二次電池であるニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、鉛電池に比較し、軽量で高容量を有することから、ポータブル電子機器、例えば、携帯電話、ノート型パソコンなどの駆動用電源として実用化されている。また、電気自動車やハイブリッド自動車用の電源としても利用されている。
負極用材料として、リチウムと合金化するケイ素、スズ、ゲルマニウムやこれらの酸化物等を用いることができるが、これらの材料は、リチウムイオンを吸蔵する充電時に体積が膨張し、リチウムイオンを放出する放電時には体積が収縮する。このため、充放電サイクルを繰り返す際の体積変化によって負極用材料が電極から脱落及び崩壊するおそれがある。
特許文献1には、酸化ケイ素と炭素材料とを含むリチウムイオン二次電池用活物質が記載されている。この活物質は、内部に空隙を有しているので、充放電時の体積変化が小さく抑えられている。
また、特許文献2には、炭素材料中にリチウム吸蔵材料粒子を埋設させるとともに、当該リチウム吸蔵材料粒子のサイズを小さくすること等によって充放電時の電極破壊を防ぐための技術が記載されている。
また、特許文献3には、生コークスとケイ素粒子又は酸化ケイ素粒子とを混合・造粒した後、炭化して、易黒鉛化非晶質炭素中にSiOx(0<x<2)を含有する非晶質炭素材料が記載されている。この非晶質炭素材料を用いることで、充放電時の体積変化が小さく、サイクル特性が改善できるものである。
しかしながら、特許文献1に記載されたリチウムイオン二次電池用活物質は、噴霧された樹脂水溶液をコロイダルシリカと共に炭化することで得られるので、真球に近く、また粒度分布がシャープなものである。そのため、電極を作製した際に粒子間接点が少なく、導電材を多く混合するなどの工夫が必要となる。また、特許文献1に記載された方法によれば、活物質の製造工程が多いので、実用的ではないと考えられる。
また、特許文献2に記載された技術では、リチウム吸蔵材料粒子においてリチウムの吸蔵及び放出が生じた場合の体積変化をある程度抑えることができるものの、十分に抑えることができないので、負極の破壊及びサイクル特性の改善を十分に達成することは困難である。
また、特許文献3に記載された技術では、サイクル特性が改善されるものの、初期放電容量及び初期効率が低いものであった。
本発明の目的は、上記課題に鑑み、初期放電容量及び初期効率が改善したリチウムイオン二次電池等の負極用材料を提供することにある。
すなわち、本発明の第1要旨は、炭素原料とケイ素粒子又は酸化ケイ素粒子とを混合して乾式造粒する工程と、造粒された粒子を不活性ガス雰囲気下で炭化する工程とを備え、前記炭素原料として、揮発成分が10~45重量%であるピッチを用いることを特徴とするケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法に存する。そして、本発明の第2要旨は、第1要旨の要旨に係るケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法によって得られたケイ素含有非晶質炭素材料を負極用炭素材料として用いるリチウムイオン二次電池の製造方法に存する。
本発明に係るケイ素含有非晶質炭素材料によれば、初期放電容量が大きく、初期効率の良い二次電池を得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下で説明するのは実施形態の一例であって、構成材料、構成材料又は部材の形状、加工や熱処理の条件等は本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
本明細書中で用いる「円形度」とは、粒子等の丸さの指標であって、次式(1)で求められる値である。
-ケイ素含有非晶質炭素材料の説明-
図1は、本発明の一実施形態に係るケイ素含有非晶質炭素材料の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図1は、本発明の一実施形態に係るケイ素含有非晶質炭素材料の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
本実施形態に係るケイ素含有非晶質炭素材料は、非晶質炭素を備え、非晶質炭素中には、SiOx(0<x<2)で表される酸化ケイ素粒子が含まれている。当該非晶質炭素中の酸化ケイ素粒子は、例えば分散された状態で存在している。非晶質炭素は、易黒鉛化炭素、いわゆるソフトカーボンである。個々のケイ素含有非晶質炭素材料は、原料に由来する複数の炭素粒子で構成されている。
この構成によれば、非晶質炭素に酸化ケイ素粒子が含まれることで、リチウムイオン二次電池の負極材料として用いた場合に、初期放電容量を向上させつつ、初期効率を向上させることが可能となる。
また、本実施形態のケイ素含有非晶質炭素材料において、ケイ素含有率と酸素含有率のモル比(O/Si)が0.2以上2.0未満であれば、初期放電容量を向上させつつ、一定レベル以上の初期効率及びサイクル特性をバランス良く備えることができるので、より好ましい。ケイ素含有率と酸素含有率のモル比(O/Si)が0.3~1.7であれば、さらに好ましい。ケイ素含有非晶質炭素材料は、0重量%を超え40重量%未満の酸素を含有してもいてもよい。
当該ケイ素含有非晶質炭素材料の平均粒径D50は例えば5~40μm程度である。平均粒径が40μmを超えると炭素材料の強度が低下するおそれがあるとともに、負極を作製するにあたり、適切な膜厚の電極形成が困難になる場合がある。また、平均粒径が5μm未満の炭素材料では、非晶質炭素粒子中に酸化ケイ素粒子を分散することが困難である。ケイ素含有非晶質炭素材料の平均粒径は、10~30μmであればより好ましい。ケイ素含有非晶質炭素材料の最大粒径は、45μm以下程度である。
ケイ素含有非晶質炭素材料中のケイ素の含有率は1重量%以上50重量%以下である。50重量%以下であれば造粒しやすいからである。なお、容量を向上させる効果を十分に得るためには、ケイ素の含有率が5重量%以上であることが好ましい。
また、本実施形態のケイ素含有非晶質炭素材料の円形度は、0.60~1.0程度であれば好ましく、0.70~0.98であればより好ましい。この構成によれば、充填密度及び電極密度を上げることができる。円形度が0.6未満であると複合化の効果が十分に発揮できず、また、粒子同士の引っかかりが大きくなって充填密度及び電極密度が低くなる。円形度が1.0を超えることはなく、円形度が1.0の材料であっても本発明の効果を得ることができるが、充填密度の向上や、粒子同士の接点を多くするためには円形度が0.98以下であることがより好ましい。ただし、ケイ素含有非晶質炭素材料の円形度が上述の範囲を外れている場合でも、充放電時の体積変化が従来の炭素材料よりも小さく抑えられる効果は有しているので、リチウムイオン二次電池用の負極材料として使用することは可能である。
ピッチを用いて製造されたケイ素含有非晶質炭素材料に含まれる非晶質炭素には、遷移金属が700~2500ppm下程度含まれていることが好ましい。
このように、非晶質炭素が遷移金属を含んでいることにより、リチウムの挿入又は脱離を促進する効果が得られると考えられ、また、遷移金属が酸化ケイ素にドープされることにより、酸化ケイ素粒子の膨張又は収縮を緩和することができる。
以上で説明したケイ素含有非晶質炭素材料によれば、非晶質炭素中に高容量の酸化ケイ素粒子が分散されているので、初期充電容量及び初期放電容量を、非晶質炭素のみで構成された場合に比べて大きくすることができる。
ここで、ケイ素含有非晶質炭素材料のケイ素源としては後述のように酸化ケイ素粒子又はケイ素粒子が用いられるが、それぞれの場合で適切な配合比で材料を混合することで、上述のケイ素含有非晶質炭素材料を得ることができる。
さらに、球状粒子内部の炭素材料は、焼成時に粒子同士が融着し粒界がないことにより、リチウムの拡散経路が十分に確保されるので、リチウムの挿入及び脱離を速やかに行うことが可能となる。
また、本実施形態のケイ素含有非晶質炭素材料は、リチウムイオンの吸蔵及び放出が非晶質炭素部分では等方向に行われるので、黒鉛に比べて速やかに充放電することが可能である。また、酸化ケイ素を含有することにより、高い容量を備えている。このため、本実施形態のケイ素含有非晶質炭素材料は、電気自動車用のリチウムイオン二次電池等に、特に好ましく用いられる。
また、リチウムイオンの吸蔵及び放出が等方向に行われることによって、一方向あたりの体積変化が小さくなるので、結晶性の高い黒鉛材料を用いる場合に比べて負極の破壊は生じにくくなっている。
なお、本実施形態のケイ素含有非晶質炭素材料は、リチウムイオン二次電池だけでなく、リチウムイオンキャパシタ等の負極材料としても利用することが可能である。
-ケイ素含有非晶質炭素材料(負極用材料)の製造方法-
[炭素原料]
炭素材料は、バインダーピッチ等の常温下で固形油の材料を用いることができる。バインダーピッチは、例えば石炭をコークス炉などで乾留し、コークスとコールタール成分に分離後、コールタールを常圧蒸留塔等でナフタリン油やアントラセン油などの軽質成分と軟質ピッチ等の重質成分に分離し、この軟質ピッチを重合槽、加熱炉、減圧蒸留等を経て得られる。
炭素材料は、バインダーピッチ等の常温下で固形油の材料を用いることができる。バインダーピッチは、例えば石炭をコークス炉などで乾留し、コークスとコールタール成分に分離後、コールタールを常圧蒸留塔等でナフタリン油やアントラセン油などの軽質成分と軟質ピッチ等の重質成分に分離し、この軟質ピッチを重合槽、加熱炉、減圧蒸留等を経て得られる。
また、本発明に用いる炭素原料は、揮発成分(1000℃で焼成時)が、10~45重量%である。揮発成分の含有量が前記範囲内にあることによって、酸化ケイ素の還元効果を向上させる点で好ましい。揮発成分の含有量は15~38%がより好ましい。本発明に用いるピッチの不純物含有量(灰分)は0.5~2重量%が好ましい。不純物含有量が前記範囲内にあることによって、リチウムイオン二次電池の負極材料として用いた場合、Li挿入脱離の効率が向上すると考えられる点で好ましい。不純物の含有量は、0.5~1.0重量%がより好ましい。
本発明で用いるピッチの軟化点は150~350℃が好ましい。ピッチの軟化点が150℃未満では、球形化造粒過程における剪断応力による発熱によって液化してしまい、所望の形状を得ることが困難となる点で好ましくない。ピッチの軟化点が350℃を超える場合には、その材料の加工費が上昇する点で好ましくない。
ピッチは粉砕して用いることができる。粉砕後の平均粒径(D50)は、1μm~15μm、より好ましくは3~10μmとする。平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計による測定に基づく。D50が1μm未満の場合は、必要な粉砕エネルギーが莫大なものになるので現実的ではなく、D50が3μm未満の場合は乾式造粒を行う際に、粒子に十分に力学的エネルギーを付与できない場合が出てくる。また、D50が15μmを超えると、造粒後にリチウムイオン二次電池の負極材料として適当な大きさの粒子が少なくなるので好ましくない。粉砕機としては、ビーズミル(MSCミル;日本コークス)、ジェットミル(日本ニューマテック工業社製))等が挙げられる。
上記粉砕品をさらに分級することができる。分級装置としては、精密空気分級機、例えば、ターボクラシファイヤー(日清エンジニアリング社製)、エルボージェット(日鉄鉱業社製)、クラッシール(セイシン企業社製)等が挙げられる。
[ケイ素原料]
酸化ケイ素粒子又はケイ素粒子を用いる。ここで、ケイ素原料の平均粒径は特に限定されないが、1μm以下とすることで、ケイ素含有非晶質炭素材料の充放電時の酸化ケイ素粒子の膨張幅が小さくなるため、炭素層が体積変化を抑えることができる。
酸化ケイ素粒子又はケイ素粒子を用いる。ここで、ケイ素原料の平均粒径は特に限定されないが、1μm以下とすることで、ケイ素含有非晶質炭素材料の充放電時の酸化ケイ素粒子の膨張幅が小さくなるため、炭素層が体積変化を抑えることができる。
<酸化ケイ素粒子を用いる場合>
ここで、一例として平均粒径が20~30nm程度の酸化ケイ素粒子を用いる場合について説明する。なお、ケイ素原料の種類により好ましい実施態様が異なるため、ケイ素粒子を用いる場合については後述する。
ここで、一例として平均粒径が20~30nm程度の酸化ケイ素粒子を用いる場合について説明する。なお、ケイ素原料の種類により好ましい実施態様が異なるため、ケイ素粒子を用いる場合については後述する。
(乾式造粒工程)
先ず、ピッチの粒子と酸化ケイ素粒子とをよく混合して乾式造粒を行う。炭素原料とケイ素原料との混合割合は、特に限定されないが、炭素原料と酸化ケイ素粒子との重量の和を100%とした場合の酸化ケイ素粒子の割合が2~90重量%にするのが好ましい。酸化ケイ素粒子の割合は、10~85重量%であればより好ましく、20~80重量%であればさらに好ましい。なお、ピッチは粘着性を有しているので、バインダー成分を加えて湿式造粒する必要がない。
先ず、ピッチの粒子と酸化ケイ素粒子とをよく混合して乾式造粒を行う。炭素原料とケイ素原料との混合割合は、特に限定されないが、炭素原料と酸化ケイ素粒子との重量の和を100%とした場合の酸化ケイ素粒子の割合が2~90重量%にするのが好ましい。酸化ケイ素粒子の割合は、10~85重量%であればより好ましく、20~80重量%であればさらに好ましい。なお、ピッチは粘着性を有しているので、バインダー成分を加えて湿式造粒する必要がない。
本処理には、剪断、圧縮、衝突などの応力を同時にかける球形化処理が可能な装置を用いることができるが、処理装置は、そのような構造及び原理を用いる装置に限定されるものではない。
本処理に用いられる装置としては、例えば、回転式のボールミルなどのボール型混練機、エッジランナーなどのホイール型混練機、ハイブリダイゼーションシステム(奈良機械製作所製)、メカノフュージョン(ホソカワミクロン社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、COMPOSI(日本コークス工業社製)などが挙げられる。特に、回転するブレードの羽根とハウジングとの間隙で、粉体に圧密応力又は圧縮応力が加わる構造の装置が好ましく用いられる。処理時に粉体に加わる温度が60℃~300℃になるよう制御すれば、ピッチに含まれる揮発分によって適度な粘着性が発生し、粒子同士が瞬時に付着する作用が働くため、粉体の成長が促進される。
原料に用いるピッチの円形度を制御した場合、圧縮剪断応力による形状加工後に得られる粉体の円形度を制御することができる。原料に用いるピッチの円形度が0.5~0.8程度の場合には、圧縮剪断応力による形状加工後に得られる粉体の円形度は、0.60より大きく1.0以下に制御することが可能となる。得られる粉体の円形度は、望ましくは0.65~0.98である。粉体の円形度が1.0であっても酸化ケイ素粒子の膨張収縮の影響を緩和する効果を得ることができるが、0.98を超える円形度まで処理した粒子では、真球に近いために粒子同士の接点が少なくなる。特に粒子の円形度の範囲が0.80~0.96であることが好ましい。
また、本発明においては、球形化処理が可能な装置を用いなくても良い。成型体とするには、例えば、粉砕されたピッチの粒子と酸化ケイ素粒子とを分散性よく混合して油圧プレスによって所定の形状の成型体を作製し、その後焼成したものを粉砕機で粉砕する方法を用いて製造することができる。粉砕機としては、ビーズミル(MSCミル;日本コークス)、ジェットミル(日本ニューマテック工業社製)) 等が挙げられる。
酸化ケイ素粒子とピッチとを混合する際は、酸化ケイ素粒子の全量をピッチと混合してもよいが、酸化ケイ素粒子の量が多いと造粒しにくくなるので、ピッチと一部の酸化ケイ素粒子とを混合して造粒を開始した後、複数回(例えば3回以上)に分けて酸化ケイ素粒子を添加してもよい。また、酸化ケイ素粒子等を造粒開始時に投入した後に酸化ケイ素粒子及びピッチを添加してもよく、造粒の最後にピッチのみを添加して酸化ケイ素粒子の表面をピッチで被覆してもよい。また、本工程において、酸化ケイ素の一部が単体のケイ素に置き換わっていてもよい。
さらに、造粒に用いるピッチの一部をアセチレンブラックなどの炭素材料や遷移金属化合物を始めとする無機化合物、有機化合物などに置き換えることによって、異種材料とピッチとを複合化することも可能である。造粒を妨げない程度であれば、造粒開始時もしくは造粒途中に投入するピッチの一部を異種材料で置換してもよいし、異種材料のみを造粒途中に追加してもよい。異種材料の添加量は、造粒を妨げない範囲であれば、特に限定しない。異種材料の平均粒径は、造粒を妨げない範囲であれば特に限定しないが、添加する時点の造粒粒子径の1/2以下であることが好ましい。
(炭化工程)
次に、造粒された粒子を炭化する。炭化の方法は特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で最高到達温度800~1200℃、最高到達温度での保持時間は0時間より長く10時間以下にして熱処理する方法が挙げられる。
次に、造粒された粒子を炭化する。炭化の方法は特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で最高到達温度800~1200℃、最高到達温度での保持時間は0時間より長く10時間以下にして熱処理する方法が挙げられる。
炭化温度が800℃以上であれば、ピッチ中に残る低分子炭化水素や官能基の量を低減できるので、これらの不純物による不可逆容量の増大を効果的に抑えることができる。炭化温度が1200℃以下であれば、絶縁性の炭化ケイ素が材料中で生成するのを抑えることができるので好ましい。炭化温度が900~1100℃程度であれば特に好ましい。炭化温度を900℃以上とすることで、低分子炭化水素等の残留による不可逆容量の増大をより効果的に抑えることができる。
なお、炭化工程において、最高到達時間での保持時間を10時間より長くしてもよいが、炭化が完了した後に熱処理を続けることになるので経済的ではない。
この炭化処理によって、ピッチ中の揮発成分が酸化ケイ素の還元を促進していると考えられる。また、炭化の際に生じる揮発成分のガスが外部に抜ける際に粒子中にはガスの放出経路が形成されるが、当該放出経路は、リチウムイオン二次電池の負極材料として用いた場合に、リチウムが拡散する経路になり、また、酸化ケイ素粒子の膨張収縮を緩衝する効果も発揮する。
以上の方法によれば、特許文献1に記載された方法に比べて容易にリチウムイオン二次電池の負極に用いられる材料を製造することができる。
<ケイ素粒子を用いる場合>
また、別の一例として、酸化ケイ素粒子に代えてケイ素粒子を用いる場合を説明する。
また、別の一例として、酸化ケイ素粒子に代えてケイ素粒子を用いる場合を説明する。
なお、ケイ素粒子は空気中での取り扱いにより、粒子表面に酸化被膜が形成されやすく、また、ケイ素粒子の過度の酸化を防ぐために、予めケイ素粒子の表面に酸化被膜が形成されている場合もあるが、本発明においてはこれらのケイ素粒子も用いることができる。
(乾式造粒工程)
まず、ピッチの粒子とケイ素粒子とをよく混合して乾式造粒を行う。炭素原料とケイ素原料との混合割合は、特に限定されないが、炭素原料とケイ素粒子との重量の和を100%とした場合のケイ素粒子の割合が2~90重量%にするのが好ましい。特に、酸化数の低いケイ素粒子は大きく膨張収縮をするため、ケイ素粒子の割合は、5~50重量%とすることが好ましく、5~35重量%とすることがより好ましい。
まず、ピッチの粒子とケイ素粒子とをよく混合して乾式造粒を行う。炭素原料とケイ素原料との混合割合は、特に限定されないが、炭素原料とケイ素粒子との重量の和を100%とした場合のケイ素粒子の割合が2~90重量%にするのが好ましい。特に、酸化数の低いケイ素粒子は大きく膨張収縮をするため、ケイ素粒子の割合は、5~50重量%とすることが好ましく、5~35重量%とすることがより好ましい。
本処理には、前述の方法と同様に、剪断、圧縮、衝突などの応力を同時にかけることが可能な装置を用いることができる。
原料に用いるピッチの円形度を制御した場合、圧縮剪断応力による形状加工後に得られる粉体の円形度を制御することができる。原料に用いるピッチの円形度が0.5~0.8程度の場合には、圧縮剪断応力による形状加工後に得られる粉体の円形度は、0.60より大きく1.0以下に制御することが可能となる。得られる粉体の円形度は、望ましくは0.65以~0.98である。粉体の円形度が1.0であってもケイ素粒子の膨張収縮の影響を緩和する効果を得ることができるが、0.98を超える円形度まで処理した粒子では、真球に近いために粒子同士の接点が少なくなる。特に粒子の円形度の範囲が0.80~0.96であることが好ましい。
ここで、ケイ素粒子の全量をピッチと混合してもよいが、ケイ素粒子の量が多いと造粒しにくくなるので、ピッチと一部のケイ素粒子とを混合して造粒を開始した後、複数回(例えば3回以上)に分けてケイ素粒子を添加してもよい。また、ケイ素粒子等を造粒開始時に投入した後にケイ素粒子及びピッチを添加してもよく、造粒の最後にピッチのみを添加してケイ素粒子の表面をピッチで被覆してもよい。また、本工程において、ケイ素の一部が酸化ケイ素に置き換わっていてもよい。
さらに、造粒に用いるピッチの一部をアセチレンブラックなどの炭素材料や遷移金属化合物を始めとする無機化合物、有機化合物などに置き換えることによって、異種材料とピッチとを複合化することも可能である。造粒を妨げない程度であれば、造粒開始時もしくは造粒途中に投入するピッチの一部を異種材料で置換してもよいし、異種材料のみを造粒途中に追加してもよい。異種材料の添加量は、造粒を妨げない範囲であれば、特に限定しない。異種材料の平均粒径は、造粒を妨げない範囲であれば特に限定しないが、添加する時点の造粒粒子径の1/2以下であることが好ましい。
(炭化工程)
次に、造粒された粒子を炭化する。炭化の方法は特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で最高到達温度800℃~1200℃、最高到達温度での保持時間は0時間より長く10時間以下にして熱処理する方法が挙げられる。
次に、造粒された粒子を炭化する。炭化の方法は特に限定されないが、例えば、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で最高到達温度800℃~1200℃、最高到達温度での保持時間は0時間より長く10時間以下にして熱処理する方法が挙げられる。
炭化温度が800℃以上であれば、ピッチ中に残る低分子炭化水素や官能基の量を低減できるので、これらの不純物による不可逆容量の増大を効果的に抑えることができる。炭化温度が1200℃以下であれば、絶縁性の炭化ケイ素が材料中で生成するのを抑えることができるので好ましい。
炭化温度が900~1100℃程度であれば特に好ましい。炭化温度を900℃以上とすることで、低分子炭化水素等の残留による不可逆容量の増大を抑えることができる。
なお、炭化工程において、最高到達時間での保持時間を10時間より長くしてもよいが、炭化が完了した後に熱処理を続けることになるので経済的ではない。
この炭化処理には、ピッチ中の揮発成分がケイ素粒子の表面の酸化被膜を還元する作用があると考えられる。酸化数の小さいケイ素粒子を含む炭素材料は高容量を示すため、負極材料として好ましいが、一方で酸化数の小さいケイ素粒子ほど膨張収縮が大きいという問題がある。本発明によれば、炭化の際に生じる揮発成分のガスが外部に抜けて形成される空隙がケイ素粒子の膨張収縮を緩衝するため、高容量なケイ素含有非晶質炭素材料を提供できる。また、炭化の際に生じる揮発成分のガスが外部に抜ける際に粒子中にはガスの放出経路が形成されるが、当該放出経路は、リチウムイオン二次電池の負極材料として用いた場合に、リチウムが拡散する経路になる。
以上の方法によっても、容易にリチウムイオン二次電池の負極に用いられる材料を製造することができる。
また、本実施形態の製造方法では、造粒された粒子の表面の凹凸の大きさを調節することができる。具体的には、造粒工程において、造粒時間を短くしたり、造粒時の圧力を低くする、酸化ケイ素の配合比率を多くする等、あるいは造粒途中で造粒当初に加えたピッチ粒子よりも粒径の大きいピッチ粒子を追加することによって、表面の凹凸を大きくすることができる。逆に、造粒途中で造粒当初に加えたピッチ粒子よりも粒径の小さいピッチ粒子を追加することによって、表面の凹凸を小さくすることもできる。
-リチウムイオン二次電池の構成-
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、負極と、負極集電体と、正極と、正極集電体と、負極と正極との間に介在するセパレータと、アルミニウムラミネートフィルム等で構成された外装とを備えている。
負極としては、例えば、金属箔の両面又は片面に上述の本実施形態の非晶質炭素含有材料が塗布されたものが用いられる。この塗布されたケイ素含有非晶質炭素材料の平均粒径及び円形度は、電池の製造工程の前後でほぼ変化せず、それぞれ、5~40μm及び0.60~1.0となっている。
なお、負極を作製する際には、造粒されたケイ素含有非晶質炭素材料の他に、アセチレンブラック(AB;デンカ)、カーボン・ナノファイバー(VGCF-H;昭和電工)等の導電助剤や、KFポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVdF;呉羽化学))を加え、N-メチルピロリドン(NMP)を溶剤として、自転・公転式ミキサー((株)シンキー)にて混練したペーストを集電用銅箔上に塗布する。
なお、負極集電体、正極、正極集電体、セパレータ及び外装等、負極以外の部材の形状や構成材料については一般的なものを適用することができる。
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、上述のケイ素含有非晶質炭素材料が塗布された負極を有しているので、迅速な充放電が可能であるとともに、容量が大きく、充放電を繰り返しても負極が崩壊しにくくなっている。さらに、エネルギー密度が高く、不可逆容量が小さく抑えられ、且つサイクル特性を改善することも可能となっている。
なお、これはリチウムイオン二次電池の一例であって、各部材の形状や電極数、大きさ等は適宜変更してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づき本出願に係る発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(a)炭素原料中の揮発成分、灰分の測定:
電気炉を用いて、不活性ガス雰囲気中で1000℃で5時間焼成した際の、焼成前後の重量変化を確認して炭素原料中の揮発成分を定量分析した。
また、電気炉を用いて、大気雰囲気中で1000℃で5時間焼成した際の、焼成前後の重量変化を確認し灰分の定量分析を行った。
電気炉を用いて、不活性ガス雰囲気中で1000℃で5時間焼成した際の、焼成前後の重量変化を確認して炭素原料中の揮発成分を定量分析した。
また、電気炉を用いて、大気雰囲気中で1000℃で5時間焼成した際の、焼成前後の重量変化を確認し灰分の定量分析を行った。
(b)平均粒子径の測定:
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置LMS-2000e(マルバーン社)を用いて測定した。
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置LMS-2000e(マルバーン社)を用いて測定した。
(c)BET比表面積の測定:
BET比表面積は、マルチソーブ(マルバーン社)を使用して測定した。
BET比表面積は、マルチソーブ(マルバーン社)を使用して測定した。
(d)非晶質炭素材料の炭素含有率の測定:
燃焼-赤外線吸収法を装置とした炭素・硫黄分析装置(EMIA-U520;((株)ホリバ製作所)によって試料中の炭素含有率を定量分析した。
燃焼-赤外線吸収法を装置とした炭素・硫黄分析装置(EMIA-U520;((株)ホリバ製作所)によって試料中の炭素含有率を定量分析した。
(e)非晶質炭素材料の酸素含有率の測定:
不活性ガス融解-赤外線吸収法を装置とした酸素・窒素分析装置(EMGA-920;((株)ホリバ製作所)によって試料中の酸素含有率を定量分析した。
不活性ガス融解-赤外線吸収法を装置とした酸素・窒素分析装置(EMGA-920;((株)ホリバ製作所)によって試料中の酸素含有率を定量分析した。
(f)非晶質炭素材料のケイ素含有率の測定:
試料を1050℃で灰化処理し、その残量を二酸化ケイ素含有量としてケイ素含有率を算出した。なお、O/Si比は、酸素含有率及びケイ素含有率からそれぞれ得られた試料中のモル濃度に基づいて求められる。
試料を1050℃で灰化処理し、その残量を二酸化ケイ素含有量としてケイ素含有率を算出した。なお、O/Si比は、酸素含有率及びケイ素含有率からそれぞれ得られた試料中のモル濃度に基づいて求められる。
(g)円形度の測定:
粒子が積層しないように、且つ扁平な粒子は扁平面がシートに平行に配列するように分散固定したシートを走査型電子顕微鏡(S-4800 日立ハイテク社)によってシートの真上から撮影し、画像をA像くん(旭化成エンジニアリング社)で解析した。本実施例および比較例では、それぞれ粒子300個について投影面積と投影周囲長を測定し、円形度を算出して円形度の平均値を求めた。
粒子が積層しないように、且つ扁平な粒子は扁平面がシートに平行に配列するように分散固定したシートを走査型電子顕微鏡(S-4800 日立ハイテク社)によってシートの真上から撮影し、画像をA像くん(旭化成エンジニアリング社)で解析した。本実施例および比較例では、それぞれ粒子300個について投影面積と投影周囲長を測定し、円形度を算出して円形度の平均値を求めた。
(h)粒子の断面観察:
粒子の断面写真は、樹脂に埋設した粒子をクロスセクションポリッシャー(CP)で処理し、走査型電子顕微鏡(S-4800 日立ハイテク社)で撮影した。
粒子の断面写真は、樹脂に埋設した粒子をクロスセクションポリッシャー(CP)で処理し、走査型電子顕微鏡(S-4800 日立ハイテク社)で撮影した。
(i)ハーフセル評価用の電池作製と評価試験:
単極の電池評価はCR2032コインセルを用いて行った。
単極の電池評価はCR2032コインセルを用いて行った。
電極シート作製用ペースト調製:
試料1重量部にアセチレンブラック(AB)0.039重量部、カーボン・ナノファイバー(VGCF-H)0.13重量部、8重量%呉羽化学製KFポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVdF))0.13重量部を加え、N-メチルピロリドン(NMP)を溶剤として、自転・公転式ミキサー((株)シンキー)にて混練した後、Cu金属箔に塗布し、乾燥させた。このシートを圧延して所定のサイズに打ち抜き、評価用の電極を作製した。対極には金属リチウムを用い、電解液は1mol/lのLiPF6を溶解したエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶液を(体積比で1:2)を用いた。なお、以下のコインセルの組み立ては、露点-80℃以下の乾燥アルゴン雰囲気下で実施した。
試料1重量部にアセチレンブラック(AB)0.039重量部、カーボン・ナノファイバー(VGCF-H)0.13重量部、8重量%呉羽化学製KFポリマー(ポリフッ化ビニリデン(PVdF))0.13重量部を加え、N-メチルピロリドン(NMP)を溶剤として、自転・公転式ミキサー((株)シンキー)にて混練した後、Cu金属箔に塗布し、乾燥させた。このシートを圧延して所定のサイズに打ち抜き、評価用の電極を作製した。対極には金属リチウムを用い、電解液は1mol/lのLiPF6を溶解したエチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶液を(体積比で1:2)を用いた。なお、以下のコインセルの組み立ては、露点-80℃以下の乾燥アルゴン雰囲気下で実施した。
単極充放電試験:
充電は1.5mAで0.05Vまで定電流充電を行い、0.04mAまで電流が減衰したところで充電完了とした。(CC-CV充電)放電は1.5mAで定電流放電(CC放電)を行い、2.0Vでカットオフした。この充放電を10サイクル繰り返した。
充電は1.5mAで0.05Vまで定電流充電を行い、0.04mAまで電流が減衰したところで充電完了とした。(CC-CV充電)放電は1.5mAで定電流放電(CC放電)を行い、2.0Vでカットオフした。この充放電を10サイクル繰り返した。
-実施例及び比較例に係るケイ素含有非晶質炭素材料の作製-
下記の実施例及び比較例において、炭素材料として、バインダーピッチであるピッチA~D又は石油系非針状コークスである生コークスを用いた。ピッチA~D、生コークスの軟化点、揮発性分、灰分(不純物元素含有率)を表1に示す。なお、ピッチAはJEFケミカル(株)製、銘柄MCP250、ピッチBはJEFケミカル(株)製、銘柄MCP110、ピッチCはJEFケミカル(株)製、銘柄MCP150、ピッチDはJEFケミカル(株)製、銘柄MCP350である。
下記の実施例及び比較例において、炭素材料として、バインダーピッチであるピッチA~D又は石油系非針状コークスである生コークスを用いた。ピッチA~D、生コークスの軟化点、揮発性分、灰分(不純物元素含有率)を表1に示す。なお、ピッチAはJEFケミカル(株)製、銘柄MCP250、ピッチBはJEFケミカル(株)製、銘柄MCP110、ピッチCはJEFケミカル(株)製、銘柄MCP150、ピッチDはJEFケミカル(株)製、銘柄MCP350である。
次に、以下の実施例及び比較例における製造条件を、表2にまとめて示す。また、これらの実施例及び比較例において作製された炭素材料の各パラメータを測定した結果を表3に示す。
<実施例1>
ピッチAを、D50が6.3μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチAと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチAの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50重量%とした。
ピッチAを、D50が6.3μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチAと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチAの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50重量%とした。
ピッチAと二酸化ケイ素粒子の一部とをCOMPOSI CP15型(日本コークス工業社製)に投入して低速で球形化処理を開始し、数回に分けて二酸化ケイ素粒子を全量投入した。全量投入後は周速を60m/sとして120分間処理を行い、造粒された粒子を得た。
次に、造粒された粒子を1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
このようにして得られた実施例1に係る球形化複合材料のD50は11.6μmであり、BETは0.9m2/gであり、円形度は0.78であった。また、O/Si比(モル比)は1.41であった。得られた炭素材料中のSi含有率は28wt%であった。
<実施例2>
ピッチAを、D50が6.3μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチAと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチAの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を52重量%とした。
ピッチAを、D50が6.3μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチAと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチAの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を52重量%とした。
ピッチAと二酸化ケイ素粒子の一部とをCOMPOSI CP15型(日本コークス工業社製)に投入して低速で球形化処理を開始し、数回に分けて二酸化ケイ素粒子を全量投入した。全量投入後は周速を60m/sとして180分間処理を行い、造粒された粒子を得た。
次に、造粒された粒子を1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
このようにして得られた実施例2に係る球形化複合材料のD50は11.8μmであり、BETは2.0m2/gであり、円形度は0.76であった。また、O/Si比(モル比)は1.54であった。得られた炭素材料中のSi含有率は29wt%であった。
<実施例3>
ピッチAを、D50が6.3μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチAと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチAの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を59重量%とした。
ピッチAを、D50が6.3μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチAと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチAの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を59重量%とした。
ピッチAと二酸化ケイ素粒子の一部とをCOMPOSI CP15型(日本コークス工業社製)に投入して低速で球形化処理を開始し、数回に分けて二酸化ケイ素粒子を全量投入した。全量投入後は周速を60m/sとして160分間処理を行い、造粒された粒子を得た。
次に、造粒された粒子を1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
このようにして得られた実施例3 に係る球形化複合材料のD50は15.0μmであり、BETは6.8m2/gであり、円形度は0.69であった。また、O/Si比(モル比)は1.71であった。得られた炭素材料中のSi含有率は32wt%であった。
<実施例4>
ピッチAを、D50が6.3μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチAと二酸化ケイ素粒子とを混合して油圧プレスを用いて20MPaで5分間プレスを行い成型体を作製した。
ピッチAを、D50が6.3μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチAと二酸化ケイ素粒子とを混合して油圧プレスを用いて20MPaで5分間プレスを行い成型体を作製した。
次に、成型体を1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
次に、炭化後、ハイスピードミル(タニナカO&K(株))を用いて粉砕後、更に粒子の表面活性を抑えるため1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
このようにして得られた実施例4に係る球形化複合材料のD50は15.6μmであり、BETは15.4m2/gであり、円形度は0.69であった。また、O/Si比(モル比)は1.84であった。得られた炭素材料中のSi含有率は27wt%であった。
<実施例5>
コロイダルシリカST-O(日産化学(株))をNMPに溶解させたピッチAと混合し、エバポレーターでNMPを蒸発させ、ピッチ中に固定化したコロイダルシリカを得る。このコロイダルシリカ/ピッチをD50が6.0μmとなるよう粉砕及び分級し、油圧プレスを用いて20MPaで5分間プレスを行い成型体を作製した。
コロイダルシリカST-O(日産化学(株))をNMPに溶解させたピッチAと混合し、エバポレーターでNMPを蒸発させ、ピッチ中に固定化したコロイダルシリカを得る。このコロイダルシリカ/ピッチをD50が6.0μmとなるよう粉砕及び分級し、油圧プレスを用いて20MPaで5分間プレスを行い成型体を作製した。
次に、成型体を1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
次に、炭化後、ハイスピードミル(タニナカO&K(株))を用いて粉砕後、更に粒子の表面活性を抑えるため1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
このようにして得られた実施例5に係る球形化複合材料のD50は8.0μmであり、BETは7.6m2/gであり、円形度は0.67であった。また、O/Si比(モル比)は1.33であった。得られた炭素材料中のSi含有率は28wt%であった。
<実施例6>
ピッチCを、D50が4.2μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチCと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチCの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50重量%とした。
ピッチCを、D50が4.2μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチCと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチCの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50重量%とした。
ピッチCと二酸化ケイ素粒子の一部とをCOMPOSI CP15型(日本コークス工業社製)に投入して低速で球形化処理を開始し、数回に分けて二酸化ケイ素粒子を全量投入した。全量投入後は周速を60m/sとして120分間処理を行い、造粒された粒子を得た。
次に、造粒された粒子を1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
このようにして得られた実施例6に係る球形化複合材料のD50は10.6μmであり、BETは5.1m2/gであり、円形度は0.63であった。また、O/Si比(モル比)は1.29であった。得られた炭素材料中のSi含有率は31wt%であった。
<実施例7>
ピッチDを、D50が4.6μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチDと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチCの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50重量%とした。
ピッチDを、D50が4.6μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチDと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチCの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50重量%とした。
ピッチDと二酸化ケイ素粒子の一部とをCOMPOSI CP15型(日本コークス工業社製)に投入して低速で球形化処理を開始し、数回に分けて二酸化ケイ素粒子を全量投入した。全量投入後は周速を60m/sとして120分間処理を行い、造粒された粒子を得た。
次に、造粒された粒子を1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
このようにして得られた実施例7に係る球形化複合材料のD50は8.0μmであり、BETは1.6m2/gであり、円形度は0.69であった。また、O/Si比(モル比)は1.45であった。得られた炭素材料中のSi含有率は30wt%であった。
<比較例1>
ピッチBを、D50が6.0μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチBと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチAの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50重量%とした。
ピッチBを、D50が6.0μmとなるよう粉砕及び分級し、ピッチBと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子とピッチAの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50重量%とした。
ピッチBと二酸化ケイ素粒子の一部とをCOMPOSI CP15型(日本コークス工業社製)に投入して低速で球形化処理を開始し、数回に分けて二酸化ケイ素粒子を全量投入した。全量投入後は周速60m/sとして120分間処理を行ったが、造粒された粒子を得ることはできなかった。
<比較例2>
生コークスを、D50が6.7μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークスと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子と生コークスの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50重量%とした。
生コークスを、D50が6.7μmとなるよう粉砕及び分級し、生コークスと二酸化ケイ素粒子とを混合して上述の方法で乾式造粒を行った。二酸化ケイ素粒子の粒径は20~30nmであった。二酸化ケイ素粒子と生コークスの重量の和を100%とした場合の二酸化ケイ素粒子の添加量を50重量%とした。
生コークスと二酸化ケイ素粒子の一部とをCOMPOSI CP15型(日本コークス工業社製)に投入して低速で球形化処理を開始し、数回に分けて二酸化ケイ素粒子を全量投入した。全量投入後は周速を70m/sとして120分間処理を行い、造粒された粒子を得た。
次に、造粒された粒子を1000℃、最高到達温度での保持時間(炭化時間)を5時間として炭化処理した。
このようにして得られた比較例2に係る球形化複合材料のD50は15.8μmであり、BETは14.7m2/gであり、円形度は0.79であった。また、O/Si比(モル比)は1.48であった。得られた炭素材料中のSi含有率は28wt%であった。
球形化処理を行っていない実施例4、5は他の実施例に対して粒度分布が広いものであった。
-測定結果-
実施例1~7及び比較例2に係る炭素材料についての試験結果を表4に示す。
実施例1~7及び比較例2に係る炭素材料についての試験結果を表4に示す。
表4に示すように、実施例1~7に係る炭素材料では、いずれも初期放電容量が650mAh/gを十分に上回っており、また、初期効率も60%以上と、酸化ケイ素を含む炭素材料としては、十分に高くすることができた。
本実施形態の一例に係るケイ素含有非晶質炭素材料は、例えば電気自動車や、太陽光発電、風力発電などの蓄電システム等に用いられるリチウムイオン二次電池、あるいはリチウムイオンキャパシタの負極材料として有用である。
Claims (6)
- 炭素原料とケイ素粒子又は酸化ケイ素粒子とを混合して乾式造粒する工程と、造粒された粒子を不活性ガス雰囲気下で炭化する工程とを備え、前記炭素原料として、揮発成分が10~45重量%であるピッチを用いることを特徴とするケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法。
- 請求項1に記載のケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法において、炭素原料とケイ素粒子又は酸化ケイ素粒子との混合割合は、炭素原料とケイ素粒子又は酸化ケイ素粒子との重量の和を100%とした場合のケイ素粒子又は酸化ケイ素粒子の添加量が2~90重量%であるケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法において、造粒された粒子を炭化する工程では、炭化温度を800~1200℃とするケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載のケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法において、得られるケイ素含有非晶質炭素材料の円形度が0.6~1.0であるケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法。
- 請求項1~4のいずれか1項に記載のケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法において、得られるケイ素含有非晶質炭素材料の平均粒径が5~40μmであるケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載のケイ素含有非晶質炭素材料の製造方法によって得られたケイ素含有非晶質炭素材料を負極用炭素材料として用いるリチウムイオン二次電池の製造方法。
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