JP2022051051A - 共役ジエン系グラフト重合体、重合体組成物、成形品及び架橋物 - Google Patents

共役ジエン系グラフト重合体、重合体組成物、成形品及び架橋物 Download PDF

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Abstract

【課題】広い温度域、周波数域において良好な制振性能を有する物が得られる共役ジエン系グラフト重合体を提供する。【解決手段】共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)と共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)からなる共役ジエン系グラフト重合体であり、該共役ジエン系グラフト重合体の加硫物の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化し、強度が0.5以上であるデータのみを用いて最小二乗法によってガウス関数にフィッテイングしてなる近似曲線と、前記規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、前記規格化した温度分散曲線において最大強度を示す温度よりも高温領域における最大強度が0.22以上であり、該加硫物は、加硫剤として硫黄を用いて、150℃、60分間加硫した場合の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化した際の80℃のtanδの値が0.06となるように硫黄の量を調整した加硫物である、共役ジエン系グラフト重合体。【選択図】なし

Description

本発明は、広い温度域、周波数域において良好な制振性能を有する共役ジエン系グラフト重合体に関する。
高分子材料の動的粘弾性測定により得られるtanδ(損失正接)は、力学的エネルギーを熱等のエネルギーに散逸させてエネルギーを減衰する性能の指標であり、制振性能に優れる材料として、tanδの高い材料が求められている。特に、より広い温度域、周波数域で高いtanδを示す材料は、様々な使用環境に適用できることからより好ましい。異なる温度域にtanδのピークを持つ複数の材料をブレンドすることにより、tanδの温度域を広くすることは可能であるが、各tanδのピーク強度はブレンド比に応じて低下してしまう。そのため、ガラス転移に由来するメインピークの強度を低下させずに、tanδの温度域を広くできる技術が求められていた。
上記課題を解決するために、高分子材料中に含まれる、流動性に乏しい構造体(例えば、高分子架橋物に含まれる三次元ネットワーク構造部分、結晶性高分子に含まれる結晶構造部分、ブロック共重合体に含まれる常温では流合しない重合体ブロックに由来する相分離構造部分)にその一方が結合しながらも、他方がその構造体部分に結合をしていない重合体鎖である、ダングリング鎖の緩和を利用することが提案されている。例えば、ダングリング鎖を有するアクリル系高分子の架橋物は、ガラス転移に由来するメインピークの強度を低下させることなく、メインピークの高温側にダングリング鎖に由来するtanδのピークを発現することが知られている(非特許文献1参照)。しかしながら、非特許文献1に記載の方法では、ダングリング鎖を形成するために、あらかじめ合成した単官能、及び2官能性のUV硬化性官能基を有する重合体を混合してUV硬化させる必要があるため、工程が非常に煩雑であり、適用範囲に制限があった。
より簡便に高分子材料中に含まれるダングリング鎖による緩和を発現させる方法として、主鎖と側鎖を有するグラフト重合体を含む物から、ダングリング鎖と流動性に乏しい構造体を含む物を作製し、これを利用する方法が考えられる。グラフト重合体の合成方法としては、例えば、あらかじめ合成した主鎖の構成要素となる重合体を官能基で変性し、該官能基変性重合体と側鎖の構成単位となる単量体を重合した重合体の活性末端とを反応させる方法(非特許文献2参照)や、マクロモノマー(側鎖の構成単位となる単量体を重合した重合体の活性末端に、重合性官能基を有する化合物を反応させて得られるマクロモノマー)と主鎖の構成単位となる単量体とを重合する方法(非特許文献3参照)、テトラメチルエチレンジアミン存在下であらかじめ合成した主鎖を構成する重合体と有機アルカリ金属化合物とを反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法(特許文献1参照)などが挙げられる。しかしながら、従来のグラフト重合体を含む物から作製された、ダングリング鎖と流動性に乏しい構造体を含む物(典型的にはダングリング鎖を有する架橋体)では、ダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度が低く、制振性能が十分ではなかった。
米国特許第8,623,980号
Macromolecules,2011,44,8829 Macromolecules,1997,30,5602 Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,2007,45,3513
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、広い温度域、周波数域において良好な制振性能を有する物が得られる共役ジエン系グラフト重合体を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)と共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)からなる共役ジエン系グラフト重合体であり、その重合体を特定の条件で加硫した加硫物が特定の条件を満たす共役ジエン系グラフト重合体から、広い温度域、周波数域において良好な制振性能を有する、ダングリング鎖と流動性に乏しい構造体を含む物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]~[20]を提供するものである。
[1]共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)と共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)からなる共役ジエン系グラフト重合体であり、
該共役ジエン系グラフト重合体の加硫物の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化し、強度が0.5以上であるデータのみを用いて最小二乗法によってガウス関数にフィッテイングしてなる近似曲線と、前記規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、前記規格化した温度分散曲線において最大強度を示す温度よりも高温領域における最大強度が0.22以上であり、
該加硫物は、加硫剤として硫黄を用いて、150℃、60分間加硫した場合の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化した際の80℃のtanδの値が0.06となるように硫黄の量を調整した加硫物である、
共役ジエン系グラフト重合体。
[2]前記側鎖(b)の数平均分子量(Mn)が、側鎖(b)を構成する重合体の絡み合い点間分子量の0.01倍以上5.0倍以下である、[1]に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[3]前記動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線において最大強度を示す温度T1と、前記近似曲線と規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、T1よりも高温領域における最大強度を示す温度T2が下記式(1);
0<T2-T1≦80 (1)
の関係を満たす、
[1]又は[2]に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[4]前記側鎖(b)の側鎖密度が2.0モル%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[5]前記側鎖(b)が、共役ジエン単位を含む重合体からなる、[1]~[4]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[6]前記側鎖(b)が、1,3-ブタジエン、イソプレン、ファルネセン、及びミルセンからなる群より選ばれる少なくとも1種から得られる共役ジエン単位を含む重合体からなる、[1]~[5]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[7]前記側鎖(b)が、1,3-ブタジエン、及びイソプレンからなる群より選ばれる少なくとも1種から得られる共役ジエン単位を含む重合体からなる、[6]に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[8]前記側鎖(b)が、1,3-ブタジエン単位を含む重合体からなる、[7]に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[9]前記側鎖(b)の共役ジエン単位の含有量が40質量%以上である、[1]~[8]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[10]前記主鎖(a)が、1,3-ブタジエン、イソプレン、ファルネセン、及びミルセンからなる群より選ばれる少なくとも1種から得られる共役ジエン単位を含む重合体からなる、[1]~[9]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[11]前記主鎖(a)が、1,3-ブタジエン、及びイソプレンからなる群より選ばれる少なくとも1種から得られる共役ジエン単位を含む重合体からなる、[10]に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[12]前記主鎖(a)が、1,3-ブタジエン単位を含む重合体からなる、[11]に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[13]前記主鎖(a)の共役ジエン単位の含有量が40質量%以上である、[1]~[12]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[14]前記tanδの温度分散曲線において最大強度を示す温度T1が、-100~60℃の範囲である、[1]~[13]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[15]前記側鎖(b)を構成する共役ジエン単位のビニル含量が15モル%以上である、[1]~[14]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[16]前記主鎖(a)を構成する共役ジエン単位のビニル含量が50モル%以下である、[1]~[15]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[17]前記側鎖(b)の側鎖密度が5.5モル%以上である、[1]~[16]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体。
[18][1]~[17]のいずれかに記載の共役ジエン系グラフト重合体を含有する、重合体組成物。
[19][18]に記載の重合体組成物を成形してなる成形品。
[20][18]に記載の重合体組成物を架橋してなる架橋物。
本発明によれば、広い温度域、周波数域において良好な制振性能を有する物が得られる共役ジエン系グラフト重合体が提供される。
図1は、最大強度が1になるように規格化した温度分散曲線、この温度分散曲線で示されるデータのうち、強度が0.5以上であるデータのみを用いて最小二乗法によってガウス関数にフィッテイングしてなる近似曲線、この温度分散曲線と近似曲線の差分からなる曲線を示した概念図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、
共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)と共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)からなる共役ジエン系グラフト重合体であり、
該共役ジエン系グラフト重合体の加硫物の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化し、強度が0.5以上であるデータのみを用いて最小二乗法によってガウス関数にフィッテイングしてなる近似曲線と、前記規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、前記規格化した温度分散曲線において最大強度を示す温度よりも高温領域における最大強度が0.22以上であり、
該加硫物は、加硫剤として硫黄を用いて、150℃、60分間加硫した場合の動的粘弾性測定における80℃のtanδの値が0.06となるように硫黄の量を調整した加硫物である。
なお、本発明でグラフト重合体とは、高分子鎖からなる主鎖を幹、高分子鎖からなる側鎖を枝、として有する重合体をいい、主鎖となる高分子鎖を構成する単量体単位と、側鎖となる高分子鎖を構成する単量体単位とは、同一でも異なっていてもよい。
<主鎖(a)>
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)を有する。なお、本発明の共役ジエン系グラフト重合体に含まれる主鎖とは、主鎖を構成する共役ジエン単位を含む全単量体単位に由来する部分全体を指す。例えば、後述するあらかじめ合成した共役ジエン系重合体をテトラメチルエチレンジアミン存在下で有機アルカリ金属化合物と反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法で製造する場合には、前記あらかじめ合成した共役ジエン系重合体に由来する部分全体を指す。例えば、そのあらかじめ合成した共役ジエン系重合体にビニル結合をした1,3-ブタジエン単位が含まれる場合、重合体骨格(-(C-C)n-)中の炭素原子に接合する-CH=CH2部分までを含めて主鎖という。
主鎖(a)は、その重合体を構成する単量体単位として共役ジエン単位を含む。共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、ファルネセン、ミルセン;2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニルブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、1,3-シクロヘキサジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3,7-オクタトリエン、及びクロロプレン等の1,3-ブタジエン、イソプレン、ファルネセン及びミルセン以外の共役ジエンが挙げられる。これら共役ジエンの中でも、1,3-ブタジエン、イソプレン、ファルネセン及びミルセンが好ましく、1,3-ブタジエン及びイソプレンがより好ましく、1,3-ブタジエンがさらに好ましい。上記共役ジエン単位となる共役ジエンは1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
主鎖(a)は、その重合体を構成する全単量体単位のうち、40質量%以上が共役ジエン単位であることが好ましい一態様である。共役ジエン単位の合計含有量は、主鎖(a)の全単量体単位に対して50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましい。
主鎖(a)は、その重合体を構成する全単量体単位のうち、40質量%以上が1,3-ブタジエン及びイソプレンからなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位であることが好ましい一態様である。1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位の合計含有量は、主鎖(a)の全単量体単位に対して50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましい。
主鎖(a)に含まれ得る1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位以外の他の単量体単位としては、前述した1,3-ブタジエン及びイソプレン以外の共役ジエンに由来する共役ジエン単位、芳香族ビニル化合物単位などが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-4-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン、4-メトキシスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、及びジビニルベンゼンなどが挙げられる。これら芳香族ビニル化合物の中でも、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンが好ましい。上記芳香族ビニル化合物単位となる芳香族ビニル化合物は1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
主鎖(a)における、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位以外の他の単量体単位の含有量は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。例えば、芳香族ビニル化合物単位が上記範囲以下であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の加工性が向上する傾向にある。
主鎖(a)の重量平均分子量(Mw)は1,000以上1,000,000以下であることが好ましい一態様であり、2,000以上500,000以下がより好ましく、3,000以上100,000以下がさらに好ましい。本発明において主鎖(a)のMwは、例えば、後述するあらかじめ合成した共役ジエン系重合体をテトラメチルエチレンジアミン存在下で有機アルカリ金属化合物と反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法で製造する場合には、主鎖の構成要素となるあらかじめ合成した共役ジエン系重合体のMwである。上記主鎖(a)のMwが前記範囲内であると、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。なお、本発明において、特に断りがない限り、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定から求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
主鎖(a)のビニル含量は特に制限されないが、90モル%以下であることが好ましい一態様であり、70モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。主鎖(a)のビニル含量は、0.5モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましい。本発明において、「ビニル含量」とは、重合体に含まれる、共役ジエン単位の合計100モル%中、1,2-結合、3,4-結合(ファルネセン以外の場合)、及び3,13-結合(ファルネセンの場合)で結合をしている共役ジエン単位(1,4-結合(ファルネセン以外の場合)及び1,13-結合(ファルネセンの場合)以外で結合をしている共役ジエン単位)の合計モル%を意味する。ビニル含量は、1H-NMRを用いて1,2-結合、3,4-結合(ファルネセン以外の場合)、及び3,13-結合(ファルネセンの場合)で結合をしている共役ジエン単位由来のピークと1,4-結合(ファルネセン以外の場合)及び1,13-結合(ファルネセンの場合)で結合をしている共役ジエン単位に由来するピークの面積比から算出する。
主鎖(a)のビニル含量は目的に応じて設計することが可能であり、例えば、ビニル含量が50モル%以下であると、後述する主鎖(a)のガラス転移温度(Tg)が低くなり、得られる共役ジエン系グラフト重合体の流動性や低温特性が優れる傾向がある。また、1モル%以上であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の反応性に優れる傾向にある。
なお、主鎖(a)のビニル含量は、例えば、後述するあらかじめ合成した共役ジエン系重合体をテトラメチルエチレンジアミン存在下で有機アルカリ金属化合物と反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法で製造する場合には、主鎖(a)の構成要素となるあらかじめ合成した共役ジエン系重合体を製造する際に使用する溶媒の種類、必要に応じて使用される極性化合物、重合温度などを制御することにより所望の値とすることができる。
主鎖(a)のガラス転移温度(Tg)は、1,3-ブタジエン単位、イソプレン単位及び1,3-ブタジエン単位、イソプレン単位以外の共役ジエン単位のビニル含量、共役ジエン単位の種類、共役ジエン以外の単量体に由来する単位の含量などによって変化し得るが、-150~50℃が好ましく、-130~50℃がより好ましく、-130~30℃がさらに好ましい。Tgが上記範囲であると、例えば、粘度が高くなるのを抑えることができ取り扱いが容易になる。なお、本発明において、Tgは示差走査熱量測定(DSC)測定により求めた、DDSCのピークトップの値である。
<側鎖(b)>
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)を有する。
側鎖(b)は、その重合体を構成する単量体単位として共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む。
側鎖(b)の単量体単位を構成し得る共役ジエンの具体例は、主鎖(a)の単量体単位を構成する共役ジエンの具体例と同一である。側鎖(b)に含まれる共役ジエン単位となる共役ジエンの中では、1,3-ブタジエン、イソプレン、ファルネセン及びミルセンが好ましく、1,3-ブタジエン及びイソプレンがより好ましく、1,3-ブタジエンがさらに好ましい。上記共役ジエン単位となる共役ジエンは1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
側鎖(b)の単量体単位を構成し得る芳香族ビニル化合物の具体例は、主鎖(a)の単量体単位を構成し得る芳香族ビニル化合物の具体例と同一である。これら芳香族ビニル化合物の中でも、スチレン、α-メチルスチレン、及び4-メチルスチレンが好ましい。上記芳香族ビニル化合物単位となる芳香族ビニル化合物は1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
側鎖(b)はその重合体鎖の骨格が、共役ジエン単位1種若しくは芳香族ビニル化合物単位1種のみからなる単独重合体、共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる2種以上の単量体単位からなる共重合体、又は、共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる1種以上の単量体単位と共役ジエン及び芳香族ビニル化合物以外のビニル単量体の単量体単位との共重合体であってもよい。また、側鎖(b)を構成する重合体は1種単独でもよく、異なる構造を有する2種以上であってもよい。
側鎖(b)を構成し得る共役ジエン単位の比率は特に制限されず、目的に応じて設計することが可能であるが、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。共役ジエン単位の比率が50質量%以上であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の加工性が向上する傾向にある。
側鎖(b)を構成し得る芳香族ビニル化合物単位の比率は特に制限されず、目的に応じて設計することが可能であるが、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましく、100質量%であってもよい。芳香族ビニル化合物単位の比率が50質量%以上であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の力学特性が向上する傾向にある。
側鎖(b)が共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位を含む場合、共役ジエン単位の含有量と芳香族ビニル化合物単位の含有量の重量比(共役ジエン単位)/(芳香族ビニル化合物単位)は、30/70~99/1であることが好ましく、40/60~95/5であることがより好ましく、50/50~90/10であることが特に好ましい。共役ジエン単位の含有量と芳香族ビニル化合物単位の含有量の重量比が上記範囲であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の加工性が向上する傾向にある。
側鎖(b)の数平均分子量(Mn)は500以上であることが好ましい一態様であり、1,000以上がより好ましく、2,000以上がさらに好ましく、3,000以上が特に好ましい。また、1,00,000以下であることが好ましい一態様であり、50,000以下がより好ましく、20,000以下がさらに好ましく、15,000以下が特に好ましい。本発明において側鎖(b)のMnは、例えば、後述するあらかじめ合成した共役ジエン系重合体をテトラメチルエチレンジアミン存在下で有機アルカリ金属化合物と反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法で製造する場合には、リチオ化反応に使用する有機アルカリ金属化合物と側鎖の構成単位となる単量体の仕込み比より算出される。側鎖(b)のMnが前記範囲内であると、ダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度に優れる傾向にある。また、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。
側鎖(b)の好ましい数平均分子量(Mn)は、側鎖(b)を構成する重合体の絡み合い点間分子量との比により表される。すなわち、側鎖(b)の数平均分子量(Mn)は、側鎖(b)を構成する重合体の絡み合い点間分子量の5倍以下であることが好ましい一態様であり、3倍以下がより好ましく、2倍以下がさらに好ましく、1.5倍以下がさらに好ましく、1倍以下が特に好ましい。また、0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、0.1倍以上がさらに好ましく、0.2倍以上が特に好ましい。側鎖(b)のMnが前記範囲内であると、後述するダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度に優れる傾向にある。また、例えば、後述するあらかじめ合成した共役ジエン系重合体をテトラメチルエチレンジアミン存在下で有機アルカリ金属化合物と反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法で製造する場合には、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。なお、本明細書において、絡み合い点間分子量は、POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1992,32,823に記載の理論式より求めた値である。
側鎖(b)のビニル含量は特に制限されないが、99モル%以下であることが好ましい一態様であり、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下がさらに好ましい。側鎖(b)のビニル含量は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、25モル%以上がさらに好ましく、30モル%以上が特に好ましい。側鎖(b)のビニル含量は、例えば、後述するあらかじめ合成した共役ジエン系重合体をテトラメチルエチレンジアミン存在下で有機アルカリ金属化合物と反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法で製造する場合には、1H-NMRスペクトルにより算出した共役ジエン系グラフト重合体のビニル含量と、上述した主鎖(a)のビニル含量、及び主鎖、側鎖を構成する単量体単位の仕込み比より算出できる。
側鎖(b)のビニル含量は目的に応じて設計することが可能であり、例えば、ビニル含量が50モル%未満であると、後述する側鎖(b)のガラス転移温度(Tg)が低くなり、得られる共役ジエン系グラフト重合体の流動性や低温特性が優れる傾向がある。また、50モル%以上であると、得られる共役ジエン系グラフト重合体の反応性に優れる傾向にある。
なお、側鎖(b)のビニル含量は、例えば、後述するあらかじめ合成した共役ジエン系重合体をテトラメチルエチレンジアミン存在下で有機アルカリ金属化合物と反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法で製造する場合には、側鎖(b)を重合する際に使用する溶媒の種類、必要に応じて使用される極性化合物やルイス酸、重合温度などを制御することにより所望の値とすることができる。
側鎖(b)のガラス転移温度(Tg)は、共役ジエン単位のビニル含量、共役ジエン単位の種類、共役ジエン以外の単量体に由来する単位の含量などによって変化し得るが、-150~50℃が好ましく、-130~50℃がより好ましく、-130~30℃がさらに好ましい。Tgが上記範囲であると、例えば、粘度が高くなるのを抑えることができ取り扱いが容易になる。
<共役ジエン系グラフト重合体>
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)と共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)からなる共役ジエン系グラフト重合体であり、
該共役ジエン系グラフト重合体の加硫物の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化し、強度が0.5以上であるデータのみを用いて最小二乗法によってガウス関数にフィッテイングしてなる近似曲線と、前記規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、前記規格化した温度分散曲線において最大強度を示す温度よりも高温領域における最大強度が0.22以上であり、
該加硫物は、加硫剤として硫黄を用いて、150℃、60分間加硫した場合の動的粘弾性測定における80℃のtanδの値が0.06の範囲内となるように硫黄の量を調整した加硫物である。
共役ジエン系グラフト重合体1分子あたり側鎖(b)の平均本数は、2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、15以上であることが特に好ましい。共役ジエン系グラフト重合体1分子あたり側鎖(b)の平均本数は、例えば、後述するあらかじめ合成した共役ジエン系重合体をテトラメチルエチレンジアミン存在下で有機アルカリ金属化合物と反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法で製造する場合には、リチオ化反応に使用する有機アルカリ金属化合物と主鎖の構成単位となる共役ジエン系重合体の仕込み比より算出される。共役ジエン系グラフト重合体1分子あたり側鎖(b)の平均本数が前記範囲内であると、後述するダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度に優れる傾向にある。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、側鎖(b)の側鎖密度が1.6モル%以上であることが好ましい一態様であり、2.0モル%以上がより好ましく、3.0モル%以上がさらに好ましく、4.5モル%以上がよりさらに好ましく、5.5モル%以上が特に好ましい。共役ジエン系グラフト重合体の側鎖密度が前記範囲内であると、後述するダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度に優れる傾向にある。
本明細書において、側鎖(b)の側鎖密度は、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたり側鎖(b)の平均本数と主鎖(a)の標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を用いて下記式(2)より求める。
(側鎖密度)=(共役ジエン系グラフト重合体1分子あたり側鎖(b)の平均本数)/[(主鎖(a)の数平均分子量Mn)/(スチレン単位の分子量)]×100 (2)
なお、主鎖(a)のMnは、例えば、後述するあらかじめ合成した共役ジエン系重合体をテトラメチルエチレンジアミン存在下で有機アルカリ金属化合物と反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法で製造する場合には、主鎖の構成要素となるあらかじめ合成した共役ジエン系重合体の標準ポリスチレン換算のMnである。
共役ジエン系グラフト重合体に含まれる主鎖(a)となる重合体と側鎖(b)となる重合体の組合せは特に制限されず、同一でも異なっていてもよく、目的に応じて設計することが可能である。主鎖(a)となる重合体と側鎖(b)となる重合体が異なるとは、以下(i)~(iv)からなる群より選ばれる少なくとも1つが異なることを意味する。
(i)主鎖(a)となる重合体の分子量が、側鎖(b)となる重合体の分子量と異なる。
(ii)主鎖(a)となる重合体の単量体単位の種類又は種類の組み合わせが、側鎖(b)となる重合体の単量体単位の種類又は種類の組み合わせと異なる。
(iii)主鎖(a)及び側鎖(b)が、それぞれ複数の同一種の単量体単位を含んでいる場合、主鎖(a)となる重合体の単量体単位組成比が側鎖(b)となる重合体の単量体単位組成比と異なる。
(iv)主鎖(a)及び側鎖(b)が、それぞれ共役ジエン単位を含んでいる場合、主鎖(a)となる重合体の共役ジエン単位のビニル含量が、側鎖(b)となる重合体の共役ジエン単位のビニル含量と異なる。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、その重合体を構成する全単量体単位のうち、40質量%以上が1,3-ブタジエン及びイソプレンからなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位であることが好ましい一態様である。1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位の合計含有量は、共役ジエン系グラフト重合体の全単量体単位に対して50~100質量%であることがより好ましく、60~100質量%であることがさらに好ましい。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体における、1,3-ブタジエン単位及びイソプレン単位以外の他の単量体単位の含有量は、60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。例えば、芳香族ビニル化合物単位が上記範囲以下であると、本発明の共役ジエン系グラフト重合体の加工性が向上する傾向にある。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の重量平均分子量(Mw)は5,000以上2,000,000以下であることが好ましい一態様であり、30,000以上1,500,000以下が好ましく、100,000超1,000,000以下がより好ましい。共役ジエン系グラフト重合体のMwが前記範囲内であると、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。また、共役ジエン系グラフト重合体を含む重合体組成物の加工性が向上する傾向にある。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.0~20.0が好ましく、1.0~10.0がより好ましく、1.0~5.0がさらに好ましく、1.0~2.0が特に好ましい。Mw/Mnが前記範囲内であると、共役ジエン系グラフト重合体の粘度のばらつきが小さく、より好ましい。なお、本発明において、Mnは数平均分子量を意味し、MnはGPCの測定から求めた標準ポリスチレン換算の数平均分子量である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、GPCの測定により求めた標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)を意味する。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の38℃で測定した溶融粘度は、0.1~3,000Pa・sが好ましく、0.1~2,000Pa・sがより好ましく、0.1~1,500Pa・sがさらに好ましい。共役ジエン系グラフト重合体の溶融粘度が前記範囲内であると、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。なお、本発明において共役ジエン系グラフト重合体の溶融粘度は、38℃においてブルックフィールド型粘度計により測定した値である。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体のビニル含量は特に制限されないが、99モル%以下であることが好ましい一態様であり、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下がさらに好ましい。共役ジエン系グラフト重合体のビニル含量は、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましい。
共役ジエン系グラフト重合体のビニル含量は目的に応じて設計することが可能であり、例えば、ビニル含量が50モル%未満であると、後述する共役ジエン系グラフト重合体のガラス転移温度(Tg)が低くなり、共役ジエン系グラフト重合体の流動性や低温特性が優れる傾向がある。また、50モル%以上であると、共役ジエン系グラフト重合体の反応性に優れる傾向にある。
共役ジエン系グラフト重合体のガラス転移温度(Tg)は、1,3-ブタジエン単位、イソプレン単位及び1,3-ブタジエン単位、イソプレン単位以外の共役ジエン単位のビニル含量、共役ジエン単位の種類、共役ジエン以外の単量体に由来する単位の含量などによって変化し得るが、-150~50℃が好ましく、-130~50℃がより好ましく、-130~30℃がさらに好ましい。Tgが上記範囲であると、例えば、粘度が高くなるのを抑えることができ取り扱いが容易になる。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体における主鎖と側鎖の質量比は、1/99~90/10の範囲が好ましく、3/97~80/20の範囲がより好ましく、5/95~70/30の範囲がさらに好ましい。主鎖と側鎖の質量比が上記範囲であると、共役ジエン系グラフト重合体を含む重合体組成物の加工性が向上する傾向にある。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、その製造に用いる重合触媒に由来する触媒残渣量が、金属換算で0~200ppmの範囲にあることが好ましい。例えば、共役ジエン系グラフト重合体を製造するための重合触媒として、後述するような有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属を用いた場合には、触媒残渣量の基準となる金属は、リチウム等のアルカリ金属になる。触媒残渣量が上記範囲にあることにより、加工等する際にタックが低下せず、また本発明の共役ジエン系グラフト重合体の耐熱性が向上する。共役ジエン系グラフト重合体の製造に用いる重合触媒に由来する触媒残渣量としては、金属換算で、より好ましくは0~150ppm、さらに好ましくは0~100ppmである。なお、触媒残渣量は、例えば誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)や偏光ゼーマン原子吸光分光光度計を用いることにより測定できる。
共役ジエン系グラフト重合体の触媒残渣量をこのような特定の量とする方法としては、共役ジエン系グラフト重合体を精製し、触媒残渣を十分に除去する方法などが挙げられる。精製する方法としては、水若しくは温水、又はメタノール、アセトンなどに代表される有機溶媒若しくは超臨界流体二酸化炭素による洗浄が好ましい。洗浄回数としては、経済的な観点から1~20回が好ましく、1~10回がより好ましい。また、洗浄温度としては、20~100℃が好ましく、40~90℃がより好ましい。また重合反応前に、重合の阻害を行うような不純物を蒸留や吸着剤により除去し、単量体の純度を高めた後に重合を行うことによっても、必要な重合触媒量が少なくてすむため、触媒残渣量を低減することができる。
<ダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度>
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、該共役ジエン系グラフト重合体の加硫物の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化し、強度が0.5以上であるデータのみを用いて最小二乗法によってガウス関数にフィッテイングしてなる近似曲線と、前記規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、前記規格化した温度分散曲線において最大強度を示す温度よりも高温領域における最大強度が0.22以上であり、
該加硫物は、加硫剤として硫黄を用いて、150℃、60分間加硫した場合の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化した際の80℃のtanδの値が0.06となるように硫黄の量を調整した加硫物である。
上記加硫物は、下記の配合条件にて調整した共役ジエン系グラフト重合体の未加硫物をプレス成形(厚さ2mm、温度:150℃、圧力:2MPa、時間:60分)することで得られる。その後、後述する動的粘弾性測定に必要な20mm×5mm×2mmの短冊片を切り出す。
・配合条件
共役ジエン系グラフト重合体100質量部に対して、亜鉛華3.5質量部、ステアリン酸2質量部、N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド1.2質量部、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン1質量部、及び硫黄を添加して混合する。硫黄の添加量は、後述する加硫物の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化した際の80℃のtanδの値が0.06となるように調整する。
上記動的粘弾性測定は、株式会社ユービーエム製「Rheogel-E4000」を使用し、引張りモードにて、-100℃~150℃の温度範囲(昇温速度3℃/分)、周波数11Hzなる条件にて測定する。本条件にて得られたtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化し、上記80℃のtanδの値、及び後述するダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度を求める。
ダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度は、下記のフィッテイング条件により求めた近似曲線と、前記規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、前記規格化した温度分散曲線において最大強度を示す温度よりも高温領域における最大強度である。
・フィッテイング条件
ガウス関数として、Y=exp(-[(X-u)2/w2])で表される関数を用いた。上記動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化した。最大強度に対して強度が0.5以上であるデータのみを用いて最小二乗法によって前記ガウス関数にフィッテイングさせた。なお、Yは規格化されたtanδの温度分散曲線の強度値、Xは温度、w及びuは変数である。uの初期値として最大強度値を示すときの温度を用いた。wの初期値は最小二乗法の計算のために任意の数値を用いた。
なお、図1にtanδの最大強度が1となるように規格化した温度分散曲線((1),(2));この温度分散曲線で示されるデータのうち、強度が0.5以上であるデータのみを用いて最小二乗法によってガウス関数にフィッテイングしてなる近似曲線((1’),(2’));この温度分散曲線と近似曲線の差分からなる曲線((1”),(2”))の概念図を示す。
このうち、実線で示される場合((1)~(1”))が、規格化した温度分散曲線において最大強度を示す温度よりも高温領域における、前記差分からなる曲線の最大強度が0.22以上の場合であり、点線で示される場合((2)~(2”))が、規格化した温度分散曲線において最大強度を示す温度よりも高温領域における前記差分からなる曲線の最大強度が0.22未満の場合である。
本発明において、加硫物の動的粘弾性測定により得られるダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度を規定している。この加硫は、本発明の共役ジエン系グラフト共重合体を含む物から、流動性に乏しい構造体(例えば、高分子架橋物に含まれる三次元ネットワーク構造部分、結晶性高分子に含まれる結晶構造部分、ブロック共重合体に含まれる常温では流合しない重合体ブロックに由来する相分離構造部分)と、その構造体にその一方が結合しながらも、他方がその構造体に結合していない重合体鎖(すなわちダングリング鎖)を含む物を作製し、これを使用する場合のダングリング鎖の緩和の指標となるtanδのピーク強度を測定するための手段である。本発明の共役ジエン系グラフト重合体では、未加硫の状態で動的粘弾性測定をしても、高温領域においては、主鎖の流動によりtanδが大きく増加してしまうため、ダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度を適切に評価、比較することは困難である。つまり、ダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度を適切に評価、比較するためには主鎖の運動を制限する必要があり、本発明では、加硫により主鎖の運動を制限した上で動的粘弾性測定を実施している。また、主鎖の流動によるtanδの増加とダングリング鎖の緩和に由来するtanδをより適切に切り分けて評価するためには、加硫の程度を同一にしなければならない。本発明者らの検討により、上述の通り、80℃のtanδの強度が一定となるように硫黄の量を調整した上で、硫黄で共役ジエン系グラフト重合体を加硫することにより、共役ジエン系グラフト共重合体を含む物から、流動性に乏しい構造体とダングリング鎖を含む物を作製した場合、その物のダングリング鎖の緩和に由来するtanδをより適切に評価できるようになった。
上述の通り、本発明の共役ジエン系グラフト共重合体で上述の条件での加硫は、あくまで、本発明の共役ジエン系グラフト共重合体を含む物から、その共役ジエン系グラフト重合体に由来するダングリング鎖を含む物を作製する。この物を使用する場合、そのダングリング鎖の緩和の指標となるtanδのピーク強度を測定するための条件である。したがって、この測定条件が、本発明の共役ジエン系グラフト重合体を含む物の使用方法を制約するものではない。本発明の共役ジエン系グラフト共重合体を含む物は、例えば、パーオキサイドによる架橋、UV架橋した三次元ネットワーク構造を含む物として、又は高分子量の他の樹脂と混合することによって、本発明の共役ジエン系グラフト重合体に含まれる主鎖(a)の動きを制限する未架橋の組成物として、使用することが可能である。上述した加硫物の動的粘弾性測定において、ダングリング鎖の緩和に由来するtanδの温度分散曲線の強度に関する条件を満たす本発明の共役ジエン系グラフト重合体を含む物は、上述した、架橋物(架橋方法は硫黄であるか否かを問わず)、あるいは、他の樹脂との混合物など未架橋組成物、又は共役ジエン系グラフト重合体の未架橋物であっても、優れた制振性能を発現し得る。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、前記tanδの温度分散曲線の最大強度が1となる温度をT1としたとき、T1が-100~60℃の範囲であることが好ましい一態様であり、-95~50℃がより好ましく、-90~40℃がさらに好ましい。T1が前記範囲であると、共役ジエン系グラフト重合体の低温特性に優れる傾向にある。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、前記近似曲線と規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、T1よりも高温領域における最大強度を示す温度をT2としたとき、下記式(1);
0<T2-T1≦80 (1)
の関係を満たすことが好ましい一態様である。T2-T1は、1℃以上であることが好ましく、3℃以上であることがより好ましく、5℃以上であることが特に好ましい。また、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、50℃以下であることが特に好ましい。T2-T1が前記範囲であると、後述するダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度に優れる傾向にある。
<共役ジエン系グラフト重合体の製造方法>
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法は特に制限されず、例えば、マクロモノマー(側鎖の構成単位となる単量体を重合した重合体の活性末端に、重合性官能基を有する化合物を反応させて得られるマクロモノマー)と主鎖の構成単位となる単量体とを重合する方法、テトラメチルエチレンジアミン存在下であらかじめ合成した主鎖を構成する重合体と有機アルカリ金属化合物とを反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法(本明細書において、以降マクロイニシエーター法と呼称する)で、主鎖の構成要素となる2つの活性末端を有する重合体と側鎖の構成要素となる1つの活性末端を有する重合体の混合物を調製し、この混合物に3以上の反応性部位を有するカップリング剤を加えて反応させる方法、あらかじめ合成した主鎖の構成要素となる重合体を官能基で変性し、該官能基変性重合体と側鎖の構成単位となる単量体を重合した重合体の活性末端とを反応させる方法(本明細書において、以降カップリング法と呼称する)などが挙げられる。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法は特に制限されないが、主鎖(a)、側鎖(b)のビニル含量を好ましい範囲に調整する観点からは、前記マクロイニシエーター法、若しくはカップリング法が好ましい。また、側鎖(b)の側鎖密度をより高めるという観点からはマクロイニシエーター法が好ましく、側鎖(b)のビニル化度をより高度に制御するという観点からは、カップリング法が好ましい。
<マクロイニシエーター法(MI法)>
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法としては、下記工程(A-1)、工程(B)、及び工程(C)を含むマクロイニシエーター法による製造方法が好ましい一態様である。
(A-1)極性化合物の存在下で共役ジエン単位を含む重合体(M)を有機リチウム化合物と反応させることにより、重合体(M)に含まれるアニオン活性部位をリチオ化する工程;及び
(B)共役ジエン及び芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体を添加して、重合体(M)中のリチオ化された部分から重合して、主鎖である重合体(M)に対し側鎖を形成し、共役ジエン系グラフト重合体を作製する工程;及び
(C)得られた共役ジエン系グラフト重合体を回収する工程
[工程(A-1)]
上記工程(A-1)における主鎖の構成要素となる共役ジエン単位を含む重合体(M)の製造方法は特に制限されないが、例えば、乳化重合法、溶液重合法が好ましく、得られる重合体の分子量分布の観点から、溶液重合法がより好ましい。共役ジエン単位を含む重合体(M)が本発明の共役ジエン系グラフト重合体の主鎖(a)となる。
共役ジエン単位を含む重合体(M)を構成する単量体単位となる共役ジエンの具体例、好適例、及びその好適含有量、並びに、共役ジエン以外の他の単量体(芳香族ビニル化合物)の具体例、好適例、好適含有量等の説明は、共役ジエン系グラフト重合体の主鎖(a)に関する説明と同様である。また、共役ジエン単位を含む重合体(M)の重量平均分子量(Mw)、ビニル含量、Tgの好適態様等の説明は、共役ジエン系グラフト重合体の主鎖(a)に関する説明と同様である。
共役ジエン単位を含む重合体(M)の製造方法の一例である上記乳化重合法としては、公知又は公知に準ずる方法を適用できる。例えば、所定量の共役ジエンを含む単量体を乳化剤の存在下に分散媒中に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合する。
乳化剤としては、例えば炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩及びロジン酸塩などが挙げられる。長鎖脂肪酸塩としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸のカリウム塩又はナトリウム塩などが挙げられる。
分散媒としては通常、水が使用される。重合時の安定性が阻害されない範囲で、分散媒はメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
得られる共役ジエン単位を含む重合体(M)の分子量を調整するため、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ-テルピネン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
乳化重合の温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類などにより適宜設定できるが、通常0~100℃の範囲、好ましくは0~60℃の範囲である。重合様式は、連続重合、回分重合のいずれでもよい。
重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、イソプロピルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ヒドロキノンやベンゾキノン等のキノン系化合物、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。
重合反応停止後、必要に応じて老化防止剤を添加してもよい。重合反応停止後、得られたラテックスから必要に応じて未反応単量体を除去し、次いで、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩を凝固剤とし、必要に応じて硝酸、硫酸等の酸を添加して凝固系のpHを所定の値に調整しながら、上記共役ジエン単位を含む重合体(M)を凝固させた後、分散媒を分離することによって重合体を回収する。次いで水洗、及び脱水後、乾燥することで、上記共役ジエン単位を含む重合体(M)が得られる。なお、凝固の際に、必要に応じて予めラテックスと乳化分散液にした伸展油とを混合し、油展した共役ジエン単位を含む重合体(M)として回収してもよい。
共役ジエン単位を含む重合体(M)の製造方法の一例である上記溶液重合法としては、公知又は公知に準ずる方法を適用できる。例えば、溶媒中で、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒、又はアニオン重合可能な活性金属若しくは活性金属化合物を開始剤として使用して、必要に応じて極性化合物の存在下で、共役ジエンを含む単量体を重合する。
溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
上記開始剤としては、アニオン重合可能な活性金属又は活性金属化合物が好ましく、アニオン重合可能な活性金属化合物がより好ましい。
アニオン重合可能な活性金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属等が挙げられる。これらの中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。
アニオン重合可能な活性金属化合物としては、有機アルカリ金属化合物が好ましい。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。これら有機アルカリ金属化合物の中でも有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましい。
上記開始剤の使用量は、共役ジエン単位を含む重合体(M)の溶融粘度、分子量などに応じて適宜設定できるが、共役ジエンを含む全単量体100質量部に対して、通常0.01~3質量部の量で使用される。
有機アルカリ金属化合物を開始剤として用いる場合には、上記有機アルカリ金属化合物は、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして使用することもできる。
極性化合物は、アニオン重合において、通常、反応を失活させず、共役ジエン部位のミクロ構造(ビニル含量)を調整するため用いられる。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物などが挙げられる。極性化合物は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、通常0.01~1000モルの量で使用される。
溶液重合の温度は、通常-80~150℃の範囲、好ましくは0~100℃の範囲、より好ましくは10~90℃の範囲である。重合様式は回分式あるいは連続式のいずれでもよい。
上記溶液重合の重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いで、共役ジエン単位を含む重合体(M)を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより上記共役ジエン単位を含む重合体(M)を単離できる。なお、リチオ化反応に影響を及ぼさない範囲において、重合停止後の重合反応液をそのままリチオ化反応に用いてもよい。また、必要に応じて、溶媒を一部除去したり、溶媒を追加して重合反応液を希釈してもよい。
工程(A-1)では、上述のようにして得られた重合体(M)に含まれるアニオン活性部位を、極性化合物の存在下、有機リチウム化合物と反応させることによりリチオ化する。
上記工程(A-1)で重合体(M)のリチオ化に用いる有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;が挙げられる。これら有機リチウム化合物の中でも有機モノリチウム化合物が好ましく、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムがより好ましく、sec-ブチルリチウムが特に好ましい。
上記有機リチウム化合物の使用量は、上述した共役ジエン系グラフト重合体の側鎖(b)の平均本数に応じて適宜設定できる。例えば、(有機リチウム化合物の仕込み量(モル数))/(共役ジエン単位を含む重合体(M)の仕込み量(モル数))=4/1の場合、側鎖(b)の平均本数は4本となる。
上述の通り、側鎖密度は下記式(2)より求める。
(側鎖密度)=(共役ジエン系グラフト重合体1分子あたり側鎖(b)の平均本数)/[(主鎖(a)の数平均分子量Mn)/(スチレン単位の分子量)]×100 (2)
すなわち、上記有機リチウム化合物の使用量は、目的とする側鎖密度となるように、主鎖(a)の数平均分子量Mnと共役ジエン系グラフト重合体1分子あたり側鎖(b)の平均本数を設計することで、自ずと決めることができる。
上記工程(A-1)で重合体(M)のリチオ化の際に用いる極性化合物は、リチオ化反応を促進するために用いられる。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物などが挙げられる。これら極性化合物の中でも、3級アミンが好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。極性化合物の使用量は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、0.01モル以上が好ましく、0.05モル以上がより好ましく、0.1モル以上が特に好ましい。また、100モル以下が好ましく、50モル以下がより好ましく、10モル以下が特に好ましい。0.01モル未満の場合は反応速度に劣る傾向にあり、100モル超の場合は経済性に劣る傾向にある。
上記工程(A-1)のリチオ化は、通常、重合体(M)を溶媒に溶解した状態で行う。その溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
上記工程(A-1)のリチオ化の反応温度は、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が特に好ましい。また、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下が特に好ましい。0℃未満では反応速度に劣る傾向にあり、100℃超の場合は分解等の副反応が増加する傾向にある。
上記工程(A-1)のリチオ化の反応時間は、反応の進行に応じて適宜設定できるが、0.01~100時間が好ましく、0.1~50時間がより好ましく、0.2~20時間が特に好ましい。
工程(A-1)におけるリチオ化後の重合体(M)の1H-NMR測定において、4.0~5.7ppmの範囲のピーク面積を100とした場合に、5.7~6.4ppmの範囲のピーク面積が、0.1~10の範囲であることが好ましく、0.3~5の範囲であることがより好ましく、0.5~4の範囲であることが特に好ましい。ピーク面積がこの範囲にあることにより、リチオ化反応が適正に進行していると言え、得られる共役ジエン系グラフト重合体の側鎖(b)の平均本数が適正な範囲となる。
[工程(A-2)]
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法は、側鎖(b)のビニル含量を所望の範囲に調整するために、工程(A-1)の後に、
(A-2)ルイス酸を添加する工程;
を含むことが好ましい一態様である。
上記ルイス酸は、リチオ化反応を促進するために添加した上記極性化合物の作用を減らし、後述する工程(B)における側鎖のビニル含量を所望の範囲に調整するために添加する。ルイス酸としては、上記工程(A-1)にて生成したリチオ化点を失活させないアルキル金属化合物が好ましく、例えば、トリメチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-へキシルアルミニウム、及び、トリオクチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム化合物;ブチルエチルマグネシウム、ジ-n-ブチルマグネシウム、及び、ジ-n-へキシルマグネシウム等のアルキルマグネシウム化合物;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジ-n-プロピル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、及び、ジ-n-ブチル亜鉛等のアルキル亜鉛化合物が挙げられる。これらアルキル金属化合物の中でも、アルキルアルミニウム化合物、若しくはアルキル亜鉛化合物が好ましく、アルキルアルミニウム化合物がより好ましく、トリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
上記ルイス酸の使用量は、所望の側鎖(b)のビニル含量によって適宜調整できるが、例えば、上記工程(A-1)に用いる有機アルカリ金属化合物1モルに対して、0.01モル以上が好ましく、0.05モル以上がより好ましく、0.1モル以上が特に好ましい。また、10モル以下が好ましく、5モル以下がより好ましく、1モル以下が特に好ましい。0.01モル未満の場合はルイス酸の添加効果に乏しく所望のビニル化度に調整することが困難であり、10モル超の場合は側鎖重合の重合速度が低下する傾向があり、また、経済性に劣る傾向にある。また、上記工程(A-1)に用いる極性化合物1モルに対して、0.02モル以上が好ましく、0.1モル以上がより好ましく、0.2モル以上が特に好ましい。また、20モル以下が好ましく、10モル以下がより好ましく、2モル以下が特に好ましい。0.02モル未満の場合はルイス酸の添加効果に乏しく所望のビニル化度に調整することが困難であり、20モル超の場合は側鎖重合の重合速度が低下する傾向があり、また、経済性に劣る傾向にある。
上記ルイス酸を添加するタイミングは、工程(A-1)の後であれば、後述する工程(B)の前であっても、また、工程(B)の途中の任意のタイミングであってもよく、所望の側鎖(b)のビニル含量によって任意に選択できる。
[工程(B)]
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法は、
(B)共役ジエン及び芳香族ビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体を添加して、重合体(M)中のリチオ化された部分から重合して、主鎖である重合体(M)に対し側鎖を形成し、共役ジエン系グラフト重合体を作製する工程;
を含む。上記工程(B)において重合した単量体が本発明の共役ジエン系グラフト重合体の側鎖(b)となる。工程(B)において重合される重合体を構成する単量体単位となる共役ジエンの具体例、好適例、及びその好適含有量、並びに、共役ジエン以外の他の単量体(芳香族ビニル化合物)の具体例、好適例、好適含有量等の説明は、共役ジエン系グラフト重合体の側鎖(b)に関する説明と同様である。また、工程(B)において重合される重合体の重量平均分子量(Mw)、ビニル含量、Tgの好適態様等の説明は、共役ジエン系グラフト重合体の側鎖(b)に関する説明と同様である。
上記工程(B)において、側鎖(b)のビニル含量を所望の範囲に調整するために、極性化合物をさらに添加してもよい。また、ビニル含量を所望の範囲に調整するために、上述の通りルイス酸を添加してもよい。
上記工程(B)において使用可能な溶媒は、上記工程(A-1)における溶媒の好適例と同様である。必要に応じて、工程(A-1)の後の任意のタイミングで、溶媒をさらに添加してもよい。
上記工程(B)の重合温度としては、0℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましく、20℃以上が特に好ましい。また、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、60℃以下が特に好ましい。0℃未満では重合速度に劣る傾向にあり、100℃超の場合は分解等の副反応が増加する傾向にある。
上記工程(B)の重合時間としては、反応の進行に応じて適宜設定できるが、0.01~100時間が好ましく、0.1~50時間がより好ましく、0.2~20時間が特に好ましい。
上記工程(B)における重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。
[工程(C)]
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法は、
(C)得られた共役ジエン系グラフト重合体を回収する工程;
を含む。
工程(C)では、得られた本発明の共役ジエン系グラフト重合体を回収する。共役ジエン系グラフト重合体の回収方法は特に制限はないが、共役ジエン系グラフト重合体を含む溶液を工程(B)で得ている場合は、例えば、得られた溶液をメタノール等の貧溶媒に注いで、共役ジエン系グラフト重合体を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより上記共役ジエン系グラフト重合体を単離することにより回収できる。
<カップリング法(CP法)>
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法としては、下記工程(A-1)及び工程(B)を含むカップリング法による製造方法が好ましい一態様である。
(A-1)下記式(I)で表される活性末端重合体(I)と、下記式(II)で示される官能基を含む部分を分岐鎖として有する官能基変性共役ジエン系重合体(F)とを反応させて共役ジエン系グラフト重合体(G)を作製する工程
P-X (I)
(式(I)中、Pは共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体鎖を示し、Xはアニオン重合の活性末端を示す。)
Figure 2022051051000001
(式(II)中、Vは、アルコキシ基又は水酸基を示し、ZはSi、Sn、Ge、Pb、P、B、又はAlであり、R1は炭素数6~12のアリール基、炭素数1~12のアルキル基、又は水素原子を示し、Nは前記Zの価数を示し、nは下記式(3)を満たす整数であり;
1≦n≦N-1 (3)
nが2以上の場合、Vは同一でも異なっていてもよく、N-nが2以上の場合、R1は同一でも異なっていてもよく、分岐鎖が主鎖に対し、複数含まれる場合には、Zは同一でも異なっていてもよい。);及び
(B)得られた共役ジエン系グラフト重合体を回収する工程。
なお、官能基変性共役ジエン系重合体(F)の分岐鎖とは、官能基変性共役ジエン系重合体(F)の主鎖以外の部分を意味し、この主鎖とは、共役ジエン系グラフト重合体における主鎖(a)と同様、主鎖を構成する共役ジエン単位を含む全単量体単位に由来する部分全体を指す。
[工程(A-1)]
上記工程(A-1)で使用する、活性末端重合体(I)は、公知の重合方法を用いて製造することができる。例えば、重合末端に不活性な溶媒中、アニオン重合可能な活性金属又は活性金属化合物を開始剤として、必要に応じて極性化合物の存在下で、単量体をアニオン重合させることにより、活性末端重合体(I)を得ることができる。この活性末端重合体(I)のPが本発明で得られるグラフト重合体の側鎖(b)となる。
活性末端重合体(I)を構成する単量体単位となる単量体の具体例、好適態様等の説明、及び活性末端重合体(I)に含まれる単量体単位の具体例及び好適態様の説明は、共役ジエン系グラフト重合体の側鎖(b)に関する説明と同様である。
アニオン重合可能な活性金属又は活性金属化合物としては、有機アルカリ金属化合物が好ましく、有機リチウム化合物がより好ましい。上記有機リチウム化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、ペンチルリチウムなどが挙げられる。
上記溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
上記アニオン重合の際には、極性化合物を添加してもよい。極性化合物は、アニオン重合において、通常、反応を失活させず、共役ジエン部位のミクロ構造(ビニル含量)を調整するため用いられる。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物などが挙げられる。極性化合物は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、通常0.01~1000モルの量で使用される。
上記アニオン重合の温度は、通常-80~150℃の範囲、好ましくは0~100℃の範囲、より好ましくは10~90℃の範囲である。重合様式は回分式あるいは連続式のいずれでもよい。
上記活性末端重合体(I)のPは、最終的に、本発明の共役ジエン系グラフト重合体の側鎖(b)となる。上記活性末端重合体(I)のPの重量平均分子量(Mw)、ビニル含量、Tgの好適態様等の説明は、本発明のグラフト重合体の側鎖(b)に関するものと同様である。
上記工程(A-1)において、官能基変性共役ジエン系重合体(F)は、例えば、未変性共役ジエン系重合体(F’)を後述する変性工程において官能基により変性することで得られる。前記未変性共役ジエン系重合体(F’)の製造方法は特に制限されないが、例えば、乳化重合法、溶液重合法が好ましく、得られる重合体の分子量分布の観点から、溶液重合法がより好ましい。官能基変性共役ジエン系重合体(F)の官能基変性されている以外の部分が本発明の共役ジエン系グラフト重合体の主鎖(a)となる。
未変性共役ジエン系重合体(F’)を構成する単量体単位となる共役ジエンの具体例、好適例、及びその好適含有量、並びに、共役ジエン以外の他の単量体(芳香族ビニル化合物)の具体例、好適例、好適含有量等の説明は、共役ジエン系グラフト重合体の主鎖(a)に関する説明と同様である。また、未変性共役ジエン系重合体(F’)の重量平均分子量(Mw)、ビニル含量、Tgの好適態様等の説明は、共役ジエン系グラフト重合体の主鎖(a)に関する説明と同様である。
未変性共役ジエン系重合体(F’)の製造方法の一例である上記乳化重合法としては、公知又は公知に準ずる方法を適用できる。例えば、所定量の共役ジエンを含む単量体を乳化剤の存在下に分散媒中に乳化分散し、ラジカル重合開始剤により乳化重合する。
乳化剤としては、例えば炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩及びロジン酸塩などが挙げられる。長鎖脂肪酸塩としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸のカリウム塩又はナトリウム塩などが挙げられる。
分散媒としては通常、水が使用される。重合時の安定性が阻害されない範囲で、分散媒はメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶媒を含んでいてもよい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウムのような過硫酸塩、有機過酸化物、過酸化水素等が挙げられる。
得られる未変性共役ジエン系重合体(F’)の分子量を調整するため、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、例えば、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、チオグリコール酸、ジテルペン、ターピノーレン、γ-テルピネン、α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
乳化重合の温度は、使用するラジカル重合開始剤の種類などにより適宜設定できるが、通常0~100℃の範囲、好ましくは0~60℃の範囲である。重合様式は、連続重合、回分重合のいずれでもよい。
重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、イソプロピルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ヒドロキノンやベンゾキノン等のキノン系化合物、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。
重合反応停止後、必要に応じて老化防止剤を添加してもよい。重合反応停止後、得られたラテックスから必要に応じて未反応単量体を除去し、次いで、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム等の塩を凝固剤とし、必要に応じて硝酸、硫酸等の酸を添加して凝固系のpHを所定の値に調整しながら、上記未変性共役ジエン系重合体(F’)を凝固させた後、分散媒を分離することによって重合体を回収する。次いで水洗、及び脱水後、乾燥することで、上記未変性共役ジエン系重合体(F’)が得られる。なお、凝固の際に、必要に応じて予めラテックスと乳化分散液にした伸展油とを混合し、油展した未変性共役ジエン系重合体(F’)として回収してもよい。
未変性共役ジエン系重合体(F’)の製造方法の一例である上記溶液重合法としては、公知又は公知に準ずる方法を適用できる。例えば、溶媒中で、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒、又はアニオン重合可能な活性金属若しくは活性金属化合物を開始剤として使用して、必要に応じて極性化合物の存在下で、共役ジエンを含む単量体を重合する。
溶媒としては、例えば、n-ブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
上記開始剤としては、アニオン重合可能な活性金属又は活性金属化合物が好ましく、アニオン重合可能な活性金属化合物がより好ましい。
アニオン重合可能な活性金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属;ランタン、ネオジム等のランタノイド系希土類金属等が挙げられる。これらの中でもアルカリ金属及びアルカリ土類金属が好ましく、アルカリ金属がより好ましい。
アニオン重合可能な活性金属化合物としては、有機アルカリ金属化合物が好ましい。有機アルカリ金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム等の有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、ジリチオナフタレン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物;ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン等が挙げられる。これら有機アルカリ金属化合物の中でも有機リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましい。
上記開始剤の使用量は、未変性共役ジエン系重合体(F’)及び官能基変性共役ジエン系重合体(F)の溶融粘度、分子量などに応じて適宜設定できるが、共役ジエンを含む全単量体100質量部に対して、通常0.01~3質量部の量で使用される。
有機アルカリ金属化合物を開始剤として用いる場合には、上記有機アルカリ金属化合物は、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミドとして使用することもできる。
極性化合物は、アニオン重合において、通常、反応を失活させず、共役ジエン部位のミクロ構造(ビニル含量)を調整するため用いられる。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン等の3級アミン;アルカリ金属アルコキシド、ホスフィン化合物などが挙げられる。極性化合物は、有機アルカリ金属化合物1モルに対して、通常0.01~1000モルの量で使用される。
溶液重合の温度は、通常-80~150℃の範囲、好ましくは0~100℃の範囲、より好ましくは10~90℃の範囲である。重合様式は回分式あるいは連続式のいずれでもよい。
上記溶液重合の重合反応は、重合停止剤の添加により停止できる。重合停止剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。得られた重合反応液をメタノール等の貧溶媒に注いで、未変性共役ジエン系重合体(F’)を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより上記未変性共役ジエン系重合体(F’)を単離できる。
上記未変性共役ジエン系重合体(F’)を官能基により変性することで、上記式(II)で示される官能基を含む部分を分岐鎖として有する官能基変性共役ジエン系重合体(F)を製造する方法としては特に制限されないが、好ましい構造の官能基を導入する観点から、例えば、未変性共役ジエン系重合体(F’)に含まれる炭素-炭素不飽和結合にメルカプト基(-SH)を有する化合物をラジカル付加反応させることにより、アルコキシシラン化合物に由来する官能基を導入する方法、未変性共役ジエン系重合体(F’)に含まれる炭素-炭素不飽和結合を白金化合物含有触媒及び必要に応じて用いられる助触媒の存在下でヒドロシリル化することで、アルコキシシラン化合物に由来する官能基を導入する方法などが挙げられる。これらの製造方法の中でも、変性試薬、触媒の入手性や、製造コストの観点からは、メルカプト基(-SH)を有する化合物をラジカル付加反応させる方法が好ましく、得られる官能基変性共役ジエン系重合体(F)の安定性の観点からは、ヒドロシリル化によりアルコキシシラン化合物に由来する官能基を導入する方法が好ましい。
上記未変性共役ジエン系重合体(F’)に含まれる炭素-炭素不飽和結合にメルカプト基(-SH)を有する化合物をラジカル付加反応させることにより、アルコキシシラン化合物に由来する官能基を導入する方法としては、下記式(III)で示されるシラン化合物(III)を未変性共役ジエン系重合体(F’)に含まれる炭素-炭素不飽和結合にラジカル付加反応する方法が好ましい。
Figure 2022051051000002
(式(III)中、R4は炭素数1~6の2価のアルキレン基を示し、R5、及びR6はそれぞれ独立に炭素数6~12のアリール基、炭素数1~12のアルキル基、又は水素原子を示し、nは1~3の整数であり、nが2以上の場合、R5は同一でも異なっていてもよく、3-nが2以上の場合、R6は同一でも異なっていてもよい。)
上記シラン化合物(III)としては、例えば、メルカプトメチレンメチルジエトキシシラン、メルカプトメチレントリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルメトキシジメチルシラン、2-メルカプトエチルエトキシジメチルシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシエチルシラン、3-メルカプトプロピルジエトキシエチルシラン、3-メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、3-メルカプトプロピルエトキシジメチルシランなどが挙げられる。これらシラン化合物は1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
上記シラン化合物(III)のメルカプト基(-SH)が、未変性共役ジエン系重合体(F’)に含まれる炭素-炭素不飽和結合にラジカル付加反応することにより、シラン化合物(III)に由来する官能基、具体的には下記式(IV)で示される部分構造を官能基として有する官能基変性共役ジエン系重合体(F)が得られる。
Figure 2022051051000003
(式(IV)中、R4、R5、R6、及びnの定義は式(III)と同一である。)
上記シラン化合物(III)を、未変性共役ジエン系重合体(F’)に付加させる方法は特に限定されず、例えば、未変性共役ジエン系重合体(F’)中にシラン化合物(III)、さらに必要に応じてラジカル発生剤を加えて、有機溶媒の存在下又は非存在下に加熱する方法を採用することができる。使用するラジカル発生剤には特に制限はなく、通常市販されている有機過酸化物、アゾ系化合物、過酸化水素等が使用できる。
上記有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジt-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2.5-ヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル及びその置換体、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタトルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチル-2-エチルヘキサノエート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3-メチル-3-メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシオクタノエート、t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソブチレートなどが挙げられる。
上記アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン)、2,2'-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオンニトリル)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリルなどが挙げられる。
上記ラジカル発生剤は、1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
上記方法で使用される有機溶媒としては、一般的には炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒が挙げられる。これら有機溶媒の中でも、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
上記有機溶媒は、1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
さらに、上記方法により変性化合物を付加する反応を行う時には、副反応を抑制する観点等から老化防止剤を添加してもよい。
この時に用いる好ましい老化防止剤としては、例えば、2,6-ジt-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)(AO-40)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(AO-80)、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-6-メチルフェノール(Irganox1520L)、2,4-ビス[(ドデシルチオ)メチル]-6-メチルフェノール(Irganox1726)、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジt-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジt-ペンチルフェニルアクリレート(SumilizerGS)、2-tブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(SumilizerGM)、6-t-ブチル-4-[3-(2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イルオキシ)プロピル]-2-メチルフェノール(SumilizerGP)、亜りん酸トリス(2,4-ジt-ブチルフェニル)(Irgafos168)、ジオクタデシル3,3'-ジチオビスプロピオネート、ヒドロキノン、p-メトキシフェノール、N-フェニル-N'-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(ノクラック6C)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(LA-77Y)、N,N-ジオクタデシルヒドロキシルアミン(IrgastabFS042)、ビス(4-t-オクチルフェニル)アミン(Irganox5057)などが挙げられる。
上記老化防止剤は、1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
老化防止剤の添加量は、未変性共役ジエン系重合体(F’)100質量部に対して0~10質量部が好ましく、0~5質量部がより好ましい。
未変性共役ジエン系重合体(F’)に上記シラン化合物(III)を付加させる反応における温度は10~200℃が好ましく、50℃~180℃がより好ましい。また反応時間は1~200時間が好ましく、1~100時間がより好ましく、1~50時間がさらに好ましい。
未変性共役ジエン系重合体(F’)に含まれる炭素-炭素不飽和結合を白金化合物含有触媒及び必要に応じて用いられる助触媒の存在下でヒドロシリル化することで、アルコキシシラン化合物に由来する官能基を導入する方法としては、未変性共役ジエン系重合体(F’)に含まれる炭素-炭素不飽和結合を、白金化合物含有触媒の存在下、好ましくは白金化合物含有触媒及び助触媒の存在下で、下記式(VI)で示されるシラン化合物(VI)によりヒドロシリル化する方法が好ましい。
Figure 2022051051000004
(式(VI)中、R7、及びR8はそれぞれ独立に炭素数6~12のアリール基、又は炭素数1~12のアルキル基を示し、nは1~3の整数であり、nが2以上の場合、R7は同一でも異なっていてもよく、3-nが2以上の場合、R8は同一でも異なっていてもよい。)
上記シラン化合物(VI)としては、例えば、トリメトキシシラン、メチルジメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシランなどが挙げられる。これらシラン化合物は1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
上記シラン化合物(VI)により、未変性共役ジエン系重合体(F’)に含まれる炭素-炭素不飽和結合がヒドロシリル化反応されることにより、シラン化合物(VI)に由来する官能基、具体的には下記式(VII)で示される部分構造を官能基として有する官能基変性共役ジエン系重合体(F)が得られる。
Figure 2022051051000005
(式(VII)中、R7、R8、及びnの定義は式(VI)と同一である。)
上記ヒドロシリル化反応に用いられる白金化合物含有触媒としては、特に限定されないが、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液、テトラキストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビストリフェニルホスフィン白金、ジクロロビスアセトニトリル白金、ジクロロビスベンゾニトリル白金、ジクロロシクロオクタジエン白金等や、白金-炭素、白金-アルミナ、白金-シリカ等の担持触媒などが挙げられる。
ヒドロシリル化の際の選択性の面から、0価の白金錯体が好ましく、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン又はキシレン溶液がより好ましい。
白金化合物含有触媒の使用量は特に限定されるものではないが、反応性や、生産性等の点から、上記シラン化合物(VI)1モルに対し、含有される白金原子が1×10-7~1×10-2モルとなる量が好ましく、1×10-7~1×10-3モルとなる量がより好ましい。
上記反応における助触媒としては、無機酸のアンモニウム塩、酸アミド化合物及びカルボン酸から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
無機酸のアンモニウム塩としては、例えば、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、アミド硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸二水素一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ジ亜リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硫化アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、ホウフッ化アンモニウムなどが挙げられる。これらの中でも、pKaが2以上の無機酸のアンモニウム塩が好ましく、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムがより好ましい。
酸アミド化合物としては、例えば、ホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、アクリルアミド、マロンアミド、スクシンアミド、マレアミド、フマルアミド、ベンズアミド、フタルアミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドなどが挙げられる。
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、メトキシ酢酸、ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、乳酸、グリコール酸などが挙げられる。これらの中でも、ギ酸、酢酸、乳酸が好ましく、酢酸がより好ましい。
助触媒の使用量は特に限定されるものではないが、反応性、選択性、コスト等の観点から上記シラン化合物(VI)1モルに対して1×10-5~5×10-1モルが好ましく、1×10-4~5×10-1モルがより好ましい。
なお、上記ヒドロシリル化反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。使用可能な溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒などが挙げられる。これら溶媒は、1種単独で用いられても、2種以上混合して用いられてもよい。
上記ヒドロシリル化反応における反応温度は特に限定されるものではなく、通常0℃以上の温度、必要に応じて加熱条件下で行うことができるが、0~200℃が好ましい。適度な反応速度を得るためには加熱下で反応させることが好ましく、このような観点から、反応温度は40~110℃がより好ましく、40~90℃がさらに好ましい。また、反応時間も特に限定されるものではなく、通常1~60時間程度であるが、1~30時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。
上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)において、上記式(IV)又は式(VII)で示される部分構造を有する官能基は1種単独で含まれていてもよく2種以上含まれていてもよい。したがって、官能基変性共役ジエン系重合体(F)は、上記シラン化合物(III)及びシラン化合物(VI)からなる群から選ばれる1種の化合物により変性された共役ジエン系重合体であってもよく、また2種以上の化合物により変性された共役ジエン系重合体であってもよい。
得られる共役ジエン系グラフト重合体の極性材料との親和性や安定性の観点から、上記式(II)中のZは、Si、Snであることが好ましく、Siであることがより好ましい。
得られる共役ジエン系グラフト重合体の極性材料との親和性や安定性、後述するカップリング工程における反応性の観点から、上記式(II)中のVとしては、アルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、及びエトキシ基が特に好ましい。
上記式(II)中のnは上記式(3)を満たす整数であるが、後述するカップリング工程における反応性や、得られる共役ジエン系グラフト重合体の分岐点に結合する側鎖の本数の制御の観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、Zの価数と同一であることが特に好ましい。
官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりの上記式(II)で示される部分の平均個数は、1~50個が好ましく、2~30個がより好ましく、3~20個がさらに好ましい。
官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりの上記式(II)中の官能基Vの平均個数は、2~150個が好ましく、4~90個がより好ましく、6~60個がさらに好ましい。
官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりの上記式(II)中の官能基Vの平均個数は、官能基変性共役ジエン系重合体(F)に含まれる官能基Vの官能基当量(g/eq)と標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を用いて下記式(4)より求める。
(官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりの上記式(II)中の官能基Vの平均個数)=[(数平均分子量Mn)/(スチレン単位の分子量)×(共役ジエン及び必要に応じて含まれる共役ジエン以外の他の単量体単位の平均分子量)]/(官能基Vの官能基当量) (4)
なお、官能基変性共役ジエン系重合体(F)に含まれる官能基Vの官能基当量は、官能基V1個あたりに結合している共役ジエン及び必要に応じて含まれる共役ジエン以外の他の単量体の質量を意味する。官能基の当量は、1H-NMRを用いて官能基V由来のピークと重合体主鎖に由来するピークの面積比から算出する。なお、官能基V由来のピークとは、アルコキシ基及び水酸基由来のピークを指す。
未変性共役ジエン系重合体(F’)と上記シラン化合物(III)又はシラン化合物(VI)との混合割合は、例えば、官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子当たりの式(II)に含まれる官能基Vの平均個数が所望の値になるように適宜設定すればよいが、例えば、未変性共役ジエン系重合体(F’)と上記シラン化合物(III)又はシラン化合物(VI)との質量比が0.3~100となるように混合すればよい。
官能基変性共役ジエン系重合体(F)のMw及びビニル含量の好適範囲は、未変性共役ジエン系重合体(F’)の場合と同一である。
上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)の38℃で測定した溶融粘度は、0.1~2,000Pa・sが好ましく、0.1~1500Pa・sがより好ましく、0.1~1000Pa・sがさらに好ましい。官能基変性共役ジエン系重合体(F)の溶融粘度が前記範囲内であると、製造時の工程通過性に優れ、経済性が良好となる傾向にある。
工程(A-1)において、活性末端重合体(I)と上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)を反応させることで、上記式(II)で示される部分中の官能基Vと前記活性末端重合体(I)の置換反応が起こり、分岐点であるヘテロ原子Zに側鎖となる前記活性末端重合体(I)が結合した共役ジエン系グラフト重合体が形成される(以下、本反応をカップリング反応と称する)。該カップリング反応、及び後述する不活性化工程において未反応であった官能基V(アルコキシ基及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの残存する官能基)が、そのまま残存するか、又は加水分解されることで、共役ジエン系グラフト重合体の分岐点に結合したアルコキシ基及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの官能基(c)が形成される。
共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する側鎖(b)の平均本数は、上記カップリング反応における活性末端重合体(I)と官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量の比により、所望の範囲に調整することができる。例えば、(活性末端重合体(I)の仕込み量(モル数))/(官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量(モル数))=4/1の場合、側鎖(b)の平均本数Wは4本となる。ただし、Wの上限は、官能基変性共役ジエン系重合体(F)1分子あたりが有する官能基Vの個数である。
(活性末端重合体(I)の仕込み量)/(官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量)のモル比は、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの上記分岐点に直接結合する側鎖(b)の平均本数Wが所望の値となるように適宜設定すればよいが、例えば、1~200であることが好ましく、2~100であることがより好ましく、3~50であることがさらに好ましい。(活性末端重合体(I)の仕込み量)/(官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量)のモル比が1より小さいと、導入できる側鎖の本数が少なくなり、200より大きいと、後述するカップリング率が低下する傾向にある。
上記カップリング反応は、通常、0~100℃の温度範囲で、0.5~50時間行う。官能基変性共役ジエン系重合体(F)は希釈して用いてもよく、希釈溶媒としては、活性末端に対して不活性で反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の飽和脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素が挙げられる。
また、カップリング反応の際に添加剤としてルイス塩基を加えてもよい。ルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類; エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等のアミン類などが挙げられる。これらルイス塩基は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記カップリング反応においては、上記活性末端重合体(I)を合成した反応容器に上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)を添加してもよいし、逆に上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)に対して上記活性末端重合体(I)を添加してもよい。また、上述のように、上記活性末端重合体(I)、上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)のいずれも、必要に応じて溶媒で希釈して用いてもよい。また、上記活性末端重合体(I)は1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよく、上記官能基変性共役ジエン系重合体(F)も、1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
上記カップリング反応におけるカップリング率は50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。上記カップリング率が50%未満では、得られる共役ジエン系グラフト重合体の力学特性が低下するため好ましくない。カップリング率は、GPC測定で得られたカップリング未反応の上記活性末端重合体(I)に由来する成分のピーク面積と全てのピーク面積の総和を用いて下記式(5)より求める。
(カップリング率(%))=[{(全てのピーク面積の総和)-(活性末端重合体(I)に由来する成分のピーク面積)}/(全てのピーク面積の総和)]×100 (5)
カップリング率は官能基変性共役ジエン系重合体(F)の添加量を多くしたり、ルイス塩基の添加量を多くしたり、反応温度を高くしたり、反応時間を長くしたりすることによって高めることができる。カップリング反応は、カップリング率が所望の範囲になるまで行うことができる。その後、メタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を添加することで、カップリング反応を停止できる。
上記分岐点に直接結合する官能基(c)の個数は、上記カップリング反応における上記活性末端重合体(I)と官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量のモル比や、後述するアルコキシ基及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの残存する官能基(未反応の官能基V)の一部を不活性化する工程における試薬の使用量や反応時間、及び必要に応じて使用される極性化合物の種類や添加量により、所望の範囲に調整することができる。
上記分岐点に直接結合する官能基(c)の個数を所望の範囲に調整する方法としては、例えば、上記活性末端重合体(I)と官能基変性共役ジエン系重合体(F)の仕込み量を共役ジエン系グラフト重合体に含まれる分岐点あたりの官能基(c)の平均個数(X/Y)が1以上となるようなモル比でカップリング反応を行い、その後、(X/Y)が1未満となるように上述した残存する官能基(未反応の官能基V)の一部を不活性化する方法が挙げられる。
[工程(A-2)]
本発明の共役ジエン系グラフト重合体(G)の製造方法は、上記分岐点に直接結合する官能基(c)の個数を所望の範囲に調整するために、工程(A-1)の後に、
(A-2)前記共役ジエン系グラフト重合体中のアルコキシ基及び水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの残存する官能基(未反応で存在する官能基V)の一部を不活性化する工程(以下、不活性化工程と称する);
を含むことが好ましい一態様である。
回収工程(B)で加えられる水や酸により、得られる共役ジエン系グラフト重合体に含まれるアルコキシ基が反応して水酸基を生成し比較的多くの水酸基が含まれるようになると、これら多量の水酸基同士が縮合反応を起こしやすくなると考えられるため、不活性化工程(A-2)は、回収工程(B)よりも前に行うことが好ましい。
アルコキシ基及び水酸基を不活性化するために用いる試薬(以下、不活性化試薬と称することがある)としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム等のアルキルリチウム類;メチルナトリウム、エチルナトリウム、n-プロピルナトリウム、イソプロピルナトリウム、n-ブチルナトリウム、sec-ブチルナトリウム、t-ブチルナトリウム等のアルキルナトリウム類;メチルカリウム、エチルカリウム、n-プロピルカリウム、イソプロピルカリウム、n-ブチルカリウム、sec-ブチルカリウム、t-ブチルカリウム等のアルキルカリウム類;メチルマグネシウム臭化物、エチルマグネシウム臭化物、t-ブチルマグネシウム臭化物、t-ブチルマグネシウム塩化物、sec-ブチルマグネシウムヨウ化物等のアルキルマグネシウムハロゲン化物類;ジメチル銅リチウム、ジエチル銅リチウム、メチルエチル銅リチウム、メチルn-プロピル銅リチウム、エチルn-ブチル銅リチウム等のジアルキル銅リチウム類;リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジイソエチルアミド、リチウムジt-ブチルアミド等のリチウムアミド類;等のルイス塩基が挙げられる。これらの中でも、不活性化反応を速やかに進行させるには立体障害が小さいことが望ましいため、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、メチルリチウム、メチルマグネシウム臭化物、ジメチル銅リチウムが好ましい。
工程(A-2)における不活性化試薬の使用量/工程(A-1)で得られた共役ジエン系グラフト重合体中に含まれる基Vに由来するアルコキシ基及び水酸基の合計量のモル比は、0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。また、100以下であることが好ましく、50以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。不活性化試薬の量が少ない場合、上記分岐点に直接結合する官能基(c)の個数を所望の範囲に調整することができず、また、不活性化試薬の量が多い場合、経済性が悪化する傾向にある。
上記工程(A-2)の不活性化反応は、通常、0~100℃の温度範囲で、0.1~50時間行う。不活性化試薬は希釈して用いてもよく、希釈溶媒としては、不活性化試薬に対して不活性で反応に悪影響を及ぼさなければ特に制限はなく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の飽和脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素が挙げられる。また、上記不活性化反応の際に添加剤としてルイス塩基を加えてもよく、ルイス塩基としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等のアミン類などが挙げられる。これらルイス塩基は、1種単独で用いられても、2種以上併用されてもよい。
上記不活性化反応は、上記分岐点に直接結合する官能基(c)の個数が所望の範囲になるまで行うことができる。その後、メタノール、イソプロパノール等の重合停止剤を添加することで、不活性化試薬を失活できる。
[工程(B)]
本発明の共役ジエン系グラフト重合体の製造方法は、
(B)得られた共役ジエン系グラフト重合体を回収する工程;
を含む。
工程(B)では、得られた本発明の共役ジエン系グラフト重合体を回収する。共役ジエン系グラフト重合体の回収方法は特に制限はないが、共役ジエン系グラフト重合体を含む溶液を工程(A-1)又は工程(A-2)で得ている場合は、例えば、得られた溶液をメタノール等の貧溶媒に注いで、共役ジエン系グラフト重合体を析出させるか、重合反応液を水で洗浄し、分離後、乾燥することにより上記共役ジエン系グラフト重合体を単離することにより回収できる。
[重合体組成物]
本発明の重合体組成物は、本発明の共役ジエン系グラフト重合体(以下共役ジエン系グラフト重合体(α)とも称する。)を含む。また上記重合体組成物は、さらに共役ジエン系グラフト重合体(α)以外の他の重合体(β)を含んでもよい。他の重合体(β)は、熱可塑性重合体(β1)であっても、硬化性重合体(β2)であってもよい。
上記熱可塑性重合体(β1)としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル及び(メタ)アクリル酸エステル重合体又は共重合体などのアクリル系樹脂;ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリノルボルネン等のオレフィン系樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂等のスチレン系樹脂;スチレン-メタクリル酸メチル共重合体;スチレン-メタクリル酸メチル-無水マレイン酸共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマー等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン-ビニルアルコール共重合体;ポリアセタール;ポリフッ化ビニリデン;ポリウレタン;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;シリコーンゴム変性樹脂;アクリル系ゴム;シリコーン系ゴム;SEPS、SEBS、SIS等のスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDM等のオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
硬化性重合体(β2)としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、エステル(メタ)アクリレート樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、ケイ素樹脂、イミド樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、アリル樹脂、ジアリルフタレート樹脂が挙げられる。これらの中でも、入手性及び硬化物の基本物性の観点や、また、気泡の抜け性、得られる硬化物の靱性により一層優れる重合体組成物が得られるなどの観点から、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が好ましく、中でも、エポキシ樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂がより好ましく、エポキシ樹脂であることがさらに好ましい。硬化性重合体(β2)は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記重合体組成物に、共役ジエン系グラフト重合体(α)と他の重合体(β)が含まれる場合、共役ジエン系グラフト重合体(α)と他の重合体(β)との質量比(α)/(β)が、1/99~99/1であることが好ましい。
また、本発明の重合体組成物には、本発明の効果を損なわない程度に、種々の添加剤を添加してもよい。例えば、他の重合体(β)が熱可塑性重合体(β1)の場合、かかる添加剤としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、カーボンブラック、ガラス繊維、クレーなどの補強剤又は充填剤、プロセスオイル、ポリエチレングリコール、グリセリン、フタル酸エステルなどの可塑剤を添加剤として用いることができる。また、その他の添加剤として、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料、滑剤、界面活性剤などが挙げられる。さらに、該添加剤として発泡剤が挙げられ、発泡剤と熱可塑性重合体(β1)を含む重合体組成物からは発泡体を作製することが可能である。
例えば、他の重合体(β)が硬化性重合体(β2)の場合、かかる添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、公知のゴム、熱可塑性エラストマー、コア-シェル粒子等の衝撃改質剤、充填剤(シリカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機粒子など)、難燃剤、消泡剤、顔料、染料、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、離型剤などが挙げられる。
本発明の重合体組成物は、共役ジエン系グラフト重合体(α)と他の重合体(β)などの各成分の組成比等に応じ、通常の高分子物質の混合方法により調製できる。
他の重合体(β)が熱可塑性重合体(β1)の場合、例えば、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の混合装置により重合体組成物が作製できる。特に本発明においては、これら混合装置を用いて、溶融混練する方法が好ましい一態様である。
他の重合体(β)が硬化性重合体(β2)の場合、例えばミキサーなどで十分混合し、次いでミキシングロール、押出し機等によって溶融混練したあと、冷却、粉砕する方法により重合体組成物は作製できる。
本発明の重合体組成物は、共役ジエン系グラフト重合体(α)を含む架橋性の重合体組成物であってもよい。かかる重合体組成物の場合、さらに、架橋剤を含んでいる。
架橋剤としては、硫黄、硫黄化合物、過酸化水素、有機過酸化物等の過酸化物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、キノン及びキノンジオキシム誘導体、ハロゲン化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、エポキシ化合物、金属ハロゲン化物及び有機金属ハロゲン化物、シラン化合物などが挙げられる。
架橋剤として、硫黄、硫黄化合物等が含まれている場合には、さらに加硫促進剤、加硫助剤を含んでいてもよい。
また、上記架橋性の重合体組成物には、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム等の固形ゴム(共役ジエン系グラフト重合体(α)を除く)、カーボンブラック、シリカ等のフィラー、架橋助剤、オイル等の軟化剤、粘着付与樹脂、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、スコーチ防止剤、官能基含有化合物、ワックス、滑剤、可塑剤、加工助剤、顔料、色素、染料、その他着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料、分散剤、溶剤等の添加剤を含んでいてもよい。
本発明の重合体組成物は、従来から知られている各種の成形法により、成形品とすることが可能である。
他の重合体(β)が熱可塑性重合体(β1)の場合、重合体組成物を、例えば押出成形、射出成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、カレンダー成形等により成形することにより、成形品が作製できる。これら方法によって各種形状の成形品、シート、フィルムなどが得られる。また、メルトブロー法、スパンボンド法等の方法により、不織布、繊維状物となった成形品を作製することもできる。
他の重合体(β)が硬化性重合体(β2)の場合、重合体組成物を、例えば、トランスファー成形法により、熱により硬化した成形品が作製できる。硬化性重合体(β2)を重合体組成物が含む場合のその他の成形方法としては、例えば、インジェクション成形法、圧縮成形法が挙げられる。
また本発明の重合体組成物が架橋性の重合体組成物である場合は、架橋することにより架橋物として用いることができる。架橋性の重合体組成物の架橋条件は、その用途、使用する架橋剤に応じて適宜設定できる。例えば架橋剤が過酸化物の場合、130℃~250℃の温度範囲で、10分~60分間架橋反応を行うことにより、架橋物を作製することができる。例えば、架橋剤が硫黄又は硫黄化合物である場合は、加硫金型を用いて加硫温度120~200℃及び加硫圧力0.5~20MPaの条件で行うことができる。
他の重合体(β)が熱可塑性重合体(β1)の場合、重合体組成物から得られる成形品の用途としては、例えば、バンパー、インパネなどの自動車用内外装品、テレビ、ステレオ、掃除機等の家電用のハウジング材、コネクターなどの電気・電子部品、電線ケーブル用素材、食肉鮮魚用トレー、青果物パック、冷凍食品容器等の食品包装材若しくは食品容器、工業資材等の包装材料、スポーツシューズ素材などのスポーツ用品、布帛若しくは皮革製品、玩具、サンダルなどの日用雑貨、各種フィルム、シート、成形品のラミネート材、粘・接着剤、紙おむつなどに用いられる伸縮材料、ホース、チューブ、ベルト等の各種ゴム製品、医療用品などが挙げられる。
他の重合体(β)が硬化性重合体(β2)の場合、重合体組成物、その硬化物又は成形品の用途としては、例えば、繊維補強複合材用接着剤(コンクリート用繊維補強複合材料用接着剤、自動車・鉄道車両・航空機といった運輸運送装置用繊維補強複合材料用接着剤、各種スポーツ用品用繊維補強複合材料用接着剤等)、組み立て用接着剤(自動車・鉄道車両・航空機といった運輸運送装置における部品組み立て用接着剤等)などの各種接着剤;上下水道用防食・防水塗料、金属用防食塗料などの各種塗料;建築土木用塗装プライマー、自動車・鉄道車両・航空機といった運輸運送装置用の塗装プライマーなどの各種塗装プライマー;金属用ライニング材、コンクリート用ライニング材、タンク類用ライニング材などの各種ライニング材;コンクリート用亀裂補修材などの各種補修材;プリント配線基板、絶縁ボード、半導体封止材、パッケージ材などの各種電気電子部品などが挙げられる。
上記架橋性の重合体組成物及び該重合体組成物の架橋物を使用できる用途としては、タイヤ、ベルト、防振ゴム、電線被覆ゴム、ロール、靴、シーリング剤、粘接着剤、グリース、刷版材、OCR、OCA、塗料、防舷材、コーティング剤、ガスケット、ホース、ブレーキパッドなどが挙げられる。
上記架橋性の重合体組成物又は該重合体組成物の架橋物は、例えばタイヤの一部として好適に用いられる。
上記重合体組成物及び該重合体組成物の架橋物を使用できるタイヤの部位としては、例えば、トレッド(キャップトレッド、アンダートレッド)、サイドウォール、ランフラットタイヤ用ゴム補強層(ライナーなど)、リムクッション、ビードフィラー、ビードインシュレーション、ビードエイペックス、クリンチエイペックス、ベルト、ベルトクッション、ブレーカー、ブレーカークッション、チェーファー、チェーファーパッド、ストリップエイペックスなどが挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において共役ジエン系グラフト重合体の物性は次の方法により評価した。
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、共役ジエン系グラフト重合体、及びその製造の各段階における重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)を標準ポリスチレン換算で求めた。なお、側鎖(b)の数平均分子量(Mn)に関しては、側鎖の構成単位となる重合体の重合に用いる開始剤と側鎖の構成単位となる単量体の仕込み比より算出した。
装置:東ソー株式会社製 GPC装置「HLC-8220」
分離カラム:東ソー株式会社製 「TSKgel SuperMultiporeHZ-M(カラム径=4.6mm、カラム長=15cm)」(2本を直列に繋いで使用)
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液流量:0.35mL/分
カラム温度:40℃
検出方法:示差屈折率(RI)
注入量:10μl
濃度:1mg/1cc(共役ジエン系グラフト重合体/THF)
(2)ビニル含量、スチレン単位含有量
1H-NMRによって、共役ジエン系グラフト重合体、及びその製造の各段階における重合体のビニル含量、及びスチレン単位含有量を算出した。得られたスペクトルのビニル化された共役ジエン単位由来の二重結合のピークと、ビニル化されていない共役ジエン単位由来の二重結合のピークとの面積比からビニル含量を算出し、スチレン単位に由来する芳香環のピークと、共役ジエン単位由来の二重結合のピークとの面積比からスチレン単位含有量を算出した。
装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置 「JNM-ECX400」
溶媒: 重クロロホルム
測定温度:50℃
積算回数:1024回
(3)絡み合い点間分子量
POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1992,32,823に記載の理論式より、側鎖(b)を構成する重合体の絡み合い点間分子量を算出した。
(4)共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数
共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数は、後述するあらかじめ合成した共役ジエン系重合体をテトラメチルエチレンジアミン存在下で有機アルカリ金属化合物と反応させることで主鎖をリチオ化した後に、側鎖の構成単位となる単量体を重合する方法で製造する場合には、リチオ化反応に使用する有機アルカリ金属化合物と主鎖の構成単位となる共役ジエン系重合体の仕込み比より算出した。また、後述するあらかじめ合成した主鎖の構成要素となる重合体を官能基で変性し、該官能基変性重合体と側鎖の構成単位となる単量体を重合した重合体の活性末端とを反応させる方法で製造する場合には、カップリング反応における側鎖(b)の構成要素となる活性末端重合体と官能基変性共役ジエン系重合体の仕込み比より算出した。
(5)側鎖(b)の側鎖密度
側鎖(b)の側鎖密度は、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたり側鎖(b)の平均本数と主鎖(a)の標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)を用いて下記式(2)より算出した。
(側鎖密度)=(共役ジエン系グラフト重合体1分子あたり側鎖(b)の平均本数)/[(主鎖(a)の数平均分子量Mn)/(スチレン単位の分子量)]×100 (2)
(6)ダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度
明細書本文に記載の条件に従って加硫物を作製し、動的粘弾性測定によりtanδの温度分散曲線を取得した。その後、明細書本文に記載のフィッテイング条件により、ダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度を算出した。
(7)tanδのピーク温度(T1)
上記加硫物の動的粘弾性測定により得られたtanδの温度分散曲線において最大強度を示す温度をT1とした。
(8)側鎖緩和のピーク温度(T2)
上記ダングリング鎖の緩和に由来するtanδのピーク強度の算出に記載の近似曲線と規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、T1よりも高温領域における最大強度を示す温度をT2とした。
(9)制振性能
共役ジエン系グラフト重合体の制振性能は、上記加硫物に鉄球を落とすことで評価した。明細書本文に記載の条件に従って加硫物を作製し、該加硫物を5cm四方に切り出してSUS板上に固定した。固定した加硫シートを上記温度T2となるように温調した状態で、重さ10gの鉄球を高さ30cmの位置から落下させた際の鉄球の挙動について、以下の指標で制振性能を評価した。
A:鉄球の跳ね返りが無い
B:鉄球の跳ね返りが有る
[実施例1]
(工程(1))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1590g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)60gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、1,3-ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノール3.5gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系重合体(M-1)を得た。得られた共役ジエン系重合体(M-1)の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-1)の主鎖(a)の重量平均分子量、ビニル含量を求めることができる。得られた共役ジエン系重合体(M-1)の重量平均分子量は28,000、ビニル含量は10モル%であった。
(工程(2))
続いて、十分に乾燥した5Lオートクレーブ中に、工程(1)で得られた共役ジエン系重合体(M-1)131gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら重合体の窒素脱気、及びオートクレーブ内の窒素置換を行った。シクロヘキサン1460gを仕込み、40℃に昇温した後、sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)108g、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン10.5gを逐次添加して、40℃で1時間リチオ化反応を実施した。リチオ化反応終了後、シクロヘキサン820gを添加して反応液を希釈し、再度40℃まで昇温した。
(工程(3))
重合温度を40℃となるように制御しながら、1,3-ブタジエン470gを逐次添加して、2時間重合した。その後メタノール29gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。工程(3)における試薬の仕込み量、及び工程(3)における重合体溶液の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-1)の側鎖(b)の数平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。共役ジエン系グラフト重合体(G-1)の側鎖(b)の数平均分子量は5,000、ビニル含量は75モル%、スチレン単位含有量は0質量%であった。
(工程(4))
得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系グラフト重合体(G-1)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-1)の重量平均分子量は128,000、Mw/Mnは1.5、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数は20本、側鎖密度は7.4モル%であった。
[実施例2~9]
工程(1)~(4)で使用する各試薬の種類、量を表1に記載されるように変更したこと以外は、実施例1と同じ方法によって、共役ジエン系グラフト重合体(G-2)~(G-9)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-2)~(G-9)の分子仕様、物性を表2に示す。なお、工程(2)でトリイソブチルアルミニウム(TIBA)を使用する場合、その使用するTIBAは20.0質量%n-ヘキサン溶液であり、リチオ化反応終了後、シクロヘキサンを添加して反応液を希釈し、再度40℃まで昇温した後、このTIBAの溶液を添加した。
[実施例10]
(工程(1))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1590g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)60gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、1,3-ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノール3.5gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性共役ジエン系重合体(F’-1)を得た。
(工程(2))
続いて、容量1Lのオートクレーブ中に、工程(1)で得られた未変性共役ジエン系重合体(F’-1)700gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら窒素脱気をした。t-ブチルパーオキシピバレート0.9gと3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン51gを添加し、80℃で8時間反応させて、官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)を得た。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-10)の主鎖(a)の重量平均分子量、ビニル含量を求めることができる。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の重量平均分子量は28,000、ビニル含量は10モル%であった。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)にシクロヘキサン1750gを加えて濃度30質量%に希釈し、後述のカップリング反応で使用する官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の希釈溶液を得た。
(工程(3))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1520g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)80gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、テトラヒドロフラン14.3gと、1,3-ブタジエン690gを逐次添加して、1時間重合し活性末端重合体(I-1)を得た。工程(3)における重合体溶液をサンプリングして分析することで、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-10)の側鎖(b)の数平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた活性末端重合体(I-1)の数平均分子量は10,000、ビニル含量は50モル%、スチレン単位含有量は0質量%であった。
(工程(4))
続いて、工程(3)で得た活性末端重合体(I-1)を含む溶液に、工程(2)で得た官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の希釈溶液690gを添加し50℃で2時間カップリング反応をさせた。その後、n-ブチルリチウム(15質量%ヘキサン溶液)52gを添加し6時間反応させて残存するアルコキシ基の一部を封止した。その後メタノール12gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。
(工程(5))
得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系グラフト重合体(G-10)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-10)の重量平均分子量は118,000、Mw/Mnは1.5、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数は9本、側鎖密度は3.0モル%であった。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-10)の分子仕様、物性を表2に示す。
[比較例1]
(工程(1))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1590g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)60gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、1,3-ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノール3.5gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系直鎖重合体(L-1)を得た。得られた共役ジエン系重合体(L-1)の重量平均分子量は28,000、ビニル含量は10モル%であった。得られた共役ジエン系グラフト重合体(L-1)の分子仕様、物性を表2に示す。
[比較例2]
(工程(1))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1570g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)78gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、1,3-ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノール4.6gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、未変性共役ジエン系重合体(F’-1)を得た。
(工程(2))
続いて、撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、工程(1)で得られた未変性共役ジエン系重合体(F’-1)700g、シクロヘキサン1400g、白金-1,3-ジビニル-1,1 ,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体の2%キシレン溶液(Petrarch System社製「PC072」)5.6mL、トリメチルクロロシラン120gを仕込んで、終夜でこれらを撹拌した。その後、この中に、ジメチルクロロシラン66gを滴下した後に、内温が70℃になるまで徐々に加熱し、内温を70℃に保ったまま還流下で24時間撹拌した。撹拌終了後、減圧濃縮及び濾過し、官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)を得た。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-11)の主鎖(a)の重量平均分子量、ビニル含量を求めることができる。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の重量平均分子量は20,000、ビニル含量は10モル%であった。得られた官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)にシクロヘキサン1790gを加えて濃度30質量%に希釈し、後述のカップリング反応で使用する官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の希釈溶液を得た。
(工程(3))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1850g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)47gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、1,3-ブタジエン820gを逐次添加して、1時間重合し活性末端重合体(I-1)を得た。工程(3)における重合体溶液をサンプリングして分析することで、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-11)の側鎖(b)の数平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。得られた活性末端重合体(I-1)の数平均分子量は20,000、ビニル含量は10モル%、スチレン単位含有量は0質量%であった。
(工程(4))
続いて、工程(3)で得た活性末端重合体(I-1)を含む溶液に、工程(2)で得た官能基変性共役ジエン系重合体(F-1)の希釈溶液270gを添加し50℃で2時間カップリング反応をさせた。その後、n-ブチルリチウム(15質量%ヘキサン溶液)24gを添加し6時間反応させて残存するアルコキシ基の一部を封止した。その後メタノール5.3gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。
(工程(5))
得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系グラフト重合体(G-11)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-11)の重量平均分子量は220,000、Mw/Mnは1.5、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数は10本、側鎖密度は5.4モル%であった。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-11)の分子仕様、物性を表2に示す。
[比較例3]
(工程(1))
十分に乾燥した5Lオートクレーブを窒素置換し、シクロヘキサン1570g及びsec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)78gを仕込み、50℃に昇温した後、撹拌条件下、重合温度を50℃となるように制御しながら、1,3-ブタジエン1350gを逐次添加して、1時間重合した。その後メタノール4.6gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系重合体(M-10)を得た。得られた共役ジエン系重合体(M-10)の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-12)の主鎖(a)の重量平均分子量、ビニル含量を求めることができる。得られた共役ジエン系重合体(M-10)の重量平均分子量は20,000、ビニル含量は10モル%であった。
(工程(2))
続いて、十分に乾燥した5Lオートクレーブ中に、工程(1)で得られた共役ジエン系重合体(M-10)495gを仕込み、60℃で3時間撹拌をしながら重合体の窒素脱気、及びオートクレーブ内の窒素置換を行った。シクロヘキサン1480gを仕込み、40℃に昇温した後、sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)61g、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン5.9gを逐次添加して、40℃で1時間リチオ化反応を実施した。リチオ化反応終了後、シクロヘキサン850gを添加して反応液を希釈し、再度40℃まで昇温した。
(工程(3))
重合温度を40℃となるように制御しながら、1,3-ブタジエン110gを逐次添加して、2時間重合した。その後メタノール16gを添加して重合反応を停止させ、重合体溶液を得た。
工程(3)における試薬の仕込み量、及び工程(3)における重合体溶液の分析により、後述する共役ジエン系グラフト重合体(G-12)の側鎖(b)の数平均分子量、ビニル含量、スチレン単位含有量を求めることができる。側鎖(b)の数平均分子量は2,000、ビニル含量は75モル%、スチレン単位含有量は0質量%であった。
(工程(4))
得られた重合体溶液に水を添加して撹拌し、水で重合体溶液を洗浄した。撹拌を終了し、重合体溶液相と水相とが分離していることを確認した後、水を分離した。洗浄終了後の重合体溶液を70℃で24時間真空乾燥することにより、共役ジエン系グラフト重合体(G-12)を得た。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-12)の重量平均分子量は26,000、Mw/Mnは1.5、共役ジエン系グラフト重合体1分子あたりの側鎖(b)の平均本数は3本、側鎖密度は1.6モル%であった。得られた共役ジエン系グラフト重合体(G-12)の分子仕様、物性を表2に示す。
実施例1~9における工程(1)~(4)で使用した各試薬の種類、量を以下の表1に、実施例1~10及び比較例1~3で得られた共役ジエン系グラフト重合体の物性を表2に示す。
Figure 2022051051000006
表1中、略字はそれぞれ下記を示す
SBL:sec-ブチルリチウム(10.5質量%シクロヘキサン溶液)
TMEDA:N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン
TIBA:トリイソブチルアルミニウム(20.0質量%n-ヘキサン溶液)
Bd:1,3-ブタジエン
Ip:イソプレン
St:スチレン
Figure 2022051051000007
表2より、側鎖の数平均分子量が絡み合い点間分子量の0.39~1.49倍、側鎖密度が3.0~14.9モル%であり、ダングリング鎖の緩和に由来するtanδの強度が高い実施例1~10の共役ジエン系グラフト重合体は、制振性能に優れることがわかる。
一方で、直鎖状の共役ジエン系重合体であり、ダングリング鎖の緩和に由来するtanδの強度が低い比較例1の共役ジエン系重合体は、制振性能に劣る。また、側鎖の数平均分子量が絡み合い点間分子量の5.71倍であり、ダングリング鎖の緩和に由来するtanδの強度が低い比較例2の共役ジエン系グラフト重合体は、制振性能に劣る。また、側鎖密度が1.6モル%であり、ダングリング鎖の緩和に由来するtanδの強度が低い比較例3の共役ジエン系グラフト重合体は、制振性能に劣る。
本発明の共役ジエン系グラフト重合体は、広い温度域、周波数域において良好な制振性能を有することから、自動車用内外装品、電気・電子部品、包装材料、スポーツ用品、日用雑貨、ラミネート材、伸縮材料、各種ゴム製品、医療用品、各種接着剤、各種塗装プライマーなど幅広い分野に有効に使用することができる。

Claims (20)

  1. 共役ジエン単位を含む重合体からなる主鎖(a)と共役ジエン単位及び芳香族ビニル化合物単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単量体単位を含む重合体からなる側鎖(b)からなる共役ジエン系グラフト重合体であり、
    該共役ジエン系グラフト重合体の加硫物の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化し、強度が0.5以上であるデータのみを用いて最小二乗法によってガウス関数にフィッテイングしてなる近似曲線と、前記規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、前記規格化した温度分散曲線において最大強度を示す温度よりも高温領域における最大強度が0.22以上であり、
    該加硫物は、加硫剤として硫黄を用いて、150℃、60分間加硫した場合の動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線の最大強度が1となるように規格化した際の80℃のtanδの値が0.06となるように硫黄の量を調整した加硫物である、
    共役ジエン系グラフト重合体。
  2. 前記側鎖(b)の数平均分子量(Mn)が、側鎖(b)を構成する重合体の絡み合い点間分子量の0.01倍以上5.0倍以下である、請求項1に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  3. 前記動的粘弾性測定により得られるtanδの温度分散曲線において最大強度を示す温度T1と、前記近似曲線と規格化した温度分散曲線の差分からなる曲線において、T1よりも高温領域における最大強度を示す温度T2が下記式(1);
    0<T2-T1≦80 (1)
    の関係を満たす、
    請求項1又は2に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  4. 前記側鎖(b)の側鎖密度が2.0モル%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  5. 前記側鎖(b)が、共役ジエン単位を含む重合体からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  6. 前記側鎖(b)が、1,3-ブタジエン、イソプレン、ファルネセン、及びミルセンからなる群より選ばれる少なくとも1種から得られる共役ジエン単位を含む重合体からなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  7. 前記側鎖(b)が、1,3-ブタジエン、及びイソプレンからなる群より選ばれる少なくとも1種から得られる共役ジエン単位を含む重合体からなる、請求項6に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  8. 前記側鎖(b)が、1,3-ブタジエン単位を含む重合体からなる、請求項7に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  9. 前記側鎖(b)の共役ジエン単位の含有量が40質量%以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  10. 前記主鎖(a)が、1,3-ブタジエン、イソプレン、ファルネセン、及びミルセンからなる群より選ばれる少なくとも1種から得られる共役ジエン単位を含む重合体からなる、請求項1~9のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  11. 前記主鎖(a)が、1,3-ブタジエン、及びイソプレンからなる群より選ばれる少なくとも1種から得られる共役ジエン単位を含む重合体からなる、請求項10に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  12. 前記主鎖(a)が、1,3-ブタジエン単位を含む重合体からなる、請求項11に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  13. 前記主鎖(a)の共役ジエン単位の含有量が40質量%以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  14. 前記tanδの温度分散曲線において最大強度を示す温度T1が、-100~60℃の範囲である、請求項1~13のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  15. 前記側鎖(b)を構成する共役ジエン単位のビニル含量が15モル%以上である、請求項1~14のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  16. 前記主鎖(a)を構成する共役ジエン単位のビニル含量が50モル%以下である、請求項1~15のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  17. 前記側鎖(b)の側鎖密度が5.5モル%以上である、請求項1~16のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体。
  18. 請求項1~17のいずれか1項に記載の共役ジエン系グラフト重合体を含有する、重合体組成物。
  19. 請求項18に記載の重合体組成物を成形してなる成形品。
  20. 請求項18に記載の重合体組成物を架橋してなる架橋物。
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