JP2022053384A - 耐火性樹脂組成物、耐火材、及び建具 - Google Patents

耐火性樹脂組成物、耐火材、及び建具 Download PDF

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Abstract

【課題】耐火性を有し、かつ成形性に優れた耐火材を製造可能な耐火性樹脂組成物を提供する。【解決手段】樹脂成分、及びエラストマー成分からなる群から選択される少なくとも1種であるマトリックス成分と、熱膨張性黒鉛と、硫酸塩とを備え、前記硫酸塩の含有量が、1質量%以上30質量%以下である、耐火性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、耐火性樹脂組成物、耐火材、及び耐火材を備える建具に関する。
建築分野では、防火のために、建具、柱、壁材等の建築材料に耐火材が用いられる。耐火材としては、樹脂に、無機充填材及び熱膨張性黒鉛などが配合された耐火材等が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
一般に熱膨張性黒鉛は、黒鉛層間に挿入された酸成分が急熱によって燃焼・ガス化し、その時に生じたガスの放出が爆発的に層と層の間を押し広げ膨張する材料であり、樹脂やゴムの難燃性フィラーとして広く使用されている。熱膨張性黒鉛を含有する耐火材は、熱膨張性黒鉛の上記特徴が効果を奏し、耐火断熱性能を発現する。
熱膨張性黒鉛を含有する耐火材は、例えば、建築物の開口部に設けられるドア、窓などの建具と、これらを包囲するドア枠、窓枠などの枠との隙間に設けられ、火災時には該シートが厚み方向に膨張して、建具と枠材の隙間を閉塞し、延焼を防止することができる。
熱膨張性黒鉛は、硫酸や硝酸などの酸および酸化剤と、黒鉛との固液反応を用いて酸成分を挿入するため、黒鉛には酸性物質が付着する。そのため、熱膨張性耐火材のフィラーとして用いると、酸性物質により樹脂が劣化し、膨張後の残渣硬さが低下したり、化学的反応により、耐火性樹脂組成物の粘度が過剰に高くなったり、耐火性樹脂組成物から耐火材を形成する為の金型が腐食したりして、成形性が悪化するという問題があった(例えば、特許文献2参照)。この問題を解決する手段として、熱膨張性黒鉛を水洗と乾燥を繰り返し実施することが挙げられる(例えば、特許文献3参照)。
特開2017-141463号公報 特開2007-045676号公報 特開2019-215076号公報
しかしながら、熱膨張性黒鉛を水洗する工程を数回実施した場合、工程数増加による設備コスト面での問題や、水洗しすぎることによる膨張性能の低下などの新たな問題が存在していた。
そこで、本発明は、耐火性を有し、かつ成形性に優れた耐火材を製造可能な耐火性樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、マトリックス成分と、熱膨張性黒鉛とを含有する耐火性樹脂組成物において、熱膨張性黒鉛を中和剤で中和させ、その中和塩としての硫酸塩を組成物中に含有させることで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を提供する。
[1]樹脂成分、及びエラストマー成分からなる群から選択される少なくとも1種であるマトリックス成分と、熱膨張性黒鉛と、硫酸塩とを備え、前記硫酸塩の含有量が、1質量%以上30質量%以下である、耐火性樹脂組成物。
[2]前記硫酸塩が、正塩及び酸性塩からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]に記載の耐火性樹脂組成物。
[3]リン成分を含有しない、上記[1]又は[2]に記載の耐火性樹脂組成物。
[4]前記マトリックス成分が、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを有する成分を含有する、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
[5]前記熱膨張性黒鉛を、前記マトリックス成分100質量部に対し、20~200質量部含有する、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
[6]前記熱膨張性黒鉛の表面に前記硫酸塩が付着する上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
[7]上記[1]~[6]に記載の耐火性樹脂組成物からなる耐火材。
[8]上記[7]に記載の耐火材を備える建具。
本発明によれば、耐火性を有し、かつ成形性に優れた耐火材を製造可能な耐火性樹脂組成物を提供できる。
以下、本発明について実施形態を用いて説明する。
[耐火性樹脂組成物]
本発明の耐火性樹脂組成物は、マトリックス成分と、熱膨張性黒鉛と、硫酸塩とを含有する耐火性樹脂組成物である。
<熱膨張性黒鉛>
本発明の耐火性樹脂組成物は、熱膨張性黒鉛を含有する。熱膨張性黒鉛は、加熱時に膨張するものであり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の黒鉛粉末を、無機酸と、強酸化剤とで処理して黒鉛層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。無機酸としては、濃硫酸が挙げられる。また、強酸化剤としては、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。また、無機酸としては、濃硫酸に加えて、硝酸、セレン酸などを使用してもよい。
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、中和処理を行うとよい。本発明においては、熱膨張性黒鉛を中和処理することで、中和塩としての硫酸塩が熱膨張性黒鉛の表面に付着するので、その表面に付着した硫酸塩を耐火性樹脂組成物に含有させる硫酸塩としてそのまま使用する。なお、硫酸塩は、無機酸である硫酸と、中和剤との中和反応で得られるものである。
中和剤としては、熱膨張性黒鉛を中和処理することで、後述する硫酸塩が生成できるものであれば特に限定されないが、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、両性金属化合物などの金属化合物、アンモニア、アミン類などが使用可能である。なお、アルカリ土類金属は、第2族に属する金属元素であり、マグネシウム、ベリリウムもアルカリ土類金属の1種とする。
中和剤として使用するアルカリ金属化合物としては、アルカリ金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩が例示される。アルカリ金属の酸化物としては、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム等が例示される。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が例示される。アルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が例示される。アルカリ金属の炭酸水素塩としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられる。
また、アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩などが例示される。アルカリ土類金属の酸化物としては、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が例示される。アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が例示される。アルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が例示される。アルカリ土類金属の炭酸水素塩としては、炭酸水素カルシウムなどが例示される。
また、両性金属化合物としては、アルミニウムの酸化物、水酸化物、炭酸塩が例示される。アミン類としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミンなどが挙げられる。
中和剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムが好ましく、中でも水酸化ナトリウムがより好ましい。
中和処理の具体的な方法としては、中和剤を含む溶液(以下、「中和剤含有溶液」ともいう)に熱膨張性黒鉛を接触させることで中和処理を行う湿式法で行ってもよいし、熱膨張性黒鉛に、中和剤を粉体、粒状などの固体のままドライブレンドして行ってもよいが、湿式法で行うことが好ましい。
湿式法では、中和剤含有溶液に熱膨張性黒鉛を浸漬させ、かつ必要に応じて中和剤含有溶液を攪拌させ、その後、熱膨張性黒鉛を中和剤含有溶液から分離させることで行うとよい。分離は、例えば、ろ過することで行うとよい。また、熱膨張性黒鉛は、分離後、適宜乾燥させるとよい。なお、中和剤含有溶液は、例えば、中和剤の水溶液を使用するとよい。
中和処理の条件は、中和により硫酸塩が得られる限り特に限定されない。また、中和処理は、その条件を適宜変更することで、熱膨張性黒鉛に付着される硫酸塩の量や、正塩及び酸性塩のいずれが得られるかなども適宜調整できる。例えば、湿式法では、中和剤含有溶液における中和剤の濃度を高くしたり、中和剤による処理時の中和剤含有溶液の温度を高くしたりすることで、正塩を生成しやすくなる。
上記のような中和処理を行うことで、熱膨張性黒鉛の表面に付着した硫酸などの酸性物質を中和することができる。そのため、熱膨張性黒鉛を水洗する工程を経なくても、酸性物質により、耐火性樹脂組成物のマトリックス成分が劣化することや、耐火性樹脂組成物から耐火材を形成する為の金型が腐食することなどを防止し、該組成物から形成される耐火材の成形性を向上させることが可能になる。また、酸性物質の除去を、水洗する工程を経ることなく、上記した中和処理により行うことで、熱膨張性黒鉛の膨張性能の低下を防止し、耐火材の耐火性を担保したり、耐火性樹脂組成物及び耐火材を製造する為の設備コストを低く抑えたりすることも可能になる。
耐火性樹脂組成物中の熱膨張性黒鉛の含有量は、マトリックス成分100質量部に対し、好ましくは20質量部以上であり、より好ましくは30質量部以上であり、さらに好ましくは70質量部以上であり、そして好ましくは200質量部以下であり、より好ましくは150質量部以下、さらに好ましくは130質量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量がこれら下限値以上であると、炎の通過を阻止するのに適した膨張を得やすくなり、これら上限値以下であると耐火材の熱膨張残渣の強度が高くなる傾向があり、また耐火材の成形性が向上する。なお、熱膨張性黒鉛の表面には上記のとおり硫酸塩が付着することがあるが、ここでいう含有量には、硫酸塩が含まれない。
<硫酸塩>
本発明の耐火性樹脂組成物は、硫酸塩を含有する。硫酸塩としては、正塩及び酸性塩からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。その中でも、耐火性樹脂組成物から形成される耐火材の耐水性を高める観点から、正塩であることがより好ましい。
硫酸塩の正塩としては、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウム、硫酸リチウム、硫酸ルビジウム等が挙げられる。
硫酸塩の酸性塩としては、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム等が挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記した硫酸塩の中では、耐火性、成形性、製造容易性の観点から、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、及び硫酸水素ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種であることがさらに好ましく、耐水性の観点から、硫酸カルシウムであることが特に好ましい。
硫酸塩は、上記の通り、熱膨張性黒鉛を中和することで得られるものであり、熱膨張性黒鉛の表面に付着して存在するとよい。ただし、硫酸塩は、一部が熱膨張性黒鉛から分離して、耐火性樹脂組成物のマトリックス成分中に存在してもよい。
硫酸塩は、熱膨張性黒鉛と併存することで膨張開始温度を高めることができ、かつ骨材的に働いて、耐火材の残渣硬さを向上させ、それにより耐火性を向上できる。また、硫酸塩は難水溶性のため、耐水性が向上する。さらに、硫酸塩は、熱膨張性黒鉛の層間をつなぎ留める役割を有するため、耐火性樹脂組成物を混練する際、熱膨張性黒鉛の破砕を防止することができ、耐火性に加え成形性にも優れた耐火材を形成することが可能になる。
耐火性樹脂組成物における硫酸塩の含有量は、耐火性樹脂組成物全量に対して、1質量%以上30質量%以下である。硫酸塩の含有量が1質量%未満であると、耐火材の膨張倍率や残渣硬さが低下したりするなどして耐火性及び成形性が低下する。耐火材の耐火性を高める観点から、硫酸塩の含有量は、好ましくは1.5質量%以上であり、より好ましくは3.0質量%以上である。他方、硫酸塩の含有量が30質量%を超えていると、耐火性樹脂組成物の粘度が過剰に高まり、耐火材の成形性が悪化する。耐火材の成形性を良好にする観点から、硫酸塩の含有量は、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
<マトリックス成分>
本発明の耐火性樹脂組成物は、マトリックス成分を含有する。マトリックス成分は、樹脂成分、及びエラストマー成分からなる群から選択される少なくとも1種である。
本発明のマトリックス成分は、耐火材の熱膨張残渣の強度を高めて耐火性を向上させる観点から、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを有する成分を含有することが好ましい。該ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを有する成分は、樹脂成分であってもよいし、エラストマー成分であってもよい。
(樹脂成分)
マトリックス成分における樹脂成分としては、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂であってもよいが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等が挙げられる。
熱可塑性樹脂は、耐火性の観点から、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを含有することが好ましい。そのような簡単から、熱可塑性樹脂の中では、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)が好ましく、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)がより好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)としては、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーと塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、塩化ビニルモノマー以外の重合体又は共重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、本発明においては、ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化物である塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂も、ポリ塩化ビニル系樹脂に含まれるものとする。
ポリ塩化ビニル樹脂の重合度は500~2000が好ましく、800~1500がより好ましい。このような範囲であると、樹脂成分の流動性が高まり、膨張倍率を所望の範囲に調整しやすくなる。
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)としては、非架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよいし、また、高温架橋型のエチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂であってもよい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体のけん化物、エチレン-酢酸ビニルの加水分解物などのようなエチレン-酢酸ビニル変性体樹脂も用いることができる。
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂は、JIS K 6730「エチレン・酢酸ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定される酢酸ビニル含量が好ましくは5~90質量%、より好ましくは8~50質量%、さらに好ましくは12~35質量%である。
エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂の190℃におけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.5~15g/10minであり、より好ましくは1~8g/10minである。なお、エチレン-酢酸ビニル共重合体の190℃におけるメルトフローレートは、荷重2.16kgにおける測定値であり、JIS K7210:1999に準拠して測定される。
上記熱硬化性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられ、中でも、耐火性を向上させる観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂は、芳香環を有するエポキシ樹脂でも、芳香環を有しないエポキシ樹脂でもよいが、不燃性を高める観点から、芳香環を有するエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ基を有するエポキシ樹脂化合物と、硬化剤とを反応させることにより得られる。
上記した芳香環を有するエポキシ樹脂を得るために用いるエポキシ樹脂化合物は、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂化合物、ビスフェノールF型のエポキシ樹脂化合物、ビフェニル型のエポキシ樹脂化合物、ナフタレン型のエポキシ樹脂化合物、フェノールノボラック型のエポキシ樹脂化合物、ビスフェノールAノボラック型のエポキシ樹脂化合物、テトラフェノールエタン型のエポキシ樹脂化合物、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型のエポキシ樹脂化合物、アミノフェノール型のエポキシ樹脂化合物、アニリン型のエポキシ樹脂化合物、キシレンジアミン型のエポキシ樹脂化合物などが挙げられる。これらの中でも、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂化合物、ビスフェノールF型エポキシ樹脂化合物が好ましい。
硬化剤としては、重付加型または触媒型のものが用いられる。重付加型の硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が例示される。また、触媒型の硬化剤としては、例えば、3級アミン、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が例示される。エポキシ樹脂化合物の硬化方法は、特に限定されず、公知の方法によって行うことができる。
硬化剤の含有量は、上記エポキシ樹脂化合物100質量部に対して50~150質量部の範囲内であることが好ましい。50質量部以上であると、エポキシ樹脂化合物が硬化しやすくなり、150質量部以下であると、硬化剤の配合量に応じた効果が得られる。
(エラストマー成分)
マトリックス成分におけるエラストマー成分としては、特に限定されないが、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(HSBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)などのジエン系ゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、天然ゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム成分が挙げられる。
また、エラストマー成分としては、熱可塑性エラストマーであってもよく、具体的には、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、これらの組み合わせ等が挙げられる。
TPOはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンをハードセグメントとし、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム等のゴムをソフトセグメントとする熱可塑性エラストマーである。
これらの中でも、耐火材の成形性及び耐火性を向上させる観点から、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を含むことが好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレンブロックをハードセクメントとするブロック共重合体が挙げられ、具体的には、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-スチレンブロック共重合体(SES)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)など挙げられる。
エラストマー成分としても、耐火性の観点から、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを有する成分を含有することが好ましい。そのような観点から、エラストマー成分としては、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、及びクロロプレンゴム(CR)から選択される少なくとも1種以上が好ましく、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、及びクロロプレンゴム(CR)から選択される少なくとも1種以上がより好ましい。また、エラストマー成分として成形性の観点からは、EPDM,TPOなどを使用することが好ましい。
マトリックス成分としては、成形性の観点から、熱可塑性樹脂、エラストマー成分が好ましい。また、マトリックス成分は、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを有する成分からなってもよいが、該成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、成形性の観点からは、EPDM,TPOなどのエラストマー成分が好ましい。
また、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを有する成分は、耐火性の観点から、マトリックス成分全量に対して、好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、さらに好ましくは70~100質量%である。
また、熱膨張性黒鉛の分散性を高め、耐火材の耐火性及び成形性を向上させる観点から、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)及びクロロプレンゴム(CR)を併用することも好ましい。
スチレン-ブタジエンゴム(SBR)及びクロロプレンゴム(CR)を併用する場合は、これらの含有量比(SBR/CR)は、質量比で90/10~10/90であることが好ましく、80/20~20/80であることがより好ましい。
本発明で使用されるスチレン-ブタジエンゴム(SBR)の結合スチレン量は、特に限定されないが、耐火材の成形性を向上させる観点から、例えば10~60質量%であり、好ましくは15~55質量%であり、より好ましくは20~50質量%である。なお、結合スチレン量は、H-NMRにより測定することができる。
また、スチレン-ブタジエンゴムのムーニー粘度[ML(1+4)100℃]は、特に限定されないが、耐火材の成形性を向上させる観点から、例えば30~150であり、好ましくは35~70であり、より好ましくは40~60である。
クロロプレンゴム(CR)のムーニー粘度[ML(1+4)100℃]は、特に限定されないが、耐火材の成形性を向上させる観点から、例えば25~150であり、好ましくは30~100であり、より好ましくは35~75である。
なお、本明細書においてムーニー粘度は、JIS K6300に準拠して測定した値である。
マトリックス成分は、エラストマー成分を含有し、該エラストマー成分の含有量がマトリックス成分全量基準で15質量%以上であることが好ましい。エラストマー成分の含有量を15質量%以上とすると、耐火性樹脂組成物により形成される耐火シートが脆くなることが防止され、寒冷地などにおいても、表面にひび割れが生じるなどの不具合が生じにくくなる。エラストマー成分の含有量は、マトリックス成分全量基準で、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
耐火性樹脂組成物におけるマトリックス成分の含有量は、65質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、また、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましい。マトリックス成分を上記上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛、硫酸塩、無機充填材を耐火性樹脂組成物に一定量以上含有させることができる。また、上記下限値以下とすることで、成形性などを向上させやすい。
<無機充填材>
本発明の耐火性樹脂組成物は、上記した熱膨張性黒鉛、及び硫酸塩以外にも、無機充填材を含有してもよい。なお、以下の説明では、単に「無機充填材」と述べた場合には、上記した熱膨張性黒鉛、及び硫酸塩以外の無機充填材を意味する。無機充填材は、加熱されて膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制しつつ、骨材的に働いて、耐火材の残渣硬さを向上させる。
耐火材の成形性を向上させる観点から、無機充填材としては、比重が2.5以上の無機充填材Aを含むことが好ましい。該無機充填材Aを含有させることにより、単位体積あたりのマトリックス成分の量を増加させることができ、これにより耐火材の脆性が改善され、成形性が向上しやすくなる。このような観点から、上記無機充填材Aの比重は好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上である。例えば後述する金属酸化物、金属炭酸塩などは、比重が2.5以上の無機充填材Aとして使用することができる。無機充填材Aは、一種を単独で使用してもよいし、複数を併用してもよい。
無機充填材全量基準に対して無機充填材Aの含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは100質量%である。
無機充填材としては、上記した比重が2.5以上の無機充填材Aを使用することが好ましいが、比重2.5未満の無機充填材を使用することもできる。
本発明において使用できる無機充填材としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩、シリカ、珪藻土、ドーソナイト、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、各種金属粉、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム等のリン酸金属塩、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸マグネシウム、亜リン酸アルミニウム等の亜リン酸金属塩、ポリリン酸アンモニウム、オルトリン酸金属塩、メタリン酸金属塩、トリポリリン酸金属塩などが挙げられる。無機充填材は一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
これらの中でも、無機充填材としては、耐火性を向上させる観点から、金属酸化物、金属水酸化物、金属炭酸塩などが好ましく、中でも酸化鉄、水酸化アルミニウム、及び炭酸カルシウムから選択される少なくとも1種以上がより好ましい。より詳細には、無機充填材は、酸化鉄を少なくとも含むことがさらに好ましく、酸化鉄と炭酸カルシウムを併用する態様も好ましい。酸化鉄を用いることで、耐火材の膨張倍率が比較的大きい場合であっても、熱膨張残渣の強度を維持しやすく、そのため耐火性が向上しやすくなる。
酸化鉄を含有する場合、酸化鉄の含有量は、無機充填材全量基準で、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上である。
耐火性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛と、硫酸塩と、無機充填材の合計含有量は、35質量%以上であることが好ましい。合計含有量が35質量%以上であることで、耐火シートの膨張倍率及び熱膨張残渣の強度が良好となり、優れた耐火性を耐火性樹脂組成物に付与できる。熱膨張性黒鉛及び無機充填材の合計の含有量は、耐火性を向上させる観点から、40質量%以上がより好ましい。上記合計含有量は、マトリックス成分の配合量を増やして成形性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下である。
<可塑剤>
本発明の耐火性樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。耐火性樹脂組成物が可塑剤を含有することにより、マトリックス成分が流動しやすくなり、耐火材が膨張し易くなる。また、マトリックス成分としてポリ塩化ビニル系樹脂を用いる場合は、可塑剤を併用することが好ましい。また、可塑剤を使用することにより成形性が向上する。
可塑剤としては、特に制限されないが、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等の脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、アジピン酸エステル、アジピン酸ポリエステル等のアジピン酸エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイル等が挙げられる。可塑剤は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の耐火性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、その含有量は、マトリックス成分100質量部に対して10~80質量部が好ましく、20~60質量部がより好ましい。可塑剤の含有量が前記範囲内であると、押出成形性が向上する傾向があり、また成形体が柔らかくなり過ぎることを抑制することができる。
<その他の成分>
耐火性樹脂組成物は、上記以外にも臭素含有難燃剤、窒素含有難燃剤、リン酸エステル化合物などの各種有機系難燃剤、着色剤、酸化防止剤などの各種添加剤を適宜含んでもよい。
<リン成分>
本発明の耐火性樹脂組成物は、リン成分を含有しないことが好ましい。リン成分を含有しないことで、耐火性組成物から形成される耐火材の耐水性が向上する。したがって、水に長期間暴露した後でも、優れた膨張倍率、残渣硬さ、及び膨張後の形状保持性を確保できるようになる。ここで、リン成分とは、リン原子を含む化合物であり、上記したマトリックス成分、無機充填材、及び必要に応じて配合される有機系難燃剤、着色剤、酸化防止剤などの添加剤としては、リン原子を含む化合物を用いないことが好ましい。
[耐火材]
本発明の耐火性樹脂組成物を用いて、該耐火性樹脂組成物からなる耐火材を形成させることができる。
耐火材の厚み方向の膨張倍率は、特に制限されないが、耐火性及び耐水性の観点から、好ましくは5~70倍であり、より好ましくは10~60倍であり、さらに好ましくは15~55倍である。本発明の耐火材は、水に長時間浸漬した後においても、上記した範囲の膨張倍率を示すことが好ましい。膨張倍率は、実施例に記載の方法で測定される。
耐火材の厚さは特に限定されないが、耐火性及び取扱い性の観点から、0.2~10mmが好ましく、0.5~3.0mmがより好ましい。
本発明の耐火材は、上記した通り成形性に優れ、使用時に折れたり、表面にひび割れが生じるなどの不具合が発生し難いため、シートの長さが長い場合でも取り扱い性に優れ、例えば長さ1m以上の長尺品として使用することができる。
本発明の耐火材樹脂組成物及び耐火材は例えば下記のようにして製造することができる。
まず、所定量のマトリックス成分、及び熱膨張性黒鉛、並びに必要に応じて配合される、可塑剤、無機充填材、有機系難燃剤、着色剤、酸化防止剤などの添加剤を、混練ロールなどの混合機で混合して、耐火性樹脂組成物を得る。なお、硫酸塩は、上記の通り熱膨張性黒鉛に付着しており、熱膨張性黒鉛と共に耐火性樹脂組成物に配合されるとよい。
次に、得られた耐火性樹脂組成物を、例えば、プレス成形、カレンダー成形、押出成形等、公知の成形方法によりシート状に成形することで耐火材を得ることができる。
耐火材は、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の各種の建築物、自動車、電車などの各種車両、船舶、航空機などの各種乗り物に使用できる。耐火材は、建築物、乗り物などに火災が発生した場合に加熱されることで膨張して、空気の流れを遮断して、消火性を発揮できる。
耐火材は、上記建築物、車両、船舶、航空機などを構成する部材に取り付けられて使用される。例えば、建築物では、窓、障子、ドア、戸、ふすま等の建具、柱、鉄骨コンクリート等の壁、床、屋根等に取り付けられて、火災や煙の侵入を低減又は防止することができる。これらの中では、建具に使用することが好ましい。すなわち、本発明の一実施形態は、耐火材を備える建具も提供する。
耐火材は、耐火材単体で使用されてもよいが、適宜他の部材が取り付けられて使用されてもよい。例えば、耐火材は、耐火材以外の部材が積層されていてもよく、耐火材の少なくとも一方の面に基材が設けられてもよい。基材は、可燃材料層であってもよいし、準不燃材料層又は不燃材料層であってもよい。基材の厚みは特に限定されないが、例えば5μm~1mmである。可燃材料層に使用される素材としては、例えば、布材、紙材、木材、樹脂フィルム等の一種もしくは二種以上を挙げることができる。基材が準不燃材料層又は不燃材料層である場合、使用される素材としては、例えば、金属、無機材等を挙げることができ、より具体的には、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、グラファイト繊維からなる織布又は不織布などが挙げられる。また、これら繊維と金属の複合材料であってもよく、例えば、アルミガラスクロスが好ましい。また、シート状の耐火材には、粘着剤層が積層されてもよい。粘着剤層は、上記基材の上に設けられてもよいし、耐火材の表面に直接形成されてもよい。
以下に実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[評価方法]
(1)膨張倍率
得られた耐火材から作製した試験片(長さ100mm、幅100mm、厚さ1.5mm)を500mLの純水に60℃で密閉容器にて1週間浸漬した後、サンプルを取り出した。該サンプルを60℃にて96時間、蒸発、乾燥させて作成した試験片をステンレス製のホルダー(101mm角・高さ80mm)の底面に設置し、電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した。その後、試験片の厚みの一番大きい部分の横幅、縦幅、及び厚さを測定し、((加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ))により、膨張倍率を算出した。
(2)残渣硬さ
膨張倍率を測定した加熱後の試験片を圧縮試験機(カトーテック社製、「フィンガーフイリングテスター」)に供給し、直径1mmの3点圧子で0.1cm/秒の速度で圧縮し、残渣上面からの10mm圧縮までの最大応力を測定し、燃焼後の試験片の圧縮強度(kgf/cm)を測定した。
(3)形状保持性
上記残渣硬さは膨張後の残渣の硬さの指標になるが、測定が残渣の表面部分に限られ、残渣全体の硬さの指標にならないことがあるので、残渣全体の硬さの指標として形状保持性を測定した。
膨張倍率を測定した試験片の両端部を手で持って持ち上げて、その際の残渣の崩れやすさを目視して測定した。評価基準は以下の通りである。
PASS:試験片が崩れることなく持ち上げられた場合。
FAIL:試験片が崩壊して持ち上げられない場合。
(4)溶出率
得られた各実施例、比較例の耐火材から作製した試験片(長さ50mm、幅50mm、厚さ1.5mm)の各々5枚を200gの純水に浸漬し、60℃で密閉容器にて1週間浸漬した後、サンプルを取り出し、浸漬した純水を60℃にて96時間、蒸発、乾燥させ、発生した析出物の質量を測定した。その値を用い溶出率を以下の式で算出して、耐水性の指標とした。
溶出率(%)=[(析出物の質量)/(純水浸漬前の耐火材の質量)]×100
(5)成形性
得られたシートの外観を目視にて観察し、以下のように評価した。
A:ヒビ等がなく、表面が平滑であるもの
B:ヒビ等はないが、若干、表面が荒れているもの
C:ワレやシワ、ヒビが存在するもの
[実施例1~19、比較例1~4]
下記表1~3に示す配合にて、マトリックス成分、熱膨張性黒鉛、無機充填材、及び可塑剤をロールに投入して150℃で5分間混練して、耐火性樹脂組成物を得た。得られた耐火性樹脂組成物を、150℃で3分間プレス成形して、厚さ1.5mmの耐火材を得た。各実施例、比較例で使用した各成分は下記のとおりである。
(1)マトリックス成分
(i)エラストマー成分
<クロロプレンゴム:CR>
・CR:商品名「デンカクロロプレンS-41」、デンカ株式会社製、ムーニー粘度[ML(1+4)100℃]:48
<スチレン-ブタジエンゴム:SBR>
・SBR:商品名「Nipol 1502」、日本ゼオン社製、重量平均分子量50万、結合スチレン量:23.5質量%、ムーニー粘度[ML(1+4)100℃]:52
<スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体:SBS>
・SBS JSR株式会社製「TR1086」、結合スチレン量:45質量%
<エチレン-プロピレン-ジエンゴム:EPDM>
・EPDM 三井化学株式会社製「ENB-EPT X-3012P」
<オレフィン系熱可塑性エラストマー:TPO>
・TPO 三井化学株式会社製「ミラストマー5020BS」
(ii)樹脂成分
<エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂:EVA>
・EVA 三井デュポンポリケミカル株式会社「EV460」
酢酸ビニル含量:19質量%、MFR(190℃):2.5g/10min
<ポリ塩化ビニル系樹脂:PVC>
・PVC 信越化学工業株式会社製「TK-1000」、平均重合度1030
(2)可塑剤
・DOP ジ-2-エチルヘキシルフタレート、株式会社ジェイプラス製「DOP」
(3)熱膨張性黒鉛
・熱膨張性黒鉛A:98質量%濃硫酸を500mlのビーカーに200gとり、20℃以下に冷却しながら濃硫酸に60質量%過酸化水素を50g混合した。これに攪拌しながら鱗片状天然黒鉛100gを投入して30℃で反応させた。そして約30分後、反応が終了したスラリーを1mоl/L水酸化カルシウム溶液に徐々に投入して30℃以下で中和し、これをブフナー漏斗にて吸引濾過して回収し、熱膨張性黒鉛Aを得た。熱膨張性黒鉛Aでは、熱膨張性黒鉛の表面に硫酸カルシウムが付着しており、熱膨張性黒鉛と硫酸カルシウムの質量比は、表1及び2に示す通りである。
・熱膨張性黒鉛B:熱膨張性黒鉛Aと同様に、鱗片状天然黒鉛に濃硫酸と過酸化水素を混合して反応させた。反応終了後、1mоl/L水酸化ナトリウム溶液に徐々に投入して30℃で中和し、これをブフナー漏斗にて吸引濾過して反応で生成した黒鉛層間化合物を回収した。これを60~80℃で乾燥することによって熱膨張性黒鉛Bを得た。熱膨張性黒鉛Bでは、熱膨張性黒鉛の表面に硫酸ナトリウムが付着しており、熱膨張性黒鉛と硫酸ナトリウムの質量比は、表1及び2に示す通りである。
・熱膨張性黒鉛C:熱膨張性黒鉛Aと同様に、鱗片状天然黒鉛に濃硫酸と過酸化水素を混合して反応させた。反応終了後、0.01mоl/L水酸化ナトリウム溶液に徐々に投入して30℃5分攪拌で中和し、これをブフナー漏斗にて吸引濾過して反応で生成した黒鉛層間化合物を回収した。これを60~80℃で乾燥することによって熱膨張性黒鉛Cを得た。熱膨張性黒鉛Cでは、熱膨張性黒鉛の表面に硫酸水素ナトリウムが付着しており、熱膨張性黒鉛と硫酸水素ナトリウムの質量比は、表1及び2に示す通りである。
・熱膨張性黒鉛D:エアウォーター社製「CA-60N」
(4)無機充填材
・酸化鉄:チタン工業株式会社「BL-100」、比重5.1
・炭酸カルシウム:備北粉化工業株式会社製「ホワイトンBF-300」
Figure 2022053384000001
Figure 2022053384000002
Figure 2022053384000003
表1~3から明らかなように、本発明を満足する耐火性樹脂組成物により形成された耐火材は、耐火性、成形性共に優れていることがわかる。なお、熱膨張性黒鉛の配合量が多い実施例3,4では、表面荒れが若干見られるものの、熱膨張性黒鉛の含有量が多いため膨張倍率が極めて高くなった。
一方で、比較例で得られた耐火性樹脂組成物により形成された耐火材は、耐火性、成形性のうち、少なくとも一方が損なわれていた。

Claims (8)

  1. 樹脂成分、及びエラストマー成分からなる群から選択される少なくとも1種であるマトリックス成分と、熱膨張性黒鉛と、硫酸塩とを備え、
    前記硫酸塩の含有量が、1質量%以上30質量%以下である、耐火性樹脂組成物。
  2. 前記硫酸塩が、正塩及び酸性塩からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の耐火性樹脂組成物。
  3. リン成分を含有しない、請求項1又は2に記載の耐火性樹脂組成物。
  4. 前記マトリックス成分が、ハロゲン原子、又はスチレン若しくはビニルアセテート由来の構成単位の少なくともいずれかを有する成分を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
  5. 前記熱膨張性黒鉛を、前記マトリックス成分100質量部に対し、20~200質量部含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
  6. 前記熱膨張性黒鉛の表面に前記硫酸塩が付着する請求項1~5のいずれか1項に記載の耐火性樹脂組成物。
  7. 請求項1~6に記載の耐火性樹脂組成物からなる耐火材。
  8. 請求項7に記載の耐火材を備える建具。
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