JP2022056699A - ラジカル重合性樹脂組成物、複合材料、及び当該ラジカル重合性樹脂組成物等を用いた構造体 - Google Patents

ラジカル重合性樹脂組成物、複合材料、及び当該ラジカル重合性樹脂組成物等を用いた構造体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、表面乾燥性と二次接着性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、下記成分(A)と、下記成分(B)及び/又は成分(C)とからなる成分(D)を含有し、前記成分(D)のけん化価は、100~250mgKOH/gであることを特徴とする。(A)不飽和ポリエステル樹脂(A1)またはビニルエステル樹脂(A2)をいずれかもしくは両方を含み、成分(E)を70~30質量%含む樹脂組成物(B)飽和脂肪酸(C)飽和脂肪酸エステル(D)(B)または(C)をいずれかもしくは両方を1種または2種以上からなる成分(E)スチレンモノマー【選択図】図1

Description

本発明は、ラジカル重合性樹脂組成物、複合材料、及び当該ラジカル重合性樹脂組成物等を用いた構造体に関する。
不飽和ポリエステルやビニルエステルは強度や防水防食性能が高く、被覆用樹脂材料として使用されている。これらは施工時にラジカル重合させることにより硬化物を形成するが、ラジカル重合は酸素により反応を阻害されるため、大気下で硬化させた場合、表面の硬化性が悪くなるという問題があった。この課題を解決するためにはパラフィンワックスを添加すると、改善されることが提案されている(特許文献1)。
樹脂にパラフィンワックスを添加すると、硬化時に浮いてくるため、表面に層を形成する。これが酸素を遮断するため、表面の硬化性が向上する。しかし、硬化後も表面にパラフィンワックスが存在するため、二次接着性に悪影響を及ぼす。そのため、二次接着性が必要な場合、現場ではパラフィンワックスを除くために表面を研磨し、樹脂表面を露出させる必要があった。
またパラフィンワックスの添加量の範囲を規定することで、二次接着性と表面硬化性を両立させる樹脂も提案されている(特許文献2、非特許文献1等)。
特開平11-209628 特開2002-114971
滝山榮一郎「ポリエステル樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、(1988)
しかしながら、上述の特許文献1を含め、パラフィンを使用する従来技術においては、樹脂にパラフィンワックスを添加すると、硬化時に浮いてくるため、表面に層を形成する。これが酸素を遮断するため、表面の硬化性が向上する。しかし、硬化後も表面にパラフィンワックスが存在するため、二次接着性に悪影響を及ぼす。そのため、二次接着性が必要な場合、現場ではパラフィンワックスを除くために表面を研磨し、樹脂表面を露出させる必要があるという問題点を有する。
また、上述の特許文献1のように、パラフィンワックスの添加量の範囲を規定することで、二次接着性と表面硬化性を両立させる樹脂も提案されているが、添加しない場合よりは向上しているものの、同様に表面硬化性は遅く、また二次接着性は落ちるため、研磨することにより作業時間が長くなってしまう課題があった。
そこで、本発明は、二次接着性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、硬化性樹脂組成物について種々の観点から多角的に検討を重ねた結果、本発明のラジカル重合性樹脂組成物を見出すに至った。
すなわち、本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、下記成分(A)と、下記成分(B)及び/又は成分(C)とからなる成分(D)を含有し、前記成分(D)のけん化価は、100~250mgKOH/gであることを特徴とする。
(A)不飽和ポリエステル樹脂(A1)またはビニルエステル樹脂(A2)をいずれかもしくは両方を含み、成分(E)を70~30質量%含む樹脂組成物
(B)飽和脂肪酸
(C)飽和脂肪酸エステル
(D)(B)または(C)をいずれかもしくは両方を1種または2種以上からなる成分
(E)スチレンモノマー
また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物の好ましい実施態様において、前記成分(D)のけん化価は100~200mgKOH/gであることを特徴とする。
また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物の好ましい実施態様において、前記成分(D)の酸価は50~250mgKOH/gであることを特徴とする。
また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物の好ましい実施態様において、前記成分(D)の酸価は70~200mgKOH/gであることを特徴とする。
また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物の好ましい実施態様において、前記成分(D)を0.1質量部以上含むことを特徴とする。
また、本発明の複合材料は、本発明のラジカル重合性樹脂組成物と補強材(F)とを含むことを特徴とする。
また、本発明の構造体は、本発明のラジカル重合性樹脂組成物または本発明の複合材料を硬化させた硬化物の表面に、厚さ0.005mm以上の前記化合物(D)の層を有することを特徴とする。
また、本発明の被覆材は、本発明のラジカル重合性樹脂組成物または本発明の複合材料を硬化させた硬化物の表面に、厚さ0.005mm以上の前記化合物(D)の層を有する、ことを特徴とする。
本発明のラジカル重合性樹脂組成物によれば、常温硬化による表面乾燥性に優れ、硬化後の二次接着性が良好であるという有利な効果を奏する。また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物によれば、施工時の作業性が良く、また被覆後に表面を研磨する必要もないため、工期を短縮することができるという有利な効果を奏する。また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物によれば、表面乾燥性に優れ、表面を研磨せずとも二次接着性に優れる樹脂組成物を提供することで、被覆層の上に積層する場合においても作業時間を短縮することができる被覆用ラジカル重合性樹脂組成物を提供することが可能であるという有利な効果を奏する。
図1は、本発明の一実施態様における構造体(実施例4の構造体)を切削した、断面の写真である。図1中、1は上層を示し(成分(D)層)、下層に樹脂および補強材層が見られる。 図2は、本発明の一実施態様における樹脂組成物または複合材料を硬化させた硬化物の断面概略図である。図2中、図2中の1は上層を示し(成分(D)層)、2は下層を示す(樹脂および補強材層)。
以下に、本発明の詳細な説明の一例を示す。本発明のラジカル重合性樹脂組成物は、二次接着性に優れるという観点から、下記成分(A)と、下記成分(B)及び/又は成分(C)とからなる成分(D)を含有し、前記成分(D)のけん化価は、前記成分(D)のけん化価は、100~250mgKOH/gであることを特徴とする。
(A)不飽和ポリエステル樹脂(A1)またはビニルエステル樹脂(A2)をいずれかもしくは両方を含み、成分(E)を70~30質量%含む樹脂組成物
(B)飽和脂肪酸
(C)飽和脂肪酸エステル
(D)(B)または(C)をいずれかもしくは両方を1種または2種以上からなる成分
(E)スチレンモノマー
本発明において、「成分(A)と、成分(B)及び/又は成分(C)とからなる成分(D)を含有し」としているが、これら(B)及び/又は成分(C)とからなる成分(D)と、成分(A)とを溶解して含むことが、複合材料の機械物性を得るという観点から、好ましい。本発明において、溶解とは、液体に気体、液体、固体などが混合して均一な液相を形成する現象を意味することができる。したがって、単に融解して混合する従来の配合物とは、掛かる点で異なるものである。これは、溶解までさせない場合、液中で析出することにより、均一な様相が得られず複合材料の機械物性に悪影響を与える虞があるためである。
(樹脂組成物の成分(A))
まず、成分(A)について、説明する。樹脂組成物の成分(A)は、不飽和ポリエステル(A1)及びビニルエステル(A2)から選ばれるいずれかまたは両方を含むことができる。
前記不飽和ポリエステル(A1)としては特に限定されず、例えば、酸成分(A1-1)と、アルコール成分(A1-2)とを縮合させて得られることができる。
前記酸成分(A1-1)としては特に限定されず、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸とフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ハロゲン化無水フタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメリット酸無水物、ピロメリト酸、ピロメリト酸二無水物等の不飽和二塩基酸や飽和二塩基酸、三官能以上の多塩基酸等、様々な酸成分等を用いることができ、それらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記アルコール成分(A1-2)としては特に限定されず、アルコールを中心に、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールや、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等の多管能のアルコール、ビスフェノールAプロピレンオキシド付加物等のエポキシド、ジブロムネオペンチルグリコール、ペンタエリスリットゾアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル等様々なアルコール成分等を用いることができ、それらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記不飽和ポリエステル(A1)の生成方法については特に限定されず、直接エステル化、エステル交換、酸クロリドとヒドロキシ基との反応、複分解反応、開環反応の利用、その他様々な反応を用いてもよく、酸成分(A1-1)、アルコール成分(A1-2)に関しては使用条件や用途に応じて必要な基本性能に合わせて適宜設定すればよく、反応温度や反応条件も同様に適宜設定すればよい。具体的には、例えば、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(滝山栄一郎、日刊工業新聞社、1988年)に記載の方法が従来公知であり、これらの常法により前記不飽和ポリエステル(A1)を生成することができる。
前記ビニルエステル(A2)としては特に限定されず、エポキシ樹脂(A2-1)と不飽和塩基酸(A2-2)を付加反応させた重合体とすることができ、エポキシアクリレートとも呼ばれるものである。
前記エポキシ樹脂(A2-1)としては特に限定されず、例えば、エピ・ビス型グリシジルエーテル、ノボラック型グリシジルエーテル、臭素化グリシジルエーテル、その他グリシジルエーテル、含窒素型、グリシジルエステル、過酢酸酸化型、グリコール型グリシジルエーテル等を用いることができ、それらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記不飽和塩基酸(A2-2)としては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、ソルビン酸、ヒドロキシメチルメタクリレート・マレート、ヒドロキシエチルアクリレート・マレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート・マレート、ヒドロキシプロピルアクリレート・マレート、ジシクロペンタジエンアクリレート・マレート等を用いることができ、それらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記ビニルエステル(A2)の生成方法については特に限定されず、フェノール変性、酸・酸無水物変性、酸ペンダントおよびリン酸ペンダント、ウレタン変性、アリルエーテル変性、アセトアセチル化変性、部分エステル化変性、その他様々な反応を用いてもよく、エポキシ樹脂(A2-1)、不飽和塩基酸(A2-2)に関しては使用条件や用途に応じて必要な基本性能に合わせて適宜設定すればよく、反応温度や反応条件も同様に適宜設定すればよい。具体的には、例えば、「ビニルエステル樹脂」(ビニルエステル樹脂研究会編、化学工業日報社、1993年)に記載の方法が従来公知であり、常法により、前記ビニルエステル(A2)を生成することができる。
前記樹脂組成物(A1)及び(A2)の酸価としては30mgKOH/g以下とすることが好ましい。酸価が高くなると樹脂の基礎物性を損なう虞があり、また本発明における表面乾燥性や二次接着性にも影響が生じる虞がある。より好ましくは25mgKOH/g以下であり、不飽和ポリエステルについては1~25mgKOH/gとすることが好ましい。
(酸価およびけん化価)
酸価およびけん化価の測定は、『JIS K0070:1992化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法』に準拠して測定することができる。前記酸価とは化合物の中和に要した水酸化カリウムの量を示しており、例えば1gの樹脂組成物を0.1mol/LのKOHエタノール溶液で中和に1mL要した際、酸価=(KOH溶液使用量×56.1×0.1)/樹脂組成物で求めることができるため、酸価は5.61mgKOH/gとなる。前記けん化価とは化合物の加水分解と中和に要した水酸化カリウムの量を示しており、前記酸価と同様の式で求めることができる。そのため、酸価を持つ化合物でけん化価測定した場合、加水分解されるエステル基以外に酸価も計上された値を示す。
(成分(D))
前記成分(D)は、飽和脂肪酸(B)及び飽和脂肪酸エステル(C)をいずれかもしくは両方を1種または2種以上からなる成分である。本発明のラジカル重合性樹脂組成物の好ましい実施態様において、前記成分(D)のけん化価は100~200mgKOH/gであることを特徴とする。また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物の好ましい実施態様において、前記成分(D)の酸価は50~250mgKOH/gであり、より好ましくは、70~200mgKOH/gであることを特徴とする。この酸価及びけん化価が低いと二次接着が不十分となり、高いと硬化が不十分となる虞がある。また前記成分(D)が酸価を持たない場合、けん化価は100~180mgKOH/gが好ましく、より好ましくは100~160mgKOH/gとすることができる。
(飽和脂肪酸(B)、飽和脂肪酸エステル(C))
前記飽和脂肪酸(B)は、直鎖カルボン酸を1種または2種以上含む化合物であり、前記飽和脂肪酸エステル(C)は、直鎖カルボン酸のエステルを1種または2種以上含む化合物である。前記樹脂組成物(A)に飽和脂肪酸(B)及び又は飽和脂肪酸エステル(C)を溶解させることで、硬化後の表面乾燥性が得られることができる。
また、本発明のラジカル重合性樹脂組成物の好ましい実施態様において、前記成分(D)を0.1質量部(重量部)以上含むことを特徴とする。すなわち、前記成分(D)の添加量は、樹脂組成物100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部~3質量部である。添加量の上限値は、表面乾燥性や二次接着性には影響がないため特に限定されないが、概ね3質量部を越えると表面乾燥性の向上は非常に緩やかになる。
前記成分(D)は、本発明のラジカル硬化性樹脂組成物、または該樹脂組成物を含む複合材料の硬化物表面に析出することで、表面乾燥性を向上させると考えられる。ラジカル硬化性樹脂は一般に、空気中の酸素による硬化阻害を受け表面にべとつきを生じるが、表面に接触する空気を遮断することで表面乾燥性が向上すると考えられる。
前記析出量は、表面乾燥性を担保するという観点から、前記ラジカル重合性樹脂組成物または該樹脂組成物を含む複合材料の硬化物の表面から厚さ0.005mm以上が好ましく、より好ましくは0.01mm以上であり、更に好ましくは0.03mm以上である。これ以下になると表面の(D)層がまばらになり、表面乾燥性に十分な硬化が発揮されない虞がある。
前記厚さの測定には[1]断面をマイクロスコープで観察しその厚さを計測する方法、および[2]析出した成分(D)層のみを切り取り厚さをマイクロメーターで計測する方法が挙げられる。[2]においては切り取ることができる厚さであれば、問題なく成分(D)層が形成されているといえる。
本発明では必要に応じ、成分(D)以外の公知のワックス類(d)を添加してもよい。ワックス類(d)としては、パラフィンワックスに代表される石油ワックス、天然ワックス、合成ワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。この際、ワックス類(d)の添加量が成分(D)の添加量を超えると二次接着性に悪影響を及ぼすことから、ワックス類(d)の添加量は成分(D)の添加量の20質量%以下が好ましく、さらには5質量%以下が好ましい。このときワックス類(d)は樹脂組成物(A)100質量部に対して0.005質量部を超えない量が二次接着性を良好に保つ上で好ましい。なお、なお、本発明において、溶解とは、液体に気体、液体、固体などが混合して均一な様相を形成する現象を意味することができるのは上述の通りであるが、ワックス類(d)を添加したい場合においても、溶解させることが好ましい。これは溶解までさせない場合、液中で析出することにより、均一な様相が得られず複合材料の機械物性に悪影響を与える虞があるからである。
前記成分(E)は、スチレンモノマーであり、重合性不飽和単量体として本発明のラジカル重合性樹脂組成物に必須成分として含まれている。これは成分(A)と、下記成分(B)及び/又は成分(C)とからなる成分(D)を全て溶解させることができる重合性不飽和単量体として、樹脂組成物中に30~70質量%含むことが好ましい。より好ましくは40~60質量%であり、多すぎる場合は機械物性に悪影響を与える虞があり、少なすぎると成分(A)と、下記成分(B)及び/又は成分(C)とからなる成分(D)の溶解性に悪影響を与える虞がある。
本発明では樹脂組成物を硬化させるために、硬化剤として、例えば、ラジカル硬化剤もしくは光硬化剤を添加することができる。
前記ラジカル硬化剤としては特に限定されず、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジシクロヘキサンオンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等その他様々なラジカル硬化剤を用いることができ、それらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
前記光硬化剤としては特に限定されず、例えば、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系等、その他様々な光硬化剤を用いることができ、それらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記ラジカル硬化剤と光硬化剤は併用することもできる。
前記硬化剤の添加量は、樹脂組成物合計量100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましく、より好ましくは0.5~3質量部である。過剰に添加した場合、硬化物の基礎物性や作業性を損なう虞がある。
本発明には使用条件の基本性能に応じて種々添加剤を含むことが可能である。添加剤の種類は特に限定されず、例えば、硬化促進剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃、充填剤、等を用いることができ、それらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記硬化促進剤としては特に限定されず、有機酸コバルト、有機酸銅、有機酸亜鉛、有機酸マンガン、有機酸カリウム等の金属石鹸類や、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、鉄アセチルアセトネート等の金属キレート類や、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、p-トルイジン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、4-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド等のN,N-置換アニリン、N,N 置換-p-トルイジン、4-(N,N-置換アミノ)ベンズアルデヒド等のアミン類等を用いることができ、それらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記硬化促進剤の添加量は、樹脂組成物100質量部に対して0.001~15質量部が好ましく、より好ましくは0.001~5質量部である。ただし、一般的に促進剤の種類により添加推奨範囲は異なり、例えば6%のナフテン酸コバルトを添加する場合、樹脂組成物100質量部に対して0.05~2質量部が好ましく、より好ましくは0.1~1.0質量部である。過剰に添加した場合、硬化物の基礎物性や作業性を損なう虞がある。
前記重合禁止剤としては特に限定されず、例えば、キノン類、ハイドロキノン(多価フェノール)類、フェノール類、有機ならびに無機の銅塩、アミジン類、ヒドラジン塩類、第4級アンモニウム塩類、アミン類、ニトロ化合物、オキシム類、硫黄、アミン塩酸塩類等、その他様々な禁止剤を用いることができ、それらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記重合禁止剤の添加量は、樹脂組成物100質量部に対して0.001~1質量部の添加が好ましく、より好ましくは0.005~0.5質量部である。過剰に添加した場合、樹脂組成物の硬化性が著しく劣る虞がある。
前記紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤としては特に限定されず、ラジカル重合性樹脂組成物に対して使用できるものを用いることができ、それらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記充填剤としては特に限定されず、例えば水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、アルミナ、タルク、シリカ、ガラスパウダー、マイカ、カーボンナノチューブ等の無機充填剤やその他には有機充填剤を用いることができ、それらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記充填剤の添加量は、樹脂組成物100質量部に対して0~250質量部が好ましく、より好ましくは0~100質量部の添加が好ましい。過剰に添加した場合、流動性が悪くなり、作業性が低下するほか、基本物性の低下の虞がある。
(補強材(F))
また、本発明の複合材料は、本発明のラジカル重合性樹脂組成物と補強材(F)とを含むことを特徴とする。前記補強材(F)としては特に限定されず、ラジカル重合性樹脂組成物に対して使用できるものを用いることができ、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維やアラミド、ポリエステル、ビニロン、フェノール、ポリテトラフルオロエチレン (polytetrafluoroethylene, PTFE)等からなる有機繊維や天然繊維等が挙げられる。また、これらの繊維の形態としては特に限定されず、例えば、クロス(織物)状、チョップストランドマット、プリフォーマブルマット、コンテニュアンスストランドマット、サーフェーシングマット等のマット状、チョップ状、ロービング状、不織布状等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2 種以上を併用してもよい。本発明においては補強材(F)を用いる場合、複合材料の機械物性を得るためには、ガラス繊維を用いることが好ましく、有機繊維の不繊布を用いる場合はガラス繊維も併用することが好ましい。
また、本発明の構造体は、本発明のラジカル重合性樹脂組成物または本発明の複合材料を硬化させた硬化物の表面に、厚さ0.005mm以上の前記化合物(D)の層を有することを特徴とする。
また、本発明の被覆材は、本発明のラジカル重合性樹脂組成物または本発明の複合材料を硬化させた硬化物の表面に、厚さ0.005mm以上の前記化合物(D)の層を有することを特徴とする。
このように、本発明の樹脂組成物は表面乾燥性、作業性、二次接着性に優れ、作業時間を短縮することができるため広い範囲に複数層に渡って成型施工を行うような、構造体、被覆材に用いることもできる。
以下、実施例により本発明の一実施態様についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(樹脂組成物(A)の調製)
(合成例1)
撹拌機、温度計、不活性ガス吹込み管、還流冷却器を備え付けた四ツ口フラスコにジエチレングリコール319重量部、イソフタル酸181重量部、テレフタル酸111重量部、アジピン酸65重量部、フタル酸47重量部を公知の条件で加熱脱水縮合させ、酸価9.2mgKOH/gの不飽和ポリエステルを得た。この不飽和ポリエステル(固形分)70部、重合性不飽和単量体としてのスチレン30部、及び禁止剤としてハイドロキノン0.03部を混合することにより、不飽和ポリエステル樹脂(A)-1を得た。
(合成例2)
撹拌機、温度計、不活性ガス吹込み管、還流冷却器を備え付けた四ツ口フラスコにプロピレングリコール196重量部、エチレングリコール93重量部、無水フタル酸332重量部、無水マレイン酸147重量部を公知の条件で加熱脱水縮合させ、酸価18.2mgKOH/gの不飽和ポリエステルを得た。この不飽和ポリエステル(固形分)70部、重合性不飽和単量体としてのスチレン30部、及び禁止剤としてハイドロキノン0.03部を混合することにより、不飽和ポリエステル樹脂(A)-2を得た。
(合成例3)
撹拌機、温度計、不活性ガス吹込み管、還流冷却器を備え付けた四ツ口フラスコBE-188(長春人造樹脂廠株式会社製エポキシ樹脂であり、エポキシ当量188)679重量部、メタクリル酸317重量部、2―メチルイミダゾール1重量部を仕込み空気を吹込みながらゆっくりと100℃まで昇温させる。発熱がおさまった後に130℃まで昇温反応させ、酸価9.2mgKOH/gの重合性ビニル基を有するエポキシアクリレートを得た。このエポキシアクリレート70部、重合性不飽和単量体としてスチレン30部、禁止剤としてハイドロキノン0.03部を混合することにより、ビニルエステル樹脂(A)-3を得た。
(合成例4)
(合成例3)と同様の操作を行い合成したエポキシアクリレート70部、重合性不飽和単量体としてメタクリル酸メチル30部、禁止剤としてハイドロキノンを0.03部を混合することによりビニルエステル樹脂(A)-4を得た。
(実施例1~21)
合成例1~3で得られた各樹脂に、12%オクチル酸コバルト0.4重量部、ジメチルアニリン0.2部を添加し、JIS K 6901に準拠して測定される25℃での粘度が400mPa・sとなるようにスチレンを調整し添加し(実施例21のみ合成例4で得られた樹脂にメタクリル酸メチルを添加)、ゲル化時間が15分となるよう禁止剤ハイドロキノンを調整し添加して調合した。続いて表1の配合で化合物(D)を添加した。化合物(D)として具体的には、下記に示す「化合物(B)のみ」、「化合物(C)のみ」、「化合物(B)と(C)の混合物」を添加した。
[化合物(B)]
・ステアリン酸(以下ST)
・ラウリン酸(以下LA)
[化合物(C)]
・ステアリン酸ステアリル(以下STS)
・べへニン酸ベヘニル(以下BEB)
[化合物(B)と(C)の混合物]
・STとSTSの混合物
・クラリアントケミカルズ株式会社製 LICOWAX E(以下LICO)
・日本精蝋株式会社製 NPS-8070(以下NPS)
(比較例1~6)
前記実施例と同様にして、化合物(D)の代わりに汎用のパラフィンワックスであり、酸価およびけん化価を持たない日本精蝋株式会社製 WAX-125を添加した。
(実施例1~21及び比較例1~6の表面乾燥性評価)
調合後の樹脂組成物100重量部に対して硬化剤パーメックN(日本油脂株式会社製)を1.0重量部添加し調合したものを用いて、PETフィルム上に10cm×10cmのチョップドストランドマット(#450:日東紡績株式会社製)2プライで積層した。積層後、指触確認を行い、指紋がつかなくなった時点を乾燥時間とした。評価結果を表1、表2、表3および表4に示した。
<評価方法>
◎ 乾燥時間≦1時間
○ 1時間<乾燥時間≦2時間
△ 2時間<乾燥時間≦3時間
× 3時間<乾燥時間
(実施例1~21及び比較例1~6の二次接着性評価)
表面乾燥から24時間後に同樹脂組成物100重量部に対してトナー5重量部及び硬化剤パーメックN1.0重量部を添加し調合したものを塗布した。塗布24時間後に碁盤目法(JIS K 5600 すきま間隔1mm)にてはがれ数を数えた。評価結果を表1、表2、表3及び表4に示した。
<評価方法>
〇 はがれなし
× はがれあり
(実施例1~21の化合物(D)層の厚さ評価)
調合後の樹脂組成物100重量部に対して硬化剤パーメックN(日本油脂株式会社製)を1.0重量部添加し調合したものを用いて、PETフィルム上に10cm×10cmのチョップドストランドマット(#450:日東紡績株式会社製)2プライで積層した。積層24時間後、10mm四方に切削し、化合物(D)層を切り取り、デジタルマイクロスコープM-30(ソニーマグネスケール株式会社製)にて計測した。評価結果を表1、表2、表3および表4に示した。
Figure 2022056699000002
Figure 2022056699000003
Figure 2022056699000004
Figure 2022056699000005
(評価)
実施例1~21の結果より、けん化価が所定の範囲にある化合物(D)を添加したラジカル重合性樹脂組成物においては、表面乾燥時間が全て1時間未満であり、二次接着性も良好であった。一方比較例1~6の結果より、けん化価および酸価を持たないパラフィンワックスWAX-125を用いた場合、添加量が0.03質量部では酸素の硬化阻害を十分に抑制できず表面乾燥に6時以上を要し、添加量を0.05質量部まで増やすと表面乾燥時間は多少改善されたが、二次接着性が著しく悪かった。
すなわち、本発明の二次接着用ラジカル重合性樹脂組成物は、下記成分(A)と、下記成分(B)及び/又は成分(C)とからなる成分(D)を含有し、前記成分(D)のけん化価は、100~250mgKOH/gであることを特徴とする。
(A)不飽和ポリエステル樹脂(A1)またはビニルエステル樹脂(A2)をいずれかもしくは両方を含み、成分(E)を70~30質量%含む樹脂組成物
(B)飽和脂肪酸
(C)飽和脂肪酸エステル
(D)(B)または(C)をいずれかもしくは両方を1種または2種以上からなる成分
(E)スチレンモノマー
Figure 2022056699000008
(評価)
実施例1~16の結果より、けん化価が所定の範囲にある化合物(D)を添加したラジカル重合性樹脂組成物においては、表面乾燥時間が全て1時間未満であり、二次接着性も良好であった。一方比較例1~6の結果より、けん化価および酸価を持たないパラフィンワックスWAX-125を用いた場合、添加量が0.03質量部では酸素の硬化阻害を十分に抑制できず表面乾燥に6時以上を要し、添加量を0.05質量部まで増やすと表面乾燥時間は多少改善されたが、二次接着性が著しく悪かった。
Figure 2022056699000009
(評価)
実施例1~15の結果より、けん化価が所定の範囲にある化合物(D)を添加したラジカル重合性樹脂組成物においては、表面乾燥時間が全て1時間未満であり、二次接着性も良好であった。一方比較例1~6の結果より、けん化価および酸価を持たないパラフィンワックスWAX-125を用いた場合、添加量が0.03質量部では酸素の硬化阻害を十分に抑制できず表面乾燥に6時以上を要し、添加量を0.05質量部まで増やすと表面乾燥時間は多少改善されたが、二次接着性が著しく悪かった。

Claims (8)

  1. 下記成分(A)と、下記成分(B)及び/又は成分(C)とからなる成分(D)と、を含有し、前記成分(D)のけん化価は、100~250mgKOH/gであるラジカル重合性樹脂組成物。
    (A)不飽和ポリエステル樹脂(A1)またはビニルエステル樹脂(A2)をいずれかもしくは両方を含み、成分(E)を70~30質量%含む樹脂組成物
    (B)飽和脂肪酸
    (C)飽和脂肪酸エステル
    (D)(B)または(C)をいずれかもしくは両方を1種または2種以上からなる成分
    (E)スチレンモノマー
  2. 前記成分(D)のけん化価は100~200mgKOH/gである請求項1に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
  3. 前記成分(D)の酸価は50~250mgKOH/gである請求項1又は2に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
  4. 前記成分(D)の酸価は70~200mgKOH/gである請求項1~3のいずれか一項に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
  5. 前記成分(D)を0.1質量部以上含む請求項1~4のいずれか一項に記載のラジカル重合性樹脂組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載のラジカル重合性樹脂組成物と、補強材(F)とを含む、複合材料。
  7. 請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物または請求項6に記載の複合材料を硬化させた硬化物の表面に、厚さ0.005mm以上の前記化合物(D)の層を有する、構造体。
  8. 請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物または請求項6に記載の複合材料を硬化させた硬化物の表面に、厚さ0.005mm以上の前記化合物(D)の層を有する、被覆材。
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